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特許7527992フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20240729BHJP
   G03F 1/29 20120101ALI20240729BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/29
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021012083
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2021149092
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020046207
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勝
(72)【発明者】
【氏名】浅川 敬司
(72)【発明者】
【氏名】安森 順一
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061106(JP,A)
【文献】特開2005-292192(JP,A)
【文献】特開2019-207361(JP,A)
【文献】特開2002-341515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0132174(US,A1)
【文献】特開2005-156700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に位相シフト膜を有するフォトマスクブランクであって、
前記フォトマスクブランクは、フォトマスクを形成するための原版であり、該フォトマスクは、前記位相シフト膜をウェットエッチングすることにより得られる位相シフト膜パターンを前記透明基板上に有するフォトマスクであって、
前記位相シフト膜は単層又は多層で構成され、かつ、該位相シフト膜の全体膜厚に対して50%以上100%以下が、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と窒素とを含む材料からなるMoZrSi系材料層を含み、
前記MoZrSi系材料層は、モリブデンとジルコニウムの原子比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:4であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が70~88原子%であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対して透過率が20%以上80%以下であり、位相差が160°以上200°以下の光学特性を備えていることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
前記位相シフト膜は、前記透明基板側の下層と前記下層の上に積層された上層とを含む積層膜であって、前記下層が前記MoZrSi系材料層であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
前記上層は、露光光の代表波長において、前記下層における屈折率よりも小さく、かつ消衰係数よりも高い材料からなることを特徴とする請求項3記載のフォトマスクブランク。
【請求項5】
前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、15%以下となるように、前記上層と前記下層それぞれの屈折率、消衰係数、および膜厚が設定されていることを特徴とする請求項4記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
前記位相シフト膜上に、該位相シフト膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記位相シフト膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
請求項6記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記エッチングマスク膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記位相シフト膜パターンを含む転写パターンを、表示装置基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子や配線等の電子回路パターンの作製である。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクやバイナリマスクといったフォトマスクが必要になっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明基板上に位相反転膜が備えられた位相反転マスクブランクが開示されている。このマスクブランクにおいて、位相反転膜は、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を含む複合波長の露光光に対して35%以下の反射率及び1%~40%の透過率を有するようにするとともに、パターン形成時にパターン断面の傾斜が急激に形成されるように酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)の少なくとも1つの軽元素物質を含む金属シリサイド化合物からなる2層以上の多層膜で構成され、金属シリサイド化合物は、上記軽元素物質を含む反応性ガスと不活性ガスが0.5:9.5~4:6の比率で注入して形成されている。
前記金属シリサイド化合物としては、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、セレン(Se)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、硫黄(S)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ボロン(B)、ベリリウム(Be)、ナトリウム(Na)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)中いずれか一つ以上の金属物質にシリコン(Si)が含まれて成り立つか、前記金属シリサイドに窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)中の一つ以上の軽元素物質をさらに含む化合物からなることを特徴とする材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国登録特許第1801101号公報
【文献】特許第3988041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高精細(1000ppi以上)のパネル作製に使用される位相シフトマスクとしては、高解像のパターン転写を可能にするために、位相シフトマスクであって、かつホール径で、6μm以下、ライン幅で4μm以下の微細な位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。具体的には、ホール径で1.5μmの微細な位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。
また、より高解像のパターン転写を実現するため、露光光に対する透過率が15%以上の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクおよび、露光光に対する透過率が15%以上の位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。
露光光に対する透過率の要求を満たすため、位相シフト膜を構成する金属シリサイド化合物(金属シリサイド系材料)における金属とケイ素の原子比率におけるケイ素の比率を高くすることが効果的であるが、ウェットエッチング速度が大幅に遅く(ウェットエッチング時間が長く)なるとともに、ウェットエッチング液による基板へのダメージが発生し、透明基板の透過率が低下する等の問題があった。
【0006】
また、特許文献2には、透明基板上に、第1の金属成分としてモリブデンと、第2の金属成分としてタンタル、ジルコニウム、クロム及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、更に酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する金属シリサイド化合物からなる位相シフター膜を有するハーフトーン位相シフトマスクブランクが開示されている。そして、位相シフター膜の耐薬性やエッチング時の加工性の観点から、前記金属シリサイド化合物中の、第1の金属成分と第2の金属成分との比が、第1の金属成分:第2の金属成分=100:1~2:1(原子比)であることが好ましいことが開示されている。
この特許文献2に開示されている位相シフター膜は、位相シフトマスクを作製する際に、ドライエッチングにより位相シフター膜をパターニングすることを想定されたものであって、この位相シフター膜をウェットエッチングによりパターニングした場合、上述と同様に、位相シフター膜のウェットエッチング速度が遅く、ウェットエッチング液による基板へのダメージが発生し、透明基板の透過率が低下する等の問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、位相シフト膜の露光光の代表波長に対する透過率が高い場合であっても、フォトマスクが有する転写パターンの形成において、金属とケイ素とを含有する該位相シフト膜のウェットエッチング時間を短縮して基板のダメージを抑制でき、良好な断面形状やラインエッジラフネス(LER:Line Edge Roughness)を有し、耐薬性も良好な転写パターンが形成できるフォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法および表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこれらの問題を解決するための方策を鋭意検討した。まず、露光光(例えば、313nm~436nm)の代表波長に対して高い透過率を有する位相シフト膜とするため、前記代表波長における消衰係数が、モリブデンよりも小さい特性を有するジルコニウムに着目し、位相シフト膜を構成する材料として、モリブデンとジルコニウムとケイ素と、窒素を含むMoZrSi系材料を選択した。
【0009】
MoZrSi系材料を位相シフト膜として使用することは、半導体装置の製造などに使用されるLSI用のマスクブランクにおいては知られている。しかしながら、LSI用のマスクブランクに用いられるMoZrSi系材料を表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにそのまま適用しようとすると、位相シフト膜をウェットエッチングする際の時間がかかりすぎてしまい、基板へのダメージの発生や透明基板の透過率低下を十分に抑制できないことがわかった。このように、LSI用のマスクブランクに用いられるMoZrSi系材料を単に表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに適用しようとしても、所望の表示装置製造用の位相シフトマスクブランクを得ることはできなかった。
また、MoZrSi系材料の組成比によっては、位相シフト膜の耐薬性が悪く所望の洗浄耐性が得られず、また、反射率が高すぎて転写特性が低下してしまうこともわかった。
そこで、本発明者らはさらに鋭意検討を行い、MoZrSi系材料において、モリブデンとジルコニウムの原子比率と、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率とを指標として規定することが有効であることを見出した。すなわち、上記位相シフト膜をウェットエッチングによりパターニングする際に、位相シフト膜のウェットエッチング速度が高く、位相シフト膜をパターニングする際に、ウェットエッチング液による透明基板へのダメージが発生するのを抑制するために、MoZrSi系材料における、モリブデンとジルコニウムの原子比率、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率を調整することで、上記問題を解決できることが、本発明者による鋭意検討の結果わかった。本発明は、以上のような鋭意検討の結果なされたものであり、以下の構成を要する。
【0010】
(構成1)透明基板上に位相シフト膜を有するフォトマスクブランクであって、
前記フォトマスクブランクは、フォトマスクを形成するための原版であり、該フォトマスクは、前記位相シフト膜をウェットエッチングすることにより得られる位相シフト膜パターンを前記透明基板上に有するフォトマスクであって、
前記位相シフト膜は単層又は多層で構成され、かつ、該位相シフト膜の全体膜厚に対して50%以上100%以下が、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と窒素とを含む材料からなるMoZrSi系材料層を含み、
前記MoZrSi系材料層は、モリブデンとジルコニウムの原子比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:4(1:0.67~1:4)であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が70~88原子%であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【0011】
(構成2)前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対して透過率が20%以上80%以下であり、位相差が160°以上200°以下の光学特性を備えていることを特徴とする構成1記載のフォトマスクブランク。
【0012】
(構成3)前記位相シフト膜は、前記透明基板側の下層と前記下層の上に積層された上層とを含む積層膜であって、前記下層が前記MoZrSi系材料層であることを特徴とする構成1又は2記載のフォトマスクブランク。
【0013】
(構成4)前記上層は、露光光の代表波長において、前記下層における屈折率よりも小さく、かつ消衰係数よりも高い材料からなることを特徴とする構成3記載のフォトマスクブランク。
【0014】
(構成5)前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、15%以下となるように、前記上層と前記下層それぞれの屈折率、消衰係数、および膜厚が設定されていることを特徴とする構成4記載のフォトマスクブランク。
【0015】
(構成6)前記位相シフト膜上に、該位相シフト膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
【0016】
(構成7)構成1から5の何れかに記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記位相シフト膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0017】
(構成8)構成6記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記エッチングマスク膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0018】
(構成9)構成7または8に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記位相シフト膜パターンを含む転写パターンを、表示装置基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るフォトマスクブランクによれば、位相シフト膜の露光光の代表波長に対する透過率が高い場合であっても、フォトマスクが有する転写パターンの形成において、金属とケイ素とを含有する該位相シフト膜のウェットエッチング時間を短縮でき、良好な断面形状やラインエッジラフネス、耐薬性を有する転写パターンが形成できるフォトマスクブランクを得ることができる。
【0020】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法によれば、上記のフォトマスクブランクを用いてフォトマスクを製造する。このため、位相シフト膜の露光光の代表波長に対する透過率が高い場合であっても、位相シフト膜のウェットエッチング速度が速く、ウェットエッチング液による透明基板へのダメージを起因した透明基板の透過率の低下がなく、転写精度やラインエッジラフネス、耐薬性の良好な転写パターン(位相シフト膜パターン)を有したフォトマスクを製造することができる。このフォトマスクは、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0021】
また、本発明に係る表示装置の製造方法によれば、上記のフォトマスクの製造方法によって得られたフォトマスクを用いて表示装置を製造する。このため、微細なラインアンドスペースパターンやコンタクトホールを有する表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1にかかる位相シフトマスクブランクの膜構成(透明基板/位相シフト膜)を示す模式図である。
図2】実施の形態2にかかる位相シフトマスクブランクの膜構成(透明基板/位相シフト膜/エッチングマスク膜)を示す模式図である。
図3】実施の形態3にかかる位相シフトマスクの製造工程を示す模式図である。
図4】実施の形態4にかかる位相シフトマスクの製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1.2.
実施の形態1、2では、位相シフトマスクブランク(フォトマスクブランク)について説明する。実施の形態1の位相シフトマスクブランクは、位相シフトマスク(フォトマスク)を形成するための原版であり、この位相シフトマスクは、エッチングマスク膜に所望のパターンが形成されたエッチングマスク膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングすることにより得られる位相シフト膜パターンを含む転写パターンを透明基板上に有する位相シフトマスクである。また、実施の形態2の位相シフトマスクブランクは、位相シフトマスクを形成するための原版であり、この位相シフトマスクは、レジスト膜に所望のパターンが形成されたレジスト膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングすることにより得られる位相シフト膜パターンを含む転写パターンを透明基板上に有する位相シフトマスクである。本明細書における転写パターンは、透明基板上に形成された少なくとも1つの光学膜をパターニングすることによって得られる。上記の光学膜は、位相シフト膜やエッチングマスク膜とすることができ、その他の膜(遮光性の膜、反射抑制のための膜、導電性の膜など)がさらに含まれてもよい。すなわち、転写パターンは、パターニングされた位相シフト膜やエッチングマスク膜を含むことができ、パターニングされたその他の膜がさらに含まれてもよい。
【0024】
図1は実施の形態1にかかる位相シフトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
図1に示す位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された位相シフト膜30と、位相シフト膜30上に形成されたエッチングマスク膜40とを備える。
図2は実施の形態2にかかる位相シフトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
図2に示す位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された位相シフト膜30とを備える。
以下、実施の形態1および実施の形態2の位相シフトマスクブランク10を構成する透明基板20、位相シフト膜30およびエッチングマスク膜40について説明する。
【0025】
透明基板20は、露光光に対して透明である。透明基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透明基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透明基板20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透明基板20の熱変形に起因する位相シフト膜パターンの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される透明基板20は、一般に矩形状の基板であって、該透明基板の短辺の長さは300mm以上であるものが使用される。本発明の位相シフトマスクブランク10は、透明基板20の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズであっても、透明基板20上に形成される、微細な(例えば幅や径の寸法が2.0μm未満の)位相シフト膜パターンを安定して転写することができる、位相シフトマスク100を提供可能な位相シフトマスクブランク10である。
【0026】
位相シフト膜30は単層又は多層で構成され、該位相シフト膜30の全体膜厚に対して50%以上100%以下の部分が、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と、窒素を含む材料からなるMoZrSi系材料で構成される。MoZrSi系材料に、さらに、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)の遷移金属を含有しても構わない。
また、位相シフト膜30は、露光光の代表波長に対する透過率と位相差が、所定の値となるのであれば、該位相シフト膜30の全体膜厚に対して50%以下の部分を、MoZrSi系材料以外の材料で構成してもよい。この場合、MoZrSi系材料と同じウェットエッチング液でエッチングできる金属とケイ素を含有する金属シリサイド系材料が好ましい。例えば、MoZrSi系以外の金属シリサイド系材料としては、モリブデンシリサイド系材料(MoSi系材料)、ジルコニウムシリサイド系材料(ZrSi系材料)、タンタルシリサイド系材料(TaSi系材料)、タングステンシリサイド系材料(WSi系材料)、チタンシリサイド系材料(TiSi系材料)が挙げられる。上記MoSi系材料、ZrSi系材料、TaSi系材料、WSi系材料、TiSi系材料には、窒素、酸素、炭素等の元素を含んでも構わない。
上記MoZrSi系材料層において、モリブデンとジルコニウムの原子比率は、Mo:Zr=1.5:1~1:4、即ち、Mo:Zr=1:0.67~1:4とする。上記Mo:Zrの原子比率の範囲よりもZrの比率が小さいMoZrSi系材料層の場合、ウェットエッチング液に対するウェットエッチング速度が遅くなるので、透明基板に対してのダメージが発生しやすくなる。また、露光光の代表波長に対して高い透過率を有する位相シフト膜が得られにくくなる。また、上記Mo:Zrの原子比率の範囲よりもZrの比率が大きいMoZrSi系材料層の場合、露光光の代表波長に対して高い透過率(例えば、20%以上80%以下)を有する位相シフト膜30が得られやすくなるが、耐薬性(洗浄耐性)が十分ではなく、成膜時に発生する欠陥品質の観点からも好ましくない。モリブデンとジルコニウムの原子比率は、好ましくは、Mo:Zr=1:0.8~1:3、さらに好ましくは、Mo:Zr=1:1~1:2である。
【0027】
また、上記MoZrSi系材料層において、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率(Si/[Mo+Zr+Si])は、Si/[Mo+Zr+Si]=70~88原子%とすることが望ましい。Si/[Mo+Zr+Si]が70原子%未満の場合、露光光の代表波長に対する高い透過率(例えば、20%以上80%以下)および耐薬性を有する位相シフト膜30の実現が困難となる。また、Si/[Mo+Zr+Si]が88原子%超の場合、ウェットエッチング液に対するウェットエッチング速度が遅くなるので、透明基板20に対してのダメージが発生しやすくなり、透明基板20の荒れによる透過率の低下が生じやすくなる。モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率は、好ましくは、Si/[Mo+Zr+Si]=72~86原子%、さらに好ましくは、Si/[Mo+Zr+Si]=75~85原子%が望ましい。
この位相シフト膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
本実施形態における位相シフト膜30のMoZrSi系材料層は、モリブデンとジルコニウムの原子比率と、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率とが、上述した範囲を満たすものであるため、0.5Pa以内の良好な真空度で成膜を行うことができ、オーバーエッチングタイムを短くして透明基板20のダメージを抑制でき、良好な断面形状やLERを有し、耐薬性も良好な位相シフト膜パターン30aが形成できる。
【0028】
なお、この位相シフト膜30は柱状構造を有するものであってもよい。この柱状構造は、位相シフト膜30を断面SEM観察することにより確認することができる。すなわち、本発明における柱状構造は、位相シフト膜30を構成するモリブデンとジルコニウムとケイ素とを含有する遷移金属シリサイド化合物の粒子が、位相シフト膜30の膜厚方向(上記粒子が堆積する方向)に向かって伸びる柱状の粒子構造を有する状態をいう。この柱状構造を有する位相シフト膜30であれば、高い透過率を得られやすくなる点で好ましい。
【0029】
また、位相シフト膜30には、上述した窒素の他に、透過率を調整する目的で、酸素を含有してもよく、さらに、膜応力の低減やウェットエッチングレートを制御する目的で、ヘリウムや炭素等の他の元素を含有してもよい。
【0030】
露光光に対する位相シフト膜30の透過率は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(代表波長)に対して、好ましくは、20%以上80%以下であり、より好ましくは、25%以上75%以下であり、さらに好ましくは30%以上70%以下である。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有する。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
【0031】
露光光に対する位相シフト膜30の位相差は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、好ましくは、160°以上200°以下であり、より好ましくは、170°以上190°以下である。この性質により、露光光に含まれる代表波長の光の位相を160°以上200°以下に変える(シフトさせる)ことができる。このため、位相シフト膜30を透過した代表波長の光と透明基板20のみを透過した代表波長の光との間に、160°以上200°以下の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
【0032】
また、位相シフト膜30は、前記透明基板側の下層と下層の上に積層された上層とを含む積層膜であってもよい。位相シフト膜30が下層と上層とを含む積層膜の場合、位相シフト膜30の欠陥品質、ウェットエッチング液による透明基板20へのダメージの抑制、位相シフト膜30をウェットエッチングでパターニングした際のパターン断面形状を良好にする視点から、前記下層が前記MoZrSi系材料層であることが好ましい。位相シフト膜30における前記上層は、前記下層と同じMoZrSi系材料層であってもよく、また、異なっても構わない。前記上層が前記下層の材料と異なる場合、MoZrSi系材料と同じウェットエッチング液でエッチングできる金属シリサイド系材料、例えば、MoSi系材料、ZrSi系材料、TaSi系材料、WSi系材料、TiSi系材料を使用することができる。
【0033】
また、位相シフト膜30は、前記上層が、前記下層における露光光の代表波長(例えば、313nm~436nm)における屈折率nよりも小さく、かつ消衰係数kよりも高い材料からなる材料を選定することにより、露光光が入射する側の位相シフト膜30の裏面反射率を低減することができる。
具体的には、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、15%以下となるように、前記上層と前記下層の屈折率、消衰係数、および膜厚を設定するとよい。好ましくは、位相シフト膜30における、露光光の代表波長に対する裏面反射率が10%以下となるようにすることが望ましい。
【0034】
エッチングマスク膜40は、位相シフト膜30の上側に配置され、位相シフト膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する(位相シフト膜30とエッチング選択性が異なる)材料からなる。また、エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有してもよいし、位相シフト膜30側より入射される光に対する位相シフト膜30の膜面反射率が313nm~436nmの波長域において15%以下となるように膜面反射率を低減する機能を有してもよい。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成される。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)、又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、CrCONFが挙げられる。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
【0035】
エッチングマスク膜40が露光光の透過を遮る機能を有する場合、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上、さらに好ましくは4以上である。
光学濃度は、分光光度計またはODメーターなどを用いて測定することができる。
【0036】
エッチングマスク膜40は、機能に応じて組成が均一な単一の膜からなる場合であってもよいし、組成が異なる複数の膜からなる場合であってもよいし、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合であってもよい。
【0037】
なお、図1に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備えているが、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用することができる。
【0038】
次に、この実施の形態1および2の位相シフトマスクブランク10の製造方法について説明する。図1に示す位相シフトマスクブランク10は、以下の位相シフト膜形成工程とエッチングマスク膜形成工程とを行うことによって製造される。図2に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜形成工程によって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0039】
1.位相シフト膜形成工程
先ず、透明基板20を準備する。透明基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのいずれのガラス材料で構成されるものであってもよい。
【0040】
次に、透明基板20上に、スパッタリング法により、位相シフト膜30を形成する。
位相シフト膜30の成膜は、位相シフト膜30を構成する材料の主成分となるモリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)を含むMoZrSi系ターゲット、又はモリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と酸素(O)及び/又は窒素(N)を含むMoZrSiO系ターゲット、MoZrSiN系ターゲット、MoZrSiON系ターゲットをスパッタターゲットに使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、上記不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれて窒素を少なくとも含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。前記MoZrSi系ターゲット、MoZrSiO系ターゲット、MoZrSiN系ターゲット、MoZrSiON系ターゲットにおけるMo、Zr、Siは、スパッタリングにより成膜されるMoZrSi系材料層におけるモリブデンとジルコニウムの原子比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:4(1:0.67~1:4)であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が70~88原子%となるように調整される。また、位相シフト膜30は、上述したMo、Zr、Siの原子比率および含有比率を満たすように、Moターゲット、Zrターゲット、Siターゲットを用いて成膜するようにしてもよいし、MoSiターゲットとZrSiターゲットを用いて成膜するようにしてもよい。
【0041】
位相シフト膜30の組成及び厚さは、位相シフト膜30が上記の位相差及び透過率となるように調整される。位相シフト膜30の組成は、スパッタターゲットを構成する元素の含有比率(例えば、Mo、Zr、Siの含有率)、スパッタガスの組成及び流量などにより制御することができる。位相シフト膜30の厚さは、スパッタパワー、スパッタリング時間などにより制御することができる。また、位相シフト膜30は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、透明基板20の搬送速度によっても、位相シフト膜30の厚さを制御することができる。
【0042】
位相シフト膜30が、単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成及び流量を成膜プロセスの経過時間と共に変化させながら1回だけ行う。位相シフト膜30が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成及び流量を変えて複数回行う。スパッタターゲットを構成する元素の含有比率が異なるターゲットを使用して位相シフト膜30を成膜してもよい。成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
このようにして、実施の形態2の位相シフトマスクブランク10が得られる。実施の形態1の位相シフトマスクブランク10の製造には、以下のエッチングマスク膜形成工程をさらに行う。
【0043】
3.エッチングマスク膜形成工程
位相シフト膜30の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を必要に応じて行った後、スパッタリング法により、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。エッチングマスク膜40は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、透明基板20の搬送速度によっても、エッチングマスク膜40の厚さを制御することができる。
エッチングマスク膜40の成膜は、クロム又はクロム化合物(酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロム等)を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
【0044】
エッチングマスク膜40が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成及び流量を変えずに1回だけ行う。エッチングマスク膜40が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成及び流量を変えて複数回行う。エッチングマスク膜40が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成及び流量を成膜プロセスの経過時間と共に変化させながら1回だけ行う。
このようにして、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10が得られる。
【0045】
なお、図1に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備えているため、位相シフトマスクブランク10を製造する際に、エッチングマスク膜形成工程を行う。また、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクを製造する際は、エッチングマスク膜形成工程後に、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。また、図2に示す位相シフトマスクブランク10において、位相シフト膜30上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクを製造する際は、位相シフト膜形成工程後に、レジスト膜を形成する。
【0046】
この実施の形態1および2の位相シフトマスクブランク10は、ウェットエッチングによる断面形状が良好であり、透過率の高い位相シフト膜パターン30aを、短いエッチング時間で形成することができる。従って、ウェットエッチング液による透明基板20へのダメージを起因とした透明基板20の透過率の低下がなく、高精細な位相シフト膜パターン30aを精度よく転写することができる位相シフトマスク100を製造することができる位相シフトマスクブランク10が得られる。
【0047】
実施の形態3.4.
実施の形態3、4では、位相シフトマスク100の製造方法について説明する。
【0048】
図3は実施の形態3にかかる位相シフトマスク100の製造方法を示す模式図である。図4は実施の形態4にかかる位相シフトマスク100の製造方法を示す模式図である。
図3に示す位相シフトマスク100の製造方法は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造する方法であり、以下の位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜パターン40aを形成する工程(第1のエッチングマスク膜パターン形成工程)と、前記エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、位相シフト膜30をウェットエッチングして透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。そして、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程とをさらに含む。
【0049】
図4に示す位相シフトマスク100の製造方法は、図2に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造する方法であり、以下の位相シフトマスクブランク10の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクにして位相シフト膜30をウェットエッチングして、透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。
以下、実施の形態3および4にかかる位相シフトマスク100の製造工程の各工程を詳細に説明する。
【0050】
実施の形態3にかかる位相シフトマスク100の製造工程
1.第1のレジスト膜パターン形成工程
第1のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。
【0051】
2.第1のエッチングマスク膜パターン形成工程
第1のエッチングマスク膜パターン形成工程では、先ず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、図3(b)に示されるように、第1のレジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次の位相シフト膜パターン形成工程を行ってもよい。
【0052】
3.位相シフト膜パターン形成工程
第1の位相シフト膜パターン形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして位相シフト膜30をウェットエッチングして、図3(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。位相シフト膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。位相シフト膜30をエッチングするエッチング液は、位相シフト膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素とを含むエッチング液が挙げられる。
ウェットエッチングは、位相シフト膜パターン30aの断面形状を良好にするために、位相シフト膜パターン30aにおいて透明基板20が露出するまでの時間(ジャストエッチング時間)よりも長い時間(オーバーエッチング時間)で行うことが好ましい。オーバーエッチング時間としては、透明基板20への影響等を考慮すると、ジャストエッチング時間に、そのジャストエッチング時間の10~20%の時間を加えた時間内とすることが好ましい。
【0053】
4.第2のレジスト膜パターン形成工程
第2のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜パターン30aが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光帯パターンや、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンなどである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対する位相シフト膜30の透過率によっては、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。
【0054】
5.第2のエッチングマスク膜パターン形成工程
第2のエッチングマスク膜パターン形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図3(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。すなわち、実施の形態3にかかる位相シフトマスク100が有する転写パターンは、位相シフト膜パターン30aおよび第2のエッチングマスク膜パターン40bを含むことができる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明したが、エッチングマスク膜40が単に、位相シフト膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程は行われず、位相シフト膜パターン形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターンを剥離して、位相シフトマスク100を作製する。すなわち、実施の形態3にかかる位相シフトマスク100が有する転写パターンは、位相シフト膜パターン30aのみで構成されてもよい。該転写パターンは、他の膜パターンをさらに含むこともできる。他の膜としては、例えば、反射を抑制する膜、導電性の膜などが挙げられる。
【0055】
この実施の形態3の位相シフトマスク100の製造方法によれば、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10を用いるため、ウェットエッチング液による透明基板20へのダメージを起因とした透明基板20の透過率の低下がなく、エッチング時間を短縮でき、断面形状やラインエッジラフネス、耐薬性が良好な位相シフト膜パターン30aを形成することができる。従って、高精細な位相シフト膜パターン30aを精度よく転写することができる位相シフトマスク100を製造することができる。このように製造された位相シフトマスク100は、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0056】
実施の形態4にかかる位相シフトマスク100の製造工程
1.レジスト膜パターン形成工程
レジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態2の位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、実施の形態3で説明したのと同様である。なお、必要に応じてレジスト膜を形成する前に、位相シフト膜30と密着性を良好にするため、位相シフト膜30に表面改質処理を行なうようにしても構わない。上述と同様に、レジスト膜を形成した後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図4(a)に示されるように、位相シフト膜30上にレジスト膜パターン50を形成する。
2.位相シフト膜パターン形成工程
位相シフト膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、図4(b)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。これにより、転写パターンが形成される。位相シフト膜パターン30aや位相シフト膜30をエッチングするエッチング液やオーバーエッチング時間は、実施の形態3で説明したものと同様である。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、レジスト膜パターン50を剥離する(図4(c))。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。なお、本実施の形態にかかる位相シフトマスクが有する転写パターンは、位相シフト膜パターン30aのみで構成されているが、他の膜パターンをさらに含むこともできる。他の膜としては、例えば、反射を抑制する膜、導電性の膜などが挙げられる。
この実施の形態4の位相シフトマスク100の製造方法によれば、実施の形態2の位相シフトマスクブランク10を用いるため、ウェットエッチング液による透明基板20へのダメージを起因とした透明基板20の透過率の低下がなく、エッチング時間を短くでき、断面形状やラインエッジラフネス、耐薬性が良好な位相シフト膜パターン30aを形成することができる。従って、高精細な位相シフト膜パターン30aを精度よく転写することができる位相シフトマスク100を製造することができる。このように製造された位相シフトマスク100は、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0057】
実施の形態5.
実施の形態5では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、上述した位相シフトマスクブランク10を用いて製造された位相シフトマスク100を用い、または上述した位相シフトマスク100の製造方法によって製造された位相シフトマスク100を用いる工程(マスク載置工程)と、表示装置用基板上のレジスト膜に、位相シフト膜パターン30aを含む転写パターンを露光転写する工程(露光工程)とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0058】
1.載置工程
載置工程では、実施の形態3または4で製造された位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージに載置する。ここで、位相シフトマスク100は、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0059】
2.パターン転写工程
パターン転写工程では、位相シフトマスク100に露光光を照射して、表示装置用基板上に形成されたレジスト膜に、位相シフト膜パターン30aを含む転写パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、365nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
【0060】
この実施の形態5の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なラインアンドスペースパターンやコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
【実施例
【0061】
実施例1.A.位相シフトマスクブランク
実施例1の位相シフトマスクブランク10を製造するため、先ず、透明基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
【0062】
その後、合成石英ガラス基板を、一方の主表面を下側に向けてトレイ(図示せず)に搭載し、インライン型スパッタリング装置のチャンバー内に搬入した。
透明基板20の他方の主表面上に位相シフト膜30を形成するため、まず、スパッタリングガス圧力を0.5Paにした状態の第1チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、MoとZrとSiの原子比率が、Mo:Zr:Si=10:10:80からなるMoZrSiターゲットを使用して、反応性スパッタリングにより、透明基板20の主表面上にモリブデンとジルコニウムとケイ素と窒素を含有するMoZrSiN系の位相シフト膜30を膜厚143nm成膜した。なお、スパッタリングのための上記ターゲットにおける原子比率は、一例であり、所望の位相シフト膜30の組成に応じて、適宜選択することができる。
【0063】
次に、位相シフト膜30付きの透明基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングにより、位相シフト膜30上にクロムと窒素を含有するクロム窒化物(CrN)を形成した(膜厚15nm)。次に、第3チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタンガスの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングによりCrN上にクロムと炭素を含有するクロム炭化物(CrC)を形成した(膜厚60nm)。最後に、所定の真空度にした状態の第4チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスとメタンガスの混合ガスと窒素(N)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングによりCrC上にクロムと炭素と酸素と窒素を含有するクロム炭化酸化窒化物(CrCON)を形成した(膜厚30nm)。以上のように、位相シフト膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成した。
このようにして、透明基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
【0064】
得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30の屈折率と消衰係数について、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に位相シフト膜30が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いて測定した。
その結果、MoZrSiN系の位相シフト膜の屈折率nは、2.45(波長405nm)、消衰係数kは、0.11(波長405nm)であった。
また、得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30の表面について、レーザーテック社製のMPM-100により透過率、位相差を測定した。位相シフト膜30の透過率、位相差の測定は、上述と同様に、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に位相シフト膜30が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。位相シフト膜30の透過率、位相差は、エッチングマスク膜40を形成する前に位相シフト膜付き基板(ダミー基板)をチャンバーから取り出し、測定した。その結果、透過率は50%(波長:405nm)、位相差は180°(波長:405nm)、裏面反射率は15.4%(波長:405nm)、表面反射率は21.3%(波長405nm)であった。
【0065】
また、得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30について、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。
位相シフトマスクブランク10に対するXPSによる深さ方向の組成分析結果において、位相シフト膜30は、透明基板20と位相シフト膜30との界面の組成傾斜領域、および、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40との界面の組成傾斜領域を除いて、深さ方向に向かって、各構成元素の含有率はほぼ一定であり、Moが3原子%、Zrが5原子%、Siが42原子%、Nが47原子%、Oが3原子%であった。また、モリブデンとジルコニウムの原子比率は、1:1であり、Mo:Zr=1:0.67~1:4の範囲内であった。また、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が、84原子%であり、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲内であった。なお、位相シフト膜30に酸素が含有されているのは、成膜時のチャンバー内に微量の酸素が存在していたことによるものと考えられる。
【0066】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ホール径が1.5μmのホールパターンのレジスト膜パターンを形成した。
【0067】
その後、レジスト膜パターンをマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜をウェットエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成した。
【0068】
その後、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜30をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン30aを形成した。このウェットエッチングは、断面形状を垂直化するため、かつ、要求される微細なパターンを形成するために、10%のオーバーエッチング時間で行った。
その後、レジスト膜パターンを剥離した。
【0069】
その後、レジスト塗布装置を用いて、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うように、フォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に、遮光帯を形成するための第2のレジスト膜パターン60を形成した。
【0070】
その後、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により、転写パターン形成領域に形成された第1のエッチングマスク膜パターン40aをウェットエッチングした。
その後、第2のレジスト膜パターン60を剥離した。
【0071】
このようにして、透明基板20上の転写パターン形成領域に、ホール径が1.5μmの位相シフト膜パターン30aと、位相シフト膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された位相シフトマスク100を得た。
【0072】
得られた位相シフトマスクの断面を走査型電子顕微鏡により観察した。断面視において、位相シフトマスクの位相シフト膜パターン30aのエッジと透明基板20の主表面とがなす角度は76°であり、位相シフト膜パターン30aは垂直に近い断面形状を有していた。また、この位相シフト膜パターン30aを上から観察し、該位相シフト膜パターン30aのLERを観察したところ、位相シフト膜パターン(ホールパターン)30aのエッジは滑らかで略直線状であり、良好なものであった。すなわち、上面視した位相シフト膜パターン30aのエッジにおいては、目立った凹凸形状は確認されなかった。実施例1の位相シフトマスクに形成された位相シフト膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。また、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であった。また、得られた位相シフトマスク100を電子線回折で観察したところ、アモルファス構造となっていたことを確認できた。また、位相シフト膜パターン30aの、エッチングマスク膜パターン40bとの界面、および、透明基板20との界面のいずれにも、エッチング液などの浸み込みは見られず、耐薬性も良好であった。そのため、313nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線を少なくとも1つ以上含む複合光の露光光において、優れた位相シフト効果を有する位相シフトマスク100が得られた。
このため、実施例1の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。また、位相シフト膜30(位相シフト膜パターン30a)は、真空度が0.5Pa以下と低い状態で成膜された緻密な膜となっていることで、露光光における耐光性も良好となることが期待できる。
【0073】
実施例2~4.
A.位相シフトマスクブランク
実施例2~4では、位相シフト膜30以外は、実施例1と同様の構造と方法で、位相シフトマスクブランク10、位相シフトマスク100を製造した。実施例2~4において、上述の実施例1において位相シフト膜30を成膜する際のスパッタターゲットのMo、Zr、Siの原子比率を適宜調整した。なお、位相シフト膜30は、波長405nmにおける透過率が20%以上80%以下、位相差が160°~200°の範囲となるように、適宜、膜厚を調整した。
実施例1と同様に、得られたMoZrSiN系の位相シフト膜30の組成分析を行った結果、MoとZrとの原子比率は以下の通りとなった。
実施例2 Mo:Zr=1.5:1(1:0.67)、
実施例3 Mo:Zr=1:2、
実施例4 Mo:Zr=1:4、
【0074】
このように、実施例2~4のいずれにおいても、Mo:Zr=1:0.67~1:4の範囲内であった。また、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率は、実施例2~4のいずれにおいても、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲内であった。
【0075】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例1と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターン30aの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。その結果、実施例2~4のいずれにおいても、断面視したときの位相シフトマスク100の位相シフト膜パターン30aのエッジと透明基板20の主表面とがなす角度は70°を超えており、いずれの位相シフト膜パターン30aも垂直に近い断面形状を有していた。また、実施例1と同様に、これらの位相シフト膜パターン30aのLERを観察したところ、実施例2~4のいずれにおいても、位相シフト膜パターン(ホールパターン)30aのエッジは滑らかで略直線状であり、良好なものであった。すなわち、上面視した位相シフト膜パターン30aのエッジにおいては、目立った凹凸形状は確認されなかった。実施例2~4の位相シフトマスクに形成された位相シフト膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。また、実施例2~4のいずれにおいても、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であった。また、得られた位相シフトマスク100を電子線回折で観察したところ、実施例2~4のいずれにおいても、アモルファス構造となっていたことを確認できた。また、実施例2~4のいずれにおいても、位相シフト膜パターン30aの、エッチングマスク膜パターン40bとの界面、および、透明基板20との界面のいずれにもエッチング液などの浸み込みは見られず、耐薬性も良好であった。そのため、実施例2~4のいずれにおいても、313nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光の露光光において、優れた位相シフト効果を有する位相シフトマスク100が得られた。
このため、実施例2~4の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。また、位相シフト膜30(位相シフト膜パターン30a)は、真空度が0.5Pa以下と低い状態で成膜されて緻密な膜となっていることで、露光光における耐光性も良好となることが期待できる。
【0076】
実施例5.
A.位相シフトマスクブランク
実施例5の位相シフトマスクブランク10は、露光光における位相シフト膜30の裏面反射率を低減させた位相シフトマスクブランク10である。上述の実施例1における位相シフト膜30の成膜においては、まず、スパッタリングガス圧力を0.5Paにした状態の第1チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、MoとZrとSiの原子比率が、Mo:Zr:Si=10:10:80からなるMoZrSiターゲットを使用して、反応性スパッタリングにより、透明基板20の主表面上にモリブデンとジルコニウムとケイ素と窒素を含有するMoZrSiN系の下層膜を膜厚105nm成膜した。なお、スパッタリングのための上記ターゲットにおける原子比率は、一例であり、所望の位相シフト膜30の組成に応じて、適宜選択することができる。
その後、スパッタリングガス圧力を1.6Paにした状態の第2チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスと、一酸化窒素(NO)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、MoとSiの原子比率が、Mo:Si=8:92からなるMoSiターゲットを使用して、反応性スパッタリングにより、MoZrSiN系の下層膜上に、モリブデンとケイ素と酸素と窒素を含有するMoSiON系の上層膜を44nm成膜し、MoZrSiN系の下層膜とMoSiON系の上層膜とを有する積層膜からなる位相シフト膜30を形成した。
次に、実施例1と同様にして、位相シフト膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成し、透明基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
【0077】
得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30を構成する下層膜と上層膜における屈折率と消衰係数について、同一のトレイにセットして作製されたダミー基板を用いて測定した。
その結果、MoZrSiN系の下層膜の屈折率nは、2.45(波長:405nm)、消衰係数kは、0.11(波長:405nm)であった。また、MoSiN系の上層膜の屈折率nは、2.24(波長:405nm)、消衰係数kは、0.14(波長:405nm)であった。
また、得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30について、実施例1と同様に透過率と位相差を測定した。その結果、透過率は51%(波長:405nm)、位相差は180°(波長:405nm)、裏面反射率は9.8%(波長:405nm)、表面反射率は14.9%(波長:405nm)であった。
【0078】
また、実施例1と同様に、得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30について、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。
位相シフトマスクブランク10に対するXPSによる深さ方向の組成分析結果において、位相シフト膜30は、透明基板20と位相シフト膜30との界面の組成傾斜領域、および、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40との界面の組成傾斜領域を除いて、深さ方向に向かって、各構成元素の含有率はほぼ一定であり、下層膜は、Moが3原子%、Zrが5原子%、Siが42原子%、Nが47原子%、Oが3原子%であった。また、モリブデンとジルコニウムの原子比率は、Mo:Zr=1:1であり、Mo:Zr=1:0.67~1:4の範囲内であった。また、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が、84原子%であり、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲内であった。また、上層膜は、Moが6原子%、Siが41原子%、Nが47原子%、Oが6原子%であった。なお、下層膜に酸素が含有されているのは、成膜時のチャンバー内に微量の酸素が存在していたことによるものと考えられる。
【0079】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターン30aの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。断面視において、位相シフトマスク100の位相シフト膜パターン30aのエッジと透明基板20の主表面とがなす角度は72°で70°を超えており、位相シフト膜パターン30aは垂直に近い断面形状を有していた。また、実施例1と同様に、この位相シフト膜パターン30aのLERを観察したところ、位相シフト膜パターン(ホールパターン)30aのエッジは滑らかで略直線状であり、良好なものであった。すなわち、上面視した位相シフト膜パターン30aのエッジにおいては、目立った凹凸形状は確認されなかった。実施例5の位相シフトマスク100に形成された位相シフト膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。また、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であった。また、得られた位相シフトマスク100を電子線回折で観察したところ、アモルファス構造となっていたことを確認できた。また、位相シフト膜パターン30aの、エッチングマスク膜パターン40bとの界面、および、透明基板20との界面とのいずれにもエッチング液などの浸み込みは見られず、耐薬性も良好であった。そのため、313nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光の露光光において、優れた位相シフト効果を有する位相シフトマスク100が得られた。
このため、実施例5の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。また、位相シフト膜30(位相シフト膜パターン30a)は、真空度が0.5Pa以下と低い状態で成膜された緻密な膜となっていることで、露光光における耐光性も良好となることが期待できる。
【0080】
比較例1.
A.位相シフトマスクブランク
比較例1では、位相シフト膜30以外は、実施例1と同様の構造と方法で、位相シフトマスクブランク10、位相シフトマスク100を製造した。比較例1において、上述の実施例1において位相シフト膜30を成膜する際のスパッタターゲットのMo、Zr、Siの原子比率を適宜調整した。なお、位相シフト膜は、波長405nmにおける透過率が20%以上80%以下、位相差が160°~200°の範囲となるように、適宜、膜厚を調整した。
実施例1と同様に、得られたMoZrSiN系の位相シフト膜30の組成分析を行った結果、MoとZrとの原子比率は以下の通りとなった。
比較例1
Mo:Zr=1:1、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=90原子%
このように、比較例1においては、Mo:Zr=1:0.67~1:4の範囲内であっったが、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲外であった。
【0081】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例1と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターン30aの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。
その結果、比較例1においては、位相シフト膜パターン30aの断面形状は他の実施例と比べて大きな差はなく、良好であったが、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面は荒れており、目視においても白濁した状態であった。従って、透明基板20の表面荒れによる透過率の低下は著しかった。
このため、比較例1の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを転写することはできないことが予想される。
【0082】
比較例2.
A.位相シフトマスクブランク
比較例2では、位相シフト膜30以外は、実施例1と同様の構造と方法で、位相シフトマスクブランク10、位相シフトマスク100を製造した。比較例2において、上述の実施例1において位相シフト膜30を成膜する際のスパッタターゲットのMo、Zr、Siの原子比率を適宜調整した。なお、位相シフト膜30は、波長405nmにおける透過率が20%以上80%以下、位相差が160°~200°の範囲となるように、適宜、膜厚を調整した。
実施例1と同様に、得られたMoZrSiN系の位相シフト膜30の組成分析を行った結果、MoとZrとの原子比率は以下の通りとなった。
比較例2
Mo:Zr=1:1、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=65原子%
このように、比較例2においては、Mo:Zr=1:0.67~1:4の範囲内であっったが、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲外であった。
【0083】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例1と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターン30aの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。
その結果、比較例2においては、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であったが、位相シフト膜パターン30aの断面形状は悪く、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とはならなかった。
このため、比較例2の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを転写することはできないことが予想される。
【0084】
比較例3.
A.位相シフトマスクブランク
比較例3では、位相シフト膜30以外は、実施例1と同様の構造と方法で、位相シフトマスクブランク10、位相シフトマスク100を製造した。比較例3において、上述の実施例1において位相シフト膜30を成膜する際のスパッタターゲットのMo、Zr、Siの原子比率を適宜調整した。
実施例1と同様に、得られたMoZrSiN系の位相シフト膜30の組成分析を行った結果、比較例3においては、原子比率はMo:Zr=2:1であり、1:0.67~1:4の範囲外であった。一方、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率は、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲内であった。
【0085】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例1と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターン30aの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。
その結果、比較例3においては、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であった。また、位相シフト膜パターン30aの断面形状は他の実施例と比べて大きな差はなく、良好であった。一方、波長405nmにおける透過率が15%を下回っており、十分な透過率が得られなかった。他の実施例や比較例と同様に膜厚の調整を行ったが、依然として十分な透過率を得ることはできなかった。
このため、比較例3の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを転写することはできないことが予想される。
【0086】
比較例4.
A.位相シフトマスクブランク
比較例4では、位相シフト膜30以外は、実施例1と同様の構造と方法で、位相シフトマスクブランク10、位相シフトマスク100を製造した。比較例4において、上述の実施例1において位相シフト膜を成膜する際のスパッタターゲットのMo、Zr、Siの原子比率を適宜調整した。なお、位相シフト膜30は、波長405nmにおける透過率が20%以上80%以下、位相差が160°~200°の範囲となるように、適宜、膜厚を調整した。
実施例1と同様に、得られたMoZrSiN系の位相シフト膜30の組成分析を行った結果、比較例4においては、モリブデンとジルコニウムとの原子比率が、Mo:Zr=1:5であり、1:0.67~1:4の範囲外であった。一方、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率は、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=70~88原子%の範囲内であった。
【0087】
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述の実施例1と同様にして、位相シフトマスク100を作製し、位相シフト膜パターンの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。
その結果、比較例4においては、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は無視できる状態であったが、十分な耐薬性が得られずに、位相シフト膜パターン30aの断面形状は他の実施例と比べて悪化していた。また、波長405nmにおける表面反射率および裏面反射率はいずれも高く、十分な転写精度が得られないものであった。
このため、比較例4の位相シフトマスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを転写することはできないことが予想される。
【符号の説明】
【0088】
10…位相シフトマスクブランク、20…透明基板、30…位相シフト膜、30a…位相シフト膜パターン、40…エッチングマスク膜、40a…第1のエッチングマスク膜パターン、40b…第2のエッチングマスク膜パターン、50…第1のレジスト膜パターン、60…第2のレジスト膜パターン、100…位相シフトマスク
図1
図2
図3
図4