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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】サンプリングシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20240729BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240729BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 C
C12M1/34 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021014849
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118378
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/163454(WO,A1)
【文献】特開平8-280385(JP,A)
【文献】特開2020-110188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/93775(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/86657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養デバイスの液体のサンプルを採取するサンプリング流路を備えるサンプリングシステムであって、
前記サンプルと接触するように前記サンプリング流路に設けられたバイオセンサと、
前記サンプリング流路の前記バイオセンサよりも上流側に洗浄液を導入する導入路と、
前記サンプリング流路における前記導入路との連結部よりも上流側に設けられて前記サンプルと接触して当該サンプル中のガス濃度を測定するガス濃度センサと、を備える、サンプリングシステム。
【請求項2】
請求項1記載のサンプリングシステムであって、
前記サンプリング流路は、
前記バイオセンサが設けられたサンプル流通路と、
前記細胞培養デバイスである第1細胞培養デバイスの第1サンプルを前記連結部に導くための第1サンプル導入路と、
第2細胞培養デバイスの第2サンプルを前記サンプル流通路における前記バイオセンサよりも上流側に導くための第2サンプル導入路と、を有し、
前記ガス濃度センサは、前記第1サンプル導入路と前記第2サンプル導入路とのそれぞれに設けられている、サンプリングシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサンプリングシステムであって、
前記ガス濃度センサは、
前記サンプル中のO濃度を測定するOセンサと、
前記サンプル中のCO濃度を測定するCOセンサと、を含む、サンプリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、細胞培養デバイスから液体のサンプルを採取するサンプリング流路を備えるサンプリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9442047号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サンプリングシステムは、サンプルと接触するようにサンプリング流路に設けられたバイオセンサ及びガス濃度センサと、サンプリング流路のバイオセンサ及びガス濃度センサよりも上流側に洗浄液を導入する導入路と、を備えることがある。この場合、例えば、サンプリング流路にサンプルを流通させてバイオセンサ及びガス濃度センサにサンプルを接触させるサンプリング工程と、バイオセンサの触媒の劣化を防止するために導入路からサンプリング流路に洗浄液を導入してバイオセンサに付着したサンプルを除去する洗浄工程とが行われる。
【0005】
洗浄工程が終了すると、サンプリング流路における連結部よりも下流側と導入路とには洗浄液が残存する。その後、サンプリング工程を行うと、サンプルは、サンプリング流路に残存している洗浄液を押し流す。しかしながら、導入路の洗浄液は残存したままの状態になる。そうすると、サンプリング工程の際に、導入路の洗浄液が連結部においてサンプルに混入する可能性がある。サンプルに洗浄液が混入した場合、ガス濃度センサの測定精度が低下する。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、ガス濃度センサの測定精度の低下を抑えつつバイオセンサに付着したサンプルを除去することができるサンプリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、細胞培養デバイスの液体のサンプルを採取するサンプリング流路を備えるサンプリングシステムであって、前記サンプルと接触するように前記サンプリング流路に設けられたバイオセンサと、前記サンプリング流路の前記バイオセンサよりも上流側に洗浄液を導入する導入路と、前記サンプリング流路における前記導入路との連結部よりも上流側に設けられて前記サンプルと接触して当該サンプル中のガス濃度を測定するガス濃度センサと、を備える、サンプリングシステムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サンプリング流路における導入路との連結部よりも上流側にガス濃度センサを設けているため、洗浄液が混入されていないサンプル中のガス濃度をガス濃度センサによって測定することができる。よって、ガス濃度センサの測定精度の低下を抑えることができる。また、バイオセンサに付着したサンプルは、導入路からサンプリング流路に導入した洗浄液によって除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの概略構成図である。
図2】細胞培養デバイスの要部の構成説明図である。
図3図1のサンプリングシステムを用いたサンプリング方法を説明するためのフローチャートである。
図4図3のサンプリング工程を説明するためのフローチャートである。
図5】サンプリング方法の第1動作説明図である。
図6】サンプリング方法の第2動作説明図である。
図7】サンプリング方法の第3動作説明図である。
図8】サンプリング方法の第4動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るサンプリングシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るサンプリングシステム10は、複数の細胞培養デバイス200の液体のサンプルを採取してサンプル中の所定成分の濃度を測定するものである。サンプリングシステム10は、サンプリングキット12と、サンプリングキット12が着脱可能な回路制御装置14と、コントローラ16とを備える。サンプリングキット12は、使い捨てのディスポーザブル品であり、回路制御装置14は、再利用可能なリユース品である。
【0012】
本実施形態において、サンプリングキット12には、複数の細胞培養デバイス200として、第1細胞培養デバイス200Aと第2細胞培養デバイス200Bとが接続される。図2に示すように、細胞培養デバイス200は、細胞を培養するためのバイオリアクタ202を有する。培養する細胞は、生体組織から分離したものであって、例えば、血液に含まれる細胞(T細胞等)、幹細胞(ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等)が用いられる。
【0013】
バイオリアクタ202は、いわゆる中空糸型バイオリアクタとして構成されている。バイオリアクタ202は、多数(複数)の中空糸204と、これら中空糸204を収容する円筒状のハウジング206とを備える。中空糸204を構成する壁部には、図示しない複数の細孔が形成されている。細孔は、中空糸204の内腔であるIC(intra capillary)領域とハウジング206内における中空糸204の外側に位置するEC(extra capillary)領域とを連通する。細孔の直径は、高分子(細胞等)の通過を阻止する一方で低分子(例えば、水、イオン、酸素、乳酸塩等)を通過させることができるような大きさに設定されている。
【0014】
ハウジング206には、IC入口ポート208、IC出口ポート210、EC入口ポート212、EC出口ポート214が設けられている。IC入口ポート208は、ハウジング206の一端に設けられている。IC入口ポート208は、IC入口流路216から導かれた液体(細胞を含む溶液や培地等)をバイオリアクタ202のIC領域に導入する。IC出口ポート210は、ハウジング206の他端に設けられている。IC出口ポート210は、バイオリアクタ202のIC領域を流通した液体をIC出口流路218に導出させる。
【0015】
EC入口ポート212及びEC出口ポート214は、ハウジング206の外周面に設けられている。EC入口ポート212は、EC入口流路220から導かれた培地をバイオリアクタ202のEC領域に導入する。EC出口ポート214は、バイオリアクタ202のEC領域を流通した培地をEC出口流路222に導出させる。培地としては、生体の細胞に応じて適切なものが選択されればよく、例えば、緩衝塩類溶液(Balanced Salt Solution:BSS)を基本溶液として、種々のアミノ酸、ビタミン類及び血清等を加えて調製されたものが用いられる。
【0016】
EC出口流路222には、EC領域を流通した培地をサンプリングキット12に導くための接続ライン224が接続している。接続ライン224には、無菌フィルタ226とサンプリングコネクタ228とが設けられている。無菌フィルタ226は、細胞培養デバイス200のうち無菌フィルタ226よりもEC出口流路222側の部分を無菌に保持する。サンプリングコネクタ228には、サンプリングキット12の導入コネクタ42が着脱可能である。
【0017】
本実施形態において、サンプリングシステム10は、サンプルとして、細胞培養デバイス200のEC領域を流通した培地を採取する。ただし、サンプリングシステム10が採取するサンプルは、EC領域を流通した培地に限定されず、IC領域を流通した培地や他の液体等であってもよい。
【0018】
図1において、サンプリングキット12は、洗浄液収容部18、標準液収容部20、廃液収容部22、接続回路24、2つの第1センサ26及び1つの第2センサ28(バイオセンサ)を備える。
【0019】
洗浄液収容部18、標準液収容部20及び廃液収容部22は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンのような軟質樹脂製の可撓性を有する材料により袋状に構成されたものである。ただし、洗浄液収容部18、標準液収容部20及び廃液収容部22は、液体が収容可能なものであれば適宜変更可能である。
【0020】
洗浄液収容部18には、洗浄液が収容されている。洗浄液としては、緩衝液又は生理食塩水が用いられる。なお、緩衝液としては、PBS(Phosphate Buffered Salts)及びTBS(Tris-Buffered Saline)等が挙げられる。ただし、洗浄液は、上述したものに限定されない。
【0021】
標準液収容部20は、標準液が収容されている。標準液は、第1センサ26及び第2センサ28を校正するための液体である。具体的に、標準液は、PH値、O値(酸素濃度)、CO値(二酸化炭素濃度)、グルコース値(グルコース濃度)、乳酸値(乳酸濃度)が規定値に設定された液体である。
【0022】
廃液収容部22は、接続回路24を流通した廃液(サンプル、洗浄液及び標準液)を収容するためのものである。廃液収容部22は、サンプリングキット12の使用前の状態で、内部に液体が収容されていない空バッグである。
【0023】
接続回路24は、細胞培養デバイス200のサンプルを採取するサンプリング流路30と、洗浄液をサンプリング流路30に導くための導入路32と、標準液を導入路32に導くための標準液導入路33とを有する。サンプリング流路30は、第1サンプル導入路34a、第2サンプル導入路34b及びサンプル流通路36を含む。
【0024】
第1サンプル導入路34aは、第1細胞培養デバイス200Aのサンプル(培地)をサンプル流通路36に導く。第1サンプル導入路34aの一端には、第1細胞培養デバイス200Aのサンプリングコネクタ228に装着される導入コネクタ42が設けられている(図2参照)。第1サンプル導入路34aの他端は、サンプル流通路36の一端に連結している。以下、第1サンプル導入路34aとサンプル流通路36との連結部を第1連結部38という。
【0025】
第2サンプル導入路34bは、第2細胞培養デバイス200Bのサンプル(培地)をサンプル流通路36に導く。第2サンプル導入路34bの一端には、第2細胞培養デバイス200Bのサンプリングコネクタ228に装着される導入コネクタ42が設けられている(図2参照)。第2サンプル導入路34bの他端は、サンプル流通路36の途中部位に接続している。以下、第2サンプル導入路34bとサンプル流通路36との連結部を第2連結部40という。
【0026】
サンプル流通路36は、第1連結部38と第2連結部40とを互いに接続する中間流路44と、第2連結部40と廃液収容部22とを互いに接続するセンサ流路46とを含む。
【0027】
導入路32の一端は、洗浄液収容部18に接続している。導入路32の他端は、第1連結部38に接続している。標準液導入路33の一端は、標準液収容部20に接続している。標準液導入路33の他端は、導入路32の途中部位に接続している。以下、導入路32と標準液導入路33との連結部を第3連結部48という。
【0028】
一方の第1センサ26は、第1サンプル導入路34aに設けられている。他方の第1センサ26は、第2サンプル導入路34bに設けられている。第1センサ26は、一体成形品であって、PHセンサ60とガス濃度センサ62とを含む。PHセンサ60は、サンプル中のPHを測定する。ガス濃度センサ62は、サンプル中のガス濃度を測定する。具体的に、ガス濃度センサ62は、サンプル中のO濃度を測定するOセンサ64と、サンプル中のCO濃度を測定するCOセンサ66とを含む。
【0029】
第2センサ28は、センサ流路46に設けられている。第2センサ28は、例えば、酵素センサ等のバイオセンサである。第2センサ28は、一体成形品であって、サンプル中のグルコース濃度を測定するグルコースセンサ68と、サンプル中の乳酸濃度を測定する乳酸センサ70とを含む。第2センサ28は、酵素センサに限定されず、非酵素型グルコースセンサを含んでもよい。また、第2センサ28の測定項目は、グルコース、乳酸に限定されず、グルタミン酸等を含んでもよい。
【0030】
回路制御装置14は、複数のクランプ72と1つのポンプ74とを備える。本実施形態において、回路制御装置14は、複数のクランプ72として、第1クランプ72a、第2クランプ72b、第3クランプ72c、第4クランプ72d及び第5クランプ72eを有する。
【0031】
第1クランプ72aは、サンプリングキット12を回路制御装置14に装着した状態(以下、「セット状態」という)で、第1サンプル導入路34aに対向するように配置され、第1サンプル導入路34aの内部流路を開閉する。第2クランプ72bは、セット状態で、第2サンプル導入路34bに対向するように配置され、第2サンプル導入路34bの内部流路を開閉する。第3クランプ72cは、セット状態で、センサ流路46における第2センサ28と廃液収容部22との間の部分に対向するように配置され、センサ流路46の当該部分の内部流路を開閉する。第4クランプ72dは、セット状態で、導入路32における第3連結部48よりも上流側の部分に対向するように配置され、導入路32の当該部分の内部流路を開閉する。第5クランプ72eは、セット状態で、標準液導入路33に対向するように配置され、標準液導入路33の内部流路を開閉する。
【0032】
ポンプ74は、接続回路24の流路(チューブ)を構成する壁部をしごくように回転することにより、内部の液体に流動力を付与する。ポンプ74は、セット状態で、センサ流路46における第2連結部40と第2センサ28との間の部分に接触するように配置されている。ポンプ74は、センサ流路46を流通する液体に第2センサ28(廃液収容部22)に向かう方向の流動力が付与されるように第1回転動作(矢印R1方向の回転動作)をする。なお、ポンプ74は、センサ流路46を流通する液体に第2連結部40に向かう方向の流動力が付与されるように第2回転動作(矢印R2方向の回転動作)をしてもよい。
【0033】
コントローラ16(制御部)は、図示しないプロセッサ、メモリ、入出力インターフェースを有するコンピュータである。コントローラ16は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することで、システム全体の総合的な制御を行う。コントローラ16は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組み合わせからなる通信手段によって、回路制御装置14に接続されている。具体的に、コントローラ16は、複数のクランプ72及びポンプ74の動作を制御する。
【0034】
次に、サンプリングシステム10を用いたサンプリング方法について説明する。
【0035】
図3に示すように、サンプリング方法は、準備工程、プライミング工程、サンプリング工程、洗浄工程及び校正工程を含む。
【0036】
まず、準備工程(ステップS1)において、図1及び図2に示すように、サンプリングキット12を回路制御装置14に装着(セット)し、第1サンプル導入路34aの導入コネクタ42を第1細胞培養デバイス200Aのサンプリングコネクタ228に接続するとともに第2サンプル導入路34bの導入コネクタ42を第2細胞培養デバイス200Bのサンプリングコネクタ228に接続する。
【0037】
続いて、プライミング工程(図3のステップS2)において、図5に示すように、コントローラ16は、第3クランプ72c及び第4クランプ72dを開くとともに第1クランプ72a、第2クランプ72b及び第5クランプ72eを閉じた状態で、ポンプ74を第1回転動作させる。そうすると、洗浄液収容部18の洗浄液は、ポンプ74の作用によって、導入路32から第1連結部38、中間流路44、第2連結部40及びセンサ流路46を介して廃液収容部22に導かれる。
【0038】
その後、サンプリング工程(図3のステップS3)が行われる。具体的に、コントローラ16は、採取するサンプルを選択する(図4のステップS4)。すなわち、コントローラ16は、細胞培養デバイス200の細胞培養の状態に基づいて第1細胞培養デバイス200Aのサンプル(第1サンプル)と第2細胞培養デバイス200Bのサンプル(第2サンプル)とのいずれを採取するのかを選択する。
【0039】
コントローラ16によって第1サンプルを採取すると選択された場合、第1サンプル導入工程が行われる(図4のステップS5)。つまり、図6に示すように、コントローラ16は、第1クランプ72a及び第3クランプ72cを開くとともに第2クランプ72b、第4クランプ72d及び第5クランプ72eを閉じた状態でポンプ74を第1回転動作させる。そうすると、第1細胞培養デバイス200Aの第1サンプルは、ポンプ74の作用によって、第1サンプル導入路34a、第1連結部38、中間流路44、第2連結部40及びセンサ流路46を介して廃液収容部22に導かれる。
【0040】
具体的に、第1サンプル導入路34aに導入された第1サンプルは、第1センサ26に接触する。第1サンプルは、サンプリング流路30におけるサンプル流通路36よりも上流側(第1サンプル導入路34a)に設けられている。そのため、第1センサ26に接触する第1サンプルには、導入路32に残存している洗浄液が混入していない。第1センサ26では、第1サンプル中のPH、O濃度及びCO濃度が測定される。第1センサ26の測定結果は、コントローラ16に送信される。
【0041】
第1センサ26を流通した第1サンプルは、第1連結部38、中間流路44及び第2連結部40を介してセンサ流路46に導かれて第2センサ28に接触する。第2センサ28では、第1サンプル中のグルコース濃度及び乳酸濃度が測定される。第2センサ28の測定結果は、コントローラ16に送信される。コントローラ16は、第1センサ26及び第2センサ28の測定結果に基づいて第1細胞培養デバイス200Aの培養条件を制御する。第2センサ28で測定するグルコース、乳酸はガス成分より拡散の影響を受け難いため、サンプリング流路30の第1連結部38で洗浄液が第1サンプルに若干混入した場合であっても第2センサ28の測定結果に大きな影響を与えない。
【0042】
コントローラ16によって第2サンプルを採取すると選択された場合、第2サンプル導入工程が行われる(図4のステップS6)。すなわち、図7に示すように、コントローラ16は、第2クランプ72b及び第3クランプ72cを開くとともに第1クランプ72a、第4クランプ72d及び第5クランプ72eを閉じた状態でポンプ74を第1回転動作させる。そうすると、第2細胞培養デバイス200Bの第2サンプルは、ポンプ74の作用によって、第2サンプル導入路34b、第2連結部40及びセンサ流路46を介して廃液収容部22に導かれる。
【0043】
具体的に、第2サンプル導入路34bに導入された第2サンプルは、第1センサ26に接触する。第2サンプルは、サンプリング流路30におけるサンプル流通路36よりも上流側(第2サンプル導入路34b)に設けられている。そのため、第1センサ26に接触する第2サンプルには、中間流路44に残存している洗浄液が混入していない。第1センサ26では、第2サンプル中のPH、O濃度及びCO濃度が測定される。第1センサ26の測定結果は、コントローラ16に送信される。
【0044】
第1センサ26を流通した第2サンプルは、第2連結部40を介してセンサ流路46に導かれて第2センサ28に接触する。第2センサ28では、第2サンプル中のグルコース濃度及び乳酸濃度が測定される。第2センサ28の測定結果は、コントローラ16に送信される。コントローラ16は、第1センサ26及び第2センサ28の測定結果に基づいて第2細胞培養デバイス200Bの培養条件を制御する。第2センサ28で測定するグルコース、乳酸はガス成分より拡散の影響を受け難いため、サンプリング流路30の第2連結部40で洗浄液が第2サンプルに若干混入した場合であっても第2センサ28の測定結果に大きな影響を与えない。
【0045】
サンプリング工程が終了すると、図3において、コントローラ16は、第1細胞培養デバイス200A及び第2細胞培養デバイス200Bの細胞培養が終了したか否かを判定する(ステップS7)。細胞培養が終了していないとコントローラ16によって判定された場合(ステップS7:NO)、洗浄工程(ステップS8)を行う。洗浄工程において、コントローラ16は、図5に示すように、プライミング工程と同じように複数のクランプ72及びポンプ74を動作させる。そうすると、洗浄液収容部18の洗浄液は、第2センサ28を流通して廃液収容部22に導かれる。
【0046】
これにより、第2センサ28では、グルコースセンサ68及び乳酸センサ70のそれぞれに付着していたサンプルが洗浄液によって除去される。
【0047】
その後、必要に応じて校正工程(ステップS9)を行う。校正工程において、図8に示すように、コントローラ16は、第3クランプ72c及び第5クランプ72eを開くとともに第1クランプ72a、第2クランプ72b及び第4クランプ72dを閉じた状態でポンプ74を第1回転動作させる。そうすると、標準液収容部20の標準液は、ポンプ74の作用によって、標準液導入路33、導入路32、第1連結部38、中間流路44、第2連結部40及びセンサ流路46を介して廃液収容部22に導かれる。
【0048】
この際、第2センサ28は、標準液中のグルコース濃度及び乳酸濃度を測定する。第2センサ28の測定結果は、コントローラ16に送信される。コントローラ16は、第2センサ28の測定結果に基づいてグルコースセンサ68及び乳酸センサ70の校正を行う。校正工程が終了すると、ステップS3以降の工程が順次行われる。なお、本実施形態において、サンプリング工程は、2回以上行われる。
【0049】
細胞培養が終了したとコントローラ16によって判定された場合(図3のステップS7:YES)、一連の動作フローが終了する。
【0050】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0051】
サンプリングシステム10は、サンプルと接触するようにサンプリング流路30に設けられた第2センサ28と、サンプリング流路30の第2センサ28よりも上流側に洗浄液を導入する導入路32と、サンプリング流路30における導入路32との連結部よりも上流側に設けられてサンプルと接触して当該サンプル中のガス濃度を測定するガス濃度センサ62と、を備える。
【0052】
このような構成によれば、サンプリング流路30における導入路32との第1連結部38よりも上流側にガス濃度センサ62を設けているため、洗浄液が混入されていないサンプル中のガス濃度をガス濃度センサ62によって測定することができる。よって、ガス濃度センサ62の測定精度の低下を抑えることができる。また、第2センサ28に付着したサンプルは、導入路32からサンプリング流路30に導入した洗浄液によって除去することができる。
【0053】
サンプリング流路30は、第2センサ28が設けられたサンプル流通路36と、第1細胞培養デバイス200Aの第1サンプルを第1連結部38に導くための第1サンプル導入路34aと、第2細胞培養デバイス200Bの第2サンプルをサンプル流通路36における第2センサ28よりも上流側に導くための第2サンプル導入路34bと、を有する。ガス濃度センサ62は、第1サンプル導入路34aと第2サンプル導入路34bとのそれぞれに設けられている。
【0054】
このような構成によれば、第1サンプル中のガス濃度と第2サンプル中のガス濃度とを精度よく測定することができる。
【0055】
ガス濃度センサ62は、サンプル中のO濃度を測定するOセンサ64と、サンプル中のCO濃度を測定するCOセンサ66とを含む。
【0056】
このような構成によれば、第1サンプル及び第2サンプルのO濃度とCO濃度とを測定することができる。
【0057】
サンプリングシステム10は、1つの細胞培養デバイス200のサンプルを採取してその所定成分の濃度を測定するものであってもよい。この場合、サンプリングシステムは、第2サンプル導入路34bを備えていなくてもよい。また、サンプリングシステムは、3つ以上の細胞培養デバイス200のサンプルを個別に採取して所定成分の濃度を測定するものであってもよい。換言すれば、サンプリング流路30に接続される細胞培養デバイス200の数は、3つ以上であってもよい。この場合、サンプル導入路は、細胞培養デバイス200の数に応じた数だけ設けられる。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。上述した実施形態では、サンプリングシステム10と細胞培養デバイス200とを別体に構成した細胞培養システムを示しているが、細胞培養システムは、サンプリングシステム10と細胞培養デバイス200とを統合した(一体化した)ものであってもよい。
【0059】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0060】
上記実施形態は、細胞培養デバイス(200)の液体のサンプルを採取するサンプリング流路(30)を備えるサンプリングシステム(10)であって、前記サンプルと接触するように前記サンプリング流路に設けられたバイオセンサ(28)と、前記サンプリング流路の前記バイオセンサよりも上流側に洗浄液を導入する導入路(32)と、前記サンプリング流路における前記導入路との連結部(38)よりも上流側に設けられて前記サンプルと接触して当該サンプル中のガス濃度を測定するガス濃度センサ(62)と、を備える、サンプリングシステムを開示している。
【0061】
上記のサンプリングシステムにおいて、前記サンプリング流路は、前記バイオセンサが設けられたサンプル流通路(36)と、前記細胞培養デバイスである第1細胞培養デバイス(200A)の第1サンプルを前記連結部に導くための第1サンプル導入路(34a)と、第2細胞培養デバイス(200B)の第2サンプルを前記サンプル流通路における前記バイオセンサよりも上流側に導くための第2サンプル導入路(34b)と、を有し、前記ガス濃度センサは、前記第1サンプル導入路と前記第2サンプル導入路とのそれぞれに設けられてもよい。
【0062】
上記のサンプリングシステムにおいて、前記ガス濃度センサは、前記サンプル中のO濃度を測定するOセンサ(64)と、前記サンプル中のCO濃度を測定するCOセンサ(66)と、を含んでもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…サンプリングシステム 26…第1センサ
28…第2センサ(バイオセンサ) 30…サンプリング流路
32…導入路 34a…第1サンプル導入路
34b…第2サンプル導入路 36…サンプル流通路
38…第1連結部 62‥‥ガス濃度センサ
64…Oセンサ 66…COセンサ
200…細胞培養デバイス 200A…第1細胞培養デバイス
200B…第2細胞培養デバイス
図1
図2
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図5
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図7
図8