(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】改装建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20240729BHJP
E06B 7/14 20060101ALI20240729BHJP
E06B 1/62 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B7/14
E06B1/62 Z
(21)【出願番号】P 2021024049
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】大塚 瞳
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-328646(JP,A)
【文献】特開2015-071920(JP,A)
【文献】特開2006-233756(JP,A)
【文献】特開平10-325185(JP,A)
【文献】特開2020-026651(JP,A)
【文献】特開2019-105133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
E06B 7/00 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設下枠に装着される新設下枠と、前記既設下枠と前記新設下枠の間の隙間を塞ぐシーリング材と、を備えた改装建具であって、
前記既設下枠と前記新設下枠の間に配置されて、前記隙間に排水路を区画する排水部品を備え、
前記排水部品は、互いの間に前記排水路を区画する一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する連結部と、を有し、
前記シーリング材は、前記排水路の外側で前記壁部に接して前記隙間を塞ぐ改装建具。
【請求項2】
請求項1に記載された改装建具において、
前記壁部は、前記排水路側の面に形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する改装建具。
【請求項3】
請求項2に記載された改装建具において、
前記壁部は、前記排水路の反対側の面に、前記排水路側の面の複数の溝と上下方向の位置を合わせて形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する改装建具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された改装建具において、
前記連結部は、前記排水路側の面に形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する改装建具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された改装建具において、
前記連結部は、前記新設下枠に沿って配置されて、前記一対の壁部の上端部を連結する改装建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設下枠と新設下枠の間の隙間がシーリング材により塞がれる改装建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具である浴室ドアを改装するときに、浴室ドアの既設枠を残して、改装建具の新設枠を既設枠の内側に装着することがある。この場合には、新設枠の新設下枠は、既設枠の既設下枠との間に隙間をあけて、既設下枠に装着される。また、シーリング材が既設下枠と新設下枠の間に塗布されて、既設下枠と新設下枠の間の隙間がシーリング材により塞がれる。
【0003】
このような改装建具では、新設下枠と既設下枠の間の箇所に水が浸入したときに、水を浴室に排水する必要がある。そこで、例えば、隙間をあけてシーリング材を塗布し、シーリング材の間の隙間から排水することで、排水性を確保している。ところが、隙間を形成するためには、シーリング材の塗布作業を隙間の箇所で中断し、隙間をあけて、シーリング材の塗布作業を再開する必要がある。そのため、シーリング材の塗布に手間が掛かり、改装建具の施工性に影響が生じることがある。
【0004】
これに対し、従来、下枠の下方のシーリング材とサッシ取付部材の間に排水プレートを配置し、排水プレートの裏面に形成した複数の溝部により排水するサッシの排水構造が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、排水プレートの複数の溝部では、排水経路が狭くなり、充分な排水性を確保できない虞がある。そのため、特許文献1に記載された従来の排水プレートを改装建具に設けたとしても、改装建具の新設下枠と既設下枠の間の箇所での排水性を安定して確保するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、改装建具の新設下枠と既設下枠の間の箇所での排水性を確保しつつ、改装建具の施工性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、既設下枠に装着される新設下枠と、前記既設下枠と前記新設下枠の間の隙間を塞ぐシーリング材と、を備えた改装建具であって、
前記既設下枠と前記新設下枠の間に配置されて、前記隙間に排水路を区画する排水部品を備え、
前記排水部品は、互いの間に前記排水路を区画する一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する連結部と、を有し、
前記シーリング材は、前記排水路の外側で前記壁部に接して前記隙間を塞ぐ改装建具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、改装建具の新設下枠と既設下枠の間の箇所での排水性を確保しつつ、改装建具の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態の既設枠及び新設枠の下コーナー部を示す正面図である。
【
図3】
図2のX-X線で切断した改装建具と既設枠を示す縦断面図である。
【
図5】本実施形態の既設枠及び新設枠の下コーナー部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の改装建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の改装建具は、既設建具の改装に用いられる改装用の建具である。以下では、浴室ドアを例にとり、本実施形態の改装建具について説明する。従って、既設建具は、既設浴室ドアであり、改装建具は、既設浴室ドアの改装に用いられる改装浴室ドアである。
【0011】
図1は、本実施形態の改装建具1の正面図であり、建物2に設置された改装建具1を浴室側からみて示している。
図示のように、改装建具1は、浴室の出入口に設置される折戸であり、浴室と脱衣室の間に配置される。改装建具1の設置前(施工前)に、既設建具の既設枠10を残して、既設建具の扉体を既設枠10から取り外す。既設枠10は、建物2の開口部に設置されて、建物2に取り付けられている。改装建具1は、既設枠10の開口部11に配置されて、既設枠10の内側に設置される。
【0012】
なお、建物2に設けた改装建具1を正面からみたときに、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向である。
図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向は水平方向である。奥行方向は、建物2に設けた改装建具1における奥行方向である。このように、改装建具1に関する方向は、改装建具1を建物2に設けた状態での方向で特定する。また、改装建具1に関して浴室側、脱衣室側とは、改装建具1を建物2に設けた状態での浴室側、脱衣室側である。浴室側は、奥行方向の一方側であり、脱衣室側は、奥行方向の他方側である。
【0013】
既設枠10は、方形状の開口枠であり、互いに組み合わされた4つの枠12~14(既設上枠12、既設下枠13、一対の既設縦枠14)を有している。既設枠10の4つの枠12~14は、例えば、押出成形により形成された形材からなり、既設枠10の方形状の開口部11を形成している。既設上枠12と既設下枠13は、既設枠10の上下の横枠であり、既設枠10の上部と下部で左右方向(横方向)に沿って延びる。一対の既設縦枠14は、既設枠10の左右の側部で上下方向(縦方向)に沿って延びる。既設上枠12、既設下枠13、及び、左右の既設縦枠14が枠組みされて、各枠12~14の端部同士が接続されている。
【0014】
改装建具1は、改装用の新設枠20と、新設枠20の開口部21に配置される開閉可能な扉体3を備えている。新設枠20は、既設枠10の内側(開口部11側)に配置されて、既設枠10に装着される。扉体3が新設枠20に開閉可能に連結されて、扉体3により、新設枠20の開口部21が開閉される。扉体3は、折戸用の折り曲げ可能な扉体であり、左右に並べて配置された2つの障子3A、3B(第1障子3A、第2障子3B)を有している。
【0015】
第1障子3Aは、方形状の回動障子であり、新設枠20に回動可能に連結されている。第2障子3Bは、方形状の移動障子であり、新設枠20に移動可能に連結されている。第1障子3Aと第2障子3Bは、互いに回動可能に連結されている。扉体3が開くときには、第1障子3Aが浴室側に回動する。同時に、第2障子3Bは、浴室側に回動しつつ、第1障子3Aに向かって移動する。これにより、扉体3は、浴室側に突出して折れ曲がる。また、扉体3が開いて、新設枠20の開口部21が開放される。扉体3が閉じるときには、開き動作と反対の動作で、扉体3が展開して閉じる。
【0016】
新設枠20は、方形状の開口枠であり、互いに組み合わされた4つの枠22~24(新設上枠22、新設下枠23、一対の新設縦枠24)を有している。新設枠20の4つの枠22~24は、例えば、押出成形により形成された形材からなり、新設枠20の方形状の開口部21を形成している。新設上枠22と新設下枠23は、新設枠20の上下の横枠であり、新設枠20の上部と下部で左右方向(横方向)に沿って延びる。一対の新設縦枠24は、新設枠20の左右の側部で上下方向(縦方向)に沿って延びる。新設上枠22、新設下枠23、及び、左右の新設縦枠24が枠組みされて、各枠22~24の端部同士が接続されている。
【0017】
新設枠20の各枠22~24は、既設枠10の各枠12~14に対して既設枠10の内側(開口部11側)に配置されて、既設枠10に取り付けられている。また、新設上枠22は、既設上枠12の開口部11側(下側)に配置されて、既設上枠12に装着されている。新設上枠22は、既設上枠12に沿って既設上枠12の長手方向(左右方向)に延びる。新設下枠23は、既設下枠13の開口部11側(上側)に配置されて、既設下枠13に装着されている。新設下枠23は、既設下枠13に沿って既設下枠13の長手方向(左右方向)に延びる。新設縦枠24は、既設縦枠14の開口部11側(横側)に配置されて、既設縦枠14に装着されている。新設縦枠24は、既設縦枠14に沿って既設縦枠14の長手方向(上下方向)に延びる。
【0018】
新設枠20は、既設枠10の浴室側の箇所で、既設枠10との間に隙間30~32(上隙間30、下隙間31、縦隙間32)をあけて設置される。新設上枠22は、上下方向において、既設上枠12との間に上隙間30をあけて、既設上枠12と対向して配置される。新設下枠23は、上下方向において、既設下枠13との間に下隙間31をあけて、既設下枠13と対向して配置される。新設縦枠24は、左右方向において、既設縦枠14との間に縦隙間32をあけて、既設縦枠14と対向して配置される。
【0019】
改装建具1は、隙間30~32を浴室側において塞ぐシーリング材40~42(上シーリング材40、下シーリング材41、縦シーリング材42)(
図1では、ハッチングを付して示す)を備えている。上シーリング材40は、既設上枠12と新設上枠22の間の上隙間30を塞ぐ。下シーリング材41は、既設下枠13と新設下枠23の間の下隙間31を塞ぐ。縦シーリング材42は、既設縦枠14と新設縦枠24の間の縦隙間32を塞ぐ。
【0020】
上隙間30及び上シーリング材40は、新設上枠22の上側に位置し、新設上枠22に沿って新設上枠22の長手方向(左右方向)に延びる。下隙間31及び下シーリング材41は、新設下枠23の下側に位置し、新設下枠23に沿って新設下枠23の長手方向(左右方向)に延びる。縦隙間32及び縦シーリング材42は、新設縦枠24の横側に位置し、新設縦枠24に沿って新設縦枠24の長手方向(上下方向)に延びる。
【0021】
改装建具1は、新設下枠23の下側に設けられた排水部品50を備えている。排水部品50は、新設下枠23の長手方向に互いに離隔して、新設下枠23の長手方向の複数箇所に設けられている。ここでは、改装建具1は、新設下枠23の長手方向の両端部側の2箇所に設けられた2つの排水部品50を備えている。排水部品50は、新設下枠23の下側の箇所から浴室に向かって排水する。
【0022】
図2は、本実施形態の既設枠10及び新設枠20の下コーナー部を示す正面図であり、
図1に示す既設枠10及び新設枠20の左下側に位置する下コーナー部を拡大して示している。
図3は、
図2のX-X線で切断した改装建具1と既設枠10を示す縦断面図である。
図4は、本実施形態の排水部品50を示す斜視図である。
図5は、本実施形態の既設枠10及び新設枠20の下コーナー部を示す斜視図である。
【0023】
図示のように、既設枠10の既設下枠13は、浴室側に位置する中空状の浴室側部15と、脱衣室側に位置する板状の脱衣室側部16と、浴室側部15と脱衣室側部16の間に位置する立ち上がり部17を有している(
図3参照)。浴室側部15は、既設下枠13の見込み方向の一方側に位置する一方側部であり、脱衣室側部16は、既設下枠13の見込み方向の他方側に位置する他方側部である。既設下枠13の見込み方向は、既設枠10の奥行方向である。また、新設下枠23の見込み方向は、改装建具1の奥行方向であり、既設下枠13の見込み方向と一致する。
【0024】
立ち上がり部17は、浴室側部15と脱衣室側部16を連結する連結壁であり、浴室側部15の脱衣室側の端部から上方に向かって立ち上がる。脱衣室側部16は、浴室側部15よりも上方に位置し、立ち上がり部17の上端部から脱衣室側に向かって突出する。浴室側部15は、立ち上がり部17の下端部から浴室側に向かって突出する上面部18を有し、脱衣室側部16よりも下方に位置している。上面部18は、浴室側部15の上面に位置する部分であり、既設下枠13の見込み方向に沿って配置されている。また、脱衣室側部16は、既設下枠13の脱衣室側の上面部であり、浴室側部15の上面部18は、既設下枠13の浴室側の上面部である。
【0025】
既設下枠13と新設下枠23の間には、スペーサ60が設けられている。スペーサ60は、既設下枠13(ここでは、上面部18)に載せられて、既設下枠13と新設下枠23の間の下隙間31に配置される。スペーサ60は、既設下枠13と新設下枠23の間に挟まれて、既設下枠13と新設下枠23の間に下隙間31を確保する。スペーサ60は、既設下枠13に支持されて、改装建具1の荷重を受ける。既設下枠13と新設下枠23は、スペーサ60により、互いの間に下隙間31をあけて、上下方向に離隔して配置されている。
【0026】
新設下枠23は、既設下枠13の立ち上がり部17に対して浴室側に配置されるとともに、既設下枠13の浴室側部15の上面部18に対して上方に配置されている。また、新設下枠23は、立ち上がり部17から浴室側に向かって配置されて、既設下枠13を上方から覆う。排水部品50は、既設下枠13(ここでは、上面部18)に載せられて、既設下枠13と新設下枠23の間の下隙間31に配置される。排水部品50は、スペーサ60よりも浴室側の位置に配置されて、新設下枠23の浴室側の先端部の下側に位置する。排水部品50は、既設下枠13と新設下枠23の間に挟まれて、既設下枠13と新設下枠23に接触する。
【0027】
排水部品50は、既設下枠13と新設下枠23の間に配置されて、下隙間31に排水路51を区画する。排水路51は、排水部品50と既設下枠13に囲まれた水の通路であり、排水部品50と既設下枠13の間に区画される。排水部品50は、下隙間31における浴室側の箇所に配置されており、排水路51は、下隙間31における浴室側の箇所に区画される。排水路51の浴室側の開口は、排水路51から浴室に向かって排水する排水口である。排水路51は、排水部品50を新設下枠23の見込み方向に貫通して、新設下枠23の見込み方向に延びる。
【0028】
排水部品50は、互いの間に排水路51を区画する一対の壁部52と、一対の壁部52を連結する連結部53を有している(
図4参照)。一対の壁部52は、新設下枠23の長手方向に互いに離隔して、新設下枠23の長手方向において互いに対向して配置される。壁部52は、既設下枠13に載せられて、既設下枠13と新設下枠23の間に配置される。また、壁部52は、既設下枠13から新設下枠23に向かって突出して、既設下枠13から新設下枠23まで配置される。排水部品50は、一対の壁部52により、下隙間31を新設下枠23の長手方向に区画する。
【0029】
一対の壁部52は、互いの間に排水路51を挟んで、排水路51に対して新設下枠23の長手方向の両側に位置する。連結部53は、一対の壁部52の上端部の間に設けられて、一対の壁部52の上端部に接続している。下隙間31で、連結部53は、新設下枠23に沿って配置されて、一対の壁部52の上端部を連結する。連結部53は、既設下枠13から上方に離隔して配置され、上下方向において、既設下枠13との間に隙間をあけた状態で、既設下枠13と対向している。排水路51は、連結部53の下側で、一対の壁部52の間に区画されるとともに、連結部53と既設下枠13の間に区画される。
【0030】
排水部品50は、例えば、両面テープにより、新設下枠23の下面に取り付けられて、新設下枠23と既設下枠13の間に配置される。その状態で、排水路51を除いて、下シーリング材41が既設下枠13と新設下枠23の間に塗布されて、既設下枠13と新設下枠23の間の下隙間31が下シーリング材41により浴室側で塞がれる。下シーリング材41は、排水部品50に対して新設下枠23の長手方向の両側に設けられる。排水部品50は、左右の下シーリング材41の間に配置されて、下シーリング材41により、既設下枠13と新設下枠23の間の箇所に固定される。
【0031】
一対の壁部52は、それぞれ下隙間31の下シーリング材41により塞がれる箇所と排水路51との境界に配置される。下シーリング材41は、排水路51には設けられず、排水路51の外側で、一対の壁部52に接して下隙間31を塞ぐ。また、下シーリング材41は、排水部品50(連結部53)と新設下枠23の間、及び、排水部品50(一対の壁部52)と既設下枠13の間には設けられず、排水路51及び排水部品50の箇所を除く下隙間31の箇所で、既設下枠13及び新設下枠23に接する。下シーリング材41は、既設下枠13及び新設下枠23に沿って既設下枠13及び新設下枠23の長手方向に延びる。
【0032】
下隙間31は、排水路51及び排水部品50の箇所を除いて、下シーリング材41により塞がれる。排水路51は、下シーリング材41に対して新設下枠23の見込み方向の一方側(浴室側)に位置する空間と他方側(脱衣室側)に位置する空間に向かって開口して、両側の空間に繋がる。下シーリング材41の一方側の空間は、浴室である。下シーリング材41の他方側の空間は、既設下枠13と新設下枠23の間の空間であり、下シーリング材41と既設下枠13の立ち上がり部17の間に位置する。
【0033】
新設下枠23の端部と新設縦枠24の端部が接続する新設枠20の下コーナー部(
図5参照)では、水が新設下枠23と新設縦枠24の間の箇所から新設下枠23の下側に漏れることがある。水は、既設下枠13と新設下枠23の間の空間に浸入して、下シーリング材41の脱衣室側の箇所まで移動する。このように浸入した水は、下シーリング材41の脱衣室側から排水路51を通って浴室に排水される。また、浴室から排水路51に浸入した水は、排水路51から浴室に排水される。
【0034】
排水部品50(
図4参照)の連結部53は、排水路51を区画する下面54と、連結部53の下側部に設けられた複数の溝(下側溝55)を有している。連結部53の下側部は、連結部53の排水路51側の部分であり、ここでは、連結部53において下側(排水路51側)に位置する下面54である。複数の下側溝55は、連結部53の排水路51側の面(下面54)に並列して形成されて、新設下枠23の見込み方向に延びる。
【0035】
複数の下側溝55は、新設下枠23の長手方向に間隔をあけて互いに平行に形成され、排水路51に向かって開放されている。下側溝55は、新設下枠23の見込み方向における連結部53の両側の端面に開口して、連結部53の一端面から他端面まで連続して延びる。連結部53の下面54に水が付着したときには、下側溝55による毛細管現象により、水の排水が促進される。水は、下側溝55により、浴室側に導かれて、排水路51の排水口に向かって排水される。
【0036】
一対の壁部52のそれぞれは、排水路51を区画する区画面56と、下シーリング材41によりシールされるシール面57と、一対の壁部52の内側部に設けられた複数の溝(内側溝58)と、一対の壁部52の外側部に設けられた複数の溝(外側溝59)を有している。一対の壁部52の内側部は、一対の壁部52の排水路51側の部分であり、ここでは、一対の壁部52において内側(排水路51側)に位置する区画面56である。一対の壁部52の外側部は、一対の壁部52の排水路51の反対側の部分であり、ここで、一対の壁部52において外側(排水路51の反対側)に位置するシール面57である。
【0037】
下シーリング材41は、壁部52のシール面57、新設下枠23、及び、既設下枠13に接して密着する。複数の内側溝58は、壁部52の排水路51側の面(区画面56)に並列して形成されて、新設下枠23の見込み方向に延びる。また、複数の内側溝58は、上下方向に間隔をあけて互いに平行に形成され、排水路51に向かって開放されている。
【0038】
内側溝58は、新設下枠23の見込み方向における壁部52の両側の端面に開口して、壁部52の一端面から他端面まで連続して延びる。一対の壁部52において、一方の壁部52の内側溝58と他方の壁部52の内側溝58は、上下方向の位置を互いに一致させて、それぞれ壁部52に形成されている。壁部52の区画面56に水が付着したときには、内側溝58による毛細管現象により、水の排水が促進される。水は、内側溝58により、浴室側に導かれて、排水路51の排水口に向かって排水される。
【0039】
複数の外側溝59は、壁部52の排水路51の反対側の面(シール面57)に並列して形成されている。外側溝59は、新設下枠23の見込み方向における壁部52の両側の端面に開口して、壁部52の一端面から他端面まで連続して延びる。一対の壁部52のそれぞれで、複数の外側溝59は、区画面56の複数の内側溝58と上下方向の位置を合わせてシール面57に形成されて、新設下枠23の見込み方向に延びる。
【0040】
複数の外側溝59は、上下方向に間隔をあけて互いに平行に形成されている。一対の壁部52のそれぞれで、区画面56の内側溝58とシール面57の外側溝59は、上下方向の位置を互いに一致させて、壁部52に形成されている。また、一方の壁部52の内側溝58、一方の壁部52の外側溝59、他方の壁部52の内側溝58、及び、他方の壁部52の外側溝59は、上下方向の位置を互いに一致させて、それぞれ壁部52に形成されている。
【0041】
排水部品50を既設下枠13と新設下枠23の間に配置する前に、既設下枠13と新設下枠23の間の上下方向の距離に対応して、一対の壁部52のそれぞれを新設下枠23の見込み方向に沿って切断して、一対の壁部52及び排水部品50の高さを調整する。その際、切断工具(例えば、はさみ、カッター)により、壁部52を複数の内側溝58と外側溝59のいずれかの箇所で内側溝58と外側溝59に沿って切断する。一対の壁部52を上下方向の位置が一致する内側溝58と外側溝59の箇所で切断することで、一対の壁部52が均等に切断されて、一対の壁部52の高さが揃う。
【0042】
以上説明した改装建具1では、排水路51により、新設下枠23と既設下枠13の間の箇所での排水性を確保することができる。また、排水部品50の一対の壁部52により、下シーリング材41と排水路51の境界、及び、下シーリング材41を設ける部分を明確にすることができる。そのため、排水路51を確保した状態で、下シーリング材41を下隙間31に容易に設けて、排水路51を除く箇所の下隙間31を下シーリング材41により容易に塞ぐことができる。従って、改装建具1の施工性を向上させることができる。
【0043】
排水部品50の壁部52に設けられた複数の内側溝58により、壁部52に付着した水の排水を促して、排水路51の排水性を向上させることができる。また、複数の内側溝58のいずれかに沿って壁部52を容易に切断でき、一対の壁部52及び排水部品50の高さを容易に調整することができる。内側溝58と外側溝59の箇所では、壁部52の厚みが他の箇所の壁部52の厚みよりも薄くなる。そのため、複数の内側溝58と外側溝59のいずれかに沿って壁部52を容易に切断することができる。
【0044】
排水部品50の連結部53に設けられた複数の下側溝55により、連結部53に付着した水の排水を促して、排水路51の排水性を向上させることができる。連結部53は、新設下枠23の下面に沿って配置されて、一対の壁部52の上端部を連結する。そのため、連結部53の下側に区画される排水路51の上下方向の寸法(高さ)を確保して、排水路51による排水を確実に行うことができる。
【0045】
なお、排水部品50の壁部52には、複数の内側溝58のみを設けて、複数の外側溝59を設けないようにしてもよい。また、壁部52は、上下方向に沿って配置されてもよく、上下方向に対して傾斜していてもよい。本実施形態では、折戸を例にとり、改装建具1について説明したが、改装建具1は、折戸以外の建具(例えば、引戸、開閉戸、引き違い戸)であってもよい。本発明は、浴室の出入口に設置される改装浴室ドアに限定されず、建物2の種々の改装建具に適用することができる。
【0046】
以上のように、本発明は、既設下枠に装着される新設下枠と、前記既設下枠と前記新設下枠の間の隙間を塞ぐシーリング材と、を備えた改装建具であって、
前記既設下枠と前記新設下枠の間に配置されて、前記隙間に排水路を区画する排水部品を備え、
前記排水部品は、互いの間に前記排水路を区画する一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する連結部と、を有し、
前記シーリング材は、前記排水路の外側で前記壁部に接して前記隙間を塞ぐ改装建具である。
従って、改装建具の新設下枠と既設下枠の間の箇所での排水性を確保しつつ、改装建具の施工性を向上させることができる。
【0047】
前記壁部は、前記排水路側の面に形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する。
複数の溝により、壁部に付着した水の排水を促して、排水路の排水性を向上させることができる。また、複数の溝のいずれかに沿って壁部を容易に切断でき、一対の壁部及び排水部品の高さを容易に調整することができる。
【0048】
前記壁部は、前記排水路の反対側の面に、前記排水路側の面の複数の溝と上下方向の位置を合わせて形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する。
複数の溝の箇所では、壁部の厚みが他の箇所の壁部の厚みよりも薄くなり、複数の溝のいずれかに沿って壁部を容易に切断することができる。
【0049】
前記連結部は、前記排水路側の面に形成されて、前記新設下枠の見込み方向に延びる複数の溝を有する。
複数の溝により、連結部に付着した水の排水を促して、排水路の排水性を向上させることができる。
【0050】
前記連結部は、前記新設下枠に沿って配置されて、前記一対の壁部の上端部を連結する。
連結部の下側に区画される排水路の上下方向の寸法を確保して、排水路による排水を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・改装建具、2・・・建物、3・・・扉体、3A・・・第1障子、3B・・・第2障子、10・・・既設枠、11・・・開口部、12・・・既設上枠、13・・・既設下枠、14・・・既設縦枠、15・・・浴室側部、16・・・脱衣室側部、17・・・立ち上がり部、18・・・上面部、20・・・新設枠、21・・・開口部、22・・・新設上枠、23・・・新設下枠、24・・・新設縦枠、30・・・上隙間、31・・・下隙間、32・・・縦隙間、40・・・上シーリング材、41・・・下シーリング材、42・・・縦シーリング材、50・・・排水部品、51・・・排水路、52・・・壁部、53・・・連結部、54・・・下面、55・・・下側溝、56・・・区画面、57・・・シール面、58・・・内側溝、59・・・外側溝、60・・・スペーサ。