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特許7528002プレキャストコンクリート床版及び接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート床版及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20240729BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D19/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021024392
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126364
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591030178
【氏名又は名称】ドーピー建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091063(JP,A)
【文献】特開2013-036206(JP,A)
【文献】特許第5851757(JP,B2)
【文献】特開2019-173473(JP,A)
【文献】特開平10-237806(JP,A)
【文献】特開2020-007733(JP,A)
【文献】特開2016-205098(JP,A)
【文献】特開2012-219514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向、及び前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向に延びるプレキャストコンクリート床版であって、
前記橋軸方向に延びると共に、前記橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部と、
前記一対の壁高欄部のそれぞれの下部に位置する一対の地覆部と、
前記一対の地覆部の間において前記橋軸直角方向に延びる床版部と、
を備え、
前記一対の壁高欄部、前記一対の地覆部、及び前記床版部は、予め一体化されており、
前記橋軸方向を向く各前記壁高欄部の一対の端面のうちの一方には、凹部が形成されており、
前記橋軸方向を向く各前記壁高欄部の一対の端面のうちの他方には、前記凹部に挿入される突出部が形成されており
前記凹部と前記突出部との間に充填される第1充填材と、
前記地覆部に充填される第2充填材と、
を備え、
前記第2充填材の耐凍結融解性は、前記第1充填材の耐凍結融解性よりも高い、プレキャストコンクリート床版。
【請求項2】
橋軸方向、及び前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向に延びるプレキャストコンクリート床版であって、
前記橋軸方向に延びると共に、前記橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部と、
前記一対の壁高欄部のそれぞれの下部に位置する一対の地覆部と、
前記一対の地覆部の間において前記橋軸直角方向に延びる床版部と、
を備え、
前記一対の壁高欄部、前記一対の地覆部、及び前記床版部は、予め一体化されており、
前記橋軸方向を向く各前記壁高欄部の一対の端面のうちの一方には、凹部が形成されており、
前記橋軸方向を向く各前記壁高欄部の一対の端面のうちの他方には、前記凹部に挿入される突出部が形成されており
前記地覆部は、下方に向かうに従って前記橋軸直角方向の内側に突出する傾斜面と、前記傾斜面の下端から前記橋軸方向及び前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びると共に前記橋軸方向に延在する内側面とを有し、
前記内側面の前記橋軸方向の端部且つ前記傾斜面の下部には、切り欠き部が形成されている、
プレキャストコンクリート床版。
【請求項3】
前記突出部は、前記橋軸方向に突出すると共に、前記橋軸方向及び前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延在する鋼板であり、
前記鋼板は、前記橋軸直角方向に貫通する貫通穴を有する、
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート床版。
【請求項4】
橋軸方向に延びると共に橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び、前記一対の地覆部の間において前記橋軸直角方向に延びる床版部、が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版を製造する工程と、
前記プレキャストコンクリート床版を現場に搬送する工程と、
一対の前記プレキャストコンクリート床版のうちの一方の前記プレキャストコンクリート床版の凹部に他方の前記プレキャストコンクリート床版の突出部を挿入する工程と、
前記凹部と前記突出部との間に第1充填材を充填する工程と、
一対の前記プレキャストコンクリート床版の前記地覆部のそれぞれに第2充填材を充填する工程と、
を少なくとも備え
前記第2充填材の耐凍結融解性は、前記第1充填材の耐凍結融解性よりも高い、接合方法。
【請求項5】
橋軸方向に延びると共に橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び、前記一対の地覆部の間において前記橋軸直角方向に延びる床版部、が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版を製造する工程と、
前記プレキャストコンクリート床版を現場に搬送する工程と、
一対の前記プレキャストコンクリート床版のうちの一方の前記プレキャストコンクリート床版の凹部に他方の前記プレキャストコンクリート床版の突出部を挿入する工程と、
前記凹部と前記突出部との間に第1充填材を充填する工程と、
一対の前記プレキャストコンクリート床版の前記地覆部のそれぞれに第2充填材を充填する工程と、
を少なくとも備え
前記地覆部は、下方に向かうに従って前記橋軸直角方向の内側に突出する傾斜面と、前記傾斜面の下端から前記橋軸方向及び前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びると共に前記橋軸方向に延在する内側面とを有し、
前記内側面の前記橋軸方向の端部且つ前記傾斜面の下部には、切り欠き部が形成されており、
前記第2充填材を充填する工程では、前記切り欠き部に前記第2充填材が充填される、
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート床版、及びプレキャストコンクリート床版の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレキャストコンクリート床版、及びプレキャストコンクリート床版の接合方法としては種々のものが知られている。特許第5851757号公報には、プレキャスト壁同士の接合構造が記載されている。プレキャスト壁は、道路橋を成す床版部と、床版部の幅員両端部に位置するプレキャスト壁高欄とを備える。この接合構造では、複数のプレキャスト壁が橋軸方向に沿って並べられた状態で互いに接合されている。
【0003】
プレキャスト壁高欄が床版部に接合される前には、床版部が桁材の上に載せられており、床版部は橋軸方向及び橋軸直角方向に延在している。床版部の橋軸直角方向の端部には、鉛直方向に突出する複数の鉄筋が設けられる。複数の鉄筋は、橋軸直角方向に沿って並んでいる。
【0004】
複数の鉄筋の上端はCチャンネル型鉄筋によって互いに連結されており、Cチャンネル型鉄筋と各鉄筋の上端との間には鋼製スリーブが介在している。床版部の上面には、複数のCチャンネル型鉄筋が橋軸方向に沿って並ぶように配置されている。プレキャスト壁高欄の下端部には、高さ方向及び橋軸直角方向に延在するU字状の閉合鉄筋が突出しており、複数の閉合鉄筋が橋軸方向に沿って配列されている。
【0005】
このプレキャスト壁の接合方法では、床版部の上にプレキャスト壁高欄を設置する。このとき、床版部のCチャンネル型鉄筋とプレキャスト壁高欄の閉合鉄筋とが橋軸方向に沿って交互に並ぶようにプレキャスト壁高欄を設置すると共に、プレキャスト壁高欄及び床版部の隙間における橋軸直角方向の外側に型枠を設置する。そして、プレキャスト壁高欄及び床版部の隙間に無収縮モルタルを打設し、打設した無収縮モルタルが硬化した後に型枠を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5851757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したプレキャスト壁の接合方法では、床版部及びプレキャスト壁高欄は予め別体とされており、床版部に対するプレキャスト壁高欄の接合は現場において行われる。しかしながら、床版部が設けられる道路橋は、高所や狭隘な場所に構築される場合があるため、床版部に対するプレキャスト壁高欄の接合を現場において行う作業が困難となりうる。床版部に対するプレキャスト壁高欄の接合作業が工期の長期化を招来することもある。
【0008】
前述したプレキャスト壁の接合方法では、プレキャスト壁高欄及び床版部の隙間における橋軸直角方向の外側に型枠を設置する。この接合方法では、床版部及びプレキャスト壁高欄の外側に型枠を設置しなければならないため、床版部及びプレキャスト壁高欄の外側に足場を設置することが必要となる。従って、足場の設置等の作業が煩雑であるためプレキャスト壁高欄の接合作業を効率よく行うことができないと共に、接合作業の安全性の点においても問題となりうる。
【0009】
本発明は、接合作業を効率よく行うことができると共に、安全性を高めることができるプレキャストコンクリート床版及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプレキャストコンクリート床版は、橋軸方向、及び橋軸方向に直交する橋軸直角方向に延びるプレキャストコンクリート床版であって、橋軸方向に延びると共に、橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部と、一対の壁高欄部のそれぞれの下部に位置する一対の地覆部と、一対の地覆部の間において橋軸直角方向に延びる床版部と、を備え、一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び床版部は、予め一体化されており、橋軸方向を向く各壁高欄部の一対の端面のうちの一方には、凹部が形成されており、橋軸方向を向く各壁高欄部の一対の端面のうちの他方には、凹部に挿入される突出部が形成されており、第1充填材は、凹部と突出部との間に充填され、第2充填材は、地覆部に充填される本発明に係る別のプレキャストコンクリート床版は、橋軸方向、及び橋軸方向に直交する橋軸直角方向に延びるプレキャストコンクリート床版であって、橋軸方向に延びると共に、橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部と、一対の壁高欄部のそれぞれの下部に位置する一対の地覆部と、一対の地覆部の間において橋軸直角方向に延びる床版部と、を備え、一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び床版部は、予め一体化されており、橋軸方向を向く各壁高欄部の一対の端面のうちの一方には、凹部が形成されており、橋軸方向を向く各壁高欄部の一対の端面のうちの他方には、凹部に挿入される突出部が形成されており、地覆部は、下方に向かうに従って橋軸直角方向の内側に突出する傾斜面と、傾斜面の下端から橋軸方向及び橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びると共に橋軸方向に延在する内側面とを有し、内側面の橋軸方向の端部且つ傾斜面の下部には、切り欠き部が形成されており凹部と突出部との間に充填される第1充填材と、地覆部に充填される第2充填材と、を備え、第2充填材の耐凍結融解性は、第1充填材の耐凍結融解性よりも高い。
【0011】
このプレキャストコンクリート床版では、橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部と、一対の地覆部と、床版部とが現場において予め一体化されている。従って、壁高欄部、地覆部及び床版部を現場において接合する作業を不要とすることができるので、プレキャストコンクリート床版の接合作業を現場で効率よく行うことができ工期の短縮に寄与する。また、壁高欄部、地覆部及び床版部が予め一体化されているので、橋軸直角方向の外側への型枠の設置を不要とすることができる。すなわち、壁高欄部、地覆部及び床版部が予め一体化されていることにより、橋軸直角方向の外側から行う作業を不要とすることができるので、足場の設置の作業を省略することができる。その結果、プレキャストコンクリート床版の接合作業を効率よく行うことができると共に作業の安全性を高めることができる。また、このプレキャストコンクリート床版では、壁高欄部の橋軸方向を向く一対の端面のうちの一方に凹部が設けられ、他方に当該凹部に挿入される突出部が設けられる。従って、プレキャストコンクリート床版の凹部に他のプレキャストコンクリート床版の突出部を挿入することによってプレキャストコンクリート床版同士を接合することができるので、プレキャストコンクリート床版の接合作業を容易に行うことができる。すなわち、凹部に突出部を挿入して接合作業を行うことにより、壁高欄部へのPC(Pre stressed Concrete)鋼線の挿入等を不要にすることができるので、接合作業を更に効率よく行うことができる。
【0012】
また、突出部は、橋軸方向に突出すると共に、橋軸方向及び橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延在する鋼板であり、鋼板は、橋軸直角方向に貫通する貫通穴を有してもよい。この場合、突出部を橋軸方向及び高さ方向の双方に延在する鋼板とすることにより、突出部の構成を簡易にすることができると共に、橋軸直角方向への壁高欄部の強度を高めることができる。また、鋼板が橋軸直角方向に貫通する貫通穴を有することにより、凹部に突出部が挿入されて凹部と突出部との間に充填材が充填されたときに、この充填材を貫通穴に通して硬化させることができる。従って、貫通穴、及び貫通穴に入り込んで硬化した充填材によって橋軸方向への抵抗を高めることができる。その結果、一対のプレキャストコンクリート床版を強固に接合することができる。
【0013】
部と突出部との間に充填される第1充填材よりも地覆部に充填される第2充填材の耐凍結融解性が高いことにより、積雪地域又は寒冷地において地覆部が凍結によって膨張してひび割れる問題を回避することができる。すなわち、耐久性が高い第2充填材を地覆部に充填することによって地覆部の耐凍結融解性を高めることができる。
【0014】
本発明に係る接合方法は、橋軸方向に延びると共に橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び、一対の地覆部の間において橋軸直角方向に延びる床版部、が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版を製造する工程と、プレキャストコンクリート床版を現場に搬送する工程と、一対のプレキャストコンクリート床版のうちの一方のプレキャストコンクリート床版の凹部に他方のプレキャストコンクリート床版の突出部を挿入する工程と、凹部と突出部との間に第1充填材を充填する工程と、一対のプレキャストコンクリート床版の地覆部のそれぞれに第2充填材を充填する工程と、を少なくとも備え、第2充填材の耐凍結融解性は、第1充填材の耐凍結融解性よりも高い
本発明に係る別の接合方法は、橋軸方向に延びると共に橋軸直角方向に沿って並ぶ一対の壁高欄部、一対の地覆部、及び、一対の地覆部の間において橋軸直角方向に延びる床版部、が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版を製造する工程と、プレキャストコンクリート床版を現場に搬送する工程と、一対のプレキャストコンクリート床版のうちの一方のプレキャストコンクリート床版の凹部に他方のプレキャストコンクリート床版の突出部を挿入する工程と、凹部と突出部との間に第1充填材を充填する工程と、一対のプレキャストコンクリート床版の地覆部のそれぞれに第2充填材を充填する工程と、を少なくとも備え、地覆部は、下方に向かうに従って橋軸直角方向の内側に突出する傾斜面と、傾斜面の下端から橋軸方向及び橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びると共に橋軸方向に延在する内側面とを有し、内側面の橋軸方向の端部且つ傾斜面の下部には、切り欠き部が形成されており、第2充填材を充填する工程では、切り欠き部に第2充填材が充填される。
【0015】
この接合方法では、一対の壁高欄部、一対の地覆部及び床版部が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版を製造し、このプレキャストコンクリート床版を道路橋構築現場等の現場に搬送する。従って、現場における壁高欄部、地覆部及び床版部の接合作業を不要とすることができるので、プレキャストコンクリート床版の接合作業を効率よく行うことができる。また、壁高欄部、地覆部及び床版部が予め一体化されていることにより、橋軸直角方向の外側への型枠の設置、及び足場の設置を不要とすることができるので、作業の安全性を高めることができる。この接合方法では、一方のプレキャストコンクリート床版の壁高欄部の凹部に他方のプレキャストコンクリート床版の壁高欄部の突出部を挿入し、凹部と突出部との間に第1充填材を充填して一対のプレキャストコンクリート床版を互いに接合する。従って、凹部に突出部を挿入して接合作業を行うことにより、壁高欄部へのPC鋼線の挿入等を不要にすることができるので、接合作業を更に効率よく行うことができる。また、この接合方法では、一対のプレキャストコンクリート床版の地覆部のそれぞれに第2充填材を充填する。よって、第1充填材よりも耐久性が高い第2充填材を地覆部に充填することによって地覆部の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合作業を効率よく行うことができると共に、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るプレキャストコンクリート床版を示す斜視図である。
図2図1のプレキャストコンクリート床版の壁高欄部及び地覆部を拡大した斜視図である。
図3】一対のプレキャストコンクリート床版の接合構造を示す斜視図である。
図4】互いに接合された一対のプレキャストコンクリート床版を示す斜視図である。
図5】現場に搬送される前のプレキャストコンクリート床版の床版部を示す斜視図である。
図6】プレキャストコンクリート床版が載せられる桁材を示す斜視図である。
図7図6の桁材に複数のプレキャストコンクリート床版が載せられた状態を示す斜視図である。
図8図7のプレキャストコンクリート床版の床版部の側面を拡大した斜視図である。
図9図7の複数のプレキャストコンクリート床版の床版部を拡大した斜視図である。
図10】(a),(b)及び(c)は、プレキャストコンクリート床版の床版部の種々の例を模式的に示す側面図である。
図11】(a)は、床版部同士の接合構造の変形例を示す斜視図である。(b)は、図11(a)の接合構造の断面図である。
図12】壁高欄部の接合構造の変形例を示す斜視図である。
図13】(a)及び(b)は、壁高欄部の接合構造の図12とは異なる変形例を示す図である。
図14】地覆部の接合構造の変形例を示す斜視図である。
図15】地覆部の接合構造の図14とは異なる変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本発明に係るプレキャストコンクリート床版及び接合方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を誇張又は簡略化して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版1を示す斜視図である。プレキャストコンクリート床版1は、道路橋の橋梁構造を成すコンクリート製の部材であって、工場において予め製造される。プレキャストコンクリート床版1は、橋軸直角方向D2に長く延びる床版部10と、橋軸直角方向D2の両端のそれぞれに設けられた一対の壁高欄部20及び一対の地覆部30とを備える。工場において製造されたプレキャストコンクリート床版1は、一体化された状態で現場A(図3又は図4参照)に搬送される。
【0020】
例えば、現場Aでは、複数のプレキャストコンクリート床版1が橋軸方向D1に並ぶように連結されて道路橋が構築される。一対の壁高欄部20、及び一対の地覆部30のそれぞれは、床版部10の橋軸直角方向D2の端部のそれぞれから鉛直上方に突出しており、各地覆部30は各壁高欄部20の下部に設けられる。
【0021】
床版部10は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2の双方に延びると共に道路橋の路面部位を構成する。すなわち、床版部10は、道路橋の路面を成す部位であり、車両等の荷重を受ける部位である。床版部10は橋軸方向D1を向く端面11を備えており、例えば、端面11は下方に向かうに従って橋軸方向D1に突出する突出部11bを有する。すなわち、プレキャストコンクリート床版1は、あご付き形状の床版部10を有する。
【0022】
床版部10の橋軸方向D1を向く端面11のそれぞれからは、鉄筋12が突出している。鉄筋12は、橋軸方向D1にU字状に突出すると共にループ継手を構成するループ鉄筋である。床版部10は複数の鉄筋12を備えており、複数の鉄筋12は橋軸直角方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0023】
床版部10は、後述する桁材M(図6参照)の上面から突出するスタッドジベル(突起、ずれ止め部)が挿入される貫通孔13(ジベル孔)を有する。床版部10は複数の貫通孔13を有する。各貫通孔13は、例えば、橋軸直角方向D2に延びる長円形状とされている。また、橋軸方向D1に並ぶ2つの貫通孔13の複数の組Cが橋軸直角方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0024】
一例として、床版部10の橋軸直角方向D2の中央から見て一方側(図1では左側)及び他方側(図1では右側)のそれぞれに2つの組Cが配置されており、当該一方側の2つの組Cと当該他方側の2つの組Cとは床版部10の橋軸直角方向D2の中央に対して互いに対称となる位置に配置されている。但し、貫通孔13の数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0025】
図2は、プレキャストコンクリート床版1の壁高欄部20及び地覆部30を拡大した斜視図である。図3は、一対のプレキャストコンクリート床版1が橋軸方向D1に沿って対向する状態を示す斜視図である。図2及び図3に示されるように、壁高欄部20は、橋軸方向D1を向く一対の端面21,22と、高さ方向D3の上側を向く上面25と、プレキャストコンクリート床版1の橋軸直角方向D2の内側を向く内側面26と、内側面26の反対側を向く外側面27とを有する。
【0026】
壁高欄部20は、例えば、端面21と上面25との間、端面21と内側面26との間、端面21と外側面27との間、端面22と上面25との間、端面22と内側面26との間、端面22と外側面27との間、上面25と内側面26との間、及び、上面25と外側面27との間、の少なくともいずれかに面取り部28を有していてもよい。
【0027】
一対の端面21,22のそれぞれは、共に平坦面とされている。一対の端面21,22のうちの一方の端面21には、凹部23が形成されている。また、一対の端面21,22のうちの他方の端面22には、凹部23に挿入される突出部24が形成されている。凹部23は、端面21から橋軸方向D1に窪むと共にプレキャストコンクリート床版1の高さ方向D3に延在するスリット状とされている。端面21は、上面25から鉛直下方に延びる長方形状とされており、端面21の幅方向(橋軸直角方向D2)の中央付近に凹部23が形成されている。凹部23は、壁高欄部20の上面25から下方に窪んでおり、上面25から下方に向かって直線状に延びている。
【0028】
一対の端面21,22のうちの他方の端面22には、突出部24が形成されている。突出部24は、凹部23に橋軸方向D1に沿って挿入される部位である。突出部24は、例えば、橋軸直角方向D2に貫通する貫通穴24bを有すると共に高さ方向D3及び橋軸方向D1に延在する穴あき鋼板である。なお、高さ方向D3は橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2の双方に直交する方向である。
【0029】
貫通穴24bの形状は、例えば、円形状であるが、四角形状又は長円形状等、他の形状であってもよい。突出部24は、例えば、複数の貫通穴24bを有し、複数の貫通穴24bは高さ方向D3に沿って並ぶように配置されている。突出部24は、上側に位置する複数の貫通穴24bからなる第1穴群24cと、下側に位置する複数の貫通穴24bからなる第2穴群24dとを有する。
【0030】
例えば、第1穴群24cにおける2つの貫通穴24bの間隔は、第2穴群24dにおける2つの貫通穴24bの間隔よりも小さい。一例として、第1穴群24cにおける貫通穴24bの数は3であり、第2穴群24dにおける貫通穴24bの数は5である。なお、貫通穴24bの数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0031】
上面25、内側面26及び外側面27のそれぞれは、例えば、平坦面とされている。上面25は橋軸方向D1に延びる長辺と橋軸直角方向D2に延びる短辺とを有する長方形状とされており、外側面27は橋軸方向D1に延びる長辺と高さ方向D3に延びる短辺とを有する長方形状とされている。内側面26は、橋軸方向D1に延びると共に高さ方向D3に対してプレキャストコンクリート床版1の橋軸直角方向D2の内側に僅かに傾斜する長方形状とされている。
【0032】
地覆部30は、内側面26の下端からプレキャストコンクリート床版1の橋軸直角方向D2の内側に突出する部位である。地覆部30は、橋軸方向D1を向く一対の端面31,32と、下方に向かうに従って橋軸直角方向D2の内側に突出する傾斜面33と、傾斜面33の下端から高さ方向D3に延びると共に橋軸方向D1に延在する内側面34とを有する。
【0033】
図3及び図4に示されるように、内側面34の橋軸方向D1の端部且つ傾斜面33の下部には、充填材Fが充填される切り欠き部35が形成されている。例えば、切り欠き部35には、橋軸方向D1に延びる棒状鉄筋36と、傾斜面33の下面から下方に延びると共に端面31から橋軸方向D1に突出するL字形鉄筋37とが配置されている。
【0034】
本実施形態において、充填材Fは、凹部23と突出部24との間の隙間に充填される第1充填材F1と、一対の切り欠き部35の間に充填される第2充填材F2と、一対の端面11の間の床版間詰部に充填される第3充填材F3、ジベル孔である貫通孔13に充填される第4充填材F4(図8参照)とを含んでいる。
【0035】
例えば、第1充填材F1、第2充填材F2及び第3充填材F3の種類は互いに異なっている。一例として、第1充填材F1及び第4充填材F4は無収縮モルタルであり、第3充填材F3はコンクリート(例えば膨張コンクリート)である。第2充填材F2は、例えば、第1充填材F1よりも耐凍結融解性が高い無収縮モルタルである。
【0036】
第2充填材F2は、充填前に所定量の水が加えられて練り混ぜられた後に充填される。第2充填材F2は、チクソトロピー性を有しており、例えば、時間の経過と共に粘度が高くなる材料によって構成されている。また、第2充填材F2は、高チクソトロピー性を有する特殊ポリマー系材料(無機系材料)からなるモルタルであってもよい。一例として、第2充填材F2は、水セメント比が30%程度である緻密性が高いモルタルであり、耐中性化、耐塩害、耐凍結融解又は無収縮性等、高い耐久性を備えたモルタルであってもよい。
【0037】
一対のプレキャストコンクリート床版1が橋軸方向D1に沿って対向するときに一対のプレキャストコンクリート床版1のそれぞれの切り欠き部35が互いに対向する。そして、互いに対向する一対の切り欠き部35の間に充填材F(第2充填材F2)が充填及び硬化されることによって、一対のプレキャストコンクリート床版1が強固に接合される。
【0038】
壁高欄部20の端面21、及び地覆部30の端面31の少なくともいずれかには充填材Fの漏れを抑制すると共に外力を受けて変形可能な材料によって構成された漏れ止め部材41が固定される。漏れ止め部材41は、例えば、一対のプレキャストコンクリート床版1の間に充填される充填材Fの漏れを抑制するパッキン材(一例としてスポンジシール材)である。
【0039】
例えば、漏れ止め部材41は、直線状とされており、直線状の漏れ止め部材41が端面21の縁部、及び端面31の縁部に貼り付けられる。一例として、漏れ止め部材41は、端面21の橋軸直角方向D2の外側の端辺、端面21の橋軸直角方向D2の内側の端辺、及び端面21の高さ方向D3の下側の端辺、に貼り付けられてもよい。このように、端面21に変形可能な漏れ止め部材41が貼り付けられることによって一対のプレキャストコンクリート床版1の間から充填材Fが漏れることを抑制することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版1の接合方法について説明する。図5は、工場において製作されるプレキャストコンクリート床版1の床版部10を示している。図5に示されるように、まず、工場において型枠、鉄筋12、及び壁高欄部20を構成する鉄筋29の設置を行った後、当該型枠の内部にコンクリートを充填して当該コンクリートを硬化することにより、一次部材としての床版部10を製作する。
【0041】
そして、工場の内部又は外部のストックヤードに製作した床版部10を移動させる。その後、鉄筋29の周囲に型枠を設置して当該型枠の内部にコンクリートを充填して当該コンクリートを硬化することにより、壁高欄部20及び地覆部30が床版部10に一体化されたプレキャストコンクリート床版1を製造する(プレキャストコンクリート床版を製造する工程)。
【0042】
次に、図6及び図7に示されるように、製造したプレキャストコンクリート床版1を桁材Mが設置された現場Aに搬送する(現場に搬送する工程)。そして、一対の桁材Mの上面M1に複数のプレキャストコンクリート床版1を橋軸方向D1に沿って並ぶように架設する。このように、本実施形態では、床版部10、壁高欄部20及び地覆部30が一体化されたプレキャストコンクリート床版1が現場Aに搬送されるので、現場Aにおける型枠及び足場の設置を不要とすることができる。
【0043】
現場Aでは、まず、各桁材Mの上面M1における橋軸直角方向D2の両端のそれぞれに、橋軸方向D1に沿うように直線状の漏れ止め部材42を貼り付ける。漏れ止め部材42は、例えば、ソールスポンジであるが、漏れ止め部材42としては、前述した漏れ止め部材41と同様のものを用いることが可能である。
【0044】
漏れ止め部材42を桁材Mに貼り付けた後には、一対の桁材Mの上に複数のプレキャストコンクリート床版1を並べる。このとき、図3及び図4に示されるように、一対のプレキャストコンクリート床版1を橋軸方向D1に沿って互いに対向させた後に、一方のプレキャストコンクリート床版1の凹部23に他方のプレキャストコンクリート床版1の突出部24を橋軸方向D1に沿って挿入する(突出部を挿入する工程)。
【0045】
また、図8に示されるように、桁材Mの上面M1から突出するように配置したスタッドジベルを貫通孔13を挿入し、スタッドジベルが挿入された貫通孔13に第4充填材F4を充填して第4充填材F4を硬化させる。このとき、プレキャストコンクリート床版1と桁材Mとの間に十分に第4充填材F4が行きわたるように十分に第4充填材F4の充填を行う。このように桁材M及びプレキャストコンクリート床版1に対してスタッドジベル工を行って桁材Mに対するプレキャストコンクリート床版1の高さを調整した上で桁材Mにプレキャストコンクリート床版1を接合する。
【0046】
そして、図9に示されるように、一対の端面11のそれぞれからU字状に突出するループ鉄筋である鉄筋12を橋軸直角方向D2に沿って並べた状態として、一対の端面11の間の床版間詰部にコンクリートである第3充填材F3を充填すると共に、第3充填材F3を硬化させる。このとき、一対の端面11の下側から突出する突出部11b同士を互いに対向させた状態で一対の突出部11bの上に第3充填材F3を充填できるので、第3充填材F3の充填に伴う型枠の設置を不要とすることが可能である。
【0047】
また、図3及び図4に示されるように、凹部23と突出部24との間の隙間に上から第1充填材F1を注入及び充填する(第1充填材を充填する工程)。このとき、突出部24の貫通穴24bの内部にまで第1充填材F1が行きわたるように十分に第1充填材F1を充填する。また、一対の切り欠き部35の間に第2充填材F2を充填する(第2充填材を充填する工程)。なお、第1充填材F1の充填、及び第2充填材F2の充填の順序は適宜変更可能である。
【0048】
以上のように、一対の床版部10の間に第3充填材F3の充填及び硬化を行い、凹部23と突出部24の間に第1充填材F1を充填及び硬化して切り欠き部35に第2充填材F2を充填及び硬化することにより、一対のプレキャストコンクリート床版1を互いに接合する。この接合を複数のプレキャストコンクリート床版1に対して繰り返し行った後に一連の工程が完了する。
【0049】
次に、本実施形態に係るプレキャストコンクリート床版1及び接合方法から得られる作用効果について詳細に説明する。プレキャストコンクリート床版1では、橋軸直角方向D2に沿って並ぶ一対の壁高欄部20と、一対の地覆部30と、床版部10とが現場Aでは予め一体化されている。従って、壁高欄部20、地覆部30及び床版部10を現場Aにおいて接合する作業を不要とすることができるので、プレキャストコンクリート床版1の接合作業を現場Aで効率よく行うことができ工期の短縮に寄与する。
【0050】
また、壁高欄部20、地覆部30及び床版部10が予め一体化されているので、橋軸直角方向D2の外側への型枠の設置を不要とすることができる。すなわち、壁高欄部20、地覆部30及び床版部10が予め一体化されていることにより、橋軸直角方向D2の外側から行う作業を不要とすることができるので、足場の設置の作業を省略することができる。その結果、現場Aが高所であっても、プレキャストコンクリート床版1の接合作業を効率よく行うことができると共に作業の安全性を高めることができる。
【0051】
また、プレキャストコンクリート床版1では、壁高欄部20の橋軸方向D1を向く一対の端面21,22のうち一方に凹部23が設けられ、他方に凹部23に挿入される突出部24が設けられる。従って、プレキャストコンクリート床版1の凹部23に他のプレキャストコンクリート床版1の突出部24を挿入することによってプレキャストコンクリート床版1同士を接合することができるので、プレキャストコンクリート床版1の接合作業を容易に行うことができる。すなわち、凹部23に突出部24を挿入して接合作業を行うことにより、壁高欄部20へのPC鋼線の挿入等を不要にすることができるので、接合作業を更に効率よく行うことができる。
【0052】
また、突出部24は、橋軸方向D1に突出すると共に、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2の双方に直交する高さ方向D3に延在する鋼板であり、突出部24を構成する鋼板は、橋軸直角方向D2に貫通する貫通穴24bを有する。従って、突出部24を橋軸方向D1及び高さ方向D3の双方に延在する鋼板とすることにより、突出部24の構成を簡易にすることができると共に、橋軸直角方向D2への壁高欄部20の強度を高めることができる。
【0053】
また、突出部24を構成する鋼板が橋軸直角方向D2に貫通する貫通穴24bを有することにより、凹部23に突出部24が挿入されて凹部23と突出部24との間に充填材F(第1充填材F1)が充填されたときに、この充填材Fを貫通穴24bに通して硬化させることができる。従って、貫通穴24b、及び貫通穴24bに入り込んで硬化した充填材Fによって橋軸方向D1への抵抗を高めることができる。その結果、一対のプレキャストコンクリート床版1を強固に接合することができる。
【0054】
また、プレキャストコンクリート床版1は、凹部23と突出部24との間に充填される第1充填材F1と、地覆部30に充填される第2充填材F2と、を備え、第2充填材F2の耐凍結融解性は、第1充填材F1の耐凍結融解性よりも高い。よって、凹部23と突出部24との間に充填される第1充填材F1よりも地覆部30に充填される第2充填材F2の耐凍結融解性が高いことにより、積雪地域又は寒冷地において地覆部30が凍結によって膨張してひび割れる問題を回避することができる。すなわち、耐久性が高い第2充填材F2を地覆部30に充填することによって地覆部30の耐凍結融解性を高めることができる。
【0055】
本実施形態に係る接合方法では、一対の壁高欄部20、一対の地覆部30及び床版部10が予め一体化されたプレキャストコンクリート床版1を製造し、プレキャストコンクリート床版1を道路橋構築現場である現場Aに搬送する。従って、現場Aにおける壁高欄部20、地覆部30及び床版部10が予め一体化されていることにより、現場Aにおける型枠及び足場の設置を不要とすることができるので、作業の安全性を高めることができる。
【0056】
更に、凹部23に対する突出部24の挿入、及び充填材Fの充填によって一対のプレキャストコンクリート床版1が接合されるので、壁高欄部20へのPC鋼線を不要とすることができ、接合作業を効率よく行うことができる。また、この接合方法では、一対のプレキャストコンクリート床版1の地覆部30のそれぞれに第2充填材F2を充填する。よって、第1充填材F1よりも耐久性が高い第2充填材F2を地覆部30に充填することによって地覆部30の強度を高めることができる。
【0057】
以上、本発明に係るプレキャストコンクリート床版及び接合方法の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよいし、他のものに適用したものであってもよい。すなわち、プレキャストコンクリート床版の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、接合方法の各工程の内容及び順序は適宜変更可能である。
【0058】
例えば、前述の実施形態では、図10(a)に示されるように、橋軸方向D1の両端の端面11のそれぞれが突出部11bを有するあご付き形状の床版部10について説明した。しかしながら、本発明に係るプレキャストコンクリート床版の床版部の形状は適宜変更可能である。
【0059】
例えば、図10(b)及び図10(c)に示されるように、プレキャストコンクリート床版は、床版部10に代えて、橋軸方向D1の両端の端面51のそれぞれが突出部を有しない床版部50を備えていてもよいし、橋軸方向D1の一端の端面56に突出部57を有し他端58に突出部を有しない床版部55を備えていてもよい。更に、プレキャストコンクリート床版は、橋軸方向D1の両端の端面に、橋軸直角方向D2に沿って並ぶ複数の凹凸、又は高さ方向D3に沿って並ぶ複数の凹凸が形成された床版部を備えていてもよい。
【0060】
また、前述の実施形態では、橋軸方向D1を向く床版部10の各端面11からU字状のループ継手を構成するループ鉄筋である鉄筋12が突出している例について説明した。しかしながら、床版部の端面から突出する鉄筋の形状及び配置態様、並びに、一対の端面間に形成される床版間詰部の構成は適宜変更可能である。
【0061】
例えば、図11(a)及び図11(b)に示されるように、一対のプレキャストコンクリート床版61の間の接合構造(床版間詰部)は、ダブルループ継手を備えた接合構造であってもよい。この場合、一対の端面11の間に、鉄筋12と、橋軸直角方向D2に沿って延びる複数の鉄筋62と、橋軸方向D1及び高さ方向D3に延びるセンターループ鉄筋63とが配置されるので、更に強固な接合構造とすることができる。更に、一対のプレキャストコンクリート床版の間の接合構造は、一対の端面の間において突出する各鉄筋が拡径された定着体を備える継手構造等であってもよく、適宜変更可能である。
【0062】
また、前述の実施形態では、例えば、上面25から下方に延びる凹部23が端面21に形成されると共に、凹部23に挿入される突出部24が端面22に形成された壁高欄部20について説明した。しかしながら、端面21に形成される凹部、及び端面22に形成される突出部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0063】
例えば、図12に示されるように、プレキャストコンクリート床版は、奥側に向かうに従って拡張する凹部73が形成された端面71を有する壁高欄部70を備えていてもよい。また、壁高欄部70の端面71の反対側の端面72から突出する突出部74は、複数の貫通穴74dが形成された穴あき鋼板74bと、穴あき鋼板74bの下方に位置する複数の鉄筋74cとを含むものであってもよい。この場合、突出部74が鉄筋74cを含むことにより、穴あき鋼板74bを小さくすることができるので、穴あき鋼板74bにかかるコストを抑えることができる。
【0064】
また、図13(a)及び図13(b)に示されるように、プレキャストコンクリート床版は、橋軸方向D1を向く一対の端面81,82のうち、一方の端面81に凹部83が形成されると共に、他方の端面82に棒状の突出部84が形成された壁高欄部80を備えていてもよい。壁高欄部80は、例えば、高さ方向D3に沿って並ぶ複数の凹部83、及び高さ方向D3に沿って並ぶ複数の突出部84を備える。突出部84は、例えば、丸鋼84bと、丸鋼84bの端部に取り付けられた定着体84cとを有する。一例として、突出部84では、丸鋼84bがスリップバーであり、定着体84cがセラミック製であるセラミックキャップバーである。
【0065】
また、前述の実施形態では、一対の切り欠き部35の間に第2充填材F2が充填される例について説明したが、本発明では、一対の地覆部の間の構成についても適宜変更可能である。例えば、図14に示されるように、一対の地覆部30における一対の傾斜面33の間にV字状スリット91が形成されており、V字状スリット91を含めた領域に第2充填材F2が充填されていてもよい。
【0066】
また、図15に示されるように、プレキャストコンクリート床版は、橋軸方向D1の端部が内側面34の端部に揃えられた傾斜面93を有する地覆部90を備えていてもよい。この場合、一対の内側面34の間、及び一対の傾斜面93の間が第2充填材F2の充填空間となるので、第2充填材F2の充填空間を広く確保することができる。
【0067】
また、前述の実施形態では、凹部23と突出部24の間に充填される第1充填材F1、地覆部30の切り欠き部35に充填される第2充填材F2、及び一対の端面11の間に充填される第3充填材F3、の種類が互いに異なる例について説明した。しかしながら、例えば、第1充填材F1の種類、及び第2充填材F2の種類は、互いに同一であってもよい。このように、第1充填材F1、第2充填材F2、第3充填材F3及び第4充填材F4の種類は、適宜変更可能である。
【0068】
また、前述の実施形態では、桁材Mの上に複数のプレキャストコンクリート床版1を架設して道路橋を構築する現場Aについて説明した。しかしながら、本発明に係るプレキャストコンクリート床版及び接合方法は、道路橋を構築する現場A以外の現場にも適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,61…プレキャストコンクリート床版、10,50,55…床版部、11,51,56…端面、11b,57…突出部、12…鉄筋、13…貫通孔、20,70,80…壁高欄部、21,22,71,72,81,82…端面、23,73,83…凹部、24,74,84…突出部、24b,74d…貫通穴、24c…第1穴群、24d…第2穴群、25…上面、26…内側面、27…外側面、28…面取り部、29…鉄筋、30,90…地覆部、31,32…端面、33,93…傾斜面、34…内側面、35…切り欠き部、41,42…漏れ止め部材、62…鉄筋、63…センターループ鉄筋、74b…鋼板、74c…鉄筋、84b…丸鋼、84c…定着体、91…V字状スリット、A…現場、C…組、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向、D3…高さ方向、F…充填材、F1…第1充填材、F2…第2充填材、F3…第3充填材、F4…第4充填材、M…桁材、M1…上面。
図1
図2
図3
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図10
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図15