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特許7528003窓装着アセンブリ、通信システム、及び、窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】窓装着アセンブリ、通信システム、及び、窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240729BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240729BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60J1/17 Z
B60R11/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021024416
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126382
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 慎一
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-089412(JP,U)
【文献】特開2020-128113(JP,A)
【文献】特開平11-240397(JP,A)
【文献】実開平04-039926(JP,U)
【文献】特開2022-064232(JP,A)
【文献】特開2020-152195(JP,A)
【文献】米国特許第05525105(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60J 1/00 - 1/20
B60R 11/00 - 11/06
B60H 1/26
H01Q 1/22
H02G 15/00 - 15/196
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの、開閉可能なドア窓と前記ドア窓の窓枠との間に、屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りと、
前記窓用仕切りと前記ドア窓と前記窓枠との間にケーブルを通し、前記窓用仕切りが前記窓枠に当接した状態で、前記窓用仕切り、前記ドア窓及び前記窓枠と前記ケーブルとの間の隙間を封止する封止体と、を有し、
前記窓用仕切りは、
前記ドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する窓嵌合部と、
前記窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、前記車両の前記ドアの前記窓枠に嵌合可能な板状の枠嵌合部と
を有する、窓装着アセンブリ。
【請求項2】
前記窓嵌合部は、
前記嵌合溝を形成する1対の側板と、
前記1対の側板に設けられ、前記1対の側板のうち前記枠嵌合部とは反対側に設けられるスリットと
を有する、請求項1に記載の窓装着アセンブリ。
【請求項3】
前記窓嵌合部及び前記枠嵌合部は、所望の長さに切断可能である、
請求項1又は請求項2に記載の窓装着アセンブリ。
【請求項4】
車両の外側に取り付けられるアンテナと、
前記車両の外側に取り付けられ、前記アンテナの送受信装置と、
前記車両の内側に配置され、前記送受信装置を制御する制御装置と、
前記車両の外側から内側、又は内側から外側に通し、前記送受信装置と前記制御装置とを接続するケーブルと、
屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りと、
前記窓用仕切りと前記車両のドアの開閉可能なドア窓と前記ドア窓の窓枠との間にケーブルを通し、前記窓用仕切りが前記窓枠に当接した状態で、前記窓用仕切り、前記ドア窓及び前記窓枠と前記ケーブルとの間の隙間を封止する封止体と、を有し、
前記窓用仕切りは、
前記車両の前記ドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する窓嵌合部と、
前記窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、前記車両の前記ドアの前記窓枠に嵌合可能な板状の枠嵌合部と
を有する、通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法であって、
前記車両の前記ドアの前記ドア窓の端部に前記窓用仕切りの前記窓嵌合部を嵌合させること、
前記車両の外側又は内側から前記ドア窓の端部と前記ドア窓の前記窓枠との間に前記ケーブルを通すこと、
前記窓用仕切りと前記ドア窓と前記窓枠との間に前記ケーブルを通した状態で、前記枠嵌合部を前記窓枠に当接させること、
前記枠嵌合部が前記窓枠に当接した状態で、前記封止体を用いて前記窓用仕切り、前記ドア窓及び前記窓枠と前記ケーブルとの間の隙間を封止すること
を含む、窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、装着アセンブリ、通信システム、及び、窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムの地球局を車両に搭載する場合は、アンテナ部を車両の外側に設置する必要があるため、車両の外側のアンテナと車両の内側に設置した機器とを接続する必要がある。このため車両の内側から外側に各種のケーブルを通す必要があるが、当該ケーブルを通すためには、車両の車体への穴あけなどを伴う艤装を行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-152195号公報
【文献】特開平8-142661号公報
【文献】特開平6-66112号公報
【文献】実開昭55-106106号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、車両への穴あけなどの特別な作業なしで、車両の外側と内側との間を接続してケーブルを通すことが可能な窓装着アセンブリ、窓装着アセンブリを含む通信システム、及び、窓装着アセンブリの車両への取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、窓装着アセンブリは、車両のドアの、開閉可能なドア窓とドア窓の窓枠との間に、屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りと、窓用仕切りとドア窓と窓枠との間にケーブルを通し、窓用仕切りが窓枠に当接した状態で、窓用仕切り、ドア窓及び窓枠とケーブルとの間の隙間を封止する封止体と、を有する。窓用仕切りは、窓嵌合部と枠嵌合部とを有する。窓嵌合部は、ドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する。枠嵌合部は、窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、車両のドアの窓枠に嵌合可能な板状である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】通信システムが取り付けられた車両を示す上面図。
図2図1中の符号IIに示す方向から見た、車両の概略的な左側面図。
図3】実施形態に係る窓用仕切りを示す概略図。
図4図3中の符号IVで示す方向から見た、窓用仕切りを示す図。
図5】車両のリアドアのドア窓と窓枠との間に窓用仕切りを配置した状態を示す概略的な断面図。
図6】車両のリアドアのドア窓の上端に窓用仕切りを取り付けた状態を示す概略図。
図7】車両のリアドアのドア窓の上端に窓用仕切りを取り付けた状態を示す概略的な断面図。
図8】車両のリアドアのドア窓の上端に窓用仕切りを取り付け、窓用仕切りの枠嵌合部を車両のリアドアの窓枠に当接させた状態を示す概略図。
図9】車両のリアドアのドア窓の上端に窓用仕切りを取り付け、窓用仕切りの枠嵌合部を車両のリアドアの窓枠に当接させた状態を示す概略的な断面図。
図10図8に示す車両のリアドアの窓枠及びドア窓と、窓用仕切りと、ケーブルとの間を封止体で封止した状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から図10を参照しながら窓用仕切り10の実施形態について説明する。
【0008】
図1及び図2は、通信システム200が搭載された車両100の一部を示す。
図1は、図2中の矢印Iの方向から見た上面図であり、図2は、図1中の矢印IIの方向から見た左側面図である。
【0009】
図1及び図2に示すように、防災や災害時などの情報収集などのために、車両100には、衛星通信を行う地球局設備としての超小型地球局VSATを搭載した移動型通信設備Car-SATなどの通信システム200が搭載されることがある。通信システム200は、例えば、衛星通信アンテナ210、送受信装置220、アンテナ制御装置230、バッテリ240、ケーブル250、及び、車両100の外側の機器と内側の機器との間すなわち屋内と屋外とを接続するケーブル250を通すときに用いる窓装着アセンブリ260を有する。
【0010】
衛星通信アンテナ210は、車両100の上方に取り付けられるルーフキャリアバー110に固定される。送受信装置220は、ODU(Outdoor Unit)として車両100の屋外に設置される。送受信装置220は、衛星通信アンテナ210とともに例えば車両100の上方に取り付けられるルーフキャリアバー110に固定される。
【0011】
アンテナ制御装置230は、ODUから伝送される信号を変復調するIDU(Indoor Unit)として車両100の荷室などに設置される。また、バッテリ240も、車両100の荷室などに設置される。例えば、アンテナ制御装置230と送受信装置220との間は同軸ケーブルなどのケーブル250により接続される。バッテリ240からの電力は、一例として、アンテナ制御装置230と送受信装置220との間を接続するケーブル250から送受信装置220に供給される。
【0012】
図2に示すように、窓装着アセンブリ260は、窓用仕切り10と、封止体11とを有する。本実施形態では、窓用仕切り10は、車両100の左側のリアドア120の、上下動により開閉可能なドア窓122とリアドア120の窓枠130との間に配置されるスペーサとなる。封止体11は、ドア窓122、窓枠130及びケーブル250の間の隙間を封止する封止体である。
なお、車両100の窓枠130は、リアドア120のセンターピラー側部位140、リアピラー側部位150、及び、ルーフ側部位160により形成される。
【0013】
図3及び図4は、例えば車両100のリアドア120のガラス窓などのドア窓122の上端部122aに装着して用いる窓用仕切り10を示す。図3は、図4中の矢印IIIの方向から見た窓用仕切り10の概略的な正面図である。図4は、図3中の矢印IVの方向から見た窓用仕切り10の側面図である。ここで、図3及び図4に示すようにXYZ直交座標系を取る。X方向は窓用仕切り10の長手方向に沿う。Y方向は窓用仕切り10の高さ方向に沿う。Z方向は窓用仕切り10の厚さ方向に沿う。なお、窓用仕切り10が車両100に取り付けられた状態で、X方向は車両100の前後方向に沿う。同様に、Y方向は車両100の上下方向に沿う。同様に、Z方向は車両の左右方向に沿う。
【0014】
図3及び図4に示す窓用仕切り10は、車両100の開閉可能なドア窓122の上端部122aに着脱可能に嵌合する窓嵌合部12と、窓嵌合部12から延び、車両100の窓枠130に嵌合可能な板状の枠嵌合部14とを有する。窓用仕切り10は、車両100のドア窓122の大きさに合わせて例えばカッターやハサミ等などにより所望の位置で容易に切断可能な素材で形成される。窓用仕切り10は、耐水性及び耐候性を有する素材で形成されることが好適である。窓用仕切り10は、例えばシリコーンゴム材など、弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型により形成されることが好適である。
【0015】
本実施形態では、窓用仕切り10は、図3中の左側が車両100のドア窓122の前方側に配置され、右側が後方側に配置される。窓用仕切り10は、X軸に沿う方向はY軸に沿う方向に比べて例えば十数倍程度大きい。Y軸に沿う方向はZ軸に沿う方向に対して10倍程度大きい。
【0016】
枠嵌合部14は、例えば矩形状の平板として形成される。枠嵌合部14の長さは、一般的な車両100のドア窓122の上端部122aの最大長さと同程度であり、例えば900mmである。窓嵌合部12及び枠嵌合部14の高さ(幅)は、ケーブル250の大きさ(内径)によるが、例えばそれぞれ例えば30mmである。枠嵌合部14の肉厚は、一般的な車両のリアドア120の窓枠130に嵌合可能な厚さであり、例えばドア窓122のガラスと同程度であり、例えば、3.1mm又は2.8mmである。
【0017】
窓嵌合部12は、枠嵌合部14のZ軸に沿う肉厚よりも厚い肉厚の略直方体状のブロック体22と、ブロック体22のうち、枠嵌合部14とは反対側に形成される嵌合溝24とを有する。ブロック体22の肉厚は、ドア窓122の肉厚に比べて厚い。窓嵌合部12のブロック体22は、1対の側板26a,26bを有し、ドア窓122の上端部122aに嵌合される二股形状に形成される。なお、1対の側板26a,26bは、窓用仕切り10がドア窓122の上端部122aから脱落を防止する状態に載置されていればよい。
【0018】
1対の側板26a,26bには、枠嵌合部14とは反対側の端部に複数のスリット30が例えばX軸に沿って等間隔に設けられる。スリット30は、それぞれ、例えばY軸に平行に枠嵌合部14とは反対側の端部から枠嵌合部14に向かう方向に延びる。スリット30のうち枠嵌合部14側の端部は、嵌合溝24の上端の底部には届かない。すなわち、スリット30の上端となる位置は、嵌合溝24のうち枠嵌合部14とは反対側の端部と嵌合溝24の底部との間にある。
【0019】
スリット30同士の間隔は適宜に設定可能である。窓用仕切り10の素材によるが、スリット30は、窓用仕切り10の全体が例えばXY面内で適宜に曲げられることが可能なように形成されることが好適である。
【0020】
枠嵌合部14のうちの前方側(X軸に沿ってセンターピラー側部位140)の端部14aは、窓嵌合部12のうちの前方側の端部に比べて、前方側(センターピラー側部位140)に突出する。枠嵌合部14の後方側の端部及び窓嵌合部12の後方側の端部はX軸に沿って同じ位置にある。このため、枠嵌合部14の全長は、窓嵌合部12の全長よりも長い。
【0021】
図5から図10を用いて、本実施形態に係る窓装着アセンブリ260の車両100への取付方法について説明する。ここでは、左側のリアドア120のドア窓122に窓用仕切り10を取り付けるとともに、ケーブル250を通す隙間を封止体11で封止する場合について説明する。なお、ケーブル250は、窓用仕切り10をドア窓122に取り付ける作業を行う前に、左側のリアドア120のドア窓122の外側から車両100の内側に、又は、車両100の内側からドア窓122の外側に予め通しておく。
【0022】
図5は、車両100のリアドア120のドア窓122及び窓枠130と、窓用仕切り10とを、任意のYZ平面の位置で切断した断面図である。
【0023】
図5に示すように、作業者は、車両100のドア窓122を開けて、窓用仕切り10の窓嵌合部12の嵌合溝24を、車両100のリアドア120のドア窓122の上端部122aの上方に配置する。
【0024】
図6は、車両100のドア窓122に窓用仕切り10の窓嵌合部12を嵌合させた状態を示す左側面図である。
図7は、図6に示す車両100のリアドア120のドア窓122及び窓枠130と、窓用仕切り10とを、任意のYZ平面の位置で切断した断面図である。
【0025】
図6及び図7に示すように、窓用仕切り10の窓嵌合部12の嵌合溝24を、車両100のリアドア120のドア窓122の上端部122aに嵌合させる。このときの窓用仕切り10の向きは、枠嵌合部14の端部14aが車両100の前方を向く向きである。
【0026】
ここで、図6に示すように、ドア窓122が全開又は全閉でないとき、ドア窓122のうち、リアドア120のドアモール120aから露出する部位は、略台形状に形成される。ドア窓122のうち、上端部122a及びセンターピラー側部位140の前方側端部122bは、角123aが例えば直角でなく鈍角に形成される。図6に示す位置では、ドア窓122を窓枠130に対して適宜に開け(下げ)た状態で、ドア窓122の上端部122aが窓枠130のうちルーフ側部位160から離れ、ドア窓122の前方側端部122bが、窓枠130のうちセンターピラー側部位140から離れている。ドア窓122のうち、上端部122a及びリアピラー側部位150の後方側端部122cは、角123bが例えば直角でなく鈍角に形成される。図6に示す位置では、ドア窓122を窓枠130に対して適宜に開け(下げ)た状態で、ドア窓122の後方側端部122cが、窓枠130のうちリアピラー側部位150から離れている。
【0027】
作業者は、例えば、枠嵌合部14の前方側の端部14aの先端を、リアドア120のドア窓122の前方側の角123aよりも数ミリメートル前方側に位置合わせする。この状態で、リアドア120のドア窓122の上端部122aよりも窓用仕切り10が長い場合、作業者は、一旦、窓用仕切り10をドア窓122から取り外し、窓用仕切り10の後方側を適宜の長さ切断する。例えば切断位置を図3中に符号16で示す位置とする。すなわち、作業者は、車両100のドア窓122及び窓枠130の大きさに合わせて窓用仕切り10を適宜にカットし、窓用仕切り10を所望の長さにする。切断位置16での切断片18は廃棄してもよいし、例えば車両100のダッシュボード内などに保管しておいてもよい。切断位置16は、窓用仕切り10の新たな後端となる。
【0028】
作業者は、窓用仕切り10の長さを、角123a,123b間の距離よりも短くする。このとき、作業者は、窓用仕切り10の長さについて、窓用仕切り10の後端16と窓枠130との間にケーブル250を通すスペースを考慮する。作業者は、窓用仕切り10の長さを決めるとき、窓用仕切り10を図6及び図7に示すようにドア窓122の上端部122aに配置する。
【0029】
図8は、車両100のドア窓122に窓用仕切り10の窓嵌合部12を嵌合させた状態で、ドア窓122を閉め、窓用仕切り10の枠嵌合部14を窓枠130の嵌合溝132の底面に当接させた状態を示す左側面図である。図9は、図7に示す車両100のリアドア120のドア窓122及び窓枠130と、窓用仕切り10とを、任意のYZ平面の位置で切断した断面図である。
【0030】
図8及び図9に示すように、ケーブル250を、センターピラー側部位140よりもリアピラー側部位150に近づけた状態でリアドア120のドア窓122を閉める。作業者は、窓枠130の嵌合溝132に窓用仕切り10の枠嵌合部14が挿入されるまでドア窓122を閉める。そして、作業者は、窓用仕切り10の枠嵌合部14の上端を、窓枠130の嵌合溝132の底面に当接させる。スリット30により、ドア窓122及び窓枠130の形状に沿って、窓用仕切り10の窓嵌合部12及び枠嵌合部14が弾性変形する。このため、枠嵌合部14は、窓枠130の嵌合溝132への密着性が良好な状態となる。作業者は、このようにして、窓用仕切り10の後端16と窓枠130との間にケーブル250を通すスペースの大きさを確認する。このとき、図8に示すように、ケーブル250は、ドア窓122の上端部122a、窓枠130、窓用仕切り10の後端16との間の隙間に通されている。
【0031】
ドア窓122の上端部122aに対する窓用仕切り10のX軸方向に沿う滑り性が良好であるとき、ドア窓122の上端部122aに対して窓用仕切り10の位置をずらしたい場合、作業者は、ドア窓122を例えば数ミリメートル程度下げ、窓用仕切り10を適宜に前方又は後方に移動させる。ドア窓122の上端部122aに対する窓用仕切り10のX軸方向に沿う滑り性が良好でない場合、作業者は、ドア窓122を例えば10cm程度下げ、ドア窓122の上端部122aに対して窓用仕切り10を取り外し、窓用仕切り10を適宜に前方又は後方に移動させた位置に再度取り付ける。そして、作業者は、ドア窓122を上げ、窓用仕切り10の枠嵌合部14の上端を、窓枠130の嵌合溝132に当接させる。
【0032】
ドア窓122を窓枠130のルーフ側部位160に対して閉めると、ドア窓122の前方側端部122bが、窓枠130のセンターピラー側部位140に近づき、窓枠130に嵌合するとともに、ドア窓122の後方側端部122cが、窓枠130のリアピラー側部位150に近づき、窓枠130に嵌合する。窓用仕切り10の枠嵌合部14の前方側の端部14aは窓嵌合部12よりも前方側に突出するため、枠嵌合部14の前方側の端部14aは窓枠130に確実に嵌合する。作業者は、ドア窓122の前方側端部122b及び後方側端部122cの好ましくは全領域が、窓枠130の嵌合溝132内に入ることを確認する。ドア窓122の前方側端部122b及び後方側端部122cの全領域が、窓枠130の嵌合溝132内に入っていない場合、ドア窓122を少し開けてドア窓122の上端部122aに対する窓用仕切り10の位置をずらすか、枠嵌合部14の一部を切断し、ドア窓122の前方側端部122b及び後方側端部122cが、窓枠130の嵌合溝132内に入る状態にする。すなわち、作業者は、枠嵌合部14を窓枠130に当接させた状態で、ドア窓122の前方側端部122b及び後方側端部122cの全領域が、窓枠130の嵌合溝132内に入っていることを確認する。
【0033】
図10は、図8及び図9に示す車両100のドア窓122、窓枠130、窓用仕切り10の枠嵌合部14と、ケーブル250との間の空間を封止体11で埋めた状態を示す左側面図である。
【0034】
図10に示すように、作業者は、封止体11を用いて窓用仕切り10、ドア窓122及び窓枠130とケーブル250との間の隙間を封止する。作業者は、封止体11として例えばパテを用いる。なお、パテは、例えばエアコンを家屋に取り付ける際に用いるものと同程度の、耐水性及び耐候性を有するものを用いることが好適である。このようにして、窓装着アセンブリ260を車両100に取り付ける。
【0035】
窓装着アセンブリ260を車両100にこのように取り付けたとき、ドア窓122の前方側端部122b、及び、後方側端部122cが窓枠130内に嵌合し、窓用仕切り10の枠嵌合部14が窓枠130の嵌合溝132に当接し、封止体11でドア窓122の上端部122a、窓枠130、窓用仕切り10の後端16との間の隙間を封止している。このため、窓装着アセンブリ260は、車両100の室内を風雨から保護する。
【0036】
例えば車両100が故障した場合であって、直ぐに通信システム200を使用したい場合があり得る。この場合、作業者は、その車両100のドア窓122を開け、窓装着アセンブリ260をその車両100から取り外す。そして、通信システム200の衛星通信アンテナ210、送受信装置220、アンテナ制御装置230及びバッテリ240を別の車両(図示せず)に乗せ換える。
【0037】
別の車両の車種が図1及び図2に示す車両100と同じ車種であるなど、別の車両のドア窓122の形状及び大きさが図1及び図2に示す車両100のドア窓122と同じである場合、車両100から取り外した窓用仕切り10をそのまま用いる。
別の車両のドア窓122の上端部122aが図1及び図2に示す車両100のドア窓122の上端部122aよりも短い場合、車両100から取り外した窓用仕切り10を上述したように適宜に切断して用いる。
別の車両のドア窓122の上端部122aが図1及び図2に示す車両100のドア窓122の上端部122aよりも長い場合、窓装着アセンブリ260の封止体11の領域を大きくするか、窓用仕切り10の後端側に、車両100に取り付けるときに切断した切断片18を配置する。このとき、窓用仕切り10と、切断した切断片18とを密着させてもよく、離間させてもよい。離間させる場合、窓用仕切り10の後端16と切断片18との間を封止体11で埋める。
なお、窓用仕切り10を別の車両に乗せ換える場合、封止体11は何れも新しくする。
【0038】
このように、同じ車種、異なる車種であっても、車両100のドア窓122に窓用仕切り10を適宜に取り付け、封止体11でケーブル250とともに封止することで、ケーブル250を車両100の外側から内側、又は、内側から外側に通した状態で、ドア窓122を封止することができる。したがって、窓装着アセンブリ260を用いることで、ドア窓122を通してケーブル250を車両の外側から内側、又は、内側から外側に通した状態で、車両100の室内を風雨から保護する。
【0039】
このように、本実施形態に係る窓装着アセンブリ260を用いることで、車両100のボディへの穴あけをせずに、リアドア120のドア窓122を通して、車両100の外側から内側に、又は、内側から外側にケーブル250を通すことができる。窓用仕切り10は、ドア窓122の上端部122aと、窓枠130との間に、ケーブル250を通すスペーサとして用いることができる。窓用仕切り10は、ケーブル250に負荷をかけることを防止することができる。そして、窓枠130の上端やドア窓122の上端部122aが適宜にカーブしていても、窓嵌合部12のスリット30により、枠嵌合部14及び窓嵌合部12を窓枠130の形状に応じて追従して曲げることができ、枠嵌合部14を窓枠130に密着させることができる。窓用仕切り10の枠嵌合部14が窓枠130に当接し、かつ、側板26a,26bのうちドア窓122の外側の側板26bにより、雨水が窓用仕切り10を通して車両100の内側に流れることを防止し、車両100の室内を風雨から保護することができる。また、封止体11は、封止体11とケーブル250との間、封止体11と窓用仕切り10との間、封止体11とドア窓122との間、封止体11と窓枠130との間をそれぞれ密封することができる。封止体11は、適宜の柔軟素材であるため、ケーブル250に負荷をかけることを防止することができる。このように、窓装着アセンブリ260は、窓用仕切り10の枠嵌合部14を車両100の窓枠130に嵌合させ、封止体11でケーブル250を通す隙間を封止することで車両100の防水性を維持することができる。
【0040】
ドア窓122に取り付ける窓用仕切り10は再利用することができる。このため、例えば車両100が故障してしまった場合、同じ車種又は異なる車種の車両に通信システム200を載せ代えて使用することが可能となる。このとき、本実施形態に係る窓装着アセンブリ260を用いることで、車両100に容易に取り付けることができる。窓用仕切り10は柔軟性を持った材質で形成されるため、車種の違いによる窓形状にも追従して変形・密着し、防水性を確保することができる。そのため、窓用仕切り10は、種々の車両に適用することができる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、車両への穴あけなど、特別な作業なしで車両100の外側から内側、又は、内側から外側にケーブル250を通すことが可能な窓用仕切り10、窓装着アセンブリ260、窓装着アセンブリ260を含む通信システム200、及び、窓装着アセンブリ260の車両100への取付方法を提供することができる。
【0042】
なお、窓用仕切り10は、切断位置16での切断前の例えば900mmの全長のうち、後端からX軸に沿って150mm程度の位置まで、例えば10mmごとなどにY軸方向に沿ってミシン目などの切断補助部が形成されることが好適である。ミシン目は、車種ごとに異なるドア窓122の大きさに合わせてユーザが窓用仕切り10の切断の目安として用いることができる。ミシン目を設ける代わりに、例えば枠嵌合部14に長さの指標を付してもよい。X軸方向に沿って等間隔に並ぶ複数のスリット30を、指標の代わりに用いることができる。スリット30のうち嵌合溝24の底面に近接する位置同士の間隔を例えば50mmとすると、作業者は、スリット30の数を数えることにより、窓用仕切り10の後端16からの概略の長さを認識することができる。
【0043】
本実施形態の係る窓用仕切り10は、左側のリアドア120のドア窓122に取り付ける例について説明したが、窓用仕切り10は、右側のリアドア124のドア窓126に使用することができる。この場合、窓用仕切り10が右側のリアドア124のドア窓126に取り付けられる場合、左側のリアドア120のドア窓122に取り付ける場合に対して、側板26a,26bが車両100の内側に向くか、外側に向くかが、反対になるだけである。また、左側のリアドア120のドア窓122及び右側のリアドア124のドア窓126の両方に窓用仕切り10を含む窓装着アセンブリ260を取り付けてもよい。
また、本実施形態の係る窓用仕切り10を含む窓装着アセンブリ260は、リアドア120のドア窓122でなく、助手席のドアのドア窓に取り付けてもよい。
【0044】
本実施形態では、ケーブル250は、ドア窓122のうちセンターピラー側部位140でなく、リアピラー側部位150の位置を通す例について説明したが、センターピラー側部位140の位置で通してもよい。この場合、図3に示す窓用仕切り10は、図3中の左側を後方とし、右側を前方として用いることが好適である。
【0045】
ドア窓122,126の上部には、サイドバイザーやドアバイザーと称されるカバーが取り付けられている車両100がある。この場合であっても、本実施形態に係る窓装着アセンブリ260は、車両100に取り付けて使用することができる。
【0046】
車両100では、リアドア120,124のドア窓122,126としては、ガラス材の代わりに、金属材や樹脂材の板状部材があり得る。本実施形態では、これら板状部材もドア窓の一種として含まれる。
【0047】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、車両への穴あけなど、特別な作業なしで車両100の外側から内側、又は内側から外側にケーブル250を通すことが可能な窓用仕切り10、窓装着アセンブリ260、窓装着アセンブリ260を含む通信システム200、及び、窓装着アセンブリ260の車両への取付方法を提供することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、この出願の出願時の特許請求の範囲を付記する。
[付記1]
車両のドアの、開閉可能なドア窓と前記ドア窓の窓枠との間に、屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りにおいて、
前記ドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する窓嵌合部と、
前記窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、前記車両の前記ドアの窓枠に嵌合可能な板状の枠嵌合部と
を有する、窓用仕切り。
[付記2]
前記窓嵌合部は、
前記嵌合溝を形成する1対の側板と、
前記1対の側板に設けられ、前記1対の側板のうち前記枠嵌合部とは反対側に設けられるスリットと
を有する、付記1に記載の窓用仕切り。
[付記3]
前記窓嵌合部及び前記枠嵌合部は、所望の長さに切断可能である、
付記1又は付記2に記載の窓用仕切り。
[付記4]
車両のドアの、開閉可能なドア窓と前記ドア窓の窓枠との間に、屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りと、
前記窓用仕切りと前記ドア窓と前記窓枠との間にケーブルを通し、前記窓用仕切りが前記窓枠に当接した状態で、前記窓用仕切り、前記ドア窓及び前記窓枠と前記ケーブルとの間の隙間を封止する封止体と、を有し、
前記窓用仕切りは、
前記ドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する窓嵌合部と、
前記窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、前記車両の前記ドアの前記窓枠に嵌合可能な板状の枠嵌合部と
を有する、窓装着アセンブリ。
[付記5]
車両の外側に取り付けられるアンテナと、
前記車両の外側に取り付けられ、前記アンテナの送受信装置と、
前記車両の内側に配置され、前記送受信装置を制御する制御装置と、
前記車両の外側から内側、又は内側から外側に通し、前記送受信装置と前記制御装置とを接続するケーブルと、
屋内と屋外とを接続するケーブルを通すための窓用仕切りと、有し、
前記窓用仕切りは、
前記車両のドアの、開閉可能なドア窓の端部が嵌合する嵌合溝を有する窓嵌合部と、
前記窓嵌合部から弾性変形可能なゴム材又は樹脂材で一体成型されて延び、前記車両の前記ドアの窓枠に嵌合可能な板状の枠嵌合部と
を有する、通信システム。
[付記6]
付記4に記載の窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法であって、
前記車両の前記ドアの前記ドア窓の端部に前記窓用仕切りの前記窓嵌合部を嵌合させること、
前記車両の外側又は内側から前記ドア窓の端部と前記ドア窓の前記窓枠との間に前記ケーブルを通すこと、
前記窓用仕切りと前記ドア窓と前記窓枠との間に前記ケーブルを通した状態で、前記枠嵌合部を前記窓枠に当接させること、
前記枠嵌合部が前記窓枠に当接した状態で、前記封止体を用いて前記窓用仕切り、前記ドア窓及び前記窓枠と前記ケーブルとの間の隙間を封止すること
を含む、窓装着アセンブリを車両に取り付ける取付方法。
【符号の説明】
【0049】
10…窓用仕切り、11…封止体、12…窓嵌合部、14…枠嵌合部、14a…端部、16…切断位置、18…切断片、22…ブロック体、24…嵌合溝、26a,26b…側板、30…スリット、100…車両、110…ルーフキャリアバー、120…リアドア、120a…ドアモール、122…ドア窓、122a…上端部、122b…前方側端部、122c…後方側端部、123a,123b…角、130…窓枠、132…嵌合溝、140…センターピラー側部位、150…リアピラー側部位、160…ルーフ側部位、200…通信システム、210…衛星通信アンテナ、220…送受信装置、230…アンテナ制御装置、240…バッテリ、250…ケーブル、260…窓装着アセンブリ

図1
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