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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240729BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240729BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 H
B22D17/20 J
B22D17/20 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021030100
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131247
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 達也
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋嗣
(72)【発明者】
【氏名】常石 健悟
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241034(JP,A)
【文献】特開2001-287249(JP,A)
【文献】特開2002-178377(JP,A)
【文献】特開平08-156060(JP,A)
【文献】特開2009-119654(JP,A)
【文献】特開2005-074828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内で計量された成形材料を金型装置に充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を備え、
前記射出装置は、前記シリンダの長手方向に、第1の温度制御器、及び、第2の温度制御器を備え、
前記第2の温度制御器は、当該第1の温度制御器よりも前記シリンダのノズル側に設けられ、
前記制御装置は、
前記第1の温度制御器に対する第1の設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する初期設定温度設定部と、
異なる前記初期設定温度の各々で前記成形材料の計量工程を制御する計量処理部と、
前記計量処理部によって前記計量工程が行われている間の計量時間を、前記初期設定温度毎に計測する計量時間計測部と、
前記計量時間計測部で、前記初期設定温度毎に計測された複数の前記計量時間に基づいて、前記第1の温度制御器に対する前記第1の設定温度を決定し、前記第1の設定温度よりも低くなるように、前記第2の温度制御器に対する第2の設定温度を決定する設定温度決定部と、を備える、
射出成形機。
【請求項2】
シリンダ内で計量された成形材料を金型装置に充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記シリンダに対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する初期設定温度設定部と、
異なる前記初期設定温度の各々で前記成形材料の計量工程を制御する計量処理部と、
前記計量処理部によって前記計量工程が行われている間の計量時間を、前記初期設定温度毎に計測する計量時間計測部と、
前記計量時間計測部で、前記初期設定温度毎に計測された複数の前記計量時間に基づいて、前記シリンダに対する前記設定温度を決定する設定温度決定部と、を備え、
前記設定温度決定部は、前記複数の計量時間のうち最も短い計量時間より、保圧工程の完了から脱圧工程の開始までの冷却時間が長い場合当該最も短い計量時間に対応する前記初期設定温度よりも低い温度であり、且つ、当該冷却時間よりも短い計量時間に対応する温度で前記シリンダに対する前記設定温度を決定する、
出成形機。
【請求項3】
シリンダ内で計量された成形材料を金型装置に充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記シリンダに対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する初期設定温度設定部と、
異なる前記初期設定温度の各々で前記成形材料の計量工程を制御する計量処理部と、
前記計量処理部によって前記計量工程が行われている間の計量時間を、前記初期設定温度毎に計測する計量時間計測部と、
前記計量時間計測部で、前記初期設定温度毎に計測された複数の前記計量時間に基づいて、前記シリンダに対する前記設定温度を決定する設定温度決定部と、
前記計量工程におけるスクリュの回転速度を設定する回転速度決定部と、を備え、
前記回転速度決定部は、設定温度決定部で決定した前記設定温度で、異なる回転速度の各々で前記計量工程が行われた場合に計測された複数の前記計量時間と、保圧工程の完了から脱圧工程の開始までの冷却時間とに基づいて、回転速度を決定する、
出成形機。
【請求項4】
シリンダ内で計量された成形材料を金型装置に充填する射出装置と、
前記射出装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記シリンダに対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する初期設定温度設定部と、
異なる前記初期設定温度の各々で前記成形材料の計量工程を制御する計量処理部と、
前記計量処理部によって前記計量工程が行われている間の計量時間を、前記初期設定温度毎に計測する計量時間計測部と、
前記計量時間計測部で、前記初期設定温度毎に計測された複数の前記計量時間に基づいて、前記シリンダに対する前記設定温度を決定する設定温度決定部と、
前記計量工程におけるスクリュの回転速度を設定する回転速度決定部と、を備え、
前記回転速度決定部は、前記設定温度決定部によって決定された前記設定温度による前記計量工程での前記計量時間が、保圧工程の完了から脱圧工程の開始までの冷却時間より長い場合に、回転速度を上昇させ、上昇させた回転速度で前記計量工程が行われた場合に計測された前記計量時間と冷却時間とに基づいて、回転速度を決定する、
出成形機。
【請求項5】
前記初期設定温度設定部は、前記シリンダの長手方向に沿って外面を分割した複数のゾーンのうち、所定のゾーンに対して前記初期設定温度を設定し、
前記設定温度決定部は、前記所定のゾーンに対して前記設定温度を決定する、
請求項3又は4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記初期設定温度設定部は、前記シリンダ内で固形の前記成形材料が存在する区間に対応するゾーンのうち、前記所定のゾーンの前記初期設定温度を設定し、
前記設定温度決定部は、前記所定のゾーンの前記設定温度を決定する、
請求項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記初期設定温度設定部は、前記スクリュの供給部と圧縮部に対応するゾーンのうち、前記所定のゾーンに対して、前記初期設定温を設定し、
前記設定温度決定部は、前記所定のゾーンに対して、前記設定温度を決定する、
請求項に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記初期設定温度設定部は、前記スクリュの供給部に対応する、前記所定のゾーンに対して、前記初期設定温度を設定し、
前記設定温度決定部は、前記所定のゾーンに対して、前記設定温度を決定する、
請求項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、成形材料としての樹脂ペレットが供給されるシリンダと、樹脂ペレットを溶融させるためにシリンダを加熱するヒータとを備えている。射出成形機は、シリンダ内で樹脂ペレットを溶融させ、溶融させた樹脂を金型装置内のキャビティ空間に充填させることで、成形品を製造している。
【0003】
そして、射出成形機における、樹脂ペレットを溶融させるためのヒータ制御について様々な提案がなされている。例えば、引用文献1に記載された技術においては、樹脂ペレットを供給するホッパを設置したヘッドストックにおけるホッパの下側部分の設定温度を、ヘッドストックに最も近いバンドヒータによって加熱されるシリンダの設定温度に応じて自動的に設定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-119654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ホッパの下部の設定温度を自動的に設定する技術であって、成形材料の溶融状態を考慮して、ヒータの温度を設定する技術ではない。シリンダに供給される成形材料は、樹脂供給口近傍から加熱することで、シリンダの先端部に完全に溶融した状態として蓄積されるまでの計量時間を短縮できる。一方、成形材料を加熱しすぎた場合には、シリンダの根本付近で成形材料が溶け、スクリュに成形材料が付着する等の理由で、シリンダの先端部まで進まず、結果として計量時間が延びる場合がある。
【0006】
本発明の一態様は、適切な温度で成形材料を加熱制御することで、計量時間を短縮して、生産性を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る射出成形機は、シリンダ内で計量された成形材料を金型装置に充填する射出装置と、前記射出装置を制御する制御装置と、を備え、前記射出装置は、前記シリンダの長手方向に、第1の温度制御器、及び、第2の温度制御器を備え、前記第2の温度制御器は、当該第1の温度制御器よりも前記シリンダのノズル側に設けられ、前記制御装置は、前記第1の温度制御器に対する第1の設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する初期設定温度設定部と、異なる前記初期設定温度の各々で前記成形材料の計量工程を制御する計量処理部と、前記計量処理部によって前記計量工程が行われている間の計量時間を、前記初期設定温度毎に計測する計量時間計測部と、前記計量時間計測部で、前記初期設定温度毎に計測された複数の前記計量時間に基づいて、前記第1の温度制御器に対する前記第1の設定温度を決定し、前記第1の設定温度よりも低くなるように、前記第2の温度制御器に対する第2の設定温度を決定する設定温度決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、適切な温度で成形材料を加熱制御することで、計量時間を短縮して、生産性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態による射出成形機の要部を示す図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図5図5は、計量時間と初期設定温度との対応関係を例示した図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る射出成形機における、第1ゾーンにおける設定温度を設定して制御を開始するまでの処理を示したフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係る制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る射出成形機における、第1ゾーンにおける設定温度を設定して回転速度を調整する処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、第1実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0018】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
なお、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0047】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0049】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0050】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0051】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0053】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0077】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0083】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0084】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0085】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0086】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0087】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0088】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0089】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0090】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0091】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0092】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0093】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0094】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0095】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0096】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0097】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0098】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0099】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態による射出装置300の要部を示す図である。図3に示されるように、第1の実施形態に係る射出装置300は、シリンダ310と、シリンダ310内で樹脂を送るスクリュ330と、を有する。また、本実施形態に係る射出装置300は、シリンダ310の外周に、加熱器313として、ゾーン毎に分割された5個の加熱器313_1~313_5を備えている。
【0100】
スクリュ330は、スクリュ回転軸332と、スクリュ回転軸332の周りに螺旋状に設けられるフライト333とを一体的に有する。スクリュ330が回転すると、スクリュ330のフライト333が動き、スクリュ330のねじ溝内に充填された樹脂ペレットが前方に送られる。
【0101】
スクリュ330は、例えば、軸方向に沿って後方(ホッパ335側)から前方(ノズル320側)にかけて、供給部330a、圧縮部330b、計量部330cとして区別される。供給部330aは、樹脂ペレットを受け取り前方に搬送する部分である。圧縮部330bは、供給された樹脂を圧縮しながら溶融する部分である。計量部330cは、溶融した樹脂を一定量ずつ計量する部分である。スクリュ330のねじ溝の深さは、供給部330aで深く、計量部330cで浅く、圧縮部330bにおいて前方に向かうほど浅くなっている。なお、スクリュ330の構成は特に限定されない。例えばスクリュ330のねじ溝の深さは、一定であってもよい。本実施形態においては、供給部330a、圧縮部330b、計量部330cの長さの比が、約50%、約25%、約25%となる場合について説明するが、当該長さの比は一例として示したものであって、成形材料の種類や、実施態様に応じて異なる。
【0102】
射出成形機10は、シリンダ310内で溶融した樹脂をノズル320から射出し、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。金型装置800は固定金型及び可動金型で構成され、型締め時に固定金型と可動金型との間にキャビティ空間801が形成される。キャビティ空間801で冷却固化された樹脂は、型開き後に成形品として取り出される。成形材料としての樹脂ペレットは、ホッパ335からシリンダ310の後部に供給される。
【0103】
シリンダ310の所定位置に樹脂供給口311が形成され、樹脂供給口にはホッパ335が接続されている。ホッパ335内の樹脂ペレットが樹脂供給口を通ってシリンダ310内に供給される。
【0104】
シリンダ310は、ノズル320に至る長手方向に沿って6つのゾーンに分割されている。本実施形態では、6つのゾーンのうち、5つのゾーン(ゾーンZ1~Z5)に加熱器313(ヒータ)が設けられ、1つのゾーン(ゾーンZ0)には冷却器312が設けられている。また、各ゾーンには、温度検出器314_0~314_5が設けられている。
【0105】
本実施形態では、樹脂供給口近傍から順に、第0ゾーンZ0、第1ゾーンZ1、第2ゾーンZ2、第3ゾーンZ3、第4ゾーンZ4、第5ゾーンZ5と称する。第0ゾーンZ0は、ホッパ335が接続されている樹脂供給口に設けられている。第1ゾーンZ1、及び第2ゾーンZ2は、樹脂ペレットを受け取り前方に搬送する供給部330aに設けられている。第3ゾーンZ3は、供給された樹脂を圧縮しながら溶融する圧縮部330bに設けられている。第4ゾーンZ4は、溶融した樹脂を一定量ずつ計量する計量部330cに設けられている。第5ゾーンZ5は、ノズル320近傍に設けられている。なお、本実施形態は、第0ゾーンZ0~第5ゾーンZ5の各々について温度制御を行う例について説明するが、本実施形態で示したゾーン単位で温度制御を行う手法に制限するものではなく、シリンダ310の長さや成形材料等などの実施態様に応じて温度制御を行う区間が定められるものとする。
【0106】
第0ゾーンZ0には、冷却器312が、シリンダ310の外周に配置されている。
【0107】
冷却器312は、複数の加熱器313_1~313_5よりも後方(樹脂供給口近傍)に設けられる。冷却器312が設けられた第0ゾーンZ0は、第1ゾーンZ1から伝わってくる熱によって、昇温していく。そこで、冷却器312は、制御装置700からの制御によって、シリンダ310の後部を冷却し、シリンダ310の後部やホッパ335内で樹脂ペレットのブリッジ(塊化)が生じないように、樹脂ペレットの表面が溶融しない温度にシリンダ310の後部の温度を保つ。冷却器312は、水や空気などの冷媒の流路321を有する。そして、制御装置700は、流路321に流れる流量を調整することで、温度の調整を行う。ゾーンZ0の温度は、温度検出器314_0により測定される。
【0108】
第1ゾーンZ1、第2ゾーンZ2、第3ゾーンZ3、第4ゾーンZ4、及び第5ゾーンZ5には、個別に通電される加熱器313_1~313_5がそれぞれシリンダ310の外周に配置されている。加熱器313_1~313_5としては、例えばシリンダ310を外側から加熱するバンドヒータが用いられる。バンドヒータは、シリンダ310の外周を囲むように設けられる。換言すれば、シリンダ310の外周には、第1ゾーンZ1~第5ゾーンZ5に対応して面状の加熱器313_1~313_5が取り付けられている。加熱器313_1~313_5に通電することによりシリンダ310内で樹脂ペレットを加熱して、溶融させることができる。
【0109】
複数の加熱器313_1~313_5は、シリンダ310の長手方向に沿って配列され、シリンダ310を長手方向に分割した、第1ゾーンZ1~第5ゾーンZ5の各々について個別に加熱する。各ゾーンZ1~Z5の温度が設定された温度になるように、複数の加熱器313_1~313_5が制御装置700によってフィードバック制御される。各ゾーンZ1~Z5の温度は、温度検出器314_1~314_5により測定される。射出成形機10の動作は、制御装置700によって制御される。
【0110】
図4は、一実施形態に係る制御装置700の構成要素を機能ブロックで示す図である。図4に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図4に示すように、制御装置700は、取得部601と、計量処理部602と、計量時間計測部603と、充填処理部604と、初期温度設定部605と、設定温度決定部606と、温調処理部607と、を備える。取得部601は、例えば、温度検出器314_0~S4が測定した温度を示す情報と、予め設定されている設定値等を取得する。初期温度設定部605は、シリンダ310に対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する。計量処理部602は、例えば、異なる初期設定温度の各々で、シリンダ310でキャビティ空間801に充填するための成形材料を計量する計量工程を制御する。計量時間計測部603は、計量処理部602によって計量工程が行われている間の計量時間を計測する。充填処理部604は、充填工程を制御する。設定温度決定部606は、初期設定温度毎に計測された複数の計量時間に基づいて、成形材料を充填するためのシリンダ310のゾーン毎に、加熱器313_1~313_5や冷却器312を制御するための設定温度を決定する。温調処理部607は、温度設定部605により設定された温度に従って、加熱器313_1~313_5や、冷却器312を制御する。なお、各構成の具体的な説明について後述する。
【0111】
次に、射出成形機10の動作について説明する。
【0112】
計量工程では、計量処理部602が、計量モータ340を回転駆動し、スクリュ330を回転させる。そうすると、スクリュ330のフライト(ねじ山)が動き、スクリュ330のねじ溝内に充填された樹脂ペレット(固体状の成形材料)が前方に送られる。樹脂ペレットは、シリンダ310内を前方に移動しながら、シリンダ310を介した加熱器313_1~313_5からの熱などで加熱されることで、徐々に溶融される。そして、樹脂ペレットは、シリンダ310の先端部において完全に溶融した状態となる。そして、液状の成形材料(樹脂)がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330は後退する。
【0113】
計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送信する。スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0114】
取得部601は、スクリュ330の回転速度として設定されている設定値を取得する。
【0115】
スクリュ330が所定距離後退し、スクリュ330の前方に所定量の液状の成形材料(樹脂)が蓄積されると、計量処理部602は計量モータ340の回転を停止させ、スクリュ330の回転を停止させる。
【0116】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0117】
取得部601は、荷重検出器360からの荷重の検出結果に基づいて、スクリュ330の位置を取得する。
【0118】
計量処理部602は、スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積された時点で、計量工程の処理を終了する。
【0119】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定されてもよい。
【0120】
計量時間計測部603は、計量処理部602によって計量工程が行われている間の計量時間を計測する。
【0121】
次に、計量時間の計測を行う理由について説明する。シリンダ310の温度を上昇させた場合には、成形材料が溶融するまでの時間を短縮できるので可塑化能力の向上、及び溶融状態を改善できる。
【0122】
特に、供給部330aなどの固形の成形材料(樹脂ペレット)が存在する区間を有するゾーンZ0~Z2の温度を高くすることで、Z3以降の区間(例えば、圧縮部330bや計量部330cを含む区間)で固形の成形材料の溶融を早められる。これにより、可塑化能力の向上、換言すれば、スクリュ330が回転した際に成形材料をノズル320側に送る量を増加できる。
【0123】
一方で、樹脂供給口から供給部330aを含んだ、ゾーンZ0~Z2で、固形の成形材料が溶融すると、計量時間が延びる場合がある。これは、軟化した成形材料が、スクリュ330などに付着することで、成形材料がノズル320側に送られる効率が低下することによる。
【0124】
換言すれば、加熱器313_1~313_2、及び冷却器312に対する設定温度を向上させるほど、溶融を早められるので、計量時間を短縮できるが、所定の温度以上を設定すると、計量時間が延びることになる。
【0125】
そこで、本実施形態に係る射出成形機10では、シリンダ310に対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を複数設定し、複数の初期設定温度の各々について計量工程を行うこととした。そして、設定温度決定部606が、計量時間計測部603により計測される、初期設定温度毎に計測された複数の計量時間に基づいて、加熱器313_1~313_2、及び冷却器312に対して適切な設定温度を決定する。
【0126】
本実施形態は、成形材料である樹脂ペレットの投入口から、計量工程の開始時においてスクリュ330を用いて成形材料を供給するための区間である供給部330aに対応する、第1ゾーンZ1の設定温度を決定する例とする。本実施形態では、第1ゾーンZ1の設定温度を決定する例について説明するが、他のゾーン(例えば第0ゾーンZ0や、第2ゾーンZ2)についても同様の手法で設定温度を決定できるものとして説明を省略する。
【0127】
初期設定温度設定部605は、シリンダ310に対する設定温度を決定するために用いられる、初期設定温度を設定する。初期設定温度は、計量時間の計測が行われる毎に設定される。例えば、初期設定温度設定部605は、計量時間計測部603によって計測された計量時間に基づいて、第1ゾーンに対応する加熱器313_1の次回の初期設定温度を設定する。本実施形態では、今回の計量時間が、前回の計量時間と比べて長くなったか否かに基づいて、初期設定温度を設定する。
【0128】
なお、本実施形態では、初期設定温度設定部605が、冷却器312及び加熱器313_1~313_5に対して設定する温度のうち、成形に最適な設定温度を決定するまでの仮の温度を初期設定温度と称する。
【0129】
設定温度決定部606は、冷却器312及び加熱器313_1~313_5に対して設定された初期設定温度を比較し、計量時間が最も短かった初期設定温度(換言すれば、成形に最適な温度)を、設定温度と決定する。
【0130】
本実施形態の初期設定温度設定部605は、成形するための最も適切な設定温度を決定するために、初期設定を初期値から増加させていき、計量時間計測部603が、初期設定温度毎の計量時間を計測する。そして、計量時間が最も短くなる初期設定温度が特定できた際に、設定温度決定部606は、計量時間が最も短くなる初期設定温度を、設定温度として決定する。以降は、温調処理部607が、設定温度になるように(第1ゾーンZ1の)加熱器313_1を制御して、成形品を成形する。
【0131】
図5は、計量時間と初期設定温度との対応関係を例示した図である。図5に示されるように、最初は、初期設定温度設定部605が初期設定温度を大きくしていくほど、計量時間計測部603が計測する計量時間が短縮されていく。しかしながら、初期設定温度が、温度T0より大きくなった段階で、計量時間が増加に転じていく。これは、初期設定温度が大きくなったことで溶融した成形材料がスクリュ330等に付着し始めたため、成形材料が前に進まなくなったと考えられる。そこで、図5に示される例では、設定温度決定部606は、計量時間が増加に転ずる前の温度T0を、設定温度として決定する。
【0132】
初期温度設定部605及び設定温度決定部606は、第0ゾーンZ0、第2ゾーンZ2~第5ゾーンZ5についても設定温度を決定する。第0ゾーンZ0、及び第2ゾーンZ2の設定温度は、第1ゾーンZ1と同様の手法で決定する。また、第3ゾーンZ3~第5ゾーンZ5は、第1ゾーンZ1と同様の手法で決定してもよいし、他の手法で決定してもよい。
【0133】
温調処理部607は、第0ゾーンZ0に配置された冷却器312を制御して、第0ゾーンZ0の設定温度になるように調整する。本実施形態の冷却器312は、冷却用の単位時間の範囲内でオン/オフ制御ができる。温調処理部607は、温度検出器314_0で検出された温度と、冷却器312の制御と、により、第0ゾーンZ0が設定温度になるように調整できる。
【0134】
温調処理部607は、第1ゾーンZ1~第5ゾーンZ5に配置された加熱器313_1~313_5を制御して、第1ゾーンZ1~第5ゾーンZ5の各々に設定された設定温度になるように調整する。本実施形態の加熱器313_1~313_5は、加熱用の単位時間の範囲内でオン/オフ制御ができる。例えば、温調処理部607は、出力が50%の場合、"加熱用の単位時間/2"の時間がオンとなり、"加熱用の単位時間/2"の時間がオフとなるよう制御する。また、温調処理部607は、出力が最大の場合、継続してオンとなるよう制御する。温調処理部607は、温度検出器314_1~314_5で検出された温度と、加熱器313_1~313_5の制御と、により、第1ゾーンZ1~第5ゾーンZ5の各々が設定温度になるように調整できる。
【0135】
本実施形態の温調処理部607は、温度検出器314_0~314_5の測定温度と、初期設定温度又は設定温度と、の偏差に基づいて、冷却器312及び加熱器313_1~313_5のフィードバック制御を行うことで、初期設定温度又は設定温度になる精度を向上できる。なお、フィードバック制御は、例えばPID制御などの従来と同様の手法を行えばよいものとして説明を省略する。
【0136】
充填工程では、充填処理部604が、射出モータ350を回転駆動し、スクリュ330を前進させ、型締め状態の金型装置800内のキャビティ空間801に溶融樹脂(溶融状態の成形材料)を充填する制御を行う。キャビティ空間801で溶融状態の成形材料が冷却によって収縮するので、熱収縮分の成形材料を補充するため、保圧工程において、スクリュ330にかかる樹脂圧力(成形材料の射出圧)が所定の圧力に保たれる。
【0137】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0138】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0139】
図6は、本実施形態に係る射出成形機10における、第1ゾーンZ1における設定温度を決定するまでの処理を示したフローチャートである。図6に示される例では、第1ゾーンZ1の設定温度を決定する例について説明するが、他のゾーン(例えば、第0ゾーンZ0や、第2ゾーンZ2)に対して同様の制御を行う。なお、第0ゾーンZ0で温度を調整する場合には冷却器312を用いる。本実施形態においては、初期設定温度のみ変化させ、他の条件(例えば、スクリュ330の回転数やシリンダ310の位置などの条件)は固定させた上で処理を行うこととした。
【0140】
まず、初期設定温度設定部605が、第1ゾーンZ1の初期設定温度の初期値を設定する(S401)。なお、初期値は、実施態様や成形材料等に応じて定められていてもよいし、ユーザにより入力されてもよい。
【0141】
計量処理部602が、計量モータ340を回転駆動させて、スクリュ330を回転させることで、計量工程を実行する(S402)。
【0142】
計量時間計測部603は、現在設定されている初期設定温度の場合における、計量工程に要した計量時間を計測する(S403)。
【0143】
初期設定温度設定部605が、第1ゾーンZ1の初期設定温度を上昇させ、前回より高い初期設定温度を設定する(S404)。
【0144】
計量処理部602が、計量モータ340を回転駆動させて、スクリュ330を回転させることで、計量工程を実行する(S405)。
【0145】
計量時間計測部603は、現在設定されている初期設定温度の場合における、計量工程に要した計量時間を計測する(S406)。
【0146】
初期設定温度設定部605は、今回計測された計量時間が、前回より長くなった否かを判定する(S407)。初期設定温度設定部605が、前回より長くなっていない(換言すれば、計量時間が短くなった)と判定した場合(S407:No)、初期設定温度設定部605は、計量工程で温調処理部607により行われていた第1ゾーンZ1の加熱器313_1の出力が最大であるか否かを判定する(S408)。初期設定温度設定部605が第1ゾーンZ1の加熱器313_1の出力が最大であると判定した場合(S408:Yes)S410の処理に遷移する。
【0147】
一方、初期設定温度設定部605が第1ゾーンZ1の加熱器313_1の出力が最大ではないと判定した場合(S408:No)、初期設定温度を上昇させ、前回より高い初期設定温度を設定し(S409)、再びS402から処理を行う。上昇させる温度は、予め設定された度数であればよく、実施態様に応じて定められるものとする。本実施形態においては、設定した初期設定温度で第1ゾーンZ1から検出される温度を安定させてから、S402の計量工程を行うこととする。本実施形態は、設定した初期設定温度で第1ゾーンZ1から検出される温度を安定させてから、計量工程を行う例について説明するが、当該手法に制限するものではなく、加熱器313_1の出力を上昇させながら、計量工程を行ってもよい。
【0148】
一方、初期設定温度設定部605は、今回計測された計量時間が、前回より長くなったと判定した場合(S407:Yes)、または第1ゾーンZ1の加熱器313_1の出力が最大であると判定した場合(S408:Yes)、設定温度決定部606は、計測された計量時間のうち、最も短い計量時間に対応する初期設定温度を、設定温度として決定する(S410)。
【0149】
本実施形態に係る射出成形機10は、上述した構成を備えることで、計量工程において適切な設定温度で加熱器313_1~313_2や冷却器312を制御できる。これにより、可塑化能力の向上できる。具体的には、樹脂ペレット(固形の成形材料)を投入する樹脂供給口からシリンダ310の根本近傍(例えば、第0ゾーンZ0~第2ゾーンZ2などの供給部330aを含んだ区間)において、上述した処理で設定された設定温度に従って加熱器313_1~313_2や冷却器312を制御することで、樹脂ペレットを溶融状態になるまでの計量時間の短縮と、根本近傍での樹脂ペレットが溶融を抑止するので計量時間の延長の抑止と、の両立を実現できる。これにより、サイクル短縮が可能となるため、生産性の向上を実現できる。
【0150】
さらに、射出成形機10は、上述した構成を備えることで、計量工程において適切な設定温度で加熱器313_1~313_2や冷却器312を制御できるので、溶融状態を改善できる。溶融状態が改善することで、例えば、未溶融樹脂混入によるクラックなど、溶融状態が悪いことに起因する成形品不具合を改善できる。溶融状態が改善することで、背圧を低くできるので、シリンダ310内でせん断発熱減少や、樹脂劣化を抑止できる。さらには、背圧を低くすることで、成形材料がシリンダ310内で詰まった場合に成形材料にかかる圧力が低くなるので、かじりを低減できるので、スクリュ330の寿命低減等を抑止できる。
【0151】
さらには、第0ゾーンZ0~第2ゾーンZ2において、計量工程で適切な設定温度で加熱器313_1~313_2や冷却器312を制御することで、成形材料(樹脂ペレット)が容易に溶融するため、第3ゾーンZ3~第5ゾーンZ5で必要以上に設定温度を上昇させる必要がなくなる。換言すれば、第3ゾーンZ3~第5ゾーンZ5等の根本近傍以外の区間で設定温度を下げることができる。これにより、ノズル320から出てくる成形材料(樹脂)の温度を下げられるため、冷却時間を短縮できる。したがって、サイクル短縮を実現できる。
【0152】
さらには、シリンダ310のゾーン毎の設定温度を自動的に設定できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0153】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態においては、最も短い計量時間に対応する初期設定温度を、設定温度として決定する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は最も短い計量時間に対応する初期設定温度を、設定温度として決定する例に制限するのものではない。換言すれば、実施態様によっては、計量時間を遅くしてもよい状況が存在する。例えば、冷却時間が比較的長い場合である。そこで、変形例では、設定温度決定部606が、計測工程で計測された複数の計量時間と、冷却時間と、に基づいて設定温度を決定する例について説明する。
【0154】
ところで、計量工程は、その前のショットの冷却工程中に行われる。すなわち、次のショットの計量工程を現ショットの冷却工程中に行う。このため、計量時間は、冷却時間を超えなければよい。
【0155】
そこで、本変形例における制御装置700においては、第1の実施形態の図6で示される処理手順S401~S406に従って、計量処理部602が、初期設定温度毎に計量時間を計測する。そして、設定温度決定部606は、計測された複数の計量時間のうち、冷却時間よりも短い計量時間を特定し、当該計量時間に対応する初期設定温度を、設定温度として決定する。なお、冷却時間よりも短い計量時間が複数存在する場合には、複数の計量時間から、任意の計量時間を特定すればよい。例えば、設定温度決定部606は、冷却時間よりも短い複数の計量時間のうち、最も長い計量時間を特定し、特定された計量時間に対応する初期設定温度を、設定温度として決定してもよい。本変形例では、計測工程に要する計測時間が、冷却時間より短くなるので、サイクルの短縮を実現できる。また、設定温度決定部606が、冷却時間よりも短い計量時間に対応する初期設定温度のうち、最も長い計量時間に対応する初期設定温度(すなわち、最も低い初期設定温度)を設定温度として決定することにより、加熱器等に供給する電力を少なくできるため、省エネルギー化を図ることができる。
【0156】
(第2の実施形態)
上述した実施形態においては、樹脂の溶融状態を改善することで、計量時間が最も短くなるように制御する場合について説明した。しかしながら、実施態様によっては、計量時間を遅くしてもよい状況が存在する。例えば、冷却時間が比較的長い場合である。そこで、第2の実施形態においては、冷却時間を考慮して、スクリュ330の回転速度を調整して、計量時間を調整する例について説明する。
【0157】
図7は、本実施形態に係る制御装置700の構成要素を機能ブロックで示す図である。図7に示されるように、制御装置700は、第1の実施形態と同様に、取得部601と、計量処理部602と、計量時間計測部603と、充填処理部604と、初期設定温度設定部605と、設定温度決定部606と、温調処理部607と、を備え、さらに回転速度設定部611を備える。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同様の構成について同一の符号を割り当て、説明を省略する。
【0158】
そこで、本実施形態に係る回転速度設定部611が、シリンダ310で複数の異なる初期設定温度の各々で計量工程が行われた場合に計測された複数の計量時間と、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す圧力を保つ保圧工程の完了から、型締力を下げる脱圧工程の開始までの冷却時間と、に基づいて、スクリュ330の回転速度を設定する。換言すれば、本実施形態は、設定温度が特定された際に、計量時間を短縮させる代わりに、スクリュ330の回転速度を調整する例とする。
【0159】
図8は、本実施形態に係る射出成形機10における、第1ゾーンZ1における設定温度を設定して回転速度を調整する処理を示したフローチャートである。図8に示される例では、第1ゾーンZ1の設定温度を設定する例について説明するが、他のゾーン(例えば、第0ゾーンZ0や、第2ゾーンZ2)に対して同様の制御を行ってもよい。なお、第0ゾーンZ0について設定温度を設定する場合には、加熱器313_1の代わりに冷却器312を制御する。本実施形態においては、設定温度及び回転速度のみ変化させ、他の条件(例えば、シリンダ310の位置などの条件)は固定させた上で処理を行う。
【0160】
図8に示される処理においては、まず、初期設定温度設定部605が、第1ゾーンZ1の初期設定温度の初期値を設定し、回転速度設定部611が、スクリュ330の初期回転速度の初期値を設定する(S801)。なお、初期値は、実施態様や成形材料等に応じて定められていてもよいし、ユーザにより入力されてもよい。
【0161】
その後、第1の実施形態と同様にS402~S410と同様の処理を行うことで、設定温度決定部606が、設定温度を決定する(S802~S810)。
【0162】
そして、回転速度設定部611は、現在の計量工程における計量時間が、金型装置800における保圧工程の完了から脱圧工程の開始までの冷却時間以下か否かを判定する(S811)。計量工程の計量時間が冷却時間より長いと判定した場合(S811:No)、回転速度設定部611は、初期回転速度を上昇させる制御を行い(S812)、再びS811から処理を行う。
【0163】
一方、回転速度設定部611は、現在の計量工程における計量時間が、金型装置800における保圧工程の完了から脱圧工程の開始までの冷却時間以下と判定した場合(S811:Yes)、回転速度設定部611は、冷却時間以下の計量時間となる初期回転速度を、設定回転速度として決定する(S813)。以降の計量工程においては、制御装置700は、設定回転速度で回転するようにスクリュ330を制御する。
【0164】
本実施形態に係る射出成形機10においては、第1の実施形態と同様の効果を得られる。
【0165】
(変形例等)
上記実施形態の射出成形機10のシリンダ310の樹脂ペレットを投入する樹脂供給口からシリンダ310の根本近傍(例えば、第0ゾーンZ0~第2ゾーンZ2などの供給部330aを含んだ区間)において、上述した処理で設定された設定温度に従って加熱器313_1~313_2や冷却器312を制御する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、樹脂供給口からシリンダ310の根本近傍(例えば、第0ゾーンZ0~第2ゾーンZ2などの供給部330aを含んだ区間)に限って設定温度を決定する手法に制限するものではない。
【0166】
例えば、シリンダ310内で樹脂ペレットが固形で残っている(固形の成形材料が存在する)ゾーン(例えば、ゾーンZ0~Z3)に対して、上述した実施形態の手法で設定温度を決定してもよい。シリンダ310内で樹脂ペレットが固形で残っている(固形の成形材料が存在する)ゾーンとは、例えば、樹脂ペレットの投入口から、計量工程の開始時においてスクリュ330が成形材料を圧縮するための区間である圧縮部330bの終端を含む、第0ゾーンZ0~第3ゾーンZ3が考えられる。他の例としては、第0ゾーンZ0のみ設定温度を決定してもよいし、第1ゾーンZ1のみ設定温度を決定してもよいし、第2ゾーンZ2のみ設定温度を決定してもよいし、第3ゾーンZ3のみ設定温度を決定してもよい。
【0167】
上述した設定温度を決定することで、シリンダ310の溶融状態を改善できるとともに、シリンダ310のゾーン毎の設定温度を自動的に決定できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0168】
さらには、第4ゾーンZ4や第5ゾーンZ5においても、上述した実施形態の手法で設定温度を決定してもよい。上述した手法で設定温度を決定することで、シリンダ310やノズル320内の成形材料の溶融状態を改善できるとともに、シリンダ310のゾーン毎の設定温度を自動的に決定できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0169】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0170】
10 射出成形機
700 制御装置
601 取得部
602 計量処理部
603 計量時間計測部
604 充填処理部
605 初期設定温度設定部
606 設定温度決定部
607 温調処理部
611 回転速度設定部
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