(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】炭素化合物製造システムおよび炭素化合物制御システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
C25B 15/08 20060101AFI20240729BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20240729BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20240729BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240729BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B15/023
C25B3/03
C25B3/26
C25B9/00 G
(21)【出願番号】P 2021044803
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 智
(72)【発明者】
【氏名】北川 良太
(72)【発明者】
【氏名】村松 武彦
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-137754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/144135(WO,A1)
【文献】特表2020-500258(JP,A)
【文献】特開2019-163530(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0026967(KR,A)
【文献】特表2021-512223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/08
C25B 15/023
C25B 3/03
C25B 3/26
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む供給ガスから前記二酸化炭素を分離する回収ユニットと、
前記回収ユニットから供給される前記二酸化炭素を中間化合物に変換する変換ユニットと、
前記変換ユニットから供給される前記中間化合物を用いて炭素化合物を合成する合成ユニットと、
前記供給ガスを排出する排出ユニットと、
前記回収ユニットと前記排出ユニットとを接続し、前記排出ユニットから前記回収ユニットに前記供給ガスを供給するための第1の流路と、
前記回収ユニットと前記変換ユニットとを接続する第2の流路と、
前記変換ユニットと前記合成ユニットとを接続する第3の流路と、
前記第1の流路に流れる前記供給ガスの流量を測定して第1のデータ信号を生成する第1の検出器
と、
前記第2の流路に流れる前記二酸化炭素の流量を測定して第2のデータ信号を生成する第2の検出器
と、
前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を測定して第3のデータ信号を生成する第3の検出器
と、
前記第1ないし第3のデータ信
号の測定データと、前記測定データに対応する計画データと、を照合し、照合結果に従い、前記回収ユニットの運転条件を調整するための第1の制御信号、前記変換ユニットの運転条件を調整するための第2の制御信号、および前記合成ユニットの運転条件を調整するための第3の制御信
号を生成する統合コントローラと、
を具備する、炭素化合物製造システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素を前記中間化合物に変換するための第1の原料を前記変換ユニットに供給する第1の原料供給ユニット、および前記炭素化合物を合成するための第2の原料を前記第2の流路に供給する第2の原料供給ユニットからなる群より選ばれる少なくとも一つの原料供給ユニットをさらに具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の原料供給ユニットをさらに具備し、
前記第2の原料は、一酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記中間化合物は、前記二酸化炭素の電解反応または前記二酸化炭素の逆シフト反応により生成される、請求項1ないし請求項
3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記変換ユニットは、二酸化炭素を含む第1の排出ガスを排出し、前記第1の排出ガスを前記回収ユニット、前記変換ユニット、および前記合成ユニットからなる群より選ばれる少なくとも一つのユニットに供給する、請求項1ないし請求項
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記合成ユニットは、一酸化炭素または二酸化炭素を含む第2の排出ガスを排出し、前記第2の排出ガスを前記回収ユニット、前記変換ユニット、および前記合成ユニットからなる群より選ばれる少なくとも一つのユニットに供給する、請求項1ないし請求項
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記回収ユニットは、前記第1の制御信号に基づいて前記回収ユニットの運転条件を調整する第1の制御部を有し、
前記変換ユニットは、前記第2の制御信号に基づいて前記変換ユニットの運転条件を調整する第2の制御部を有し、
前記合成ユニットは、前記第3の制御信号に基づいて前記合成ユニットの運転条件を調整する第3の制御部を有する、請求項1ないし請求項
6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記統合コントローラは、
前
記データ信号を受信する受信部と、
前
記測定データと、前記測定データに対応する計画データと、を照合し、前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲外であるとき、演算処理を実施して前記
第1ないし第3の制御信号を生成する演算部と、
前記
第1ないし第3の制御信号を送信する送信部と、
を含む、請求項1ないし請求項
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1ないし第3の流路からなる群より選ばれる少なくとも一つの流路は、バッファータンクに接続されていない、請求項1ないし請求項
8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
炭素化合物製造システムの制御方法であって、
前記システムは、
二酸化炭素を含む供給ガスから前記二酸化炭素を分離する回収ユニットと、
前記回収ユニットから供給される前記二酸化炭素を中間化合物に変換する変換ユニットと、
前記変換ユニットから供給される前記中間化合物を用いて炭素化合物を合成する合成ユニットと、
前記供給ガスを排出する排出ユニットと、
前記回収ユニットと前記排出ユニットとを接続し、前記排出ユニットから前記回収ユニットに前記供給ガスを供給するための第1の流路と、
前記回収ユニットと前記変換ユニットとを接続する第2の流路と、
前記変換ユニットと前記合成ユニットとを接続する第3の流路と、
前記第1の流路に流れる前記供給ガスの流量を測定して第1のデータ信号を生成する第1の検出器
と、
前記第2の流路に流れる前記二酸化炭素の流量を測定して第2のデータ信号を生成する第2の検出器
と、
前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を測定して第3のデータ信号を生成する第3の検出器
と、
統合コントローラと、
を備え、
前記方法は、
前記第1ないし第3のデータ信
号を生成し、前記
第1ないし第3のデータ信号を前記統合コントローラに送信するステップと、
前記統合コントローラにより、前記
第1ないし第3のデータ信号の測定データと、前記測定データに対応する計画データと、を照合し、前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲外であるとき、演算処理を実施することにより、前記回収ユニットの運転条件を調整するための第1の制御信号、前記変換ユニットの運転条件を調整するための第2の制御信号、および前記合成ユニットの運転条件を調整するための第3の制御信
号を生成するステップと、
を具備する、炭素化合物製造システムの制御方法。
【請求項11】
前記システムは、
前記二酸化炭素を前記中間化合物に変換するための第1の原料を前記変換ユニットに供給する第1の原料供給ユニット、および前記炭素化合物を合成するための第2の原料を前記第2の流路に供給する第2の原料供給ユニットからなる群より選ばれる少なくとも一つの原料供給ユニットをさらに具備し、
前記統合コントローラは、前記照合
による結果に従い、前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、前記第3の制御信号、前記第1の原料供給ユニットの運転条件を調整するための第4の制御信号、および前記第2の原料供給ユニットの運転条件を調整するための第5の制御信
号を生成する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第3のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも大きいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を増加させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットにより変換される二酸化炭素の変換量を増加させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を減少させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも小さいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を減少させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットにより変換される二酸化炭素の変換量を減少させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を増加させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも大きいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を増加させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を上昇させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を減少させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも小さいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を減少させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を下降させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を増加させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも大きいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を増加させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を増加させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を増加させるように調整され、
前記合成ユニットの運転条件は、前記第3の制御信号に従って前記炭素化合物を合成するときの反応温度を上昇させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のデータ信号の前記測定データの値が前記計画データの値の要求基準範囲よりも小さいとき、
前記回収ユニットの運転条件は、前記第1の制御信号に従って前記回収ユニットにより回収される二酸化炭素の量を減少させるように調整され、
前記変換ユニットの運転条件は、前記第2の制御信号に従って前記変換ユニットに供給される電圧または電流の値を下降させるように調整され、
前記第2の原料供給ユニットの運転条件は、前記第5の制御信号に従って前記第2の流路に供給される前記第2の原料の流量を増加させるように調整され、
前記合成ユニットの運転条件は、前記第3の制御信号に従って前記炭素化合物を合成するときの反応温度を下降させるように調整される、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、炭素化合物製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題や環境問題の観点から、植物の光合成を模倣して人工的に太陽光等の再生可能エネルギーを用いて二酸化炭素を電気化学的に還元して、貯蔵可能な化学エネルギー源を作り出す人工光合成技術の開発が進められている。人工光合成技術を実現する炭素化合物製造システムは、水(H2O)を酸化して酸素(O2)を生成するアノードと、二酸化炭素(CO2)を還元して炭素化合物を生成するカソードを有する電気化学反応装置を備えている。電気化学反応装置のアノードおよびカソードは、太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギーに由来する電源に接続される。
【0003】
アノードは、例えば金属基材の表面に水を酸化する酸化触媒を設けた構造を有する。カソードは、例えばカーボン基材の表面に二酸化炭素を還元する還元触媒を設けた構造を有する。カソードは、再生可能エネルギーに由来する電源から二酸化炭素の還元電位を得ることによって、二酸化炭素を還元して一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、メタン(CH4)、エタノール(C2H5OH)、エタン(C2H6)、エチレングリコール(C2H6O2)等の炭素化合物を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-500258号公報
【文献】特表2019-500258号公報
【文献】特開2018-184655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低コストで製造可能な炭素化合物製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の炭素化合物製造システムは、二酸化炭素を含む供給ガスから二酸化炭素を分離する回収ユニットと、回収ユニットから供給される二酸化炭素を中間化合物に変換する変換ユニットと、変換ユニットから供給される中間化合物を用いて炭素化合物を合成する合成ユニットと、供給ガスを排出する排出ユニットと、回収ユニットと前記排出ユニットとを接続し、排出ユニットから回収ユニットに供給ガスを供給するための第1の流路と、回収ユニットと変換ユニットとを接続する第2の流路と、変換ユニットと合成ユニットとを接続する第3の流路と、第1の流路に流れる供給ガスの流量を測定して第1のデータ信号を生成する第1の検出器と、第2の流路に流れる二酸化炭素の流量を測定して第2のデータ信号を生成する第2の検出器と、変換ユニットに供給される電圧または電流の値を測定して第3のデータ信号を生成する第3の検出器と、第1ないし第3のデータ信号の測定データと、測定データに対応する計画データと、を照合し、照合結果に従い、回収ユニットの運転条件を調整するための第1の制御信号、変換ユニットの運転条件を調整するための第2の制御信号、および合成ユニットの運転条件を調整するための第3の制御信号を生成する統合コントローラと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】炭素化合物製造システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】変換ユニットU3の構成例を説明するための模式図である。
【
図3】炭素化合物製造システムの制御方法例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0009】
なお、本明細書において、「接続する」とは、特に指定する場合を除き、直接的に接続することだけでなく、間接的に接続することも含む。
【0010】
図1は、化学反応システムの一つである、炭素化合物製造システムの構成例を示す模式図である。
図1に示す炭素化合物製造システムは、排出ユニットU0と、回収ユニットU1と、原料供給ユニットU2と、変換ユニットU3と、原料供給ユニットU4と、合成ユニットU5と、統合コントローラCXと、を具備する。なお、排出ユニットU0は、炭素化合物製造システムの外部に設けられてもよい。
【0011】
図1に示すユニットU0、U1、U2、U3、U4、U5は、それぞれ、制御部C0、C1、C2、C3、C4、C5を有する。制御部の数は、
図1に示す数に限定されず、上記ユニットU0、U1、U2、U3、U4、U5の少なくとも一つが制御部を備えていればよい。
【0012】
図1に示す炭素化合物製造システムは、複数のユニットのいずれかに接続された流路P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7を具備する。流路P1は、排出ユニットU0と回収ユニットU1とを接続する。流路P2は、回収ユニットU1と変換ユニットU3とを接続する。流路P3は、原料供給ユニットU2と変換ユニットU3とを接続する。流路P4は、変換ユニットU3と合成ユニットU5とを接続する。流路P5は、変換ユニットU3に接続される。流路P6は、合成ユニットU5に接続される。流路P7は、合成ユニットU5に接続される。各流路は、例えば配管である。流路の数は、
図1に示す数に限定されない。
【0013】
図1に示す炭素化合物製造システムは、検出器D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8を具備する。検出器D1は、流路P1に設けられる。検出器D2は、流路P2に設けられる。検出器D3は、流路P3に設けられる。検出器D4は、変換ユニットU3に設けられる。検出器D5は、流路P4の変換ユニットU3近傍に設けられる。検出器D7は、流路P4の合成ユニットU5近傍に設けられる。検出器D8は、流路P6に設けられる。検出器D9は、流路P7に設けられる。検出器の数は、
図1に示す数に限定されず、炭素化合物製造システムは、上記検出器D1ないしD9の少なくとも一つを具備していればよい。
図1において、実線の矢印は、各検出器から統合コントローラCXへの信号を表す。
【0014】
[排出ユニットU0]
排出ユニットU0は、二酸化炭素を含む供給ガスを回収ユニットU1に供給する。排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給される供給ガスは、特に限定されないが、例えば、火力発電所、バイオマス発電所等の発電設備からの排ガスや、鉄鋼工場、セメント工場、化学プラント工場、清掃工場等の産業施設からの排気ガスでもよい。また、排気ガスに限らず、大気中の空気を上記供給ガスとすることもできる。
【0015】
排出ユニットU0が制御部C0を備える場合、制御部C0は、統合コントローラCXからの制御信号CS0を受信し、制御信号CS0に応じて例えば排出ユニットU0の運転条件を制御する。制御信号CS0の制御対象の例は、排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給する供給ガスの単位時間あたりの流量が挙げられる。
【0016】
[回収ユニットU1]
回収ユニットU1は、流路P1を介して供給される供給ガスから二酸化炭素(CO2)を分離回収することにより、濃縮された高純度CO2ガスを生成する。高純度CO2ガスは、流路P2を介して後段の変換ユニットU3に導入される。
【0017】
回収ユニットU1は、例えば二酸化炭素化学吸収装置、二酸化炭素物理吸着分離装置、二酸化炭素膜分離装置等の装置を有する。
【0018】
二酸化炭素化学吸収装置の例としては、アミン溶液を吸収液として使用し、排出ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させた後、加熱することで二酸化炭素を吸収液から分離・回収する装置が挙げられる。アミン溶液に代えて、化学吸収剤であるアミンを多孔質支持体に担持させた固体吸収剤を用いて二酸化炭素を吸収してもよい。
【0019】
二酸化炭素物理吸着分離装置の例としては、ゼオライトやモレキュラーシーブ等の吸着材に二酸化炭素または酸素を吸着し、圧力や温度などを変化させることで主成分または不純物成分を分離する装置が挙げられる。
【0020】
二酸化炭素膜分離装置の例としては、活性炭やモレキュラーシーブ等を含む分離膜、分子ゲート膜のような高分子膜等を用いて、二酸化炭素を選択的に分離して回収する装置が挙げられる。
【0021】
高純度CO2ガスのCO2純度は、供給ガスのCO2純度よりも高ければ特に限定されないが、好ましくは50%より大きく100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下である。高純度CO2ガスのCO2純度が高いほど、後段のユニット群のエネルギー効率の向上や装置サイズの縮小を図ることができる。
【0022】
回収ユニットU1が制御部C1を備える場合、制御部C1は、統合コントローラCXからの制御信号CS1を受信し、制御信号CS1に応じて回収ユニットU1の運転条件を制御することで高純度CO2ガスの流量を調整する。制御部C1による制御対象例としては、供給ガスの単位時間あたりの流量、高純度CO2ガスの流量、回収ユニットU1に投入する電力量、回収ユニットU1に投入する熱量、吸収液の温度、吸着材の温度、CO2ガスの吸収、脱離工程における圧力条件等が挙げられる。制御部C1の例としては、マスフローコントローラ、電源や温調ヒーター、ポンプやコンプレッサー、可変絞り弁等が挙げられる。
【0023】
[原料供給ユニットU2]
原料供給ユニットU2は、変換ユニットU3に第1の原料を供給する。第1の原料は、例えばタンクに収容される。
【0024】
第1の原料の例としては、水、水蒸気、水素等が挙げられる。また、第1の原料として、電解質を含む水溶液を用いてもよい。電解質を含む水溶液は、例えばリン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)、水酸化物イオン(OH-)等を含む水溶液を含む。
【0025】
原料供給ユニットU2が制御部C2を備える場合、制御部C2は、統合コントローラCXからの制御信号CS2を受信し、例えば変換ユニットU3に供給する第1の原料の流量を制御する。制御部C2の制御対象例としては、マスフローコントローラや、可変絞り弁等が挙げられる。
【0026】
[変換ユニットU3]
変換ユニットU3は、回収ユニットU1から供給される高純度CO2ガスおよび原料供給ユニットU2から中間化合物を生成する。これにより、二酸化炭素を中間化合物に電気化学的または熱化学的に変換する。中間化合物は、例えば炭素化合物である。
【0027】
二酸化炭素を中間化合物に電気化学的に変換する場合、変換ユニットU3は、電気化学反応セル(電解セル)を有し、電解セル内のアノードおよびカソードに電力を投入し、電解反応により二酸化炭素を中間化合物に変換する。電解セルの方式としては、固体高分子型電解セルや固体酸化物型電解セルを用いることができる。
【0028】
図2は、変換ユニットU3の構成例を説明するための模式図である。
図1は、電解セル10を具備する変換ユニットU3を示す。なお、変換ユニットU3の構成は、
図2に示す構成に限定されない。
【0029】
電解セル10は、アノード部11と、カソード部12と、アノード部11とカソード部12とを分離するセパレータ13と、を含む。電解セル10は、例えば、一対の支持板で挟み込まれ、さらにボルト等で締め付けられる。
【0030】
アノード部11は、アノード111と、流路板112に設けられたアノード流路112aと、アノード集電体113と、を含む。
【0031】
カソード部12は、カソード121と、流路板122に設けられたカソード流路122aと、カソード集電体123と、を含む。
【0032】
アノード111は、アノード溶液中の水(H2O)の酸化反応を促し、酸素(O2)や水素イオン(H+)を生成する、またはカソード部12で生じた水酸化物イオン(OH-)の酸化反応を促し、酸素や水を生成する電極(酸化電極)である。
【0033】
アノード111は、セパレータ13と流路板112との間に、これらと接するように配置されている。アノード111の第1の表面は、セパレータ13と接する。アノード111の第2の表面は、アノード111の第1の表面の反対側に設けられ、アノード流路112aに面する。
【0034】
アノード111の酸化反応により生成される化合物は、酸化触媒の種類等によって異なる。アノード溶液に電解液を用いる場合、アノード111は水(H2O)を酸化して酸素や水素イオンを生成する、もしくは水酸化物イオン(OH-)を酸化して水や酸素を生成することが可能で、そのような反応の過電圧を減少させることが可能な触媒材料(アノード触媒材料)で主として構成されることが好ましい。そのような触媒材料としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等の金属、それらの金属を含む合金や金属間化合物、酸化マンガン(Mn-O)、酸化イリジウム(Ir-O)、酸化ニッケル(Ni-O)、酸化コバルト(Co-O)、酸化鉄(Fe-O)、酸化スズ(Sn-O)、酸化インジウム(In-O)、酸化ルテニウム(Ru-O)、酸化リチウム(Li-O)、酸化ランタン(La-O)等の二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-O、La-Co-O、Ni-La-O、Sr-Fe-O等の三元系金属酸化物、Pb-Ru-Ir-O、La-Sr-Co-O等の四元系金属酸化物、Ru錯体やFe錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0035】
アノード111は、セパレータ13とアノード流路112aとの間でアノード溶液やイオンを移動させることが可能な構造、例えばメッシュ材、パンチング材、または多孔体等の多孔質構造を有する基材(担体)を備えていることが好ましい。多孔体構造を有する基材としては、金属繊維焼結体のような、比較的空隙の大きいものも包含する。基材は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の金属やこれら金属を少なくとも1つ含む合金(例えばSUS)等の金属材料で構成してもよいし、上述したアノード触媒材料で構成してもよい。アノード触媒材料として酸化物を用いる場合には、上記した金属材料からなる基材の表面にアノード触媒材料を付着もしくは積層して触媒層を形成することが好ましい。アノード触媒材料は、酸化反応を高める上でナノ粒子、ナノ構造体、ナノワイヤ等の形状を有することが好ましい。ナノ構造体とは、触媒材料の表面にナノスケールの凹凸を形成した構造体である。また、必ずしも酸化電極に酸化触媒を設けなくてもよい。酸化電極以外に設けられた酸化触媒層を酸化電極に電気的に接続してもよい。
【0036】
カソード121は、二酸化炭素(CO2)の還元反応を促し、一酸化炭素等の中間化合物を生成する電極(還元電極)である。
【0037】
カソード121は、電極基材、および炭素材料に担持された金属触媒に加えて、イオン伝導性物質から構成されることが好ましい。イオン伝導性物質は、層中に含まれる金属触媒の間のイオンを授受する作用を奏するため、電極活性の向上に効果を示す。
【0038】
上記イオン伝導性物質としてはカチオン交換樹脂またはアニオン交換樹脂が好ましく用いられる。これらは、イオン性修飾基を有するポリマーであり、例えばペルフルオロスルホン酸基を有するカチオン性ポリマーが知られている。より具体的には、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、AGC株式会社製のフレミオン(登録商標)などのカチオン交換樹脂、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオン(登録商標)、ダイオキサイドマテリアルズ社製のサステニオン(登録商標)等のアニオン交換樹脂が用いられる。
【0039】
金属触媒の担体は、多孔質構造を有していると好ましい。適用可能な材料としては、上記材料に加え、例えばケッチェンブラックやバルカンXC-72等のカーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ等が挙げられる。多孔質構造を有することにより、酸化還元反応に寄与する活性面の面積を大きくすることができるため、変換効率を高めることができる。
【0040】
担体だけでなく、基材上に形成された触媒層そのものも多孔質構造を有し、比較的大きな空孔を多数有していると好ましい。具体的には、水銀圧入法で測定した触媒層の細孔径分布において、直径5μm以上200μm以下の範囲において空孔の分布頻度が最大となると好ましい。この場合、触媒層内全体にガスが素早く拡散し、還元生成物もこの経路を経て触媒層外へと排出されやすくなるため、反応効率が高い電極となる。
【0041】
二酸化炭素を触媒層に効率よく供給するために、触媒層を担持する電極基材にガス拡散層を有することが好ましい。ガス拡散層は導電性がある多孔体によって形成される。ガス拡散層は撥水性のある多孔体で形成されると、還元反応によって生成された水や、酸化側から移動してきた水の量を減らし、還元流路を経て水を排出させ、多孔体中の二酸化炭素ガスの割合を多くできるため、好ましい。
【0042】
ガス拡散層の厚さが極端に小さいと、セル面での均一性が損なわれるため、好ましくない。一方で厚さが極端に大きいと部材コストが増加するほか、ガスの拡散抵抗の増加により効率が低下するため、好ましくない。拡散性をより向上させるためにガス拡散層と触媒層の間により緻密な拡散層(メソポーラスレイヤー)を設けると、撥水性や多孔体度を変えて、ガスの拡散性と液体成分の排出を促進させるため、より好ましい。
【0043】
上記担体に担持される金属触媒としては、水素イオンや二酸化炭素を還元するための活性化エネルギーを減少させる材料が挙げられる。言い換えると、二酸化炭素の還元反応により炭素化合物を生成する際の過電圧を低下させる金属材料が挙げられる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、カドニウム(Cd)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、および錫(Sn)からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属および金属酸化物、または当該金属を含む合金を用いることが好ましい。なお、これに限定されず、還元触媒として例えばルテニウム(Ru)錯体またはレニウム(Re)錯体等の金属錯体、を用いることもできる。また、複数の材料を混合してもよい。金属触媒には板状、メッシュ状、ワイヤ状、粒子状、多孔質状、薄膜状、島状等の各種形状を適用することができる。
【0044】
金属触媒に金属ナノ粒子を適用する場合には、その平均直径は1nm以上15nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましく、1nm以上5nm以下がさらに好ましい。この条件を満たすと、触媒重量あたりの金属の表面積が大きくなり、少量の金属で高い活性を示すようになるため好ましい。
【0045】
アノード111およびカソード121は、電源20に接続可能である。電源20は、変換ユニットU3の外部に設けられてもよい。電源20の例は、通常の商用電源や電池等であってもよいし、また再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換して供給する電力源であってもよい。電力の例としては、風力、水力、地熱、潮汐力等の運動エネルギーや位置エネルギーを電気エネルギーに変換して得られる電力、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子を有する太陽電池から生起される電力、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池や蓄電池等から生起される電力、音等の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置等から得られる電力が挙げられる。
【0046】
アノード流路112aは、原料供給ユニットU2から流路P3を介して供給される第1の原料をアノード111に供給する機能を有する。
【0047】
アノード流路112aは、流路板112に設けられたピット(溝部/凹部)により構成される。流路板112は、アノード流路112aに接続された、導入口および導出口(いずれも図示せず)を有し、これら導入口および導出口を介して、ポンプ(図示せず)により原料が導入および排出される。
【0048】
流路板112の材料は、例えば化学反応性が低く、かつ導電性を有しない材料を含む。そのような材料の例は、例えばアクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂等の絶縁樹脂材料を含む。なお、流路板112は、図示されていない締め付けのためのネジ穴を有する。また、流路板112は、主に一つの部材から形成されているが、異なる部材から形成され、それらを積層して構成されてもよい。さらに、一部、または全面に表面処理を施すことで、親水性・撥水性の機能を付与してもよい。
【0049】
カソード流路122aは、カソード121の第1の表面に面する。カソード流路122aは、回収ユニットU1から流路P2を介して供給される高純度CO2ガスをカソード121に供給する機能を有する。カソード121には高純度CO2ガスだけでなく、水蒸気も供給することができる。
【0050】
カソード流路122aは、流路板122に設けられたピット(溝部/凹部)により構成される。流路板122は、カソード流路122aに接続された、導入口および導出口(いずれも図示せず)を有し、これら導入口および導出口を介して、ポンプ(図示せず)により上記ガスが導入および排出される。
【0051】
流路板122の材料は、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料の例は、例えばTiやSUS等の金属材料、カーボン等を含む。なお、流路板122は、図示されていないカソード流路122aの流入口および流出口、また締め付けのためのネジ穴を有する。また、各流路板の前後には、図示を省略したパッキンが必要に応じて挟み込まれる。また、流路板122は、主に一つの部材から形成されているが、異なる部材から形成され、それらを積層して構成されてもよい。さらに、一部、または全面に表面処理を施すことで、親水性・撥水性の機能を付与してもよい。
【0052】
流路板122は、カソード121との電気的接続のためにカソード121と接するランドを有することができる。カソード流路122aの形状としては、柱状のランドに隣接する形状や細長い流路を折り曲げたサーペンタイン形状等の形状が挙げられるが、空洞を有する形状であれば特に限定されない。並列に接続された複数の流路またはサーペンタイン流路やその組み合わせによりカソード流路122aを構成すると、カソード121に供給されるガスの均一性を高めることができ、電解反応の均一性を高めることができるため、好ましい。
【0053】
還元反応により生成される中間化合物は、還元触媒として機能する金属触媒の種類等によって異なる。還元反応により生成される中間化合物は、例えば一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、エタノール(C2H5OH)、ホルムアルデヒド(HCHO)、エチレングリコール等の炭素化合物が挙げられる。また、二酸化炭素の変換と同時に、水素を副反応として生起してもよい。アノード111では水や水蒸気から酸素が生成する反応が生じる。
【0054】
電解セル10内のカソード121およびアノード111で生成した物質および未反応の原料は、変換ユニットU3からそれぞれ排出される。このうちカソード121で生成した物質は流路P4を介して後段の合成ユニットU5に供給される。流路P4の途中には、変換ユニットU3から供給されるガス中の成分を合成ユニットU5での合成条件に適したガス成分比に調整するためのガス調整ユニットを設けることができる。
【0055】
電解セル10の電気化学反応の際に、カソード121に供給された高純度CO2ガスの一部がアノード111に移動し、アノード流路112aからの排気成分が二酸化炭素を含む場合がある。この際、変換ユニットU3から流路P5を介して排出される排気成分中の二酸化炭素を分離回収して、回収された二酸化炭素ガスを再度変換ユニットU3に供給し、二酸化炭素原料として使用することができる。この際分離回収を行う装置としては、回収ユニットU1であってもよいし、変換ユニットU3の後段に別途回収ユニットを設けてもよい。
【0056】
変換ユニットU3で熱化学的に二酸化炭素を中間化合物に変換する場合、変換ユニットU3は、反応器を備え、反応器に回収ユニットU1からの高純度CO2ガスおよび原料供給ユニットU2からの水素を供給し、熱エネルギーを投入することで逆シフト反応により二酸化炭素を中間化合物に変換する。逆シフト反応は式(1)で表される。
【0057】
CO2+H2 → CO+H2O (1)
【0058】
反応器は、式(1)の反応を効率的に生じさせる触媒を含み、所定の温度圧力で式(1)の反応を生じさせる。反応温度としては、600℃以上1000℃以下が好ましく、圧力としては、1気圧以上10気圧以下が好ましい。反応器から排出された生成ガスおよび未反応原料は、後段の合成ユニットU5に供給される。
【0059】
変換ユニットU3が制御部C3を有する場合、制御部C3は、統合コントローラCXからの制御信号CS3を受信し、変換ユニットU3の運転条件を制御することで後段の合成ユニットU5に供給する中間化合物の単位時間あたりの流量を制御する。電気化学的に二酸化炭素を中間化合物に変換する変換ユニットU3の場合、制御部C3の例としては、電解セルに投入する電源、電解セルに供給する二酸化炭素や第1の原料の単位時間あたりの流量を調整する流量計や、電解セルの温度や圧力を制御する制御器等が挙げられる。また、熱化学的に二酸化炭素を中間化合物に変換する変換ユニットU3の場合、制御部C3の例としては、反応器の温度を測定する温度計、反応器の湿度を測定する湿度計、反応器内の圧力を制御する圧力制御器、反応器に供給する二酸化炭素や水素の単位時間あたりの流量を測定する流量計等が挙げられる。
【0060】
[原料供給ユニットU4]
原料供給ユニットU4は、必要に応じて第2の原料を流路P4を介して合成ユニットU5に供給する。
図1は、流路P4に接続された原料供給ユニットU4を図示するが、これに限定されない。第2の原料の例は、例えば一酸化炭素、水素等が挙げられる。原料供給ユニットU4は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0061】
原料供給ユニットU4が制御部C4を備える場合、制御部C4は、統合コントローラCXからの制御信号CS4を受信し、第2の原料の供給量を制御する。制御部C4の制御対象例としては、マスフローコントローラや、可変絞り弁が挙げられる。
【0062】
[合成ユニットU5]
合成ユニットU5は、変換ユニットU3からの中間化合物を用いて炭素化合物を合成する。原料供給ユニットU4を設ける場合、原料供給ユニットU4から第2の原料を合成ユニットU5に併せて供給することで炭素化合物を合成することもできる。
【0063】
合成ユニットU5は、反応器を有する。反応器による合成反応は、化学反応、電気化学反応、藻類、酵素、酵母、細菌(バクテリア)等の生物を用いた生物的変換反応等の反応を含む。化学反応による合成は、例えば、式(2)で示されるフィッシャー・トロプシュ法による一酸化炭素と水素からの合成燃料の合成がある。
(2n+1)H2+nCO→CnH2n+2+nH2O (2)
【0064】
この場合、変換ユニットU3からは一酸化炭素および水素を含むガスが合成ユニットU5に供給され式(2)の反応が生じるが、一酸化炭素と水素の組成比が式(2)の反応に適していない場合がある。その場合、原料供給ユニットU4を設け、一酸化炭素と水素ガスの成分比が合成反応を最大化するために、補完的に一酸化炭素や水素が原料供給ユニットU4から流路P4を介して合成ユニットU5に供給される。
【0065】
化学反応、電気化学反応、細菌等の生物的変換反応は、室温よりも温度が高い場合、反応効率および反応速度の少なくとも一つのパラメータが向上する場合がある。合成ユニットU5に導入する原料ガスの温度を60℃以上300℃以下の温度とした場合、合成ユニットU5のエネルギー変換効率を向上させることができる。細菌等の生物的変換反応は80℃付近で最も効率的に反応が進行するために、60℃以上100℃以下の温度で還元生成物を合成ユニットU5に供給すると、さらに効率が向上する。合成ユニットU5は反応効率を向上させるために外部からエネルギーを加えて昇温してもよいし、加圧してもよい。
【0066】
合成ユニットU5による合成反応から得られる炭素化合物としては、ジェット燃料、ディーゼル、ガソリンなど炭化水素系燃料、メタノール、エタノールやブタノールなどのアルコール類、イソシアネート類の原料であるホスゲンがある。これら炭素化合物はその合成時に高純度な炭素化合物であることが好適な場合があり、合成ユニットU5による合成は、蒸留、生成工程を含むことができる。
【0067】
合成ユニットU5で一酸化炭素等の原料ガスが還元剤と使用され、反応の結果、二酸化炭素を生成する場合がある。この場合、生成した二酸化炭素を分離回収して、変換ユニットU3に再度供給することで、物質の利用率を向上させたシステムの構築が可能となる。
【0068】
また、合成ユニットU5での合成反応の結果、未反応の原料ガスが排出される場合がある。未反応の原料ガスは、例えば二酸化炭素を含む。また、未反応の原料ガスは、一酸化炭素等の中間化合物を含んでいてもよい。この場合、未反応の原料ガスを回収して、回収ユニットU1、変換ユニットU3、および合成ユニットU5のいずれかに供給することにより、原料の利用効率が高いシステムの構築が可能となる。
【0069】
合成ユニットU5が制御部C5を備える場合、制御部C5は、統合コントローラCXからの制御信号CS5を受信し、合成ユニットU5の運転条件を制御することで製造する炭素化合物の量(質量、体積、濃度等)を調整する。制御部C5による制御対象例としては、炭素化合物合成時の反応温度、圧力条件を制御する調整器、合成ユニットU5を運転する際の動力調整器等が挙げられる。
【0070】
図1に示す合成ユニットU5は、流路P6を介して目的とする炭素化合物を主成分とする混合物(第1の混合物)を排出し、流路P7を介してその他の混合物(第2の混合物)を排出する例を図示するが、これに限定されない。その他の混合物として第1の混合物に含まれる炭素化合物以外の炭素化合物を含んでいてもよい。
【0071】
[検出器D1~D9]
各検出器は、対応する流路またはユニットを流れる流体の成分量等のパラメータを検出して検出信号となるデータ信号を生成し、データ信号を統合コントローラCXに送信する。データ信号の送信方式は、有線方式であってもよいし、無線方式であってもよい。
【0072】
各検出器は、ガス及び液体の少なくとも一方の濃度を測定する分析装置や濃度計でもよいし、ガス及び液体の少なくとも一方の単位時間あたりの流量を計測する流量計であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。また、各検出器は、対象物の質量または体積を測定する測定計を含んでいてもよい。各検出器として分析装置を用いる場合には、ガスや液体中の炭化水素の分析が可能なガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー等の装置が用いられる。検出器として濃度計を用いる場合は、Non Dispersive Infrared(NDIR)式のガスセンサでもよいし、半導体式ガスセンサを用いてもよい。
【0073】
検出器D1は、データ信号DS1を生成する。データ信号DS1は、例えば回収ユニットU1に供給される供給ガスの単位時間あたりの流量(流路P1に流れる流体に含まれる供給ガスの単位時間あたりの流量)を示すデータを含む。
【0074】
検出器D2は、データ信号DS2を生成する。データ信号DS2は、例えば流路P2に流れる流体に含まれる二酸化炭素の単位時間あたりの流量を示すデータを含む。
【0075】
検出器D3は、データ信号DS3を生成する。データ信号DS3は、例えば流路P3に流れる流体に含まれる上記第1の原料の単位時間あたりの流量を示すデータを含む。
【0076】
検出器D4は、データ信号DS4を生成する。データ信号DS4は、例えば変換ユニットU3に印加される電圧や供給される電流の量を示すデータを含む。例えば、二酸化炭素を中間化合物に電気化学的に変換する変換ユニットU3が検出器D4を有する場合、検出器D4の例としては、電解セル10のアノード111とカソード121との間に流れる電流や電圧を検知する電流計や電圧計を用いてもよい。
【0077】
検出器D5は、データ信号DS5を生成する。データ信号DS5は、例えば流路P4の変換ユニットU3側(流路P4と原料供給ユニットU4との接続点と、変換ユニットU3と、の間の領域)を流れる流体に含まれる上記中間化合物の単位時間あたりの流量を示すデータを含む。
【0078】
検出器D6は、データ信号DS6を生成する。データ信号DS6は、例えば流路P5に流れる流体に含まれる物質の単位時間あたりの流量を示すデータを含む。
【0079】
検出器D7は、データ信号DS7を生成する。データ信号DS7は、例えば流路P4の合成ユニットU5側(流路P4と原料供給ユニットU4との接続点と、合成ユニットU5と、の間の領域)を流れる流体に含まれる上記中間化合物および第2の原料の単位時間あたりの総流量を示すデータを含む。
【0080】
検出器D8は、データ信号DS8を生成する。データ信号DS8は、例えば流路P6に流れる流体に含まれる少なくとも一つの物質の単位時間あたりの流量、濃度や流体の温度や圧力を示すデータを含む。
【0081】
検出器D9は、データ信号DS9を生成する。データ信号DS9は、例えば流路P7に流れる流体に含まれる少なくとも一つの物質の単位時間あたりの流量、濃度や流体の温度や圧力を示すデータを含む。
【0082】
[統合コントローラCX]
統合コントローラCXは、各検出器および各制御部に電気的に接続されている。統合コントローラCXは、各検出器から測定データを含む検出信号(データ信号)を受信する受信部CX1と、測定データとあらかじめ定められた計画データと照合し、照合結果に応じて演算処理(シミュレーション)により制御信号を生成する演算部CX2と、演算部CX2からの制御信号を受け取り、それに基づいて対応する制御部に制御信号を出力する送信部CX3と、を有する。
図1において、点線の矢印は、統合コントローラCXから各制御部への信号を表す。
【0083】
計画データの値は、炭素化合物製造システムの稼働計画もしくは生産計画に基づき予め設定される。演算部CX2は、各検出器から送信される測定値(データ信号)の要求基準(数値範囲)、例えば検出器で実測された供給ガスの回収ユニットU1への流入量と計画データに基づく所定の流入量との差の要求基準範囲が予め記憶されており、要求基準範囲と測定値の関係に基づいて演算部で制御信号が生成され、送信部から制御部に制御信号が出力される。演算部CX2は、例えばプログラムやシミュレーションソフトを含むパーソナルコンピュータ(PC)やマイクロコンピュータ(マイコン)等のハードウェアで構成される。なお、各動作を動作プログラムとしてメモリ等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体に保存しておき、ハードウェアにより記録媒体に記憶された動作プログラムを適宜読み出すことで各動作を実行してもよい。また、上記計画データを上記記録媒体に保存しておいてもよい。
【0084】
(炭素化合物製造システムの制御方法例)
次に、
図1に示す炭素化合物製造システムの制御方法例について以下に説明する。
図3は、炭素化合物製造システムの制御方法例を説明するためのフローチャートであり、複数のステップにおける統合コントローラCXに関わる動作の一例を示す。
【0085】
まず、各検出器は、配置された流路内を流れる流体に含まれる各物質の量を測定して、測定データを含むデータ信号(検出信号)を生成する(S1)。
【0086】
次に、各検出器は、各対象物の量等のパラメータの測定値に基づくデータ信号を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0087】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、各検出器からのデータ信号を受信する(S3)。受信した各データ信号は、統合コントローラCXの演算部CX2に入力される。
【0088】
次に、演算部CX2は、受信した各データ信号に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶された各データ信号に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0089】
照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲内であると判断される場合(S4No)、再度測定ステップ(S1)に戻り、各検出器が各対象物のパラメータを測定する。また、照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲外であると判断される場合(S4Yes)、演算部CX2は、各対象物のパラメータが計画データの値の要求基準範囲内に収まるように、各ユニットの運転条件を制御するための制御信号を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの制御部に送信される(S6)。
【0090】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、配置された流路内を流れる物質量等、各対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、制御信号による検証が実施される。以上が炭素化合物製造システムの制御方法例の説明である。
【0091】
本実施形態の炭素化合物製造システムでは、統合コントローラCXを用いることにより複数のユニットの統合的な制御が可能であり、例えば各ユニット間に原料等の物質量のずれが生じる場合であっても、炭素化合物製造システムにおいて自律制御された運転を実現できる。
【0092】
従来の炭素化合物製造システムは、各ユニット間に原料等の物質量のずれが生じる場合、各ユニットで個別に調整を行う。従来の炭素化合物製造システムは、このようなずれを解消するために各流路に接続されたバッファータンクを必要とする。バッファータンクは、各流路に接続され、各流路に流れる流体を一時的に収容することで流量等を調整できる。しかしながら、バッファータンクは、プラント建設コストを高くする等、炭素化合物製造システムのコスト増加の原因となる。
【0093】
これに対し、本実施形態の炭素化合物製造システムは、各流路に接続されたバッファータンクを設ける必要がない。バッファータンクを設けないことにより、プラントの建設コストを削減し、低コストで炭素化合物製造システムを製造できる。さらに、プラント面積の低減や、原料の利用効率を高めた炭素化合物製造システムを提供することが可能となる。
【0094】
ここで、炭素化合物製造システムのより具体的な制御例について説明する。各制御例では、中間化合物が一酸化炭素であるとして説明する。なお、炭素化合物製造システムの制御例に以下の制御例に限定されない。
【0095】
(第1の制御例)
図1に示す炭素化合物製造システムにおいて、例えば変換ユニットU3を再生可能エネルギーによる電力で動作させる場合であって、変換ユニットU3に投入される電力の値が所望の値よりも増加したときの制御例について説明する。
【0096】
まず、検出器D4は、変換ユニットU3に投入される電力を変換ユニットU3に供給される電圧や電流を測定してデータ信号DS4を生成することにより検出する(S1)。
【0097】
次に、検出器D4は、電力の測定データを含むデータ信号DS4を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0098】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D4からのデータ信号DS4を受信する(S3)。受信したデータ信号DS4は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0099】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS4に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS4に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0100】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも大きいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS0、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0101】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0102】
排出ユニットU0の制御部C0は、制御信号CS0に基づいて回収ユニットU1に供給される供給ガスの量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、排出ユニットU0の運転条件を調整する。
【0103】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0104】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3による二酸化炭素の変換量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0105】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する一酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。これにより、合成ユニットU5に供給される中間化合物の量は、測定ステップ(S1)時と同等の範囲に保たれる。
【0106】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて測定ステップ(S1)時と同様の運転条件で合成ユニットU5を運転する。
【0107】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。検出器D7は、流路P4の合成ユニットU5側に流れる一酸化炭素の量を測定してデータ信号DS7を生成する。
【0108】
第1の制御例では、電力が増加する場合であっても合成ユニットU5に供給される中間化合物の量を一定の範囲内に制御して合成ユニットU5により炭素化合物を合成する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0109】
なお、第1の制御例では、制御部C2、検出器D1、検出器D2、検出器D3、検出器D5、検出器D6、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C2、検出器D1、D2、D3、D5、D6、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0110】
(第2の制御例)
図1の炭素化合物製造システムにおいて、例えば変換ユニットU3を再生可能エネルギーによる電力で動作させる場合であって、変換ユニットU3に投入される電力の値が所望の値よりも減少したときの制御例について説明する。
【0111】
まず、検出器D4は、変換ユニットU3に投入される電力を変換ユニットU3に供給される電圧や電流を測定してデータ信号DS4を生成することにより検出する(S1)。
【0112】
次に、検出器D4は、電力の測定データを含むデータ信号DS4を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0113】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D4からのデータ信号DS4を受信する(S3)。受信したデータ信号DS4は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0114】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS4に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS4に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0115】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも小さいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS0、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0116】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0117】
排出ユニットU0の制御部C0は、制御信号CS0に基づいて回収ユニットU1に供給される供給ガスの量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、排出ユニットU0の運転条件を調整する。
【0118】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0119】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3による二酸化炭素の変換量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0120】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する一酸化炭素の流量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。これにより、合成ユニットU5に供給される中間化合物の量は、測定ステップ(S1)時と同等の範囲に保たれる。
【0121】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて測定ステップ(S1)時と同様の運転条件で合成ユニットU5を運転する。
【0122】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。検出器D7は、流路P4の合成ユニットU5側に流れる一酸化炭素の量を測定してデータ信号DS7を生成する。
【0123】
第2の制御例では、電力が減少する場合であっても合成ユニットU5に供給される中間化合物の量を一定の範囲内に制御して合成ユニットU5により炭素化合物を合成する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0124】
なお、第2の制御例では、制御部C2、検出器D1、検出器D2、検出器D3、検出器D5、検出器D6、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C2、検出器D1、D2、D3、D5、D6、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0125】
(第3の制御例)
図1の炭素化合物製造システムにおいて、例えば変換ユニットU3を再生可能エネルギーによる電力で動作させる場合であって、変換ユニットU3に投入される電力の値が所望の値よりも増加したときの他の制御例について説明する。
【0126】
まず、検出器D4は、変換ユニットU3に投入される電力を変換ユニットU3に供給される電圧や電流を測定することにより検出する(S1)。
【0127】
次に、検出器D4は、電力の測定データを含むデータ信号DS4を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0128】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D4からのデータ信号DS4を受信する(S3)。受信したデータ信号DS4は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0129】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS4に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS4に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0130】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも大きいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS0、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0131】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、制御信号による検証が実施される。
【0132】
排出ユニットU0の制御部C0は、制御信号CS0に基づいて回収ユニットU1に供給される供給ガスの量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、排出ユニットU0の運転条件を調整する。
【0133】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0134】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3による二酸化炭素の変換量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0135】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて、流路P4を介して合成ユニットU5に供給する水素の流量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。
【0136】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて、合成する炭素化合物の量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように合成ユニットU5の運転条件を調整する。これにより、流路P6を介して排出される炭素化合物および流路P7を介して排出される炭素化合物の量は増加するが、成分比率は一定に保たれる。
【0137】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。検出器D8は、流路P6に流れる炭素化合物の量を測定してデータ信号DS8を生成する。検出器D9は、流路P7に流れる炭素化合物の量を測定してデータ信号DS9を生成する。
【0138】
第3の制御例では、電力が増加する場合であっても合成ユニットU5により合成される炭素化合物の成分比率を一定の範囲内に制御する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0139】
なお、第3の制御例では、制御部C2、検出器D1、検出器D2、検出器D3、検出器D5、検出器D6、検出器D7を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C2、検出器D1、D2、D3、D5、D6、D7は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0140】
(第4の制御例)
図1の炭素化合物製造システムにおいて、例えば変換ユニットU3を再生可能エネルギーによる電力で動作させる場合であって、変換ユニットU3に投入される電力の値が所望の値よりも減少したときの他の制御例について説明する。
【0141】
まず、検出器D4は、変換ユニットU3に投入される電力を変換ユニットU3に供給される電圧や電流を測定してデータ信号DS4を生成することにより検出する(S1)。
【0142】
次に、検出器D4は、電力の測定データを含むデータ信号DS4を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0143】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D4からのデータ信号DS4を受信する(S3)。受信したデータ信号DS4は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0144】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS4に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS4に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0145】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも小さいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS0、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0146】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0147】
排出ユニットU0の制御部C0は、制御信号CS0に基づいて回収ユニットU1に供給される供給ガスの量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、排出ユニットU0の運転条件を調整する。
【0148】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0149】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3による二酸化炭素の変換量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0150】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて、流路P4を介して合成ユニットU5に供給する水素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。
【0151】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて、合成する炭素化合物の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように合成ユニットU5の運転条件を調整する。これにより、流路P6を介して排出される炭素化合物および流路P7を介して排出される炭素化合物の量は増加するが、成分比率は一定を保たれる。
【0152】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。検出器D8は、流路P6に流れる炭素化合物の量を測定してデータ信号DS8を生成する。検出器D9は、流路P7に流れる炭素化合物の量を測定してデータ信号DS9を生成する。
【0153】
第4の制御例では、電力が減少する場合であっても合成ユニットU5により合成される炭素化合物の成分比率を一定の範囲内に制御する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0154】
なお、第4の制御例では、制御部C2、検出器D1、検出器D2、検出器D3、検出器D5、検出器D6、検出器D7を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C2、検出器D1、D2、D3、D5、D6、D7は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0155】
(第5の制御例)
図1に示す炭素化合物製造システムにおいて、排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給される供給ガスの量が所望の値よりも増加したときの制御例について説明する。
【0156】
まず、検出器D1は、回収ユニットU1に供給される供給ガスの流量を測定してデータ信号DS1を生成する(S1)。
【0157】
次に、検出器D1は、供給ガスの流量の測定データを含むデータ信号DS1を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0158】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D1からのデータ信号DS1を受信する(S3)。受信したデータ信号DS1は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0159】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS1に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS1に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0160】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも大きいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0161】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0162】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0163】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3に供給される電力量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0164】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する一酸化炭素の流量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。これにより、合成ユニットU5に供給される中間化合物の量は、測定ステップ(S1)時と同等の範囲に保たれる。
【0165】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて測定ステップ(S1)時と同様の運転条件で合成ユニットU5を運転する。
【0166】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。検出器D7は、流路P4の合成ユニットU5側に流れる一酸化炭素の流量を測定してデータ信号DS7を生成する。
【0167】
第5の制御例では、供給ガスの量が増加する場合であっても合成ユニットU5に供給される中間化合物の量を一定の範囲内に制御して合成ユニットU5により炭素化合物を合成する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0168】
なお、第5の制御例では、制御部C0、制御部C2、検出器D2、検出器D3、検出器D5、検出器D6、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C0、制御部C2、検出器D2、D3、D5、D6、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0169】
(第6の制御例)
図1に示す炭素化合物製造システムにおいて、排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給される供給ガスの量が所望の値よりも減少したときの制御例について説明する。
【0170】
まず、検出器D1は、回収ユニットU1に供給される供給ガスの流量を測定してデータ信号DS1を生成する(S1)。
【0171】
次に、検出器D1は、供給ガスの流量の測定データを含むデータ信号DS1を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0172】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D1からのデータ信号DS1を受信する(S3)。受信したデータ信号DS1は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0173】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS1に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS1に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0174】
この照合により、測定データの値が計画データ値の要求基準範囲よりも大きいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0175】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、制御信号による検証が実施される。
【0176】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0177】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3に供給される電力量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0178】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する一酸化炭素の量および水素の流量のそれぞれを測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。これにより、合成ユニットU5に供給される中間化合物の量は、測定ステップ(S1)時と同等の範囲に保たれる。
【0179】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて測定ステップ(S1)時と同様の運転条件で合成ユニットU5を運転する。
【0180】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。
【0181】
第6の制御例では、供給ガスの量が減少する場合であっても合成ユニットU5に供給される中間化合物の量を一定の範囲内に制御して合成ユニットU5により炭素化合物を合成する。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0182】
なお、第6の制御例では、制御部C0、制御部C2、検出器D2、検出器D3、検出器D4、検出器D5、検出器D6、検出器D7、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C0、制御部C2、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0183】
(第7の制御例)
図1に示す炭素化合物製造システムにおいて、排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給される供給ガスの量が所望の値よりも増加したときの他の制御例について説明する。
【0184】
まず、検出器D1は、回収ユニットU1に供給される供給ガスの流量を測定してデータ信号DS1を生成する(S1)。
【0185】
次に、検出器D1は、供給ガスの流量の測定データを含むデータ信号DS1を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0186】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D1からのデータ信号DS1を受信する(S3)。受信したデータ信号DS1は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0187】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS1に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS1に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0188】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも大きいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0189】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0190】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0191】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3に供給される電力量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0192】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する水素の流量を測定ステップ(S1)時よりも増加させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。
【0193】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて炭素化合物を合成するときの反応温度を測定ステップ(S1)時より上昇させるように合成ユニットU5の運転条件を制御する。
【0194】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。
【0195】
第7の制御例では、供給ガスの量が増加する場合であっても、合成ユニットU5により合成される炭素化合物を一定の範囲内に制御できる。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0196】
なお、第7の制御例では、制御部C0、制御部C2、検出器D2、検出器D3、検出器D4、検出器D5、検出器D6、検出器D7、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C0、制御部C2、検出器D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0197】
(第8の制御例)
図1に示す炭素化合物製造システムにおいて、排出ユニットU0から回収ユニットU1に供給される供給ガスの量が所望の値よりも減少したときの他の制御例について説明する。
【0198】
まず、検出器D1は、回収ユニットU1に供給される供給ガスの流量を測定してデータ信号DS1を生成する(S1)。
【0199】
次に、検出器D1は、供給ガスの流量の測定データを含むデータ信号DS1を統合コントローラCXに送信する(S2)。
【0200】
次に、統合コントローラCXの受信部CX1は、検出器D1からのデータ信号DS1を受信する(S3)。受信したデータ信号DS1は、統合コントローラCXの受信部CX1を経て演算部CX2に入力される。
【0201】
次に、演算部CX2は、受信したデータ信号DS1に含まれる測定データと、統合コントローラCXに記憶されたデータ信号DS1に対応する計画データと、を照合する(S4)。
【0202】
この照合により、測定データの値が計画データの値の要求基準範囲よりも小さいと判断され(S4Yes)、演算部CX2は、上記演算処理により、制御信号CS1、制御信号CS3、制御信号CS4、および制御信号CS5を生成する(S5)。生成された制御信号は、送信部CX3から対応するユニットの各制御部に送信される(S6)。
【0203】
対応するユニットは、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づく運転条件で運転を実施する(S7)。
【0204】
回収ユニットU1の制御部C1は、制御信号CS1に基づいて回収ユニットU1により回収される二酸化炭素の量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、回収ユニットU1の運転条件を調整する。
【0205】
変換ユニットU3の制御部C3は、制御信号CS3に基づいて変換ユニットU3に供給される電力量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、変換ユニットU3の運転条件を調整する。
【0206】
原料供給ユニットU4の制御部C4は、制御信号CS4に基づいて流路P4を介して合成ユニットU5に供給する水素の流量を測定ステップ(S1)時よりも減少させるように、原料供給ユニットU4の運転条件を調整する。
【0207】
合成ユニットU5の制御部C5は、制御信号CS5に基づいて反応温度を測定ステップ(S1)時より下降させるように合成ユニットU5の運転条件を制御する。
【0208】
その後、各検出器は、測定ステップ(S1)と同様に、対象物のパラメータを測定する(S8)。これにより、調整後の運転状況を検証する。
【0209】
第8の制御例では、供給ガスの量が減少する場合であっても、合成ユニットU5により合成される炭素化合物を一定の範囲内に制御できる。これにより、バッファータンクを用いずにユニット間の物質量のずれによる炭素化合物の合成量の変動を抑制できる。
【0210】
なお、第8の制御例では、制御部C0、制御部C2、検出器D2、検出器D3、検出器D4、検出器D5、検出器D6、検出器D7、検出器D8、検出器D9を必ずしも動作させなくてもよい。これらの構成要素を動作させる場合、制御部C0、制御部C2、検出器D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9は、各部での対象物のパラメータを測定し、測定データが統合コントローラCXにおいて異常と判断される場合、各部を正常な状態になるように制御してもよい。例えば、制御部C2を動作させる場合、制御部C2は、例えば変換ユニットU3でフラッディング等の異常が発生したと判断された場合、原料供給ユニットU2から変換ユニットU3に供給される第1の原料の供給量を調整することにより、変換ユニットU3が正常な状態になるように調整できる。
【0211】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0212】
10…電解セル、11…アノード部、12…カソード部、13…セパレータ、20…電源、111…アノード、112…流路板、112a…アノード流路、113…アノード集電体、121…カソード、122…流路板、122a…カソード流路、123…カソード集電体、C0…制御部、C1…制御部、C2…制御部、C3…制御部、C4…制御部、C5…制御部、CS0…制御信号、CS1…制御信号、CS2…制御信号、CS3…制御信号、CS4…制御信号、CS5…制御信号、CX…統合コントローラ、CX1…受信部、CX2…演算部、CX3…送信部、D1…検出器、D2…検出器、D3…検出器、D4…検出器、D5…検出器、D6…検出器、D7…検出器、D8…検出器、D9…検出器、DS1…データ信号、DS2…データ信号、DS3…データ信号、DS4…データ信号、DS5…データ信号、DS6…データ信号、DS7…データ信号、DS8…データ信号、DS9…データ信号、P1…流路、P2…流路、P3…流路、P4…流路、P5…流路、P6…流路、P7…流路、U0…排出ユニット、U1…回収ユニット、U2…原料供給ユニット、U3…変換ユニット、U4…原料供給ユニット、U5…合成ユニット。