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特許7528033圧延機の板厚制御装置および該方法ならびに圧延システム
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  • 特許-圧延機の板厚制御装置および該方法ならびに圧延システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】圧延機の板厚制御装置および該方法ならびに圧延システム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/18 20060101AFI20240729BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20240729BHJP
   B21B 38/04 20060101ALI20240729BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B21B37/18 110A
B21B37/18 110B
B21B38/00 E
B21B38/04 B
B21C51/00 D
B21C51/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021112346
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008632
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆広
(72)【発明者】
【氏名】内海 貴文
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111118(JP,A)
【文献】特開2018-103197(JP,A)
【文献】特開2015-131337(JP,A)
【文献】特開2009-160623(JP,A)
【文献】特開2005-238277(JP,A)
【文献】特開昭63-132713(JP,A)
【文献】特開平07-116717(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00063633(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機によって圧延される圧延材の厚みが圧延終了後の目標値となるように前記圧延機を制御する圧延機の板厚制御装置であって、
モニタ板厚制御に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号で前記圧延機を制御するモニタ板厚制御部と、
マスフロー板厚制御に基づく前記ロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号で前記圧延機を制御するマスフロー板厚制御部と、
前記モニタ板厚制御部によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致しない場合に、前記マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を停止する制御実施調整部とを備える、
圧延機の板厚制御装置。
【請求項2】
前記制御実施調整部は、さらに、前記モニタ板厚制御部によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致する場合に、前記マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行する、
請求項1に記載の圧延機の板厚制御装置。
【請求項3】
フィードフォワード板厚制御によって前記圧延機を制御するフィードフォワード板厚制御部をさらに備え、
前記制御実施調整部は、前記一致しない場合に、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を開始し、前記一致する場合に、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を停止する、
請求項2に記載の圧延機の板厚制御装置。
【請求項4】
圧延機によって圧延される圧延材の厚みが圧延終了後の目標値となるように前記圧延機を制御する圧延機の板厚制御方法であって、
モニタ板厚制御に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号で前記圧延機を制御するモニタ板厚制御工程と、
マスフロー板厚制御に基づく前記ロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号で前記圧延機を制御するマスフロー板厚制御工程と、
前記モニタ板厚制御工程によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致しない場合に、前記マスフロー板厚制御工程によるマスフロー板厚制御を停止する制御実施調整工程とを備える、
圧延機の板厚制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧延機の板厚制御装置を備える圧延システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機によって圧延される圧延材の厚みを自動的に制御する圧延機の板厚制御装置および板厚制御方法に関する。そして、本発明は、このような板厚制御装置を備える圧延システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧延機を用いることによって、例えばフィルムや鋼板等の圧延材を圧延する場合、前記圧延機に設けられた一対のワークロールの間における隙間(ロールギャップ)の長さ(ロールギャップ長)を調整することによって、前記一対のワークロールにおける出側での圧延材の厚み(板厚)を所望の目標値(設定値)に一致させる板厚制御が板厚制御装置によって実施されている。この板厚制御には、一般に、フィードフォワード板厚制御方法、マスフロー板厚制御方法およびモニタ板厚制御方法等の種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された圧延材の板厚制御装置は、圧延機による圧延材の板厚目標値と当該圧延材の板厚フィードバック値との偏差に基づいて当該圧延材の板厚の制御に用いる値を算出する板厚制御部と、予め設定された境界周波数よりも低い周波数の領域においては、前記圧延機の出側における圧延材の板厚の実測値を前記板厚フィードバック値として前記板厚制御部に出力し、前記境界周波数よりも高い周波数の領域においては、前記圧延機の入側における圧延材の速度の実測値と前記圧延機の出側における圧延材の速度の実測値と前記圧延材の入側における圧延材の板厚の実測値とを用いたマスフロー一定則によって前記圧延材の出側における圧延材の板厚の推定値を算出し、前記圧延材の出側における圧延材の板厚の推定値を前記板厚フィードバック値として前記板厚制御部に出力する切替部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-131337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示された圧延材の板厚制御装置では、低周波数領域において、出側板厚偏差が正の値であって、かつ、前記正の値が減少方向になっている場合や、低周波数領域において、出側板厚偏差が負の値であって、かつ、前記負の値が減少方向になっている場合には、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉され、出側板厚偏差が収束し難くなってしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる圧延機の板厚制御装置および板厚制御方法、ならびに、前記板厚制御装置を備える圧延システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる圧延機の板厚制御装置は、圧延機によって圧延される圧延材の厚みが圧延終了後の目標値となるように前記圧延機を制御する装置であって、モニタ板厚制御に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号で前記圧延機を制御するモニタ板厚制御部と、マスフロー板厚制御に基づく前記ロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号で前記圧延機を制御するマスフロー板厚制御部と、前記モニタ板厚制御部によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致しない場合に、前記マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を停止する制御実施調整部とを備える。好ましくは、上述の圧延機の板厚制御装置において、前記一致しない場合とは、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号である場合、および、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号である場合のいずれかである。
【0008】
このような圧延機の板厚制御装置は、前記一致しない場合に、マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を停止するので、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉されず、前記マスフロー板厚制御を停止しない場合に較べてより早く出側板厚偏差を収束できるから、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる。
【0009】
他の一態様では、上述の圧延機の板厚制御装置において、前記制御実施調整部は、さらに、前記モニタ板厚制御部によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致する場合に、前記マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行する。好ましくは、上述の圧延機の板厚制御装置において、前記一致する場合とは、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号である場合、および、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号である場合のいずれかである。
【0010】
このような圧延機の板厚制御装置は、前記一致する場合に、前記マスフロー板厚制御部によるマスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行するので、前記モニタ板厚制御単独で制御する場合に較べてより早く出側板厚偏差を収束できる。
【0011】
他の一態様では、上述の圧延機の板厚制御装置において、フィードフォワード板厚制御によって前記圧延機を制御するフィードフォワード板厚制御部をさらに備え、前記制御実施調整部は、前記一致しない場合に、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を開始し、前記一致する場合に、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を停止する。
【0012】
このような圧延機の板厚制御装置は、前記一致しない場合に、さらに、フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を開始するので、前記マスフロー板厚制御の停止をフィードフォワード板厚制御で補うことができ、前記一致する場合に、さらに、フィードフォワード板厚制御部によるフィードフォワード板厚制御を停止するので、過補償を防止できる。
【0013】
本発明の他の一態様にかかる圧延機の板厚制御方法は、圧延機によって圧延される圧延材の厚みが圧延終了後の目標値となるように前記圧延機を制御する圧延機の方法であって、モニタ板厚制御に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号で前記圧延機を制御するモニタ板厚制御工程と、マスフロー板厚制御に基づく前記ロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号で前記圧延機を制御するマスフロー板厚制御工程と、前記モニタ板厚制御工程によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致しない場合に、前記マスフロー板厚制御工程によるマスフロー板厚制御を停止する制御実施調整工程とを備える。
【0014】
このような圧延機の板厚制御方法は、前記一致しない場合に、マスフロー板厚制御工程によるマスフロー板厚制御を停止するので、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉されず、前記マスフロー板厚制御を停止しない場合に較べてより早く出側板厚偏差を収束できるから、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる。
【0015】
本発明の他の一態様にかかる圧延システムは、これら上述のいずれかの板厚制御装置を備える。
【0016】
これによれば、板厚制御装置を備える圧延システムが提供でき、このような圧延システムは、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる圧延機の板厚制御装置および板厚制御方法は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる。本発明によれば、このような板厚制御装置を備える圧延システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における圧延システムの構成を示す図である。
図2】前記圧延システムの板厚制御装置における板厚制御の動作を示すフローチャートである。
図3】前記圧延システムの板厚制御装置における板厚制御の動作を説明するためのタイムチャートである。
図4】比較例の板厚制御の動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0020】
図1は、実施形態における圧延システムの構成を示す図である。実施形態における圧延システムSは、圧延対象である圧延材WKを自動的に所定の目標の厚み(板厚)となるように圧延するシステムであり、例えば、図1に示すように、圧延機1と、板厚制御装置2と、第1速度計4と、第1厚み計5と、第2速度計6と、第2厚み計7と、第1デフレクタロール8と、第2デフレクタロール9とを備え、例えば第1および第2リールR1、R2に巻回された帯状の圧延材WKを、第1および第2リールR1、R2間に配設された圧延機1によって圧延する。この圧延システムSによって製造される圧延製品の板厚は、任意であってよいが、近年の薄物化に鑑み、好適には、例えば数百ミクロンメートル以下や100μm以下等の領域である。
【0021】
圧延機1は、一対のワークロールの間に圧延材を通し、前記一対のワークロールから力を受けて変形することでその厚みを減じ、前記目標の厚みに成形する装置である。圧延機1は、複数のパスそれぞれに対応する前記一対のワークロールを複数備え、圧延材を前記複数の一対のワークロールにおける各間を順次に通過させることによって順次にその厚みを減じ、圧延終了後に、前記目標の厚みに成形するタンデム型圧延機であってよいが、本実施形態では、前記一対のワークロールを1個備え、圧延材を前記一対のワークロールの間に、正方向およびその逆方向に1または複数回通過させることによって各回(各パス)で順次にその厚みを減じ、圧延終了後に、前記目標の厚みに成形するリバース型圧延機である。すなわち、複数回のパスを実施する一対のワークロールは、異なっても同一であってもよい。
【0022】
本実施形態では、より具体的には、圧延機1は、圧下装置13と、圧下装置13によりその間に力を加えながら圧延材WKを通して圧延材WKを圧延する一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2と、前記一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2の弾性変形等を抑制するように前記一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2それぞれを支持する一対の第1および第2バックアップロール12-1、12-2とを備える。なお、図1に示す例では、1つのワークロール11は、1つのバックアップロール12によって支持されるが、複数のバックアップロール12によって支持されてもよい。すなわち、圧延機1は、縦型ミルやクラスタ型ミル等の複数段型圧延機であってもよい。圧下装置13は、板厚制御装置2に接続され、板厚制御装置2の制御に従って、前記一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2のうちの一方を他方に対して近接移動(閉じる方向(閉方向)に移動)または離間移動(開く方向(開方向)に移動)することによって、前記一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2の間における隙間の長さ(ロールギャップ長)を調整しながら、前記一対の第1および第2ワークロール11-1、11-2を圧下する装置である。圧下装置13は、本実施形態では、高応答性の観点から、例えば、油圧圧下装置である。
【0023】
第1デフレクタロール8は、圧延機1に対し一方側に、圧延機1から所定の距離だけ離間した位置に配設された、所定の軸回りに回転可能な円柱状の部材である。第2デフレクタロール9は、圧延機1に対し他方側に、圧延機1から所定の距離だけ離間した位置に配設された、所定の軸回りに回転可能な円柱状の部材である。
【0024】
第1速度計4は、圧延機1と第1デフレクタロール8と間における圧延材WKの移動速度を測定する装置である。第1速度計4は、その測定した圧延材WKの移動速度を板厚制御装置2へ出力する。第1速度計4は、本実施形態では、例えば、第1デフレクタロール8の回転速度を測定するパルスジェネレータである。第2速度計6は、圧延機1と第2デフレクタロール9と間における圧延材WKの移動速度を測定する装置である。第2速度計6は、その測定した圧延材WKの移動速度を板厚制御装置2へ出力する。第2速度計6は、本実施形態では、例えば、第2デフレクタロール9の回転速度を測定するパルスジェネレータである。
【0025】
第1厚み計5は、圧延機1と第1デフレクタロール8と間における圧延材WKの厚み(板厚)を測定する装置である。第1厚み計5は、その測定した圧延材WKの板厚を板厚制御装置2へ出力する。第1厚み計5は、本実施形態では、例えば、圧延機1と第1デフレクタロール8と間に配設されたX線透過型厚み計である。第2厚み計7は、圧延機1と第2デフレクタロール9と間における圧延材WKの厚み(板厚)を測定する装置である。第2厚み計7は、その測定した圧延材WKの板厚を板厚制御装置2へ出力する。第2厚み計7は、本実施形態では、例えば、圧延機1と第2デフレクタロール9と間に配設されたX線透過型厚み計である。
【0026】
ここで、第1および第2速度計4、6で圧延材WKの速度を計測することで、サンプリング時間間隔が予め既知であるので、板厚制御装置2は、第1および第2厚み計5、7で計測された厚みに対する圧延材WKにおける長手方向の位置を求めることができ、第1および第2厚み計5、7で計測された厚みと圧延材WKにおける長手方向の位置とを互いに対応付けることができる。すなわち、板厚制御装置2は、圧延材WKの板厚をその長手方向でトラッキングできる。
【0027】
なお、第1および第2速度計4、6は、それぞれ、パルスジェネレータに限定されるものではなく、他の速度計であってもよい。例えば、第1速度計4は、圧延機1と第1デフレクタロール8と間に配設されたレーザドップラ速度計等であってもよく、第2速度計6は、圧延機1と第2デフレクタロール9と間に配設されたレーザドップラ速度計等であってもよい。特に、マスフロー板厚制御の場合では、板速度の検出精度が板厚精度に影響するので、第1および第2速度計4、6は、それぞれ、検出精度のより高いレーザドップラ速度計が好適である。第1および第2厚み計5、7は、それぞれ、X線透過型厚み計に限定されるものではなく、他の厚み計であってもよい。例えば、第1および第2厚み計5、7は、それぞれ、レーザ型厚み計や接触式厚み計等であってもよい。
【0028】
図1に矢符(→)で示す正方向(図1では紙面の左側から右側へ向かう方向)に圧延材WKが移動するパスの場合、第1および第2リールR1、R2、第1および第2速度計4、6、第1および第2厚み計5、7、ならびに、第1および第2デフレクタロール8、9は、次のように機能する。すなわち、第1リールR1は、入側リールとなり、巻回された圧延材WKを圧延機1へ供給する。第1デフレクタロール8は、第1リールR1から引き出された圧延材WKの方向を水平方向に変更する。第1速度計4は、入側速度計となり、圧延機1の入側における圧延材WKの移動速度(入側板速度)を測定し、この測定した入側板速度を板厚制御装置2へ出力する。第1厚み計5は、入側厚み計となり、圧延機1の入側における圧延材WKの厚み(入側板厚)を測定し、この測定した入側板厚を板厚制御装置2へ出力する。第2デフレクタロール9は、圧延機1から送られてきた水平方向の圧延材WKを第2リールR2の方向に変更する。第2リールR2は、出側リールとなり、圧延機1で圧延された圧延材WKを巻き取って収容する。第2速度計6は、出側速度計となり、圧延機1の出側における圧延材WKの移動速度(出側板速度)を測定し、この測定した出側速度を板厚制御装置2へ出力する。第2厚み計7は、出側厚み計となり、圧延機1の出側における圧延材WKの厚み(出側板厚)を測定し、この測定した出側板厚を板厚制御装置2へ出力する。
【0029】
一方、図1に矢符(→)で示す前記正方向に対し逆方向(図1では紙面の右側から左側へ向かう方向)に圧延材WKが移動するパスの場合、第1および第2リールR1、R2、第1および第2速度計4、6、第1および第2厚み計5、7、ならびに、第1および第2デフレクタロール8、9は、次のように機能する。すなわち、第2リールR2は、入側リールとなり、巻回された圧延材WKを圧延機1へ供給する。第2デフレクタロール9は、第2リールR2から引き出された圧延材WKの方向を水平方向に変更する。第2速度計6は、入側速度計となり、圧延機1の入側における圧延材WKの入側板速度を測定し、この測定した入側板速度を板厚制御装置2へ出力する。第2厚み計7は、入側厚み計となり、圧延機1の入側における圧延材WKの入側板厚を測定し、この測定した入側板厚を板厚制御装置2へ出力する。第1デフレクタロール8は、圧延機1から送られてきた水平方向の圧延材WKを第1リールR1の方向に変更する。第1リールR1は、出側リールとなり、圧延機1で圧延された圧延材WKを巻き取って収容する。第1速度計4は、出側速度計となり、圧延機1の出側における圧延材WKの出側板速度を測定し、この測定した出側板速度を板厚制御装置2へ出力する。第1厚み計5は、出側厚み計となり、圧延機1の出側における圧延材WKの出側板厚を測定し、この測定した出側板厚を板厚制御装置2へ出力する。
【0030】
板厚制御装置2は、圧延機1によって圧延される圧延材WKの厚みが圧延終了後の目標値(最終目標値)となるように圧延機1を制御する装置である。本実施形態では、板厚制御装置2は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を含む板厚制御によって圧下装置13を介してワークロール11のロールギャップ長を調整することで圧延機1を制御する。このような板厚制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、記憶素子(ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等)およびその周辺回路を備えるマイクロコンピュータを備えて構成され、前記記憶素子に記憶されたプログラムの実行によって前記CPUにモニタ板厚制御部31、マスフロー板厚制御部32および制御実施調整部33を機能的に備える。なお、板厚制御装置2は、PLC(Programmable Logic Controller)を備えて構成されてもよい。
【0031】
モニタ板厚制御部21は、モニタ板厚制御(モニタAGC)に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号で圧延機1を制御するものである。モニタ板厚制御は、いわゆるフィードバック制御であり、出側板厚に基づいて出側板厚偏差がゼロとなるようにロールギャップ長を変化させる板厚制御方式である。このモニタ板厚制御は、相対的に長い周期の板厚変動に対応でき、好ましい。モニタ板厚制御(フィードバック板厚制御)には、公知の常套手段が用いられ、一般に、ロールギャップ長を△Sとし、出側板厚偏差を△hとし、圧延機1のミル定数をMとし、圧延材WKの塑性定数をmとし、制御ゲインをC1とした場合、一般に、次式1によって制御が実施される。
式1;△S={C1×(M+m)/M}×∫△hdt
【0032】
マスフロー板厚制御部22は、マスフロー板厚制御(マスフローAGC)に基づくロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号で圧延機を1制御するものである。このマスフロー板厚制御は、入側板速度、出側板速度および入側板厚に基づいて出側板厚推定値を求め、出側板厚偏差がゼロとなるようにロールギャップ長を変化させる板厚制御方式である。このマスフロー板厚制御は、相対的に短い周期の板厚変動に対応でき、好ましい。マスフロー板厚制御には、公知の常套手段が用いられ、一般に、入側板巾W1に対する出側板巾W2の広がりが無視できる板厚、すなわち、W1=W2が成り立つ板厚において好適に利用できる。このようなマスフロー板厚制御は、入側板厚をHとし、出側板厚をhとし、出側板速度をV1とし、出側板速度をV2とし、制御ゲインをC2とした場合、次式2によって制御が実施される。
式2;△S=C2×{(M+m)/M}×{H×(V1/V2)-h}
【0033】
制御実施調整部23は、モニタ板厚制御部21によるモニタ板厚制御を実施している際に、ロールギャップの開閉方向がモニタ板厚制御信号とマスフロー板厚制御信号とで一致しない場合に、マスフロー板厚制御部22によるマスフロー板厚制御を停止するものである。本実施形態では、制御実施調整部23は、さらに、モニタ板厚制御部21によるモニタ板厚制御を実施している際に、前記ロールギャップの開閉方向が前記モニタ板厚制御信号と前記マスフロー板厚制御信号とで一致する場合に、マスフロー板厚制御部22によるマスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行する。
【0034】
次に、本実施形態の動作について説明する。図2は、前記圧延システムの板厚制御装置における板厚制御の動作を示すフローチャートである。
【0035】
このような構成の圧延システムSは、その図略の電源スイッチの操作によって電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。そのプログラムの実行によって、板厚制御装置2には、モニタ板厚制御部21、マスフロー板厚制御部22および制御実施調整部23が機能的に構成される。
【0036】
図略の操作スイッチの操作によって圧延開始が指示されると、図2において、板厚制御装置2は、モニタ板厚制御部21によって、モニタ板厚制御に基づくロールギャップを開閉するためのモニタ板厚制御信号を生成し、マスフロー板厚制御部22によって、マスフロー板厚制御に基づく前記ロールギャップを開閉するためのマスフロー板厚制御信号を生成し、記憶する(S1)。
【0037】
続いて、板厚制御装置2は、制御実施調整部23によって、処理S1でモニタ板厚制御部21によって生成したモニタ板厚制御信号の開閉方向を判別する(S2)。より具体的には、板厚制御は、所定の制御周期で繰り返し制御され、モニタ板厚制御信号で表される数値の増減によってロールギャップ長の大小が調整される場合、前回の制御タイミングでのモニタ板厚制御信号で表される数値(前回数値)よりも今回の制御タイミングでのモニタ板厚制御信号で表される数値(今回数値)が小さい場合(モニタ板厚制御信号の微分値がマイナスである場合)には、制御実施調整部23は、ロールギャップを開く方向(開方向)と判別し、前記前回数値よりも今回数値が大きい場合(前記微分値がプラスである場合)には、制御実施調整部23は、前記ロールギャップを閉じる方向(閉方向)と判別する。マスフロー板厚制御は、出側板厚偏差と同じ形に動き、方向は、出側板厚偏差がプラス方向に動いているので、閉方向に動き、また、方向は、出側板厚偏差がマイナス方向に動いているので、開方向に動く。
【0038】
続いて、板厚制御装置2は、制御実施調整部23によって、処理S1でマスフロー板厚制御部22によって生成したマスフロー板厚制御信号の開閉方向を判別する(S3)。より具体的には、制御実施調整部23は、マスフロー板厚制御信号をローパスフィルタで処理することによって、比較的長い周期の変動を取り出し、前回より今回が小さい場合(フィルタリング後のマスフロー板厚制御信号の微分値がマイナスである場合)には、制御実施調整部23は、ロールギャップを開く方向(開方向)と判別し、前記前回よりも今回が大きい場合(前記微分値がプラスである場合)には、制御実施調整部23は、前記ロールギャップを閉じる方向(閉方向)と判別する。この比較的長い変動がモニタ板厚制御信号の変動周期と同程度の周期で、ロールギャップの開閉方向がモニタ板厚制御信号とマスフロー板厚制御信号とで一致しない場合があり、好ましくなく、本実施形態における板厚制御装置2は、主に、これを解消する。
【0039】
続いて、板厚制御装置2は、制御実施調整部23によって、ロールギャップの開閉方向がモニタ板厚制御信号とマスフロー板厚制御信号とで一致するか否かを判定する(S4)。この判定の結果、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号である場合、および、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号である場合のいずれかであるとき(No)には、制御実施調整部23は、次に、処理S5を実行後に、処理S7を実行する。一方、前記判定の結果、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを開く方向に制御する信号である場合、および、前記モニタ板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号であって、前記マスフロー板厚制御信号が前記ロールギャップを閉じる方向に制御する信号である場合のいずれかであるとき(Yes)には、制御実施調整部23は、次に、処理S6を実行後に、処理S7を実行する。
【0040】
この処理S5では、板厚制御装置2は、制御実施調整部23によって、マスフロー板厚制御部22によるマスフロー板厚制御を停止する。なお、モニタ板厚制御は、実施され、継続中である。
【0041】
前記処理S6では、板厚制御装置2は、制御実施調整部23によって、マスフロー板厚制御部22によるマスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行する。なお、モニタ板厚制御は、実施され、継続中である。
【0042】
そして、前記処理S7では、板厚制御装置2は、板厚制御を終了するか否かを判定する。この判定の結果、例えば圧延システムSの稼働停止操作等により、板厚制御の終了である場合(Yes)には、板厚制御装置2は、本処理を終了し、前記判定の結果、板厚制御の終了ではない場合(No)には、板厚制御装置2は、次回の板厚制御を実施するべく、処理を処理S1に戻す。
【0043】
このような圧延システムSにおける板厚制御装置2の動作の一例について、その比較例とともに説明する。図3は、前記圧延システムの板厚制御装置における板厚制御の動作を説明するためのタイムチャートである。図4は、比較例の板厚制御の動作を説明するためのタイムチャートである。図3および図4において、上段は、出側板厚偏差を示し、中段は、モニタ板厚制御信号を示し、下段は、マスフロー板厚制御信号を示す。これら図3および図4の横軸は、経過時間であり、その縦軸は、上段では、出側板厚偏差であり、中段では、モニタ板厚制御信号であり、下段では、マスフロー板厚制御信号である。
【0044】
比較例の圧延システムおよびその板厚制御装置は、実施形態における制御実施調整部23を備えない点を除き、実施形態における圧延システムSおよびその板厚制御装置2と同様である。したがって、この比較例の圧延システムおよびその板厚制御装置は、常に、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御で板厚制御を実施している。
【0045】
図3および図4において、区間A-Bでは、出側板厚偏差は、正の値(プラス値)であり、さらに、プラス値が増大する方向に変化している。この場合では、モニタ板厚制御部21は、出側板厚偏差を0にするために、ロールギャップを閉じる方向のモニタ板厚制御信号を生成し、マスフロー板厚制御部22は、出側板厚偏差がプラス方向であるので、ロールギャップを閉じる方向のマスフロー板厚制御信号を生成する。このため、実施形態における圧延システムSでは、処理S4で一致と判定され、処理S6が実行され、板厚制御装置2は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御で板厚制御を実施する。したがって、実施形態における圧延システムSおよびその板厚制御装置2は、比較例における圧延システムおよびその板厚制御装置と同様に動作する。
【0046】
次の区間B-Cでは、出側板厚偏差は、正の値(プラス値)であり、その値が減少する方向に変化する。この場合では、モニタ板厚制御部21は、正の値(プラス)の出側板厚偏差を0にするために、ロールギャップを閉じる方向のモニタ板厚制御信号を生成し、マスフロー板厚制御部22は、出側板厚偏差がマイナス方向であるので、ロールギャップを開く方向のマスフロー板厚制御信号を生成する。このため、実施形態における圧延システムSでは、処理S4で不一致と判定され、処理S5が実行され、板厚制御装置2は、マスフロー板厚制御を停止し、モニタ板厚制御で板厚制御を実施する。したがって、実施形態における圧延システムSおよびその板厚制御装置2は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御で板厚制御を実施する比較例における圧延システムおよびその板厚制御装置とは異なって動作し、この結果、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉されない。
【0047】
区間C-Dでは、出側板厚偏差は、負の値(マイナス値)であり、さらに、マイナス値が増大する方向に変化している。この場合では、モニタ板厚制御部21は、出側板厚偏差を0にするために、ロールギャップを開く方向のモニタ板厚制御信号を生成し、マスフロー板厚制御部22は、出側板厚偏差がマイナス方向であるので、ロールギャップを開く方向のマスフロー板厚制御信号を生成する。このため、実施形態における圧延システムSでは、処理S4で一致と判定され、処理S6が実行され、板厚制御装置2は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御で板厚制御を実施する。したがって、実施形態における圧延システムSおよびその板厚制御装置2は、比較例における圧延システムおよびその板厚制御装置と同様に動作する。
【0048】
次の区間D-Eでは、出側板厚偏差は、負の値(マイナス値)であり、その値が減少する方向に変化する。この場合では、モニタ板厚制御部21は、負の値(マイナス値)の出側板厚偏差を0にするために、ロールギャップを開く方向のモニタ板厚制御信号を生成し、マスフロー板厚制御部22は、出側板厚偏差がプラス方向であるので、ロールギャップを閉じる方向のマスフロー板厚制御信号を生成する。このため、実施形態における圧延システムSでは、処理S4で不一致と判定され、処理S5が実行され、板厚制御装置2は、マスフロー板厚制御を停止し、モニタ板厚制御で板厚制御を実施する。したがって、実施形態における圧延システムSおよびその板厚制御装置2は、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御で板厚制御を実施する比較例における圧延システムおよびその板厚制御装置とは異なって動作し、この結果、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉されない。
【0049】
以上説明したように、本実施形態における板厚制御装置2およびこれに実装された板厚制御方法は、前記一致しない場合に、マスフロー板厚制御を停止するので、モニタ板厚制御がマスフロー板厚制御に干渉されず、前記マスフロー板厚制御を停止しない場合に較べてより早く出側板厚偏差を収束できるから、モニタ板厚制御およびマスフロー板厚制御を備えて出側板厚を制御する場合に、より適切に出側板厚を制御できる。
【0050】
上記板厚制御装置2および板厚制御方法は、前記一致する場合に、マスフロー板厚制御を、停止中では開始し、実施中では続行するので、前記モニタ板厚制御単独で制御する場合に較べてより早く出側板厚偏差を収束できる。
【0051】
なお、上述の実施形態において、板厚制御装置2は、図1に破線で示すように、フィードフォワード板厚制御によって前記圧延機1を制御するフィードフォワード板厚制御部24をさらに備えてよく、この場合では、制御実施調整部23は、前記一致しない場合に、図2の処理S5に括弧書きで示すように、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部24によるフィードフォワード板厚制御を開始し、前記一致する場合に、図2の処理S6に括弧書きで示すように、さらに、前記フィードフォワード板厚制御部24によるフィードフォワード板厚制御を停止してよい。このような板厚制御装置2および板厚制御方法は、前記一致しない場合に、さらに、フィードフォワード板厚制御部24によるフィードフォワード板厚制御を開始するので、前記マスフロー板厚制御の停止をフィードフォワード板厚制御で補うことができ、前記一致する場合に、さらに、フィードフォワード板厚制御部24によるフィードフォワード板厚制御を停止するので、過補償を防止できる。
【0052】
フィードフォワード板厚制御は、入側板厚に基づいて出側板厚偏差がゼロとなるようにロールギャップ長を変化させる板厚制御方式である。このフィードフォワード板厚制御は、相対的に短い周期の板厚変動に対応でき、好ましい。このようなフィードフォワード板厚制御には、公知の常套手段が用いられ、ロールギャップ長を△Sとし、入側板厚偏差を△Hとし、圧延機1のミル定数をMとし、圧延材WKの塑性定数をmとし、制御ゲインをC3とした場合、一般に、次式(1)によって制御が実施される。
△S=C3×(m/M)×△H ・・・(1)
【0053】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0054】
S 圧延システム
1 圧延機
2 板厚制御装置
21 モニタ板厚制御部
22 マスフロー板厚制御部
23 制御実施調整部
24 フィードフォワード板厚制御部
図1
図2
図3
図4