(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】乗りかご及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B66B11/02 B
(21)【出願番号】P 2021133851
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 智貴
(72)【発明者】
【氏名】大菅 麻里
(72)【発明者】
【氏名】戸村 好貴
(72)【発明者】
【氏名】島田 勝博
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-228451(JP,A)
【文献】特開2000-072358(JP,A)
【文献】実開昭62-181580(JP,U)
【文献】国際公開第2018/173221(WO,A1)
【文献】特開平08-113445(JP,A)
【文献】実開平06-012686(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0118519(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111215850(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の縦枠及び前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
前記下枠と一体的に組み立てられるかご床を有するかご室と、を備え、
前記一対の縦枠は、前記下枠が嵌合する嵌合部と、前記下枠を前記嵌合部へ案内する案内部とを有する
乗りかご。
【請求項2】
前記かご床は、一対の縦枠との位置合わせ用の目印を有する
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項3】
前記案内部は、前記嵌合部の上端から斜めに突出するテーパ片である
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項4】
前記嵌合部は、前記一対の縦枠が対向する方向及び上下方向と直交する方向において対向する一対の壁板と、前記一対の壁板の下端に連続する底板と、を有し、
前記テーパ片は、前記一対の壁板の上端にそれぞれ設けられている
請求項3に記載の乗りかご。
【請求項5】
前記下枠の下面と側面により形成される角部は、円弧状に形成されている
請求項4に記載の乗りかご。
【請求項6】
前記案内部は、前記嵌合部から突出し、先端に向かうにつれて細くなるガイドピンであり、
前記下枠は、前記ガイドピンが挿入されるピン挿入孔を有する
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項7】
昇降路内を昇降動作する乗りかごを備えたエレベーターにおいて、
前記乗りかごは、
一対の縦枠及び前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
前記下枠と一体的に組み立てられるかご床を有するかご室と、を備え、
前記一対の縦枠は、前記下枠が嵌合する嵌合部と、前記下枠を前記嵌合部へ案内する案内部とを有する
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご及びエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗りかごは、かご室と、かご室を支持するかご枠を備えている。かご室は、床と、天井と、側板とを有している。かご枠は、かご室の外側に配置され、床、天井、側板を囲む四角形の枠状に形成されている。
【0003】
特許文献1には、エレベーターのかご枠構造に関する技術が記載されている。特許文献1に記載されているように、かご枠は、下枠、上枠及び左右のたて枠を有している。かご枠を据え付ける際は、まず、左右のたて枠をガイドレールにはめ込む。次に、下枠をその間に入れ込ませて、たて枠と固定する。その後、かご室を組み立ててから上枠と左右のたて枠と固定する。一般的に、下枠は、かご室のかご床と一体に組み立てられた状態で、左右のたて枠の下部に嵌合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かご床と一体に組み立てられた下枠をたて枠に嵌合させる際に、上方から見ると、下枠がかご床によって隠れてしまうため、下枠とたて枠の嵌合部分を視認することができなかった。その結果、左右のたて枠に対する下枠の位置調整が難しく、据付作業が煩雑になっていた。また、下枠とたて枠の嵌合部分を視認するは、作業員がピット内に入って下から見る必要があり、安全性を向上させる妨げになっていた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、据付作業を容易に行うことが可能な乗りかご及びエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、乗りかごは、一対の縦枠及び一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、下枠と一体的に組み立てられるかご床を有するかご室と、を備える。そして、一対の縦枠は、下枠が嵌合する嵌合部と、下枠を嵌合部へ案内する案内部とを有する。
また、エレベーターは、昇降路内を昇降動作する上記乗りかごを備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の乗りかご及びエレベーターによれば、据付作業を容易に行うことができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る乗りかごの外観を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る一対の縦枠の斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る乗りかご下部組立体を一対の縦枠に取り付ける途中の状態を上方から見た説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る乗りかご下部組立体を一対の縦枠に取り付ける途中の状態を下方から見た説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る乗りかご下部組立体を一対の縦枠に取り付けた状態を上方から見た説明図である。
【
図9】第2実施形態に係る下枠と一対の縦枠の嵌合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
1.第1実施形態
[エレベーター]
まず、本発明の第1実施形態に係るエレベーターの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、エレベーターは、巻上機1と、主ロープ2と、乗りかご3と、釣り合い錘5と、プーリ6と、を備えている。乗りかご3は、一対のかご下プーリ4A,4Bを備えている。乗りかご3は、一対のかご下プーリ4A,4Bに巻き掛けられた主ロープ2の移動に従って昇降路100を昇降する。
【0013】
巻上機1は、乗りかご3を昇降させるために主ロープ2を巻き上げる機器である。巻上機1は、昇降路100の上部に設置されている。主ロープ2の一端と他端は、それぞれ昇降路100の最上部に固定されている。主ロープ2は、一対のかご下プーリ4A,4Bと、巻上機1と、プーリ6とに巻き掛けられている。
【0014】
乗りかご3は、図示しない一対のガイドレールに案内されて昇降する。一対のかご下プーリ4A,4Bは、乗りかご3の下側に配置されている。釣り合い錘5は、乗りかご3との質量バランスをとって巻上機1の負荷を軽減するための錘である。釣り合い錘5は、巻上機1によって主ロープ2を巻き上げた場合に、乗りかご3と反対方向に昇降する。プーリ6は、釣り合い錘5の上部に配置され、釣り合い錘5と一体に昇降する。
【0015】
[乗りかご]
次に、乗りかご3の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、乗りかご3の外観を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態においては、乗りかご3に相対するエレベーター利用者の視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。この場合、エレベーター利用者から見て手前側が前方向、奥側が後方、上側が上方、下側が下方、左側が左方、右側が右方となる。
【0017】
図2に示すように、乗りかご3は、かご枠7と、かご枠7の内側に配置されたかご室8とを備えている。かご室8は、荷物や人を乗せるための収容空間を内部に有する。かご室8は、かご床12と、側板13と、天井15とによって形成されている。かご床12と天井15は、上下方向で上記収容空間を介して対向する状態に配置されている。側板13は、かごドア18の部分を除いて、上記収容空間の四方を取り囲むように配置されている。
【0018】
かご枠7は、前後方向から見て縦長の長方形に形成されている。かご枠7は、かご室8を取り囲むように配置されている。かご枠7は、かご室8の上部に配置された上枠9と、かご室8の下部に配置された下枠10(
図5参照)と、かご室8の左右の側部に配置された一対の縦枠11A,11Bと、を有している。
【0019】
上枠9は、左右方向に長く延在する部材である。上枠9は、一対の縦枠11A,11Bの上端部間に水平に架け渡されている。上枠9の長手方向の一端部は縦枠11Aの上端部に固定され、上枠9の長手方向の他端部は縦枠11Bの上端部に固定されている。これにより、一対の縦枠11A,11Bの上端部は、上枠9によって連結されている。
【0020】
一対の縦枠11A,11Bは、左右方向で互いに対向する状態に配置されている。各々の縦枠11A,11Bは、上下方向に長く延在する部材である。各々の縦枠11A,11Bは、上述した一対のガイドレールによって移動可能に支持される。ガイドレールは、昇降路100の壁に鉛直に据え付けられる長尺状の部材である。
【0021】
下枠10は、かご室8を介して上枠9と対向する位置に配置されている。下枠10は、左右方向に長く延在する略直方体状の部材である(
図5参照)。下枠10の下面と側面により形成される角部は、円弧状に形成されている。
【0022】
下枠10は、一対の縦枠11A,11Bの下端部間に水平に架け渡されている。下枠10の長手方向の一端部は縦枠11Aの下端部に固定され、下枠10の長手方向の他端部は縦枠11Bの下端部に固定されている。これにより、一対の縦枠11A,11Bの下端部は、下枠10によって連結されている。
【0023】
下枠10は、一対の床支持梁14A,14Bを介してかご床12を支持している。一対の床支持梁14A,14Bは、かご床12を支持する梁である。床支持梁14Aの長手方向の両端部には、それぞれ防振部20が設けられ、床支持梁14Bの長手方向の両端部にも、それぞれ防振部20が設けられている。防振部20は、かご床12を含むかご室8の振動を抑制する部分である。かご床12は、複数(本形態例では4つ)の防振部20を介して、一対の床支持梁14A,14Bにより支持されている。
【0024】
床支持梁14Aは、下枠10の長手方向の一端部(右端部)に配置されている。床支持梁14Bは、下枠10の長手方向の他端(左端部)に配置されている。また、各々の床支持梁14A,14Bは、下枠10の上に載せた状態で、図示しないボルトにより下枠10の上面に固定されている。各々の床支持梁14A,14Bは、下枠10と直角をなす向きで水平に配置されている。具体的には、下枠10は左右方向と平行に配置され、各々の床支持梁14A,14Bは、前後方向と平行に配置されている。
【0025】
かご室8の前部には、かごドア18が設置されている。かごドア18は、左右方向に開閉可能に設けられている。かご室8の下側には、一対のかご下プーリ4A,4Bが配置されている(4Bは
図1参照)。かご下プーリ4A,4Bは、縦枠11A,11Bよりも前側に配置されている。一方のかご下プーリ4Aは床支持梁14Aに取り付けられ、他方のかご下プーリ4Bは床支持梁14Bに取り付けられている。
【0026】
[一対の縦枠]
次に、一対の縦枠11A,11Bの構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、一対の縦枠11A,11Bの斜視図である。
【0027】
図3に示すように、縦枠11Aは、縦枠本体21と、連結部材22と、嵌合部23と、を有している。縦枠本体21は、上下方向に長く延在されている。縦枠本体21は、前後方向に対向する2つの側部21A,21Bと、2つの側部21A,21Bに連続する本体板21Cと、を有する。本体板21Cは、かご室8に対向する。2つの側部21A,21Bは、本体板21Cの両側端からかご室8と反対側へ略垂直に突出している。
【0028】
連結部材22は、かご下プーリ4Aの直上に配置され、縦枠11Aと床支持梁14A(
図2参照)とを連結する。連結部材22は、縦枠本体21と同様に、水平方向に平行な断面が略コの字状の折り曲げ部材からなる。連結部材22は、縦枠本体21の本体板21Cと平行に配置される第1板部と、第1板部に連続する第2板部及び第3板部と、を有する。
【0029】
連結部材22の第2板部と第3板部は、前後方向で対向する。連結部材22の第2板部は、縦枠本体21における側部21Aにボルト(ねじ)を用いて固定されている。また、連結部材22の第3板部は、不図示の中間部材を介して床支持梁14Aに固定されている。
【0030】
嵌合部23は、縦枠本体21の下部に固定されている。嵌合部23は、縦枠11Aにおける縦枠11Bに対向する面に配置されている。嵌合部23には、下枠10(
図5参照)の長手方向の一端部が上方から嵌合される。
【0031】
嵌合部23は、金属製の板を曲げ加工して得られる一体構造物である。嵌合部23は、前後方向に対向する一対の壁板23A,23Bと、上下方向に略垂直な平面を有する底板23Cと、を有する。一対の壁板23A,23Bは、略長方形に形成されており、2つの長辺が上端及び下端を形成している。一対の壁板23A,23Bは、縦枠11Aの2つの側部21A,21Bにボルト(ねじ)を用いて固定されている。
【0032】
底板23Cは、略長方形に形成されている。底板23Cにおける前後方向に対向する2辺は、一対の壁板23A,23Bの下端に連続している。底板23Cには、下枠10(
図5参照)の長手方向の一端部がボルト(ねじ)を用いて固定される。
【0033】
一対の壁板23A,23Bの上端には、それぞれテーパ片24A,24Bが設けられている。テーパ片24A,24Bは、本発明に係る案内部の一具体例を示す。テーパ片24A,24Bは、一対の壁板23A,23Bの上端から斜めに突出する。テーパ片24A,24Bは、一対の壁板23A,23Bに連続する板体からなる。
【0034】
テーパ片24A,24Bは、一対の壁板23A,23Bと反対側である先端に向かうにつれて互いに離反するように傾斜している。テーパ片24A,24Bにおける斜め上方を向く傾斜面(以下、「ガイド面」とする)は、下枠10の長手方向の一端部を嵌合部23へ案内する。このとき、下枠10の下面と側面により形成される角部が、テーパ片24A,24Bのガイド面上を摺動する。なお、テーパ片24A,24Bのガイド面には、グリースや潤滑油などの減摩材を塗布してもよい。
【0035】
縦枠11Bは、縦枠本体25と、連結部材26と、嵌合部27と、を有している。縦枠本体25は、上述した縦枠11Aの縦枠本体21と同様の構成であり、2つの側部25A,25Bと、2つの側部25A,25Bに連続する本体板25Cと、を有する。連結部材26は、上述した縦枠11Aの連結部材22と同様の構成である。連結部材26は、かご下プーリ4Bの直上に配置され、縦枠11Bと床支持梁14B(
図5参照)とを連結する。
【0036】
嵌合部27は、上述した縦枠11Aの嵌合部23と同様の構成であり、縦枠本体25の下部に固定されている。嵌合部27は、縦枠11Bにおける縦枠11A側に配置されている。嵌合部27には、下枠10(
図5参照)の長手方向の他端部が上方から嵌合される。嵌合部23は、一対の壁板27A,27Bと、底板27Cと、を有する。
【0037】
一対の壁板27A,27Bの上端には、それぞれテーパ片28A,28Bが設けられている。テーパ片28A,28Bは、上述したテーパ片24A,24Bと共に本発明に係る案内部の一具体例を示す。テーパ片28A,28Bは、一対の壁板27A,27Bの上端から斜めに突出する。テーパ片28A,28Bは、一対の壁板27A,237に連続する板体からなる。
【0038】
テーパ片28A,28Bは、一対の壁板27A,27Bと反対側である先端に向かうにつれて互いに離反するように傾斜している。テーパ片28A,28Bにおける斜め上方を向く傾斜面(以下、「ガイド面」とする)は、下枠10の長手方向の他端部を嵌合部27へ案内する。このとき、下枠10の下面と側面により形成される角部が、テーパ片28A,28Bのガイド面上を摺動する。なお、テーパ片28A,28Bのガイド面には、グリースや潤滑油などの減摩材を塗布してもよい。
【0039】
[乗りかごの据付作業]
次に、乗りかご3の据付作業について説明する。
図4は、第1実施形態に係る乗りかご下部組立体を一対の縦枠に取り付ける途中の状態を上方から見た説明図である。
図5は、乗りかご下部組立体を一対の縦枠に取り付ける途中の状態を下方から見た説明図である。
図6は、
図4に示すA-A線に沿う断面図である。
【0040】
図4及び
図5に示すように、乗りかご3の下枠10と、一対の床支持梁14A,14Bと、かご床12は、一体に組み立てられて、乗りかご下部組立体30として据付場所に搬入される。乗りかご3を据え付ける場合は、まず、一対の縦枠11A,11Bを不図示のガイドレールに取り付ける。この際、一対の縦枠11A,11Bは、ガイドレールに固定される。そして、乗りかご3の組立後に、かご枠7をガイドレールに対して移動可能にする。
【0041】
次に、乗りかご下部組立体30を一対の縦枠11A,11Bの嵌合部23,27の上方に配置する。
図4に示すように、下部組立体30におけるかご床12の上面には、一対の縦枠11A,11Bとの位置合わせ用の目印31が形成されている。目印31は、かご床12の左右方向に対向する両辺に設けられている。
【0042】
目印31は、前後方向に所定の距離を空けて左右方向に延びる2つのラインである。2つのライン間の距離は、一対の縦枠11A,11Bの前後方向の長さに等しい。作業者は、下部組立体30を上方から見て、目印31の2つのラインを一対の縦枠11A,11Bの前後方向の両端に合わせる。これにより、
図6に示すように、嵌合部23,27に対する下枠10の前後方向の位置を容易に合わせることができる。
【0043】
次に、乗りかご下部組立体30を下降させて、下枠10の長手方向の両端部を一対の縦枠11A,11Bの嵌合部23,27に嵌合させる。このとき、嵌合部23,27に対して下枠10の前後方向の位置が多少ずれていると、下枠10の下面と側面により形成される角部が、一対の縦枠11A,11Bのテーパ片24A,24B,28A,28Bに接触する。そして、下枠10の長手方向の両端部は、テーパ片24A,24B,28A,28Bにより嵌合部23,27へ案内される。その結果、下枠10を嵌合部23,27に容易に嵌合させることができる。
【0044】
図7は、乗りかご下部組立体30を一対の縦枠11A,11Bに取り付けた状態を上方から見た説明図である。
図8は、
図7に示すB-B線に沿う断面図である。
【0045】
図7及び
図8に示すように、下枠10を嵌合部23,27に嵌合させた後、下枠10の長手方向の両端部を、嵌合部23,27の底板23C,27Cにボルト(ねじ)を用いて固定する。次に、乗りかご下部組立体30の一対の床支持梁14A,14Bを、一対の縦枠11A,11Bの連結部材22,26に中間部材を介して固定する。これにより、乗りかご下部組立体30が一対の縦枠11A,11Bに取り付けられる。
【0046】
次に、かご床12に4つの側板13を固定し、4つの側板13の上に天井15を固定する。これにより、かご室8が組み立てられる(
図2参照)。次に、上枠9の長手方向の両端部を、縦枠11A,11Bの上端部にボルト(ねじ)を用いて固定する。これにより、かご枠7が組み立てられ、乗りかご3の据付作業が終了する。
【0047】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係るエレベーターについて説明する。第2実施形態に係るエレベーターは、上述の第1実施形態に係るエレベーターと同様の構成を備えている。第2実施形態に係るエレベーターが第1実施形態に係るエレベーターと異なるところは、かご枠7Aのみである。そのため、ここでは、かご枠7Aについて説明し、第1実施形態と共通する構成の説明を省略する。
【0048】
[かご枠]
図9は、第2実施形態に係る下枠と一対の縦枠の嵌合状態を示す断面図である。
図9に示すように、第2実施形態に係るかご枠7Aは、かご室8の下部に配置された下枠40と、かご室8の左右の側部に配置された一対の縦枠41A,41B(
図9では、縦枠41Aを示す)と、かご室8の上部に配置された不図示の上枠9と、を有する。上枠9は、第1実施形態と同じである。かご枠7Aは、前後方向から見て縦長の長方形に形成されている。
【0049】
下枠40は、左右方向に長く延在する略直方体状の部材である。下枠40は、一対の縦枠41A,41Bの下端部間に水平に架け渡されている。下枠40の長手方向の一端部は縦枠41Aの下端部に固定され、下枠40の長手方向の他端部は縦枠41Bの下端部に固定されている。これにより、一対の縦枠41A,41Bの下端部は、下枠40によって連結されている。また、下枠40は、一対の床支持梁14A,14Bを介してかご床12(
図9では不図示)を支持している。
【0050】
縦枠41Aは、縦枠本体51と、第1実施形態と同じ連結部材22(不図示)と、嵌合部53と、を有している。縦枠本体51は、上下方向に長く延在されている。縦枠本体51は、前後方向に対向する2つの側部51A,51Bと、2つの側部51A,51Bに連続する本体板51Cと、を有する。本体板51Cは、かご室8に対向する。2つの側部51A,51Bは、本体板51Cの両側端からかご室8と反対側へ略垂直に突出している。不図示の連結部材22は、縦枠41Aと床支持梁14Aとを連結する。
【0051】
嵌合部53は、縦枠本体51の下部に固定されている。嵌合部53は、縦枠41Aにおける縦枠41Bに対向する面に配置されている。嵌合部53には、下枠40の長手方向の一端部が上方から嵌合される。嵌合部53は、第1実施形態に係る嵌合部23と同様の構成であり、一対の壁板53A,53Bと、底板53Cと、を有する。
【0052】
底板53Cの上面には、上下方向に延びるガイドピン54が取り付けられている。ガイドピン54は、本発明に係る案内部の他の具体例を示す。ガイドピン54は、先端に向かうにつれて細くなる。ガイドピン54の先端部は、嵌合部53よりも上方に突出している。ガイドピン54は、下枠40の長手方向の一端部を嵌合部53へ案内する。
【0053】
図9に示すように、下枠40の下面には、ガイドピン54が挿入されるピン挿入孔40aが形成されている。ピン挿入孔40aの径は、ガイドピン54の基部の径よりも僅かに大きい。したがって、下枠40は、ガイドピン54に沿って下降することにより、嵌合部53へ案内される。
【0054】
また、床支持梁14Aの下部には、ガイドピン54との干渉を避けるための逃げ孔141が形成されている。逃げ孔141の径は、ガイドピン54の基部の径よりも大きい。なお、床支持梁14Aの下部が、ガイドピン54に干渉しない構造である場合は、逃げ孔141は不要である。
【0055】
不図示の縦枠41Bは、縦枠41Bと同じ構成であり、縦枠41Bと左右対称に形成されている。また、縦枠41Bの嵌合部(不図示)には、ガイドピン54と同様のガイドピンが設けられている。
【0056】
第2実施形態では、ガイドピン54が先端に向かうにつれて細くなっている。そのため、嵌合部53に対する下枠40位置が前後方向に多少ずれていても、ガイドピン54をピン挿入孔40aに挿入することができる。そして、下枠40は、ガイドピン54(不図示のガイドピン)により嵌合部53(不図示の嵌合部)へ案内される。その結果、下枠40を嵌合部53等に容易に嵌合させることができる。
【0057】
3.まとめ
以上説明したように、上述した第1実施形態の乗りかご3は、一対の縦枠11A,11B及び一対の縦枠11A,11Bの下端部を連結する下枠10を有するかご枠7と、下枠10と一体的に組み立てられるかご床12を有するかご室8と、を備える。一対の縦枠11A,11Bは、下枠10が嵌合する嵌合部23,27と、下枠10を嵌合部23,27へ案内するテーパ片24A,24B,28A,28B(案内部)とを有する。これにより、下枠10を嵌合部23,27に容易に嵌合させることができる。その結果、乗りかご3の据付作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、上述した第1実施形態におけるかご床12は、一対の縦枠11A,11Bとの位置合わせ用の目印31を有する。これにより、下枠10の位置を嵌合部23,27に対して容易に合わせることができる。
【0059】
また、上述した第1実施形態におけるテーパ片24A,24B,28A,28B(案内部)は、嵌合部23,27の上端から斜めに突出する。これにより、嵌合部23,27の上方にある下枠10を嵌合部23,27へ案内することができる。したがって、下枠10(乗りかご下部組立体30)を下降させることで、嵌合部23,27に嵌合させることができる。
【0060】
また、上述した第1実施形態における嵌合部23は、一対の縦枠11A,11Bが対向する方向及び上下方向と直交する方向において対向する一対の壁板23A,23Bと、一対の壁板23A,23Bの下端に連続する底板23Cと、を有する。そして、テーパ片24A,24Bは、一対の壁板23A,23Bの上端にそれぞれ設けられている。これにより、嵌合部23に対する下枠10の位置が前後方向の何れの方向にずれていても、下枠10を嵌合部23へ案内することができる。
【0061】
また、上述した第1実施形態における下枠10の下面と側面により形成される角部は、円弧状に形成されている。これにより、下枠10がテーパ片24A,24B,28A,28Bを摺動し易くなる。その結果、嵌合部23に対する下枠10の嵌合作業を容易にすることができる。
【0062】
また、上述した第2実施形態における案内部は、嵌合部53から突出し、先端に向かうにつれて細くなるガイドピン54である。そして、下枠40は、ガイドピン54が挿入されるピン挿入孔40aを有する。これにより、嵌合部53の上方にある下枠40を嵌合部53へ案内することができる。したがって、下枠40(乗りかご下部組立体)を下降させることで、嵌合部53に嵌合させることができ、乗りかご3の据付作業を容易に行うことができる。また、嵌合部53に対する下枠40の位置が水平方向の何れの方向にずれていても、ガイドピン54がピン挿入孔40aに挿入可能な範囲であれば、下枠10を嵌合部23へ案内することができる。
【0063】
以上、本発明の乗りかご及びエレベーターについて、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の乗りかご及びエレベーターは、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0064】
例えば、上述した第1実施形態では、かご床12の上面に目印31を設けた。しかし、本発明に係る目印は、かご床12の上面に設けることに限定されず、例えば、かご床の側面、下枠の側面、床支持梁の側面等に設けてもよい。また、本発明に係る目印としては、2つのラインに限定されず、例えば、一対の縦枠における前後方向の一端に合わせる1つのラインであってもよい。また、本発明に係る目印は、ラインに限定されず、マークや記号、溝、突部等であってもよい。
【0065】
また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…巻上機、 2…主ロープ、 3…乗りかご、 4A,4B…かご下プーリ、 5…釣り合い錘、 6…プーリ、 7,7A…かご枠、 8…かご室、 9…上枠、 10,40…下枠、 11A,11B,41A,41B…縦枠、 12…かご床、 13…側板、 14A,14B…床支持梁、 15…天井、 21,25,51…縦枠本体、 21A,21B,51A,51B…側部、 21C,25C,51C…本体板、 22,26…連結部材、 23,27,53…嵌合部、 23A,23B,27A,27B,53A,53B…壁板、 23C,27C,53C…底板、 24A,24B,28A,28B…テーパ片(案内部)、 30…下部組立体、 31…目印、 40a…ピン挿入孔、 100…昇降路、 54…ガイドピン、 141…逃げ孔