(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20240729BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240729BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01L23/28 J
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2021152689
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】原田 繁
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-011166(JP,A)
【文献】特開平06-252184(JP,A)
【文献】特開2010-109314(JP,A)
【文献】特開平06-260518(JP,A)
【文献】実開平01-113346(JP,U)
【文献】国際公開第2021/070677(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に固定された半導体チップと、
前記半導体チップと前記ダイパッドの少なくとも一部を覆う封止樹脂(18)であって、
第1の側面と、前記第1の側面と第1の方向に対向する第2の側面を有し、
下面と、前記下面と第2の方向に対向する上面を有し、
前記第1の側面の側に設けられた少なくとも一つの第1の突起部(18a)を有し、
前記第2の側面の側に設けられた少なくとも一つの第2の突起部(18b)を有し、
前記第1の方向に垂直な断面における前記少なくとも一つの前記第1の突起部の断面積は、前記第1の方向に垂直な断面における前記封止樹脂の最大断面積の10%以上であり、
前記第1の方向に垂直な断面における前記少なくとも一つの前記第2の突起部の断面積は、前記最大断面積の10%以上であり、
前記最大断面積は6mm
2以上である封止樹脂と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記上面と前記下面との距離は1mm以上である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの前記第1の突起部の前記第2の方向の長さは0.1mm以上であり、前記少なくとも一つの前記第2の突起部の前記第2の方向の長さは0.1mm以上である請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの前記第1の突起部の前記第1の方向に垂直な断面における形状は、前記第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状であり、
前記少なくとも一つの前記第2の突起部の前記第1の方向に垂直な断面における形状は、前記第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状である請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記封止樹脂は、無機物粒子を含み、
前記少なくとも一つの前記第1の突起部の前記第2の方向の長さは前記無機物粒子の平均粒径の2倍以上であり、
前記少なくとも一つの前記第2の突起部の前記第2の方向の長さは前記無機物粒子の平均粒径の2倍以上である請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記無機物粒子は、シリカ粒子である請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの前記第1の突起部は2個以上であり、
前記少なくとも一つの前記第2の突起部は2個以上である請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記封止樹脂はエポキシ樹脂を含む請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の樹脂封止技術として、トランスファーモールド方式がある。トランスファーモールド方式では、プランジャ内で溶融した樹脂を、半導体チップが設けられたキャビティ内に充填し硬化させることで半導体パッケージを製造する。例えば、スルーゲートで連結された複数のキャビティ内に溶融した樹脂を充填することで、半導体パッケージの生産性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、生産性が向上できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、ダイパッドと、前記ダイパッド上に固定された半導体チップと、前記半導体チップと前記ダイパッドの少なくとも一部を覆う封止樹脂であって、第1の側面と、前記第1の側面と第1の方向に対向する第2の側面を有し、下面と、前記下面と第2の方向に対向する上面を有し、前記第1の側面の側に設けられた少なくとも一つの第1の突起部を有し、前記第2の側面の側に設けられた少なくとも一つの第2の突起部を有し、前記第1の方向に垂直な断面における前記少なくとも一つの前記第1の突起部の断面積は、前記第1の方向に垂直な断面における前記封止樹脂の最大断面積の10%以上であり、前記第1の方向に垂直な断面における前記少なくとも一つの前記第2の突起部の断面積は、前記最大断面積の10%以上であり、前記最大断面積は6mm2以上である封止樹脂と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図4】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図5】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図6】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図7】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図8】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図9】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図10】第1の実施形態の半導体装置の比較例の模式図。
【
図11】第1の実施形態の半導体装置の比較例の模式断面図。
【
図12】第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図13】第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図14】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図15】第2の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
【
図18】第4の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0008】
本明細書中、半導体装置を構成する部材の長さ等は、例えば、Scanning Electron Microscope(SEM)の画像から求めることが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、ダイパッドと、ダイパッド上に固定された半導体チップと、半導体チップとダイパッドの少なくとも一部を覆う封止樹脂であって、第1の側面と、第1の側面と第1の方向に対向する第2の側面を有し、下面と、下面と第2の方向に対向する上面を有し、第1の側面の側に設けられた少なくとも一つの第1の突起部を有し、第2の側面の側に設けられた少なくとも一つの第2の突起部を有し、第1の方向に垂直な断面における少なくとも一つの第1の突起部の断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂の最大断面積の10%以上であり、第1の方向に垂直な断面における少なくとも一つの第2の突起部の断面積は、最大断面積の10%以上であり、最大断面積は6mm2以上である封止樹脂と、を備える。
【0010】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージ100である。
【0011】
図1(a)、
図1(b)、及び
図1(c)は、第1の実施形態の半導体装置の模式図である。
図1(a)は、上面図である。
図1(b)は、断面図である。
図1(b)は、
図1(a)のAA’断面である。
図1(c)は、断面図である。
図1(c)は、
図1(a)のBB’断面である。
【0012】
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2(a)は、
図1(a)のCC’断面である。
図2(b)は、
図1(a)のDD’断面である。
図2(c)は、
図1(a)のEE’断面である。
【0013】
半導体パッケージ100は、半導体チップ10、ダイパッド12、リード部14、ボンディングワイヤ16、封止樹脂18を含む。
【0014】
封止樹脂18は、第1の側面sf1、第2の側面sf2、第3の側面sf3、第4の側面sf4、下面bf、及び上面tfを有する。封止樹脂18は、第1の突起部18a及び第2の突起部18bを有する。
【0015】
以下、第1の側面sf1から第2の側面sf2に向かう方向を第1の方向、第3の側面sf3から第4の側面sf4に向かう方向を第3の方向、下面bfから上面tfに向かう方向を第2の方向と定義する。
【0016】
半導体チップ10は、例えば、パワー半導体デバイスである。半導体チップ10は、例えば、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)、又はダイオードである。
【0017】
半導体チップ10は、ダイパッド12上に固定される。半導体チップ10は、例えば、はんだを用いてダイパッド12の表面に固定される。
【0018】
ダイパッド12は、例えば、矩形形状である。ダイパッド12は、金属である。ダイパッド12は、例えば、銅又は銅合金である。
【0019】
ダイパッド12の厚さは、例えば、0.5mmである。
【0020】
リード部14は、ダイパッド12の第3の方向に設けられる。リード部14は、金属である。リード部14は、例えば、銅又は銅合金である。リード部14は、例えば、ダイパッド12と同一の材料で形成される。
【0021】
ダイパッド12の厚さは、例えば、0.5mmである。
【0022】
ボンディングワイヤ16は、半導体チップ10とリード部14を接続する。ボンディングワイヤ16は、半導体チップ10とリード部14を電気的に接続する。
【0023】
ボンディングワイヤ16は、金属線である。ボンディングワイヤ16は、例えば、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)を含む。ボンディングワイヤ16は、例えば、銅線又はアルミニウム線である。
【0024】
封止樹脂18は、半導体チップ10及びボンディングワイヤ16を覆う。封止樹脂18は、ダイパッド12の少なくとも一部を覆う。封止樹脂18は、リード部14の少なくとも一部を覆う。封止樹脂18は、半導体チップ10及びボンディングワイヤ16を保護する機能を有する。
【0025】
封止樹脂18は、樹脂を含む。封止樹脂18は、例えば、エポキシ樹脂を含む。
【0026】
封止樹脂18は、第1の側面sf1、第2の側面sf2、第3の側面sf3、第4の側面sf4、下面bf、及び上面tfを有する。第2の側面sf2は、第1の側面sf1と第1の方向に対向する。第4の側面sf4は、第3の側面sf3と第3の方向に対向する。上面tfは、下面bfと第2の方向に対向する。
【0027】
封止樹脂18は、第1の突起部18a及び第2の突起部18bを有する。
【0028】
第1の突起部18aは、封止樹脂18の第1の側面sf1の側に設けられる。第1の突起部18aは、第1の方向に突出する。
【0029】
第2の突起部18bは、封止樹脂18の第2の側面sf2の側に設けられる。第2の突起部18bは、第1の方向に突出する。
【0030】
第1の方向に垂直な断面における第1の突起部18aの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上50%以下である。例えば、
図2(c)に示される封止樹脂18の断面の面積が、封止樹脂18の最大断面積である。例えば、
図2(a)に示される第1の突起部18aの断面の面積が、
図2(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%以上50%以下である。
【0031】
また、第1の方向に垂直な断面における第2の突起部18bの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上50%以下である。例えば、
図2(b)に示される第2の突起部18bの断面の面積が、
図2(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%以上50%以下である。
【0032】
封止樹脂18の最大断面積は6mm2以上である。
【0033】
第1の突起部18aの第2の方向の長さ(
図2(a)中のd1)は、例えば、100μm以上1mm以下である。また、第2の突起部18bの第2の方向の長さ(
図2(b)中のd2)は、例えば、0.1mm以上1mm以下である。
【0034】
第1の突起部18aの第3の方向の長さは、例えば、0.1mm以上5mm以下である。また、第2の突起部18bの第3の方向の長さは、例えば、0.1mm以上5mm以下である。
【0035】
上面tfと下面bfとの距離(
図2(c)中のd3)は、例えば、1mm以上である。言い換えれば、封止樹脂18の厚さは、1mm以上である。
【0036】
第1の突起部18aの第1の方向の長さは、例えば、0.05mm以上2mm以下である。また、第2の突起部18bの第1の方向の長さは、例えば、0.05mm以上2mm以下である。
【0037】
次に、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
【0038】
第1の実施形態の半導体パッケージ100は、トランスファーモールド方式を用いて製造される。
【0039】
【0040】
最初に、半導体チップ10が固定されたダイパッド12が複数個含まれるリードフレームを、上型31と下型32で構成される金型で挟み込む。半導体チップ10が固定されたダイパッド12が複数個含まれるリードフレームを、上型31と下型32との間に挟み込む(
図3)。
図3ないし
図9では、ダイパッド12以外の部分のリードフレームの図示を省略している。
【0041】
上型31と下型32が合わさることにより、複数のキャビティ34と、隣り合うキャビティ34の間を連結するスルーゲート36が形成される(
図4(a)、
図4(b))。キャビティ34内に、半導体チップ10が固定されたダイパッド12が位置する。
【0042】
図4(a)は、スルーゲート36を含む断面図である。
図4(b)は、キャビティ34を含む断面図である。
【0043】
樹脂の流動方向に垂直な断面におけるスルーゲート36の断面積は、樹脂の流動方向に垂直な断面におけるキャビティ34の最大断面積の10%以上である。例えば、
図4(b)に示されるキャビティ34の断面の面積が、キャビティ34の最大断面積である。例えば、
図4(a)に示されるスルーゲート36の断面の面積が、
図4(b)に示されるキャビティ34の断面の面積の10%以上50%以下である。
【0044】
キャビティ34の最大断面積は6mm2以上である。
【0045】
次に、キャビティ34内に溶融した樹脂38を、図示しないプランジャから充填する(
図5)。樹脂38は、キャビティ34の間を、スルーゲート36を通って流動する。樹脂38は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0046】
全てのキャビティ34内が、樹脂38で充填された後、樹脂38は冷却され硬化する(
図6、
図7(a)、
図7(b))。
図7(a)に示されるように、スルーゲートにも硬化した樹脂38が残存する。スルーゲートに残存した樹脂38の一部が、半導体パッケージ100の、第1の突起部18a及び第2の突起部18bとなる。
図7(b)に示されるキャビティ34内に充填された樹脂38は、半導体パッケージ100の封止樹脂18となる。
【0047】
次に、上型31及び下型32を、硬化した樹脂38から分離する(
図8)。
【0048】
次に、スルーゲートに残存した樹脂38を、レーザ光により切断する(
図9)。スルーゲートに残存した樹脂38切断することで、第1の突起部18a及び第2の突起部18bが形成される。
【0049】
以上の製造方法により、第1の実施形態の半導体パッケージ100が複数個、形成される。
【0050】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
第1の実施形態の半導体装置の比較例は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージ900である。半導体パッケージ900は、半導体チップ10、ダイパッド12、リード部14、ボンディングワイヤ16、封止樹脂18を含む。
【0056】
比較例の半導体パッケージ900は、第1の方向に垂直な断面における第1の突起部18aの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%未満である点で、第1の実施形態の半導体パッケージ100と異なる。例えば、
図11(c)に示される封止樹脂18の断面の面積が、封止樹脂18の最大断面積である。例えば、
図11(a)に示される第1の突起部18aの断面の面積が、
図11(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%未満である。
【0057】
また、比較例の半導体パッケージ900は、第1の方向に垂直な断面における第2の突起部18bの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%未満である点で、第1の実施形態の半導体パッケージ100と異なる。例えば、
図11(b)に示される第2の突起部18bの断面の面積が、
図11(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%未満である。
【0058】
第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法は、上型31と下型32の、スルーゲートを形成する部分の形状が、第1の実施形態の半導体装置の製造方法と異なる。
【0059】
図12及び
図13は、第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図12は、樹脂の流動方向に垂直な断面図である。
図13は、樹脂の流動方向に平行な断面図である。
図12は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の
図4に対応する図である。また、
図13は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の
図8に対応する図である。
【0060】
図12(a)は、スルーゲート36を含む断面図である。
図12(b)は、キャビティ34を含む断面図である。
【0061】
樹脂の流動方向に垂直な断面におけるスルーゲート36の断面積は、樹脂の流動方向に垂直な断面におけるキャビティ34の最大断面積の10%未満である。例えば、
図12(b)に示されるキャビティ34の断面の面積が、キャビティ34の最大断面積である。例えば、
図12(a)に示されるスルーゲート36の断面の面積が、
図12(b)に示されるキャビティ34の断面の面積の10%未満である。
【0062】
キャビティ34の最大断面積は6mm2以上である。
【0063】
図13に示すように、比較例の製造方法では、上型31及び下型32を、硬化した樹脂38から分離する際に、上型31と下型32の、スルーゲートを形成する部分に、樹脂の一部38xが貼り付く場合がある。
【0064】
上型31及び下型32の、スルーゲートを形成する部分に、樹脂の一部38xが貼り付くと、例えば、連続して次の半導体パッケージ900を形成する際に、スルーゲートの実効断面積が減少し、樹脂38の充填不良が生じるおそれがある。したがって、例えば、半導体パッケージ900の歩留まりが低下し、半導体パッケージ900の生産性が低下する。
【0065】
また、上型31及び下型32の、スルーゲートを形成する部分に、樹脂の一部38xが貼り付くと、例えば、連続して次に半導体パッケージ900を形成する前に、上型31及び下型32の洗浄が必要となり、半導体パッケージ900の生産性が低下する。
【0066】
金型への樹脂の貼り付きは、樹脂が脱水縮合することで、金型と樹脂が強固な共有結合で結びつくために生じると考えられる。キャビティを充填する樹脂には、例えば、リードフレーム等への密着性を向上させために、密着助剤が添加されている。樹脂が硬化する際に、密着助剤の作用により金型と樹脂が水素結合で結びつき金型と樹脂との密着性が向上する。
【0067】
比較例の製造方法の場合、スルーゲートで樹脂の圧力又は粘度が高くなることで、樹脂の脱水縮合が生じ、水素結合より強固な共有結合で金型と樹脂が結びつき、金型への樹脂の貼り付きが生じることが考えられる。
【0068】
発明者による検討の結果、スルーゲートでの樹脂の圧力及び粘度は、スルーゲートの断面積のキャビティの最大断面積に対する比率に依存することが明らかになった。そして、スルーゲートの断面積の、キャビティの最大断面積に対する比率を高くすることで、スルーゲートにおける樹脂の圧力又は粘度を低下させられることが明らかになった。したがって、上記比率を高くすることで、樹脂の脱水縮合を抑制でき、スルーゲートにおける金型と樹脂の貼り付きを抑制できることが明らかになった。
【0069】
発明者による検討の結果、樹脂の流動方向に垂直な断面におけるスルーゲートの断面積を、樹脂の流動方向に垂直な断面におけるキャビティの最大断面積の10%以上にすることで、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きを抑制できることが明らかになった。
【0070】
従来、スルーゲートの断面積は、キャビティの充填速度や、スルーゲート部の樹脂のレーザ光による切断の作業効率等の観点から最適化されてきた。今回、スルーゲートの断面積は、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きを抑制する観点からも最適化が必要であるという知見が得られた。
【0071】
特に、キャビティの最大断面積が6mm2以上となるような場合、従来のスルーゲートの断面積の最適化手法では、スルーゲートの断面積は、キャビティの最大断面積の10%未満となっていた。
【0072】
第1の実施形態の半導体パッケージ100では、第1の方向に垂直な断面における第1の突起部18aの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上である。また、第1の方向に垂直な断面における第2の突起部18bの断面積は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上である。
【0073】
半導体パッケージ100は、樹脂38の流動方向に垂直な断面におけるスルーゲート36の断面積が、樹脂38の流動方向に垂直な断面におけるキャビティ34の最大断面積の10%以上となる金型を用いて製造される。したがって、半導体パッケージ100を製造する際の、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きが抑制される。よって、半導体パッケージ100の生産性が向上する。
【0074】
半導体パッケージ100において、上面tfと下面bfとの距離(
図2(c)中のd3)は、1mm以上であることが好ましい。言い換えれば、半導体パッケージ100の封止樹脂18の厚さは、1mm以上であることが好ましい。封止樹脂18の厚さが1mm以上であり、封止樹脂18の最大断面積が大きくなる場合に、半導体パッケージ100の構成は特に有効である。
【0075】
スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きを抑制する観点から、第1の突起部18aの第2の方向の長さ(
図2(a)中のd1)は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きを抑制する観点から、第2の突起部18bの第2の方向の長さ(
図2(b)中のd2)は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。
【0076】
スルーゲート部の樹脂のレーザ光による切断の作業効率を向上させる観点から、第1の突起部18aの第2の方向の長さ(
図2(a)中のd1)は、1mm以下であることが好ましい。また、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きを抑制する観点から、第2の突起部18bの第2の方向の長さ(
図2(b)中のd2)は、1mm以下であることが好ましい。
【0077】
キャビティ34の最大断面積は4mm2以上であることが好ましく、6mm2以上であることがより好ましく、10mm2以上であることが更に好ましい。
【0078】
以上、第1の実施形態によれば、生産性が向上できる半導体パッケージを実現できる。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、少なくとも一つの第1の突起部の第1の方向に垂直な断面における形状は、第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状であり、少なくとも一つの第2の突起部の第1の方向に垂直な断面における形状は、第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0080】
【0081】
第2の実施形態の半導体装置は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージ200である。
【0082】
図14(a)に示すように、第1の突起部18aの第1の方向に垂直な断面における形状は、第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状である。また、
図14(b)に示すように、第2の突起部18bの第1の方向に垂直な断面における形状は、第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状である。
【0083】
図15は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図15は、樹脂の流動方向に垂直な断面図である。
図15は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の
図4に対応する図である。
【0084】
図15(a)は、スルーゲート36を含む断面図である。
図15(b)は、キャビティ34を含む断面図である。
【0085】
図15(a)に示すように、スルーゲート36を含む断面において、上型31は、テーパ形状を有する。テーパ角度は、例えば、70度以上85度以下である。
【0086】
第2の実施形態の半導体パッケージ200を製造する際、スルーゲート36を含む断面において、上型31がテーパ形状を有する。この形状により、上型31を、硬化した樹脂38から分離する際に、樹脂の金型への貼り付きが抑制される。よって、半導体パッケージ200の生産性は、半導体パッケージ100に比べて、更に向上する。
【0087】
以上、第2の実施形態によれば、生産性が向上できる半導体パッケージを実現できる。
【0088】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、封止樹脂は、無機物粒子を含み、少なくとも一つの第1の突起部の第2の方向の長さは無機物粒子の平均粒径の2倍以上であり、少なくとも一つの第2の突起部の第2の方向の長さは無機物粒子の平均粒径の2倍以上である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0089】
【0090】
【0091】
第3の実施形態の半導体装置は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージ300である。半導体パッケージ300は、半導体チップ10、ダイパッド12、リード部14、ボンディングワイヤ16、封止樹脂18を含む。
【0092】
図16(b)、及び
図16(c)に示すように、封止樹脂18は、無機物粒子18pを含む。無機物粒子18pは、いわゆるフィラーである。
【0093】
無機物粒子18pは、例えば、半導体チップ10と封止樹脂18との間の熱膨張係数の差を小さくし、半導体パッケージ300内の応力の発生を抑制する機能を有する。半導体パッケージ300内の応力の発生を抑制することで、例えば、半導体チップ10とボンディングワイヤ16との間の接続不良や、リード部14とボンディングワイヤ16との間の接続不良の発生が抑制され、半導体パッケージ300の信頼性が向上する。
【0094】
無機物粒子18pは、例えば、シリカ粒子である。無機物粒子18pの平均粒径は、例えば、30μm以上100μm以下である。無機物粒子18pの粒径は、例えば、粒子の最大径で定義される。無機物粒子18pの平均粒径は、例えば、SEMで取得した封止樹脂18の断面画像において、各粒子の最大径を画像処理で求め、その平均値を算出することで得られる。
【0095】
例えば、スルーゲートのサイズが、無機物粒子の粒径よりも小さいと、半導体パッケージを製造する際に、スルーゲートで無機物粒子が流れにくくなる。したがって、スルーゲートにおける樹脂の圧力又は粘度が上昇し、スルーゲートでの金型と樹脂の貼り付きが生じるおそれがある。
【0096】
第3の実施形態のパッケージ300は、第1の突起部18aの第2の方向の長さ(
図16(b)中のd1)は無機物粒子の平均粒径の2倍以上である。また、第2の突起部18bの第2の方向の長さ(
図16(b)中のd2)は無機物粒子の平均粒径の2倍以上である。
【0097】
したがって、パッケージ300を製造する際の、スルーゲートにおける樹脂の圧力又は粘度の上昇が抑制できる。よって、パッケージ300の生産性が向上する。
【0098】
スルーゲートにおける樹脂の圧力又は粘度の上昇を抑制する観点から、第1の突起部18aの第2の方向の長さ(
図16(b)中のd1)は無機物粒子の平均粒径の3倍以上であることがより好ましい。また、第2の突起部18bの第2の方向の長さ(
図16(b)中のd2)は無機物粒子の平均粒径の3倍以上であることがより好ましい。
【0099】
スルーゲートにおける樹脂の圧力又は粘度の上昇を抑制する観点から、第1の突起部18aの第3の方向の長さは無機物粒子の平均粒径の2倍以上であることが好ましい。また、第2の突起部18bの第3の方向の長さは無機物粒子の平均粒径の2倍以上であることが好ましい。
【0100】
以上、第3の実施形態によれば、生産性が向上できる半導体パッケージを実現できる。
【0101】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、少なくとも一つの第1の突起部は2個以上であり、少なくとも一つの第2の突起部は2個以上である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
第4の実施形態の半導体装置は、半導体チップが樹脂封止された半導体パッケージ400である。半導体パッケージ400は、半導体チップ10、ダイパッド12、リード部14、ボンディングワイヤ16、封止樹脂18を含む。
【0107】
封止樹脂18は、第1の突起部18a1、第1の突起部18a2、第2の突起部18b1、及び第2の突起部18b2を有する。
【0108】
封止樹脂18の第1の側面sf1には、第1の突起部18a1及び第1の突起部18a2の2個の第1の突起部が設けられる。また、封止樹脂18の第2の側面sf2には、第2の突起部18b1及び第2の突起部18b2の2個の第2の突起部が設けられる。
【0109】
第1の方向に垂直な断面における第1の突起部18a1の断面積と第1の突起部18a2の断面積の和は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上50%以下である。例えば、
図18(c)に示される封止樹脂18の断面の面積が、封止樹脂18の最大断面積である。例えば、
図18(a)に示される第1の突起部18a1の断面積と第1の突起部18a2の断面積の和が、
図18(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%以上50%以下である。
【0110】
また、第1の方向に垂直な断面における第2の突起部18b1の断面積と第2の突起部18b2の断面積の和は、第1の方向に垂直な断面における封止樹脂18の最大断面積の10%以上50%以下である。例えば、
図18(b)に示される第2の突起部18b1の断面積と第2の突起部18b2の断面積の和が、
図18(c)に示される封止樹脂18の断面の面積の10%以上50%以下である。
【0111】
封止樹脂18の最大断面積は6mm2以上である。
【0112】
なお、第1の突起部の数、及び、第2の突起部の数は、3個以上であっても構わない。さらに、第1の突起部、及び第2の突起部は第2の方向に対向する辺を上底及び下底とする台形形状であっても構わない。
【0113】
第1の突起部の位置と、第2の突起部の位置は、例えば、第1の方向に垂直な面に対して面対称の位置にある。スルーゲートの位置を左右対称にすることにより、キャビティの中を流れる樹脂の流れが安定し、偏りの少ない樹脂の充填が可能となる。
【0114】
以上、第4の実施形態によれば、生産性が向上できる半導体パッケージを実現できる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10 半導体チップ
12 ダイパッド
14 リード部
16 ボンディングワイヤ
18 封止樹脂
18a 第1の突起部
18a1 第1の突起部
18a2 第1の突起部
18b 第2の突起部
18b1 第2の突起部
18b2 第2の突起部
18p 無機物粒子
100 半導体パッケージ(半導体装置)
200 半導体パッケージ(半導体装置)
300 半導体パッケージ(半導体装置)
400 半導体パッケージ(半導体装置)
bf 下面
sf1 第1の側面
sf2 第2の側面
tf 上面