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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】気体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F04F 5/16 20060101AFI20240729BHJP
   G05D 16/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F04F5/16
G05D16/00 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021155392
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046672
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000241902
【氏名又は名称】北海道瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000142078
【氏名又は名称】株式会社協成
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】田口 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-293126(JP,A)
【文献】特開平06-093999(JP,A)
【文献】特開2003-269400(JP,A)
【文献】実開昭55-028717(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 5/16
G05D 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の供給経路と、前記供給経路の内部圧力が相対的に高圧となる高圧部と相対的に低圧となる低圧部の間に供給経路と並列に設けられるバイパス配管と、前記バイパス配管の途中に設けられ、前記供給経路の高圧部から低圧部への気体の流れを阻止する逆止弁と、前記バイパス配管の途中の逆止弁よりも高圧部側に設けられ、前記バイパス配管の逆止弁側に接続される吸入口と高圧部側に接続される吐出口を有するエジェクタと、前記エジェクタに高圧部内の気体の圧力よりも高圧の駆動気体を供給する駆動源と、前記エジェクタと駆動源の間に設けられる制御弁と、前記低圧部内の気体の圧力を検知する圧力センサとを備え、
前記供給経路は都市ガスの供給導管であり、前記駆動源は、前記供給経路を流れるガスと同種で前記高圧部内のガスの圧力よりも高圧に圧縮されたガスが前記駆動気体として充填されており、
前記圧力センサで検知される圧力が所定の設定圧以下のときは、前記制御弁を閉じて、前記エジェクタを非駆動状態とし、
前記圧力センサで検知される圧力が前記設定圧を超えると、前記制御弁を開いて、前記駆動源から供給される前記駆動気体によって駆動されたエジェクタが、前記低圧部内の気体を前記逆止弁を介して吸引し、前記駆動気体と混合して前記高圧部へ還流させるようにした気体供給システム。
【請求項2】
前記供給経路の途中に上流側の気体を減圧して下流側へ送り出す整圧器が設けられ、前記整圧器の上流側に接続される一次側配管が前記供給経路の高圧部となり、前記整圧器の下流側に接続される二次側配管が前記供給経路の低圧部となっていることを特徴とする請求項1に記載の気体供給システム。
【請求項3】
前記制御弁は、前記圧力センサによる低圧部内の気体の圧力の検知結果に基づいて自動的に開閉されることを特徴とする請求項1または2に記載の気体供給システム。
【請求項4】
前記駆動源ガスボンベであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の気体供給システム。
【請求項5】
前記気体が都市ガスであり、前記供給経路が都市ガス供給導管であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の気体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体供給経路の上流側から送られてきた気体を下流側へ送り出す気体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な都市ガス(以下、単に「ガス」とも称する。)の供給体制は、製造所から高圧で供給導管(供給経路)へ送り出したガスを、その供給導管の途中で中圧ガバナ(整圧器)によって中圧に減圧して大規模な工場や施設等に送り、さらに中圧のガスを低圧ガバナ(整圧器)で低圧に減圧して一般家庭や小規模な商業施設等に送るようにしている。
【0003】
ところで、上記のような都市ガスの供給体制において、低圧ガバナの故障や気温の上昇等により低圧ガバナの下流側に接続される低圧導管内のガス圧力が異常に高くなると、低圧導管からのガス漏れやガスメータの破損等が生じるおそれがる。このため、通常は、低圧導管の途中に低圧導管内のガス圧力を検知する圧力センサと排出弁とからなる安全器を取り付け、圧力センサで検知される圧力が所定の設定圧を超えると、排出弁を開いて低圧導管内のガスを大気放散するようにしていることが多い。しかし、このように都市ガスを大気放散することは、環境への影響や安全性の観点からは好ましくない。
【0004】
これに対し、低圧導管と低圧ガバナの上流側に接続される中圧導管との間に、低圧ガバナと並列にバイパス配管を設け、低圧導管内のガス圧力が設定圧を超えたときには、低圧導管内のガスをバイパス配管を介して中圧導管に強制的に還流させることにより、低圧導管内のガス圧力を低下させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-293126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1で提案されている方法では、都市ガス供給導管のうちの低圧導管(二次側配管)内のガスを中圧導管(一次側配管)に強制的に還流させる手段として、低圧導管内のガスを中圧導管内のガス圧力を超える圧力に加圧して中圧導管側へ吐出する加圧装置(圧縮機)を用いているので、新たな電気設備が必要となる。そして、その電気設備は安全対策として防爆仕様とする必要があるため、コストが高くメンテナンスにも手間がかかるという難点がある。
【0007】
そこで、本発明は、気体の流れ方向で内部圧力に相対的な高低差が生じる気体供給経路に対して、簡単な構成で低圧部の気体を高圧部へ還流させることができる還流手段を備えた気体供給システムを提供することを課題とする。なお、ここでいう「高圧部」、「低圧部」とは、気体供給経路における相対的な圧力の高さに応じた呼称であって、法律的な圧力区分を意味するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の気体供給システムは、気体の供給経路と、前記供給経路の内部圧力が相対的に高圧となる高圧部と相対的に低圧となる低圧部の間に供給経路と並列に設けられるバイパス配管と、前記バイパス配管の途中に設けられ、前記供給経路の高圧部から低圧部への気体の流れを阻止する逆止弁と、前記バイパス配管の途中の逆止弁よりも高圧部側に設けられ、前記バイパス配管の逆止弁側に接続される吸入口と高圧部側に接続される吐出口を有するエジェクタと、前記エジェクタに高圧部内の気体の圧力よりも高圧の駆動気体を供給する駆動源と、前記エジェクタと駆動源の間に設けられる制御弁と、前記低圧部内の気体の圧力を検知する圧力センサとを備え、前記圧力センサで検知される圧力が所定の設定圧以下のときは、前記制御弁を閉じて、前記エジェクタを非駆動状態とし、前記圧力センサで検知される圧力が前記設定圧を超えると、前記制御弁を開いて、前記駆動源から供給される駆動気体によって駆動されたエジェクタが、前記低圧部内の気体を前記逆止弁を介して吸引し、前記駆動気体と混合して前記高圧部へ還流させる構成を採用した。
【0009】
上記の構成によれば、気体供給経路の低圧部内の気体の圧力が設定圧を超えたときは、低圧部内の気体を大気放散させることなく高圧部へ還流させて、低圧部内の気体圧力の上昇による不具合を防止することができる。また、その気体の還流手段として、構造がシンプルで回転部のないエジェクタを用いているので、圧縮機等の加圧装置を用いる場合に比べてコストが低く抑えられるし、メンテナンスも簡単に行うことができる。
【0010】
ここで、本発明が適用される気体供給経路の具体的な例としては、前記供給経路の途中に上流側の気体を減圧して下流側へ送り出す整圧器が設けられ、前記整圧器の上流側に接続される一次側配管が前記供給経路の高圧部となり、前記整圧器の下流側に接続される二次側配管が前記供給経路の低圧部となっているものがあげられる。
【0011】
また、前記制御弁は、前記圧力センサによる低圧部内の気体の圧力の検知結果に基づいて自動的に開閉される構成とすることが望ましい。
【0012】
また、前記駆動源としては、前記供給経路を流れる気体と同種の気体が圧縮充填されたガスボンベを採用することができる。
【0013】
そして、本発明の気体供給システムは、前記気体が都市ガスであり、前記供給経路が都市ガス供給導管である場合に、特に効果的に適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の気体供給システムは、上述したように、気体供給経路の低圧部内の気体の圧力が設定圧を超えたときは、エジェクタを用いて低圧部内の気体を高圧部へ還流させるようにしたものであるから、低圧部内の気体圧力の上昇による不具合を防止できるうえ、その気体の還流手段のコストが低く抑えられ、メンテナンスも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の気体供給システムの概略構成の説明図
図2図1のエジェクタの概略の構造および動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。この気体供給システムは、都市ガスの供給導管(供給経路)の一部に適用されるものであり、図1に示すように、その供給経路を構成する中圧導管(一次側配管)1と低圧導管(二次側配管)2の間に設けられる低圧ガバナ(整圧器)3と、中圧導管1と低圧導管2の間に低圧ガバナ3と並列に設けられるバイパス配管4と、バイパス配管4の途中に設けられる逆止弁5と、バイパス配管4の途中の逆止弁5よりも上流側に設けられるエジェクタ6と、エジェクタ6の駆動源としてのガスボンベ7と、エジェクタ6とガスボンベ7を接続する駆動ガス供給管8と、駆動ガス供給管8の途中に設けられる制御弁9と、低圧導管2内のガスの圧力を検知する圧力センサ10とを備えている。
【0017】
そして、上流側から送られてくるガスを中圧導管1から低圧ガバナ3を介して低圧導管2に送り込み、低圧導管2から一般家庭や小規模な商業施設等に供給するようになっている。
【0018】
前記低圧ガバナ3は、中圧導管1で送られてくる中圧(0.1~0.3MPa)のガスを2.3KPa程度の圧力に減圧して低圧導管2へ送り出すものであり、中圧導管1が低圧導管2に対して相対的に内部圧力の高い高圧部、低圧導管2が相対的に内部圧力の低い低圧部となっている。また、前記逆止弁5は、中圧導管1から低圧導管2へのガスの流れを阻止し、低圧導管2から中圧導管1へのガスの流れのみを許容するように開閉するものである。
【0019】
前記エジェクタ6は、図2に示すように、供給口11aと吸入口11bを有するボディ11と、ボディ11の内部に設けられ、供給口11aから供給された駆動流体を噴射するノズル12と、ノズル12の噴射方向に延びるようにボディ11に取り付けられ、先端に吐出口13aを有する管状のディフューザ13とで構成されている。そして、ボディ11の供給口11aに高圧の駆動流体が供給されると、その駆動流体がノズル12で減圧・加速されて高速で噴射され、ベンチュリ効果が生じてボディ11内の空間が低圧となることにより、外部流体を吸入口11bからボディ11内へ吸引し、その外部流体と駆動流体をディフューザ13で混合しながら減速・昇圧して吐出口13aから吐出するものである。
【0020】
そして、この実施形態では、エジェクタ6の供給口11aは駆動ガス供給管8に、吸入口11bはバイパス配管4の逆止弁5側に、吐出口13aはバイパス配管4の中圧導管1側にそれぞれ接続されている。
【0021】
前記駆動ガス供給管8でエジェクタ6と接続されたガスボンベ7には、供給導管(中圧導管1および低圧導管2)を流れるガスと同種で、中圧導管1内のガスの圧力よりも高圧(例えば19MPa)に圧縮されたガスが駆動気体(駆動流体)として充填されている。
【0022】
また、前記制御弁9は、後述するように、圧力センサ10による低圧導管2内のガスの圧力の検知結果を受け、その検知結果に基づいて自動的に開閉されるようになっている。
【0023】
この気体供給システムは上記の構成であり、次にその動作について説明する。
【0024】
まず、正常にガスの供給が行われているときは、圧力センサ10で検知される低圧導管2内のガスの圧力が所定の設定圧以下となり、その圧力の検知結果を圧力センサ10から受けた制御弁9は閉じた状態を保持するようになっている。これにより、ガスボンベ7からエジェクタ6に対して駆動気体である高圧のガスの供給は行われないので、エジェクタ6は非駆動状態となる。また、バイパス配管4に設けられた逆止弁5の作用により、中圧導管1内のガスが高圧のままバイパス配管4を通って低圧導管2へ流れ込んでいくこともないので、正常なガス供給状態が維持される。
【0025】
一方、低圧ガバナ3の故障や気温の上昇等により低圧導管2内のガス圧力が上昇して、圧力センサ10で検知される圧力が設定圧を超えると、その検知結果を受けた制御弁9が自動的に開き、ガスボンベ7からエジェクタ6へ高圧のガスが供給されてエジェクタ6が駆動される。このとき、まず、前述のエジェクタ6の作用により、エジェクタ6と逆止弁5との間のバイパス配管4の内部圧力が低圧導管2内のガス圧力よりも低くなって逆止弁5が開く。これにより、エジェクタ6が低圧導管2内のガスを逆止弁5を介して吸引し、ガスボンベ7から供給されたガスと混合して中圧導管1へ還流させるようになる。その結果、低圧導管2内のガス圧力が低下して、正常なガス供給状態に戻すことができる。
【0026】
この気体供給システムでは、上述のように、低圧導管2内のガスの圧力が設定圧を超えたときは、低圧導管2内のガスを大気放散させることなく中圧導管1へ還流させるようになっているので、低圧導管2内のガス圧力の上昇による不具合を防止することができる。しかも、そのガスの還流手段として、構造がシンプルで回転部のないエジェクタ6を用いているので、従来の圧縮機等の加圧装置を用いる場合に比べると、電気による駆動部がなく、電気設備を必要としない分、コストが低く抑えられるし、メンテナンスも簡単に行うことができる。
【0027】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
例えば、実施形態では、制御弁9が圧力センサ10による低圧導管2内のガス圧力の検知結果に基づいて自動的に開閉されるようにしたが、制御弁の開閉は、圧力センサの検知結果に基づいて作業員が遠隔操作で行うようにすることもできる。
【0029】
また、エジェクタに駆動気体を供給する駆動源は、実施形態のようなガスボンベに限らず、供給経路の高圧部よりも内部圧力の高い高圧ガスライン等からエジェクタに駆動気体を供給するようにしてもよい。
【0030】
また、本発明の気体供給システムは、実施形態の都市ガス供給導管のように途中に整圧器が設けられた気体供給経路に対して特に効果的に適用できるが、これに限らず、配管位置の高低差等によって、内部圧力が相対的に高圧となる高圧部と相対的に低圧となる低圧部が生じる気体供給経路にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 中圧導管(一次側配管)
2 低圧導管(二次側配管)
3 低圧ガバナ(整圧器)
4 バイパス配管
5 逆止弁
6 エジェクタ
7 ガスボンベ(駆動源)
8 駆動ガス供給管
9 制御弁
10 圧力センサ
11 ボディ
11a 供給口
11b 吸入口
12 ノズル
13 ディフューザ
13a 吐出口
図1
図2