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特許7528045高圧流体加工装置および高圧流体加工装置の健全性診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】高圧流体加工装置および高圧流体加工装置の健全性診断方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 7/00 20060101AFI20240729BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20240729BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20240729BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B24C7/00 Z
B24C5/02 Z
F04B49/10 311
B26F3/00 N
B26F3/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021157634
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048364
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】賀田 昭
(72)【発明者】
【氏名】古川 爽一郎
(72)【発明者】
【氏名】相山 大
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0167697(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0257253(US,A1)
【文献】特開2010-014094(JP,A)
【文献】国際公開第2009/022489(WO,A1)
【文献】特開昭63-267198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C5/02-5/04
B24C7/00
B26F1/26-1/31
B26F3/00-3/16
F04B49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加圧流体を発生させる高圧ポンプと、
前記被加圧流体を供給する被加圧流体供給ユニットと、
前記高圧ポンプを駆動する油圧ユニットと、
前記被加圧流体を噴射するノズルヘッドと、
研磨材を供給する研磨剤供給手段と、
前記高圧ポンプ、前記ノズルヘッドまたは前記研磨剤供給手段に少なくとも1つ以上の検知センサを配置する検知手段と、
前記検知手段の検知データに基づいて、前記高圧ポンプ、前記被加圧流体供給ユニット、前記油圧ユニット、前記ノズルヘッドの供給圧力または吐出圧力を、上昇または維持した状態を保つことによって、100~700MPaの加工圧力を維持した状態で、故障が発生する前の健全性を診断する健全性診断手段と、
前記検知手段の検知データに基づいて、加工条件を制御する加工条件制御部とを
備え、
前記健全性診断手段は、あらかじめ定めた健全性基準に対して、前記検知手段で取得されるデータの組み合わせに基づく数値のコンディションスコアを監視することによって、健全性を診断し、
前記加工条件制御部は、前記健全性の診断結果に基づいて、切断プログラム、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度のうちの何れかを利用して、加工条件を制御する
ことを特徴とする高圧流体加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の高圧流体加工装置において、
前記検知データは、前記高圧ポンプを稼働する油圧ユニットの供給圧力もしくは吐出圧力、給水ユニットの供給圧力もしくは吐出圧力、前記給水ユニットの吐出流量、増圧機の回転速度もしくは切換時間、または、研磨剤供給手段の研磨剤供給量のうちの少なくとも1つ以上が選択される
ことを特徴とする高圧流体加工装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の高圧流体加工装置において、
前記健全性診断手段は、前記検知データの上限と下限の平均値を算出する検知データ平均値算出部を有する
ことを特徴とする高圧流体加工装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高圧流体加工装置において、
前記検知手段は、ドレン検知センサを有しており、
前記ドレン検知センサは、下から上に向かって貯まるドレン量を測る
ことを特徴とする高圧流体加工装置。
【請求項5】
被加圧流体を発生させる高圧ポンプと、前記被加圧流体を供給する被加圧流体供給ユニットと、前記高圧ポンプを駆動する油圧ユニットと、被加圧流体を噴射するノズルヘッドと、研磨材を供給する研磨剤供給手段と、前記高圧ポンプ、前記ノズルヘッド、または前記研磨剤供給手段に、少なくとも1つ以上配置される検知手段と、取得部と、診断部と、加工条件制御部とを備える高圧流体加工装置の健全性診断方法であって、
前記取得部が前記検知手段で検知データを取得する取得工程と、
前記診断部が前記検知データに基づいて、前記高圧ポンプ、前記被加圧流体供給ユニット、前記油圧ユニット、前記ノズルヘッドの供給圧力または吐出圧力を、上昇または維持した状態を保つことによって、100~700MPaの加工圧力を維持した状態で、故障が発生する前に健全性をあらかじめ定めた健全性基準に対して、前記検知手段で取得されるデータの組み合わせに基づく数値のコンディションスコアを監視することによって、診断する診断工程と、
前記加工条件制御部が前記検知データに基づいて、切断プログラム、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度のうちの何れかを利用して、加工条件を制御する加工条件制御工程とを含む
ことを特徴とする高圧流体加工装置の健全性診断方法。
【請求項6】
請求項5記載の高圧流体加工装置の健全性診断方法において、
前記高圧流体加工装置は、油圧ポンプと給水ポンプと前記高圧ポンプに設けられる増圧機とを備え、
前記検知データは、前記油圧ポンプまたは前記給水ポンプの供給圧力または吐出圧力、吐出流量、前記増圧機の回転速度または切換時間、前記研磨剤供給手段の研磨剤の供給量の何れか1つである
ことを特徴とする高圧流体加工装置の健全性診断方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の高圧流体加工装置の健全性診断方法において、
前記取得工程において、前記検知データの上限と下限の平均値を算出する工程を含む
ことを特徴とする高圧流体加工装置の健全性診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体加工装置および高圧流体加工装置の健全性診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械などの生産設備において、メンテナンスや故障時の対応を円滑に行う場合、生産設備の稼働中に各種センサなどの検知手段を用いて検出値を取得する。そして、検出値が閾値を超えたことで異常箇所を検出し、問題発生時に対処するのが一般的である。また、近年、IоT(Internet of Things)が普及しつつあり、PC(personal computer)、携帯端末等を用いて遠隔監視をすることが実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポンプ設備の異常診断システムとして、データセット取得部、偏差指標値算出部、異常判定部、要因特定部、および対策データ出力部とを備えるポンプ設備の異常診断システムが開示されている。
ここで、データセット取得部は、ポンプ設備の運転状態と相関がある複数の指標の組合せからなるデータセットを取得する。
偏差指標値算出部は、ポンプ設備の正常時における複数の指標の組合せからなる基準データセットと実際のデータセットとの偏差を示す偏差指標値を算出する。
【0004】
異常判定部は、偏差指標値が閾値を上回った場合、ポンプ設備に異常兆候があると判定する。
要因特定部は、ポンプ設備に異常兆候があると判定された場合、偏差指標値に対する複数の指標の各々の寄与度に基づいて、異常兆候の要因を特定する。
対策データ出力部は、要因特定部で特定された要因に予め関連付けられた対策データを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-178625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、ポンプの吸込圧や吐出圧を検知することによって、異常診断を行っているものの、ポンプの運転状態に重きが置かれている。そのため、システム全体における加圧状態を維持したうえでポンプを用いて流体を加圧して、被加圧流体をワークに噴射することで洗浄や切断を行うことについては記載がない。
【0007】
例えば、被加圧水を用いるウォータージェット切断装置を稼働させる場合、切断加工で用いる流体は、圧力が200~700MPaに至る。その場合、ポンプだけでなく、装置全体または被加圧流体(ウォータージェット)を噴射するための主構成要素において、規定基準の圧力を維持する必要がある。つまり、特許文献1に記載されるポンプの運転状態の維持だけでなく、ウォータージェット切断装置の稼働中に、被加圧流体を規定基準の圧力、特に高圧領域に維持することは考慮されていない。
【0008】
また、特許文献1は、偏差指標値に対する複数の指標の各々の寄与度に基づいて、異常兆候の要因を特定している。そのため、指標が多ければ多いほど予兆診断の精度を高めることができる。しかし、その分、指標の相関性や寄与度の複雑性が多様化して処理のための記憶領域を多く使い、通信機器やサーバー等に過度の負荷がかかってしまう、といった課題がある。
【0009】
さらに、ウォータージェット切断装置等の流体を用いる装置の場合、流体が及ぼす各種影響は目視による判断だけでは推し量れない場合が多い。そのため、故障や不具合が発生した場合、長年の経験や知識に基づいて対策を講じることが多い。こうした流体を用いる場合に特有の故障や不具合(規定圧力が得られないことや研磨剤の詰まり等)の原因に対して、適切に健全性診断を行うことができる装置や対策が求められている。
【0010】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、加工精度を安定させることができる高圧流体加工装置および高圧流体加工装置の健全性診断方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の高圧流体加工装置は、被加圧流体を発生させる高圧ポンプと、前記被加圧流体を供給する被加圧流体供給ユニットと、前記高圧ポンプを駆動する油圧ユニットと、前記被加圧流体を噴射するノズルヘッドと、研磨材を供給する研磨剤供給手段と、前記高圧ポンプ、前記ノズルヘッドまたは前記研磨剤供給手段に少なくとも1つ以上の検知センサを配置する検知手段と、前記検知手段の検知データに基づいて、前記高圧ポンプ、前記被加圧流体供給ユニット、前記油圧ユニット、前記ノズルヘッドの供給圧力または吐出圧力を、上昇または維持した状態を保つことによって、100~700MPaの加工圧力を維持した状態で、故障が発生する前の健全性を診断する健全性診断手段と、前記検知手段の検知データに基づいて、加工条件を制御する加工条件制御部とを備え、前記健全性診断手段は、あらかじめ定めた健全性基準に対して、前記検知手段で取得されるデータの組み合わせに基づく数値のコンディションスコアを監視することによって、健全性を診断し、前記加工条件制御部は、前記健全性の診断結果に基づいて、切断プログラム、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度のうちの何れかを利用して、加工条件を制御している。
【0012】
本発明の高圧流体加工装置の健全性診断方法は、被加圧流体を発生させる高圧ポンプと、前記被加圧流体を供給する被加圧流体供給ユニットと、前記高圧ポンプを駆動する油圧ユニットと、被加圧流体を噴射するノズルヘッドと、研磨材を供給する研磨剤供給手段と、前記高圧ポンプ、前記ノズルヘッド、または前記研磨剤供給手段に、少なくとも1つ以上配置される検知手段と、取得部と、診断部と、加工条件制御部とを備える高圧流体加工装置の健全性診断方法であって、前記取得部が前記検知手段で検知データを取得する取得工程と、前記診断部が前記検知データに基づいて、前記高圧ポンプ、前記被加圧流体供給ユニット、前記油圧ユニット、前記ノズルヘッドの供給圧力または吐出圧力を、上昇または維持した状態を保つことによって、100~700MPaの加工圧力を維持した状態で、故障が発生する前に健全性をあらかじめ定めた健全性基準に対して、前記検知手段で取得されるデータの組み合わせに基づく数値のコンディションスコアを監視することによって、診断する診断工程と、前記加工条件制御部が前記検知データに基づいて、切断プログラム、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度のうちの何れかを利用して、加工条件を制御する加工条件制御工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切断等の加工精度を安定させることができる高圧流体加工装置および高圧流体加工装置の健全性診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の高圧水加工装置の構成概念図。
図2】(a)は実施形態の高圧水加工装置の検知手段の構成図、(b)は実施形態の高圧水加工装置の健全性診断手段の構成図。
図3】(a)はドレン量の測定法の例を示す図、(b)は他例のドレン量の測定法を示す図。
図4】実施形態の状態監視部の表示を示す図。
図5】実施形態の遠隔操作手段の構成を示す図。
図6】実施形態の健全性診断方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明に係る実施形態の高圧水加工装置1の構成概念図を示す。
実施形態の高圧水加工装置1は、高圧水(被加圧流体)Lを加工対象のワークWに噴射して加工する装置である。
高圧水加工装置1は、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5、研磨剤供給手段7、検知手段8、健全性診断手段9、遠隔操作手段11、および加工条件制御部15を備えている。
【0016】
高圧ポンプ2は、ノズルヘッド5からワークWに噴射する高圧水Lを発生させるポンプである。高圧ポンプ2は、シリンダ2a1、プランジャ2a2を有し、被加圧流体(水)を所定の高圧まで加圧する増圧機2aをもつ。
高圧ポンプ2は、給水ユニット3から供給される被加圧流体(水)を増圧機2aのシリンダ2a1内でプランジャ2a2を往復させて加圧することによって、高圧水(被加圧流体)Lを生成する。
【0017】
給水ユニット3は、高圧水Lを生成する高圧ポンプ2に元となる水を供給するための給水ポンプである。
なお、被加圧流体(L)は、純水や水、その他の液体等を含む流体である。給水ポンプは市販のものを利用できる。
【0018】
油圧ユニット4は、高圧ポンプ2のプランジャ2a2を駆動させるための油圧ポンプである。油圧ポンプは市販のものを利用できる。
【0019】
ノズルヘッド5は、高圧水Lを噴射してワークWを高圧水Lで切断する切断装置を構成するヘッドである。ノズルヘッド5は、ノズル6を有している。ノズル6は、中心に高圧水Lが通るオリフィスを有するノズルである。
ノズルヘッド5は、高圧ポンプ2で生成された高圧水Lをノズル6からワークWに対して噴射する。
研磨剤供給手段7は、ノズルヘッド5に研磨剤を供給する。研磨剤としては、ガーネット、アルミナ(Al)等を用いる。研磨剤供給手段7は、研磨剤タンク7aとレギュレータ7bとを有している。研磨剤タンク7a内に貯留される研磨剤を、レギュレータ7bによって一定速度や一定量で、ノズルヘッド5内のノズル6に供給する。
【0020】
高圧水Lのみで加工を行う場合は、高圧水L用のノズル6で加工する。一方、高圧水Lだけでなく、研磨剤供給手段7から供給される研磨剤をノズルヘッド5で混入させる場合は、高圧水L用のノズル6に加えて研磨剤混入用のノズルをさらに配置する。
【0021】
<検知手段8>
図2(a)に、実施形態の高圧水加工装置1の検知手段8の構成図を示す。図2(b)に、実施形態の高圧水加工装置1の健全性診断手段9の構成図を示す。
検知手段8は、図1に示す高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5、研磨剤供給手段7等のデータを検知する。
検知手段8は、例えば、ポンプ検知センサ8A、給水検知センサ8B、ノズル検知センサ8C、研磨剤検知センサ8D、ドレン検知センサ8E等である。
【0022】
図1に示すように、ポンプ検知センサ8Aは、高圧ポンプ2から供給される高圧水Lの圧力を測る。給水検知センサ8Bは、給水ユニット3から供給される高圧水Lの供給圧力や吐出流量を測る。ノズル検知センサ8Cは、ノズル6から噴射される高圧水Lの吐出圧力や摩耗状態等を測る。研磨剤検知センサ8Dは、研磨剤供給手段7から供給される研磨剤供給量を測る。
ドレン検知センサ8Eは、パッキン2pの冷却水のドレン量を測る。
【0023】
その他の検知手段8としては、例えば、圧力、排水、稼働(ON・OFFや回転数等)、温度、振動センサ等がある。
検知手段8による検知データD1として、油圧ユニット4の供給圧力もしくは吐出圧力、前記した給水ユニット3の供給圧力または吐出圧力や吐出流量、増圧機2aの回転速度もしくは切換時間、または、研磨剤供給手段7の研磨剤供給量等がある。そのため、検知データD1は、上記の検出値のうち、少なくとも1つ以上を選択できる。つまり、検知データD1は設ける検知手段8に応じて任意に選択して用いることができる。
【0024】
図1に示す高圧ポンプ2に配置するポンプ検知センサ8Aとしては、高圧ポンプ2において、第1の圧力検知センサ8a1を配置することによって、高圧ポンプ2からの高圧水Lの吐出圧力を検知できる。
給水ユニット3に配置する給水検知センサ8Bとしては、給水ユニット2に、第1の排水検知センサ8b1を配置することによって、給水ユニット2からの流体Lの排出量を検知できる。
【0025】
また、油圧ユニット4は、ポンプ検知センサ8A、給水検知センサ8Bと同様に、第2の圧力検知センサ8a2や第2の排油検知センサ8b2を配置することによって、油の吐出圧力や排出量を検知できる。
【0026】
図1に示すノズルヘッド5に配置するノズル検知センサ8Cとしては、図示しないが、高圧水L用のノズル6や研磨剤混入用のノズルの噴射圧や画像データによる摩耗状態等を検知する。これにより、ノズルヘッド5における圧力状態の維持等を判定する。
【0027】
図1に示す研磨剤供給手段7に配置する研磨剤検知センサ8Dは、研磨剤タンク7aにおける研磨剤量、レギュレータ7bにおける研磨剤供給量や吐出圧力等を検知する。
研磨剤供給量や吐出圧力等の検出値によって、健全性診断手段9は、研磨剤供給手段7における圧力状態の維持等を判定する。
【0028】
<ドレン検知センサ8E>
図1に示す高圧ポンプ2の増圧機2aには、シリンダ2a1とプランジャ2a2の間をシールするパッキン2pが設けられている。パッキンp2には冷却水が流れ、冷却される。
ところで、従来、上から下に向かって流れるドレン量をドレン検知センサで測る場合、適正なドレン量を測れないケースがある。つまり、従来、ドレン検知センサの計測値にバラつきが生じる可能性があった。
【0029】
そこで、本実施形態では、パッキン2pからのドレンが流れる配管を、図3(a)、(b)に示すように工夫し、下から上に向かって貯まるドレン量をドレン検知センサ8E1、8E2で測る。
【0030】
図3(a)に、ドレン量の測定法の例を示し、図3(b)に、他例のドレン量の測定法を示す。
【0031】
図3(a)では、パッキン2pからのドレンldを配管k11、配管k12、配管k13に流す(矢印α11)
ドレンldが配管k11、配管k12を通り、配管k13の水位w1に達するとドレン検知センサ8E1がドレン量を検知する。
【0032】
図3(b)では、パッキン2pからのドレンldが配管k21を流れ、ドレン容器yに貯留される。ドレンldがドレン容器yをオーバーフローするとオーバーフロー管k22を流れる(矢印α12)。
ドレン容器yに貯留するドレンldが水位w2に達するとドレン検知センサ8E2がドレン量を検知する。
【0033】
図3(a)、図3(b)の構成によれば、適正なドレン量を図れる。
【0034】
<健全性診断手段9>
図2(b)に示す健全性診断手段9は、取得部9Aと演算部9Bと判定部9Cとを有している。
健全性診断手段9は、検知手段8で取得した検知データD1に基づいて高圧水加工装置1における主構成要素の状態を監視する。高圧水加工装置1が、規定基準の圧力(例えば、200~700MPaの高圧領域)を維持することで、切断等の加工精度を安定させることができる。
【0035】
規定基準の圧力は、ワークWの加工における噴射圧力を安定させること(規定基準の圧力を満たすこと)を目的とした、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5等のそれぞれにおける圧力値や流体の排出量の総合値(組合せ)である。
総合値は、200~700MPaの範囲において、使用条件や加工条件によって異なるため、適宜設定する。規定基準の圧力(総合値)が高圧領域であればあるほど、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5等のそれぞれの要素にかかる負荷も大きく、2つ以上の要素を安定的な状態に保つことが難しい。
高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5の給水圧力や吐出圧力は、上昇または維持した状態を保つことで、規定基準の圧力(200~700MPaの範囲で設定する総合値)が下限を下回らないよう維持し、加工精度の安定化を図ることができる。
【0036】
例えば、規定基準の圧力を200MPaとして、ワークWを加工する場合、ノズルヘッド5の吐出圧力が200MPaを維持するように、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4のそれぞれの圧力や排出の数値の許容範囲を設定しておくことで、過度の上昇や減少が生じないように、健全性を維持する。
また、規定基準の圧力を700MPaとして、ワークを加工する場合、ノズルヘッド5の吐出圧力が700MPaを維持するように、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4のそれぞれの圧力や排出に数値の許容範囲を設定しておくことで、過度の上昇や減少が生じないように、健全性を維持する。
規定基準の圧力が、200MPaの場合と700MPaの場合を比較すると、700MPaの場合の方が、各要素にかかる負荷が高く、同一装置において、200~700MPaの範囲を調整できるよう、高圧ポンプ2、給水ユニット3、油圧ユニット4、ノズルヘッド5自体やそれらを構成する消耗品の耐性や寿命時間等を考慮して、規定基準の圧力(総合値)が設定される。
【0037】
健全性診断手段9の取得部9Aは、有線または無線で検知手段8から検知データD1を取得する。取得部9Aは、記憶部9Eを備えており、検知データD1を一定期間保存できる。そのため、取得部9Aは、高圧水加工装置1の継続的な使用データを蓄積できる。取得部9Aは、高圧水加工装置1が配置される工場内におけるネットワークに限らず、セキュリティ効果が高い外部ネットワーク上に構成することもできる。
【0038】
さらに、取得部9Aは、検知データD1の平均値を算出する検知データ平均値算出部9Aaを備えることもできる。例えば、自動運転中の1秒毎のデータを基に1分間の平均値として記録する。平均値の時間は必要に応じて伸縮する。
加工時/ピアス時に使用する高圧水Lの圧力帯、昇圧までの圧力幅等が100~300MPaを推移する。
例えば、300MPaで使用する場合、昇圧段階では、300MPaよりも低い圧力帯から上昇するので、300MPaのみに焦点を当てたデータ取得をしていると、予兆診断の精度が得られないことになる。
【0039】
そこで、一律の圧力帯ではなく、最小圧力100MPa~最大圧力300MPaの平均値のデータを取得し、その値を用いて予兆診断する。
これにより、健全性診断手段9による予兆診断の精度を安定化させることができる。
【0040】
<検知データ平均値算出部9Aa>
図1に示す高圧ポンプ2は、高圧水加工装置1を200~700MPaの加工圧力で利用するために、圧力を調整しなければならない。例えば、高圧水加工装置1を、200MPaの加工圧力で利用する場合と700MPaの加工圧力で利用する場合とでは、高圧ポンプ2を駆動するために必要な油圧ユニット4の動力(往復回数、回転速度等)が異なる。さらに、高圧ポンプ2は、高圧水Lを吐出する構造であり、高圧水Lの吐出量や吐出時間に応じて、高圧水Lの圧力を一定にするための工夫が必要である。
【0041】
そのため、図2(b)に示す検知データ平均値算出部9Aaは、特定時間内における最小加工圧力と最大加工圧力の平均値を、各検知データD1として用いることによって、高圧水加工装置1における規定基準の圧力(例えば、200~700MPaの高圧領域)を維持することで、切断等の加工精度を安定させることができる。
また、高圧水加工装置1の加工圧力以外の油圧ユニット4の供給圧力もしくは吐出圧力、給水ユニット3の供給圧力または吐出圧力や吐出流量、増圧機2aの回転速度もしくは切換時間、または、研磨剤供給手段7の研磨剤供給量等の検知データD1の取得値の上限と下限の平均値を用いる設定にすることができることは言うまでもない。
【0042】
<切断加工時判断部9Ab>
さらに、図2(b)に示す取得部9Aは、切断加工時判断部9Abを備えることもできる。切断加工時判断部9Abは、高圧水加工装置1の切断加工時には、取得部9Aが稼働するが、高圧水加工装置1の非切断加工時には取得部9Aが稼働しないように制御する。
常に健全性診断を行う場合、検知データD1を含めたデータの取得量が膨大になる。また、健全性診断に際して、検知データD1を含めた取得したデータに余分な情報が多く含まれてしまうため、高圧水加工装置1の非切断加工時においては、検知データD1を取得しない構成とし、より精度の高い健全性診断を行うことができる。また、取得部9Aの記憶部9Eを縮小でき、処理が使用する主記憶領域を狭めることができる。そのため、コスト低下を図れる。
【0043】
<ピアス加工時判断部9Ac>
さらに、取得部9Aは、ピアス加工時判断部9Acを備えることもできる。ピアス加工時判断部9Acは、高圧水加工装置1のピアス時には取得部9Aが稼働しないようにする。
例えば、高圧水加工装置1を用いてワークWの切断を行う場合、特に、脆性の弱いワークWを切断する場合、切断時の加工圧力よりも低い圧力で予備切断(ピアス加工)を施した後で、切断時の加工圧力まで昇圧してワークWを切断加工する手法が採用されることが多い。
【0044】
この場合、切断時の加工圧力とピアス加工時の加工圧力に差が生じる。しかし、ピアス加工はあくまで実作業の切断加工の準備段階に行う操作であり、健全性診断に影響を及ぼす可能性は低い。そこで、ピアス加工時においては、検知データD1を取得しない構成とし、より精度の高い健全性診断を行うことができる。
【0045】
<演算部9B>
図2(b)に示す演算部9Bは、取得部9Aで取得した検知データD1を予め設定する基準値と比較し、偏差データD2(図6参照)を演算する。予め設定する基準値とは、検知データD1の許容範囲の上限や下限等を設定した値である。演算部9Bは、偏差データD2が検知データD1の許容範囲である基準値の範囲内または範囲外の何れに属するかを演算する。
【0046】
<判定部9C>
図2(b)に示す判定部9Cは、演算部9Bで演算した偏差データD2を予め設定する寄与度に基づいて健全性診断結果D3を判定する。寄与度とは、検知手段8で取得される圧力、排水、稼働(ON/OFFや回転速度等)、温度、振動という属性の組み合わせであり、健全性の度合い(程度)を判断するための指標である。寄与度を用いることで、健全性基準の高低を調整できる。
【0047】
図4に、実施形態の状態監視部の表示図を示す。図4の横軸は時間を示し、図4の縦軸はコンディションスコア(状態値)を示す。
図4に示すように、健全性基準(太実線)をあらかじめ定めておき、検知手段8(8A~8D等)で取得されるデータの組み合わせに基づく数値のコンディションスコア(白抜き棒グラフ)を監視することによって、健全性を判定する。健全性基準(太実線)より低いコンディションスコア(状態値)の場合が健全性がある。
図2(b)に示す判定部9Cは、検知データD1に基づいて判断する。
【0048】
<寿命期間判定部9D>
また、寿命期間判定部9Dが配置されている。寿命期間判定部9Dは、消耗品や部品、例えば、シール部材2p、増圧機2aのプランジャ2a2等の構成品の平均的な寿命期間が予め設定されている。そして、寿命期間判定部9Dは、ある構成品の使用期間が予め設定された寿命期間に至った場合には、当該構成品の交換を推奨する仕組みである。これにより、消耗品や部品等が寿命に至る前に交換を行い、稼働停止を伴うことなく円滑な加工を持続的に行える。
【0049】
また、過去の健全性診断結果D3を記憶部9Eに蓄積しておく。そして、判定部9Cは、故障や交換した事実を加味して、リアルタイムの新たな健全性診断結果D3を判定する。
【0050】
上述の健全性診断結果D3に基づいて、図1に示す高圧ポンプ2のONまたはOFFの切換え、または回転速度を調整し、高圧水加工装置1が故障や不具合に至らないようにフィードバック制御もできる。
【0051】
<遠隔操作手段11>
図5に、実施形態の遠隔操作手段11の構成図を示す。
遠隔操作手段11は、健全性診断手段9で判定されたデータである健全性診断結果D3(図2(b)参照)を、通信網10を介して、遠隔で作業員が携帯端末等で操作する。
なお、遠隔操作手段11は、代替して高圧水加工装置1の近くに構成してもよいし、高圧水加工装置1が設置される敷地内に配置してもよい。
【0052】
図5に示す遠隔操作手段11は、状態監視部12とアラーム部13と消耗品交換部14とを有している。
【0053】
従来、高圧水加工装置の故障時には、故障原因を究明するために、各要素の故障原因を1つ1つ潰さなければならず、不具合の対応に時間を要していた。そのため、故障原因の目途をつけるのに熟練の勘が求められていた。
そこで、実施形態の状態監視部12は、故障原因に影響度の大きい高圧ポンプ2の吐出圧力、給水ユニット3の給水圧力、冷却水のドレン量、増圧機2aの切換時間を検知手段8で取得し、見える化を図っている。
【0054】
すなわち、状態監視部12は、健全性診断手段9で判定されたデータ、例えば、圧力、排水、稼働(ON/OFFや回転数等)、温度、振動の検知データD1(図2(b)参照)、偏差データD2(図6参照)、健全性診断結果D3(図2(b)参照)等を監視する。
これにより、故障原因の早期究明を図ることができる。
状態監視部12の表示の形式としては、すべて表示する形式や選択によって重点的に表示する形式等がある。
【0055】
状態監視部12の表示の形式は、原則的には、リアルタイムにおける各種データであるが、検知や演算のタイミングを事前に設定することによって、10分、30分、60分、90分、1日、1週間、3カ月毎等にデータを更新する形式を必要に応じて選択できる。
【0056】
アラーム部13は、健全性診断手段9で判定される健全性診断結果D3の結果、故障や不具合と判定した場合や、寿命期間判定部9D(図2(b)参照)によって、消耗品が寿命期間に到達するタイミングで、アラームが表示される。アラーム部13は、寿命期間よりも一定時間長く設定することも可能となっている。
【0057】
部品交換部14は、アラーム部13によるアラーム表示に関するデータを一覧化して表示する表示部である。消耗品、部品等が推奨する交換時期に到達した場合に、交換時期の消耗品、部品等を交換することを推奨する旨表示される。
【0058】
<加工条件制御部15>
図1に示す加工条件制御部(制御装置)15は、健全性診断手段9で判定される健全性診断結果D3に基づいて、高圧水加工装置1の加工条件を制御する。
例えば、切断プログラム(特許6058575参照)、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度等を利用して、加工条件を制御する。これにより、実機の現在(リアルタイム)の条件に応じた最適な加工を選択できる。
【0059】
加工条件制御部15によれば、健全性診断手段9の結果に基づいて、リアルタイムで高圧水加工装置1の機器状況に応じた加工制御が可能となる。
【0060】
<高圧水加工装置1の制御>
図1に示す高圧水加工装置1は、健全性診断手段9によって、主構成要素の状態を監視する。そして、高圧水加工装置1は、高圧水Lを規定基準の圧力を維持した状態で、高圧水Lを噴射してワークを加工する。
高圧水加工装置1は、検知手段8によって、各種データを検知するが、高圧水Lが規定基準の圧力を維持することと、ワークを加工することの両方を満たす必要がある。そこで、高圧水加工装置1は、健全性診断手段9の機能と、加工条件制御部15の機能を満たすことのできるように、検知手段8(図2(a)参照)で検知して取得した検知データD1(図2(b)参照)を健全性診断手段9と加工条件制御部15のそれぞれで使える構成とすることもできる。
【0061】
<健全性診断方法>
図6に、実施形態の健全性診断方法を示す。
次に、図6を参照して、実施形態の健全性診断方法について説明する。
【0062】
まず、図1に示す加工条件制御部15は、高圧ポンプ2を起動し、高圧水加工装置1が稼働できる状態とするとともに、検知手段8が作動する状態にする。
【0063】
<工程P1~P5>
次に、高圧水Lを発生させる高圧ポンプ2または高圧水Lを噴射するノズルヘッド5に、少なくとも1つ以上配置される検知手段8(8A、8C等)で検知データD1を取得する(工程P1)。
なお、工程P1A、P1B、P1Cは後記する。
続いて、工程P2で、演算部9Bは、検知データD1を予め設定する基準値と比較し、偏差データD2を演算する。
【0064】
図1に示す加工条件制御部15が事前に設定する200~700MPaの加工圧力を維持した状態で、健全性診断手段9は、故障が発生する前の健全性を診断する(工程P3)。
【0065】
続いて、加工条件制御部15は、加工条件を制御する(工程P4)。
例えば、切断プログラム(特許6058575参照)、設定切断速度、被切断物の材質に関する情報と切断品質とを含む切断パラメータ、算定切断速度等を利用して、加工条件を制御する。
【0066】
高圧水加工装置1は、健全性診断手段9や加工条件制御部15を機能させた状態で、適宜、ワークWに対する加工を行う(工程P5)。
【0067】
<工程P1A~P1C>
また、図6に示す工程P1の検知データD1を取得する工程において、図2(b)に示す取得部9Aの検知データ平均値算出部9Aaが検知データD1の上限と下限の平均値を算出する工程P1Aを含むこともできる。
高圧水Lの圧力が、検知データD1の上限(例えば、500MPa)と下限(例えば、100MPa)で変化する状況においても、検知データ平均値算出部9Aaが平均値を算出する。これにより、高圧水Lが規定基準の圧力を維持するための最低限のボーダーの圧力を保持することに繋がり、高圧水加工装置1の稼働率や加工精度の安定化を図ることができる。
【0068】
また、検知データD1を取得する工程P1において、切断加工時以外は検知データD1を取得しない工程P1Bを含むことができる。
検知データD1を常に取得した状態の場合、情報量が膨大になり、ノイズも含まれてくる。そのため、切断加工時以外は検知データD1を取得しないことによって、健全性診断手段9は、より精度の高い健全性診断を行うことができる。
【0069】
例えば、非加工時、非洗浄時には、圧力が上がらない状態になっており、この段階でデータ取得、さらには予兆診断すると、総合的な予兆診断結果にブレが生じてしまう。そこで、非加工時非洗浄時には、予兆診断を行わなわない。これにより、予兆診断の精度を安定化させることができる。
【0070】
また、検知データD1を取得する工程P1において、ピアス加工時は検知データD1を取得しない工程P1Cを含むことができる。
ピアス(準備)加工時は、通常の加工圧力よりも低い圧力で前加工を行う。しかし、ピアス時の状態が健全性診断に与える影響は少ない。そのため、ピアス加工時に検知データD1を取得しないことによって、健全性診断手段9は、より精度の高い健全性診断を行うことができる効果がある。
【0071】
<工程P6~P8)>
さらに、図2(b)に示す寿命期間判定部9Dにおいて、消耗品、例えば、シール部材2p、増圧機2aのプランジャ2a2等や部品、各種構成要素の平均的な寿命期間を予め設定しておく。そして、寿命期間判定部9Dは、消耗品や部品の使用期間が予め設定した寿命期間に至った否か判断する。そして、消耗品や部品の使用期間が予め設定した寿命期間に至った場合には交換を推奨する(工程P6)を追加できる。
【0072】
さらに、過去の健全性診断結果D3を記憶部9Eに蓄積しておき、故障や交換した事実を加味して、健全性診断結果D3が新たな(リアルタイムの)健全性診断結果D3を判定する工程(P7)を追加できる。リアルタイムの健全性診断結果D3を判定する工程(P7)により、高圧水加工装置1は、リアルタイムの機器状況に応じた加工または洗浄が行える。
【0073】
さらに、健全性診断結果D3に基づいて、加工条件制御部(制御装置)15が高圧ポンプ2のONまたはOFFの切換え、または回転速度を調整し、故障や不具合に至らないようにフィードバック制御をする工程(P8)を追加できる。
例えば、健全性診断結果D3に基づいて、図1図2(b)に示す検知手段8で検知する検知データD1の対象箇所である消耗品や部品(シール部材2p、増圧機2aのプランジャ2a2等)の異常が診断された場合、健全性診断結果D3(総合的な評価)が、A~C段階の評価のうち「A」であれば、高圧ポンプの回転速度を5%調整する、「B」であれば、高圧ポンプ2の回転速度を10%調整する、「C」であればOFFにするというフィードバックをかける。
【0074】
ここでは、高圧ポンプ2の回転速度を例に挙げたが、高圧水Lの圧力、流量、排出量等についても予めA~C等の複数段階の評価に応じて、高圧水加工装置1の構成要素の制御値や稼働停止等を設定しておくことで、フィードバックの精度を向上できる。
【0075】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【0076】
上記構成によれば、高圧水加工装置1を構成する主構成要素の状態を監視し、規定基準の圧力(例えば、200~700MPaの高圧領域)を維持することで、切断等の加工精度を安定させることのできる高圧水加工装置1および高圧水加工装置1の健全性診断方法を提供できる。
【0077】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態では、被加圧流体として高圧水Lを例に挙げて説明したが、流体であれば水に限定されず任意に選択できる。
【0078】
2.本発明は、前記した実施形態、変形例の構成に限られることなく、添付の特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 高圧水加工装置(高圧流体加工装置)
2 高圧ポンプ
2a 増圧機
2b シリンダ
3 給水ユニット
4 油圧ユニット
5 ノズルヘッド
6 ノズル
7 研磨剤供給手段
7a 研磨剤タンク
7b レギュレータ
8 検知手段
8A ポンプ検知センサ(検知手段)
8B 給水検知センサ(検知手段)
8C ノズル検知センサ(検知手段)
8D 研磨剤検知センサ(検知手段)
8E ドレン検知センサ(検知手段)
8a 圧力検知センサ
8b 排水検知センサ
9 健全性診断手段
9A 取得部
9Aa 検知データ平均値算出部
9Ab 切断加工時判断部
9Ac ピアス加工時判断部
9Ad
9B 演算部
9C 判定部
9D 寿命期間判定部
9E 記憶部
10 通信網
11 遠隔操作手段
12 状態監視部
13 アラーム部
14 部品交換部
15 加工条件制御部
L 高圧水(被加圧流体)
D1 検知データ
D2 偏差データ
D3 健全性診断結果
P1 取得工程
P1A 工程
P1B 工程
P1C 工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6