(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】核酸定量化のためのマイクロ流体吸い上げアレイ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240729BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240729BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240729BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
B01J19/00 321
C12Q1/686 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172568
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2018550512の分割
【原出願日】2017-04-04
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518337142
【氏名又は名称】コンビナティ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5823 Newton Dribe Carlsbad,California 92008 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジュサン
(72)【発明者】
【氏名】ザヤク,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】デュエック,メーガン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0266582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141999(US,A1)
【文献】特開2002-018271(JP,A)
【文献】特開2011-234728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298119(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0038193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0009101(US,A1)
【文献】米国特許第09213042(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B01J
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスを使用するための方法であって、
(a)
(i)マイクロチャネル、(ii)該マイクロチャネルと流体連通する複数の
マイクロチャンバー、及び(iii)前記複数の
マイクロチャンバーを覆う少なくとも1つのガス透過性
で熱可塑性の薄膜、を含
むマイクロ流体デバイスの前記複数の
マイクロチャンバーに試薬を充填する工程であって、前記マイクロチャネルに第1の圧力で当該試薬を適用することによって、前記複数の
マイクロチャンバーに当該試薬を充填する工程
、
(
b)第2のガスを
、前記第1の圧力より大きい第2の圧力で前記マイクロチャネルに適用することによって、ガスが前記ガス透過性
で熱可塑性の薄膜を通過するように、前記複数の
マイクロチャンバーの内部で第1のガスを運ぶ工程
、および
(c)第3のガスを前記複数のマイクロチャンバーへと導入することなく、前記第3のガスを前記マイクロチャネルへと導入するように、前記第2の圧力より小さい第3の圧力で前記第3のガスを前記マイクロチャネルへ印加する工程
を含
む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、単一の統合されたマシンを使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の
マイクロチャンバーを熱サイクルに晒すことにより、前記複数の
マイクロチャンバーの
マイクロチャンバーにおいてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の
マイクロチャンバーの画像を撮る工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の
マイクロチャンバーのうちで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が起こる
マイクロチャンバーの数を数える工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した後、前記
マイクロチャンバーにおける核酸分子を定量化するために、前記複数の
マイクロチャンバーにおける前記
マイクロチャンバーの前記数に、ポアソン統計を適用する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロチャネルは、クロスチャネルを介して接続される複数のサブチャネルを含み、ここで、前記複数の
マイクロチャンバーは、前記サブチャネルに接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のサブチャネルは、前記複数の
マイクロチャンバーの
マイクロチャンバーが格子構成であるように、実質的に互いに平行である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の圧力は8ps
iと16ps
iの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のガスは、空気、窒素、二酸化炭素、貴ガス、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのガス透過性
で熱可塑性の薄膜は、シクロオレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのガス透過性
で熱可塑性の薄膜は、熱可塑性プラスチックである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロ流体デバイスは空気圧ポンプと流体連通し、
前記空気圧ポンプ
を使用して、前記工程(
a)又は前記工程(
b)
が実施
される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の
マイクロチャンバーは、1,000から20,000までの
マイクロチャンバーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の
マイクロチャンバーは円筒形又は半球形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の
マイクロチャンバーの1つの
マイクロチャンバーは、500μm以下の深さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのガス透過性
で熱可塑性の薄膜は、50μmから200μmまでの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2016年4月4日に提出された米国仮特許出願第62/317,993号明細書、および2016年11月29日に提出された米国特許出願第15/363,896号明細書の利益を主張し、これらの各々は全体的に参照によって本明細書に取り込まれる。
【0002】
<特許に係る政府の権利の陳述>
本発明は国立衛生研究所によって与えられた中小企業技術革新研究プログラム認可番号1R43OD023028-01の下で政府の支援をうけて作られた。米国政府は本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、小規模に流体を扱う構造を含むデバイスである。典型的には、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、またはより少ない量の流体を扱う。マイクロ流体デバイスにおいて、主なファウリング機構(fouling mechanism)は、マイクロ構造の内部に閉じ込められた空気、すなわち気泡である。このことは、熱可塑性プラスチックのガス透過率が非常に低いので、マイクロ流体構造を作製するために熱可塑性プラスチック材料を使用するときに、特に問題となりうる。
【0004】
閉じ込められた空気によるファウリングを避けるために、従来のマイクロ流体構造は、熱可塑性プラスチック材料を含む、単純な直線チャネルの設計または単純な分岐チャネルの設計のいずれかを使用するか、そうでなければエラストマーなどのガス透過率の高い材料を使用して、デバイスを製造する。しかしながら、単純な設計はマイクロ流体デバイスの可能性のある機能を限定し、そしてエラストマー材料は、特に大規模に製造するのが難しくかつ高価である。
【0005】
マイクロ流体構造の1つの用途は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)にある。dPCRは、多くの区画のアレイを提供するマイクロ流体構造の各区画において、1以下の核酸鋳型まで核酸試料を希釈し、そのアレイにわたってPCR反応を実施する。その核酸鋳型が成功裡にPCR増幅された区画を数えて、その結果にポアソン統計を適用することによって、標的核酸が定量化される。未知試料のPCR増幅の速度を1セットの既知のqPCR標準の速度と比較することによって鋳型が定量化される、普及している定量的リアルタイムPCR(qPCR)と異なり、dPCRはより高い感応性、より良い精密度、およびより高い再現性を示すことが証明されてきた。
【0006】
ゲノムの研究者および臨床医にとって、dPCRは、珍しい突然変異の検出、コピー数多型の定量化、および次世代の配列決定ライブラリの定量化において特に強力である。無細胞DNAおよびウイルス量の定量化を用いる液体細胞診のための臨床の環境における潜在的な用途はさらに、dPCR技術の価値を上昇させる。既存のdPCRソリューションは、エラストマーのバルブアレイ、シリコン貫通アプローチ(silicon through-hole approaches)、および油滴のマイクロ流体のカプセル化(microfluidic encapsulation of droplets in oil)を使用してきた。利用可能なdPCRプラットフォームの数が伸び続けているにも関わらず、dPCRは、PCR増幅サイクルの数の計数を当てにするより古いqPCR技術と比較されたときに不利な立場であった。処理能力、使いやすさ、性能、およびコストの組み合わせは、dPCRの市場における採用の獲得に対する主な障壁である。
【発明の概要】
【0007】
核酸を増幅し定量化するのに有用でありうる方法およびデバイスが本明細書において提供される。本開示は、dPCRの使用によって、試料の調製、試料の増幅、および試料の分析を可能にしうる方法、システム、およびデバイスを提供する。これによって、核酸が、他のシステムおよび方法と比較して、低いコストおよび低い複雑性で、増幅され、かつ定量化されることもある。
【0008】
一態様では、本開示はマイクロ流体デバイスを提供し、該マイクロ流体デバイスは:少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含む、少なくとも1つのマイクロチャネルと;複数のマイクロチャンバーおよび複数の吸い上げ開口部(siphon aperture)であって、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する、複数のマイクロチャンバーおよび複数の吸い上げ開口部と;熱可塑性の薄膜が複数のマイクロチャンバーを覆うように、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された熱可塑性の薄膜であって、ここで熱可塑性の薄膜は、熱可塑性の薄膜にわたって適用される圧力差の下で、少なくとも部分的にガス透過性である、熱可塑性の薄膜と;を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロチャネルはさらに、クロスチャネル(cross-channel)と流体連通する複数のサブチャネルを含み、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって複数のサブチャネルと流体連通する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーが格子構成であるように、複数のサブチャネルは実質的に互いに平行である。
【0010】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、少なくとも1つのマイクロチャネルおよび/または複数の吸い上げ開口部を覆う。いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は、約10マイクロメーター(μm)から約20μmまでの深さを有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は約10μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約25μmから約75μmまでの深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは約25μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、約50μmから約200μmまでの厚さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約1,000から約20,000までのマイクロチャンバーを含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは円筒形である。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは半球形状である。
【0012】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは射出成形によって形成される。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は射出成形によって形成される。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は熱接合によってマイクロ流体デバイスに適用される。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜はシクロオレフィンポリマーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜にわたって適用される圧力差は、約8ポンド/平方インチ(psi)から約16psiまでである。いくつかの実施形態では、空気圧ポンプ(pneumatic pump )は、少なくとも1つの入口または少なくとも1つの出口と流体連通する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間には、バルブを含まない。
【0014】
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを形成するための方法を提供し、該方法は:少なくとも1つのマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部を含むマイクロ流体構造を生成する熱可塑性プラスチックを射出成形する工程であって、ここで、複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する、工程と;少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を形成する工程と;複数のマイクロチャンバーを覆うように熱可塑性の薄膜を適用する工程であって、ここで熱可塑性の薄膜は、熱可塑性の薄膜にわたって適用される圧力差の下で少なくとも部分的にガス透過性である、工程と;を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は射出成形によって形成される。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は熱接合によってマイクロ流体構造に適用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口は機械的に穴をあけることによって形成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロチャネルはさらに、クロスチャネルと流体連通する複数のサブチャネルを含み、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって複数のサブチャネルと流体連通する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーが格子構成であるように、複数のサブチャネルは実質的に互いに平行である。
【0017】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、少なくとも1つのマイクロチャネルおよび/または複数の吸い上げ開口部を覆う。いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は、約10μmから約20μmまでの深さを有する。いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は約10μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約25μmから約75μmまでの深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは約25μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、約50μmから約200μmまでの厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは円筒形である。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは半球形状である。
【0019】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜はシクロオレフィンポリマーを含む。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜にわたって適用される圧力差は、約8psiから約16psiまでである。
【0020】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間には、バルブを含まない。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約1,000から約20,000までのマイクロチャンバーを含む。
【0021】
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供し、該方法は:(a)少なくとも1つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程であって、ここで、少なくとも1つのマイクロチャネルは少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、かつ、マイクロ流体デバイスはさらに、複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する複数のマイクロチャンバーと、熱可塑性の薄膜が複数のマイクロチャンバーを覆うように、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された熱可塑性の薄膜とを含む、工程と;(b)第1の圧力差の下で、試薬を、少なくとも1つの入口または少なくとも1つの出口から、少なくとも1つのマイクロチャネルまで導く工程と;(c)少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間の第2の圧力差の下で、試薬を複数のマイクロチャンバーへと導く工程であって、ここで、試薬を複数のマイクロチャンバーへと導くと、複数のマイクロチャンバー内のガスは、複数のマイクロチャンバーを覆う熱可塑性の薄膜を通って流される工程と;(d)流体を複数のマイクロチャンバーへと導入することなく、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口との間の第3の圧力差の下で、その流体を少なくとも1つのマイクロチャネルへと導く工程と;を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、(a)-(d)は、単一の統合されたマシンを使用して実施される。
【0023】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、少なくとも1つのマイクロチャネルおよび/または複数の吸い上げ開口部を覆う。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の圧力差は第1の圧力差よりも大きい。いくつかの実施形態では、第3の圧力差は第2の圧力差よりも小さい。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、核酸分子を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬を、複数のマイクロチャンバーの各々に提供する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、複数のマイクロチャンバーを熱サイクルすることによって、PCRを実施する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は複数のマイクロチャンバーの画像を取得する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、中でPCRが核酸分子を成功裡に増幅する、複数のマイクロチャンバーの数を数える工程を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、PCR試薬内の核酸を定量化するために、中でPCRがPCR試薬を成功裡に増幅する、複数のマイクロチャンバーの数にポアソン統計を適用する工程を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロチャネルはさらに、クロスチャネルと流体連通する複数のサブチャネルを含み、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって複数のサブチャネルと流体連通する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーが格子構成であるように、複数のサブチャネルは実質的に互いに平行である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第3の圧力差は約1psiから約4psiまでである。いくつかの実施形態では、第2の圧力差は約8psiから約16psiまでである。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜はシクロオレフィンポリマーを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約1,000から約20,000までのマイクロチャンバーを含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは円筒形である。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは半球形状である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間には、バルブを含まない。
【0029】
いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は、約10μmから約20μmまでの深さを有する。いくつかの実施形態では、複数の吸い上げ開口部は約10μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、約25μmから約75μmまでの深さを有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは約25μm未満の深さを有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、約50μmから約200μmまでの厚さを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、流体は、空気、窒素、二酸化炭素、貴ガス、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0031】
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを使用するためのシステムを提供し、該システムは:(i)少なくとも1つのマイクロチャネルであって、少なくとも1つのマイクロチャネルは少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含む、少なくとも1つのマイクロチャネル、(ii)複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する複数のマイクロチャンバー、および(ii) 複数のマイクロチャンバーを覆う熱可塑性の薄膜を含む少なくとも1つのマイクロ流体デバイスを保持するように構成された、移送ステージと;少なくとも1つのマイクロ流体デバイスと流体連通する空気圧モジュール(pneumatic module)であって、ここで、空気圧モジュールは、複数のマイクロチャンバーへと分配するために、試薬を、マイクロ流体デバイスへと装填するように構成される、空気圧モジュールと;複数のマイクロチャンバーと熱的連通する熱モジュールであって、熱モジュールは温度を制御し、かつ複数のマイクロチャンバーを熱サイクルするように構成される、熱モジュールと;マイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバーを画像化するように構成された光モジュールと;移送ステージ、空気圧モジュール、熱モジュール、および光モジュールに連結された1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで、1つ以上のコンピュータプロセッサは、(i)複数のマイクロチャンバーへと分配するために、試薬を、マイクロ流体デバイスへと装填するように、空気圧モジュールを導く、(ii)複数のマイクロチャンバーを熱サイクルするように、熱モジュールを導く、および(iii)複数のマイクロチャンバーを画像化するように、光モジュールを導く、個々に、またはまとめてプログラムされる、コンピュータプロセッサと;を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間には、バルブを含まない。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、少なくとも1つのマイクロチャネルおよび/または複数の吸い上げ開口部を覆う。
【0033】
いくつかの実施形態では、空気圧モジュールはさらに、少なくとも1つのマイクロチャネルへと試薬を装填するために、第1の圧力差を適用するように構成される。いくつかの実施形態では、空気圧モジュールはさらに、複数のマイクロチャンバーへと試薬を分配するために、少なくとも1つのマイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間に第2の圧力差を適用するように構成される。いくつかの実施形態では、空気圧モジュールはさらに、流体を少なくとも1つのマイクロチャネルへと流すために、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口との間に第3の圧力差を適用するように構成される。いくつかの実施形態では、第2の圧力差は約8psiから約16psiまでである。いくつかの実施形態では、第3の圧力差は約1psiから約4psiまでである。
【0034】
いくつかの実施形態では、光モジュールは少なくとも2つの異なる波長帯を画像化するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる波長帯のうちの第1の波長帯は、試薬の分配を確認するために使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる波長帯のうちの第2の波長帯は、複数のマイクロチャンバー内での反応を検出するために使用される。
【0035】
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供し、該方法は:マイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程であって、ここで、マイクロチャネルは、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、ならびにここで、マイクロ流体デバイスはさらに、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバー、ならびにマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部をキャップするように、マイクロ流体デバイスに隣接して配された熱可塑性の薄膜を含む、工程と;少なくとも1つの入口に、試薬を、第1の圧力で印加することにより、マイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバーを試薬で充填する工程と;複数のマイクロチャンバー、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャネル内のガスを押し進めるやめに、少なくとも1つの入口または少なくとも1つの出口において、第2の圧力(例えば、8psiから16psi)で高圧ガスを印加する工程であって、ここで第2の圧力は第1の圧力よりも高い、工程と;低圧ガスを複数のマイクロチャンバーへと導入することなく、その低圧ガスをマイクロチャネルへと導入するために、少なくとも1つの入口において、第3の圧力(例えば1psiから4psiまで)で低圧ガス(例えば高圧ガスよりも低い圧力)を印加する工程であって、第3の圧力は第2の圧力よりも低い、工程と;を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は単一の統合されたマシンを使用して実施される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、核酸分子を含むPCR試薬を、複数のマイクロチャンバーの各々に提供する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、複数のマイクロチャンバーを熱サイクルすることによって、PCRを実施する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は複数のマイクロチャンバーの画像を取得する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、中でPCRが核酸分子を成功裡に増幅する、複数のマイクロチャンバーの数を数える工程を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、PCR試薬内の核酸を定量化するために、中でPCRがPCR試薬を成功裡に増幅する、複数のマイクロチャンバーの数にポアソン統計を適用する工程を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、クロスチャネルを介して接続している複数のサブチャネルを含み、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数のサブチャネルに接続される。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーが格子構成であるように、複数のサブチャネルは実質的に互いに平行である。
【0038】
いくつかの実施形態では、第3の圧力は約1psiから4psiである。いくつかの実施形態では、第2の圧力は約8psiから16psiである。いくつかの実施形態では、高圧ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、貴ガス、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜はシクロオレフィンポリマーを含む。いくつかの実施形態では、空気圧ポンプは、少なくとも1つの入口または少なくとも1つの出口と流体連通する。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは、1,000から20,000のマイクロチャンバーを含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロチャンバーは円筒形である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは射出成形によって形成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は射出成形によって形成される。
【0041】
本開示のさらなる態様および利益は、以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなり、ここでは、本開示の例示的な実施形態のみが示され、記載される。以下の記載から分かるように、本開示は他のおよび異なる実施形態であってもよく、そのそれぞれの詳細は、全てが本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正が可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示であるとみなされ、限定するものではない。
【0042】
<引用による組み込み>
本明細書で言及されるすべての公報、特許、および特許出願は、個々の公報、特許、特許出願が引用によって組み込まれるように具体的且つ個別に示される程度まで、引用によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲において記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される実施形態を明記する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(または本明細書における「図」)とを引用することによって得られる。
【
図1】マイクロ流体構造の例を例示する。
図1のAは、上から見下ろした構造を示す一方で、
図1Bは、構造の断面を例示する。
【
図2】マイクロ流体デバイス内の、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルの例となる構成を概略的に例示する。
図2のAは、平行なサブチャネルおよび1つ以上のクロスチャネルがマイクロチャンバーの格子を形成するために使用される実施形態を示す。
図2のBは、曲がりくねったパターンの単一のマイクロチャネルがマイクロチャンバーの六角格子を形成する実施形態を示す。
【
図3A】例となるマイクロ流体デバイスの使用のための方法を示す。
図3Aは、低圧で試薬を加える工程を示す。
【
図3B】例となるマイクロ流体デバイスの使用のための方法を示す。
図3Bは、分配およびガス抜きを押し進めるために、マイクロ流体デバイスにわたって圧力差を適用する工程を示す。
【
図3C】例となるマイクロ流体デバイスの使用のための方法を示す。
図3Cは、マイクロチャネルをきれいにするために低圧で流体を加える工程を示す。
【
図3D】例となるマイクロ流体デバイスの使用のための方法を示す。
図3Dは、その方法の完了後のシステムの状態を示す。
【
図4】マイクロ流体デバイスの製造の方法を概略的に例示する。
【
図5】マイクロ流体デバイスを用いて利用される典型的なデジタルPCRプロセスを概略的に例示する。
【
図6】単一のマシンにおける、核酸の増幅および定量化の方法を実施するためのマシンを、概略的に例示する。
【
図7】本明細書において提供された方法を実施するようにプログラムされる、またはそうでなければ構成される、例となるコンピュータ制御システムを概略的に例示する。
【
図8】マイクロ流体デバイスおよび試料の分配を示す。
図8のAは、熱可塑性プラスチックを微小成形することにより形成されたマイクロ流体デバイスを示す。
図8のBは、試料の分配プロセスの蛍光画像を示す。
【
図9】核酸試料の処理のための例となるシステムを示す。
【
図10】平均しておよそ1つの核酸鋳型のコピー(nucleic acid template copy)を含む区画、および核酸鋳型のコピーがゼロである区画(鋳型がない対照、すなわちNTC)の核酸増幅の2色(1色が試料信号を表わし、もう1色が正規化信号を表わす)の蛍光検出を示す。
図10のAは、増幅後の区画当たりのコピーがゼロであること(NTC)を示す。
図10のBは、区画当たりおよそ1つのコピーを含む区画の核酸増幅を示す。
図10のCは、両方の蛍光色のNTCの蛍光強度のプロットを示す。
図10のDは、増幅された試料の両方の蛍光色の蛍光強度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の様々な実施形態が本明細書中に示され記述された一方、そのような実施形態が一例としてしか提供されていないことは当業者にとって明白だろう。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到されることもある。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、利用されることもあることを理解されたい。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語 「増幅」および、「増幅する」は、核酸の1つ以上のコピーまたは「増幅された産物」を生成することを指すように、交換可能に、かつ通常は使用される。例えば、そのような増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または等温増幅を使用していることもある。
【0046】
明細書において使用されるように、用語「核酸」は、通常、任意の長さのヌクレオチド(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、500、または1000のヌクレオチド)の高分子形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログを指す。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(TO)、およびウラシル(U)から選択された1つ以上のサブユニット、またはそれらの変異体を含むこともある。ヌクレオチドは、A、C、G、T、もしくはU、またはそれらの変異体を含みうる。ヌクレオチドは、伸長している核酸鎖へと組み込まれうる任意のサブユニットを含むことができる。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、もしくはU、またはより相補的なA、C、G、T、もしくはUの1つに特異的な、あるいはプリン(すなわち、AもしくはG、またはそれらの変異体)もしくはピリミジン(すなわちC、T、もしくはU、またはそれらの変異体)に相補的な、他のいかなるサブユニットでありうる。いくつかの例では、核酸は一本鎖または二本鎖であってもよく、場合によっては、核酸分子は環状である。核酸の限定しない例は、DNAおよびRNAを含む。核酸は、遺伝子または遺伝子断片のコード領域またはノンコーディング領域、連鎖解析から定義された遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換え核酸、分枝核酸、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離されたDNA、あらゆる配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを含みうる。核酸は、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなど、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含むこともある。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「ポリメラーゼ連鎖反応の試薬」または「PCR試薬」は、核酸増幅反応(例えばDNA増幅)を完了するのに必要な試薬を含む組成物を指すように、交換可能にかつ通常は使用され、そのような試薬の非限定的な例は、標的核酸に対する特異性を有するプライマーセットまたはプライミング部位(例えばニック)、ポリメラーゼ、適切な緩衝液、補助因子(例えば二価カチオンおよび一価カチオン)、dNTPs、および他の酵素を含む。PCR試薬はまた、プローブ、インジケータ、ならびにプローブおよびインジケータを含む分子を含むこともある。
【0048】
明細書において使用されるように、用語「プローブ」は、通常、検出可能な部分を含む分子を指し、プローブの有無は、増幅された産物の有無を検出するために使用されることもある。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含むこともある。
【0049】
明細書において使用されるように、用語「伸長」は、通常、鋳型指向性の様式(template directed fashion)の、核酸へのヌクレオチドの組み込みを指す。伸長は酵素の支援を介して生じることもある。例えば、伸長はポリメラーゼの支援を介して生じることもある。伸長が生じうる条件は、伸長が達成される温度を一般的には指す「伸長温度」、および発生する伸長のために割り当てられた時間の量を一般的には指す「伸長の継続時間」を含む。
【0050】
明細書において使用されるように、用語「指示薬分子」は、通常、検出可能な部分を含む分子を指し、指示薬分子の有無は試料の分配を示すために使用されることもある。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含むこともある。
【0051】
用語「試料」は、通常、明細書において使用されるように、核酸分子を含む、または含んでいる疑いのある試料を指す。例えば、試料は、1つ以上の核酸分子を含む生体試料になりうる。生体試料は、血液(例えば全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜の排出物、唾液、便および涙から得られる(例えば、抽出または分離される)か、またはそれらを含みうる。生体試料は、液体組織または組織試料(例えば皮膚試料)になりうる。いくつかの例では、試料は全血などの無細胞の体液から得られる。そのような実例において、試料は無細胞DNAおよび/または無細胞RNAを含みうる。いくつかの例では、試料は循環腫瘍細胞を含みうる。いくつかの実施形態では、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、周囲空気等)、工業試料(例えば、任意の工業プロセスからの試料)、および食物試料(例えば、乳製品、野菜製品、および肉製品)である。
【0052】
明細書において使用されるように、用語「流体」は、通常、液体またはガスを指す。液体は定められた形状を維持することができず、観察可能な時間枠(observable time frame)の間に流れ、液体が入れられる容器を充填するだろう。したがって、流体は、流れることができる適切な粘度を有しうる。2以上の流体が存在する場合、各流体は、独立して、当業者によって、本質的にいかなる流体(液体、ガスなど)からも選択されてもよい。
【0053】
明細書において使用されるように、用語「分配する」は、通常、複数の部分への分割もしくは分散、または共有(shares)を指す。例えば、分配された試料は、他の試料から単離された試料である。試料の分配を可能にする構造の例は、ウェルおよびマイクロチャンバーを含む。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「マイクロ流体の」は、通常、少なくとも1つのマイクロチャネル、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャンバーのアレイを含む、チップ、エリア、デバイス、物品、またはシステムを指す。マイクロチャネルは、約10ミリメートル(mm)以下、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約750マイクロメーター(μm)以下、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、またはそれ未満の断面の寸法を有することもある。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「深さ」は、通常、マイクロチャネル、吸い上げ開口部、またはマイクロチャンバーの底部から、マイクロチャネル、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャンバーのアレイをキャップする薄膜までの測定された距離を指す。
【0056】
明細書において使用されるように、用語「断面」、「断面である」は、特徴の長寸法に実質的に垂直である、マイクロチャネルまたは吸い上げ開口部の寸法またはエリアを、交換可能に、かつ通常は指すように使用されることもある。
【0057】
本開示は、圧力が解放されるときにガスバリアとして役立ちながら、加圧式のガス抜きを可能にするための、熱可塑性プラスチックから形成され、かつ薄膜を組み込んだ、マイクロ流体デバイスを記載する。マイクロ流体構造を形成するための熱可塑性プラスチックの使用は、低価格で高度にスケーラブルな射出成形プロセスの使用を可能にすることもある一方、薄膜が、そのような薄膜を組み込まないいくつかのマイクロ流体構造に存在しうるファウリングの問題を回避しつつ、加圧を介してガスを抜く能力を提供する。
【0058】
この構造のための1つの使用は、マイクロチャネルにより接続され、熱可塑性プラスチックから形成された、行き止まりのマイクロチャンバーのアレイを組み込むマイクロ流体の設計である。この設計は、dPCRの用途で使用することができ、マイクロチャンバーのアレイへと試薬を分配し、そしてそれによって、dPCRにおいて核酸を定量化するように使用されうる。
【0059】
<核酸試料を分析するためのマイクロ流体デバイス>
一態様では、本開示は、核酸試料を分析するためのマイクロ流体デバイスを提供する。そのデバイスは、入口と出口に接続されたマイクロチャネルを含むこともある。そのマイクロ流体デバイスはまた、複数のマイクロチャンバーおよび複数の吸い上げ開口部を含むこともある。その複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によりマイクロチャネルに接続されることもある。マイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル、マイクロチャンバー、および吸い上げ開口部をキャップし、かつ密閉する(例えば、空気を通さないように密閉する)熱可塑性の薄膜を含むこともある。熱可塑性の薄膜は、圧力差が熱可塑性の薄膜にわたって適用されるとき、少なくとも部分的にガス透過性であってもよい。
【0060】
図1のAおよびBは、本開示の特定の実施形態にしたがうマイクロ流体構造の例を示す。
図1のAは、上から見た例となるマイクロ流体デバイスを示す。マイクロ流体デバイスは、入口(120)および出口(130)を備えた、マイクロチャネル(110)を含む。マイクロチャネルは、複数の吸い上げ開口部(101B-109B)に接続される。複数の吸い上げ開口部は、マイクロチャネルを複数のマイクロチャンバー(101A-109A)に接続する。
図1のBは、A-A’で印された破線に沿う、単一のマイクロチャンバーの断面図を示す。単一のマイクロチャンバー(101A)は、吸い上げ開口部(101B)によりマイクロチャネル(110)に接続される。マイクロ流体デバイス本体(140)は、硬質プラスチック材料から形成されてもよい。マイクロ流体デバイスのマイクロ構造は、薄膜(150)によりキャップされ密閉されることもある。その薄膜は、小さい圧力差が膜にわたって適用されるときに非ガス透過性であり、かつ大きい圧力差が膜にわたって適用されるときにガス透過性であることもある。これによって、圧力がマイクロ流体デバイスの内部構造に印加されるときに、薄膜を介してガスを抜くことが可能になることもある。代替的な一実施形態では、ガス抜きは、真空がマイクロ流体デバイスの外部に適用されるときに生じることもある。
【0061】
薄膜のガス透過性は、高圧により誘導されることもある。いくつかの実施形態では、圧力で誘導されたガス透過性を持つ薄膜は、マイクロチャンバーのアレイおよびマイクロチャネルを覆うこともあり、ならびに、吸い上げ開口部は非ガス透過性の膜により覆われることもある。いくつかの実施形態では、圧力で誘導されたガス透過性を持つ薄膜は、マイクロチャンバーのアレイを覆うこともあり、ならびに、吸い上げ開口部および非ガス透過性の膜により覆われることもある。代替的に、圧力で誘導されたガス透過性を持つ薄膜は、マイクロチャンバーのアレイ、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルを覆うこともある。いくつかの実施形態では、その薄膜の厚さは、約500マイクロメーター(μm)以下、約250μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下、またはそれ未満でありうる。いくつかの実施形態では、薄膜の厚さは、約0.1μmから約200μmまで、または約0.5μmから約150μmまででありうる。いくつかの実施形態では、薄膜の厚さは、約50μmから約200μmまででありうる。いくつかの実施形態では、薄膜の厚さは、約100μmから約200μmまででありうる。いくつかの実施形態では、薄膜の厚さは、約100μmから約150μmまでである。一例では、薄膜はおよそ100μmの厚さである。膜の厚さは、薄膜の製造可能性、薄膜の空気透過度、ガス抜きされる各区画の体積、利用可能な圧力、および/または吸い上げプロセス(siphoning process)を完了する希望時間により選択されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの単一のアレイを含むこともある。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの多数のアレイを含むこともあり、マイクロチャンバーの各アレイは、他のアレイから隔離される。マイクロチャンバーのアレイは、一列に、格子構成で、交互するパターンで、または他のいかなる構成で配置されることもある。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの、少なくとも約1つ、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、またはさらに多くのアレイを有することもある。いくつかの実施形態では、マイクロチャンバーのアレイは同一である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、同一でない、マイクロチャンバーの多数のアレイを含むこともある。マイクロチャンバーのアレイはすべて同じ外部寸法(すなわち、マイクロチャンバーのアレイの全ての特徴を囲む、マイクロチャンバーのアレイの長さおよび幅)を有してもよく、またはマイクロチャンバーのアレイは異なる外部寸法を有してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、マイクロチャンバーのアレイは、最大で、約100mm、約75mm、約50mm、約40mm、約30mm、約20mm、約10mm、約8mm、約6mm、約4mm、約2mm、約1mm、またはそれ未満の幅を有してもよい。マイクロチャンバーのアレイは、最大で、約50mm、約40mm、約30mm、約20mm、約10mm、約8mm、約6mm、約4mm、約2mm、1mm、またはそれ未満の長さを有することもある。幅は、約1mmから100mmまで、または10mmから50mmまでであってもよい。長さは、約1mmから50mmまで、または5mmから20mmまでであってもよい。
【0064】
いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約100mmの幅、および約40mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約80mmの幅、および約30mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約60mmの幅、および約25mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約40mmの幅、および約15mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約30mmの幅、および約10mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約20mmの幅、および約8mmの長さを有することもある。いくつかの例では、マイクロチャンバーのアレイは、約10mmの幅、および約4mmの長さを有することもある。外部寸法は、望ましいマイクロチャンバーの総数、各マイクロチャンバーの寸法、および製造可能性に関する各マイクロチャンバー間の最小距離によって決定されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して実質的に平行である。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して実質的に垂直でありうる。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して、実質的に平行でないこと、または実質的に垂直でないこともある。マイクロチャネルとマイクロ流体デバイスの長寸法との間の角度は、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、または少なくとも約170°であってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは単一の長チャネルであってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、曲がり、曲線、または角度があることもある。マイクロチャネルは、100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有することもある。マイクロチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限されることもある。マイクロチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の深さを有することもある。マイクロチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の寸法(例えば幅)を有することもある。
【0066】
いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。マイクロチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であることもある。マイクロチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って一定であってもよい。代替的に、または加えて、マイクロチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って変動してもよい。マイクロチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。マイクロチャネルの断面積は、約10,000平方マイクロメートル(μm2)以下、約7,500μm2以下、約5,000μm2以下、約2,500μm2以下、約1,000μm2以下、約750μm2以下、約500μm2以下、約400μm2以下、約300μm2以下、約200μm2以下、約100μm2以下、またはそれ未満であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネルは、単一の入口および単一の出口を有することもある。代替的に、マイクロチャネルは、多数の入口、多数の出口、または多数の入口および多数の出口を有することもある。入口および出口は同じ直径を有する、またはそれらは異なる直径を有することもある。入口および出口は、約2.5ミリメートル(mm)以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、またはそれ未満の直径を有してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、マイクロチャンバーのアレイは、少なくとも約1,000のマイクロチャンバー、少なくとも約5,000のマイクロチャンバー、少なくとも約10,000のマイクロチャンバー、少なくとも約20,000のマイクロチャンバー、少なくとも約30,000のマイクロチャンバー、少なくとも約40,000のマイクロチャンバー、少なくとも約50,000のマイクロチャンバー、少なくとも約100,000のマイクロチャンバー、またはそれを以上のマイクロチャンバーを有することもある。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスは約10,000から約30,000までのマイクロチャンバーを有することもある。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスは約15,000から約25,000までのマイクロチャンバーを有することもある。マイクロチャンバーは、円筒形、半球形、または円筒形もしくは半球形の組み合わせであってもよい。マイクロチャンバーは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の直径を有してもよい。マイクロチャンバーの深さは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約30μmの直径および約100μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約35μmの直径および約80μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約40μmの直径および約70μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約50μmの直径および約60μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約60μmの直径および約40μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約80μmの直径および約35μmの深さを有してもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約100μmの直径および約30μmの深さを有してもよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルは同じ深さを有する。代替的な一実施形態では、マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルは異なる深さを有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部の長さは一定である。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部の長さは変動する。吸い上げ開口部は、約150μm以下、約100μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満の長寸法を有してもよい。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部の深さは、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満であってもよい。吸い上げ開口部は、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有してもよい。
【0070】
いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約30μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約5μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約40μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約30μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約20μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約10μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約5μm、深さ約50μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約30μm、深さ約30μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約5μm、深さ約5μmであってもよい。吸い上げ開口部の断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であることもある。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って一定であってもよい。代替的に、または加えて、吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って変動してもよい。吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルに対する接続部において、マイクロチャンバーに対する接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも大きいこともある。代替的に、マイクロチャンバーに対する接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルに対する接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも大きいこともある。吸い上げ開口部の断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。吸い上げ開口部の断面積は、約2,500μm2以下、約1,000μm2以下、約750μm2以下、約500μm2以下、約250μm2以下、約100μm2以下、約75μm2以下、約50μm2以下、約25μm2以下、またはそれ未満であってもよい。マイクロチャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルの断面積以下であってもよい。マイクロチャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、または約0.5%以下であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部は、マイクロチャネルに対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部は、マイクロチャネルに対して実質的に垂直ではない。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部およびマイクロチャネルとの間の角度は、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、または少なくとも約170°であってもよい。
【0072】
マイクロチャンバーは様々なパターンで構成されてもよい。
図2のAおよびBは、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルの構成の典型的なパターンを例示する。いくつかの実施形態では、多数のマイクロチャネルが利用される一方で、いくつかの実施形態では、単一のマイクロチャネルが使用されることもある。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルはサブチャネルの群を含むこともある。サブチャネルの群は、1つ以上のクロスチャネルにより接続されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、マイクロチャンバーのアレイがマイクロチャンバーの格子を形成するように、サブチャネルは実質的に互いに平行である。
図2のAは、平行なサブチャネル(230)および1つ以上のクロスチャネル(220)がマイクロチャンバーの格子を形成するために使用される実施形態を例示する。
【0073】
いくつかの実施形態では、マイクロチャンバーは、マイクロチャンバーの六角格子を形成するように構成され、曲線状のまたは角度のあるサブチャネルがマイクロチャンバーを接続している。マイクロチャンバーの六角格子はまた、マイクロ流体デバイスにわたって曲がりくねったパターン(240)を形成するマイクロチャネルによるなど、単一のマイクロチャネルにより形成され、接続されてもよい。
図2のBは、曲がりくねったパターンの単一のマイクロチャネルがマイクロチャンバーの六角格子を形成する実施形態を例示する。
【0074】
いくつかの実施形態では、サブチャネルの長さは一定である。いくつかの実施形態では、サブチャネルの長さは変動してもよい。サブチャネルは、100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有することもある。サブチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限されることもある。いくつかの実施形態では、サブチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、サブチャネルはマイクロチャネルとは異なる断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、サブチャネルはマイクロチャネルと同じ深さ、および異なる断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、サブチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法、および異なる深さを有することもある。例えば、サブチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の深さを有してもよい。サブチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有してもよい。
【0075】
いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。サブチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であることもある。いくつかの実施形態では、サブチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と異なる。いくつかの実施形態では、サブチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と同様である。サブチャネルの断面積は、サブチャネルの長さに沿って一定であってもよい。代替的に、または加えて、サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って変動してもよい。サブチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。サブチャネルの断面積は、約10,000μm2以下、約7,500μm2以下、約5,000μm2以下、約2,500μm2以下、約1,000μm2以下、約750μm2以下、約500μm2以下、約400μm2以下、約300μm2以下、約200μm2以下、約100μm2以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの実施形態では、サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積と同様である。いくつかの実施形態では、サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の面積以下であってもよい。サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約20%以下、またはそれ未満であってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、クロスチャネルの長さは一定である。いくつかの実施形態では、クロスチャネルの長さは変動してもよい。クロスチャネルは、約100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有することもある。クロスチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限されることもある。いくつかの実施形態では、クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、クロスチャネルはマイクロチャネルとは異なる断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ深さ、および異なる断面の寸法を有することもある。いくつかの実施形態では、クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法、および異なる深さを有することもある。例えば、クロスチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の深さを有してもよい。クロスチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有してもよい。
【0077】
いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。
【0078】
クロスチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であることもある。いくつかの実施形態では、クロスチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と異なる。いくつかの実施形態では、クロスチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と同様である。クロスチャネルの断面積は、クロスチャネルの長さを下って一定であってもよい。代替的に、または加えて、クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さを下って変動してもよい。クロスチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。クロスチャネルの断面積は、約10,000μm2以下、約7,500μm2以下、約5,000μm2以下、約2,500μm2以下、約1,000μm2以下、約750μm2以下、約500μm2以下、約400μm2以下、約300μm2以下、約200μm2以下、約100μm2以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの実施形態では、クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積と同様である。いくつかの実施形態では、クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の面積未満である。クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約20%以下、またはそれ未満であってもよい。
【0079】
<マイクロ流体デバイスを組み立てる方法>
一態様では、本開示は、マイクロ流体デバイスを組み立てるための方法を提供する。その方法は、マイクロ流体構造を作製するために熱可塑性プラスチックを射出成形する工程を含んでもよい。そのマイクロ流体構造は、マイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部を含んでもよい。その複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によりマイクロチャネルに接続されることもある。そのマイクロチャネルは、入口と出口に接続されたマイクロチャネルを含んでもよい。熱可塑性の薄膜は、マイクロ流体構造をキャップするために適用されてもよい。熱可塑性の薄膜は、圧力差が熱可塑性の薄膜にわたって適用されるとき、少なくとも部分的にガス透過性であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は射出成形によって形成される。熱可塑性の薄膜は、熱接合によってマイクロ流体構造に適用されてもよい。代替的に、または加えて、その薄膜は化学結合により適用されてもよい。いくつかの実施形態では、熱可塑性の薄膜は、マイクロ流体デバイスを形成するために、射出成形プロセスの一環として、およびそのプロセスの間に形成される。
【0081】
マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、同じ材料を含むこともある。代替的に、マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、異なる材料を含むこともある。マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、熱可塑性プラスチックを含むこともある。例となる熱可塑性プラスチックは、限定されないが、シクロオレフィンポリマー、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、またはそれらの任意の誘導体を含む。マイクロ流体デバイスは、ホモポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせを含むこともある。マイクロ流体デバイスは非弾性材料から形成されてもよい。代替的に、または加えて、マイクロ流体デバイスは弾性材料から形成されてもよい。
【0082】
本開示の典型的な実施形態では、熱可塑性プラスチックおよび薄膜の両方は、シクロオレフィンポリマーから構成される。1つの適切な熱可塑性プラスチックは、Zeonor 1430R(Zeon Chemical, Japan)である一方で、1つの適切な薄膜は、Zeonox 1060R(Zeon Chemical, Japan)である。いくつかの実施形態では、薄膜は、低圧で非ガス透過性の材料であり、かつ圧力下で少なくとも部分的にガス透過性である。
【0083】
いくつかの実施形態では、入口および出口は機械的に穴をあけることによって形成される。いくつかの実施形態では、入口および出口は、熱可塑性プラスチックの融解、溶解、またはエッチングにより形成される。
【0084】
図4は、本開示の様々な実施形態の製造の方法を例示する。
図4では、射出成形プロセス(401)がマイクロ流体構造を形成するために使用される。マイクロ流体構造は、マイクロチャンバーのアレイを含み、マイクロチャンバーは、
図1のAおよびBに示されるように、吸い上げ開口部を介して少なくとも1つのマイクロチャネルに接続される。マイクロ流体構造は薄膜によりキャップされる。キャップするプロセスでは、マイクロ構造の少なくとも1つの側面の開口部は、マイクロ構造を閉じるおよび密閉するために覆われる。本開示のいくつかの実施形態では、キャップするプロセスは、射出成形されたマイクロ流体構造に薄膜を適用するプロセス(402)により実施される。本開示のいくつかの実施形態では、キャップするプロセス、射出成形プロセス(401)の一環として、薄膜を形成することにより実施される。
【0085】
別の実施形態として、射出成形を介して形成されるマイクロ構造の文脈において記載されたが、他の微細加工技術により形成されたマイクロ流体デバイスはまた、上記されるようにガスを抜くことを可能にするように、そのような薄い熱可塑性プラスチック膜の使用から利益を得ることもある。そのような技術は、他の微細加工技術と同様に、微細加工、マイクロリソグラフィー、およびホットエンボスを含む。
【0086】
<核酸試料を分析する方法>
一態様では、本開示は、核酸試料を分析するためにマイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供する。その方法は、マイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程を含んでもよい。そのマイクロチャネルは、入口と出口に接続されたマイクロチャネルを含んでもよい。そのマイクロ流体デバイスはさらに、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバーを含んでもよい。そのマイクロ流体デバイスは、熱可塑性の薄膜が、マイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部をキャップするように、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された熱可塑性の薄膜を含む。試薬は、入口または出口へ加えられることもある。マイクロ流体デバイスは、試薬とマイクロ流体デバイスとの間に第1の圧力差を提供することによって充填されることもあり、試薬をマイクロ流体デバイスへと流れさせる。複数のマイクロチャンバーへと試薬を移動させ、かつ熱可塑性の薄膜を通過するように複数のマイクロチャンバー内のガスを押し進めるために、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間に第2の圧力差を適用することにより、試薬は、マイクロチャンバーへと分配される。第2の圧力差は第1の圧力差よりも大きいこともある。入口と出口との間の第3の圧力差は、流体をマイクロチャンバーへと導入することなく、その流体をマイクロチャネルへと導入するために適用されることもある。第3の圧力差は第2の圧力差よりも小さいこともある。
【0087】
いくつかの実施形態では、入口および出口は空気圧ポンプと流体連通する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは真空システムに接する。試料の充填および分配は、マイクロ流体デバイスの様々な特徴にわたって圧力差を適用することにより実施されることもある。いくつかの実施形態では、試料の充填および分配は、試料を単離するために、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間のバルブを使用することなく実施されることもある。例えば、マイクロチャネルの充填は、装填される予定の試料とマイクロチャネルとの間に圧力差を適用することにより実施されることもある。この圧力差は、試料を加圧することにより、またはマイクロチャネルに真空を適用することにより達成されることもある。マイクロチャンバーの充填は、マイクロチャネルとマイクロチャンバーとの間に圧力差を適用することにより実施されることもある。これは、マイクロチャネルを加圧することにより、またはマイクロチャンバーに真空を適用することにより達成されることもある。試料の分配は、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を適用することにより実施されることもある。この圧力差は、流体を加圧することにより、またはマイクロチャネルに真空を適用することにより達成されることもある。
【0088】
薄膜は、様々な適用された圧力差の下で、様々な透過度の特性を利用することもある。例えば、薄膜は、より小さな程度の圧力差でありうる、第1の圧力差および第3の圧力差(例えば、低圧)において、非ガス透過性でありうる。薄膜は、大きな程度の圧力差でありうる第2の圧力差(例えば、高圧)において、少なくとも部分的にガス透過性でありうる。第1の圧力差および第3の圧力差は同様である、または異なることもある。第1の圧力差は、入口あるいは出口中の、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力の差であることもある。マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬の圧力は、マイクロ流体デバイスの圧力よりも高いこともある。マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差(例えば、低圧)は、約8ポンド/平方インチ(psi)以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約8psiまでであってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約6psiまでであってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約4psiまでであってもよい。マイクロ流体デバイスは、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、またはそれ未満の時間、試薬とマイクロ流体デバイスとの間に圧力差を適用することより充填されることもある。
【0089】
充填されたマイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル、吸い上げ開口部、マイクロチャンバー、または任意のそれらの組み合わせ中に試薬を有することもある。マイクロチャンバーへの試薬の最充填(Backfilling)は、マイクロ流体デバイスの充填の際に発生する、または第2の圧力差を適用している間に発生することもある。第2の圧力差(例えば、高圧)は、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間の圧力の差に相当することもある。第2の圧力差を適用している間に、高圧ドメイン中の第1の流体は、より低い圧力ドメイン中の第2の流体を、薄膜を通って、そしてマイクロ流体デバイスから外へ出るように押し出すこともある。第1および第2の流体は、液体または気体を含むこともある。液体は、水溶液混合物または油混合物を含むこともある。第2の圧力差はマイクロチャネルを加圧することにより達成されることもある。代替的に、または加えて、第2の圧力差は、マイクロチャンバーに真空を適用することにより達成されることもある。第2の圧力差を適用している間に、マイクロチャネル中の試薬はマイクロチャンバーへと流れることもある。加えて、第2の圧力差を適用している間、吸い上げ開口部、マイクロチャンバー。およびマイクロチャネル内に閉じ込められたガスは、薄膜を通って抜けることもある。マイクロチャンバーの再充填およびガス抜き中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は、約6psi以上、約8psi以上、約10psi以上、約12psi以上、約14psi以上、約16psi以上、約18psi以上、約20psi以上、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約20psiまでである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約18psiまでである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約16psiまでである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約14psiまでである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約12psiまでである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約10psiまでである。マイクロチャンバーは、約5分以上、約10分以上、約15分以上、約20分以上、約25分以上、約30分以上、またはそれを超える時間、圧力差を適用することにより、再充填およびガス抜きされることもある。
【0090】
試料は、マイクロチャネルから過剰な試料を除去することにより分配されることもある。マイクロチャネルから過剰な試料を除去することは、1つのマイクロチャンバー中の試薬が、吸い上げ開口部を介して、マイクロチャネルおよび他のマイクロチャンバーへと拡散することを妨げる。マイクロチャネル内の過剰な試料は、マイクロチャネルの入口または出口に流体を導入することにより、除去されることもある。流体の圧力は、マイクロチャネルの圧力よりも高いこともあり、それによって、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を生じさせる。流体は、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、貴ガス、または任意のそれらの組み合わせであってもよい。試料の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約8psi以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、試料の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約8psiまでである。いくつかの例では、試料の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約6psiまでである。いくつかの例では、試料の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約4psiまでである。試料は、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、またはそれ未満の時間、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を適用することにより、分配されることもある。
【0091】
図3A-
図3Dは、
図1のAに示されるマイクロ流体デバイスを使用するための方法を例示する。
図3Aでは、低圧が、空気圧ポンプ(300)を介して入口(120)において試薬に印加され、マイクロチャネル(110)へと試薬を押し進めて、それによって、吸い上げ開口部を介してマイクロチャンバーを充填する。圧力は、試薬を、マイクロチャネルを通って流れさせ、それによって吸い上げ開口部を介してマイクロチャンバーへと流れさせる。この時間において、気泡(301)などのガス気泡は、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、またはマイクロチャネル内に残ることもある。低圧の印加を介する充填は、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルが試薬で実質的に充填されるまで継続することもある。試薬はポリメラーゼ連鎖反応で使用される試薬であってもよい。いくつかの実施形態では、わずか1つのPCR鋳型しか、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバー当たり試薬中に存在しないように、試薬は希釈される。
【0092】
図3Bにおいて、空気圧ポンプ(300)は、入口(120)および出口(130)の両方に接続され、そして高圧が印加される。高圧は試薬を介して伝えられ、気泡(301)などのガス気泡に印加される。この高圧の影響下で、薄膜(150)は透過性のガスとなり、そして気泡(301)は薄膜(150)を介して抜けることができる。この高い圧力を印加することにより、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルには、ガス気泡が実質的に含まれなくなり、それによってファウリングを避けることができる。
【0093】
図3Cにおいて、流体は、空気圧ポンプ(300)を介し、入口(120)においてガスに低圧を印加することにより再導入される。その空気圧は、ガスが薄膜を通って抜けることを可能にするほど十分ではない、または吸い上げ開口部とマイクロチャンバーへとガス気泡を押し進めるには十分高くないこともある。代わりに、そのガスは、各マイクロチャンバーおよび吸い上げ開口部中に単離された試薬を残しつつ、マイクロチャネルから試薬の取り除くこともある。いくつかの実施形態では、ガスは空気である。いくつかの実施形態では、ガスは、窒素、二酸化炭素、または貴ガスなどの不活性ガスであってもよい。そのようなガスは、試薬と空気の成分ガスとの間の反応を避けるために使用されることもある。
【0094】
図3Dは、
図3Cで低圧が印加された後の、システムの状態を例示する。低圧ガスの印加後、マイクロチャンバーと吸い上げ開口部は試薬で充填されたままである一方、マイクロチャネルは試薬が取り除かれることもある。その試薬は、吸い上げ開口部により生じさせられた毛管力および高い表面張力が原因で、マイクロチャンバー内に静止したままであることもある。毛管力および高い表面張力は、試薬がマイクロチャネルへと流れるのを防止し、試薬の蒸発を最小限にすることもある。
【0095】
試料の分配は、試薬内の指示薬の存在により確認されることもある。指示薬は、検出可能な部分を含む分子を含むこともある。検出可能な部分は、放射性種、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、またはそれらの任意の組み合わせを含むこともある。放射性種の非限定的な例は、3H、14C、22Na、32P、33P、35S、42K、45Ca、59Fe、123I、124I、125I、131I、または203Hgを含む。蛍光標識の非限定的な例は、蛍光タンパク質、光学活性な色素(例えば蛍光色素)、有機金属のフルオロフォア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。化学発光標識の非限定的な例は、ウミホタル(Cypridina)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、およびホタル(Firefly)ルシフェラーゼなどのルシフェラーゼのクラスの酵素を含む。酵素標識の非限定的な例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、または他の公知な標識を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、指示薬分子は蛍光分子である。蛍光分子は、蛍光タンパク質、蛍光色素、および有機金属のフルオロフォアを含むこともある。いくつかの実施形態では、指示薬分子はタンパク質のフルオロフォアである。タンパク質フルオロフォアは、を含むこともある。緑色蛍光タンパク質(GFP、スペクトルの緑色領域において蛍光を発し、一般的には500-550ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)シアン蛍光タンパク質(CFP、スペクトルのシアン領域において蛍光を発し、一般的には450-500ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)赤色蛍光タンパク質(RFP、スペクトルの赤色領域において蛍光を発し、一般的には600-650ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)タンパク質のフルオロフォアの非制限的な例は、AcGFP、AcGFP1、AmCyan、AmCyan1、AQ143、AsRed2、Azami Green、Azurite、BFP、Cerulean、CFP、CGFP、Citrine、copGFP、CyPet、dKeima-Tandem、DsRed、dsRed-Express、DsRed-Monomer、DsRed2、dTomato、dTomato-Tandem、EBFP、EBFP2、ECFP、EGFP、Emerald、EosFP、EYFP、GFP、HcRed-Tandem、HcRed1、JRed、Katuska、Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mApple、mBanana、mCerulean、mCFP、mCherry、mCitrine、mECFP、mEmerald、mGrape1、mGrape2、mHoneydew、Midori-Ishi Cyan、mKeima、mKO、mOrange、mOrange2、mPlum、mRaspberry、mRFP1、mRuby、mStrawberry、mTagBFP、mTangerine、mTeal、mTomato、mTurquoise、mWasabi、PhiYFP、ReAsH、Sapphire、Superfolder GFP、T-Sapphire、TagCFP、TagGFP、TagRFP、TagRFP-T、TagYFP、tdTomato、Topaz、TurboGFP、Venus、YFP、YPet、ZsGreen、およびZsYellow1の突然変異体ならびにスペクトル変異体(spectral variant)を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、指示薬分子は蛍光色素である。蛍光色素の非制限的な例は、サイバーグリーン、SYBR blue、DAPI、ヨウ化プロピジウム(propidium iodine)、Hoeste、SYBR gold、臭化エチジウム、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、フルオロクマニン(fluorcoumanin)、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、アントラマイシン、フェナントリジンおよびアクリジン、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ヘキシジウム(hexidium iodide)、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモダイマ-1およびエチジウムホモダイマ-2、エチジウムモノアジド、ならびにACMA、Hoechst 33258、Hoechst 33342、Hoechst 34580、DAPI、アクリジンオレンジ、7-AAD、アクチノマイシンD、LDS751、ヒドロキシスチルバミジン、SYTOX Blue、SYTOX Green、SYTOX Orange、POPO-1、POPO-3、YOYO-1、YOYO-3、TOTO-1、TOTO-3、JOJO-1、LOLO-1、BOBO-1、BOBO-3、PO-PRO-1、PO-PRO-3、BO-PRO-1、BO-PRO-3、TO-PRO-1、TO-PRO-3、TO-PRO-5、JO-PRO-1、LO-PRO-1、YO-PRO-1、YO-PRO-3、PicoGreen、OliGreen、RiboGreen、SYBR gold、サイバーグリーンI、サイバーグリーンII、SYBR DX、SYTO-40、-41、-42、-43、-44、-45(ブルー)、SYTO-13、-16、-24、-21、-23、-12、-11、-20、-22、-15、-14、-25(グリーン)、SYTO-81、-80、-82、-83、-84、-85(オレンジ)、SYTO-64、-17、-59、-61、-62、-60、-63(レッド)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ローダミン、テトラメチルローダミン、Rフィコエリトリン、Cy-2、Cy-3、Cy-3.5、Cy-5、Cy5.5、、Cy-7、Texas Red、Phar-Red、アロフィコシアニン(APC)、Sybr Green I、Sybr Green II、Sybr Gold、CellTracker Green、7-AAD、エチジウムホモダイマーI、エチジウムホモダイマーII、エチジウムホモダイマーIII、臭化エチジウム、ウンベリフェロン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(cascade blue)、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン(dichlorotriazinylamine fluorescein)、ダンシルクロリド、ユウロピウムおよびテルビウムを含むものなどの蛍光性ランタニド錯体、カルボキシテトラクロロフルオレセイン(carboxy tetrachloro fluorescein)、5および/もしくは6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(または6-)ヨードアセトアミドフルオレセイン、5-{[2(および3)-5-(アセチルメルカプト)-スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA-フルオレセイン)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、5および/もしくは6カルボキシローダミン(ROX)、7-アミノ-メチル-クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、BODIPYフルオロフォア、8-メトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、3,6-二スルホン酸塩-4-アミノ-ナフタルイミド、フィコビリタンパク質、AlexaFluor350、405、430、488、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750、および790色素、DyLight350、405、488、550、594、633、650、680、800色素、または他のフルオロフォアを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、指示薬分子は有機金属のフルオロフォアである。有機金属のフルオロフォアの非限定的な例は、ランタニドイオンキレートを含み、ランタニドイオンキレートの非限定的な例は、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5-アミノ-1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、およびLumi4-Tbクリプテートを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの画像が撮られる。単一のマイクロチャンバー、マイクロチャンバーの1つのアレイ、またはマイクロチャンバーの多数のアレイの画像が同時に撮られることもある。いくつかの実施形態では、画像はマイクロ流体デバイスの本体を介して撮られる。いくつかの実施形態では、画像はマイクロ流体デバイスの薄膜を介して撮られる。いくつかの実施形態では、画像は、マイクロ流体デバイスの本体および薄膜の両方を介して撮られる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に透明である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に不透明である。いくつかの実施形態では、薄膜は実質的に光学的に透明である。いくつかの実施形態では、画像は、マイクロ流体デバイスを試薬で充填する前に撮られることもある。いくつかの実施形態では、画像は、マイクロ流体デバイスを試薬で充填する後に撮られることもある。いくつかの実施形態では、画像は、マイクロ流体デバイスを試薬で充填している間に撮られることもある。いくつかの実施形態では、画像は、試薬の分配を確認するために撮られる。いくつかの実施形態では、画像は、反応の産物をモニタリングするために反応の間に撮られる。いくつかの実施形態では、反応の産物は増幅産物を含む。いくつかの実施形態では、画像は所定の間隔で撮られる。代替的に、または加えて、マイクロ流体デバイスの映像が撮られることもある。所定の間隔は、反応中、少なくとも300秒毎、少なくとも240秒毎、少なくとも180秒毎、少なくとも120秒毎、少なくとも90秒毎、少なくとも60秒毎、少なくとも30秒毎、少なくとも15秒毎、少なくとも10秒毎、少なくとも5秒毎、少なくとも4秒毎、少なくとも3秒毎、少なくとも2秒毎、少なくとも1秒毎、またはより頻繁に画像を撮ることを含みうる。
【0100】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスを使用するための方法はさらに、核酸試料の増幅を含むこともある。マイクロ流体デバイスは、核酸分子、増幅反応に必要な成分、指示薬分子、および増幅プローブを含む増幅試薬で充填されることもある。増幅は、複数のマイクロチャンバーを熱サイクルすることにより実施されることもある。核酸増幅の検出は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバーを画像化することにより実施されることもある。核酸分子は、核酸分子が成功裡に増幅されたマイクロチャンバーを数えて、ポアソン統計を適用することにより、定量化されることもある。いくつかの実施形態では、核酸の増幅および定量化は、単一の統合されたユニットにおいて実施されることもある。
【0101】
様々な核酸増幅反応は、増幅された産物を生成するために、試料中の核酸分子を増幅するように使用されうる。核酸標的の増幅は、一次的、指数関数的、またはそれらの組み合わせでありうる。核酸の増幅方法の非限定的な例は、プライマー伸長、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写、等温増幅、リガーゼ連鎖反応、ヘリカーゼ依存性増幅、不斉増幅、ローリングサークル増幅、および多置換増幅を含む。いくつかの実施形態では、増幅産物はDNAまたはRNAである。DNA増幅を対象とする実施形態に関しては、いかなるDNA増幅の方法も利用されうる。DNA増幅の方法は、限定されないが、PCR、リアルタイムPCR、アセンブリPCR、非対称PCR、デジタルPCR、ダイヤルアウトPCR(dial-out PCR)、ヘリカーゼ依存性PCR(helicase-dependent PCR)、ネステッドPCR、ホットスタートPCR、逆PCR、メチル化特異的PCR、ミニプライマーPCR(miniprimer PCR)、マルチプレックスPCR、重複伸長PCR、熱非対称インターレースPCR(thermal asymmetric interlaced PCR)、タッチダウンPCR、およびリガーゼ連鎖反応を含む。いくつかの実施形態では、DNA増幅は、一次的、指数関数的、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、DNA増幅はデジタルPCR(dPCR)を用いて達成される。
【0102】
核酸増幅に必要な試薬は、重合酵素、リバースプライマー、フォワードプライマー、および増幅プローブを含むこともある。重合酵素の例は、限定されることなく、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼ(すなわち結合の形成を触媒する酵素)を含む。重合酵素は、自然に発生している、または合成されうる。ポリメラーゼの例は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変されたポリメラーゼ、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼ、Φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、Ex-Taqポリメラーゼ、LA-Tawポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、PfuTuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するクレノウ断片ポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、修飾された産物、および誘導体を含む。ホットスタートポリメラーゼに関しては、約2分間から10分間、約92℃から95℃の温度での、変性の工程が必要であることもある。
【0103】
いくつかの実施形態では、増幅プローブは配列特異的オリゴヌクレオチドプローブである。増幅プローブは、増幅産物とハイブリダイズされたときに、光学活性であってもよい。いくつかの実施形態では、増幅プローブは、核酸増幅が進行する場合にのみ、検出可能である。光学信号の強度は、増幅された産物の量に比例しうる。プローブは、本明細書に記載された光学活性な検出可能な部分(例えば色素)のいずかに結合されることもあり、さらにまた、関連する色素の光学活性を遮断することができるクエンチャーを含むこともある。検出可能な部分として有用でありうるプローブの非限定的な例は、TaqManプローブ、TaqMan Tamaraプローブ、TaqMan MGBプローブ、Lionプローブ(Lion probes)、ロックド核酸プローブ、または分子ビーコンを含む。プローブの光学活性を遮断するのに有用でありうるクエンチャーの非限定的な例は、Black Hole Quencher(BHQ)、Iowa Black FQクエンチャーおよびIowa Black RQクエンチャー、または内部ZENクエンチャーを含む。代替的に、または加えて、プローブまたはクエンチャーは、本開示の方法のコンテキストにおいて有用な、任意の既知のプローブであってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、増幅プローブは二重標識の蛍光プローブである。二重標識プローブは、核酸に結合された、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを含むこともある。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは互いに近接して位置付けられることもある。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーの接近によって、蛍光レポーターの光学活性が遮断されることもある。二重標識プローブは増幅される予定の核酸分子に対して結合することもある。増幅中に、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断されることもある。増幅プローブからの蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを切断すると、蛍光レポーターはその光学活性を回復し、検出を可能にしうる。二重標識の蛍光プローブは、約450ナノメートル(nm)、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはより高い励起波長の最大値、および約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはより高いの発光波長の最大値を有する5’蛍光レポーターを含むこともある。二重標識の蛍光プローブはまた、3’蛍光クエンチャーを含むこともある。蛍光クエンチャーは、約380nmから550nm、390nmから625nm 470nmから560nm 480nmからび580nm、550nmから650nm、550nmから750nm、または620nmから730nmの蛍光の発光波長を消光することもある。
【0105】
いくつかの実施形態では、核酸増幅は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバーを熱サイクルすることにより実施される。熱サイクルは、マイクロ流体デバイスに加熱または冷却を施すことによって、マイクロ流体デバイスの温度を制御することを含むこともある。加熱方法もしくは冷却方法は、抵抗加熱もしくは抵抗冷却、放射加熱もしくは放射冷却、伝導加熱もしくは伝導冷却、対流加熱もしくは対流冷却、またはそれらの任意の組み合わせを含みうる。熱サイクルは、ある継続時間にわたって核酸分子を変性させるほど十分高い温度でマイクロチャンバーをインキュベートし、その後、伸長の継続時間にわたって伸長温度でマイクロチャンバーをインキュベートするサイクルを含むこともある。変性温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に依存して変動することもある。いくつかの実施形態では、変性温度は、約80℃から約110℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、変性温度は、約85℃から約105℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、変性温度は、約90℃から約100℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、変性温度は、約90℃から約98℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、変性温度は、約92℃から約95℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、変性温度は、少なくとも約80℃、少なくとも約81℃、少なくとも約82℃、少なくとも約83℃、少なくとも約84℃、少なくとも約85℃、少なくとも約86℃、少なくとも約87℃、少なくとも約88℃、少なくとも約89℃、少なくとも約90℃、少なくとも約91℃、少なくとも約92℃、少なくとも約93℃、少なくとも約94℃、少なくとも約95℃、少なくとも約96℃、少なくとも約97℃、少なくとも約98℃、少なくとも約99℃、少なくとも約100℃、またはそれより高くてもよい
【0106】
変性のための継続時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に依存して変動することもある。いくつかの実施形態では、変性のための継続時間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または1秒以下であってもよい。代替的な一実施形態では、変性のための継続時間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または1秒であってもよい。
【0107】
伸長温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に依存して変動することもある。いくつかの実施形態では、伸長温度は、約30℃から約80℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、伸長温度は、約35℃から約75℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、伸長温度は、約45℃から約65℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、伸長温度は、約55℃から約65℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、伸長温度は、約40℃から約60℃までであってもよい。いくつかの実施形態では、伸長温度は、少なくとも約35℃、少なくとも約36℃、少なくとも約37℃、少なくとも約38℃、少なくとも約39℃、少なくとも約40℃、少なくとも約41℃、少なくとも約42℃、少なくとも約43℃、少なくとも約44℃、少なくとも約45℃、少なくとも約46℃、少なくとも約47℃、少なくとも約48℃、少なくとも約49℃、少なくとも約50℃、少なくとも約51℃、少なくとも約52℃、少なくとも約53℃、少なくとも約54℃、少なくとも約55℃、少なくとも約56℃、少なくとも約57℃、少なくとも約58℃、少なくとも約61℃、少なくとも約62℃、少なくとも約63℃、少なくとも約64℃、少なくとも約65℃、少なくとも約66℃、少なくとも約67℃、少なくとも約68℃、少なくとも約69℃、少なくとも約70℃、少なくとも約71℃、少なくとも約72℃、少なくとも約73℃、少なくとも約74℃、少なくとも約75℃、少なくとも約76℃、少なくとも約77℃、少なくとも約78℃、少なくとも約79℃、または少なくとも約80℃であってもよい。
【0108】
伸長時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に依存して変動することもある。いくつかの実施形態では、伸長のための継続時間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または1秒以下であってもよい。代替的な一実施形態では、伸長のための継続時間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または1秒であってもよい。
【0109】
核酸増幅は、熱サイクルの多数のサイクルを含むこともある。任意の適切な数のサイクルが実施されうる。いくつかの実施形態では、実施されるサイクルの数は、約5サイクルよりも多い、約10サイクルよりも多い、約15サイクルよりも多い、約20サイクルよりも多い、約30サイクルよりも多い、約40サイクルよりも多い、約50サイクルよりも多い、約60サイクルよりも多い、約70サイクルよりも多い、約80サイクルよりも多い、約90サイクルよりも多い、約100サイクルよりも多い、またはそれ以上であってもよい。実施されるサイクルの数は、検出可能な増幅産物を得るのに必要なサイクルの数に依存することもある。例えば、dPCR中に核酸増幅を検出するために必要なサイクルの数は、約100サイクル以下、約90サイクル以下、約80サイクル以下、約70サイクル以下、約60サイクル以下、約50サイクル以下、約40サイクル以下、約30サイクル以下、約20サイクル以下、約15サイクル以下、約10サイクル以下、約5サイクル以下、またはそれ未満であってもよい。
【0110】
検出可能な量の増幅産物を達成する時間は、特定の核酸試料、使用される試薬、使用される増幅反応、使用される増幅サイクル数、および所望の反応条件に依存して、変動することもある。いくつかの実施形態では、検出可能な量の増幅産物を達成する時間は、約120分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、または5分以下であってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、ランピングレート(すなわちマイクロチャンバーがある温度から別の温度まで移行するレート)は、増幅にとって重要である。例えば、増幅反応により検出可能な量の増幅された産物がもたらされる温度および時間は、ランピングレートに依存して変動することもある。ランピングレートは、増幅中に使用される、時間、温度、または時間および温度の両方に影響を与えることもある。いくつかの実施形態では、ランピングレートはサイクル間で一定である。いくつかの実施形態では、ランピングレートはサイクル間で変動する。ランピングレートは処理されている試料に基づいて調整されることもある。例えば、最適なランピングレートは、ロバストで効率的な増幅方法を提供するために選択されうる。
【0112】
図5は、上記されたマイクロ流体デバイスを用いて利用されるデジタルPCRプロセスを例示する。工程(501)において、試薬は
図3A-
図3Dに示されるように分配される。工程(502)において、試薬は、その試薬に対するマイクロチャンバー中でのPCR反応を実行するために熱サイクルにさらされる。この工程は、例えばフラットブロックサーマルサイクラー(flat block thermal cycler)を使用して実施されることもある。工程(503)において、画像の取得は、どのマイクロチャンバーが成功裡にPCR反応を実行したか判定するために実施される。画像の取得は、例えば、3色プローブ検出ユニットを使用して実施されることもある。工程(504)において、ポアソン統計は、工程(503)において判定されたマイクロチャンバーの計数に適用されて、正のチャンバー(positive chambers)の生の数を核酸濃度に変換する。
【0113】
<核酸試料を分析するためのシステム>
一態様では、本開示は、核酸試料を分析するためにマイクロ流体デバイスを使用するための装置を提供する。その装置は、1つ以上のマイクロ流体デバイスを保持するように構成された移送ステージを含むこともある。マイクロ流体デバイスは、入口および出口を備えるマイクロチャネルと、複数の吸い上げ開口部によりマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバーと、マイクロ流体デバイスをキャップするまたは覆う薄膜と、を含むこともある。その装置は、マイクロ流体デバイスと流体連通する空気圧モジュールを含むこともある。空気圧モジュールは、試薬をマイクロ流体デバイスへと装填し、マイクロチャンバーへとその試薬を分配することもある。その装置は、複数のマイクロチャンバーと熱的連通する熱モジュールを含むこともある。熱モジュールは、マイクロチャンバーの温度を制御し、マイクロチャンバーを熱サイクルすることもある。その装置は、複数のマイクロチャンバーを画像化できる光モジュールを含むこともある。その装置はまた、移送ステージ、空気圧モジュール、熱モジュール、および光モジュールに連結されたコンピュータプロセッサを含むこともある。コンピュータプロセッサは、(i)空気圧モジュールが、試薬をマイクロ流体デバイスへと装填して、その試薬を複数のマイクロチャンバーへと分配するように指示する、(ii)熱モジュールが複数のマイクロチャンバーを熱サイクルするように指示する、および(iii)光モジュールに複数のマイクロチャンバーを画像化するように指示するように、プログラムされる。
【0114】
移送ステージは、マイクロ流体デバイスを入れ(input)、マイクロ流体デバイスを保持し、マイクロ流体デバイスを出す(output)するように構成されることもある。移送ステージは1つ以上の座標において静止していることもある。代替的に、または加えて、移送ステージは、X方向、Y方向、Z方向、またはそれらの任意の組み合わせで動作可能であってもよい。移送ステージは、単一のマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。代替的に、または加えて、移送ステージは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10つ、またはそれより多いマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。
【0115】
空気圧モジュールは、マイクロ流体デバイスの入口および出口と流体連通するように構成されることもある。空気圧モジュールは、多数の入口および多数の出口に接続可能な多数の接続点を有することもある。空気圧モジュールは、マイクロチャンバーの単一のアレイを一度に、またはマイクロチャンバーの多数のアレイを相前後して、充填、再充填、および分配できてもよい。空気圧モジュールはさらに、真空モジュールを含むこともある。空気圧モジュールは、マイクロ流体デバイスに圧上昇をもたらす、またはマイクロ流体デバイスに真空をもたらすこともある。
【0116】
熱モジュールは、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバーと熱的連通するように構成されることもある。熱モジュールは、マイクロチャンバーの単一のアレイの温度を制御するように、またはマイクロチャンバーの多数のアレイの温度の制御するように構成されることもある。熱制御モジュールはマイクロチャンバーの全てのアレイにわたって同じ熱的プログラムを実施する、またはマイクロチャンバーの様々なアレイで様々な熱的プログラムを実施することもある。
【0117】
光モジュールは、多波長の光を放出して、検出するように構成されることもある。発光波長は、使用される指示薬および増幅プローブの励起波長に相当することもある。放出光は、約450nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれらの任意の組み合わせの、最大強度を有する波長を含んでもよい。検出光は、約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれらの任意の組み合わせの、最大強度を有する波長を含んでもよい。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、または4つ以上の光の波長を放出するように構成されることもある。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、または4つ以上の光の波長を検出するように構成されることもある。光の1つの放出された波長は、指示薬分子の励起波長に相当することもある。光の別の放出された波長は、増幅プローブの励起波長に相当することもある。光の1つの検出された波長は、指示薬分子の発光波長に相当することもある。光の別の検出された波長は、マイクロチャンバー内の反応を検出するために使用される、増幅プローブに相当することもある。光モジュールは、マイクロチャンバーのアレイのセクションを画像化するように構成されることもある。代替的に、または加えて、光モジュールは、単一の画像中のマイクロチャンバーのアレイ全体を画像化することもある。
【0118】
図6は、単一のマシンにおいて、
図5のプロセスを実施するためのマシン(600)を例示する。マシン(600)は、空気圧モジュール(601)を含み、その空気圧モジュールは、ポンプおよびマニホールドを含み、かつZ方向で移動させられ、
図3A-
図3Dに記載されるような圧力の印加を実施するように動作可能でありうる。マシン(600)はまた、フラットブロックサーマルサイクラーなどの熱モジュール(602)を含み、マイクロ流体デバイスを熱的にサイクルさせ、それによって、ポリメラーゼ連鎖反応を進ませる。マシン(600)はさらに、epi-蛍光性の光モジュールなどの、マイクロ流体デバイス中のマイクロチャンバーが、PCR反応を成功裡に実行したかを光学的に判定することができる、光モジュール(603)を含む。光モジュール(603)は、プロセッサ(604)にこの情報を供給し、このプロセッサ(604)は、成功したマイクロチャンバーの生の計数を核酸濃度に変換するために、ポアソン統計を使用する。移送ステージ(605)は、様々なモジュールの間で所与のマイクロ流体デバイスを移動させ、かつ多数のマイクロ流体デバイスを同時に扱うために使用されてもよい。単一のマシンへのこの機能の組み込みに組み合わせられる、上記のマイクロ流体デバイスは、dPCRの他の実施よりも、dPCRに関するコスト、ワークフローの複雑さ、および空間要求を削減する。
【0119】
本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されることはない。実際に、本明細書に記載されたものだけではなく、本開示の他の様々な実施形態および変形形態は、前述の記載および添付の図面からの当業者に明らかとなるだろう。
【0120】
例えば、dPCRの応用のコンテキストにおいて記載されたが、ガスまたは他の流体を介して単離される液体で充填された、多数の隔離されたマイクロチャンバーを必要としうる他のマイクロ流体デバイスは、薄い熱可塑性プラスチック膜の使用から利益を得て、ガス抜きがガスファウリングを避けることを可能する一方で、製造可能性およびコストに関しての利益も提供する。PCRとは別に、ループ介在等温増幅(loop mediated isothermal amplification)などの他の核酸増幅方法は、本開示の実施形態の特定の核酸配列のデジタル検出を実施するのに適用されうる。マイクロチャンバーは単一の細胞を単位するためにも使用されることもでき、吸い上げ開口部は、単離される細胞の直径に近くなるように設計される。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部が血液細胞の大きさよりもはるかに小さいとき、本開示の実施形態は、全血から血漿を分離させるために使用されうる。
【0121】
<核酸試料を分析するためのコンピュータシステム>
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされるコンピュータ制御システムを提供する。
図7は、試料の分配、増幅、および検出を含む、核酸試料を処理および分析するために、プログラムされうる、またはそうでなければ構成されうるコンピュータシステム(701)を示す。コンピュータシステム(701)は、本開示の方法およびシステムの様々な態様を調節することができる。コンピュータシステム(701)は、ユーザーの電子デバイス、またはその電子デバイスに対して遠隔的に位置することができるコンピュータシステムになりうる。電子デバイスはモバイル電子デバイスになりうる。
【0122】
コンピュータシステム(701)は、単一コアまたはマルチコアプロセッサ、または並列処理のための複数のプロセッサとすることができる中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」)(705)を含む。コンピュータシステム(701)は、メモリまたは記憶場所(710)(例えばランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置(715)(例えばハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(720)(例えばネットワークアダプタ)、およびキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、および/または電子ディスプレイアダプターなどの周辺機器(725)も含む。メモリ(710)、記憶装置(715)、インターフェース(720)、および周辺機器(725)は、マザーボードなどの通信バス(実線)を通じて、CPU(705)と通信する。記憶装置(715)は、データを保存するためのデータストレージユニット(またはデータリポジトリ)であってもよい。コンピュータシステム(701)は、通信インターフェース(720)の助けを借りてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)(730)に動作可能に連結される。ネットワーク(730)は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信することができるイントラネットおよび/もしくはエクストラネットでありうる。ネットワーク(730)は、場合によっては、電気通信および/またはデータネットワークでありうる。ネットワーク(730)は、クラウドコンピューティングのような分散コンピューティングを可能にすることができる1つ以上のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク(730)は、場合によっては、コンピュータシステム(701)の助けを借りて、コンピュータシステム(701)に連結されたデバイスがクライアントまたはサーバーとして動作することを可能にしうるピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0123】
CPU(705)は、プログラムまたはソフトウェア中で具体化されうる、マシン読み取り可能な命令のシーケンスを実行できる。その命令は、メモリ(710)などの記憶場所に保存されることもある。その命令はCPU(705)を対象にでき、本開示の方法を実行するCPU(705)を引き続きプログラムする、またはそうでなければ設定する。CPU(705)によって実行された動作の例は、フェッチ、デコード、実行、ライトバックを含みうる。
【0124】
CPU(705)は集積回路などの回路の一部でありうる。システム(701)の1つ以上の他の構成要素は、回路に含まれうる。場合によっては、その回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0125】
記憶装置(715)は、ドライバー、ライブラリ、および保存されたプログラムなどのファイルを記憶できる。記憶装置(715)は、ユーザーデータ、例えばユーザーの好み、およびユーザープログラムを記憶できる。コンピュータシステム(701)は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを通じてコンピュータシステム(701)と通信するリモートサーバー上に位置付けられるなど、コンピュータシステム(701)の外部にある、1つ以上のさらなるデータ記憶装置を含みうる。
【0126】
コンピュータシステム(701)は、ネットワーク(730)を介して1つ以上の遠隔コンピュータシステムと通信できる。例えば、コンピュータシステム(701)は、ユーザー(例えばサービス提供会社)のリモートコンピュータシステムと通信できる。リモートコンピュータシステムの例は、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートPCまたはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、アンドロイド対応の装置、Blackberry(登録商標))、または携帯情報端末を含む。ユーザーは、ネットワーク(730)を介してコンピュータシステム(701)にアクセスできる。
【0127】
本明細書に記載されるような方法は、コンピュータシステム(701)の電子記憶場所上に、例えば、メモリ(710)または電子記憶装置(715)などに記憶されたマシン(例えば、コンピュータ処理装置)実行可能なコードとして実行されうる。いくつかの実施形態では、マシン実行可能なまたはマシン読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形で提供されうる。使用中に、コードはプロセッサ(705)によって実行することができる。場合によっては、コードは、プロセッサー(705)によって、記憶装置(715)から検索され、容易なアクセスのためのメモリ(710)上に記憶されうる。いくつかの状況では、電子記憶装置(715)を排除することができ、マシン実行可能命令はメモリ(710)に記憶される。
【0128】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有するマシンと共に使用するために予めコンパイルかつ構成されることができるか、または実行時にコンパイルされることもできる。コードは、予めコンパイルされた様式か、コンパイルされたままの様式で、コードを実行可能なように選択できる、プログラミング言語で提供されうる。
【0129】
一態様では、本開示は、1つ以上のコンピュータプロセッサにより実行されると、核酸試料を増幅して定量化するために、マイクロ流体デバイスを形成するための方法を実施する、マシン実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。該方法は:少なくとも1つのマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部を含むマイクロ流体構造を作製するために、熱可塑性プラスチックを射出成形する工程であって、ここで複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルに接続される、工程と;少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を形成する工程であって、ここで少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口は、少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する、工程と;マイクロ流体構造をキャップするために熱可塑性の薄膜を適用する工程であって、ここで熱可塑性の薄膜は、圧力差が熱可塑性の薄膜にわたって適用されると、少なくとも部分的にガス透過性である。
【0130】
一態様では、本開示は、1つ以上のコンピュータプロセッサにより実行されると、核酸試料を分析して、定量化するための方法を実施する、マシン実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。該方法は:少なくとも1つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程であって、ここで、少なくとも1つのマイクロチャネルは少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、そしてここで、マイクロ流体デバイスはさらに、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバーと、マイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部をキャップするように、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された熱可塑性の薄膜とを含む、工程と;少なくとも1つの入口に、または少なくとも1つの出口に試薬を提供する工程と;試薬とマイクロ流体デバイスとの間に第1の圧力差を適用することより、マイクロ流体デバイスを充填する工程であって、ここで、第1の圧力差はマイクロ流体デバイスへと試薬を流れさせる、工程と;試薬を複数のマイクロチャンバーへと移動させ、かつ複数のマイクロチャンバー、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルをキャップするまたは覆う熱可塑性の薄膜を通過するように、複数のマイクロチャンバー内のガスを押し進めるために、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間に第2の圧力差を適用する工程であって、ここで、第2の圧力差は第1の圧力差よりも大きい、工程と;少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口との間に第3の圧力差を適用し、流体をマイクロチャンバーへと導入することなく、その流体をマイクロチャネルへと導入する工程であって、ここで、第3の圧力差は第2の圧力差よりも小さい、工程と;を含む。
【0131】
コンピュータシステム(701)などの本明細書中に提供されるシステムおよび方法の態様は、プログラミングにおいて具体化されうる。技術の様々な態様は、典型的にマシン(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または一種のマシン可読媒体において具体化される関連データの形態で「産物」または「製品」として考えられうる。マシン実行可能コードは、メモリ(例えば、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶装置に記憶することができる。「記憶」型の媒体は、ソフトウェアプログラミングに関するいかなる時にも非一時的な記憶を提供しうる、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、またはそれらの関連するモジュールのいずれかまたは全てを含むことができる。ソフトウェアの全てまたは一部は、インターネットまたは様々な他の通信ネットワークを介して時々通信されることもある。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピューターからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアの装填を可能にしうる。したがって、ソフトウェア要素を保持しうる別のタイプの媒体には、ローカルデバイス間の有線および光陸上通信線ネットワーク、および様々なエアリンクを介して使用されるような、光、電気、および電磁波が含まれる。有線または無線リンク、光リンクなどの、このような波を運ぶ物理的要素もまた、ソフトウェアを保持する媒体とみなしてもよい。本明細書に使用されるように、非一時的な有形「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータまたはマシンの「可読媒体」などの用語は、実行のためのプロセッサに命令を提供する際に関与する任意の媒体を指す。
【0132】
従って、コンピュータ実行可能コードなどのマシン可読媒体は、有形ストレージ媒体、搬送波媒体または物理的伝送媒体を含むが、これに限定されない、多くの形態をとってもよい。不揮発性ストレージ媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用されることもあるような、任意のコンピュータ(複数可)などにおける、記憶装置のいずれかなどの光学ディスクまたは磁気ディスクを含む。揮発性ストレージ媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリのような動的メモリを含む。実体的な伝送媒体は、同軸ケーブル、すなわち銅線および光ファイバーを含んでおり、コンピュータシステム内でバスを含むワイヤーが挙げられる。搬送波送信媒体は、無線周波(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成されたものなどの、電気信号または電磁気信号、あるいは音波または光波の形態をとりうる。したがって、コンピュータ可読媒体の共通の形式は、例えば:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、他の光学媒体、パンチカード、紙テープ(paper tame)、穴のパターンを有する他の物理的な記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を輸送する搬送波、そのような搬送波を伝達するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングのコードおよび/もしくはデータを読み取りうる他の媒体を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、実行のためのプロセッサに1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを搬送する際に関係しうる。
【0133】
コンピュータシステム(701)は、例えば、上皮組織の深さプロファイルを提供するのためのユーザーインターフェース(UI)(740)を含む電子ディスプレイ(735)を含むか、またはそれと通信しうる。UIの例は、限定することなく、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0134】
本開示の方法およびシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実施することができる。アルゴリズムは、中央処理装置(705)により実行されると、ソフトウェアによって実施されうる。アルゴリズムは、例えば、本明細書において提供されるシステムまたは実施の方法を調節できる。
【0135】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に示され記述された一方、そのような実施形態が一例としてしか提供されていないことは当業者にとって明白だろう。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されることもあることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物が、それらによって含まれることが意図されている。
【0136】
<実施例1:試薬の分配の実証>
試薬の分配を、標準的なスライドガラスの寸法を使用して組み立てられたマイクロ流体デバイスを使用して実証する。マイクロ流体デバイスの合計寸法は、幅1インチ、長さ3インチ、および厚さ0.6インチである。そのデバイスは、4つの異なるマイクロチャンバーアレイの設計、および全部で8つの異なるマイクロチャンバーのアレイを含む。
図8のAは、8ユニットのデバイス、および4つのアレイの設計のうちの1つの拡大斜視図を示す。マイクロ流体デバイスを、シクロオレフィンポリマー(COP)(Zeonor 790R(Zeon Chemicals, Japan))から成型し、そして100μmのCOP薄膜、Zeonox ZF14(Zeon Chemicals, Japan)を熱接合することで密閉した。示され、拡大されたマイクロ流体のセグメントは、吸い上げ開口部によりマイクロチャンバーに接続される、曲がりくねったマイクロチャネルを有する。マイクロチャンバーは格子構成である。マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルの深さは40μmであり、吸い上げ開口部の深さは10μmである。各隔離されたマイクロ流体のセグメントは、入口および出口のチャネルを有する。膜をマイクロ流体デバイスの基部に熱的に結合する前に、入口および出口のチャネルに、機械的に穴をあける。入口および出口のチャネルの直径は、1.6mmである。
【0137】
図8のBは、試薬の装填、マイクロチャンバーの再充填、および分配の蛍光画像を示す。マイクロ流体デバイスの装填前に2マイクロリットル(μL)の4キロダルトン(kDa)のフルオレセイン結合デキストラン(fluorescein conjugated dextran)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を入口へと分注する。その後、マイクロ流体デバイスを空気圧制御装置と接触させる。空気圧制御装置は、3分間、入口に4psiの圧力を印加することにより、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネルを装填する。マイクロチャンバーは、20分間、10psiまで、入口および出口の両方を加圧することにより充填される。その後、試薬は、マイクロ流体デバイスの入口から4psiで空気を流すことにより分配されて、マイクロチャネルから試薬が取り除かれる。
【0138】
<実施例2:dPCRのための単一の機器のワークフロー>
マイクロ流体デバイスにおける核酸の増幅および定量化のための方法は、単一の機器で実施されることもある。その機器によって、試薬の分配、熱サイクル、画像の取得、およびデータの分析が可能であってもよい。
図9は、単一の機器のワークフローが可能なプロトタイプの機器を示す。その機器は、一度に最大で4つのデバイスを収容し、そして同時の画像の取得および熱サイクルが可能となるように設計されている。その機器は、試薬を分配するための空気圧モジュール、温度を制御して熱サイクルするための熱モジュール、画像化するための光モジュール、および走査モジュールを含む。光モジュールは、2つの蛍光イメージング機能を有し、そしてFAMおよびROXのフルオロフォアの発光波長にそれぞれ相当する、およそ520nmおよび600nmの蛍光発光を検出することができる。光モジュールは、25mm×25mmの視野、および0.14の開口数(NA)を有する。
【0139】
単一の機器のワークフローは、レポーターとしてTaqManプローブを活用する、確立されたqPCRアッセイを使用して試験されうる。簡潔に言えば、核酸試料はPCR試薬と共に混合される。PCR試薬はフォワードプライマー、リバースプライマー、TaqManプローブ、およびROX指示薬を含む。フォワードプライマーの配列は、5’-GCC TCA ATA AAG CTT GCC TTG A-3’である。リバースプライマーの配列は、5’-GGG GCG CAC TGC TAG AGA-3’である。TaqManプローブの配列は、5’-[FAM]-CCA GAG TCA CAC AAC AGA CGG GCACA-[BHQ1]-3’である。核酸試料およびPCR試薬は、上述のプロトコル後に、マイクロ流体デバイス内に装填され分配される。PCR増幅は、マイクロチャンバーの温度を95℃まで上げ、そして10分間その温度を保持し、続いて、マイクロチャンバーの温度を95℃から59℃まで、毎秒2.4℃の速さで下げて、1分間59℃で保持した後、温度を95℃に戻すサイクルを40回行うことによって実施される。
図10のA-Dは、区画当たりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む試料、およびPCR増幅後に区画当たり核酸鋳型のコピーがゼロの区画(鋳型がない対照、すなわちNTC)の蛍光画像と、区画当たりおよそ1つの核酸コピーを含む試料、およびPCR増幅後のNTC区画の蛍光強度プロットと、を示す。
図10のAは、核酸鋳型を含まない、分配された試料の蛍光画像を示し、各灰色のドットは、PCR試薬を含む単一のマイクロチャンバーを表わす。画像は、およそ575nmの光を用いて各マイクロチャンバー内でROX指示薬を励起させ、発光スペクトルを画像化することによって撮られ、そのROX指示薬は、および600nmで最大発光を有する。
図10のBは、PCR増幅後の、区画当たりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む分配された試料を示す。PCR増幅後、イメージングは、FAMプローブからのROX指示薬および放射の両方を含むROX指示薬およびマイクロチャンバーを含むマイクロチャンバーを示す。FAMプローブは、およそ495nmの励起波長、およびおよそ520nmの発光波長の最大値を有する。各々のマイクロチャンバーは、ROX指示薬、FAMプローブ、およびBHQ-1クエンチャーを含む。
図10のAと同様に、各灰色のドットは、核酸鋳型を持たない分配された試料を含むマイクロチャンバーを表わす。白いドットは、成功裡に増幅された核酸試料を含むマイクロチャンバーを表わす。PCR増幅が成功すると、FAMフルオロフォアおよびBHQ-1クエンチャーを、TaqManプローブから切断してもよく、結果として検出可能な蛍光シグナルがもたらされる。
図10のCおよびDは、分配され増幅されたマイクロ流体デバイスの各マイクロチャンバーに関するROX蛍光強度に応じる、FAM蛍光強度の2次元散布図をそれぞれ示す。
図10のCは、区画当たり核酸鋳型がゼロである試料を示しており、様々なROX蛍光強度にわたって優勢的に一定なFAM蛍光強度が結果としてもたらされる。
図10のDは、区画当たりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む試料を示しており、区画内の増幅信号の存在が原因で、ROX蛍光強度に応じて変動するFAM蛍光強度が結果としてもたらされる。
【0140】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に示され記述された一方、そのような実施形態が一例としてしか提供されていないことは当業者にとって明白だろう。本発明が本明細書内で提供された特定の実施例により限定されることは、意図されていない。本発明は前述の明細書を参照して記載されている一方、本明細書における実施形態の記載および例示は限定的な意味で解釈されることは意図されていない。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到されるであろう。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で述べられた特定の描写、構成、または相対的比率に限定されないことが理解されるだろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されることもあることを理解されたい。したがって、本発明は、任意のそのような代替案、修正、変形、または同等物にも及ぶことが考えられる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物が、それらによって含まれることが意図されている。
【配列表】