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  • 特許-運動能力向上用組成物 図1
  • 特許-運動能力向上用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】運動能力向上用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240729BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240729BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240729BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/7028
A61P1/00
A23K10/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021511368
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011263
(87)【国際公開番号】W WO2020203196
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019067506
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】森田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】狩野 智恵
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲平
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347978(JP,A)
【文献】CORNISH, S.M. et al.,A randomized controlled trial ofthe effects of flaxseed lignan complex on metabolic syndrome composite scoreand bone mineral in older adults.,Appl Physiol Nutr Metab.,2009年,34(2),pp.89-98
【文献】PRASAD K.M.D. et al.,Antihypertensive Activity of Secoisolariciresinol Diglucoside (SDG) Isolated from Flaxseed: Role of Guanylate Cyclase,International Journal of Angiology,2004年,13,pp. 7-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K50/10-50/90,
A23L33/00-33/29,
A61K9/00-36/9068,47/00-47/69,
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマニリグナンを有効成分として含む、運動能力向上用組成物であって、
運動能力向上が、体力向上、抗疲労、及び、疲労感軽減から選択される少なくとも1つの作用を含む組成物。
【請求項2】
アマニリグナンを有効成分として含む、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖用組成物。
【請求項3】
経口摂取用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
飲食品用添加剤、医薬組成物、飼料組成物、又は飼料用添加剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
1日あたり、0.01mg/kg体重から200mg/kg体重の量のアマニリグナンが投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも7日間投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動能力を向上するための経口摂取可能な組成物、及び運動能力の向上に寄与しうるバクテロイデス・ユニフォルミスを増殖するための経口摂取可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アマ(学名:Linum usitatissimum)の種子である、「アマニ(亜麻仁)」には、ポリフェノールの一種「リグナン」が豊富に含まれており、アマニから得られるリグナンは、一般に「アマニリグナン」と呼ばれている。より詳しくは、アマニリグナンはアマニに含まれている、セコイソラリシレシノールジグリコシド(SDG)、その代謝物であるエンテロジオールおよびエンテロラクトン、マタイレシノール、ピノレシノール、イソラリシレシノール等の一連のリグナン化合物である。特許文献1には、このアマニリグナンとキサントフィルとを合わせて使用することで、末梢血行障害改善効果を有しうることが記載されている。また、特許文献2には、アマニリグナンと、中枢神経性抗肥満薬として知られるマジンドール(Mazindol)とを組み合わせて使用することで抗肥満作用を促進しうることが記載されている。また、特許文献3には、アマニリグナンがエストロゲン様物質として記載されている。代表的なエストロゲン様物質としてイソフラボン類が挙げられるが、特許文献4には4’,7-ジメトキシイソフラボンを摂取したマウスのトレッドミルの走行距離が増大した事が開示されている。しかしながら、アマニ抽出物やアマニ抽出物に含まれるアマニリグナンの体力向上作用を開示した文献は確認されていない。非特許文献1は、アマニリグナン中のSDGが、in vitroの系において、腸内細菌として知られるバクテロイデス・ユニフォルスによって、効率よくSECO(セコイソラリシレシノール)に変換されうる可能性を示唆している。しかしながら、当該文献はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖について何ら言及していない。
【0003】
また、健康の保持増進に寄与しうる健康食品全般に注目が集まっており、このような風潮を受けて、日本国においても、一定の規格や基準を満たす食品に対して、保健機能を表示できることになっている。また、昨今の健康ブームもあり、運動能力の向上に寄与しうる健康食品の需要は高い。通常、労働や運動等の活動を行う場合には、少なくともこれらの活動に耐え得るだけの体力を要する。一方、これらの活動により身体には疲労が蓄積し、身体の機能は低下する。労働や運動等の活動を日常的に行うためには、体力の維持/向上や、疲労の予防/回復が不可欠であるといえる。労働や運動等の活動を行うための体力には、筋力、持久力、柔軟性等の行動の基礎となる身体的能力が含まれる。このような背景から、これまでに、持久力を増強し、疲労予防若しくは疲労回復、又は滋養強壮のための組成物が開発されているが、さらなる新規の健康食品の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-239619号公報
【文献】特開2015-199687号公報
【文献】再表2014-050717号公報
【文献】特表2009-537582号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Applied Microbiology 2012 (113), 1352-1361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、運動能力の向上に寄与しうる、新規の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バクテロイデス・ユニフォルミスの摂取が、持続的に体力向上作用及び/又は抗疲労作用を奏するとの知見を得ている(国際公開第2019/069735号公報(PCT/JP2018/035295)(本国際出願の基礎出願(特願2019-067,505)の出願時には未公開であった国際公開公報である)参照)。そして、本発明者らは、このような知見のもと、腸内フローラを構成する菌の1種として知られる、バクテロイデス・ユニフォルミスが、体力向上作用及び/又は抗疲労作用をもたらす一つの要因になるのではないかと考えた。そこで、鋭意研究を重ねた結果、アマニリグナンを摂取したヒトの試験群において、予想外にも腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの数を増加させることが確認され、また運動能力が向上することが確認された。そして、このような研究の結果、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔7〕のように構成される。
〔1〕アマニリグナンを有効成分として含む、運動能力向上用組成物。
〔2〕運動能力向上が、体力向上、抗疲労、及び、疲労感軽減から選択される少なくとも1つの作用を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕アマニリグナンを有効成分として含む、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖用組成物。
〔4〕経口摂取用である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕飲食品用添加剤、医薬組成物、飼料組成物、又は飼料用添加剤である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕1日あたり、0.01mgmg/kg体重から200mg/kg体重の量のアマニリグナンが投与される、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔7〕少なくとも7日間投与される、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、運動能力の向上に寄与する、新規の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験食品の摂取前(0週)、摂取8週後における、被験者の腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの数の変化を示す図である。摂取前の当該菌数と、摂取8週後の当該菌数との間の統計的検討は、ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test)によって行った。
図2】被験者に対し、試験食品の摂取前、摂取8週後に、エアロバイク(登録商標)による運動負荷を行い、負荷前、負荷直後、負荷30分後に疲労に関して、VAS(Visual Analogue Scale)アンケートを実施したうちの負荷30分後の全身疲労感をまとめた図である。全身疲労感についてのプラセボ群とアマニリグナン摂取群との有意差検定は、スチューデント(student)のt検定で行った。また、アマニリグナン摂取前とアマニリグナン摂取8週後の比較には、対応のあるt検定(paired t-test)で有意差を検討した。
図3】被験者に対し、試験食品の摂取前、摂取9週後において、運動負荷時の最大酸素摂取量を測定した結果である。アマニリグナン摂取前とアマニリグナン摂取9週後の比較には、対応のあるt検定(paired t-test)で有意差を検討した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<運動能力向上用組成物>
本発明は、アマニリグナンを含む、運動能力向上作用を有する組成物に関する。本発明において「運動能力向上作用」とは、「体力向上作用」、「疲労感軽減」、「抗疲労」、及び「疲労耐性向上作用」から選択される少なくとも1つの作用をいう。本発明におけるアマニリグナンは、アマニから得られるリグナン全般を意味する。アマニリグナンには種々の構造のリグナンが含まれるが、主要なリグナンはセコイソラリシレシノールジグリコシド(SDG)とその代謝物であるエンテロジオール、エンテロラクトン、マタイレシノール、ピノレシノール、及びイソラリシレシノール等の一連のリグナン化合物である。アマニリグナンはアマニ抽出物に含まれており、当該抽出物を本発明に使用してもよい。アマニ抽出物は、アマニまたはアマニ粕から、圧搾や溶媒抽出などの方法により得た搾汁や抽出液を濃縮して得ることができる。抽出には、水やメタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒を用いることができる。また、必要に応じて精製を行う場合もある。本発明においては、アマニリグナンを有効成分として用いた組成物で、運動能力を有意に向上させることができる。ここで、アマニリグナンの主要成分はSDGであるため、本明細書における組成物中の「アマニリグナン」の量については、便宜上セコイソラリシレシノールジグリコシド(SDG)の量と同義として定義されうるが、この定義によって、組成物中に、アマニリグナンに含まれるSDG以外の微量のリグナンが含有されないことが意図されるわけではない。
【0012】
本発明において「体力」とは、労働や運動等の活動を行うことを可能とする行動の基礎となる身体的能力に関し、特に、労働や運動等の活動に耐えることを可能とし、継続してそれらを行うことを可能とする身体の力を意味する。より好ましくは、「体力」とは、全身持久力、及び有酸素運動を継続して行うことを可能とする有酸素運動時の持久力のうちの一以上を意味する。「全身持久力」とは、一般的にスタミナとも呼ばれる、長時間身体を動かすことを可能とする能力をいう。
【0013】
本発明において「体力向上」とは、体力の向上及び回復を促進することのうちの一以上を意味し、特に、労働や運動等の活動に耐え、継続してそれらを行うことを可能とする身体の力を向上すること、及び当該身体の力の回復を促進することのうちの一以上を意味し、より好ましくは、全身持久力及び有酸素運動時の持久力のうちの一以上を向上すること、ならびに全身持久力及び有酸素運動時の持久力のうちの一以上の回復を促進することからなる群から選択される一以上を意味する。全身持久力及び有酸素運動時の持久力の指標としては、限定されるものではないが、例えば最大酸素摂取量やスピンサイクルテストの結果などを用いることができる。
【0014】
本発明において「疲労」とは、労働や運動等の活動が継続して行われた結果として、身体の機能が低下することを意味する。
本発明において「疲労感」とは、疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合不快感と活動意欲の低下が認められる。様々な疾病の際にみられる全身倦怠感、だるさ、脱力感は「疲労感」とほぼ同義に用いられている。
【0015】
本発明において「抗疲労」及び「疲労耐性を向上する」とは、同義であり、疲労を軽減すること、疲労の回復を促進すること、及び疲労を予防することのうちの一以上を意味し、好ましくは、労働や運動等の活動が継続して行われた結果として生じる身体機能の低下を軽減すること、当該身体機能の低下の回復を促進すること、又は当該身体機能の低下を予防して当該身体機能の低下が生じにくい状態とすることを意味する。限定されるものではないが、「抗疲労」及び「疲労耐性向上作用」は、例えばVASアンケート、スピンサイクルテスト、最大酸素摂取量などによって評価されうる。
本発明において「疲労感を軽減する」とは、疲労が存在することを自覚する感覚を軽減すること、労働や運動等の活動が継続して行われた結果として生じる不快感及び/又は活動意欲の低下を軽減すること、当該不快感及び/又は活動意欲の低下の回復を促進すると、及び、当該不快感及び/又は活動意欲の低下を予防することのうちの一以上を意味する。限定されるものではないが、「疲労感軽減作用」は、例えばVASアンケートなどによって評価されうる。
【0016】
本発明の組成物に含まれるアマニリグナンの量は、当該組成物の剤型や形態に応じて変化し得るが、組成物に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上とすることができる。例えば、本発明の組成物を全量250mgの錠剤の態様に成型した場合、1錠剤中に含まれるアマニリグナンの量は、2.5mg以上、好ましくは12.5mg以上、より好ましくは25mg以上とすることができる。
【0017】
本発明の組成物を投与又は摂取する対象(被験体)は、体力向上、疲労感軽減、及び抗疲労の効果のうち一以上を必要とする哺乳動物(例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジー等)、家畜(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等)、ペット(イヌ、ネコ等)、実験動物(マウス、ラット等))、鳥類、爬虫類等が挙げられるが、好ましくは哺乳動物であり、特に好ましくはヒトである。
そして、本発明においては、運動習慣を持たない被験体(例えばヒト)だけではなく、一定の運動習慣を有するヒトにおいても、運動能力の向上作用をもたらしうる。例えば、被験体は、週1回以上、5METs以上の強度の運動を30分間以上行うヒトでありうる。このような適度な運動習慣を有する被験体に対しても、運動能力を向上することができる。また、ウォーキング、ジョギング、ランニング、マラソン、水泳、サイクリング、エアロビクス、テニス、サッカー、スキー、及びスケート等の中程度から強度の高い運動時及び/又は運動後の疲労耐性を向上させうる、かつ/或いは疲労感を軽減させうるため、疲労蓄積も抑えうるものである。なお、METs(metabolic equivalent of task)は、運動強度の指標であり、1METは酸素摂取量3.5ml/体重kg/分に等しく、安静時に身体が機能するのに必要な酸素需要量である。
【0018】
本発明の組成物の投与量又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与経路、投与・摂取回数、体力や疲労のうち一以上の程度等の要因に応じて変化し得、任意の投与量又は摂取量を採用し得る。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、アマニリグナンの摂取量は1日当たり0.01mg/kg体重以上、好ましくは0.1mg/kg体重、より好ましくは1mg/kg体重以上であり、また200mg/kg体重以下、好ましくは50mg/kg体重以下、より好ましくは10mg/kg体重以下、から選択される量を1回又は複数回(例えば、2~5回、好ましくは2~3回)に分けて投与又は摂取することができる。
【0019】
本発明の組成物は、微量かつ短期間で効果を奏することができるが、長期間にわたって投与又は摂取することで、より高い効果を得られる傾向にある。本発明の組成物は、少なくとも7日以上投与又は摂取することにより、運動能力向上作用が確認されうるが、例えば、本発明の組成物を、上記用法用量にしたがい、14日以上、1か月以上、2か月以上、6ヶ月以上、1年以上、又はそれ以上の期間にわたって継続して投与又は摂取することがより好ましい。
【0020】
本発明の組成物は、運動能力向上作用を有する。具体的には、本発明の組成物は、投与又は摂取された対象において、投与又は摂取されない場合と比べて、体力を向上及び回復することのうちの一以上、特に労働や運動に耐え、継続してそれらを行うことを可能とする身体の力を向上すること、及び当該身体の力の回復を促進することのうちの一以上、より好ましくは、全身持久力や有酸素運動時の持久力のうちの一以上を向上すること、全身持久力及び有酸素運動時の持久力のうちの一以上の回復を促進することのうちの一以上の作用をもたらすことができる。また、疲労を軽減すること、疲労の回復を促進すること、及び疲労を予防することのうちの一以上、好ましくは労働や運動等の活動が継続して行われた結果として生じる身体機能の低下を軽減すること、当該身体機能の低下の回復を促進すること、及び当該身体機能の低下を予防して当該身体機能の低下が生じにくい状態とすることのうちの一以上の作用をもたらすことができる。さらに、疲労感を軽減すること、及び疲労が存在することを自覚する感覚を軽減することのうちの一以上、好ましくは労働や運動等の活動が継続して行われた結果として生じる不快感及び/又は活動意欲の低下を軽減すること、当該不快感及び/又は活動意欲の低下の回復を促進すること、及び当該不快感及び/又は活動意欲の低下を予防することのうちの一以上の作用をもたらすことができる。これらの作用に基づいて、本発明の組成物は、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労等の場合における栄養補給等に効能・効果を有する。
【0021】
<腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖用組成物>
本発明は、アマニリグナンを含む、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスを増殖させるための組成物にも関する。アマニリグナンを摂取又は投与した被験体は、摂取前に比べて、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスが有意に増加する。そして、アマニリグナンを摂取又は投与した被験体は、運動能力が向上する傾向にある。したがって、本発明の組成物の摂取又は投与によって、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの数が増加することが、運動能力を向上させることができる一つの理由として考えられる。
ここで、腸管内菌叢(腸内フローラ)は、きわめて複雑であり、絶妙な菌組成バランスで成り立っているため、バクテロイデス・ユニフォルミス単体を、in vitroで増殖しうる系を確立したとしても、それを単純にそのまま腸管内菌叢におけるバクテロイデス・ユニフォルミスに援用できるとはいえない。本発明に係る組成物は、哺乳動物の体内に摂取又は投与された場合に、実際に有意に哺乳動物の腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの数を増やすことができることが確認されている。
【0022】
本発明における「バクテロイデス・ユニフォルミス」は公知であり、バージーズ・マニュアル・オブ・バクテリオロジーVol.4(1989)等に記載される公知の菌学的性質に基づいて特徴付けることができる。バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)は、0.8×1.5μm程度の大きさを有し、芽胞を作らず、運動性を有さない嫌気性グラム陰性桿菌である。 バクテロイデス・ユニフォルミスは、ヒトをはじめとする多くの哺乳動物の腸内に通常存在する真性細菌である。
本発明において増殖させうる「バクテロイデス・ユニフォルミス」は、哺乳動物(例えばヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット等)、好ましくはヒトの腸管内の菌株である。
【0023】
本発明の組成物は、バクテロイデス・ユニフォルミスに分類される任意の菌株を増やすことができる。増やす対象となるバクテロイデス・ユニフォルミスは、本発明の組成物の摂取対象の腸管内に存在するバクテロイデス・ユニフォルミス株でもよいし、摂取対象が外部から摂取したバクテロイデス・ユニフォルミス株でもよい。外部から摂取するバクテロイデス・ユニフォルミス株としては、バクテロイデス・ユニフォルミス株であれば特に限定されないが、例えばATCC8492株、CCUG4942株、CIP103695株、DSM6597株、NCTC13054株、JCM5828株、CP3585株及びCP3586株等が挙げられる。好ましくは、JCM5828株、CP3585株及びCP3586株である。JCM5828株は、理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(〒305-0074茨城県つくば市高野台3-1-1)に登録・保存されている基準株である。CP3585株及びCP3586株は、2017年8月25日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8122号室)に受託番号NITEBP-02536及びNITEBP-02537として国際寄託されている。
【0024】
腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスは、公知の手法に準じて単離して確認することができる(PaolaGauffinCanoetal,PLoSOne.July2012,Volume7,Issue7,e41079)。すなわち、哺乳動物の糞便、糞便物、便を適当な溶媒中に希釈して、プレート培地に播種し、嫌気条件下にて培養を行い、培地に出現したコロニーより釣菌する。培地は下記に詳述するものを利用することができるが、単離の効率性からバクテロイデスを鑑別・選別することが可能な選択分離培地を用いることが好ましい(Jap.J.vet.Sci.,36,93-98(1974))。得られた菌について、グラム染色と検鏡によりグラム陰性桿菌であることを確認した後、選択された菌について、16SrRNA遺伝子の塩基配列に基づく分析を行うことにより、バクテロイデス・ユニフォルミスを同定・クローニングすることができる。バクテロイデス・ユニフォルミスの16SrRNA遺伝子の塩基配列は公知であり、例えば、GenBank等の公知のデータベースに開示されており、NR_040866、AB050110、AB510711、L16486として登録されている。16SrRNA遺伝子の分析に際しては、これらの配列情報を利用することができる。16SrRNA遺伝子の分析・同定は、定量的PCR法、DGGE/TGGE法、FISH法、16SrDNAクローニングライブラリー法、T-RFLP法、FISH-FCM法、塩基配列決定法等の公知の手法に基づいて行うことができる(生化学.第80巻.第5号.421-425.2008年;JNutr.2004Feb;134(2):465-72.;Appl.Environ.Microbiol.64.3336-3345.1998;Appl.Environ.Microbiol.,65,4799-4807,1999;Appl.Environ.Microbiol.,62,2273-2278,1996;Appl.Environ.Microbiol.,64,3854-3859,1998)。
【0025】
例えば、定量的PCR法によれば、バクテロイデス・ユニフォルミスの16SrRNA遺伝子の公知の塩基配列情報に基づいて、当該菌に特異的なプライマーを作製する。選択された菌より抽出されたDNAを鋳型として、当該プライマーを用いてPCR反応を行い、意図されたサイズのPCR増幅産物の有無に基づいて当該菌がバクテロイデス・ユニフォルミスであるか否かを判断することができる。特異的なプライマーの設計やPCR条件の決定は、定法に従って行うことができる(バイオ実験イラストレイテッド3本当にふえるPCR:細胞工学別紙目で見る実験ノートシリーズ;中山広樹著株式会社秀潤社)。
【0026】
<任意の添加剤>
本発明の組成物には、アマニリグナンと共に、医薬や飲食品の製造において通常用いられている、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を含めることができ、企図される投与経路や摂取方法に適した剤型又は形態として製造することができる。
【0027】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ブドウ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルなどのシュガーエステル類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、粉末植物油脂などの硬化油、サラシミツロウなどのロウ類、タルク、ケイ酸、ケイ素等が挙げられる。
【0029】
結合剤としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0030】
崩壊剤としては、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、本発明の組成物に利用可能な、医薬や飲食品の製造において通常用いられている添加剤の例としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、成形助剤(リン酸三カルシウムなど)、流動性改善剤(リン酸三カルシウムなど)、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料等が挙げられる。
【0032】
<任意の他の有効成分>
本発明の組成物には、有効成分であるアマニリグナンのほかに、体力向上作用、抗疲労作用、及び疲労感軽減のうち一以上を有することが公知である他の成分を含めることができる。このような他の成分としては、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ10、グルクロン酸、グルクロノラクトン、ガラナエキス、テアニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、カプサイシン、カプシエイト、アリシン、ビタミン類(ビタミンB1、B2、B6、B12、C、E等)、各種有機酸(クエン酸等)、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、カフェイン等が挙げられるがこれらに限定はされない。
また、本発明の組成物には、アマニリグナンのほかに、有効成分としてα-シクロデキストリンを含むことがより好ましい。組成物におけるアマニリグナン:α-シクロデキストリンの質量比は、1:0.1~3、より好ましくは1:0.3~2、より好ましくは1:0.6~1.5である。
【0033】
また、本発明の組成物は、バクテロイデス・ユニフォルミスを増殖させるために使用されるものであるが、当該組成物に、バクテロイデス・ユニフォルミス又はその処理物を、他の有効成分として含んでいてもよい。本発明で利用可能なバクテロイデス・ユニフォルミスは、当該菌を培養することができる通常の培養培地及び培養条件を用いて培養し、回収することができる。
【0034】
培養培地はバクテロイデス・ユニフォルミスを培養可能であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、炭素源として、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、セロビオース、スクロース、ラムノース、アミグダリン、エスクリン、サリシン、メリビオース、トレハロース、L-アラビノース、リボース、D-キシロース、イヌリン、ラフィノース、スターチ、糖蜜等、窒素源として、硫安、硝安等の無機アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、肉エキス、酵母エキス、ポリペプトン、タンパク質分解物等の有機窒素含有物等、ならびに無機塩類として、硫酸マグネシウム、リン酸2水素カリウム、酒石酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化鉄、塩化マンガン等を含めることができる。バクテロイデス・ユニフォルミスの培養に好適な公知の培養培地(例えば、NBGT培地、BL培地、GAM培地等)を利用することができる。培養培地は液体培地が好ましいが、必要に応じて、寒天やゼラチンを加えて、固体培地又は半流動培地として用いてもよい。培養は、20℃~50℃、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは35℃~37℃の温度にて、嫌気条件下で行うことができる。「嫌気条件」とは、バクテロイデス・ユニフォルミスが増殖可能な程度に低酸素環境であればよく、例えば、嫌気チャンバー、嫌気ボックス、脱酸素剤を入れた密閉容器もしくは培養容器等を用いて、嫌気条件とすることができる。
【0035】
培養は、静置培養、振とう培養、タンク培養等の任意の形式で行うことが可能であり、また、培養時間は、特に制限されないが、例えば3時間~7日間とすることができる。
【0036】
培養後、得られた培養物をそのまま使用してもよいし、あるいは培養物よりバクテロイデス・ユニフォルミスを精製又は粗精製して使用してもよい。
【0037】
培養物からの菌体の精製又は粗精製は任意の手段を用いて行うことができ、例えば、遠心分離や濾過等を用いて行うことができる。
【0038】
本発明において使用するバクテロイデス・ユニフォルミスは、湿潤菌体であっても又は乾燥菌体であってもよい。
【0039】
本発明においては、バクテロイデス・ユニフォルミスの処理物も利用することができる。本発明において「処理物」としては、例えばバクテロイデス・ユニフォルミスの菌体複合物が挙げられる。菌体複合物は、バクテロイデス・ユニフォルミスをコーティング剤でコーディングすることにより得ることができ、公知の処理により得ることができる。コーティング剤としては、例えば、でんぷん、アミロース、セルロース、ヘミロース、マンナン、及びキトサン等の多糖類や、ゼラチン、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド、及びペクチン等の増粘多糖類、カゼイン、及び脱脂粉乳等のタンパク質等を挙げることができる。
【0040】
本発明において使用するバクテロイデス・ユニフォルミス又はその処理物は、乾燥物、凍結物、水分散物、乳化物等の任意の形態で用いることができる。乾燥物は、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の任意の乾燥手段を用いて得ることができ、粉状、粒状等の形態とすることができる。
【0041】
<組成物の態様>
本発明の組成物の剤型又は形態は、特に制限されない。医薬としては例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤、坐剤等の剤型とすることができるが、好ましくは、経口剤である。液剤、懸濁剤などの液体製剤は、凍結乾燥化し保存し得る状態で提供され、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用されるものであってもよい。また錠剤等の固形の剤形を有するものは、必要に応じてコーティングを施されていてもよいし(例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶錠等)、公知の技術を使用して、徐放性製剤、遅延放出製剤又は即時放出製剤などの放出が制御された製剤としてもよい。
【0042】
飲食品としては例えば、錠菓、錠剤、チュアブル錠、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤等の形態を有する健康飲食品(サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品等)、清涼飲料、茶飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、チューインガム、タブレット)、ゼリー等の形態とすることができる(これらに限定はされない)。
【0043】
飲食品は、運動能力向上作用を有する成分を含有する、保健機能食品(特定保健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)、栄養機能食品、機能性表示食品や、健康食品、美容食品等とすることができる。
【0044】
また、本発明の組成物は、ヒト用の飲食品だけでなく、家畜、競走馬、ペット等の飼料又は飼料用添加物の形態とすることもできる。
【0045】
以下の実施例は、本明細書において開示される主題の単なる例示であり、それらは開示された主題の範囲を限定するものとして決してみなされるべきではない。
【実施例
【0046】
1.被験者及び選別基準
週1~2回、5METs以上の強度の運動を30分以上行う運動習慣があり、試験期間中も運動習慣を継続できる、20~49歳の健康な男性21名を被験者とした。
21名中、10名をアマニリグナン摂取群とし、残りの11名をプラセボ群とした。被験者自身にはどちらの群に属しているのか知らせなかった。
2.試験食品
以下の表1に記載の組成を有する試験食品(タブレット)を使用した。試験食品は、1粒が約250mgであった。アマニリグナン粉末は、ニップンアマニリグナン(日本製粉株式会社)を使用した。ニップンアマニリグナンは、SDGを40質量%以上含み、それ以外の成分としてシクロデキストリンを含む。
【0047】
【表1】

3.試験期間及び評価項目
1日1回3粒、上記試験食品を、アマニリグナン摂取群及びプラセボ群のそれぞれの被験者に、任意のタイミングで摂取してもらった。すなわち、アマニリグナン摂取群の被験者に、1日約200mgのニップンアマニリグナン(1日少なくとも約80mgのSDG)を摂取してもらった。
試験食品の摂取期間は、9週間とし、摂取開始前、摂取4週後、摂取8週後に、腸内フローラの変化を評価し、かつ、疲労感アンケートを実施し、摂取開始前と摂取9週後に最大酸素摂取量を評価した。試験期間中は、試験前と同じように生活してもらった。なお、スポーツやトレーニングをサポートすることを謳う食品及び飲料、効能効果に「疲労」、「疲れ」、「体力」及び/又は「だるさ」の回復・予防・改善が含まれる医薬品及び医薬部外品、並びにサプリメント全般(機能性表示食品、特定保健用食品も含む)を、試験参加同意日から遡って1週間及び試験期間中における摂取禁止食品とした。
【0048】
〔実施例1〕アマニリグナンによる腸管内バクテロイデス・ユニフォルミス増殖効果試験
被験者の腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの変化を確認した。試験食品の摂取前、摂取4週後、摂取8週後に、各被験者から糞便を採取し評価に用いた。
採取した糞便から定法にてDNAを抽出し、Anaerobe(2011),17,64-68,Jia Tong et alの記載を参考にして、バクテロイデス・ユニフォルミスの16S rDNA配列領域における特異的な配列をターゲットとしたフォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブを用いて、定法にて定量PCR(プローブ法)を行い、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミスの絶対数を評価した。
フォワードプライマー配列:5’-TCTTCCGCATGGTAGAACTATTA-3’(配列番号1)
リバースプライマー配列:5’-ACCGTGTCTCAGTTCCAATGTG-3’(配列番号2)
プローブ配列:5’-CGTTCCATTAGGTTGTTGGCGGGG-3’(配列番号3)
結果を図1に示す。アマニリグナン摂取群では、摂取前(0w)と比較して摂取8週後(8w)に、腸管内バクテロイデス・ユニフォルミス菌数の絶対数が約4倍に増加していた。一方で、プラセボ群では摂取前と摂取8週後の比較においてバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数に統計的に有意な変化は認められなかった。なお、当該菌数の摂取前と、摂取8週後の統計的検討は、ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test、*:p<0.05)によって行った。
【0049】
〔実施例2〕アマニリグナンによる疲労感軽減試験
被験者に対し、試験食品の摂取前、摂取4週後、摂取8週後に、エアロバイク(登録商標)(株式会社コナミスポーツ&ライフ製、型番AEROBIKE-75XLIII)による運動負荷(負荷強度:被験者ごとの最大運動負荷強度の45%強度で50分間)を行った。本実施例において最大運動負荷強度とは、事前に実施した1分間に15wずつ増加させる漸増負荷試験において、疲労困憊直前のペダルの重さ(W)を指している。負荷直後、負荷30分後、負荷60分後に疲労に関して、日本疲労学会が制定した疲労感VAS検査方法を基にVAS(Visual Analogue Scale)アンケートを実施して経時的な疲労感の変動を調べた。アンケートの項目は、「全身疲労感」とし、「0mm」が「最良の状態」、「100mm」が「最悪の状態」として評価してもらった。なお、「最良の状態」とは、疲れを全く感じない最良の感覚とし、「最悪の状態」とは何もできないほど疲れきった最悪の感覚とすると被験者に説明したうえで、評価してもらった。各摂取群の摂取8週後における測定値を評価したところ、アマニリグナン摂取群では運動負荷30分後の全身疲労感が、プラセボ群と比較して有意に低下(すなわち疲労感を軽減)していた。また、アマニリグナン摂取群では、特に摂取8週後は、摂取前と比較して、疲労耐性についても向上したことが示唆された。当該比較は、スチューデント(student)のt検定で行い、図2にその結果をグラフとしてまとめた(*:p<0.05)。
【0050】
〔実施例3〕アマニリグナンによる体力(全身持久力)向上性試験(最大酸素摂取量)
アマニリグナン摂取による全身持久力の変化を評価するため、被験者に試験食品の摂取前、摂取9週後に、エアロバイク(登録商標)(株式会社コナミスポーツ&ライフ製、型番AEROBIKE-75XLIII)による運動負荷試験を受けてもらった。ペダルの回転数を60rpmに維持しながら1分間に15Wずつ負荷を増加させる条件で疲労困憊まで試験を行った。運動中エアロモニター(ミナト医科学株式会社製、型番AE-310s)を用いて最大酸素摂取量(VO2max)を測定したところ、最大酸素摂取量は、アマニリグナン摂取群において、摂取0週に比べて摂取9週後に増加していた。アマニリグナン摂取前とアマニリグナン摂取9週後との最大酸素摂取量の比較には、対応のあるt検定(paired t-test)で有意差を検討した。結果を図3に示す(p=0.06)。
図3の結果から、アマニリグナンの摂取が、疲労感軽減だけでなく、体力の向上、特に全身持久力や有酸素運動時の持久力の向上にも寄与することが分かった。また、図3の結果から、アマニリグナンの摂取が疲労耐性向上にも寄与することが示された。
実施例1~3のデータによって、アマニリグナンの摂取が運動能力向上に寄与していることが支持された。
図1
図2
図3
【配列表】
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