(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】抗原特異的CAR-T細胞を拡大増殖する方法、それに関連する組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240729BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240729BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240729BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240729BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240729BHJP
C07K 14/025 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/045 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/05 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/15 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/155 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240729BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240729BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240729BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P31/12
A61P37/02
C12N5/0781
C07K14/025
C07K14/045
C07K14/05
C07K14/15
C07K14/155
C07K14/705
C07K19/00
C12N5/0783
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021512665
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 US2019050404
(87)【国際公開番号】W WO2020055862
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519080539
【氏名又は名称】アタラ バイオセラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフテーブ,ブレイク,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ファム,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ライン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ミシェル
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052947(WO,A1)
【文献】BLOOD,2013年,Vol.122, No.17,pp.2965-2973
【文献】Journal for ImmunoTherapy of Cancer,2015年,Vol.3, No.5,pp.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
A61K 35/17
A61P 31/12
A61P 37/02
C12N 5/0781
C07K 14/025
C07K 14/045
C07K 14/05
C07K 14/15
C07K 14/155
C07K 14/705
C07K 19/00
C12N 5/0783
C12N 15/62
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の抗原と結合するT細胞受容体(TCR)、及び(b)第2の抗原と結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞傷害性T細胞(CTL)を含む組成物を生成する方法であって、
(i)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含む細胞の培養物を調製するステップ、
(ii)
0日目のPBMCを含む前記培養物を、前記第1の抗原を発現するように操作されたヒトリンパ芽球様B細胞(BLCL)と同時培養するステップ、
(iii)PBMC及びBLCLを含む前記培養物を、前記第1の抗原と結合するTCRを含むCTLの選択的な増殖を誘導するために維持するステップ、
(iv)前記培養物のCTLを、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入し、それによって(a)前記第1の抗原と結合するTCR及び(b)前記第2の抗原と結合するCARを含むCTLを提供するステップ、
(v)CARを発現する第1の抗原特異的CTLを培養して、そのようなCTLの増殖を可能にするステップ、及び
(vi)(a)前記第1の抗原と結合するTCR及び(b)前記第2の抗原と結合するCARを含むCTLを含む組成物を回収するステップ
を含
み、
前記第1の抗原が、エプスタインバーウイルス(EBV)抗原、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原、BKウイルス(BKV)抗原、ジョンカニンガムウイルス(JCV)抗原、メルケル細胞ウイルス(MCV)抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)抗原又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原であり、
前記第2の抗原が、CD19抗原、CD20抗原又はメソテリン抗原であり、
ステップ(ii)における前記同時培養が、20:1のPBMC:BLCLの比で実施され、
ステップ(iii)における前記維持が、細胞培養物からCD56
+
細胞を枯渇するステップ及び11日目に残りの細胞をBLCLと共に0.2:1のCTL:BLCL比で再培養するステップを含み、
ステップ(iv)の形質導入を13日目に行い、
ステップ(vi)の回収を18日目に行う、方法。
【請求項2】
(a)第1の抗原と結合するT細胞受容体(TCR)、及び(b)第2の抗原と結合するキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞傷害性T細胞(CTL)を含む養子免疫療法組成物を調製する方法であって、
(i)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含む細胞の培養物を調製するステップ、
(ii)
0日目のPBMCを含む前記培養物を、前記第1の抗原を発現するように操作されたヒトリンパ芽球様B細胞(BLCL)と同時培養するステップ、
(iii)PBMC及びBLCLを含む前記培養物を、前記第1の抗原と結合するTCRを含むCTLの選択的な増殖を誘導するために維持するステップ、
(iv)前記培養物のCTLを、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入し、それによって(a)前記第1の抗原と結合するTCR及び(b)前記第2の抗原と結合するCARを含むCTLを提供するステップ、
(v)CARを発現する第1の抗原特異的CTLを培養して、そのような細胞の増殖を可能にするステップ、及び
(vi)(a)前記第1の抗原と結合するTCR及び(b)前記第2の抗原と結合するCARを含むCTLを含む組成物を回収し、それによって前記養子免疫療法組成物を提供するステップ
を含
み、
前記第1の抗原が、エプスタインバーウイルス(EBV)抗原、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原、BKウイルス(BKV)抗原、ジョンカニンガムウイルス(JCV)抗原、メルケル細胞ウイルス(MCV)抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)抗原又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原であり、
前記第2の抗原が、CD19抗原、CD20抗原又はメソテリン抗原であり、
ステップ(ii)における前記同時培養が、20:1のPBMC:BLCLの比で実施され、
ステップ(iii)における前記維持が、細胞培養物からCD56
+
細胞を枯渇するステップ及び11日目に残りの細胞をBLCLと共に0.2:1のCTL:BLCL比で再培養するステップを含み、
ステップ(iv)の形質導入を13日目に行い、
ステップ(vi)の回収を18日目に行う、方法。
【請求項3】
ステップ(i)、(ii)、(iii)、(v)のいずれかの培養物又はそれらの任意の組合せを、1つ以上のサイトカインとともにインキュベートするステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上のサイトカインがIL-2を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(v)の後かつステップ(vi)の前に、再培養するステップ(x)を
さらに含み、前記再培養するステップが、前記CARを発現する第1の抗原特異的CTLを、前記第1の抗原を発現するように操作されたBLCLとともに1回以上再培養し、それによって前記CARを発現する第1の抗原特異的CTLを前記第1の抗原に対してさらに感作させることを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記再培養するステップ(x)が、前記形質導入するステップ(iv)の8日後に、前記CARを発現する第1の抗原特異的CTLを、前記第1の抗原を発現するように操作されたBLCLと共に再培養することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記再培養するステップ(x)が、0.2:1のCTL:BLCL比で実施される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
再培養するステップ(x)の直前に、細胞培養物からCD56
+細胞が枯渇している、請求項
5から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記再培養するステップ(x)が、
(a)前記形質導入するステップ(iv)の8日後に、前記CARを発現する第1の抗原特異的CTLを、前記第1の抗原を発現するように操作されたBLCLと共に再培養する
ステップ、並びに
(b)前記形質導入するステップ(iv)の少なくとも14日後に、前記CARを発現する第1の抗原特異的CTLを、前記第1の抗原を発現するように操作されたBLCLと共に、再度、再培養する
ステップ
を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
前記再培養するステップ(a)が、0.2:1のCTL:BLCL比で実施され、前記再培養するステップ(b)が、4:1のCTL:BLCL比で実施される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
第1の再培養ステップが、同時培養ステップの開始の少なくとも7日後に開始される、請求項
9又は
10に記載の方法。
【請求項12】
PBMC及びBLCLが、同一ドナーに由来する、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
BLCLが、前記PBMCとの同時培養の前にガンマ照射される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
BLCLを、少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原を含むウイルスに感染させ、前記少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原が前記第1の抗原を含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗原が、EBV LMP1ペプチド若しくはその断片、EBV LMP2Aペプチド若しくはその断片、又はEBV EBNA1ペプチド若しくはその断片を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
必要とする患者に将来投与するために、回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞を凍結及び保管するステップを含む、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、レンチウイルス又はレトロウイルスベクターである、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスベクターが複製不能である、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
CARが1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む、請求項1から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のシグナル伝達ドメインが、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3シグナル伝達ドメイン、又はそのバリアント若しくは断片を含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
CD3シグナル伝達ドメインがCD3ζである、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
CARが、少なくとも1つの機能的ITAM領域を欠くバリアントCD3ζドメインを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
CARがMut06ドメインを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項24】
CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1から
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
選択可能なマーカーが抗生物質耐性を付与する、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
抗生物質がブラストサイジンである、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
CARを発現する抗原特異的CTLの増殖能を改善する方法であって、請求項1から
26のいずれか一項に記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【請求項28】
抗原特異的CTLの形質導入効率を改善する方法であって、請求項1から
27のいずれか一項に記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【請求項29】
CARを発現する抗原特異的CTLの生存性を改善する方法であって、請求項1から
28のいずれか一項に記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【請求項30】
ペプチド抗原の発現と関連する障害を、それを必要とする患者において処置するための医薬の製造における、請求項1から
29のいずれか一項に記載の方法によって得られたCARを発現する第1の抗原特異的CTLの使用。
【請求項31】
ペプチド抗原の発現と関連する障害の、それを必要とする患者における処置において使用するための、請求項1から
29のいずれか一項に記載の方法によって得られたCARを発現する第1の抗原特異的CTLを含む組成物。
【請求項32】
請求項1から
29のいずれか一項に記載の方法によって調製されるT細胞組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全文が組み込まれる、2018年9月10日に出願の米国特許仮出願第62/729,089号及び2019年9月6日に出願の同第62/896,707号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
養子免疫療法には、疾患関連細胞を認識し、標的化し、破壊することを目的として、個体に疾患特異的及び/又は操作されたT細胞、例えば、抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)及びキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞を埋め込むこと又は注入することが含まれる。養子免疫療法は、癌、移植後リンパ増殖性障害、感染性疾患(例えば、ウイルス感染症)及び自己免疫疾患を含む多数の疾患及び障害の処置のための有望なアプローチとなっている。
【0003】
例えば、遍在性のエプスタインバーウイルス(EBV、ヒトヘルペスウイルス4としても知られる)に対する曝露は、多発性硬化症(MS)、全身性自己免疫疾患(SAD)及び炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患の素因をもたらすか、又はそうでなければ、その病態形成にある役割を果たす可能性があることが示されている。このような病態(すなわち、MS、SAD及びIBD)は、身体自身の組織に対する異常な免疫応答に起因する。MSは、身体自身の免疫細胞による、神経線維の周囲の保護的脂質殻であるミエリンの分解を特徴とする。SADは、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)及びシェーグレン症候群(SS)を含む多様な症状を有する結合組織疾患の群である。IBDは、クローン病、セリアック病及び潰瘍性大腸炎を含む結腸及び小腸の炎症状態の群である。最近の研究によって、MSと診断された個体は、健常な個体よりも、神経組織に凝集されたB細胞に、より高いレベルのEBV関連タンパク質を示すことがわかっている。
【0004】
ウイルス感染と複数の状態(例えば、癌及び自己免疫疾患)の病態形成の間の関連によって、いくつかの群が同種(allogeneic)(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/203368を参照のこと)及び自己(autologous)(例えば、Penderら、Multiple Sclerosis Journal. 2014年;20巻(11号):1541~1544頁を参照のこと)抗原特異的T細胞の産生を発達させる誘発要因が提供された。
【0005】
T細胞による免疫監視は、広範な悪性細胞の検出及び死滅において重要な役割を果たす(Gottschalkら、2005年. Leuk Lymphoma. 46巻:1~10頁;Ochsenbeinら、2002年. Cancer Gene Ther. 9巻:1043~10頁)。悪性細胞の生存及び蔓延は、このような細胞のCTLによる認識から逃れる能力と関連している(Bubenikら、2003年. Oncol. Rep. 10巻:2005~2008頁;Reesら、1999年.Cancer Immunol. Immunother. 48巻:374~381頁)。特に、抗原プロセシング及び提示機能は、EBV関連悪性腫瘍、例えば、ホジキンリンパ腫及び鼻咽頭癌において無傷のままである(Khannaら、1998. Cancer Res. 58:310~314頁、Leeら、1998. Blood 92巻:1020~1030頁)。最近の研究によって、免疫監視(及びその後の応答)は、制御性T細胞によって媒介されるEBV特異的T細胞の抑制によって破壊される可能性があり、悪性細胞の除去の失敗につながることが示唆されている。例えば、阻害性免疫チェックポイント受容体、例えば、PD-1及びTim-3のアップレギュレーションは、慢性HCV感染を有する患者において、T細胞機能障害と相関し、C型肝炎ウイルス(HCV)特異的及びHCV非特異的CD8+T細胞で観察されている。T細胞増殖及びIFN-γ分泌の部分回復は、PD-1及びTim-3の、そのそれぞれのリガンド(すなわち、PD-L1としても知られるB7-H1及びガレクチン-9)との結合を阻害することによってex vivoで達成され得る。さらには、最近の報告によって、インターフェロン療法の長期投与が、増殖能の低下、機能の進行性喪失及び阻害性免疫チェックポイント受容体の持続的な発現を特徴とする機能障害状態であるT細胞「消耗」につながり得ることが実証された。
【0006】
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞は、小児急性リンパ性白血病及びびまん性大細胞リンパ腫のFDAによって承認された処置である。in vivoでのCAR-T細胞の増殖及び残留性は、処置有効性における重要な因子である。この目標に向けて、本発明者らは、本明細書において、選択した疾患関連抗原に対して向けられた少なくとも1つの機能的キメラ抗原受容体を発現するように操作されている、自己(autologous)及び同種(allogeneic)抗原特異的T細胞(例えば、例えば、EBV関連抗原(複数可)を検出するように特異的に感作されたT細胞)の生成及び/又は産生方法を説明する。1つ以上のCARも発現する抗原特異的CTLの生成によって、広範な疾患の処置のための新規養子免疫療法プラットフォームが提供される。さらに、セントラルメモリーT細胞(Tcm)及び幹細胞様メモリーT細胞(Tscm)表現型を表すCAR-T細胞は、CAR T-細胞注入後に増殖能及び持続的なin vivo拡大増殖を促進する(Kalos、2018)。したがって、高密度培養(enhanced culture)及び刺激法を使用するTcm及びTscm表現型の濃縮養子免疫療法生成物(例えば、CAR-T細胞)は、この様式の療法のin vivo効力、残留性及び有効性にとって有利である。操作された抗原特異的T細胞(例えば、抗原特異的なCARを発現するT細胞)の養子移植による、癌及び/又は自己免疫関連抗原に対するT細胞応答のこのような増強は、現在の処置戦略の魅力的な代替法を提供し得る。
【発明の概要】
【0007】
クラスI主要組織適合性複合体(MHC)上に提示される抗原(例えば、ウイルス抗原、例えば、EBVペプチド)と特異的に結合するT細胞受容体及び標的細胞抗原又は細胞表面マーカー(例えば、癌細胞関連抗原、例えば、CD19)と特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する同種(allogeneic)又は自己(autologous)T細胞を生成する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗原特異的T細胞は、T細胞(レスポンダー細胞、例えば、PBMCサンプル又はそれから単離されたT細胞)を含むサンプルを、クラスI MHC(例えば、対象中に存在するHLA対立遺伝子によってコードされるクラスI MHC)上に抗原(例えば、ウイルスペプチド)を提示する抗原提示細胞(APC、すなわち、スティミュレーター細胞)とともにインキュベートし、それによって、抗原特異的レスポンダーT細胞の増殖を誘導することによって生成される。好ましくは、抗原特異的レスポンダーT細胞を、CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入する。また、CARを発現する抗原特異的T細胞の集団のex vivo増殖を誘導する方法であって、単離されたT細胞の集団を、抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養するステップ及び得られた抗原特異的T細胞を、CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、形質導入されたT細胞は、抗原特異的CAR T細胞の増殖を誘導するために抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養される。ある特定の他の実施形態では、単離されたT細胞を、APCとの培養の前に、CARをコードするウイルスベクターで形質導入する。なおさらなる実施形態では、単離されたT細胞は、CARをコードするウイルスベクターの形質導入の前及び後にAPCとともに培養される。
【0008】
一部の態様では、セントラルメモリーT細胞を濃縮するex vivo方法が本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、このような方法は、CD3+T細胞を含む対象由来の細胞のサンプルを得るステップ及び前記CD3+T細胞を、抗原提示スティミュレーター細胞と接触させるステップを含む。好ましい実施形態では、CD3+T細胞は、当技術分野で公知の方法(例えば、サンプルからのCD3+細胞のポジティブ選択及び/又はサンプルからの望まれない細胞若しくは成分の枯渇によるネガティブ選択)によって、抗原提示スティミュレーター細胞と接触させる前にサンプルから単離される。例えば、限定するものではないが、このような方法として、抗CD3ビーズ(例えば、磁性ビーズ)、プラスチック粘着性、水簸、NK細胞の枯渇(例えば、抗CD56ビーズを使用する)での選択及び/又はそれらの組合せが挙げられる。一部のこのような実施形態では、抗原提示スティミュレーター細胞との接触の前及び/又は後に、CD3+T細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入する。一部のこのような実施形態では、CARを発現するCD3+の抗原特異的T細胞が、抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養される。
【0009】
一部の実施形態では、スティミュレーター細胞は、意図されるスティミュレーター細胞を、天然/野生型ウイルスとともに、又はウイルスペプチド抗原をコードするウイルスベクターとともにインキュベートすることによって、少なくとも1つのウイルスペプチド抗原を提示するように作製される。一部のこのような実施形態では、ウイルスペプチド抗原は、ヘルペスウイルス(例えば、EBV及びCMV)、パピローマウイルス(例えば、HPV)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、BKV、JCV及びメルケル細胞ウイルス)、レトロウイルス(例えば、HTLV-I、例えば、HIVなどのレンチウイルスも含む)、ピコルナウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)、ヘパシウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(例えば、D型肝炎ウイルス)、ヘペウイルス(例えば、E型肝炎ウイルス)、オンコウイルスなどのような種類のウイルスに由来する。ある特定の好ましい実施形態では、スティミュレーター細胞は、PBMCを、天然/野生型EBVとともにインキュベートすることによって、EBVペプチドを提示するように作製される。他の好ましい実施形態では、スティミュレーター細胞は、PBMCを、EBVペプチドをコードするウイルスベクターとともにインキュベートすること、それによって、スティミュレーター細胞を、EBVペプチドを提示するように誘導することによって、EBVペプチドを提示するように作製される。一部の実施形態では、EBVペプチドは、LMP1ペプチド若しくはその断片、LMP2Aペプチド若しくはその断片、及び/又はEBNA1ペプチド若しくはその断片を含む。一部の実施形態では、EBVペプチドは、表1に列挙される配列を含む。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、組換え複製不能アデノウイルス(例えば、AdE1-LMPpoly)である。一部の実施形態では、スティミュレーター細胞は、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞又は人工抗原提示細胞(例えば、CD80、CD83、41BB-L及び/又はCD86を発現する細胞株、例えば、aK562細胞)であり得る。好ましくは、本明細書に記載される抗原提示スティミュレーター細胞はまた、CAR(例えば、CD19)に対する標的細胞抗原又は細胞表面マーカーを提示する。一部の実施形態では、スティミュレーター細胞は、照射される。
【0010】
また、投与に適したCAR-T細胞の治療用調製物を同定する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、CAR-T細胞の治療用調製物のサンプルが得られ、複数のT細胞型及びサブタイプの存在量について評価される。一部のこのような実施形態では、CD3+、CD4+、CD8+、CD62L+及び/又はCD45RO+細胞の量が評価される。
【0011】
ある特定の態様では、本明細書において開示される方法を実施するステップを含む、T細胞の増殖能を改善する方法が、本明細書において提供される。一部の態様では、本明細書において開示される方法を実施するステップを含む、CARを発現するT細胞の生存性を改善する方法が、本明細書において提供される。ある特定の態様では、本明細書において開示される方法のいずれか1つによって調製されたT細胞組成物が、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】PBMC又は単離されたT細胞に由来するEBV-T細胞のCAR形質導入を比較する手順及び実験群を概説するフローダイヤグラムを示す図である。
【
図2】抗原刺激されたT細胞(EBV-CTL)における持続されたセントラルメモリー表現型を示す図である。
【
図3】PBMC及び単離されたT細胞に由来し、CARを発現するように形質導入されたEBV-T細胞の成長曲線を示す図である。
【
図4】ブラストサイジン選択後の単離されたT細胞に由来する生存CAR
+細胞の濃縮を示す図である。
【
図5】刺激及びCAR形質導入後にT細胞でメモリー表現型を調べる研究デザインを示す図である。
【
図6】CD19-CAR-T細胞上でCD3、CD4、CD8、CD62L及びCD45ROを同定するための代表的なフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す図である。
【
図7】刺激なし、BLCL、可溶性抗CD3/CD28及びビーズが結合した抗CD3/CD28の刺激後のCD19-CAR-T細胞上でのCD62L及びCD45RO(CD3
+細胞にゲート)の代表的なドットプロットを示す図である。ナイーブPBMCもまた、評価され、メモリーサブセットにゲートをかけるための参照として役立つ;赤色矩形は、CD45RO
+細胞上でのCD62L発現を表す。
【
図8】CD19-CAR T細胞上でのCD4及びCD8発現(CD3にゲート)の代表的なドットプロットを示す図である。
【
図9】EBV特異的な抗CD19 CAR T細胞が、強力な、特異的細胞傷害性を発揮することを示す図である。
【
図10】EBV特異的な抗CD19 CAR T細胞が、CD19特異的細胞傷害性を誘導することを示す図である。
【
図11】HLA適合(BLCL標的)及びHLA不適合(BLCL及びRaji標的)細胞両方における特異的な強力なHLA独立性細胞溶解を示すが、EBV-CTLは、適合BLCL標的細胞においてのみ、著しい細胞溶解を誘導できたことを示す図である。
【
図12】EBV特異的な抗CD19 CAR T細胞に対するアロ反応性増殖の増強を示す、従来的に生成された抗CD19 CAR T細胞を示す図である。
【
図13】示された細胞株との同時培養の際のCellTrace(商標)Violet希釈アッセイを示す図である。手短には、抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTLは、CD19
+細胞株の細胞溶解を誘導し(すなわち、BLCL、Raji及びNALM/6;下部-左側)、一方で、CD19及びEBV抗原発現を欠く自己(autologous)及び同種(allogeneic)標的(すなわち、K562及びPHA芽球)を温存し、従来のCAR T細胞に対して著しく少ないアロ反応性を有していた(下部-右側、影がつけられた)。
【
図14】EBV抗原特異的抗CD19 CAR T細胞及び従来的に生成された抗CD19 CAR T細胞のサイトカインプロファイルが別個の反応を示すことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般
本明細書において開示される研究は、高収量製造プロセスに適した、及び/又は最終治療製品におけるメモリーT細胞免疫表現型を濃縮するために、種々のCAR-T細胞刺激の影響を決定しようとするものである。標準抗CD3/CD28ビーズをベースとする刺激は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に、T細胞をex vivo又はin vitroで拡大増殖する方法として当該分野において広く使用されている。しかし、1つ以上のCARも発現する抗原刺激されたT細胞(例えば、ウイルス特異的T細胞)の製造プロセスが、本明細書において開示される。このようなプロセスは、CD3+T細胞が、より不均一な細胞の混合物から(例えば、全血から、PBMCからなど)濃縮/精製される最初のT細胞濃縮ステップを含む場合があり、予め選択された抗原(例えば、ウイルス抗原又は他の腫瘍/疾患関連抗原など)を認識し、それに反応するように刺激され、1つ以上のCAR構築物を形質導入される。例えば、CD3+T細胞を含む対象から得られた細胞のサンプル(例えば、PBMC)は、CD3+T細胞について濃縮されることもあり、前記CD3+T細胞は、抗原提示スティミュレーター細胞と接触される。好ましくは、CD3+T細胞は、抗原提示スティミュレーター細胞と接触させる前にサンプルから単離される。より好ましくは、T細胞及び抗原提示スティミュレーター細胞(例えば、BLCL)は、同一サンプルに由来し、したがって、HLA適合している。このような細胞選択方法及び技術は、一般に、サンプルからのCD3+及び/若しくはCD19+細胞のポジティブ選択並びに/又はサンプルからの望まれない細胞若しくは成分の枯渇によるネガティブ選択を含む。例えば、限定するものではないが、このような方法は、生細胞選別技術(例えば、蛍光活性化細胞選別)、抗CD3及び/又は抗CD19ビーズ(例えば、磁性ビーズ)、プラスチック粘着性、NK細胞の枯渇、水簸での選択及び/又はそれらの組合せを含む。抗原提示スティミュレーター細胞との接触の前及び/又は後に、得られたCD3+T細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入し得る。
【0014】
本明細書において開示される研究はまた、CD3/CD28又はBLCL同時培養物のいずれかでのCTLの刺激に由来する抗CD19 CAR-T細胞のセントラル及びエフェクターメモリーT細胞サブセットの比較を提供する。
【0015】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集める。
【0016】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つ又は1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素」とは、1つの要素又は1を超える要素を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「投与する」とは、医薬品又は組成物を対象に提供することを意味し、限定されないが、医療従事者による投与及び自己投与が含まれる。このような薬剤には、例えば、本明細書に記載のペプチド、本明細書において提供される抗原提示細胞及び/又は本明細書において提供されるCTLが含有され得る。
【0018】
「結合する」又は「相互作用する」という用語は、例えば生理学的条件下での静電相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用及び/又は水素結合相互作用による、2つの分子間、例えば、TCRとペプチド/MHCとの間の、安定な会合(association)であり得る、会合を指す。
【0019】
「生物学的サンプル(生体サンプル)」、「組織サンプル」、又は単に「サンプル」という用語は、それぞれ、対象の組織から得られた細胞の集合物を指す。組織サンプルの供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存された臓器、組織サンプル、生検又は吸引物からのような固体組織、血液又は任意の血液成分、血清、血液、体液、例えば、脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液、又は対象の妊娠若しくは発生の任意の時点からの細胞であり得る。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「サイトカイン」とは、細胞の機能に影響を及ぼし、免疫、炎症又は造血反応において細胞間の相互作用を調節する分子である任意の分泌型ポリペプチドを指す。サイトカインは、どの細胞がそれらを産生するかにかかわらず、モノカイン及びリンホカインを含むがこれらに限定されない。例えば、モノカインは、一般に、マクロファージ及び/又は単球などの単核細胞によって産生及び分泌されると言われている。しかしながら、ナチュラルキラー細胞、線維芽細胞、好塩基球、好中球、内皮細胞、脳アストロサイト、骨髄間質細胞、表皮ケラチノサイト及びBリンパ球などの他の多くの細胞もモノカインを産生する。リンホカインは、一般に、リンパ球細胞によって産生されると言われている。サイトカインの例として、限定されるものではないが、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-15(IL-15)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)及び腫瘍壊死因子ベータ(TNFβ)が挙げられる。
【0021】
用語「抗体断片」とは、全長よりも小さい抗体の任意の誘導体を指す。例示的実施形態では、抗体断片は、全長抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を保持する。抗体断片の例として、限定はしないが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dsFvダイアボディー、Fc及びFd断片が挙げられる。抗体断片は、いずれの手段によって産生されてもよい。例えば、抗体断片は、無傷の抗体の断片化によって酵素的又は化学的に産生されてもよく、部分抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって産生されてもよい、又は全体的に若しくは部分的に合成によって産生されてもよい。抗体断片は、任意選択で、一本鎖抗体断片であり得る。あるいは、断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結している複数の鎖を含み得る。断片はまた、任意選択で多分子複合体であり得る。機能的抗体断片は、通常、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より通常は、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0022】
用語「抗原結合部位」とは、抗原上のエピトープと特異的に結合する抗体の領域を指す。
【0023】
用語「一本鎖可変断片」又は「scFv」とは、重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインが連結しているFv断片を指す。1つ以上のscFv断片は、他の抗体断片(例えば、重鎖又は軽鎖の定常ドメイン)と連結されて、1つ以上の抗原認識部位を有する抗体構築物を形成し得る。
【0024】
用語「Fab断片」とは、ヒンジ領域を、H鎖間ジスルフィド結合のN末端で切断し、1つの抗体分子から2つのFab断片を生成する酵素パパインでの抗体の切断によって生成された抗原結合部位を含む抗体の断片を指す。
【0025】
用語「F(ab')2断片」とは、ヒンジ領域を、H鎖間ジスルフィド結合のC末端で切断する酵素ペプシンでの抗体分子の切断によって生成する2つの抗原結合部位を含有する抗体の断片を指す。
【0026】
用語「Fc断片」とは、その重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0027】
用語「Fv断片」を、その重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0028】
用語「操作された抗体」とは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインに由来する抗原結合部位を含み、任意選択で、Igクラスのいずれか(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びIgY)に由来する抗体の可変及び/又は定常ドメインの全部又は一部を含み得る少なくとも抗体断片を含む組換え分子を指す。
【0029】
用語「特異的に結合する」、「特異的結合」又は「標的化」とは、ポリペプチド(抗体を含む)又は受容体に言及する場合に本明細書で使用するとき、タンパク質及びその他の生物製剤の不均一な集団中のタンパク質又はポリペプチド又は受容体の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定された条件(例えば、抗体の場合にはイムノアッセイ条件)下で、サンプル中に存在する他のタンパク質と、又はリガンド若しくは抗体が生物中で接触するようになり得る他のタンパク質と有意な量で結合しない場合に、特定のリガンド又は抗体は、その個々の「標的」と「特異的に結合する」(例えば、抗体は、内皮抗原と特異的に結合する)。一般に、第2の分子と「特異的に結合する」第1の分子は、その第2の分子と、約105M-1より大きい(例えば、106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1及び1012M-1又はそれより大きい)アフィニティ定数(Ka)を有する。例えば、TCRの、MHC(例えば、クラスI MHC又はクラスII MHC)上に提示されるペプチドと結合する能力の場合には、通常、TCRは、少なくとも約10-4M以下のKDのアフィニティでそのペプチド/MHCと特異的に結合し、所定の抗原/結合パートナーと、非特異的及び無関係のペプチド/MHC複合体(例えば、BSAペプチド又はカゼインペプチドを含むもの)との結合のそのアフィニティよりも、少なくとも10倍少ない、少なくとも100倍少ない又は少なくとも1000倍少ないアフィニティ(KDによって表されるような)で結合する。
【0030】
用語「エピトープ」とは、抗体又はTCRに特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、分子の化学的に活性な表面基、例えば、アミノ酸又は糖側鎖からなる。特定のエピトープは、抗体が結合することができるアミノ酸の特定の配列によって規定することができる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わないで、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した薬剤、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される担体」という語句は、薬剤を、1つの臓器若しくは生体の部分から別の臓器若しくは生体の部分に運ぶか又は輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、又は溶媒をカプセル化している材料などを意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分と相溶性を有し、患者に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の一部の例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース、(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース、(4)粉末状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えば、カカオバター及び坐薬ワックス、(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油、(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール、(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)発熱物質不含水、(17)等張性生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝化溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物、及び(22)医薬製剤に使用される他の非毒性適合物質。
【0033】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」なる語は互換的に用いられる。それらは、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド又はそれらの類似体のいずれであれ、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有してもよく、任意の機能を果たしうる。以下のものはポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード又は非コード領域、連鎖解析から定められる遺伝子座(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体を含みうる。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合には、重合体(ポリマー)の構築の前又は後で施されうる。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分との結合(コンジュゲート化)によって、さらに修飾されうる。本明細書で提供されている全ての核酸配列において、UヌクレオチドはTヌクレオチドと交換可能である。
【0034】
本明細書で使用するとき、状態を「予防する」治療薬は、障害又は状態の発症前に統計サンプル(statistical sample)に投与された場合、処置されていない対照サンプルと比較して、処置されたサンプルにおける障害若しくは状態の発生を低下させ、又は処置されていない対照サンプルと比較して、障害若しくは状態の1つ以上の症状の発症を遅延させるか若しくはその重症度を低下させる化合物を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「特異的結合」とは、TCRがMHC(例えばクラスI MHC又はクラスII MHC)上に提示されたペプチドに結合する能力を指す。典型的には、TCRは、少なくとも約10-4M以下のKDのアフィニティでそのペプチド/MHCに特異的に結合し、そして非特異的かつ無関係のペプチド/MHC複合体(例えば、BSAペプチド又はカゼインペプチドを含むもの)への結合に対するアフィニティよりも少なくとも10倍小さい、少なくとも100倍小さい、又は少なくとも1000倍小さいアフィニティ(KDにより表されるようなもの)で所定の抗原/結合パートナーに結合する。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、処置又は治療のために選択されたヒト又は非ヒト動物を意味する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本発明の薬剤は、単独で、又は別の種類の治療薬と共同で投与されて使用され得る。本明細書で使用するとき、語句「共同投与」又は「共同で投与される」とは、これまでに投与された治療薬が、身体において依然として有効である間に第2の薬剤が投与される、2種以上の異なる治療薬(例えば、本明細書において開示されるCAR T及び免疫チェックポイントの阻害薬を含む組成物)の投与の任意の形態を指す(例えば、2種の薬剤は、対象において同時に有効であり、これは、2種の薬剤の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療薬は、同一製剤中又は別個の製剤中のいずれかで、同時に又は逐次投与され得る。一部の好ましい実施形態では、CAR T細胞は、さらなる治療薬を発現する(例えば、細胞表面に存在する、又は分泌する)。ある特定の実施形態では、異なる治療薬(例えば、CAR T細胞及び免疫チェックポイント遮断分子)は、互いに約1時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間又は約1週間以内に投与され得る。したがって、このような処置を受け取る対象は、異なる治療薬の組み合わされた効果から恩恵を受け得る。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「処置」は、臨床病理の経過中に処置される個体の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、進行速度の低下、病理学的状態の改善若しくは緩和、及び特定の疾患、障害若しくは状態の寛解若しくは改善された予後が含まれる。個体は、例えば、特定の疾患、障害又は状態に関連する1つ以上の症状が緩和されるか又は除去された場合に、成功的に「処置」される。
【0039】
用語「ベクター」とは、それによって生物、細胞又は細胞成分間で核酸を増殖及び/又は移動させることができる手段を指す。ベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、及び人工染色体などが挙げられ、これらは自律的に複製することができてもできなくてもよく、又は宿主細胞の染色体に組み込まれてもよい。
【0040】
T細胞濃縮
現在まで、当技術分野で公知のCAR-T細胞を製造する方法は、粗製の不均一な出発材料、例えば、PBMC(Sunら、Journal for ImmunoTherapy of Cancer(2015)3巻:5を参照されたい)又は高度に精製された特定のT細胞型、すなわち、CD4+、CD8+T細胞又はそれらの特定の割合のものの単離物(Terakuraら Blood (2011) 119巻:1及びTurtleら Sci Transl Med. (2016)9月7日;8を参照されたい)のいずれかに依存してきた。しかし、本明細書において開示される本発明は、CAR-T細胞の製造において使用されるべき抗原特異的T細胞を濃縮するためのex vivo方法を提供する。特に、一部の好ましい実施形態では、このような方法は、対象からCD3+細胞を含む細胞のサンプル(例えば、PBMC)を得るステップ及び前記CD3+細胞を抗原提示スティミュレーター細胞と接触させるステップを含む。好ましくは、CD3+T細胞は、抗原提示スティミュレーター細胞と接触させる前に、当技術分野で公知の方法(例えば、サンプルからのCD3+細胞のポジティブ選択及び/又はサンプルからの望まれない細胞若しくは成分の枯渇によるネガティブ選択)によってサンプルから単離される。例えば、限定するものではないが、このような方法は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用する、抗CD3ビーズ(例えば、磁性ビーズ)、プラスチック粘着性、抗CD56を使用するNK細胞の枯渇、水簸での選択及び/又はそれらの組合せを含む。選択されたCD3+細胞を所定の抗原、例えば、ウイルス抗原に対して感作させることは、得られた抗原特異的T細胞集団においてセントラルメモリー表現型を促進し得る。抗原提示スティミュレーター細胞との接触の前及び/又は後に、このようなT細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入し得る。一部のこのような実施形態では、CARを発現するCD3+の抗原特異的T細胞が、抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養される。
【0041】
本明細書において開示される最初のCD3+濃縮ステップは、PBMCサンプルよりもかなり不均一ではないが、高度に精製されたT細胞画分に対してある程度のレベルの不均一性を保持する出発材料を提供する。理論に捉われようとは思わないが、最初のCD3+濃縮ステップを使用することによって、出発材料は、相乗的に働き得る、又はAPCとの接触後の抗原特異的T細胞の生存性及び増殖の増大、このような抗原特異的T細胞におけるCARを発現するベクターの形質導入効率の改善、並びに最終治療量組成物中のより高いパーセンテージのTCM細胞を促進する有利な環境を提供し得る、細胞の混合物(少なくとも複数のエフェクターT細胞型、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞/TH細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞/CTL)、メモリーT細胞型(すなわち、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)、組織常駐型メモリーT細胞(TRM)及び仮想メモリーT細胞(TVM細胞))、制御性T細胞(Treg細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、粘膜関連インバリアント細胞(MAIT細胞)、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、ダブルネガティブT細胞(DNT)、CD3+B細胞又はそれらの任意の組合せを含む)を含むと仮定される。一部の実施形態では、抗原でのT細胞刺激後に、さらなる濃縮が実施される。例えば、NK枯渇(例えば、CD56枯渇)は、その後の抗原刺激ステップの前に(すなわち、抗原での、濃縮された抗原特異的T細胞の再刺激の前に)使用され得る。
【0042】
刺激及び形質導入
クラスI MHC上に提示されるペプチドと特異的に結合するT細胞受容体を発現するT細胞の製造は、定義された抗原に対するT細胞拡大増殖を必要とする。一部の実施形態では、T細胞はまた、疾患関連ペプチド(例えば、腫瘍関連ペプチド、抗原、リガンドなど)と特異的に結合するCARも発現する。
【0043】
抗原送達は、健常ドナーから得た末梢血単核細胞(PBMC)若しくはそれから単離されたB細胞リンパ芽球様細胞(例えば、CD19+ BLCL)のサンプルの天然ウイルスによるウイルス感染によって、又は組換えウイルスを使用する形質導入によってであり得る。したがって、感染細胞又は形質導入された細胞は、抗原提示細胞として働き、「スティミュレーター」と呼ばれる。ある特定の実施形態では、スティミュレーター細胞はまた、CARによって認識される細胞表面にペプチド(すなわち、抗原)を発現する。スティミュレーター細胞は、このようなCARによって標的とされるペプチドを内因性に発現する、又はこのようなペプチドを発現するように操作され得る。スティミュレーターに形質導入するために使用されるウイルスベクターは、組換え複製不能ウイルス(例えば、アデノウイルス、例えば、AdE1-LMPpoly)であり得る。あるいは、前記スティミュレーター細胞を、野生型/天然ウイルスに感染させる。別個のサンプル又は培養物(例えば、形質導入に使用されない同一ドナーに由来するPBMC、異なる健常ドナーに由来するPBMCのサンプル、又はそれから単離されたCD3+細胞)は、「レスポンダー」を含み、クラスI MHC上に提示されるペプチド抗原と特異的に結合するT細胞受容体を発現する、療法の活性成分となるT細胞を含有する。レスポンダーT細胞は、任意の適した方法によってPBMCから単離されてもよく、その多くは当技術分野で周知である。例えば、「レスポンダー」T細胞は、当技術分野で公知の方法、例えば、抗CD3ビーズ(例えば、磁性ビーズ)、プラスチック粘着性、水簸及び/又はそれらの組合せによって、スティミュレーター画分に対する提示の前にサンプルから単離され得る。好ましくは「刺激」細胞(例えば、PBMC又はBLCL)は、「レスポンダー」細胞と同一の細胞集団(例えば、PBMCサンプル)から得られ、その結果、それらは、同様にHLA適合している。例えば、ドナーから得たPBMCサンプルを「刺激」細胞画分と「レスポンダー」細胞画分にわけ、スティミュレーター細胞を、CD3+細胞について濃縮してもよく、レスポンダー細胞に、細胞表面に特定の抗原を提示するように形質導入する、又は感染させる。任意選択で、スティミュレーター細胞画分は、形質導入/感染の前に当技術分野で公知の方法によって、例えば、CD19+細胞についての選択によって濃縮されてもよい。したがって、抗原提示細胞は、T細胞(例えば、CD3+が濃縮された細胞)に対して抗原を提示し、ひいては、抗原特異的T細胞の増殖を活性化し、誘導する。一部のこのような実施形態では、スティミュレーター画分による抗原の提示の前に、レスポンダーT細胞(例えば、単離されたT細胞)を、CARをコードするベクターで形質導入する。ある特定の実施形態では、スティミュレーター画分による抗原の提示の後に、レスポンダーT細胞(例えば、単離されたT細胞)を、CARをコードするベクターで形質導入する。
【0044】
したがって、例えば、クラスI MHC上に提示されるEBVペプチドと特異的に結合し、選択された標的(例えば、CD19)と結合するキメラ抗原受容体(CAR)をさらに発現するT細胞受容体を発現する、同種(allogeneic)又は自己(autologous)T細胞を生成する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、APCは、スティミュレーター細胞のウイルス感染によって、例えば、野生型/天然EBV又はアデノウイルスベクター、例えば、AdE1-LMPpolyによって生成される。AdE1-LMPpolyベクターは、Gly-Alaリピートが枯渇したEBNA1配列と融合しているLMP1及びLMP2由来の定義されたCTLエピトープのポリエピトープをコードする。AdE1-LMPpolyベクターは、例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる、Smithら、Cancer Research 72巻:1116頁(2012年);Duraiswamyら、Cancer Research 64巻:1483~9頁(2004年);及びSmithら、J. Immunol 117巻:4897~4906頁(2006年)に記載されている。一部の実施形態では、スティミュレーター細胞は、感染していない単離されたT細胞(レスポンダー)と混合されて、前記T細胞にEBVポリエピトープを提示する。一部の実施形態では、EBVポリエピトープを提示された単離されたウイルス特異的T細胞は、活性化され、増殖のために誘導される。
【0045】
T細胞は、ナイーブ又は3つの主要抗原を経たサブタイプ:セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞及び最終分化エフェクターT細胞のうち1つに分類され得る。セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)は、リンパ節において、及び末梢循環において一般に見られる。このサブタイプは、CD45RO、C-Cケモカイン受容体タイプ7(CCR7)及びL-セレクチン(CD62L)を発現する。エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)は、リンパ節ホーミング受容体を欠き、したがって、末梢循環及び組織において主に見られる。TEM細胞は、CD45ROを発現するが、CCR7及びL-セレクチンの発現を欠く。ある特定の態様では、CAR-T細胞の治療用調製物を、レシピエントへの投与に適していると同定する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、CAR-T細胞の治療用調製物のサンプルが得られ、異なるT細胞サブタイプについて評価される。好ましくは、調製物は、主にCARを発現するTcm細胞及び/又はCD4+T細胞を含む。
【0046】
一部の実施形態では、レスポンダー細胞及びスティミュレーター細胞は各々、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。一部のこのような実施形態では、レスポンダー細胞及びスティミュレーター細胞は各々、同一ドナー由来のPBMCに由来する。他の実施形態では、レスポンダー細胞及びスティミュレーター細胞は各々、異なるドナー由来のPBMCに由来する。一部のこのような実施形態では、スティミュレーター細胞との接触の前に、レスポンダー細胞は、単離され、及び/又はT細胞から本質的になるように精製される。好ましい実施形態では、レスポンダー細胞は、単離され、及び/又はCD3+細胞から本質的になるように精製される。最も好ましくは、レスポンダー細胞は、CD3+T細胞から本質的になる。
【0047】
レスポンダー細胞(例えば、T細胞)への提示の前に、スティミュレーター細胞は、天然ウイルス、例えば、EBVに感染し、それによって、その表面にウイルス抗原を提示する場合がある。一部の実施形態では、スティミュレーター細胞を、ウイルスベクター、好ましくは、ヘルペスウイルス抗原をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターで形質導入する。一部のこのような実施形態では、アデノウイルスベクターは複製不能である。より好ましくは、アデノウイルスベクターは、1つ以上のEBV抗原をコードする核酸配列を含む。1つ以上のEBV抗原は、LMP1ペプチド若しくはその断片、LMP2Aペプチド若しくはその断片、及び/又はEBNA1ペプチド若しくはその断片を含み得る。最も好ましくは、アデノウイルスベクターは、AdE1-LMPpolyであり、Gly-Alaリピートが枯渇したEBNA1配列に融合されたLMP1及びLMP2に由来する定義されるCTLエピトープのポリエピトープをコードする。一部の実施形態では、スティミュレーター細胞は、レスポンダー細胞(例えば、非感染PBMC又はCD3+が濃縮された細胞)との培養(すなわち、それへの提示)の前に、1つ以上のサイトカインとともにインキュベートされる。このようなスティミュレーター細胞は、B細胞(例えば、BLCL)、抗原提示T細胞、樹状細胞、人工抗原提示細胞及び/又はaK562細胞を含み得る。好ましい実施形態では、スティミュレーター細胞は、抗原提示BLCLである。
【0048】
抗原特異的T細胞は、スティミュレーター画分によって抗原を提示されると活性化及び増殖を達成するが、このようなスティミュレーター細胞は、最終回収CAR-T細胞産物において望ましいものではない。さらに、能力のある(コンピテント)ウイルスの形成につながる、細胞を増殖させることにおける任意のウイルス組換え事象のリスクを最小化するために、スティミュレーター細胞は、例えば、ガンマ線での照射又は薬剤、例えばマイトマイシンCに対する曝露によって、増殖を阻害するためにレスポンダーT細胞との培養に先立って処置及び/又は改変される。例えば、このような培養条件では、レスポンダー細胞(例えば、T細胞)は、非増殖スティミュレーター細胞によってペプチド抗原を提示される。一部のこのような実施形態では、培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも24時間~少なくとも28日にわたり維持される。一部の実施形態では、培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも17日又は少なくとも28日にわたり維持される。好ましくは、培養物は、スティミュレーター細胞による抗原提示後、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも2日にわたり維持される。最も好ましくは、培養物は、スティミュレーター細胞による抗原提示後、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも6日にわたり維持される。さらなる実施形態では、培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入後、少なくとも24時間~少なくとも28日にわたり維持される。ある特定の実施形態では、培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入後、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも17日又は少なくとも28日にわたり維持される。一部の実施形態では、培養物は、必要に応じて再播種され、及び/又は再刺激される。例えば、レスポンダーT細胞は、少なくとも第1の刺激ステップを経験し(すなわち、APC上の抗原を提示される)、必要に応じて再播種され、及び/又は再刺激され得る(すなわち、第2回又はそれより多く)。前記再播種され、及び/又は再刺激された培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に/又はその後に、少なくとも24時間、少なくとも3日、少なくとも9日、少なくとも11日、少なくとも14日、少なくとも17日又は少なくとも28日にわたり維持される。好ましい実施形態では、レスポンダー細胞培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも1回刺激される。より好ましくは、レスポンダー培養物は、複数回刺激される、ここで、その後の刺激ステップは、2~14日のいずれかで隔てられる。例えば、第1の刺激を経験している培養物は、第1の刺激の11日後に第2の刺激(例えば、再刺激)を経験してもよく、任意選択で、第3の刺激(例えば、再刺激)は、第2の刺激ステップの7日後に開始される。刺激ステップ(例えば、再刺激)を経験している培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも1~10日にわたり維持される。好ましくは、培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも2日にわたり維持される。最も好ましくは、培養物は、スティミュレーター細胞による抗原提示後、CARをコードするベクターでの形質導入の前に少なくとも6日にわたり維持される。任意選択で、刺激の前にNK枯渇ステップが使用される。例えば、APCによる刺激の直前に、培養からCD56+細胞が枯渇される場合がある(例えば、抗CD56ビーズを用いて)。
【0049】
ある特定の実施形態では、抗原特異的T細胞は、活性化及び増殖を達成するための抗原の少なくとも第1の提示後、CARをコードするベクターでの形質導入の前及び/又は後に将来解凍されるために凍結及び保管され得る。例えば、本明細書において企図される抗原特異的なCARを発現するT細胞は、それを必要とする対象に投与され得る、又は後の日付で解凍されるための細胞バンク若しくはリポジトリにおける保管のために凍結され得る。一部のこのような実施形態では、解凍された培養物は、本明細書に記載されるような形質導入の前及び/又は後に、抗原で(例えば、本明細書に記載されるような抗原提示スティミュレーター細胞、例えば、BLCLなどをで)少なくとももう1回再刺激される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるように、前記の解凍された培養物は、必要に応じて再刺激及び/又は再播種され、前記の再刺激及び/又は再播種された培養物は、CARをコードするベクターでの形質導入の前/又は後に、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも9日、少なくとも11日、少なくとも14日、少なくとも17日又は少なくとも28日にわたり維持される。同様に、培養物が複数回再刺激されるような場合には、その後の刺激ステップは、本明細書に記載されるように、2~14日のいずれかで隔てられる。
【0050】
抗原特異的T細胞の活性化及び増殖はまた、スティミュレーター細胞による十分な量の抗原提示を必要とする。したがって、本明細書において企図される刺激培養(例えば、再刺激培養を含む)は、公知の比のレスポンダー細胞対スティミュレーター細胞を含む。例えば、レスポンダー細胞対スティミュレーター細胞の比は、約0.1:1~約20:1である。好ましくは、レスポンダー細胞対スティミュレーター細胞の比は、約0.2:1~約5:1である。一部の実施形態では、レスポンダー細胞対スティミュレーター細胞の比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約0.9:1、約0.8:1、約0.7:1、約0.6:1、約0.5:1、約0.4:1、約0.3:1、約0.2:1又は約0.1:1である。一部のこのような実施形態では、レスポンダー細胞対スティミュレーター細胞の比は、約0.25:1、0.43:1又は4:1である。さらに、培養物が複数回再刺激されるような場合には、各刺激は、同一比又は異なる比のレスポンダー細胞対スティミュレーター細胞を含み得る。例えば、限定するものではないが、好ましい実施形態では、最初の刺激は、約0.43:1のレスポンダー:スティミュレーター比を含む。その後の刺激(例えば、再刺激)は、0.25:1のレスポンダー:スティミュレーター比を含んでもよく、なおさらなる刺激(例えば、再刺激)は、4:1のレスポンダー:スティミュレーター比を含む。
【0051】
当業者ならば、培養物における細胞増殖は変わり得るものであり、栄養分及び酸素の必要量によって、並びに廃棄物、例えば二酸化炭素及び乳酸の蓄積によって制限されるということは理解するであろう。そのようなものとして、当業者ならば、本発明のT細胞を達成するために適当な培養及び(必要な場合には)再播種スケジュールを経験的に決定することができるであろう。一部の実施形態では、培養は、所定の回収日まで維持される。培養物の評価及び活性ウイルスの有無の決定は、回収日に先立って及び/又は回収日当日に行う。最も好ましくは、本明細書において開示される培養物及び/又は調製物は、CTL回収の時点で活性ウイルスを本質的に含まない。
【0052】
抗原ペプチド
ある特定の態様では、クラスI MHC上に提示されるT細胞エピトープを含むペプチド(例えば、抗原)と特異的に結合するTCR、並びに自己免疫障害及び癌(例えば、MS、SAD、IBD及び/又はCD19+ B細胞悪性腫瘍、リンパ腫及び白血病)を処置するために選択された標的、例えば、疾患関連ペプチド標的と結合するCARを発現する同種(allogeneic)又は自己(autologous)CAR-T細胞を生成する方法が本明細書において提供される。T細胞を含むサンプル(例えば、PBMCサンプル又はそれから単離されたCD3+細胞)を、本明細書に記載されるT細胞エピトープのうち1つ以上を提示する抗原提示細胞(APC)(例えば、クラスI MHC複合体上のEBVエピトープを含む本明細書に記載されるペプチドを提示するAPC、例えば、EBV感染した、又は組換えによって形質導入されたBLCL)とともにインキュベートすることによって生成される、CAR-T細胞の産生に適したT細胞が、本明細書において企図される。
【0053】
一部のこのような実施形態では、本明細書に記載されるようなT細胞エピトープを含むペプチドは、ウイルス、例えば、限定するものではないが、ヘルペスウイルス(例えば、EBV及びCMV)、パピローマウイルス(例えば、HPV)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、BKV、JCV及びメルケル細胞ウイルス)、レトロウイルス(例えば、HTLV-I、例えばHIVなどのレンチウイルスも含む)、ピコルナウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)、ヘパシウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(例えば、D型肝炎ウイルス)及びヘペウイルス(例えば、E型肝炎ウイルス)などに由来するエピトープを含む。一部の実施形態では、エピトープは、HLAクラスI拘束性T細胞エピトープである。他の実施形態では、エピトープは、HLAクラスII拘束性T細胞エピトープである。
【0054】
本明細書において提供されるペプチドは、任意のEBVウイルスタンパク質の配列(例えば、任意のEBVタンパク質の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の連続したアミノ酸の配列)を含み得る。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、EBVウイルスタンパク質の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10個以下の連続したアミノ酸を含む。
【0055】
本明細書において提供されるペプチドは、LMP1の配列(例えば、LMP1の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の連続したアミノ酸の配列)を含み得る。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、LMP1の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10個以下の連続したアミノ酸を含む。例示的LMP1アミノ酸配列は、以下に提供される(配列番号1):
【0056】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、LMP2Aの配列(例えば、LMP2Aの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の連続したアミノ酸の配列)を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、LMP2Aの25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10個以下の連続したアミノ酸を含む。例示的なLMP2Aアミノ酸配列を以下(配列番号2)に提供する:
【0057】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、EBNA1の配列(例えば、EBNA1の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の連続したアミノ酸の配列)を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、EBNA1の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10個以下の連続したアミノ酸を含む。例示的なEBNA1アミノ酸配列を以下(配列番号3)に提供する:
【0058】
好ましくは、ペプチドは、表1に列挙されるエピトープの配列を含む。
【0059】
【0060】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、任意のポリオーマウイルスタンパク質の配列、例えば、BKVエピトープ、JCVエピトープ、MCVエピトープ並びに/又はHLA上に提示された場合に認識されるCTLであるBKV、JCV及び/若しくはMCVエピトープ間で相同の配列を含むエピトープを含むペプチドを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるエピトープは、ポリオーマウイルス感染(例えば、BKV、JCV又はMCVウイルス感染)及び/又は癌(例えば、本明細書において提供されるエピトープを発現するポリオーマウイルス関連癌)の予防及び/若しくは処置において、並びに/又はポリオーマウイルス感染(例えば、BKV、JCV又はMCVウイルス感染)及び/又は癌(例えば、本明細書において提供されるエピトープを発現するポリオーマウイルス関連癌)の予防及び/若しくは処置において有用である医薬品(例えば、CTL及び/又はAPC)の作製のために有用である。一部の実施形態では、エピトープは、BKVエピトープ及び同種JCVエピトープの両方に由来するアミノ酸並びに/又は異なるBKV若しくはJCVエピトープ内でみられるアミノ酸バリアントを含むハイブリッドエピトープである。一部の実施形態では、本明細書において提供される組成物及び方法は、MCVエピトープをさらに含む。BKVエピトープ、JCVエピトープ、MCVエピトープ並びに/又はBKV、JCV及び/若しくはMCVエピトープ間で相同の配列を含むエピトープ(例えば、ハイブリッドエピトープ)を含む例示的ペプチドは、その全文が本明細書に組み込まれるWO2018049165に見出すことができる。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、任意のサイトメガロウイルスタンパク質の配列、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、CMV感染及び/又は癌(例えば、CMVエピトープを発現する癌)の予防及び/又は処置において有用であるエピトープを含むペプチドを含む。CMVエピトープを含む例示的ペプチドは、各々その全文が本明細書に組み込まれるWO2017203370、WO2014059489及びWO2006056027の各々に見出すことができる。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、任意のヒト乳頭腫ウイルスタンパク質の配列、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、HPV感染及び/又は癌(例えば、HPVエピトープを発現する癌)及び/又は前癌病変の予防及び/又は処置において有用であるHPVエピトープを含むペプチドを含む。HPVエピトープを含む例示的ペプチドは、その全文が本明細書に組み込まれるPCT/US2019/014727に見出すことができる。
【0063】
一部の実施形態では、ペプチドは、2つ以上のウイルスに由来するエピトープを含む。一部の実施形態では、ペプチドは、3つ以上のウイルスに由来するエピトープを含む。一部の実施形態では、ペプチドは、4つ以上のウイルスに由来するエピトープを含む。一部の実施形態では、ペプチドは、5つ以上のウイルスに由来するエピトープを含む。例えば、一部の実施形態では、ペプチドは、JCV、BKV、MCV、EBV、CMV及び/又はHPVのうち少なくとも2、3、4又は5つに由来する配列を含む。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、2つ以上のT細胞エピトープ(例えば、ウイルスエピトープ)を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のT細胞エピトープを含む。例えば、一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)によって接続された2つ以上のT細胞エピトープを含む。一部の実施形態では、ポリペプチド又はタンパク質は、複数のエピトープのうち少なくとも2つの間に介在するアミノ酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、介在するアミノ酸又はアミノ酸配列は、プロテアソーム遊離アミノ酸又はアミノ酸配列である。プロテアソーム遊離アミノ酸又はアミノ酸配列の限定されない例として、AD、K若しくはRがある、又はAD、K若しくはRを含む。一部の実施形態では、介在するアミノ酸又はアミノ酸配列は、TAP認識モチーフである。通常、TAP認識モチーフは、以下の式:(R/N:I/Q:W/Y)n(式中、nは、任意の整数≧1である)に従い得る。TAP認識モチーフの限定されない例として、RIW、RQW、NIW及びNQYが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書において提供されるエピトープは、各エピトープのカルボキシル末端において、プロテアソーム遊離アミノ酸配列及び任意選択で、TAP認識モチーフによって連結又は結合される。
【0065】
一部の実施形態では、ペプチドの配列は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)の保存的配列修飾を除いてウイルスタンパク質配列を含む。本明細書で使用するとき、用語「保存的配列修飾」は、T細胞受容体(TCR)とMHC上に提示されたアミノ酸配列を含有するペプチドとの間の相互作用に有意に影響しないか又はそれを変更しないアミノ酸修飾を指すことが意図される。このような保存的修飾には、アミノ酸の置換、付加(例えば、ペプチドのN末端又はC末端へのアミノ酸の付加)及び欠失(例えば、ペプチドのN末端又はC末端からのアミノ酸の欠失)が含まれる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本明細書に記載されているペプチドの1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更されたペプチドは、当該技術分野において公知である方法を使用してTCR結合の保持について試験することができる。修飾は、当該技術分野において公知である標準的な技術、例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介性突然変異誘発によって抗体に導入することができる。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、タンパク質配列(例えば、ウイルスタンパク質の断片の配列)と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、最適なアライメントのために第1及び第2のアミノ酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、非同一配列は、比較目的のために無視することができる)。次に、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基によって占有される場合、それらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れた上での、配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0067】
ペプチドは、キメラ又は融合ペプチドであり得る。本明細書で使用するとき、「キメラペプチド」又は「融合ペプチド」は、天然には連結されない配列を有する別個のペプチドに連結された本明細書において提供される配列を有するペプチドを含む。例えば、別個のペプチドは、本明細書において提供されるペプチドのN末端又はC末端にペプチド結合によって直接的に、又は化学的リンカーを介して間接的に、のいずれかで融合され得る。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、別個のエピトープを含む別のペプチドに連結される。一部の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、他のウイルス及び/又は感染性疾患と関連するエピトープを含むペプチドに連結される。本明細書において提供されるキメラペプチド又は融合ペプチドは、標準的な組換えDNA技術によって産生することができる。例えば、異なるペプチド配列をコードするDNA断片は、従来の技術に従って、例えば、ライゲーションのための平滑末端化又は突出末端化(stagger-ended)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて付着端の補完、望ましくない接続を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素ライゲーションを使用することによって、インフレームでライゲートされる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出部を生じさせるアンカープライマーを使用して行うことができ、その後、アニーリングし、再増幅してキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。さらに、すでに融合部分をコードする多数の発現ベクターが市販されている。
【0068】
本明細書において提供されるペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用して適切な精製スキームによって細胞又は組織源から単離することができ、組換えDNA技術によって産生することができ、且つ/又は標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成することができる。本明細書に記載されているペプチドは、本発明のペプチド(複数可)をコードするヌクレオチドの発現によって、原核宿主細胞又は真核宿主細胞において産生することができる。あるいは、このようなペプチドは、化学的方法によって合成することができる。組換え宿主における異種ペプチドの発現、ペプチドの化学合成、及びインビトロ翻訳の方法は、当該技術分野において周知であり、さらに、参照により本明細書に組み込まれるManiatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1989)、第2版、Cold Spring Harbor, N. Y.、Berger及びKimmel、Methods in Enzymology、152巻、Guide to Molecular Cloning Techniques (1987)、Academic Press, Inc.、San Diego、Calif.、Merrifield, J. (1969) J. Am. Chem. Soc. 91:501、Chaiken I. M. (1981) CRC Crit. Rev. Biochem. 11:255、Kaiserら(1989) Science 243:187、Merrifield, B. (1986) Science 232:342、Kent, S. B. H. (1988) Annu. Rev. Biochem. 57:957、Offord, R. E. (1980) Semisynthetic Proteins、Wiley Publishingに記載されている。
【0069】
特定の態様では、本明細書に記載されているペプチドをコードする核酸分子が本明細書において提供される。一部の実施形態では、核酸分子はベクターである。一部の実施形態では、核酸分子は、本明細書に記載されている核酸分子を含むウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベースの発現ベクターである。一部の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、本明細書において提供される複数のエピトープ(例えば、ポリエピトープとして)をコードする。一部の実施形態では、本明細書において提供されるベクターは、本明細書において提供される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のエピトープ(例えば、表1に提供されるエピトープ)をコードする。
【0070】
一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、例としてAdE1-LMPpoly)である。AdE1-LMPpolyベクターは、Gly-Ala反復欠乏型EBNA1配列に融合させたLMP1及びLMP2由来の規定されたCTLエピトープのポリエピトープをコードする。AdE1-LMPpolyベクターは、例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれるSmithら、Cancer Research 72:1116 (2012)、Duraiswamyら、Cancer Research 64:1483~9 (2004)、Smithら、J. Immunol 117:4897~4906 (2006)に記載されている。
【0071】
本明細書で使用するとき、用語「ベクター」とは、それに連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントはウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律的複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、エピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムとともに複製することができる。さらに、特定のベクターは、遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一部の実施形態では、発現ベクター中で1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター)に機能的に連結された核酸が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、細胞は、本明細書において提供される核酸を転写し、それにより本明細書に記載されているペプチドを発現する。核酸分子は、細胞のゲノムに組み込まれ得、又はそれは染色体外にあり得る。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている核酸(例えば、本明細書に記載されているペプチドをコードする核酸)を含有する細胞が本明細書において提供される。細胞は、例えば、原核生物、真核生物、哺乳動物、鳥類、マウス及び/又はヒトであり得る。一部の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、細胞はAPC(例えば、抗原提示T細胞、樹状細胞、B細胞、又はaK562細胞)である。本方法において、本明細書に記載されている核酸は、例えば送達ビヒクルを伴わない核酸として、送達試薬と組み合わせて、細胞に投与することができる。一部の実施形態では、当該技術分野において公知である任意の核酸送達方法を、本明細書に記載されている方法において使用することができる。適した送達試薬としては、限定されないが、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えば、ポリリジン)、アテロコラーゲン、ナノプレックス及びリポソームが挙げられる。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、リポソームが、細胞又は対象に核酸を送達するために使用される。本明細書に記載されている方法における使用に適したリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成することができ、これは、一般的に、中性又は負に荷電したリン脂質及びステロール、例えば、コレステロールを含む。脂質の選択は、一般的に、因子、例えば、所望のリポソームサイズ及び血流中のリポソームの半減期を考慮することによって導かれる。リポソームを調製するための種々の方法が公知であり、例えば、それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれるSzokaら、(1980)、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467、並びに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されている。
【0073】
CAR-T細胞
主要組織適合性複合体(MHC)分子上に提示される抗原(例えば、ウイルスペプチド抗原)と特異的に結合するT細胞受容体、及び選択された標的ペプチドと特異的に結合し、その細胞質側末端中に存在する免疫受容体活性化モチーフ(ITAM)を介してその後の活性化シグナルを伝達する能力を有するキメラ抗原受容体分子を発現する同種(allogeneic)又は自己(autologous)CAR-T細胞を対象に投与することによる、癌及び自己免疫疾患(例えば、MS、SAD、IBD)を処置する方法が、本明細書において提供される。
【0074】
一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用される抗原特異的T細胞は、細胞バンク又はライブラリーから選択される。好ましくは、MHCは、クラスI MHCである。ある特定の実施形態では、MHCは、クラスII MHCであり、HLA-DMA、HLA-DOA、HLA-DPA、HLA-DQA又はHLA-DRAであるα鎖ポリペプチドを有する。一部のこのような実施形態では、クラスII MHCは、HLA-DMB、HLA-DOB、HLA-DPB、HLA-DQB又はHLA-DRBであるβ鎖ポリペプチドを有する。本明細書に記載されるようなこのようなT細胞(例えば、抗原特異的T細胞及びCARを発現する抗原特異的T細胞)は、それらが対象に投与される前に細胞ライブラリー又はバンクに保管される。
【0075】
一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用されるT細胞は、多機能性T細胞、すなわち、例えば、単一免疫エフェクター(例えば、単一バイオマーカー、例えば、サイトカイン又はCD107a)のみを産生する細胞が行うものよりも有効な病原体に対する免疫応答を提供する複数の免疫エフェクター機能を誘導可能であるT細胞である。多機能性の低い、単機能性又は「消耗した」T細胞でさえ、慢性感染の間に免疫応答を支配し、したがって、ウイルス関連合併症に対する保護に負に影響を及ぼす可能性がある。同様に、本発明のCAR-T細胞もまた、多機能性である(例えば、増強された多機能性を示す、保持する又は有する)。一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用されるT細胞の少なくとも50%は、CD4+T細胞である。一部のこのような実施形態では、前記T細胞は、50%未満のCD4+T細胞である。さらなる実施形態では、前記T細胞は、主にCD4+T細胞である。一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用されるT細胞の少なくとも50%は、CD8+T細胞である。一部のこのような実施形態では、前記T細胞は、50%未満のCD8+T細胞である。さらなる実施形態では、前記T細胞は、主にCD8+T細胞である。
【0076】
また、本明細書に記載されるペプチド(例えば、T細胞エピトープを含むペプチド)を提示するAPCが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、APCは、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞又は人工抗原提示細胞(例えば、aK562細胞)である。ある特定の好ましい実施形態では、APCは、リンパ芽球様細胞、例えば、BLCLに由来する。例示的抗原提示BLCLは、参照により本明細書に組み込まれる、O'Reilyら、Immunol Res 2007 38巻:237~250頁及びKoehneら、Blood 2002 99巻:1730~1740頁に記載されている。
【0077】
本プロセスで使用するための樹状細胞は、患者サンプルからPBMCを採取し、それらをプラスチックに付着させることによって調製することができる。一般的に、単球集団は留まり、他の全ての細胞を洗い流すことができる。次に、付着細胞集団をIL-4及びGM-CSFで分化させ、単球由来の樹状細胞を産生させる。これらの細胞は、IL-1β、IL-6、PGE-1及びTNF-α(樹状細胞の表面上の重要な共刺激分子をアップレギュレートする)の添加によって成熟され得、その後、本明細書において提供されるペプチドの1つ以上で形質導入される。
【0078】
いくつかの実施形態では、APCは、人工抗原提示細胞、例えばaK562細胞などである。いくつかの実施形態では、人工抗原提示細胞は、CD80、CD83、41BB-L及び/又はCD86を発現するように操作されている。aK562細胞などの人工抗原提示細胞の例は、米国特許出願公開第2003/0147869号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0079】
ある特定の態様では、本明細書に記載されるT細胞エピトープのうち1つ以上を提示するAPCを生成する方法であって、APCを、エピトープを含むペプチドと、及び/又は前記エピトープをコードする核酸と接触させるステップを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、APCは照射される。本明細書に記載されているペプチドを提示する細胞は、当該技術分野において公知である標準的な技術によって産生することができる。例えば、細胞にパルスを与えてペプチド取り込みを促進し得る。一部の実施形態では、細胞は、本明細書において提供されるペプチドをコードする核酸をトランスフェクトされる。本明細書に記載されているペプチドで細胞をパルスするステップを含む、抗原提示細胞(APC)を産生する方法が本明細書において提供される。抗原提示細胞を産生する例示的な例は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるWO2013088114に見出すことができる。
【0080】
一部の実施形態において、MHC上に提示された本明細書に記載のペプチドを認識するTCR(例えば、αβTCR又はγδTCR)を発現するT細胞(例えば、CD4 T細胞及び/又はCD8 T細胞)が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、T細胞は、クラスI MHC上に提示される本明細書に記載のペプチドを認識するTCRを発現するCD8 T細胞(CTL)である。いくつかの実施形態では、T細胞は、クラスII MHC上に提示される本明細書に記載のペプチドを認識するCD4 T細胞(ヘルパーT細胞)である。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるEBVエピトープのうち1つ以上を認識し、キメラ抗原受容体も発現するCAR-T細胞(例えば、EBV特異的な抗CD19-CAR-T細胞)を生成する、活性化する、及び/又はその増殖を誘導する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、T細胞(すなわち、単離されたT細胞)を含む培養物(又はそのサンプル)が、本明細書において提供されるAPC(例えば、クラスI MHC複合体上にEBVエピトープを含むペプチドを提示するAPC、例えば、本明細書に記載されるウイルスによって形質導入されたPBMC)とともに培養物中でインキュベートされる。一部の実施形態では、APCは、T細胞が得られた対象に対して自己である。一部の実施形態では、APCは、T細胞が得られた対象に対して自己(autologous)ではない。一部の実施形態では、T細胞を含有するサンプルは、本明細書において提供されるAPCとともに2回以上インキュベートされる。一部の実施形態では、T細胞(及び/又はCAR-T細胞)は、少なくとも1種のサイトカインの存在下でAPCとともにインキュベートされる。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-7及び/又はIL-15である。同様に、T細胞及び/又はCAR-T細胞培養物は、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-7及び/又はIL-15の存在下で維持され得る。APCを使用してT細胞の増殖を誘導するための例示的方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0017723号において提供されている。好ましい実施形態では、このような抗原特異的(例えば、EBV特異的)T細胞を、細胞外ドメイン(エクトドメインとも呼ばれる)、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメインとも呼ばれる)を一般に含む、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターで形質導入する。
【0082】
細胞外ドメインは、CARが、T細胞の表面で発現されると、T細胞活性を、細胞外ドメインによって認識される標的を発現する細胞に向けることを可能にする。共刺激ドメイン、例えば、4-1BB(CD137)共刺激ドメインを、細胞内領域中にCD3ζと直列に含めることによって、T細胞が、共刺激シグナルを受け取ることが可能となる。
【0083】
例示目的で、第1世代CARは、T細胞によって発現されると、それらが所定の疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原)を再度標的とすることできる人工受容体を表す。このようなCARは、通常、T細胞受容体(TCR)由来シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ζと融合している、標的特異的抗体(例えば、腫瘍抗原)に由来する一本鎖可変断片(scFv)を含む。CARは、抗原と結合する際、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAMS)のリン酸化を引き起こし、細胞溶解、サイトカイン分泌及び増殖に必要なシグナルカスケードを開始し、内因性抗原プロセシング経路及びMHC拘束を迂回する。第2世代CARデザインは、活性化及び共刺激を増強するためのさらなるシグナル伝達ドメイン、例えば、CD28及び/又は4-1BBを含む。第2世代CARは、より多くのIL-2 分泌を誘導し、T細胞増殖及び残留性を増大し、より大きな腫瘍拒絶を媒介し、T細胞生存を延長すると観察されている。第3世代CARは、より強力なサイトカイン産生及び死滅能力で効力を増強するために、例えば、CD3ζ-CD28-OC40又はCD3ζ-CD28-41BBのように、複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせることによって作製される。
【0084】
本明細書において開示されるCARのエクトドメインは、一般に、標的抗原と結合する、標的化ドメイン、例えば、リガンド結合ドメイン又は抗原認識ドメインを含む。ある特定の実施形態では、標的化ドメインは、本明細書に記載されているように、天然T細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ一本鎖に由来する。好ましくは、このような標的化ドメインは、単純なエクトドメイン(例えば、HIV感染細胞を認識するためのCD4エクトドメイン)を有する。あるいは、このような抗原認識ドメインは、外来性認識成分、例えば、連結されたサイトカインを含む(これらのリードは、サイトカイン受容体を有する細胞の認識につながり得る)。一般に、本明細書において開示される方法に関して、所与の標的と高アフィニティで結合するほとんどすべてが、抗原認識領域として使用され得る。したがって、このような標的化ドメインは、通常、抗体に由来する。一部の実施形態では、標的化ドメインは、機能的な抗体断片又はその誘導体(例えば、scFv若しくはFab又は抗体の任意の適した抗原結合性断片)である。好ましい実施形態では、エクトドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含む。一部のこのような実施形態では、scFvは、モノクローナル抗体(mAb)に由来する。好ましい実施形態では、抗原特異的結合ドメイン(例えば、scFv)は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるSadelain Mら Nat Rev Cancer 2003 3巻:35~45頁に開示されるように、リンパ球活性化に関与する、膜貫通及び/又はシグナル伝達モチーフに融合される。また、任意選択でシグナルペプチド(SP)も含有し、その結果、CARが、グリコシル化され、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定され得る。scFvのアフィニティ/特異性は、大部分は、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)中の相補性決定領域(CDR)内の特異的配列によって駆動される。各VH及びVL配列は、3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を有する。
【0085】
一部の実施形態では、標的化ドメインは、天然抗体、例えば、モノクローナル抗体に由来する。一部の場合には、抗体は、ヒトである。一部の場合には、抗体は、ヒトに投与された場合にあまり免疫原性ではないものにする変更を起こしている。例えば、変更は、キメラ化、ヒト化、CDR移植、脱免疫化及び最も近いヒト生殖系列配列に対応するためのフレームワークアミノ酸の突然変異から選択される1つ以上の技術を含み得る。なおさらなる実施形態では、標的化ドメインは、リガンドベースの標的化ドメインであり、これでは、例えば、本明細書において開示されるscFvは、腫瘍マーカーのリガンドと置き換えられる。したがって、IL13受容体のリガンド(IL13R)を発現するCARによって、T細胞を神経膠芽腫上に発現されたIL13Rへ再度方向付けることが可能となる。
【0086】
また、少なくとも2つの分子標的(例えば、細胞特異的マーカー及び腫瘍抗原)と結合可能である二重特異的CARが開示される。また、異なる抗原、例えば、癌関連抗原と結合する別のCARとともにのみ働くように設計されたCARも開示されている。例えば、これらの実施形態では、第1のCARのエンドドメインは、シグナル伝達ドメイン(SD)又は共刺激性シグナル伝達領域(CSR)のみを含有するが、両方は含有しない。第2のCARは、活性化される場合に欠損シグナルを提供する。例えば、開示されるCARが、SDを含有し、CSRを含有しない場合に、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、CSRを含有する別のCAR(又はT細胞)が、そのそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化される。同様に、開示されるCARが、CSRを含有するが、SDを含有しない場合には、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、SDを含有する別のCAR(又はT細胞)が、そのそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化される。
【0087】
例示的抗原として、限定はしないが、腫瘍抗原、すなわち、腫瘍細胞によって産生される、免疫応答、特に、T細胞媒介性免疫応答を誘発するタンパク質が挙げられる。さらなる抗原結合ドメインは、腫瘍抗原の抗体又は天然リガンドであり得る。さらなる抗原結合ドメインの選択は、処置されるべき特定の種類の癌に応じて変わる。腫瘍抗原は、当技術分野で周知であり、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、EGFRvIII、IL-llRa、IL-13Ra、EGFR、FAP、B7H3、Kit、CA LX、CS-1、MUC1、BCMA、bcr-abl、HER2、β-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、アルファフェトプロテイン(AFP)、ALK、CD19、TIM3、サイクリンBl、レクチン反応性AFP、Fos関連抗原1、ADRB3、サイログロブリン、EphA2、RAGE-1、RUl、RU2、SSX2、AKAP-4、LCK、OY-TESl、PAX5、SART3、CLL-1、フコシルGM1、GloboH、MN-CA IX、EPCAM、EVT6-AML、TGS5、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、ポリシアル酸(polysialic acid)、PLAC1、RUl、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、ルイスY、sLe、LY6K、HSP70、HSP27、変異(mut) hsp70-2、M-CSF、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIBI、BORIS、プロスターゼ(prostase)、前立線特異的抗原(PSA)、PAX3、PAP、NY-ESO-1、LAGE-la、LMP2、NCAM、p53、p53突然変異体、Ras突然変異体、gplOO、プロステイン(prostein)、OR51E2、PANX3、PSMA、PSCA、Her2/neu、hTERT、HMWMAA、HAVCR1、VEGFR2、PDGFR-ベータ、サバイビン及びテロメラーゼ、レグマイン(legumain)、HPV E6,E7、精子タンパク質17、SSEA-4、チロシナーゼ、TARP、WT1、前立腺癌腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ML-IAP、MAGE、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-C1、MAGE-C2、アネキシン-A2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、メランA/MART 1、XAGE1、ELF2M、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、好中球エラスターゼ、肉腫転座ブレークポイント、NY-BR-1、エフリン(ephnn)B2、CD20、CD22、CD24、CD30、TIM3、CD38、CD44v6、CD97、CD171、CD179a、アンドロゲン受容体、FAP、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGFII、IGF-I受容体、GD2、o-アセチル-GD2、GD3、GM3、GPRC5D、GPR20、CXORF61、葉酸受容体(FRa)、葉酸受容体ベータ、ROR1、FlT3、TAG72、TN Ag、Tie 2、TEM1、TEM7R、CLDN6、TSHR、UPK2及びメソテリンが挙げられる。ある特定の好ましい実施形態では、腫瘍抗原は、葉酸受容体(FRa)、メソテリン、EGFRvIII、IL-13Ra、CD123、CD19、TIM3、BCMA、GD2、CLL-1、CA-IX、MUCl、HER2及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0088】
腫瘍抗原のさらなる限定されない例として、以下が挙げられる:分化抗原、例えば、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2及び腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pi 5;過剰発現された胚性抗原、例えば、CEA;過剰発現された癌遺伝子及び突然変異腫瘍抑制遺伝子、例えば、p53、Ras、HER-2/neu;染色体転座に起因する独特の腫瘍抗原;例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;並びにウイルス抗原、例えば、エプスタインバーウイルス抗原EBVA及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7。他の大きなタンパク質ベースの抗原として、SCCA、GP73、FC-GP73、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータHCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCASl、SDCCAG1 6、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリン(cyclophilm)C関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、GPC3、MUC16、TAG-72、LMP1、EBMA-1、BARF-1、CS1、CD319、HER1、B7H6、L1CAM、IL6及びMETが挙げられる。
【0089】
膜貫通ドメイン(TD)は、エクトドメイン(すなわち、細胞外ドメイン)と、エンドドメイン(すなわち、細胞内ドメイン)を接続し、細胞によって発現されると細胞膜内に存在する。膜貫通ドメインは、天然又は合成供給源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合には、ドメインは、任意の膜結合又は膜貫通タンパク質に由来し得る。例えば、膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8アルファ、CD8ベータ)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137又はCD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R α、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(タクタイル(Tactile))、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR及びPAG/Cbpに由来し得る(すなわち、少なくともその膜貫通領域(複数可)を含む)。あるいは、膜貫通ドメインは、合成であってもよく、その場合には、主に、疎水性残基、例えば、ロイシン及びバリンを含む。一部の実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンの三つ組が、合成膜貫通ドメインの各末端に見られる。例えば、2から10個の間のアミノ酸の長さの短いオリゴ-又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと内質ドメイン(the endoplasmic domain)の間の連結を形成し得る。
【0090】
エンドドメインは、抗原認識後に活性化シグナルを、免疫エフェクター細胞に伝達し、前記免疫エフェクター細胞の正常エフェクター機能のうち少なくとも1つを活性化する。ある特定の実施形態では、T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解性活性又はヘルパー活性であり得る。一般に、エンドドメインは、細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)及び任意選択で、共刺激シグナル伝達領域(CSR)を含有し得る。エンドドメインは、T細胞受容体(TCR)及び任意選択の共受容体のISDを含み得る。細胞内シグナル伝達ドメインの全体が使用され得るが、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの末端切断型部分が使用される限りで、このような末端切断型部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限りで無傷の鎖の代わりに使用され得る。「シグナル伝達ドメイン(SD)」例えば、ISDは、一般に、刺激的な様式で作用するTCR複合体の一次活性化を調節し、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフからなる細胞質シグナル伝達配列を含有する。シグナル伝達カスケードは、ITAMがリン酸化されると活性化される。用語「共刺激シグナル伝達領域(CSR)」とは、共刺激タンパク質受容体に由来する細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28、41BB及びICOSを指し、これらは、T細胞受容体によるT細胞活性化を増強できる。一部の実施形態では、エンドドメインは、SD又はCSRを含有するが、両方は含有しない。これらの実施形態では、開示されるCARを含有する免疫エフェクター細胞は、欠損ドメインを含有する別のCAR(又はT細胞受容体)がまた、そのそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化される。ITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例として、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32(FcガンマRIIa)、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、FcγRIγ、FcγRIIIγ、FcεRIβ(FCERIB)及びFcεRIγ(FCERIG)に由来するものが挙げられる。
【0091】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)(TCRゼータ、GenBank受託番号BAG36664.1)に由来する。T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ(CD3ζ)鎖は、T細胞受容体T3ゼータ鎖又はCD247(分化抗原群247)としても知られ、ヒトでは、CD247遺伝子によってコードされるタンパク質である。CD3分子の細胞内尾部は、単一ITAMを含有し、これは、TCRのシグナル伝達能にとって必須である。ζ鎖(CD3ζ)の細胞内尾部は、3つのITAMを含有する。一部の実施形態では、ζ鎖は、突然変異体ζ鎖である。例えば、突然変異体ζ鎖は、前記ITAMを非機能的にするために少なくとも1つのITAMにおいて突然変異、例えば、点突然変異を含む。一部のこのような実施形態では、膜近位のITAM(ITAM1)、膜遠位のITAM(C末端の第3のITAM、ITAM3)のいずれか、又は両方が非機能的である。さらなる実施形態では、2つの膜近位ITAMS(ITAM1及びITAM2)又は2つの膜遠位ITAMS(ITAM2及びITAM3)が非機能的である。なおさらなる実施形態では、ITAM2のみが非機能的である。一部の実施形態では、突然変異体ζ鎖は、欠失(例えば、末端切断(truncation))突然変異を含み、その結果、少なくとも1つのITAMが欠損している。一部のこのような実施形態では、ζ鎖は、膜近位ITAM(ITAM1)、膜遠位ITAM(ITAM3)又は両方を欠損している。他の実施形態では、ζ鎖は、2つの膜近位ITAMS(ITAM1及びITAM2)のいずれか又は2つの膜遠位ITAMS(ITAM2及びITAM3)を欠損している。さらなる実施形態では、ζ鎖は、ITAM2を欠損している。突然変異体CD3ζを産生するための方法は、当業者に公知である(参照により本明細書に組み込まれるBridgeman JSら、Clin Exp Immunol. 2014年2月;175巻(2号):258~67頁及びWO2019/133969)。導入されるCARから少なくとも1つのITAMを除去することによって、CD3ζ媒介性アポトーシスが低減され得る。あるいは、導入されるCARから少なくとも1つのITAMを除去することによって、機能を失うことなくその大きさを低減することができる。
【0092】
一部の実施形態では、CARは、ヒンジ配列を含む。ヒンジ配列は、抗体可動性を促進するアミノ酸の短い配列である(例えば、Woofら、Nat. Rev. Immunol.、4巻(2号):89~99頁(2004)を参照されたい)。ヒンジ配列は、抗原認識部分(例えば、抗-CD19、-CD20、-CD22又は-CLEC4 scFv)と膜貫通ドメインの間に位置づけられ得る。ヒンジ配列は、任意の適した分子に由来する、又はそれから得られた任意の適した配列であり得る。一部の実施形態では、例えば、ヒンジ配列は、CD8a分子又はCD28分子に由来する。
【0093】
好ましい実施形態では、開示されるCARは、次式によって定義される:
SP-TD-HG-TM-CSR-SD、又は
SP-TD-HG-TM-SD-CSR
[式中、「SP」は任意選択のシグナルペプチドを表し、
「TD」は、標的化ドメインを表し、
「HG」は、任意選択のヒンジドメイン(スペーサードメイン)を表し、
「TM」は、膜貫通ドメインを表し、
「CSR」は、1つ以上の共刺激シグナル伝達領域を表し、
「SD」は、シグナル伝達ドメインを表し、
「-」は、ペプチド結合又はリンカーを表す]。
【0094】
一部の実施形態では、CARは、1つのシグナル伝達ドメインを含有する。他の実施形態では、CARは、1つ以上のシグナル伝達ドメインを含有する(共刺激シグナル伝達ドメインを含む)。1つ以上のシグナル伝達ドメインは、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRIβ、FcεRIγ、DAP10、DAP12、CD32、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、CD137 (41BB)、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40及びそれらの突然変異体から選択されるポリペプチドであり得る。例えば、CARのエンドドメインは、それ自体で、又は本発明のCARに関連して有用である任意の他の所望の細胞質ドメイン(複数可)と組み合わせて、CD3ζシグナル伝達ドメインを含むように設計され得る。あるいは、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖部分及び共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な反応にとって必要である抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例として、CD27、CD28、4-1BB (CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、並びにCD83、CD8、CD4、b2c、CD80、CD86、DAP10、DAP12、MyD88、BTNL3、NKG2D及びそれらの突然変異体と特異的に結合するリガンドが挙げられる。したがって、CARは、共刺激シグナル伝達エレメントとして主にCD28とともに例示されるが、その他の共刺激エレメント及びその突然変異体が、単独で又は他の共刺激シグナル伝達エレメントと組み合わせて使用され得る。例えば、一部のこのような実施形態では、好ましいCAR共刺激シグナル伝達ドメインは、WO2019/010383に記載されるように「Mut06」として知られるCD28突然変異体ドメインである。
【0095】
一部の実施形態では、CARは、1つより多くの膜貫通ドメインを有し、これらは、同一膜貫通ドメインの反復でも、異なる膜貫通ドメインでもあり得る。
【0096】
一部の実施形態では、CARは、WO2015/039523に記載されるような多鎖CARであり、これは、この教示のために参照により組み込まれる。多鎖CARは、異なる膜貫通ポリペプチド中に別個の細胞外リガンド結合及びシグナル伝達ドメインを含み得る。シグナル伝達ドメインは、膜近傍位置において組み立てられるように設計することができ、これによって、天然受容体に近い柔軟な構造が形成され、最適シグナル伝達を付与する。例えば、多鎖CARは、FCERIアルファ鎖の一部及びFCERIベータ鎖の一部を含むことができ、その結果、FCERI鎖は、自発的に一緒に二量体化して、CARを形成する。
【0097】
さらなるCAR構築物は、例えば、その全文が、これらのCARモデルの教示のために参照により組み込まれる、Fresnak ADら、Engineered T cells: the promise and challenges of cancer immunotherapy. Nat Rev Cancer. 2016年8月23日;16巻(9号):566~81頁に記載されている。
【0098】
ある特定の実施形態では、CARは、例えば(限定するものではないが)、TRUCK、ユニバーサルCAR、自己駆動(Self-driving)CAR、装甲した(Armored)CAR、自己破壊(Self-destruct)CAR、条件付き(Conditional)CAR、マークが付けられた(Marked)CAR、TenCAR、デュアル(Dual)CAR又はsCARであり得る。
【0099】
TRUCK(ユニバーサルサイトカイン死滅に再指向されたT細胞)は、キメラ抗原受容体(CAR)及び抗腫瘍サイトカインを同時発現する。サイトカイン発現は、構成的である場合も、T細胞活性化によって誘導される場合もある。CAR特異性によって標的とされる、炎症促進性サイトカインの局在化された産生は、内因性免疫細胞を腫瘍部位に動員し、抗腫瘍反応を増強し得る。
【0100】
ユニバーサルな同種(allogeneic)CAR T細胞は、内因性T細胞受容体(TCR)及び/又は主要組織適合性複合体(MHC)分子をもはや発現しないように操作され、それによって、それぞれ移植片対宿主病(GVHD)又は拒絶を防ぐ。
【0101】
自己駆動CARは、CARと、腫瘍リガンドと結合し、それによって、腫瘍ホーミングを増強するケモカイン受容体を同時発現する。
【0102】
本明細書において開示されるある特定の態様では、本発明は、免疫チェックポイント阻害/遮断戦略を使用する。免疫チェックポイント療法は、免疫応答を刺激又は阻害する免疫系の重要な制御因子を標的とする。このような免疫チェックポイントは、免疫系による攻撃を逃れるために疾患状態において(例えば、腫瘍によって)利用され得る。チェックポイント阻害剤研究によって、PD-1阻害剤療法の活性が述べられ(El-Khoueiry、Sangroら、2017)、FDAが、HCCの二次処置のためにニボルマブを20%の客観的奏効率で承認した。免疫抑制に対して抵抗性であるように操作されたCAR T細胞(装甲したCAR)は、種々の免疫チェックポイント分子(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)又はプログラム細胞死タンパク質1(PD-1))をもはや発現しないように遺伝子改変され得る。例示的「ノックダウン」及び「ノックアウト」技術として、限定はしないが、RNA干渉(RNAi)(例えば、asRNA、miRNA、shRNA、siRNAなど)及びCRISPR干渉(CRISPRi)(例えば、CRISPR-Cas9)が挙げられる。ある特定の実施形態では、CAR T細胞は、ドミナントネガティブ形態のチェックポイント分子を発現するように操作される。一部のこのような実施形態では、免疫チェックポイント分子の細胞外リガンド結合ドメイン(すなわち、エクトドメイン)が膜貫通膜に融合されて、リガンド結合について競合する。例えば、PD-1の細胞外リガンド結合ドメインがCD8膜貫通ドメインに融合されてもよく、したがって、標的細胞由来のPD-1リガンドについて競合する。一部の実施形態では、CAR T細胞は、標的細胞上に存在する阻害性免疫チェックポイントリガンドを利用するために免疫チェックポイントスイッチ受容体を発現するように操作される。このような実施形態では、免疫チェックポイント分子の細胞外リガンド結合ドメインが、シグナル伝達、刺激及び/又は共刺激ドメインに融合される。例えば、PD-1の細胞外リガンド結合ドメインがCD28ドメインに融合されてもよく、したがって、PD-1シグナル伝達を遮断しながらCD28共刺激を提供する。さらなる実施形態では、CAR T細胞は、免疫チェックポイントシグナル伝達を遮断するアプタマー又はモノクロー
ナル抗体とともに投与され得る。一部のこのような実施形態では、CAR T細胞(例えば、CAR T細胞療法)は、PD-1遮断法、例えば、PD-1/PD-L1拮抗性アプタマー又は抗PD-1/PD-L1抗体との投与と組み合わされる。好ましい実施形態では、CAR T細胞及びPD-1経路遮断抗体は、共同で投与される。さらなる実施形態では、CAR T細胞は、免疫チェックポイント遮断抗体、例えば、抗PD-1又は抗PD-L1又はその断片を発現する、又は発現及び分泌するように操作される。なおさらなる実施形態では、CAR T細胞は、本明細書に記載される免疫チェックポイント遮断分子を発現するベクター(例えば、操作されたウイルス)で投与される。
【0103】
自己破壊CARは、エレクトロポレーションによって送達されるRNAを使用して、CARをコードするように設計され得る。あるいは、T細胞の誘導性アポトーシスは、遺伝子改変リンパ球においてチミジンキナーゼと結合したガンシクロビル、又は小分子二量体化剤によるヒトカスパーゼ9の活性化のより最近記載された系に基づいて達成され得る。
【0104】
条件付きCAR T細胞は、小分子を添加して「回路」(例えば、分子経路)を完成させ、シグナル1及びシグナル2の両方の完全伝達を可能にし、それによって、CAR T細胞を活性化するまで、デフォルトで非反応性又はスイッチ「オフ」されている。あるいは、T細胞は、標的抗原に対するその後に投与される二次抗体に対して親和性を有するアダプター特異的受容体を発現するように操作され得る。
【0105】
マークが付けられたCAR T細胞は、CAR及び既存のモノクローナル抗体物質が結合する腫瘍エピトープを発現する。許容されない有害効果の設定では、モノクローナル抗体の投与は、CAR T細胞を除去し、追加のオフ腫瘍効果を伴わずに症状を軽減する。
【0106】
タンデムCAR(TanCAR)T細胞は、細胞内共刺激ドメイン(複数可)及びCD3ζドメインに融合された、異なる親和性を有する2つの連結した一本鎖可変断片(scFv)からなる単一CARを発現する。TanCAR T細胞活性化は、標的細胞が両標的を同時発現する場合にのみ達成される。
【0107】
デュアルCAR T細胞は、異なるリガンド結合標的を有する2つの別個のCARを発現する。限定されない例として、一方のCARは、CD3ζドメインのみを含み得るのに対し、もう一方のCARは、共刺激ドメイン(複数可)のみを含む。一部のこのような実施形態では、デュアルCAR T細胞は、腫瘍で両標的が発現される場合に活性化される。
【0108】
安全性CAR(sCAR)は、細胞内阻害性ドメインに融合された細胞外scFvからなる。標準CARを同時発現するsCAR T細胞は、標準CAR標的を有するが、sCAR標的を欠く標的細胞と遭遇する場合にのみ活性化になる。
【0109】
また、開示される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)において前記CARの発現を可能にする開示される標的特異的CARをコードするポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドベクターも開示される。
【0110】
開示されるCAR及びその領域をコードする核酸配列は、例えば、標準技術を使用して、遺伝子を発現する細胞から得たライブラリーをスクリーニングすることによって、それを含むと知られているベクターから遺伝子を引き出すことによって、又はそれを含有する細胞及び組織から直接的に単離することによってなど、当技術分野で公知の組換え法を使用して得ることができる。あるいは、目的の遺伝子をクローニングするよりも、合成によって生成することができる。
【0111】
CARをコードする核酸の発現は、通常、CARポリペプチドをコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結すること及び構築物を発現ベクター中に組み込むことによって達成される。通常のクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の調節にとって有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列及びプロモーターを含有する。
【0112】
開示される核酸は、多くの種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、限定はしないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むベクター中にクローニングされ得る。特に目的のベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター及びシーケンシングベクターが挙げられる。
【0113】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)に、並びにその他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、限定はしないが、レトロウイルス(例えば、ガンマレトロウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。一般に、適したベクターは、少なくとも1種の生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、有用な制限エンドヌクレアーゼ部位及び1つ以上の選択可能なマーカーを含有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドベクターは、レンチウイルス又はレトロウイルスベクターである。好ましくは、ポリヌクレオチドベクターは、ガンマレトロウイルスベクターである。
【0114】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のために、いくつかのウイルスベースの系が開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための有用なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野で公知の技術を使用して、ベクター中に挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスは、単離され、in vivo又はex vivoのいずれかで対象の細胞に送達され得る。
【0115】
適したプロモーターの1つの例として、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列がある。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動可能な強力な構成プロモーター配列である。適したプロモーターの別の例として、伸長増殖因子-1α(EF-1α)がある。しかし、限定はしないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、MND(骨髄増殖性肉腫ウイルス)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター並びにヒト遺伝子プロモーター、例えば、限定はしないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモーターを含む、その他の構成プロモーター配列も使用され得る。プロモーターは、あるいは、誘導プロモーターであってもよい。誘導プロモーターの例として、限定はしないが、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0116】
さらなるプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。通常、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流に同様に機能的エレメントを含有すると最近わかった。プロモーターエレメントの間の間隔は、柔軟であることが頻繁にあり、その結果、エレメントが互いに対して反転されるか、又は移動される場合に、プロモーター機能が保たれる。
【0117】
トランスフェクトされた可能性がある細胞を同定するために、及び調節配列の機能を評価するためにレポーター遺伝子が使用される。一般に、レポーター遺伝子とは、レシピエント生物又は組織中に存在しない、又はそれによって発現されない遺伝子であり、その発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞中に導入された後の適した時間でアッセイされる。適したレポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌性アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を挙げることができる。適した発現系は、周知であり、公知の技術を使用して調製してもよく、又は商業的に得てもよい。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5'フランキング領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーターによって駆動される転写をモジュレートする能力について物質を評価するために使用され得る。
【0118】
細胞中に遺伝子を導入し、発現させる方法は、当技術分野で公知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫細胞中に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞中に移行され得る。
【0119】
ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための物理的方法として、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を生成する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrookら (2001、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照されたい。
【0120】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための生物学的方法として、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えば、ヒト細胞中に挿入するための最も広く使用される方法となっている。
【0121】
ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための化学的手段として、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質をベースとする系が挙げられる。in vitro及びin vivoで送達ビヒクルとして使用するための例示的コロイド系として、リポソーム(例えば、人工膜小胞)がある。
【0122】
非ウイルス送達システムが利用される場合には、例示的送達ビヒクルは、リポソームである。別の態様では、核酸は、脂質と会合され得る。脂質と会合している核酸は、リポソームの水性内部中に被包され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合している連結分子によってリポソームに付着され、リポソーム中に封入され、リポソームと複合体形成され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中の懸濁液として含有され、ミセルと含有若しくは複合体形成され、又はそうでなければ脂質と会合され得る。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二層構造で、ミセルとして、又は「破綻した」構造を有して存在し得る。それらはまた、溶液中に簡単に散在し、大きさ又は形状が均一ではない凝集体を形成する可能性があり得る。脂質は、天然に存在する脂質であっても、合成脂質であってもよい脂肪性物質である。例えば、脂質は、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴並びに長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール及びアルデヒドを含有する化合物のクラスを含む。使用に適した脂質は、商業的供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma、ST. Louis、Moから入手でき、ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K & K Laboratories (Plainview、N.Y.)から入手でき、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手でき、ジミリスチル ホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids、Inc、(Birmingham、Ala.)から入手できる。
【0123】
選択
CARポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞(例えば、抗原特異的T細胞)中に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトされる又は感染することが求められた細胞の集団からの発現している細胞の同定及び選択を容易にするために、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれか又は両方を含有してもよい。他の実施形態では、選択可能なマーカーは、DNAの別個の小片に保持され、同時トランスフェクション手順において使用され得る。選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子は両方とも、宿主細胞における発現を可能にする適当な調節配列でフランキングされ得る。一部の実施形態では、CARをコードするベクターは、レンチウイルスベクターを含む。一部の好ましい実施形態では、CARをコードするベクターは、ガンマレトロウイルスベクターを含む。最も好ましくは、CARをコードするベクターは、前記ベクターによってコードされるCAR(複数可)を発現する細胞のみの選択を可能にする、選択可能なマーカー又は物理的タグをコードする核酸配列を含む。有用な選択可能なマーカーとして、限定はしないが、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子又は物理的タグの発現が挙げられる。物理的タグとして、限定はしないが、末端切断型細胞表面ペプチド(例えば、細胞内シグナル伝達ドメインを欠く細胞表面受容体)を挙げることができ、当技術分野で公知の方法を使用して適当な抗体で選択され得る。一部の実施形態では、CARをコードするベクターは、抗生物質耐性遺伝子、例えば、ボル(bor)ブラストサイジン耐性をコードする核酸配列を含む。一部のこのような実施形態では、CAR T細胞(例えば、抗原特異的CAR T細胞)が、選択可能なマーカー(例えば、ブラストサイジン)の存在下で培養され、それによって、本明細書に記載されるCARを発現するT細胞の選択及び拡大増殖が可能となる。
【0124】
治療方法
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、対象に、本明細書において提供されるような自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞を投与することによって、対象において癌及び/又は自己免疫障害を処置することを対象とする。
【0125】
本開示の方法は、幾分かは、特定の標的抗原へのT細胞拘束の原理に依存する。例えば、限定するものではないが、ウイルス、例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)によって発現された抗原に対して標的化されたドナー由来CTLを含む生成物及び調製物は、EBVによって形質転換されたBリンパ芽球(BLCL)を含む標的化された抗原提示(例えば、スティミュレーター)細胞株で誘発され得る。開示されるウイルス抗原特異的CAR T細胞調製物(例えば、抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTL)に関して、本明細書において提供される方法によって作製されたCAR-T生成物の標的細胞及び/又はレシピエントは、自己(autologous)又は同種(allogeneic)であり得る。同種(allogeneic)標的の場合には、ドナーのヒト白血球抗原(HLA)のアイデンティティは、知られており、標的(すなわち、培養された細胞株及び/又はレシピエント)のHLAのアイデンティティに対して適合していなくてはならない。
【0126】
CAR T細胞の調製物は、抗原特異的及び非特異的CTLの混合物を有し得る。したがって、アロ反応性CTL(例えば、CARを伴う、又は伴わない抗原特異的CTL)を定量するためには、HLA不適合標的に対する反応が誘発される。理想的には、細胞溶解は、最小又は所定の閾値未満でなければならない。さらに、拡大増殖可能なCTL又はCARを発現するCTLのレベルは、限界希釈アッセイ及び同種(allogeneic)標的に対する細胞傷害性の希釈によって定量され得る。
【0127】
本明細書において開示されるアッセイの標的細胞は、通常、その均一表現型及び大量での入手可能性について選択される。ある特定の実施形態では、標的細胞株は、抗原提示細胞(APC)である。一部のこのような実施形態では、標的細胞株は、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞又は人工抗原提示細胞(例えば、aK562細胞)である。ある特定の実施形態では、標的細胞株は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む。一部のこのような実施形態では、標的細胞株は、リンパ芽球である。ある特定の好ましい実施形態では、標的細胞株は、ウイルスによって形質転換される。好ましい実施形態では、標的細胞株は、フィトヘマグルチニンによって刺激された末梢血リンパ球(PHA芽球/PHAbs)及びエプスタインバーウイルスによって形質転換されたBリンパ芽球様細胞株(BLCL)の各々を含む。CARを発現する抗原特異的CTLの評価について本明細書において例示されるように、BLCLは、高い生存性並びに相当な乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)及び/又は大きな細胞内クロム(Cr)リザーバーを保持する能力を有する大きな細胞であるという利点を有し、これは、それらをCr又はLDH放出アッセイによる細胞傷害性評価にとって好都合なものにする。しかし、EBV抗原の場合には、BLCL(例えば、APCとして使用されるもの)は、EBV抗原陽性であり、これは、不適合HLA対立遺伝子に対して特異的であるT細胞受容体(TCR)に対するEBV抗原特異的交差提示を可能にする。PHA芽球は、EBV抗原陰性であるという利点を有し、TCRに対してEBV抗原を交差提示できない。それでも、PHA芽球は、より小さく、一般に、より脆い細胞である。これは、より小さいリザーバー及びレポーターの透過性をもたらし、最終的に偽陽性細胞傷害性結果のより高い可能性を提供する。したがって、BLCL及びPHA芽球は、同一ドナーに由来する標的対として使用され得る。一部のこのような実施形態では、投与されるべきCAR T細胞調製物の適当な選択を導くために、標的細胞は、本明細書に記載される同種(allogeneic)CAR T細胞調製物の有望なレシピエントに由来する。
【0128】
ある特定の実施形態では、調製物が、所定の閾値を超える複数の標的細胞株において溶解を誘導する場合には、方法は、標的細胞株を溶解可能な拡大増殖可能なCAR-T CTLの頻度を調製物において定量することさらに含み、サンプルは、所定の閾値以下であるレベルの拡大増殖可能なCAR-T CTLを含有する場合に、臨床的にアロ反応性ではないと同定される。ある特定の実施形態では、細胞溶解性の拡大増殖可能なCAR-T CTLの頻度を定量化する前に、調製物は、同種(allogeneic)PHA芽細胞細胞株及び同種(allogeneic)細胞株各々において15%より多い溶解を誘導する。
【0129】
一部の実施形態では、調製物中の拡大増殖可能なCAR-T CTLの頻度を定量化することは、例えば、限界希釈分析を実施することによってCAR-T CTL拡大増殖の期間後に細胞溶解性機能を評価することを含む。さらなる実施形態では、細胞溶解性機能を評価することは、検出法、例えば、放射性クロム(例えば、51Cr)放出又は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を実施することを含む。
【0130】
一部の実施形態では、標的細胞株は、同種(allogeneic)細胞を含む。一部のこのような実施形態では、標的細胞は、調製物のCAR-T CTLが拘束されるHLA対立遺伝子に適合しない、ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子を保持する。その他のこのような実施形態では、標的細胞は、調製物のCAR-T CTLが拘束されるHLA対立遺伝子に部分適合するHLA対立遺伝子を保持する。なおその他のこのような実施形態では、標的細胞は、調製物のCAR-T CTLが拘束されるHLA対立遺伝子に適合するHLA対立遺伝子を保持する。好ましい実施形態では、CAR-T CTLは、MHCクラスIタンパク質をコードする標的細胞のHLA対立遺伝子に拘束される。
【0131】
他の実施形態では、標的細胞株は、自己(autologous)細胞を含む。一部のこのような実施形態では、CAR-T CTL調製物は、所定の閾値の、それを超える、又はそれ未満の2つ以上の自己(autologous)標的細胞株を溶解する調製物の能力を確認することによって、標的細胞に対する使用に適していると同定される。
【0132】
ある特定の実施形態では、自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)を含み、例えば、細胞の少なくとも60%、70%、80%がTcm細胞である。一部の実施形態では、自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞は、少なくとも1:1から少なくとも3:1の、例えば 少なくとも1:1、1.4:1、2.5:1又は3:1のセントラルメモリーT細胞対エフェクターメモリー細胞(TCM:TEM)の比を含む。一部のこのような実施形態では、自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞は、主にCD4+T細胞である。一部の実施形態では、自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞は、少なくとも80%のCD4+ CAR-T細胞及び少なくとも15%のCD8+ CAR-T細胞を含む)。一部の実施形態では、自己(autologous)又は同種(allogeneic)CAR-T細胞は、少なくとも1:1から少なくとも3:1の、例えば、少なくとも1:1、1.4:1、2.5:1又は3:1のCD4+T細胞対CD8+T細胞の比を含む。本明細書に記載される方法の一部では、同種(allogenic)T細胞は、細胞バンク(例えば、エピトープ特異的T細胞の予め生成された第三者ドナー由来バンク)から選択される。
【0133】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法を使用して任意の自己免疫疾患を処置することができる。自己免疫疾患の例としては、例えば、糸球体腎炎、関節炎、拡張型心筋症様疾患、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、クローン病、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、スティル病、多発性硬化症、乾癬、アレルギー性接触皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、白斑尋常性ざ瘡、ベーチェット病、橋本病、アジソン病、皮膚筋炎、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、悪性貧血、無菌性疾患、天疱瘡、自己免疫性血小板性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、活動性慢性肝炎、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性無酸症、セリアック病、クッシング症候群、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、特発性副腎萎縮、特発性血小板減少症、インスリン依存性糖尿病、ランバート-イートン症候群、ルポイド肝炎、リンパ球減少症、複合性結合組織疾患、類天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、結節性多発動脈炎、多腺性自己免疫性症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、レイノー症候群、再発性多発性軟骨炎、シュミット症候群、限局性強皮症(又はクレスト症候群)、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、甲状腺中毒症、B型インスリン抵抗性、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎及びヴェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、MSを処置するために使用される。一部の実施形態では、MSは、再発寛解型MS、二次進行型MS、一次進行型MS又は進行性再発型MSである。
【0135】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、SADを処置するために使用される。例えば、特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス及び/又はシェーグレン症候群を処置するために使用される。
【0136】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、IBDを処置するために使用される。例えば、特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、クローン病(局所性腸疾患、例えば、不活性型及び活性型)、セリアック病(例えば、不活性型及び活性型)、及び/又は潰瘍性大腸炎(例えば、不活性型及び活性型)を処置するために使用される。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、過敏性腸症候群、顕微鏡的大腸炎、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、セリアック病、膠原性大腸炎、リンパ球性大腸炎、好酸球性腸炎、不確定性大腸炎、感染性大腸炎(ウイルス性、細菌性又は原生動物、例えば、アメーバ性大腸炎)(例えば、クロストリジウム・ディフィシル(clostridium dificile)大腸炎)、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、虚血性炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、強皮症、IBD関連異形成、異形成関連塊又は病変、及び/又は原発性硬化性胆管炎を処置するために使用される。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に記載の治療用CAR-T細胞調製物を対象に投与することにより対象において癌を処置する方法が本明細書に提供される。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、任意の癌を処置するために使用することができる。例えば、一部の実施形態において、本明細書に記載されている方法及びCAR-T細胞は、任意の癌性又は前癌性腫瘍を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、癌は固形腫瘍を含む。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法及び組成物によって処置され得る癌には、限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頚部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌又は子宮由来の癌細胞が含まれる。加えて、癌は、特に、以下の組織学的タイプであり得るが、これらに限定されない:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞癌及び紡錘細胞癌、小細胞癌、乳頭癌、扁平上皮癌、リンパ上皮癌、基底細胞癌、毛母癌、移行上皮癌、乳頭状移行上皮癌、腺癌、ガストリン産生腫瘍、悪性;胆管癌、肝細胞癌、肝細胞癌及び胆管癌の合併、索状腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫性ポリープにおける腺癌、腺癌、家族性結腸ポリポーシス、固形癌、カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌、乳頭状腺癌、色素嫌性癌、好酸性癌、好酸性腺癌、好塩基性癌、明細胞腺癌、顆粒細胞癌、濾胞腺癌、乳頭腺癌及び濾胞腺癌、非被包性硬化性癌、副腎皮質癌、類内膜癌、皮膚付属器癌、アポクリン腺癌、皮脂腺癌、耳垢腺癌、粘膜表皮癌、嚢胞腺癌、乳頭嚢胞腺癌、乳頭漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、粘液性腺癌、印環細胞癌、浸潤性導管癌、髄様癌、小葉癌、炎症性癌、乳房のパジェット病、腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮化生を伴う腺癌、悪性胸腺腫、悪性の卵巣間質腫、悪性莢膜細胞腫、悪性顆粒膜細胞腫、悪性男性ホルモン産生細胞腫(malignant roblastoma)、セルトリ細胞腫、悪性ライディッヒ細胞腫、悪性脂質細胞腫瘍、悪性傍神経節腫、悪性乳房外傍神経節腫、褐色細胞腫、血管球血管肉腫、悪性黒色腫、無色素性黒色腫、表在拡大型黒色腫、巨大色素性母斑における悪性黒色腫、類上皮細胞黒色腫、悪性青色母斑、肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、間質肉腫、悪性混合腫瘍、ミュラー管混合腫瘍、腎芽腫、肝芽腫、癌肉腫、悪性間葉腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、滑膜肉腫、悪性中皮腫、未分化胚細胞腫、胎児性癌、悪性奇形腫、悪性卵巣甲状腺腫、絨毛癌、悪性中腎腫、血管肉腫、悪性血管内皮腫、カポジ肉腫、悪性血管外皮腫、リンパ管肉腫、骨肉腫、傍骨性骨肉腫、軟骨肉腫、悪性軟骨芽細胞腫、間葉性軟骨肉腫、骨巨細胞腫、ユーイング肉腫、悪性歯原性腫瘍、エナメル芽細胞歯牙肉腫、悪性エナメル上皮腫、エナメル芽細胞線維肉腫、悪性松果体腫、脊索腫、悪性神経膠腫、上衣腫、星状細胞腫、原形質性星状細胞腫、線維性星細胞腫、星状芽細胞腫、神経膠芽腫、乏突起細胞腫、乏突起膠芽細胞腫、原始神経外胚葉性、小脳肉腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、嗅神経原性腫瘍、悪性髄膜腫、神経線維肉腫、悪性神経鞘腫、悪性顆粒細胞腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、側肉芽腫、小リンパ球性悪性リンパ腫、びまん性大細胞悪性リンパ腫、濾胞性悪性リンパ腫、菌状息肉腫、他の指定される非ホジキンリンパ腫、悪性組織球増殖症、多発性骨髄腫、肥満細胞肉腫、免疫増殖性小腸疾患、白血病、リンパ性白血病、形質細胞白血病、赤白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、骨髄性白血病、好塩基球性白血病、好酸球性白血病、単球性白血病、肥満細胞性白血病、巨核芽球性白血病、骨髄肉腫、並びにヘアリー細胞白血病。一部のこのような好ましい実施形態では、本明細書において提供される組成物及び方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)、ALL及び多数の非ホジキンリンパ腫を含むB細胞悪性腫瘍(例えば、CD19+悪性腫瘍)を処置するために使用され得る。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、EBV関連癌を処置するために使用される。一部の実施形態では、EBV関連癌は、EBV関連NPCである。一部の実施形態では、EBV関連癌は、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、NK/T細胞リンパ腫、EBV+胃癌、又はEBV+平滑筋肉腫である。
【0140】
一部の実施形態では、対象は、ウイルス粒子が対象の血液中で検出可能であるようなウイルス(例えば、EBV)に曝露されたものである。一部の実施形態では、方法はさらに、(例えば、ペプチド特異的CAR-T細胞を対象に投与する前又は後に)対象中のウイルス負荷を測定することを含む。対象中のウイルス負荷の決定は、免疫療法の有効性のための良好な予後マーカーであり得る。一部の実施形態では、CAR-T細胞の選択は、さらに、対象中の(例えば、組織又は血液サンプル中の)ウイルスDNAコピーの数を決定することを含む。一部の実施形態では、ウイルス負荷は、2回以上測定される。本明細書において提供される医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者についての所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量、組成、及び投与様式を達成するように変化させ得る。
【0141】
選択された投薬量レベルは、使用される特定の薬剤の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出又は代謝速度、処置期間、使用される特定の化合物と併用して使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態及び以前の病歴、並びに医学分野において周知である同様の因子などの様々な因子に依存する。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、細胞バンク(例えば、エピトープ特異的T細胞の予め生成された第三者ドナー由来バンク)から同種(allogeneic)T細胞を選択するステップを含む。一部の実施形態では、T細胞は、それらが、対象中に存在するHLA対立遺伝子によってコードされる、クラスI MHCに拘束されたTCRを発現するので選択される。一部の実施形態では、T細胞は、T細胞及び対象が、少なくとも2つ(例えば、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ)のHLA対立遺伝子を共有し、T細胞が共有されたHLA対立遺伝子によって拘束される場合に選択される。一部の実施形態では、本方法は、予め生成された第三者ドナー由来のエピトープ特異的T細胞(すなわち、同種T細胞)のTCRレパートリーをフローサイトメトリーで試験するステップを含む。一部の実施形態では、エピトープ特異的T細胞は、四量体アッセイ、ELISAアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、蛍光顕微鏡アッセイ、エドマン分解アッセイ及び/又は質量分析アッセイ(例えば、タンパク質配列決定)を使用して検出される。一部の実施形態では、TCRレパートリーは、核酸プローブ、核酸増幅アッセイ及び/又は配列決定アッセイを使用して分析される。
【0143】
一部の実施形態では、有効量の組成物を対象に投与することにより対象において自己免疫疾患を処置及び/又は予防するために使用される、本明細書において提供されるT細胞及び/又はAPCを含む組成物(例えば治療用組成物)が、本明細書において提供される。いくつかの態様では、組成物(例えば、同種(allogeneic)CTLを含む組成物などの医薬組成物)を使用して自己免疫障害を処置する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に提供されている複数の(例えば、2つ以上の)CTLの組合せを含む。
【0144】
[実施例]
[実施例1]
PBMC及び単離されたT細胞に由来するEBV CTLのCAR形質導入の比較
健常ドナー由来の凍結PBMCを解凍し、RPMI培地中に取り出した。細胞を2つの画分に分けた;細胞の1/3(スティミュレーター)に、AdE1-LMPpolyアデノウイルスを37℃で1時間感染させた。次いで、スティミュレーターを2回洗浄し、RPMI/AB血清培養培地に再懸濁し、2500cGy(2500ラド)で照射した。細胞の残りの2/3(レスポンダー)をRPMI/AB血清培地に移し、それらがスティミュレーター (例えば、PBMC由来BLCL)と混合され得るまで37℃で保持するか、又はCD3
+T細胞を単離するために使用し、次いで、それをスティミュレーターPBMCとともに培養した(
図1を参照されたい)。
【0145】
PBMC活性化
0日目に、9×106個の照射されたスティミュレーターPBMC細胞と2.1×107個のレスポンダーPBMC細胞との で6ウェル(10cm2)GRex培養プレートにおいて、培養を開始し、37℃、組織培養インキュベーションに戻した。任意選択であるが、9及び10日目に、形質導入の前に細胞培養物からCD56+、NK(ナチュラルキラー)細胞を枯渇させた。
【0146】
単離されたCD3
+T細胞の活性化
0日目に、当技術分野で公知の手段(例えば、生存FACS又は抗CD3コーティングされた磁性ビーズ)によってPBMCからT細胞を単離した(すなわち、濃縮した)。20U/ml IL2を含む培地を含有する6ウェル(10cm
2)GRex培養プレートで、1のT細胞/4のスティミュレーターPBMC細胞の比でT細胞を開始し、37℃、組織培養インキュベーションに戻した。9及び10日目に、細胞培養物に、CARを発現するように形質導入した(上記のとおり、形質導入の前のNK細胞枯渇は任意選択であった)。出発材料をウイルス抗原、例えば、EBVに対して感作させること(例えば、CD3
+濃縮後)は、得られる集団中のセントラルメモリー表現型T細胞のパーセンテージの増大をもたらす(
図2、左側を参照されたい)。これらのセントラルメモリーT細胞は、有利なことに、経時的に持続し、一方で、ウイルスによって感作された細胞ではT細胞消耗のマーカー(PD1及びCTLA4)は低いままである(
図2右側)。
【0147】
CAR形質導入
9及び10日目に、単離されたT細胞及びPBMC培養物を、抗CD19 CAR(及びブラストサイジン選択マーカー)をコードする組換えウイルスで形質導入した。手短には、各刺激条件のために24ウェル非組織培養処置プレートの各ウェルにレトロネクチン(0.5mL 10μg/mL)を添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、レトロネクチンを吸引によって除去し、各ウェルに0.5mLのブロッキングバッファーと置き換え、プレートを室温で30分間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄バッファーで洗浄した。抗CD19 CARをコードするウイルスを室温で解凍し、プレートに添加した。プレートをパラフィンフィルムで包み、32℃、2000×gで2時間遠心分離した。ウイルス上清を吸引し、各刺激群から1mlの調製された細胞懸濁液(YH5培地に再懸濁された0.5×106細胞/mL)を添加した。プレートを、32℃、1000×gで15分間遠心分離し、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。次いで、各刺激条件の細胞を取り出し、カウントのためにプールした。細胞を、0.5~1.0×106細胞/mLで新鮮なYH5培地に再懸濁した。
【0148】
11日目に、各刺激状態(すなわち、単離されたT細胞の、又はレスポンダーPBMCの)を、照射されたスティミュレーターPBMCとともに培養に戻した。15、23及び27日目の各々で、蛍光活性化細胞選別(FACS)のためにサンプルを採取した(例えば、CD3+、scFV+細胞のために)。19日目に薬物選択(ブラストサイジン)を誘導した。
【0149】
結果
単離されたT細胞に由来するEBV-CTLは、改善された生存性及び増殖能を実証する。CD3
+濃縮された出発材料は、従来の拡大増殖及び形質導入条件を上回って10倍を超える多い収量を有し、これは、有意に改善された生存性及び増殖能を実証する(
図3を参照されたい)。下流CARベクター形質導入の効率は、増殖能に応じて変わる。したがって、抗原刺激されたT細胞におけるより高い生存性及び増殖能は、改善された下流CAR形質導入効率もたらす。粗PBMC培養物における形質導入と比較した場合に、最初のCD3
+濃縮ステップから導かれたCAR
+ EBV CTLは、BLCL刺激後の下流CAR形質導入効率の有意な増強を実証し、ブラストサイジン選択に応じてより大きな細胞生存性も示す(
図4を参照されたい)。
【0150】
[実施例2]
BLCL刺激後の抗CD19-CAR-EBV-CTL fでのメモリーT細胞表現型の評価
標準抗CD3/CD28ビーズをベースとする刺激は、CARベクターでの形質導入の前に、in vitroでT細胞を拡大増殖する方法として、本分野において広く使用されている。最終治療製品のためのメモリーT細胞免疫表現型での高収量製造プロセスに適した種々のCAR-T細胞刺激の影響を決定するために以下の実験を行った。
【0151】
研究デザイン及び手順
単離されたCD3+、EBV抗原特異的T細胞を刺激し、4つの異なる培養条件で3日間拡大増殖させた;
1.未刺激、
2.可溶性抗CD3/CD28、
3.抗CD3/CD28磁性ビーズ、及び
4.BLCL細胞で。
【0152】
3日の刺激後、各培養物を、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入し、標準(YH培地)培養物における7日間のインキュベーションに戻して、形質導入されたT細胞の拡大増殖を可能にした。次いで、細胞を回収し、
図5に概説されるように)、細胞染色及び蛍光活性化細胞選別(FACS)によって細胞表現型分析した。
【0153】
細胞株及び培養条件
CD3
+、EBV抗原特異的T細胞を液体窒素保管から取り出し、解凍し、2×10
6細胞/mLの濃度で、100IU/mLのIL-2とともにYH培地に懸濁した。ウェルあたり2mLの懸濁液を用いて、懸濁液を24ウェルプレートにプレーティングし、一晩インキュベートした。この一晩の回復後、細胞をカウントし、
図5に記載されるように(表2も参照されたい)、1×10
6個細胞/mLの濃度で群あたり6×10
6個の細胞の4つの異なる処置群に分けた。
【0154】
【0155】
1:1の細胞:ビーズ比で抗CD3/CD28ダイナビーズでの刺激を行った。細胞懸濁液への直接添加の前に、十分な容量のビーズを取り出し、DPBSで洗浄した。したがって、刺激培養物を、上記のように24ウェルプレートにおいてウェルあたり100IU/mL IL-2を用いて2mL YH5培地でプレーティングし、3日間インキュベートした。
【0156】
1mLあたり25μlの濃度(すなわち、上記のように、24ウェルプレートのウェルあたり50μl)でのCD3/CD28 ImmunoCulT(商標)試薬の直接添加によって、可溶性抗CD3/CD28での刺激を行い、3日間インキュベートした。
【0157】
EBVによって形質転換されたリンパ芽球様B細胞株(BLCL)での刺激を、1のEBV抗原特異的T細胞に対して4のBLCLの比で行った。手短には、CD3+、EBV抗原特異的T細胞を液体窒素保管から取り出し、解凍し、YH培地に懸濁し、回復を可能にした。刺激培養のための準備では、90Gy(9000ラド)の総用量の照射でEBV-BLCLに照射した。EBV-BLCL抗原特異的T細胞を、YH5培地中で、上記と同一の24ウェルプレート中の100IU/mL IL-2と組み合わせ、3日間インキュベートした。
【0158】
CAR形質導入
形質導入の準備では、24ウェルプレートを以下のとおりに準備した:0.5mLのレトロネクチン(10μg/mL)を24ウェル非組織培養処置プレート各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、レトロネクチンを除去し、0.5mLのブロッキングバッファーと置き換え、室温で30分間インキュベートした。次いで、ブロッキングバッファーを除去し、少なくとも1mLの洗浄バッファーで各ウェルを洗浄した。使用の準備が整うまで、プレートを洗浄バッファーとともに4℃で維持した。
【0159】
CAR(4-1BB又はCD28シグナル伝達ドメインのいずれかを含む)をコードするレンチウイルスベクターを室温で解凍し、レトロネクチンコーティングされたプレートの各ウェルに添加して、MOI(多重感染度)又は15ウイルス粒子/細胞を達成した(表2を参照されたい)。次いで、プレートをパラフィンフィルムで包み、32℃、2000×gで2時間遠心分離し、その時間の間に、各刺激群から得た細胞をカウントし、YH5培地に0.5×106細胞/mL濃度で再懸濁した。遠心分離後、各ウェルからウイルス上清を吸引し、対照ウェルを含めて、1mLの調製された細胞懸濁液と置き換えた。プレートを、1000×gで15分間、32℃で遠心分離し、次いで、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。
【0160】
【0161】
各刺激群から得た細胞をプールし、カウントし、1mLの新鮮YH5培地当たり0.5~1.0×10
6細胞の濃度で再懸濁し、その後、37℃、5%CO
2で2日間のインキュベーションに戻した。プールすること及び再懸濁は、7日目(回収)まで2日毎に反復した。ひとたび回収された細胞は標識し(表3を参照されたい)、フローサイトメトリーゲーティング戦略を適用して、CARを発現するT細胞でCD3、CD4、CD8、CD62L及びCD45ROを同定した(
図6を参照されたい)。手短には、目的の細胞シグナルを大きさ及び粒度(すなわち、前方散乱(FSC)対側方散乱(SSC))によってまず同定した。次いで、生存性色素(例えば、Live/Dead(商標)BV510)での染色に基づいて生細胞を同定した。次いで、パルス面積対パルス高さ(FSC-A対FSC-H)に基づいて生存単細胞にゲートをかけた。次いで、蛍光標識抗体を使用して、個々のCD3
+T細胞及びその後の亜集団(例えば、CD4
+、CD8
+、セントラルメモリーT細胞)を同定できた。
【0162】
結果
【0163】
【0164】
フローサイトメトリー評価によって、可溶性CD3/CD28又はビーズ刺激と比較してCD62L
+/CD45RO
+細胞によって評価されるように、EBV-BLCLで刺激された形質導入されたCD19-CAR-T細胞は、セントラルメモリーT細胞サブセットのより高いパーセンテージを示すことが示された(
図7を参照されたい)。可溶性又はビーズが結合したCD3/CD28で刺激されたCD19-CAR-T細胞は、BLCL刺激された細胞と比較してCD62L
-/CD45RO
+細胞によって評価されるように、エフェクターメモリーT細胞サブセットのより高いパーセンテージを有していた(表4を参照されたい)。
【0165】
【0166】
CD19-CAR-T細胞でCD4及びCD8発現も評価した。CD19-CAR-T細胞のCD3
+集団のうち、CD3/CD28刺激と比較してBLCLで刺激された場合にCD4
+細胞のより高いパーセンテージがあった(
図8及び表5を参照されたい)。
【0167】
これらのデータは、CARを標的とする抗原を発現するBLCLでのCAR-T細胞培養物の刺激が、ビーズと結合している抗体又は可溶性抗体によるCD3/CD28刺激からの結果と比較した場合に、優勢のセントラルメモリー表現型へのシフトにつながることを実証する。この研究は、標準抗CD3/CD28ビーズ又はその他の無細胞様式の刺激を使用する場合に予測される質に対する、抗原陽性APC刺激を利用する(抗原提示BLCLによって表されるような)CAR-T細胞培養物の質の改善の可能性を強力に支持する。
【0168】
[実施例3]
抗CD19-CAR-EBV-CTLは、強力な特異的な細胞傷害性を発揮する
上記と同様に、CAR(4-1BB又はCD28シグナル伝達ドメインのいずれかを含む)をコードするレンチウイルスベクターを、EBV-BLCL刺激されたCD3+抗原特異的T細胞の形質導入のために使用した。
【0169】
手短には、CARを発現するウイルス特異的T細胞を、以下の方法で調製した。
【0170】
・0日目、PBMCサンプルを解凍し、CD3+細胞を濃縮した(例えば、生存FACS又は抗CD3コーティングされた磁性ビーズによって)。次いで、これらのCD3+T細胞を、本明細書に記載されるようにEBV抗原提示BLCLとともに培養することによって刺激した。
・刺激後11日(11日目)、培養物をNK細胞を枯渇させ(例えば、抗CD56ビーズを使用して)、新鮮EBV抗原提示BLCLを、1:4のレスポンダー/スティミュレーター比で7日間にわたって再刺激した。
・18日目に、培養物に4:1のレスポンダー/スティミュレーター比で2日間3回目の刺激を与えた。
・20日目に、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターでの形質導入を開始し、標準(YH培地)培養におけるインキュベーションに戻し、形質導入されたウイルス特異的T細胞の拡大増殖を可能にした。任意選択で、NK細胞枯渇ステップは、形質導入の直前に適用され得る。
・25日目までに、CAR発現を評価し(例えば、FACS分析によって)、細胞傷害性アッセイのためにCARを発現するウイルス特異的T細胞(エフェクター)を標的培養物に添加できた。任意選択で、25日目に細胞を凍結し、次いで、28日目に解凍して細胞傷害性について試験できた。
【0171】
示されたE:T比でのEBV-CAR19-CAR T細胞又は対照EBV CTLとともに同時培養して4時間後に、LDH放出によって測定された細胞傷害性を観察できた(
図9及び10を参照されたい)。EBV-CD19-CAR T細胞は、CD19
+(NALM6及びRaji)細胞及びEBV
+/CD19
+ HLA適合及び不適合BLCLの特異的死滅によって観察されるような、低いアロ細胞傷害性を有するHLA独立性CD19特異的細胞傷害性を実証する(
図9 A及びB、並びに
図10を参照されたい)。対照的に、K562細胞、並びにHLA適合及び不適合PHA芽球は、すべてEBV及びCD19抗原を欠き、死滅されない(
図9、A及びC並びに
図10を参照されたい)。さらに、EBV感作された抗CD19 CAR T細胞は、すべてのCD19
+細胞株に対して細胞傷害性であり、オフターゲット細胞傷害性が少ない、すなわち、CD19及びEBV発現の両方を欠く細胞に対して細胞傷害性が少ない又は存在しない。エフェクター添加(すなわち、EBV-CTL又はEBV-CD19 CAR T細胞添加)後の3日間について観察した場合、標的とされた細胞において特異的で強力なHLA独立性細胞溶解が観察された。HLA適合(BLCL標的)及びHLA不適合(BLCL及びRaji標的)細胞の両方において細胞溶解が誘導された。しかし、EBV-CTLは、適合BLCL標的細胞においてのみ、有意な細胞溶解を誘導できた(
図11を参照されたい)。
【0172】
従来的に生成されたCAR T細胞(すなわち、出発T培養物の濃縮又は抗原刺激をともなわずに)と比較した場合、抗原特異的CAR T細胞(例えば、抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTL)は、より良好でなくとも匹敵する細胞傷害性を示す(
図12を参照されたい)。しかし、抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTLは、あまりアロ反応性ではないと思われる。EBV特異的CD19-CAR T細胞の増殖能は、示された細胞株との同時培養の際にCellTrace(商標)Violet希釈アッセイによって観察された(
図13を参照されたい)。抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTLは、Bリンパ芽球様細胞株(BLCL)を死滅させる能力を保持していた(
図13、下部-左側)が、CD19及びEBV抗原発現を欠く自己(autologous)及び同種(allogeneic)PHA芽細胞標的を温存し、従来のCAR T細胞に対して著しく少ないアロ反応性を有していた(
図13、下部-右、影がつけられた)。さらには、従来的に生成されたCAR T細胞に対して、抗CD19-CD28-CAR-EBV-CTLは、IFNγ産生の増大を特徴とする別個のサイトカインプロファイルを示す(
図14を参照されたい)。
【0173】
追加の実施形態
以下は、本明細書において開示される本発明の一部の具体的な数が付された実施形態である。これらの実施形態は、例示であり、単に例示目的のものである。本発明は、実施形態に限定されないが、上記の開示の範囲内に入るような、すべてのこのような形態及びこれらの組合せを包含することは理解されるであろう。
【0174】
実施形態1。キメラ抗原受容体(CAR)を発現する抗原特異的T細胞を含む調製物を生成する方法であって、
(i)CD3+細胞の培養物を調製し、培養物がT細胞及び抗原提示スティミュレーター細胞を含むステップ、
(ii)前記培養物のT細胞を、CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(iii)形質導入されたT細胞を培養して、CARを発現する抗原特異的T細胞の増殖を可能にするステップ、及び
iv)CARを発現する抗原特異的T細胞を回収するステップ
を含む、方法。
【0175】
実施形態2。CARを発現する抗原特異的T細胞の集団のex vivo増殖を誘導する方法であって、
(i)CD3+細胞の培養物を調製し、培養物が、T細胞及び抗原提示スティミュレーター細胞を含むステップ、
(ii)T細胞を、CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(iii)形質導入されたT細胞の集団を培養して、CARを発現する抗原特異的T細胞を増殖させるステップ、及び
(iv)処理のためにCARを発現する抗原特異的T細胞を回収するステップ
を含む、方法。
【0176】
実施形態3。ステップiii)の形質導入されたT細胞を、抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養するステップをさらに含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0177】
実施形態4。ステップ(i)、(ii)、(iii)の培養物又はそれらの任意の組合せを、1つ以上のサイトカインとともにインキュベートするステップをさらに含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0178】
実施形態5。スティミュレーター細胞を、CD3+細胞とともに培養するステップの前に、1つ以上のサイトカインとともにインキュベートするステップをさらに含む、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0179】
実施形態6。スティミュレーター細胞が、照射された抗原提示スティミュレーター細胞である、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0180】
実施形態7。CD3+細胞が、赤血球、血小板、単球及び顆粒球が枯渇した末梢血単核細胞(PBMC)のサンプルを含む、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0181】
実施形態8。CD3+細胞が、CD3+リンパ球がポジティブ選択されるPBMCのサンプルを含む、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0182】
実施形態9。CD3+細胞が、エフェクターT細胞型、Tヘルパー細胞(TH細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL)、メモリーT細胞型、制御性T細胞(Treg細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞s)、粘膜関連インバリアント細胞(MAIT細胞)、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、ダブルネガティブT細胞(DNT)、CD3+B細胞又はそれらの任意の組合せのうちいずれか1つを含む複数の細胞型を含む、実施形態8に記載の方法。
【0183】
実施形態10。CD3+細胞及びスティミュレーター細胞が各々同一ドナーに由来する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0184】
実施形態11。CD3+細胞が、スティミュレーター細胞とは異なるドナーに由来する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0185】
実施形態12。スティミュレーター細胞が、リンパ芽球様細胞、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞、人工抗原提示細胞及び/又はK562細胞を含む、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
【0186】
実施形態13。スティミュレーター細胞が、リンパ芽球様B細胞(BLCL)を含む、実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
【0187】
実施形態14。スティミュレーター細胞が、ドナーサンプルからポジティブ選択される、実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
【0188】
実施形態15。ポジティブ選択される細胞が、CD19+細胞である、実施形態14に記載の方法。
【0189】
実施形態16。スティミュレーター細胞を、T細胞エピトープを含む少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原を含む天然及び/又は野生型ウイルスに感染させる、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
【0190】
実施形態17。スティミュレーター細胞が、T細胞エピトープを含む少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを発現する、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
【0191】
実施形態18。免疫原性ペプチド抗原が、オンコウイルス由来である、実施形態16又は17に記載の方法。
【0192】
実施形態19。免疫原性ペプチド抗原が、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス又はレトロウイルスに由来する、実施形態16から18のいずれかに記載の方法。
【0193】
実施形態20。免疫原性ペプチド抗原が、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、BKウイルス(BKV)、ジョンカニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する、実施形態16から19のいずれかに記載の方法。
【0194】
実施形態21。免疫原性ペプチド抗原が、ウイルス性肝炎を引き起こすと知られているウイルスに由来する、実施形態16から18のいずれかに記載の方法。
【0195】
実施形態22。ウイルスベクターが、複製不能である、実施形態17に記載の方法。
【0196】
実施形態23.ウイルスベクターが、1つ以上の免疫原性ペプチド抗原をコードする核酸配列を含む、実施形態17から22のいずれかに記載の方法。
【0197】
実施形態24。ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、実施形態17から23のいずれかに記載の方法。
【0198】
実施形態25。アデノウイルスベクターが、1つ以上のEBV抗原をコードする核酸配列を含む、実施形態24に記載の方法。
【0199】
実施形態26。アデノウイルスベクターが、AdE1-LMPpolyである、実施形態24又は25に記載の方法。
【0200】
実施形態27。スティミュレーター細胞が、T細胞エピトープを含む1つより多くの免疫原性ペプチド抗原を提示する、実施形態1から26のいずれかに記載の方法。
【0201】
実施形態28。スティミュレーター細胞が、1つ以上のEBV抗原を発現する、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
【0202】
実施形態29。1つ以上のEBV抗原が、LMP1ペプチド若しくはその断片、LMP2Aペプチド若しくはその断片及び/又はEBNA1ペプチド若しくはその断片を含む、実施形態28に記載の方法。
【0203】
実施形態30。スティミュレーター細胞が、CARによって標的とされる抗原又はリガンドを内因性に発現する、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
【0204】
実施形態31。スティミュレーター細胞が、CARによって標的とされる抗原又はリガンドをコードする核酸配列を含むベクターを発現する、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
【0205】
実施形態32。CAR抗原又はリガンドが、CD19である、実施形態30又は31に記載の方法。
【0206】
実施形態33。将来の形質導入のために、CD3+細胞の培養物を凍結及び保管するステップを任意選択で含む、実施形態1から32のいずれかに記載の方法。
【0207】
実施形態34。形質導入の前に、CD3+細胞の培養物が解凍され、スティミュレーター細胞とともに少なくとも1回再培養される、実施形態33に記載の方法。
【0208】
実施形態35。形質導入の前に、前記培養物中で少なくとも2日から少なくとも28日間にわたりCD3+細胞を維持するステップを含む、実施形態1から34のいずれかに記載の方法。
【0209】
実施形態36。形質導入の前に、前記培養物中で少なくとも2日間にわたりCD3+細胞を維持するステップを含む、実施形態35に記載の方法。
【0210】
実施形態37。形質導入の前に、前記培養物中で少なくとも9日間にわたりCD3+細胞を維持するステップを含む、実施形態35に記載の方法。
【0211】
実施形態38。形質導入の前に、前記培養物中で少なくとも20日間にわたりCD3+細胞を維持するステップを含む、実施形態35に記載の方法。
【0212】
実施形態39。形質導入の前に、前記培養物中で少なくとも28日間にわたりCD3+細胞を維持するステップを含む、実施形態35に記載の方法。
【0213】
実施形態40。形質導入の後に、前記培養物中で少なくとも2日から少なくとも17日間にわたり形質導入されたT細胞を維持するステップを含む、実施形態1から39のいずれかに記載の方法。
【0214】
実施形態41。形質導入の後に、前記培養物中で少なくとも2日間にわたり形質導入されたT細胞を維持するステップを含む、実施形態40に記載の方法。
【0215】
実施形態42。形質導入の後に、前記培養物中で少なくとも7日間にわたり形質導入されたT細胞を維持するステップを含む、実施形態40に記載の方法。
【0216】
実施形態43。形質導入の後に、前記培養物中で少なくとも17日間にわたり形質導入されたT細胞を維持するステップを含む、実施形態40に記載の方法。
【0217】
実施形態44。前記培養物のCD3+細胞を、スティミュレーター細胞とともに少なくとも1回再培養するステップをさらに含む、実施形態37から39のいずれかに記載の方法。
【0218】
実施形態45。前記培養物のCD3+細胞を、スティミュレーター細胞とともに少なくとも2回再培養するステップをさらに含む、実施形態37から39のいずれかに記載の方法。
【0219】
実施形態46。再培養するステップが、少なくとも2~14日毎に開始される、実施形態44又は45に記載の方法。
【0220】
実施形態47。第1の再培養するステップが、前記培養物の調製の11日後に開始される、実施形態44から46のいずれかに記載の方法。
【0221】
実施形態48。第2の再培養するステップが、第1の再培養するステップの7日後に開始される、実施形態44から47のいずれかに記載の方法。
【0222】
実施形態49。CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、実施形態1から48のいずれかに記載の方法。
【0223】
実施形態50。CARをコードするウイルスベクターが、ガンマレトロウイルスベクターである、実施形態49に記載の方法。
【0224】
実施形態51。ウイルスベクターが、複製不能である、実施形態49又は50に記載の方法。
【0225】
実施形態52。CARをコードする核酸配列が、1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む、実施形態51に記載の方法。
【0226】
実施形態53。1つ以上のシグナル伝達ドメインが、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン及び/若しくはCD3シグナル伝達ドメイン、又はその断片を含む、実施形態52に記載の方法。
【0227】
実施形態54。CD3シグナル伝達ドメインが、CD3ζである、実施形態53に記載の方法。
【0228】
実施形態55。CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態49から54のいずれかに記載の方法。
【0229】
実施形態56。CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、抗生物質耐性をコードする核酸配列をさらに含む、実施形態55に記載の方法。
【0230】
実施形態57。抗生物質が、ブラストサイジンである、実施形態56に記載の方法。
【0231】
実施形態58。回収されたCARを発現するT細胞が、CD3+T細胞である、実施形態1から57のいずれかに記載の方法。
【0232】
実施形態59。後の日付での養子免疫療法組成物の調製のために、細胞バンクにおいて回収されたCARを発現するT細胞を凍結及び保管するステップを任意選択で含む、実施形態58に記載の方法。
【0233】
実施形態60。養子免疫療法組成物を調製する前に、CARを発現するT細胞が解凍され、スティミュレーター細胞とともに少なくとも1回再培養される、実施形態59に記載の方法。
【0234】
実施形態61。回収されたCARを発現するT細胞が、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)及びエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)の各々を含む、実施形態58から60のいずれかに記載の方法。
【0235】
実施形態62。回収されたCARを発現するT細胞が、主にTCM細胞である、実施形態58から60のいずれかに記載の方法。
【0236】
実施形態63。TCM細胞対TEM細胞の比が、1:1より大きい、実施形態61に記載の方法。
【0237】
実施形態64。TCM細胞対TEM細胞の比が、少なくとも1.4:1である、実施形態63に記載の方法。
【0238】
実施形態65。TCM細胞対TEM細胞の比が、少なくとも2.5:1である、実施形態63に記載の方法。
【0239】
実施形態66。TCM細胞対TEM細胞の比が、少なくとも3:1である、実施形態63に記載の方法。
【0240】
実施形態67。回収されたCARを発現するT細胞が、CD4+及びCD8+T細胞の各々を含む、実施形態58から60のいずれかに記載の方法。
【0241】
実施形態68。回収されたCARを発現するT細胞が、主にCD4+T細胞である、実施形態58から60のいずれかに記載の方法。
【0242】
実施形態69。CD4+T細胞対CD8+T細胞の比が、1:1より大きい、実施形態68に記載の方法。
【0243】
実施形態70。CD4+T細胞対CD8+T細胞の比が、少なくとも1.4:1である、実施形態69に記載の方法。
【0244】
実施形態71。CD4+T細胞対CD8+T細胞の比が、少なくとも2.5:1である、実施形態69に記載の方法。
【0245】
実施形態72。CD4+T細胞対CD8+T細胞の比が、少なくとも3:1である、実施形態69に記載の方法。
【0246】
実施形態73。回収されたCARを発現するT細胞の少なくとも60%が、TCM細胞である、実施形態62から72のいずれかに記載の方法。
【0247】
実施形態74。抗原特異的なCARを発現するT細胞を濃縮するex vivo方法であって、
(i)対象から細胞のサンプルを得、サンプルが、CD3+T細胞を含むステップ、
(ii)前記サンプルからCD3+細胞を単離し、前記CD3+細胞を抗原提示スティミュレーター細胞と接触させ、それによって、抗原特異的CD3+T細胞の増殖を選択的に増強するステップ、
(iii)CD3+細胞をキメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで形質導入して、抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞の集団を提供するステップ、及び
(iv)任意選択で、CARを発現するCD3+T細胞の集団をex vivoで培養物中で、抗原提示スティミュレーター細胞とともに培養して、抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞の増殖を選択的に増強するステップ
を含む、方法。
【0248】
実施形態75。サンプルが、末梢血単核細胞(PBMC)を含む、実施形態74に記載の方法。
【0249】
実施形態76。単離されたCD3+細胞及び抗原提示スティミュレーター細胞が、同一対象に各々由来する、実施形態74又は75に記載の方法。
【0250】
実施形態77。単離されたCD3+細胞が、抗原提示スティミュレーター細胞とは異なる対象に由来する、実施形態74から76のいずれかに記載の方法。
【0251】
実施形態78。抗原提示スティミュレーター細胞が、リンパ芽球様細胞、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞、人工抗原提示細胞及び/又はK562細胞を含む、実施形態74から77のいずれかに記載の方法。
【0252】
実施形態79。抗原提示スティミュレーター細胞が、BLCLである、実施形態74から のいずれかに記載の方法。
【0253】
実施形態80。抗原提示スティミュレーター細胞がCD19+である、実施形態74から79のいずれかに記載の方法。
【0254】
実施形態81。抗原提示スティミュレーター細胞が、1つ以上のEBV抗原を発現する、実施形態74から80のいずれかに記載の方法。
【0255】
実施形態82。1つ以上のEBV抗原が、LMP1ペプチド若しくはその断片、LMP2Aペプチド若しくはその断片、及び/又はEBNA1ペプチド若しくはその断片を含む、実施形態81に記載の方法。
【0256】
実施形態83。形質導入の前に、CD3+T細胞を、前記抗原提示スティミュレーター細胞との接触後に少なくとも3日~少なくとも28日間にわたり維持するステップを含む、実施形態74から82のいずれかに記載の方法。
【0257】
実施形態84。形質導入の前に、CD3+T細胞を、前記抗原提示スティミュレーター細胞との接触後に少なくとも3日間にわたり維持するステップを含む、実施形態83に記載の方法。
【0258】
実施形態85。形質導入の前に、CD3+T細胞を、前記抗原提示スティミュレーター細胞との接触後に少なくとも6日間にわたり維持するステップを含む、実施形態83に記載の方法。
【0259】
実施形態86。形質導入の前に、CD3+T細胞を、前記抗原提示スティミュレーター細胞との接触後に少なくとも9日間にわたり維持するステップを含む、実施形態83に記載の方法。
【0260】
実施形態87。形質導入の前に、CD3+T細胞を、前記抗原提示スティミュレーター細胞との接触後に少なくとも28日間にわたり維持するステップを含む、実施形態83に記載の方法。
【0261】
実施形態88。前記単離されたCD3+T細胞を、抗原提示スティミュレーター細胞と少なくとも1回再度接触させるステップをさらに含む、実施形態83から87のいずれかに記載の方法。
【0262】
実施形態89。前記単離されたCD3+T細胞を、抗原提示スティミュレーター細胞と少なくとも2回再度接触させるステップをさらに含む、実施形態83から88のいずれかに記載方法。
【0263】
実施形態90。前記単離されたCD3+T細胞を、抗原提示スティミュレーター細胞と再度接触させるステップが、少なくとも2~14日毎に開始される、実施形態88又は89に記載の方法。
【0264】
実施形態91。前記単離されたCD3+T細胞の、抗原提示スティミュレーター細胞との第1の再度接触させるステップが、11日後に開始される、実施形態88から90のいずれかに記載の方法。
【0265】
実施形態92。第2の再度接触させるステップが、前記単離されたCD3+T細胞の抗原提示スティミュレーター細胞との第1の再度接触させるステップの7日後に開始される、実施形態88から91のいずれかに記載の方法。
【0266】
実施形態93。抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞の増殖を選択的に増強する培養物が、抗原提示スティミュレーター細胞を含む、実施形態74から92のいずれかに記載の方法。
【0267】
実施形態94。形質導入後、抗原特異的なCARを発現するT細胞の増殖を選択的に増強する培養物中で、抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞を少なくとも2日間にわたり維持するステップを含む、実施形態93に記載の方法。
【0268】
実施形態95。形質導入後、抗原特異的なCARを発現するT細胞の増殖を選択的に増強する培養物中で、抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞を少なくとも7日間にわたり維持するステップを含む、実施形態94に記載の方法。
【0269】
実施形態96。形質導入後、抗原特異的なCARを発現するT細胞の増殖を選択的に増強する培養物中で、抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞を少なくとも17日間にわたり維持するステップを含む、実施形態94に記載の方法。
【0270】
実施形態97。CARをコードするウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、実施形態74から96のいずれかに記載の方法。
【0271】
実施形態98。CARをコードするウイルスベクターが、ガンマレトロウイルスベクターである、実施形態97に記載の方法。
【0272】
実施形態99。CARをコードするウイルスベクターが、複製不能である、実施形態97又は98のいずれかに記載の方法。
【0273】
実施形態100。CARをコードする核酸配列が、1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む、実施形態99に記載の方法。
【0274】
実施形態101。1つ以上のシグナル伝達ドメインが、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン及び/若しくはCD3シグナル伝達ドメイン、又はその断片を含む、実施形態100に記載の方法。
【0275】
実施形態102。CD3シグナル伝達ドメインが、CD3ζ又はその断片である、実施形態101に記載の方法。
【0276】
実施形態103。CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態97から102のいずれかに記載の方法。
【0277】
実施形態104。CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、抗生物質耐性をコードする核酸配列をさらに含む、実施形態97から102のいずれかに記載の方法。
【0278】
実施形態105。抗原特異的なCARを発現するCD3+T細胞の増殖を選択的に増強する培養物が、抗生物質をさらに含む、実施形態74から104のいずれかに記載の方法。
【0279】
実施形態106。抗生物質が、ブラストサイジンである、実施形態105の方法。
【0280】
実施形態107。実施形態74から106に記載のいずれかを含む養子免疫療法組成物を調製する方法であって、組成物が、抗原特異的なCARを発現するCD3+セントラルメモリーT細胞(Tcm)を主に含む、方法。
【0281】
実施形態108。養子免疫療法組成物の少なくとも60%が、抗原特異的なCARを発現するCD3+Tcmを含む、実施形態107に記載の方法。
【0282】
実施形態109。抗原特異的なCARを発現するCD3+Tcmが、主にCD4+T細胞である、実施形態107又は108のいずれかに記載の方法。
【0283】
実施形態110。CARが、CD19と結合する標的化ドメインを含む、実施形態1から109のいずれかに記載の方法。
【0284】
実施形態111。CARが、抗CD19一本鎖可変断片(ScFv)を含む、実施形態110に記載の方法。
【0285】
実施形態112。T細胞の増殖能を改善する方法であって、実施形態1から111のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【0286】
実施形態113。T細胞の形質導入効率を改善する方法であって、実施形態1から112のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【0287】
実施形態114。CARを発現するT細胞の生存性を改善する方法であって、実施形態1から113のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
【0288】
実施形態115。実施形態1から114のいずれかに記載の方法によって調製されたT細胞組成物。
【0289】
実施形態116。組換えキメラ抗原受容体(CAR)を発現する抗原特異的T細胞を含むT細胞調製物であって、CARを発現するT細胞の少なくとも60%が、Tcm細胞である、T細胞調製物。
【0290】
実施形態117。CARを発現するTcm細胞が、主にCD4+T細胞である、実施形態116に記載のT細胞調製物。
【0291】
参照による組み込み
本明細書に記載の全ての刊行物、特許、特許出願及び配列受託番号は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に、個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書の定義を含め、本出願が支配する。
【0292】
等価物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識する、又は通常の実験のみを使用して確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]第1の抗原との結合に対して特異的であり、第2の抗原との結合に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞傷害性T細胞を含む組成物を生成する方法であって、
(i)CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を調製し、前記CD3
+
T細胞が、T細胞受容体を介して前記第1の抗原を認識しそれと結合するように刺激されるステップ、
(ii)前記培養物のCD3
+
T細胞を、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(iii)CARを形質導入したCD3
+
T細胞を培養して、CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞の増殖を可能にするステップ、及び
(iv)CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞を回収するステップ
を含む、方法。
[実施形態2]第1の抗原との結合に対して特異的であり、第2の抗原との結合に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞傷害性T細胞を含む養子免疫療法組成物を調製する方法であって、
(i)CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を調製し、前記CD3
+
T細胞が、T細胞受容体を介して前記第1の抗原を認識しそれと結合するように刺激されるステップ、
(ii)前記培養物のCD3
+
T細胞を、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(iii)CARを形質導入したCD3
+
T細胞を培養して、CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞の増殖を可能にするステップ、及び
(iv)CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞を回収し、それによって前記養子免疫療法組成物を提供するステップ
を含む、方法。
[実施形態3]第1の抗原との結合に対して特異的であり、第2の抗原との結合に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞傷害性T細胞の集団の増殖を誘導する方法であって、
(i)CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を調製し、前記CD3
+
T細胞が、T細胞受容体を介して前記第1の抗原を認識しそれと結合するように刺激されるステップ、
(ii)前記培養物のCD3
+
T細胞を、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、及び
(iii)CARを形質導入したCD3
+
T細胞を培養して、CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞の増殖を可能にするステップ
を含む、方法。
[実施形態4]ステップ(i)、(ii)、(iii)の培養物又はそれらの任意の組合せを、1つ以上のサイトカインとともにインキュベートするステップをさらに含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]CD3
+
細胞について濃縮された細胞の培養物が、赤血球、血小板、単球及び顆粒球が枯渇した末梢血単核細胞(PBMC)のサンプルを含む、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]CD3
+
細胞について濃縮された細胞の培養物が、PBMCのサンプルからのCD3
+
細胞のポジティブ選択を含むプロセスによって調製される、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]T細胞受容体を介して前記第1の抗原を認識しそれと結合するように刺激されたCD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を調製するステップが、CD3
+
細胞のレスポンダー集団を、その細胞表面に前記第1の抗原を提示するスティミュレーター細胞とともに同時培養するステップを含む、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]前記同時培養するステップが、1:4のレスポンダー細胞:スティミュレーター細胞比で開始される、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]T細胞受容体を介して前記第1の抗原を認識しそれと結合するように刺激されたCD3
+
T細胞について濃縮された細胞の前記調製された培養物が、CAR形質導入の前に、任意選択で、その表面に前記第1の抗原を提示するスティミュレーター細胞とともに再培養される、実施形態7又は8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]第1の再培養ステップが、同時培養ステップの開始の少なくとも7日後に開始される、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]レスポンダー及びスティミュレーター細胞が、同一ドナーに由来する、実施形態7から10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]スティミュレーター細胞が、ガンマ照射された抗原提示スティミュレーター細胞である、実施形態7から11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]スティミュレーター細胞がリンパ芽球様B細胞(BLCL)を含む、実施形態7から12のいずれかに記載の方法。
[実施形態14]スティミュレーター細胞を、T細胞エピトープを含む少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原を含む天然及び/又は野生型ウイルスに感染させる、実施形態7から13のいずれかに記載の方法。
[実施形態15]スティミュレーター細胞が、T細胞エピトープを含む少なくとも1つの免疫原性ペプチド抗原を発現するように操作されている、実施形態7から14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]第1の抗原がウイルス抗原である、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
[実施形態17]ウイルス抗原が、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、BKウイルス(BKV)、ジョンカニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原である、実施形態16に記載の方法。
[実施形態18]ウイルス抗原が、EBV LMP1ペプチド若しくはその断片、EBV LMP2Aペプチド若しくはその断片、又はEBV EBNA1ペプチド若しくはその断片を含む、実施形態16又は17に記載の方法。
[実施形態19]スティミュレーター細胞が前記第2の抗原をさらに発現する、実施形態7から15のいずれかに記載の方法。
[実施形態20]前記第2の抗原が、CD19抗原、CD20抗原又はメソテリン抗原である、実施形態1から19のいずれかに記載の方法。
[実施形態21]将来の形質導入のために、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を凍結及び保管するステップを任意選択で含む、実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
[実施形態22]将来の使用のために、CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞の培養物を凍結及び保管するステップを任意選択で含む、実施形態1から21のいずれかに記載の方法。
[実施形態23]必要とする患者に将来投与するために、回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞を凍結及び保管するステップを任意選択で含む、実施形態1から22のいずれかに記載の方法。
[実施形態24]CAR形質導入の前に、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を、少なくとも2日~少なくとも28日間にわたり維持するステップを含む、実施形態1から23のいずれかに記載の方法。
[実施形態25]CAR形質導入の前に、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を、少なくとも2日間にわたり維持するステップを含む、実施形態1から24のいずれかに記載の方法。
[実施形態26]CAR形質導入の前に、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を、少なくとも9日間にわたり維持するステップを含む、実施形態1から25のいずれかに記載の方法。
[実施形態27]CAR形質導入の前に、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を、少なくとも20日間にわたり維持するステップを含む、実施形態1から26のいずれかに記載の方法。
[実施形態28]CAR形質導入の前に、CD3
+
T細胞について濃縮された細胞の培養物を、少なくとも28日間にわたり維持するステップを含む、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
[実施形態29]前記回収するステップの前に、CARを形質導入したCD3
+
T細胞を少なくとも2日~少なくとも17日間にわたり培養するステップを含む、実施形態1から28のいずれかに記載の方法。
[実施形態30]前記回収するステップの前に、CARを形質導入したCD3
+
T細胞を少なくとも2日間にわたり培養するステップを含む、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
[実施形態31]前記回収するステップの前に、CARを形質導入したCD3
+
T細胞を少なくとも7日間にわたり培養するステップを含む、実施形態1から30のいずれかに記載の方法。
[実施形態32]前記回収するステップの前に、CARを形質導入したCD3
+
T細胞を少なくとも17日間にわたり培養するステップを含む、実施形態1から31のいずれかに記載の方法。
[実施形態33]CARを形質導入したCD3
+
T細胞を、前記第1の抗原を発現するスティミュレーター細胞とともに少なくとも1回同時培養するステップを任意選択で含む、実施形態1から32のいずれかに記載の方法。
[実施形態34]CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、レンチウイルス又はレトロウイルスベクターである、実施形態1から33のいずれかに記載の方法。
[実施形態35]ウイルスベクターが複製不能である、実施形態1から34のいずれかに記載の方法。
[実施形態36]CARが1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む、実施形態1から35のいずれかに記載の方法。
[実施形態37]1つ以上のシグナル伝達ドメインが、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3シグナル伝達ドメイン、又はそのバリアント若しくは断片を含む、実施形態36に記載の方法。
[実施形態38]CD3シグナル伝達ドメインがCD3ζである、実施形態37に記載の方法。
[実施形態39]CARが、少なくとも1つの機能的ITAM領域を欠くバリアントCD3ζドメインを含む、実施形態36に記載の方法。
[実施形態40]CARがMut06ドメインを含む、実施形態36に記載の方法。
[実施形態41]CARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態1から40のいずれかに記載の方法。
[実施形態42]選択可能なマーカーが抗生物質耐性を付与する、実施形態41に記載の方法。
[実施形態43]抗生物質がブラストサイジンである、実施形態42に記載の方法。
[実施形態44]回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞が、セントラルメモリーT細胞(T
CM
細胞)及びエフェクターメモリーT細胞(T
EM
細胞)の各々を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態45]回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞が、主にT
CM
細胞である、実施形態44に記載の方法。
[実施形態46]T
CM
細胞対T
EM
細胞の比が1:1より大きい、実施形態44又は45に記載の方法。
[実施形態47]T
CM
細胞対T
EM
細胞の比が、少なくとも1.4:1である、実施形態44から46のいずれかに記載の方法。
[実施形態48]T
CM
細胞対T
EM
細胞の比が、少なくとも2.5:1である、実施形態44から47のいずれかに記載の方法。
[実施形態49]T
CM
細胞対T
EM
細胞の比が、少なくとも3:1である、実施形態44から48のいずれかに記載の方法。
[実施形態50]回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞が、CD4
+
及びCD8
+
T細胞の各々を含む、実施形態1又は2のいずれかに記載の方法。
[実施形態51]回収されたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞が、主にCD4
+
T細胞である、実施形態50に記載の方法。
[実施形態52]第1の抗原との結合に対して特異的であり、第2の抗原との結合に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞傷害性T細胞を含む組成物を生成するex vivo方法であって、
(i)対象から、CD3
+
T細胞を含む細胞のサンプルを得るステップ、
(ii)前記細胞のサンプルを、CD3
+
T細胞について濃縮して、細胞の濃縮サンプルを提供するステップ、
(iii)前記細胞の濃縮サンプルを、その細胞表面に前記第1の抗原を提示する抗原提示スティミュレーター細胞と接触させて、第1の抗原によって刺激された細胞のサンプルを提供するステップ、
(iv)前記第1の抗原によって刺激された細胞のサンプルを、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(v)CARを形質導入した細胞を培養して、CARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞の増殖を可能にするステップ、及び
(vi)CARを発現する第1の抗原特異的細胞性組成物を回収するステップ
を含む、方法。
[実施形態53]第1の抗原との結合に対して特異的であり、第2の抗原との結合に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞傷害性T細胞を含む組成物を生成するex vivo方法であって、
(i)対象から、CD3
+
T細胞を含む細胞のサンプルを得るステップ、
(ii)前記細胞のサンプルを、CD3
+
T細胞について濃縮して、細胞の濃縮サンプルを提供するステップ、
(iii)前記細胞の濃縮サンプルを、前記第2の抗原と結合するCARをコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入するステップ、
(iv)CARを形質導入した細胞を、その細胞表面に前記第1の抗原を提示する抗原提示スティミュレーター細胞と接触させるステップ、及び
(v)CARを発現する第1の抗原特異的細胞性組成物を回収するステップ
を含む、方法。
[実施形態54]T細胞の増殖能を改善する方法であって、実施形態1から53のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
[実施形態55]T細胞の形質導入効率を改善する方法であって、実施形態1から54のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
[実施形態56]CARを発現するT細胞の生存性を改善する方法であって、実施形態1から55のいずれかに記載の方法を実施するステップを含む、方法。
[実施形態57]ペプチド抗原の発現と関連する障害を、それを必要とする患者において処置する方法であって、前記患者に、実施形態1から56のいずれかに記載の方法によって得られたCARを発現する第1の抗原特異的細胞傷害性T細胞を投与するステップを含む、方法。
[実施形態58]実施形態1から57のいずれかに記載の方法によって調製されるT細胞組成物。
【配列表】