(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】フィルターハウジング及びそれを含むフィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 35/30 20060101AFI20240729BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20240729BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240729BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20240729BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240729BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240729BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B01D35/30 ZNM
B01D46/42 Z
C01B32/168
C09K3/16 101B
C08K3/04
C08L27/12
C08K7/00
(21)【出願番号】P 2021519301
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015395
(87)【国際公開番号】W WO2020230472
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019090170
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 徳雄
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066706(WO,A1)
【文献】特開2013-222947(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002581(WO,A1)
【文献】特開2013-231129(JP,A)
【文献】特表2004-534353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
B01D46/00-46/90
C08L27/12
C08J5/00
C08K3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物の成形体であるフィルターハウジングであって、
前記フィルターハウジングは、フィルターエレメントを含むための容器であり、
前記フッ素樹脂組成物は、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含
み、
前記カーボンナノチューブは、40~600μmの平均長さを有する、
フィルターハウジング。
【請求項2】
1×10
-1~1×10
6Ω・cmの体積抵抗率を有する、請求項1に記載のフィルターハウジング。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のフィルターハウジング
とフィルターエレメントとを含む、フィルター。
【請求項4】
前記フィルターエレメントは、カーボンナノチューブを0.01~2.0質量%含むフッ素樹脂組成物からなる、請求項3に記載のフィルター。
【請求項5】
請求項
3又は4に記載のフィルターを含む、ろ過装置。
【請求項6】
請求項5に記載のろ過装置を含む、半導体製造装置、液晶製造装置、医薬品製造装置、医薬品搬送装置、化学薬品製造装置又は化学薬品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターハウジング及びそれを含むフィルターに関し、さらに詳しくは優れた帯電防止性能を有し、不純物(金属イオン及び有機物等)の溶出を防止しながら、優れた除電性能を示すフィルターハウジング及びそれを含むフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐薬品性及び耐汚染性等に優れるので、フィルターハウジング及びそれを含むフィルター等の材料としてしばしば使用される。
しかし、フッ素樹脂は、一般的に絶縁性材料に分類されるので、フッ素樹脂を用いて製造されたフィルターハウジングと流体が接触すると、摩擦による帯電を生じ得る。
そこで、カーボンブラック及び鉄粉等の導電性物質をフッ素樹脂に混合してフッ素樹脂に導電性を付与することが知られているが、導電性物質と流体が接触するので、金属イオン、有機物等が流体に流出して、流体が汚染されることが知られている。
【0003】
特許文献1は、少なくとも2種類の導電性添加剤を含有し、ポリマーの物理的性質に著しく影響を及ぼさずに表面導電性と内部導電性の両方を提供するポリマー混合物、及びそれから形成される導電性成形品を開示する。更に、特許文献1は、ポリマーがフルオロポリマーであり得ること、導電性添加剤が炭素粒子を含み得ること、導電性成形品が燃料フィルターハウジングであり得ることを開示する(特許文献1特許請求の範囲、[0001]参照)。
【0004】
特許文献2は、半導体デバイスの製造の際、優れた欠陥抑制性能を有する薬液を得るための精製に用いられるフィルターユニット及びそれを備える薬液の精製装置等を提供する(特許文献2[0001]、[0006]、[0009]参照)。特許文献2のフィルターユニットは、特定の化学構造を有する第一重合体を含有するろ過材を備える第一フィルターと、特定の化学構造を有する第二重合体を含有するろ過材を備える第二フィルターを有する(特許文献2[請求項1]参照)。更に特許文献2は、有機溶剤を含有する薬液を導電性材料に接触させる除電方法を開示し、導電性材料として、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及びグラッシカーボンを例示する(特許文献2[0115]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2004-534353号公報
【文献】WO2019/013155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のフィルターハウジングは、流体と導電性物質が接触するので、帯電防止性能は得られるものの、流体の汚染も生じ得るという問題があるが、フィルターハウジングが燃料フィルターハウジングなので、汚染を生じ得るという問題は、何ら言及されていない。
【0007】
近年、流体の「帯電防止」と流体の「汚染防止」に加えて、既に帯電した流体の「除電」も要求されている。ここで、「帯電防止」とは、帯電していない電気絶縁性物質に静電気が発生して、静電気を帯びることを防止することをいうのに対し、「除電」とは、既に静電気を帯びている電気絶縁性物質から、その静電気を除去することをいう点で相違する。
【0008】
そこで、本発明は、優れた帯電防止性能を有し、不純物(金属イオン及び有機物等)の溶出を防止しながら、優れた除電性能を示すフィルターハウジング及びそれを含むフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、フッ素樹脂に特定量のカーボンナノチューブを分散させたフッ素樹脂組成物を使用すると、優れた帯電防止性能を有し、不純物(金属イオン及び有機物等)の溶出を防止しながら、優れた除電性能を示すフィルターハウジングが得られることを見出した。更に、そのようなフィルターハウジングは、ろ過装置に使用可能であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本明細書は、以下の態様を含む。
[1]フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物の成形体(又は成形品)であるフィルターハウジングであって、
フッ素樹脂組成物は、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含む、フィルターハウジング。
[2]カーボンナノチューブは、40μm以上の平均長さを有する、上記1に記載のフィルターハウジング。
[3]1×10-1~1×106Ω・cmの体積抵抗率を有する、上記1又は2に記載のフィルターハウジング。
[4]フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)から選択される少なくとも1種を含む、上記1~3のいずれか1つに記載のフィルターハウジング。
[5]フッ素樹脂組成物のフッ素樹脂は、500μm以下の平均粒子径を有する、上記1~4のいずれか1つに記載のフィルターハウジング。
[6]上記1~5のいずれか1つに記載のフィルターハウジングを含むフィルター。
[7]上記1~5のいずれか1つに記載のフィルターハウジングを含む、ろ過装置。
[8]上記7に記載のろ過装置を含む、半導体製造装置、液晶製造装置、医薬品製造装置、医薬品搬送装置、化学薬品製造装置又は化学薬品搬送装置。
[9]フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を、圧縮成形することを含む、上記1~5のいずれか1つに記載のフィルターハウジングの製造方法。
[10]PTFE及び変性PTFEから選択されるフッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を準備すること;
フッ素樹脂組成物を、金型に入れて、加圧して圧縮して、予備成形体を製造すること;
予備成形体を、フッ素樹脂組成物の融点以上の温度で焼成して、成形体を製造すること;
成形体を加工してフィルターハウジングを製造すること
を含む、上記1~5のいずれか1つに記載のフィルターハウジングの製造方法。
[11]PTFE及び変性PTFE以外のフッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を準備すること;
フッ素樹脂組成物を加熱後、加圧して圧縮して、成形体を得ること;及び
成形体を加工してフィルターハウジングを得ること
を含む、上記1~5のいずれか1つに記載のフィルターハウジングの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態のフィルターハウジング及びそれを含むフィルターは、優れた帯電防止性能を有し、不純物(金属イオン及び有機物等)の溶出を防止しながら、優れた除電性能を示す。従って、例えば、フィルター(又はろ過)装置等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、電荷残存率測定装置を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、新たなフィルターハウジングを提供し、それは、
フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物の成形体(又は成形品)であるフィルターハウジングであって、
フッ素樹脂組成物は、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含む。
【0014】
本明細書においてフィルターハウジングとは、流体(例えば、導電性流体及び非導電性流体)、好ましくは非導電性流体(例えば、石油、炭化水素系液体、シリコンオイル等の各種油、空気、窒素ガス等の各種気体、純水等。以下同じ。)を濾過して精製するためのフィルターエレメント(又は濾材)を設置するための容器をいい、フィルターエレメントが設置されて、フィルターを形成し得る限り、その形状、寸法などは特に制限されることはない。
【0015】
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物の成形体(又は成形品)である。本発明の実施形態のフィルターハウジングは、フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物でできており、フッ素樹脂組成物から形成されていてよく、成形されていてよい。
本明細書において、フッ素樹脂組成物とは、フッ素樹脂とカーボンナノチューブを含み、必要に応じて他の成分を含んでよく、本発明が目的とするフィルターハウジングを得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0016】
本明細書において、「フッ素樹脂」とは、通常フッ素樹脂と理解される樹脂であって、本発明が目的とするフィルターハウジングを得ることができる限り、特に制限されることはない。
そのようなフッ素樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)から選択される少なくとも1種を例示することができる。
【0017】
フッ素樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)がより好ましい。
【0018】
フッ素樹脂は、市販品を使用することができる。例えば、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)として、ダイキン工業株式会社製のポリフロン(登録商標)PTFE-M(商品名)M-12、M-11、及び
変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)として、ダイキン工業株式会社製のポリフロン(登録商標)PTFE-M(商品名)M-112、M-111、及び、
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)として、ダイキン工業株式会社製のネオフロン(登録商標)PCTFE(商品名)M-300PL、M-300H、及び
テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)として、ダイキン工業株式会社製のネオフロン(登録商標)PFA(商品名)AP-230、AP-210、等を例示できる。
フッ素樹脂は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0019】
本発明の実施形態において、フッ素樹脂組成物のフッ素樹脂は、粒子形態を有し、500μm以下の平均粒子径を有することが好ましく、8~250μmの平均粒子径を有することがより好ましく、10~50μmの平均粒子径を有することが更により好ましく、10~25μmの平均粒子径を有することが特に好ましい。
フッ素樹脂組成物のフッ素樹脂は、500μm以下の平均粒子径を有する場合、フッ素樹脂とカーボンナノチューブがより均一に混合できるので、導電性がより向上する。
【0020】
本明細書において、粒子の平均粒子径とは、レーザー回折散乱式粒度分布装置(日機装製「MT3300II」)を用いて、粒度分布を測定して得られる、平均粒子径D50を(レーザー回折散乱法によって求められる粒度分布における積算値50%での粒子径を意味するメジアン径)いう。
【0021】
本明細書において、「カーボンナノチューブ」とは、通常カーボンナノチューブと理解される物質であって、本発明が目的とするフィルターハウジングを得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0022】
そのようなカーボンナノチューブ(「CNT」ともいう)として、例えば、単層のCNT、多層のCNT、2層のCNT等を例示できる。カーボンナノチューブとして市販品を使用することができ、例えば、大陽日酸社製のCNT-uni(登録商標)シリーズを使用することができる。
CNTは、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明の実施形態において、カーボンナノチューブは、40μm以上の平均長さを有することが好ましく、40~600μmの平均長さを有することがより好ましく、50~500μmの平均長さを有することが更により好ましく、100~450μmの平均長さを有することが特に好ましい。
CNTは、40μm以上の平均長さを有する場合、導電パスが繋がりやすいである点から、導電性がより向上し、好ましい。
【0024】
本明細書において、CNTの平均長さ(又は平均繊維長)とは、実施例で詳細に記載するように、SEMで撮影した画像から得られる平均長さをいう。即ち、フィルターハウジングの一部を、300℃~600℃に加熱して、灰化し、残渣物(SEM撮影用サンプル)を得る。その残渣物のSEM画像を撮影する。そのSEM画像に含まれる各カーボンナノチューブの長さを画像処理によって求める。その画像処理によって得た長さの平均値を計算によって求め、その平均値をCNTの平均長さという。
【0025】
本発明の実施形態において、フッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂組成物を基準(100質量%)として、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含み、0.04~1.5質量%含むことが好ましく、0.05~1.0質量%含むことがより好ましく、0.05~0.5質量%含むことが特に好ましい。
フッ素樹脂組成物が、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含む場合、導電パスを形成するために十分な量なので、導電性がより確保されつつ、より経済的であり、好ましい。
【0026】
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、1×107Ω・cm以下の体積抵抗率を有することが好ましく、1×106Ω・cm以下の体積抵抗率を有することが更に好ましく、1×105Ω・cm以下の体積抵抗率を有することがより好ましく、1×103Ω・cm以下の体積抵抗率を有することが特に好ましい。
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、例えば、1×10-1Ω・cm以上の体積抵抗率を有してよく、1×100Ω・cm以上の体積抵抗率を有してよく、1×101Ω・cm以上の体積抵抗率を有してよい。
体積抵抗率の測定については、実施例に記載した。
【0027】
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、10cmの長さの抵抗が、1×106Ω以下であることが好ましく、8×105Ω以下であることがより好ましく、5×105Ω以下であることが更により好ましく、1×105Ω以下であることが特に好ましい。
10cmの長さの抵抗が、1×106Ω以下である場合、導通が十分に取れているので、流体除電性がより向上し(電荷残存率がより低下し)、好ましい。
【0028】
本発明の実施形態のフィルターハウジングを使用した場合、実施例に記載した方法を用いて評価して、フィルターを通過した純水の電荷残存率が、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更により好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
電荷残存率が、70%以下である場合、静電気が抑えられているので、フィルターを通過した流体、好ましくは非導電性流体の非集塵性の性質がより向上し、好ましい。
【0029】
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、実施例に記載した方法を用いて評価して、放電痕が5以下であることが好ましく、放電痕が認められないことがより好ましい。
放電痕が、5以下である場合、放電に伴うトラブル発生をより抑えられるので、好ましい。
【0030】
本発明の実施形態のフィルターハウジングに関し、本明細書の実施例に記載の方法で評価して、汚染防止性は、Al、Cr、Cu、Fe、Ni及びZnの各々の検出量が、5ppb未満であることが好ましく、Al、Cr、Cu、Fe、Ni、Zn、Ca、K及びNaの各々の検出量が、5ppb未満であることがより好ましく、全ての金属の各々の検出量が、5ppb未満であることが更に好ましく、全ての金属の各々の検出量が、1ppb未満であることが更により好ましく、全ての金属の各々の検出量が0.5ppb未満であることが特に好ましい。
また、全有機体炭素の溶出量が、50ppb未満であることが好ましく、40ppb未満であることがより好ましく、30ppb未満であることが更に好ましい。
【0031】
本発明の実施形態のフィルターハウジングは、その用途に応じて種々の寸法を有することができ、本発明が目的とするフィルターハウジングを得ることができる限り、その寸法は特に制限されることはない。
フィルターハウジングは、例えば、円筒形(又はチューブ状)を有し、外径は、例えば、4~500mmでありえ、6~250mmでありえ、6~75mmでありえ、6~50mmでありえる。肉厚は、例えば、0.5~50mmでありえ、1~30mmでありえ、1~20mmでありえ、2~10mmでありえる。
【0032】
本発明に実施形態のフィルターハウジングは、本発明が目的とするフィルターハウジングを得ることができる限り、いずれの方法を用いて製造してもよい。
本発明に実施形態のフィルターハウジングは、フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を、圧縮成形することを含む製造方法で製造することが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態のフィルターハウジングの製造方法は、PTFE及び変性PTFEに関するフィルターハウジングの製造方法と、その他のフッ素樹脂(例えば、PFA、FEP、ETFE、ECTFE、PCTFE、PVDF及びPVF)に関するフィルターハウジングの製造方法は、一部相違する。
【0034】
PTFE及び変性PTFEに関するフィルターハウジングの製造方法は、フッ素樹脂(好ましくは粒子状フッ素樹脂)にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を準備すること;フッ素樹脂組成物を、(必要に応じて適切な前処理(予備乾燥、造粒等)を行った後、)金型に入れて、好ましくは0.1~100MPa、より好ましくは1~80MPa、さらにより好ましくは5~50MPaの圧力で加圧して圧縮して、予備成形体を製造すること;予備成形体を、フッ素樹脂組成物の融点以上の温度(好ましくは345~400℃、より好ましくは360~390℃の温度)で、好ましくは2時間以上焼成して、成形体を製造すること;成形体を加工(好ましくは切削加工)してフィルターハウジングを製造すること、を含む。
【0035】
PTFE及び変性PTFE以外のフッ素樹脂(例えば、PFA、FEP、ETFE、ECTFE、PCTFE、PVDF及びPVF)に関するフィルターハウジングの製造方法は、フッ素樹脂(好ましくは粒子状フッ素樹脂)にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物を準備すること;フッ素樹脂組成物を、金型に入れ、必要に応じて適切な前処理(予備乾燥等)をした後、例えば、150~400℃の温度で1~5時間加熱後、例えば、0.1~100MPa(好ましくは、1~80MPa、より好ましくは、5~50MPa)の圧力で圧縮して、成形体を得ること;及び成形体を加工(好ましくは切削加工)してフィルターハウジングを得ること、を含む。
【0036】
本発明は、本実施形態のフィルターハウジングとフィルターエレメント(又は濾材)を含むフィルター(又はフィルターカセット)を提供することができる。本実施形態のフィルターハウジングを使用することができる限り、フィルターエレメントは特に制限されることはない。
【0037】
本発明の実施形態において、フィルターエレメントは、カーボンナノチューブを少なくとも一部に含むことができる。カーボンナノチューブの含有量、フィルターエレメントの材質、フィルターエレメントの形態、形状、寸法など適宜選択することができる。フィルターエレメントの材質は、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等であってよく、フィルターエレメントの形態、形状、寸法等は、適宜選択することができる。フィルターエレメントは、例えば、カーボンナノチューブを含む樹脂組成物(例えば、フッ素樹脂組成物、オレフィン系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物等の樹脂組成物)で形成されていてよい。カーボンナノチューブの含有量は、樹脂組成物を基準(100質量%)として、例えば、0.01~2.0質量%であってよい。
【0038】
本発明の実施形態のフィルターを使用して純水をろ過した場合、実施例に記載した方法を用いて評価して、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更により好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下の電荷残存率を有する純水を製造することができる。
電荷残存率が、70%以下である場合、静電気が抑えられているので、本発明の実施形態のフィルターを通過させることで、非集塵性の性質がより向上した流体を製造することができ、好ましい。
【0039】
本発明は、本発明の実施形態のフィルター(又はフィルターカセット)を含む、ろ過装置(又はフィルター装置)を提供することができる。
更に、本発明は、そのようなろ過装置を含む、種々の設備、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置、医薬品製造装置、医薬品搬送装置、化学薬品製造装置及び化学薬品搬送装置等を提供することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)フッ素樹脂
(A1)ポリクロロトリフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製のネオフロン(登録商標)PCTFE(商品名))(「(A1)PCTFE」ともいう)
(A2)変性ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製のポリフロン(登録商標)PTFE-M(商品名))(「(A2)変性PTFE」ともいう)
(A3)テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(ダイキン工業株式会社製のネオフロン(登録商標)PFA(商品名)(「(A3)PFA」ともいう)
【0042】
(B)カーボンナノチューブ
(B1)カーボンナノチューブ(SEM観察による平均繊維長=約130μm、大陽日酸社製のCNT-uni(登録商標))(「(B1)CNT」ともいう)
(B2)カーボンナノチューブ(平均繊維長=約400μm、大陽日酸社製のCNT-uni(登録商標))(「(B2)CNT」ともいう)
(B3)カーボンナノチューブ(平均繊維長=約60μm、大陽日酸社製のCNT-uni(登録商標))(「(B3)CNT」ともいう)
(B4)’カーボンナノチューブ(平均繊維長=約20μm、大陽日酸社製のCNT-uni(登録商標))(「(B4)’CNT」ともいう)
カーボンファイバー入りフッ素樹脂
(C1)カーボンファイバー入りPTFE(旭硝子製のFluon(登録商標) PB2515)
【0043】
<実施例1>
(A1)ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)を、粉砕機を用いて粉砕し、振動篩機等で分級して、(A1)PCTFE粒子を準備した。レーザー回折散乱式粒度分布装置(日機装製「MT3300II」)を用いて、(A1)PCTFE粒子の粒度分布を測定して、(A1)PCTFE粒子の平均粒子径(D50)を得た。(A1)PCTFE粒子の平均粒子径(D50)は、11.5μmであった。
【0044】
次いで、得られた(A1)PCTFE粒子にカーボンナノチューブを分散混合させる。
水を溶媒とする(B1)カーボンナノチューブ分散液(分散剤=0.15質量%、(B1)カーボンナノチューブ=0.1質量%)500gにエタノールを3,500g加えて希釈した。更に、上述の(A1)PCTFE粒子を1000g添加して混合スラリーを作製した。
混合スラリーを耐圧容器に供給し、耐圧容器内の混合スラリーに含まれる分散剤1mgに対して0.03g/分の供給速度で液化二酸化炭素を供給し、耐圧容器内の圧力が20MPa、温度が50℃になるまで、昇圧及び昇温した。上記圧力および温度を3時間保持しながら、二酸化炭素中に溶け込んだ溶媒(水、エタノール)および分散剤と共に、二酸化炭素を耐圧容器から排出した。
耐圧容器内の圧力及び温度を、大気圧及び常温に各々下げて、耐圧容器内の二酸化炭素を除去して、(B1)カーボンナノチューブを0.1質量%含む(A1)PCTFE組成物を得た。なお、以下、本工程をカーボンナノチューブ分散混合工程という。
【0045】
圧縮成形法を使用して、(A1)PCTFE組成物を成形して、円柱状成形体を得た。即ち、(A1)PCTFE組成物を、金型に入れ、必要に応じて適切な前処理(予備乾燥等)を行った。その後、200℃以上の温度で2時間以上、(A1)PCTFE組成物を加熱後、5MPa以上の圧力で、(A1)PCTFE組成物を圧縮しながら、常温まで冷却して(A1)PCTFE成形体を得た。
(A1)PCTFE成形体を切削加工して、片方の底面が閉塞された円筒状(又は管状)成形体として、実施例1のフィルターハウジングを得た。実施例1のフィルターハウジングは、約110mmの直径(外径)、約5mmの肉厚、約110mmの高さを有した。
【0046】
<実施例2>
(B1)カーボンナノチューブを0.05質量%含むように変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例2のフィルターハウジングを製造した。
【0047】
<実施例3>
(B1)カーボンナノチューブを、(B2)カーボンナノチューブに変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例3のフィルターハウジングを製造した。
【0048】
<実施例4>
(B1)カーボンナノチューブを、(B3)カーボンナノチューブに変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例4のフィルターハウジングを製造した。
【0049】
<実施例5>
(A2)変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)は、粒状で市販されており、その平均粒子径(D50)は19.6μmであった。(A2)変性PTFE粒子の平均粒子径(D50)は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて測定した。
【0050】
(A1)PCTFE粒子を、(A2)PTFE粒子に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、(B1)カーボンナノチューブを0.1質量%含む(A2)変性PTFE組成物を得た。
【0051】
圧縮成形法を使用して、(A2)変性PTFE組成物を成形して、円柱状成形体を得た。即ち、(A2)変性PTFE組成物を、必要に応じて前処理(予備乾燥等)後、(A2)変性PTFE組成物を金型に一定量、均一に充填した。(A2)変性PTFE組成物を15MPaで加圧し、一定時間保持することで、(A2)変性PTFE組成物を圧縮して、(A2)変性PTFE予備成形体を得た。(A2)変性PTFE予備成形体を金型から取り出して、345℃以上に設定した熱風循環式電気炉で2時間以上焼成し、徐冷後電気炉から取り出し、(A2)変性PTFE成形体を得た。(A2)変性PTFE成形体の切削加工を行い、円筒状成形体として、実施例5のフィルターハウジングを得た。実施例5のフィルターハウジングは、約110mmの直径(外径)、約5mmの肉厚、約110mmの高さを有した。
【0052】
<実施例6>
(A3)テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を、粉砕機を用いて粉砕し、振動篩機等で分級して、(A3)PFA粒子を準備した。(A3)PFA粒子の、平均粒子径(D50)は121.7μmであった。(A3)PFA粒子の平均粒子径(D50)は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて測定した。
【0053】
(A1)PCTFE粒子を、(A3)PFA粒子に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、(B1)カーボンナノチューブを0.1質量%含む(A3)PFA組成物を得た。
【0054】
圧縮成形法を使用して、(A3)PFA組成物を成形して、円柱状成形体を得た。即ち、(A3)PFA組成物を、金型に入れ、必要に応じて適切な前処理(予備乾燥等)を行った。その後、300℃以上の温度で2時間以上、(A3)PFA組成物を加熱後、5MPa以上の圧力で、(A3)PFA組成物を圧縮しながら、常温まで冷却して(A3)PFA成形体を得た。
(A3)PFA成形体を切削加工して、円筒状(又は管状)成形体として、実施例6のフィルターハウジングを得た。実施例6のフィルターハウジングは、約110mmの直径(外径)、約5mmの肉厚、約110mmの高さを有した。
【0055】
<比較例1>
カーボンナノチューブ分散混合工程を経ることなく、(A1)PCTFE粒子を直接圧縮成形した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、カーボンナノチューブを含有しない(A1)PCTFE成形体を得た。
【0056】
<比較例2>
(B1)カーボンナノチューブを、(B4)’カーボンナノチューブに変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、比較例2フィルターハウジングを製造した。
【0057】
<比較例3>
(C1)カーボンファイバー入りPTFE(カーボンファイバー15質量%)組成物は、粒状で市販されており、その平均粒子径(D50)は630μmであった。そのPTFE組成物の平均粒子径(D50)は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて測定した。
【0058】
圧縮成形法を使用して、このPTFE組成物を成形して、円柱状成形体を得た。即ち、PTFE組成物を、必要に応じて前処理(予備乾燥等)後、PTFE組成物を金型に一定量、均一に充填した。PTFE組成物を15MPaで加圧し、一定時間保持することで、PTFE組成物を圧縮して、PTFE予備成形体を得た。PTFE予備成形体を金型から取り出して、345℃以上に設定した熱風循環式電気炉で2時間以上焼成し、徐冷後電気炉から取り出し、PTFE成形体を得た。PTFE成形体の切削加工を行い、円筒状成形体として、比較例3のフィルターハウジングを得た。比較例3のフィルターハウジングは、約110mmの直径(外径)、約5mmの肉厚、約110mmの高さを有した。
【0059】
<平均繊維長>
フィルターハウジングに含まれるカーボンナノチューブの平均繊維長を、SEM(KEYENCE社製のVE-9800(商品名))を用いて、フィルターハウジングの画像を撮影して、評価した。灰化法を用いて、フィルターハウジングの一部を灰化して、画像撮影用サンプルを、作製した。即ち、フィルターハウジングの一部を300℃~600℃に加熱し、灰化して、残渣物を得た。その残渣物を画像撮影用サンプルとして、SEM(走査電子顕微鏡)観察をおこなった。例えば、実施例1のフィルターハウジングのSEM画像を、
図1に示した。その画像に含まれる各カーボンナノチューブの繊維の繊維長を画像処理によって求めて、その繊維長の値の平均値を計算して得た。結果は、表1に示した。
【0060】
<抵抗値に基づく除電性>
抵抗値に基づく除電性及び帯電防止性は、ISO8031:2009に基づいて評価した。即ち、フィルターハウジングの両端の各々に金属継手を接続した。2つの金属継手間の抵抗値を、絶縁抵抗計(ムサシ電機計器製作所製の3レンジ絶縁抵抗計(商品名))を用いて測定した。
【0061】
除電性の評価基準は、下記の通りである。
○:10cmの間の抵抗値が1×106Ω以下である。
×:10cmの間の抵抗値が1×106Ωを超える。
実施例1のフィルターハウジングは、良好な除電性を有すると評価された。結果は、表1に示した。
【0062】
<汚染防止性>
フィルターハウジングの金属溶出量の測定
フィルターハウジングにおける金属汚染の程度を、ICP質量分析装置(パーキンエルマー製「ELAN DRCII」)を用いて金属系17元素(Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Cd及びPb)の金属溶出量を測定することで、評価した。
圧縮成形して得た円筒状成形体から、10mm×20mm×50mmの試験片を切削取得した。試験片を、3.6%塩酸(関東化学製EL-UMグレード)0.5Lに1時間程度浸漬後、超純水(比抵抗値:≧18.0MΩ・cm)で掛け流し洗浄を行った。更に、3.6%塩酸0.1Lに、試験片全体を浸漬して、室温環境で24時間及び168時間保存した。規定時間経過後に浸漬液を全量回収し(浸漬した塩酸を全量集めて)、浸漬液の金属不純物濃度を分析した。試験片を3つ準備して、その最大値を検出量とした。
評価基準は下記の通りである。
◎:全ての金属の各々の検出量が、5ppb未満である。
○:Al、Cr、Cu、Fe、Ni、Zn、Ca、K及びNaの各々の検出量が、5ppb未満である。
△:Al、Cr、Cu、Fe、Ni及びZnの各々の検出量が、5ppb未満である。
×:Al、Cr、Cu、Fe、Ni及びZnのいずれか1種の検出量が、5ppb以上である。
結果は、表1に示した。
【0063】
フィルターハウジングの炭素脱落の測定
フィルターハウジングからのカーボンナノチューブの脱離の程度を、全有機体炭素計(島津製作所製「TOCvwp」)を用いてTOC(全有機体炭素)を測定することにより評価した。具体的には、圧縮成形して得た円筒状成形体から切削取得した10mm×20mm×50mmの試験片を、3.6%塩酸(関東化学製EL-UMグレード)0.5Lに1時間程度浸漬し、1時間浸漬後に取出して超純水(比抵抗値:≧18.0MΩ・cm)で掛け流し洗浄を行い、超純水に試験片全体を浸漬して室温環境下で24時間および168時間保存した。規定時間経過後に浸漬液を全量回収し(浸漬した超純水を全量集めて)、浸漬液について全有機体炭素分析をした。試験片を3つ準備して、その最大値を検出量とした。
評価基準は下記の通りである。
○:全有機体炭素の検出量が、50ppb未満である。
×:全有機体炭素の検出量が、50ppb以上である。
【0064】
<体積抵抗率>
上述した圧縮成形法と同様の方法を用いて、各実施例及び比較例について、φ110×10mmの試験片を作製し、測定試料とした。
体積抵抗率の測定は、JIS K6911に従い、抵抗率計(三菱化学アナリテック製「ロレスター」または「ハイレスター」)を用いて行った。
評価基準は下記の通りである。
◎:体積抵抗率が、1×103Ω・cm以下である。
○:体積抵抗率が、1×103Ω・cmを超え、1×105Ω・cm以下である。
△:体積抵抗率が、1×105Ω・cmを超え、1×107Ω・cm以下である。
×:体積抵抗率が、1×107Ω・cmを超える。
【0065】
<電荷残存率>
図1は、電荷残存率評価装置1の概略を模式的に示す。電荷残存率評価装置1は、IN側チューブ2とOUT側チューブ4が取り付けられたフィルター10を含む。フィルター10は、フィルターカセットの形態を有し、フィルターエレメントを含み得るフィルターハウジングを有する。OUT側チューブ4はOUT側チューブ6と継手8を介して接続され、継手8は、エレクトロメーター15と接続され、エレクトロメーター15は、接地されている。
IN側チューブ2、OUT側チューブ4及び6は、いずれもPFA製であり、外径6mm、内径4mm、長さは100mmである。
フィルターハウジングはカップ状で、外径は110mm、内径は90mm、高さは110mmである。フィルターエレメントは日本ポール株式会社製ウルチポアN66 PUY01NAEYJ(商品名)(高さ25.4mm)を用い、フィルターエレメントを含む実施例及び比較例のフィルターハウジングがフィルターとして取り付けられている。
継手8は、PTFE製であり、チューブ内の流体と接触しても、評価結果に影響を与え難いようにした。エレクトロメーター15は、エレクトロメーター(KEYTHLEY社製の6514型(商品名))を使用した。
純水製造装置からの純水配管は、IN側PFA配管2と接続された。
フィルター(又はフィルターハウジング)を接続していない状態(IN側チューブ2とOUT側チューブ4を直接PFAチューブで接続した状態)で継手8を通過した純水の電荷量(Q1)を測定した。
次に各フィルター(又はフィルターハウジング)を接続した状態で継手8を通過した純水の電荷量(Q)を測定した。
流速は2m/secで、純水を、60秒間流通させた。
電荷残存率:(Q/Q1)×100を求めた。
評価基準は、下記の通りである。
◎:電荷残存率が、30%以下である。
○:電荷残存率が、30%を超え、50%以下である。
△:電荷残存率が、50%を超え、70%以下である。
×:電荷残存率が、70%を超える。
【0066】
<放電痕>
放電痕の有無の評価は、上述の
図1の電荷残存率評価装置を使用した。
各フィルター(又はフィルターハウジング)を接続した状態で、流速は3m/secで、純水を、1時間流通させた。
その後、フィルターハウジング内部の放電痕の有無を、目視で観察した。
評価基準は、下記の通りである。
〇:放電痕が、0である。
△:放電痕が、0を超え、5以下である。
×:放電痕が、5を超える。
【0067】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、フッ素樹脂にカーボンナノチューブが分散したフッ素樹脂組成物の成形体であり、フッ素樹脂組成物は、カーボンナノチューブを、0.01~2.0質量%含む、新たなフィルターハウジングを提供する。
そのフィルターハウジングは、優れた帯電防止性能を有し、不純物(金属イオン及び有機物等)の溶出を防止しながら、優れた除電性能を示す。
本発明は、更に、そのフィルターハウジングとフィルターエレメント(又は濾材)を含むフィルター(又はフィルターカセット)を提供することができる。
本発明は、更に、そのフィルターを含むろ過装置(又はフィルター装置)、及びそのろ過装置又はフィルターを含む、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置、医薬品製造装置、化学薬品製造装置等の流体を使用する装置を提供することができる。
【0069】
関連出願
尚、本出願は、2019年5月10日に日本国でされた出願番号2019-90170を基礎出願とするパリ条約第4条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 電荷残存率評価装置
2 IN側チューブ
4 OUT側チューブ
6 OUT側チューブ
8 継手
10 フィルター
15 エレクトロメーター