(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電気車両のフリートの充電の最適化管理のための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240729BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240729BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240729BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20240729BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20240729BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20240729BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240729BHJP
【FI】
H02J7/00 B ZAB
H02J7/00 P ZHV
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
B60L50/60
B60L53/62
B60L53/63
B60L53/68
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2021531569
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2019082121
(87)【国際公開番号】W WO2020114795
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アストルグ, マリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス, ピエール
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-50240(JP,A)
【文献】特開2015-95983(JP,A)
【文献】特開2013-99176(JP,A)
【文献】特開2008-54439(JP,A)
【文献】特開2014-220892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009192(US,A1)
【文献】国際公開第2014/087092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 13/00
B60L 50/60
B60L 53/62
B60L 53/63
B60L 53/68
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気消費体(VE)に電力を供給するための電池の少なくとも1つの集合の充電を最適に管理するための方法であって、各電池が、前記電池が配電グリッド(20)に接続される少なくとも1つの時間間隔の間に、充電アグリゲータ(10)によって送出される充電プロファイル
(R
ideal
)に従って、前記時間間隔と関連する充電電力レベルを、各電池と関連する充電マネージャの制御下で適用することによって再充電される方法において、
前記方法が、
前記充電アグリゲータ側で、前記充電プロファイル
(R
ideal
)が、少なくとも前記
配電グリッド上で利用可能な電力を
含む前記配電グリッドに固有の制約だけに応じて全ての前記電池に対して定められる、所与の期間にわたる1日ごとの充電分布曲線であると
定めることと、
前記
充電アグリゲータから各充電マネージャに、前記充電分布曲線
を送信することと、
前記充電マネージャ
側で、
前記充電プロファイル(R
ideal
)、前記VEのユーザの移動要件を表すデータである所望の充電状態(SOC
desired
)、前記電池の公称容量(E
max
)、および、前記充電マネージャによって許可される柔軟性範囲に関して1日ごとに到達されるべきパーセンテージを表す係数(K)を入力データとして受信することと、
前記充電マネージャ側端で、SOC
target
=SOC
desired
+K(1-SOC
desired
)の数式で計算される到達されるべき1日の目標充電状態(SOC
target
)を計算し、前記電池の充電命令を生成するために、受信された前記充電プロファイル(R
ideal
)を前記入力データに基づいて適合させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記
配電グリッドを通じて各電池を充放電する時機が、前記充電分布曲線を追跡することによって制御されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充電プロファイルが、前記所与の期間にわたる前記配電グリッド上の電気の生成と関連するCO2排出量に応じて決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
CO2排出量を予測するためのモデルが受信され、前記モデルから前記所与の期間にわたる前記CO2排出量の平均(CO2
week-avg)および1日ごとの前記CO2排出量の平均(CO2
day-avg)が導出され、時間tにおける前記CO2排出量のレベル(CO2
current)が1日ごとの前記CO2排出量の前記平均(CO2
day-avg)と比較され、その結果前記充電プロファイルが、CO2排出量の前記レベルが1日ごとの前記平均を下回る時機にだけ充電を指令するように適合されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記充電分布曲線
(R
ideal
)が、所与のサンプリング増分に対する時間に関して充電のパーセントで計算されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記所与の期間が1週間の期間に相当することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各時間間隔の間の前記充電電力レベルが、到達されるべき前記1日の目標充電状態と前記電池の現在の充電状態との間の比較を基に決定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記充電マネージャによって許可される前記柔軟性範囲に関して1日ごとに到達されるべき前記パーセンテージ(K)が、前記所与の期間にわたる前記配電グリッド上の電気の生成と関連する前記CO2排出量のレベルに逆比例して変動することを特徴とする、
請求項3または請求項3に従属するときの請求項
4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電池の前記集合が、電気車両または充電式ハイブリッド車両のフリートの走行用電池から成ることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、電気消費体に電力を供給するための電池の集合の充電を最適に管理するための方法である。本発明は、特に、排他的でなく、電気車両または充電式ハイブリッド車両のフリートの走行用電池の充電の最適化に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
現時点で、最適化充電プロファイルを得る目的で電気車両のニーズおよび配電グリッドのニーズを調和させる多くのやり方が既に想像されている。グリッドのニーズに相当な影響を有するために、或るスマート充電ソリューションはアグリゲーションを利用しており、多くの電気車両の充電が同時に制御される。現行のソリューションは、従来通り所与の車両の1日の移動要件および配電グリッドの制約を考慮に入れて、各日同じ移動要件を満たすように、グリッドに接続される車両電池の充電の、1日にわたる最適化を達成する。
【0003】
より正確には、アグリゲータが配電グリッドに接続されており、配電グリッドのニーズ、アグリゲータによって制御される全ての電気車両の1日の移動要件、および制御される電気車両の現在の状態(充電状態、電池を電気的に再充電するための装置への接続の状況等)をリアルタイムで受信するように設計されている。全てのこの情報を基に、アグリゲータは、各車両に対して最適充電プロファイルを計算すること、および同プロファイルを、電池の充電を制御するように意図された、車両に搭載されて設けられる電池マネージャに送信することができる。
【0004】
そのような方法は、特に文書EP292871が挙げる例から知られており、同文書には、電気車両の走行用電池の集合の充電を管理するための方法であって、電池の全ての充電の調整に基づく方法が記載されている。より正確には、配電グリッドに実装されるアグリゲータと双方向通信を確立するように、各電池と関連する電池充電マネージャが設けられており、各電池が充電されるために、配電グリッドから想定される総電気消費のプロファイルであって、各電池マネージャによってアグリゲータに反復的に送られる、各電池に固有の個々の充電プロファイル選択から生じるプロファイルを示すように意図される、アグリゲータによって送出される電気消費信号を考慮に入れることによって最適充電プロファイルが決定されるのを可能にする。したがって、アグリゲータは、全ての車両の電池の充電要件をリアルタイムで受信し、そしてグリッドの状態に応じて各電池マネージャに充電命令を送る。
【0005】
このアグリゲート方法は、しかしながら多くの欠点を有する。特に、同方法は、アグリゲータと電気車両に搭載されて設けられる電池マネージャとの間の双方向通信に基づいている。同方法は、したがって多くのデータの交換を必要とし、この結果としてサーバと、ならびにアグリゲータ、グリッドおよび車両に搭載されて設けられる電池マネージャ間の通信を可能にするために必要とされる電気通信手段と関係する相当な展開コストとなる。同方法は、電気車両の運転者にとって制約的でもあり、事前に自分の移動要件を知り、そして同要件をアグリゲータに送信しなければならない。
【0006】
同方法は、更には、グリッドに接続されるアグリゲータが、しばしば「全か無か」的に推論し、そして最も有利(例えば最も安価)である時機に制御する全ての電気車両の充電を開始するので、大量の電力がグリッドから引き出されることに至り得、このことがグリッドからの消費の相当な不連続の原因である。
【0007】
その上、地球温暖化を巡るコンセンサスの現状では、二酸化炭素(CO2)の排出量の削減が大きな課題であり、基準はこの点で一層要求が厳しくなっている。したがって、電気の価格は、電気の生成から生じるCO2排出量に高く相関される。再生可能エネルギー(太陽電力、風力電力等)の、配電グリッドへの一層大きな統合はCO2排出量の削減に好ましい影響を有している。しかしながら、再生可能エネルギーは本来、断続的であるので、電気の生成と関連するCO2排出量は日ごとに大きく変動する。それゆえに、各日考慮に入れられる所与の移動要件に基づく車両のフリートの充電プロファイルの定義がグリッドへの再生可能エネルギーの統合の期間に対して不適切であり、特に、CO2排出量などのネットワークの或る制約に充電を適合させることに関して最適でないことが判明している。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、上述の制限の少なくとも1つから免除された、電池の集合の充電を管理するための方法を提供することである。
【0009】
このために、本発明は、電気消費体に電力を供給するための電池の集合の充電を最適に管理するための方法であって、各電池が、同電池が配電グリッドに接続される少なくとも1つの時間間隔の間に、充電アグリゲータによって送出される充電プロファイルに従って、上記時間間隔と関連する充電電力レベルを、各電池と関連する充電マネージャの制御下で適用することによって再充電される方法に関する。本発明によれば:
- アグリゲータ端、上記充電プロファイルが、少なくともグリッド上で利用可能な電力を備える配電グリッドに固有の制約だけに応じて全ての電池に対して定められる、所与の期間にわたる1日ごとの充電の分布の曲線であるとして定められる;
- アグリゲータから各充電マネージャに、上記充電分布曲線が送信される;
- 充電マネージャ端、上記受信した充電分布曲線が、上記電池が再充電のためにグリッドに接続される上記少なくとも1つの時間間隔におよび上記関連する充電電力レベルに適合される。
【0010】
配電グリッドに固有の制約によって、意味されることは、有効電力、電気の価格またはそれどころか環境生成制約などのパラメータであり、いかなるユーザ関連の制約(車両、フリート車両、家庭用配線等)でもない。
【0011】
有利には、グリッドを通じて各電池を充放電する時機は、充電分布曲線を追跡することによって制御される。
【0012】
有利には、上記充電プロファイルは、上記所与の期間にわたる配電グリッド上の電気の生成と関連するCO2排出量に応じて決定される。
【0013】
好ましくは、CO2排出量を予測するためのモデルが受信され、同モデルから上記所与の期間にわたるCO2排出量の平均および1日ごとのCO2排出量の平均が導出され、時間tにおけるCO2排出量のレベルが1日ごとのCO2排出量の平均と比較され、その結果上記充電プロファイルは、CO2排出量のレベルが1日ごとの平均を下回る時機にだけ充電を指令するように適合される。
【0014】
好ましくは、上記充電分布曲線は、所与のサンプリング増分、例えば15分ごとに対する時間に関して充電のパーセントで計算される。
【0015】
有利には、上記所与の期間は1週間の期間に相当する。
【0016】
有利には、電池の公称容量におよび1日ごとに所望される最小充電状態に応じて定められる、充電マネージャによって許可される柔軟性範囲に関して1日ごとに到達されるべきパーセンテージを表す係数が全ての電池に対して決定され、上記係数におよび上記1日ごとの最小の所望の充電状態に応じて、到達されるべき1日の目標充電状態が計算される。
【0017】
有利には、各時間間隔の間の上記充電電力レベルは、到達されるべき1日の目標充電状態と電池の現在の充電状態との間の比較を基に決定される。
【0018】
有利には、充電マネージャによって許可される柔軟性範囲に関して1日ごとに到達されるべきパーセンテージは、上記所与の期間にわたる配電グリッド上の電気の生成と関連するCO2排出量のレベルに逆比例して変動する。
【0019】
電池の集合は、電気車両または充電式ハイブリッド車両のフリートの走行用電池から成る。
【0020】
添付の図面を参照しつつ、以下に目安として与えられる非限定的な説明から、本発明の他の特徴および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る電気車両の充電を最適に管理するためのシステムを例示する図である。
【
図2】充電法則実装車両端を例示するグラフであり、上記法則は、本発明に係る充電を管理するための方法を利用することによって得られている。
【
図3】グリッド上の電気の生成におけるCO2排出量の変動を考慮に入れた許可された柔軟性範囲の到達されるべきパーセンテージの関数としての、到達されるべき1日の目標充電状態の1週間にわたる変動の一例を例示するグラフである。
【
図4】1日の目標充電状態に到達するために車両の全てによって従われるべき理想充電プロファイルの一例を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、走行用電池がおよび配電グリッド20に接続されるために適切である関連する充電マネージャが各々装備される電気車両VEの集合を概略的に例示する。この電気車両VEの集合の充電は、配電グリッド20に接続されるアグリゲータ10によって制御されており、電池はその充電のフェーズの際にアグリゲータに接続される。例えば、アグリゲータ10は、例えば無線(OTA)通信を介して自動車両製造業者の車両と遠隔通信することができるようにプログラムされる製造業者の専用サーバである。したがって、各車両VEは、アグリゲータを形成するサーバ10との、通信ネットワークを介する通信を可能にする通信モジュール、例えばGSMモジュールを所有する。
【0023】
アグリゲータは、配電グリッド20の状態、特に、以下で更に詳細に理解されることになるように、グリッド上で利用可能な電力が少なくとも部分的に低炭素である、すなわちグリッド上で利用可能な発電電力が少なくとも部分的に低炭素電源、例えば風力タービンまたは太陽光発電所からである時機を考慮に入れるようにも設計されている。
【0024】
本発明の方法は、第1に、1日にわたる充電の理想的なプロファイルRidealの決定に基づく。この充電プロファイルRidealは、アグリゲータ10によって制御される全ての車両VEに対してアグリゲータによって計算され、かつ配電グリッドに固有の制約に応じて、所与の期間にわたる、各日にわたる充電の分布であるとして定められる。この1日ごとの充電の分布Ridealは、数日、例えば1週間の所与の期間の間の所与のサンプリング増分、例えば15分ごとに対する時間に関して充電のパーセンテージで計算される。
【0025】
所与のサンプリング増分あたりの充電のパーセンテージは、正であって、対応する時機が、グリッドが電力を送出して電池を充電するのに好都合であることを意味しても、または車両の電池が可逆充電装置に接続される場合には、負であって、対応する時機が、代わりに電池に蓄積されたエネルギーを配電グリッドに戻すのに好都合であることを意味してもよい。
【0026】
図2は、したがって車両の全てに対して計算される1日ごとの充電の分布の曲線の一例を例示しており、プロファイルがアグリゲータ10によって車両VEに送られるなど、15分ごとのパーセンテージで1日にわたる最適充電プロファイルR
idealに相当する。
【0027】
様々な電気車両VEの電池と関連する充電マネージャは、この曲線Ridealを車両のユーザの固有のニーズに適合させるためのアルゴリズムを実行するための、かつ特に、車両がネットワークに接続されて、接続電力が充電のために車両に利用可能である時機を考慮に入れるソフトウェア手段を備える。言い換えれば、電池を対象とする充電命令は、アグリゲータ10によって送られるのでなく、配電グリッドのニーズだけを満たす、時間の関数としてのアグリゲートされた充電分布曲線に応じて、電池と関連する充電マネージャによってローカルに生成されており、上記曲線が電池の接続の時機におよび充電の電力レベルに応じて、各充電マネージャによって適合される。更に言い換えれば、アグリゲータ10の端、すなわちアグリゲータ端においては、電気車両のユーザのニーズは無視される。特に、ユーザの移動要件は、事前に知られている必要もアグリゲータ10に送信される必要もない。これにより、同時に複数の車両の充電を制御するために使用される従来のアグリゲート方法に関して、アグリゲータ10と車両VEとの間の情報の交換が大いに削減されるのを可能にする。
【0028】
より正確には、各電池と関連する充電マネージャの端、すなわち充電マネージャ端において実装される適合アルゴリズムは、例に従って15分ごとのパーセンテージで1日にわたる充電の最適プロファイルRideal、および車両のユーザの移動要件を表すデータを入力データとして受信する。ユーザの移動要件を表すこれらのデータは、電池の所望の充電状態SOCdesiredと呼ばれる充電状態の形態をとってもよく、例えば各日、典型的に夜の終わりに、例えば朝の6時に到達されるべき最小充電状態に相当してもよく、この充電状態は越えられることができると知られている。充電マネージャは、電池の公称容量Emax(kWhで)も入力データとして受信する。例えば、公称容量が60kWhに等しい電池を所有するユーザが、30kWhの蓄積エネルギーレベルがあれば、これは50%の充電状態に相当するため、自分が望む旅行の大部分をすることができるとおそらく思っているであろう。このためユーザはおそらく自分の所望の充電状態SOCdesiredを50%に設定することになり、したがって電池と関連する充電マネージャに30kWhの柔軟性範囲を残し、例えば、以下に更に詳細に記載されることになるように、CO2最適化を行う、または言い換えれば配電グリッド上の低炭素電力の利用率の観点から最適である充電範囲を利用する。
【0029】
電池の充電マネージャは、この柔軟性範囲に関して1日ごとに到達されるべきパーセンテージを表す係数も入力データとして受信することになる。言い換えれば、上で挙げた例に従って、係数Kは、充電マネージャによって許可される30kWhの柔軟性において各日到達されるべきパーセンテージを示すことになる。
【0030】
これらの入力データを基に、曲線Ridealを適合させるためのアルゴリズムは、1日の目標充電状態SOCtarget、次いでこの1日の目標充電状態に応じて到達されるべき目標エネルギーEtargetを計算するように設計されている:
[数式1]
SOCtarget=SOCdesired+K(1-SOCdesired)
[数式2]
Etarget=SOCtarget*Emax
【0031】
各時間に、電池と関連する充電マネージャは、電池の現在のエネルギーレベルEtと前もって計算したような1日の目標エネルギー値との間の差ΔEを計算する:
[数式3]
ΔE=Etarget-Et
【0032】
自身の充電曲線をその接続の時間およびその充電電力に関して適合させるために、適合アルゴリズムは差ΔEの比例積分調節を使用する。
[数式4]
Edelta=ΔE*(1+k*∫ΔE)、ここでk=整数係数。
【0033】
したがって、調節された差Edeltaが正であるとき、これは、所望の充電状態が到達されていないことを意味し、したがって、適合アルゴリズムは、ネットワークの状態(車両に送られた理想充電プロファイルRidealから生じる)が許容し次第、電池が充電されるよう指令しなければならない。逆に、Edeltaが負であるとき、これは、電池が所望の充電状態を超えていることを意味し、それゆえに電池が、理想充電プロファイルRidealによって示されるなどの好機にグリッドに放電するよう指令することが必要である。
【0034】
適合アルゴリズムは、次いで、以下の戦略を介して、電池に適用されるべき充電電力レベルPchargeを、差Edeltaから導出する:
[数式5]
- Edelta>0である場合(電池が充電されなければならないケース):
Rideal>0であれば、
Pcharge=Edelta*Rideal
さもなければPcharge=0
- さもなければEdelta≦0である場合(電池が放電されなければならないケース):
Rideal<0であれば、Pcharge=-Edelta*Rideal
さもなければPcharge=0。
【0035】
最終的に適用されるべき充電電力Pfinalを決定するために残されたすべきことは、電池が配電グリッドに接続される時機ならびに車両の電池の最小および最大充電電力PminおよびPmaxの点からの電力制約を考慮に入れることである:
[数式6]
- |Pcharge|>Pminである場合:
- 車両が接続されていなければ、Pfinal=0
さもなければ:
○ Pcharge>0であればPfinal=min(Pcharge,Pmax)
○ さもなければPfinal=max(Pcharge,-Pmax)
- さもなければPfinal=0。
【0036】
したがって、車両がどのように使用されることになるかについて何も知る必要なく、グリッドから引き出される充電電力の量の不連続なしで、入力として受信される理想充電プロファイルR
idealに可能な限り従う充電法則が得られる。kWHでの車両の消費CONSOをおよび適合アルゴリズムによって設定される充電法則から生じるkWでの充電電力P
finalを表す曲線によって
図2に例示されるように、一方では、理想充電プロファイルR
idealの信号によって示される好機に電池が実際に充放電されることおよび、他方では、信号CONSOの消費ピークによって象徴される、通常より高い消費が電池のより大きな充電に至ることになることが理解され得る。
【0037】
充電の管理は、したがって有利には開ループで実施される:アグリゲータによって計算される充電プロファイルは、最適制御法則が定められるのを、すなわち理想充電プロファイルが数日の期間にわたって各日従われるのを可能にするが、グリッドに固有の制約だけを考慮に入れ、エンドユーザからのフィードバック(グリッドへの電池の接続の状況、電池の現在の充電状態、等)は入れておらず、この理想充電プロファイルは、電池を充電するためのシステムをローカルに制御する、電池と関連する充電マネージャに送信されている。一定間隔で、例えば週1回、グリッドの状態を考慮に入れて新たな制御法則が再計算される。
【0038】
有利には、本説明において上に示したように、グリッド上で利用可能な電力の生成と関連するCO2排出量を基に計算される理想充電プロファイルを考慮に入れること、グリッドに接続される車両の電池の充放電のフェーズを管理すること、および特に、グリッド上で利用可能な電力がCO2の排出量が低い発電の結果である期間に電池をより多く充電することが可能である。
【0039】
したがって、CO2排出量の最適化であると言われる、この文脈では、アグリゲータ10によって送出される理想充電プロファイルが配電グリッド20上で利用可能な電気の生成と関連するCO2排出量にも依存することが推奨できる。したがって、アグリゲータ10は、有利には、理想充電プロファイルRidealを確立する目的で、比較的長期間にわたる、典型的に数日にわたる、好ましくは1週間にわたるCO2排出量(または電気の価格、同価格は電気生成のCO2排出量に高く相関されている)を予測するモデルを入力として受信する。詳細には、電気生成のCO2排出量の変動における2つの別個の期間の存在が認められており、すなわち日内変動の期間が、グリッドに接続される太陽光プラントによる太陽電力の生成の期間に対応し、そして週内変動の期間が、グリッドに接続される風力タービンによる風力電力の生成の期間に対応する。したがって、全ての車両にとって理想的であるグリッド上充電プロファイルの計算において数日にわたる、好ましくは1週間にわたるCO2排出量を予測するモデルを考慮に入れることにより、電気発生のCO2排出量および特に風力タービンによって生成される電気と関連するCO2排出量の変動が理想充電プロファイルRidealへより良好に組み込まれるのを可能にする。CO2排出量を予測するモデルは、例えば、所与の地域における低炭素電力の生成が依存する計量データ(日射等)を含む、様々なデータ源からアグリゲータによって導出されてもよい。
【0040】
グリッド上で利用可能な電力の生成と関連するCO2排出量を予測するモデルは、例えば1週間の時間の間15分ごとにCO2排出値を送出し、それゆえに672成分を含有するベクトルの形態に構築されるCO2排出量予測指標を送出する。
【0041】
最初に、低CO2排出量の日により多く充電するために、車両の電池が到達しなければならない柔軟性範囲のパーセンテージが計算されるのを可能にするように、1日の目標充電状態SOCtargetが係数Kに応じて計算されることになる。
【0042】
これを行うため、入力として提供されるCO2予測を基に、一方では1週間にわたるCO2排出量の平均CO2week-avgおよび他方では1日ごとのCO2排出量の平均CO2day-avgが全ての車両に対して計算される。
【0043】
これらの値間の差の積分I
CO2が計算される:
[数式7]
そしてこのように計算された積分がとり得る最大および最小値I
CO2max、I
CO2minが決定される:
[数式8]
I
CO2max=max(I
CO2)
I
CO2min=min(I
CO2)。
【0044】
到達するよう望まれる許可された柔軟性範囲のパーセンテージを表す係数Kは、次いで各曜日に対して導出される:
[数式9]
【0045】
この係数Kは全ての車両に対して同一である。
【0046】
上に説明したように、この係数は次いで各ユーザの移動要件に適用されるが、これらの要件はそこから、到達されるべき1日の目標充電状態SOCtargetを導出するために、電池の所望の充電状態SOCdesiredと称される充電状態の形態で定められる:
[数式10]
SOCtarget=SOCdesired+K(1-SOCdesired)。
【0047】
したがって、グリッド上で利用可能な電力が高CO2排出量に対応する日には、到達されるべき1日の目標充電状態SOCtargetは、電池の所望の充電状態SOCdesiredに、すなわちユーザが自分の出発時間に得るよう望む充電状態に等しいことになる。逆に、グリッド上で利用可能な電力が低CO2排出量に対応する日には、到達されるべき1日の目標充電状態SOCtargetはより高いことになる。電池は、それゆえに低CO2排出量の日により多く充電される。
【0048】
図3は、到達されるべき柔軟性範囲のパーセンテージKの関数としての、ヒストグラムの形態の、到達されるべき1日の目標充電状態SOC
targetの1週間にわたる変動の一例を例示しており、同パーセンテージは、1週間にわたるCO2排出量の平均CO2
week-avgのおよび1日ごとのCO2排出量の平均CO2
day-avgの値を基に、上に公表した原則に従って各日計算されている。
図3において、グレーで陰影のついた各1日のヒストグラムの部分は所望の充電状態レベルSOC
desiredを表し、そしてグレーで陰影のついていない各ヒストグラムの部分は、同所望のレベルから、電池の公称容量、任意のCO2排出量のレベルに応じて0%と100%との間の値をとり得る係数Kの値に応じてこの柔軟性範囲において水平線によって象徴される、到達されるべき1日の目標充電状態SOC
targetの位置に関して生じる、許可された柔軟性範囲を表す。
【0049】
同じように、1日にわたる充電の理想的な分布を計算するために、CO2排出量のレベルが平均を下回る時機にだけ充電が要求されるのを可能にするように、時間tにおけるCO2排出量のレベルCO2currentが1日ごとのCO2排出量の平均CO2day-avgと比較される。したがって、以下が計算される:
[数式11]
ΔCO2_day=CO2day-avg-CO2current
【0050】
【0051】
したがって、理想充電プロファイルRidealに同等であるがCO2排出量を基に計算された充電プロファイルRfleetが得られる。この充電プロファイルRfleetは、次いで、上に説明したように、CO2排出量を基に計算された、15分(または別のサンプリング増分)ごとのパーセンテージで1週間にわたる1日ごとの充電分布であると定められる。1日にわたる全ての(正および負)パーセンテージの合計は0に等しくなければならない。この理想充電プロファイルは、1日の目標充電状態SOCtargetに到達するために車両の全てによって従われるべきプロファイルに相当する。
【0052】
図4は、そのような1日にわたる充電分布の一例を例示するグラフである。時間tにおけるCO2排出量のレベルCO2
currentがCO2排出量の1日にわたる平均CO2
day-avgより低いとき、信号R
idealは充電の正のパーセンテージに相当しており、電池がその再充電の目的でグリッドに接続されれば、同時機が充電のために好都合であることを意味している。逆に、時間tにおけるCO2排出量のレベルCO2
currentがCO2排出量の1日にわたる平均CO2
day-avgを上回るとき、信号R
fleetは充電の負のパーセンテージに相当しており、車両の電池が可逆充電装置に接続されれば、同時機が、代わりに電池に蓄積されたエネルギーを配電グリッドに戻すのに好都合であることを意味している。時間tにおけるCO2排出量のレベルCO2
currentとCO2排出量の1日にわたる平均CO2
day-avgとの間の差が増加するにつれて、15分ごとの充電のパーセンテージは絶対値が増加する。
【0053】
到達されるべき1日の充電状態の、すなわちユーザの移動要件に応じて定められる1日の充電目標の数日にわたる、好ましくは1週間にわたる制御が、有利には風力タービンおよび太陽光発電所によってグリッドに利用可能とされる電力を最大に利用することを可能にする。これにより、電池がCO2排出量の観点からも経済的な観点からも最適である時機に充電されるのを可能にしており、これらの2つの要因は高く相関されている。
【0054】
その上、この方法は、グリッドマネージャのニーズに容易に適合され得る。詳細には、同方法は、CO2排出量を予測するために使用されるモデルのスケールを、例えば地区に相当するスケールで制御を得て、グリッドの輻輳が回避されるのを可能にするように、または需要のバランスをとるために全国スケールでCO2排出量を予測するモデルに戻るように適合させるのに十分である。自己消費を最適化する設備のスケールでこの方法を使用することも可能である。
【0055】
最適充電プロファイルを決定する目的でCO2排出量を予測するために使用される入力モデルは、各電池と関連する充電マネージャが電気車両の集合の各車両のための充電要求を計算するのを可能にしており、これにより、配電グリッドからの消費のいかなる不連続も引き起こすことなくかつそれゆえに電気グリッドのいかなる追加の途絶も引き起こすことなく、充電に最も好都合な時機が追跡されるのを可能にし、かつこの全てが数日にわたる電気の生成に関連したCO2排出差を考慮に入れつつ達成されるのを可能にしている。
【0056】
前もって計算された充電プロファイルR
fleetは、有利には、特に車両の大集合の問題である場合、全ての車両によって従われるべき充電プロファイルである。しかしながら、変形例として、車両の小集合に関しては、配電グリッドへの影響は小さいことになり、CO2排出量の観点から、したがって経済的な観点から最も有利であるとして決定可能な時間に充電時間を集中させようとすることがより有利であり得る。これを行うため、これらの充電時間を定めることができる、「集中」充電プロファイルR
fleet_concentratedと称される理想充電プロファイルが以下の方法を適用することによって定められる:
[数式13]
ここでcは1と無限大との間に含まれる集中係数(車両の集合の大きさに応じて定められる)である。c=1のとき、集中は適用されず、R
fleet_concentrated=R
fleet。
【0057】
再び、分布が正規化される:
[数式14]
Rfleet_concentrated>0であれば:
Rfleet_concentrated_pos=Rfleet_concentrated
Rfleet_concentrated_neg=0。
Rfleet_concentrated<0であれば:
Rfleet_concentrated_pos=0
Rfleet_concentrated_neg=Rfleet_concentrated。
【0058】
最終充電プロファイルR
fleet-finalが次いで車両の集合に対して導出される:
[数式15]
【0059】
したがって、ごく少数の車両を含有する集合に関しては、車両がCO2排出量の観点から最も有利である時間に充電されるのを可能にすることになるので、高集中係数cが選ばれることになり、少数の車両が全体の電力消費に関して有する影響が小さいため、真のグリッド不連続は引き起こされない。車両の集合が大きいほど、集中係数cは低くなり、したがってグリッド制約ができる限り満たされるのを可能にする。