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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】抗腫瘍組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20240729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/175 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/7008 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61K31/44
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/4184
A61K31/706
A61K31/255
A61K31/175
A61K31/675
A61K31/198
A61K31/7068
A61K31/496
A61K31/7008
A61K31/519
A61K31/517
A61K31/5377
A61K31/506
A61K31/4439
A61K31/47
A61K31/497
A61K31/513
A61K39/395 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021538793
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020013454
(87)【国際公開番号】W WO2020196665
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019057029
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 直人
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貢広
(72)【発明者】
【氏名】田中 英男
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538785(JP,A)
【文献】Enrique ESPINOSA et al.,“Classification of anticancer drugs - a new system based on therapeutic targets”,Cancer Treatment Reviews,2003年12月,Vol. 29, No. 6,p.515-523,DOI: 10.1016/S0305-7372(03)00116-6
【文献】Ahmet Can TIMUCIN et al.,“Selective targeting of antiapoptotic BCL‐2 proteins in cancer”,Medicinal Research Reviews,2018年05月30日,Vol. 39, No. 1,p.146-175,DOI: 10.1002/med.21516
【文献】Takahiro SATO et al.,“DNA Hypomethylating Drugs in Cancer Therapy”,Cold Spring Harbor Perspectives in Medicine,2017年02月03日,Vol. 7, No. 5,p.a026948,DOI: 10.1101/cshperspect.a026948
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)の抗腫瘍剤と組み合わせて用いるための、以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物。
(A)ベンダムスチン、デシタビン、ブスルファン、ロムスチン、チオテパ、メルファラン、シタラビン、ベネトクラックス、ラニムスチン、イブルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、アキシチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、ギルテリチニブ、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びリツキシマブからなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化1】
(式中、
は、ハロゲン原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい 1-6 アルキル基を表し、
は、水素原子、又はC 1-6 アルキル基を表し、
mは、1又は2を表し、ただし、mが2を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
【請求項2】
以下の(A)の抗腫瘍剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる、以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物。
(A)ベンダムスチン、デシタビン、ブスルファン、ロムスチン、チオテパ、メルファラン、シタラビン、ベネトクラックス、ラニムスチン、イブルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、アキシチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、ギルテリチニブ、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びリツキシマブからなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化2】
(式中、
は、ハロゲン原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい 1-6 アルキル基を表し、
は、水素原子、又はC 1-6 アルキル基を表し、
mは、1又は2を表し、ただし、mが2を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
【請求項3】
(A)の抗腫瘍剤及び前記抗腫瘍組成物の一方が、他方の投与が終わった後、数分~数十分又は1~12時間あけて投与される、請求項2に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項4】
以下の(A)の抗腫瘍剤、及び
以下の(B)の化合物又はその塩
を含有する抗腫瘍組成物。
(A)ベンダムスチン、デシタビン、ブスルファン、ロムスチン、チオテパ、メルファラン、シタラビン、ベネトクラックス、ラニムスチン、イブルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、アキシチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、ギルテリチニブ、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びリツキシマブからなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化3】
(式中、
は、ハロゲン原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい 1-6 アルキル基を表し、
は、水素原子、又はC 1-6 アルキル基を表し、
mは、1又は2を表し、ただし、mが2を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
【請求項5】
(B)の化合物又はその塩が
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、及び
2-フルオロ-N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミ
らなる群から選択される少なくとも1種の化合物
又はその塩である、
請求項1~4のいずれかに記載の抗腫瘍組成物。
【請求項6】
以下の(A)の抗腫瘍剤、及び
以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物
を備える、抗腫瘍のためのキット。
(A)ベンダムスチン、デシタビン、ブスルファン、ロムスチン、チオテパ、メルファラン、シタラビン、ベネトクラックス、ラニムスチン、イブルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、アキシチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、ギルテリチニブ、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びリツキシマブからなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化4】
(式中、
は、ハロゲン原子、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい 1-6 アルキル基を表し、
は、水素原子、又はC 1-6 アルキル基を表し、
mは、1又は2を表し、ただし、mが2を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗腫瘍組成物及び腫瘍の予防又は治療方法等に関する。なお、本明細書に記載される文献は、下記先行技術文献(特許文献及び非特許文献)として挙げた文献を含め、全ての文献につき、記載される全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍(癌)により死亡する人は増加傾向にある。このため、優れた悪性腫瘍治療方法は常に望まれており、その開発が日々行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/046825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、腫瘍、特に悪性腫瘍の化学療法においては抗腫瘍剤を単独で投与する場合、副作用等の点から十分な抗腫瘍効果を発揮するには限界がある。そのため、臨床の場では異なった2剤あるいは3剤以上を組み合わせた多剤併用療法が行われている。この併用療法は、異なった抗腫瘍剤を組み合わせることにより、1)非感受性細胞集団を減少させる、2)薬剤耐性出現を予防あるいは遅延させる、3)毒性の異なる薬剤の組み合わせにより毒性を分散させるなど、副作用の軽減又は抗腫瘍作用の増強を目的としている。
【0005】
しかしながら、異なる抗腫瘍剤を漫然と組み合わせて併用療法を行っても必ずしも抗腫瘍作用の増強効果が得られるとは限らない。しかも、複数の抗腫瘍剤を併用する場合は、抗腫瘍作用と共に副作用も増大する場合が多い。そのため、できるだけ副作用を増大させることなく、相乗的な抗腫瘍作用により腫瘍を顕著に縮小させることを可能とする新たな抗腫瘍剤の組み合わせが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の抗腫瘍剤と、特定の化合物とを組み合わせて用いることにより、それらを単独で用いる場合の抗腫瘍効果よりもさらに高い抗腫瘍効果を得られる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
以下の(A)の抗腫瘍剤と組み合わせて用いるための、以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化1】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項2.
以下の(A)の抗腫瘍剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる、以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化2】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項3.
以下の(A)の抗腫瘍剤、及び
以下の(B)の化合物又はその塩
を含有する抗腫瘍組成物。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化3】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項4.
(B)の化合物又はその塩が、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド]、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、及び
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物
又はその塩である、
項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
以下の(A)の抗腫瘍剤、及び
以下の(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物
を備えるキット。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化4】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項6.
以下の(A)の抗腫瘍剤及び以下の(B)の化合物又はその塩を対象に投与することを含む、腫瘍の予防又は治療方法。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化5】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項7.
腫瘍の予防又は治療における、以下の(A)の抗腫瘍剤との組み合わせての使用のための、以下の(B)の化合物又はその塩。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤
(B)以下の式(1):
【化6】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩
項8.
(A)の抗腫瘍剤が、
DNA塩基と共有結合できるアルキル基部位を2又は3以上有する化合物、
抗CD20抗体若しくはそのCD20抗原を認識する断片、CD20抗原を認識するアプタマー、あるいはこれらを備えた複合分子(好ましくは抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate,ADC))、
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、
ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、及び葉酸代謝拮抗剤、
Bcl-2阻害剤、並びに
チロシンキナーゼ阻害剤
からなる群より選択される少なくとも1種である、
項1~4のいずれかに記載の組成物、項5に記載のキット、項6に記載の予防又は治療方法、あるいは項7に記載の化合物またはその塩。
項9.
(A)の抗腫瘍剤が、
ナイトロジェンマスタード類(例えば、メクロレタミン塩酸塩、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ベンダムスチン)、アジリジンおよびエポキシド類(例えば、チオテパ、マイトマイシンC、およびジアンヒドロガラクチトール)、アルキルスルホン酸エステル類(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびラニムスチン)、ヒドラジンおよびトリアゼン誘導体(例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、およびテモゾロミド)、
リツキシマブ、イブリツモマブ、及びリツキシマブ又はイブリツモマブとの同質性(comparability)が確認された抗体(リツキシマブ又はイブリツモマブのバイオシミラー)、イブリツモマブ チウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、
デシタビン、アザシチジン、及びゼブラリン
シタラビン、5-FU(5-フルオロウラシル)、アザチオプリン、メルカプトプリン、及びメトトレキサート、
ベネトクラックス(Venetoclax)、並びに
ラパチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ポナチニブ、エルロチニブ、イブルチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、及びギルテリチニブ
からなる群より選択される少なくとも1種である、
項1~4のいずれかに記載の組成物、項5に記載のキット、項6に記載の予防又は治療方法、あるいは項7に記載の化合物またはその塩。
【発明の効果】
【0008】
特定の抗腫瘍剤と、特定の化合物とを組み合わせて用いることにより、単独で用いる場合の抗腫瘍効果よりもさらに高い抗腫瘍効果を得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ヒト濾胞性リンパ腫細胞株DOHH-2におけるN-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド塩酸塩(以下当該図面の簡単な説明欄において「化合物A」ともいう)とベンダムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図2】ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図3】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株CMK-86における化合物Aとデシタビンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図4】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとブスルファンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図5】ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとロムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図6】ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとチオテパとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図7】ヒト膵癌細胞株BxPC-3における化合物Aとロムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図8】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとメルファランとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図9】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株U2932における化合物Aとロムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図10】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株U2932における化合物Aとメルファランとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図11】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとメルファランとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図12】ヒト胃癌細胞株MKN45における化合物Aとロムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図13】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとデシタビンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図14】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株OCI-AML2における化合物Aとデシタビンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図15】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとシタラビンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図16】ヒト乳癌細胞株BT-474における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図17】ヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI 8226における化合物Aとメルファランとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図18】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとベネトクラックスとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図19】ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとラニムスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図20】ヒト卵巣癌細胞株 SK-OV-3における化合物Aとチオテパとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図21】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとイブルチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図22】ヒト骨髄異形成症候群細胞株SKM-1における化合物Aとデシタビンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図23】ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとエルロチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図24】ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとゲフィチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図25】ヒト肺癌細胞株HCC 827における化合物Aとゲフィチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図26】ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとイマチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図27】ヒト腎癌細胞株ACHNにおける化合物Aとアキシチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図28】ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453における化合物Aとラパチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図29】ヒト肝癌細胞株Hep G2における化合物Aとレンバチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図30】ヒト乳癌細胞株SK-BR-3における化合物Aとラパチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図31】ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとアファチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図32】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとギルテリチニブとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図33】ヒト頭頸部(咽頭)癌細胞株FaDuにおける化合物Aと5-FUとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図34】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly18における化合物Aとビンクリスチンとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図35】ヒト乳癌細胞株BT-474における化合物Aとドセタキセルとの併用効果を示す、イソボログラム解析結果である。
図36】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとシクロホスファミドとの併用効果の結果を示す。
図37】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとシクロホスファミドとの併用効果の結果を示す。
図38】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとシクロホスファミドとの併用効果の結果を示す。
図39】ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453における化合物Aとラパチニブとの併用効果の結果を示す。
図40】ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453における化合物Aとラパチニブとの併用効果の結果を示す。
図41】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果の結果を示す。
図42】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとリツキシマブとの併用効果の結果を示す。
図43】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとデシタビンとの併用効果の結果を示す。
図44】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとシタラビンとの併用効果の結果を示す。
図45】ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとベンダムスチンとリツキシマブの3剤併用効果の結果を示す。
図46】ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとデシタビンとベネトクラックスとの3剤併用効果の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、抗腫瘍組成物、腫瘍の予防又は治療方法、及び抗腫瘍のためのキット等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本開示に包含される抗腫瘍組成物は、以下の(B)の化合物又はその塩を含有する。
なお、以下、当該(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物を「本開示の抗腫瘍組成物」ということがある。
(B)以下の式(1):
【化7】
(式中、
は、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mは、1から3の整数を表し、ただし、mが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なる)
で表される化合物又はその塩。
【0012】
式(1)において示す個々の基の具体的な例は以下の通りである。
【0013】
低級アルコキシ基の例には、炭素原子1個から6個を有する直鎖又は分枝アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基が含まれる。
【0014】
低級アルキル基の例には、炭素原子1個から6個を有する直鎖又は分枝アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が含まれる。
【0015】
1個又は複数のハロゲン原子で場合により置換されている低級アルキル基の例には、上記に記載した低級アルキル基の他に、1個から3個のハロゲン原子によって置換されていてよい炭素原子1個から6個を有する直鎖又は分枝アルキル基、例えば、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、2-クロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、3-クロロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、4,4,4-トリクロロブチル基、4-フルオロブチル基、5-クロロペンチル基、3-クロロ-2-メチルプロピル基、5-ブロモへキシル基、及び5,6-ジブロモヘキシル基が含まれる。
【0016】
ハロゲン原子の例には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が含まれる。
【0017】
アリール基の例には、CからC10芳香族基、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、及びp-トリル基が含まれる。
【0018】
アリールオキシ基の例には、CからC10アリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、及び2-ナフチルオキシ基が含まれる。
【0019】
好ましい1つの例は、
が、アリール基、アリールオキシ基、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子によって場合により置換されている低級アルキル基を表し、
が、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mが、整数1を表す、
式(1)によって表される化合物又はその塩である。
【0020】
別の好ましい例は、
がハロゲン原子を表し、
が、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mが、1から3の整数を表し、
ただし、mが2又は3を表す場合、Rが同一又は異なる、
式(1)によって表される化合物又はその塩である。
【0021】
さらに別の好ましい例は、
が、ハロゲン、又は1個若しくは複数のハロゲン原子で場合により置換されている低級アルキル基を表し、
が、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を表し、
mが、整数2を表し、
ただし、Rが同一又は異なる、
式(1)によって表される化合物又はその塩である。
【0022】
より具体的な式(1)によって表される化合物の好ましい例としては、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-フルオロ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-フェノキシベンズアミド、
N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ビフェニル-4-カルボキサミド、
2-フルオロ-N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-メトキシ-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド、
N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
2-フルオロ-N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、あるいは
2,3,4-トリフルオロ-N-{6-[4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}ベンズアミド
が挙げられ、これらの化合物の塩も好ましく用いることができる。
【0023】
式(1)で表される化合物の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、あるいは、酢酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0024】
式(1)で表される化合物又はその塩は、公知の方法または公知の方法から容易に想到できる方法により調製することができる。例えば、特許文献1(国際公開第2012/046825号)に記載の方法により調製することができる。
【0025】
本開示の抗腫瘍組成物は、以下の(A)の抗腫瘍剤と組み合わせて用いられる。
(A)アルキル化剤、CD20認識分子、DNAメチル化阻害剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、Bcl-2阻害剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗腫瘍剤。
【0026】
アルキル化剤は、細胞障害性抗がん剤(制がん剤)の一種である。DNA塩基と共有結合できるアルキル基部位を複数持ち、2本のDNA鎖を結びつける(鎖間クロスリンク)ことによりDNAの複製を妨げる。DNAの塩基、特にグアニンは求核性があり、一般的に求核置換反応でDNA塩基とアルキル基が共有結合する。アルキル化剤としては、2又は3以上のアルキル基部位を有するものが好ましく、より具体的には例えば、ナイトロジェンマスタード類(例えば、メクロレタミン塩酸塩、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ベンダムスチン)、アジリジンおよびエポキシド類(例えば、チオテパ、マイトマイシンC、およびジアンヒドロガラクチトール)、アルキルスルホン酸エステル類(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびラニムスチン)、ヒドラジンおよびトリアゼン誘導体(例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、およびテモゾロミド)等が挙げられる。
【0027】
ここでのCD20認識分子は、CD20抗原(Bp35)を認識する分子であり、抗腫瘍効果を示すものである。例えば抗CD20抗体若しくはそのCD20抗原を認識する断片、CD20抗原を認識するアプタマー、あるいはこれらを備えた複合分子等が挙げられる。抗体としてはポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれであってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。また、抗体は、キメラ抗体(齧歯類(例えばマウス、ラット、チャイニーズハムスター等)とヒトとのキメラ)、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体が好ましい。抗CD20抗体としては、例えばリツキシマブ、イブリツモマブ、及びリツキシマブ又はイブリツモマブとの同質性(comparability)が確認された抗体(リツキシマブ又はイブリツモマブのバイオシミラー)等が好ましく挙げられる。また、ここでの複合分子としては、例えば、より具体的には例えば抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate,ADC)が好ましく挙げられる。抗体薬物複合体としては、抗体にリンカーを介して抗ガン剤を結合させた複合体が好ましい。抗体薬物複合体(ADC)としては、例えば抗体に放射性同位元素を含む化合物(チウキセタン)を結合したイブリツモマブ チウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)などが例示される。
【0028】
DNAメチル化阻害剤としては、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が好ましく、より具体的には例えば、デシタビン、アザシチジン、及びゼブラリン等が挙げられる。
【0029】
代謝拮抗剤としては、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、及び葉酸代謝拮抗剤が好ましく、より具体的には例えば、ピリミジン系代謝拮抗剤としてはシタラビン、5-FU(5-フルオロウラシル)等が挙げられ、プリン系代謝拮抗剤としてはアザチオプリン、メルカプトプリン等が挙げられ、葉酸代謝拮抗剤としてはメトトレキサート等が挙げられる。
【0030】
Bcl-2(B cell lymphoma 2)はミトコンドリアの膜透過性を制御することによってアポトーシスを調節する癌遺伝子として知られており、Bcl-2阻害剤としては、例えばベネトクラックス(Venetoclax)が挙げられる。
【0031】
チロシンキナーゼ阻害剤としては、例えばラパチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ポナチニブ、エルロチニブ、イブルチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、ギルテリチニブ等が挙げられる。
【0032】
本開示の抗腫瘍組成物は、(B)の化合物又はその塩と、例えば薬学的に許容される担体等を組み合わせて調製することができる。調製は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法によって行うことができる。
【0033】
本開示の抗腫瘍組成物は、好ましくは一般的な医薬製剤の形態で用いられる。このような医薬製剤は、通例用いられる賦形剤又は添加剤、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤などを用いて、製剤化することによって得られる。
【0034】
このような医薬製剤の形態は、治療の目的に従って様々な形態から選択することができる。典型的な例には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)などが含まれる。
【0035】
錠剤を形成するために、例えば、ラクトース、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、及び他の添加剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、及び他の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天粉末、ラミナラン粉末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、ラクトース、及び他の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオ脂、硬化油、及び他の崩壊阻止剤;四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム、及び他の吸収促進剤;グリセリン、デンプン、及び他の湿潤剤;デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、及び他の吸着剤;精製タルク、ステアレート、ホウ酸粉末、ポリエチレングリコール、及び他の滑沢剤を含む、あらゆる様々な公知の担体を用いることができる。
【0036】
このような錠剤は、例えば、糖衣錠、ゼラチンコーティング錠、腸溶錠、フィルムコーティング錠、二層又は多層錠などを調製する場合には、必要に応じて公知のコーティング材料でコーティングされてもよい。
【0037】
丸剤を形成するために、例えば、グルコース、ラクトース、デンプン、カカオ脂、水添植物油、カオリン、タルク、及び他の添加剤;アラビアゴム粉末、トラガカント粉末、ゼラチン、エタノール、及び他の結合剤;ラミナラン、寒天、及び他の崩壊剤などを含む、様々な公知の担体を用いることができる。
【0038】
坐剤を形成するために、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル、ゼラチン、半合成グリセリドなどを含む、様々な公知の担体を用いることができる。
【0039】
注射剤を形成するために、液剤、乳剤、又は懸濁剤は滅菌され、好ましくは血液と等張になされる。液剤、乳剤、又は懸濁剤を調製するために、様々な公知の広く用いられている賦形剤を用いることができる。このような賦形剤の例には、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステルなどが含まれる。この場合、医薬製剤は、等張溶液を調製するのに十分な量の塩化ナトリウム、グルコース、又はグリセリンを含むことができ、通例の可溶化剤、緩衝剤、無痛化剤などを含むことができ、さらに、必要であれば、着色剤、保存剤、香味剤、甘味剤など、及び/又は他の医薬を含むことができる。
【0040】
また、本開示の抗腫瘍組成物に含有される(B)の化合物又はその塩の量としては、特に限定されず広範囲から適宜選択されるが、例えば組成物中に約0.1~70重量%、好ましくは約0.1~30重量%とすることができる。
【0041】
本開示の抗腫瘍組成物の投与経路は限定されない。例えば、製剤の形態、患者の年齢及び性別、疾患の状態、並びに他の状態に適する経路によって投与することができる。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、及びカプセル剤は経口投与される。注射剤は、単独で、又はグルコース溶液、アミノ酸溶液などの通例の注射用輸液と混合して静脈内に投与され、或いは、必要に応じて、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内に単独で投与される。坐剤は直腸内に投与される。
【0042】
本開示の抗腫瘍組成物の投与量は、使用方法、患者の年齢及び性別、疾患の重症度、(A)の抗腫瘍剤の投与量及び投与時間、並びに他の状態等に応じて適宜設定することができる。特に制限はされないが、例えば、単回又は分割投与量において、0.001mg/kg体重/日から100mg/kg体重/日、好ましくは0.001mg/kg体重/日から50mg/kg体重/日である。
【0043】
本開示の抗腫瘍組成物と(A)の抗腫瘍剤との組み合わせの態様は、特に限定されない。より具体的には、例えば、本開示の抗腫瘍組成物は、(i)(A)の抗腫瘍剤と組み合わせて用いるための抗腫瘍組成物、(ii)(A)の抗腫瘍剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる抗腫瘍組成物、あるいは(iii)(A)の抗腫瘍剤をさらに含有する抗腫瘍組成物等であってもよい。
【0044】
(i)の抗腫瘍組成物は、(A)の抗腫瘍剤と組み合わせて用いられる態様を全て包含する。例えば(A)の抗腫瘍剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる態様を包含する。換言すれば、(i)の抗腫瘍組成物は、(ii)の抗腫瘍組成物を包含する。また、この他にも例えば、(i)の抗腫瘍組成物は、(A)の抗腫瘍剤と混合して、(B)の化合物又はその塩のみならず(A)の抗腫瘍剤をも含有する抗腫瘍組成物を調製するために用いられる態様をも包含する。換言すれば、(i)の抗腫瘍組成物は、(iii)の抗腫瘍組成物を調製するための組成物を包含する。また、この他にも例えば、(i)の抗腫瘍組成物は、(A)の抗腫瘍剤とともにひとまとまりのキットとして用いられる態様をも包含する。換言すれば、(i)の抗腫瘍組成物は、(A)の抗腫瘍剤とともに備えられてキット(特に抗腫瘍キット)を構成するために用いられる態様をも包含する。
【0045】
(ii)の抗腫瘍組成物は、(A)の抗腫瘍剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる。ここでの(A)の抗腫瘍剤を投与される人とは、本開示の抗腫瘍組成物の投与後若しくは本開示の抗腫瘍組成物の投与と同時に、(A)の抗腫瘍剤を投与される人である。また、ここでの(A)の抗腫瘍剤を投与された人とは、本開示の抗腫瘍組成物の投与前に、(A)の抗腫瘍剤を投与される人である。これらのいずれの場合においても、本開示の抗腫瘍組成物の投与と(A)の抗腫瘍剤の投与との間にどの程度の時間をあけるかについては、(A)の抗腫瘍剤と本開示の抗腫瘍組成物とを組み合わせて投与して相乗効果を奏させて腫瘍治療を図る限り、特に制限されず、例えば、時間をあけなくてもよいし(すなわち同時投与)、一方の投与途中にもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後すぐにもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後数分から数十分の時間をあけてもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後例えば1~12(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)時間程度あけてもう一方の投与を開始してもよい。
【0046】
(iii)の抗腫瘍組成物は、(B)の化合物又はその塩のみならず(A)の抗腫瘍剤をも含有する抗腫瘍組成物である。当該抗腫瘍組成物の剤形は、(A)の抗腫瘍剤の剤形等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、(A)の抗腫瘍剤に若しくは(A)の抗腫瘍剤調製時に、(B)の化合物又はその塩を混合して調製することができる。このため、(iii)の抗腫瘍組成物の剤形は、調製に用いた(A)の抗腫瘍剤の剤形と同じ剤形であることが好ましい。
【0047】
本開示は、(A)の抗腫瘍剤及び(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物を備えるキットをも包含する。当該キットを「本開示のキット」ということがある。本開示のキットは、抗腫瘍キット(すなわち、腫瘍を予防又は治療するためのキット)であることが好ましい。また、当該キットは、(A)の抗腫瘍剤及び(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物以外にも、腫瘍を予防又は治療するために更に好ましい医薬や、投与器具(例えば注射器)、あるいは指示書(添付文書)等を適宜備えていてもよい。
【0048】
本開示は、(A)の抗腫瘍剤及び(B)の化合物又はその塩を対象に投与することを含む、腫瘍予防又は治療方法をも包含する。当該予防又は治療方法を「本開示の予防又は治療方法」ということがある。本開示の予防又は治療方法は、(A)の抗腫瘍剤及び(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物を別々に投与することを含む腫瘍予防又は治療方法、並びに上記(iii)の抗腫瘍組成物を投与することを含む腫瘍予防又は治療方法、を包含する。前者の方法(別々に投与することを含む腫瘍予防又は治療方法)においては、(A)の抗腫瘍剤及び(B)の化合物又はその塩を含有する抗腫瘍組成物の投与スケジュールは、(A)の抗腫瘍剤と本開示の抗腫瘍組成物とを組み合わせて投与して相乗効果を奏させて腫瘍治療を図る限り、特に制限されず、例えば、時間をあけなくてもよいし(すなわち同時投与)、一方の投与途中にもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後すぐにもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後数分から数十分の時間をあけてもう一方の投与を開始してもよいし、一方の投与が終わった後例えば1~12(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)時間程度あけてもう一方の投与を開始してもよい。また、いずれの投与が先であってもよい。
【0049】
また、対象も、腫瘍治療が必要な対象であれば、特に制限はされない。
【0050】
本開示において、腫瘍とは、異常な細胞増殖による疾患であり、好ましくは悪性腫瘍(癌)である。より具体的には、乳癌(例えば、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌等)、前立腺癌(例えば、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌等)、膵癌(例えば、膵管癌等)、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌等)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫等)、結腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸癌(例えば、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍等)、小腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌等)、唾液腺癌、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓癌(例えば、原発性肝癌、肝外胆管癌等)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、子宮肉腫、卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱癌、尿道がん、皮膚癌(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫等)、悪性黒色腫、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、軟部組織肉腫等)、骨髄異形性腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形癌(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)が挙げられる。なかでも、本開示の抗腫瘍組成物、キット、若しくは予防または治療方法の適用対象として特に好ましい癌種として、悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫、乳癌、胃癌、膵癌、肺癌、卵巣癌等が挙げられる。
【0051】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【0052】
また、上述した各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。
【実施例
【0053】
以下、本開示に包含される主題をより具体的に説明するが、当該主題は下記の例に限定されるものではない。
【0054】
国際公開第2012/046825号の実施例(特に実施例24)に記載の方法に従い、N-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド塩酸塩(白色粉末状)を調製した。このN-{6-[2-メチル-4-(メチルアミノ)フェノキシ]ピリジン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド塩酸塩を以下化合物Aと表記することがある。得られた化合物Aの白色粉末を「化合物A原末」として、以下の検討に用いた。
【0055】
<in vitro増殖抑制試験>
実施例1:ヒト濾胞性リンパ腫細胞株DOHH-2における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞培養
DOHH-2細胞は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen undZellkulturen GmbH(DSMZ)より購入した。細胞は、10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清,及びペニシリンとストレプトマイシンとを添加したRPMI-1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。細胞を常法により回収・再懸濁し、96ウェルプレートに1000cells/wellで播種した。播種細胞数は細胞増殖曲線の直線性が6日目まで得られる細胞数とした。
3)薬剤添加
細胞を37℃ 5%COで24時間培養した後、各種濃度の化合物Aまたは各種濃度の併用する抗腫瘍剤を含む培地を添加した。プレートを攪拌後、37℃ 5%COで120時間培養した。
4)細胞増殖抑制試験
CellTiter-FluorCell Viability Assay(プロメガ)を用いて細胞増殖抑制試験を行った。即ち測定する各ウェルにCellTiter-Fluorreagentを添加し、インキュベートした後、蛍光マイクロプレートリーダーで蛍光強度を励起波長400nm、蛍光波長505nmで測定した。
5)細胞生存率の算出
各ウェルの測定値から細胞を含まないブランクの値を差し引き、薬剤非添加コントロールとの比率を算出し、細胞生存率とした。当該細胞生存率を用いて、下記のIC50値を求めた。
6)イソボログラム(Isobologram)解析
イソボログラム法を用いて化合物Aと併用抗腫瘍剤(ベンダムスチン)の併用効果を評価した。具体的には、次のようにして評価した。
各濃度の抗腫瘍剤における化合物AのIC50値(薬剤非添加コントロールの細胞増殖を50%抑制する濃度)を求めた。各抗腫瘍剤の濃度を抗腫瘍剤単剤のIC50値で割ることにより抗腫瘍剤の部分阻害濃度係数(FIC)を求めた。その時の化合物AのIC50値を化合物A単剤のIC50値で割ることにより化合物AのFIC を求めた。同様の方法で各濃度の化合物Aにおける抗腫瘍剤のIC50値を求めた。各化合物Aの濃度を化合物A単剤のIC50値で割ることにより化合物AのFICを求めた。その時の抗腫瘍剤のIC50値を抗腫瘍剤単剤のIC50値で割ることにより抗腫瘍剤のFIC を求めた。各組合せのFICの合計値を各組合せにおけるCI値とした。CIの平均値及び95%信頼区間を算出した。計算の詳細を、表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
また、各薬剤(化合物A及びベンダムスチン)のFICをプロットしたグラフを図1に示す。イソボログラムでは、各薬剤のFICが1となる点を結んだ直線より各プロットが右上に位置する、ほぼ線上にある、又は左下に位置する場合、それぞれ、拮抗、相加、または相乗効果を示すことを意味する。図1に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとベンダムスチンの併用はDOHH-2の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0058】
実施例2:ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MDA-MB-231細胞は,American TypeCulture Collection(ATCC)より購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、及びイソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は2000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図2に示す。図2に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとベンダムスチンの併用はMDA-MB-231の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0059】
実施例3:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株CMK-86における化合物Aとデシタビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。デシタビンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
CMK-86細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は12000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図3に示す。図3に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとデシタビンの併用はCMK-86の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0060】
実施例4:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとブスルファンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ブスルファンは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は,ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図4に示す。図4に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとブスルファンの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0061】
実施例5:ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとロムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ロムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
K562細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図5に示す。図5に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとロムスチンの併用はK562の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0062】
実施例6:ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとチオテパとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。チオテパはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
A549細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図6に示す。図6に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとチオテパの併用はA549の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0063】
実施例7:ヒト膵癌細胞株BxPC-3における化合物Aとロムスチンとの併用効果
1)被験物質
ロムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。化合物Aは原末を用いた。
2)細胞増殖抑制試験
BxPC-3細胞は,ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図7に示す。図7に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとロムスチンの併用はBxPC-3の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0064】
実施例8:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとメルファランとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。メルファランはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)培地及び細胞の継代
KG-1細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図8に示す。図8に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとメルファランの併用はKG-1の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0065】
実施例9:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株U2932における化合物Aとロムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ロムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
U2932細胞は、DSMZより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は2000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図9に示す。図9に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとロムスチンの併用はU2932の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0066】
実施例10:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株U2932における化合物Aとメルファランとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。メルファランはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
U2932細胞は、DSMZより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は2000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図10に示す。図10に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとメルファランの併用はU2932の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0067】
実施例11:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとメルファランとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。メルファランはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は,ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図11に示す。図11に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとメルファランの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0068】
実施例12:ヒト胃癌細胞株MKN45における化合物Aとロムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ロムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MKN45細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図12に示す。図12に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとロムスチンの併用はMKN45の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0069】
実施例13:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとデシタビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。デシタビンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は、ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図13に示す。図13に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとデシタビンの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0070】
実施例14:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株OCI-AML2における化合物Aとデシタビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。デシタビンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
OCI-AML2細胞は、DSMZより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は4000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図14に示す。図14に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとデシタビンの併用はOCI-AML2の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0071】
実施例15:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとシタラビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。シタラビンは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は、ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図15に示す。図15に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとシタラビンの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0072】
実施例16:ヒト乳癌細胞株BT-474における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
BT-474細胞は、ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図16に示す。図16に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとベンダムスチンの併用はBT-474の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0073】
実施例17:ヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI 8226における化合物Aとメルファランとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。メルファランはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
RPMI 8226細胞は、ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は4000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図17に示す。図17に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとメルファランの併用はRPMI 8226の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0074】
実施例18:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとベネトクラックスとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベネトクラックスはエルシーラボラトリーズより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
KG-1細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図18に示す。図18に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとベネトクラックスの併用はKG-1の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0075】
実施例19:ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとラニムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ラニムスチンはトロントリサーチケミカルズより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
K562細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図19に示す。図19に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとラニムスチンの併用はK562の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0076】
実施例20:ヒト卵巣癌細胞株 SK-OV-3における化合物Aとチオテパとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。チオテパはシグマアルドリッチより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
SK-OV-3細胞は、ATCCより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。イソボログラム解析結果を図20に示す。図20に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとチオテパの併用はSK-OV-3の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0077】
実施例21:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとイブルチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。イブルチニブはMedchem express社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図21に示す。
図21に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとイブルチニブの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0078】
実施例22: ヒト骨髄異形成症候群細胞株SKM-1における化合物Aとデシタビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。デシタビンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
SKM-1細胞は、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンク (JCRB)より購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図22に示す。図22に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとデシタビンの併用はSKM-1の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0079】
実施例23: ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとエルロチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。エルロチニブは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
A549細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は1000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図23に示す。図23に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとエルロチニブの併用はA549の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0080】
実施例24: ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとゲフィチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ゲフィチニブは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
A549細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は1000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図24に示す。図24に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとゲフィチニブの併用はA549の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0081】
実施例25: ヒト肺癌細胞株HCC 827における化合物Aとゲフィチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ゲフィチニブは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
HCC 827細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は4000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図25に示す。
図25に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとゲフィチニブの併用はHCC 827の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0082】
実施例26: ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562における化合物Aとイマチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。イマチニブは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
K562細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は1000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図26に示す。図26に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとイマチニブの併用はK562の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0083】
実施例27: ヒト腎癌細胞株ACHNにおける化合物Aとアキシチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。アキシチニブはSelleck biotech社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
ACHN細胞は、大塚製薬TRCより入手した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図27に示す。
図27に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとアキシチニブの併用はACHNの細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0084】
実施例28: ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453における化合物Aとラパチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ラパチニブはLC Laboratories社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MDA-MB-453細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図28に示す。図28に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとラパチニブの併用はMDA-MB-453の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0085】
実施例29: ヒト肝癌細胞株Hep G2における化合物Aとレンバチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。レンバチニブはフナコシ株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
Hep G2細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は2000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図29に示す。
図29に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aレンバチニブの併用はHep G2の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0086】
実施例30: ヒト乳癌細胞株SK-BR-3における化合物Aとラパチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ラパチニブはLC Laboratoriesより購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
SK-BR-3細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は4000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図30に示す。
図30に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとラパチニブの併用はSK-BR-3の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0087】
実施例31: ヒト肺癌細胞株A549における化合物Aとアファチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。アファチニブは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
A549細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は1000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図31に示す。図31に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとアファチニブの併用はA549の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0088】
実施例32: ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11における化合物Aとギルテリチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ギルテリチニブはCayman Chemical Company社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
MV-4-11細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図32に示す。
図32に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aとギルテリチニブの併用はMV-4-11の細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0089】
実施例33: ヒト頭頸部(咽頭)癌細胞株FaDuにおける化合物Aと5-FUとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。5-FUはシグマアルドリッチ株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
FaDu細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は1000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図33に示す。図33に示した各プロットが直線の左下に位置したことから、化合物Aと5-FUの併用はFaDuの細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0090】
比較例1:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly18における化合物Aとビンクリスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ビンクリスチンは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
OCI-Ly18細胞は、DSMZより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は16000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図34に示す。図34に示した各プロットがほぼ直線上に位置したことから、化合物Aとビンクリスチンの併用はOCI-Ly18の細胞増殖抑制において相加効果しか示さないことがわかった。
【0091】
比較例2:ヒト乳癌細胞株BT-474における化合物Aとドセタキセルとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ドセタキセルは和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
BT-474細胞は、ATCCより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出、イソボログラム解析を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。イソボログラム解析結果を図35に示す。
図35に示した各プロットがほぼ直線上に位置したことから、化合物Aとドセタキセルの併用はBT-474の細胞増殖抑制において相加効果しか示さないことがわかった。
【0092】
実施例34:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株OCI-Ly7における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
OCI-Ly7細胞は、DSMZより購入した。実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
3)統計解析
SAS software Release9.3 (SAS Institute JAPAN)を用いてコンビネーションインデックス(CI)及び95%信頼区間を算出した。
CI=0.67,95%信頼区間0.37から0.96であった。
CIが1を超える、1に等しい、または1未満の場合、それぞれ、拮抗,相加,または相乗効果を示すことを意味する。よって、化合物Aとベンダムスチンの併用はOCI-Ly7細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0095】
実施例35:ヒトマントル細胞リンパ腫細胞株REC-1における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aは原末を用いた。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社より購入したものを用いた。
2)細胞増殖抑制試験
REC-1細胞は,DSMZより購入した。
実施例1と同様に細胞培養、薬剤添加、細胞増殖抑制試験、細胞生存率の算出を行った。ただし、播種細胞数は8000cells/wellとした。得られた結果を用いて、実施例35と同様にしてコンビネーションインデックス(CI)及び95%信頼区間を算出した。
CI=0.65, 95%信頼区間0.34から0.96であった。よって、化合物Aとベンダムスチンの併用はREC-1細胞増殖抑制において相乗効果を示すことがわかった。
【0096】
<in vivo抗腫瘍効果試験>
実施例36:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとシクロホスファミドとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。シクロホスファミド(注射用エンドキサン[商標]100mg)は塩野義製薬株式会社から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aを1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、10mg/mL(100 mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。当該被験物質懸濁液を1%ヒプロメロース溶液で希釈して3mg/mL(30mg/kg用投与液)及び1mg/mL(10 mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。また、市販の注射用エンドキサン100mgに20mLの生理食塩液を入れて溶解し、5mg/mL溶液(50mg/kg用投与液)を用時調製して、これをシクロホスファミドとして用いた。
3)細胞
OCI-Ly7はDSMZより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で1.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水とを与えて飼育した。細胞懸濁液を3×10 cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植した。腫瘍体積を指標にSAS software R9.3(SAS Institute Japan)を用い、層別無作為抽出法にて群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、化合物Aは1日1回、連日14日間経口投与し、シクロホスファミドは3日又は4日に1回、計4回腹腔内投与した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤治療群には併用薬の溶媒を、併用治療群と同様に投与した。すべての動物に経口投与を連日14日間、腹腔内投与を3日又は4日に1回(計4回)行った。それぞれの群(N=8)を下記のように処理した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A(10mg/kg)治療群:化合物A 10mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(3)化合物A(30mg/kg)治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(4)化合物A(100mg/kg)治療群:化合物A 100mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(5)シクロホスファミド(50mg/kg)投与群:シクロホスファミド 50mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
(6)併用群1:化合物A 10mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + シクロホスファミド 50mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
(7)併用群2:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + シクロホスファミド 50mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
(8)併用群3:化合物A 100mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + シクロホスファミド 50mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
体重と腫瘍径を電子天秤及び電子ノギスを使って経時的に測定した。腫瘍体積は(長径×[短径]×0.5)の計算式より算出して決定した。算出した腫瘍体積の値を用いて、相対腫瘍体積(Day1の基準腫瘍体積に対する測定日の腫瘍体積の比)を算出した。群分け日(Day1)から各動物の相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間を、相対腫瘍体積が1600%に到達する時点の近傍の測定日のデータから推定した。腫瘍増殖遅延(TGD)は、治療群及び対照群について、相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間の中央値の差として算出した。さらに、腫瘍増殖遅延率(%TGD)は次式に従い算出した。
%TGD = {(T-C)/C}× 100
ただし、
T:治療群について相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間の中央値
C:対照群について相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間の中央値
6)統計解析
化合物A単剤治療が腫瘍増殖遅延に与える影響を調べるため、各動物の相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間に基づいて,対照群(1群)と化合物A単剤治療群(2,3及び4群)でSteel検定(両側)を行った。
シクロホスファミド単剤治療が腫瘍増殖遅延に与える影響を調べるため、各動物の相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間に基づいて、対照群(1群)とシクロホスファミド単剤治療群(5群)でWilcoxonの順位和検定(両側)を行った。
化合物Aとシクロホスファミドの併用治療群が腫瘍増殖遅延に与える影響を調べるため、相対腫瘍体積が1600%に到達するまでの時間に関して、併用治療群(6群)に対する各単剤治療群(2及び5群)の比較、併用治療群(7群)に対する各単剤治療群(3及び5群)の比較、及び併用治療群(8群)に対する各単剤治療群(4及び5群)の比較を、それぞれSteel検定(両側)で行った。併用治療群が各単剤治療群に対して有意な場合に併用効果有りとした。
また、併用治療群において各単剤治療群に対する有意な差が観察された場合には、交互作用効果を調べる目的で化合物A治療群(1及び2群)とシクロホスファミド治療群(5及び6群)の間、化合物A治療群(1及び3群)とシクロホスファミド治療群(5及び7群)の間、及び化合物A治療群(1及び4群)とシクロホスファミド治療群(5及び8群)の間で、それぞれ2元配置ANOVA(両側、要因:群及び用量)を行った。
7)結果
評価エンドポイントである相対腫瘍体積が1600%になるまでの時間は、対照群では12.7日(中央値時間)であった。単剤治療では、化合物A 10,30,及び100mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)はそれぞれ3.5%,81.1%,及び147.6%であった。シクロホスファミド 50mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は83.9%であった。化合物A 30又は100mg/kg、或いは、シクロホスファミド 50mg/kgの単剤治療は有効であることが示された。
併用治療では、化合物A 10mg/kg+シクロホスファミド 50mg/kg群,化合物A 30mg/kg+シクロホスファミド 50mg/kg群,及び化合物A 100mg/kg+シクロホスファミド 50mg/kg群の腫瘍増殖遅延率(%)はそれぞれ>287.0%、>293.7%、及び >293.7%であった。化合物Aをシクロホスファミドと併用投与した場合、併用効果と有意な相互作用が認められ、併用効果は有意に相乗的であった。併用治療では、化合物A 10mg/kg以上で腫瘍が縮小し、30mg/kg以上で完全に退縮した。さらに、シクロホスファミドと併用して化合物A 30又は100mg/kgを投与した群では、投与後観察期間中(Day16~Day51)に腫瘍の再増殖は認められなかった(表3、図36図37図38)。
8)結論
化合物A30又は100mg/kgの単剤治療、シクロホスファミド50mg/kgの単剤治療、及び化合物A 10,30,又は100mg/kgとシクロホスファミド 50mg/kgの併用治療は、OCI-Ly7を移植したSCIDマウスにおいて有意な抗腫瘍活性を有することが示された。併用治療では良好な忍容性及び有意な相乗効果を示した。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例37:ヒト乳癌細胞株MDA-MB-453における化合物Aとラパチニブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。ラパチニブはLC LaboratoriesからLapatinib, Di-p-Toluenesulfonate Saltを購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、20mg/mL(単剤投与液調製用懸濁液,及び100mg/kg併用投与液調製用懸濁液)の被験物質懸濁液を調製した。20mg/mLの被験物質懸濁液を1%ヒプロメロース溶液で希釈して10mg/mL(100mg/kg用投与液),6mg/mL(30 mg/kg併用投与液調製用懸濁液),及び3mg/mL(30mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。ラパチニブは1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、20mg/mLのラパチニブ 100mg/kg併用投与液調製用懸濁液を調製した。当該20mg/mL懸濁液を1%ヒプロメロース溶液で希釈して10mg/mLの100mg/kg単剤投与用懸濁液を調製した。併用群投与液は、6mg/mLの化合物A懸濁液及び20mg/mLのラパチニブ懸濁液を1:1で混合して、あるいは、20mg/mLの化合物A懸濁液及び20mg/mLのラパチニブ懸濁液を1:1で混合して、調製した。
3)細胞
MDA-MB-453はATCCより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で1.0×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌NOD-SCIDマウス(NOD.CB17-Prkdcscid/J、日本チャールス・リバー株式会社製)を用いた。雌NOD-SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を2×10 cells/bodyで6週齢のNOD-SCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、化合物A及びラパチニブは1日1回、連日28日間経口投与した。それぞれの群(N=8)を下記のように処理した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液
(2)化合物A(30mg/kg)治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与)
(3)化合物A(100mg/kg)治療群:化合物A 100mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与)
(4)ラパチニブ(100mg/kg)治療群:ラパチニブ 100mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与)
(5)併用群1:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与) + ラパチニブ 100mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与)
(6)併用群2:化合物A 100mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与) + ラパチニブ 100mg/kg(1日1回、連日28日間経口投与)
実施例36と同様に測定し、腫瘍増殖遅延を算出し、統計解析を行った。
6)結果
評価エンドポイントである相対腫瘍体積が200%になるまでの時間は、対照群では22.8日(中央値時間)であった。単剤治療では、化合物A 30及び100mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)はそれぞれ72.4%及び>334.2%であった。ラパチニブ 100mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は50.0%であった。化合物A 30又は100mg/kg、或いは、ラパチニブ 100mg/kgの単剤治療は有効であることが示された。
併用治療では、化合物A 30mg/kg+ラパチニブ 100mg/kg群及び化合物A 100mg/kg+ラパチニブ 100mg/kg群の腫瘍増殖遅延率(%)はいずれも>334.2%であった。化合物A 30mg/kgをラパチニブ 100mg/kgと併用投与すると併用効果と有意な相互作用が認められ,併用効果は有意に相乗的であった。併用治療では化合物Aの両用量で腫瘍が完全に退縮した。さらに,化合物A 100mg/kg+ラパチニブ100 mg/kg群では,併用投与終了後2ヵ月まで腫瘍の再増殖は認められなかった(表4、図39図40)。
7)結論
化合物A 30又は100mg/kgの単剤治療、ラパチニブ 100mg/kgの単剤治療、及び化合物A 30又は100mg/kgとラパチニブ 100mg/kgとの併用治療は、MDA-MB-453を移植したNOD-SCIDマウスにおいて有意な抗腫瘍活性を有することが示された。併用治療では良好な忍容性及び有意な相乗効果を示した。
【0099】
【表4】
【0100】
実施例38:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとベンダムスチンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社からBendamustine hydrochloride hydrateを購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、3mg/mL(30 mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。ベンダムスチンは生理食塩液を入れて溶解し、1.5mg/mL溶液(15mg/kg用投与液)を用時調製した。
3)細胞
OCI-Ly7はDSMZより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で1.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を3×10 cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、化合物Aは1日1回、連日14日間経口投与し、ベンダムスチンはDay2,3,4,5,及び6に、計5回腹腔内投与した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。すべての動物に経口投与を連日14日間、腹腔内投与をDay2,3,4,5,及び6に(計5回)行った。それぞれの群(N=6)を下記のように処理した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A(30mg/kg)治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(3)ベンダムスチン(15mg/kg)治療群:ベンダムスチン 15mg/kg(Day2,3,4,5,及び6に腹腔内投与)
(4)併用群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + ベンダムスチン 15mg/kg(Day2,3,4,5,及び6に腹腔内投与)
実施例36と同様に測定し、腫瘍増殖遅延を算出し、統計解析を行った。
6)結果
評価エンドポイントである相対腫瘍体積が1600%になるまでの時間は、対照群では15.5日(中央値時間)であった。単剤治療では、化合物A 30mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は54.2%であった。ベンダムスチン 15mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は56.5%であった。化合物A 30mg/kg又はベンダムスチン 15mg/kgの単剤治療は有効であることが示された。
併用治療では、化合物A 30mg/kg+ベンダムスチン 15mg/kg群の腫瘍増殖遅延率(%)は>222.6%であった。化合物Aをベンダムスチンと併用投与した場合,併用効果と有意な相互作用が認められ、併用効果は有意に相乗的であった。また,併用治療では腫瘍が完全に退縮した(表5、図41)。
7)結論
化合物A 30mg/kgの単剤治療、ベンダムスチン 15mg/kgの単剤治療、及び化合物A 30mg/kgとベンダムスチン 15mg/kgの併用治療は、OCI-Ly7を移植したSCIDマウスにおいて有意な抗腫瘍活性を有することが示された。併用治療では良好な忍容性及び有意な相乗効果を示した。
【0101】
【表5】
【0102】
実施例39:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとリツキシマブとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。リツキシマブ(リツキサン[商標]100mg/10mL)はGenentech, Inc.から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、3mg/mL(30mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。リツキシマブは生理食塩液を入れて希釈し、1mg/mL溶液(10mg/kg用投与液)を用時調製した。
3)細胞
OCI-Ly7はDSMZより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で1.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu、日本エスエルシー株式会社製)を用いた。雌ヌードマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を3×10cells/bodyで6週齢のヌードマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、化合物Aは1日1回、連日21日間経口投与し、リツキシマブはDay2,9,及び16に、計3回腹腔内投与した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。すべての動物に経口投与を連日21日間、腹腔内投与をDay2,9,及び16に(計3回)行った。それぞれの群(N=6)を下記のように処理した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A(30mg/kg)治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日21日間経口投与)
(3)リツキシマブ治療群:リツキシマブ 10mg/kg(Day2,9及び16に腹腔内投与)
(4)併用群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日21日間経口投与) + リツキシマブ 10mg/kg(Day2,9,及び16に腹腔内投与)
実施例36と同様に測定し、腫瘍増殖遅延を算出し、統計解析を行った。
6)結果
評価エンドポイントである相対腫瘍体積が600%になるまでの時間は、対照群では16.3日(中央値時間)であった。単剤治療では、化合物A 30mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は73.9%であった。リツキシマブ 10mg/kgの腫瘍増殖遅延率(%)は74.2%であった。化合物A 30mg/kg又はリツキシマブ 10mg/kgの単剤治療は有効であることが示された。
併用治療では、化合物A 30mg/kg+リツキシマブ 10mg/kg群の腫瘍増殖遅延率(%)は>421.5%であった。化合物Aをリツキシマブと併用投与した場合、併用効果と有意な相互作用が認められ、併用効果は有意に相乗的であった。また、併用治療では腫瘍が完全に退縮した(表6、図42)。
7)結論
化合物A 30mg/kgの単剤治療、リツキシマブ 10mg/kgの単剤治療、及び化合物A 30mg/kgとリツキシマブ 10mg/kgの併用治療は、OCI-Ly7を移植したヌードマウスにおいて有意な抗腫瘍活性を有することが示された。併用治療では良好な忍容性及び有意な相乗効果を示した。
【0103】
【表6】
【0104】
実施例40:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとデシタビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。デシタビン(5-アザ-2′-デオキシシチジン)は東京化成工業株式会社から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1%ヒプロメロース溶液に懸濁し、3mg/mLの化合物A30mg/kg投与液を調製した。デシタビンは生理食塩液で希釈して0.1mg/mLのデシタビン 1mg/kg投与液を調製した。
3)細胞
KG-1はヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で2.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を5×10cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、21日間投薬終了翌日(Day23)に最終的に腫瘍径及び体重を測定し、評価した。それぞれの群(N=8)を下記のように処理した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日21日間経口投与)
(3)デシタビン治療群:デシタビン 1mg/kg(Day2,5,9,12,16,及び19に腹腔内投与)
(4)併用群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日21日間経口投与) + デシタビン 1mg/kg(Day2,5,9,12,16,及び19に腹腔内投与)
体重と腫瘍径を電子天秤及び電子ノギスを使って経時的に測定した。腫瘍体積は(長径×[短径]×0.5)の計算式より算出して決定した。抗腫瘍活性は対照群に対する各治療群の相対腫瘍体積の割合(T/C%)として表した。Day23におけるT/C%は、各群毎に、各群のDay23における相対腫瘍体積 [(各群のDay23における腫瘍体積/各群のDay1における腫瘍体積)×100]/対照群のDay23における平均相対腫瘍体積 [(対照群のDay23における腫瘍体積/対照群のDay1における腫瘍体積)×100]×100の式から算出した。
6)統計解析
化合物A単独(2群)及びデシタビン単独(3群)に対する化合物Aとデシタビンとの併用(4群)の相対腫瘍体積(Day23)に対する影響を調べる目的で,Dunnett検定(両側)で行った。4群において各単剤治療群に対する有意な差が認められたため,2元ANOVA(両側)を実施し、化合物A治療群(1及び2群)とデシタビン治療群(3及び4群)との間の交互作用効果を調べた。
7)結果
化合物A、デシタビンは、KG-1腫瘍に対して抗腫瘍効果を示した。デシタビンと化合物Aの併用治療は、各薬剤の単剤治療よりも腫瘍増殖を有意に強く抑制した(表7、図43)。
8)結論
化合物Aとデシタビンとの併用治療により、KG-1担がんマウスモデルにおいて良好な忍容性及び有意な相乗効果が認められた。この結果は化合物Aとデシタビンの併用化学療法の臨床試験の実施を支持する。
【0105】
実施例41:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとシタラビンとの併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。シタラビン(キロサイド[商標]注60mg)は日本新薬株式会社から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1%ヒプロメロース溶液に懸濁し、3mg/mLの化合物A 30mg/kg投与液を調製した。シタラビンは生理食塩液で希釈して5mg/mLのシタラビン 50mg/kg投与液を調製した。
3)細胞
KG-1はヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で2.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を5×10cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、14日間投薬終了翌日(Day16)に最終的に腫瘍径及び体重を測定し、評価した。それぞれの群(N=6)を下記のように処理した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(3)シタラビン治療群:シタラビン 50mg/kg(Day2,3,4,5,6,9,10,11,12,及び13に腹腔内投与)
(4)併用群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + シタラビン 50mg/kg(Day2,3,4,5,6,9,10,11,12,及び13に腹腔内投与)
体重と腫瘍径を電子天秤及び電子ノギスを使って経時的に測定した。腫瘍体積は(長径×[短径]×0.5)の計算式より算出して決定した。抗腫瘍活性は対照群に対する各治療群の相対腫瘍体積の割合(T/C%)として表した。Day16におけるT/C%は、各群毎に、各群のDay16における相対腫瘍体積 [(各群のDay16における腫瘍体積/各群のDay1における腫瘍体積)×100]/対照群のDay16における平均相対腫瘍体積 [(対照群のDay16における腫瘍体積/対照群のDay1における腫瘍体積)×100]×100の式から算出した。
6)統計解析
化合物A単独(2群)及びシタラビン単独(3群)に対する化合物Aとシタラビンとの併用(4群)の相対腫瘍体積に対する影響を調べる目的で,Dunnett検定(両側)を行った。4群において各単剤治療群に対する有意な差が認められたため,2元ANOVAを実施し、化合物A治療群(1及び2群)とシタラビン治療群(3及び4群)との交互作用効果を調べた。
7)結果
化合物A、シタラビンは、KG-1腫瘍に対して抗腫瘍効果を示した。シタラビンと化合物Aの併用治療は、各薬剤の単剤治療よりも腫瘍増殖を有意に強く抑制した(表7、図44)。
8)結論
化合物Aとシタラビンの併用治療により、KG-1担がんマウスモデルにおいて良好な忍容性及び有意な相乗効果が認められた。この結果は化合物Aとシタラビンの併用化学療法の臨床試験の実施を支持する。
【0106】
【表7】
【0107】
実施例42:ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株OCI-Ly7における化合物Aとベンダムスチンとリツキシマブの3剤併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。ベンダムスチンは東京化成工業株式会社からBendamustine hydrochloride hydrateを購入して使用した。リツキシマブ(リツキサン[商標]100mg/10mL)はGenentech, Inc.から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物Aは1% ヒプロメロース溶液に懸濁し、3mg/mL(30 mg/kg用投与液)の被験物質懸濁液を調製した。ベンダムスチンは生理食塩液を入れて溶解し、1mg/mL溶液(10mg/kg用投与液)を用時調製した。リツキシマブは生理食塩液を入れて希釈し、1mg/mL溶液(10mg/kg用投与液)を用時調製した。
3)細胞
OCI-Ly7はDSMZより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で1.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞懸濁液を3×10 cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、化合物Aは1日1回、連日14日間経口投与した。ベンダムスチンはDay2,3,4,5,及び6に、計5回腹腔内投与した。リツキシマブはDay2及び9に、計2回腹腔内投与した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。すべての動物に経口投与を連日14日間、腹腔内投与をDay2,3,4,5,6,及び9に行った。それぞれの群(N=6)を下記のように処理した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A(30mg/kg)治療群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(3)ベンダムスチン(10mg/kg)+リツキシマブ(10mg/kg)治療群:ベンダムスチン 10mg/kg(Day2,3,4,5,及び6に腹腔内投与)+リツキシマブ 10mg/kg(Day2,及び9に腹腔内投与)
(4)3剤併用群:化合物A 30mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与) + ベンダムスチン 10mg/kg(Day2,3,4,5,及び6に腹腔内投与)+リツキシマブ 10mg/kg(Day2,及び9に腹腔内投与)
実施例36と同様に測定し、腫瘍増殖遅延を算出し、統計解析を行った。
6)結果
評価エンドポイントである相対腫瘍体積が800%になるまでの時間は、対照群では9.9日(中央値時間)であった。化合物A(30mg/kg)治療群の腫瘍増殖遅延率(%)は83.8%であった。ベンダムスチン(10mg/kg)+リツキシマブ(10mg/kg)治療群の腫瘍増殖遅延率(%)は144.4%であった。化合物A 30mg/kgとベンダムスチン 10mg/kg+リツキシマブ 10mg/kgは有効であることが示された。
3剤併用治療では、化合物A 30mg/kg+ベンダムスチン 10mg/kg+リツキシマブ 10mg/kg投与群の腫瘍増殖遅延率(%)は>829.3%であった。化合物Aをベンダムスチン及びリツキシマブと併用投与した場合,3剤併用効果と有意な相互作用が認められ、3剤併用効果は有意に相乗的であった。また,3剤併用治療では腫瘍が完全に退縮した(表8、図45)。
7)結論
化合物A 30mg/kgの単剤治療、ベンダムスチン 10mg/kg+リツキシマブ 10mg/kgの併用治療、及び化合物A 30mg/kgとベンダムスチン 10mg/kgとリツキシマブ 10mg/kgの3剤併用治療は、OCI-Ly7担がんマウスモデルにおいて有意な抗腫瘍活性を有することが示された。3剤併用治療では良好な忍容性及び有意な相乗効果を示した。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例43:ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株KG-1における化合物Aとデシタビンとベネトクラックスとの3剤併用効果
1)被験物質
化合物Aの原末を使用した。ベネトクラックスはエルシーラボラトリーズより購入したものを用いた。デシタビン(5-アザ-2′-デオキシシチジン)は東京化成工業株式会社から購入して使用した。
2)被験物質の調製
化合物A及びベネトクラックスは1%ヒプロメロース溶液に懸濁し、5mg/mLの化合物A 50mg/kg投与液を調製した。デシタビンは生理食塩液で希釈して0.1mg/mLのデシタビン 1mg/kg投与液を調製した。
3)細胞
KG-1はヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手した。細胞は10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。回収した細胞を血清不含RPMI1640培地で2.5×10 cells/mLに懸濁した。
4)動物
5週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/Icr-scid/scid Jcl、日本クレア株式会社製)を用いた。雌SCIDマウスは実施例36と同様に飼育した。細胞培養液を5×10cells/bodyで6週齢のSCIDマウスの右腋窩部皮下に移植し、腫瘍体積を指標に実施例36と同様に群分けした。
5)投与及び測定
群分け翌日(Day2)から投与を開始し、14日間投薬終了翌日(Day16)に最終的に腫瘍径及び体重を測定し、評価した。それぞれの群(N=6)を下記のように処理した。なお、併用群と合わせるため、対照群には各薬剤の溶媒を、単剤投与群には併用薬の溶媒を、併用群と同様に投与した。
(1)対照(溶媒コントロール)群:1%ヒプロメロース溶液、生理食塩液
(2)化合物A治療群:化合物A 50mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)
(3)ベネトクラックス+デシタビン治療群:ベネトクラックス50mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)+デシタビン 1mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
(4)3剤併用群:化合物A 50mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)+ベネトクラックス 50mg/kg(1日1回、連日14日間経口投与)+デシタビン 1mg/kg(Day2,5,9,及び12に腹腔内投与)
経時的に体重と電子ノギス(ミツトヨ社製)を使って腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(長径×[短径]×0.5)の計算式より算出して決定した。抗腫瘍活性は対照群に対する各治療群の相対腫瘍体積の割合(T/C%)として表した。Day16におけるT/C%は、各群毎に、各群のDay16における相対腫瘍体積 [(各群のDay16における腫瘍体積/各群のDay1における腫瘍体積)×100]/対照群のDay16における平均相対腫瘍体積 [(対照群のDay16における腫瘍体積/対照群のDay1における腫瘍体積)×100]×100の式から算出した。
6)統計解析
化合物A単独(2群)及びベネトクラックス+デシタビン(3群)に対する化合物A、ベネトラックス、及びデシタビンの3剤併用(4群)の相対腫瘍体積に対する影響を調べる目的で,Dunnett検定(両側)を行った。4群において2及び3群に対する有意な差が認められたため,2元配置ANOVA(両側)を実施し、対照群及び化合物A治療群(1及び2群)とベネトクラックス+デシタビン治療群及び3剤併用群(3及び4群)の間で交互作用効果を評価した。
7)結果
化合物A、ベネトクラックス+デシタビンは、KG-1腫瘍に対して抗腫瘍効果を示した。ベネトクラックスとデシタビンと化合物Aの3剤併用治療は、化合物A単剤投与及びベネトクラックス+デシタビン投与よりも腫瘍増殖を有意に強く抑制した(表9、図46)。
8)結論
化合物Aとベネトクラックスとデシタビンとの3剤併用治療により、KG-1担がんマウスモデルにおいて良好な忍容性及び有意な相乗効果が認められた。この結果は化合物Aとベネトクラックスとデシタビンの3剤併用化学療法の臨床試験の実施を支持する。
【0110】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図40
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図46