(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】金属担持小細孔アルミノケイ酸塩CHAゼオライト及び金属担持小細孔アルミノケイ酸塩CHAゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20240729BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240729BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240729BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20240729BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240729BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240729BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240729BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240729BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240729BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C01B39/48 ZAB
B01D53/86 222
B01D53/94 222
B01J29/76 A
B01J35/57 Z
B01J35/60 F
B01J37/02 101A
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301E
(21)【出願番号】P 2021539614
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2020050539
(87)【国際公開番号】W WO2020148186
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-23
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】バウア、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】カッシ、ジョン レオネオ
(72)【発明者】
【氏名】ドツェル、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミンチ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】プロヴァ、ラリッサ
(72)【発明者】
【氏名】シュウヴィガー、ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】サヒド、アミーン
(72)【発明者】
【氏名】ダングラジ、セルヴァム
(72)【発明者】
【氏名】ウィッセンバーガー、トビアス
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-524677(JP,A)
【文献】特表2015-533342(JP,A)
【文献】Nuria MARTIN et al.,Fe-containing zeolites for NH3-SCR of NOx: effect of structure, synthesis procedure and chemical composition on catalytic performance and stability,Chemistry - A European Journal,2017年,Vol.23, No.54,p.13404-13414
【文献】Nuria MARTIN et al.,Cage-based small-pore catalysts for NH3-SCR prepared by combining bulky organic structure directing agents with modified zeolites asreagents,Applied Catalysis B: Environmental,2017年,Vol.217,p.125-136
【文献】Aiyong WANG et al.,Catalytic N2O decomposition and reduction by NH3 over Fe/Beta and Fe/SSZ-13 catalysts,Journal of Catalysis,2018年,Vol.358,p.199-210
【文献】Feng GAO et al.,Hydrothermal Aging Effects on Fe/SSZ-13 and Fe/Beta NH3-SCR Catalysts,Top. Catal.,2016年,Vol.59,p.882-886
【文献】Feng GAO et al.,Iron Loading Effects in Fe/SSZ-13 NH3-SCR Catalysts: Nature of the Fe Ions and Structure-Function Relationships,ACS Catal.,2016年,Vol.6,p.2939-2954
【文献】Yusuke KUNITAKE et al.,Synthesis of titanated chabazite with enhanced thermal stability by hydrothermal conversion of titanated faujasite,Microporous and Mesoporous Materials,2015年,Vol.215,p.58-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
B01D 53/86
B01D 53/94
B01J 29/76
B01J 35/57
B01J 35/60
B01J 37/02
F01N 3/08
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8個の四面体原子によって画定される最大孔開口部を有
し、かつ骨格型CHAを有する金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライトであって、前記金属が、前記金属担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて
0.5~5.0重量%の範囲で存在する、金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの、前記アルミノケイ酸塩ゼオライトの
前もって形成された結晶子の処理によって製造する方法であって、
前記金属が鉄である方法であり、
前記方法が、
(i)アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子中に、シリカを溶解させるために、水性アルカリ処理を適用することにより、又はアルミナを溶解させるために、水性酸性処理を適用することにより、メソ多孔度を前記アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子に導入する工程と、
(ii)湿式含浸又は湿式イオン交換によって、工程(i)の前記生成物を、金属試薬と前記アルミノケイ酸塩ゼオライト用の構造指向剤との混合物と接触させることにより、工程(i)の前記生成物に前記金属を導入する工程と、
(iii)工程(ii)の前記生成物に対して水熱結晶化を行う工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程(iii)の前記水熱結晶化が、水蒸気結晶化である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理される
前もって形成されたアルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子が、合成アルミノケイ酸塩ゼオライトの結晶子である、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)が、シリカを溶解するために水性アルカリ処理を使用し、工程(i)で溶解したシリカが、工程(ii)で生成された前記金属含浸メソ多孔質合成アルミノケイ酸塩結晶子の周囲で再組み立てされる、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤が、
請求項4記載の工程(i)の
水性アルカリ処理のための水性系に添加される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤
である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記処理される
前もって形成されたアルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子が、天然アルミノケイ酸塩ゼオライトの結晶子である、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)が、アルミナを溶解するために水性酸性処理を使用する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)の前記生成物を回収及びか焼する工程(i’)と、工程(ii)の前記生成物を回収及び乾燥させる工程(ii’)と、工程(iii)の前記生成物を回収及びか焼する工程(iii’)工程と、を含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属試薬が硝酸鉄水溶液である、請求項
1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記構造指向剤が、水酸化N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウム(TMAdOH)である、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書では「小細孔」と定義される8個の四面体原子によって画定される最大孔開口部を有し、かつ骨格型CHA、AEI、AFX、ERI又はLTAを有する鉄担持アルミンケイ酸塩ゼオライトであって、鉄(Fe)が、鉄担持アルミノケイ酸塩の総重量に基づいて約0.5~約5.0重量%の範囲で存在する、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトに関する。本発明はまた、金属担持小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトの製造方法にも関する。
【0002】
本明細書では、ゼオライトは、SiO4及びAlO4四面体、すなわち、コーナー共有酸素原子を介して結合されるアルミノケイ酸塩から構成される結晶質無機ミクロ多孔質材料として定義され、それらの高い表面積、均一なチャネル、酸性、イオン交換能力、及び高い水熱安定性のために、分離及び触媒作用に広く使用されている。
【0003】
特定の金属担持ゼオライト、例えば、鉄-(Fe)担持ゼオライトは、直接N2O分解、ベンゼンのフェノールへの直接酸化、及びアンモニア(NH3-SCR)による酸化窒素及び/又は二酸化窒素の選択的触媒還元などのいくつかの反応において比較的高い触媒活性を示し、かつ幅広く研究されている。
【0004】
アンモニア(NH3-SCR)による窒素酸化物(NOx)の選択的触媒還元は、自動車、トラック、機関車、及び船舶などの車両のための、固定源及び移動エンジン、原則的にはディーゼルエンジンから放出される排気ガスからのNOxの軽減のための最も実用的かつ効率的な技術であると考えられる。Fe担持ゼオライト中の鉄種の性質及び分布は、触媒調製方法に大きく依存し、これにより、Fe担持ゼオライトの結果として生じる触媒活性を決定する。Fe担持ゼオライトを調製するための文献には、湿式含浸法、湿式イオン交換法、固体イオン交換法、化学蒸着法、及び直接合成手順を含む、いくつかの方法が記載されている。
【0005】
鉄担持ゼオライトの直接合成は、複雑なプロセスであり、合成条件に依存する(M.Moliner,ISRN Materials Science,2012,Article ID 789525を参照されたい)。別の代替案は、市販のゼオライト担体を使用し、その後、湿式含浸、湿式イオン交換、又は固体イオン交換のいずれかによって、ゼオライトの合成後処理により鉄を添加することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の合成又は天然ゼオライトへの金属、特に鉄の導入に関するものであり、すなわち、本発明は、金属担持ゼオライトの直接合成に関するものではない。合成後処理による、Fe担持合成ゼオライトの調製に関連する問題は、鉄種の凝集であり、これはゼオライトZSM-5(MFI)における鉄種の不均一な分布をもたらす(例えば、L.Kustov et al.,Topics in Catalysis,238(2006)pp.250-259を参照されたい)。
【0007】
IUPACによると、3つの異なる多孔度レベルが存在し、これらは、ミクロ細孔(細孔直径dPが最大2nm)、メソ細孔(dPが2~50nm)、マクロ細孔(dPが50nmを超える)を含む[Haber et al.IUPAC,Pure and Appl.Chem.,63(1991)1227]。
【0008】
階層的ゼオライトは、ミクロ細孔及びメソ細孔、ミクロ細孔及びマクロ細孔、又は全ての3つの多孔度レベルのいずれかを有することができ[Chen et al.J.Mater.Chem.,22(2012)17381]、階層の決定基準は、様々な多孔度レベル間の架橋である。例えば、通常のミクロ細孔テンプレートに加えて、ポリマー及び界面活性剤などの有機分子をメソ細孔テンプレートとして使用して、少なくとも2つの多孔度レベルを組み入れる、ミクロ-メソ多孔質構造化ゼオライト材料を合成することが知られている。マクロ細孔は、球体のテンプレート化、合成後の修正、及びマクロ多孔質担体でのテンプレート化によってゼオライトに導入することができる。ミクロ多孔質-マクロ多孔質ゼオライトMFIの製造技術は、A.G.Machoke et al,Adv.Mater.2015,27,1066-1070に開示されている。
【0009】
ゼオライトはまた、細孔径、例えばゼオライトの骨格中に存在する四面体原子の最大数によって分類することができる。本明細書に定義されるように、CHAなどの「小細孔」ゼオライトは、最大環サイズの8個の四面体原子を含有し、一方、中細孔ゼオライト、例えばMFIは、最大環サイズの10個の四面体原子を含有し、BEAなどの大細孔ゼオライトは、最大環サイズの12個の四面体原子を含有する。「メソ細孔」ゼオライトも知られているが、これらは、最大環サイズの12個を超える四面体原子を有する。メソ細孔ゼオライトは、基礎的なゼオライトに適用された合成後処理によってその結晶子構造に導入されたメソ多孔度を有する小細孔ゼオライト、中細孔ゼオライト又は大細孔ゼオライトと同じではない。これは、メソ細孔ゼオライトが、12個を超える四面体原子の最大環サイズを有するのに対し、メソ多孔度が導入された基礎的なゼオライト、例えば、小細孔ゼオライトが、依然として8個の四面体原子の最大環サイズを有するからである。
【0010】
比較的良好な低温(200~450℃)NH3-SCR触媒活性は、CU-SSZ-13(CHA)ゼオライトから得ることができることが知られている(例えば、国際公開第2008/132452号(A2)を参照されたい)。しかしながら、一般に、Fe担持ゼオライトは、Cu含有ゼオライトよりも比較的高い温度触媒活性を示し、そのため、Fe担持ゼオライトは、NH3-SCR用途に特に関心がある。更に、Cu含有ゼオライトは、より高い反応温度でN2Oの形成をもたらし得る。
【0011】
Fe担持CHAゼオライトを製造するためのいくつかの最近の試みがあった。国際公開第2008/132452号(A2)は、NH
4NO
3の溶液中で最初にイオン交換して、NH
4
+SSZ-13を生成し、これを濾過し、次いで撹拌しながら、Fe(NO
3)3の水溶液に添加することによって、SSZ-13の市販の試料から3重量%のFe-SSZ-13の試料を調製するプロセスを開示している。スラリーを濾過し、次いで洗浄し、乾燥させ、最終生成物をか焼して、いわゆる「新鮮な」生成物を生成した。新鮮な3重量%のFe-SSZ-13を、900℃で1時間、4.5%のH
2O/空気混合物中で激しくリーン熱水エージングさせ、得られたエージング生成物を、実施例6に従ってNH
3-SCR活性について試験した。350℃及び450℃でのNO
x変換の結果は、実施例14で論じられ、
図19に示される。新鮮な、すなわちエージングされていない3重量%のFe-SSZ-13も、合成ガス組成物において、300℃及び350℃でNH
3-SCR活性についても実施例22に従って試験し、ここで、NO
x成分は、NOのみで、又はNOとNO
2の両方の1:1混合物で構成された。結果を
図20に示す。
【0012】
国際公開第2008/118434号(A1)は、米国特許第4544538号の実施例に従って合成され、28のシリカ対アルミナ比を有する、いわゆる高シリカチャバザイト(CHA)を、実施例3及び表1に開示している。表1は、実施例3のCHA材料が1.4重量%のFeO3でFeイオン交換されたが、使用される方法論の説明はないことを開示している。
【0013】
同様に、米国特許公開第2018/0237307号は、チャバザイト型ゼオライト及びそれを製造する方法を開示しており、これに鉄を合成後添加により導入することができる。しかしながら、これら実施例のいずれも、鉄がどのように添加されたかを説明していない。
【0014】
しかしながら、一般に、CHAゼオライトの小細孔は、ゼオライト骨格への鉄種のイオン交換を妨害する傾向があり、その結果、鉄イオンがブロンステッド点と部分的に交換し、潜在的により大きな酸化鉄粒子の形成をもたらす傾向がある。
【0015】
例えば、R.Q.Long et al.,Cat.207、274-285(2002)は、アンモニアによるNOの選択的触媒還元のためのFe(天然)CHAの調製を開示している。使用される天然CHAは、2のSi/Al比、すなわち、4のシリカ対アルミナ比を有していた。天然CHAは、最初に、室温で0.5MのNH4Cl溶液で(4回)交換することによって、NH4-ゼオライトに変換した。従来のイオン交換手順を用いてイオン交換生成物を調製し、ここで、NH4-ゼオライト2gを、24時間一定撹拌しながら200mlの0.05MのFeCl2溶液に添加し、続いて脱イオン水で5回洗浄した。得られた触媒をまず120℃で空気中で12時間乾燥させた後、500℃で6時間か焼した。得られた触媒は、56%のイオン交換レベルを有すると言われていた。しかしながら、1000ppmのNO、1000ppmのNH3、2%のO2、及び残部のHeの合成煙道ガスを使用して、固定床石英反応器で測定された触媒活性は、Fe-(合成)モルデナイト(MOR)、Fe-β(BEA)、Fe-フェリエライト(FER)及びFe-(天然)クリノプチロライト(HEU)と比べて、比較的不良であった。
【0016】
R.Q.Long et al.,Cat.207,274-285(2002)に公開された結果は、国際公開第2008/13252号(A2)に論議されており、比較的不良な性能は、2つの原理上の理由のためであることが示唆された。第1に、天然チャバザイトは、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、及びカルシウムを含む塩基性金属カチオンを含有することができる。活性物質を得るために、塩基性金属はゼオライト酸点の既知の被毒であるため、塩基性金属カチオンは、例えば、鉄カチオンと交換される必要がある。報告された研究では、天然鉱物を、既存のカチオンを「洗い流す」試みでNH4Cl溶液で最初に処理した。しかしながら、この研究のチャバザイト内の酸性点は、塩基性金属カチオンにより被毒されたままであり得る。
【0017】
第2に、国際公開第2008/132452号(A2)は、鉄イオンがイオン交換媒体中の好適な配位子と金属錯体(配位化合物)を形成することができ、ゼオライト細孔は比較的小さいため、FeCl2を含む嵩高な共配位化合物は、細孔内に位置する活性部位へのアクセスを得ることができない可能性があることを推測している。
【0018】
米国特許公開第2012/0208692号は、SCR活性ゼオライト触媒を製造するためのプロセスを開示しており、Feイオン交換ゼオライトは、最初に、還元炭化水素雰囲気中で300℃及び600℃でか焼されて、Feイオンの酸化状態を低減し、かつ/又はゼオライト上のFeイオンの分散性を増加させ、次いで、還元ゼオライトを300℃及び600℃で第2の熱処理中の酸化雰囲気中でか焼して炭化水素及び/又は炭素残基を酸化除去する。本開示は、ゼオライトが、ゼオライトβ(BEA)、ZSM-5(MFI)、フォージャサイト、フェリエライト、Y、ZSM-20、MCM-41、チャバザイト、又はSAPOであり得るが、好ましくは例示されるMFI、又はゼオライトβであり得ることを記載する。本開示によれば、得られた触媒は色が淡黄色からベージュ色であり、これはFe3+を下回る鉄酸化状態、すなわちFe2+の鉄酸化状態を示すと言われ、一方、さびで染まった赤色はFe3+を示す。
【0019】
より最近では、試料調製を保護するために窒素を使用して、ミクロ多孔質SSZ-13(CHA)ゼオライトのFeSO
4・7H
2Oとの適合された湿式イオン交換は、Fe-SSZ-13ゼオライトを調製するために使用することができ(F.Gao et al.,ACS Catal.2016,6,2939-2954を参照されたい)、その結果、比較的少ない酸化鉄(Fe
2O
3)粒子を有する触媒をもたらすことが主張されている。この刊行物は、このような酸化鉄粒子が、所望の正味の低温NH
3-SCR触媒反応を低減させることができることを説明している。しかしながら、酸化鉄種の形成を保護するための窒素の使用は、製造規模のプロセスには不適切である。更に、この文献それ自体の結果(例えば、
図3に示されるFe
2O
3粒子の積分紫外・可視信号(a.u.)は、酸化鉄(Fe
2O
3)粒子が、約0.4重量%を上回るFe担持で触媒中に存在することを示している。したがって、刊行物で行われた主張にもかかわらず、著者ら自身によって提示された事実は、この手順により鉄担持が比較的低い担持から増加するにつれて鉄種の不均一な分布を回避しないこと、及び約1.0重量%のFeで約350nmのオリゴマーに対する、約270nmの鉄モノマーの積分紫外・可視信号(任意単位(a.u.))の比が、<2であることを示すように見える。
【0020】
したがって、能動的にFe担持小細孔ゼオライトを得るための代替的なプロセスが必要とされる。当該技術分野では、工業規模用途が可能な、SSZ-13などの鉄含有CHAゼオライトを含む、一般に金属担持小細孔ゼオライトを調製する方法を開発することも必要とされている。更に、当該技術分野ではNH3-SCR触媒として特に活性であり、直接N2O分解、ベンゼンのフェノールへの直接酸化などの他の触媒用途のための触媒として、Fe促進ゼオライト触媒を開発することもまた必要とされている。本発明は、これらの必要性を満たすことを目的とする。
【0021】
第1の態様によれば、本発明は、8個の四面体原子によって画定される最大孔開口部を有し、かつ骨格型CHA、AEI、AFX、ERI又はLTAを有する鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトを提供し、鉄(Fe)が、鉄担持アルミノケイ酸塩の総重量に基づいて約0.5~約5.0重量%の範囲で存在し、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの紫外・可視吸光度スペクトルが、約280nmのバンドを含み、約280nmのバンドについて任意単位(a.u.)で測定された積分ピーク適合型紫外・可視吸光度信号の、約340nmのバンドについて任意単位(a.u.)で測定された、積分ピーク適合型紫外・可視吸光度信号に対する比が、>約2である。しかしながら、好ましくは、選択された骨格型は、CHA、AEI及びAFXであり、最も好ましくは、CHA又はAEIである。
【0022】
上記で論じたF.Gao et al.,ACS Catal.2016,6,2939-2954により本明細書で表された技術分野を参照することによって明らかなように、当該技術分野では、任意単位(a.u.)で測定された、特定の積分ピーク適合型紫外・可視吸光度信号バンドを特異的な鉄種に帰属させ、吸光度信号位置は、鉄が位置すると理解される骨格外環境を反映する。積分ピーク適合型の紫外・可視吸光度信号は、異なる鉄担持ゼオライトフ骨格型に関して変化し得ることが理解されよう。しかしながら、主張される骨格型は、具体的には、それらが構造的に類似しており、その鉄担持ゼオライトに非常に類似した積分適合型紫外・可視吸光度信号を呈することが予想されることから、恣意的には選択されない。例えば、選択された骨格型は、d6rの繰り返し単位(又はt-hpr単位)を含む。
【0023】
この理解の下に、当該技術分野は、積分ピーク適合型紫外・可視吸光度スペクトルバンドを、主張される骨格型のゼオライトに対して次の鉄種を帰属させる:(i)約280nmでは、主張される骨格型の鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトを、単離された八面体共配位Fe3+部位に帰属させ、(Ii)約340nmでは、オリゴマーFe3+部位に帰属させ、及び(iii)約470nmでは、酸化鉄(Fe2O3)粒子に帰属させる。以下の実施例2の「物理化学的性質決定」セクションも参照されたい。
【0024】
好ましくは、本発明の第1の態様による鉄種は、単離された鉄種として主に存在する。本明細書で使用するとき、「大部分は(predominantly)」は、「>50%」の通常の英語の意味を有する。本明細書における定義「単離された鉄種」は、「Fe2O3粒子として存在しない」ことを意味するものとする。
【0025】
これから、本開示を更に説明する。以下の節において、本開示の異なる態様/実施形態は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。製品に関して開示された特徴は、方法に関連して開示された特徴と組み合わされてもよく、逆もまた同様であることが意図される。
【0026】
更に、本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は、定義「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」と交換することができる。用語「含む(comprising)」は、指定された要素が必須であることを意味することを意図するものであるが、他の要素が追加されてもよく、それでもなお、請求項の範囲内に構成を形成してもよい。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された材料又は工程、並びに、特許請求される発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しないものに請求項の範囲を限定する。本発明の第1の態様の基本的かつ新規な特徴は、単離された八面体共配位Fe3+部位に起因する約280nmでのバンドについて任意単位(a.u.)で測定された積分ピーク適合型紫外・可視吸光度信号の、オリゴマーFe3+部位に起因する約340nmでのバンドについて測定されたものに対する>約2の比を有する鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライト、及びこのような鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトの製造方法である。用語「からなる(consisting of)」は、通常それに関連する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めることに対して請求項を閉鎖する。
【0027】
米国特許公開第2017/0267537(A1)号は、ゼオライト単結晶の製造方法を開示しており、これらのそれぞれは、少なくとも1つのミクロ細孔系と、少なくとも1つのマクロ細孔系とを含む細孔系を有し、多孔質酸化物粒子は、有機テンプレート及び蒸気の存在下でゼオライト材料に変換される。
【0028】
米国特許公開第2008/193358(A1)号は、還元剤として任意選択的に尿素から誘導される炭化水素燃料又はアンモニアのいずれかを使用して、NOxをN2に還元するためのテクトケイ酸塩に基づく触媒活性鉱物の製造方法を開示している。この開示によれば、テクトケイ酸塩は、好ましくは天然ゼオライトであり、H+形態の処理された天然ゼオライトを、遷移金属塩、好ましくは銅及び/又は鉄塩と交換する前に、天然に存在するアルカリ金属及びアルカリ土類金属対イオンを金属塩溶液で置き換えるように処理される。チャバザイトは、可能な天然ゼオライトとして言及されているが、好ましくはヒューランダイトであり、最も好ましくはクリノプチロライトである。本開示によれば、天然に存在する対イオンを置き換えるために使用される金属塩溶液は、塩化硝酸アンモニウム/硝酸アンモニウム溶液であることが好ましい。天然ゼオライトが比較的低いシリカ対アルミナ比を有するため、塩化硝酸アンモニウム/硝酸アンモニウム溶液が特にアルカリ性であったとしても、脱ケイ酸及びメソ多孔度の導入につながることは期待されない。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「ミクロ細孔」及び「メソ細孔」は、上記のIUPAC慣例を使用する。全ての孔径に関して、細孔直径は、例えば、撮像技術、例えば電子顕微鏡写真、又は電子ビーム断層撮影法によって決定することができる。後者はまた、結晶内部の細孔直径を決定するのに好適である。加えて、ガスを使用する吸着プロセス(特に、ミクロ細孔又はメソ細孔の直径)又は水銀を使用する浸透方法(特に、マクロ細孔の直径)を使用することができる。
【0030】
第1の態様による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトは、約280nmのバンドについて任意単位(a.u.)で測定された積分紫外・可視吸光度信号の、約470nmのバンドについて任意単位(a.u.)で測定された積分紫外・可視吸光度信号に対する比が>約5であることによって更に区別することができる。
【0031】
第1の態様による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトは、好ましくは、骨格型CHA、AEI又はAFXを有し、最も好ましくは、CHA(合成若しくは天然)又はAEI(合成のみ)である。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、好ましくは、合成アルミノケイ酸塩ゼオライトである。非常に好ましい実施形態では、アルミノケイ酸塩ゼオライトは、合成CHAである。本発明による骨格型の天然ゼオライトは、CHA又はERIであり、好ましくはCHAである。
【0032】
本発明による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライト中に存在する鉄は、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて、約0.27~約3.0重量%の範囲、例えば約0.7~約3.0重量%、又は約0.27~約1.20重量%、又は約1.20~約3.00重量%の範囲であり得る。
【0033】
本発明の第1の態様による鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトは、好ましくは、約10~約30のシリカ対アルミナ比に対応する約5~約15の、基礎的なアルミノケイ酸塩ゼオライトのケイ素対アルミニウム比を有する。
【0034】
本発明による鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトのFe/Al原子比は、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて、約5~約15のケイ素対アルミニウム比及び約0.5~約5.0重量%の鉄含有量に相当する、約0.032~約0.75であり得る。本発明による鉄含有天然アルミノケイ酸塩ゼオライトのFe/Al原子比は、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて、約2~約5のケイ素対アルミニウム比及び約0.5~約5.0重量%の鉄含有量に相当する、約0.015~約0.28であり得る。
【0035】
好ましくは、本発明による鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトは、約0.10cm3/gの窒素物理吸着により決定されるメソ細孔容積を有し、任意選択的に、>約0.30cm3/gの総細孔容積を有する。
【0036】
特定の実施形態では、本発明による鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトは、Ce、Cu、Mn、Pd及びPtからなる群から選択される遷移元素のうちの1つ以上を含む。本明細書の目的のために、セリウムは、遷移金属、すなわち、第6周期に属するランタノイド内部遷移元素であると考えられる。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの水性スラリーを含むウォッシュコート組成物を提供する。
【0038】
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトを含むハニカムモノリス基材を提供し、ハニカムモノリス基材は、本発明の第2の態様によるウォッシュコート組成物でコーティングされているか、又はハニカムモノリス基材は、鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの押出成形物を含む。
【0039】
第4の態様によれば、本発明は、窒素系還元剤源から流動排気ガス及び窒素還元剤源に窒素系還元剤を注入するための注入器を備える排気システムを提供し、この注入器は、本発明の第3の態様によるハニカムモノリス基材の上流に配置される。
【0040】
本発明の第4の態様による排気システムの一実施形態では、排気システムは、システム内を流れる排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒を含むハニカムモノリス基材を備え、酸化触媒を含むハニカムモノリス基材は、鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトを含むハニカムモノリス基材の上流に配置される。
【0041】
第5の態様によれば、本発明は、窒素系還元剤を用いて排気ガス中の窒素の酸化物を二窒素に選択的に還元するための、本発明の第1の態様による鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの使用を提供する。
【0042】
第6の態様によれば、本発明は、既存のアルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子から8個の四面体原子によって画定される最大孔開口部を有する金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライトを製造する方法を提供し、金属が、金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて0.5~5.0重量%の範囲で存在し、この方法は、
(i)アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子中に、シリカを溶解させるために、水性アルカリ処理を適用することにより、又はアルミナを溶解させるために、水性酸性処理を適用することによりメソ多孔度をアルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子に導入する工程と、
(ii)湿式含浸又は湿式イオン交換によって、工程(i)の生成物を、金属試薬とアルミノケイ酸塩ゼオライト用の構造指向剤との混合物と接触させることにより、工程(i)の生成物に金属を導入する工程と、
(iii)工程(ii)の生成物に対して水熱結晶化を行う工程と、を含む。
【0043】
好ましくは、処理される前形成アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子は、合成ゼオライト、例えば、骨格型CHA、AEI、AFX、ERI又はLTAを有する合成アルミノケイ酸塩ゼオライトの結晶子である。好ましくは、処理される前形成アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子は、天然アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、骨格型CHA又はERIを有する天然ゼオライトの結晶子である。
【0044】
金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライトは、遷移金属担持アルミノケイ酸塩ゼオライト、特に、骨格型CHA、AEI、AFX、ERI又はLTAを有する鉄担持アルミノケイ酸塩ゼオライトであり得る。
【0045】
第6の態様の好ましい実施形態では、本発明は、既存の合成アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子から8個の四面体原子によって画定される最大孔開口部を有し、かつ骨格型CHA、AEI、AFX、ERI又はLTAを有する、鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトを製造する方法であって、鉄(Fe)が、鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトの総重量に基づいて0.5~5.0重量%の範囲で存在する、方法を提供し、この方法は、
(i)合成アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子中にシリカを溶解させるために、水性アルカリ処理を適用することにより、メソ多孔度を合成アルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子に導入する工程と、
(ii)湿式含浸又は湿式イオン交換によって、工程(i)の生成物を、鉄試薬とアルミノケイ酸塩ゼオライト用の構造指向剤との混合物と接触させることにより、工程(i)の生成物に鉄を導入する工程と、
(iii)工程(ii)の生成物に対して水熱結晶化を行う工程と、を含む。
【0046】
第6の態様の方法の工程(iii)において、工程(i)で溶解されたシリカ及び/又はアルミナは、工程(ii)で生成された金属-(例えば鉄-)含浸メソ多孔質合成アルミノケイ酸塩結晶子の周囲に再組み立てして、金属担持(例えば鉄担持)合成アルミノケイ酸塩ゼオライトを形成することができる。
【0047】
好ましくは、工程(i)で使用されるアルミノケイ酸塩ゼオライト結晶子及び/又は(iii)の生成物は、約1重量パーセント未満、好ましくは約0.5重量パーセント未満のゼオライトのアルカリ含有量を有し、これにより、触媒の耐久性及びSCR触媒としての使用における全体的なNOx変換を改善することができる。本明細書で使用するとき、アルカリ含有量は、ゼオライト中のカチオンとして存在するナトリウム、カルシウム、及びカリウムのそれぞれの酸化物に関して、重量%基準で表される。
【0048】
本発明の第6の態様による発明は、次の工程に進む前に、工程(i)及び/又は(ii)のうちの1つ以上から材料が回収される「ワンポット」又は一連の工程において実行することができる。しかしながら、一実施形態では、本発明の第6の態様による方法は、(i’)工程(i)の生成物を回収及びか焼する工程と、(ii’)工程(ii)の生成物を回収及び乾燥する工程と、(iii’)工程(iii)の生成物を回収及びか焼する工程と、を含む。
【0049】
水熱結晶化工程(iii)は、水蒸気結晶化(steam-assisted crystallisation)を含んでもよい。水蒸気結晶化工程(iii)は、例えば、工程(ii)又は(ii’)の生成物を、加熱の際に蒸気相に少なくとも部分的に入る水を含有するオートクレーブに導入することによって実施することができる。変換される材料は、液体水と接触させるべきではない。追加の加圧は必要ではない。あるいは、工程(ii)で提供される混合物はまた、工程(iii)における湿性空気の存在下で、例えば、気候室又はオーブン内で大気圧下で変換することもできる。
【0050】
工程(iii)温度は、典型的には50℃~250℃、好ましくは80℃~160℃、及び特に好ましくは90℃~130℃である。工程(iii)の合成の持続時間は、通常、12h(時間)~10d(日)であるが、好ましくは1日~5日、及び特に好ましくは2日~4日である。
【0051】
工程(iii)における変換が完了した後、反応混合物を冷却する。次いで、生成物は、洗浄などの一般的な後処理工程に供され得る。しかしながら、本発明による方法の利点の1つは、合成後に得られた生成物が既にマクロ多孔質であることにより、マクロテンプレートを除去する他の方法で合成後に一般的な後処理工程を省略することができるという事実である。
【0052】
分離技術としては、例えば10,000rpmでの遠心分離、例えば蒸留水中での3回の洗浄が挙げられる。
【0053】
以下の表は、テンプレート及び対応する得られたゼオライト骨格として使用するための一般的な有機分子の非限定的なリストを提供する。用語「構造指向剤」及び「テンプレート」は、本明細書において同義的に使用される。
【0054】
【0055】
合成又は天然アルミノケイ酸塩CHAゼオライトを指向する方法に関連して使用するための好ましい構造指向剤は、TMAdOHである。
【0056】
アルカリ処理は、一般的に天然ゼオライトよりも高いケイ素対アルミニウム比を有する合成ゼオライトを使用する実施形態に使用されることが好ましい。比較的低いケイ素対アルミニウム比の天然ゼオライトについては、アルカリ処理の代わりにシュウ酸などの酸処理を用いてアルミニウムを溶解させることにより、メソ多孔度を導入することが好ましい。本発明の第6の態様の方法による工程(i)が、シリカを溶解するアルカリ処理を用いる場合、方法は、界面活性剤を工程(i)の水性系に添加することを更に含む。
【0057】
本発明の第6の態様による用途を有する典型的な界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。使用することができるカチオン性界面活性剤としては、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても知られる臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、四級アンモニウム界面活性剤、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、及び臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムブ(TTAB)が挙げられる。本発明の第7の態様における用途を有するアニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、パレス硫酸ナトリウム(SPS)、又はラウレス硫酸ナトリウム(SLES)が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、Tween60(商標)が挙げられる。
【0058】
アルカリpH溶液が工程(i)で使用される場合、カチオン性界面活性剤が使用されるのが好ましい場合がある。好ましくは、界面活性剤はカチオン性界面活性剤であり、最も好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。
【0059】
金属試薬は、任意の好適な金属試薬であってもよく、例えば、担持される金属が鉄である場合、鉄試薬は硝酸鉄水溶液であってもよい。
【0060】
第7の態様によれば、本発明の第6の態様による方法により得られるか、又は得ることができる、任意選択的に本発明の第1の態様による鉄担持合成アルミノケイ酸塩ゼオライトが提供される。
【0061】
本発明による材料の特性は、任意選択的に、当業者に既知の脱金属、イオン交換、又は熱処理などの一般的な合成後修飾によって、特定の用途に最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明がより完全に理解され得るように、以下の実施例を単なる例示として、かつ添付図面を参照して参照する。
【
図1】SSZ-13で実行される本発明による合成アルミノケイ酸塩CHAの実施形態の手順を示す概略図である。
【
図2】
図1に概略的に記載された手順の様々な工程における親SSZ-13及び合成後修飾材料の粉末XRDパターンの比較を示す。
【
図3】実施例による親SSZ-13及び合成後修飾SSZ-13ゼオライトの窒素物理吸着分析を示す。
【
図4】実施例による、(a)H_CHA22、(b)CHA22_DR、(c)CHA22_DR_Fe1、及び(d)CHA22_DR_Fe1_SAC材料の一連のSEM画像を示す。
【
図5】(a)CHA22_Fe1、(b)CHA22_DR_Fe1、及び(c)CHA22_DR_Fe1_SACの紫外・可視スペクトルを示す。
【
図6】CHA22_Fe1、CHA22_DR_Fe1、及びCHA22_DR_Fe1_SACのNH
3選択触媒還元(SCR)触媒性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明者らは、
図1のスキームに体系的に記載されている合成後処理方法による、Fe-SSZ-13の合成方法を報告する。最初に、SSZ-13ゼオライトを乾燥させてメソ細孔を生成し、溶解したシリカはミセルの周囲で再組み立てされる。pHが低下すると、メソ多孔質シリカは、メソ多孔質SSZ-13ゼオライトの外部表面上に堆積される。得られたメソ多孔質SSZ-13ゼオライトは、非常に高いメソ多孔度を呈する。したがって、鉄種のSSZ-13結晶の内部への接近性が向上し、SSZ-13結晶では、鉄イオンの均質な分布を得ることができる。次いで、メソ多孔質SSZ-13に硝酸鉄及び構造指向剤(TMAdOH)溶液を含浸させ、次いで乾燥させる。微粉砕粉末を、蒸気の存在下で結晶化させた。
【実施例】
【0064】
実施例1-合成アルミノケイ酸塩SSZ-13からのFe-CHA触媒の調製
22の公称SiO2/Al2O3比(SAR)を有する市販のSSZ-13ゼオライト(H型)を、これらの実施例の過程で使用した。受け取ったままの試料をH_CHA22と表示した。ICP-OESにより測定されたH_CHA22試料のSi/Al比(誘導結合プラズマ光発光分光法を用いて)は、11.4、すなわち22.8のシリカ対アルミナ比であった。
【0065】
メソ多孔質SSZ-13ゼオライトの調製
脱ケイ酸-再組み立て方法によって調製されるメソ多孔質SSZ-13ゼオライトを以下のように製造した。45mlの0.2MのNaOH溶液を使用して、撹拌条件下で1.0gのゼオライト粉末を処理した。処理を、65℃で1時間行った。0.7gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を45mlの水に溶解し、上記混合物に添加した。混合物のpHを1MのHClを使用して9に調整した後、混合物を100℃で24時間、静的条件下で水熱処理した。次いで、生成物を濾過により回収し、蒸留水で洗浄し、続いて70℃で24時間乾燥させた。最後に、この生成物を、空気の存在下で550℃で8時間か焼した。メソ多孔質試料を、CHA22_DRと表示する。
【0066】
ミクロ多孔質及びメソ多孔質SSZ-13の湿式イオン交換
1gのミクロ多孔質SSZ-13(H_CHA22)を、18mlの0.01MのFe(NO3)3・9H2Oで室温で24時間イオン交換した。過剰な水を蒸発させ、60℃のオーブン中で乾燥させた。生成物を濾過し、洗浄し、70℃のオーブン内で24時間乾燥させ、合成空気の存在下で550℃でか焼した。この試料を、CHA22_Fe1と表示した。
【0067】
上述のように調製されたメソ多孔質SSZ-13を、まず、そのH型に変換した。典型的には、1gのナトリウム型ゼオライト粉末を、25mlの0.2MのNH4NO3で2回、室温で撹拌条件下で24時間イオン交換した。イオン交換粉末を濾過し、洗浄し、70℃で一晩乾燥させた。続いて、後修飾された試料を、空気中で550℃で5時間か焼した。試料CHA22_DR(H型)の湿式イオン交換を、ミクロ多孔質SSZ-13(CHA22_Fe1)について記載したものと同様の方法で行った。湿式イオン交換によって調製された鉄含有メソ多孔質SSZ-13を、CHA22_DR_Fe1と表示した。
【0068】
水蒸気結晶化
メソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR)を、硝酸鉄、水、構造指向剤(TMAdOH)及び水酸化ナトリウムの水溶液と混合し、これにより、最終組成物が、組成1SiO2:0.05Al2O3:0.007Fe2O3:0.07Na2O:0.1TMAdOH:45H2Oを有した。混合物を室温で30分間撹拌した。その後、過剰な水を蒸発させ、オーブン内で60℃で乾燥させた。乾燥した粉末を乳棒を用いて乳鉢で細かく粉砕し、得られた粉砕粉末をPTFEるつぼに注いだ。ライナーに水を加え、るつぼをライナーに取り付けた。水蒸気結晶化を190℃で48時間実行した。生成物を濾過し、蒸留水で洗浄し、70℃のオーブン内で24時間乾燥させた。最後に、この生成物を、空気中で550℃で8時間か焼した。ナトリウム型試料をH型に変換するために、1gのナトリウム型ゼオライト粉末を、25mlの0.2MのNH4NO3で2回、室温で撹拌条件下で24時間イオン交換した。イオン交換粉末を濾過し、洗浄し、70℃で一晩乾燥させた。続いて、後修飾された試料を、空気中で550℃で5時間か焼した。得られた生成物をCHA22_DR_Fe1_SACと表示し、これは、白色を有していた。
【0069】
実施例2-触媒性質決定
全ての合成後試料を、XRD(X線回折)、N2物理吸着、NH3-TPD(アンモニアの昇温脱離法(temperature programmed desorption)、ICP-OES(誘導結合プラズマ光学発光分光法)、SEM(走査電子顕微鏡法)、29Si及び27Al MAS NMR(マジック角スピニング核磁気共鳴法)、及び紫外・可視分光法によって性質決定した。
【0070】
X’Pert Pro回折計(Philip Analytical)上でCuKα放射を用いて試料のXRDを実行した。2~50°領域の2θで回折パターンを収集した。親試料(H_CHA22)を標準として使用して、後修飾試料の相対的な結晶化度を計算した。
【0071】
77ケルビンでのN2物理吸着を、表面積分析及び孔径分析のためにQuadrasorb(商標)Siガス吸着分析器で実行した。分析前に、試料を真空下で300℃で12時間前処理した。
【0072】
NH3-TPDについては、全ての試料のアンモニア取り込みを、TPDRO 1100熱電子協働を用いて測定した。各試料をガラス管中の石英ウール層の間に配置し、次いで、ヘリウム流中で550℃で30分間、10℃/分の昇温速度で予備処理した。各ゼオライト試料のガスアンモニアによる飽和を、120℃で30分間実施した。最後に、アンモニアを600℃で60分間ヘリウム流中で、10℃/分の昇温速度で除去した。ガラス管を出るガスを、熱伝導度型検出器(TCD)を用いて分析した。
【0073】
任意の試料前処理なしに、Carl Zeiss ULTRA 55顕微鏡を使用して、3kVの電圧でSEM分析を実行した。
【0074】
それぞれ99.362MHz及び130.318MHzの29Si周波数及び27Al周波数で市販の3.2mmの三重共鳴MASプローブを備えたAgilent DD2 500MHz WB分光計で11.74Tで固体NMR分析を実行した。29Si直接励起実験は、3.0μ秒の90°パルス長、60秒の再循環遅延、及び10kHzの試料スピニング周波数を使用して取得した。同様に、15kHzのスピン速度で1.25μ秒のパルス長及び1.0秒の再循環遅延を用いて、27Alのマジック角スピニング(MAS)NMRスペクトルを得た。29Si及び27Al MAS実験を、それぞれ128及び4000の総スキャン数(NS)で実行した。27Al化学シフトは、HClで1のpHに調整したAlCl3の溶液に関して報告した(delta_iso=0ppm)。同様に、29Siの化学シフトは、デルタスケールを使用して報告され、0ppmでテトラメチルシラン(TMS)と参照される。
【0075】
紫外・可視スペクトルを、Harrick Praying Mantis(商標)Diffuse Reflectionアクセサリを装備したJasco V650高解像度紫外・可視分光計に記録し、BaSO4を参照試料として使用した。
【0076】
物理化学的性質決定
図2は、親SSZ-13(H_CHA22)、ミクロ多孔質SSZ-13の湿式イオン交換によって調製された鉄含有試料(CHA22_Fe1)、メソ多孔質SSZ-13の湿式イオン交換によって調製された鉄担持試料(CHA22_DR_Fe1)及び鉄担持メソ多孔質SSZ-13の水蒸気結晶化によって調製された鉄担持試料(CHA22_DR_Fe1_SAC)の粉末XRDパターンを示す。2θ°=13.1、16.3、18.1、20.9、25.4、26.3、31.1、及び31.6におけるX線ピークの積分強度の比の対応する相対的結晶化度を表1に列挙する。
【0077】
【0078】
XRD分析は、親試料(H_CHA22)が、任意の他の結晶相を有さないチャバザイト(CHA)型構造を有することを示す。硝酸鉄溶液との試料H_CHA22のイオン交換後、CHAの反射のピーク強度特性は、おそらく鉄種のより高いX線吸収係数に起因して減少した。メソ細孔の導入及びメソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR_Fe1)中の鉄の添加は、結晶構造の長距離周期的配置での中断をもたらし、したがってピーク強度の低下をもたらす。
【0079】
鉄担持メソ多孔質SSZ-13の水蒸気結晶化によって調製された試料は、高い特性ピーク強度を示し、これは鉄担持メソ多孔質SSZ-13が正常に再結晶化されていることを意味する。
【0080】
親試料(H_CHA22)の窒素吸脱着等温線、ミクロ多孔質SSZ-13の湿式イオン交換によって調製された鉄担持試料(CHA22_Fe1)、メソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR)及び鉄を担持メソ多孔質SSZ-13の水蒸気結晶化によって調製された試料(CHA22_DR_Fe1_SAC)を、
図3に示し、対応する値を表2に列挙する。
【0081】
【0082】
H_CHA22の窒素吸脱着等温線は、IUPAC1型等温線に従い、試料がミクロ多孔質の性質を有することを意味する。試料H_CHA22の細孔径分布は、メソ細孔の存在が無視できることを示す。試料H_CHA22中の鉄の添加は、より少ないBET表面積及びミクロ細孔容積をもたらす。
【0083】
試料CHA22_DRは、規則的なメソ細孔の存在を示すP/Po=0.3~0.45の範囲内の高い窒素取り込みを有し、細孔径分布で見ることができる(
図3の挿入図)。試料CHA22_DR_Fe1_SACの窒素吸脱着等温線は、低P/Poで高い窒素取り込みを有し、増加させたP/Poではプラトーを有し、水蒸気結晶化後に、脱ケイ酸-再組み立てによって生成されたメソ細孔が閉じていることを示す。
【0084】
親及び後処理試料の元素分析及び酸性度測定を表1に示す。ICP分析は、脱ケイ酸-再組み立てアプローチによって調製されたメソ多孔質試料(CHA22_DR)のSi/Al比が、親試料(H_CHA22)と類似していることを示した。鉄含有メソ多孔質SSZ-13ゼオライトの水蒸気結晶化によって調製された試料は、親試料と同様であり、これは、水蒸気結晶化中に材料がほとんど又は全く失われないことを示す。試料CHA22_Fe1、CHA22_DR_Fe1及びCHA22_DR_Fe1_SACの鉄含有量は、それぞれ0.75、1.1及び0.97重量%である。
【0085】
SEM画像解析は、親試料(H_CHA22)が、滑らかな表面を有するように見えるチャバザイト(CHA)の立方体様の連晶形態を呈することを示す(
図4aを参照)。非晶質シリカは、メソポ多孔質SSZ-13及び鉄担持メソポーラスSSZ-13ゼオライトの外面上に観察することができる(それぞれ
図4b及び4cを参照)。水蒸気結晶化後、非晶質シリカ断片は減少する(
図4dを参照)。しかしながら、親試料(H_CHA22)に対して粗面を有するいくつかの結晶が存在する。窒素吸着分析は、試料CHA22_DR_Fe1_SACが、任意の結晶間多孔度を有さないことを示す。
【0086】
試料H_CHA22、CHA22_DR、及びCHA22_DR_Fe1_SACのスペクトル(図示せず)に対応する29Si MAS NMR値を、上記の表2に列挙する。親試料(H_CHA22)は、σ=-116ppm及び-110ppmで2つの明確なピークを有し、これは典型的には、Q4(0Al)及びQ4(1Al)に割り当てられる。σ=-116ppmでの鋭いピークは、67%のケイ素が、Si(SiO)4基として存在することを示し、σ=-110ppmでのそれほど強くないピークは、33%のケイ素は、AlOSi(SiO)3として存在することを示す。σ=-104ppmでの非常に弱い信号は、いくつかの欠陥を示し、定量化中に無視される。試料CHA22_DRは、σ=-116、110及び104ppmでの3つの中程度のピークを示し、これにより、Si(SiO)4基が67%から42%に減少することを明らかにし、また、場合によっては、脱ケイ酸-再組み立てプロセスによって引き起こされる構造的欠陥を示す。これらの構造的欠陥は、後続の水蒸気結晶化によってアニールされた。
【0087】
試料H_CHA22、CHA22_DR及びCHA22_DR_Fe1_SACの29Al MAS NMRスペクトル(図示せず)は、それぞれ、八面体、五面体、及び四面体に配位したアルミニウムを示す、σ=0ppm、30ppm及び58ppmでの共鳴を明らかにする。親試料(H_CHA22)は、58ppmでの鋭いピーク、及び0ppmでの小さなピークを示し、これは、アルミニウムが骨格として主に存在すること(81%)を示し、Si-(OH)-Al架橋を生じさせ、高いアンモニア取り込みをもたらすことを示す。メソ多孔質SSZ-13ゼオライト(CHA22_DR)の27Al MAS NMRスペクトルは、58ppmでの強いピーク(四面体に配位したアルミニウム)を含有し、これは、30ppmまで延伸し、五面体に配位したアルミニウムの存在を示す肩部を伴う。八面体に配位したアルミニウム(σ=0ppm)はまた、10ppmの弱い肩部を伴い、これは、水蒸気結晶化後に消失する。また、試料、試料CHA22_DR_Fe1_SACは、試料CHA22_DRと比較してσ=60ppmで狭いピークを有する。
【0088】
紫外・可視分光法を使用して、鉄種の配位状態及び凝集の程度を調査した。試料CHA22_Fe1、CHA22_DR_Fe1、及びCHA22_DR_Fe1_SACの紫外・可視スペクトルを
図5に示す。試料CHA22_Fe1(ミクロ多孔質SSZ-13ゼオライトの湿式イオン交換によって調製された)の紫外・可視スペクトルは、200nmから600nmまで延伸し、これは様々なdd遷移を示し、したがって試料は様々な種類の鉄部位を含有する。3つの狭バンド及び強バンドは、低波長で観察することができ、220nmで中心となる狭バンドは、単離された四面体に配位したFe
3+部位を示し、280nmで中心となる狭バンドは、隔離された八面体に配位したFe
3+部位を示し、340nmの狭バンドは、オリゴマーFe
3+部位に割り当てることができる。この試料は、ミクロ多孔質SSZ-13ゼオライトの単純な湿式イオン交換によって調製され、更に427及び540nmで2つの広いバンドを示し、これは、より大きな酸化鉄粒子(Fe
2O
3様凝集体)に割り当てられ得る。
【0089】
試料CHA22_DR_Fe1は、280及び340nmで透明なバンドを有し、これらはそれぞれ、単離された八面体に配位し、及びオリゴマーのFe3+部位の指標である。しかしながら、200~220nmの低波長バンドは透明ではないが、恐らく、この試料は、非常に低いミクロ多孔度(0.05cm3/g)を有するメソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR)の湿式イオン交換によって調製されたためである。427及び540nmの2つのバンドは、より大きな酸化鉄粒子については、試料CHA22_Fe1における対応するバンドよりもはるかに弱いことから、メソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR_Fe1)中で支持される鉄イオンが、か焼中に酸化されなかったことを示唆している。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、この観察の理由は、CHA22_Fe1試料では、鉄イオンのかなりの割合がSSZ-13のミクロ細孔内に拡散しない可能性があり、したがって、か焼中に酸化される可能性がより高いためであると推測している。
【0090】
試料CHA22_DR_Fe1_SACの紫外・可視バンドは、200nmから500nmまで延びており、220及び280nmで強い、画定されたピークを示し、これは、単離された四面体に配位した/及び八面体に配位したFe3+部位を示し、それらの間を区別することが困難である。更に、この試料は、340nmで弱いバンドを有するため、比較的少量のオリゴマーFe3+部位を有する。470nmでの非常に弱い信号は、試料CHA22_DR_Fe1_SACが無視できる酸化鉄粒子を含有することを意味する。
【0091】
実施例3-触媒活性測定
各試料のNH3-SCR触媒活性を、固定床石英反応器内で測定した。使用した反応ガス混合物の組成は、窒素の残部を伴って、550ppmのNH3、500ppmのNO、8%のO2、10%のH2Oであった。総ガス流量は、840ml/時又は1000L/g.時のWHSV(重量空間速度)であり、50mgの試料質量を使用した。反応測定値を収集する前に、全ての試料を空気中で550℃で30分間前処理した。ガス組成は、4mの経路長を有するガスセル(Gemini MARS)を装備したVarain FT-IRを使用して測定した。触媒活性を25℃の間隔で、各温度で45分間の待機(又は「浸漬」)時間で、325℃から500℃まで測定した。
【0092】
CHA22_Fe1、CHA22_DR_Fe1及びCHA22_DR_Fe1_SAC試料の触媒活性を試験し、結果を
図6に示す。試料CHA22_Fe1及びCHA22_DR_Fe1は、非常に低いNO及びNH
3変換率を有する。これらの試料は、ミクロ多孔質SSZ-13及びメソ多孔質SSZ-13の、それぞれ硝酸鉄溶液との湿式イオン交換によって調製した。表1に示す結果から、CHA22_Fe1が比較的高い結晶化度及びミクロ細孔容積を有し、紫外・可視データ(図示せず)は、一部の鉄が、かなりの量の酸化鉄凝集体粒子と共に、単離された四面体に配位した又は八面体に配位した部位及びオリゴマーFe
3+部位として存在することを示すことがわかる。これらの酸化鉄凝集体は、NH
3-SCR反応に対して活性であるようには見えず、そのため、この試料は比較的低いNO変換率を有する。
【0093】
鉄担持メソ多孔質SSZ-13(CHA22_DR_Fe1)はまた、比較的高い重量%の量の鉄を含有するが、比較的低いNO変換率を呈する。この比較的低いNO変換率は、おそらくは、脱ケイ酸-再組み立てプロセス中に結晶構造が失われるためであり、したがって、XRD及び窒素物理吸着結果において観察され得る(
図2及び3、並びに実施例2の「物理化学的性質決定」表題下を参照されたい)。
【0094】
試料CHA22_DR_Fe1_SACは、他の2つの試料と比較して、良好で比較的高い変換率を呈し、これは、単離された四面体に配位し及び八面体に配位し、かつ比較的少ないオリゴマーのFe3+部位として、SSZ-13ケージ内の鉄部位の存在に帰属する。
【0095】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【0096】
疑義を回避するために、本明細書に確認された全ての文書の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。