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特許7528100PSMA結合デュアルモード放射性トレーサーおよび療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】PSMA結合デュアルモード放射性トレーサーおよび療法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/072 20060101AFI20240729BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240729BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20240729BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C07K5/072
A61K38/05
A61P35/00
A61K51/08 200
A61K51/08 100
G01T1/161 A
C07F5/00 H
C07F5/00 D
C07F5/00 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021544525
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020052248
(87)【国際公開番号】W WO2020157177
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】19154500.3
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150162
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン
(73)【特許権者】
【識別番号】520034716
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン-クリニクム レヒツ デア イーザル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ワーザー,アレクサンデル・ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェスター,ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アイバー,マティアス・ヨハネス
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/187631(WO,A1)
【文献】特表2016-535013(JP,A)
【文献】特表2021-505532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)による化合物:
【化1】
または薬学的に許容されるその塩であって、キレート化放射性カチオンを含有し、またはFが場合によって18Fである、化合物。
【請求項2】
式(Va)による、請求項1に記載の化合物:
【化2】
[式中、
各Xは、独立して、OHまたはOであり;
Mは、キレート化放射性カチオンであり、または非存在であり;
Fは、場合によって、18Fである]
または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
キレート化放射性カチオンが、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択される、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
キレート化放射性カチオンが、Gaである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
キレート化放射性カチオンが、Lu-177、Y-90、またはAc-225である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
a)式(I)の化合物:
【化3】
を、式(II)の化合物:
【化4】
と反応させて、式(III)の化合物:
【化5】
[式中、PGは、tBuであり、PGは、Fmocであり、PGは、Ddeであり;
反応条件は、塩基の使用を伴い、塩基は、2,4,6-コリジンまたは2,6-ジメチルピリジンである]を形成するステップと;
b)式(IV)の化合物:
【化6】
を形成するのに適した条件下で、式(III)の化合物を反応させるステップと、
c)化合物(V):
【化7】
を形成するのに適した条件下で、式(IV)の化合物を反応させるステップと
を含む、請求項1に記載の化合物を生成する方法。
【請求項7】
化合物(II)が、化合物(I)との反応前に、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)および2,4,6-コリジンと反応させることにより、事前活性化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
事前活性化を、5分以内に行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(VI)
【化8】
の請求項1または請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
式(VII)
【化9】
の請求項1または請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
求項1から5、9および10のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬または診断用組成物。
【請求項12】
がん診断または画像化剤としての使用のための請求項1から5、9および10のいずれか一項に記載の化合物または請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
がんの治療における使用のための請求項1から5、9および10のいずれか一項に記載の化合物または請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
血管新生/血管形成の診断、画像化または予防のための請求項1から5、9および10のいずれか一項に記載の化合物または請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
がんが、前立腺、乳、肺、結腸直腸または腎細胞癌である、がん診断もしくは画像化剤としての使用のためまたはがんの治療における使用のための、請求項1から5、9および10のいずれか一項に記載の化合物または請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(V)による化合物:
【0002】
【化1】
【0003】
または薬学的に許容されるその塩であって、キレート化放射性カチオンを含有し、またはFが場合によって18Fである、化合物に関する。本発明はまた、合成中にラセミ化を防ぐ化合物を合成する方法に関する。
【0004】
本明細書では、特許出願および製造者のマニュアルを含めた、多くの文献が引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許要件に関連すると考えられず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。より詳細には、それぞれ個々の文献が、参照により組み込まれることが、詳細におよび個別に示された場合と同じ程度で、参照されるすべての文献が、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
前立腺がん
前立腺がん(PCa)は、過去数十年にわたって、依然として、生存率が低く、発生率が高い、男性において最も多く見られる悪性疾患である。前立腺がんにおけるその過剰発現により、前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCP II)は、PCaの内部放射線療法および画像化用の高感度放射能標識薬剤の開発のための優れた標的として、その適格性を証明した。前立腺特異的膜抗原は、触媒中心が、架橋ヒドロキシドリガンドを有する2個の亜鉛(II)イオンを含む、細胞外加水分解酵素である。これは、転移性およびホルモン不応性前立腺癌において、大いに上方調節されるが、その生理学的発現はまた、腎臓、唾液腺、小腸、脳においておよび、低い程度まで、健常な前立腺組織においても報告されている。腸において、PSMAは、プテロイルポリ-γ-グルタメートのプテロイルグルタメート(フォレート)への変換により、フォレートを容易に吸収する。脳において、これは、N-アセチル-Lアスパルチル-L-グルタメート(NAAG)を、N-アセチル-L-アスパルテートおよびグルタメートに加水分解する。
【0006】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺がん上皮細胞において高度に過剰発現されるII型膜貫通糖タンパク質である。その名称にもかかわらず、PSMAはまた、様々な程度まで、広範囲の非前立腺がんの新生血管(neovasculature)において発現される。PSMA発現を実証するために最も多く見られる非前立腺がんの中でもとりわけ、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、および腎細胞癌が含まれる。
【0007】
PSMA標的分子の一般に必要な構造は、P1’グルタメート部分に接続される亜鉛-結合基(例えば、尿素、ホスフィネートまたはホスホロアミデートなど)を包含する結合単位を含み、PSMAへの高い親和性および特異性を保証し、通常、エフェクター官能基にさらに接続される。エフェクター部分は、より可動性があり、ある程度、構造上の改変に対して耐性がある。入口トンネルは、他の際立った2つの構造上の特徴を収容し、これらは、リガンド結合にとって重要である。第1のものは、アルギニンパッチ、入口ファンネルの壁において正電荷を持つ領域およびPSMAのP1位置において負電荷を持つ官能基の選好性についての機構的な説明である。これは、リガンド-足場内の負電荷を持つ残基の好ましい取込みの理由であると思われる。PSMAリガンドに対する正電荷の効果についての綿密な分析は、本発明者らの知る限りでは、今までのところ行われていない。結合後、アルギニン側鎖の一致した再配置は、いくつかの尿素に基づいた阻害剤のヨード-ベンジル基を収容することが示されている、第2の重要な構造であるS1疎水性付属ポケットを開口させることができ、したがって、PSMAに対するそれらの高い親和性に寄与している。
【0008】
Zhangらは、PSMAの遠隔結合部位を開発し、これは、二座結合モードに使用することができる(Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132、12711~12716(2010年))。いわゆるアレーン-結合部位は、Arg463、Arg511およびTrp541の側鎖により形作られる単純な構造モチーフであり、GCPII入口蓋の一部である。遠位阻害剤部分によるアレーン結合部位の結合によって、結合活性効果によりPSMAについての阻害剤親和性を大幅に増加させることができる。PSMA I&Tは、結合モードの結晶構造分析が利用可能ではないが、PSMAとこのように相互作用することを企図して開発された。Zhangらによる必要な特徴は、リンカー単位(PSMA I&Tの場合におけるスベリン酸)であり、GCPIIの入口蓋のオープン構造を容易にし、それにより、アレーン-結合部位の到達性を可能にする。リンカーの構造組成は、腫瘍標的指向化および生物活性に対して、ならびに画像化コントラストおよび薬物動態(Liuら、Bioorganic & medicinal chemistry letters 21巻、7013~7016(2011年))、高い画像化品質および効率的な標的内部放射線療法の両方について決定的である特性に対して大きな影響があることがさらに示された。
【0009】
PSMA標的指向化阻害剤の2つのカテゴリーは、臨床状況に現在用いられる。一方で、放射性核種複合体形成、例えば、PSMA I&Tなどまたは関連した化合物についてのキレート化単位を有するトレーサーがある。他方で、標的指向化単位およびエフェクター分子を含む小分子がある。
【0010】
選択的PSMA画像化用に最も多く用いられる薬剤は、PSMA HBED-CC、PSMA-617およびPSMA I&Tであり、これらは、68Ga(88.9% β、Eβ+, max=1.89MeV、t1/2=68分)で主に標識される。これらの中でもとりわけ、68Ga-PSMA-HBED-CC(68Ga-PSMA-11としても公知である)は、PCaのPET画像化のゴールデンスタンダードとして、今までのところ考えられる。
【0011】
18F標識化
近年、いくつかのグループは、PCa診断用の新規な18F標識化尿素に基づいた阻害剤の開発に焦点を合わせた。商業的に流通する68Ge/68Ga放射性核種ジェネレーター(68Ge;t1/2=270.8d)から得ることができる、放射性金属68Gaと異なり、放射性同位体18F-フッ化物(96.7% β、Eβ+, max=634keV)は、その生成のためにオンサイトサイクロトロンを要する。こうした制限にも関わらず、18Fは、その半減期(t1/2=109.8分)が長いおよびその陽電子エネルギーが低いことにより、ルーチン的な取り扱いおよび画質に関して、有意な利点を提供する。さらに、サイクロトロンにおける大量生成に向けての可能性があり、これは、より高い患者処理量および製造コストの削減のために有益なはずである。18F-標識化尿素に基づいたPSMA阻害剤18F-DCFPylによって、原発性および転移性PCa(Roweら、Molecular Imaging and Biology、1~9(2016年))の検出における有望な結果および比較試験における68Ga-PSMA-HBED-CCへの優位性(Dietleinら、Molecular Imaging and Biology 17巻、575~584頁(2015年))を実証した。PSMA-617の構造に基づいて、18標識化類似体PSMA-1007は、最近開発され、これは、同等の腫瘍対臓器比を示した(Cardinaleら、Journal of nuclear medicine: official publication、Society of Nuclear Medicine 58巻、425~431頁(2017年);Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 43巻、1929~1930(2016年))。68Ga-PSMA-HBED-CCによる比較試験から、両トレーサーの類似の診断精度および前立腺のより良い評価を可能にする、18F-PSMA-1007の尿クリアランスの低下が明らかになった(Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 44巻、678~688頁(2017年))。
【0012】
18F標識を導入するための魅力的なアプローチは、フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)の使用である。フッ化ケイ素アクセプターは、例えば、Lindnerら、Bioconjugate Chemistry 25巻、738~749頁(2014年)に記載されている。フッ化ケイ素結合を維持するために、フッ化ケイ素アクセプターの使用は、シリコーン原子の周囲の立体的にかさ高い基の必要性を生じさせる。次に、これによって、フッ化ケイ素アクセプターが高度に疎水性になる。標的分子への結合、特に、PSMAである標的分子への結合に関して、フッ化シリコーンアクセプターにより提供される疎水性部分は、Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132巻、12711~12716(2010年)に記載されている、疎水性ポケットを有する放射線診断用または放射線治療用化合物の相互作用を確立する目的のために活用することができる。さらに、結合前に、より高度な範囲の、分子に導入される親油性は、in vivo体内分布に適した、すなわち、非標的組織における非特異的結合が低い放射性医薬品の開発に関して、深刻な問題をもたらす。
【0013】
疎水性問題の解決の失敗
多くの試みにも関わらず、フッ化ケイ素アクセプターにより引き起こされる疎水性問題は、従来技術において十分に解決していない。
【0014】
さらに説明するために、Schirrmacher E.ら(Bioconjugate Chem.2007年、18巻、2085~2089)は、非常に有効な標識化シントンp-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアルデヒド([18F]SIFA-A)を用いて、異なる18F標識化ペプチドを合成したが、これは、フッ化ケイ素アクセプターの一例である。SIFA技術は、予想外に効率的な同位体19F-18F交換をもたらし、HPLC精製を適用せずに、225~680GBq/μmol(6081-18 378Ci/mmol)の間の高特異活性において、ほぼ定量的収率で18F-シントンを生成した。[18F]SIFA-ベンズアルデヒドは、高い放射化学収率で、N末端アミノ-オキシ(N-AO)誘導体化ペプチドAO-Tyr3-オクトレオテート(AO-TATE)、シクロ(fK(AO-N)RGD)およびN-AO-PEG-[D-Tyr-Gln-Trp-Ala-Val-Ala-His-Thi-Nle-NH](AO-BZH3、ボンベシン誘導体)を標識するために、最後に用いられた。それにもかかわらず、標識されたペプチドは、(本明細書に記載した条件を用いてHPLC保持時間から取り込むことができるため)高親油性であり、したがって、動物モデルまたはヒトにおいてさらなる評価に適していない。
【0015】
Wangler C.ら(Bioconjugate Chem.、2009年、20巻(2号)、317~321頁)において、タンパク質(ラット血清アルブミン、RSA)の第1のSIFAに基づいたKit様放射性フッ素付加を記載している。標識化剤として、4-(ジ-tert-ブチル[18F]フルオロシリル)ベンゼンチオール(Si[18F]FA-SH)は、放射化学収率(RCY)40~60%の単純な同位体交換により生成され、20~30分以内に、全RCY12%で、マレイミド誘導体化血清アルブミンに直接生成物をカップリングした。技術的に単純な標識化手順は、いかなる詳述された精製手順をも要さず、PETを用いたin vivo画像化用のSi-18F化学の成功した適用の明快な例である。マウスの時間-活性曲線およびμPET画像によって、活性のほとんどが、肝臓において限局化したことが示され、したがって、標識化剤が、非常に親油性であり、in vivoプローブを肝胆道排出および広範な肝代謝に方向づけられることを実証した。
【0016】
Wangler C.ら(Bioconjug Chem. 2010年12月15日;21巻(12号):2289~96を参照のこと)は、引き続いて、新たなSIFA-オクトレオテート類似体(SIFA-Tyr3-オクトレオテート、SIFA-Asn(AcNH-β-Glc)-Tyr3-オクトレオテートおよびSIFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PEG-Tyr3-オクトレオテート)を合成し、評価することにより、SIFA技術の主な弱点、得られた放射性医薬品の高親油性を克服しようと努めた。これらの化合物では、親水性リンカーおよび薬物動態学的修飾因子は、ペプチドとSIFA-部分、すなわち、炭水化物と炭水化物を加えたPEGリンカーの間で導入された。コンジュゲートの親油性の手段として、log P(ow)が決定され、SIFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PEG-Tyr-オクトレオテートの場合0.96およびSIFA-Asn(AcNH-β-Glc)-Tyr-オクトレオテートの場合1.23であることが見出された。これらの結果から、SIFA部分の高親油性が、親水部分を適用することにより、わずかに補正することができるにすぎないということが示される。第1の画像化試験によって、過剰な肝クリアランス/肝臓取込みが実証され、したがって、第1のヒト試験に決して移行されなかった。
【0017】
Bernard-Gauthierら(Biomed Res Int.2014;2014:454503)では、小型の補欠分子族および低分子量の他の化合物から、標識されたペプチドおよびごく最近の抗体分子に及ぶ文献において報告されている、異なるSIFA種の重大な多血症が概説されている。これらのデータに基づいて、SIFAに基づいた補欠分子族(prosthetric group)の親油性の問題は、今までのところ解決されておらず;すなわち、SIFAコンジュゲートペプチドの全親油性を、およそ-2,0より低いlog Dまで低下する方法論は、記載されていない。
【0018】
Lindner S.ら(Bioconjug Chem.2014年4月16日;25巻(4号):738~49)において、特異的GRP受容体リガンドとしてのペグ化ボンベシン(PESIN)誘導体および特異的αvβ3結合剤としてのRGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸の1文字コード)ペプチドが、合成され、ケイ素-フッ素-アクセプター(SIFA)部分でタグ付けされた。SIFA部分の高親油性を補正するために、様々な親水性構造修飾を、logD値を減少させるよう導入した。SIFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PESIN、SIFA-Ser(β-Lac)-PESIN、SIFA-Cya-PESIN、SIFA-LysMe3-PESIN、SIFA-γ-カルボキシ-d-Glu-PESIN、SIFA-Cya2-PESIN、SIFA-LysMe3-γ-カルボキシ-d-Glu-PESIN、SIFA-(γ-カルボキシ-d-Glu)2-PESIN、SIFA-RGD、SIFA-γ-カルボキシ-d-Glu-RGD、SIFA-(γ-カルボキシ-d-Glu)2-RGD、SIFA-LysMe3-γ-カルボキシ-d-Glu-RGD。親油性を低下させることを目標として、すでに改善され誘導体化された、これらのペプチドのすべては、+2~-1.22の間のlogD値を示した。
【0019】
Niedermoser S.ら(J Nucl Med.2015年7月;56巻(7号):1100~5)では、新規に開発された18F-SIFA-および18F-SIFAlin-(SIFA=フッ化ケイ素アクセプター)によって修飾されたTATE誘導体を、ソマトスタチン受容体担持腫瘍の高品質画像化用の現在の臨床のゴールドスタンダードである68Ga-DOTATATEと比較した。この目的のために、18F-SIFA-TATEおよび2つのかなり複雑な類似体、18F-SIFA-Glc-PEG1-TATE、18F-SIFAlin-Glc-Asp2-PEG1-TATEを開発した。これらの薬剤はいずれも、logD<-1.5を示さなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132、12711~12716(2010年)
【文献】Liuら、Bioorganic & medicinal chemistry letters 21巻、7013~7016(2011年)
【文献】Roweら、Molecular Imaging and Biology、1~9(2016年)
【文献】Dietleinら、Molecular Imaging and Biology 17巻、575~584頁(2015年)
【文献】Cardinaleら、Journal of nuclear medicine: official publication、Society of Nuclear Medicine 58巻、425~431頁(2017年)
【文献】Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 43巻、1929~1930(2016年)
【文献】Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 44巻、678~688頁(2017年)
【文献】Lindnerら、Bioconjugate Chemistry 25巻、738~749頁(2014年)
【文献】Schirrmacher E.ら(Bioconjugate Chem.2007年、18巻、2085~2089)
【文献】Wangler C.ら(Bioconjugate Chem.、2009年、20巻(2号)、317~321頁)
【文献】Wangler C.ら(Bioconjug Chem. 2010年12月15日;21巻(12号):2289~96)
【文献】Bernard-Gauthierら(Biomed Res Int.2014;2014:454503)
【文献】Niedermoser S.ら(J Nucl Med.2015年7月;56巻(7号):1100~5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記を考慮して、本発明の根底にある技術的な課題は、フッ化シリコーンアクセプターを含有し、同時に、好ましいin-vivo特性を特徴とする、放射線診断および放射線療法を提供することにおいて示すことができる。
【0022】
次において明らかになる通り、本発明は、標的として、前立腺特異抗原(PSMA)に高い親和性で結合する、特異的なコンジュゲートを用いて、原理の証明を確立した。したがって、本発明の根底にあるさらなる技術的な課題は、がん、好ましくは、前立腺がんである医療適応症についての放射線療法および放射線診断の改善を提供することにおいて示すことができる。
【0023】
PCT/EP2018/070533は、PSMA結合化合物の属を開示している。本明細書中で開示されるのは、先の出願からの化合物の有利なサブセットである。本明細書中の適用は、PCT/EP2018/070533出願時に発明者らにより認識されなかった有利な特徴の選択である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの技術的な課題は、クレームの主題により解決される。したがって、いくつかの態様では、本発明は、式(V)による化合物:
【0025】
【化2】
【0026】
または薬学的に許容されるその塩であって、キレート化放射性カチオンを含有し、またはFが場合によって18Fである、化合物に関する。
開示される化合物は、塩の形態であり得る。本発明はまた、式(Va):
【0027】
【化3】
【0028】
の化合物または薬学的に許容されるその塩[式中、
各Xは、独立して、OHまたはOであり;
Mは、キレート化放射性カチオンのいずれかであり、または非存在であり;
Fは、場合によって、18Fである]に関する。
【0029】
さらに、キレート剤の使用および18F-フッ化物によるSIFAにおける同位体交換の組合せによって、オンサイトサイクロトロンによるセンターまたはサイクロトロンセンターからの輸送により18F-フッ化物を得るセンターで、[18F][natIon]トレーサーとしていずれも用いることができる「ペア」診断トレーサーをもたらし、一方、18F-フッ化物を利用できないが、放射性同位体ジェネレーター、例えば、Ge-68/Ga-68ジェネレーターなどを利用する、センターにおいて、対応するバージョン、例えば、[natF][68Ga]トレーサーは、用いることができる。
【0030】
重要なことに、両方の場合において、化学的に同一の放射性医薬品は、注射され、したがって、in vivo挙動の差は、予想されない。一方で、現在、化学的相違により、ある部位における患者コホートにより提供される18F-標識化化合物の臨床データは、別の部位における別の群により提供される68Ga-類似体の臨床データと直接比較することができず、本発明による放射性医薬品および/または診断学は、直接比較することができ、したがって、かかるデータ(例えば、F-18を用いた欧州の作業におけるセンターおよびGa-68を用いたインドの作業における別のセンターから得られたデータ)を連結することが可能になる。
【0031】
さらに、適切に選択された場合、キレートは、治療用同位体、例えば、β放出同位体、Lu-177、Y-90など、またはα放出同位体Ac-225などで標識するために用いることもでき、したがって、診断用([18F][natLu]トレーサー)および治療用放射性医薬品([natF][177Lu]を架橋するために、「ペア」トレーサーの概念を拡張することが可能である。
【0032】
化合物、特に、本発明のPSMA標的化合物のさらなる利点は、他のPSMA標的放射性医薬品、例えば、PSMA I&Tなどと比較した場合、マウスの腎臓において、それらの蓄積が驚くほど低いことである。ある特定の理論により縛られることを望まずに、腎臓において蓄積を予想外に減少させる、構造要素SIFAのキレート剤との組合せであると思われる。
【0033】
親油性/親水性の点から、logP値(時折、logD値とも称される)は、技術分野で確立された手段である。
用語「親油性」とは、脂質溶液に溶解される、またはそれに吸収されるまたは脂質-様表面もしくはマトリックスで吸着される強度に関する。これは、脂質(文字通りの意味)についてのまたは有機もしくは無極性脂質についてのまたは水と比較して、小型の双極子モーメントを含む液体、溶液または表面についての選好性を示す。用語「疎水性」は、本明細書中で等価な意味で用いられる。形容詞親油性のおよび疎水性のは、上記に記載した名詞に対応する意味で用いられる。
【0034】
2つの不混和性のもしくはほぼ不混和性の溶媒の界面における分子の質量流束は、その親油性によって支配される。親油性であるほど、分子は、親油性有機相に溶解する。水とn-オクタノールとの間で観察される分子の分配係数は、親油性の標準単位として用いられている。種Aの分配係数Pは、P=[A]n-octanol/[A]water比として定義される。一般に報告される数値は、logP値であり、これは、分配係数の対数である。分子が、イオン化可能な場合では、複数の異なる微細種(分子のイオン化されたおよびイオン化されない形態)は、両相に原理的に存在する。イオン化可能な種の全親油性を記述する含量は、比D=[すべての微細種の濃度の和]n-octanol/[すべての微細種の濃度の和]waterとして定義される分配係数Dである。logPと類似して、頻繁に、分配係数の対数である、logDは報告される。しばしば、緩衝系、例えば、リン酸緩衝食塩水などは、logPの上記で記載した決定における水の代替として用いられる。
【0035】
第1の分子における置換基の親油性の特徴が、評価されようとするかつ/または定量的に決定されようとする場合、これは、その置換基に対応する第2の分子を評価することができ、前記第2の分子は、例えば、前記置換基を第1の分子の残部に接続する結合を切断し、それにより得られた自由原子価(複数可)を水素(複数可)に接続することにより、得られる。
【0036】
あるいは、分子のlogPへの置換基の寄与を、決定することができる。分子R-XのlogPへの置換基Xの寄与πX Xは、πX X=logPR-X-logPR-H[式中、R-Hは、非置換親化合物である]として定義される。
【0037】
1より大きいPおよびDの値ならびに0より大きいlogP、logDおよびπX X値は、親油性/疎水性の特徴を示し、1より小さいPおよびDの値ならびに0より小さいlogP、logDおよびπX X値は、それぞれの分子または置換基の親水性の特徴を示す。
【0038】
本発明による親油基または分子全体の親油性を特徴付ける上記で記載したパラメーターは、実験的手段により決定することができ、かつ/または当技術分野で公知の計算方法により予測することができる(例えば、Sangster、Octanol-water Partition Coefficients:fundamentals and physical chemistry、John Wiley & Sons、Chichester.(1997年)を参照のこと)。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の化合物のlogP値は、-5~-1.5の間である。logP値が、-3.5~-2.0の間であることが、特に好ましい。
好ましい実施形態では、キレート基は、放射性であるキレート化カチオンを含む。より好ましいのは、キレート化放射性金属同位体である。
【0040】
キレート基によりキレート化することができるカチオンの好ましい例は、43Sc、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga 68Ga、89Zr、90Y、89Y、<Tc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag,110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Thのカチオン、18Fまたはカチオンを含むカチオン性分子、例えば、18F-[AlF]2+など;より好ましくは、44Sc、47Sc、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子である。カチオンは、Lu-177、Y-90、またはAc-225から選択することができる。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、本明細書中で上記に開示される通り、本発明の1種または複数の化合物を含むまたはそれらからなる医薬組成物を提供する。
さらなる態様では、本発明は、本明細書中で上記に開示される通り、本発明の1種もしくは複数の化合物を含むまたはそれらからなる診断用組成物を提供する。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、本明細書中で上記に開示される通り、本発明の1種もしくは複数の化合物を含むまたはそれらからなる治療用組成物を提供する。
医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含むことができる。適当な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤の例としては、当技術分野で周知であり、リン酸緩衝食塩溶液、水、乳剤、例えば、油/水型乳剤、様々なタイプの湿潤剤、無菌の溶液などが含まれる。かかる担体を含む組成物は、周知の定法により配合することができる。これらの医薬組成物は、適当な用量で対象に投与することができる。適当な組成物の投与は、異なるやり方により、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内または気管支内投与により行うことができる。前記投与は、例えば、膵臓中のまたは脳動脈中のまたは直接脳組織中の部位への、注射および/または送達により、行われることが特に好ましい。組成物はまた、例えば、膵臓または脳のような外部のまたは内部の標的部位への微粒子銃送達により、標的部位に、直接投与することもできる。投与量レジメンは、担当医および臨床学的因子により決定される。医学分野において周知の通り、任意の1人の患者用の投与は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与されようとする特定の化合物、性別、時間および投与の経路、一般的な健康、および同時に投与される他の薬物を含めた、多くの因子に依存する。薬学的に活性な物質は、用量当たり体重0,1ng~10mg/kg間の量で存在することができ;しかしながら、この模範的な範囲を下回るまたは上回る用量が想像され、特に、前述の因子が考えられる。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、医学における使用のための、本明細書中で上記に開示される、本発明の1種または複数の化合物を提供する。
医学における好ましい使用は、核医学、例えば、核診断用画像化など、やはり、指定された核分子画像化、および/または患部組織における、過剰発現、好ましくは、PSMAを伴う疾患の標的された放射線療法においてである。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、がん、好ましくは、前立腺がんを診断および/またはステージ分類する方法における使用のための、本明細書中で上記に定義された、本発明の化合物を提供する。前立腺がんは、PSMAを発現する唯一のがんではない。PSMA発現を実証することが知られている非前立腺がんは、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、および腎細胞癌が含まれる。したがって、PSMA結合部分を有する本明細書に記載される任意の化合物は、PSMA発現を有するがんの診断、画像化または治療において用いることができる。
【0045】
好ましい適用は、がん、例えば、それだけに限られないが、高悪性度グリオーマ、肺がん、特に、前立腺がんおよび転移した前立腺がんの検出またはステージ分類、中等度リスクから高リスクの原発性前立腺がんを伴う患者における転移性疾患の検出、および転移部位、さらに、生化学的に再発性前立腺がんを伴う患者における血清PSA値低値の検出である。好ましい別の指示は、血管新生(neoangiogensis)の画像化および視覚化である。
【0046】
療法、特に、放射線療法を受けようとする医療適応症に関して、がんは、好ましい適応症である。前立腺がんは、特に好ましい適応症である。
さらなる態様では、本発明は、がん、好ましくは、前立腺がんを診断および/またはステージ分類する方法における使用のための、本明細書中で上記に定義された、本発明の化合物を提供する。
【0047】
本開示は、さらに、次の項目に関する。
式(V)による化合物:
【0048】
【化4】
【0049】
または薬学的に許容されるその塩であって、キレート化放射性カチオンを含有し、またはFが場合によって18Fである、化合物。
本化合物は、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択されるキレート化カチオンを含むことができる。キレート化カチオンは、放射性であり得る。キレート化放射性カチオンは、ガリウム、エルビウム、銅、スカンジウム、ルテチウムまたはイットリウムのうちのいずれかの放射性同位体(複数可)であり得る。
【0050】
式(Va)の化合物:
【0051】
【化5】
【0052】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
各Xは、独立して、OHまたはOであり;
Mは、キレート化放射性カチオンであり、または非存在であり;
Fは、場合によって、18Fである]。
【0053】
式(Va)の化合物において、Xは、OHであり得る。Xは、Oであり得る。Mが存在する場合、X基のうちの1つまたは複数は、Mにキレート化することができる。
式(Va)の化合物において、Mは、キレート化放射性カチオンであり得る。Mは、非存在でもよい。Mは、1つまたは複数のX基にキレート化された放射性カチオンであり得る。Mは、1個または複数のN原子にキレート化された放射性カチオンであり得る。Mは、1個もしくは複数のN原子または1つもしくは複数のX基にキレート化された放射性カチオンであり得る。Mは、1個または複数のN原子および1つまたは複数のX基にキレート化された放射性カチオンであり得る。
【0054】
式(V)または(Va)の化合物において、Fは、18Fであり得る。Fは、19Fであり得る。
式(V)または(Va)の化合物において、キレート化放射性カチオンは、43Sc、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga 68Ga、89Zr、90Y、89Y、<Tc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag,110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Thのカチオン、18Fまたはカチオンを含むカチオン性分子、例えば、18F-[AlF]2+など;より好ましくは、44Sc、47Sc、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子から選択することができる。キレート化放射性カチオンは、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択することができる。キレート化放射性カチオンは、Gaであり得る。キレート化放射性カチオンは、Lu-177、Y-90、またはAc-225であり得る。
【0055】
式(Va)の化合物において、Mは、43Sc、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga 68Ga、89Zr、90Y、89Y、<Tc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag,110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Thのカチオン、18Fまたはカチオンを含むカチオン性分子、例えば、18F-[AlF]2+など;より好ましくは、44Sc、47Sc、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子から選択することができる。Mは、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択することができる。Mは、Gaでもよい。Mは、Lu-177、Y-90、またはAc-225でもよい。
【0056】
可能な限り少ない異性体で化合物を合成することが有利である。これらの異性体は、分離することができ、単一の異性体のみが、in-vivoで用いられ、したがって、誤った異性体は、単純に処分され、用いられない。したがって、定義された不斉中心のうちのいずれかのラセミ化または反転を最小限にする条件は、理想的には回避される。
【0057】
やはり記載されるのは、
a)式(I)の化合物:
【0058】
【化6】
【0059】
を、式(II)の化合物:
【0060】
【化7】
【0061】
と反応させて、式(III)の化合物:
【0062】
【化8】
【0063】
[式中、PGは、tBuであり、PGは、Fmocであり、PGは、Ddeであり;
反応条件は、塩基の使用を伴い、塩基は、2,4,6-コリジンまたは2,6-ジメチルピリジンである]を形成するステップと;
b)式(IV)の化合物:
【0064】
【化9】
【0065】
を形成するのに適した条件下で、式(III)の化合物を反応させるステップと、
c)(V)の化合物:
【0066】
【化10】
【0067】
を形成するのに適した条件下で、式(IV)の化合物を反応させるステップと
を含む、化合物を生成する方法である。
による方法は、化合物(II)が、化合物(I)との反応前に、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)および2,4,6-コリジンと反応させることにより、事前活性化されるものを含む。事前活性化を、5分以内に行う。
【0068】
短い賦活化時間と共に、塩基としての2,4,6-コリジンまたは2,6-ジメチルピリジンの使用は、他の窒素性塩基、例えば、DIPEAなどと比較した場合、活性化キラル化合物(II)のラセミ化を最小限にするのに役立つ。より立体的に妨害された塩基は、酸の不斉中心における酸性プロトンを抽出せず、そのため、アミンにカップリングする前にラセミ化を弱める。
【0069】
本明細書中で開示されるのは、式(VI)
【0070】
【化11】
【0071】
による化合物または薬学的に許容されるその塩である。
キレート化金属が示される場合、キレートされる酸基は、単に代表としてCOOと示されるにすぎず、等価の第4の酸は、部分的にキレート化することもでき、そのため、文字通りCOOHでなくてもよい。
【0072】
本明細書中で開示されるのは、式(VII)
【0073】
【化12】
【0074】
による化合物または薬学的に許容されるその塩である。
本明細書中で開示されるのは、式(V)または(VI)の化合物を含む医薬または診断用組成物である。コンジュゲート、化合物または組成物は、がん診断または画像化剤として用いることができる。
【0075】
開示されるのは、式(V)もしくは(VI)によるコンジュゲート、化合物または組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、がんを画像化および/または診断する方法である。
【0076】
開示されるのは、がんの治療における使用のための、式(V)もしくは(VI)によるコンジュゲート、化合物または組成物である。
開示されるのは、血管新生/血管形成の診断、画像化または予防における使用のための、式(V)もしくは(VI)によるコンジュゲート、化合物または組成物である。
【0077】
開示されるのは、前立腺、乳、肺、結腸直腸または腎細胞癌である、がん診断もしくは画像化剤としての使用のためまたはがんの治療における使用のための、式(V)もしくは(VI)によるコンジュゲート、化合物または組成物である。
【0078】
図は、次の通り図示される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】OriginPro 2016Gにおける9つの参照物質の決定の模範的な相関を示す図である。
図2a】[19F][natGa]-rhPSMA7-rac([19F][natGa]D/L-Dap-R/S-DOTAGA-rhPSMA-7-rac)の品質管理、(バッチ10、(核医学科、TUMにおける[18F][natGa]D/L-Dap-R/S-DOTAGA-rhPSMA-7)の生成についての前駆物質)を示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図2b】ピーク指定:エナンチオピュアなD-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.1と同時注入した図2aから得られたD-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.1;rhPSM7-racを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図2c】D-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.1のHPLCプロフィールを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図3a】ピーク指定:エナンチオピュアなL-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.2と同時注入した図2aから得られたL-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.2;rhPSM7-racを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図3b】L-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA-7.2のHPLCプロフィールを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図4a】ピーク指定:エナンチオピュアなD-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA-7.3と同時注入した図2aから得られたD-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA-7.3;rhPSM7-racを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図4b】D-Dap-D-DOTAGA-rhPSMA-7.3のHPLCプロフィールを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図5a】ピーク指定:エナンチオピュアなD-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA-7.3と同時注入した図2aから得られたL-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA-7.4;rhPSM7-racを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図5b】L-Dap-D-DOTAGA-rhPSMA-7.4のHPLCプロフィールを示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA。勾配:B25~35% 0~40分、B95~95% 40~45分、B35~35% 45~50分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm、サンプル:1mM(DMSO)、10μL。
図6a】rhPSMA7.1および7.2のPSMAへの結合親和性(IC50[nM])を示す図である。親和性を、放射性リガンド(1h、4℃、HBSS+1%BSA)として、LNCaP細胞(150000細胞/ウェル)および((4-[125I]ヨードベンゾイル)KuE([125I]IB-KuE;c=0.2nM)を用いて、決定した。データを、平均±SD(3つの異なる実験において、n=3)として表す。
図6b-1】rhPSMA7異性体のPSMAへの結合親和性[nM]の決定を示す図である。4つのカラムのそれぞれは、rhPSAM7.1(左側)からrhPSMA7.4(右側)についての個別の親和性測定を示す図である。図6aへの説明文に記載される条件。
図6b-2】図6b続き。
図6b-3】図6b続き。
図7図6aおよび図6b中で示される個別のIC50[nM]測定の描写を示す図である。rhPSMA7.1の値番号5は、図6aへの説明文において記載される条件が削除された。
図8】個別の内部移行測定[[125I]IB-KuEの%]の描写を示す図である。LNCaP細胞(37℃、DMEM F12+5%BSA、125000細胞/ウェル)において決定した、参照リガンド([125I]I-BA)KuE(c=0.2nM)の%として1時間で、内部移行された活性(c=0.5nM)。データは、非特異的結合(10μmol PMPA)に対して補正され、平均±SD(n=3)として表される。
図9】rhPSMA異性体のlogP’sの個別の測定の描写を示す図である。
図10】LNCaP担腫瘍SCIDマウスにおける1h p.iでの18F-標識rhPSMAトレーサーの体内分布(%ID/g)を示す図である。データは、平均±SD(rhPSMA7.1の場合n=4、7.2の場合n=5、7.3の場合n=4、7.4の場合n=5および7-racの場合n=3)として表される。
図11】LNCaP担腫瘍SCIDマウスにおける1h p.iでのPMPA(8mg/kg)と同時注入される18F-rhPSMAsの体内分布[%ID/g]を示す図である。データは、平均±SD(n=3)として表される。
図12】アミド結合の代謝開裂により生成されたあり得る種を示す図である。iL:開裂は、親油性の増加を伴う種を形成し;DF:脱フッ素化;nd:放射活性でないため、不検出。
図13】左:重複ピーク1(rhPSMA7.2)および2(rhPSMA7.3)のグラフ解析;右:Systat PeakFitソフトウェアによるピークプロフィールの逆重畳積分および積分);最上部:適合させた実験データ、最下部:畳み込みを解いた単一ピークを示す図である。
図14a】ピーク4(rhPSMA7.1)の(HPLCプログラムによる)従来の積分および(「PeakFit」による)逆重畳積分の再現性を評価するために、相対的変化(注射したラセミ混合物の変化%)の定量化を示す図である。両法は、このピークについての類似の性能を実証する。
図14b】ピーク3(rhPSMA7.4)の(HPLCプログラムによる)従来の積分および(「PeakFit」による)逆重畳積分の再現性を評価するために、相対的変化(注射したラセミ混合物の変化%)の定量化を示す図である。両法は、このピークについての類似の性能を実証する。
図15】注射溶液([18F][natGa]rhPSMA7-rac中のその割合に対する血液、肝臓、腎臓、腫瘍および尿中の各rhPSAM7.1~7.4異性体の変化百分率を示す図である。データは、平均値±SDとして表される(n=4;図16をやはり参照のこと)。
図16】注射溶液([18F][natGa]rhPSMA7-rac)中のその割合に対する血液、肝臓、腎臓、腫瘍および尿中の各サンプルおよび実験)の場合の各rhPSAM7.1~7.4異性体の変化百分率を示す図である。分析を、Systat PeakFitで行った。
図17】左:肝臓サンプル(30.07.2018、全cts:142cts)を含むTLCプレートのTLCスキャナープロフィールを示す図である。それらの不十分な統計および限定された正当性により、cts<200であるデータセットを除去した。右:肝臓サンプルを含むTLCプレートの写真画像(Phophoimage):移動トレーサーの長いテーリングを示す図である。
図18】左:品質管理サンプル(01.08.2018、全cts:384)を含むTLCプレートのTLCスキャナープロフィールを示す図である。右:尿、腎臓、肝臓、腫瘍、血液およびQKサンプルを有するTLCプレートの模範的な写真画像を示す図である。
図19】トレーサーの臨床応用前の核医学科における品質管理の一部としての[F-18]rhPSMA7-rac(30.07.2018)の放射性-TLCを示す図である。トレーサーのテーリングが、配合物緩衝液において(したがって、タンパク質の非存在下で)、さらに観察されることが留意される。
図20】尿サンプル(30.07.2018)の放射性-TLCによる遊離[F-18]フッ化物および「未変化」[F-18]rhPSMA7-racの定量化を示す図である。
図21-1】左:それぞれの[F-18]rhPSAM-7.xトレーサーで注射された正常マウス4匹から採取しプールした尿の放射性-HPLC分析を示す図である。右:1h(7.1.、7.2.)、0.5h(7.3.)および2h(7.4.)にわたって、それぞれの[F-18]rhPSAM-7.xトレーサーでスパイクした「冷」尿の放射性-HPLC分析を示す図である。HPLC-条件:溶媒A:H20+0.1%TFA;溶媒B:MeCN+0.1%TFA;勾配:アイソクラティック5% 0~3分、B25~35% 3~43分、B95~95% 43~48分;流量:1mL/分、カラム:Nucleosil 100-5 C18、125×4.6mm。
図21-2】図21続き。
図22】カートリッジ固定化およびTLCによる尿中の放射活性種の分離を示す図である。最上部:1.6分における小さい割合および約34.5分における未変化トレーサーを示す、マウスにおける[F-18]rhPSMA7.3の30分p.i.尿の放射性-HPLC分析を示す図である。最下部(左):[F-18]rhPSMA7.3の30分p.i.のマウスの尿を希釈し、STRATA-Xカートリッジ固定化にかけた。カートリッジを洗浄し、MeCN/水(60/40v/v+1%TFA)で溶出し;未変化トレーサーのみを検出した。最下部(右):カートリッジ固定化(非保留構成成分)から得られたブレークスルーおよびカートリッジからMeCN/水を最後に溶出した画分は、TLCにより分析した(最下部、右)。[F-18]rhPSMA7.3 96.1%および[F-18]フッ化物3.9%のみが、カートリッジの溶離液において見出され、逆の比は、カートリッジ([F-18]rhPSMA7.3 3.4%および[F-18]フッ化物96.6%のみ)のブレークスルーにおいて見出された。
図23】マウス[F-18]rhPSMA7.3の新鮮なおよび非放射性の尿に加え、その後、0.5μmol冷F-19-フッ化物を加え;2hインキュベートした図である。放射活性を、[F-18]フッ化物(1.6分におけるピーク)を表す非常に親水性の画分に完全に(98.5%)転換した。注:1.6分におけるピークを、引き続いて、QMAカートリッジにおいて固定化し、NaCl(1M)(=フッ化物)で溶出した。
図24】SUVmaxにより実証される通り、18F-rhPSMA-7(左)および18F-rhPSMA-7.3(右)の腫瘍病変における臨床体内分布および取込みを示す図である。データは、平均±SDとして表される。
図25】SUV平均により実証される通り、18F-rhPSMA-7(左)および18F-rhPSMA-7.3(右)の腫瘍病変における臨床体内分布および取込みを示す図である。データは、平均±SDとして表される。
図26】SUVmax対バックグラウンド比により実証される通り、18F-rhPSMA-7(左)および18F-rhPSMA-7.3(右)の腫瘍病変における臨床体内分布および取込みを示す図である。データは、平均±SDとして表される。
図27】SUV平均対バックグラウンド比により実証される通り、18F-rhPSMA-7(左)および18F-rhPSMA-7.3(右)の腫瘍病変における臨床体内分布および取込みを示す図である。データは、平均±SDとして表される。
図2818F-rhPSMA-7.3 PET-画像化の2つの臨床症例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
これらの実施例は、本発明を例示している。
【実施例1】
【0081】
実施例1:材料および方法
Fmoc-(9-フルオレニルメトキシカルボニル-)および他のすべての保護アミノ酸類似体を、Bachem社(Bubendorf、Switzerland)またはIris Biotech社(Marktredwitz、Germany)から購入した。トリチルクロリドポリスチレン(TCP)樹脂を、PepChem社(Tubingen、Germany)から得た。Chematech社(Dijon、France)によって、キレート剤DOTAGA-無水物、(R)-DOTA-GA(tBu)および(S)-DOTA-GA(tBu)が供給された。すべての必要な溶媒および他の有機試薬を、Alfa Aesar社(Karlsruhe、Germany)、Sigma-Aldrich社(Munich、Germany)またはVWR社(Darmstadt、Germany)から購入した。ペプチドの固相合成を、Intelli-Mixerシリンジシェーカー(Neolab、Heidelberg、Germany)を用いて、手動操作により行った。分析用および分取逆相高圧クロマトグラフィー(RP-HPLC)を、SPD-20A UV/Vis検出器(220nm、254nm)をそれぞれ装備した、Shimadzu勾配系(Shimadzu Deutschland GmbH、Neufahrn、Germany)を用いて行った。Nucleosil100 C18(125×4.6mm、5μm粒度)カラム(CS GmbH社、Langerwehe、Germany)を、流速1mL/分で、分析用測定のために用いた。ある特定の勾配および対応する保持時間tを、本文中で引用する。分取HPLC精製を、Multospher 100 RP 18(250×10mm、粒度5μm)カラム(CS GmbH社、Langerwehe、Germany)を用いて、一定流速5mL/分で行った。分析用および分取放射性RP-HPLCを、Nucleosil 100 C18(5μm、125×4.0mm)カラム(CS GmbH社、Langerwehe、Germany)を用いて行った。すべてのHPLC操作のための溶離液は、水(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)であり、いずれも0.1%トリフルオロ酢酸を含有した。物質の特徴付けのためのエレクトロスプレーイオン化-質量スペクトルを、expression CMS質量分析計(Advion Ltd.、Harlow、UK)で取得した。NMRスペクトルを、Bruker AVHD-300またはAVHD-400分光計において300Kで記録した。pH値を、SevenEasy pH-メーター(Mettler Toledo社、Giessen、Germany)で測定した。
【0082】
合成プロトコール
1)Fmoc-戦略後の固相ペプチド合成
TCP-樹脂負荷(GP1)
トリチルクロリドポリスチレン(TCP)樹脂のFmoc-によって保護されたアミノ酸(AA)による負荷を、TCP-樹脂(1.95mmol/g)およびFmoc-AA-OH(1.5当量)の無水DCM溶液をDIPEA(4.5当量)で室温で2h撹拌することにより行った。15分間メタノール(2mL/g樹脂)を加えることにより、残りのトリチルクロリドに、帽子をかぶせた。引き続いて、樹脂をろ過し、DCM(2×5mL/g樹脂)、DMF(2×5mL/g樹脂)、メタノール(5mL/g樹脂)で洗浄し、真空中で乾燥した。Fmoc-AA-OHの最終負荷lを、次の等式により決定した。
【0083】
【数1】
【0084】
樹脂アミド結合形成後(GP2)
基本単位の樹脂結合ペプチドへのコンジュゲーションのために、TBTUおよびHOBTの混合物を、DMF(10mL/g樹脂)中の塩基として5分間DIPEAまたは2,4,6-トリメチルピリジンとの前活性化のために用いる。各コンジュゲーションステップのための正確な化学量論および反応時間を、合成プロトコールにおいて示す。反応後、樹脂を、DMF(6×5mL/g樹脂)で洗浄した。
【0085】
樹脂Fmoc-脱保護後(GP3)
樹脂-結合Fmoc-ペプチドを、DMF(v/v、8mL/g樹脂)中の20%ピペリジンで5分間処理し、引き続いて、15分間処理した。後で、樹脂を、DMF(8×5mL/g樹脂)で十分に洗浄した。
【0086】
樹脂Dde-脱保護後(GP4)
Dde-によって保護されたペプチド(1.0当量)を、2%ヒドラジン一水和物のDMF(v/v、5mL/g樹脂)溶液に溶解し、20分間振り混ぜた(GP4a)。本Fmoc-基の場合、Dde-脱保護を、イミダゾール(0.92g/g樹脂)、塩酸ヒドロキシルアミン(1.26g/g樹脂(reisn))のNMP(5.0mL)およびDMF(1.0mL)溶液を、室温で3h加えることにより行った(GP4b)。脱保護後、樹脂を、DMF(8×5mL/g樹脂)で洗浄した。
【0087】
酸に不安定な保護基の同時の脱保護による樹脂からのペプチド開裂(GP5)
十分に保護された樹脂-結合ペプチドを、TFA/TIPS/水(v/v/v;95/2.5/2.5)の混合物に溶解し、30分間振り混ぜた。溶液を、ろ過し、樹脂を、同じやり方で、さらに30分間処理した。両方のろ液を合わせ、さらに5h撹拌し、窒素の気流下で濃縮した。tert-ブタノールおよび水の混合物に残基を溶解し、その後、凍結乾燥した後、粗ペプチドを得た。
【0088】
natGa-複合体形成(GP6)
natGa-複合体形成のために、ペプチド(1.0当量)を、HO中のtBuOHの3:1(v/v)混合物に溶解し、Ga(NOの水溶液(3.5当量)を加えた。75℃で30分間得られた混合物を加熱した後、ペプチドRP-HPLCにより精製した。
【0089】
2)PSMA結合モチーフの合成
Glu-尿素-Glu((tBuO)EuE(OtBu)2)
【0090】
【化13】
【0091】
tBu-によって保護されたGlu-尿素-Glu結合モチーフ(EuE)を、tBu-によって保護されたGlu-尿素-Lys(EuK)についてすでに発表された手順(スキーム1)に従って、合成した。
【0092】
ジ-tert-ブチル(1H-イミダゾール-1-カルボニル)-L-グルタメート(i)
l-ジ-tert-ブチル-L-グルタメートHCl2.0g(7.71mmol、1.0当量)を含有するDCMの溶液を、氷上で30分間冷却し、後で、TEA2.69mL(19.28mmol、2.5当量)およびDMAP3.3mg(0.3mmol、0.04当量)で処理した。5分間さらに撹拌した後、DCMに溶解した1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)1.38g(8.84mmol、1.1当量)を、30分にわたってゆっくりと加えた。反応混合物を、さらに終夜撹拌し、RTまで加温することを可能にした。反応を、水(2×)およびブライン(2×)の洗浄ステップと同時に飽和NaHCO8mLを用いて停止させ、NaSOで脱水した。残りの溶媒を、真空中で除去し、粗生成物(S)-ジ-tert-ブチル2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタンジオエート(i)を、さらに精製せずに用いた。
【0093】
5-ベンジル1-(tert-ブチル)(((S)-1,5-ジ-tert-ブトキシ-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)カルバモイル)-L-グルタメート(ii)
粗生成物(S)-ジ-tert-ブチル-2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタンジオエート(i)2.72g(7.71mmol、1.0当量)を、1,2-ジクロロエタン(DCE)に溶解し、氷上で30分間冷却した。この溶液に、TEA2.15mL(15.42mmol、2.0当量)およびH-L-Glu(OBzl)-OtBu・HCl2.54g(7.71mmol、1.0当量)を加え、溶液を、40℃で終夜撹拌した。残りの溶媒を、蒸発させ、粗生成物を、酢酸エチル/ヘキサン/TEA(500:500:0.8;v/v/v)を含有する溶離液混合物を含むシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製した。溶媒の除去後、5-ベンジル-1-(tert-ブチル)-(((S)-1,5-ジ-tert-ブトキシ-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)カルバモイル)-L-グルタメート(ii)を、無色の油状物として得た。
【0094】
(tBuO)EuE(OtBu)(iii)
(tBuO)EuE(OtBu)を合成するために、5-ベンジル-1-(tert-ブチル)-(((S)-1,5-ジ-tert-ブトキシ-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)カルバモイル)-L-グルタメート(ii)3.17g(5.47mmol、1.0当量)を、EtOH75mLに溶解し、活性炭担持パラジウム(10%)0.34g(0.57mmol、0.1当量)を、この溶液に与えた。反応混合物を含有するフラスコを、Hで最初にパージし、溶液を、軽いH-圧力下で(バルーン)室温で終夜撹拌した。粗生成物を、セライトで精製し、溶媒を、真空中で蒸発させた。生成物(iii)を、吸湿性固体(84%)として得た。HPLC(15分におけるB10%~90%):t=11.3分。算出されたモノアイソトピック質量(C2349):488.3;次が見出された。m/z=489.4[M+H]、516.4[M+Na]
【0095】
【化14】
【0096】
3)フッ化ケイ素アクセプターの合成
4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(SiFA-BA)
【0097】
【化15】
【0098】
SiFA-BAを、すでに発表された手順(スキーム2)に従って合成した。すべての反応を、真空ガスマニフォールドを用いて、アルゴン下で、乾燥反応槽中で行った。
((4-ブロモベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(i)
4-ブロモベンジルアルコール(4.68g、25.0mmol、1.0当量)の無水DMF(70mL)撹拌溶液に、イミダゾール(2.04g、30.0mmol、1.2当量)およびTBDMSCl(4.52g、30.0mmol、1.2当量)を加え、得られた混合物を、室温で16h撹拌した。次いで、混合物を、氷冷HO(250mL)に注ぎ、EtO(5×50mL)で抽出した。合わせた有機画分を、飽和NaHCO水溶液(2×100mL)およびブライン(100mL)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これを、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、5%EtOAc/ガソリン)により精製して、無色の油状物(7.18g、95%)としてiを得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 0.10 (6H, s, SiMe2t-Bu), 0.95 (9H, s, SiMe2tBu), 4.69 (2H, s, CH2OSi), 7.21 (2H, d), 7.46 (2H, d).HPLC(15分でB50~100%):t=15分。
【0099】
ジ-tert-ブチル{4-[(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)メチル]フェニル}フルオロシラン(ii)
磁気撹拌下で-78℃で、tBuLiのペンタン(7.29mL、1.7mol/L、12.4mmol 2.4当量)溶液を、((4-ブロモベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(i)(1.56g、5.18mmol、1.0当量)の乾燥THF(15mL)溶液に加えた。反応混合物を、-78℃で30分間撹拌した後、得られた懸濁液を、ジ-tert-ブチルジフルオロシラン(1.12g、6.23mmol、1.2当量)の乾燥THF(10mL)冷却(-78℃)溶液に、30分間にわたって滴加した。反応混合物を放置して、12hにわたって室温まで加温し、次いで、飽和NaCl水溶液(100mL)で加水分解した。有機層を分離し、水層を、ジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した。ろ液を、真空中で濃縮して、帯黄色の油状物(1.88g、95%)として、iiを生成した。これを、さらに精製せずに、その後の反応のために用いた。NMRスペクトルを、文献[2]中で報告されたデータに従った。HPLC(20分でB50~100%):t=19分。
【0100】
4-(ジ-tert-ブチルフルオロシラニル)ベンジルアルコール(iii)
濃HCl水溶液(0.5mL)の触媒量を、ii(1.88g、4.92mmol、1.0当量)のメタノール(50mL)懸濁液に加えた。反応混合物を、室温で18h撹拌し、次いで、溶媒および揮発物を、減圧下で除去した。残基を、ジエチルエーテル(40mL)に再溶解し、溶液を、NaHCO水溶液で洗浄した。水層を、ジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した。ろ液を、真空中で濃縮して、凝固した帯黄色の油状物(1.29g、98%)としてiiiを生成した。生成物を、さらに精製せずに用いた。NMRスペクトルを、文献[2]中で報告されたデータに従った。HPLC(15分でB50~100%):t=8.2分。
【0101】
4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアルデヒド(iv)
アルコールiii(1.37g、5.10mmol、1.0当量)の乾燥ジクロロメタン(20mL)溶液を、クロロクロム酸ピリジニウム(2.75g、12.8mmol、2.5当量)の乾燥ジクロロメタン(60mL)撹拌氷冷懸濁液に滴加した。反応混合物が、0℃で30分間および室温で2.5h撹拌した後、無水ジエチルエーテル(40mL)を加え、上澄み溶液を、黒色のガム様物質からデカントした。不溶性物質を、ジエチルエーテルで十分に洗浄し、合わせた有機相を、ろ過のために、シリカゲルの短いパッド(粗生成物1g当たり10cm)に通した。溶媒を、真空中で除去して、帯黄色の油状物(1.31g、96%)として、アルデヒドivを生成した。NMRスペクトルを、文献[2]中で報告されたデータに従った。HPLC(15分でB50~100%):t=10.5分。
【0102】
4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(v)
室温で、1M KMnO水溶液(30mL)を、iv(1.31g、4.92mmol、1.0当量)、tert-ブタノール(30mL)、ジクロロメタン(3.3mL)、および1.25M NaHPO・HO緩衝液(20mL)の混合物に、pH4.0~4.5で加えた。混合物を、25分間撹拌した後、これを、5℃まで冷却し、その上で、過剰なKMnO(0.78g、4.92mmol、1.0当量)を加えた。次いで、飽和NaSO水溶液(50mL)を加えることにより、反応をクエンチした。2M HCl水溶液を加えた後、MnOのすべてを溶解した。得られた溶液を、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、MgSOで脱水し、ろ過し、減圧下で濃縮して、白色固形物を生成し、これを、EtO/n-ヘキサン(1:3、12h)から再結晶により精製して、v(0.84g、60%)を得た。NMRスペクトルを、文献[2]中で報告されたデータに従った。HPLC(15分でB50~100%):t=8.5分。
【0103】
【化16】
【0104】
4)rhPSMA-7.1~7.4の合成
rhPSMA-7の4種の異なる異性体の調製のための第1の合成ステップは、同一であり、一緒に行い、上記に記載した標準的なFmoc-SPPSプロトコールを適用し、樹脂結合Fmoc-D-Orn(Dde)-OHから開始する。DMF中の20%ピペリジン(GP3)を含むFmoc基の開裂後、(tBuO)EuE(OtBu)(2.0当量)を、4.5h、DMF中でHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)およびDIPEA(6.0当量)とコンジュゲートした。DMF中の2%ヒドラジンの混合物を含むDde-基(GP4a)の開裂後、無水コハク酸(7.0当量)およびDIPEA(7.0当量)のDMF溶液を加え、2.5h反応させた。Fmoc-D-Lys(OtBu)・HCl(2.0当量)のコンジュゲーションを、DMF中のHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)およびDIPEA(6.0当量)の混合物を樹脂に加えることにより達成した。5分間前活性化させた後、DMFに溶解したFmoc-D-Lys(OtBu)・HCl(2.0当量)を加え、2.5h反応させた(GP2)。Fmoc-基のその後の開裂を、DMF中の20%ピペリジンの混合物を加えることにより行った(GP3)。最後に、樹脂を、rhPSMA-7.1~7.4を合成するために分割した(スキーム3)。
【0105】
rhPSMA-7.1(D-Dap-(R)-DOTA-GA):
【0106】
【化17】
【0107】
Fmoc-D-Dap(Dde)-OH(2.0当量)を、DMF中のHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)の混合物中で前活性化させ、2.5h樹脂-結合ペプチドに加えた。次の直交性Dde-脱保護を、イミダゾールを用いて行い、塩酸ヒドロキシルアミンを、3h、NMPおよびDMFの混合物に溶解した。SiFA-BA(1.5当量)を、DMF中の活性化試薬として、2h、HOAt(1.5当量)、TBTU(1.5当量)およびDIPEA(4.5当量)を有する側鎖の遊離アミンと反応させた。ピペリジン(GP3)によるFmoc-脱保護の後、(R)-DOTA-GA(tBu)(2.0当量)を、DMF中で、2.5h、HOAT(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)とコンジュゲートした。酸に不安定な保護基の同時の脱保護による樹脂からの開裂を、GP5に従って、TFAで行った。ペプチドのnatGa-複合体形成を、GP6に記載される通り、行った。
【0108】
rhPSMA-7.2(L-Dap-(R)-DOTA-GA):
【0109】
【化18】
【0110】
Fmoc-L-Dap(Dde)-OH(2.0当量)を、DMF中でHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)の混合物で、2.5h前活性化させた。直交性Dde-脱保護後、SiFA-BAおよびFmoc-開裂のコンジュゲーションを、rhPSMA-7.1について記載される通り行った。(R)-DOTA-GA(tBu)(2.0当量)を、DMF中で、2.5h、HOAT(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)とコンジュゲートした。酸に不安定な保護基の同時の脱保護による樹脂からの開裂を、GP5に従って、TFAで行った。ペプチドのnatGa-複合体形成を、GP6に記載される通り、行った。
【0111】
rhPSMA-7.3(D-Dap-(S)-DOTA-GA):
【0112】
【化19】
【0113】
Fmoc-D-Dap(Dde)-OH(2.0当量)を、DMF中でHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)の混合物で、2.5h前活性化させた。直交性Dde-脱保護後、SiFA-BAおよびFmoc-開裂のコンジュゲーションを、rhPSMA-7.1について記載される通り行った。(S)-DOTA-GA(tBu)(2.0当量)を、DMF中で、2.5h、HOAT(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)とコンジュゲートした。酸に不安定な保護基の同時の脱保護による樹脂からの開裂を、GP5に従って、TFAで行った。ペプチドのnatGa-複合体形成を、GP6に記載される通り、行った。
【0114】
rhPSMA-7.4(L-Dap-(S)-DOTA-GA):
【0115】
【化20】
【0116】
Fmoc-L-Dap(Dde)-OH(2.0当量)を、DMF中でHOAt(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)の混合物で、2.5h前活性化させた。直交性Dde-脱保護後、SiFA-BAおよびFmoc-開裂のコンジュゲーションを、rhPSMA-7.1について記載される通り行った。(S)-DOTA-GA(tBu)(2.0当量)を、DMF中で、2.5h、HOAT(2.0当量)、TBTU(2.0当量)および2,4,6-トリメチルピリジン(6.7当量)とコンジュゲートした。酸に不安定な保護基の同時の脱保護による樹脂からの開裂を、GP5に従って、TFAで行った。ペプチドのnatGa-複合体形成を、GP6に記載される通り、行った。
【0117】
rhPSMA-7.1:
HPLC(15分でB10~70%):t=10.5分。
HPLC(40分でB25~35%):t=31.4分。
【0118】
rhPSMA-7.2:
HPLC(15分でB10~70%):t=10.4分。
HPLC(40分でB25~35%):t=27.9分。
【0119】
rhPSMA-7.3:
HPLC(15分でB10~70%):t=10.4分。
HPLC(40分でB25~35%):t=28.1分。
【0120】
rhPSMA-7.4:
HPLC(15分でB10~70%):t=10.5分。
HPLC(40分でB25~35%):t=29.1分。
【0121】
rhPSMA-7.1~7.4:
算出されたモノアイソトピック質量(C63H96FGaN12O25Si):1536.6 次が見出された:m/z=1539.4[M+H]+、770.3[M+2H]2
【0122】
【化21】
【0123】
5)18F-標識化
18F-標識化の場合、すでに発表された手順を適用し、これを、わずかに修正した。簡潔に言えば、水性18を、SAXカートリッジ(Sep-Pak Accell Plus QMA Carbonate light)に通し、これを、水10mLで前もって調整した。空気10mLで乾燥した後、無水アセトニトリル10mL、その後、空気20mLで、カートリッジをすすぐことにより、水を除去した。18Fを、無水アセトニトリル500μLに溶解した[K⊂2.2.2]OH100μmolで溶出した。標識化前に、無水アセトニトリル(1M、30μL)中のシュウ酸30μmolを加えた。この混合物を、全体としてまたはPSMA-SiFA(無水DMSO中の1mM)10~25nmolのフッ素付加用のアリコートとして用いた。得られた反応混合物を、室温で5分間インキュベートした。トレーサーの精製のために、EtOH10mL、その後、HO10mLで前もって調整した、Sep-Pak C18 light cartridgeを用いた。標識化混合物を、PBS(pH3)9mLで希釈し、カートリッジを通し、その後、HO10mLで希釈した。ペプチドを、水中のEtOHの4:1混合物(v/v)500μLで溶出した。標識された化合物の放射化学純度を、放射性RP-HPLCおよび放射性-TLC(シリカゲル60 RP-18 F254s、移動相:2M水性NaOAc10%およびTFA1%を補充した、HO中のMeCNの3:2混合物(v/v))により決定した。
【0124】
6)125I-標識化
in vitro試験([125I]I-BA)KuE用の参照リガンドを、すでに発表された手順に従って調製した。簡潔に言えば、スタンニル化前駆物質(SnBu-BA)(OtBu)KuE(OtBu)0.1mgを、過酢酸20μL、[125I]NaI(74TBq/mmol、3.1GBq/mL、40mM NaOH、Hartmann Analytic、Braunschweig、Germany)5.0μL(21MBq)、MeCN20μLおよび酢酸10μLを含有する溶液に溶解した。反応溶液を、RTで10分間インキュベートし、カートリッジに負荷し、水10mLですすいだ(MeOH10mLおよび水10mLで前もって調整した、C18 Sep Pak Plusカートリッジ)。EtOH/MeCNの1:1混合(v/v)2.0mLで溶出後、放射活性溶液を、穏やかな窒素気流下で蒸発乾固させ、TFA200μLで30分間処理し、続いて、その後、TFAを蒸発させた。([125I]I-BA)KuEの粗生成物を、RP-HPLC(20分でB20%~40%)により精製した:t=13.0分。
【0125】
In vitro実験
1)IC50の決定
PSMA-陽性LNCaP細胞を、10%ウシ胎仔血清を補充した、ダルベッコ(Dublecco)変法イーグル培地/Glutamax-Iを含むNutrition Mixture F-12(1:1)(Invitrigon社)中で成長させ、加湿されたCO5%雰囲気下で、37℃で維持した。PSMA親和性(IC50)の決定のために、細胞を、実験の24±2時間前に回収し、24穴プレート(1mL/ウェル中の1.5×10細胞)に播種した。培地の除去後、細胞を、HBSS(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を加えた、ハンクスの平衡塩類溶液、Biochrom社、Berlin、Germany)500μLで一度処理し、HBSS200μL(1%BSA)で平衡化するために、氷上で15分放置した。次に、濃度(HBSS中の10-10~10-4Mを増加させる上での、HBSS(1%BSA、対照)またはそれぞれのリガンドを含有する、溶液のウェル当たり25μLを加え、それに続いて、HBSS(1%BSA)中の([125I]I-BA)KuE(2.0nM)25μLを加えた。すべての実験を、各濃度のために少なくとも3回行った。氷上で60分インキュベートした後、培地を除去し、HBSS200μLで連続的にすすぐことにより、実験を終了した。両ステップの培地を、一画分中で合わせ、遊離放射性リガンドの量を表す。後で、細胞を、1M NaOH250μLで溶解し、次の洗浄ステップのHBSS200μLで合体させた。結合および遊離放射性リガンドの定量化を、γ-カウンターで達成した。
【0126】
2)内部移行
内部移行試験のために、LNCaP細胞を、実験の24±2時間前に回収し、24穴プレート(1mL/ウェル中の1.25×10細胞)に播種した。培地の除去の後に、細胞を、DMEM-F12(5%BSA)500μLで一度洗浄し、DMEM-F12(5%BSA)200μL中で、37℃で少なくとも15分間平衡化させた。各ウェルを、遮断のために、DMEM-F12(5%BSA)または100μM PMPA溶液のいずれか25μLで処理した。次に、68Ga/18F-標識化PSMA阻害剤(5.0nM)25μLを加え、細胞を、37℃で60分間インキュベートした。3分間氷上に24穴プレートを置くことにより実験を終了し、培地を連続的に除去した。各ウェルを、HBSS250μLですすぎ、これらの第1の2つのステップから得られた画分を組み合わせ、遊離放射性リガンドの量を表した。表面結合活性の除去を、氷冷PMPA(PBS中の10μM)溶液250μLで5分間細胞をインキュベートすることにより達成し、再び、氷冷PBS250μLでさらにすすいだ。内部移行された活性を、1M NaOH250μLでおよび1.0M NaOH250μLによるその後の洗浄ステップの画分と組み合わせて、細胞をインキュベートすることにより決定した。各実験(対照および遮断)を、3回行った。遊離、表面結合および内部移行された活性を、γ-カウンターで定量化した。すべての内部移行試験を、([125I]I-BA)KuE(c=0.2nM)を用いて参照試験により達成し、これらを類似的に行った。データを、非特異的内部移行を補正し、放射ヨウ素標識された参照化合物について観察された特異的-内部移行に正規化した。
【0127】
3)オクタノール-水分配係数
標識されたトレーサーおよそ1MBqを、エッペンドルフ管中でリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)およびn-オクタノールの(体積による)1:1混合物1mLに溶解した。懸濁液を室温で3分間激しく混合した後、バイアルを、15000gで3分間遠心し(Biofuge 15、Heraus Sepatech、Osterode、Germany)、2層のアリコート100μLを、γカウンターで測定した。実験を、少なくとも6回繰り返した。
【0128】
4)HSA結合
HSA結合を決定するため、Chiralpak HSAカラム(50×3mm、5μm、H13H-2433)を、一定流速0.5mL/分で用いた。移動相(A:NHOAc、水中の50mM、pH7およびB:イソプロパノール)を、各実験のために新たに調製し、1日用いたにすぎなかった。カラムを、室温で維持し、各実行を、シグナルの検出後に停止して取得時間を減らした。すべての物質を、50% 2-プロパノールおよび50% 50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.9)に、0.5mg/mlの濃度で溶解した。ペプチドに関して幅広いアルブミン結合が想定されたため、選ばれた参照物質は、HSA結合13%~99%までの範囲を示す。9つのすべての参照物質を、連続的に注射して、OriginPro 2016Gで非線形回帰を確立した。
【0129】
【表1】
【0130】
In vivo実験
すべての動物実験を、ドイツにおける一般動物福祉規制(general animal welfare regulations)および動物の管理および使用のための施設ガイドライン(the institutional guidelines for the care and use of animals)に従って行った。腫瘍異種移植を確立するために、LNCaP細胞(10細胞/200μL)を、ダルベッコ変法イーグル培地/Glutamax-I(1:1)およびMatrigel(BD Biosciences社、Germany)を含む、Nutrition Mixture F-12の1:1混合物(v/v)に懸濁し、6~8週齢のCB17-SCIDマウス(Charles River社、Sulzfeld、Germany)の右肩に皮下接種した。腫瘍が、直径5~8mmまで成長した場合(接種の3~4週後)に、マウスを利用した。
【0131】
1)体内分布
18F-標識化PSMA阻害剤およそ1~2MBq(<0.2nmol)を、雄のLNCaP担腫瘍CB-17SCIDマウスの尾静脈に注射し、注射の1h後屠殺した(n=4~5)。選択された臓器を除去し、秤量し、γ-カウンターにおいて測定した。
【0132】
2)代謝試験
a)分析用装置
分析用逆相高圧クロマトグラフィー(RP-HPLC)を、SPD-20A UV/Vis検出器(220nm、254nm)を装備した、Shimadzu勾配系(Shimadzu Deutschland GmbH、Neufahrn、Germany)を用いて行った。Multospher 100 RP18(125×4.6mm、5μm粒度)カラム(CS GmbH社、Langerwehe、Germany)を、流速1mL/分で分析用測定用に用いた。すべてのHPLC操作のための溶離液は、水(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)であり、いずれも0.1%トリフルオロ酢酸を含有した。放射活性を、HERM LB 500検出器(Berthold Technologies GmbH、Bad Wildbad、Germany)へのUV-光度計の出口の接続によって検出した。すべてのHPLC操作についての勾配は、次の通りであった。アイソクラティックB5% 0~3分、B25~35% 3~43分、B95~95% 43~48分。
【0133】
放射性-薄層クロマトグラフィーの場合、シリカゲル60 RP-18 F254によってコーティングされたアルミニウム薄板を、2M水性NaOAc10%およびTFA1%を補充した、HO中のMeCNの3:2混合物(v/v)からなる移動相と共に用いた。分析を、Scan-RAM放射性-TLC検出器(LabLogic Systems Ltd.、Sheffield、United Kingdom)またはCR 35 BIOホスフォイメージャー(Duerr Medical GmbH、Bietigheim-Bissingen、Germany)を用いて行った。
【0134】
b)rhPSMA-7.1~7.4の代謝的安定性の決定
in vivo μ代謝試験のために、それぞれの18F-標識化リガンド(rhPSMA-7.1~7.4)8~12MBq(<0.6nmol)を、健常な雌CB17-SCIDマウス(n=4)の尾静脈に注射した。マウスを、麻酔下で30分間放置し、尿を、膀胱カテーテルを用いて採取した。尿サンプルを、プールし、9000rpmで5分間遠心して、懸濁物を除去した。上澄みを、前述の条件を有する、放射性-HPLC分析のために直接用いた。19Fのペプチド-結合18Fとの同位体交換が、尿中で起きていることを実証するために、各化合物を、健常な雌CB-17-SCIDマウスの尿サンプルでいくつかの時間間隔でインキュベートし、その場合、放射性-HPLCおよび/または放射性-TLCにより分析した。さらに、本実験を、過剰なNa19F(0.5μmol)を加えて行い、18F-標識化rhPSMA-7.3で2hインキュベートした。
【0135】
c)rhPSMA-7.1~7.4のin vivo分布の決定
各異性体(rhPSMA-7.1~7.4)の相対的取込みを定量化するために、雄の担腫瘍CB-17-SCIDマウスに、rhPSMA-7のラセミ混合物(180~280MBq、S=247~349GBq/μmol、完全に自動化された手順でKlinikum rechts der Isar(ミュンヘン工科大学病院)で生成された)を注射した。動物を、麻酔下で30分間放置し、屠殺した。尿、血液、肝臓、腎臓および腫瘍を採取し、以下に記載の手順に加工した。尿サンプルを、9000rpmで5分間遠心して、清澄な溶液を生成し、直接、放射性-HPLC分析にかけた。血液を、HOを用いて1mLまで希釈し、13000gで5分間2回遠心した。上澄みを収集し、Strata Xカートリッジ(33μmポリマー逆相500mg、MeOH5mL、その後、HO5mLで前もって調整した)に負荷した。HO5mLで洗浄した後、カートリッジを、1%TFAを補充したHO中のMeCNの6:4混合物(v/v)で溶出した。溶離液を、水で希釈し、放射性-HPLCにより分析した。腫瘍、腎臓および肝臓を、ポッターエルベージェム組織グラインダー(Kontes Glass Co、Vineland、USA)またはMM-400ボールミル(Retsch GmbH、Haan、Germany)を用いて、ホモジナイズした。
【0136】
I)ポッターエルベージェム組織グラインダー
腫瘍および腎臓を、組織ホモジナイザーにおいて、抽出緩衝液1mL(1M HEPES(pH7.4)850μL、20mM PMPA100μLおよび1M NaCl100μL)で、30分間別々にホモジナイズした。得られたホモジネートを収集し、13000gで5分間遠心した。引き続いて、上澄みを収集し、再度遠心し(13000g、5分)、Strata Xカートリッジ(33μmポリマー逆相500mg、MeOH5mL、その後、HO5mLで前もって調整した)に負荷した。HO5mLで洗浄した後、カートリッジを、1%TFAを補充したHO中のMeCNの6:4混合物(v/v)で溶出した。各臓器の溶離液を、水で希釈し、放射性-HPLCにより分析した。
【0137】
II)MM-400ボールミル
臓器(腫瘍、腎臓、肝臓)を、2mL管で、3個の粉砕ボール(直径3mm)および抽出緩衝液1mL(1M HEPES(pH7.4)850μL、20mM PMPA100μLおよび1M NaCl100μL)と共に、30Hzで10分間別々にホモジナイズした。ホモジネートを、13000gで5分間遠心し、上澄みを収集した。引き続いて、ペレットを、抽出緩衝液1mLに懸濁し、再度、ボールミルで30Hzで10分間ホモジナイズした。遠心(13000g、5分)後、両方の上澄みを合わせ、Strata Xカートリッジ(33μmポリマー逆相500mg、MeOH5mL、その後、HO5mLで前もって調整した)に負荷した。HO5mLで洗浄した後、カートリッジを、1%TFAを補充したHO中のMeCNの6:4混合物(v/v)で溶出した。各臓器の溶離液を、水で希釈し、放射性-HPLCにより分析した。カートリッジ負荷中のブレークスルーが、非結合型F-18の結果でないことを実証するために、上澄みを、やはり、遠心後放射性-TLCにより検査した。
【0138】
最後に、個別の異性体の比を、抽出されたサンプルのHPLCプロフィールから決定し、rhPSMA-7のラセミ混合物の品質管理から得られた異性体の比と比較した。崩壊補正された抽出-およびカートリッジ負荷-効率、ならびに検査されたサンプルの全抽出活性を、表2に示す。カートリッジ溶出-効率は、すべての実験の場合>99%であった。
【実施例2】
【0139】
実施例2:結果
クロマトグラフィーピーク指定
クロマトグラフィーピーク指定を、
a)rhPSMA7-racミクチャー(micture)の
b)各エナンチオピュアrhPSMA7化合物と同時注入した(coninjected)rhPSMA7-racミクチャーとのUVプロフィールの比較により行った。
【0140】
次の名称を、異なる異性体:
rhPSMA-rac:[19F][natGa]D/L-Dap-R/S-DOTAGA-rhPSMA7
rhPSMA-7-1:[19F][natGa]D-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA7
rhPSMA-7-2:[19F][natGa]L-Dap-R-DOTAGA-rhPSMA7
rhPSMA-7-3:[19F][natGa]D-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA7
rhPSMA-7-4:[19F][natGa]L-Dap-S-DOTAGA-rhPSMA7のために用いる。
【0141】
【表2】
【0142】
結合親和性
値の第1のセット(rhPSMA-7.1およびrhPSMA-7.2;図6a)を、それぞれのリガンドのnatGa-複合体形成後に直接得られた溶液の希釈シリーズのために用いることにより決定した。第2のデータセット(図6b)において、複合型リガンドを、非複合型natGa-塩を分離するために、RP-HPLCにより精製した。観察される有意差がまったくなかったため、両シリーズを合併し、平均値(±SD)の算出のために用いた。
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
内部移行試験
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
親油性(オクタノール-水分配係数)
logP値の決定を、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)およびn-オクタノール(=logPoct/PBS)において行った。
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
ヒト血漿タンパク質へのPSMA阻害剤の結合
【0152】
【表9】
【0153】
1h piにおける[18F][natGa]rhPSMA7.1~7.4の体内分布
【0154】
【表10】
【0155】
競合による1h piにおける[18F][natGa]rhPSMA7.1-7.4の体内分布
【0156】
【表11】
【0157】
18F]rhPSMA7-racの適用後の血液、腎臓、肝臓、尿および腫瘍における、各rhPSMA7.x異性体の量の相対的変化の定量化。
18F]rhPSMA7-racのLNCaP担腫瘍マウスへの注射の30分後に、血液、肝臓、腎臓、尿および腫瘍において、各rhPSMA7異性体の相対的変化を定量化することを目的として、2種の異なる均質化方法(ポッターおよびボールミル)を、腎臓、肝臓および腫瘍組織からトレーサーを抽出するために用いた(材料および方法を参照のこと)。
【0158】
表12は、両方の均質化方法についての観察された効率および(タンパク質画分からトレーサーを分離するための)その後の固相抽出手順の有効性をまとめて示している。
【0159】
【表12】
【0160】
ポッターを用いたサンプルから得られた活性の抽出は、かなり効率的であり、ボールミルの使用は、期待外れであった。それにもかかわらず、ボールミルが>60%の抽出効率でも、達成された。
【0161】
rhPSMA7のアミド結合の代謝開裂により形成され得る、あり得る種を考慮すると、b)F18-フッ化物の親油性を有意に増加するa)種のみは、ありそうに思える。したがって、原理的に、図12に示される「iL」種は、組織サンプル(水抽出)から抽出されず、したがって、最終分析に現れないことが起こり得ると思われる。しかしながら、かかる種が、肝臓および腸においてin vivoで現れるはずである(親油性化合物の肝胆道排出)または、血漿タンパク質に結合されるべきである(血液について高活性レベルをもたらし、一方、優れた抽出効率を示した)ということを留意すべきである。
【0162】
ラセミ混合物中の各異性体の定量化の場合および特に、不十分に分離した第1および第2のピーク(rhPSMA 7.2およびrhPSMA7.3)の場合、図面での近似を、最初に用いた。このアプローチは、a)各異性体が、同一のピーク形状を有するHPLCカラムから溶出され、b)異なるピーク高さが、第1の近似として用いられて、直鎖因子によって、小さく分離したピーク(すなわち、rhPSMA7.2およびrhPSMA7.3)を算出することができるという仮定に基づいている。
【0163】
これらの仮定に基づいて、第1の分析を、[18F][natGa]rhPSMA7-racと同時注入した、LNCaP担腫瘍マウス1匹を用いることにより行った。追加の3つの実験によって、これらの実験を検証することおよびより妥当な手順によりグラフ分析を向上することを目的として、Systatソフトウェアパッケージ「PeakFit」を用いた。PeakFitによって、フーリエ逆重畳積分/フィルタリングアルゴリズム(https://systatsoftware.com/products/PeakFit/)によるガウス応答関数を用いる逆重畳積分手順によるHPLC溶出プロフィールの自動化された非線形分離、分析および定量化が可能になる。
【0164】
第1の実験のグラフ解析を比較することによって、グラフ解析が、第2のピーク(rhPSMA7.3)を過大評価し、第1のピークは、過小評価されたことが、明らかになった。したがって、すべてのデータセットを、再分析し、PeakFitによって定量化した。
【0165】
担腫瘍マウスにおける30分p.i.の4つの非依存的実験のHPLC-分析
1.放射性-HPLCによるピーク3および4(rhPSMA7.4およびrhPSMA7.1)の評価
逆重畳積分技術によって、(ベースラインが分かれていないが)良い分離を有する、最終の2つのピーク(rhPSMA7.4および7.1)について類似のデータが示されるか否かを最初に検査した。
【0166】
2.放射性-HPLCによるすべてのピーク(rhPSMA7.1、7.2、7.3および7.4)の評価
図14aおよび14bに、注射溶液([18F][natGa]rhPSMA7-rac)中のその百分率に対して、所与のサンプルにおける各rhPSAM7.n異性体の変化百分率をまとめて示し;個別の実験についての結果を、図14に示す。各異性体の割合を、Systat 「PeakFit」によるHPLC溶出プロフィールの分析により定量化した。引き続いて、注射溶液におけるその百分率に対して所与のサンプルにおける各異性体の変化百分率を算出した。
【0167】
3.HPLCデータの考察
ホモジナイズした(腎臓、肝臓、腫瘍)または希釈された(血液)組織から抽出し、引き続いて、固相抽出カートリッジで固定化し、固相抽出カートリッジから溶出させた、放射活性の放射性-HPLC分析は、代謝不安定性の徴候を示さなかった。したがって、親油性代謝フラグメントは、観察されなかった。F-18-フッ化物が、サンプル調製用に用いた条件下でHPLCにより正確に検出することができないことを留意すべきである(TLC分析を参照のこと)。
【0168】
D-Dap-誘導体rhPSMA7.1および7.3によって、清澄なトレンドがあるが、全変化は、低い(最大15%)。図15および16が、絶対取込み値を考慮せずに、「相対的変化」を示すことを、本文脈中で強く主張することがやはり重要である。
【0169】
rhPSMA7.1が、すべてのrhPSMA7化合物の最も弱い親和性および内部移行を有するが、それは、血液 肝臓、腎臓および腫瘍の最大の陽性変化百分率を示す。
この結果の理由は、不明であるが、これは、ボールミルを用いても、組織サンプルの均質化によって、定量的細胞破壊がもたらされなかったことを推測することができる。したがって、最高の内部移行(rhPSMA7.2:191.83%±15.54%、rhPSMA7.4:207.33±4.06%およびrhPSMA7.3:161.41%±8.88%)を有するrhPSMA7トレーサーは、効率的でない方式で抽出されているかもしれず、69.55%±5.29%のみのその内部移行が低いrhPSMA7.1は、効率的に抽出され、したがって、HPLC分析において過大評価される。
【0170】
さらに、rhPSMA化合物7.2および7.4は、いくらかより速やかに排出されるように見える(尿についての値を参照のこと)。rhPSMA7.1と比較した場合、両方の化合物が、より高い親和性および内部移行率を示すが、これらの化合物は、固体組織および血液の一般に否定的な変化を示す。代謝産物、すなわち、親液性代謝産物が検出されていないため、7.2および7.4(両方ともL-Dap誘導体である)の代謝分解により引き起こされ得るか否かは、不明である。しかしながら、これらの高logP値による、かかる代謝産物(図11を参照のこと)は、水性緩衝液中で抽出可能でないことがあり得る。この場合では、これらは、肝臓(体内分布を参照のこと)において、おそらく、血液サンプルにおいて現れるべきである(高血清タンパク質結合の場合確率が高い)。活性蓄積の上昇が、体内分布試験の間に肝組織についてまったく観察されず、血液から得られた活性抽出が、非常に効率的であったため(表3を参照のこと)、本発明者らは、rhPSMA7.2および7.4についての有意な分解が、起こらなかったと仮定する。この仮定は、ヒトにおける[18F]rhpsma-racの臨床使用という状況において、肝組織(胆嚢、腸)についての疑わしくないSUV-値により裏付けられる。
【0171】
担腫瘍マウス30分p.i.におけるTLC-分析
放射性-TLC分析は、少量をTLCストリップに直接かけることにより、b)SPEプロセス(「ブレークスルー画分」)中の少量の非固定化活性の分析により、およびc)少量のカートリッジ溶離液の分析により、尿サンプルにおいてa)を行った。
【0172】
【表13】
【0173】
TLCデータの考察
(ncaフッ化物と相互作用するマトリックスの遊離Si-OH基により)RP-18クロマトグラフィーによって、n.c.a.18F-フッ化物を検出することが非常に難しいため、抽出された溶液中のF-18-フッ化物の定量化を調査するために、薄層クロマトグラフィーを行った。
【0174】
タンパク質沈澱に対して標準的に用いられる試薬および塩のどれも、冷フッ化物について試験されないためならびに同位体交換によりトレーサーから得たF-18-フッ化物のあり得る遊離を回避するために、-かかるタンパク質負荷によって、ピーク分離、ピークテーリングおよびスタートラインで固着する活性がしばしば制限されるが、タンパク質沈澱を、サンプル調製プロセスにおいて行わなかった。組織抽出(または血液遠心)後に得られた溶液を、TLC分析用に直接用いた。
【0175】
分析用に利用可能な活性が、すべてのサンプルにおいてかなり低かったが、TLCの結果によって、F-18-フッ化物(fluride)の総含有量は、
- 2018年7月30日に得られた尿サンプル(17.49%遊離フッ化物)、
- 2018年8月2日に得られた肝臓サンプル(25.85%遊離フッ化物)を除き、調査された組織中のおよそ6%以下であったということが明らかになった。
【0176】
TLCによる尿の分析が、妥当な結果と見なされ(図20中のプロフィールを参照のこと)、肝臓サンプルで得られた結果は、未変化トレーサーを表しているピークの広範なテーリングにより引き起こされる(図18を参照のこと)。さらに、QK中にさらに得られたピークテーリング、および臨床応用のためのPBS(図18)における[F-18]rhPSMA7-racの放出が、生成物ピークのテーリングを示すために、前述の最大6%の遊離フッ化物は、過大評価を表すということを結論付けることができる。ホスフォイメージにより実証される通り、このテーリングは、ほぼすべてのTLC分析において観察され、F-18-フッ化物の統合された領域に寄与する。
【0177】
ヒトにおける体内分布試験でも、臨床PETスキャンでも(2018年7月の状態:[F-18]rhPSMA7-racによるおよそ1400スキャン)、遊離したF-18-フッ化物により、骨中のいかなる疑わしいもしくは同定可能なF-18-蓄積(acculuation)をももたらさなかったことを留意することが必要である。(1つの尿サンプル中で観察された通り)[F-18]rhPSMA7-racから得られたF-18フッ化物の遊離をさらに調査するために、本発明者らは、RP-18 HPLC(新たなRP-18エンドキャップを有するカラム)およびTLC分析によって、さらなる尿サンプル(正常マウス)中のF-18-フッ化物の発生を調査した。
【0178】
正常マウス30分p.i.におけるF-18-フッ化物の形成の放射性-TLC-分析
こうした目的のために、正常マウスを用いた。尿サンプルを、30分間にわたってカテーテルによって採取した。尿を、遠心し、HPLCおよびTLCに直接かけた。
【0179】
図21中に示した通り、左カラム、遊離F-18-フッ化物は、すべての異性体の尿サンプルにおいて見出され、新鮮な尿が、「[F-18]rhPSMA7.4でインキュベートさせる場合、やはり形成される(右カラム)。F-18-フッ化物の同定を、a)この種が、QMAカートリッジに保持され(データを示さず)、b)RP-18カラムの死容積に溶出され、c)用いられた移動相と関係なく、それぞれに、RP-18カラムまたはRP-18 TLCプレートに保持するまたは動員することができないことを実証することにより行った。
【0180】
F-18フッ化物のかかる高用量が、血液または臓器、例えば、腎臓、腫瘍、肝臓などのHPLC分析において検出されなかった、骨中の活性取込みの上昇が、マウスにおける体内分布試験において観察されず、[F-18]rhPSMA7-racが、TUMで2017年の臨床スキャニング終了に設定されているため(状態の終了 2018年7月:前立腺がんを伴う患者におけるおよそ1400 PETスキャン)、骨中の活性取込みの上昇が、[F-18]rhPSMA7-rac化合物による臨床PETスキャン中に観察されなかったという事実により、本発明者らは、[F-18]フッ化物が、トレーサーの糸球体ろ過から下流を形成し得、血液、臓器または骨におけるF-18-フッ化物の検出可能な取込みなしで、[F-18]フッ化物を形成およびその後排出させると結論付けた。
【0181】
この仮定は、腎臓および尿中のフッ化物の関連する量を記載するフッ化物の毒物学に関する文献により裏付けられる。正常な尿中フッ化物レベル0.3ppmを、マウスにおいて観察した(Bouaziz Hら、Fluoride 2005年;38巻(1号):23~31頁)。別の公表文献では、正常マウスの尿中の平均フッ化物濃度は、0.13~0.14μg/mLであることが決定され(Poesina NDら、Rom J Morphol Embryol 2014年、55巻(2号):343~349頁)、Inkielewicz I.らは、ラットの血清中のフッ化物含有量が、腎臓中のフッ化物の濃度の約5%である(血清:0.051μg/mL、腎臓:0.942μg/mL)ことを見出した(Fluoride;36巻(4号);263~266頁)。トレーサーの大部分が、特に腎臓に吸収され、やはり腎臓により生理的に除去されることを考慮すると、体温36.6℃と合わせて、腎臓中のフッ化物レベルの上昇は、腎臓においてrhPSMA-化合物からF-18-フッ化物を連続的に排出させ得る。
【0182】
したがって、正常マウスから採取された新鮮なおよび非放射性の尿サンプルを、様々な期間[F-18]rhPSMA7.xでインキュベートした(図21への説明文を参照のこと)。図22、右カラムは、[F-18]rhPSMA7.xで尿をEX VIVOでインキュベートすることによって、様々な程度まで遊離[F-18]フッ化物が形成され、尿サンプル中の冷F-19-フッ化物の異なる濃度により促進され、経時的に増加することが、明らかに実証される。
【0183】
仮説をさらに裏付けるために、500nmol冷F-19-フッ化物を、マウスの新鮮なおよび非放射性の尿に加え、その後、[F-18]rhPSMA7.3を加え、2hインキュベートした。仮説によれば、高濃度の[F-19]フッ化物は、有意な量の[F-18]フッ化物を形成させるべきである。図23では、これらの条件下で、放射活性98.5%が、交換され、2h以内に[F-18]フッ化物を形成することが示される(図23)。
【0184】
同位体交換速度が、平衡状態にある4種の関連する種([F-18]フッ化物、[F-19]フッ化物、[F-18]rhPSMA7.3および[F-19]rhPSMA7.3)の濃度に依存しているため、これはまた、[F-18]フッ化物の、新鮮なおよび放射活性の尿(20,6%[F-18]フッ化物、79,4%[F-18]rhpsma7.3)への添加、その後、冷[F-19]rhPSMA7.3トレーサーの添加によって、放射性医薬品[F-18]rhPSMA7-3がやはり標識化されるか否か調査した。予想外に、上記の尿への少量の[F-19]rhPSMA7-3 5nmolでも、室温で、[F-18]rhPSMA7.3は、79.4%~85.8%まで増加した(F-18]フッ化物は、20.6%~14.2%まで減少した)。
【0185】
尿中の同位体交換により得られた結果から、4-(ジ-tert-ブチル[(18)F]フルオロシリル)-ベンジル)オキシ部分でコンジュゲートされたすべてのトレーサーの代表、したがって、すべてのrhPSAM7異性体の代表が考えられる。
【0186】
前臨床線量測定、ヒト体内分布および腫瘍病変の取込み
次の18F-rhPSMA-7は、natGa-18F-rhPSMA7-racおよび18F-rhPSMA-7.3~natGa-18F-rhPSMA7.3を意味することをご留意いただきたい。
【0187】
A)マウスにおける18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3の前臨床線量測定
目的は、マウスにおける単回静脈内投与の300分後まで、異なる時点で、18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3の分布および排出を評価することならびに内部の線量測定についての算出を行うことであった。
【0188】
方法
マウス3~5匹を、時点当たりで注射し、それぞれに、18F-rhPSMA-7が、平均25.6±3.6MBqであり、18F-rhPSMA-7.3が、28.5±4.8MBqであった。重症複合免疫不全症(SCID)のマウスを、実験のために用いた。すべての動物実験を、ドイツにおける一般動物福祉規制および動物の管理および使用のための施設ガイドラインに従って行った。
【0189】
マウスを、次の時点で屠殺した。
18F-rhPSMA-7:投与の10、20、40、60、120および180分後。
18F-rhPSMA-7.3:投与の10、60、120、180および300分後。
初回の実験に基づいて、18F-rhPSMA-7.3 aの後期の時点(300分)についての腎性腎臓取込み(renal kidney uptake)の延長が最後の実験のために用いられることを示すことをご留意いただきたい。
【0190】
次の組織/体液を、回収した。
尿、血液、心臓、肺、脾臓、膵臓、肝臓、胃(空腹時)、小腸(空腹時)、大腸(空腹時)、腎臓、膀胱、精巣、脂肪、筋肉(部分的、大腿)、大腿骨、尾部および脳。尿を、COガスチェンバーにおいてピペットで採取した。チェンバー中で排尿を逃す場合には、膀胱を、インスリン用注射筒で吸引した。血液を、心臓から、インスリン用注射筒で屠殺後直ちに取り除いた。すべての他の組織および臓器を、解剖し、プラスチック製容器に直接移した。
【0191】
プラスチック製容器中のサンプルの重量を、電子天秤を用いて測定した。専用のサンプルのための空のおよび前標識したプラスチック製容器の重量を、前もって測定した。プラスチック製容器の風袋重量を、プラスチック製容器を有する測定サンプルの重量から減算した。上で算出した重量を、測定サンプルの重量と表した。
【0192】
測定サンプルを含有するプラスチック製容器を、60秒にわたって(カウント毎分=cpm)、計数率を測定するための自動γカウンター(PerkinElmer-Wallac社、Waltham、USA)の特定の試験管立てに入れた。さらに、公知の放射活性量を有する1%(v/v)標準(n=5)を、サンプルと共に測定して、臓器サンプルの計数率を、活性に変換した。
【0193】
データ分析
測定サンプルの計数率は、崩壊を自動的に補正した。放射活性分布比(単位:測定サンプル中の注入量(%ID)の百分率を、以下の等式を用いて決定した。1匹のマウスから得られたすべての測定サンプルからの計数率の和を、投与される放射活性についての計数率と表した。
【0194】
【数2】
【0195】
尿および糞便サンプルを除外した測定サンプル(単位:%ID/g)の単位重量当たりの放射活性分布比を、以下の等式を用いることにより決定した。測定サンプルの重量を、サンプルを含む容器からの空の測定容器の減算により決定した。
【0196】
【数3】
【0197】
線量測定分析
各放射性トレーサーについての統計的算出のコンシステンシーの場合、18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3についての時点の同数を用いた。したがって、18F-rhPSMA-7の場合、10分および20分時点を、15分エンドポイントを創出するよう組み合わせた。
【0198】
有意なソース器官(AUCs)における蓄積についての活性の時間積分を、J Juanら、Journal of Pharmaceutical Sciences、1993年、82巻:762~763頁に従って、数値積分法および物理的崩壊で両方生成した。
【0199】
Kirshnerらは、両種におけるファントムの臓器重量および全体重の比による、動物におけるパーセント注入量の線形尺度を用いる方法を確立した。
- Kirschner AS、Ice RD、Beierwaltes WH.Radiation Dosimetry of 131I-19-Iodocholesterol.J Nucl Med.1973年9月1日;14巻(9号):713-7。
- Kirschner A、Ice R、Beierwaltes W.Letters to the editor.J Nucl Med.(1975年):248-9。
【0200】
手短に言えば、マウスにおいて体内分布からヒト線量測定を算定するために、外挿は、動物とヒトとの間の差を明らかにすることが必要であった。正常な臓器の放射線量を、時間-依存臓器活性濃度(1グラム当たり注入量のパーセントで、%ID/g)およびマウスにおける体内分布試験において測定された全身活性を用いて、70-kg標準成人解剖モデルについて推定した。
【0201】
マウスにおける組織活性濃度を、標準成人および「標準」25-グラムマウスにおいて相対的分画臓器質量を用いて、70-kg標準成人における組織分画活性に変換した。時間-依存全身活性は、指数関数に適合し、肝臓中の活性濃度およびGIトレーサーが、試験したすべての時点で低かったため、注射された活性と全身活性との間の差は、尿に排出されるものと仮定された。
【0202】
臓器滞留時間を、台形法を用いて、数値積分法により算出し、身体の他の部分の18F滞留時間を、全身滞留時間と臓器および尿の滞留時間の和との間の差として算出した。膀胱含有量滞留時間を、OLINDA/EXM1.0線量測定ソフトウェアにおいて、動的排尿モデルを用いて推定した。最後に、標準成人平均臓器線量当量(mSv/MBq)および有効線量(やはりmSv/MBq)を、次いで、OLINDA/EXM1.0を用いて算出した。
【0203】
マウスにおける体内分布からの放射線吸収量および線量測定の最終の算出:放射活性の有意な蓄積が起こる組織または臓器(すなわち、ソース器官)は、腎臓、脾臓、肺、肝臓および心臓であった。活性蓄積およびクリアランスに関して、血液からの速やかなクリアランスおよび尿へのクリアランスであるが、腎臓において比較的ゆっくりとした蓄積が見出された。
結果
【0204】
【表14】
【0205】
【表15】
【0206】
【表16】
【0207】
【表17】
【0208】
結論
放射活性分布比は、マウスにおけるすべての検査された時点での18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3の投与後に、腎臓において最高であった。さらに、放射活性分布比は、すべての他の評価された組織と比較して、両方の放射性トレーサーについての脾臓および膀胱において高く、活性比は、8%ID/gより低かった。
【0209】
18F-rhPSMA-7/18F-rhPSMA-7.3活性の大半が、腎臓において増強し、膀胱による排出が、高活性を明らかにするため、主な排出経路は、腎臓および泌尿器系によって定義される。
【0210】
3.5hおよび1.0hの膀胱の排尿間隔を用いて、外挿された総有効線量は、それぞれに、18F-rhPSMA-7の場合、2.66E-02および1.22E-02mSv/MBqであり、18F-rhPSMA-7.3の場合、2.17E-02および1.28E-02mSv/MBqであった。臨床スキャンについての370MBq(10mCi)までの注射は、1hの排尿間隔を想定する両薬剤の場合、5mSv未満の好ましい放射線曝露をもたらすはずである。
【0211】
両放射性トレーサー間の言及するに値する差は、18F-rhPSMA-7.3が、より長い保持と共にさらに段階的に蓄積する傾向があるため、腎臓取込みに関して唯一明らかである。さらに、放射線曝露は、両薬剤間で同等である。
【0212】
B)18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3のヒト体内分布および腫瘍病変の取込み
次のセクションは、18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3の体内分布を記載している。概念実証評価を、人道的使用下で行った。本薬剤は、ドイツ医薬品法(German Medicinal Products Act)、AMG §13 2bに従っておよび担当規制機関(Government of Oberbayern)に従って適用した。
【0213】
すべての対象を、Biograph mCTスキャナー(Siemens Medical Solutions、Erlangen、Germany)で検査した。すべてのPETスキャンを、ベッド位置当たり2~4分の取得時間で3D-モードにおいて取得した。放出データは、無作為、不感時間、散乱、および減衰を補正し、規則正しいサブセット期待値最大化アルゴリズム(4回の反復、8サブセット)、その後、再構成後スムージングガウスフィルター(postreconstruction smoothing Gaussian filter)(最大値の半分における5-mm全幅)により反復的に再構成した。
【0214】
方法
ヒト体内分布を、患者47名および32名において、それぞれに、臨床18F-rhPSMA-7-および18F-rhPSMA-7.3-PET/CT検査を分析することにより、推定した。18F-rhPSMA-7対18F-rhPSMA-7.3の場合、それぞれに、平均の注射された活性は、324(236~424の範囲)MBq対345(235~420の範囲)MBqであり、取込み時間は、84(42~166の範囲)分対76(59~122の範囲)分であった。
【0215】
平均および最大標準化取込値(SUV平均/SUVmax)を、バックグラウンド(殿筋)、正常な臓器(唾液腺、血液プール、肺、肝臓、脾臓、膵臓、十二指腸、腎臓、膀胱、骨)および3つの代表的な腫瘍病変について決定した。腫瘍取込みを、18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3について、それぞれに、89カ所の病変(原発性腫瘍/局所再発26カ所、骨23カ所、リンパ節38カ所および内臓転移2カ所)および63カ所の病変(原発性腫瘍/局所再発14カ所、骨30カ所、リンパ節18カ所および内臓転移1カ所)において分析した。
【0216】
SUVの算出の場合、目的の円領域を、体軸横断スライス中の取込みが限局的に増加する領域の周りに描き、50%等高線で目的の3次元体積(VOI)に自動的に適応させた。臓器-バックグラウンドおよび腫瘍-バックグラウンド比を算出した。
【0217】
結果
18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3のヒト体内分布によって、他のPSMA-リガンドから公知の典型的なパターンを示した。18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3についての取込みパラメーターは、18F-rhPSMA-7.3の場合に膀胱におけるより低い活性保持および腫瘍病変のより高い取込みと非常に類似した、すなわち、18F-rhPSMA-7対18F-rhPSMA-7.3についてのSUV平均は、18F-rhPSMA-7対18F-rhPSMA-7.3の場合、それぞれに、16.9対16.0(耳下腺)、19.6対19.6(顎下腺)、2.0対1.9(血液プール)、0.7対0.7(肺)、7.0対7.3(肝臓)、9.1対8.5(脾臓)、32.4対35.5(腎臓)、2.5対2.8(膵臓)、10.9対11.0(十二指腸)、1.1対1.3(非疾患骨)および10.2対2.0(膀胱)であった。特に、18F-rhPSMA-7.3対18F-rhPSMA-7の取込値は、膀胱における保持の場合、有意に低く(2.0±0.8対6.3±21.2、p<0.05)、腫瘍病変の場合、有意に高かった(32.5±42.7対20.0±20.2、p<0.05)。
【0218】
【表18】
【0219】
【表19】
【0220】
【表20】
【0221】
【表21】
【0222】
結論:
ヒト体内分布は、ほとんどの正常な臓器の場合、18F-rhPSMA-7と18F-rhPSMA-7.3との間で類似する。しかしながら、18F-rhPSMA-7.3の場合、膀胱におけるトレーサー保持は、有意に低く、腫瘍病変の取込みは、有意に高く、臨床画像化について明らかに有利な点をもたらした。18F-rhPSMA-7.3の好ましいヒト体内分布および腫瘍病変の高い取込みを有する画像化例を、図28に示す。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b-1】
図6b-2】
図6b-3】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28