(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リニアモータコンプレッサを動作させるための方法およびリニアモータコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04B 17/03 20060101AFI20240729BHJP
F04B 35/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F04B17/03
F04B35/04
(21)【出願番号】P 2021544651
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2020052913
(87)【国際公開番号】W WO2020161210
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ファレー、エイドリアン ルーツィ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-291889(JP,A)
【文献】特開2003-148339(JP,A)
【文献】特開昭59-221401(JP,A)
【文献】特開2004-003408(JP,A)
【文献】特開2011-127879(JP,A)
【文献】特開平05-172053(JP,A)
【文献】特開平08-068379(JP,A)
【文献】特開2006-046219(JP,A)
【文献】特開2017-053359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/00-51/00
F04B 17/00-19/24
F04B 25/00-37/20、
41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータコンプレッサ(1)を動作させるための方法であって、前記リニアモータコンプレッサ(1)は、電気リニアモータ(14)と、シリンダ(2)と、ピストン(3)を備えた線形移動可能なフリーピストン構成(16)と、を備え、前記シリンダ(2)および前記ピストン(3)は圧縮チャンバ(5)を形成し、前記フリーピストン構成(16)は、前記リニアモータ(14)によって直接駆動され、上死点(X
OTP)と下死点(X
UTP)との間をストローク経路(X)に沿って往復して移動し、流体が外部から前記圧縮チャンバ(5)に供給され、供給された前記流体は、前記圧縮チャンバ(5)において圧縮されまたは膨張し、続いて前記外部に再び排出され、1つ以上の状態変数(Z
soll)が前記リニアモータコンプレッサ(1)用に予め定められ、前記リニアモータ(14)は、前記リニアモータコンプレッサ(1)が予め定められた前記状態変数(Z
soll)を有するように制御され、前記フリーピストン構成(16)は、前記下死点(X
UTP)から開始し
て出口バルブ(6)の開放点(B)までの圧縮段階(AB)中に、また続いて前記出口バルブ(6)の閉止点(C)まで至る放出段階(BC)中に、予め定められた状態変数(Z
soll)、すなわち予め定められた速度-変位曲線により、前記圧縮段階(AB)中の平均速度(V
m1)が前記放出段階(BC)中の平均速度(V
m2)よりも速くなるように駆動され
、前記上死点(X
OTP
)から開始して入口バルブ(7)の開放点(D)までの膨張段階(CD)中に、また続いて前記入口バルブ(7)の閉止点(A)まで至る吸入段階(DA)中に、前記フリーピストン構成(16)は、予め定められた状態変数(Z
soll
)、すなわち予め定められた速度-変位曲線により、膨張段階(CD)中の平均速度(V
m3
)が前記吸入段階(DA)中の平均速度(V
m4
)よりも速くなるように駆動される、方法。
【請求項2】
前記
出口バルブ(6)の前記開放点(B)の領域における前記フリーピストン構成(16)の速度は、前記圧縮段階(AB)中の前記平均速度(V
m1)よりも遅い速度まで減少する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記入口バルブ(7)の前記開放点(D)の領域における前記フリーピストン構成(16)の速度は、前記膨張段階(CD)中の前記平均速度(V
m3)よりも遅い速度まで減少する、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記フリーピストン構成(16)が前記
出口バルブ(6)の前記開放点(B)の後に再び加速するか、前記フリーピストン構成(16)が前記入口バルブ(7)の前記開放点(D)の後に再び加速するか、またはその両方である、請求項
2または
3に記載の方法。
【請求項5】
前記フリーピストン構成(16)には、まずストロークの端に向かって、すなわち前記下死点(X
UTP)に向かってより大きい負の加速度により制動がかかり、続いて、減少した負の加速度により制動がかかり、前記フリーピストン構成(16)には前記
下死点(X
UTP)にて減少した負の加速度により前記フリーピストン構成(16)が静止するまで制動がかかる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フリーピストン構成(16)には、ま
ずストロークの端に向かって、すなわち前記上死点(X
OTP)に向かってより大きい負の加速度により制動がかかり、続いて、減少した負の加速度により制動がかかり、前記フリーピストン構成(16)には前記上死点(X
OTP)にて減少した負の加速度により前記フリーピストン構成(16)が静止するまで制動がかかる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フリーピストン構成(16)のストローク行程点(X
1)と該ストローク行程点(X
1)に割り当てられた名目速度(V
soll)とが、前記状態変数(Z
soll)として指定される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ストローク経路(X)の少なくとも部分的区間に沿っ
て維持される名目プロファイル(S
soll)が、状態変数(Z
soll)として指定される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ストローク経路全体(X
L)に必要とされるストローク時間(T
L)中に維持される名目プロファイル(S
soll)が、前記状態変数(Z
soll)として指定される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記リニアモータコンプレッサ(1)は、前記フリーピストン構成(16)によって反対方向に動作する第1および第2圧縮チャンバ(5a,5b)を備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記下死点(X
UTP)と前記上死点(X
OTP)との間、前記上死点(X
OTP)と前記下死点(X
UTP)との間、またはその両方の速度-変位曲線であって、該速度-変位曲線に従ってフリーピストン構成(16)が往復して移動する速度-変位曲線が、状態変数(Z
soll)として予め定められる、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フリーピストン構成(16)は、前記下死点(X
UTP)から開始して前記
出口バルブ(6)の前記開放点(B)までの圧縮段階(AB)中に、予め定められた速度-変位曲線により、前記リニアモータ(14)が一定のまたはほぼ一定の動力を時間の関数として運ぶように移動する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記予め定められた状態変数(Z
soll)、すなわち、少なくとも
前記
出口バルブ(6)の開放点(B)、
前記
出口バルブ(6)の閉止点(C)、
前記入口バルブ(7)の開放点(D)、
前記入口バルブ(7)の閉止点(A)、
のうちの1つの範囲における予め定められた速度-変位曲線は、前記出口または入口バルブ(6,7)が減少した速度にて移動するように、前記
速度-変位曲線の残り部分と比較して減少した速度を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記リニアモータ(14)は、前記下死点(X
UTP)に向かう方向に作用する前記フリーピストン構成(16)に対する正の力を、前記膨張段階(CD)全体
中に加える、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記リニアモータコンプレッサ(1)によって運ばれる体積は、前記リニアモータ(14)の最大ストローク(X
L)、または前記上死点(X
OTP)の位置、前記下死点(X
UTP)の位置、もしくはその両方を変化させることによって変化する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記フリーピストン構成(16)には、少なくとも部分的には、前記上死点(X
OTP)と前記下死点(X
UTP)との間
のレシプロ移動中に、前記リニアモータ(14)をジェネレータとして動作させることによって制動がかかる、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記リニアモータ(14)は、加圧された流体を前記出口バルブ(6)を介して前記圧縮チャンバ(5)に供給することと、前記圧縮チャンバ(5)における前記流体を膨張させることと、また続いて該流体を前記入口バルブ(7)を介して排出することと、によってジェネレータとして動作し、ジェネレータとして動作する前記リニアモータ(14)の前記フリーピストン構成(16)は、予め定められた速度-変位進路により往復して移動する、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
リニアモータコンプレッサ(1)であって、1つ以上の電気リニアモータ(14)と、シリンダ(2)と、1つ以上のピストン(3)を備えた線形移動可能なフリーピストン構成(16)と、を備え、前記シリンダ(2)および前記ピストン(3)は1つ以上の圧縮チャンバ(5)を形成し、前記フリーピストン構成(16)は前記リニアモータ(14)によって直接駆動され、前記圧縮チャンバ(5)は出口バルブ(6)および入口バルブ(7)を介して流体を通すよう
に外部に接続され、制御デバイス(20)は、前記フリーピストン構成(16)が上死点(X
OTP)と下死点(X
UTP)との間を予め定められた状態変数(Z
soll)により往復して移動するように、前記リニアモータ(14)を制御し、前記制御デバイス(20)は、前記フリーピストン構成(16)を、予め定められた速度-変位曲線により、前記下死点(X
UTP)から開始して前記出口バルブ(6)の開放点(B)までの圧縮段階(AB)中に、また続いて前記出口バルブ(6)の閉止点(C)まで至る放出段階(BC)中に、前記圧縮段階(AB)中の平均速度(V
m1)が前記放出段階(BC)中の平均速度(V
m2)よりも速くなるように、制御
し、前記上死点(X
OTP
)から開始して前記入口バルブ(7)の開放点(D)までの膨張段階(CD)中に、また続いて前記入口バルブ(7)の閉止点(A)まで至る吸入段階(DA)中に、前記フリーピストン構成(16)は、予め定められた状態変数(Z
soll
)、すなわち予め定められた速度-変位曲線により、膨張段階(CD)中の平均速度(V
m3
)が前記吸入段階(DA)中の平均速度(V
m4
)よりも速くなるように駆動される、リニアモータコンプレッサ(1)。
【請求項19】
前記リニアモータ(14)は、モータとしておよびジェネレータとして動作可能であり、前記
制御デバイス(20)は、前記フリーピストン
構成(16)が上死点(X
OTP)と下死点(X
UTP)との間を移動するときに予め定められた速度-変位曲線により駆動するように前記リニアモータ(14)を駆動させる、請求項
18に記載のリニアモータコンプレッサ(1)。
【請求項20】
前記
制御デバイス(20)は、前記リニアモータ(14)を
、ストローク経路(X)に沿って上死点(X
OTP)と下死点(X
UTP)との間または下死点(X
UTP)と上死点(X
OTP)との間を、部分的にはジェネレータとしておよび部分的にはモータとして動作させるように設計され、前記
制御デバイス(20)は、前記ジェネレータによって取得された電気エネルギーを一時的に貯蔵するためのエネルギー貯蔵部を備える、請求項
18または
19に記載のリニアモータコンプレッサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータコンプレッサを動作させる方法に関する。本発明はさらにリニアモータコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
気体をリニアモータコンプレッサによって圧縮することが知られている。特許文献1は、コンプレッサがレシプロピストンコンプレッサとして設計され、これによってリニアモータが2つの極を有するように設計され、またこれによってフリーピストンリニアモータコンプレッサ全体が共振周波数にて動作する、フリーピストンリニアモータコンプレッサを開示している。リニアモータコンプレッサは、気体状処理流体(特に、天然ガス)を圧縮するために用いられる。このリニアモータコンプレッサは、天然ガス自動車の燃料補給中、連続的に、また正弦波共振周波数にて動作する。このリニアモータコンプレッサの動作可能性は、極度に限定され、経済的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0051690号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気体状処理流体を圧縮するおよび/または膨張させるためのより有利な動作方法によりリニアモータコンプレッサを動作させることが本発明の課題である。これに加えて、気体状処理流体を圧縮するおよび/または膨張させるための経済的により有利なリニアモータコンプレッサを設計することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。従属請求項2~18は、さらに有利な処理工程に関する。課題は、請求項19の特徴を有するリニアモータコンプレッサによりさらに解決される。従属請求項20および21は、さらに有利な実施形態に関する。
【0006】
課題は、特に、電気リニアモータと、シリンダと、ピストンを備えた線形移動可能なフリーピストン構成と、を備えたリニアモータコンプレッサを動作させるための方法であって、前記シリンダおよび前記ピストンは圧縮チャンバを形成し、前記フリーピストン構成は、前記リニアモータによって直接駆動され、上死点と下死点との間をストローク経路に沿って往復して移動し、流体が外部から圧縮チャンバに供給され、供給された前記流体は、前記圧縮チャンバにおいて圧縮されまたは膨張し、次いで外部に再び排出され、1つ以上の状態変数は、リニアモータコンプレッサ用に予め定められ、前記リニアモータは、前記リニアモータコンプレッサが、前記予め定められた状態変数を有するように制御される、方法により解決される。
【0007】
課題は、特に、リニアモータコンプレッサであって、1つ以上の電気リニアモータと、シリンダと、1つ以上のピストンを備えた線形移動可能なフリーピストン構成と、を備え、前記シリンダおよび前記ピストンは1つ以上の圧縮チャンバを形成し、前記フリーピストン構成は前記リニアモータによって直接駆動され、前記圧縮チャンバは出口バルブおよび入口バルブを介して流体を通すように前記外部に接続され、制御デバイスは、前記フリーピストン構成が上死点と下死点との間を予め定められた状態変数により往復して移動するように、前記リニアモータを制御する、リニアモータコンプレッサによりさらに解決される。
【0008】
好ましくは、ストロークに沿った1つ以上のストローク経路点または1つ以上のストローク経路時間と、これに割り当てられた、名目速度または名目加速度または名目力とが、状態変数として指定される。好ましくは、フリーピストン構成のストローク経路とフリーピストン構成の速度との間の関係は、予め定められた状態変数(以下、速度-変位曲線とも呼ばれる)として指定される。速度-変位曲線は、1つ以上の点、すなわちストローク経路および予め定められた関連する速度を含んでよく、好ましくは、複数の点であって、各点がストローク経路に沿った位置およびその位置に関連付けられた速度を含む、点を含んでよい。
【0009】
有利には、ストローク経路全体のうちの少なくとも一部分に沿って、また好ましくは全ストローク経路に沿って維持される行程名目曲線(すなわち、ストローク経路および名目速度および/または名目力に関する名目プロファイル)が、状態変数として指定される。
【0010】
有利には、時間名目曲線、すなわち、ストローク全体のうちの部分的な期間または部分的区間の間維持される、ストローク時間の関数としての名目速度、名目加速度および/または名目力に関する名目プロファイル、また好ましくはストローク全体の期間中に必要とされるストローク時間が、状態変数として指定される。
【0011】
リニアモータコンプレッサの動作中に予め定められた状態変数を達成するように、リニアモータコンプレッサは、有利には、フリーピストン構成が圧縮チャンバにおいて作用する力と、必要な場合にはこれに加えて作用する摩擦力とに基づいて「自由に」移動することが可能である制御戦略により動作し、これによって、リニアモータは制御可能な力をフリーピストン構成に対し加えることが可能であり、外部からの、また好ましくは予め定められた手法によるフリーピストン構成の自由な移動に影響を及ぼす。好ましくは、リニアモータには、変位依存性または時間依存性において速度プロファイルまたは力プロファイルが与えられ、これによって、この力プロファイルは、フリーピストン構成が予め定められた状態変数を有すること、またはフリーピストン構成の挙動が制御介入により予め定められた状態変数に近づくことを保証するように、リニアモータコンプレッサの動作中に制御介入によって変更されることが可能である。
【0012】
有利な制御戦略では、フリーピストン構成の移動の経路-時間依存性および従ってピストン移動の経路-時間依存性は、直接制御されない(すなわち、フリーピストン構成の移動についての予め定められた経路-時間曲線が指定されない)ものの、フリーピストン構成またはピストンの移動曲線は、用いられるまたは力の作用から生じる力プロファイルの結果として生じる。この実施形態では、指定された状態変数は、したがって、力プロファイルを指定することによって最終的に達成される。用いられる力プロファイルは、特に、リニアモータコンプレッサの対応する応用および対応する動作方法に合わせられる。ある応用として、リニアモータコンプレッサは、例えば、気体のコンプレッサとしてまたはエキスパンダとして動作することが可能である。好ましくは、リニアモータコンプレッサは、気体を圧縮するように動作する。コンプレッサとしての応用では、その動作方法または力プロファイルは、例えば、フリーピストン構成が比較的速く(特に、より速い平均速度により)気体の圧縮段階中に移動する点、またフリーピストン構成が減少した速度により(特に、より遅い平均速度により)後続の気体の排除段階中に移動し、これによって気体が圧縮チャンバから流出するときに流れ抵抗を減少させる点において、最適化されることが可能である。したがって、例えば、圧縮の全サイクルについての時間を一定に保つことが可能であるが、圧縮段階をより早く、放出段階をより遅く走り抜けることによって、放出中の気体の流れ抵抗が減少することが可能であり、したがって、気体を圧縮チャンバから押すのに必要とされるエネルギーも減少することが可能である。
【0013】
予め定められた状態変数により、フリーピストン構成およびしたがってリニアモータコンプレッサ全体は、最適化される所望の変数に応じて多様に動作することが可能である。すでに記載された例に加えて、状態変数は、例えば、リニアモータによって運ばれる最大力またはリニアモータによって運ばれる最大動力が制限されるように、またリニアモータコンプレッサを動作させるのに必要なエネルギーが、エネルギーをリニアモータから部分的にはサイクル中に抽出することと、エネルギーをリニアモータに時間遅延を伴って再び供給することとによっても最小化されるように、選択されることが可能である。本発明に係る方法は、したがって、リニアモータコンプレッサが、多数の可能な予め定められた状態変数により動作することが可能であるという利点を有する。先行技術から知られている、ピストンがクロスヘッドを介してピストン駆動部によって駆動されるレシプロコンプレッサは、ピストンの移動がクランクシャフトの速度に対し厳格に結合されており、特にクランクシャフトおよびクロスヘッドの形状的構造によっても、ピストンの速度がクランクシャフトの回転の角度の関数として決定されるという欠点を有する。対照的に、本発明に係るリニアモータコンプレッサは、状態変数の対応する指定、例えば、この指定に従うストロークの関数としての名目速度、名目加速度または名目力などによって、多様に、特にクランクシャフトによって決定されるモーションシーケンスから独立して動作することが可能である。これに加えて、動作方法は、エネルギー消費、最大リニアモータ動力または最大リニアモータ力などの変数について、要求に応じて最適化されることが可能である。
【0014】
リニアモータコンプレッサは、単一の圧縮チャンバを有してよい。特に有利には、リニアモータコンプレッサは、2つの圧縮チャンバ、すなわち第1および第2圧縮チャンバを備える。フリーピストン構成は、好ましくは、ストローク方向に離間した2つの端面の各々にピストンを有し、これらの2つのピストンはフリーピストン構成によって反対方向にまたは反対方向に動作し、その結果、1つの圧縮チャンバ(例えば、第1圧縮チャンバ)において交互に、流体の圧縮および次いで放出が行われ、その他の圧縮チャンバ(例えば、第2圧縮チャンバ)において、同時に流体の膨張および次いで吸気が行われ、また、1つの圧縮チャンバ(例えば、第1圧縮チャンバ)において交互に、流体の膨張および次いで吸気が行われ、その他の圧縮チャンバ(例えば、第2圧縮チャンバ)において、同時に流体の圧縮および次いで放出が行われる。
【0015】
リニアモータまたはフリーピストン構成は、特に好ましくは、50mmと500mmとの間の範囲にあるストローク長を有する。リニアモータは、ストローク方向に連続して配置された3つ以上の動的に制御可能な磁極を、好ましくは5個と50個との間の動的に制御可能な磁極を、特に有利には10個と20個との間の制御可能な磁極を有する。そうした複数の動的に制御可能な磁極は、リニアモータによってフリーピストン構成に対しストローク経路に沿った移動中に加えられた力が、個々にまたはグループにより接続された磁極の対応する選択的励起によって、ストローク経路の関数としてまたは時間の関数として制御されることが可能であるという利点を生じる。動作の有利な方法では、正の電力しかリニアモータには供給されず、それによってフリーピストン構成を駆動する。さらに有利な動作方法では、電力はストローク経路全体のうちの少なくとも部分的区間に沿ってリニアモータから散逸し、その結果、リニアモータがこの部分的区間内において制動効果を発生させることによって、リニアモータがフリーピストン構成に制動をかける。有利には、制動効果または制動動力出力は、ストローク距離の関数として制御されることも可能である。リニアモータは、したがって、駆動するようにしか動作可能でない、または駆動および制動するように動作可能である、または特性駆動と、制動と、リニアモータが駆動力も制動力ももたらさないことを意味するように理解されるニュートラルとのうちの2つ以上の組み合わせにより動作可能である。特に有利な動作方法では、リニアモータによって散逸した電力は、電気蓄積装置に一時的に貯蔵され、また続いて時間遅延を伴ってリニアモータに戻るように供給される。これは、特に、本発明に係るリニアモータコンプレッサのエネルギー効率の高い動作を可能にする。リニアモータコンプレッサは、好ましくは、毎分200回転と1000回転との間の範囲における速度にて、または毎分200~1000周期もしくは往復運動のストローク周波数にて動作する。
【0016】
フリーピストン構成の移動の周期は、開始点から開始しピストン移動の上死点と下死点とを1度通過する移動の全サイクルである。ピストン移動の周期は、下死点から上死点までの移動については、圧縮チャンバにおける圧縮段階と、次いで放出段階とを含み、次いで、上死点から下死点までの移動については、圧縮チャンバにおける膨張段階と、次いで運搬される流体についての吸入段階とを含む。開始点は、基本的には任意である。例えば、開始点は下死点である。
【0017】
フリーピストンアセンブリは、好ましくは、上死点と下死点との間を予め定められた速度-変位曲線により往復して移動する。
好ましくは、フリーピストン構成は、下死点から圧縮段階中に排気バルブの開放点まで、予め定められた速度-変位曲線により、リニアモータが一定のまたは本質的に一定の動力を運ぶ必要があるように移動する。これは、高いおよび生じ得る予測不可能な電流ピークがリニアモータの電気供給中に生じない利点を有する。
【0018】
好ましくは、フリーピストン構成は、予め定められた速度-変位曲線により、圧縮段階中の平均速度が排気段階中よりも速くなる、および/または膨張段階中の平均速度が吸入段階中よりも速くなるように、下死点から圧縮段階中に排気バルブの開放点まで、次いで排気段階中に排気バルブの閉止点まで駆動する。
【0019】
有利な方法では、フリーピストン構成の予め定められた速度-変位曲線または予め定められた速度-時間曲線は、少なくとも切替点のうちの一方の領域において、減少した速度を有する。排気バルブの開放、排気バルブの閉止、入口バルブの開放、および入口バルブの閉止は、速度-変位曲線の残り部分と比較して減少した速度を有し、その結果、フリーピストン構成の減少した速度にて開放または閉止する排気バルブまたは入口バルブは、減少した速度にて移動する。開放または閉止バルブの減少した速度は、好ましくは、バルブの摩耗を減少させ、これは有利にはバルブの耐用年数を増加させる。
【0020】
有利な方法では、圧縮チャンバは、排気バルブの閉止点と吸入バルブの開放点との間の膨張段階を有し、リニアモータは、フリーピストン構成を膨張段階を通じて動的に駆動させるように制御される。
【0021】
有利な方法では、リニアモータコンプレッサによって運ばれる体積は、リニアモータの最大ストロークまたは上死点の位置と下死点の位置との一方もしくは両方を変化させることによって変化し、その結果、運ばれる体積は、例えば、その体積を減少させるまたは増加させることによって、短期間にまたは長期間においても変化することが可能である。
【0022】
有利な方法では、フリーピストン構成には、少なくとも部分的には、上死点と下死点との間の往復移動中に、リニアモータをジェネレータとして動作させることによって制動がかかる。これは、フリーピストン構成の速度を特に素早く減少させることを可能にする。好ましくは、解放された制動エネルギーは電気エネルギーへと変換され、後の使用のために一時的に貯蔵される。
【0023】
有利な方法では、線形移動可能なピストン構成は流体用のエキスパンダとして動作し、リニアモータコンプレッサの圧縮チャンバがこれより膨張チャンバとして用いられるため、加圧された流体が出口バルブを介して膨張チャンバに供給され、流体が膨張チャンバとして動作する圧縮チャンバにおいて膨張し、続いて入口バルブを介して吐き出されるため、またジェネレータとして動作するリニアモータのフリーピストン構成が予め定められた速度-距離進路または予め定められた速度-時間進路により往復して移動するため、リニアモータはそれによって少なくともストローク方向Xにおける移動の部分的区間中はジェネレータとして動作する。有利な処理では、排気バルブおよび/または吸入バルブの開放および閉鎖は、フリーピストン構成の位置の関数として動的に制御される。
【0024】
有利には、リニアモータコンプレッサは、1つ以上の電気リニアモータと、シリンダと、1つ以上のピストンを備えた線形移動可能なフリーピストン構成と、を備え、前記シリンダおよび前記ピストンは1つ以上の圧縮チャンバを形成し、前記フリーピストン構成は前記リニアモータによって直接駆動され、前記圧縮チャンバは出口バルブおよび入口バルブを介して流体を通すように外部に接続され、制御デバイスは、前記フリーピストン構成が好ましくは予め定められたモータおよび/またはジェネレータ動力曲線により上死点と下死点との間を往復して移動するように、前記リニアモータを制御する。
【0025】
有利には、リニアモータコンプレッサは、反対方向に作用するようにフリーピストン構成に対し反対方向に配置された第1および第2圧縮チャンバを備える。
有利には、リニアモータコンプレッサのリニアモータは、モータとしておよび/またはジェネレータとして動作可能であり、制御デバイスは、フリーピストン構成が上死点と下死点との間の移動中に予め定められた速度-変位曲線または予め定められた速度-時間曲線を有するように、リニアモータを制御する。
【0026】
リニアモータは、リニアモータの長手方向に分布したまたは相互に離間した3つ以上の極の対、また好ましくは5個と50個の極の対を備える。
リニアモータコンプレッサは、1つ以上の電気リニアモータと、シリンダと、1つ以上のピストンを備えた線形移動可能なフリーピストン構成と、を備え、前記シリンダおよび前記ピストンは1つ以上の圧縮チャンバを形成し、前記フリーピストン構成は前記リニアモータによって直接駆動され、前記圧縮チャンバは出口バルブおよび入口バルブを介して流体を通すように外部に接続され、制御デバイスは、前記フリーピストン構成が予め定められた状態変数Zsollにより上死点と下死点との間を往復して移動するように、前記リニアモータを制御する。
【0027】
本発明に係るリニアモータコンプレッサは、好ましい実施形態では、バルブとフリーピストン構成を除き、移動する部品を有さず、これによってリニアモータコンプレッサの耐用年数および効率を向上させ、また製造コスト、設置およびメンテナンスも減少させる利点を有する。これに加えて、リニアモータコンプレッサは、好ましくは、潤滑目的のためにオイルを必要としないことを意味する、オイルフリーであるように設計される。本発明に係るリニアモータコンプレッサは、天然ガス、他の炭化水素、水素または空気などの気体を圧縮するのに特に適する。しかしながら、本発明に係るリニアモータコンプレッサは、加圧された気体を膨張させるのにも適し、これによって、特に膨張中、リニアモータは少なくとも一時的にジェネレータとして動作することが可能である。さらに、本発明に係るリニアモータコンプレッサは、リニアモータコンプレッサの一方のチャンバにおいて気体を膨張させ、同時にリニアモータコンプレッサの他方のチャンバにおいて気体を圧縮することによって、同時に気体を圧縮するとともに気体を膨張させるのにも適する。
【0028】
リニアモータのフリーピストンコンプレッサへの組合せは、小型のリニアモータコンプレッサの構築を可能にする。2つのシステムの直接の機械的接続により、静的および動的挙動が結合される。したがって、コンプレッサおよびリニアモータがともに最適に作動するように設計され、共振周波数の範囲において好ましくは動作する場合、リニアモータコンプレッサの優れた性能および高い効率が、好ましくは達成される。好ましくは、そうした動作条件の下では、フリーピストンコンプレッサは、自身の利点を完全に利用することが可能である。小型設計に加えての利点は、比較的単純に、したがって低コストにて、ピストンが外部に対し気密に封止されることが可能であることである。これは、2つのピストンが位置することが可能である2つのシリンダが、低コストにて外部に対し気密に封止されるように設計されることがかのうであるためであり、これによって、リニアモータコンプレッサにて汲み上げられた気体の極度に低い漏出しか存在しない、または漏出が存在しないため、周囲条件に対する高い要求の下において気体を圧縮することを可能にする。有利には、リニアモータの2つのシリンダおよびステータは、気密な外殻を形成する。これに加えて、従来のピストンコンプレッサの場合に存在するようなクランク機構が必要ない。これは、機械的エネルギー変換損失を有する、潤滑を必要とする部品を取り除く。潤滑を不要にする性能によって、本発明に係るリニアモータコンプレッサは、高い清潔要求を伴う応用にも適する。
【0029】
本発明は、以下で有利な実施形態および添付の図面を参照してより詳細に説明される。
主として、同一の部分には、図面において同一の参照符号が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】リニアモータコンプレッサおよび関連する圧力-体積図の概略的に示す図。
【
図2】別の複動式リニアモータコンプレッサの長手方向部分を概略的に示す図。
【
図3】
図2に係るリニアモータコンプレッサのリニアモータを通る交差部分の線F-Fに沿った長手方向部分を概略的に示す図。
【
図4】
図3に係るリニアモータコンプレッサのリニアモータを通る交差部分の線E-Eに沿った断面を概略的に示す図。
【
図5】ストローク、速度、加速度およびモータ力を時間の関数として示す、リニアモータコンプレッサをアイドリングさせる動作方法の4つの図。
【
図6】ストローク、速度、加速度およびモータ力を時間の関数として示す、リニアモータコンプレッサをアイドリングさせるさらなる動作方法の4つの図。
【
図7】第1の動作方法に従う
図2に係るリニアモータコンプレッサの2つのピストンの速度-変位図。
【
図9b】第3の動作方法の別の詳細な態様を示す図。
【
図10】
図2に係るリニアモータコンプレッサ用の制御デバイスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、リニアモータ14と複動式レシプロピストンコンプレッサ15とを備えるリニアモータコンプレッサ1を概略的に示す。レシプロピストンコンプレッサはシリンダ2を備え、シリンダ2には直線移動可能なピストン3が配置され、ピストン3は、ピストンロッド9を介してリニアモータ14に対し直接接続され、リニアモータ14によって直接駆動される。直接接続されるまたは直接駆動されることは、本明細書において、ピストン3とリニアモータ14との間にギアが配置されておらず、その結果、リニアモータ14とピストン3との間において力が直接伝わり、したがって任意のギアが挿入されていないことを意味するように理解される。可能な実施形態では、フレキシブル結合器が、ピストン3とリニアモータ14との間に配置されることも可能であり、それによって、好ましくは、ピストン3とリニアモータ14との独立した配置が可能になる。シリンダ内部5は、ピストン3によって、第1圧縮チャンバ5aと第2圧縮チャンバ5bとに分割され、第1および第2圧縮チャンバ5a,5bは、幾何学的配置によって、動作中に反対方向に動作する。第1および第2圧縮チャンバ5a,5bは各々、流体を通すように、入口バルブ7a,7bおよび出口バルブ6a,6bを介してシリンダ内部5の外部の外部空間に接続されている。通常、流体ラインは、
図1に示されるように、バルブ6a,6b,7a,7bの下流に配置されており、下流デバイスに対し流体を渡すまたは上流デバイスの上流に流体を供給する。ピストン3がその動作中にシリンダ内部5において差し出ることが可能である、複数の可能なピストン位置から、
図1はピストン3の3つの例示的な位置、すなわち下死点X
UTPにおける第1ピストン位置3a、上死点X
OPTにおける第2ピストン位置3c、および第3ピストン位置3bを示し、これによって、第3ピストン位置3bは、排気バルブ6aが理想的には開放点Bにて開放される位置に対応する。下死点X
UTPにおける第1ピストン位置3a、上死点X
OPTにおける第2ピストン位置3c、および上死点X
OPTにおける第3ピストン位置3b。実在する摩擦によって、排気バルブ6aは、通常、
図1に示される(すなわち、示される開放点Bのエリアにおける)圧力Paよりもわずかに遅れてまたはわずかに高い圧力にて開放される。
【0032】
レシプロコンプレッサ15の上には、圧力-体積図とも呼ばれる、関連する理想化されたp-V図が示され、図は、第1圧縮チャンバ5aにおけるレシプロコンプレッサ15によって圧縮された気体の圧力Pを、第1圧縮チャンバ5aの体積の関数として示す。第1圧縮チャンバ5aは、排気量体積V
H、吸気体積V
Sおよび死空間体積V
totを有し、体積Vは右に向かって増加する。同一の図はまた、第1圧縮チャンバ5aにおける気体の圧力Pをピストン3のストロークXの関数として示し、ここで、示される図におけるストロークXは左に向かって正に増加し、その結果、ストロークXの正方向は左を向く。
図1は、ピストン3が下死点X
UTPにある第1ピストン位置3aにおけるピストン3を示し、これによって、第1圧縮チャンバ5aにおける気体は吸気圧力P
Sを有する。理想化されたp-V図の進路は、以下に簡単に説明される。下死点X
UTPから開始して、ピストン3は正X方向に移動し、これによって、入口バルブ7aは、第1圧縮チャンバ5aにおける増加する圧力により閉止点Aにて自動的に閉止され、理想化され、第1圧縮チャンバ5aにおける気体は、圧縮段階BA中に出口圧力Paまで圧縮され、これによって、出口バルブ6aは、出口気圧Pa(すなわち、開放点Bにて理想化される)にて自動的に開放される。後続の放出または拡張段階BC中、ピストン3が上死点にX
OTPの位置に達するまで、第1圧縮チャンバ5aにある気体が出口バルブ6aを介して放出されるように、ピストン3は上死点X
OTPに向かって移動し、出口バルブ6aは閉止する(閉止点Cにて理想化される)。後続の膨張段階CD中、ピストン3は下死点X
UTPに向かって移動し、第1圧縮チャンバ5aにまだある残余気体は吸気圧力Psまで膨張し、その結果、入口バルブ7aが理想化された開放点Dにて自動的に開放される。後続の吸入段階DA中、ピストン3が下死点X
UTPに達するまで、気体は入口バルブ7aを介して第1圧縮チャンバ5aへと引き込まれ、入口バルブ7aは理想化された閉止点Aにて閉止される。点A,B,CおよびDに関して理想化されるという用語は、現実の動作におけるこれらの点(例えば、バルブの実在する摩擦によって生じる)が、正確には
図1に示される位置にないがその点の周りの近い範囲にあることを表す。
【0033】
レシプロコンプレッサ15の動作中、点A,B,CおよびDの間において行われる
図1に示される処理は、常に繰り返される。第1圧縮チャンバ5aが圧縮段階または排出段階にある間、第2圧縮チャンバ5bが緩和段階または吸気段階にあるように、また、第1圧縮チャンバ5aが緩和段階または吸気段階にある間、第2圧縮チャンバ5bが圧縮段階または排出段階にあるように、同一の処理が、第2圧縮チャンバ5bにおいても反対方向に行われる。
【0034】
特に有利な実施形態では、入口バルブ7a,7bおよび出口バルブ6a,6bは、自動的に開閉する。しかしながら、入口バルブ7a,7bおよび/または出口バルブ6a,6bを制御して開閉することが有利であることも示され得る。これは、リニアモータコンプレッサ1が、
図1に示されるサイクルを逆にすることによって、すなわち、制御下にある排出バルブ6aを開放することによって点Aに戻るように点A,D,CおよびBに沿って、圧力Pa下において気体を膨張させるように用いられるときに特に必要である。圧力Pa下における気体は、排気バルブ6が点Bにて閉止されるまで、線CBに沿ってピストン3を移動させることによって第1圧縮チャンバ5aに入るおよび第1圧縮チャンバ5aを膨張させ、第1圧縮チャンバ5aに存在する気体は、ピストン3がより低い低点X
UTPに達するまで、線BAに沿って膨張し、それぞれ入口バルブ7aは点Aにて制御下において開放される。次いで、ピストン3は線ADに沿って移動し、気体は第1圧縮チャンバ5aから吐き出され、入口バルブ7aは点Dにて制御下において閉止される。第1圧縮チャンバ5aにある残余気体は、線DCに沿って圧力Paまで圧縮され、出口バルブ6は制御されて点Cにて開放され、その結果、気体は圧力Pa下において第1圧縮チャンバ5aへと再び流れ込む。特に有利には、上記のサイクル処理は、
図1に示される第1および第2圧縮チャンバ5a,5bを備える複動式レシプロコンプレッサ15により、連続する点A,D,CおよびBの方向に動作する。連続する点A,D,CおよびBの方向における循環処理は、リニアモータ14がリニアジェネレータとして動作することが可能であり、その結果、機械エネルギーが、気体の記載された膨張によって電気エネルギーへと変換されることが可能であるという利点を有する。さらに有利な実施形態では、リニアモータコンプレッサ1は、したがって、流体を圧縮するもしくは膨張させるのに必要とされるように、または流体の断続的な圧縮と2方向の膨張との混合モードにおいて動作することが可能であり、これによって、動作のモードに応じて、電気エネルギーがリニアモータ15に供給される、または電気エネルギーが散逸する。さらに有利な実施形態では、リニアモータコンプレッサ1は、各々、流体が第1圧縮チャンバ5aにおいて圧縮され、流体が第2圧縮チャンバ5bにおいて膨張するように動作することも可能であり、その結果、第1圧縮チャンバ5aに解放された膨張エネルギーが第2圧縮チャンバ5bにある流体を圧縮するように用いられることが可能である。
リニアモータコンプレッサ1は、圧縮または膨張の必要に応じて、戻って動作し、第1圧縮チャンバ5aにおける流体を圧縮し、第2圧縮チャンバ5bにおける流体を膨張させることも可能である。リニアモータ15には、動作のモードに応じて、電気エネルギーが供給される、または電気エネルギーが排出されることが可能であり、または電気エネルギーを供給することなくアイドリング状態で動作することが可能である。
【0035】
レシプロコンプレッサ15の別の可能な実施形態では、第2圧縮チャンバ5bは省略され、その結果、レシプロコンプレッサ15は、第1圧縮チャンバ5aしか有さず、反対方向に動作することが可能である第2圧縮チャンバ5bを有しない。
【0036】
図2~
図4は、リニアモータコンプレッサ1の別の実施形態を示す。リニアモータコンプレッサ1は、リニアモータロータ10と第1ピストン3および第2ピストン4とを備える、フリーピストン構成16を備える。ステータ8は、リニアモータロータ10とともにリニア永久磁石同期モータ14を形成する。リニアモータコンプレッサ1は、2つのシリンダ内部5を有するシリンダ2を備え、第1圧縮チャンバ5aは第1シリンダ2aと第1ピストン3とによって形成され、第2圧縮チャンバ5bは第2シリンダ2bと第2ピストン4とによって形成される。第1圧縮チャンバ5aは、第1排気バルブ6aおよび第1入口バルブ7aを介して外部に流体接続される。第2圧縮チャンバ5bは、流体を通す第2出口バルブ6bおよび第2入口バルブ7bを介して外部に接続される。第1および第2圧縮チャンバ5a,5bは、フリーピストン構成16により反対方向に動作する。好ましくは、封止リングおよび/または軸受リングも、フリーピストン構成16をリニアモータコンプレッサ1内に支持するように、およびピストン3,4を圧縮チャンバ5a,5bに対し封止するように、第1および第2ピストン3,4に配置され、そうしたリングは一般に既知であり、
図2には示されない。ピストン3,4はラビリンスピストンとして設計されることも可能であり、その結果、ピストン3,4の表面におけるラビリンス構造が封止機能を提供するため、封止リングを不要にすることが可能である。
図3はリニア永久磁石同期モータ14を通る交差部分の線F-Fに沿った長手方向部分を示し、リニア永久磁石同期モータ14は積層ステータ区画8aを有するステータ8を備え、ステータ8は、動的に制御可能な磁極13a~13fをそれぞれ発生させるための好ましくは個々に制御可能な複数のステータ巻線12a,12b,12c,12d,12e,12fを備え、また複数の相互に長手方向に離間した永久磁石10aを有するリニアモータロータ10を備え、リニアモータロータ10はピストンロッド9の一部を形成する。ピストンロッド9は、第1および第2のピストン3,4がそれぞれ接続される取付部分9aを備える。これに加えて、リニア永久磁石同期モータ14は、有利には、ピストンロッド9を案内するための2つの径方向軸受11を備える。
【0037】
図4は、ステータ区画8および第2ステータ巻線12bを通る部分とピストンロッド9および永久磁石10aとを通る部分を伴う、リニア永久磁石同期モータ14を通る切断線E-Eに沿った断面を示す。
【0038】
例えば、永久磁石モータ、非同期モータまたはリラクタンスモータも、リニアモータ14として適している。リニアモータ14は、したがって駆動されるピストン3,4も、有利には、50mmと500mmとの間の範囲にある最大ストロークXLを有する。リニアモータ14は、したがって、比較的ロングストロークの移動を可能にする。
【0039】
図2~
図4に示されるリニアモータ14は、6つの動的に制御可能な磁極13a~13fを備え、各極はステータ巻線12a~12fによって囲まれ、好ましくは各ステータ巻線12a~12fは個々に制御可能である。リニアモータ14は、好ましくは、3~10個の動的に制御可能な磁極13a~13f、または好ましくは10~50個の動的に制御可能な磁極13a~13fを有する。動的に制御可能な磁極13a~13fの個数は、特に最大ストロークX
Lの長さに依存する。動的に制御可能な磁極13a~13fの個数は、ステータ8によってリニアモータロータ10に対し加えられる力が、時間の関数としてまたはストロークXの関数としてどれくらい精密に制御されることが可能であるかに影響を及ぼすことも可能である。
【0040】
図5は、
図1または
図2に示されるリニアモータ14の可能な制御の例示的な特性曲線30~33を示し、これによって、示される特性曲線は、リニアモータ14がレシプロコンプレッサ15に接続されないが、単独でおよびレシプロコンプレッサ15から独立してしか動作しない場合を示す。特性曲線30は、下死点X
UTPから上死点X
OTPおよび逆方向の全サイクル中の、リニアモータ14のストロークXを時間tの関数として示す。特性曲線31は、リニアモータロータ10の速度を時間tの関数として示し、リニアモータロータ10の時間の関数としての速度が、区間31aにおいて線形に増加し、区間13cにおいて線形に減少し、区間13dにおいて0でありその結果リニアモータロータ10が静止しているように、リニアモータ14は制御される。リニアモータロータ10が静止しているとき、特性曲線30から理解されるように、リニアモータロータ10は上死点X
OTPに達している。下死点X
UTPへの復帰移動中、リニアモータロータ10の速度は、区間31eにおいて負の符号により線形に増加し、区間31fにおいて一定のままであり、リニアモータロータ10が下死点X
UTPにて静止するまで区間13gにおいて線形に減少する。特性曲線32は、リニアモータロータ10の加速度を時間tの関数として示し、ここで、リニアモータロータ10は、区間32aおよび32gにおいて一定の正の加速度により加速し、区間32c、32eにおいて一定の負の加速度により減速し、区間32b,32dおよび32fにおいて加速せずに移動する。特性曲線33は、リニアモータロータ14によってリニアモータロータ10に対し加えられる力を時間tの関数として示し、一定の加速力が区間33aにおいて加えられ、リニアモータロータ10の移動中に加えられる摩擦力に打ち勝つように小さい一定の力が区画33bにおいて加えられ、リニアモータロータ10を上死点X
OTPにて静止させるように負の力が区画33cにおいて加えられる。静止中、すなわち区間33d中、加速度は適用されない。その後、リニアモータロータ10は、一定の力によって区間33eにおいて再び加速し、加えられる摩擦力に打ち勝つように区間33fにおいて作用する小さい一定の力によって運動し続け、区間33gにおいて作用する一定の力によって下死点X
UTPにて停止するように制動がかかる。区間33cおよび33g中、リニアモータ14はリニアモータロータ10に制動をかけ、この処理において解放されたエネルギーは熱へと変換されることが可能であり、リニアモータ14は、好ましくは、区間33cおよび33g中ジェネレータとして動作し、この処理において解放された電気エネルギーは、一時的にエネルギー貯蔵部に、好ましくは駆動デバイスに貯蔵される。
【0041】
リニアモータ14は、時間tまたはストロークXの関数における複数の可能性によって対応する制御部により制御されることが可能であり、好ましくは、ストローク、速度、加速度およびモータ力の特性曲線のうちの1つ以上は、時間tの関数において予め定められ、制御デバイスは、リニアモータ14が予め定められた特性曲線に少なくともほぼ従って移動するようにリニアモータ14を制御する。
図6は、リニアモータ14の制御の別の例を示す。特性曲線34は、全サイクル中のリニアモータ14のストロークXを時間tの関数として示す。特性曲線35はリニアモータ14の速度を、特性曲線36はリニアモータ14の加速度を、特性曲線37はリニアモータ14のモータ力を、時間tの関数として示す。時刻t1まで、
図6に係る特性曲線は、
図5に係る特性曲線と同様の進路を示し、これによって、
図6における時間軸はかなり短く、すなわち、
図6における移動はかなり速く、これは、
図6における速度、加速度およびモータ力についての値が
図5と比較してかなり高いことからも理解される。
図6において時刻t1と合計サイクル時間T(全サイクルの完了)との間に示される特性曲線は、リニアモータ14のさらなる制御の例を示す。この制御方法は、すべての特性曲線34,35,36および37が時刻t2と時刻t3との間においてよじれることなく連続的に変化する利点を有する。これは、よじれは通常、動作挙動における不意の変化を生じ、増加した機械的荷重を生じるため、リニアモータ14がより緩やかに動作することを意味する。
図6に示される制御の例は、リニアモータ14を制御するための多数の可能性のうちの一例でしかない。時間の関数としての複数の様々な特性曲線によりリニアモータ14を動作させる可能性は、そうしたリニアモータ14によって駆動されるレシプロコンプレッサ15が複数通りに動作することが可能であるという利点を生じる。好ましくは、リニアモータ14は、線形移動可能なフリーピストン構成16が、時間tの関数またはストロークXの関数として1つ以上の状態変数Z
sollにて与えられるように動作し、リニアモータ14は、フリーピストン構成16がその状態変数Z
sollを有するかまたは少なくともほぼ想定するように、規則的に制御される。この制御方法は、例えばリニアモータ14によって出力される最大力、リニアコンプレッサ1を動作するのに必要な最大動力、生じる最大加速度および/または生じる最大速度が予め定められる(動作中に超過することがない)点において、例えば予め定められた重要な数に関してリニアモータコンプレッサ1の動作を最適化することを可能とする。
【0042】
図1および
図2に示されるように、リニアモータコンプレッサ1は、電気リニアモータ14とそのリニアモータ14によって駆動されるレシプロコンプレッサ15とを備える。リニアモータコンプレッサ1の移動の動力学全体は、したがって、リニアモータ14に接続されたレシプロピストンコンプレッサ15の動力学と組み合わせたリニアモータ14の動力学によって本質的には決定され、動力学全体は、慣性力作用によって、リニアモータ14によって生じた電磁力によって、レシプロピストンコンプレッサ15によって生じたまたはレシプロピストンコンプレッサ15において作用する気体力によって、およびレシプロコンプレッサ15におけるレシプロピストンコンプレッサ15において作用する気体力によって、およびピストンとリニアモータ14との移動によって生じた摩擦力によって、本質的には決定される。
【0043】
以下では、フリーピストン構成16の移動の動力学が、運動方程式を立てることによってより詳細に記載される。
図2に示されるように、2つのピストン3,4は、ストローク方向Xに走るレシプロ運動においてリニアモータ14によって生じた力によって駆動される。第1ピストン3は、下死点X
UTPと上死点X
OTPとの間の範囲において正ストローク方向Xに移動する。第1ピストン3は、下死点X
UTPと上死点X
OTPとの間の範囲において正ストローク方向Xに往復して移動する。第2ピストン4は、第1ピストン3とは反対方向に、また
図2に示されるように、上死点X
OTPと下死点X
UTPとの間の範囲において正ストローク方向Xに移動する。2つのピストン3,4は反対方向に移動するため、フリーピストン構成16の運動解析を、下死点X
UTPから上死点X
OTPまで正X方向におよび下死点X
UTPに戻って移動するピストン3のサイクルについてのみ考える。この単純化されたモデルによれば、リニアモータ14によってフリーピストンアセンブリ16を移動させるように加えられる駆動力F
LMについての式は、以下の通りである。
【0044】
mg¨x=FLM+Fpr-Fpl-Ffr-Ffl
ここで、それぞれ、mgはフリーピストンアセンブリ16の合計質量であり、xはフリーピストンアセンブリの変位およびストロークであり、FprおよびFplはそれぞれ右の第2および左の第1圧縮チャンバ5b,5aにおける気圧により第1および第2のピストン3,4に対し作用する力、FfrおよびFflはそれぞれ右の第2ピストン4および左の第1ピストン3の摩擦力である。
【0045】
第1および第2ピストン3,4それぞれに対し気圧によって生じる力は、以下の式に従って計算されることが可能である。
【0046】
【数1】
ここで、d
pはそれぞれ第1および第2ピストン3,4の直径であり、P
iはそれぞれ第2の右圧縮チャンバ5b(i=l)におけるおよび第1の左圧縮チャンバ5a(i=r)における気圧である。
【0047】
リニアモータコンプレッサ1の既知の運動力学全体を考慮して、状態変数Zsollは制御デバイスによって指定されることが可能であり、これによって、制御デバイスは、リニアモータコンプレッサ1が指定された状態変数Zsollを少なくとも近似的に有するように、リニアモータ14を制御する。
【0048】
最も単純な場合では、ストローク行程点X
1(すなわち、ストロークXに沿って定められた点)と、フリーピストン構成16の名目速度v
sollおよび/または名目加速度a
sollおよび/または名目力F
sollは、状態変数Z
sollとして指定されることが可能である。ストローク行程点X
1の代わりに、ストローク行程時間T
L1(すなわち、合計サイクル時間T内に定められた時間)が、好ましくは時間測定基準として用いられる下死点X
UTPにより、指定されることも可能である。したがって、最も単純な場合では、ストローク時間T
L1およびそのストローク時間T
L1に割り当てられた、フリーピストン構成16の名目速度v
sollおよび/または名目加速度a
sollおよび/または名目力F
sollが状態変数Z
sollとして指定されることも可能である。
図9に示されるように、例えば、フリーピストン構成16の速度が点BとDとの範囲において減少するのを保証する問題がある場合、ストローク経路点X
1における速度v
sollとストローク経路点X
2における速度-v
sollとを指定する状態変数Z
sollは十分である。同様に、目標加速度a
sollおよび/または目標の力F
sollが、当然ながら、ストローク経路点にて指定されることも可能である。
【0049】
有利には、ストローク経路Xの少なくとも部分的区間に沿って、また好ましくはストローク経路全体XLに沿って維持される状態変数Zsollの進路が、状態変数Zsollとして指定される。
【0050】
さらに有利な方法では、合計サイクル時間Tの一部の間、また好ましくは合計サイクル時間Tの間維持される状態変数Zsollの曲線が、状態変数Zsollとして指定される。
【0051】
さらに有利な方法では、下死点X
UTPと上死点X
OTPとの間および/または上死点X
OTPと下死点X
UTPとの間の速度-変位曲線(その速度-変位曲線に従って、フリーピストン構成16が、
図2に示されるリニアモータコンプレッサ1の動作中に往復して移動する)が、状態変数Z
sollとして指定される。
図7は、リニアモータ14と複動式レシプロピストンコンプレッサ15とを備えるリニアモータコンプレッサ1のそうした動作方法の一例を示す。
図7は、状態変数Z
sollとして、
図2の補助により説明される本発明の動作方法に係る速度-変位曲線G
1,G
2,G
3,G
4を示す。
図7に係る図は、左側に、点Aの左への、曲線G
1に従って
図1における点Bを介して点C(上死点X
OTP)まで移動し、また曲線G
2に従って、点Dを介して点A(下死点X
UTP)まで戻る、点A(下死点X
UTP)から開始する第1ピストン3の移動を示す。
図7に係る図は、右側に、点Aの右への、第2ピストン4の速度-変位曲線G
3,G
4を、状態変数Z
sollとして示す。第2ピストン4は第1ピストン3とは反対方向に移動するため、第2ピストン4が、曲線G
3に従って、点C(上死点X
OTP)から
図1に示される点Dを介して点A(下死点X
UTP)まで移動し、曲線G
4に従って、点Bを介して点C(上死点X
OTP)まで移動する点において、第2ピストン4は第1ピストン3とは反対方向に移動する。第1および第2ピストン3,4は互いに固定されており、したがって同一の速度を有するため、異符号の速度を除き、軌跡G
1およびG
3は同一の進路を有する。同一の理由から、曲線G
2およびG
4も、異符号の速度を除き、同一の進路を示す。好ましくは、リニアモータコンプレッサ1は、下死点X
UTPと上死点X
OTPとの間において、および上死点X
OTPと下死点X
UTPとの間の復帰経路において、同一の状態変数Z
sollによりまたは同一の速度-変位曲線により移動し、その結果、すべての曲線が、速度に関する異符号を除き、同一の曲線G
1,G
2,G
3,G
4を有する。
図7に示されるように、第1ピストン3は点AとBとの間(圧縮段階AB)において第1平均速度V
m1を有し、ピストン3は点BとCとの間(放出段階BC)において第2平均速度V
m2を有し、第1平均速度V
m1は第2平均速度V
m2よりも大きい。平均速度は、ピストン3または4の2点間の平均化された速度値であるように理解される。したがって、第1平均速度V
m1は点AとBとの間の平均速度に対応し、第1平均速度V
m1は点AとBとの間の速度V(t)の時間積分を、ピストン3を点AとBとの間において移動させるのに必要な時間により除算したものに対応し、第1平均速度V
m1は点AとBとの間の経路Xに沿った速度V(X)の積分を、ピストン3を点AとBとの間において移動させるのに必要な経路距離A-Bにより除算したものに対応する。同様に、第2平均速度V
m2は、したがって、点BとCとの間の平均速度に対応し、第2平均速度V
m2は点BとCとの間の速度V(t)またはV(X)の積分を、ピストン3を点BとCとの間において移動させるのに必要な時間または経路距離A-Bによりそれぞれ除算したものに対応する。
【0052】
図7に示されるように、点Cから点Aまでの復帰移動中、第1ピストン3は点CとDとの間(緩和段階CD)において第3平均速度V
m3を有し、点DとAとの間(吸気段階DA)において、ピストン3は第4平均速度V
m4を有し、第3平均速度V
m3は第4平均速度V
m4よりも大きい。したがって、第3平均速度V
m3は点CとDとの間の平均速度に対応し、第3平均速度V
m3は点CとDとの間の速度V(t)またはV(X)の積分を、ピストン3を点CとDとの間において移動させるのに必要な時間または距離C-Dにより除算したものに対応する。同様に、第4平均速度V
m4は、したがって、点DとAとの間の平均速度に対応し、第4平均速度V
m4は点DとAとの間の速度V(t)またはV(X)の積分を、ピストン3を点DとAとの間において移動させるのに必要な時間または経路距離D-Aによりそれぞれ除算したものに対応する。
【0053】
リニアモータコンプレッサ1は、好ましくは、ピストン3および4が自身のレシプロ移動において、
図7に係る軸に必要なミラーリングを除き、同一の速度-変位曲線G
1およびG
4、または同一の速度-変位曲線G
2およびG
3を有するように動作する。動作の別の可能なモードでは、2つのピストン3および4が各々、自身のレシプロ移動において、異なる速度-変位曲線、例えば、異なる、左から右への自身の移動においてとは異なる右から左への自身の移動における速度-変位曲線を有することも可能である。
【0054】
リニアモータ14とレシプロコンプレッサ15との相互作用は、例えば、
図7に示される速度-変位曲線G
1から理解されることも可能である。点Aから開始してストローク点X3まで、進路G
1は比較的急速な増加を示す。これは、特に、圧縮段階の最初では、レシプロコンプレッサ15には小さい力しかまだ必要とされないということに起因する。これに加えて、第2圧縮チャンバ5bまたは第2圧縮チャンバ5bにおける気体は緩和段階にあり、その結果、リニアモータ14の駆動力と第2ピストン4に対し作用する緩和力との組合せによって急速な移動(すなわち、フリーピストン構成16の増加する速度Vまたは加速度)を生じるように、この気体は第2ピストン4を駆動させる。さらに有利な方法では、フリーピストン構成16はリニアモータ14によって非常に素早く駆動するため、緩和力はフリーピストン構成16の移動に対し無視できる寄与しか生じないまたは少しも寄与を生じない。ストローク点X
3後のストローク方向Xにおいて、レシプロコンプレッサ15によって吸収された圧縮力は着々と増加し、その結果、フリーピストン構成16の速度は減少し、これは、リニアモータ14が一定の動力にて動作する場合が特に当てはまる。点B後、排出バルブ6aは開放され、排出バルブ6aにて生じる流れ抵抗によりフリーピストン構成16の速度はさらに減少する。ストローク点X
4により開始し、フリーピストン構成16には必ず制動がかかり、フリーピストン構成16は上死点X
OTPまでに静止させられ、これは好ましくは制動力を発生させるリニアモータ14によって行われ、有利にはジェネレータとして動作し、発生した電気エネルギーは、例えば、フリーピストン構成16を区間A-X
3において再び加速させるように、好ましくは、制御デバイスに一時的に貯蔵される。
【0055】
図7は、速度-変位図(v-x図)を状態変数Z
sollとして示す。速度-距離図の代わりに、
図5または
図6に示される特性曲線30~37のうちの1つ、例えば、時間の関数としてのストローク、速度、加速度または力が、状態変数Z
sollとして指定されることも可能である。これに加えて、
図5または
図6に示される特性曲線30~37のうちのいくつかの組合せが、例えば、リニアモータ14によって出力される最大速度および/または加速度および/または力および/またはリニアモータ14によって消費される電力が超過しないように、例えば、状態変数Z
sollを選択することによって指定されることも可能である。
【0056】
有利な方法では、フリーピストン構成16は、下死点XUTPから圧縮段階AB中に排気バルブ6の開放点Bまで、予め定められた速度-変位曲線G1により、リニアモータ14が一定のまたは本質的に一定の動力を出力する必要があるように移動する。動力は、リニアモータ14によって加えられる駆動力FLMにフリーピストン構成16の速度Vを乗算したものから計算される。予め定められた一定の動力により、したがって、予め定められた速度-変位曲線G1が計算されることが可能である。この方法は、リニアモータコンプレッサが低動力により安全に動作することが可能である利点を有する。
【0057】
リニアモータコンプレッサ1の連続動作中、その方法は点CとDとの間において膨張段階CDを有し、膨張段階CD中、死体積Vtotにある気体が膨張する。1つの可能な方法では、リニアモータ14がジェネレータ動作による膨張力によって生じたピストン3,4の移動に制動をかけるため、リニアモータ14は、少なくとも膨張段階CDの部分的区間に沿ってジェネレータとして動作することが可能であり、処理において発生した電気エネルギーは好ましくは一時的に貯蔵される。特に有利な方法では、リニアモータ14が動的な制動効果をフリーピストン構成16に対し緩和段階CD全体中において加えないように、好ましくは、リニアモータ14が正の制動効果をフリーピストン構成16に対し緩和段階CD全体中および点CとAとの間(すなわち、段階CA全体)において加えないように、リニアモータ14は、緩和段階CDの少なくとも部分的区間に沿って、好ましくは緩和段階CD全体中において制御される。フリーピストン構成16に対する下死点XUTPに向かう方向における正の力を加える。この方法は、死空間Vtotにある気体によって膨張段階CDに沿った膨張中に解放されたエネルギーが、好ましくはフリーピストン構成16の運動エネルギーへと完全に変換され、フリーピストン構成16の運動エネルギーを第2ピストン4を介して気体に移行することによる第2圧縮チャンバ5bにある気体の圧縮を補助することを保証する。
【0058】
図8は、
図2に示されるリニアモータコンプレッサ1のさらなる有利な動作方法を示す。
図8は、幾分概略的な図、すなわち、第1ピストン3のわずかに理想化された速度-距離図を示し、ここで図は、行われる処理の単純化された図示のため、段階AC中のストロークXの関数としての第1ピストン3の速度を示し、また図は、続けて右に段階CA中のストロークXの関数としての第1ピストン3の速度を示し、より良い図示のため、段階CA中のストロークXは、
図7とは対照的に右に走るように示される。それ自体、第1ピストン3は、
図8に示される図の開始と終了との両方にて下死点X
UTPにある。予め定められた状態変数Z
sollは、フリーピストン構成16についての曲線G
1およびG
2、すなわち、
図8に示される速度-変位曲線である。圧縮段階ABは、比較的速い速度にて、特に、比較的速い第1平均速度V
m1にて、したがって時間の観点から比較的素早く走り抜ける。出口バルブ6の開放点Bの領域では、速度vは減少し、その結果、フリーピストン構成16は、放出段階BC中、減少した速度にて、または圧縮段階ABと比較して遅い第2平均速度V
m2にて移動する。下死点X
UTPから開始して、フリーピストン構成16は、排気バルブ6の開放点Bまでの圧縮段階AB中に、また続いて排気バルブ6の閉止点Cまで至る放出段階BC中に、圧縮段階AB中の第1平均速度V
m1が放出段階BC中の第2平均速度V
m2よりも速くなるように、および/または圧縮段階ABの期間が放出段階BCの期間よりも短くなるように、予め定められた状態変数Z
soll、予め定められた速度-変位曲線または予め定められた速度-時間曲線により移動する。特に、この方法は、放出段階BCの期間を増加させることを可能にする利点を有する。この方法は、フリーピストン構成16が、減少した速度にて放出段階BC中(すなわち、出口バルブ6aからの気体の流出中)に動作することが可能であり、これによって、出口バルブ6aにより生じる流出抵抗が減少し、したがって、流出により生じる損失エネルギーも減少する。圧縮段階AB中には流出が行われないため、圧縮段階ABは、追加のエネルギーを伴わないまたは極度に少ない追加のエネルギーしか伴わない、増加した速度にてまたはより速い平均速度にて走り抜けることが可能であり、その結果、放出段階BCは、好ましくは、放出段階BCを圧縮段階ABと比較して遅い平均速度にて走り抜けることによって、時間において拡張されることが可能である。この方法は、排気バルブを通じて流出する気体によって生じるエネルギー損失が減少する利点を有する。リニアモータコンプレッサの完全なレシプロ運動の与えられたサイクル時間T
Zでは、リニアモータコンプレッサは、有利には、圧縮段階AB中の第1平均速度V
m1が速く、好ましくは可能な限り速く設定されるように、また第2平均速度V
m2が第1平均速度V
m1よりも遅く、好ましくは可能な限り遅く設定されるように、しかしながら完全なレシプロ運動の与えられたサイクル時間T
Zが維持されるように、動作する。したがって、与えられたサイクル時間T
Zにより、この方法は、放出段階BCの期間を拡張し、または排気バルブ6aにおけるシリンダ内部からの気体の流量を減少させ、これによって、排気バルブにて生じるエネルギー散逸を減少させることを可能にする。この処理は、リニアモータコンプレッサの効率を増加させることを可能にする。特に有利な方法では、リニアモータ8は、少なくとも圧縮段階ABの部分的な区間中にフリーピストン構成16をモータによって駆動させ、リニアモータ8は、少なくとも排出段階BCの部分的区間中にフリーピストン構成16に制動をかけ、その際、好ましくは、圧縮段階AB中にリニアモータ8に電気エネルギーを供給するように好ましくは一時的に貯蔵され好ましくは再利用される電気エネルギーを放出するジェネレータとして動作する。電気エネルギーのこの短期間の中間貯蔵は、リニアモータコンプレッサが特に効率的に動作することを可能にし、特に、圧縮段階AB中の第1平均速度V
m1が排出段階BC中の第2平均速度V
m2よりも速くなることを保証する。曲線G
2に係る状態変数Z
sollは、フリーピストン構成16の段階CA中の移動、第1ピストン3の上死点X
OTPから下死点X
UTPまでの移動を示す。リニアモータコンプレッサ1が、
図2に示されるように二重反転ピストン3,4によって圧縮される第1および第2圧縮チャンバ5a,5bを有する場合、2つの曲線G
1,G
2は、
図8に示されるように、速度の符号を除き、同一の進路を有する。リニアモータコンプレッサ1は、単一の第1圧縮チャンバ5aしか有さず、2つの曲線G
1,G
2は異なる曲線を有することも可能である。膨張段階CDの平均速度V
m3は、
図8に示されるように、吸気段階DAの平均速度V
m4よりも速い。
【0059】
図9は、
図2に示されるリニアモータコンプレッサ1のさらなる動作方法を示す。
図9は、第1ピストン3の速度-変位図を示す。予め定められた状態変数Z
sollとして、進行G
1およびG
2が、フリーピストン構成16について指定される。これらの進行G
1,G
2は、第1および第2ピストン3,4が点A,B,CおよびDの領域において低いまたは減少した速度vにてそれぞれ移動するように選択され、フリーピストン構成がこれらの戻り点にて短時間静止することになるため、点CおよびAにおける速度は0m/sまで減少する。好ましくは、点CおよびAの領域(すなわち、特に点CおよびAに達する直前)における速度は、この速度は点BおよびDにおけるよりも遅くなるように、特に大きく減少する。
図9aおよび
図9bは、点CおよびAの領域における
図9の速度を詳細にそれぞれ示す。有利な処理では、点Cおよび点Aにおける速度は、非常に遅く、例えば0.1m/s未満である。点CおよびAにおける減少した速度は、入口バルブ7aおよび出口バルブ6aがそれぞれ低速にて閉止される効果を有する。これによって、これらのバルブは、この緩やかな閉止によって機械的にわずかにしか応力を受けず、その結果、信頼性をもって、また好ましくは長期間メンテナンスフリーで動作することが可能であるという効果を有する。
図9bに示されるように、フリーピストン構成16は、最初に大きい負の加速度によりストロークの端に向かって(下死点X
UTPに向かって)減速し、次いで減少した負の加速度により減速し、これによって、フリーピストン構成16は、静止するまで死点X
UTPにて減少した負の加速度により減速し、次いで反対方向に再び加速する。
図9aに示されるように、フリーピストン構成16は、最初に大きい負の加速度によりストロークの端に向かって(上死点X
OTPに向かって)減速し、次いで減少した負の加速度により減速し、これによって、フリーピストン構成16は、上死点X
OTPにて静止するまで減少した負の加速度により減速し、次いで反対方向に再び加速する。最も単純な場合では、状態変数Z
sollは、単一の点、例えば
図9に示される値v
sollを有するストローク経路点X
1のみからなることが可能である。この制御は、したがって、フリーピストン構成16がストローク経路点X
1にて速度v
sollを有するように行われる。これは、ストローク経路点X
1におけるフリーピストン構成の速度が、所望の低速v
sollを有するようことを保証する。
【0060】
図10は、リニアモータコンプレッサ1の動作用の制御デバイス20を示す。制御デバイス27は、1つ以上のセンサ21により信号線を介して実際の状態変数29a(リニアモータコンプレッサ1の1つ以上の実際の状態変数)、好ましくは、フリーピストン構成16のストロークXおよび/または速度vおよび/または加速度および/または加えられる力Fを検出する。状態変数Z
sollの名目値は、設定点プリセットデバイスによりプリセットされる。制御デバイス27は、実際の状態変数29aおよび名目状態変数Z
soll29eから制御信号29bを計算し、制御信号29bはインバータ制御デバイス26に送られる。インバータ駆動デバイス26は、制御線29c,29dを介して電源23およびインバータ22を駆動し、インバータ22は、電気伝導体24a,24b,24c,24dを介して複数のステータ巻線12a,12b,12c,12dを個々に駆動させるための複数の駆動部を備える。電源23は、電力線25を介してインバータ22に接続されている。特に有利な実施形態では、エネルギー供給源23はエネルギー貯蔵デバイスを備え、インバータ22は、電気エネルギーがリニアモータコンプレッサ1から抽出され、インバータ22を介してエネルギー供給源23に供給されることが可能であるように、制御可能であり、エネルギー供給源23には電気エネルギーが、好ましくは短時間、好ましくは1秒未満または1分未満の期間貯蔵される。