(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】スプレーフラッシュ合成による高温及び低温平衡外の合成
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240729BHJP
B01J 19/26 20060101ALI20240729BHJP
C01G 23/08 20060101ALI20240729BHJP
C01G 29/00 20060101ALI20240729BHJP
C01B 13/34 20060101ALI20240729BHJP
C07F 1/08 20060101ALI20240729BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B01J19/00 N
B01J19/26
C01G23/08
C01G29/00
C01B13/34
C07F1/08 B
C07F1/08 A
B22F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2021546476
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 EP2019078770
(87)【国際公開番号】W WO2020083942
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】517000357
【氏名又は名称】イエスエル-アンスティテュ・フランコ-アルマン・ドゥ・ルシェルシュ・ドゥ・サン-ルイ
(73)【特許権者】
【識別番号】509228260
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・シュピッツァー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・コメット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ケラー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・クラウミュンツァー
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529234(JP,A)
【文献】特開2005-177662(JP,A)
【文献】特開平04-325405(JP,A)
【文献】特開2014-035809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C01G
C01B
C07F
B22F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の化合物と第2の化合物とが反応して少なくとも1つの第3の化合物を形成する条件下での、少なくとも1つの第1の化合物と少なくとも1つの第2の化合物との化学反応を含む、対応する頭字語SFEによっても一般に称されるスプレーフラッシュ蒸発を含む、化学合成方法であって、
以下の(a)から(d)のステップを含む、化学合成方法:
(a)第1の化合物を含む第1の液相を調製して、第1のタンクに配置された第1の液体組成物を形成し、第2の化合物を含む第2の液相を調製して、第2のタンクに配置された第2の液体組成物を形成する工程と、
(b)第1の組成物を圧力P1下、液体の沸点より高い温度で加熱し、第2の組成物を圧力P1’下、液体の沸点より高い温度で加熱する工程、
(c)加圧下で加熱した第1及び第2の組成物を、P1及びP1’よりも低い圧力P2下で、少なくとも1つの分散装置により霧化チャンバーで同時に霧化する工程、
(d)第1の化合物と第2の化合物とを反応させることにより前記第3の化合物を得る工程。
【請求項2】
前記第3の化合物を含む粒子の形成を含むことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(b)において、P1及びP1’が等しくても又は異なっていてもよく、3~300barの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(c)において、P2が0.0001~2barの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(c)が加熱条件下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(c)が20℃~2000℃の温度で行われることを特徴とする、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記方法が、ステップ(d)の後に、以下のステップ(e)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法:
(e
)前記第3の化合物を
回収する工
程。
【請求項8】
第1の化合物及び/又は第2の化合物が独立して液体又は固体又はガス状であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
第1及び第2の液相が独立して、任意に溶媒に溶解した後の液体形態若しくは溶媒中に分散させた固体形態の第1の化合物、及び/又は任意に溶媒に溶解した後の液体形態若しくは溶媒中に分散させた固体形態の第2の化合物を各々含む又はこれらから構成され、第1及び第2の液相の溶媒は同一であっても又は異なっていてもよいことを特徴とする、請求項
1、3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第3の化合物が粒子の形態で得られ
、粒子の少なくとも1つの寸法が100nm未満で
ある、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
粒子の最大寸法が5~100nmの範囲であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
粒子の最大寸法が10~30nmの範囲であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
フィルター、静電分離機、サイクロン、静電装置を含むサイクロン及びフィルターから選択される、粒子を保持するための1つ又は複数の保持装置による第3の合成化合物を含む粒子の最終的な回収を含むことを特徴とする、請求項
10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反応が、互いに独立しているかどうかに関わらず、第1の化合物及び第2の化合物を加熱することにより行われ、加熱が5~150barの範
囲の圧力下で行われることを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
加熱が10~60barの範囲の圧力下で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応が、互いに独立しているかどうかに関わらず
、第1の化合物及び第2の化合物を加熱することにより行われることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
反応が、不活性ガス圧下で行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
不活性ガスが、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、六フッ化硫黄(SF
6
)及びクロロフルオロカーボン(CFC)から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ又は複数の組成物の霧化が独立して
・0.001~1bar未
満の圧力で、及び/又は
・60~80°の角度で
行われることを特徴とする、請求項
1、3から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
圧力が、0.02~0.2barの範囲であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化合物がエネルギー化合物、医薬品化合物、植物性医薬品化合物、医療造影化合物、蛍光化合物、光学化合物、色素化合物、芳香及び香味剤、香料(香水)、顔料、インク、塗料、金属、金属酸化物、半導体化合物、光学化合物、光電子化合物、強誘電性化合物、非線形応答化合物又は生体電子化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
反応が、固体形態の第3の化合物を得るのに適した圧力及び温度条件下で行われることを特徴とする、請求項1から
21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間蒸発若しくはフラッシュ蒸発、又は「スプレーフラッシュ合成」(又は対応する頭字語「SFS」)とも一般に称される技術による、有機物、無機物及び金属物並びにこれらの混合物のいずれか1つの化学合成のための化学合成方法及び装置に関する。
【0002】
本発明は、SFSによりこのようにして得られた化合物又は粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
粒子、特にナノ粒子を調製する粒子調製方法は当技術分野で公知である。しかし、先行技術の方法は、本質的に不連続又は「バッチ」式である。一般に、ゾルゲル式技術が用いられる。しかし、ゾルゲル技術は製造される生成物の量及び得られる生成物の質に関して、特にこれらの形態及び純度に関して性能的限界がある。これまで、工業的ニーズは、特にナノ粒子については、ゾルゲル式の不連続処理技術により満たされてきた。
【0004】
より広くは、化学化合物の合成について、工業的ニーズはこれまで、比較的収率が低いことがある化学反応、例えば単独ではないが、収率が60%で上限に達する、従来の不連続「バッチ」技術を用いるエステル化反応の使用により満たされてきた。著しく高いトン数の合成物に関わると考えると、これらの収率を増加させることは、たとえ数パーセントであっても、極めて高い利益を意味する。
【0005】
工業的ニーズを満たすことはまた、例えばゾルゲル技術により得られる酸化物等の単にその固有の質の観点からあまり十分に良好でない様々な生成物の使用を伴い、したがって不純物の分離が常に問題として残り、更には生成物を十分に結晶化するための合成後熱処理を行う必要性を伴い、これは粒子の粗大化、その結果続いて粒子の深刻な凝集(焼結)を引き起こす影響がある。
【0006】
現在の合成技術の限界には、(生成物の結晶化度、得られる粒子の大きさ及び/又は不純物の存在等の観点から)望ましいとは言えない質の生成物が得られること、なお更には収率の改善が必要であることが含まれる。これらの技術はまた、特定の場合において、更なる精製工程を必要とし、これは長い時間がかかり、したがってコストが高くなる。
【0007】
更に、既存の技術の大半は、その限界(特に、反応を局所的に精密に制御できる可能性がないこと)により、特に「ワンポット」合成中、適切な生成物又は所望の生成物を製造する能力を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に粒子、特にマイクロメートル、サブマイクロメートル又はナノメートルの大きさの粒子の形態の化合物の連続又は不連続調製のための化合物調製方法及び装置を提供することで構成される技術的問題を解決することである。
【0009】
本発明の目的は、結晶性粒子の調製を促進又は可能にすることで構成される技術的問題を特に解決することである。
【0010】
特に、本発明の目的は、化学化合物の様々な適用分野における用途に好適な特性を提示する、特に粒子の形態の化合物を提供することで構成される技術的問題を解決することである。
【0011】
本発明の目的はまた、特にゾルゲル式の従来の技術で到達できない、特に粒子の形態の化合物の調製を可能にすることで構成される技術的問題を実際に解決することである。
【0012】
本発明の目的はまた、反応の収率を改善することにより、特に粒子の形態の化合物を製造することで構成される技術的問題を実際に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、本発明に従って生じる技術的問題のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを解決するための手段を提供する。
【0014】
本発明は、(受け入れられている英語の用語に従って)「スプレーフラッシュ合成」について「SFS」と称される画期的な発明に関する。
【0015】
本発明は、第1の化合物と第2の化合物とが反応して少なくとも1つの第3の化合物を形成する条件下での、少なくとも1つの第1の化合物と少なくとも1つの第2の化合物との化学反応を含む、対応する頭字語SFEによっても一般に称される「スプレーフラッシュ蒸発」を含む、化学合成方法に関する。
【0016】
本発明はまた、合成方法を実行するための化学合成装置であって、
・少なくとも1つの第1のタンクであって、
- 第1の化合物を含む又はこれで構成される液体組成物の供給物、
- 圧力P1下で加圧するための少なくとも1つの加圧装置であって、P1が3~300barの圧力範囲から好ましくは選択される、加圧装置、
- 少なくとも1つの加熱装置
を含む、第1のタンクと、
・少なくとも1つの第2のタンクであって、
- 第2の化合物を含む又はこれで構成される液体組成物の供給物、
- 圧力P1’下で加圧するための少なくとも1つの加圧装置であって、P1’が3~300barの圧力範囲から好ましくは選択され、P1と等しい又は異なる、加圧装置、
- 少なくとも1つの加熱装置
を含み、
前記第1の化合物及び第2の化合物が共に反応性である、第2のタンクと、
・霧化チャンバーであって、
- 各タンクの液体組成物を、好ましくは30~150°の範囲の角度及びP1及びP1’より低い圧力P2で分散させるための少なくとも1つの分散装置であって、P2が0.0001~2barに及ぶ圧力範囲から好ましくは選択され、分散装置が、第1の化合物と第2の化合物とが霧化チャンバーに形成された液滴中で共に反応するように配置され、前記分散装置が、200~2000℃の範囲内から選択される温度で加熱装置により好ましくは加熱される、分散装置、
- 液体を分離するための少なくとも1つの分離装置
を含む、霧化チャンバーと、
・任意に、第1の化合物と第2の化合物との反応により形成された第3の化合物を回収するための1つ又は複数の化合物回収装置と
を含む、化学合成装置に関する。
【0017】
本発明はまた、
・少なくとも1つのタンクであって、
- 第1の化合物及び/又は第2の化合物を含む1つ又は複数の液体組成物の供給物、
- 圧力P1下で加圧するための少なくとも1つの加圧装置であって、P1が3~300barの圧力範囲から好ましくは選択される、加圧装置、
- 少なくとも1つの加熱装置
を含み、
前記第1の化合物及び第2の化合物が共に反応性である、タンクと、
・霧化チャンバーであって、
- 各タンクの流体を、好ましくは30~150°の範囲の角度、並びにP1より低い圧力P2で分散させるための少なくとも1つの分散装置であって、P2が0.0001~2barに及ぶ圧力範囲から好ましくは選択され、前記装置が200~2000℃の範囲内から選択される温度で加熱装置により好ましくは加熱される、分散装置、
- 液体を分離するための少なくとも1つの分離装置
を含む、霧化チャンバーと、
・任意に、第1の化合物と第2の化合物との反応により形成された第3の化合物を回収するための1つ又は複数の化合物回収装置と
を含む、合成方法を実行するための化学合成装置に関する。
【0018】
本発明によるSFS技術は、SFEに由来するが、合成のための/合成に対する手法における概念的ブレークスルー及び技術的ブレークスルーを組み込む新規な技術である。これらのブレークスルーは、一般に化学合成(有機及び無機合成)において実質的な変革をもたらす。
【0019】
概念的ブレークスルーは、1つ又は複数の化学化合物の合成が、噴霧(スプレー)ノズルの上流で過圧に、該ノズルの下流で一次真空に供される媒体を通過することによって行われることで構成される。したがって合成はSFE技術によって代表される真空霧化方法に統合される。本発明による合成は、単一の噴霧ノズルから行われてもよく、又は複数の噴霧ノズルからのジェットの混合をもたらすことにより行われてもよい。したがって、ほぼ無限の数の様々な種類の合成及び合成される生成物を得ることができる。
【0020】
本発明は全般的には第1、第2及び第3の化合物に関して記載される。したがって、本発明は、少なくとも1つ又は複数の第3の化合物(本明細書において純粋に任意基準で常に第3の化合物と称される)を形成するための2つ以上の反応化合物(本明細書において純粋に任意基準で常に第1及び第2の化合物と称される)間での反応を含む化学合成の任意の実施形態を包含する。したがって、「第1の化合物」及び「第2の化合物」という用語は任意であり、互いに反応性である少なくとも2つの化合物を表す。したがって、「第3の化合物」を暗示する用語は任意であり、少なくとも2つの反応物間の反応の少なくとも1つの反応生成物を表す。したがって、本発明は例えば、1つ又は複数の第3の化合物を反応の生成物として形成するための、反応性である少なくとも2つの化合物間での反応を包含する。
【0021】
一変形形態によれば、第1の化合物及び第2の化合物がその反応まで液体形態であること、並びに第3の化合物が固体形態であることは、本発明に従って重要である。したがって、特に本発明による方法及び装置の温度及び圧力の条件は、有利には、適宜選択される。
【0022】
一変形形態によれば、セルロースが固体であり、ニトロ化剤(HNO3)が液体である、例えばニトロセルロースの合成等の反応は、異なる状態(液体、固体、ガス)の2つの化合物間、例えば固体と液体の間等で行われる。
【0023】
本発明は、有利には、特に、強い加熱に供されることにより先の特許のSFEの液滴より更に著しく微細であり、且つ合成化学反応が行われるナノリアクター若しくはミクロリアクター、又は様々なナノリアクター若しくはミクロリアクターの交差部(複数のノズルの場合)を形成する液滴により構成される非常に限られた空間(ミクロ、又は更にはナノリアクター、又は実際には準安定なリアクター等の概念)での非常に局所的な合成を可能にする。これは、過大な量の反応物の使用から生じる質量効果(熱の蓄積)による何らかの暴走を回避しながら、非常に局所的な目的の合成を有利にはもたらす能力を提供する。特に有利には、本発明に従って実行されるこの化学反応は、何らかのSFE装置又は方法なしに「標準的な」反応条件下で行われる反応の熱力学的平衡をシフトさせることを可能にする。したがって、これは平衡外の合成と称される。このシフトは、少なくとも部分的には、本発明に従って観察された収率の改善を説明する。
【0024】
更に、ノズルの加熱の可能性により、特定の場合において、所望の生成物を得るために、その後の熱処理段階を回避しながら、所望の結晶相の生成物を直接得ることが可能である。特定の場合において、これが必要性を証明する場合、特に粒子の形態、例えば結晶形態の化合物のエアロゾルにおいて後処理を提供することも必要である。したがって、一変形形態によれば、特に粒子の形態で得られる化合物は結晶性であり、好ましくは結晶相は分散装置を通過する間に制御される。
【0025】
有利には、本発明は、既存の技術の大半より実際にはるかに制御された連続合成(1時間あたり最大数キログラムになる)を可能にする。一実施形態によれば、本発明は分子を合成し、合成された分子を結晶化することを可能にする。有利には、この合成は本発明による装置で極めて局所的に行われて、反応物(第1及び第2の化合物)間の接触を促進することで化学反応を促進し、特に収率を増加させ、且つ/又は合成の安全性を高める。したがって、本発明は多くの他の技術、更には既存の化学合成技術全てよりはるかに効率的な技術となる。
【0026】
したがって、酸化物、セラミックス又は有機物、例えば一般にエネルギー材料、医薬製品、エステル又は有機化合物、導電性又は非導電性ポリマー、触媒又は遷移金属錯体等の様々な(第3の)化合物が合成され得る。合成は単一のノズルを有する噴霧装置(又は「スプレー」)を利用することにより行われてもよく、又は生成物は複数のノズルのジェットの交差部で合成されてもよく、これは各々、異なる生成物(第3の化合物)を合成するために、異なる(1つ/複数の第1及び第2の)化合物を接触させるように保持及び供給する。
【0027】
一実施形態によれば、ノズルはジェットをスプレーし、これは互いに接触する。例えば、2つのノズルでジェットは互いに対向して配置される。
【0028】
本発明はまた、1つ又は複数の噴霧(スプレー)ノズルを加熱し、それにより高温、一般に200℃超への昇温を可能にするための加熱装置又は加熱工程を含む装置及び方法に関する。有利には、装置及び方法は第1の化合物及び第2の化合物の流量を調節するための流量調節手段又は装置を含む。先行技術によれば、流速はノズルからの圧力により調節された。本発明によれば、本発明に従って実行される反応を良好に制御するために、流量が精密に調節されるようにノズルの供給ライン上に配置された流量計を使用することが可能である。所与のノズルの流速は他のノズルの流速とは独立して調節され得る。
【0029】
分散装置が加熱されることが示されている場合、特に1つ又は複数の噴霧ノズルが加熱される。1つ又は複数の噴霧ノズルは、典型的には20℃~2000℃の範囲の非常に広範な温度範囲にわたって加熱される。典型的には、1つ又は複数のノズルの温度は20℃~2000℃である。一変形形態によれば、1つ又は複数のノズルの温度は40℃~2000℃である。一変形形態によれば、1つ又は複数のノズルの温度は40℃~200℃である。有利には、本発明による装置及び方法は、形成されたエアロゾルの熱処理(加熱)のための熱処理手段又は装置を含む。典型的には、熱処理手段又は装置は、ノズル自体又はノズルの下流のいずれかに熱を与えるように、例えば霧化チャンバーの上部に、即ち霧化チャンバー内の噴霧ジェットに近接して配置される。これは有利には、反応物の反応により形成された特定の所望の生成物をより完全にか焼又は結晶化することを可能にする。
【0030】
一変形形態によれば、装置はマイクロ波、パルス光(フラッシュ)、レーザー、赤外光(放射線)又は別の好適な加熱手段による加熱から選択される熱処理のための装置又は手段を含む。熱処理手段又は装置は、放射線が1つ又は複数のノズルの少なくとも出口に到達し、したがって十分な加熱を提供するように好ましくは配置される例えばマイクロ波による放射線源であり得る。
【0031】
一変形形態によれば、1つ又は複数の噴霧ノズルは、典型的には200℃~2000℃、例えば250℃~2000℃、又は更には例えば300℃~1500℃になる非常に広範な温度範囲で加熱される。
【0032】
一実施形態によれば、分散装置は、電気抵抗及び/又は誘導及び/又は振動(超音波等)により加熱される。
【0033】
一変形形態によれば、セラミック材料製のノズルが有利には用いられる。
【0034】
有利には、分散装置の加熱は、溶媒又は分散体の高速且つより制御された蒸発により形成される液滴の大きさを、SFEより更に大幅に減少させることを可能にする。本発明によるSFS技術はまた、SFSにより合成できる生成物の有効性によりその後のコストを削減する。したがって、一般に医薬製品、肥料、有機物、及びより一般により有効な材料、例えば補正バンドギャップを有する半導体が得られる。得られた医薬製品は、その高い有効性により、少量を含む投与量(及びしたがってトン量)で用いられ、その結果そのエコロジカルフットプリントを減少させ、それにより持続可能な開発を促進する。
【0035】
この加熱工程又は技術装置は、2つの極めて重要な機能、即ち溶媒又は分散流体の蒸発がSFEの場合よりも更に迅速に行われることを可能にすると同時に、その最適な結晶化をもたらす場合が多い、例えば得られた生成物のか焼等の熱処理工程の実行を確実にすることを実現することにより技術的利点を提供する。例えば先行技術によるゾルゲル式技術におけるこの熱処理工程は、材料の合成のかなり後に行われる場合が多く、これは最適な生成物を得ることを困難にし、このことから不純物の分離が困難である場合が多い。したがって、本発明は、有利には、結晶性又は非結晶性材料の連続「ワンポット」合成を行うことを可能にする。
【0036】
本発明による合成方法は、有利には、大規模に実行され得、例えば1時間あたり数キログラムの製造能力を達成できるか、又はこれを更に上回ることができる。
【0037】
本発明は、特に瞬間蒸発又はフラッシュ蒸発による霧化を含む調製方法に関し、これは、技術水準の方法の問題全て又は一部に対する解決策を提供することを可能にする。
【0038】
本発明は、特に粒子の形態の化合物、及びその調製方法、特に、特に粒子の形態の化合物を調製するための化合物調製方法であって、少なくとも第1の化合物と第2の化合物とが反応して少なくとも1つの第3の化合物を形成する反応条件下での、少なくとも1つの第1の化合物と少なくとも1つの第2の化合物との同時霧化を含む、方法に関する。本発明による装置は、少なくとも第1の化合物と第2の化合物とが反応して少なくとも1つの第3の化合物を形成する反応条件下で動作する。
【0039】
上に示すように、「第1の化合物」という用語は、「第2の化合物」とは異なる化合物を表すように用いられる。「第1の化合物」で表される複数の化合物が存在する場合もある。前記1つ又は複数の「第1の化合物」への言及は、本質的に第1の化合物を1つ又は複数の「第2の化合物」と区別するためになされる。
【0040】
したがって、本発明によるSFS技術は、化学合成、即ち、粒子、特にナノ粒子(好ましくはその少なくとも1つの寸法又は最大寸法が100nm(ナノメートル)未満である)、その少なくとも1つの寸法又は最大寸法がサブマイクロメートル(好ましくは1μm未満)又はマイクロメートル(好ましくは1mm未満)である粒子の形態の新しい結晶性又は非結晶性分子の形成に関する。
【0041】
一実施形態によれば、1つ又は複数の第1の化合物及び1つ又は複数の第2の化合物は、1つ若しくは複数の溶媒に溶解及び/又は分散され、室温で1つ若しくは複数のノズルから送出されるか、又は一次真空(典型的には100~0.1Pa)下で維持されるチャンバー内で加熱される。
【0042】
このチャンバー内において、1つ又は複数の第3の化合物が、ナノメートル、サブマイクロメートル又はマイクロメートルの粒子の形態で、結晶性又は非結晶性の状態で合成される。
【0043】
1つの特定の変形形態によれば、本発明の粒子は、その寸法の全てが有利には1000nm未満である粒子である。
【0044】
一変形形態によれば、粒子はナノ粒子、即ちその寸法の少なくとも1つ及び好ましくは全てが有利には100nm未満である。
【0045】
本発明は特に固体粒子、より特に最小寸法及び好ましくはその寸法の全てが30~100nmの範囲である粒子に関する。
【0046】
一変形形態によれば、合成された粒子は、1つ又は複数の金属元素を含む又はこれらで構成される。
【0047】
一変形形態によれば、合成された粒子は、1つ又は複数の有機化合物を含む又はこれらで構成される。
【0048】
非排他的な例としては、アルコールと酸とを混合することによるエステル化反応によるエステルの合成;立体的に妨害された位置でのセルロースのニトロ化反応若しくは分子のニトロ化反応によるニトロセルロースの合成;導電性ポリマー、例えばポリアニリン等の合成;酸化物、特に金属酸化物、例えばTiO2、ZnO、Fe2O3若しくはこれらの混合物等の合成;チタン酸塩、例えばチタン酸ビスマス等の合成;硫化物(カルコゲナイド(例えばテルル化カドミウム、セレン化水素、二硫化モリブデン、インジウムスズ酸化物(ITO)、テルル化ナトリウム、セレン化亜鉛)若しくは非酸化物の合成;希土類、炭素質材料、例えばC3N4若しくは他のセラミックス及び炭素質化合物、並びにこれらの各前駆体から出発する触媒の合成;又は更には1つ若しくは複数のノズルによるMOF(「金属有機骨格」)の合成を挙げることができる。
【0049】
好ましくは、本発明の方法により合成できる化合物は、金属酸化物、例えばTiO2、チタン酸塩、例えばチタン酸ビスマス及びMOF、例えば「HKUST-1」(香港科技大学)と称されるMOFから選択される。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、本発明の方法により合成できる化合物は、例えば100~250nmの平均径を有するTiO2ナノ粒子である。好ましくは、本発明の方法により得られるTiO2ナノ粒子は、例えばアナターゼ型構造、100~250nmの平均径及び例えば5~20m2/gのブルナウアーエメットテラー(BET)表面積を有する。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の方法により合成できる化合物は、チタン酸ビスマスナノ粒子である。好ましくは、チタン酸ビスマスナノ粒子は主にBi2Ti2O7結晶相を含む。
【0052】
本発明により合成できる化合物の中で例として、以下の化合物又は以下の技術分野における化合物を挙げることができる:
医薬、ガレヌス、医薬品、香粧品;
エネルギー材料:爆薬(一次及び二次)及び推進薬用火薬;
化粧品;
酸化物及びセラミックス;
植物衛生品;
農業食品セクター;
顔料及び塗料;
有機化学;
半導体;
触媒;
エネルギー貯蔵、特に水素貯蔵。
【0053】
本発明による方法は、エネルギー化合物、医薬品化合物、植物性医薬品化合物、医療造影化合物、蛍光化合物、光学化合物、色素化合物、芳香及び香味剤、香料(香水)、顔料、インク、塗料、金属、金属酸化物、半導体化合物、光学化合物、光電子化合物、強誘電性化合物、非線形応答化合物又は生体電子化合物から選択される化合物の粒子、特にナノ粒子の調製に関する。
【0054】
本発明による方法は、金属化合物、その酸化物及びこれらの混合物のいずれかから選択される結晶性化合物の粒子、特にナノ粒子の調製に特に有利である。
【0055】
また有利には、本発明による方法は、マイクロメートルの大きさであるか、又は500μm未満の少なくとも1つの寸法を有し、好ましくは100μm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子、特にナノ粒子を調製する能力を提供する。
【0056】
また有利には、本発明による方法は、サブマイクロメートルの大きさであるか、又は100~1000nmに含まれる少なくとも1つの寸法を有する粒子、特にナノ粒子を調製する能力を提供する。
【0057】
粒子の「大きさ」という用語は、実質的に球形ではない粒子の直径又は最小寸法、有利には粒子の寸法の全てを指すために用いられる。粒子の大きさは、走査電子顕微鏡により及び透過電子顕微鏡により測定できる。
【0058】
好ましくは、本発明による方法は、ナノメートルの大きさであるか、又は100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子、特にナノ粒子を調製する能力を提供する。
【0059】
より好ましくは、本発明により調製される粒子、特にナノ粒子は2~100nmの範囲、又は5~90nmの範囲、又は10~80nmの範囲、又は50~300nmの範囲、又は50~200nmの範囲、又は50~120nmの範囲、又は10~100nmの範囲、又は60~100nmの範囲の大きさを有する。
【0060】
別の変形形態によれば、第3の化合物は粒子の形態で得られ、例えば粒子の少なくとも1つの寸法が100nm未満であり、好ましくは最大寸法が5~100nmの範囲であり、より好ましくは10~30nmの範囲である。
【0061】
本発明の粒子には、例えば、有利にはドープされる半導体化合物及び/又は共結晶若しくはコンポジットが含まれ得る。
【0062】
本発明の化合物にはまた、例えば放射線医学における特に医療、治療又は診断用途のための蛍光材料が例として含まれ得るが、何ら限定されない。
【0063】
本発明の化合物にはまた、特に医薬製品の調製のため又は医薬若しくは治療用途のための、医薬の観点から有効な成分である化合物が含まれ得る。特に粒子の形態のこのような化合物は、特に生体適合性、生物学的利用能及び生体同化性を改善する手段を提供する。
【0064】
医療分野において、本発明は一般に、特に放射線撮像及び医療撮像における診断のためのトラッキング電力を増加させることを可能にする。
【0065】
特に粒子の形態の本発明の化合物はまた、特に石油化学用途のための触媒材料、例えば不均一触媒材料等を例として含み得るが、これらに限定されない。
【0066】
本発明はまた、光触媒又は光変換システムの効率を高めるように適合及び調整されたバンドギャップを有する半導体の開発の分野に特に好適である。
【0067】
医薬分野において、本発明は、改善された生体適合性を有する材料の開発、及び例えば、毒性であるか、又はその毒性が少なくとも1つの生体適合性表面層若しくは表皮/外皮により低減される物質の被覆を可能にするのに役立つ。したがって、本発明は、用いられる化合物の毒性を制限するために化学療法において特に有利である。
【0068】
本発明はまた、多層粒子の調製を可能にするのに役立つ。
【0069】
「多層粒子」という用語は、コア(「カーネル」としても知られる)及びコアの表面の少なくとも1層を含む粒子を指すために用いられる。コアの表面は好ましくは層で完全に覆われる。したがって、本発明の粒子は、コア及びコアの表面を好ましくは完全に覆う表面層を含む粒子に関する。本発明はまた、同心円状に配列されたコア及び複数の表面層を含む粒子、特にナノ粒子に関する。
【0070】
コア及び1つ又は複数の表面層のうちの1つ又は両方は、少なくとも1つの第1の化合物と第2の化合物との反応により得ることができる。したがって、一実施形態によれば、第3の合成化合物は1つ又は複数の表面層で被覆され得る。一実施形態によれば、1つ又は複数の化合物は、1つ又は複数の第3の合成化合物を含む1つ又は複数の表面層で被覆され得る。好ましい又は有利な変形形態及び実施形態、実行形態の全てにおいて、各層は、他の層とは独立して、1つ又は複数の化合物で構成されてもよく、ある層の1つ又は複数の化合物が、別の層の1つ又は複数の化合物と異なっていてもよい。
【0071】
本発明はまた、有機/無機又は有機/金属ハイブリッド型粒子に関する。
【0072】
本発明は更にまた、具体的には、本発明により記載される方法により得ることができる粒子であって、少なくとも1つの第3の合成化合物を含む粒子に関する。
【0073】
一変形形態によれば、方法は前記第3の化合物を含む粒子の形成を含み、前記粒子は液体、固体又はガス状形態である。
【0074】
本発明はより具体的には、
(a)第1の化合物及び第2の化合物を含む液相を調製して、霧化可能な液体組成物を形成する工程と、
(b)液体組成物を、大気圧より高い圧力P1で加熱する工程であって、P1が好ましくは3~300barの範囲であり、加熱が液相の沸点よりも高い温度で行われる、工程と、
(c)第1の化合物及び第2の化合物を含む液体組成物を霧化する工程であって、霧化が、P1より低い圧力P2で分散装置により霧化チャンバーで好ましくは行われ、P2が好ましくは0.0001~2barの範囲である、工程と、
(d)第1の化合物と第2の化合物とを反応させることにより前記第3の化合物を得る工程と、
(e)任意に、液相から第3の化合物を分離する工程と
を含む、方法に関する。
【0075】
特に粒子の形態の合成化合物からの液体の分離は、有利には霧化中に行われる。
【0076】
一変形形態によれば、方法は
(a)第1の化合物を含む第1の液相を調製して、第1のタンクに配置された第1の液体組成物を形成し、第2の化合物を含む第2の液相を調製して、第2のタンクに配置された第2の液体組成物を形成する工程と、
(b)第1の組成物を圧力P1下、液体の沸点より高い温度で加熱し、第2の組成物を圧力P1’下で加熱する工程であって、好ましくは、等しくても又は異なっていてもよいP1及びP1’が大気圧より高く、より好ましくは、P1及びP1’が互いに独立して3~300barの範囲であり、各液体組成物の加熱が考慮される液相各々の沸点よりも高い温度で行われる、工程と、
(c)加圧下で加熱した第1及び第2の組成物を、P1より低く、好ましくは0.0001~2barの範囲である圧力P2下で、少なくとも1つの分散装置により霧化チャンバーで同時に霧化する工程であって、前記分散が加熱条件下、好ましくは20℃~2000℃の温度で好ましくは行われる、工程と、
(d)第1の化合物と第2の化合物とを反応させることにより前記第3の化合物を得る工程と、
(e)任意に、液相から前記第3の化合物を分離する工程と
を含む。
【0077】
別の変形形態によれば、第1の化合物及び/又は第2の化合物は独立して液体又は固体又はガス状である。
【0078】
別の実施形態によれば、第1及び第2の液相は独立して、任意に溶媒に溶解した後の液体形態若しくは溶媒中に分散させた固体形態の第1の化合物、及び/又は任意に溶媒に溶解した後の液体形態若しくは溶媒中に分散させた固体形態の第2の化合物を各々含む又はこれらから構成され、第1及び第2の液相の溶媒は同一であっても又は異なっていてもよい。
【0079】
一変形形態によれば、方法は第1の液体中での第1の固体化合物の分散又は溶解を含む。
【0080】
一変形形態によれば、方法は第2の液体中での第2の固体化合物の分散又は溶解を含む。
【0081】
一変形形態によれば、第1及び第2の液体は異なるか又は同一である。
【0082】
一変形形態によれば、液体形態の第1の化合物は第1の流体組成物を構成する。
【0083】
一変形形態によれば、液体形態の第2の化合物は第2の流体組成物を構成する。
【0084】
有利には、反応は、固体形態の第3の化合物を得るのに適した圧力及び温度条件下で行われる。
【0085】
一変形形態によれば、本発明の装置又は方法は、好ましくはマイクロメートル、サブマイクロメートル又はナノメートルの粒子の形態の1つ又は複数の第3の合成化合物を形成するように液相中に分散させた粒子を含む多相流体を利用する。
【0086】
一変形形態によれば、本発明の方法は、好ましくはマイクロメートル、サブマイクロメートル又はナノメートルの粒子の形態の1つ又は複数の第3の合成化合物を形成するように液相中に分散させた粒子を含む単相流体を利用する。
【0087】
一変形形態によれば、第1の固体化合物を含む第1の組成物は単相流体を形成する。
【0088】
一変形形態によれば、第1の組成物はイソプロパノール中のチタンイソプロパノレート(TTIP)の溶液を含有し、二酸化チタン又はチタン酸塩、例えばチタン酸ビスマスを得るための手段を有利には提供する。
【0089】
一変形形態によれば、第1の固体化合物を含む第1の組成物は多相流体を形成する。
【0090】
一変形形態によれば、第2の固体化合物を含む第2の組成物は単相流体を形成する。
【0091】
一変形形態によれば、第2の固体化合物を含む第2の組成物は多相流体を形成する。
【0092】
本発明の意味内において、「液体」という用語は、1つ若しくは複数の固体分散体及び/又は1つ若しくは複数のガスを任意に含む液体を指すことが特に理解される。
【0093】
本発明の意味内において、「流体」という用語は、固体分散体を任意に含む液体を指すことが特に理解される。本発明において、「流体」というこの用語は、固体粒子を分散させたガスを包含しない。
【0094】
本発明に従って、「多相流体」という用語は、1つ又は複数の非混和性相、例えば液相及び固相又は2つの非混和性液相等を含む流体を指すために用いられる。
【0095】
一変形形態によれば、多相流体は液相、及び粒子の形態、典型的にはナノ粒子の形態で好ましくは分散させた少なくとも1つの固相で構成される。
【0096】
一変形形態によれば、多相流体は液相、並びに粒子の形態、典型的にはナノ粒子の形態で好ましくは分散させた幾つかの固体で構成される。
【0097】
一変形形態によれば、多相流体は2つの液相で構成される。
【0098】
一変形形態によれば、多相流体は複数の液相、及び粒子、典型的にはナノ粒子の形態で1つ又は複数の液相中に好ましくは分散させた複数の固相で構成され、前記固相は様々な液相中に分散され得る。
【0099】
「液相」という用語は、1つ又は複数の液体化合物を含む液相を指すために用いられる。化合物は、特に、多相流体を得た後の条件下で一般的な温度及び圧力で液体である場合、「液体化合物」と定義される。一変形形態によれば、化合物は室温及び圧力、即ち25℃及び101325Paで液体である。
【0100】
液体化合物の中で特に、本発明の文脈において用いられる第1及び/又は第2の化合物の溶媒又は分散剤を挙げることができる。本発明の方法が第1及び第2の組成物の加熱を含む場合、第1及び第2の組成物の加熱は、同時であっても又は互いに独立していてもよい。
【0101】
1つの特定の変形形態によれば、本発明の方法は、
- 少なくとも1つの固体有機又は無機/鉱物化合物を液体中に分散させる工程と、
- 少なくとも1つの有機又は無機/鉱物化合物を液体に溶解する工程であって、分散化合物又は溶解化合物を含む液体が同一であっても又は異なっていてもよい、工程と、
- 分散化合物及び溶解化合物を含む液体を同時に又は独立して加圧下で加熱する工程と、
- 分散化合物及び溶解化合物を含む液体を霧化する工程と、
- 粒子、特にナノ粒子を得る工程と、
- 液体から得られたナノ粒子を分離する工程と
を含む。
【0102】
本発明による方法は有利には連続又は半連続的に行われる。好ましくは、これは連続的に行われる。
【0103】
同様に好ましくは、本発明による方法は、第1の液体化合物と称される少なくとも1つの液体化合物、及び第1の固体化合物と称される少なくとも1つの固体、有機、無機/鉱物又は有機金属化合物を含む、第1の液相、並びに第2の液体化合物と称される少なくとも1つの液体化合物、及び第2の固体化合物と称される少なくとも1つの有機、無機/鉱物又は有機金属化合物を含む、第2の液相であって、該化合物が液相に溶解される、第2の液相の、少なくとも2つの相の調製を含む。これらの液相は各々独立して複数のこれらの化合物を含み得る。
【0104】
一変形形態によれば、方法はコアを取り囲む1つ又は複数の層からなる粒子の調製を含む。例えば、本発明による方法により形成された粒子を再利用することによる本発明による方法の繰り返しにより、即ち本発明の方法により形成された粒子を再び本発明の方法に供して、新しい第3の化合物を合成するための合成反応により又はそれなしで少なくとも1つの新しい表面層が表面に堆積することにより、このような粒子を調製することが可能である。したがって、工程a)で分散させた粒子は、それ自体が1つ又は複数の層で被覆された粒子であり得る。この変形形態によれば、本発明の方法が繰り返されるたびに、1つ又は複数の追加の表面層が粒子上に堆積する。
【0105】
一変形形態によれば、方法は、化合物が溶解される液体中での溶解度が異なる化合物を利用することによる、粒子のコアを取り囲む複数の層を含む粒子の調製を含む。例えば、溶解度が十分に異なる場合、溶解性が最も低い化合物が最初に粒子の表面上に堆積し、続いてその後溶解性がより高い/最も高い化合物が、粒子の表面に既に堆積した化合物(溶解度のより低い/最も低い)層の表面に堆積する。
【0106】
一変形形態によれば、方法は、第1の表面層を形成することが意図された化合物を含む第1の液体中での粒子のコアを形成することが意図された化合物の分散、並びに第2の液体中での第2の表面層を形成することが意図された化合物の溶解を含む。好ましくは、第2の液体中での第2の表面層を形成することが意図された化合物の溶解度は、第1の液体中での第1の表面層を形成することが意図された化合物の溶解度より高い。
【0107】
一変形形態によれば、方法は、共結晶と称される複数の結晶からなる結晶粒子の調製を含む。
【0108】
1つ又は複数の液体の選択は、特に、分散される化合物又は溶解される化合物に応じて適合させてもよい。
【0109】
好ましくは、1つ又は複数の流体組成物の加熱は互いに独立して5~150barの範囲、好ましくは10~60barの範囲の圧力下で行われる。
【0110】
溶媒として、アルカン、例えばペンタン(PE=36℃)、シクロペンタン(PE=49℃)又はヘキサン(PE=68℃)、同様にシクロヘキサン(PE=81℃);有機酸(例えばギ酸、シュウ酸又はトリフルオロ酢酸等);水(PE=100℃);アルコール、例えばメタノール(PE=65℃)又はエタノール(PE=78~79℃);チオール、例えばエタン-チオール(PE=35℃);アルデヒド、例えばエタナール(PE=20℃)又はプロピオン酸アルデヒド(PE=48℃);ケトン、例えばアセトン(PE=56℃);エーテル、メチラール(ジメトキシメタン、PE=42℃)、例えばメチル-tert-ブチルエーテル(PE=55℃)又はテトラヒドロフラン(PE=66℃);酸エステル、特にギ酸エステル、例えばギ酸メチル(PE=32℃)、酢酸エステル、例えば酢酸メチル(PE=57~58℃);アミン、例えばトリメチルアミン(PE=2~3℃)、ハロゲン化炭化水素;及びより一般に共沸液体及び混合物を挙げることができる。
【0111】
有利には、分散固体化合物を含む組成物はまた少なくとも1つの分散剤を含む。
【0112】
好ましくは、本発明による方法は、特に粒子の形態の合成化合物を回収するための最終的な化合物回収工程を含む。有利には、粒子の回収は、静電分離機、サイクロン、静電装置を含むサイクロン及びフィルター(金属メッシュ、フォーム、焼結フィルター等)から選択される1つ又は複数の粒子保持装置により行われる。したがって、一変形形態によれば、方法は、例えば、フィルター、静電分離機、サイクロン、静電装置を含むサイクロン及びフィルターから選択される、粒子を保持するための1つ又は複数の保持装置による第3の合成化合物を含む粒子の最終的な回収を含む。
【0113】
本発明による方法を実行するための条件は、特に例えば粒子を形成する合成化合物の関数として、又は用いられる液体の関数としてかなり広範に変動し得る。
【0114】
本発明は、スプレーフラッシュ蒸発(SFE)のための装置又は方法を効率的に実行することにより、第1の化合物と第2の化合物とを互いに反応させることで、第1の化合物及び第2の化合物から出発する第3の化合物を平衡外の合成のための合成方法に特に関する。
【0115】
有利には、組成物の加熱は、5~150barの範囲又は10~60barの範囲の圧力下で行われる。実行に複数の溶液を利用する場合、各溶液の加熱は各々5~150barの範囲又は10~60barの範囲の圧力下で行われ得、圧力は組成物ごとに同一であっても又は異なっていてもよい。
【0116】
また有利には、反応は、1つ又は複数の流体組成物を互いに独立して又は依存して好ましくは不活性ガス圧下で加熱しながら行われる。一変形形態によれば、組成物の加熱は窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、六フッ化硫黄(SF6)及びクロロフルオロカーボン(CFC)等から選択される不活性ガス圧下で行われる。
【0117】
一変形形態によれば、組成物の加熱は1つ又は複数の反応ガス圧下で行われる。例えば反応ガスは第1及び/又は第2の化合物を構成し得、第3の化合物を合成するための合成反応に関与し得る。
【0118】
典型的には、1つ又は複数の組成物の霧化は独立して0.001~1bar未満、好ましくは0.02~0.2barの範囲の圧力で、及び/又は60~80°の角度で行われる。
【0119】
一変形形態によれば、霧化チャンバーの圧力(P2)は加熱中に加えられる過圧(P1)より10倍、好ましくは100倍、実際に好ましくは1000倍、更には10,000倍低い。
【0120】
組成物の霧化中に利用する分散装置は、中空コーンノズル、中実コーンノズル、フラットジェットノズル、直進ジェットノズル、空気圧霧化器及びこれらの組み合わせから有利には選択される。中空コーンノズルが特に有利である。
【0121】
一般的には、霧化は非常に広範に変動し得る角度、好ましくは30~150°の範囲の角度で行われ得る。可能な霧化角度の範囲としてはまた60~80°を挙げることができる。
【0122】
これらの条件は、少なくとも2つの組成物を霧化する場合にも適用できる。
【0123】
本発明はまた方法の実行を可能にする装置に関する。
【0124】
情報として、本発明による装置及び方法により可能となる改善点の幾つかの例は以下の通りである:
1)合成反応、例えばエステル化反応の収率の増加。アルコールと酸との反応で構成されるこれらの反応は、特にアルコールの性質に応じて、60%以下の収率に制限される場合が多い。本発明による装置及び方法は、反応の収率を大幅に増加させる。
2)純又はナノコンポジットに関わらず導電性ポリマー、例えばポリアニリンの合成。
3)ニトロセルロースの合成(セルロースのニトロ化)。本発明による装置及び方法は、固相と液相とを混合する場合が多い既存の技術とは異なり、経時的により安定なニトロセルロース分子を得るための手段を提供する。本発明による装置及び方法は、弱くニトロ化されたか(ワニス)又は高度にニトロ化された(推進薬用火薬)ニトロセルロースの不安定性の問題を軽減し、これにより、安定化剤を使用して、ニトロセルロースの分解、例えば高度にニトロ化されたニトロセルロースの場合危険な爆発を起こす可能性がある有害な分解を防止する必要がもはやない。
4)目的の位置が比較的立体的に妨害される場合の分子のニトロ化反応。大量に行われたこれらの反応では、ニトロ化の遅延が生じる場合が多く、その後、かなりの量が存在する場合、且つニトロ化反応が次いで瞬時に起こる場合、反応の暴走が極めて急速に起こり得る。本発明による装置及び方法が促進に役立つ、特に連続的且つごく少量で局所的なニトロ化反応は、遅延を回避し、ニトロ化の安全性を極めて著しく高める。
5)1つ又は複数の噴霧ノズルを使用することによるMOF(「金属有機骨格」)の合成。
6)1つ又は複数の噴霧ノズルを利用することによる様々な異なる酸化物又は酸化物の混合物を合成するための合成反応。この場合には、複合酸化物を含む、例えばTiO2、ZnO、Fe2O3、WO3、Bi2O3等の例が挙げられる。ここで、本発明による装置及び方法により提供される利点は、これまでに達成されたことがない場合が多い、極めて小さい大きさの粒子を連続的に製造することと、化合物の種類に適した温度で加熱ノズルを通過することによるそのか焼(フラッシュ蒸発(マイクロ波、光フラッシュ等)により形成される粒子の加熱)後、目的の結晶状態で粒子を得る能力の両方で構成される。
7)特に様々な前駆体の熱分解による他のセラミックス若しくは炭素質材料、例えばC3N4又は混合物の合成。これは単一のノズル又は複数のノズルを利用することにより行われる。
8)酸塩基反応(蒸発する水の形成)
9)錯形成反応(リガンド/金属中心)。
【0125】
本発明はまた、本発明による方法により得ることに適している化合物又は粒子に関する。
【0126】
本発明は、例えば特に粒子の形態の合成化合物の構造体を連続的且つ再現性よく製造することを可能にし、ある意味では不連続又はバッチ式の方法、例えばゾルゲル法よりも効率的である。特に、本発明は、製造される生成物の量及び得られる生成物の質に関して、特に形態、純度等に関してはるかに効率的である。
【0127】
本発明による方法は、特に以下の様々な目的の適用分野において、従来の連続又は不連続/バッチ技術より効率的である。
【0128】
本発明による技術は、試料の全体を要する不連続技術とは異なり、最小量の材料のみが随時処理される利点を提示する。
【0129】
有利には、本発明はまた、使用した液体を再利用することを可能にする。
【0130】
図において、
図1は、特に粒子の形態の合成化合物の製造のための本発明の装置の図式表現を示す。
【0131】
本発明による装置の一実行態様を
図1に示す。装置は4つの主要部分:霧化される1つ又は複数の物質を含有する流体を高圧下で貯蔵するための2つのタンク1及び1’一式を有するアセンブリー、2つの一体型加熱セラミックノズル3を含む霧化チャンバー、並列に搭載された半連続製造を可能にする2つの軸方向サイクロン5、真空ポンプ6からなる。
【0132】
第1の化合物又は第2の化合物を有する流体を含有する5L容量のタンク1及び1’に、圧縮窒素の過圧が加えられる。最初に、この過圧は酸素を置換し、流体の蒸発を防止する。このシステムにおける体積流量は、圧縮窒素の過圧により誘導される。
【0133】
例えば15μmのフィルター2及び2’は、フィルターを通過できない寸法を有する、初期流体中の全ての固体不純物を保持する。フィルターは、一般にナノ粒子の形態の第1の固体化合物を通過させる。
【0134】
各々電気加熱システムを装着した2つの中空コーンセラミックノズル3は霧化チャンバー内に並設される。圧力、温度及び粒径分布のパラメーターが制御される。接続の種類により、ノズルの迅速な変更が可能になる。電気加熱の温度は、特に形成される結晶相を制御するように、ユーザーにより選択され、自動調節される。ノズルは、ジェットの混合をもたらすように互いに対して配向される。
【0135】
液体タンク又はコンテナー4には、タンク1と同じ液体が充填され、これは、使用後のコンジット及びノズルをすすぐために用いられる。同様に、液体タンク又はコンテナー4’には、タンク1’と同じ液体が充填される。
【0136】
軸方向サイクロン5は並列に取り付けられる。動作中、1つのサイクロンのみが使用状態であり、第2のサイクロンは待機状態である。遠心力により、固体粒子はサイクロン内部に堆積し、ガス状成分はプランジャーパイプを通ってサイクロンを離れる。サイクロンを空にするために、第2のサイクロンにつながる回路が最初に開かれ、その後続いて第1のサイクロンにつながる第1の回路が閉じられる。
【0137】
真空ポンプ6は、設備内での連続且つ持続的な流れを確保し、システムから液体の蒸気を抽出する手段を提供する。
【0138】
本発明の様々な異なる態様を以下の実施例により例示する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】特に粒子の形態の合成化合物の製造のための本発明の装置の図式表現を示す図である。
【
図2】か焼前(A、B及びC)及びか焼後(D、E及びF)の本発明による方法により形成したTiO
2粒子の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【
図3】か焼前(A及びB)及びか焼後(C及びD)の本発明による方法により得たチタン酸ビスマス粒子の透過電子顕微鏡画像を示す図である。
【
図4】本発明による方法により調製した、か焼後のチタン酸ビスマス粉末で作成したX線ディフラクトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
〔実施例〕
(実施例1)
MOF(金属有機骨格)の合成
MOFはエネルギー貯蔵の分野で大きな関心を集めている。
【0141】
この実施例において、「HKUST-1」と称される配位ポリマー(MOF)の合成を例示する。
【0142】
互いに向かってスプレーする2つのノズルを含む本発明による設備を用いて、合成を行う。一方のノズルは、アセトン1リットルあたり3.3グラムの濃度でCu(NO3)2溶液をスプレーする。第2のノズルは、アセトン1リットルあたり1.85グラムの濃度でBTC(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)の溶液をスプレーする。
2つのノズルの温度:160℃。
2つのノズルの圧力:40bar。
霧化チャンバー内の圧力:7mbar。霧化チャンバーと連通している真空ポンプにより減圧する。
【0143】
SFS方法を用いて、化学式
【0144】
【0145】
を有するMOF「HKUST1」の微粒子を得る。
【0146】
例えば霧化(一般に「スプレー乾燥」と称される)又はオートクレーブ技術を使用する従来の技術は、マイクロメートルの大きさの粒子を提供するが、本発明は、より小さい大きさの粒子を得るための手段を提供し、典型的には個々の単位粒子の1つのより大きい/最大寸法は200nm未満である。これらはより大きな寸法の凝集体を形成できる。
【0147】
本発明によるシステム又は方法により粒子を連続的に調製することが可能である。
【0148】
(実施例2)
二酸化チタン(TiO2)の合成
TiO2は一般に光触媒において及びエネルギー分野において非常に広範に用いられている。本実施例において、二酸化チタンの粒子の合成を例示する。
【0149】
互いに向かってスプレーする2つのノズルを含む本発明による設備を用いて、合成を行う。一方のノズルは、イソプロパノール中のチタンテトライソプロポキシド(TTIP)の1%質量濃度の溶液をスプレーする。第2のノズルは水をスプレーする。
2つのノズルの温度:160℃。
2つのノズルの圧力:40bar。
霧化チャンバー内の圧力:20mbar。霧化チャンバーと連通している真空ポンプにより減圧する。
【0150】
本発明によるSFS方法を用いて、TiO2の微粒子を得る。
【0151】
従来の技術はナノメートルの粒子を提供する。本発明による設備又は方法は、更に微細な粒子を得るための手段を提供する。一般に、小さいナノメートルの大きさ(例えば、原子間力顕微鏡すなわちAFMにより測定したとき典型的には20nm未満)のこれらの粒子を収集するために静電集塵器を備える必要がある。
【0152】
本発明は、特に従来のゾルゲル法と比較して不純物を制限することを可能にする。
【0153】
(実施例3)
アルコレートの加水分解による二酸化チタン(TiO2)の合成
別の例は、二酸化チタンを製造するためのチタンイソプロパノレート(TTIP)の加水分解である。
【0154】
このためには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのイソプロパノールに溶解したTTIPからなる第1の溶液を、1質量パーセントの濃度でタンクの1つに導入し、イソプロパノール及び水で構成される第2の溶液を他のタンクに配置する。導入される水の量を、1:1、1:2及び1:4と等しいTTIP/H2Oモル比を有するように固定する。
【0155】
2つの溶液を、噴霧ノズルの上流に配置された装置内で混合し、その温度を160℃で維持する。次いで、反応媒体を霧化チャンバーに注入する。
ノズルの圧力:40bar。
霧化チャンバー内の圧力:5~20mbar。霧化チャンバーと連通している真空ポンプにより減圧する。
【0156】
回収された粉末のうちの3つ全てが非晶質であり、素粒子からなり、走査電子顕微鏡画像(
図2、A、B及びC)で測定したとき、その平均径は典型的にはサブマイクロメートルである。
【0157】
空気中、400℃の温度で4時間のその後のか焼は、サブマイクロメートルの直径(
図2、D、E及びF)を有する粒子から形成されるアナターゼ粉末(TiO
2)をもたらす。
【0158】
か焼前後の本発明による方法により得られるサブマイクロメートルの粉末の形態及び構造特性を以下の表に報告する。
【0159】
【0160】
(実施例4)
チタン酸ビスマスの合成
別の例は、本発明による方法によるチタン酸ビスマスの合成である。
【0161】
この場合には、酢酸及び水を同様に含有するアセトン中の硝酸ビスマス(BN)の溶液を第1のタンクに配置する。イソプロパノール中のチタンイソプロパノレート(TTIP)の溶液を第2のタンクに配置する。2つの溶液を噴霧ノズルの上流に配置された装置内で混合し、その温度を160℃で維持する。次いで反応媒体を霧化チャンバー内に注入する。ノズル内の圧力:40bar。霧化チャンバー内の圧力:5~20mbar。霧化チャンバーと連通する真空ポンプにより減圧する。
【0162】
BN/TTIPモル比に応じて、様々なチタン酸ビスマスを製造できる。
【0163】
本発明による方法により製造したチタン酸塩試料に対して透過電子顕微鏡を用いて行ったエネルギー分散型X線分光(EDS)分析は、2つの金属元素(Ti及びBi)が原子スケールでわずか数分で混合されることを示す(
図3、B)。チタン又はビスマスがチタン酸塩の化学量論に対して過剰である場合、空気中、650℃で4時間のか焼により、おそらく相分離と共にチタン酸塩が形成される(
図3、D)。
【0164】
か焼試料(空気中、650℃、4時間)に対して行われたX線回折は、チタン酸塩、この場合はBi
2Ti
2O
7の結晶化を明確に示す(
図4)。
【0165】
本発明の他の実行例は以下の通りである:
1)エステル化反応、ニトロセルロースの合成;
2)ニトロ化反応;
3)酸化物の合成のためのアルコキシドの加水分解(例えば、Tiアルコキシド);
4)沈殿反応(酸/塩基反応)、例えばピクリン酸塩;
5)錯形成反応(金属/リガンド);
6)導電性ポリマーの合成;
7)酸化物の合成;
8)セラミックスの合成。
【符号の説明】
【0166】
1 タンク
1’ タンク
2 フィルター
2’ フィルター
3 一体型加熱セラミックノズル
4 液体タンク又はコンテナー
4’ 液体タンク又はコンテナー
5 軸方向サイクロン
6 真空ポンプ