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特許7528115微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/12 20060101AFI20240729BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20240729BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240729BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240729BHJP
   B22F 9/14 20060101ALI20240729BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B22F9/12 Z
B22F1/102
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F9/14 Z
B01J19/08 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021558316
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041941
(87)【国際公開番号】W WO2021100559
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019208105
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226954
【氏名又は名称】日清エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 周
(72)【発明者】
【氏名】末安 志織
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太郎
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510243(JP,A)
【文献】特開2007-138287(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203590(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181604(WO,A1)
【文献】特開昭62-250172(JP,A)
【文献】特開平06-073401(JP,A)
【文献】特開2007-254841(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146414(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146411(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146412(WO,A1)
【文献】特開2013-147720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/12
B22F 1/102
B22F 1/00
B22F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を用いて、熱プラズマ法、または火炎法により微粒子を製造する製造装置であって、
前記熱プラズマ法、または前記火炎法を用いて前記原料を気相状態の混合物にする処理部と、
前記処理部に前記原料を供給する原料供給部と、
前記処理部の前記気相状態の前記混合物を、不活性ガスを含む急冷ガスを用いて冷却する冷却部と、
前記気相状態の前記混合物が前記急冷ガスにより冷却されて微粒子体が製造され、前記微粒子体に、表面処理剤が変性しない温度領域で、前記表面処理剤を供給する供給部とを有する、微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記表面処理剤は、有機酸単体および有機酸溶液、アミン価を有する分散剤単体およびアミン価を有する分散剤溶液、酸価を有する分散剤単体および酸価を有する分散剤溶液、アミン価と酸価を有する分散剤単体およびアミン価と酸価を有する分散剤溶液、シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液、有機溶媒、酸性物質単体および酸性物質溶液、塩基性物質単体および塩基性物質溶液、天然樹脂単体および天然樹脂溶液、ならびに合成樹脂単体および合成樹脂溶液のうち、少なくとも1つである、請求項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記原料は、銅の粉末である、請求項1または2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記処理部に供給する、請求項1~のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記処理部に供給する、請求項1~のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
原料を用いて、熱プラズマ法、または火炎法により微粒子を製造する製造方法であって、
前記熱プラズマ法、または前記火炎法を用いて前記原料を気相状態の混合物にし、前記気相状態の前記混合物を、不活性ガスを含む急冷ガスを用いて冷却して微粒子体を製造する工程と、
前記微粒子体に、表面処理剤が変性しない温度領域で、前記表面処理剤を供給する工程とを有する、微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理剤は、有機酸単体および有機酸溶液、アミン価を有する分散剤単体およびアミン価を有する分散剤溶液、酸価を有する分散剤単体および酸価を有する分散剤溶液、アミン価と酸価を有する分散剤単体およびアミン価と酸価を有する分散剤溶液、シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液、有機溶媒、酸性物質単体および酸性物質溶液、塩基性物質単体および塩基性物質溶液、天然樹脂単体および天然樹脂溶液、ならびに合成樹脂単体および合成樹脂溶液のうち、少なくとも1つである、請求項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記原料は、銅の粉末である、請求項6または7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記微粒子体を製造する工程では、熱プラズマ炎を用いて前記原料を前記気相状態の前記混合物にしており、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記微粒子体を製造する工程では、熱プラズマ炎を用いて前記原料を前記気相状態の前記混合物にしており、前記原料を、液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径が10~200nmの微粒子を製造する製造装置および製造方法に関し、特に、表面処理された微粒子の製造装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の微粒子が種々の用途に用いられている。例えば、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、および炭化物微粒子等の微粒子は、各種電気絶縁部品等の電気絶縁材料、切削工具、機械工作材料、センサ等の機能性材料、焼結材料、燃料電池の電極材料、および触媒に用いられている。
【0003】
また、上述の各種の微粒子に対して、微粒子の酸化抑制、または機能付加のために、微粒子の表面に被膜を形成することがなされている。
例えば、特許文献1には、表面が有機酸とチタンとの化合物により被覆された、チタン金属微粒子と、その製造方法が示されている。
特許文献1では、炭素数1~18のカルボン酸の蒸気または霧を含む雰囲気中で、直径0.05~1.0mmのチタンを81~100モル%含有する金属により構成された金属細線に0.1~100μ秒の間通電加熱し、金属細線蒸発エネルギーの1.5~5.0倍のエネルギーを投入して、金属微粒子を製造している。
【0004】
特許文献2には、銅粒子と、銅粒子の表面に1nm当り2.5分子以上5.2分子以下の密度で配置される脂肪族カルボン酸を含む被覆層とを含む被覆銅粒子と、その製造方法が記載されている。
特許文献2では、脂肪族カルボン酸銅錯体を熱分解処理することで、銅イオンが還元されて金属銅粒子が生成する。次いで生成した金属銅粒子の表面に脂肪族カルボン酸が、例えば物理的に吸着することで、所定の被覆密度の脂肪族カルボン酸を含む被覆層が形成されて、所望の被覆銅粒子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-209417号公報
【文献】国際公開第2016/052275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように特許文献1のチタン金属微粒子の製造方法では、炭素数1~18のカルボン酸の蒸気または霧を含む雰囲気中で金属細線に0.1~100μ秒の間通電加熱する必要がある。特許文献2の被覆銅粒子の製造方法では、脂肪族カルボン酸銅錯体を熱分解処理する必要がある。特許文献1および特許文献2においては、表面に被膜を有する微粒子を製造するには、いずれも加熱等が必要であり、大きなエネルギーを要し、装置も大型化する。さらには、製造工程も煩雑になる。このように現状では、表面に被膜を有する微粒子等、表面処理された微粒子を容易に得ることができない。
【0007】
本発明の目的は、表面処理された微粒子を容易に得ることができる微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、原料を用いて、気相法により微粒子を製造する製造装置であって、気相法を用いて原料を気相状態の混合物にする処理部と、処理部に原料を供給する原料供給部と、処理部の気相状態の混合物を、不活性ガスを含む急冷ガスを用いて冷却する冷却部と、気相状態の混合物が急冷ガスにより冷却されて微粒子体が製造され、微粒子体に、表面処理剤が変性しない温度領域で、表面処理剤を供給する供給部とを有する、微粒子の製造装置を提供するものである。
【0009】
気相法は、熱プラズマ法、または火炎法であることが好ましい。
例えば、表面処理剤は、有機酸単体および有機酸溶液、アミン価を有する分散剤単体およびアミン価を有する分散剤溶液、酸価を有する分散剤単体および酸価を有する分散剤溶液、アミン価と酸価を有する分散剤単体およびアミン価と酸価を有する分散剤溶液、シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液、有機溶媒、酸性物質単体および酸性物質溶液、塩基性物質単体および塩基性物質溶液、天然樹脂単体および天然樹脂溶液、ならびに合成樹脂単体および合成樹脂溶液である。また、例えば、原料は、銅の粉末である。
原料供給部は、原料を、粒子状に分散させた状態で、処理部に供給することが好ましい。また、原料供給部は、原料を液体に分散させてスラリーにし、スラリーを液滴化して処理部に供給することが好ましい。
【0010】
本発明は、原料を用いて、気相法により微粒子を製造する製造方法であって、気相法を用いて原料を気相状態の混合物にし、気相状態の混合物を、不活性ガスを含む急冷ガスを用いて冷却して微粒子体を製造する工程と、微粒子体に、表面処理剤が変性しない温度領域で、表面処理剤を供給する工程とを有する、微粒子の製造方法を提供するものである。
気相法は、熱プラズマ法、または火炎法であることが好ましい。
例えば、表面処理剤は、有機酸単体および有機酸溶液、アミン価を有する分散剤単体およびアミン価を有する分散剤溶液、酸価を有する分散剤単体および酸価を有する分散剤溶液、アミン価と酸価を有する分散剤単体およびアミン価と酸価を有する分散剤溶液、シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液、有機溶媒、酸性物質単体および酸性物質溶液、塩基性物質単体および塩基性物質溶液、天然樹脂単体および天然樹脂溶液、ならびに合成樹脂単体および合成樹脂溶液である。また、例えば、原料は、銅の粉末である。
微粒子体を製造する工程では、熱プラズマ炎を用いて原料を気相状態の混合物にしており、原料を、粒子状に分散させた状態で、熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。また、微粒子体を製造する工程では、熱プラズマ炎を用いて原料を気相状態の混合物にしており、原料を、液体に分散させてスラリーにし、スラリーを液滴化して熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微粒子の製造装置および製造方法によれば、表面処理された微粒子を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の微粒子の製造方法に用いられる微粒子製造装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の微粒子の製造方法で得られた微粒子の一例を示す模式図である。
図3】本発明の微粒子の製造方法で得られた微粒子の表面被覆物の除去率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を詳細に説明する。
以下、本発明の微粒子の製造装置および製造方法の一例について説明するが、本発明は、図1に示す製造装置および製造方法に限定されるものではない。
図1は本発明の微粒子の製造方法に用いられる微粒子製造装置の一例を示す模式図である。図1に示す微粒子製造装置10(以下、単に製造装置10という)は、表面処理された微粒子30の製造に用いられるものである。製造装置10により、表面処理された微粒子30を容易に得ることができる。
製造装置10により製造される、表面処理された微粒子30は、その種類は特に限定されるものではない。製造装置10は、原料の組成を変えることにより得られる、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子、および酸窒化物微粒子等の各種の微粒子に対して、表面処理剤を供給して、表面処理された微粒子30を製造することができる。以下、表面処理された微粒子30のことを単に微粒子30ともいう。
【0014】
製造装置10は、熱プラズマ炎を発生させるプラズマトーチ12と、微粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内へ供給する材料供給装置14と、1次微粒子15を生成させるための冷却槽としての機能を有するチャンバ16と、1次微粒子15から任意に規定された粒子径以上の粒子径を有する粗大粒子を除去するサイクロン19と、サイクロン19により分級された所望の粒子径を有する2次微粒子18を回収する回収部20とを有する。製造装置10は、さらに、2次微粒子18に表面処理剤を供給する供給部40と、2次微粒子18の搬送路の温度を計測するセンサ42とを有する。
1次微粒子15および2次微粒子18は、いずれも本発明の微粒子の製造途中の微粒子体である。2次微粒子18を表面処理して得られたもの、すなわち、表面処理された微粒子30が本発明の微粒子である。
材料供給装置14、チャンバ16、サイクロン19、回収部20については、例えば、特開2007-138287号公報の各種装置を用いることができる。
【0015】
本実施形態において、微粒子の製造には、原料として、例えば、銅の粉末が用いられる。この場合、最終的に得られる微粒子30、1次微粒子15および2次微粒子18は、銅で構成される。
銅の粉末は、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒子径が適宜設定される、銅の粉末の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定されたものであり、例えば、100μm以下であり、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。なお、原料は、銅に限定されるものではなく、銅以外の金属の粉末を用いることができ、さらには合金の粉末を用いることもできる。
【0016】
プラズマトーチ12は、石英管12aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル12bとで構成されている。プラズマトーチ12の上部には微粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内に供給するための後述する供給管14aがその中央部に設けられている。プラズマガス供給口12cが、供給管14aの周辺部(同一円周上)に形成されており、プラズマガス供給口12cはリング状である。高周波発振用コイル12bには高周波電圧を発生する電源(図示せず)が接続されている。高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されると熱プラズマ炎24が発生する。熱プラズマ炎24により、原料(図示せず)が蒸発され、気相状態の混合物にされる。プラズマトーチ12が、本発明の気相法を用いて原料を気相状態の混合物にする処理部である。
【0017】
プラズマガス供給源22は、プラズマガスをプラズマトーチ12内に供給するものであり、例えば、第1の気体供給部22aと第2の気体供給部22bとを有する。第1の気体供給部22aと第2の気体供給部22bは配管22cを介してプラズマガス供給口12cに接続されている。第1の気体供給部22aと第2の気体供給部22bには、それぞれ図示はしないが供給量を調整するためのバルブ等の供給量調整部が設けられている。プラズマガスは、プラズマガス供給源22からリング状のプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。
【0018】
プラズマガスには、例えば、水素ガスとアルゴンガスの混合ガスが用いられる。この場合、第1の気体供給部22aに水素ガスが貯蔵され、第2の気体供給部22bにアルゴンガスが貯蔵される。プラズマガス供給源22の第1の気体供給部22aから水素ガスが、第2の気体供給部22bからアルゴンガスが配管22cを介してプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。なお、矢印Pで示す方向にはアルゴンガスだけを供給してもよい。
また、プラズマガスには、製造する微粒子に応じたものが用いられるため、上述のように混合ガスを用いることは必須ではなく、プラズマガスとしては1種のガスでもよい。
高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されると、プラズマトーチ12内で熱プラズマ炎24が発生する。
【0019】
熱プラズマ炎24の温度は、原料粉末の沸点よりも高い必要がある。一方、熱プラズマ炎24の温度が高いほど、容易に原料粉末が気相状態となるので好ましいが、特に温度は限定されるものではない。例えば、熱プラズマ炎24の温度を6000℃とすることもできるし、理論上は10000℃程度に達するものと考えられる。
また、プラズマトーチ12内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、0.5~100kPaである。
【0020】
なお、石英管12aの外側は、同心円状に形成された管(図示されていない)で囲まれており、この管と石英管12aとの間に冷却水を循環させて石英管12aを水冷し、プラズマトーチ12内で発生した熱プラズマ炎24により石英管12aが高温になりすぎるのを防止している。
【0021】
材料供給装置14は、供給管14aを介してプラズマトーチ12の上部に接続されている。材料供給装置14は、原料をプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給するものである。材料供給装置14が本発明の原料供給部である。
材料供給装置14は、原料を熱プラズマ炎24中に供給することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、原料を粒子状に分散させた状態で熱プラズマ炎24中に供給するものと、原料をスラリーにし、スラリーを液滴化した形態で熱プラズマ炎24中に供給するものとの2通りの方式を用いることができる。
【0022】
原料が粉末の場合、例えば、銅の粉末を、粉末の形態で供給する材料供給装置14としては、上述のように、例えば、特開2007-138287号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、材料供給装置14は、例えば、原料を貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、原料を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された原料が最終的に散布される前に、これを一次粒子の状態に分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
【0023】
キャリアガス供給源から押出し圧力がかけられたキャリアガスとともに原料は供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ供給される。
材料供給装置14は、原料の凝集を防止し、分散状態を維持したまま、原料をプラズマトーチ12内に散布することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。キャリアガスには、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。キャリアガス流量は、例えば、フロート式流量計等の流量計を用いて制御することができる。また、キャリアガスの流量値とは、流量計の目盛り値のことである。
【0024】
原料をスラリーの形態で供給する材料供給装置14は、例えば、特開2011-213524号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、材料供給装置14は、粉末状の原料が水等の液体に分散されたスラリー(図示せず)を入れる容器(図示せず)と、容器中のスラリーを攪拌する攪拌機(図示せず)と、供給管14aを介してスラリーに高圧をかけプラズマトーチ12内に供給するためのポンプ(図示せず)と、スラリーを液滴化させてプラズマトーチ12内へ供給するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給源(図示せず)とを有する。噴霧ガス供給源は、キャリアガス供給源に相当するものである。噴霧ガスのことをキャリアガスともいう。
スラリーの形態で原料を供給する場合、粉末状の原料を水等の液体に分散させてスラリーにする。なお、スラリー中の粉末状の原料と水との混合比は、特に限定されるものではなく、例えば、質量比で5:5(50%:50%)である。
【0025】
粉末状の原料をスラリーにして、スラリーを液滴化した形態で供給する材料供給装置14を用いた場合、噴霧ガス供給源から押し出し圧力をかけられた噴霧ガスが、スラリーと共に供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ供給される。供給管14aは、スラリーをプラズマトーチ内の熱プラズマ炎24中に噴霧し液滴化するための二流体ノズル機構を有しており、これにより、スラリーをプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に噴霧する。すなわち、スラリーを液滴化させることができる。噴霧ガスには、上述のキャリアガスと同様に、例えば、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
このように、二流体ノズル機構は、スラリーに高圧をかけ、気体である噴霧ガス(キャリアガス)によりスラリーを噴霧することができ、スラリーを液滴化させるための一つの方法として用いられる。
なお、上述の二流体ノズル機構に限定されるものではなく、一流体ノズル機構を用いてもよい。さらに他の方法として、例えば、回転している円板上にスラリーを一定速度で落下させて遠心力により液滴化する(液滴を形成する)方法、スラリー表面に高い電圧を印加して液滴化する(液滴を発生させる)方法等が挙げられる。例えば、原料のスラリーは酸化チタンのアルコールスラリーである。
【0026】
チャンバ16は、プラズマトーチ12の下方に隣接して設けられており、気体供給装置28が接続されている。チャンバ16内で、例えば、銅の1次微粒子15が生成される。また、チャンバ16は冷却槽として機能するものである。
【0027】
気体供給装置28は、チャンバ16内に、不活性ガスを含む冷却ガス(急冷ガス)を供給するものである。熱プラズマ炎24により原料を蒸発させて、気相状態の混合物とされ、この混合物に気体供給装置28は不活性ガスを含む冷却ガス(急冷ガス)を供給する。
気体供給装置28は、例えば、第1の気体供給源28aと、第2の気体供給源28bと、配管28cとを有する。気体供給装置28は、さらに、チャンバ16内に供給する冷却ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、またはブロア等の圧力付与装置(図示せず)を有する。気体供給装置28が本発明の冷却部である。
また、第1の気体供給源28aからのガス供給量を制御する圧力制御弁28dが設けられ、第2の気体供給源28bからのガス供給量を制御する圧力制御弁28eが設けられている。例えば、第1の気体供給源28aにアルゴンガスが貯蔵される。この場合、冷却ガスはアルゴンガスである。なお、第2の気体供給源28bには、第1の気体供給源28aとは異なるガスを貯蔵することができる。この場合、第1の気体供給源28aに貯蔵されたガスと、第2の気体供給源28bに貯蔵されたガスとの混合ガスが、冷却ガス(急冷ガス)である。例えば、第2の気体供給源28bにメタンガスが貯蔵されていれば、冷却ガス(急冷ガス)は、アルゴンガスとメタンガスとの混合ガスである。
【0028】
気体供給装置28は、熱プラズマ炎24の尾部、すなわち、プラズマガス供給口12cと反対側の熱プラズマ炎24の端、すなわち、熱プラズマ炎24の終端部に向かって、例えば、45°の角度で、矢印Qの方向に、冷却ガスとしてアルゴンガスを供給し、かつチャンバ16の内側壁16aに沿って上方から下方に向かって、すなわち、図1に示す矢印Rの方向に上述の冷却ガスを供給する。
【0029】
気体供給装置28からチャンバ16内に供給される冷却ガスにより、熱プラズマ炎24により蒸発されて気相状態の混合物にされた銅の粉末が急冷されて、銅の1次微粒子15が得られる。これ以外にも上述の冷却ガスはサイクロン19における1次微粒子15の分級に寄与する等の付加的作用を有する。冷却ガスは、例えば、アルゴンガスである。
銅の1次微粒子15の生成直後の微粒子同士が衝突し、凝集体を形成することで粒子径の不均一が生じると、品質低下の要因となる。しかしながら、熱プラズマ炎の尾部(終端部)に向かって矢印Qの方向に冷却ガスとして供給されるアルゴンガスが1次微粒子15を希釈することで、微粒子同士が衝突して凝集することが防止される。
また、矢印R方向に冷却ガスとして供給されるアルゴンガスにより、1次微粒子15の回収の過程において、1次微粒子15のチャンバ16の内側壁16aへの付着が防止され、生成した1次微粒子15の収率が向上する。
【0030】
なお、冷却ガス(急冷ガス)に、アルゴンガスを用いたが、これらに限定されるものではなく、アルゴンガス以外の不活性ガスを用いることができ、窒素ガス等を用いることができる。また、冷却ガスは不活性ガスに限定されるものではなく、空気、酸素、または二酸化炭素を用いることができる。
また、冷却ガス(急冷ガス)には、上述のアルゴンガス等以外に、例えば、炭素数が4以下の炭化水素ガスを用いることができる。このため、冷却ガス(急冷ガス)として、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、およびブタン(C10)等のパラフィン系炭化水素ガス、ならびにエチレン(C)、プロピレン(C)、およびブチレン(C)等のオレフィン系炭化水素ガスを用いることができる。
【0031】
図1に示すように、チャンバ16には、銅の1次微粒子15を所望の粒子径で分級するためのサイクロン19が設けられている。このサイクロン19は、チャンバ16から1次微粒子15を供給する入口管19aと、この入口管19aと接続され、サイクロン19の上部に位置する円筒形状の外筒19bと、この外筒19b下部から下側に向かって連続し、かつ、径が漸減する円錐台部19cと、この円錐台部19c下側に接続され、上述の所望の粒子径以上の粒子径を有する粗大粒子を回収する粗大粒子回収チャンバ19dと、後に詳述する回収部20に接続され、外筒19bに突設される内管19eとを備えている。チャンバ16と入口管19aとは接続管21により接続されており、1次微粒子15は接続管21を通ってサイクロン19に移動する。接続管21は1次微粒子15の搬送路である。
【0032】
サイクロン19の入口管19aから、1次微粒子15を含んだ気流が、外筒19b内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が図1中に矢印Tで示すように外筒19bの内周壁から円錐台部19c方向に向かって流れることで下降する旋回流が形成される。
そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内管19eからサイクロン19外に排出される。
【0033】
また、内管19eを通して、後に詳述する回収部20から負圧(吸引力)が生じるようになっている。そして、この負圧(吸引力)によって、上述の旋回する気流から分離した微粒子が、符号Uで示すように吸引され、内管19eを通して回収部20に送られるようになっている。
【0034】
サイクロン19内の気流の出口である内管19eの延長上には、所望のナノメートルオーダの粒子径を有する微粒子30を回収する回収部20が設けられている。回収部20は、回収室20aと、回収室20a内に設けられたフィルター20bと、回収室20a内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ29とを備える。サイクロン19から送られた微粒子30は、真空ポンプ29で吸引されることにより、回収室20a内に引き込まれ、フィルター20bの表面で留まった状態にされて回収される。
なお、上述の製造装置10において、使用するサイクロンの個数は、1つに限定されず、2つ以上でもよい。
【0035】
供給部40は、微粒子体(2次微粒子18)に、表面処理剤Stが変性しない温度領域で、表面処理剤Stを供給するものである。図1に示すように、供給部40は内管19eの回収部20近傍に設けられている。供給部40は、内管19eを通る2次微粒子18に表面処理剤Stを供給する。これにより、2次微粒子18に表面処理剤Stが付着し、2次微粒子18が表面処理されて、表面処理剤Stに基づく性質を有する微粒子30が得られる。
供給部40による表面処理剤Stの供給方法は、特に限定されるものではなく、例えば、表面処理剤Stを液滴化して2次微粒子18に噴霧する方法が例示される。
【0036】
上述のように、表面処理剤Stは変性しない温度領域で供給される。表面処理剤Stが変性しない温度領域では、表面処理剤Stは熱等による分解がなく、表面処理剤Stは性質が変わらない。このため、微粒子30において表面処理剤Stの性質が維持され、微粒子30は表面処理剤Stに基づく性質を有する。
上述の表面処理剤Stが変性しない温度領域とは、示差熱―熱重量同時測定(TG-DTA)により測定した温度を基に決定される温度領域のことである。
上述の表面処理剤Stが変性しない温度領域は、表面処理剤Stの示差熱―熱重量同時測定において、重量減少割合が50質量%以下である温度領域とする。重量減少割合は、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
表面処理剤Stは、できる限り変性しないことが好ましく、示差熱―熱重量同時測定による重量減少割合が50質量%を超えると、表面処理剤の変性による影響が無視できなくなることがある。表面処理剤の変性による影響をなくすために、重量減少割合は、上述のように、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
なお、示差熱―熱重量同時測定には、株式会社日立ハイテクサイエンスのSTA7200(商品名)が用いられる。
【0037】
表面処理剤Stは、特に限定されるものではないが、例えば、有機酸単体および有機酸溶液、アミン価を有する分散剤単体およびアミン価を有する分散剤溶液、酸価を有する分散剤単体および酸価を有する分散剤溶液、アミン価と酸価を有する分散剤単体およびアミン価と酸価を有する分散剤溶液、シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液、有機溶媒、酸性物質単体および酸性物質溶液、ならびに塩基性物質単体および塩基性物質溶液である。表面処理剤Stは、上述のもの以外に、天然樹脂単体および天然樹脂溶液、ならびに合成樹脂単体および合成樹脂溶液を用いることもできる。
また、有機酸が使用状態で液状であれば必ずしも水溶液のように、有機酸を溶媒に溶解させる必要はなく、有機酸を単体で使用することもできる。有機酸以外の酸性物質、塩基性物質、天然樹脂および合成樹脂等の表面処理剤Stを使用する場合でも、有機酸と同様であり、使用状態で液状であれば単体で使用することができる。
【0038】
(分散剤単体および分散剤溶液)
分散剤は、例えば、アミン価のみを有する分散剤、酸価のみを有する分散剤、アミン価と酸価を有する分散剤が用いられる。分散剤には、以下のものを用いることができる。分散剤がアミン価を有する場合、分散剤のアミン価は、10以上100以下が好ましく、10以上60以下がより好ましい。
【0039】
アミン価のみを有する分散剤としては、例えば、DISPERBYK-102、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2155、DISPERBYK?LPN6919、DISPERBYK-LPN21116、DISPERBYK-LPN21234、DISPERBYK-9075、DISPERBYK-9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、BASF社製);アジスパー(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
アミン価と酸価を有する高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2020、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-9076、Anti-Terra-205(以上、ビックケミー社製);SOLSPERSE 24000(ルーブリゾール株式会社社製);アジスパー(登録商標)PB821、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
【0041】
酸価のみを有する分散剤としては、例えば、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174(以上、ビックケミー社製)、BYK-P104、BYK-P104S、BYK-P105、BYK-220S(以上、ビックケミー社製)、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070(以上、BASF社製)、SOLSPERSE 3000、SOLSPERSE 16000、SOLSPERSE 17000、SOLSPERSE 18000、SOLSPERSE 21000、SOLSPERSE 27000、SOLSPERSE 28000、SOLSPERSE 36000、SOLSPERSE 36600、SOLSPERSE 38500、SOLSPERSE 39000、SOLSPERSE 41000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパー(登録商標)PN-411、アジスパーPA-111(味の素ファインテクノ株式会社製)等である。
【0042】
(シランカップリング剤単体およびシランカップリング溶液)
シランカップリング剤としては、下式で表されるものが挙げられる。なお、下式中、Xは有機反応基でアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。Yは無機反応基であり、一般式(-OR)からなる反応基(アルコキシ基)で、Rは同一または異なる炭素数1~3の飽和アルキル基である。なお、nは1~3の整数である。
【0043】
【化1】
【0044】
具体的に、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル?トリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン等が挙げられる。
シランカップリング剤溶液は、例えば、上述のシランカップリング剤を含む溶液である。溶液中のシランカップリング剤の含有量は特に限定されるものではなく、用途等により適宜決定されるものである。
【0045】
(有機溶媒)
有機溶媒は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、アルキルハライド類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上のもの組み合わせてもよい。
【0046】
(酸性物質単体および酸性物質溶液)
酸性物質としては、塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、および硫酸等の酸類が挙げられる。
酸性物質溶液は、例えば、上述の酸性物質を含む溶液である。溶液中の酸性物質の含有量は特に限定されるものではなく、用途等により適宜決定されるものである。
【0047】
(塩基性物質単体および塩基性物質溶液)
塩基性物質としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、グアニジン、ピコリン、アニリン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルアニリン、トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド等の金属アルコキシド;等を挙げることができる。これらのうち、弱塩基性物質であるアンモニア、モノエタノールアミン等のアミン類が好ましく、モノエタノールアミンが最も好ましい。
【0048】
(有機酸単体および有機酸溶液)
表面処理剤に酸性物質である有機酸を用いる場合、例えば、溶媒に純水を用いて水溶液として、供給部40から噴霧する。この場合、有機酸は、水溶性であり、かつ低沸点であることが好ましく、有機酸はC、OおよびHだけで構成されていることが好ましい。有機酸としては、例えば、L-アスコルビン酸(C)、ギ酸(CH)、グルタル酸(C)、コハク酸(C)、シュウ酸(C)、DL-酒石酸(C)、ラクトース一水和物、マルトース一水和物、マレイン酸(C)、D-マンニット(C14)、クエン酸(C)、リンゴ酸(C)、マロン酸(C)および脂肪族カルボン酸等を用いることができる。上述の有機酸のうち、少なくとも1種を用いることが好ましい。
有機酸の水溶液を液滴化する噴霧ガスは、例えば、アルゴンガスが用いられるが、アルゴンガスに限定されるものではなく、窒素ガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0049】
(天然樹脂単体および天然樹脂溶液)
天然樹脂としては、マツヤニ、シェラック、コーパル、ダマール、マスティック、ドラゴンズブラッド、ソゴウコウ、コパイババルサム、エレミ、ニュウコウ、モツヤク、およびオポパナックス等である。
【0050】
(合成樹脂単体および合成樹脂溶液)
合成樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタラート樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカルボナート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリラート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリメチルテルペン、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、およびアクリルゴム等である。
【0051】
センサ42は、2次微粒子18の搬送路の温度を計測するものであり、温度の計測結果は、表面処理剤Stが変性しない温度領域であるか否かの判定に利用される。
この場合、温度の計測結果は、例えば、供給部40に出力される。供給部40では、センサ42による、2次微粒子18の搬送路の温度の計測結果に基づき、表面処理剤Stが変性しない温度領域であるか否かを判定することができる。2次微粒子18の搬送路の温度が、表面処理剤Stが変性する温度領域の場合、例えば、製造装置10における1次微粒子15の製造条件を変更する。
上述のように、センサ42の温度の計測結果は、表面処理剤Stが変性しない温度領域であるか否かの判定に用いられるため、センサ42は、2次微粒子18の搬送方向の上流側、かつ供給部40の近傍に設けることが好ましい。このため、センサ42は、例えば、内管19eに設けられている。
センサ42は温度を計測できれば、その構成は特に限定されるものではないが、計測時間が短いことが好ましい。このため、センサ42には、例えば、抵抗温度計、放射温度計、赤外放射温度センサ、およびサーミスタ等を用いることができる。
【0052】
次に、上述の製造装置10を用いた微粒子の製造方法の一例について説明する。
まず、微粒子の原料粉末として、例えば、平均粒子径が5μm以下の銅の粉末を材料供給装置14に投入する。
プラズマガスに、例えば、アルゴンガスおよび水素ガスを用い、高周波発振用コイル12bに高周波電圧を印加し、プラズマトーチ12内に熱プラズマ炎24を発生させる。
また、気体供給装置28から熱プラズマ炎24の尾部、すなわち、熱プラズマ炎24の終端部に、矢印Qの方向に、冷却ガスとして、例えば、アルゴンガスを供給する。このとき、矢印Rの方向に、冷却ガスとして、アルゴンガスを供給する。
次に、キャリアガスとして、例えば、アルゴンガスを用いて銅の粉末を気体搬送し、供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給する。供給された銅の粉末は、熱プラズマ炎24中で蒸発して気相状態となり、冷却ガスにより急冷されて銅の1次微粒子15が生成される。
【0053】
そして、チャンバ16内で得られた銅の1次微粒子15は、接続管21を通りサイクロン19の入口管19aから、気流とともに外筒19bの内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が図1の矢印Tに示すように外筒19bの内周壁に沿って流れることにより、旋回流を形成して下降する。そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内壁からサイクロン19外に排出される。
【0054】
排出された2次微粒子18は、真空ポンプ29による回収部20からの負圧(吸引力)によって、図1中、符号Uに示す方向に吸引されて内管19eを通過する。2次微粒子18が内管19eを通過する際、供給部40から表面処理剤Stが2次微粒子18に、例えば、噴霧等の形態で供給されて、2次微粒子18が表面処理される。表面処理された2次微粒子18、すなわち、微粒子30が回収部20に送られ、回収部20のフィルター20bで微粒子30が回収される。このようにして、例えば、図2に示す微粒子が得られる。
【0055】
微粒子30が回収部20に回収されるとき、サイクロン19内の内圧は、大気圧以下であることが好ましい。また、微粒子30の粒子径は、目的に応じて、ナノメートルオーダの任意の粒子径が規定される。
なお、本発明では、熱源に熱プラズマ炎を用いて銅の1次微粒子を形成しているが、他の気相法を用いて銅の1次微粒子を形成することもできる。このため、気相法であれば、熱プラズマ炎を用いることに限定されるものではなく、例えば、火炎法により、銅の1次微粒子を形成する製造方法でもよい。なお、熱プラズマ炎を用いた1次微粒子の製造方法を熱プラズマ法という。
【0056】
ここで、火炎法とは、火炎を熱源として用い,例えば、銅を含む原料を火炎に通すことにより微粒子を合成する方法である。火炎法では、例えば、銅を含む原料を、火炎に供給し、そして、冷却ガスを火炎に供給し、火炎の温度を低下させて銅粒子の成長を抑制して銅の1次微粒子15を得る。
なお、火炎法においても、冷却ガスおよび表面処理剤は、上述の熱プラズマ法と同じものを用いることができる。
【0057】
次に、微粒子について説明する。
微粒子は、粒子径が10~200nmであり、上述のように表面処理されたものである。表面処理された微粒子は、表面処理剤の性質に基づく性質を有する。このため、例えば、表面処理剤がアミン価を有する分散剤であれば、微粒子は酸性の溶媒等に対する分散性を有する。表面処理剤が酸性物質である有機酸であれば、微粒子は親水性または酸性を有する。
なお、上述の微粒子の粒子径は10~200nmであるが、微粒子の粒子径は、好ましくは10~150nmである。
本発明の微粒子の粒子径はBET法を用いて測定された平均粒子径である。
本発明の微粒子は、溶媒内等に分散されている状態ではなく、微粒子単独で存在する。このため、微粒子を溶媒と組み合わせて使用する場合、微粒子と溶媒との組合せも特に限定されるものではなく、溶媒の選択の自由度が高い。
なお、表面処理された微粒子の表面状態は、例えば、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて調べることができる。
【0058】
本発明の微粒子は、上述の製造装置10を用い、表面処理剤にターピネオールのエタノール溶液を用いて製造される。具体的には、微粒子の製造条件は、プラズマガス:アルゴンガス200リットル/分、水素ガス5リットル/分、キャリアガス:アルゴンガス5リットル/分、急冷ガス:アルゴンガス150リットル/分、内圧:40kPaである。
上述の表面処理剤については、噴霧ガスを用いて銅の2次微粒子に噴霧する。噴霧ガスはアルゴンガスである。
【0059】
ここで、図3は本発明の微粒子の製造方法で得られた微粒子の表面被覆物の除去率を示すグラフである。なお、図3は、不活性雰囲気において、示差熱―熱重量同時測定(TG-DTA)で得られた結果をもとにして得られたものである。
図3の符号50は本発明の微粒子(銅の微粒子)を示し、符号52は従来例1の銅の微粒子を示し、符号54は表面処理剤に用いたターピネオールを示す。
従来例1は、本発明品に対して、急冷ガスにメタンガスを用い、かつ表面処理剤を供給していないものであるが、これらの点以外は、本発明の微粒子の製造方法と同じ製造方法で製造することができる。
【0060】
図3に示すように、本発明の微粒子(符号50参照)の表面被覆物の除去率は、表面処理剤に用いたターピネオール(符号54参照)と同じ傾向である。これに対して、従来例1(符号52参照)は、温度400℃付近まで除去率は変化しておらず、異なる傾向である。
図3に示す本発明の微粒子(符号50参照)の表面被覆物の除去率から、本発明の微粒子は、表面処理剤であるターピネオールが吸着していることが示されている。
分散性向上の確認は分散液で塗膜を作製することで確認した。一般に微粒子の溶媒への親和性が低いと、分散性が悪化し、分散液の粘度が増加し、分散液のハンドリング性が悪化する。そこで、本発明の微粒子を、溶媒(ターピネオール(C1018O))に分散させて分散液を作製し、ガラス基板への塗膜可否を確認することで溶媒への親和性を評価した。本発明の微粒子では、溶媒1gに対して、0.25g添加して塗膜が形成でき、0.5g添加しても塗膜を形成することができた。
従来例1の微粒子を、溶媒(ターピネオール(C1018O))に分散させて分散液を作製し、ガラス基板への塗膜可否を確認することで溶媒への親和性を評価した。従来例1の微粒子では、溶媒1gに対して、0.25g添加して塗膜が形成できたが、0.5g添加した場合では塗膜を形成することができなかった。
このことから、本発明の微粒子は、従来例1の微粒子に比して、溶媒への分散性が向上していることがわかる。
【0061】
本発明では、上述のように表面処理剤が変性しない温度領域で、2次微粒子に表面処理剤を供給することにより、表面処理した微粒子を得ることができる。本発明では、表面処理された粒子を直接得ることができるため、製造・回収後の未表面処理粒子を表面処理剤とともに混合、乾燥、回収するといった一般的な後処理による粒子の表面処理が不要となり、製造工程を簡素化することができる。このように本発明では、表面処理された微粒子を、容易に製造することができる。
なお、微粒子の性質を表面処理剤の性質によりコントロールすることができるため、表面処理剤を変えることにより、用途に応じた微粒子を容易に製造することができる。
表面処理された微粒子の用途としては、例えば、導電配線等の導体を作製する際に、粒子径がμmオーダの銅粒子に微粒子を混合して、銅粒子の焼結の助剤として機能させることもできる。また、表面処理された微粒子は、導電配線等の導体以外にも、電気導電性が要求されるものに利用可能であり、例えば、半導体素子同士、半導体素子と各種の電子デバイス、および半導体素子と配線層等との接合にも利用可能である。
【0062】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0063】
10 微粒子製造装置
12 プラズマトーチ
14 材料供給装置
15 1次微粒子
16 チャンバ
18 2次微粒子
19 サイクロン
20 回収部
22 プラズマガス供給源
22a 第1の気体供給部
22b 第2の気体供給部
24 熱プラズマ炎
28 気体供給装置
28a 第1の気体供給源
28b 第2の気体供給源
29 真空ポンプ
30 表面処理された微粒子(微粒子)
40 供給部
42 センサ
St 表面処理剤
図1
図2
図3