(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】スイッチ漏れ補償回路
(51)【国際特許分類】
H03K 5/133 20140101AFI20240729BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H03K5/133
H03M1/12 C
(21)【出願番号】P 2021560889
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2020025020
(87)【国際公開番号】W WO2020214377
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591025439
【氏名又は名称】ザイリンクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XILINX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フランシス, ロズワルド
(72)【発明者】
【氏名】アードマン, クリストフ
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-177403(JP,A)
【文献】特開2012-009929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/00-5/26
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のノードと第2のノードとの間に結合されており、遅延回路により受信された入力クロック信号における第1の遅延を導入するように構成されたコンデンサと、
第1のドレインが前記第2のノードに接続され、第1のソースが基準ノードに接続され、第1のゲートが調節された第1のゲート制御信号を受信するように構成された、第1のトランジスタであって、前記第1のゲート制御信号に応答して、前記第1のドレインと前記第1のソースとの間の接続性を調節する第1のトランジスタと、
第2のトランジスタであって、第2のドレインおよび第2のソースが前記コンデンサと並列に結合され、第2のゲートが前記第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を前記第2のゲートに印加するように結合された第2のトランジスタとを備え、
第1のモードで、前記第1のゲート制御信号が前記第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を前記第1のゲートに印加するとき、実質的に一定な電圧が前記コンデンサの両端に維持されている、
遅延回路。
【請求項2】
前記第1のモードで、前記第1のトランジスタが、前記第2のトランジスタによって供給される第2の漏れ電流Ileak2と実質的に一致する第1の漏れ電流Ileak1を供給する、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記第2のドレインが前記第1のノードに接続され、前記第2のソースが前記第2のゲートおよび前記第2のノードに接続される、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項4】
前記基準ノードの電位が回路接地電位を含む、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項5】
前記第2のゲートが前記第2のノードに接続されている、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項6】
前記第2のトランジスタが、前記第1のトランジスタと同じダイ上にあり、実質的に同じ寸法を有する、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項7】
前記第1のトランジスタが、nチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOSFET)を備える、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項8】
前記第1のトランジスタが、pチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(PMOSFET)を備える、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項9】
前記第1のトランジスタが伝送ゲートとして構成された、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項10】
前記コンデンサが金属酸化物半導体トランジスタを備える、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項11】
入力クロック信号に対して所定の遅延を提供する第1のノードを駆動するように結合されたバッファ出力と、
前記入力クロック信号における前記所定の遅延を導入するように構成された少なくとも1つの遅延回路であって、それぞれが、
前記第1のノードと対応する第2のノードとの間に結合されており、前記入力クロック信号における第1の遅延を導入するように構成されたコンデンサと、
第1のドレインが前記第2のノードのそれぞれの1つに接続され、第1のソースが基準ノードに接続され、第1のゲートが対応する第1のゲート制御信号に結合された第1のトランジスタであって、前記対応する第1のゲート制御信号に応答して対応する前記第1のドレインと対応する前記第1のソース間の接続性を調節する第1のトランジスタと、
第2のトランジスタであって、第2のドレインおよび第2のソースが対応する前記コンデンサと並列に結合され、対応する第2のゲートが前記第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を前記第2のゲートに印加するように結合された第2のトランジスタとを含む、少なくとも1つの遅延回路とを備え、
第1のモードで、前記第1のゲート制御信号が、対応する前記第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を前記第1のゲートに印加するとき、実質的に一定な電圧が、対応する前記コンデンサの両端に維持されている、
システム。
【請求項12】
前記第1のモードで、前記少なくとも1つの遅延回路の各々について、前記第1のトランジスタの各々が、対応する前記第2のトランジスタによって供給される対応する第2の漏れ電流Ileak2と実質的に一致する対応する第1の漏れ電流Ileak1を供給する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
第1のノードと第2のノードとの間で結合されたコンデンサを提供することであって、前記コンデンサは遅延回路により受信された入力クロック信号における第1の遅延を導入するように構成された、コンデンサを提供することと、
第1のドレインが前記第2のノードに接続され、第1のソースが基準ノードに接続され、第1のゲートが第1のゲート制御信号に結合された第1のトランジスタを提供することであって、前記第1のトランジスタが前記第1のゲート制御信号に応答して前記第1のドレインと前記第1のソースとの間の接続性を調節することと、
第2のトランジスタを提供することであって、第2のドレインおよび第2のソースが前記コンデンサと並列に結合され、第2のゲートが前記第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を前記第2のゲートに印加するように結合されることと、
第1のモードで、前記第1のゲート制御信号が前記第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を前記第1のゲートに印加するとき、実質的に一定な電圧が前記コンデンサの両端に維持されるように前記第1のトランジスタによって引き込まれる第1の漏れ電流Ileak1を前記第2のトランジスタを用いて実質的に供給することと
を含む方法。
【請求項14】
前記第1のモードで、前記第2のトランジスタが前記第1の漏れ電流Ileak1相当を実質的に生成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のドレインが前記第1のノードに接続され、前記第2のソースが前記第2のゲートおよび前記第2のノードに接続される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態は、一般に、スイッチ漏れ補償に関する。
【背景技術】
【0002】
データは、有用な値を有する情報を表す。データは、保存された情報の形態をとることができる。データ保存はアナログ形式でよい。データ保存はデジタル形式でもよい。
【0003】
デジタル形式のデータは、2つのノード間で通信することができる。デジタル通信システムの受信機では、デジタル符号化されたデータストリームをアナログ信号として受信し、アナログ-デジタル変換器(ADC)によってデジタル形式に変換することができる。ADCは、データストリームを時間の関数として解釈する。例えば、いくつかのADCは、電圧信号がいつサンプリングされるべきかを決定するクロック信号に同期されてもよい。例えば、デジタルデータのストリームの正確な復元は、正確なクロックタイミングによって決まると言ってもよい。いくつかの実装形態では、クロック信号のタイミングは、データストリーム内のシンボルを、例えば、1または0として解釈するかどうかを判定することができる。クロック信号を受信するが、その位相情報が不確実な場合がある。データの精度およびデータの完全性を向上させるために、正確なクロックの位相情報をADCに供給することができるようにデータを送り出す前またはデータを受信する際に、様々なクロック信号の位相合わせ動作を時として実行することができる。
【0004】
集積回路用途では、ADCは、通常、トランジスタで実装される1つまたは複数の回路段を使用してクリティカルなタイミング機能を実行することができる。様々なADC回路において、トランジスタのいくつかは、線形モードで動作してアナログ信号を処理するにことができる。いくつかのADC回路では、特定のトランジスタは、理想的なスイッチ(例えば、デジタル信号)として動作するように設計することができる。理想的なトランジスタスイッチは、制御信号に応答してオン状態またはオフ状態のいずれかで動作することができる。しかし、実際には、現実の集積回路内のトランジスタは、固有のデバイス特性、および/または外因性のパラメータ、例えば、デバイス・プロセス・パラメータ、印加電圧、およびデバイス温度などに関連する非理想的な挙動を示すことがある。
【発明の概要】
【0005】
スイッチ漏れ補償遅延回路に関する装置および関連する方法は、制御トランジスタと直列に接続するコンデンサの周りに漏れ電流を受動的にバイパスするように構成された補償トランジスタを含む。例示的な実施例では、コンデンサと補償トランジスタは、第1のノードと第2のノードとの間に並列に接続することができる。補償トランジスタのゲートは、例えば、そのソースおよび第2のノードに直接接続されてもよい。制御トランジスタは、そのドレインを第2のノードに接続することができる。制御信号が制御トランジスタをオフにすると、コンデンサの両端の電圧が実質的に一定に維持され得るように、制御トランジスタの漏れ電流を補償トランジスタの漏れ電流から供給することができる。遅延回路は、コンデンサの電圧ドループを有利に軽減して、例えば低速インターリーブADC動作において、クロック時間スキューを低減することができる。
【0006】
様々な実施形態は、1つまたは複数の利点を達成することができる。例えば、MOSキャパシタにより、製造ステップおよび遅延回路の面積を有利に減らすことができる。スイッチと同じサイズおよびタイプのトランジスタが、プロセス、電圧、および温度にわたりスイッチによってもたらされる漏れを補償することができる。いくつかの実施形態では、面積に対する悪影響を低減するために、トランジスタの空間位置をスイッチよりもわずかに高くすることができる。漏れ問題が広いクロック周波数範囲の用途にとって大きな制約であるため、実施形態のなかには、スイッチ漏れ補償遅延回路を導入することにより、時間スキューDACを広いクロック周波数範囲にわたって使用可能とするものもある。実施形態のなかには、いかなるデメリットもなしに、ADCが、周波数、プロセス、電圧、温度(PVT)およびミスマッチにわたり動作することができるようにするものもある。実施形態のなかには、例えば、遅延回路を現場に対して再構成可能にすることができるフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプログラマブル論理内で柔軟に使用することができるものもある。実施形態のなかには、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)などの固定したハードウェアプラットフォーム上に実装される場合、コスト、サイズ、または電力を低減することができるものもある。
【0007】
例示的な一態様では、遅延回路は、所定の遅延を得るように構成される。遅延回路は、第1のノードと第2のノードとの間に結合されたコンデンサを含む。遅延回路はまた、第1のトランジスタを含む。第1のトランジスタのドレインは第2のノードに接続され、第1のトランジスタのソースは基準ノードに接続され、第1のトランジスタのゲートは第1のゲート制御信号に結合される。第1のトランジスタは、第1のゲート制御信号に応答して、第1のドレインと第1のソース間の接続性を調節する。遅延回路はまた、第2のトランジスタを含み、ドレインおよびソースはコンデンサと並列に結合され、ゲートは第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を第2のゲートに印加するように結合される。第1のモードで、第1のゲート制御信号が第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を第1のゲートに印加するとき、コンデンサの両端の電圧は実質的に一定である。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のモードで、第1のトランジスタは、第2のトランジスタによって供給される第2の漏れ電流Ileak2と実質的に一致する第1の漏れ電流Ileak1を供給することができる。第2のドレインは第1のノードに接続されてもよく、第2のソースは第2のゲートおよび第2のノードに接続されてもよい。第2のトランジスタは、第1のトランジスタと同じダイ上にあってもよく、実質的に同じ寸法を有してもよい。第1のトランジスタは、nチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOSFET)またはpチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(PMOSFET)でよい。第1のトランジスタはまた、伝送ゲートでもよい。いくつかの実施形態では、第2のトランジスタは、nチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOSFET)でもよい。コンデンサは、金属酸化物半導体トランジスタでもよい。いくつかの実施形態では、基準ノードの電位は回路接地電位でもよい。第2のトランジスタの第2のゲートは、第2のノードに接続されてもよい。
【0009】
別の例示的な態様では、システムは、入力クロック信号に対して所定の遅延を伝える第1のノードを駆動するように結合されたバッファ出力を含む。システムはまた、所定の遅延を取得するように構成された少なくとも1つの遅延回路を含む。少なくとも1つの遅延回路の各々は、第1のノードと第2のノードとの間に結合されたコンデンサを含む。少なくとも1つの遅延回路の各々はまた、ドレインが第2のノードに接続され、ソースが基準ノードに接続され、ゲートが第1のゲート制御信号に結合された第1のトランジスタを含む。第1のトランジスタは、第1のゲート制御信号に応答して、第1のドレインと第1のソース間の接続性を調節する。少なくとも1つの遅延回路の各々はまた、第2のトランジスタを含み、ドレインおよびソースはコンデンサと並列に結合され、ゲートは第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を第2のトランジスタのゲートに印加するように結合される。第1のモードで、第1のゲート制御信号が第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を第1のゲートに印加するとき、コンデンサの両端の電圧は実質的に一定である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のモードで、第1のトランジスタは、第2のトランジスタによって供給される第2の漏れ電流Ileak2と実質的に一致する第1の漏れ電流Ileak1を供給することができる。第2のトランジスタは、第1のトランジスタと同じダイ上にあり、同じ寸法を有してもよい。第1のトランジスタは、NMOSFETまたはPMOSFETでよい。第1のトランジスタはまた、伝送ゲートでもよい。第2のトランジスタはNMOSFETでよい。コンデンサは、金属酸化物半導体トランジスタでもよい。いくつかの実施形態では、基準ノードの電位は回路接地電位でもよい。いくつかの実施形態では、第2のトランジスタのゲートは第2のノードに接続されてもよい。
【0011】
別の例示的な態様では、方法は、第1のノードと第2のノードとの間で結合されたコンデンサを提供することと、第1のノードと第2のノードとの間で結合されたコンデンサを提供することとを含む。方法は、第1のドレインが第2のノードに接続され、第1のソースが基準ノードに接続され、第1のゲートが第1のゲート制御信号に結合された第1のトランジスタを提供することをさらに含み、第1のトランジスタが、第1のゲート制御信号に応答して第1のドレインと第1のソース間の接続性を調節する。方法はまた、第2のトランジスタを提供することであって、第2のドレインおよび第2のソースがコンデンサと並列に結合され、第2のゲートが第2のトランジスタの第2のしきい値電圧未満の電圧を第2のゲートに印加するように結合されることを含む。加えて、方法は、第1のモードで、第1のゲート制御信号が第1のトランジスタの第1のしきい値電圧未満の電圧を第1のゲートに印加するとき、コンデンサの両端の電圧が実質的に一定に維持されるように第1のトランジスタによって引き込まれる第1の漏れ電流Ileak1を第2のトランジスタを用いて実質的に供給することをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のモードにおいて、第2のトランジスタは、第1の漏れ電流Ileak1相当を実質的に生成することができる。第2のドレインは第1のノードに接続されてもよく、第2のソースは第2のゲートおよび第2のノードに接続されてもよい。基準ノードの電位は、回路接地電位でもよい。第2のゲートは、第2のノードに接続されてもよい。
【0013】
様々な実施形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。他の特徴および利点は、これらの説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】開示した回路および処理を実装することができる例示的なプログラマブル集積回路(IC)を示す。
【
図2】スイッチ漏れ補償遅延システムを有する例示的なインターリーブ型アナログ-デジタル変換器(ADC)を示す。
【
図3A】インターリーブADCに使用される遅延システムを示す。
【
図3B】遅延回路内のスイッチが理想化されたモデルにおいてオフであるときの従来技術の遅延回路を示す。
【
図3C】遅延回路内のスイッチがオフであり、スイッチに関連する漏れ電流がある場合の遅延回路の例示的な時間図を示す。
【
図4A】例示的なスイッチ漏れ補償遅延回路を示す。
【
図4B】別の例示的なスイッチ漏れ補償遅延回路を示す。
【
図4C】
図2に実装された例示的なスイッチ漏れ補償遅延システムを示す。
【
図5A】
図3Cの遅延回路の時間図を示す例示的な実験結果を示す。
【
図5B】
図4Cのスイッチ漏れ補償遅延回路の時間図を示す例示的な実験結果を示す。
【
図6A】
図3Cの遅延回路の例示的なシミュレーション結果を示す。
【
図6B】
図4Cのスイッチ漏れ補償遅延回路の例示的なシミュレーション結果を示す。
【
図7】スイッチ漏れ補償を実行するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な図面における同じ参照符号は、同じ要素を示す。
【0016】
スイッチ漏れ補償遅延回路に関する装置および関連する方法は、制御トランジスタと直列に接続するコンデンサの周りに漏れ電流を受動的にバイパスするように構成された補償トランジスタを含む。例示的な実施例では、コンデンサと補償トランジスタは、第1のノードと第2のノードとの間に並列に接続することができる。補償トランジスタのゲートは、例えば、そのソースおよび第2のノードに直接接続されてもよい。制御トランジスタは、そのドレインを第2のノードに接続することができる。制御信号が制御トランジスタをオフにすると、コンデンサの両端の電圧が実質的に一定に維持され得るように、制御トランジスタの漏れ電流を補償トランジスタの漏れ電流から供給することができる。
図4Aに関して説明した例示的な遅延回路405aなどの遅延回路は、コンデンサの電圧ドループを有利に軽減して、例えば低速インターリーブADC動作において、クロック時間スキューを低減することができる。
【0017】
理解を助けるために、この文書は以下のように構成される。まず第1に、
図1を参照して、アナログ-デジタル変換を実行するのに適した例示的なプラットフォーム(例えば、FPGA)を簡単に導入する。第2に、
図2~
図4Cを参照して、例示的な回路を使用して、所定の遅延を導入し、スイッチによってもたらされる漏れ電流をどのように補償することができるかを提示する議論に向かう。次いで、
図5Aおよび
図6Bを参照した議論では、例示的な回路の例示的な実験結果およびシミュレーション結果が開示される。最後に、
図7を参照して、スイッチ漏れ補償を実行する例示的な方法について論じる。遅延回路を使用することにより、漏れ電流を補償することができ、低速での時間スキューデジタル-アナログ変換器(DAC)機能を有利に解決することができる。
【0018】
図1は、開示した回路および処理を実装することができる例示的なプログラマブル集積回路(IC)を示す。プログラマブルIC100は、FPGAロジックを含む。プログラマブルIC100は、様々なプログラマブルリソースで実装されてもよく、システムオンチップ(SOC)と呼ばれてもよい。FPGAロジックの様々な例は、アレイ内にいくつかの多様なタイプのプログラマブル論理ブロックを含むことができる。
【0019】
例えば、
図1は、マルチギガビットトランシーバ(MGT)101、構成可能論理ブロック(CLB)102、ランダムアクセスメモリのブロック(BRAM)103、入力/出力ブロック(IOB)104、構成およびクロッキング論理(CONFIG/CLOCKS)105、デジタル信号処理ブロック(DSP)106、特殊入力/出力ブロック(I/O)107(例えば、クロックポート)、および他のプログラマブル論理108(例えば、デジタルクロックマネージャ、アナログ-デジタル変換器、システム監視論理)を含む多数の異なるプログラマブルタイルを含むプログラマブルIC100を示す。プログラマブルIC100は、専用のプロセッサブロック(PROC)110を含む。プログラマブルIC100は、内部および外部再構成ポート(図示せず)を含むことができる。
【0020】
様々な例において、シリアライザ/デシリアライザを、MGT101を使用して実装してもよい。MGT101は、様々なデータシリアライザおよびデシリアライザを含むことができる。データシリアライザは、様々なマルチプレクサの実装を含むことができる。データデシリアライザは、様々なデマルチプレクサの実装を含むことができる。
【0021】
FPGAロジックのいくつかの例では、各プログラマブルタイルは、各隣接タイル内の対応する相互接続要素との間の標準化された相互接続124を有するプログラマブル相互接続要素(INT)111を含む。したがって、まとめられたプログラマブル相互接続要素は、図示のFPGAロジックのプログラマブル相互接続構造を実装する。プログラマブル相互接続要素INT111は、
図1に含まれる例によって示されるように、同じタイル内のプログラマブル論理要素との間のイントラ接続120を含む。プログラマブル相互接続要素INT111は、
図1に含まれる例によって示されるように、同じタイル内のプログラマブル相互接続要素INT111との間のINT間接続122を含む。
【0022】
例えば、CLB102は、ユーザ論理を実装するようにプログラムすることができる構成可能論理素子(CLE)112と、単一のプログラマブル相互接続要素INT111とを含むことができる。BRAM103は、BRAM論理素子(BRL)113および1つまたは複数のプログラマブル相互接続要素を含むことができる。いくつかの例では、1つのタイルに含まれる相互接続要素の数は、タイルの高さに依存してもよい。図示の実装形態では、BRAMタイルは5つのCLBと同じ高さを有するが、他の数(例えば、4)を使用することもできる。DSPタイル106は、DSP論理素子(DSPL)114および1つまたは複数のプログラマブル相互接続要素を含むことができる。IOB104は、例えば、入力/出力論理素子(IOL)115の2つのインスタンスおよびプログラマブル相互接続要素INT111の1つのインスタンスを含むことができる。例えば、I/O論理素子115に接続される実際のI/Oボンドパッドは、様々な図示された論理ブロックの上に積層された金属を使用して製造されてもよく、入力/出力論理素子115の領域に限定されなくてもよい。
【0023】
図示の実装形態では、ダイの中心付近の列状領域(
図1に網掛けで示す)は、構成、クロック、および他の制御論理に使用される。この列から延びる水平領域109は、プログラマブルIC100の幅にわたってクロックおよび構成信号を分配する。「列状」領域および「水平」領域への言及は、図面を縦向きで見ることに対するものであることに留意されたい。
【0024】
図1に示すアーキテクチャを利用するいくつかのプログラマブルICは、プログラマブルICの大部分を構成する規則的な列状構造を中断する追加の論理ブロックを含むことができる。追加の論理ブロックは、プログラマブルブロックおよび/または専用論理でもよい。例えば、
図1に示すプロセッサブロックPROC110は、CLB102およびBRAM103のいくつかの列にまたがる。
【0025】
図1は、例示的なプログラマブルICアーキテクチャを示す。列内の論理ブロックの数、列の相対幅、列の数および順序、列に含まれる論理ブロックのタイプ、論理ブロックの相対サイズ、および相互接続/論理実装形態は、単に例として設けられている。例えば、実際のプログラマブルICでは、ユーザ論理の効率的な実装を容易にするために、CLB102がどこで発生しても、複数の隣接するCLB102の列を含むことができる。
【0026】
少なくとも1つのトランシーバが、通信中にデータ送信およびデータ受信を実行するためにFPGAに組み込まれてもよい。アナログ-デジタル変換は、連続した範囲のアナログ信号レベルをデジタルコードに変換する処理である。アナログ信号レベルは、ADCを使用してデジタル電圧、デジタル電流またはデジタル電荷信号に変換することができる。ADCは、多くの用途、例えば通信システムで使用することができる。ADC内でスイッチおよびコンデンサを使用して、ADCのサンプリングを制御することができる。スイッチ漏れ補償回路を使用して、スイッチによって生じた漏れ電流を補償し、変換の精度を有利に維持することができる。
【0027】
図2は、スイッチ漏れ補償遅延システムを有する例示的なインターリーブ型アナログ-デジタル変換器(ADC)を示す。通信システム200は、基地局205を備える。基地局205を使用して、いくつかのデータ通信装置からデータを送受信することができる。この例示的な例では、基地局205は、携帯電話210からアナログ信号を受信する。基地局205は、基地局205と携帯電話210との間でアンテナ220を介してデータ通信を行うFPGA215を備える。アンテナ220は、受信したアナログ信号225をフィルタ230に転送する。フィルタ230は、アナログ信号225のエラーおよび/またはノイズをフィルタリングする。フィルタリングされたアナログ信号は、増幅器235によって増幅されて、処理済みアナログ信号240が生成される。処理済みアナログ信号240は、アナログ-デジタル変換器(ADC)システム245でデジタル信号250に変換される。次いで、デジタル信号250は、例えばデジタル信号プロセッサ(DSP)255によって処理される。
【0028】
高速電子機器(例えば、5G技術)は、高いサンプリングレートのADCを必要とする場合がある。例えば、受信機は、1GHzのDC結合全差動増幅器初段を有する5ギガサンプル毎秒(GSPS)のADCを利用することができる。各信号を、200psでサンプリングすることができる。時間インターリーブADCを使用して、高サンプリングレートを達成することができる。例えば、4つのサブADCを含む時間インターリーブADCを使用することにより、4つのサブADCの各々は、例えば1.25GSPSのサンプリングレートを有しさえすればよい。
【0029】
この図示の例では、処理済みアナログ信号240はバッファ260によって受信され、次いで4つのサブADC265a、265b、265c、265dによってサンプリングされる。例えば、第1のサンプルは、第1のADC265aによってサンプリングされてもよい。4つのサブADC265a,265b,265c,265dのそれぞれは、サンプリング駆動回路によって駆動される。各サンプリング駆動回路は、異なるサンプリングクロック信号を生成する。例えば、第1のサブADC265aが用いる第1のサンプリングクロック信号は、基準クロック信号と比較して0度の位相差を有してもよい。第2のサブADC265bが用いる第2のサンプリングクロック信号は、基準クロック信号と比較して90度の位相差を有してもよい。第3のサブADC265cが用いる第3のサンプリングクロック信号は、基準クロック信号と比較して180度の位相差を有してもよい。第4のサブADC265dが用いる第4のサンプリングクロック信号は、基準クロック信号と比較して270度の位相差を有してもよい。
【0030】
サブADC265a、265b、265c、265dの各々は、正確な時間にサンプリングすることができる(例えば、第1のサブADC265aは0sでサンプリングし、第2のサブADC265bは800psでサンプリングし、第3のサブADC265cは1600psでサンプリングし、第4のサブADC265dは2400psでサンプリングすることができる)。製造上または技術上の限界により、各サブADCの電気的特性はばらつくことがある。サブADCのミスマッチにより、高調波スプリアスおよびインターリーブスプリアスが生成されることがある。例えば、第1のサブADC265aは、800ps±10fsでサンプリングする可能性がある。10fsのような小さな数であっても、特に対象の最高中間周波数がトーンをインターリーブする厳しい仕様でGHz範囲内にある場合、時間スキューをもたらす可能性がある。この図示の例では、サンプリング駆動回路の各々は、サンプリング信号の位相を保持するように第1のバッファ(例えば、インバータ)270および第2のバッファ(例えば、インバータ)275を含む。第1のバッファ270と第2のバッファ275との間には、時間スキュー問題を解決するように、スイッチ漏れ補償遅延システム280が配置されて、反転した処理済みアナログ信号に所定の遅延を導入する。スイッチ漏れ補償遅延システム280の一例を、
図4A~
図4Cを参照してさらに詳細に説明する。
【0031】
各サブADCの265a,265b,265c,265dは、選択回路285(例えば、マルチプレクサ)に接続されている。選択回路285は、4つのサブADCの265a,265b,265c,265dによってサンプリングされた信号を選択的に出力してデジタル信号250を形成する。
【0032】
図3Aは、インターリーブADCに使用される従来技術の遅延システムを示す。従来技術では、遅延システム300は、第1のバッファ270と第2のバッファ275との間に配置されている。遅延システム300は、並列に接続された1つまたは複数の遅延回路305を含む。例えば、第1の遅延回路305は、入力サンプリングクロック信号に遅延をもたらすように配置された第1のコンデンサC
0を含む。いくつかの実施形態では、コンデンサC
0はMOSキャパシタでもよい。コンデンサC
0の他端は、ノードb
0を介して第1のスイッチM
0に接続されている。第1のスイッチM
0は、制御信号D
0によって制御される。この図示の例では、スイッチM
0は、Nチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOSFET)を含む。NMOSFETのドレインはノードb
0に接続される。NMOSFETのソースは接地に接続される。NMOSFETのゲートは、制御信号D
0によって制御される。
【0033】
各遅延回路のスイッチを開閉することにより、遅延回路内のコンデンサを回路に追加することができ、追加しないこともできる。したがって、制御信号D0、D1、...DN-1を制御することによって遅延をプログラムすることができる。ノードb0における対応する波形が示されている。サンプリング開始のCLK_BARの立ち上がりエッジの間、ノードb0の電圧はVddaまで上昇する。Vdda(例えば、0.9v)は、バッファ270の電源であり、バッファ270およびバッファ275を通過するクロック信号のハイレベルである。
【0034】
図3Bは、遅延回路内のスイッチが理想化されたモデルにおいてオフであるときの従来技術の遅延回路を示す。この図示の例では、第1のトランジスタM
0には漏れ電流がなく、寄生容量C
b0は無視できるほど小さい。第2のノードb
0における対応する波形が示されている。トランジスタM
0に漏れ電流がない場合、サンプリングクロック信号の波形は良好に維持されているように見える。
【0035】
図3Cは、遅延回路内のスイッチがオフであり、スイッチに関連する漏れ電流がある場合の遅延回路の例示的な時間図を示す。実際には、第1のトランジスタM
0には漏れ電流がある。トランジスタM
0に漏れ電流があり、ADCの速度が遅い場合、トランジスタM
0(例えば、NチャネルMOSFET)のゲート電圧が0Vであっても、漏れ電流によってトランジスタM
0がオフしなくなる可能性があるため、サンプリングクロック信号の波形は理想的なサンプリングクロック信号ではない。このタイミング図により、コンデンサとトランジスタM
0間の接合部におけるコンデンサ電圧ドループの望ましくない影響が明らかとなる。
【0036】
第2のノードb0における対応する波形が示されている。サンプリング開始のCLK_BARの立ち上がりエッジの間、第2のノードb0における電圧は、Cb0の存在によりVddaまで上昇しない。第2のノードb0の電圧はVb0Hに上昇する。
【0037】
V
b0H=(V
dda*C
0)/(C
0+C
b0)。漏れ電流によって、第2のノードb
0の電圧が0までリークすることがある。
図3Cに示すように、サンプリングの終了中、トランジスタM
0はオフではなく、低速での時間スキューDAC機能に影響を及ぼす可能性がある。負電圧により、M
0のドレインはM
0のソースとなり、M
0のソースはM
0のドレインとなる。したがって、トランジスタM
0は、カットオフモードから飽和モードに入ることができる。例えば、b
0と接地との間のインピーダンスはM
0の1/g
mとしてよく、これはM
0のオン抵抗と比較して低い値となり得る。
【0038】
図4Aは、例示的なスイッチ漏れ補償遅延回路を示す。遅延回路405aは、第1のコンデンサC
0を含む。第1のコンデンサC
0は、第1のノードa
0と第2のノードb
0との間に配置されている。第1のコンデンサC
0は、第1のノードa
0を介して入力サンプリングクロック信号に所定の遅延をもたらすために使用される。いくつかの実施形態では、コンデンサC
0は、精度および面積をより小さくするためMOSキャパシタでもよい。
【0039】
コンデンサC
0の他端は、第2のノードb
0を介して第1のトランジスタM
0に接続されている。この図示の例では、トランジスタM
0はNチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(NMOSFET)である。トランジスタM
0のドレインは、第2のノードb
0に接続されている。トランジスタM
0のソースは、基準ノード(例えば、接地電位)に接続されている。トランジスタM
0のゲートは、制御信号D
0によって制御される。トランジスタM
0は、制御信号D
0に応答してドレイン-ソース間の接続性を調節する。トランジスタM
0のゲート-ソース間に印加される電圧がトランジスタM
0のしきい値電圧V
T1未満である場合、サブスレッショルド効果により、トランジスタM
0は第1の漏れ電流I
leak1を供給する。
図3Cで説明したように、第1の漏れ電流I
leak1は、時間スキューをもたらす可能性がある。
【0040】
また、遅延回路405aは、第2のトランジスタT0を含む。この図示の例では、第2のトランジスタT0はNMOSFETである。第2のトランジスタT0は、コンデンサC0に並列に接続されている。第2のトランジスタT0のドレインは、第1のノードa0に結合されている。第2のトランジスタT0のソースは、第2のノードb0に結合されている。第2のトランジスタT0のゲートはある電圧に結合されている。ゲートに印加されるその電圧により、第2のトランジスタT0のゲートとソース間の電圧差Vgsが第2のトランジスタT0のしきい値電圧VT2未満になる場合、第2のトランジスタT0に第2のソースと第2のドレイン間の導電路はない。サブスレッショルド効果により、第2のトランジスタT0も第2の漏れ電流Ileak2をもたらす。第2の漏れ電流Ileak2は、第1の漏れ電流Ileak1を相殺し補償し、第2のノードb0の電圧を経時的にほぼ一定にすることができる。
【0041】
この図示の例では、第2のトランジスタT0のゲートとソースの両方が第2のノードb0に結合されている。ソースとゲートを接続することで、ソースとゲート間の電圧差Vgsは0となり、第2のトランジスタT0のしきい値電圧VT2未満となる。ソースとゲートを接続することによって、配線接続の複雑さ、遅延回路の面積、および製造プロセスステップを有利に低減することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2のトランジスタT0は、トランジスタM0を実質的に複製するように設計されてもよく、および/またはトランジスタM0と同じダイ上にあり、同じタイプおよび実質的に同じサイズを有してもよい。トランジスタM0の漏れ電流に、プロセス、電圧、および温度にわたって、(例えば、寸法的に)実質的に正確に合わせることができる。いくつかの実施形態では、第2のトランジスタT0の位置は、トランジスタM0の位置よりも高く配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第2のトランジスタT0の付加容量は、C0の容量値を削減することによって補正されてもよい。
【0043】
遅延回路405aに第2のトランジスタT0を加えることにより、第2のノードb0の電圧Vb0Hは一定に保たれる。Vb0H=(Vdda*C0)/(C0+Cb0)、ここで、Cb0はトランジスタM0の寄生容量である。
【0044】
図4Bは、別の例示的なスイッチ漏れ補償遅延回路を示す。遅延回路405bは、第1のコンデンサC
0’を含む。第1のコンデンサC
0’は、基準ノード(例えば、接地電位)と第2のノードb
0’との間に配置されている。第1のコンデンサC
0’を使用して、第1のノードa
0’に送信される入力サンプリングクロック信号に所定の遅延を加える。いくつかの実施形態では、コンデンサC
0’は、精度および面積をより小さくするためMOSキャパシタでもよい。
【0045】
コンデンサC0’の他端は、第2のノードb0’を介して第1のトランジスタM0’に接続されている。この図示の例では、第1のトランジスタM0’は、Pチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(PMOSFET)である。いくつかの実施形態では、第1のトランジスタM0’は伝送ゲートでもよい。遅延回路405bは、第2のトランジスタT0’をさらに含む。この図示の例では、第2のトランジスタT0’はPMOSFETである。いくつかの実施形態では、電源と接地の両方が立ち上がりと立ち下がりのエッジでそれぞれコンデンサに通される必要があるため、第2のトランジスタT0’は、伝送ゲートでもよい。実際には、サブスレッショルド効果により、遅延回路405b内の第2のトランジスタT0’は、第1のトランジスタM0’によって供給される漏れ電流を補償するために使用することができる漏れ電流をもたらすことができる。これにより、第2のノードb0’の電圧Vb0Hは一定に保たれる。
【0046】
図4Cは、
図2に実装された例示的なスイッチ漏れ補償遅延システムを示す。スイッチ漏れ補償遅延システム280は、並列に接続された少なくとも1つの遅延回路405aを含む。各遅延回路405aにおいて、スイッチM
0、M
1、...、M
N-1は、二値の電圧信号D
0、D
1、...、D
N-1によってそれぞれ制御される。スイッチM
0、M
1、...、M
N-1のゲートにそれぞれ印加される二値の電圧信号D
0、D
1、...、D
N-1を制御することにより、プログラム可能な遅延を得ることができる。スイッチM
0、M
1、...、M
N-1によってもたらされる漏れ電流は、トランジスタT
0、T
1、...、T
N-1によってそれぞれ補償することができる。M
0、M
1、...、M
N-1のうちのいくつかがオンすると、バッファ270は、対応するオフトランジスタ(T
0,T
1,...,T
N-1)によってロードされてもよい。時間スキューDACが実装されるすべてのシステムにおけるジッタ仕様または遷移時間をバッファ270が満たす必要があるため、そのオン抵抗を低くしてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、スイッチ漏れ補償遅延システム280は、並列に接続された少なくとも1つの遅延回路405bを含むことができる。スイッチM0’、M1’、...、MN-1’は、二値の電圧信号D0、D1、...、DN-1によってそれぞれ制御することができる。スイッチM0’、M1’、...、MN-1’のゲートにそれぞれ印加される二値の電圧信号D0’、D1’、...、DN-1’を制御することにより、プログラム可能な遅延を得ることができる。スイッチM0’、M1’、...、MN-1’によってもたらされる漏れ電流は、トランジスタT0’、T1’、...、TN-1’によってそれぞれ補償することができる。
【0048】
図5Aは、
図3Cの遅延回路の時間図を示す例示的な実験結果を示す。この実験では、125MSPSサンプルレートを有するADCが高速(FF)コーナで試験されている。サンプリングパルスの持続時間は約2nsである。サンプリングクロックの立ち下がりエッジが重要である。スイッチM
0の漏れ電流は110℃で検出される。スイッチM
0のしきい値は0.25Vである。
図5Aに示すように、2ns後に著しい低下があり、これが2nsの終わりでノードb
0における電圧に負のスパイクとトランジスタM
0の相互コンダクタンスに正のスパイクをもたらしている。M
0の相互コンダクタンスは205uS(約5kオーム)に上昇し、a
0の電圧は0.9Vから0Vに低下する。トランジスタM
0のこの低い抵抗値のために、トランジスタM
0は導通し、コンデンサC
0は5kの抵抗を介してa
0と接地との間で接続される。
【0049】
図5Bは、
図4Cのスイッチ漏れ補償遅延回路の時間図を示す例示的な実験結果を示す。この実験では、125MSPSサンプルレートを有するADCが高速(FF)コーナで試験されている。サンプリングパルスの持続時間は約2nsである。サンプリングクロックの立ち下がりエッジがここでは重要である。スイッチM
0の漏れ電流およびスイッチT
0の漏れ電流は110℃で検出される。スイッチM
0のしきい値電圧は0.25Vである。
図5Bに示すように、2ns後の低下はあるとしてもごくわずかであり、2nsの終わりに負のスパイクはない。スイッチM
0の漏れ電流は、スイッチT
0の漏れ電流とほぼ同じである。その結果、スイッチM
0の漏れ電流を、スイッチT
0の漏れ電流によって相殺することができる。
【0050】
図6Aは、
図3Cの遅延回路の例示的なシミュレーション結果を示す。このシミュレーションでは、時間スキューDACの基本単位セルは、サンプリングの終了に対して8fsステップを与えるように設計されている。各サブADCは、200psのサンプリング周期を有して、625MSPS(8インターリーブでADC全体が5GSPS)で動作する。100ポイントのモンテカルロシミュレーションを125MSPS(最高速度の1/5)で行う。表に示すように、サンプリングの開始の最大値は10.08fsであり、サンプリングの終了の最大値は21.79fsである。サンプリング終了点では、スイッチM
0の漏れ電流の影響を大きく受けている可能性がある。最大ステップ値は、多くのオフユニットがオンになっているために2倍を超え、時間ステップを外してしまうことにつながっている可能性がある。
【0051】
図6Bは、
図4Cのスイッチ漏れ補償遅延回路の例示的なシミュレーション結果を示す。同じシミュレーション環境下で、
図4Cに示すような遅延システムを使用することにより、サンプリングの終了の最大値は11.43fsとなり、これは
図6Aの21.79fsよりも大幅に小さい。こうして、スイッチ漏れに起因するミスマッチを解決することができた。
【0052】
図7は、スイッチ漏れ補償を実行するための例示的な方法のフローチャートを示す。スイッチ漏れを補償する方法700は、705において、第1のノード(例えば、a
0)と第2のノード(例えば、b
0)との間に結合されたコンデンサ(例えば、C
0)を提供することを含む。方法700はまた、710において、第1のトランジスタ(例えば、M
0)を提供することであって、第1のトランジスタM
0のドレインが第2のノード(b
0)に接続され、第1のトランジスタM
0のソースが基準ノードに接続され、第1のトランジスタM
0のゲートが第1のゲート制御信号(例えば、D
0)に結合されていることを含む。第1のトランジスタM
0は、第1のゲート制御信号D
0に応答して、第1のトランジスタM
0のドレイン-ソース間の接続性を調節する。
【0053】
方法700はまた、715において、第2のトランジスタ(例えば、T0)を提供することであって、第2のトランジスタT0のドレインおよびソースがコンデンサ(C0)と並列に結合され、第2のトランジスタT0のゲートが、第2のトランジスタ(T0)の第2のしきい値電圧未満の電圧を第2のトランジスタT0のゲートに印加するように結合されることを含む。720において、第1のトランジスタM0がイネーブルされているか否かが動的に監視される。第1のトランジスタM0が第1のゲート制御信号D0によってイネーブルされる場合、方法700はまた、725において、コンデンサC0の両端の電圧が実質的に一定に維持されるように、第1のトランジスタM0によって引き込まれる第1の漏れ電流Ileak1を第2のトランジスタ(T0)で実質的に供給することを含む。
【0054】
図面を参照して様々な実施形態を説明したが、他の実施形態も可能である。例えば、第2のノードb0は、抵抗を介してVddaに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、スイッチM0、M1、...MN-1は、高いしきい値電圧を有するトランジスタに置き換えられてもよい。いくつかの実施形態では、M0、M1、...MN-1の長さを増加させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、遅延回路は、他のシステムに使用されてもよい。例えば、電圧制御遅延線(VCDL)において、トランジスタをスイッチとして用いてもよい。VCDL内のトランジスタによって供給される漏れ電流を補償するために、別のトランジスタを導入してもよい。
【0056】
様々な実施形態を、再構成可能なプログラマブル論理ブロック(例えば、FPGA)を使用して実装することができるが、他の実施形態を、固定したインスタンス化(例えば、ASIC)で実装してもよい。ASICの実装形態における専用ハードブロック回路は、集積回路内でインスタンス化されると再構成可能ではないが、例えば、ASIC実装形態は、いくつかの実装形態では、例えば消費電力および/またはダイ面積に関して最小化されたプラットフォームを実現することができる。
【0057】
遅延回路の様々な例を、様々な電子ハードウェアを含む回路を使用して実装することができる。限定ではなく例として、ハードウェアは、トランジスタ、抵抗器、コンデンサ、スイッチ、集積回路および/または他の回路を含むことができる。様々な例では、遅延回路は、様々な集積回路(例えば、FPGA、ASIC、SoC)を含むシリコン基板上に製造されたアナログおよび/またはデジタル論理、ディスクリート部品、トレースおよび/またはメモリ回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、遅延回路は、制御回路が実行する予めプログラムされた命令および/またはソフトウェアの実行を伴ってもよい。例えば、制御回路を使用して所定の制御信号を生成し、遅延回路内のスイッチを制御することができる。
【0058】
様々な実施態様において、通信システムは、適切な通信方法、機器、および技術を使用して通信することができる。例えば、システムは、メッセージが専用物理リンク(例えば、光ファイバリンク、赤外線リンク、超音波リンク、ポイントツーポイント配線、デイジーチェーン)で送信元から受信機に直接搬送されるポイントツーポイント通信を使用して、互換性のある装置(例えば、システムとの間でデータを転送することができる装置)と通信することができる。システムの構成要素は、アナログまたはデジタルデータ通信の任意の形態または媒体により、通信ネットワーク上のパケットベースのメッセージを含む情報を交換することができる。通信ネットワークの例には、例えば、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、WAN(ワイド・エリア・ネットワーク)、MAN(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)、無線および/または光ネットワーク、ならびにインターネットを形成するコンピュータおよびネットワークが含まれる。他の実装形態は、例えば全方向無線周波数(RF)信号を使用することにより、通信ネットワークによって互いに結合されたすべてまたは実質的にすべての装置にブロードキャストすることによってメッセージを転送することができる。さらに他の実装形態は、指向性(すなわち、狭ビーム)アンテナまたは集束光学系と共に任意に使用することができる赤外線信号を使用して送信されたRF信号など、高い指向性を特徴とするメッセージを搬送することができる。さらに他の実装が、限定を意図するものではなく例として、USB2.0、FireWire、ATA/IDE、RS-232、RS-422、RS-485、802.11a/b/g/n、Wi-Fi、WiFi-Direct、Li-Fi、BlueTooth、イーサネット、IrDA、FDDI(ファイバ分散データインターフェース)、トークンリングネットワーク、または周波数、時間、もしくは符号分割に基づく多重化技術などの適切なインターフェースおよびプロトコルを使用して可能である。いくつかの実装形態は、データ完全性のための誤り検出訂正(ECC)、または暗号化(例えば、WEP)およびパスワード保護などのセキュリティ対策などの機能を任意に組み込むことができる。
【0059】
いくつかの実装態様について説明した。しかし、様々な変更が行われてもよいことが理解されよう。例えば、開示した技術のステップが異なる順序で実行された場合、または開示したシステムの構成要素が異なる方法で組み合わされた場合、または構成要素に他の構成要素が補足された場合でも、有利な結果が達成され得る。したがって、他の実装態様も、以下の特許請求の範囲内にある。