(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電気化学的発電機を中和させる方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2021567864
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020063204
(87)【国際公開番号】W WO2020229478
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ビリー
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017085(WO,A1)
【文献】特開2019-039028(JP,A)
【文献】特開2012-043694(JP,A)
【文献】特開2012-229481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260186(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム又はナトリウムを含有する負極(20)並びに正極(30)を含む電気化学的発電機(10)を中和させる方法であって、溶媒イオン液体及び前記負極で還元されうるいわゆる酸化レドックス種を含むイオン液体溶液(100)と前記電気化学的発電機(10)とを接触させて、前記電気化学的発電機を放電させる放電工程を含む、方法。
【請求項2】
前記イオン液体溶液(100)が、正極で酸化されうる第2のいわゆる還元レドックス種を含み、いわゆる酸化レドックス種及びいわゆる還元レドックス種がレドックス種の対を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レドックス種の対が、好ましくはMn
2+/Mn
3+、Co
2+/Co
3+、Cr
2+/Cr
3+、Cr
3+/Cr
6+、V
2+/V
3+、V
4+/V
5+、Sn
2+/Sn
4+、Ag
+/Ag
2+、Cu
+/Cu
2+、Ru
4+/Ru
8+若しくはFe
2+/Fe
3+から選択される金属の対、有機分子の対、Fc/Fc
+等のメタロセンの対、又は例えばCl
2/Cl
-若しくはCl
-/Cl
3-等のハロゲン化分子の対であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン液体溶液(100)が追加のイオン液体を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン液体溶液が、深共晶溶媒を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学的発電機(10)を前記イオン液体溶液(100)中に浸漬させることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気化学的発電機(10)が、0℃~100℃、好ましくは15℃~60℃の範囲の温度で放電されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気化学的発電機(10)が大気下で放電されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気化学的発電機(10)を放電させる工程に先立って、解体工程及び/又は分類工程を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電気化学的発電機(10)を放電させる工程に後続して、保管工程並びに/又は高温冶金及び/若しくは湿式冶金工程を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリサイクル及び/又は保管を目的として、アキュムレータ又はLiイオン、Naイオン若しくはリチウム-金属バッテリー等の電気化学的発電機を中和させる方法に関する。
【0002】
より具体的には、イオン液体及びレドックス活性種を含有する溶液を用いて電気化学的発電機を安全化する方法である。レドックス活性種は、放電によって電気化学的発電機を中和させることを可能にする。イオン液体は、完全に安全な状態で、特に爆発性雰囲気の形成を回避することによって、この工程を実施することを可能にする。
【0003】
次いで、電気化学的発電機を完全に安全な状態で開けることができ、再処理可能な部分をリサイクルすることができる。
【背景技術】
【0004】
電気化学的発電機は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する電力生産装置である。例えば、セル又はアキュムレータの場合であってもよい。
【0005】
第一に、いわゆるローミング用途(スマートフォン、コンピュータ、写真装置等)、第二に、移動に関連する新規の用途(電気自動車及びハイブリッド車)並びにいわゆる固定用途(電気回路網に接続されている)のために、アキュムレータ、特にLiイオンタイプのリチウムアキュムレータの市場は、現在のところ、大幅に拡大している。
【0006】
ここ数年、アキュムレータの数の増加により、そのリサイクルの問題が大きな課題になってきている。
【0007】
従来、リチウムイオンアキュムレータは、アノード、カソード、セパレータ、電解質及びケーシングを含む。
【0008】
一般的に、アノードは、銅板上に析出されたPVDF型のバインダーと混合した黒鉛から形成され、カソードは、バインダーと混合され、アルミニウム板上に析出された金属リチウム挿入材料(例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、Li3NiMnCoO6又はLiFePO4)である。
【0009】
電解質は、非水性溶媒及びリチウム塩、並びに二次反応を遅延させる任意選択の添加剤の混合物である。
【0010】
操作は以下のとおりである:充電中、リチウムが金属酸化物から再挿入し、それ自体が熱力学的に不安定な黒鉛中に挿入する。放電中、プロセスは逆になり、リチウムイオンが金属リチウム酸化物中に挿入される。
【0011】
使用されると老化が能力喪失をもたらし、セルをリサイクルしなければならない。
【0012】
しかしながら、リサイクルされる多くのアキュムレータ又はアキュムレータのバッテリーは、依然として少なくとも部分的に帯電されており、特に一次リチウムセル(Li-SOCl2)で、バッテリーの破砕はスパーク及び重大な発火又は爆発さえももたらす。
【0013】
破損したセルもリサイクルしなければならない。しかしながら、これらのセルは、アノードに金属リチウムの堆積物を有し得、それらは空気又は水に曝露されて高度に反応性である。
【0014】
したがって、リサイクルされる期限切れのセル及び/又は破損したセルは、細心の注意を払って処理しなければならない。
【0015】
アキュムレータをリサイクルする方法は、以下の複数の工程:
- 解体段階及び安全化段階を含む前処理工程、
- これらのセル及びアキュムレータに含まれる種々の再処理可能な材料及び金属を回収するための熱処理及び/又は湿式冶金処理
を含む。
【0016】
現在のところ、主な課題は、これらのリチウムをベースとする電気化学系(一次及び二次)を安全化する段階にある。
【0017】
これは、閉じ込めが失われると、毒性、可燃性且つ腐食性の生成物である、液体、また気体の形態の電解質の漏れが生じるためである。そのようにして発生して空気と混合された蒸気は、次いで、爆発性雰囲気(ATEX)を形成しうる。これは、スパークタイプ又は高温面の点火源と接触して点火する傾向がある。次いで結果的に爆発が起こり、熱的効果及び圧硬化が生じる。加えて、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、テトラフルオロホウ酸リチウムLiBF4、過塩素酸リチウムLiClO4及びヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsF6等の電解質塩は、特に毒性且つ腐食性の、リン、フッ素及び/又はリチウムを含有するヒュームを発しうる。例えば、Liイオンバッテリーの熱劣化中にフッ化水素酸(HF)が形成されうる。
【0018】
これらの欠点を改善するために、制御された雰囲気及び圧力の室内でバッテリーを破砕することが可能である。例えば、国際公開第2005/101564号は、湿式冶金法により、室温且つ不活性雰囲気下で、リチウムアノードバッテリーをリサイクルする方法を記載している。雰囲気は、アルゴン及び/又は二酸化炭素を含む。2種のガスは酸素を追い出し、破砕した充填材の上にガス状保護シーリングを形成する。二酸化炭素の存在は、表面上に炭酸リチウムを形成することによって金属リチウムのパッシベーションの開始を招き、この金属の反応性を失速させる。リチウムを含有する破砕した充填材の加水分解は、水素の形成につながる。水素の点火及び爆発のリスクを回避するために、リチウムを含有する破砕した充填材を、高度に制御された様式で水溶液に添加し、浴槽の上に非常に強力な乱流を作製する。この操作は、雰囲気の酸素欠乏に関連する。水酸化リチウム中に水が豊富になり、炭酸ナトリウム又はリン酸を添加することによってリチウムが回収される。
【0019】
米国特許第5,888,463号明細書の方法では、セル及びアキュムレータは、極低温法によって安全化する。セル及びアキュムレータを、破砕する前に、-196℃の液体窒素中で凍結させる。次に、破砕した材料を水中に浸漬する。H2Sの形成を回避するために、LiOHを添加することによってpHを少なくとも10のpHに維持する。炭酸ナトリウムを添加することによって、形成されたリチウム塩(Li2SO4、LiCl)を炭酸塩の形態で沈殿させる。
【0020】
加国特許出願公開第2313173号明細書は、リチウムイオンセルをリサイクルする方法を記載している。先ずセルを、水が不在の不活性雰囲気下で切断する。第1の有機溶媒(アセトニトリル)は電解質を溶解し、第2の有機溶媒(NMP)はバインダーを溶解する。次に、粒状挿入材料を溶液から分離し、電気分解によって還元する。
【0021】
国際公開第2011/113860号には、いわゆる乾燥法(「乾燥技術」)が記載されている。クラッシャーの温度を40~50℃で維持し、バッテリーから放出された水素と酸素の混合物をサイクロン式空中移動によって除去して火災が開始するリスクを最小限に抑える。ふるい分けた後に回収されたバッテリー部品及び粉塵を室温に冷却する。リチウムの抽出は、空気中の酸素及び水分と反応することによって達成されるように見え、燃焼及び爆発に好都合な水素、酸素及び熱の同時存在に関連するリスクを冒す。加えて、電解質が劣化し、粉塵及び気体の管理に対してリスク、損失及び問題が生じる。
【0022】
Georgi-Maschler等による記事(「Development of a recycling process for Li-ion batteries」、Journal of Power Sources 207 (2012) 173~182)に記載されているUmiCore VAL’EAS(商標)法は、高温冶金処理と湿式冶金処理とを合わせる。解体したバッテリーは、直接炉内に入れられる。高温冶金処理は、これらを失活させる:電解質は約300℃で蒸発し、プラスチックは700℃で熱分解し、残りは最終的に融解し、1200~1450℃で還元される。セルに含まれる一部の有機材料は、この方法における還元剤として作用する。アルミニウム及びリチウムは損失される。鉄、銅及びマンガンは水溶液中で回収される。コバルト及びニッケルは、LiCoO2及びNi(OH)2の形態で回収され、リサイクルされてカソード材料を形成する。しかしながら、このタイプの熱処理は、高エネルギー消費を引き起こし、バッテリーの成分を激しく劣化させる。
【0023】
欧州特許出願公開第0613198号明細書は、リチウムセル由来の材料を回収する方法を記載している。セルは、高圧ウォータージェット又は不活性雰囲気下のいずれかで切断して火災の開始を回避する。次いで、リチウムが、水、アルコール又は酸と反応し、それぞれ、水酸化リチウム、リチウムアルコキシド又はリチウム塩(例えば、LiCl)を形成する。しかしながら、高圧ウォータージェット下で切断して達成される安全措置は、水の大量消費を要し、大気下でH2ガスを発生する。
【0024】
現在のところ、上記の様々な方法は、高温処理、極低温処理、及び/又は制御された雰囲気下での処理の実行を要し、これらは工業的に実行するのが困難であり、及び/又は費用がかかる条件である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】国際公開第2005/101564号
【文献】米国特許第5,888,463号明細書
【文献】加国特許出願公開第2313173号明細書
【文献】国際公開第2011/113860号
【文献】欧州特許出願公開第0613198号明細書
【非特許文献】
【0026】
【文献】Georgi-Maschler等「Development of a recycling process for Li-ion batteries」、Journal of Power Sources 207 (2012) 173~182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の一目的は、従来技術の欠点を改善することを可能にする方法、具体的には、工業的に容易に実行でき、高温、極低温、及び/又は制御された雰囲気の使用を必要としない、電気化学的発電機を中和させる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は、リチウム及びナトリウムを含有する負極及び正極を含む電気化学的発電機を、イオン液体及び負極で還元されうるいわゆる酸化レドックス種を含むイオン液体溶液と接触させる工程を含む方法によって達成される。
【0029】
本発明は、イオン液体及びレドックス種を含むイオン液体溶液の存在下で電気化学的発電機を放電させる工程を用いることによって従来技術から根本的に区別される。この工程により、電気化学的発電機が安全化することになり、発火及び/又は爆発のリスクを回避しながら負極(アノード)のリチウム又はナトリウムの抽出を実現する。方法は、熱的方法ではなく、電気化学的アキュムレータを開ける工程を管理できるようにする。これは室温(20~25℃)で、且つ/又は大気中で実施することができる。
【0030】
方法は、アキュムレータ及びセルの安全化の問題に対処するだけではなく、経済的及び環境的制約にも対処することを可能にする。
【0031】
負極で還元されうるということは、活性種が、アキュムレータのケーシングが開いている場合、負極(アノード)、又はアノードに電気的に接続された別の素子(アノード集電体等)、アノードがアースに電気的に接続されている場合、アノード端子若しくはアースのいずれかで直接反応できることを意味する。
【0032】
以下、リチウムを説明するとき、リチウムはナトリウムによって置き換えられうる。
【0033】
例えば、リチウム金属アキュムレータの場合、いわゆる酸化レドックス種の還元反応は、イオン形態の金属リチウムの酸化をもたらす。
【0034】
別の例によれば、リチウムイオンアキュムレータの場合、いわゆる還元レドックス種の還元反応は、負極の活性材料のリチウムイオンの離断をもたらす。
【0035】
アノードから抽出された自由イオンは、イオン導電性電解質を通して移動し、カソードで固定化され、熱力学的に安定性の酸化リチウムを形成する。熱力学的に安定性とは、酸化物が水及び/又は空気と激しく反応しないことを意味する。
【0036】
有利には、溶液は、正極で酸化されうる第2のいわゆる還元レドックス種を含み、いわゆる酸化レドックス種及びいわゆる還元レドックス種はレドックス種の対を形成する。
【0037】
レドックス対は、レドックスメディエータ又は電気化学シャトルとも呼ばれ、溶液中の酸化/還元対(Ox/Red)を意味し、その酸化剤はアノード(負極)で還元され、その還元剤はカソード(正極)で酸化されうる。還元剤の酸化及び酸化剤の還元は、新規の酸化/還元種を形成することを可能にし、且つ/又は溶液中に最初から存在していた種を再生することを可能にする。溶液中のレドックス対は、電気化学的発電機の電極/端子で両方のレドックス反応を同時に実現し、したがって試薬の消費がゼロであるため、この方法は経済的であり、溶液は、連続的に且つ/又は混合物中で複数の電気化学的発電機を安全化するために使用することができる。
【0038】
レドックス種は、電気化学的発電機を、有意に又は更には完全に放電させる又は放電させることを可能にする。加えて、パッケージの破裂の事象において、電極(アノード及びカソード)間の電位差が減少するようにレドックス種は内部成分と反応する。この内部放電は、電極の化学エネルギー(したがって、電位差)を低減することによって、また、内部短絡効果を低減することによって電気化学的発電機の安全化に加担する。電気化学的発電機は、構造損傷の場合にも安全化される。
【0039】
水の不在は、爆発性雰囲気を作りうる水性消火剤の使用に対して主要な制限となる水素の発生を回避することを可能にする。
【0040】
有利には、レドックス種の対は、好ましくはMn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag+/Ag2+、Cu+/Cu2+、Ru4+/Ru8+若しくはFe2+/Fe3+から選択される金属の対、有機分子の対、Fc/Fc+等のメタロセンの対、又は例えばCl2/Cl-若しくはCl-/Cl3-等のハロゲン化分子の対である。
【0041】
有利には、イオン液体溶液は、追加のイオン液体を含む。
【0042】
有利には、イオン液体溶液は、深共晶溶媒を形成する。
【0043】
有利には、電気化学的発電機は、イオン液体溶液中に浸漬される。
【0044】
有利には、電気化学的発電機の放電は、0℃~100℃、好ましくは15℃~60℃の範囲の温度で実行する。
【0045】
有利には、電気化学的発電機の放電は、大気下で実行される。
【0046】
有利には、方法は、電気化学的発電機を放電させる工程に先立って、解体工程及び/又は分類工程を含む。
【0047】
有利には、方法は、電気化学的発電機を放電させる工程に後続して、保管工程並びに/又は高温冶金及び/若しくは湿式冶金工程を含む。
【0048】
本発明による中和法は、多数の利点を有する:
- 湿式研削工程を実施せず、水素、酸素及び熱の管理に関する問題、したがって爆発性雰囲気の管理(安全性、廃液の処理、追加の財務費用)に関する問題を回避し、大量の水の使用及び水性廃液の処理を回避する;
- 熱処理を用いず、ガス(例えば、温室効果ガス又はヒト及び環境に有害若しくは危険なその他のガス)の発生に関する問題、特にその任意の処理に関する問題を回避し、方法の財務費用及びエネルギー費を削減する;
- イオン液体は、200℃超でありうる温度(例えば、200℃~400℃の間)で不揮発性、不燃性且つ化学的に安定性であるため、水の使用に関する制約を大幅に減らす;
- バッテリーが開いているとき、特に不活性ガスを使用することによる気体雰囲気の制御を必要とせず、方法を簡略化し、より経済的にする;
- 実行が簡単である。
【0049】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の追加の説明から見つけられる。
【0050】
この追加の説明は、単に本発明の目的を例示するためのものであり、いかなる状況においてもこの目的を制限するものと解釈してはならないことは言うまでもない。
【0051】
本発明は、単に例示を目的として記載され、限定するものではない実施形態例の説明を読み、添付の図面を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の特定の実施形態によるリチウムイオンアキュムレータの断面図を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の特定の実施形態による様々なレドックス電位を示す強度-電位の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面中に示す様々な部分は、図面をより識別しやすくするために、必ずしも均等な縮尺を示すものではない。
【0054】
様々な可能性(変形体及び実施形態)は、互いに除外しないものとして理解すべきであり、互いに合わせてもよい。
【0055】
以下、説明がLiイオンアキュムレータを指す場合であっても、本発明は、どのような電気化学的発電機にも置き換えることができ、例えば、公称作動電圧及び/若しくは供給されるエネルギーの量に応じて直列若しくは並列に接続された複数のアキュムレータを含むバッテリー(アキュムレータのバッテリーとも呼ばれる)、又はセルに置き換えることができる。
【0056】
これらの様々な電気化学装置は、金属イオンタイプ、例えばリチウムイオン若しくはナトリウムイオン、又はLi-金属タイプ等の装置であってもよい。
【0057】
また、Li/MnO2等の一次システム、又はフローバッテリー(「レドックスフローバッテリー」)であってもよい。
【0058】
1.5V超の電位を有する電気化学的発電機が、有利には選択されるであろう。
【0059】
まず第一に、リチウムイオン(又はLiイオン)アキュムレータ10を示す
図1を参照する。単一の電気化学セルを示すが、発電機は、複数の電気化学セルを含んでもよく、各セルは、第1の電極20(ここではアノード)及び第2の電極30(ここではカソード)、セパレータ40、並びに電解質50を含む。別の実施形態によれば、第1の電極20及び第2の電極30は逆にしてもよい。
【0060】
アノード(負極)20は、好ましくは、炭素、例えばPVDF型のバインダーと混合して銅板上に析出されうる黒鉛をベースとする。また、Liイオンアキュムレータの場合はチタン酸リチウムLi4Ti5O12(LTO)等の混合酸化リチウムであってもよく、又はNaイオンアキュムレータの場合はチタン酸ナトリウム等の混合酸化ナトリウムであってもよい。また、選択された技術によるリチウム合金又はナトリウム合金であってもよい。
【0061】
カソード(正極)30は、Liイオンアキュムレータのリチウムイオン挿入材料である。これは、LiMO2型の層状酸化物、かんらん石構造を有するホスフェートLiMPO4又はスピネル化合物LiMn2O4であってもよい。Mは遷移金属を表す。例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、Li3NiMnCoO6又はLiFePO4から作られる正極が選択される。
【0062】
カソード(正極)30は、Naイオンアキュムレータのナトリウムイオン挿入材料である。これは、少なくとも1つの金属遷移元素を含むナトリウム化酸化物型の材料、少なくとも1つの金属遷移元素を含むナトリウム化ホスフェート若しくはサルフェート型の材料、ナトリウム化フッ化物型の材料、又は少なくとも1つの金属遷移元素を含む硫化物型の材料であってもよい。
【0063】
挿入材料は、ポリフッ化ビニリデン型のバインダーと混合し、アルミニウム板上に析出されうる。
【0064】
電解質50は、選択されたアキュムレータ技術による、非水性溶媒の混合物中に可溶化された、リチウム塩(例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4)又はナトリウム塩(例えば、N3Na)を含む。溶媒の混合物は、例えば、二元又は三元混合物である。溶媒は、例えば、様々な比率の環状炭酸エステル(炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン)、直鎖状又は分岐状炭酸エステル(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、ジメトキシエタン)をベースとする溶媒から選択される。
【0065】
或いは、有機及び/又は無機材料から作られたポリマーマトリクスを含む高分子電解質、1種又は複数の金属塩を含む液体混合物、並びに任意選択の機械的補強材料の場合もありうる。ポリマーマトリクスは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、又はポリ(N-ビニルイミダゾリウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニルアミド)のポリ(イオン液体)、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(DEMM-TFSI)型から選択される1種又は複数のポリマー材料を含んでもよい。
【0066】
セルは、それ自体が巻き軸周りに巻かれてよい、又は積層構造を有していてもよい。
【0067】
ケーシング60、例えばポリマーポーチ、又は例えば鋼鉄から作られた金属パッケージは、アキュムレータの不浸透性をもたらす。
【0068】
各電極20、30は、ケーシング60を通過して集電体21、31に接続され、ケーシング60の外側で、それぞれ端子22、32(出力端子又は電気端子若しくは電極とも呼ばれる)を形成する。集電体21、31の機能は二重であり、活性材料の機械的支持及びセルの両端子の範囲までの電気伝導を与える。端子(電極又は電気端子とも呼ばれる)は、出力端子を形成し、「エネルギー受信機」に接続されることが意図される。
【0069】
一部の構成によれば、端子22、32の片方(例えば、負極に接続される一端子)は、電気化学的発電機のアースに接続されうる。ひいては、アースは電気化学的発電機の負電位であり、正端子は電気化学的発電機の陽電位であるといわれている。したがって、陽電位は、陽極/正端子並びにこの極からの電気的導通により接続されている全ての金属部品として定義される。
【0070】
媒介電子装置は、任意選択により、アースに接続されている端子と後者との間に配置されていてもよい。
【0071】
電気化学的発電機10を中和させる方法は、電気化学的発電機10を安全化させるために、中和するようにリチウムと反応できるイオン液体及びレドックス種を含むイオン液体溶液100の存在下で放電させる少なくとも1つの工程を含む。
【0072】
放電とは、方法が、電気化学的発電機10の電荷を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、大幅に低減する、又は更には電気化学的発電機を完全に放電させる(100%)ことを可能にすることを意味する。放電レベルは、最初の充電状態に依存する。
【0073】
このイオン液体溶液100は、イオン液体溶液とも呼ばれ、廃物(セル又はアキュムレータ)/水/空気間の接触を同時に防止し、イオン液体中に存在する電気化学レドックス種によって廃物の放電を実現する。したがって、火災の三要素(酸化剤、燃料、エネルギー)に対して全体を安全化し、爆発性雰囲気(H2、O2ガスと熱)の形成の元となる水の存在を回避する/又は最小限に抑える。
【0074】
電気化学的発電機10は、好ましくは、完全に放電される。自由イオンはカソード30で固定化され、水又は空気と激しく反応しない熱力学的に安定性の金属リチウム酸化物を形成する。これは、低い環境コスト及び経済費用で行われる。加えて、処理は、電気化学的発電機10の様々な成分のリサイクルと両立する(特に、電解質は劣化しない)。放電時間は、セル及びアキュムレータの性質並びに充電レベルに応じて推測される。
【0075】
電気化学的発電機10は、少なくとも部分的にイオン液体溶液100で覆われる。これは、好ましくは、イオン液体溶液100中に完全に浸漬される。
【0076】
イオン液体溶液100は、少なくとも1種のイオン液体LI1(溶媒イオン液体とも呼ばれる)及びレドックス活性種を含む。
【0077】
イオン液体は、少なくとも1つのカチオン及び100℃未満又は約100℃の融点を有する液体を発生する1つのイオンを含む会合体を意味する。これは溶融塩の場合である。
【0078】
溶媒イオン液体は、放電現象中、環境の劣化影響を最小限に抑える熱又は電気化学レベルにおいて安定性のイオン液体を意味する。
【0079】
イオン液体溶液100は、LI2で示す追加のイオン液体又は複数の(2、3種等の)追加のイオン液体も含んでもよく、すなわち、複数のイオン液体の混合物を含む。
【0080】
追加のイオン液体は、安全化にして放電する工程に関する1つ又は複数の特性に有利なイオン液体を意味する。これは、特に、以下の特性:消火、難燃剤、レドックスシャトル、塩安定剤、粘性、溶解性、疎水性、伝導性のうちの1つ又は複数の場合でありうる。
【0081】
有利には、イオン液体、及び任意選択の追加のイオン液体は、室温(20~25℃)で液体である。
【0082】
溶媒イオン液体及び追加のイオン液体では、カチオンは、好ましくは、以下のファミリー:イミダゾリウム、ピロリジニウム、アンモニウム、ピペリジニウム及びホスホニウムから選択される。
【0083】
イオン液体の劣化を回避する又は最小限に抑える陰極反応を想定するのに十分に大きい、広範なカチオン窓を有するカチオンが、有利には選択される。
【0084】
有利には、LI1及びLI2は、LI1中のLI2の溶解性を上げるために同じカチオンを有する。多数の可能な系において、低コストであり且つ環境への影響(生分解性)が低い非毒性媒体が好ましい。
【0085】
有利には、広範な電気化学窓、適度な粘性、低い融点(室温で液体)及び良好な溶解性を同時に得ることを可能にするアニオンを、イオン液体及び溶液の他の種と共に使用し、これはイオン液体の加水分解(劣化)を招かない。
【0086】
TFSIアニオンは、例えばLI1での:[BMIM][TFSI]との多数の会合体、又は[P66614][TFSI]型のイオン液体、イオン液体1-エチル-2,3-トリメチレンイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([ETMIm][TFSI])、イオン液体N,N-ジエチル-N-メチル-N-2-メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[DEME][TFSA]、イオン液体N-メチル-N-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([PYR14][TFSI])、イオン液体N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13-TFSI)の使用について予め示した基準を満たす例である。
【0087】
また、アニオンは、イオン液体N-メチル-N-プロピルピロリジニウムFSI(P13-FSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムFSI(PP13-FSI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムFSI(EMI-FSI)等として、ビス(フルオロスルホニル)イミド型(FSA又はFSI)であってもよい。
【0088】
溶媒イオン液体LI1のアニオン及び/又は追加のイオン液体LI2のイオンは、有利には、電気化学シャトルと錯体を形成するための錯化アニオンが備わっていてもよい。
【0089】
イオン液体(LI1)での他の会合体が想定でき、そのカチオンは、優先的には広範なアニオン窓を有する有機又は無機のいずれかのイオンと会合する。
【0090】
イオン液体溶液は、有利には、深共晶溶媒(又はDES)を形成する。これは、一般式:
[Cat]+.[X]-.z[Y]
を有する2種の塩の共晶混合物を形成することによって得られる、周囲温度における混合液体の場合であり、式中:
- [Cat]+は、溶媒イオン液体のカチオン(例えば、アンモニウム)であり、
- [X]-は、ハロゲン化物アニオン(例えば、Cl-)であり、
- [Y]は、溶媒イオン液体のX-アニオンによって錯化できる、ルイス酸又はブレンステッド酸であり、
- zは、分子Yの数である。
【0091】
共晶は、Yの性質に応じて3つのカテゴリーに分けることができる。
【0092】
第1のカテゴリーは、I型共晶に対応する:
Y=MClx(式中、例えば、M=Fe、Zn、Sn、Fe、Al、Ga)。
【0093】
第1のカテゴリーは、II型共晶に対応する:
Y=MClx.yH2O(式中、例えば、M=Cr、Co、Cu、Ni、Fe)。
【0094】
第1のカテゴリーは、III型共晶に対応する:
Y=RZ(式中、例えば、Z=CONH2、COOH、OH)。
【0095】
例えば、DESは、グリセロール又は尿素等の、非常に低い毒性を持つH結合供与体と会合する塩化コリンであり、非常に低いコストで非毒性DESを保証する。
【0096】
別の実施形態例によれば、塩化コリンは、ベタインに置き換えてもよい。これらの系が限定された電気化学的安定性の窓を有していたとしても、任意選択により開いたアキュムレータのフラッディング及び不活性化を保証することを可能にする。
【0097】
有利には、酸化及び/又は還元が可能な電気化学シャトルの役割を満たすことができる化合物「Y」が選択される。例えば、Yは、金属イオンを形成するようにイオン液体溶液中に溶解できる金属塩である。例えば、Yは鉄を含有する。
【0098】
例として、塩化物イオンを有するイオン液体と金属塩FeCl2及びFeCl3との間に様々な比率で且つ様々なカチオンを有する共晶を形成することが可能である。
【0099】
また、水の比率が低いとき、金属塩に水分子を取り入れるII型共晶を用いて、このタイプの反応を実行することも可能である。これは一切の危険性も起こさない。低い比率とは、典型的には、溶液の10質量%未満、例えば溶液の5~10質量%を意味する。
【0100】
また、イオン液体及び水素結合供与体種(Y)と[LI1]/[Y]型の混合物とを会合させるIII型共晶を使用することも可能であり、式中、LI1は第4級アンモニウムであってもよく、Yは、尿素、エチレングリコール、チオ尿素等の錯化(水素結合供与体)分子である。
【0101】
また、媒体の放電のために溶液の特性を有利に改変する混合物を生成することも可能である。特に、非常に安定性で、室温で液体であるが、塩化鉄等の電気化学シャトル(又はレドックスメディエータ)をあまり可溶化しない[BMIM][NTF2]型の溶媒イオン液体を会合することが可能である。
【0102】
例えば、LI2アニオンでの錯化による塩化物の形態の金属塩の可溶化に有利である[BMIM][Cl]型の追加のイオン液体LI2を会合することが可能である。これは、良好な輸送特性とレドックスメディエータの良好な溶解性とを同時に有することを可能にし、したがって、放電現象に好都合である。
【0103】
溶液は、レドックス種(レドックスメディエータとも呼ばれる)を含む。これは、負極20又は負極20に接続された端子22で酸化されうる溶液中のイオン又は種である。
【0104】
提案する方法は、アキュムレータを大気中で非反応性にするために、負極からリチウムを抽出することを可能にする。
【0105】
電気化学シャトルの使用は、装置を閉ループで動作することを可能にする。これは、電気化学対又はその会合体の場合でありうる。好ましくは、電気化学シャトル(又はレドックスメディエータ)の役割を満たし、レドックス反応を実現することによって媒体の劣化を低減するレドックス対である。
【0106】
レドックス対とは、セルの電極/端子で、それぞれ、還元及び酸化されうる、溶液中の酸化剤及び還元剤を意味する。酸化剤及び還元剤は、等モル比又は非等モル比で導入することができる。
【0107】
レドックスカップルは、金属電気化学対又はその会合体の1つ:Mn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag+/Ag2+、Cu+/Cu2+、Ru4+/Ru8+又はFe2+/Fe3+であってもよい。
【0108】
電気化学的発電機の開度事象において、レドックス種の1つは、発電機自体に由来しうる。特に、コバルト、ニッケル及び/又はマンガンであってもよい。
【0109】
レドックス種及びレドックス対は、有機分子、特に:2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、ニトロニル窒素酸化物/2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、テトラシアノエチレン、テトラメチルフェニレンジアミン、ジヒドロフェナジン、例えばメトキシ基、N,N-ジメチルアミノ基を有する芳香族分子、例えばメトキシベンゼンアニソール、ジメトキシベンゼン、又はN,N-ジメチルアニリン基を有する芳香族分子、例えばN,N-ジメチルアミノベンゼンからも選択してよい。また、10-メチル-フェノチアジン(MPT)、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジメトキシベンゼン(DDB)及び2-(ペンタフルオロフェニル)-テトラフルオロ-1,3,2-ベンゾジオキサボロール(PFPTFBDB)も挙げることができる。
【0110】
また、メタロセンファミリー(Fc/Fc+、Fe(bpy)3(ClO4)2及びFe(Phen)3(ClO4)2並びにそれらの誘導体)又はハロゲン化分子のファミリー(Cl2/Cl-、Cl-/Cl3- Br2/Br-、I2/I-、I-/I3
-)の場合もありうる。
【0111】
臭化物又は塩化物が特に選択される。好ましくは、容易に金属を錯化できる塩化物の場合である。例えば、塩素アニオンによって錯化された鉄はFeCl4
-を形成し、これは負極の反応性を低下しうる。
【0112】
また、テトラメチルフェニレンジアミンの場合であってもよい。
【0113】
また、複数のレドックス対を会合することも可能であり、ここでの金属イオンの金属は同一であるか、又は異なる。
【0114】
例えば、Fe
2+/Fe
3+及び/又はCu
+/Cu
2+が選択される。Cu
+/Cu
2+はそれら両方の酸化状態で可溶性であり、毒性ではなく、イオン液体を劣化せず、リチウムの抽出に好適なレドックス電位を有する(
図2)。
【0115】
溶液は、特にアキュムレータの開度の場合に、熱暴走の防止を目的として消火剤及び/又は難燃剤を含んでもよい。これは、リン酸トリメチル、トリエチルホスファチド、又はリン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)等の、任意選択によりフッ素化されたリン酸アルキル(フッ素化リン酸アルキル)であってもよい。活性種の濃度は、80質量%から5質量%、好ましくは30質量%~10質量%であってもよい。
【0116】
任意選択により、イオン液体溶液は、乾燥剤、及び/又は材料輸送に有利な助剤、及び/又はPF5、HF、POF3等の腐食性及び毒性種の安定剤/還元剤である保護剤を含んでもよい。
【0117】
材料輸送に有利な助剤は、例えば、粘性を低下するために添加することができる共溶媒の分画である。
【0118】
これは、5%の水等の少ない比率の水の場合であってもよい。
【0119】
好ましくは、有機溶媒は、放電及び/又は可燃性に関連するリスクを引き起こさずに効果的に作用するように選択される。これは、ビニレンカーボネート(VC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、プロピレンカーボネート(PC)、ポリ(エチレングリコール)、又はジメチルエーテルであってもよい。材料輸送に好都合な助剤の濃度は、有利には、1質量%~40質量%、より有利には10質量%~40質量%の範囲である。
【0120】
腐食性及び/又は毒性要素を還元及び/又は安定化できる保護剤は、例えば、ブチルアミンタイプの化合物、(N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドのタイプの)カルボジイミド、(N,N-ジエチルアミノ)トリメチルシラン、亜リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)(TTFP)、アミンをベースとする化合物(1-メチル-2-ピロリジノン、フッ素化カルバメート又はヘキサメチルリン酸アミド等)である。これは、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン等のシクロホスファゼンファミリーの化合物であってもよい。
【0121】
有利には、イオン液体溶液は、10質量%未満、優先的には5質量%未満の水を含む。
【0122】
更により優先的には、イオン液体溶液は水を含まない。
【0123】
方法は、0℃~100℃、好ましくは20℃~60℃の範囲の温度で実行することができ、更により優先的には室温(20~25℃)で実行する。
【0124】
方法は、大気下、又は不活性雰囲気(例えば、アルゴン、二酸化炭素、窒素又はこれらの混合物の1つ)下で実行することができる。
【0125】
電気化学的発電機をイオン液体溶液中に浸漬する場合、溶液を攪拌して試薬の添加を改善することができる。例えば、50~2000rpmの間、好ましくは200~800rpmの間で攪拌してよい。
【0126】
中和工程は、1h~150h、例えば10h~100h、好ましくは72h~96hまで続きうる。
【0127】
中和法は、電気化学的発電機の(高温冶金法若しくは湿式冶金法又はこれらの組み合わせによる)リサイクル又は電気化学的発電機の保管を目的として、電気化学的発電機を安全化することを可能にする。例えば、これは、例えば、これらの様々な成分を再処理するためのリサイクル工場で、その移送を待つ間の一時的な保管の場合であってもよい。
【0128】
例として、リサイクル法は、以下の工程:分類、解体、中和、従来法(高温冶金法、湿式冶金法等)によるリサイクルを含んでもよい。
【0129】
電気化学的発電機10をその再処理可能な部分の評価のために開けることは、完全に安全な状態で行うことができる。
【実施例】
【0130】
実施形態の例示的及び非限定的な実施例:
(実施例1)
BMIM-Cl/FeCl3.6H2O/FeCl2.4H2O媒体中の放電:
イオン液体溶液は、イオン液体BMIMCl並びにその塩FeCl3.6H2O及びFeCl2.4H2Oを含む混合物である。これらの3つの成分は、3つの化学品の等モル量である。
【0131】
溶液を乾燥した後、Liイオン18650型のセルを、室温で、rpmの攪拌下、50mlのイオン液体溶液と接触させて設置する。96時間後、セルを浴槽から抽出し、セルの電圧はゼロであり、系の放電を示す。
【0132】
(実施例2)
1M BMIM NTf2 BMIM-Cl/0.5M FeCl3.6H2O及び0.5M FeCl2.4H2O媒体中の放電:
イオン液体溶液は、以下の成分:BMIM NTf2及びBMIM-Cl(1M)、FeCl3.6H2O及びFeCl2.4H2O(0.5M)を含む混合物である。
【0133】
溶液を乾燥した後、Liイオン18650型のセルを、室温で、800rpmの攪拌下、50mlのイオン液体溶液と接触させて設置する。96時間後、セルを浴槽から抽出し、セルの電圧はゼロであり、系の放電を示す。
【符号の説明】
【0134】
10 リチウムイオンアキュムレータ(電気化学的発電機)
20 第1の電極、アノード(負極)
21 集電体
22 端子
30 第2の電極、カソード(正極)
31 集電体
32 端子
40 セパレータ
50 電解質
60 ケーシング
100 イオン液体溶液