(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】泥土の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240729BHJP
E21D 9/13 20060101ALI20240729BHJP
C09K 17/08 20060101ALI20240729BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20240729BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20240729BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C02F11/00 101Z
C02F11/00 D ZAB
E21D9/13 C
C09K17/08 P
C09K17/02 P
C09K17/18 P
C09K17/06 P
(21)【出願番号】P 2022044626
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 真吾
(72)【発明者】
【氏名】平山 剛
(72)【発明者】
【氏名】尾花 誠一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038957(JP,A)
【文献】特開2011-115738(JP,A)
【文献】特開平10-005763(JP,A)
【文献】特許第6363281(JP,B1)
【文献】特許第6356933(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
1/50- 1/56
E21D 9/13
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法において、カッターチャンバ内に水分を供給する工程と、
前記カッターチャンバ内にて前記水分と掘削土砂とを撹拌し泥土を生成する工程と、
前記泥土をカッターチャンバ外に排出する工程と、
前記泥土に、高分子凝集剤による団粒化を経ることなく固化材を添加して、前記泥土を固化する工程と、を含み、
前記固化材は、酸化マグネシウムと、セッコウと、硫酸アルミニウムと、硫酸第一鉄と、高分子凝集剤とを含んで
おり、
前記固化材における前記酸化マグネシウムの含有量が1~6質量%であり、前記セッコウの含有量が50~80質量%であり、前記硫酸アルミニウムの含有量が2~8質量%であり、前記硫酸第一鉄の含有量が2~10質量%であり、前記高分子凝集剤の含有量が5~8質量%であるシールド工法で発生する泥土の処理方法。
【請求項2】
前記水分は、前記泥土の含水比が30~65%になるように供給量を調整されることを特徴とする請求項1に記載のシールド工法で発生する泥土の処理方法。
【請求項3】
前記泥土に対する前記固化材の添加量が30~200kg/m
3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド工法で発生する泥土の処理方法。
【請求項4】
前記固化材を1種のみ添加する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシールド工法で発生する泥土の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土の処理方法に関し、特に泥土加圧シールド工法及び泥水式シールド工法で発生する高含水比の泥土の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法等の建設現場から排出される泥土は、含水比が高く、そのままでは廃棄物処理法にて規定される「建設汚泥」に該当する。
【0003】
このような建設汚泥は、産業廃棄物として取り扱われるため、廃棄物処理法に従って埋立処分等の方法で、適正に処理する必要がある。
【0004】
このような問題に鑑みて、特許文献1では、建設汚泥に対して酸化マグネシウムを含む水硬性物質を混合してそのコーン指数を増大させ、運搬及びリサイクルが可能な土に改良する技術が開示されている。コーン指数(kN/m2)とは、コーンを土中に貫入させたときの貫入抵抗力をコーンの底面積で除した値であり、JIS A 1228:2020「締固めた土のコーン指数試験方法」で定められる。コーン指数が200kN/m2の泥土については、平成三年建設省令第十九号で規定する第四種建設発生土となり、廃棄物処理法に規定する廃棄物に該当せず、盛土等の建設資材として利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の土壌改良材では、泥土のpHを中性付近に維持することが可能であったが、強度発現性が十分でないという問題があった。特に泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法は、カッターチャンバ内に水分を供給して当該チャンバ内で切羽から発生した土砂と水分とを混合する工法であることから、高含水比で且つ流動性の高い泥土を含むため、当該チャンバから排出される泥土のコーン指数は特に低く、十分な強度の土に改良できず第四種建設発生土と認められないという問題があった。
【0007】
このような泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法で排出される含水比の高い泥土に対し、従来は高分子凝集剤を添加して泥土を団粒化させた後に、酸化マグネシウム及び酸化カルシウム等の水硬性固化材を添加して泥土を固化していた。この場合、泥土の団粒化及び固化という2段階の操作を経る必要があるとともに、凝集剤及び固化材の二種類の材を使用する必要があることから、作業性の低下及び当該二種類の材の準備等の作業が煩雑になるという問題があった。
そこで本発明は、泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法において排出される泥土を、団粒化の段階を経ることなく1種の固化材のみを用いて固化し、運搬及びリサイクルが可能な強度を有する土に改良できる泥土の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成を有する固化材を用いることによって、高分子凝集剤による団粒化の段階を経ることなく、当該固化材単独で、泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法において排出される泥土の固化を可能にし、運搬及びリサイクルが可能な強度を有する土に改良できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
シールド工法において、カッターチャンバ内に水分を供給する工程と、
前記カッターチャンバ内にて前記水分と掘削土砂とを撹拌し泥土を生成する工程と、
前記泥土をカッターチャンバ外に排出する工程と、
前記泥土に、高分子凝集剤による団粒化を経ることなく固化材を添加して、前記泥土を固化する工程と、を含み、
前記固化材は、酸化マグネシウムと、セッコウと、硫酸アルミニウムと、硫酸第一鉄と、高分子凝集剤とを含んでいることを特徴とするシールド工法で発生する泥土の処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法等において排出される高含水比の泥土を団粒化の段階を経ることなく1種の固化材のみを用いて固化し、運搬及びリサイクルが可能な強度を有する土に改良できる泥土の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、泥水式シールド工法に本発明を適用した場合において、泥土の処理方法の一例を、シールドマシンの一例とともに示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、泥土加圧シールド工法に本発明を適用した場合において、泥土の処理方法の一例を、シールドマシンの一例とともに示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明では、「X~Y[Z]」(X及びYは任意の数字であり、[Z]は単位である。)と記載した場合、特に断らない限り「X[Z]以上Y[Z]以下」を意味する。
【0013】
本発明で使用する固化材は、泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法において排出される、改良対象となる泥土と混合することによって、高い強度を発現した土を得るために用いられる材料である。泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法は、トンネル工事等において用いられる。
以下の説明では、「改良土」は、改良対象となる土に本発明の固化材を含有させて改良させた後の土を指す。
【0014】
本発明で使用する固化材は、以下の(1)ないし(5)に示す成分を含む。
(1)酸化マグネシウム
(2)セッコウ
(3)硫酸アルミニウム
(4)硫酸第一鉄
(5)高分子凝集剤
【0015】
本発明で使用する固化材は、酸化マグネシウムを含む。酸化マグネシウムは、主に、改良対象となる泥土を固化し、強度を発現するために配合される成分である。
酸化マグネシウムとしては、例えば水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムを600~900℃で焼成した軽焼酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0016】
固化材における酸化マグネシウムの含有量は、質量比で、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは1~6質量%である。酸化マグネシウムを上述した含有量とすることによって、改良対象となる泥土に対して強度を発現させた改良土を提供することができる。これに加えて、重金属類等により汚染された泥土を改良対象とした場合に、重金属類を不溶化させて、改良土からの重金属類の溶出を抑制することができる。その結果、改良土を用いた周囲の環境を保全できるという利点もある。
【0017】
酸化マグネシウムのBET比表面積は、好ましくは5~30m2/gであり、より好ましくは7~30m2/gであり、更に好ましくは8~30m2/gである。
このような範囲とすることによって、固化材の施工性を高めることができるとともに、高い水和活性に起因して改良対象となる土の固化性を高めて、改良土の強度を向上することができる。また、上述のBET比表面積の範囲は、酸化マグネシウムとして軽焼酸化マグネシウムを用いた場合に満たされることが、施工性の向上と改良土の強度の向上とを高いレベルで両立できる点で好ましい。
酸化マグネシウムのBET比表面積は、例えば高精度ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP-mini)を用いて、定容量型ガス吸着法によって測定することができる。
【0018】
酸化マグネシウムにおけるMgO含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。このような含有割合となっていることによって、改良土の強度を向上させることができる。
【0019】
酸化マグネシウムにおけるCaO含有割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。このような含有割合となっていることによって、改良土の周辺環境のpHを中性に維持しやすくすることができるとともに、改良土の強度を向上させることができる。
【0020】
上述した酸化マグネシウムに含有するMgO含有率及びCaO含有率は、JIS M 8853:1998「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定することができる。
【0021】
固化材におけるセッコウとしては、無水セッコウ、半水セッコウ及び二水セッコウ等のうち少なくとも一種を用いることができる。またJIS R9151に規定するセッコウを用いることもできる。これらのセッコウうち、改良対象となる泥土の強度向上及び製造コストの低減を達成する観点から、半水セッコウを用いることが好ましい。
固化材におけるセッコウの含有量は、質量比で、好ましくは20~85質量%であり、より好ましくは50~80質量%である。セッコウを上述した含有量とすることによって、セッコウ自体が有する水硬性によって、改良土の強度を更に高く発現させることができる。
【0022】
固化材における硫酸アルミニウムの含有量は、質量比で、好ましくは7~10質量%未満であり、より好ましくは2~8質量%である。硫酸アルミニウムを上述した含有量とすることによって、改良対象となる泥土の強度を発現させることができる。硫酸アルミニウムは結晶水を含んでおり、十四水和物~十八水和物を用いるのが好ましい。
【0023】
固化材における硫酸第一鉄の含有量は、質量比で、好ましくは1~12質量%未満であり、より好ましくは2~10質量%である。硫酸第一鉄を上述した含有量とすることによって、改良対象となる泥土の強度をより高く発現させることができる。これに加えて、重金属類等により汚染された泥土を改良対象とした場合に、重金属類を還元させて不溶化させて、改良土からの重金属類の溶出を抑制することができる。硫酸第一鉄は結晶水を含んでおり、一水和物~七水和物を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明で使用する固化材は、更に高分子凝集剤を含む。高分子凝集剤の種類は特に限定されるものではなく、汎用の高分子凝集剤を用いることができるが、アニオン系高分子凝集剤(アクリル酸とアクリルアマイドの共重合物)を用いることが好ましい。
なお、高分子凝集剤の含有量は、好ましくは4~12質量%であり、より好ましくは5~8質量%である。
【0025】
酸化マグネシウム、セッコウ、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び高分子凝集剤は、その性状が、それぞれ独立して、粉末状であってもよく、また、それぞれ独立して、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0026】
固化材の運搬時及び使用時における取り扱い性を高める観点から、酸化マグネシウム、セッコウ、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び高分子凝集剤はいずれも粉末状であることが好ましい。同様の観点から、本発明で使用する固化材は、粉末状であることが好ましい。
【0027】
本発明の効果が奏される限りにおいて、固化材は、改良対象となる泥土の性状に応じて、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト及びハイドロカルマイト等のカルシウムアルミネート系鉱物、珪石等のケイ素含有鉱物、炭酸マグネシウム、セピオライト、パーライト、ゼオライト及びシリカ等の多孔質体、並びにキレート剤等の少なくとも一種を用いることができる。特に、炭酸カルシウム等の炭酸塩は固化材の粉末化を容易にし、当該固化材のハンドリング性を向上させる観点から好ましく用いることができる。
【0028】
各種添加剤の性状は、それぞれ独立して、粉末状であってもよくまた各種添加剤は、それぞれ独立して、無水物であってもよく、水和物であってもよい。各種添加剤の添加の有無及び混合量については、予め配合試験を行って、その結果に基づいて決定することが好ましい。
【0029】
本発明で使用する固化材は、該固化材と、泥土加圧シールド工法又は泥水式シールド工法において排出される、改良対象である含水比の高い泥土とを混合して固化処理を行う固化処理方法に供することができる。
改良対象の泥土との混合時における固化材の性状は、粉末であってもよい。
また、固化材と、改良対象の泥土との混合は、固化材と改良対象の泥土とを同時に混合してもよい。
【0030】
泥土加圧シールド工法や泥水式シールド工法において排出される、改良対象である泥土の含水比は、30~65%であることが好ましい。上記泥土がこのような含水比を有することによって、上述した固化材による強度の発現をより効果的に発揮させることができる。なお、「含水比」とはJIS A1203に準じて測定される、(110±5)℃の炉乾燥によって失われる土中水の質量の、土の炉乾燥質量に対する比であり、質量百分率で表す。
【0031】
改良対象の泥土1m3当たりの固化材の添加量は、改良対象の土の種類や性状、並びに目的とする発現強度に応じて適宜変更可能であるが、混合の均一性、発現強度の向上及び処理コストの低減を兼ね備える観点から、好ましくは30~200kg/m3であり、より好ましくは50~150kg/m3である。
【0032】
固化材と改良対象の泥土とを混合する装置は、例えば、バックホウ、ミキシングバケット装着バックホウ、スタビライザー、自走式土質改良機、定置式ミキサ、トレンチャー型撹拌混合機、深層混合処理機、パワーブレンダー及びプラント混合等といった、当該技術分野において通常用いられる装置を用いることができる。
【0033】
以下に、泥水式シールド工法における固化材を用いた泥土の処理方法の一例を
図1を参照して説明する。
【0034】
図1に示すシールドマシン1は、泥水式シールド工法に用いられるものである。シールドマシン1は、掘削方向に貫通した穴を複数備える円盤状のカッター11と、該カッター11に接続され、カッター11を回転駆動させるためのモータ12とを備える。モータ12の駆動軸の延びる方向は、掘削方向と一致している。また、同図に示すシールドマシン1は、カッター11より掘削方向後方に位置し、地盤を掘削するにあたり、掘削土の流動性を高めることを目的として、掘削対象の土に泥水を供給する送泥管15を備えており、同じく、カッター11より掘削方向後方に位置し、カッター11によって掘削された掘削土を掘削方向後方に搬送するための排泥管3を備える。本実施形態では、送泥管15の一方が地上に配設されたポンプ16等の泥水供給装置(図示せず)と接続されており、他方はカッター11側へ開口している。
【0035】
泥水式シールド工法では、最初に、送泥管15によりカッターチャンバ2内に水分を含む泥水を供給するとともに、シールドマシン1によって地盤を掘削して得た掘削土砂とを撹拌混合して泥土を生成する。この泥土は含水率が高く、泥土の水圧にて地下水圧と土圧に対抗し切羽の安定を図ることができる。送泥管15によって供給される泥水は、泥土の含水比が30~65%となるように供給量を調整されることが好ましく、40~65%となるように供給量を調整されることがより好ましい。
【0036】
上述のようにして生成された泥土は、カッター11に設けられた穴を介して、シールドマシン1におけるカッターチャンバ2及び排泥管3によって、掘削方向とは反対方向であって、地上に配設された固化材添加装置20に搬送される。すなわち泥土はカッターチャンバ2外へ排出される。このとき、排泥管3によって掘削方向後方に搬送された泥土は、適宜ポンプ4、5及び6によって後方に排出される。
【0037】
そして、ベルトコンベアによって搬送された泥土を固化材添加装置20内に搬入するとともに、当該装置内に酸化マグネシウム、セッコウ、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び高分子凝集剤からなる固化材を添加する。
【0038】
以上の工程を経て、処理対象の土に強度を発現させた改良土を得ることができる。その後、養生後の土は、ベルトコンベア60によってホッパ40内に貯留される。次いで、ズリトロやトラック等の搬送設備を用いて、処理場や再利用現場等の目的の場所へ搬送して、再利用されるか、又は必要に応じて廃棄される。この改良土は特に養生を必要とせずに再利用可能なレベルに強度が向上しているので、建設資材として搬出可能であり、また有効利用が可能となる。
【0039】
このように、本発明の方法においては、高含水比の泥土を団粒化の段階を経ることなく1種の固化材のみを用いて養生を必要とせずに固化し、運搬及びリサイクルが可能な強度を有する土に改良できる。
また、従来技術では強度不足により産業廃棄物又は用途が限定された泥土として処理されていた建設発生土を、建設発生土の発生現場から外部に搬出する前に固化処理して、同一の又は異なる建設現場で改良土を建設資材として再利用することができる。
【0040】
特に、建設発生土が発生した建設現場と異なる建設現場で改良土を用いる場合、改良土を一定期間養生した後で他の建設現場に搬出されるところ、本発明の方法を用いて固化した改良土は、搬出時において掘削や解きほぐしを行った場合でも、改良土の強度が十分に維持された状態で搬出することができる。また改良土を搬入した他の建設現場でも、特段の工程を経ることなく、改良土をそのまま再利用することができる。
【0041】
また、本発明の方法によって改良された土は、高い強度を発現したものであるので、例えば国土交通省による通達「発生土利用基準について」の土質区分基準に規定される「第2種建設発生土」や、国土交通省による通知「建設汚泥処理度利用技術基準」の品質基準に規定される「第2種処理土」として好適に利用することができる。詳細には、本発明で使用する固化材によって改良された土は、例えば、工作物の埋戻し、建築物の埋戻し、土木構造物の裏込め、道路用盛土、築堤、土地造成、鉄道盛土、空港盛土及び水面埋立等の土木工事用又は建設用等の広範な用途で好適に利用することができる。
【0042】
次に、泥土加圧シールド工法における固化材を用いた泥土の処理方法の一例を
図2を参照して説明する。
図2に示すシールドマシン101は、掘削方向に貫通した穴を複数備える円盤状のカッター111と、該カッター111に接続され、カッター111を回転駆動させるためのモータ112と、シールドマシン101に推力を与えるシールドジャッキとを備える。モータ112の駆動軸の延びる方向は、掘削方向と一致している。また、切削土を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換するための水分等を含む作泥土材を注入するための作泥土材注入管115が配設されている。作泥土材注入管115は、一方がポンプ等(図示せず)と接続されており、他方はカッター111側、より具体的にはフィッシュテールピット116へ開口している。
【0043】
泥土加圧シールド工法では、最初に、作泥土材注入管115によりカッターチャンバ102内のフィッシュテールピット116に水分含む作泥土材を供給するとともに、シールドマシン101によって地盤を掘削して得た掘削土砂と作泥土材とを練混ぜ翼117によって撹拌混合して泥土を生成する。この泥土にシールドジャッキの推力により泥土圧を発生させ、この圧力で地下水圧と土圧に対抗し切羽の安定を図ることができる。作泥土材注入管115によって供給される作泥土材は、泥土の含水比が30~65%となるように供給量が調整されることが好ましく、30~50%となるように供給量が調整されることがより好ましい。
【0044】
泥土は、カッター111に設けられた穴を介して、シールドマシン101におけるカッターチャンバ102及びカッター111より掘削方向後方に位置するスクリューコンベア103によって、掘削方向とは反対方向に搬送される。すなわち泥土はカッターチャンバ102外へ排出される。
続いて、スクリューコンベア103によって掘削方向後方に搬送された泥土は、スクリューコンベア103における掘削方向後方側に位置するゲート131を介して、ベルトコンベア105上に排出され、搬送される。
【0045】
そして、ベルトコンベア105によって搬送された泥土をバケット106に入れ、泥土に酸化マグネシウム、セッコウ、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び高分子凝集剤からなる固化材を固化材添加装置120から添加して、ミキサ130により混合して固化を行う。これらの操作は、泥土をズリトロや立坑を介して地上に搬出した後で行ってもよく、トンネル建設現場内で行ってもよい。
【0046】
以上のように、上述した固化材を用いることによって、高含水比の泥土を団粒化の段階を経ることなく1種の固化材のみを用いて養生を必要とせずに固化し、運搬及びリサイクルが可能な強度を有する土に改良できる。本発明を泥土加圧シールド工法に適用することによって奏される他の効果については、上述した泥水式シールド工法によって奏される効果と同様である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。以下の説明では、特に断りのない限り「%」は「質量%」を表す。
【0048】
〔実施例1~6及び比較例1~4〕
<1.泥土試料の調製>
泥土試料として、JIS A1203に準じて測定された含水比は60%であり、JIS A1210に準じて測定された湿潤密度は1.67g/cm3である泥土を用いた。
次いで、前記の泥土を自然乾燥後、加水調整を行うことで含水比が異なる3種の泥土試料を得た。以下、これらの泥土試料を「発生土試料1」、「発生土試料2」及び「発生土試料3」という。
【0049】
【0050】
<2.固化材の調製>
原料として、以下に示す酸化マグネシウム、セッコウ、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び高分子凝集剤と、炭酸カルシウムとを以下の表2に示す割合で混合し、計10種類の粉末状の固化材を調製した。
・酸化マグネシウム:宇部マテリアルズ(株)製、軽焼酸化マグネシウム
・セッコウ:国内産、半水セッコウ
・硫酸アルミニウム:中国産、硫酸アルミニウム十四水和物
・硫酸第一鉄:中国産、硫酸第一鉄一水和物
・高分子凝集剤:中国産、アニオン系ポリマー
【0051】
【0052】
<3.改良土の調製>
粉末状の固化材を、発生土試料1、発生土試料2及び発生土試料3に、それぞれ50kg/m3又は150kg/m3の添加量にて添加して混合し、目的とする改良土を得た。
【0053】
〔土の強度評価〕
改良土を対象として、JIS A1228に従ってコーン指数を測定した。改良土においては、各材料の混合直後においてコーン指数測定用試験体を作製し、それぞれ混練直後のコーン指数を測定した。
【0054】
表2に示すように、酸化マグネシウムと、セッコウと、硫酸アルミニウムと、硫酸第一鉄と、高分子凝集剤とを用いた実施例の固化材は、これら固化材成分のいずれか一種を含まない比較例と比較して、混練直後でも改良土の強度を十分に発現できるものであることが分かる。このことは、発生土試料のコーン指数が、前記通達「発生土利用基準について」の土質区分基準における「第4種建設発生土」に区分される程度の値であったものが、固化材の添加によって、第2種建設発生土相当のコーン指数を有する改良土に改良されたことからも支持される。
また、実施例1~3及び実施例4~6の比較から明らかにように、固化材の添加量が50kg/m3の場合と比較して、150kg/m3の方が改良土の強度が向上していることが分かる。