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特許7528154コイルスプリングおよびコイルスプリング付きコネクタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】コイルスプリングおよびコイルスプリング付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/06 20060101AFI20240729BHJP
   H01R 13/6583 20110101ALI20240729BHJP
   F16F 1/02 20060101ALI20240729BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F16F1/06 Z
H01R13/6583
F16F1/02 B
F16F1/12 P
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022104421
(22)【出願日】2022-06-29
(65)【公開番号】P2023008919
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】21182800.9
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515120213
【氏名又は名称】オーデーウー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・シブッチャー
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0259617(US,A1)
【文献】特公昭48-009286(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/06
H01R 13/6583
F16F 1/02
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ部分において非円形の周方向形状を有する環状溝に収容される環状のコイルスプリングであって、
前記コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含み、前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在しており、前記長手方向部材は、前記コイルスプリングに接しており、
前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの自然な形状とは異なる形状であって円形形状とは異なる形状へと、前記コイルスプリングを付勢し、
前記環状溝は、周方向形状で平行な2つの長辺を含み、前記2つの長辺における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出可能な深さを有し、前記2つの長辺以外における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出しないように前記2つの長辺における前記環状溝の深さよりも深い深さを有し、
前記長手方向部材は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングを前記環状溝の底部に向けて付勢した状態で、前記2つの長辺における前記環状溝から前記コイルスプリングを僅かに突出させつつ、前記2つの長辺以外における前記環状溝から前記コイルスプリングを突出させないように、形状が決められている、コイルスプリング。
【請求項2】
前記コイルスプリングは、螺旋スプリング、リボンスプリング、ラジアル斜め巻きコイルスプリング、またはアキシャル斜め巻きコイルスプリング、である、請求項1に記載のコイルスプリング。
【請求項3】
前記長手方向部材は、金属ワイヤである、請求項1に記載のコイルスプリング。
【請求項4】
前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの長さの一部に沿ってのみ延在している、請求項1に記載のコイルスプリング。
【請求項5】
前記長手方向部材は、少なくとも1つの直線状部分を有している、請求項1に記載のコイルスプリング。
【請求項6】
相手側コネクタ部分と接続されるように構成されたコネクタ部分であって、
前記コネクタ部分は、請求項1に記載のコイルスプリングを含む、コネクタ部分。
【請求項7】
相手側コネクタ部分と接続されるように構成されたコネクタ部分であって、
前記コネクタ部分は、環状のコイルスプリングを有し、前記コイルスプリングは、前記コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含み、前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在しており、前記長手方向部材は、前記コイルスプリングに接しており、
前記コネクタ部分は、内部に前記コイルスプリングが収容される、非円形の周方向形状を有する環状溝を含み、前記コイルスプリングの前記長手方向部材は、前記コイルスプリングが前記環状溝によって付勢されてなる形状とは異なる形状であって円形形状とは異なる形状へと、前記コイルスプリングを付勢し、
前記環状溝は、周方向形状で平行な2つの長辺を含み、前記2つの長辺における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出可能な深さを有し、前記2つの長辺以外における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出しないように前記2つの長辺における前記環状溝の深さよりも深い深さを有し、
前記長手方向部材は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングを前記環状溝の底部に向けて付勢した状態で、前記2つの長辺における前記環状溝から前記コイルスプリングを僅かに突出させつつ、前記2つの長辺以外における前記環状溝から前記コイルスプリングを突出させないように、形状が決められている、コネクタ部分。
【請求項8】
前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの少なくとも1つのセグメントを、前記環状溝に向けて付勢する、請求項7に記載のコネクタ部分。
【請求項9】
コネクタであって、
請求項7に記載のコネクタ部分と、相手側コネクタ部分と、を含む、コネクタ。
【請求項10】
前記コイルスプリングは、前記コネクタ部分と前記相手側コネクタ部分との間に電気的コンタクトを提供する、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記相手側コネクタは、前記コイルスプリングの少なくとも一部を内部にラッチし得る溝を含む、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項12】
コネクタ部分において非円形の周方向形状を有する環状溝に収容される環状のコイルスプリングを成形する方法であって、
長手方向部材を、前記コイルスプリングの内部に配置し、ここで、前記長手方向部材を、前記長手方向部材が前記コイルスプリングの内面に接しているようにして、前記コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在させることと
前記長手方向部材は、前記コイルスプリングの自然な形状、および、前記コイルスプリングが、内部に前記コイルスプリングを収容する前記環状溝によって付勢されてなる形状の少なくとも一方とは異なる形状であって円形形状とは異なる形状へと、前記コイルスプリングを付勢することと、
を含み、
前記環状溝は、周方向形状で平行な2つの長辺を含み、前記2つの長辺における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出可能な深さを有し、前記2つの長辺以外における前記環状溝は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングが前記環状溝から突出しないように前記2つの長辺における前記環状溝の深さよりも深い深さを有し、
前記長手方向部材は、前記環状溝に収容された前記コイルスプリングを前記環状溝の底部に向けて付勢した状態で、前記2つの長辺における前記環状溝から前記コイルスプリングを僅かに突出させつつ、前記2つの長辺以外における前記環状溝から前記コイルスプリングを突出させないように、形状が決められている
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルスプリングであって、コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含み、長手方向部材がコイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在している、コイルスプリングに関する。本発明は、また、このようなコイルスプリングを成形する方法に関する。さらに、本発明は、そのようなコイルスプリングを有したコネクタ部分に関する。本発明は、その上、上記のコイルスプリングを含むコネクタ部分を有したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願EP3575627A1号は、特にハウジングの溝内で使用するための、コイルスプリングを開示しており、このコイルスプリングは、コイルスプリングをなす相互接続された複数のコイルの内部に配置された長手方向部材を有している。長手方向部材は、コイルスプリングの軸線に沿って延在しており、これにより、コイルスプリングの剛性を高めている。このことは、振動または衝撃を受けた時にコイルスプリングが溝から外れてしまうことを回避するように、機能する。
【0003】
英国特許出願GB2127626A号により、円筒形ハウジング内の溝の周囲に延在するコイルスプリングを含むスプリング構造が公知であり、コイルスプリング(62)は、溝の周囲に延在しかつコイルスプリングのターン内に位置したスプリングによって、溝の底部に向けて付勢されている。スプリング構造は、接地された電気部材どうしの間に、周方向の電気的コンタクトを提供し、これにより、無線周波数シールドの連続性を確保する。
【0004】
米国特許US4355854A号は、ナットが所定位置へと螺着された時にナットをボディに対してロックするために、カップリングナットとボディとの間に形成された環状空間内に配置されたコイルスプリングを開示している。コイルスプリングは、スプリングのコイルの内部に位置した金属コアであり、スプリングのコイル内を貫通して延在する金属コアを有しており、これにより、スプリングが環状構成に保持されるとともにコイルの動きが制限され、カップリングナットが締め付けられた時には、スプリングのコイルが圧潰されることが防止される。
【発明の概要】
【0005】
〔本発明の目的〕
本発明の目的は、コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含むとともに、長手方向部材がコイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在しているような、改良されたコイルスプリングを提供することである。本発明の別の目的は、そのようなコイルスプリングを成形するための、改良された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、そのようなコイルスプリングを有した、改良されたコネクタ部分を提供することである。その上、本発明は、上記のコイルスプリングを含むコネクタ部分を備えた、改良されたコネクタを提供することを目的とする。
【0006】
〔本発明による解決手段〕
以下では、1つ(冠詞「1つの(a)」および「その(the)」を含む)または2つ等の対象物の数に対するあらゆる言及は、他に明示的に言及されていない限り、本発明におけるさらなるそのような対象の存在を排除しないものとして理解されることが、意図されている。特許請求の範囲における参照符号は、限定することを意味するものではなく、単に特許請求の範囲の読みやすさを向上させるように機能するものである。
【0007】
本発明の一態様によれば、問題点は、請求項1の特徴を有したコイルスプリングによって解決される。コイルスプリングは、コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含み、長手方向部材は、コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在している。長手方向部材は、コイルスプリングに接しており、コイルスプリングを、その自然な形状とは異なる形状へと付勢する。
【0008】
本発明の文脈では、「コイルスプリング」は、ターン、ループ、または巻線などの、多数の相互接続されたコイルを含む。これらのコイルは、好ましくは同一である。
【0009】
本発明の文脈では、「長手方向軸線」とは、コイルスプリングの長手方向に延在している軸線である。長手方向とは、複数のコイルが順次配置されている方向である。長手方向軸線は、直線状とすることができ、また、曲線状とすることもできる。例えば、円環状のコイルスプリングの場合には、軸線は、円形である。
【0010】
本発明の文脈では、コイルスプリングの「自然な形状」とは、外力(振動、衝撃、内部にコイルスプリングが配置される溝、などによる力)も、長手方向部材も、コイルスプリングに対して作用していない場合の形状である。本発明の文脈では、コイルスプリングをその自然な形状とは異なる形状へと「付勢する」とは、コイルスプリングをこの異なる形状へと強制することを意味する。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、問題点は、請求項7の特徴を有したコネクタ部分によって解決される。コネクタ部分は、相手側コネクタ部分と接続されるように構成され、本発明の第1の態様におけるコイルスプリングを含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、問題点は、請求項8の特徴を有したコネクタ部分によって解決される。コネクタ部分は、相手側コネクタ部分と接続されるように構成されている。コネクタ部分は、コイルスプリングを有し、コイルスプリングは、コイルスプリングの内部に配置された長手方向部材を含み、長手方向部材は、コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在しており、長手方向部材は、コイルスプリングに接している。その上、コネクタ部分は、内部にコイルスプリングが収容される溝を含み、コイルスプリングの長手方向部材は、コイルスプリングが溝によって付勢されてなる形状とは異なる形状へと、コイルスプリングを付勢する。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、問題点は、請求項12の特徴を有したコネクタによって解決される。コネクタは、上述したようなコネクタと、相手側コネクタ部分と、を含む。
【0014】
本発明の最後の態様によれば、問題点は、コイルスプリングを成形する方法によって解決され、方法は、請求項15の特徴を有している。方法は、長手方向部材を、コイルスプリングの内部に配置することを含み、ここで、長手方向部材を、長手方向部材がコイルスプリングの内面に接しているようにして、コイルスプリングの長手方向軸線の方向に概ね沿って延在させる。長手方向部材は、長手方向部材が規定する形状へと、または、内部にコイルスプリングが収容される溝が規定する形状へと、コイルスプリングを付勢する。
【0015】
〔本発明の好ましい実施形態〕
単独でまたは組み合わせて適用され得る本発明の好ましい特徴について、以下においておよび従属請求項において、説明する。
【0016】
好ましいコイルスプリングは、弾性を有している。好ましくは、長手方向部材は、コイルスプリングを、その弾性に抗して、その自然な形状とは異なる形状へと、または、コイルスプリングが溝によって付勢されてなる形状とは異なる形状へと、付勢する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、コイルスプリングは、環状である。好ましくは、環状のコイルスプリングは、コイルスプリングの2つの端部を、一緒に接合することにより、特に好ましくは溶接することにより、形成される。このコイルスプリングは、次に、それら端部で接合された複数の部品コイルからなる列から、構成することができる。本発明の文脈では、「環状」という用語は、任意の閉塞した形状を指す。特に、環状は、円形を意味しない。しかしながら、好ましい環状コイルスプリングの自然な形状は、実質的に円形である。したがって、本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、環状コイルスプリングを、円形形状とは異なる形状へと付勢する。
【0018】
コイルスプリングは、例えば、螺旋スプリング、リボンスプリング、ラジアル斜め巻きコイルスプリング、アキシャル斜め巻きコイルスプリング、または、任意の同様タイプのスプリング、とすることができる。好ましいコイルスプリングは、導電性材料を含むまたは導電性材料からなる、例えば、金属ワイヤを含むまたは金属ワイヤからなる。コイルスプリングの好ましい材料は、スプリング鋼、銅、またはベリリウム銅合金、である。本発明は、ベース材料に対して追加的なメッキを施したコイルスプリングと、メッキを施していないコイルスプリングと、の両方を包含する。メッキは、例えば、特に高い導電性(そのような高い導電性が望まれる場合)または硬度(コイルスプリングが大きな機械的負荷の下にある場合)を有した材料であってもよい。当業者であれば、特定の用途に応じた好適なベース材料およびメッキ材料を認識している。
【0019】
好ましい長手方向部材は、弾性を有している。長手方向部材は、好ましくは、金属ワイヤを含むまたは金属ワイヤからなる。長手方向部材が含むまたは長手方向部材をなす好適な材料は、スプリング鋼である。追加的にまたは代替的に、長手方向部材は、プラスチック材料を含む、またはプラスチック材料からなる。好ましくは、長手方向部材は、コイルスプリングの内部に、部分的にまたは全体的に配置される。好ましくは、長手方向部材は、コイルスプリングの内面に接しており、これにより、コイルスプリングを、その自然な形状とは異なる形状へと、および/または、コイルスプリングが溝によって付勢されてなる形状とは異なる形状へと、付勢する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングのほぼ全長にわたって、または、コイルスプリングの長さの一部に沿ってのみ、好ましくは、99%未満に沿って、より好ましくは95%未満に沿って、より好ましくは90%未満に沿って、より好ましくは80%未満に沿って、より好ましくは70%未満に沿って、延在している。いくつかの実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングの長さの50%未満に沿って、好ましくは40%未満に沿って、延在している。本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングの長さの10%超に沿って、より好ましくは20%超に沿って、より好ましくは30%超に沿って、延在している。好ましい長手方向部材は、2つの端部を有している。
【0021】
好ましくは、長手方向部材は、コイルスプリングがその自然な形状にある時には、および/または、コイルスプリングが溝によって付勢されてなる形状にある時には、コイルスプリングの長さに沿った少なくとも一部が有する曲率と比較して、そのような曲率を増大または減少させる。
【0022】
好ましい長手方向部材は、または好ましい長手方向部材の少なくとも一部は、直線、円形セグメント、または、楕円セグメントもしくは他の長円形セグメント、の形状を有している。好ましくは、長手方向部材は、そのようなセグメントの、2つ、3つ、またはそれ以上の組合せ、を含む。特に、好ましい長手方向部材の形状は、円からなる単一セグメントとは相違している。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、直線部分を有している。好ましい長手方向部材は、C字形状であり、好ましくは、C字形状の2つのアームを形成する2つの平行な直線部分を有している。
【0024】
本発明は、また、上述した種類の第1の長手方向部材に加えて、1つまたは複数のさらなる長手方向部材が存在している実施形態も包含する。さらなる長手方向部材のそれぞれは、上述した長手方向部材の特性に関する任意の組合せを有することができる。好ましくは、複数の長手方向部材は、コイルスプリングの長手方向軸線に沿って、オーバーラップしていない。本発明の好ましい実施形態では、組み合わせられた複数の長手方向部材は、コイルスプリングのほぼ全長にわたって、または、コイルスプリングの長さの一部に沿ってのみ、好ましくは99%未満に沿って、より好ましくは95%未満に沿って、より好ましくは90%未満に沿って、より好ましくは80%未満に沿って、より好ましくは70%未満に沿って、延在している。いくつかの実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングの長さの50%未満に沿って、好ましくは40%未満に沿って、延在している。本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングの長さの10%超に沿って、より好ましくは20%超に沿って、より好ましくは30%超に沿って、延在している。各長手方向部材は、好ましくは2つの端部を有している。
【0025】
好ましいコネクタ部分は、内部にコイルスプリングが収容される溝を有している。好ましい溝は、コネクタのスリーブ上に位置しており、スリーブは、好ましくは、コネクタ部分のハウジングを形成する、または、コネクタ部分のハウジングの一部を形成する、または、コネクタ部分のハウジングに対して取り付けられている。溝は、スリーブの内面上にまたは外面上に配置されてもよい。
【0026】
好ましい溝の形状は、直線、円セグメント、または楕円セグメントもしくは他の長円形セグメント、からなる群から選択される形状のセグメントの1つまたは複数の組合せを含む。本発明の好ましい実施形態では、溝は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、直線部分を有している。
【0027】
好ましい溝は、環状である。好ましくは、環状の溝は、非円形である。むしろ、好ましい環状の溝は、台形、平行四辺形、または長方形、という全体的形状を有し、好ましくは、コーナー部分が丸められている。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、長手方向部材は、コイルスプリングの少なくとも1つのセグメントを、溝に向けて付勢する。本発明の文脈では、「溝に向けて」とは、長手方向部材により、コイルスプリングのセグメントと溝の底部との間の距離が減少することを意味している。好ましくは、コイルスプリングの2つ以上のセグメントが、例えばコイルスプリングの2つのセグメントが、溝に向けて付勢される。2つのそのようなセグメントは、例えば、コネクタ部分の互いに反対側に配置されてもよい。
【0029】
好ましいコネクタでは、コネクタ部分が、長手方向要素を有したコイルスプリングがコネクタ部分の溝内へと装着された状態で、コイルスプリングを含んでいる時には、長手方向部材は、内部にコイルスプリングが収容される溝の少なくとも一部または複数部分に抗して、コイルスプリングの少なくとも一部または複数部分を付勢する。好ましくは、長手方向部材は、コイルスプリングの、この少なくとも一部/これら複数部分を、より具体的には、コネクタ部分の溝の、この少なくとも一部/これら複数部分の、1つまたは複数の底部に抗して、付勢する。言い換えれば、長手方向要素の形状および弾性は、コイルスプリングの少なくとも一部または複数部分を、溝内へとかつ溝に抗して付勢するようなものである。長手方向要素による付勢のために、コイルスプリングの少なくとも一部または複数部分が溝内にクランプされることは、本発明のこの実施形態における達成可能な利点である。これにより、特に、コイルスプリングの少なくとも一部または複数部分を、溝内において堅固に保持することができる。
【0030】
好ましくは、長手方向部材が2つの端部を有しているコネクタ部分では、それら両端部の少なくとも一方が、特に好ましくは両端部が、コネクタ部分の他の構成要素に対して固定される。この他の構成要素は、好ましくは、上面上に溝が配置されている構成要素であり、例えばスリーブである。より好ましくは、1つまたは複数の端部は、溝の内部において、他の構成要素に対して固定される。
【0031】
好ましいコネクタ部分は、プラグまたはレセプタクルである。したがって、好ましいコネクタは、プラグインコネクタであり、この場合、嵌合のために、コネクタ部分は、相手側コネクタ部分に挿入される、またはその逆も成立する。
【0032】
好ましくは、コイルスプリングは、コネクタ部分と相手側コネクタ部分とが嵌合される時には、両者の間に電気的コンタクトを提供する。コネクタ部分が相手側コネクタ部分と嵌合する時には、コイルスプリングの少なくとも一部が、コネクタ部分と相手側コネクタ部分との間に装着されることが好ましい。これにより、有利には、一方ではコネクタ部分とコイルスプリングとの間で、他方ではコイルスプリングと相手側コネクタ部分との間で、よって、コネクタ部分から相手側コネクタ部分へと(とりわけ、コイルスプリングを介して)、明確に規定された電気的コンタクトを提供することができる。しかしながら、本発明は、また、コネクタ部分が相手側コネクタ部分と嵌合する時に、コイルスプリングが、装着されることなく、コネクタ部分と相手側コネクタ部分との間に配置される実施形態も、包含する。
【0033】
電気的コンタクトは、好ましくは、コネクタ部分のシールド部材と、相手側コネクタ部分のシールド部材と、の間である。コネクタ部分から相手側コネクタ部分への無線周波数シールドの連続性を得ることができることが、本発明のこの実施形態の達成可能な利点である。
【0034】
好ましくは、コイルスプリングは、コネクタ部分を相手側コネクタ部分に対して機械的に取り付けるように機能し、より好ましくは、コネクタ部分を相手側コネクタ部分に対して着脱可能に取り付けるように機能する。好ましい相手側コネクタは、コイルスプリングの少なくとも一部を内部にラッチするための溝を含む。これにより、コネクタ部分をコネクタの相手側コネクタ部分に対してラッチ式に取り付け得ることを、有利に達成することができる。好ましくは、相手側コネクタ部分の溝は、コネクタ部分の溝よりも浅い。これにより、コネクタ部分を相手側コネクタ部分から分離させる際にコイルスプリングがコネクタ部分上に留まることを、実現することができる。コネクタ部分を相手側コネクタ部分に対して機械的に取り付けるに際しては、コネクタ部分と相手側コネクタ部分との嵌合時に両者の間にコイルスプリングが装着されていることは、必ずしも必要ではない。したがって、コイルスプリングがコネクタを相手側コネクタに対して機械的に取り付けるように機能する本発明の一実施形態では、コイルスプリングは、コネクタ部分と相手側コネクタ部分との嵌合時に、コネクタ部分と相手側コネクタ部分との間に装着されない。むしろ、特に好ましくは、コイルスプリングの位置でコネクタ部分と相手側コネクタ部分の間に設けられた空間内に圧縮されることなく収まるように配置される。
【0035】
いくつかの実施形態では、溝は、均一な深さを有しているけれども、他の実施形態では、溝の深さは、不均一である。そのような不均一な深さの結果として、溝が、コネクタ部分のハウジングに対してまたはコネクタ部分のハウジングの一部に対して適用された場合には、溝は、ハウジングまたはハウジングの一部に関する全体的形状には、追従しないこととなる。有利には、溝の深さが不均一であることにより、コイルスプリングが溝の内部に収容された時には、溝の底部から測定された溝の頂部と、溝の底部から測定されたコイルスプリングの頂部(すなわち、溝の外側エッジ)と、の間の距離が相違することが、達成可能である。例えば、溝に沿ったいくつかの位置では、コイルスプリングは、溝の外側エッジを超えて延在し、他の位置では、外側エッジを超えて延在しない、または、異なる量だけ外側エッジを超えて延在する。
【0036】
コネクタ部分の好ましい実施形態では、コイルスプリングは、コネクタ部分の溝のいくつかの部分においてのみ、溝の外側エッジを超えて延在するものの、溝の残部では、コイルスプリングは、溝の内部へと完全に入り込んでいる。したがって、好ましい相手側コネクタ部分では、1つの環状溝ではなく、コネクタ部分の溝を超えて延在した状態でコイルスプリングを収容するための2つの端部を有した1つまたは複数の個別の溝が存在する。例えば、コネクタ部分の溝が環状溝であり、コイルスプリングが、溝の互いに反対側に位置した2つの部分においてのみ、好ましくは2つの直線状部分においてのみ、この環状溝を超えて延在する場合には、相手側コネクタは、好ましくは、コイルスプリングのそれら2つの部分を収容するために、相手側コネクタの互いに反対側に位置した2つの溝を、好ましくは直線状の溝を、含む。
【0037】
以下では、本発明のさらに好ましい実施形態を、例示によって説明する。しかしながら、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。
【0038】
図面は、概略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】コネクタ部分(右側)と相手側コネクタ部分(左側)とから構成されるコネクタを示す斜視図である。
図2】コイルスプリングがコネクタ部分の溝内に収容された状態で、コネクタ部分のコネクタ面を示す図であり、コイルスプリングには、長手方向部材が設けられていない。
図3】コイルスプリングがコネクタ部分の溝内に収容された状態で、コネクタ部分のコネクタ面を示す図であり、コイルスプリングには、長手方向部材が設けられている。
図4図3のコネクタ部分を示す断面図である。
図5図4の詳細を示す図である。
図6図3から図5のコネクタ部分に関して、コイルスプリングが位置した平面における断面図であり、コイルスプリングと、コイルスプリングの内部の長手方向部材と、が露出している。
図7】自然な形状におけるコイルスプリングを示す図である。
図8】長手方向部材を示す図である。
図9】長手方向部材を内部に有したコイルスプリングを示す図である。
図10】コネクタ部分を相手側コネクタ部分に嵌合させた状態で、コネクタを示す断面図である。
図11】相手側コネクタ部分に対しての、コネクタ部分特許に関して、コイルスプリングが位置した平面における断面図であり、コイルスプリングと、コイルスプリングの内部の長手方向部材と、が露出している。
図12図10の詳細を示す図である。
図13-16】異なる形状の長手方向部材を有した4つの例示的なコイルスプリングを示す図である。
図17】コイルスプリングの内部に位置した長手方向部材を示す図であり、長手方向部材の両端部は、溝の内部において、コネクタ部分のスリーブに対して取り付けられている。
図18】コイルスプリングの内部に位置した2つの長手方向部材を示す図であり、長手方向部材の両端部は、溝の内部において、コネクタ部分のスリーブに対して取り付けられている。
図19】溝の平行な長辺内へとコイルスプリングを付勢する長手方向部材を有したコイルスプリングを示す図である。
図20】コイルスプリングに対しておよび溝に対して装着する前の時点で、図19のコイルスプリングの長手方向部材を示す図である。
図21】コイルスプリングの内部に位置した2つの長手方向部材を示す図であり、これらは、協働して、コイルスプリングのほぼ全長に沿って延在している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明では、同一の参照符号は、同一の構成要素または同様の構成要素を指している。
【0041】
図1に示すプラグインコネクタは、右側に示すプラグの形態をなすコネクタ部分1と、左側に示すレセプタクルの形態をなす相手側コネクタ部分2と、を含む。コネクタ部分1は、相手側コネクタ部分2の適合スリーブ4内へと挿入することができ、その適合スリーブ4と嵌合し得るスリーブ3を、有している。両スリーブ3、4は、平行な2つの長辺と丸められたエッジとを有した等脚台形に似た断面を、有している。スリーブは、それぞれ、複数のピン(コネクタ部分の場合)とソケット(相手側コネクタ部分の場合)とを含むコネクタ面5、6を囲んでおり、コネクタ部分2のシールド部材として機能し、また、相手側コネクタ部分3のシールド部材として機能し、これにより、ピンおよびソケットを、電磁干渉からシールドする。
【0042】
コネクタ部分1のスリーブ3は、その外面上に、環状溝7を含み、この溝も、同様に、平行な2つの長辺と丸められたエッジとを有した等脚台形という全体的形状を有している。図4および図5において最良に理解されるように、環状の螺旋コイルスプリング8が、溝7内に収容されている。コイルスプリング8は、例えばスプリング鋼などの金属ワイヤからなる複数の巻線を含み、コイルスプリングの両端部を互いに溶接することによって形成されている。
【0043】
コイルスプリング8の自然な形状は、図7に示すように円形である。図2に示すように、このコイルスプリング8を環状溝7内に収容した場合には、コイルスプリングは、その固有の復元力により、平行な2つの長辺から過度に突出する形状へと、付勢される。このため、コネクタ部分1を相手側コネクタ部分2に対して挿入することが阻害されたり、または、コイルスプリング8を破損させたり、することがあり得る。
【0044】
この問題点を克服するために、図8に示すような長手方向部材9が、環状コイルスプリング8の内部に設けられ、この長手方向部材9は、コイルスプリング8の長手方向軸線の方向に概ね沿って延在するとともに、環状コイルスプリング8の内部に接し、コイルスプリングを、その自然な形状とは異なる形状へと付勢する。長手方向部材9は、コイルスプリング8の長さの、約80%に沿って延在している。より具体的には、長手方向部材9は、C字形状のものであり、C字形状の2つのアームを形成する2つの平行な長い直線部分を有している。第3の短い傾斜した直線部分は、円の部分によって、2つの平行な長い直線部分に対して接続されている。組み合わせると、長手方向部材9の部分は、溝7の一部の経路に類似しており、とりわけ、2つの平行な長辺と、傾斜した側辺のうちの1つと、に類似している。したがって、コイルスプリング8の内部に配置された時には、長手方向部材9は、図9に示すように、コイルスプリング8を、溝7の形状により類似した形状へと、特に、2つの実質的に平行な長辺を有した形状へと、付勢する。
【0045】
その結果、この長手方向部材9を含むコイルスプリング8が溝7内に収容された場合には、溝7の平行な2つの長辺からコイルスプリング8が過度に突出してしまうことが、阻止される。このことは、図3に示されている。コネクタ部分1を相手側コネクタ部分3に対して挿入することが容易となるとともに、コイルスプリング8の損傷が回避される。これは、C字形状の長手方向部材9のアームが、コイルスプリング8の対応するセグメントを、溝に向けて付勢するからである。図6の正面図は、この目的のために、長手方向部材9のアームがコイルスプリング8の内面に接し、コイルスプリング8を溝7の平行な長辺の底面に対して付勢している様子を、示している。
【0046】
図3および図6は、また、溝7のうちの、そこからコイルスプリング8がいくらか突出している平行な長辺を除いて、コイルスプリング8が溝7内へと完全に収容されていることを示している。これは、図6において最良に理解されるように、溝7の深さが不均一であるためであり、すなわち、傾斜した辺部分(図6において左右)では、溝7は、コイルスプリング8を完全に収容するよう充分な深さであるものの、平行な長辺に沿っては、コイルスプリング8を溝7の外側エッジからいくらか突出させるために、溝7が浅くなっているためである。コネクタ部分1が相手側コネクタ部分2と嵌合した時には、コイルスプリング8のこれらの突出部分は、コイルスプリング8の復元力に基づき、図10から図12に示すように、コネクタ部分1と相手側コネクタ部分2との間に、より正確には、コネクタ部分1のスリーブ3と相手側コネクタ部分2のスリーブ4との間に、装着される。これにより、コイルスプリング8は、コネクタ部分1と相手側コネクタ部分2との間に明確な電気的コンタクトを提供する。これにより、コネクタ部分1から相手側コネクタ部分2への無線周波数シールドの連続性が、確保される。
【0047】
図10図12からも理解されるように、相手側コネクタ部分2のスリーブ4は、その内面上に、コイルスプリング8の、コネクタ部分1のスリーブ3の溝7から突出した部分を内部にラッチするための、2つの平行な直線状の溝10を含む。その結果、コネクタ部分1は、コネクタの相手側コネクタ部分2に対して、ラッチ式に取り付けることができる。溝10は、コネクタ部分1の溝7よりもかなり浅いため、コネクタ部分1を相手側コネクタ部分2から分離する際には、コイルスプリング8は、コネクタ部分1上に留まることとなる。
【0048】
図13図16では、長手方向部材9のいくつかの例示的な形状が提供されており、長手方向部材9を有したコイルスプリング8がコネクタ部分7の対応する溝7内に収容された時に、長手方向部材が、どのような形状へとコイルスプリング8を付勢し得るかが示されている。典型的には、それらの形状は、コイルスプリング8が収容される溝7の形状に類似したものとなる。一般に、長手方向部材9は、コイルスプリング8がその自然な形状である時におよび/またはコイルスプリング8が溝7のみによって付勢された形状にある時にこの部分が有する曲率と比較して、少なくともコイルスプリング8の長さに沿った部分の曲率を、増大または減少させる。図13の長手方向部材9は、上述したものと同様であるけれども、上述したコネクタ部分1のスリーブ3において溝7がなす台形形状へとコイルスプリング8をさらに良好に付勢するために、追加的に、そのアームの端部に対して取り付けられた円形部分を有している。図14の長手方向部材9は、C字形状の平行な直線状アームがわずかに外向きに湾曲している点において、当初に説明した長手方向部材と相違している。図15のC字形状の長手方向部材9は、台形溝7よりもむしろ、長方形に適した形状へとコイルスプリング8を付勢するのに好適である。最後に、図16の長手方向部材9は、楕円形の溝7内にコイルスプリング8を収容するのに好適な、楕円部分からなる形状を有している。
【0049】
図17に示す長手方向部材9は、溝7の内部においてコネクタ部分1のスリーブ3に対して固定された両端部を有している。図18は、同様の構成を示しているけれども、2つの長手方向部材9が設けられており、各長手方向部材は、それぞれの両端部が、溝7の内部においてコネクタ部分1のスリーブ3に対して固定されている。2つの長手方向部材9を有した別の実施形態が、図21に示されている。ここでは、2つの長手方向部材9は、コネクタ部分1に対して固定されていない。むしろ、それら長手方向部材は、溝7の形状に厳密に対応してそれら長手方向部材の端部どうしが接し得るようにしてまたはほぼ接し得るようにして、コイルスプリング8のほぼ全長に沿って延在している。
【0050】
図20の長手方向要素9は、図13のものと同様であるものの、2つのアームがわずかに互いに向けて延在している点において相違している。その結果、この長手方向部材がコイルスプリング8の内部に位置している状態で、コイルスプリング8がコネクタ部分1の溝7内に配置された時には、長手方向部材9は、溝7の平行な長辺の底部に対して、増強された力で、コイルスプリング8を付勢する。長手方向要素9による付勢のために、コイルスプリング8は、溝7内にクランプされ、溝内へと堅固に保持される。
【0051】
上記の説明、請求項、および図面に記載した特徴は、本発明の様々な実施形態を具現するために、個別的にまたは任意の組合せで、関連付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-16】
図17
図18
図19
図20
図21