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特許7528168シール材、及び該シール材を含む二次電池
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  • 特許-シール材、及び該シール材を含む二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】シール材、及び該シール材を含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20240729BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20240729BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240729BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240729BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C09J123/08
C09J151/06
C09J11/08
H01M50/105
H01M50/178
H01M50/121
H01M50/193
H01M50/186
H01M50/557
C09K3/10 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022150902
(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公開番号】P2024045851
(43)【公開日】2024-04-03
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 翔平
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-292716(JP,A)
【文献】特開2012-136648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)と成分(B)を含むホットメルト接着組成物からなるシール材であって、
前記ホットメルト接着剤組成物の全体を100質量%としたときの前記成分(A)及び前記成分(B)の合計の含有率は、66質量%以上であり、
前記成分(A)と前記成分(B)の合計100質量%における前記成分(A)の含有率が、51質量%以上、95質量%以下であり、
前記成分(A)と前記成分(B)の合計100質量%における前記成分(B)の含有率が5質量%以上、49質量%以下であるシール材:
成分(A):エチレン単量体単位と、エチレン系不飽和エステル化合物、エチレン系不飽和アミド化合物、エチレン系不飽和酸化合物、エチレン系不飽和エーテル化合物及び不飽和カルボン酸無水物から選択される少なくとも一つの官能基含有モノマー単量体単位とからなるエチレン-官能基含有モノマー共重合体であって、前記成分(A)において、前記エチレン単量体単位と前記官能基含有モノマー単量体単位の合計100質量%を基準として、前記エチレン単量体単位の含有率が65質量%以上85質量%以下であり、前記官能基含有モノマー単量体単位の含有率が15質量%以上35質量%以下である;
成分(B):エチレン単量体単位とαオレフィン単量体単位とからなるエチレン-α-オレフィン共重合体と、少なくとも一種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、のグラフト共重合体であって、前記成分(B)のグラフト共重合体において、前記エチレン単量体単位と前記α-オレフィン単量体単位の合計100質量%を基準として、前記エチレン単量体単位の含有率が51質量%以上98質量%以下であり、前記α-オレフィン単量体単位の含有率が2質量%以上49質量%以下であり、かつ、前記成分(B)のグラフト率が、前記成分(B)の100質量%を基準として、0.05質量%以上、5.0質量%以下である。
【請求項2】
更に下記成分(C)を含む、請求項1に記載のシール材。
成分(C): 粘着付与剤
【請求項3】
前記ホットメルト接着組成物のDSCで測定した融解熱量が20J/g以上70J/g以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項4】
前記成分(A)のDSCで測定される融点が40℃以上90℃以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項5】
前記成分(B)のDSCで測定される融点が40℃以上110℃以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項6】
前記成分(B)の密度が0.860g/cm以上0.920g/cm以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項7】
前記成分(C)の軟化点が40℃以上150℃以下である、請求項に記載のシール材。
【請求項8】
前記成分(C)の粘着付与剤が、石油樹脂、ロジン樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載のシール材。
【請求項9】
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、成分(C)を1質量部以上49質量部以下の割合で含有する、請求項に記載のシール材。
【請求項10】
前記ホットメルト接着組成物のMFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分以上600g/10分以下である、請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項11】
オレフィン系重合体を含むフィルム層を有する外装容器と金属タブリードとが請求項1又は2に記載のシール材を介して積層された積層構造を有する二次電池。
【請求項12】
前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のシール材と金属タブリードとの積層構造を有する二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温シール性と層間接着力に優れたホットメルト接着組成物からなるシール材及び該シール材を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、液状、ゲル状又はポリマー状の電解質を有し、正極・負極活物質がポリマーからなるものも含まれる。このリチウムイオン二次電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電が進行する電池であり、高いエネルギー密度を持ちながらも小型化が可能なことから、従来の二次電池に代わって急速に普及が進んでいる。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、例えば、正極材料、負極材料及びセパレーターを積層して、外装容器に挿入後、電解質溶液(電解液)を充填し、金属性の正極タブリードと負極タブリードを差し込み、容器を密封して製造される。
外装容器は、樹脂フィルムにアルミニウム等の金属箔を積層し一体化したラミネートフィルムを袋状あるいはトレー状に成形して用いられる。樹脂フィルムとしては、その優れた絶縁性に加えて、電解液に対する耐溶剤性、シール性から、ポリプロピレン等のポリオレフィンが用いられる。
【0004】
一方で、正極及び負極のタブリードの差し込み口は、密封性を高めるため、ラミネートフィルムの樹脂フィルム層側とタブリードの間を、絶縁性のシール材でシールする。シール材としては、絶縁性や耐溶剤性に加えて、樹脂フィルムとのシール性を強固なものとするために、ポリプロピレン等のポリオレフィンが用いられる。このようなシール材を構成する接着組成物として、変性ポリプロピレンを用いる技術が知られている。
【0005】
しかしながら、変性ポリプロピレンとタブリードを強固に接着させるためには、ポリプロピレンの融点以上に加熱する必要があり、そのようなシール温度では、ポリプロピレン樹脂フィルムの融点も超えてしまうため、ポリプロピレン樹脂フィルムが薄くなり、所望のシール強度や耐電解液性が得られないだけでなく、電気短絡の恐れがあった。
このような問題を解決する接着組成物として、低温シール性に優れたホットメルト接着剤は有効である。特許文献1には、熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体をシール層として含む電池用ラミネート外包材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-173049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の熱接着性樹脂は、PETフィルムからなる基材及びポリプロピレンからなるプラスチック部品に対する接着力には優れるものの、金属への接着力が不十分である。また、低温シール性に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、低温シール性と層間接着力に優れたホットメルト接着組成物からなるシール材及び該シール材を含む二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、成分(A):エチレン-官能基含有モノマー共重合体、及び成分(B):変性エチレン-α-オレフィン共重合体を含有する接着組成物を含むシール材とすることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下を要旨とする。
[1]下記の成分(A)と成分(B)を含むホットメルト接着組成物からなるシール材。成分(A):エチレン単量体単位と、単一乃至複数の官能基含有モノマー単量体単位とからなるエチレン-官能基含有モノマー共重合体
成分(B):エチレン単量体単位と、αオレフィン単量体単位とからなるエチレン-α-オレフィン共重合体の変性体
[2]前記成分(A)のエチレン-官能基含有モノマー共重合体が、エチレン単量体単位と官能基含有モノマー単量体単位の合計100質量%を基準として、エチレン単量体単位の含有率が65質量%以上85質量%以下であり、官能基含有モノマー単量体単位の含有率が15質量%以上35質量%以下である、[1]に記載のシール材。
[3]前記成分(B)のエチレン-α-オレフィン共重合体の変性体がエチレン単量体単位とα-オレフィン単量体単位の合計100質量%を基準として、エチレン単量体単位の含有率が51質量%以上98質量%以下であり、α-オレフィン単量体単位の含有率が2質量%以上49質量%以下である、[1]又は[2]に記載のシール材。
[4]更に下記成分(C)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシール材。
成分(C): 粘着付与剤
[5]前記ホットメルト接着組成物のDSCで測定した融解熱量が20J/g以上70J/g以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のシール材。
[6]前記成分(A)のDSCで測定される融点が40℃以上90℃以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のシール材。
[7]前記成分(B)の変性率が成分(B)100質量%を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のシール材。
[8]前記成分(B)のDSCで測定される融点が40℃以上110℃以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のシール材。
[9]前記成分(B)の密度が0.860g/cm以上0.920g/cm以下である、[1]又は[2]に記載のシール材。
[10]前記成分(C)の軟化点が40℃以上150℃以下である、[4]~[9]のいずれかに記載のシール材。
[11]前記成分(C)の粘着付与剤が、石油樹脂、ロジン樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[4]~[10]のいずれかに記載のシール材。
[12]成分(A)と(B)の合計100質量%における成分(A)の含有率が51質量%以上99質量%以下であり、成分(B)の含有率が1質量%以上49質量%以下である、[1]~[11]のいずれかに記載のシール材。
[13]成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、成分(C)を1質量部以上49質量部以下の割合で含有する、[4]~[12]のいずれかに記載のシール材。
[14]前記ホットメルト接着組成物のMFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分以上600g/10分以下である、[1]~[13]のいずれかに記載のシール材。
[15]オレフィン系重合体を含むフィルム層を有する外装容器と金属タブリードとが[1]~[14]のいずれかに記載のシール材を介して積層された積層構造を有する二次電池。
[16]前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である、[15]に記載の二次電池。
[17][1]~[14]のいずれかに記載のシール材と金属タブリードとの積層構造を有する二次電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温シール性と層間接着力に優れたホットメルト接着組成物からなるシール材を提供することができる。
また、本発明によれば、このシール材を用いて、信頼性に優れる(短絡を防げる)と共に、環境負荷の少ない二次電池用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ラミネート型二次電池の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0014】
本発明において、共重合体及び共重合体の変性体のメルトフローレート(MFR)、融点、融解熱量、及び密度は、以下のようにして測定された値である。
【0015】
<MFR>
JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
【0016】
<融点>
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて昇温して測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点(℃)とした。
【0017】
<融解熱量>
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて昇温して測定した際の、基準物質との試料の温度差から得られた熱量を融解熱量(mJ/mg)とした。
【0018】
<密度>
JIS K7112に準拠して、水中置換法で測定される。
【0019】
また、後述の成分(A)及び成分(B)を構成する各単量体単位の含有率は、核磁気共鳴分光法や赤外分光法により求めることができる。
ここで、「単量体単位」とは共重合体の原料単量体に由来して共重合体に導入される繰り返し単位を意味する。
【0020】
[シール材]
本発明のシール材は、少なくとも下記の成分(A)と成分(B)を含むホットメルト接着組成物(以下、「本発明の接着組成物」と称す場合がある。)からなるもので、オレフィン系重合体層と極性材料層を接着させるシール材として用いられる。なお、極性材料層とは、金属等の極性を有する材料をいい、二次電池では正極材や負極材及びそのリード材
をいう。
成分(A):エチレン単量体単位と、単一乃至複数の官能基含有モノマー単量体単位とからなるエチレン-官能基含有モノマー共重合体
成分(B):エチレン単量体単位と、αオレフィン単量体単位とからなるエチレン-α-オレフィン共重合体の変性体
シール材の形態は、特に限定されるものではなく、フィルムやシート、織布、不織布が挙げられるが、中でも、フィルム又はシート形態が好ましい。
【0021】
<メカニズム>
本発明のシール材を構成するホットメルト接着組成物は、少なくとも成分(A)、成分(B)を含むことで、低温シール時でも十分に溶融し、被着体と反応接着することができる。各組成分の機能について説明する。
成分(B)を含むことで、極性材料との接着力を十分なものとすることができる。成分(A)は、低い熱量で溶融し、成分(B)の低温シール時の接着力を高める方向に作用する。また、成分(A)と成分(B)は親和性にも優れるので、ホットメルト接着組成物の凝集力を維持することができる。更に成分(C)の粘着付与剤を含有することで、成分(A)及び成分(B)と相溶し、接着組成物の被着体に対する濡れ性を向上させるとともに、低温シール時における流動性を付与することでより接着力を高める。
【0022】
<ホットメルト接着組成物の物性>
ホットメルト接着組成物のDSCで測定される融解熱量は、低温シール時における接着力の観点から、70J/g以下であることが好ましく、68J/g以下であることがより好ましい。一方、耐熱性の観点から、20J/g以上であることが好ましく、25J/g以上であることがより好ましい。
【0023】
本発明のホットメルト接着組成物のメルトフローレート(MFR;JIS K7210,190℃、2.16kg荷重)は、成形性の観点から0.5g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、2g/10分以上であることが更に好ましい。一方、塗工性及び機械強度の観点から600g/10分以下であることが好ましく、300g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることが更に好ましい。
【0024】
また、本発明のホットメルト接着組成物の融点は特に限定されないが、耐熱性の観点から、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、55℃以上であることが更に好ましい。一方、低温シール時の接着力の観点から、通常、本発明のホットメルト接着組成物の融点は120℃以下である。
【0025】
<成分(A)>
成分(A)は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするエチレン系共重合体であり、官能基含有モノマーを含有することを特徴とする。
【0026】
官能基含有モノマーの例としては、エチレン系不飽和エステル化合物、エチレン系不飽和アミド化合物、エチレン系不飽和酸化合物、エチレン系不飽和エーテル化合物、不飽和カルボン酸無水物等を挙げることができる。これらを具体的に記せば、エチレン系不飽和エステル化合物としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジ
メチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、等を例示する事ができる。エチレン系不飽和アミド化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、等を例示することができる。エチレン系不飽和酸化合物としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、等を例示することができる。エチレン系不飽和エーテル化合物としてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、等を例示することができる。不飽和カルボン酸無水物化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有するアルケニル無水コハク酸、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有するアルカジエニル無水コハク酸等を挙げることができる。これらは2種類以上同時に併用しても差し支えない。このうち、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸が好適に用いられる。エチレン-官能基含有モノマー共重合体の具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル多元共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸多元共重合体、又はエチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル多元共重合体等が挙げられ、一種又は2種以上を混合して用いることができる。
エチレン-官能基含有モノマー共重合体(A)としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸多元共重合体が好ましい。
【0027】
成分(A)のエチレン-官能基含有モノマー共重合体は、エチレン単量体単位と、単一乃至複数の官能基含有モノマー単量体単位の合計100質量%を基準として、エチレン単量体単位の含有率の下限は、ホットメルト接着組成物の機械強度及びハンドリング性の観点から65質量%以上が好ましく、67質量以上であることがより好ましい。一方、エチレン単量体単位の含有率の上限は、低温シール時の接着力の観点から85質量%以下が好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
成分(A)の官能基含有モノマー単量体単位の含有率の下限は、極性基材への親和性の観点から15質量%以上が好ましく、20質量%以上であることが好ましい。成分(A)の官能基含有モノマー単量体単位の含有率の上限は、成分(B)への相溶性の観点から35質量%以下が好ましく、33質量%以下であることが好ましい。
【0028】
成分(A)の密度は、極性材料への親和性の観点から0.930g/cm以上が好ましく、0.935g/cm以上がより好ましい。一方、機械強度及びハンドリング性の観点から0.970g/cm以下が好ましく、0.965g/cm以下がより好ましい。
【0029】
成分(A)のDSCで測定される融点の下限は、耐熱性の観点から40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、55℃以上であることが更に好ましい。また、成分(A)のDSCで測定される融点の上限は、低温シール時の接着力の観点から90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。
【0030】
成分(A)のDSCで測定される融解熱量の下限は、耐熱性の観点から15mJ/mg以上であることが好ましく、20mJ/mgであることがより好ましく、25mJ/mg
以上であることが更に好ましい。また、成分(A)のDSCで測定される融解熱量の上限は、低温シール性の観点から70mJ/mg以下であることが好ましく、65mJ/mg以下であることがより好ましい。
【0031】
成分(A)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.01~1000g/10分であり、好ましくは0.5~600g/10分であり、より好ましくは1~300g/10分である。MFRを上記下限値以上とすることで、単独での凝集力が強くなることをおさえ、他の成分との均一混合がしやすくなり、また、本発明のホットメルト接着組成物を製造する際のエネルギー負荷の増大を抑制することができる。また、MFRを上記上限値以下とすることで、本発明のホットメルト接着組成物の流動性を所望の範囲に制御でき、優れたシール性と接着力を維持できる。
【0032】
成分(A)は、上記の共重合体の1種であってもよく2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
<成分(B)>
成分(B)は、エチレン単量体単位と、α-オレフィン単量体単位とからなる共重合体の変性体である(以下、「変性エチレン-α-オレフィン共重合体」と称す場合がある)。
【0034】
成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン単量体単位とα-オレフィン単量体単位の合計100質量%を基準として、エチレン単量体単位を主成分とするものであり、エチレン単量体単位の含有率が51質量%以上98質量%以下であり、α-オレフィン単量体単位の含有率が2質量%以上49質量%以下である共重合体の変性体であることが好ましい。
成分(B)としては、成分(B)の原料として用いるエチレン-α-オレフィン共重合体(以下、「原料エチレン-α-オレフィン共重合体」と称す場合がある。)に、少なくとも一種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性エチレン-α-オレフィン共重合体が好適である。
【0035】
成分(B)の変性率(グラフト率)の下限は、ホットメルト接着組成物における極性基材への接着力の観点から、成分(B)100質量%を基準として、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。一方、成分(B)の変性率(グラフト率)の上限は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が単独で凝集し、ブツ等の外観不良となる問題を抑制する観点から、5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
【0036】
ここで変性率(グラフト率)とは、予め核磁気共鳴測定法により標準サンプルとして変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の定量を行い、その定量値から作成された検量線を用いて、赤外分光測定装置で測定した際の、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の含有率を意味する。例えば、接着組成物よりなるペレットを厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中のカルボン酸及び/又はその誘導体特有の吸収、具体的には1900~1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。なお、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性は、100%が反応に供されずに、原料エチレン-α-オレフィン共重合体と反応していない不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体も変性エチレン-α-オレフィン共重合体中に残留している場合があるが、本発明における変性率(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
【0037】
また、成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、未反応の不飽和カルボ
ン酸及び/又はその誘導体を除く処理を行って得られたものを使用してもよい。この処理方法は限定されないが、具体的な例としては、装置下部より気体が吹き込める構造を有する貯蔵タンクに変性エチレン-α-オレフィン共重合体を入れて、ヒーターあるいは熱媒油で装置を100℃程度に加熱し、装置下部より窒素等の不活性気体あるいは空気を吹き込み、6~24時間処理する方法がある。
【0038】
成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、0.860g/cm以上であることが好ましく、0.865g/cm以上であることがより好ましい。変性エチレン-α-オレフィン共重合体の密度が上記下限以上であれば、高温時の基材層に対する接着力、即ち耐熱性の低下を抑制できる。成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体の密度の上限は、0.920g/cm以下が好ましく、0.915g/cm以下がより好ましい。
【0039】
成分(B)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.05~500g/10分であり、好ましくは0.5~300g/10分であり、より好ましくは1~150g/10分である。MFRを上記下限値以上とすることで、単独での凝集力が強くなることをおさえ、他の成分との均一混合がしやすくなり、また、本発明のホットメルト接着組成物を製造する際のエネルギー負荷の増大を抑制することができる。また、MFRを上記上限値以下とすることで、本発明のホットメルト接着組成物の流動性を所望の範囲に制御でき、優れたシール性と接着力を維持できる。
【0040】
成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体のDSCで測定した融点は耐熱性の観点から40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、低温シール時の接着力の観点から110℃以下であることが好ましく、105℃以下であることがより好ましい。
【0041】
成分(B)のDSCで測定される融解熱量の下限は、耐熱性の観点から25mJ/mg以上であることが好ましく、30mJ/mgであることがより好ましく、35mJ/mg以上であることが更に好ましい。また、成分(B)のDSCで測定される融解熱量の上限は、低温シール性の観点から130mJ/mg以下であることが好ましく、110mJ/mg以下であることがより好ましい。
【0042】
成分(B)の原料エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン単量体単位を主成分とするものであればよく、エチレン単位の含有率が51質量%以上、すなわちα-オレフィン単量体単位の含有率が49質量%以下のものであり、2質量%以上のものが好適である。より好ましくはα-オレフィン単量体単位の含有率が45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0043】
原料エチレン-α-オレフィン共重合体は、上記に該当するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等のエチレンとエチレン以外のα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。本明細書において、エチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンはプロピレンを含む広義の意味である。エチレン以外のα-オレフィンは限定されないが、通常、エチレンと炭素数4~20、好ましくは炭素数4~10の二重結合を有する炭化水素が挙げられる。
【0044】
原料エチレン-α-オレフィン共重合体は、上記の樹脂の1種であってもよく2種以上の混合物であってもよい。
【0045】
なお、前記の各共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0046】
これらの中でも、原料エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、これらのブレンド物が好ましい。
【0047】
また、原料エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、特に限定されないが、成分(B)の機械強度を優れたものとするために、0.860~0.920g/cmであることが好ましく、0.865~0.915g/cmあることがより好ましい。原料エチレン-α-オレフィン共重合体の密度を上記数値範囲とすることで、成分(B)の機械強度を優れたものとすることで、接着力が高まる。
【0048】
原料エチレン-α-オレフィン共重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.1~1000g/10分であり、好ましくは1.0~600g/10分であり、より好ましくは2~300g/10分である。MFRを上記下限値以上とすることで、単独での凝集力が強くなることをおさえ、他の成分との均一混合がしやすくなり、また、本発明の変性工程の際のエネルギー負荷の増大を抑制することができる。また、MFRを上記上限値以下とすることで、本発明のホットメルト接着組成物の流動性を所望の範囲に制御でき、優れた塗工性と接着力を維持できる。
【0049】
原料エチレン-α-オレフィン共重合体のDSCで測定した融点は耐熱性の観点から40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、接着力の観点から110℃以下であることが好ましく、105℃以下であることがより好ましい。
【0050】
原料エチレン-α-オレフィン共重合体のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステルが例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミド等の誘導体であってもよい。これらの誘導体の中では、酸無水物が好ましい。
【0051】
これらの中では、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。また、これらの化合物を複数併用してもよい。更には、ビニルトリメトキシシラン等のいわゆるビニルシラン類等を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とともに併用することもできる。
【0052】
成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体を得るためのグラフト変性は公知の如何なる方法を用いてもよく、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカルを発生させる公知の有機過酸化物等をラジカル発生剤として添加してもよい。また、反応させる手法としては、例えば、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法が挙げられ、更には、懸濁分散反応法等その他の方法を用いてもよい。
【0053】
溶融変性法としては、原料エチレン-α-オレフィン共重合体と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融した原料エチレン-α-オレフィン共重合体に、ラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用される。溶融混練には通常、単軸又は
二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
【0054】
溶液変性法としては、原料エチレン-α-オレフィン共重合体を有機溶媒等に溶解して、これに後述するラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とを添加してグラフト共重合させる方法を使用することができる。有機溶媒としては特に限定されるものではなく、例えばアルキル基置換芳香族炭化水素やハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0055】
グラフト変性する際の原料エチレン-α-オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との配合割合は限定されないが、原料エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を通常0.01~30質量部、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の割合で配合することが望ましい。
【0056】
ラジカル発生剤としては公知のものが使用でき、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、ヒドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類等が挙げられる。これらのうちで、ジアルキルパーオキサイド類としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンやジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0057】
これらのラジカル発生剤は、原料エチレン-α-オレフィン共重合体の種類やMFR、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類及び反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対し、通常0.001~20質量部、好ましくは0.005~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部、更に好ましくは0.01~3質量部である。
【0059】
これら成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体は1種のみを用いてもよく、原料エチレン-α-オレフィン共重合体の共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
<成分(C)>
成分(C)は、粘着付与剤である。成分(C)の粘着付与剤は、常温で固体の非晶性樹脂であり、通常粘着付与樹脂として粘着テープ、塗料及びホットメルト接着剤用分野に用いられており、重合されるモノマー源の違いにより、石油樹脂、ロジン樹脂又はテルペン樹脂などを挙げることができる。
【0061】
前記石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、又はそれらの共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。石油樹脂の骨格としては、C5樹脂、C9樹脂、C5/C9共重合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族系化合物の重合体、オレフィン/ビニル置換芳香族化合物の共重合体、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体、あるいはこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0062】
前記ロジン樹脂とはアビエチン酸を主成分とする天然樹脂であり、例えば、天然ロジン、天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジン、天然ロジンエステル、変性ロジンエステル、重合ロジンエス
テルが挙げられる。
前記テルペン樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びそれらの水素添加物が挙げられる。
【0063】
これら粘着付与剤の中でも、石油樹脂が好ましく、脂肪族系石油樹脂及び部分水添又は完全水添芳香族系石油樹脂が、成分(A)及び成分(B)との分散性が良いので好ましい。
【0064】
成分(C)の粘着付与剤の軟化点の上限は接着力の観点から150℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましい。成分(C)の粘着付与剤の軟化点の下限は、耐熱性の観点から、40℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。軟化点を上記数値範囲内とすることで、接着力と耐熱性の両立が可能となる。
なお、粘着付与剤(C)の軟化点は、JIS K-5902-1969に準じて環球法によって測定することができる。
【0065】
これら成分(C)の粘着付与剤は、1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
<成分(A)、成分(B)の含有割合>
本発明のホットメルト接着組成物は、成分(A)と(B)の合計100質量%における成分(A)の含有率の下限は、低温シール性の観点から、51質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。成分(A)の含有率の上限は、極性材料との接着力の観点から、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。
本発明のホットメルト接着組成物は、成分(A)と(B)の合計100質量%における成分(B)の含有率の下限は、極性材料との接着力の観点から、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。
成分(B)の上限は、低温シール性の観点から、49質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0067】
<成分(A)と成分(B)に対する成分(C)の含有割合>
成分(C)は、成分(A)、(B)の合計100質量部に対し、1質量部以上49質量部以下の割合で含有するのが好ましい。成分(C)を上記下限値以上含有することで、流動性が向上し、塗工しやすくなり、基材層との濡れ性が良好になることから、基材層への接着力も高くなる。成分(C)を上記上限値以下含有することで、凝集力の低下を抑制し、高い機械強度を保持することができる。またペレット状もしくはシート形状での接着組成物同士の誤着を抑制することができる。
【0068】
ホットメルト接着組成物が成分(A)と(B)を含むことによる低温シール性と層間接着力に優れた効果を有効に得る観点から、ホットメルト接着組成物全体を100質量%とした場合の成分(A)と成分(B)の合計の含有率は、好ましくは66質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上である。
【0069】
<ホットメルト接着組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率>
本発明のホットメルト接着組成物は、組成分の合計100質量%中に、不飽和カルボン酸成分を0.025質量%以上含むことが好ましい。
本発明のホットメルト接着組成物の上記不飽和カルボン酸成分の含有率を上記下限値以上とすることで、基材層への接着力を十分に得やすい。ただし、不飽和カルボン酸成分の含有率が多過ぎると凝集し易い傾向になり、ホットメルト接着組成物に含有される成分(A)や成分(C)との相溶性が低下する場合があるので、接着力と相溶性の両立の観点で、樹脂成分100質量%中の不飽和カルボン酸成分の含有率の下限は、0.05質量%以上であることがより好ましい。一方、樹脂成分100質量%中の不飽和カルボン酸成分の含有率の上限は、2.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0070】
ホットメルト接着組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体の変性率(グラフト率)とホットメルト接着組成物中の成分(B)の含有割合とから算出することができる。
【0071】
<その他の成分>
本発明のホットメルト接着組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)~(C)以外に添加剤や重合体等(以下、その他の成分という場合がある)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0072】
本発明のホットメルト接着組成物に使用可能な添加剤は限定されないが、具体的には、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等)、難燃剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、充填剤(無機及び/又は有機フィラー等)、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、相溶化剤、触媒残渣の中和剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料等)が挙げられる。これら添加剤を用いる場合のその含有率は限定されないが、ホットメルト接着組成物100質量%に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下の含有率であることが望ましい。本発明のホットメルト接着組成物は、シール工程、接着シート製造及び熱張り合わせ工程における酸化・熱劣化を抑制するため耐熱安定剤を用いることが好ましい。また、接着シート製造工程において、押出成形ロールや射出成形金型への張り付きを抑制するため、さらに、接着シート同士の密着を抑制して、工程中のハンドリングを容易にするために、ブロッキング防止剤、スリップ剤を用いることが好ましい。
【0073】
その他の成分として用いる重合体は限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル類、ポリカーボネート類、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリスチレン及びスチレン共重合体又はその水添物、環状ポリオレフィン、及びポリメチルメタクリレート等のアクリル/メタクリル類を挙げることができる。
これらの中でも、低温シール性の観点からスチレン共重合体又はその水添物(成分(D))を用いることが好ましい。
ただし、本発明のホットメルト接着組成物が前述の成分(A)と成分(B)を含むことによる本発明の効果を有効に得る上で、本発明のホットメルト接着組成物中の全樹脂成分100質量%に含まれるその他の成分として用いる重合体の含有率は34質量%以下が好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0074】
<ホットメルト接着組成物の製造方法>
本発明のホットメルト接着組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。
混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述
の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分散した組成物を得る。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の接着組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、各原料成分等の混合物をペレット化したり目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
【0075】
本発明のホットメルト接着組成物は、所定量の上記原料成分を種々公知の手法、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する手法により調製することができる。溶融混練時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150~300℃の範囲で行う。
【0076】
本発明のホットメルト接着組成物は、少なくとも前記の成分(A)と成分(B)を含有していれば、これを独立した原料として用いなくともよい。すなわち、既にこれら成分のうち2つ以上の成分を含有する重合体組成物を原料とする場合や、既に重合体組成物からなる成形品となったものを破砕して原料とすることもできる。また、予め重合体組成物となっている原料が本発明を構成する全ての成分を有していない場合には、足りない成分のみを原料として補えばよい。
【0077】
<ホットメルト接着組成物を含むシール材>
本発明のホットメルト接着組成物から得られるシール材は、種々の押出成形や射出成形により製造することができる。中でも大量生産、バリやスリット等の発生によるロス率の観点から射出成形が好ましい。また、本発明のホットメルト接着組成物を単独で使用し、単層シール材とすることができるが、後述する種々の重合体との接着力に優れているので、これら重合体と共押出することにより、一体化した多層シール材とすることもできる。本発明のホットメルト接着組成物を用いたシール材としては、上述した本発明のホットメルト接着組成物からなる層を少なくとも有し、多層シール材の場合は、片面又は両面に本発明の接着組成物層を接するように有するものが挙げられる。
【0078】
共押出する重合体は限定されず、具体的には、本発明における成分(A)及び成分(B)や、前記した本発明の重合体組成物におけるその他の成分として挙げた重合体が挙げられるが、本発明の接着組成物との接着力に優れる観点からオレフィン系重合体であることが好ましく、とりわけ、エチレン単位を主成分とするエチレン系重合体、プロピレン単位を主成分とするプロピレン系重合体が好ましい。ここでエチレン単位を主成分とするエチレン系重合体とは、エチレン系重合体を構成する単量体のうちで、質量基準で、エチレン単位を最も多く含有することを意味する。また、プロピレン単位を主成分とするプロピレン系重合体とは、プロピレン系重合体を構成する単量体のうちで、質量基準で、プロピレン単位を最も多く含有することを意味する。
【0079】
これらの共押出重合体は、2種以上が積層されていてもよい。
【0080】
本発明のシール材は、後述する基材と積層一体化した多層シール材とすることもできる。前記基材としては、金属又は重合体のフィルムやシートが挙げられる。
ここで、「シート」と「フィルム」は何れも面状の成形体を意味し、同義である。
【0081】
基材が金属フィルム又はシートである場合、該金属フィルム又はシートを構成する金属は限定されないが、具体的には、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼、コバルト、鉄、亜鉛、鉛、チタン、炭素鋼又はそれらの合金である。中でもアルミニウム、ニッケ
ル、銅又はそれらの合金が好適に用いられる。
【0082】
基材が重合体フィルム又はシートである場合、該重合体フィルム又はシートを構成する重合体は限定されないが、具体的には、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含むオレフィン系重合体やオレフィン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリカーボネート類、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・66、ポリアミド12等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類ポリエステル系エラストマー、ポリスチレンやスチレン系エラストマー、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類、ポリアクリル酸メチル等のアクリル重合体類等の熱可塑性重合体が好適に用いられる。
【0083】
これらの基材は、2種以上が積層されていてもよい。
【0084】
また、本発明のホットメルト接着組成物からなるシール材層と基材層との層構成は限定されないが、これらの層が隣接している場合が好ましい。
【0085】
基材層の形態は、フィルムやシートに限定されず、織布、不織布のような形状であってもよい。また、基材層は、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の基材の作成方法としては、特に限定されるものではなく、共押フィルム法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法等が挙げられる。
【0086】
本発明のシール材には、本発明のホットメルト接着組成物層、共押出重合体層、基材層以外に、任意の層を設けることができる。
【0087】
<二次電池>
本発明の二次電池の実施形態は、本発明のシール材と金属タブリードとが積層された積層構造を有するものであってよい。
本発明の二次電池の別の実施形態は、オレフィン系重合体を含むフィルム層を有する外装容器と金属タブリードとが本発明のシール材を介して積層された積層構造を有する二次電池オレフィン系重合体層と極性材料層とが積層された積層構造を有するものであってよい。
このような二次電池において、本発明のシール材は、二次電池用部材として用いることができ、例えば、二次電池用タブリードフィルム(以下、「タブリードフィルム」と称する場合がある)として使用することができる。
ここでタブリードは、電池における正極及び負極と外部の電気の出し入れを行う端子であり、一般的に正極のリードの基材にはアルミニウム、負極のリードの基材にはニッケルめっき銅が用いられ、リードの基材の少なくとも片面にタブリードフィルムが用いられる。以下、図を用いて説明する。
【0088】
図1は、ラミネート型二次電池100の断面を示す模式図である。二次電池100において、本発明のホットメルト接着組成物からなるシール材12はタブリード11に接し、必要に応じて他の層を有することができる。シール材12は、ダブリード11の一部を被覆し、二次電池における外装容器10の内面に接着させるために形成されている。本発明のホットメルト接着組成物からなるシール材は、低温シール性に優れているため、ダブリード11及び外装容器10の内面との接着温度を従来よりも低くすることができ、その結果、外装容器内面に配した樹脂フィルム(ポリプロピレン等)の融点以下でシールすることができ、樹脂フィルムの膜厚減少による、電気短絡を防ぐことができる。また、シール時の熱負荷を少なくすることができるとともに、生産性を向上することができる。なお、
外装容器10の内部には、電解液13が充填されている。
ここで、タブリードとのシール温度としては、シール材が溶融する温度であれば特に限定されないが、好ましくは100以上150℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下である。また、加熱時間も特に限定されないが、好ましくは1秒以上10分以下、より好ましくは1秒以上3分以下である。
【0089】
二次電池用部材を製造する方法として、公知の種々の方法を採用することができるが、特に、ホットメルトラミネート法が好適である。ラミネート加工は、予め製造した基材の表面上に、Tダイより押出した溶融重合体膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する押出ラミネート方法と、予めTダイにより製膜・固化した膜を熱圧着する熱ラミネート方法がある。通常、基材の片側表面にラミネート加工するが、必要に応じて、両側にラミネートすることもできる。
【0090】
ラミネート成形は、1種の基材層を予めフィルムとして用いるだけでなく、2種以上のフィルムを用いてもよい。その場合、同時貼り合せによって成形してもよいが、予め、一方の基材を用いてラミネート成形しておき、これに他方の基材を貼り合せてもよい。また、ラミネートする樹脂は、1種のみを用いる場合に限らず、2種以上を共押出してもよい。
【0091】
本発明のシール材において、本発明のホットメルト接着組成物からなるシール材層の厚みに特に制限はなく、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、通常0.1~2000μmであり、0.3~1000μmであることが好ましく、0.5~500μmであることがより好ましい。
【0092】
本発明のホットメルト接着組成物を含むシール材は、優れた低温シール性、金属や極性材料との接着力を示すため、これを用いた本発明のホットメルト接着組成物を含むシール材及び二次電池用部材は、エレクトロニクス、自動車、ロボティクス分野の二次電池として好適に用いることができる。
【実施例
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0094】
[測定・評価方法]
以下の実施例及び比較例で用いた原材料、得られた接着組成物及び積層体の測定・評価方法は以下の通りである。
【0095】
(1)変性率
変性エチレン-α-オレフィン共重合体のペレットをプレス成形(200℃)により、厚さ100μmのフィルム状に成形したサンプルを使用し、FT-IR装置(JASCO
FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、前述の方法で赤外吸収スペクトル法による変性率を算出した。変性エチレン-α-オレフィン共重合体の変性率とは、変性エチレン-α-オレフィン共重合体の中の不飽和カルボン酸成分の含有率に相当する。なお、ホットメルト接着組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、成分(B)の変性エチレン-α-オレフィン共重合体の変性率(グラフト率)とホットメルト接着組成物中の成分(B)の含有割合とから算出した。
【0096】
(2)密度、MFR、融点、融解熱量
密度、MFR、融点、融解熱量は、前述の方法で測定した。
【0097】
(3)金属(アルミ)との接着強度
各実施例及び比較例で得られたホットメルト接着組成物のペレットを用いて、下記Tダイ成形して得られた接着シートをホットメルトラミネート法により積層した積層体を用いた。
<接着シートの製造>
口径20mmφの押出機が装着された幅200mmのTダイスを有する押出シート成形機(サーモプラスティックス工業株式会社製TPM-20S型)を用い、溶融する接着組成物の温度が180~230℃、冷却ロール表面温度30℃になるように設定し、接着シートの幅が150mm、層厚みが100μmとなるように、押出量と取速度を調整して単層製膜した。
【0098】
<ホットメルトラミネート試験片の製造>
上記で得られた接着シートを押出方向と垂直方向(TD方向)に50mm×100mmサイズに切断し、無垢アルミ箔(25μm)と重ね合わせて、120℃又は140℃、0.2MPa、圧着時間1秒の条件で加熱圧着してヒートシールフィルム(シール試料)を作製した。
上記で得られたヒートシールフィルムをシール方向と垂直に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃の恒温雰囲気下にて、速度300mm/min.でTピール剥離試験を行い、接着強度を測定した。ここで、接着強度は、金属(アルミ)と接着組成物の層との界面における接着強度である。接着強度が高いものが良好であるが、3N/15mm以上を実用に足る強度とした。
【0099】
(4)樹脂フィルム(PP)との接着強度
(3)と同様にして、各実施例及び比較例で得られたホットメルト接着組成物のペレットを用いて、上記Tダイ成形して得られた接着シート(100μm厚み)をホットメルトラミネート法により積層した積層体から短冊状試験片を切り出し、(3)の条件で接着強度を測定した。接着強度が高いものが良好であり、3N/15mm以上を実用に足る強度とした。
【0100】
[原材料]
以下の実施例及び比較例において、ホットメルト接着組成物の製造に用いた原材料は以下の通りである。
【0101】
<成分(A)>
・(A)-1
エチレン-酢酸ビニル共重合体[エチレン単量体単位含有率:72質量%、酢酸ビニル含有率:28質量%、密度:0.95g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):15g/10分、融点:68℃、融解熱量:52mJ/mg]を用いた。
・(A)-2
エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体[エチレン単量体単位含有率:79量%、(メタ)アクリル酸メチル含有率:21質量%、密度:0.94g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):11g/10分、融点:76℃]を用いた。
・(A)-3
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸多元共重合体(A)-3として、日本ポリエチレン社製 レクスパールET(商標登録)ET530H[(メタ)アクリル酸エステル含有率:16質量%、密度:0.95g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):30g/10分、融点:86℃]を用いた。
【0102】
<成分(B):変性エチレン-α-オレフィン共重合体>
変性エチレン-α-オレフィン共重合体(B)として、市販のエチレン-1-オクテン共重合体[1-オクテン含有率:33質量%、密度:0.89g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):18g/10分、融点:76℃]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性エチレン-α-オレフィン共重合体[変性率(グラフト率):1.1質量%、MFR(190℃、荷重2.16kg):10g/10分、融点:77℃、融解熱量:46mJ/mg]を用いた。
【0103】
<成分(C):粘着付与剤>
・(C)-1
粘着付与剤(C)-1として、部分水添芳香族系石油樹脂[軟化点:135℃、密度:1.00g/cm]を用いた。
・(C)-2
粘着付与剤(C)-2として、完全水添芳香族系石油樹脂[軟化点:140℃、密度:1.00g/cm]を用いた。
【0104】
<成分(D):スチレン共重合体>
・(D)-1
スチレン共重合体(D)-1として、クラレ社製 「セプトン(商標登録)4033」を用いた。
【0105】
<添加剤>
・(X)-1:BASF社製 リン系酸化防止剤「IRGAFOS(登録商標)168」・(X)-2:BASF社製 フェノール系酸化防止剤「IRGANOX(登録商標)1010」
・(Y):水澤化学工業社製 ブロッキング防止剤 「シルトン(登録商標) JC-50」
【0106】
[実施例1]
<ホットメルト接着組成物の製造>
表1に示す様に(A)-1を89質量部、(B)を11質量部、(C)-1を11質量
部、(X)-1を0.05質量部、(X)-2を0.05質量部、(Y)を0.5質量部の配合量にてドライブレンドして混合し、単軸押出機(IKG社製、PSM50-32(1V)、D=50mmφ、L/D=32)を用い、設定温度180~210℃、スクリュー回転数40~70rpm、押出量15~40kg/hで溶融混練し、ストランドカットにより、接着組成物のペレットを得た。得られた接着組成物のペレットを用いて、前記(1)~(4)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
【0107】
[実施例2~5、比較例1]
表1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして接着組成物のペレットを得た。実施例1と同様に、前記(1)~(4)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
[評価結果]
表より、本発明のホットメルト樹脂組成物からなるシール材の具体例である実施例1~5は、低温シールにおけるアルミ及びポリプロピレンとの接着力にも優れることが分かる。
【符号の説明】
【0110】
100 ラミネート型二次電池
10 外装容器
11 タブリード
12 シール材層
13 電解液

図1