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特許7528171リチウム二次電池用固体電解質及びその調製方法、並びにリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用固体電解質及びその調製方法、並びにリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240729BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240729BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240729BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240729BHJP
   C08F 16/38 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
C08F16/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022159579
(22)【出願日】2022-10-03
(65)【公開番号】P2023057044
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】202111172053.8
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】楊 立
(72)【発明者】
【氏名】章 正熙
(72)【発明者】
【氏名】廖 柱
(72)【発明者】
【氏名】山村 英行
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-235684(JP,A)
【文献】特開2015-018759(JP,A)
【文献】特開2007-087717(JP,A)
【文献】特開2013-201150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01B 1/06
H01B 13/00
C08F 16/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス、リチウム塩、ニトリル化合物及び添加成分を含み、
前記添加成分は、下記の式(1)で示す単体で重合されてなるポリマー又は共重合体、及び下記の式(2)で示すポリマーから選ばれた少なくとも一つであり、
【化1】
ここで、Rは、炭素数2~6のオレフィン官能基であり、
【化2】
は、-COOCH、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、第4級アンモニウムである、リチウム二次電池用の固体電解質。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックス100質量部に対して、前記リチウム塩5~200質量部、前記ニトリル化合物10~500質量部、前記添加成分20~100質量部を含む、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記添加成分の重量平均分子量が1000~1000000g/molである、請求項1又は2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記添加成分は、ポリ2-ビニル-1,3-ジオキソラン、又は、2-ビニル-1,3-ジオキソランと1-ビニル-3-エチル-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダゾールとの共重合体である、請求項1又は2に記載の固体電解質。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の固体電解質を製造する方法であって、
ポリマーマトリックス、リチウム塩、ニトリル化合物及び添加成分を100:5~200:10~500:20~100の質量比で溶剤に溶解し、25~80℃の温度で、1~48時間撹拌して、溶液を形成し、得られた溶液を金具や基体に入れて、不活性ガスの雰囲気で大部分の溶剤を除去して、電解質膜を形成し、25~100℃で2~48時間真空乾燥して、さらに、アルゴン充填グローブボックスに入れて2~48時間乾燥して、溶剤及び水を除去することで、固体電解質が得られる、固体電解質の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の固体電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用固体電解質及びその調製方法、並びにリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属は、高理論比容量(3860mAh/g)、低負電位(標準水素電極と比較して-3.04V)、軽金属質量(相対原子質量M=6.94g/mol、密度ρ=0.534g/cm)を有するため、究極の陽極と考えられている。また、リチウム金属陽極は、従来のリチウム含有負極よりも高いエネルギー密度の硫黄/酸素電極を可能にする。しかし、制御不能なリチウムデンドライトの成長と低いクーロン効率は、潜在的な安全上の危険性とサイクル寿命の低下につながり、過去数十年間、リチウム金属電池の実用化の妨げになってきた。
【0003】
電極構造、固体電解質間構造、電解質の最適化、固体電解質の利用など、析出・剥離を繰り返すリチウム金属を安定化させるための研究が幅広く行われている。その中でも固体電解質は、リチウムデンドライトの抑制効果が高いだけでなく、従来の非水系液体電解質が持つ引火性という安全上の問題を緩和・解消し、さらに高エネルギー密度や無隔膜の特性が期待できることから、学術界や産業界から高い注目を集めている。
【0004】
1,3-ジオキソラン(DOL)はリチウム金属電池の液体電解質によく使われる溶媒で、リチウムデンドライトを緩和する効果がある。これまで、DOLにおけるカチオン重合を利用したゲル/固体高分子電解質(GPE/SPE)(非特許文献1、非特許文献2)もリチウムデンドライトの抑制に有効であることがわかっているが、まだ改良の余地があるようだ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】チン・ジャオ(Qing Zhao)他「高速界面輸送を内蔵したリチウム二次電池用固体高分子電解質(“Solid-state polymer electrolytes with in-built fast interfacial transport for secondary lithium batteries”)」、ネイチャー・エナジー(nature energy)、2019年、第4巻、p.365-373
【文献】ファンチェン・リュウ(Feng-Quan Liu)他「将来のリチウム金属電池のための、従来の液体電解質のIn situゲル化によるアップグレード(“Upgrading traditional liquid electrolyte via in situ gelation for future lithium metal batteries”)」、サイエンス・アドバンシス(SCIENCE ADVANCES)、2018年、第4巻、eaat5383
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第108475808号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、リチウムデンドライトの成長を抑制でき、サイクル性能に優れたリチウム二次電池用固体電解質及びその調製方法、並びにリチウム二次電池を提供することである。
【0008】
本発明は、ポリマーマトリックス、リチウム塩、ニトリル化合物及び添加成分を含み、前記添加成分は、下記の式(1)で示す単体で重合されてなるポリマー又は共重合体、及び下記の式(2)で示すポリマーから選ばれた少なくとも一つであり、
【化1】
【0009】

ここで、Rは、炭素数2~6のオレフィン官能基であり、
【化2】
【0010】

は、-COOCH、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、第4級アンモニウムなど、イオン液体構造を有する官能基である、リチウム二次電池用の固体電解質に関する。
【0011】
好ましくは、前記ポリマーマトリックス100質量部に対して、前記リチウム塩5~200質量部、前記ニトリル化合物10~500質量部、前記添加成分20~100質量部を含む。
【0012】
添加成分が20質量部未満であると、固体電解質のリチウムデンドライトの抑制効果が顕著でなく、電池の安全性が低下し、添加成分が100質量部を超えると、固体電解質の機械的強度が低下する。
【0013】
好ましくは、前記添加成分の重量平均分子量が1000~1000000g/molである。
好ましくは、前記添加成分は、ポリ2-ビニル-1,3-ジオキソラン、又は、2-ビニル-1,3-ジオキソランと1-ビニル-3-エチルビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダゾールとの共重合体である。
【0014】
本発明はさらに、固体電解質を製造する方法であって、
ポリマーマトリックス、リチウム塩、ニトリル化合物及び添加成分を100:5~200:10~500:20~100の質量比で溶剤に溶解し、25~80℃の温度で、1~48時間撹拌して、溶液を形成し、得られた溶液を金具や基体に入れて、不活性ガスの雰囲気で大部分の溶剤を除去して、電解質膜を形成し、25~100℃で2~48時間真空乾燥して、さらに、アルゴン充填グローブボックスに入れて2~48時間乾燥して、溶剤及び水を除去することで、固体電解質が得られる、固体電解質の製造方法に関する。
【0015】
本発明はさらに、上記固体電解質を含むリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、デンドライトの成長が抑制されたサイクル特性の良好な固体電解質を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1で作製したポリマーの写真である。
図2】実施例1のVDOLのH NMRスペクトルである。
図3】実施例1のPDOLのH NMRスペクトルである。
図4】実施例1のPDOLのGPCである。
図5】実施例1のポリマーについて、温度比10℃/minで測定したTGA曲線である。
図6】実施例1のPDOLのDSC曲線である。
図7】(a)実施例1のSPE-1の光学写真と(b)SPE-2の光学写真である。
図8】実施例1のSPEsのDSC曲線である。
図9】実施例1におけるイオン伝導度の温度依存性を示す図である。
図10】実施例1のSPEsのLSV曲線である。
図11】実施例1のLi/SPE-1/Li電池の25℃における充放電曲線である。
図12】実施例1のLi/SPE-2/Li電池の25℃における充放電曲線である。
図13】(a)は、実施例1のSPEを用いた対称型Li電池の0.2mA/cm、25℃における電圧曲線を示し、(b)は、Li/SPE-2/Li電池の25℃、異なる電流密度における電圧曲線を示している。
図14】(a)実施例1の固体電解質を用いたLi/LiFePO電池の0.2Cおよび25℃におけるサイクル性能、(b)SPE-1を用いたLi/LiFePO電池、(c)SPE-2を用いたLi/LiFePO電池を示す図である。
図15】実施例1のLi/SPE-2/LiFePO電池の0.5Cにおける充放電曲線である。
図16】実施例1のLi/SPE-2/LiFePO電池の0.5Cにおけるサイクル性能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願では、電解質と電池を以下のように調製し、評価した。
<PDOLの調製>
PDOLの調製方法は特に限定されず、従来技術で知られている任意の方法を使用することができる。本発明では、式3に示すように、単純な無水ラジカル重合によりPDOLを合成した。具体的には、氷水浴、アルゴン雰囲気下の三口フラスコに、2-ビニル-1,3-ジオキソラン5.0gを添加し、10分間撹拌した後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)50.0mgをフラスコに急速に加えて重合反応を開始させた。その後、無溶媒混合物を67℃で48時間加熱し、反応混合物を無水CHClに溶かし、得られた溶液を無水正ヘキサンに滴下して加えた。沈殿物を無水正ヘキサンで6回洗浄し、80℃の真空下で一晩乾燥させて使用した。
【化3】
PDOL作成プロセスの模式図

<2-ビニル-1,3-ジオキソランと1-ビニル-3-エチルビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダゾールとの共重合体(P(DOL-IMTFSI))の調製>
本発明では、式4に示すように、まず2つのモノマーを所定の質量比で共重合させ、その後、エチル化及びイオン交換により、P(DOL-IMTFSI)を得た。具体的には、氷水浴、アルゴン雰囲気下で、2-ビニル-1,3-ジオキソラン5.0g、1-ビニルイミダゾール5.6g、エタノール20mlを三口フラスコに添加した。30分間撹拌した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル212mgをフラスコに急速に加え、重合反応を開始した。次に、混合物を80℃で48時間加熱した。得られた溶液を水で3回洗浄し、80℃の真空下で24時間乾燥した。得られた固体をアセトニトリル50mlに溶かし、臭化エチル10.9gを加えて50℃、24時間反応させた。アセトニトリルをロータリーエバポレーションで除去し、エチルエーテルで3回洗浄し、80℃の真空乾燥ボックスで24時間乾燥させた。5.0gの上記固体を20mLの脱イオン水に加え、5.7gのLiTFSIを脱イオン水に溶解し、水性LiTFSIを上記溶液に滴下し、室温で攪拌して2時間反応させた。その後、固体沈殿物をろ過し、脱イオン水で3回洗浄後、80℃、24時間真空下で乾燥して、目的の固体生成物が得られた。
【化4】
P(DOL-IMTFSI)作成プロセスの模式図

<固体電解質の調製方法>
ポリマーマトリックス、リチウム塩、ニトリル化合物および添加成分を100:5~100:0~100:20~100の質量割合で溶媒に溶解し、25~80℃の温度で1~48時間撹拌して均一溶液とし、得られた溶液を金型または基体(例えば、ガラス板、ステンレス板など)上に流し込んだ。室温、不活性ガス雰囲気下にて溶媒の大半を除去して電解質膜を形成し、25~100℃の温度で2~48時間乾燥させた後、アルゴン封入グローブボックスに移して2~48時間乾燥させ、残留溶媒と水を除去し、固体電解質を得た。
【0019】
上記添加成分は、下記の式(1)で示す単体で重合されてなるポリマー又は共重合体、及び下記の式(2)で示すポリマーから選ばれた少なくとも一つである。
【化5】
【0020】

は、炭素原子数2~6のオレフィン系基である。
【化6】
【0021】

は、-COOCH、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、第4級アンモニウムなどのイオン液体構造を有する基である。
【0022】
上記ポリマーマトリックスは、特に限定されず、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどを列挙することができる。
【0023】
上記リチウム塩としては、特に限定されず、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビスフルオロスルホンイミド(LiFSI)、リチウムトリフルオロスルホンイミド(LiSOCF)など列挙することができ、特に好ましくはLiTFSI/LiFSIである。
【0024】
上記ニトリル化合物としては、特に限定されず、ブタンジニトリル、2,2-ジメチルマロノニトリル等を挙げることができる。
上記溶媒としては、特に限定されず、アセトン、アセトニトリル、2-ブタノン、ジクロロメタン等を列挙することができる。
<電池の調製>
リン酸鉄リチウム(LiFePO)/コバルト酸リチウム(LiCoO)/ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCon1-x-y)/ニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5)を正極材料としての正極シート、得られた電解質膜、リチウム(Li)を負極材料として含む負極シートが下から順に積層してなる積層体を作り、次いでその後、積層された層をプレス機で加圧し、電池を得た。
<評価試験>
・分子量測定
分子量の測定は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相とするゲルクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を比較対照として40℃で行った。
・ガラス転移温度の決定
試料のガラス転移温度(T)は、示差走査熱量計(DSC)により、室温から200℃まで10℃/分で昇温し、3分間温度を保ち、10℃/分で-60℃まで降温し、3分間温度を保ち、再び10℃/分で200℃まで昇温の2段階目の曲線を用いて求めた。
・放電容量の測定
ブルーエレクトリックテストシステムを用いて、定電流条件下で異なる充電電流と放電電流で電池の容量を測定することで、電池の比容量を測定した。
実施例1
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VDF-HFP))-ポリ(2-ビニル-1,3ジオキソラン(PDOL))-ブタンジニトリル(SN)-リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の固体電解質を溶液キャスト法により作製した。P(VDF-HFP)、PDOL、SNおよびLiTFSIを100:30:300:75の質量比で50℃にて12時間撹拌し、均一な溶液を形成させた。その後、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した後、電解質膜を30℃、48時間真空下で乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに24時間移して乾燥させ、残留溶媒と水を除去した。得られたポリマーの重量平均分子量は9021g/molであり、ガラス転移温度(T)は-14.4℃、PDOLの融点(T)は170.2℃だった。25℃において20%(wt)添加したLiTFSIのイオン伝導度は4.77x10-7S/cm、Li/FePO電池の0.2C、25℃における初期放電比容量は160mAh/g、300サイクル後に0.2C、25℃における放電比容量は144mAh/gであり、容量保持率は90%であった。
【0025】
図1に示すように、黄色い粘性のある固体状態のポリマーが得られた。
図6からわかるように、PDOLの分解温度(Td,5%質量損失)は188.1℃であり、優れた熱安定性を示している。
実施例2
P(VDF-HFP)-PDOL-SN-LiTFSIの固体電解質を溶液キャスト法により作製した。P(VDF-HFP)、PDOL、SNおよびLiTFSIを100:30:10:75の質量比で50℃にて12時間撹拌し、均一な溶液を形成させた。その後、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した後、電解質膜を25℃、48時間真空下で乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに24時間移して乾燥させ、残留溶媒と水を除去した。得られた電解質のイオン伝導度は1.8×10-4S/cmで、Li/LiFePO電池の0.2C、25℃における初期放電比容量は150mAh/g、100サイクル後に0.2C、25℃における放電比容量は144mAh/gであり、容量保持率は90%であった。
実施例3
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)-2-ビニル-1,3-ジオキソランと1-ビニル-3-エチルビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダゾールとの共重合物(P(DOL-IMTFSI))-LiTFSI固体電解質を溶液キャスト法により調製した。PVDF、P(DOL-IMTFSI)、SN、LiTFSIを50℃のアセトン溶液中で100:50:200:50の質量比で24時間撹拌し、均一な溶液を形成させた。次に、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した後、電解質膜を25℃で48時間真空乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに24時間移して残留溶媒と水を除去した。得られたポリマーの重量平均分子量は3281g/mol、室温で20%(wt)のLiTFSIを添加した場合のイオン伝導度は2.2×10-8S/cmであり、得られた電解質のイオン伝導度は7.2×10-4S/cmで、Li/LiNi0.6Co0.2Mn0.2電池の25℃、0.1Cにおける初回放電比容量は178mAh/g、200サイクル後に0.1C、25℃における放電比容量は153mAh/gであり、容量維持率は86%であった。
実施例4
PVDF-PDOL-ジメチルマロノニトリル-リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)固体電解質溶液をキャスト法により調製した。PVDF、PDOL、ジメチルマロノニトリル、LiFSIを50℃のアセトン溶液中で100:50:250:75の質量比で24時間撹拌し、均一な溶液を形成させた。その後、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した。その後、電解質膜を25℃で48時間真空乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに移して24時間乾燥させ、残留する溶媒と水を除去した。得られた電解質のイオン伝導度は4.5×10-4S/cmであり、Li/LiCoO電池の25℃、0.1Cにおける初回放電比容量は170mAh/g、200サイクル後の25℃、0.1Cにおける放電比容量は136mAh/g、容量維持率は82%であった。
実施例5
P(VDF-HFP)-PDOL-ジメチルマロノニトリル-LiFSI固体電解質を溶液キャスト法により調製した。P(VDF-HFP)、PDOL、ジメチルマロノニトリル、LiFSIを50℃のアセトン溶液中で100:100:100:100の質量比で24時間撹拌し、均一な溶液を形成した。次に、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した後、電解質膜を25℃で48時間真空乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに移して24時間乾燥させ、残留溶媒と水を除去した。得られた電解質のイオン伝導度は2×10-4S/cmで、Li/LiNi0.6Co0.2Mn0.2電池の25℃、0.1Cにおける初回放電比容量は165mAh/g、300サイクル後の25℃、0.1Cにおける放電比容量は136mAh/g、容量維持率は82%であった。
実施例6
P(VDF-HFP)-P(DOL-IMTFSI)-SN-LiFSI固体電解質を溶液キャスト法により調製した。P(VDF-HFP)、P(DOL-IMTFSI)、SNおよびLiFSIを、50℃のアセトン溶液中で100:100:100:100の質量比で24時間撹拌して均一な溶液を形成させた。次に、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のテンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した後、電解質膜を25℃で48時間真空乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに移して24時間乾燥させ、残留溶媒と水を除去した。得られた電解質のイオン伝導度は8.3×10-4S/cmで、Li/LiFePO電池の25℃、0.1Cにおける初回放電比容量は162mAh/g、400サイクル後の25℃、0.1Cにおける放電比容量は120mAh/gであり、容量保持率は74%であった。
比較例1
P(VDF-HFP)-SN-LiTFSI固体電解質を溶液キャスト法により調製した。P(VDF-HFP)、SN、LiTFSIを100:300:75の割合で50℃にて12時間撹拌し、均一な溶液を形成した。その後、この溶液をポリテトラフルオロエチレン製テンプレートに流し込み、Ar雰囲気下、室温でアセトンの大部分を除去した。その後、電解質膜を25℃で48時間真空乾燥し、アルゴン充填グローブボックスに移して24時間乾燥させ、残留溶媒と水を除去した。得られた電解質のイオン伝導度は2.0×10-3S/cm、25℃、0.2Cにおける初回放電比容量は160mAh/g、300サイクル後の25℃、0.2Cにおける放電比容量は43.7mAh/g、容量保持率は27.3%であった。
【0026】
本出願における固体電解質は、リチウム金属に対して安定な成分を添加しており、リチウム金属電池のサイクル性能を明らかに向上させることができ、独自の革新性と潜在的な応用価値を有している。
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