(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】光導波路パッケージ、発光装置および投影システム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20240729BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20240729BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/12 301
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2022531686
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2021021545
(87)【国際公開番号】W WO2021261232
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020110903
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】庄田 学史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康弘
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/078735(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0228404(US,A1)
【文献】特開2001-194551(JP,A)
【文献】特開平01-235917(JP,A)
【文献】特開平10-149430(JP,A)
【文献】特開2001-311891(JP,A)
【文献】特開2010-276959(JP,A)
【文献】特開2011-165715(JP,A)
【文献】特開2007-093945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
G02B 26/00-26/12
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/13
G03B 21/134-21/30
G03B 33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面
と、該第1面と接続する側面と、を有する基板と、
前記第1面上に位置するクラッドと、
第1素子からの光が入射する第1端および該第1端から延びた先に位置する第2端を有する第1コアと、
前記第1素子と光の波長の異なる第2素子からの光が入射する第3端および該第3端から延びた先に位置する第4端を有する第2コアと、
前記第2端および前記第4端から出射される光の光路上に位置するレンズと、を備え、
前記第1コア又は前記第2コアの少なくともいずれかは湾曲しており、
前記第2端と前記レンズとの第1距離は、前記第1素子の光の波長に応じた距離であり、
前記第4端と前記レンズとの第2距離は、前記第2素子の光の波長に応じた距離であ
り、
前記第2端および前記第4端は、前記クラッドの端面から露出し、
前記側面は、前記第2端および前記第4端が向かう方向に位置する正面部を有し、
前記正面部は、前記端面よりも前記レンズ側に位置し、
前記基板は、少なくとも前記正面部と前記端面との間に位置する凹部を更に有している、光導波路パッケージ。
【請求項2】
第1面と、該第1面と接続する側面と、を有する基板と、
前記第1面上に位置するクラッドと、
第1素子からの光が入射する第1端および該第1端から延びた先に位置する第2端を有する第1コアと、
前記第1素子と光の波長の異なる第2素子からの光が入射する第3端および該第3端から延びた先に位置する第4端を有する第2コアと、
前記第1素子および前記第2素子と光の波長の異なる第3素子からの光が入射する第5端および該第5端から延びた先に位置する第6端を有する第3コアと、
前記第2端、前記第4端、および前記第6端から出射される光の光路上に位置するレンズと、を備え、
前記第1コア、前記第2コア、および前記第3コアの少なくともいずれか1つは湾曲しており、
前記第2端と前記レンズとの距離を第1距離d1とし、
前記第4端と前記レンズとの距離を第2距離d2とし、
前記第3端と前記レンズとの距離を第3距離d3、としたとき、
d1<d2<d3を満たし、
前記第2端、前記第4端、および前記第6端は、前記クラッドの端面から露出し、
前記側面は、前記第2端、前記第4端、および前記第6端が向かう方向に位置する正面部を有しており、
前記正面部は、前記端面よりも前記レンズ側に位置している、光導波路パッケージ。
【請求項3】
前記第2
端および前記第4
端の少なくともいずれかは、前記光路に対して傾いている、請求項1
又は請求項2に記載の光導波路パッケージ。
【請求項4】
前記
端面は、前記第2端および前記第4端を含む平面
である、請求項1
~請求項3のいずれか一つに記載の光導波路パッケージ。
【請求項5】
前記端面は、前記正面部に対して傾いている、請求項4記載の光導波路パッケージ。
【請求項6】
平面視において、前記凹部は、前記第1素子の光の光路および前記第2素子の光の光路に重なっている、請求項1に記載の光導波路パッケージ。
【請求項7】
前記第3端と前記第4端とは、同一の直線上に位置しており、
前記直線が延びる方向を第1方向としたとき、
前記第1端と前記第2端とは、前記第1方向において間を空けている、請求項1~請求項6のいずれか一つに記載の光導波路パッケージ。
【請求項8】
前記第1端から前記第2端を結ぶ直線、又は前記第3端から前記第4端を結ぶ直線が延びる方向を第1方向としたとき、
前記第1方向に垂直な第2方向において、前記第1端と前記第3端とは、異なる位置に位置している、請求項1~請求項7のいずれか一つに記載の光導波路パッケージ。
【請求項9】
前記クラッドは、前記第1素子および前記第2素子を収容する空間を有しており、
前記第1端および前記第3端は、前記空間に露出している、請求項1~請求項8のいずれか一つに記載の光導波路パッケージ。
【請求項10】
前記第1素子および前記第2素子と電気的に接続するための外部接続配線を更に備え、
前記外部接続配線は、前記空間内から前記空間外にわたって位置している、請求項9に記載の光導波路パッケージ。
【請求項11】
請求項1~請求項
10のいずれか一つに記載の光導波路パッケージと、
第1素子と、
第2素子と、を備える発光装置。
【請求項12】
請求項
11記載の発光装置と、
前記レンズによって集光された光の光路上に位置するスクリーンと、を備える投影システム。
【請求項13】
前記第1素子および前記第2素子は、半導体レーザーであり、
前記スクリーンは、前記半導体レーザーのビームウエストの位置で前記スクリーンに投影されている、請求項
12記載の投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光導波路パッケージ、発光装置および投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の光導波路パッケージは、第1面と、該第1面と接続する側面と、を有する基板と、
前記第1面上に位置するクラッドと、
第1素子からの光が入射する第1端および該第1端から延びた先に位置する第2端を有する第1コアと、
前記第1素子と光の波長の異なる第2素子からの光が入射する第3端および該第3端から延びた先に位置する第4端を有する第2コアと、
前記第2端および前記第4端から出射される光の光路上に位置するレンズと、を備え、
前記第1コア又は前記第2コアの少なくともいずれかは湾曲しており、
前記第2端と前記レンズとの第1距離は、前記第1素子の光の波長に応じた距離であり、
前記第4端と前記レンズとの第2距離は、前記第2素子の光の波長に応じた距離であり、
前記第2端および前記第4端は、前記クラッドの端面から露出し、
前記側面は、前記第2端および前記第4端が向かう方向に位置する正面部を有し、
前記正面部は、前記端面よりも前記レンズ側に位置し、
前記基板は、少なくとも前記正面部と前記端面との間に位置する凹部を更に有している。
本開示の他の光導波路パッケージは、第1面と、該第1面と接続する側面と、を有する基板と、
前記第1面上に位置するクラッドと、
第1素子からの光が入射する第1端および該第1端から延びた先に位置する第2端を有する第1コアと、
前記第1素子と光の波長の異なる第2素子からの光が入射する第3端および該第3端から延びた先に位置する第4端を有する第2コアと、
前記第1素子および前記第2素子と光の波長の異なる第3素子からの光が入射する第5端および該第5端から延びた先に位置する第6端を有する第3コアと、
前記第2端、前記第4端、および前記第6端から出射される光の光路上に位置するレンズと、を備え、
前記第1コア、前記第2コア、および前記第3コアの少なくともいずれか1つは湾曲しており、
前記第2端と前記レンズとの距離を第1距離d1とし、
前記第4端と前記レンズとの距離を第2距離d2とし、
前記第3端と前記レンズとの距離を第3距離d3、としたとき、
d1<d2<d3を満たし、
前記第2端、前記第4端、および前記第6端は、前記クラッドの端面から露出し、
前記側面は、前記第2端、前記第4端、および前記第6端が向かう方向に位置する正面部を有しており、
前記正面部は、前記端面よりも前記レンズ側に位置している。
【0005】
また本開示の発光装置は、
上記の光導波路パッケージと、
第1素子と、
第2素子と、を備える。
【0006】
また本開示の投影システムは、
上記の発光装置と、
前記レンズによって集光された光の光路上に位置するスクリーンと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の光導波路パッケージを具備した発光装置を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示される発光装置の封止蓋体を省略した斜視図である。
【
図3】
図2の切断面線III-IIIから見た発光装置の断面図である。
【
図5】本開示の他の実施形態の発光装置を示すレンズ付近の拡大平面図である。
【
図6A】本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ付近の拡大平面図である。
【
図6B】発光装置を示すレンズ付近の拡大側面図である。
【
図7】本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ付近の拡大斜視図である。
【
図8】本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ付近の拡大平面図である。
【
図9】本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示す分解斜視図である。
【
図10】
図9に示される発光装置の封止蓋体を省略した斜視図である。
【
図11】
図9の切断面線XI-XIから見た発光装置の断面図である。
【
図12】本開示の一実施形態である投影システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の画像投影装置の基礎となる構成の画像投影装置では、複数の光源から出射された光ビームは、光ビームごとに光導波路を通り、集光レンズで集光され、走査ミラーで反射されてスクリーンに投影される。
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示の発光装置の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本開示の一実施形態の光導波路パッケージ100を具備した発光装置200を示す分解斜視図である。
図2は
図1に示される発光装置200の封止蓋体11を省略した斜視図である。
図3は
図2の切断面線III-IIIから見た発光装置200の断面図である。
図4は発光装置200の平面図である。本実施形態の光導波路パッケージ100は、第1面2を有する基板1と、第1面2上に位置するクラッド3と、クラッド3内に位置するコア4と、コア4から出射される光の光路上に位置するレンズ45と、を備える。
【0012】
図1から
図4に記載の一実施形態に係る光導波路パッケージ100は、発光素子である第1素子10Aおよび第2素子10Bをそれぞれ収容する貫通孔8を有し、光導波路パッケージ100と両素子とを含んで発光装置200が構成される。本実施形態の光導波路パッケージ100では、発光素子である第3素子10Cを収容する貫通孔8をさらに有しており、発光装置200は、第3素子10Cを含む。本開示では、第3素子10Cを有する構成を開示しているが、その限りではなく、例えば第1素子10Aおよび第2素子10Bのみを有する構成であってもよい。発光素子としては、レーザーダイオードなどを適用することができる。基板1の第1面2の貫通孔8で囲まれた領域には、素子搭載部6が設けられる。クラッド3は、基板1の第1面2に対向する第2面3aと、第2面3aの反対に位置する第3面3bと、を有していてもよく、そのとき、貫通孔8は、第3面3bから第2面3aに貫通していてもよい。
【0013】
素子搭載部6は、各発光素子10A,10B,10Cを基板1の第1面2に接合する。素子搭載部6は、例えば基板1の第1面2に設けられたメタライズ層などの金属部材を含んでいてもよい。素子搭載部6の金属部材と各発光素子10A,10B,10Cとは、例えば、ろう材または接着剤などのダイボンディング材によって接合されていてもよい。また、本実施形態では、素子搭載部6の金属部材は外部接続配線15と接続される。素子搭載部6の金属部材と各発光素子10A,10B,10Cの下面側の電極とが電気的に接続され、外部接続配線15を介して、外部の電源回路などと電気的に接続することができる。外部接続配線15は、貫通孔8内から貫通孔8外にわたって設けられていてもよい。各発光素子10A,10B,10Cの上面側の電極は、例えば、図示しないボンディングワイヤなどによって外部接続配線15(素子搭載部6の金属部材とは非接続)と電気的に接続してもよい。また、複数の貫通孔8および複数の素子搭載部6は、本実施形態では等間隔かつ光が出射する方向に対し垂直な方向に横並びしているが、その限りではない。例えば本実施形態以外にも、第3面3bに向かう平面視で段違いに位置していてもよい。
【0014】
本実施形態では、第1素子10Aの出射光と第2素子10Bの出射光とは、波長が異なっている。本実施形態では、第1素子10Aの出射光および第2素子10Bの出射光と第3素子10Cとは波長が異なっている。このような発光素子の例としては、例えば、第1素子10Aの出射光が青色光(波長λB=450nm)であり、第2素子10Bの出射光が緑色光(波長λG=520nm)である。第3素子10Cの出射光は、例えば、赤色光(波長λR=650nm)である。
【0015】
基板1は、複数の誘電体層が積層されて形成されていてもよい。基板1は、誘電体層がセラミック材料を含むセラミック配線基板であってもよい。セラミック配線基板で用いられるセラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化ケイ素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体等が挙げられる。基板1がセラミック配線基板である場合、誘電体層には、発光素子および受光素子と外部回路との電気的接続のための接続パッド、内部配線導体、外部接続端子等の各導体が配設されていてもよい。
【0016】
基板1の材料としては、例えば誘電体層が有機材料を含む有機配線基板であってもよい。有機配線基板は、例えば、プリント配線基板、ビルドアップ配線基板、フレキシブル配線基板等である。有機配線基板に用いられる有機材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、基板1の材料としては、例えば化合物半導体を用いた基板であってもよい。化合物半導体を用いた基板に用いられる材料としては、例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、インジウム(In)、リン(P)、サファイア(Al2O3)等が挙げられる。
【0017】
クラッド3およびコア4は、例えば、石英などのガラス、樹脂等であってもよい。クラッド3およびコア4を構成する材料としては、いずれもガラスあるいは樹脂であってもよく、一方がガラスでもう一方が樹脂であってもよい。コア4とクラッド3との屈折率が異なっており、コア4がクラッド3よりも屈折率が高ければよい。この屈折率の違いを利用して、コア4を進行する光をクラッド3との界面で全反射させる。つまり、屈折率の高い材料で路を作り、周りを屈折率の低い材料で囲んでおくことで、光を屈折率の高いコア4内に閉じ込めて進行させることができる。
【0018】
コア4は、第1素子10Aおよび第2素子10Bのそれぞれに対応する第1コア41および第2コア42を含む。コア4は、第3素子10Cに対応する第3コア43をさらに含む。第1コア41は、第1素子10Aからの光が入射する第1端41aおよび第1端41aから延びた先に位置する第2端41bを有する。第2コア42は、第2素子10Bからの光が入射する第3端42aおよび第3端42aから延びた先に位置する第4端42bを有する。第3コア43は、第3素子10Cからの光が入射する第5端43aおよび第5端43aから延びた先に位置する第6端43bを有する。
【0019】
第1素子10Aから出射された青色光は、第1端41aから第1コア41に入射し、第1コア41内を進行して第2端41bから出射される。第2素子10Bから出射された緑色光は、第3端42aから第2コア42に入射し、第2コア42内を進行して第4端42bから出射される。第3素子10Cから出射された赤色光は、第5端43aから第3コア43に入射し、第3コア43内を進行して第6端43bから出射される。本実施形態では、第1コア41の第2端41bおよび第2コア42の第4端42bは、いずれもクラッド3の端面で露出しており、第3コア43の第6端43bもクラッド3の端面で露出している。
【0020】
レンズ45は、第2端41bおよび第4端42bから出射される光の光路、ならびに第6端43bから出射される光の光路上に位置している。第2端41bとレンズ45との第1距離d1は、第1素子10Aの光の波長に応じた距離である。また、第4端42bとレンズ45との第2距離d2は、第2素子10Bの光の波長に応じた距離である。第6端43bとレンズ45との第3距離d3は、第3素子10Cの光の波長に応じた距離である。第1素子10Aの出射光である青色光の波長λB、第2素子10Bの出射光である緑色光の波長λG、第3素子10Cの出射光である赤色光の波長λRは、λB<λG<λRの関係にある。第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3は、各波長およびレンズ45の波長依存性に応じた距離であり、d1<d2<d3の関係であればよい。
【0021】
レンズ45は、例えば、入射面が平面に形成され、出射面が凸面の集光レンズであってもよい。第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3は、各波長に応じた距離であり、例えば、レンズ45における各光の焦点距離であってもよく、焦点距離近傍であって、焦点距離よりも長い距離であってもよい。レンズ45の入射側の焦点距離は、光の波長によって異なり、波長λBの光の焦点距離をF1、波長λGの光の焦点距離をF2、波長λRの光の焦点距離をF3とすると、d1=F1、d2=F2、d3=F3(F1<F2<F3)であってもよい。
【0022】
後述のように本実施形態の発光装置200は、投影システムの光源として用いることができる。発光装置200から出射された光(レンズ45を通った光)は、反射ミラーで反射されて、スクリーンに照射される。レンズ45を通った光は、レンズ45によって集光されることで絞られ、再度広がることになるが、この絞られた部分であるビームウエストの位置にスクリーンがあると、画像に滲みが無くシャープな画像が得られる。レンズ45からビームウエストまでの距離は、レンズ45とコア4の出射端との距離によって変わる。レンズ45とコア4の出射端との距離を焦点距離より長い距離とすると、レンズ45からビームウエストまでの距離が長くなる。レンズ45からスクリーンまでの距離に応じて、レンズ45とコア4の出射端との距離を設定すればよい。投影システムの光源として発光装置200を用いる場合は、第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3は、d1>F1、d2>F2、d3>F3であればよい。また、ビームウエストの位置がスクリーン位置となるように設定すればよい。第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3は、レンズ45の焦点距離と同じではないが、d1<d2<d3の関係は変わらず、光の波長に応じた距離であることには変わりが無い。
【0023】
本実施形態では、第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3が上記のように異なるので、例えば
図4に示すように、平面視で、クラッド3の出射側の端面は、第2端41b、第4端42b、第6端43bの位置に応じた階段状となっている。このように、第1距離d1を第1素子10Aの光の波長に応じた距離とし、第2距離d2を第2素子10Bの光の波長に応じた距離とし、さらに第3距離d3を第3素子10Cの光の波長に応じた距離とすることで、色収差が低減された光を出射することができる。
【0024】
入射端側における第1コア41と第2コア42と第3コア43との間隔は、第1素子10Aと第2素子10Bと第3素子10Cとの間隔に応じた間隔であって、本実施形態では、例えば等間隔としているが、その限りではない。また、出射端側では、全部の光がレンズ45に入射する必要があるので、第1コア41と第2コア42と第3コア43との間隔は、出射端側の間隔よりも狭くしている。出射端側における第1コア41と第2コア42と第3コア43との間隔は、本実施形態では、例えば等間隔としているが、その限りではない。本実施形態においては、第1素子10A、第2素子10Bそして第3素子10Cは、波長順に光導波路パッケージ100に搭載されていてもよい。
【0025】
封止蓋体11は、貫通孔8を覆っており、クラッド3の第3面3bに位置する。封止蓋体11とクラッド3との間にはシールリング17が介在している。シールリング17は、金属材料からなり、貫通孔8を囲んでおり、例えば、途切れの無い環状に設けられている。シールリング17を有することで、各発光素子10A,10B,10Cが収容される空間(基板1の第1面2と貫通孔8と封止蓋体11とで囲まれる空間)内の気密性が向上する。封止蓋体11のクラッド3への接合には、加熱による接合の場合があり、加熱接合時の応力によってクラッド3およびコア4が歪むことで、各発光素子10A,10B,10Cとコア4との間で光軸ずれが生じるおそれがある。シールリング17で貫通孔8を囲むことで貫通孔8周りの機械的強度を向上させ、クラッド3およびコア4の歪みが低減されるので、各発光素子10A,10B,10Cとコア4との間の光軸ずれが低減される。そのような構成を有する光導波路パッケージ100は、光伝送の効率に優れる。
【0026】
封止蓋体11は、例えば、石英、ホウ珪酸、サファイア等のガラス材料で構成されている。シールリング17は、例えば、Ti、Ni、Au、PtもしくはCrなどの金属、またはこれらの内から選ばれる2種以上の金属で構成されており、蒸着、スパッタ、イオンプレーティングまたはめっきなどによって、クラッド3の第3面3b上に固定される。封止蓋体11は、シールリング17と、例えばAu-Sn系、Sn-Ag-Cu系の半田、AgもしくはCuなどの金属系ナノ粒子ペースト、またはガラスペーストなどの接合材とを用い、熱硬化接合またはレーザー溶接などで接合される。
【0027】
また、シールリング17は、クラッド3ではなく、封止蓋体11のクラッド3と対向する部分に設けられてもよい。この場合、シールリング17は、例えば、Ti、Ni、Au、PtもしくはCrなどの金属、またはこれらの内から選ばれる2種以上の金属で構成されており、蒸着、スパッタ、イオンプレーティングまたはめっきなどによって、封止蓋体11に固定される。クラッド3は、シールリング17と、例えばAu-Sn系、Sn-Ag-Cu系の半田、AgもしくはCuなどの金属系ナノ粒子ペースト、またはガラスペーストなどの接合材を用い、熱硬化接合またはレーザー溶接などで接合される。
【0028】
またシールリング17は、クラッド3と封止蓋体11との両方に設けられていてもよい。この場合、クラッド3と封止蓋体11とのそれぞれに設けられたシールリング17どうしは、例えばAu-Sn系、Sn-Ag-Cu系の半田、AgもしくはCuなどの金属系ナノ粒子ペースト、またはガラスペーストなどの接合材を用い、熱硬化接合またはレーザー溶接などで接合される。
【0029】
図5は、本開示の他の実施形態の発光装置を示すレンズ45付近の拡大平面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、第2端41bを含む端面および第4端42bを含む端面の少なくともいずれかは、第2端41bおよび第4端42bから出射される光の光路に対して傾いている。第1コア41の出射端である第2端41bは、出射側における第1コア41の光軸に対して傾斜している。このとき第2端41bから出射される光の光路と、出射側における第1コア41の光軸とは、第1コア41の屈折率に応じた角度を成す。第2端41bから出射される光の光路は、レンズ45の光軸と平行とするために、第2端41bおよび第2端41bを含むクラッド3の端面は第1コア41の屈折率に応じ、レンズ45の光軸に対して傾斜していてもよい。
【0030】
第1コア41で伝送される光は、一部が第2端41bで反射される場合がある。この反射光が第1コア41に再結合し、第1コア41内を進行して第1端41aから出射し、第1素子10Aに照射されるおそれがある。第1素子10Aへの光照射によって、第1素子10Aから出射される光が変動して出力が不安定になるおそれがある。上記のように、第2端41bが、第2端41bから出射される光の光路に対して傾斜していることで、第2端41bで光が反射した際の、反射光の第1コア41への再結合が低減される。これにより、レンズ45での反射光が第1素子10Aに照射されることを低減できるので、第1素子10Aの出力が安定化する。また、上記は、第2コア42および第4端42bについても同様である。なお、上記は、第3コア43および第6端43bについても同様である。
【0031】
図6Aは、本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ45付近の拡大平面図であり、
図6Bは、拡大側面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、クラッド3は、第2端41bおよび第4端42bを含む平面を有する。前述の実施形態では、クラッド3の出射側端面は、第2端41bを含む部分の端面と、第4端42bを含む部分の端面と、さらに第6端43bを含む部分の端面とを有する段差状である。これに対して本実施形態では、クラッド3の出射側端面が、第2端41bおよび第4端42bを含む同一平面となっている。この同一平面は、さらに第6端43bも含む。第2端41bおよび第4端42bならびに第6端43bは、それぞれから出射される光の光路に対して傾いていてもよい。クラッド3の出射側端面は、レンズ45の光軸に対して傾斜した1つの平面となっている。
【0032】
第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3は、各波長に応じた距離であり、例えば、第1距離d1と第2距離d2との差は、第2距離d2と第3距離d3との差とは異なる。第2端41bおよび第4端42bならびに第6端43bが同一平面に含まれるには、第1コア41および第2コア42ならびに第3コア43は、出射側において、等間隔ではなく、第1距離d1、第2距離d2、第3距離d3に応じた間隔とすればよい。本実施形態では、例えば、第1コア41と第2コア42との間隔よりも第2コア42と第3コア43との間隔を大きくしている。
【0033】
本実施形態ではさらに、基板1が、クラッド3の出射側端面である平面との同一面を有する。基板1の出射側端面とクラッド3の出射側端面とが同一平面に含まれる。このような構成は、例えば、出射側において、基板1とクラッド3と同時に切断することで容易に形成できる。このような切断面は、基板1の出射側端面とクラッド3の出射側端面とを含む同一平面となる。前述の実施形態では、基板1の出射側端面が、クラッド3の出射側端面よりもレンズ45側に位置する。レンズ45は、例えば、基板1の出射側端面に固定され、レンズ45とクラッド3の出射側端面との間に空間が設けられる。この場合、コア4から出射した光の一部は、クラッド3の出射側端面よりも先にある基板1の第1面2において反射されるおそれがある。第1面2で反射した光は、一部がレンズ45に入射しないので、光の利用効率が低下する。また、第1面2で反射した光は、レンズ45に入射することでノイズとなり、画質が低下するおそれがある。本実施形態の構成では、コア4から出射した光は、その先に基板1の第1面2が無く、反射することなくレンズ45に入射されるので、本実施形態の光導波路パッケージ100は高出力であり、かつ、高画質である。なお、本実施形態においては、第1素子10A、第2素子10Bそして第3素子10Cは、波長順に光導波路パッケージ100に搭載される。
【0034】
前述の実施形態では、基板1の第1面2における反射を低減するために、コア4と第1面2との距離を大きくする場合がある。本実施形態では、コア4から出射した光は、基板1の第1面2における反射を考慮する必要がないので、コア4と第1面2との距離を小さくすることができる。すなわち、クラッド3の、コア4より下方の部分の厚さを薄くすることができるので、クラッド3の形成に要する時間(成膜時間)を短縮することができる。
【0035】
本実施形態では、基板1の出射側端面が傾斜しているので、基板1にレンズ45を固定するのではなく、基板1の下方に保持基材20を設けてもよい。保持基材20は、少なくとも基板1の出射側端面よりも延びた部分を有する。保持基材20に光導波路パッケージ100を保持し、この延びた部分にレンズ45を固定すればよい。保持基材20は、セラミック材料を用いてもよい。セラミック材料は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化ケイ素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体等が挙げられる。また保持部材20は、金属材料を用いてもよい。金属材料は、例えばステンレス、アルミニウム等の金属を用いてもよい。
【0036】
図7は、本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ付近の拡大斜視図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、基板1は、第1面2に向かう平面透視で、第2端41bおよび第4端42bから出射される光の光路と重なる位置に切り欠き部1aを有する。本実施形態では、さらに、第6端43bから出射される光の光路と重なる位置にも切り欠き部1aを有する。切り欠き部1aは、第1面2側から厚さ方向に切り欠かれた部分であり、基板1の切り欠き部1aを設けた部分の厚さが薄くなっている。本実施形態の構成では、コア4から出射した光は、切り欠き部1aによって反射することなくレンズ45に入射されるので、光の利用効率の低下を低減できる。また、第1面2で反射した光による、ノイズの発生を低減できる。このような構成を有する光導波路パッケージ100は高出力であり、かつ、高画質である。
【0037】
基板1が、例えば、複数の誘電体層が積層されて形成されている場合、第1面2側に積層される誘電体層において、切り欠き部1aに相当する部分を予め除去しておけばよい。また、板状の基板1に対して、例えば、反応性イオンエッチングによって切り欠き部1aを形成することもできる。いずれも基板1の製造工程中に実施可能な加工である。
【0038】
図8は、本開示のさらに他の実施形態の発光装置を示すレンズ45付近の拡大平面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、クラッド3が、第2端41bおよび第4端42bを覆っている。本実施形態では、クラッド3が、さらに第6端43bを覆っている。言い換えると、第1コア41の第2端41bおよび第2コア42の第4端42bが露出せず、クラッド3内に埋まっている。なお、クラッド3とコア4との界面のうち側方の界面と、出射端である第2端41bとクラッド3との界面とは、光の入射角が異なるので、側方の界面では光が全反射し、第2端41bでは、反射することなく透過する。第1コア41の第2端41bから透過した光は、クラッド3内を進行して、クラッド3からレンズ45に向けて出射する。クラッド3内を進行する光の一部が、出射面で反射するが、この反射光が、第2端41bから第1コア41内に入射する可能性は低い。レンズ45で光の一部が反射した場合も同様である。これにより、反射光が第1コア41を通って第1素子10Aに照射されることを低減でき、第1素子10Aの出力が安定化する。また、上記は、第2コア42および第4端42bについても同様である。なお、上記は、第3コア43および第6端43bについても同様である。
【0039】
図9は本開示のさらに他の実施形態の発光装置200Aを示す展開図である。
図10は
図9に示される発光装置200Aの封止蓋体11Aを省略した斜視図である。
図11は
図9の切断面線XI-XIから見た発光装置200Aの断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。前述の実施形態では、各貫通孔8から各発光素子10A,10B,10Cの上部が突出し、これが覆われるように箱状の封止蓋体11を用いる構成について述べた。他にも、本実施形態の光導波路パッケージ100Aおよび発光装置200Aで開示するように、各発光素子10A,10B,10Cの全体が貫通孔8に収容される構成とし、この貫通孔8を板状の封止蓋体11Aによって覆い、封止する構成であってもよい。このような構成を採用することによって、封止蓋体11Aの構成が簡素化することができる。なお、本実施形態のような構成では、例えばフリップチップ接続の各発光素子10A,10B,10Cを用いることで、下面のみで外部接続配線15と接続し、外部接続配線15を介して外部の電源供給回路と接続することができる。
【0040】
図1から
図11で説明してきた光導波路パッケージならびに発光装置では、光導波路パッケージ100が貫通孔8を有しているが、その限りではない。貫通孔8の他にも、第3面3bに開口する凹部であってもよい。また、コア4に光を導入する構成であれば、素子搭載部6を有する外部基板であってもよい。その場合、コア4への光の導入には光ファイバ等を用いてもよい。
【0041】
図12は本開示の一実施形態である投影システム500の構成を示す概略図である。投影システム500は、発光装置200と、レンズ45によって集光された光の光路上に位置するスクリーン400とを備える。投影システム500は、発光装置200に代えて発光装置200Aを備えてもよい。本実施形態の投影システムは、さらに走査ミラー300を備えている。発光装置200から出射された光は、走査ミラー300で反射されて光路が変化し、スクリーン400上に投影される。走査ミラー300は、例えば、反射角度を変更することで、発光装置200からの出射光がスクリーン400上に投影される位置をずらすことができる。投影位置をスクリーン400上で連続的にずらすことでスクリーン400にカラー画像を表示させることができる。発光装置200からの出射光は、色収差が低減されているので、スクリーン400に表示される画像は、滲みおよび画素ずれなど少なく、高画質である。
【0042】
走査ミラー300は、微小な反射角度の変更を、短時間で連続的に実行可能であればよく、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を利用したマイクロミラーなどを用いることができる。走査ミラー300には、マイクロミラーの他にも、ポリゴンスキャナ、ガルバノスキャナ、レゾナントスキャナ等を用いることができる。スクリーン400は、拡散型、回帰型、反射型あるいはリア型のスクリーンであってもよい。また、スクリーン400は、観察者の網膜であってもよい。
【0043】
第1素子10Aおよび第2素子10Bは、半導体レーザーであり、発光装置200からの出射光は、半導体レーザーのビームウエストの位置でスクリーン400に投影されている。前述のように、ビームウエストは、出射光が集光した部分であり、スクリーン400に投影されたビーム径は最小となっていてもよい。言い換えると、スクリーン400上にビームウエストが位置していてもよい。これにより、スクリーン400に表示される画像の画質がさらに向上する。
【0044】
本開示のさらに他の実施形態では、各発光素子10A,10B,10Cは、発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)に限るものではなく、例えば、LD(Laser Diode)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などであってもよい。また、発光装置200は、各発光素子10A,10B,10Cを基板1上に直接搭載しなくてもよい。例えば、離れた位置にある各発光素子10A,10B,10Cから光ファイバによって導光し、第1コア41、第2コア42、第3コア43にそれぞれ入射させてもよい。
【0045】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0046】
本開示の光導波路パッケージは、第1面を有する基板と、
前記第1面上に位置するクラッドと、
第1素子からの光が入射する第1端および該第1端から延びた先に位置する第2端を有する第1コアと、
前記第1素子と光の波長の異なる第2素子からの光が入射する第3端および該第3端から延びた先に位置する第4端を有する第2コアと、
前記第2端および前記第4端から出射される光の光路上に位置するレンズと、を備え、
前記第2端と前記レンズとの第1距離は、前記第1素子の光の波長に応じた距離であり、
前記第4端と前記レンズとの第2距離は、前記第2素子の光の波長に応じた距離である。
【0047】
また本開示の発光装置は、
上記の光導波路パッケージと、
第1素子と、
第2素子と、を備える。
【0048】
また本開示の投影システムは、
上記の発光装置と、
前記レンズによって集光された光の光路上に位置するスクリーンと、を備える。
【0049】
本開示の光導波路パッケージおよび発光装置によれば、色収差が低減された光を出射することができる。本開示の投影システムによれば、投影画像の画質を向上させることができる。
【0050】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 基板
1a 切り欠き部
2 第1面
3 クラッド
3a 第2面
3b 第3面
4 コア
6 素子搭載部
8 貫通孔
10A 第1素子
10B 第2素子
10C 第3素子
11 封止蓋体
15 外部接続配線
17 シールリング
20 保持基材
41 第1コア
41a 第1端
41b 第2端
42 第2コア
42a 第3端
42b 第4端
43 第3コア
43a 第5端
43b 第6端
45 レンズ
100 光導波路パッケージ
200 発光装置
300 走査ミラー
400 スクリーン
500 投影システム
100,100A 光導波路パッケージ
200,200A 発光装置