(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】脱エポキシ化エポチロンBを生産する組換え菌及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240729BHJP
C12P 17/00 20060101ALI20240729BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240729BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C12N1/21
C12P17/00 ZNA
C12P1/04 A
C12N15/31
(21)【出願番号】P 2022537248
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(86)【国際出願番号】 CN2021108266
(87)【国際公開番号】W WO2022017523
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】202010725297.3
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522239258
【氏名又は名称】北京華昊中天生物医薬股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522239269
【氏名又は名称】成都華昊中天薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】唐莉
(72)【発明者】
【氏名】邱栄国
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0137152(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0224414(US,A1)
【文献】Methods in Enzymology,2009年,Vol.459,pp.295-318,DOI: 10.1016/S0076-6879(09)04613-8
【文献】J Ind Microbiol Biotechnol,2008年,Vol.35,pp.1157-1163,DOI 10.1007/s10295-008-0395-9
【文献】J. Antibiot.,2005年,Vol.58, No.3,pp.178-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/21
C12P 17/00
C12P 1/04
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え菌におけるエポチロン生合成遺伝子クラスター中のepoK遺伝子は不活性化されたものであり、前記epoK遺伝子は、
相同組換え方法により挿入によって不活性化され、前記epoK遺伝子は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO.1を含み、挿入配列は、SEQ ID NO.1のヌクレオチド基のうちの291位から1960位である、脱エポキシ化エポチロンBを発酵生産するための組換え菌であるソランギウム・セルロサム(Sorangium cellulosum)。
【請求項2】
前記組換え菌は、ソランギウム・セルロサムSo ce90(Sorangium cellulosum So ce90)由来のものである請求項1に記載の組換え菌。
【請求項3】
前記菌株は、脱エポキシ化エポチロンBを主要代謝産物として生産し、エポチロンAとエポチロンBを生産しない高収量菌株である請求項1又は2に記載の組換え菌。
【請求項4】
培地中で請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組換え菌を培養するステップを含む脱エポキシ化エポチロンBを生産する方法。
【請求項5】
前記培地は、水溶性培地であ
る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
種培地BCFは、0.8~1.0%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05%~0.1%MgSO
4
・7H
2
O及び25~50mMのHEPESを含み、pHが7.2~7.6であり、生産発酵培地FBCFは、0.6~0.7%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05~0.1%MgSO
4
・7H
2
O及び微量元素溶液5~10mg/Lを含み、且つpHが7.1±0.3である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
生産発酵培地にXAD-16樹脂
を加えて発酵生産を行うステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記XAD-16樹脂は2%~5%のXAD-16樹脂である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発酵過程において1日に回分添加する請求項4から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
PCカラム及びCカラムにより脱エポキシ化エポチロンBを精製するステップをさらに含み、前記精製は62~80%メタノール溶液を使用して溶出する請求項4から請求項
9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、組換え菌及びその使用に関し、特に、脱エポキシ化エポチロンBを生産する組換えソランギウム・セルロサム及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エポチロン(Epothilone)は、土壌微生物によって産生された、チューブリンに作用して抗腫瘍活性を有するマクロライド系抗生素であり、20世紀の90年代初頭にまず粘液細菌であるソランギウム・セルロサム(Sorangium cellulosum)から分離され、主にAとBの2種類の産物があり、その構造は、以下の通りである。
【0003】
ソランギウム・セルロサム由来のエポチロン生合成遺伝子クラスター中の遺伝子に対するクローニング解析から、エポチロンポリケチド合成酵素(polyketide synthases)は、アシルコエンザイムAを単位として重合して微生物の二次代謝産物である脱エポキシ化エポチロンA及びBを2:1の比率で形成し、前記脱エポキシ化エポチロンA及びBは、中間代謝産物として、さらにepoK遺伝子産物-シトクロムP450酸化酵素の作用によって、最終的にエポキシ型のエポチロンA及びBをそれぞれ形成することが示された。天然産生菌であるソランギウム・セルロサムにおいて、脱エポキシ化エポチロンA及びBは、微量にしか存在せず、最終産物であるエポチロンA及びBの生産量よりはるかに低く、且つ、ソランギウム・セルロサム発酵液中には少なくとも35種類の他のエポチロン類縁物質(Hardt,et al.,J Nat Prod 64:847-856,2001)がさらに存在する。米国のDanishefsky研究グループは、脱エポキシ化エポチロンBに対して化学的全合成試験を成功に行ったが、この全合成過程は、複雑で制御が困難であり、生産量が低く、コストが高いので、その医薬用開発価値を大幅に低下させる。
【0004】
非エポキシ化の脱エポキシ化エポチロンBは、その毒性がエポチロンのエポキシ化対応物質よりはるかに低いので、脱エポキシ化エポチロンBの生産量を向上させて臨床治療に使用させるように、脱エポキシ化エポチロンBを効率的に生産する生産菌株を開発する必要がある。
【0005】
米国特許US5843718及びUS6033883には、組換え宿主細胞内においてmodular PKS遺伝子を組換えることにより新規なポリケチド化合物を生産する方法、及び宿主細胞内において例えばストレプトマイセス(Streptomyces)、大腸菌(E.coli)及び粘液細菌(Myxobacterial)に異種PKS遺伝子を導入してポリケチド化合物を生産するという組換え方法が記載されており、エポチロンを生産できない宿主細胞内において例えばストレプトマイセスStreptomyces coelicolor及び粘液細菌Myxococcusxanthusに異種エポチロン遺伝子を導入してエポチロンA及びBを生産することが報告されている(Tang,et al.Science 287:640-642;Julien&Shah,2002,Amtimicrobial.Agent Chemother.46(9):2772-2778を参照)。
【発明の概要】
【0006】
第1態様により、脱エポキシ化エポチロンBを発酵生産するための組換え菌であるソランギウム・セルロサム(Sorangium cellulosum)を提供し、前記組換え菌におけるエポチロン生合成遺伝子クラスター中のepoK遺伝子は、不活性化されたものである。
【0007】
いくつかの具体的な実施形態において、前記epoK遺伝子は、点突然変異、挿入、欠失又は置換によって不活性化される。
【0008】
いくつかの具体的な実施形態において、前記組換え菌は、ソランギウム・セルロサムSo ce90(Sorangium cellulosum So ce90)由来のものである。
【0009】
いくつかの具体的な実施形態において、前記epoK遺伝子は、挿入によって不活性化され、前記epoK遺伝子は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO.1を含み、挿入配列は、SEQ ID NO.1のヌクレオチド基のうちの291位から1960位である。より具体的に、前記組換え菌は、ソランギウム・セルロサムBG03-09Kである。
【0010】
本発明に係る組換え遺伝子工学的菌株は、エポチロン生合成遺伝子の改変を含み、改変された遺伝子は、DNA組換え技術によって、産生菌の宿主細胞におけるエポチロン生合成遺伝子クラスター中のepoK遺伝子のDNA配列をDNA断片の挿入により不活性化させることにより、宿主細胞におけるエポチロン生合成遺伝子を改変させる。
【0011】
本発明に係る組換え菌は、組換え技術により取得されてもよく、この技術は、相同組換え方法により改変すべき遺伝子又は機能性基の隣接する両端領域を自殺ベクターにクローニングして、接合伝達性のプラスミドベクターを得て、自殺ベクターにおける遺伝子と宿主細胞核に含まれるゲノムにおける相同遺伝子とのダブルハイブリダイゼーション組換えを行うことにより、エポチロンの生合成に関与する1つ又は複数の遺伝子又は機能性基が挿入によって不活性化又は置換されて、遺伝子工学的組換え生産菌株を得る。例えば、1つ又は2つの抗生素耐性遺伝子を改変すべき遺伝子の両端領域に挿入し、挿入された抗生素耐性遺伝子の両側のepoK遺伝子相同配列を介して宿主細胞内でDNA組換えを行うことにより、宿主細胞における野生型の遺伝子を置換し、抗生素耐性遺伝子がepoK基に挿入されてその機能が失われた組換株を得る。このような不活性化作用は、ランダム又は点突然変異、欠失又は置換によって達することもできる。これによって得た組換え生合成遺伝子は、天然産生菌における遺伝子と異なることにより、組換え宿主細胞においてエポチロン誘導体又は中間産物を主要産物として産生し、例えば、エポチロン合成遺伝子を含む宿主細胞は、エポチロンBを主要産物として産生することができ、その中のエポチロン生合成遺伝子におけるepoK遺伝子DNA配列は、他のDNA配列の挿入によって不活性化されて、この組換え菌株は、脱エポキシ化エポチロンBを主要産物として生産する。
【0012】
本発明に係る組換え菌、例えばBG03-09Kは、長期保存が可能であり、且つ安定性能が良好である。例えば、BCF培地中で3±1日培養した後のBG03-09K培養液30~50mLと90%~100%滅菌グリセリン10~20mLとを滅菌瓶中で混合し、1~1.5mLの混合液を標識された滅菌細胞凍結保存用チューブに分注して生産菌の細胞バンクを製造し、且つ直ちに-70℃以下の超低温で冷凍保存し、この菌の長期保存安定性能が良好である。
【0013】
本発明は、組換えソランギウム・セルロサム菌株BG03-09Kのハウスキーピング遺伝子に対するPCR解析及び遺伝子シーケンシング解析(16S rRNA遺伝子、EpoD-MT機能領域、グリセリンアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子)により菌種の遺伝学的同定を行う。3対のoligoプライマーを設計してPCR増幅を行い、且つ得られたPCR産物に対してDNAシーケンシング及び分析を行う。データベースでBG03-09Kのハウスキーピング遺伝子の部分配列を比較したところ、BG03-09KのDNA配列とソランギウム・セルロサム(S.cellulosum)における当該配列の間の進化距離は、ヌクレオチドレベルであまり違いがないことを見出し、BG03-09Kがソランギウム・セルロサム(S.cellulosum)と同種であることが証明された。
【0014】
第2態様により、培地中で第1態様に記載の組換えソランギウム・セルロサムを培養するステップを含む脱エポキシ化エポチロンBを生産する方法を提供する。
【0015】
いくつかの具体的な実施形態において、前記生産方法で使用される培地は、水溶性培地であり、例えば、種培地BCFは、0.8~1.0%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05%~0.1%MgSO4・7H2O及び25~50mMのHEPESを含み、pHが7.2~7.6である。生産発酵培地FBCFは、0.6~0.7%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05~0.1%MgSO4・7H2O及び微量元素溶液5~10mg/Lを含み、且つpHが7.1±0.3である。
【0016】
いくつかの具体的な実施形態において、前記生産方法は、発酵培地にXAD-16樹脂、例えば2%~5%のXAD-16樹脂を加えて発酵生産を行うステップを含む。
【0017】
いくつかの具体的な実施形態において、前記生産方法の発酵過程において1日に回分添加する。いくつかの具体的な実施形態において、前記生産方法は、PCカラム及びCカラムにより脱エポキシ化エポチロンBを精製し、前記精製は、62~80%メタノール溶液、例えば62%、67%、72%、77%、80%のメタノールで溶出させるステップをさらに含む。
【0018】
より具体的に、脱エポキシ化エポチロンB高収量菌株BG03-09Kで脱エポキシ化エポチロンBを発酵生産する具体的な操作は、以下の通りである。
【0019】
-70℃以下の超低温冷蔵庫で保存した菌種細胞凍結保存用チューブを所定時間培養した後、種培地に接種して培養し、培養の特徴が要件を満足する種液を5±1%の接種率で発酵培地を含む発酵タンクに滅菌接種し、下記のプロセスパラメータに従ってバッチ的添加して14±2日培養する。
【0020】
発酵培養プロセスパラメータは、培養温度を34℃とし、その許容範囲が34±1℃であり、pHを7.1とし、その許容範囲が7.1±0.3であり、酸アルカリ溶液で調整し、溶解酸素の設置値を30%~50%に製御し、吸気量及び撹拌回転数により協働的に製御し、消泡剤で泡をフィードバック制御する。発酵過程においてバッチ的添加し、3±1日目の午後から1日に2±1回ずつ補給し、毎回に大豆ペプトン溶液及びフルクトース溶液を補給する。
【0021】
発酵6日目から発酵終了まで、1日毎にサンプリングして含有量を検出するとともに菌体の成長状態及び純粋菌の状況を検鏡する。XAD樹脂のメタノール抽出液をHPLCで検出した後、発酵生産量を分析及び計算する(
図1参照)。発酵生産量≧240mg/Lであり、500mg/L以上に達することができる。
【0022】
具体的に、前記方法において、種培養及び発酵培養の条件は、好ましくは34℃であり、その許容範囲が34±1℃である。
【0023】
具体的に、前記方法において、発酵培養の条件は、pHを7.1とし、その許容範囲を7.1±0.3とすることが好ましい。
【0024】
具体的に、前記方法において、発酵培養の条件は、発酵時間3±1日から1日に2±1回ずつ補給し、大豆ペプトン溶液及びフルクトース溶液を補給することが好ましい。
【0025】
具体的に、前記方法において、発酵培養の条件は、好ましくはバッチ的流加補給により発酵培養時間を14日±2日まで延長させることにより、より高い生産量を得ることができる。
【0026】
発酵培養終了後、フィード液を100~200メッシュの篩にかけてXAD樹脂と菌体/菌液とを分離し、篩上のXADを同量の水でリンスした後、XAD樹脂カラムに装填し、>90%のメタノールでXAD樹脂を溶出し、製品を含むメタノール溶出液をXAD溶出液として収集する。
【0027】
XAD溶出液を脱脂綿製フィルタに通し、水を加えてメタノール濃度が約50%±5%(v/v)のサンプル溶液を調製してPCカラム(C18フィラー)にロードし、62~80%メタノール溶液で溶出し、製品成分を収集する。
【0028】
上記のPCカラム処理後に基準を満たす収集液に精製水を加えてメタノール濃度が約50%±5(v/v)のサンプル溶液を調製し、Cカラム(C18フィラー)にロードし、62~80%メタノール溶液で溶出し、製品成分を収集する。Cカラム処理後に基準を満たす収集液中の脱エポキシ化エポチロンBのHPLC純度は、98%に達することができ、その他の単一の不純物のピーク面積は、1.0%を超えてはならず、PCカラム及びCカラム処理後の総収率は、70%を超える。
【0029】
前記方法において、Cカラム処理後に基準を満たす収集液中の脱エポキシ化エポチロンBのHPLC純度は、98%に達し、その他の単一の不純物のピーク面積は、1.0%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】BG03-09K発酵により得られた製品のHPLCパターンである。ここで、脱エポキシ化エポチロンAは、4.4分間付近の位置にあり、脱エポキシ化エポチロンBは、5.1分間付近の位置にある。(分析方法:65%アセトニトリル:0.1%氷酢酸でアイソクラティック溶出)。
【
図2A】BG03-09K菌株の継代前後の脱エポキシ化エポチロンBの収率(410mg/L~480mg/L)及び不純物成分を分析及び比較する図である。ここで、脱エポキシ化エポチロンAは、32分間付近の位置にあり、脱エポキシ化エポチロンBは、34分間付近の位置にある。
【
図2B】BG03-09K菌株の継代前後の菌種を3~6日培養した後の菌体の形態を顕微鏡で比較する図である。左の2つの小図は、3日培養した後の新鮮なサンプルを示し、右の2つの小図は、培養液を6日放置した後のサンプルを示す。
【
図3】epoK遺伝子の不活性化領域に挿入されたDNA配列SEQ ID NO.1を示し、斜体字がepoK遺伝子配列であり、正体字が挿入されたDNA配列である。
【
図4A】発酵後のXAD溶出液のHPLCパターンである。
【
図4B】Cカラム処理後のHPLCパターンである。BG03-09K菌株の発酵収集液中の脱エポキシ化エポチロンBのHPLC純度は、98%に達し、その他の単一の不純物のピーク面積は、1.0%以下である。
【
図5】接合伝達性プラスミド(pBGS2-4)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例1:EpoK遺伝子が不活性化された遺伝子工学的菌株を構築する
本実施例において、1株のEpoK遺伝子が挿入により不活性化された遺伝子工学的菌株及びその構築を説明する。
【0032】
DNA抽出キット(江蘇康為世紀バイオテクノロジー株式会社)でエポチロンを生産する天然野生型菌株であるソランギウム・セルロサムSo ce90から総DNAを製造し、その方法は、文献Jaona et al.,1992,Plasmid28:157-165を参照する。PCR方法によりエポチロン生合成遺伝子クラスター中のEpoK遺伝子の両側の隣接する領域のDNA配列をクローニングし、プライマーは、以下の通りである。QK-F,5′-GCAAGCTTCAGGATCTACAATCTCGC-3′(SEQ ID NO.2);QK-R,5′-CGTCTAGATTAAACGACGGGTTGACGA-3′(SEQ ID NO.3);HK-F,5′-CGTCTAGAGTATACGTCACGCGCCATCGACC-3′(SEQ ID NO.4)、HK-R,5′-CGGGATCCGGAGAAAGACCATCTCCCC-3′(SEQ ID NO.5)。得られた2つのPCR産物をAphII及びBlmt抗生素耐性遺伝子(1.67kb)の両側に連結して挿入配列を含むepoK遺伝子断片を取得し、この断片を接合伝達性ベクター(pUC18-oriT、北京北進縁テクノロジー株式会社)に連結してpBGS2-4接合伝達性プラスミド(
図5におけるBlmt及びAphIIの両側の灰色の断片は、epoK相同DNA配列である)を取得した。
【0033】
接合伝達性方法によって、E.coli S17-1を介して構築されたpBGS2-4接合伝達性プラスミドをソランギウム・セルロサムSo ce90に導入した。この後、30μg/mLのフレオマイシンを含有するS42固体培地からフレオマイシン耐性菌を採取した。S42培地は、0.05%トリプトン、0.15%MgSO4・7H2O、1.2%HEPES(PH=7.4)及び1.2%寒天を含み、高圧滅菌後、S42培地1リットルあたり10mLの濾過滅菌後の10%CaCl2・2H2O、1mLの6%K2HPO4、1mLのEDTA-Fe/亜硫酸水素ナトリウム溶液、8mLの40%濾過滅菌後のグルコース、10mLの5%硫酸アミン及び35mLの高圧滅菌後の培養液を加えた。約500個の耐性コロニーをそれぞれ採取してDNAを製造し、プライマーであるBG-K1:5-ATCATATGACACAGGAGCAAGCGAATCAGAGT-3′(SEQ ID NO.6)及びBK-R:5-GAGTTCTACCGGCAGTGCAAATC-3′(SEQ ID NO.7)によりPCRを行ったところ、約0.59kbのPCR産物を得る菌株は、epoK不活性菌株であり、非不活性菌株からこのPCR産物が得られない。
【0034】
上記のepoK不活性化のソランギウム・セルロサム組換え菌株を5mLのBCF種培地(0.8~1.0%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05%~0.1%MgSO
4・7H
2O及び25~50mMのHEPES、pH7.2~7.6)を含むガラス試験管に接種した。菌株を34℃、200rpmのシェーカーで4日培養し、その後、50mLのFBCF培地(0.6~0.7%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05~0.1%MgSO
4・7H
2O及び微量元素溶液5~10mg/L、pHが7.1±0.3であり、且つXAD-16(Rohm & Haas)樹脂2~5%を加える)に接種し、7日培養した。培養液からXAD-16を収集し、且つ10mLのメタノールでXADからエポチロン系代謝産物を溶出した。HPLCにより発酵産物を分析し、BG03-09Kと命名され、脱エポキシ化エポチロンBを産生可能な組換え菌を取得し、この菌は、脱エポキシ化エポチロンA/Bを主代謝産物とし、エポチロンA/Bを産生することができない(結果を
図1に示す)。
【0035】
実施例2:菌株BG03-09Kの保存性能
適量のBG03-09K培養液をS42寒天プレートに塗布し、32℃で8日培養した。その後、このプレートから単一のコロニーを採取し、それぞれ3mLの滅菌BCF種培地を含む試験管に接種し、34℃、200rpmのシェーカーで4日培養した。その中の菌体が活発に増殖した試験管を選択して菌体の雑菌の有無を顕微鏡で検出し、且つ50mLのBCF種培地(250mLの三角フラスコ)に接種し、引き続き3日培養した。菌体の雑菌の有無を顕微鏡で検出した。適量のBCF培養液と90%グリセリンとを滅菌瓶中で混合し、1~1.5mLの混合液を標識された滅菌細胞凍結保存用チューブに分注し、且つ直ちに-70℃以下の超低温で冷凍保存した。
【0036】
-70℃以下の超低温で長期冷凍保存したBG03-09K菌株及びその継代安定性を調べた。ソランギウム・セルロサムの繁殖周期は、約16時間である。このため、バッチ的流加補給の発酵培養プロセスにより発酵培養し、細胞凍結保存用チューブから100Lで14日発酵生産した後にサンプリングして、菌株を35代継代することができる。細胞凍結保存用チューブから30mLのBCF培地中で30日連続継代培養し(1日に1回接種した)、菌株を45代継代することができる。BG03-09K細胞バンクによって、-70℃以下の超低温で1年以上冷凍保存した凍結保存用チューブ菌株と、BG03-09Kの種から100Lで発酵生産した後に収集した菌株又はBG03-09K凍結保存用チューブをBCF種培地中で30日連続継代した菌株とを発酵生産で比較した結果から分かるように、BG03-09K菌株の継代前後の脱エポキシ化エポチロンBの収率(410mg/L~480mg/L)、不純物成分(
図2A、分析方法は実施例4と同じである)及び菌体の形態的特徴は、いずれも一致し(
図2B)、BG03-09K菌株の継代又は長期保存安定性が極めて良好であることが示された。
【0037】
BG03-09K菌種を超低温で1年以上冷凍保存した元の細胞バンク及び上記の連続継代(35代、45代)後の菌種培養液から、菌体DNAをそれぞれ抽出し、NotIでDNAサンプルを切断して0.8%アガロースゲルで電気泳動した。標準的なプロトコルに従ってゲルを帯電したナイロン膜にブロットした。ブロット及びエポチロン生合成遺伝子クラスターDNAで標識されたプローブに対して分子ハイブリダイゼーションを行って(サザンブロッティング解析)分析した結果から分かるように、すべてのサンプルは、同じDNA断片パターンを有し、この菌の細胞バンクを-70℃以下の超低温で冷凍保存又は35代又はそれ以上連続継代する場合、その微生物の遺伝的性能が相対的に安定し、製品の収率が相対的に安定し、菌種の保存及び生産において復帰突然変異が起こらず、産業化生産用サンプルの一致性を確保することができることが示された。
【0038】
実施例3、BG03-09K菌株の分子遺伝学的同定
BG03-09Kの培養液(10mL)を遠心分離して菌体を得た後、速やかに細胞の沈殿を3mLのSTE(25%ショ糖、10mM Tris pH8、1mM EDTA)に懸濁させ、その後、0.6mLのRLM(5%SDS、0.5M Tris pH7.4、125mM EDTA)を加え、DNAを鋳型として抽出し、OligoプライマーでPCR増幅を行い、且つPCR産物をシーケンシング解析し、具体的に以下の通りである。
【0039】
4.1 epoK遺伝子の不活性化領域のDNA配列解析
BG-K1及びBG-K2をプライマーとして、BG03-09KのゲノムDNAでPCRを行い、約2.8kbのPCR断片を取得した後、シーケンシング解析を行い、epoK遺伝子がDNA挿入により不活性化されることが証明された。
BG-K1:ATCATATGACACAGGAGCAAGCGAATCAGAGT-3′(SEQ ID NO.6)BG-K2:CGCCTCGAGGCGAGCAAGGGACACCCCGGGG-3′(SEQ ID NO.8)
【0040】
DNA配列解析の結果を
図3に示し、BG03-09K菌株のEpoK遺伝子の342位のヌクレオチドにDNA挿入が生じて(挿入配列1.67kb)この遺伝子の機能が不活性化されることが確認された。BG03-09Kにおけるエポチロン生合成遺伝子epoK部分配列とデータベース中の野生型ソランギウム・セルロサムso ce90のepoKの当該DNA配列とを比較したところ、ヌクレオチドレベルでこの2つの菌株間でepoK遺伝子部分のDNA配列に違いがなく、相同性が100%であることが示され、BG03-09Kにおいて挿入により不活性化される以外にepoK遺伝子断片に他の変異が生じないことが証明された。
【0041】
4.2菌株BG03-09Kハウスキーピング遺伝子のPCR解析及び遺伝子シーケンシング解析
16S rRNA遺伝子を選択し、エポチロン(epothilone)の生合成遺伝子クラスター中の特殊な機能を担う遺伝子であるメチルトランスフェラーゼ(MT構造ドメイン)及びグリセリンアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を選択して菌種の遺伝学的同定を行った。3対のoligoプライマーを設計してPCR増幅を行い、且つ得られたPCR産物に対してDNAシーケンシング及び分析を行った。
【0042】
4.2.1 16S rRNA遺伝子配列の増幅は、細菌16S rRNA遺伝子のユニバーサルプライマーである27F及び1495Rを使用し、具体的な配列は、以下の通りである。
27F:5′-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3′(SEQ ID NO.9)
1495R:5′-CTACGGCTACCTTGTTACGA-3′(SEQ ID NO.10)
結果:PCRで得られたDNA産物(1.45kb)に対してシーケンシングを行った結果、BG03-09K菌種の16S rRNA遺伝子配列は以下の通りであることが示された。
【0043】
CGGCGCGCTTAACACATGCAAGTCGAGCGAGAAAGGGCTTCGGCCCCGGTAAAGCGGCGCACGGGTGAGTAACACGTAGGTAATCTGCCCCCAGGTGGTGGATAACGTTCCGAAAGGAGCGCTAATACAGCATGAGACCACGTCTTCGAAAGAGGATGAGGTCAAAGCCGGCCTCTTCACGAAAGCTGGCGCCAGGGGATGAGCCTGCGGCCCATCAGCTAGTTGGTAGGGTAATGGCCTACCAAGGCGAAGACGGGTAGCTGGTCTGAGAGGATGATCAGCCACACTGGAACTGAGACACGGTCCAGACTCCTACGGGAGGCAGCAGTGGGGAATCTTGCGCAATGGGCGAAAGCCTGACGCAGCGACGCCGCGTGAGTGATGAAGGCCTTCGGGTTGTAAAGCTCTGTGGAGGGGGACGAATAAGGGTTGGCTAACATCCAGCTCGATGACGGTACCCCTTTAGCAAGCACCGGCTAACTCTGTGCCAGCAGCCGCGGTAAGACAGAGGGTGCAAACGTTGTTCGGAATTACTGGGCGTAAAGCGCGTGTAGGCGGTTCGTAAAGTCAGATGTGAAAGCCCTGGGCTTAACCCAGGAAGTGCACTTGAAACTCACGAACTTGAGTCCCGGAGAGGAAGGCGGAATTCTCGGTGTAGAGGTGAAATTCGTAGATATCGAGAGGAACATCGGTGGCGAAGGCGGCCTTCTGGACGGTGACTGACGCTGAGACGCGAAAGCGTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGGGTGCTAGGTGTCGCGGGCTTTGACTCCTGCGGTGCCGTAGCTAACGCATTAAGCACCCCGCCTGGGGAGTACGGCCGCAAGGCTAAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTCAATTCGACGCAACGCGCAGAACCTTACCTGGGCTAGAAAATGCAGGAACCTGGTTGAAAGATCGGGGTGCTCTTCGGAGAACCTGTAGTTAGGTGCTGCATGGCTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCCTATCGTTAGTTGCCAGCGGTTCGGCCGGGCACTCTAGCGAGACTGCCGATATTTAAATCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAGTCCTCATGGCCCTTATGTCCAGGGCTACACACGTGCTACAATGGGCGGTACAGACGGTCGCGAACCCGCGAGGGGAAGCCAATCCGAAAAAACCGTCCTCAGTACGGATAAGAGTCTGCAACTCGACTCTTTGAAGTTGGAATCGCTAGTAATCCCTGATCAGCAGGCAGGGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCACACCATGGGAGTCGATTGCTCCAGAAGTGGCTGCGCCAACCCGCAAGGGAGGCAGGCCCCCAAGGAGTG(SEQ ID NO.11)
【0044】
BG03-09Kの16S rRNA遺伝子配列とデータベースおけるDNAとを比較したところ、BG03-09Kの16S rRNA遺伝子配列と他のソランギウム・セルロサムの配列の間の進化距離の差がヌクレオチドレベルで1%未満であることを見出し、BG03-09Kがソランギウム・セルロサムと同じであることが証明された。
【0045】
4.2.2エポチロン生合成遺伝子epoD中の特殊な機能を担う遺伝子であるメチルトランスフェラーゼ(MT構造ドメイン)断片
増幅プライマーの配列は、以下の通りである。
【0046】
MTW-F:5′-GCTGCTCACCACGCCGGAAT-3′(SEQ ID NO.12)
MTW-R:5′-TCAGCGGAGCCATCGGCCC-3′(SEQ ID NO.13)。
結果:PCRで得られたDNA産物(1.22kb)に対してシーケンシングを行った結果、BG03-09K菌種のエポチロン生合成遺伝子中のメチルトランスフェラーゼ(MT構造ドメイン)の機能遺伝子の配列は以下の通りであることが示された。
【0047】
TCGGAGGCGGCTGACGGATCTCCACGAACCGGATCTCCCGCGGTCCAGGGCTCCGGTGAATCAAGCGGTGAGTGACACCTGGCTGTGGGACGCCGCGCTGGACGGTGGACGGCGCCAGAGCGCGAGCGTGCCCGTCGACCTGGTGCTCGGCAGCTTCCATGCGAAGTGGGAGGTCATGGAGCGCCTCGCGCAGGCGTACATCATCGGCACTCTCCGCATATGGAACGTCTTCTGCGCTGCTGGAGAGCGTCACACGATAGACGAGTTGCTCGTCAGGCTTCAAATCTCTGTCGTCTACAGGAAGGTCATCAAGCGATGGATGGAACACCTTGTCGCGATCGGCATCCTTGTAGGGGACGGAGAGCATTTTGTGAGCTCTCAGCCGCTGCCGGAGCCTGATTTGGCGGCGGTGCTCGAGGAGGCCGGGAGGGTGTTCGCCGACCTCCCAGTCCTATTTGAGTGGTGCAAGTTTGCCGGGGAACGGCTCGCGGACGTATTGACCGGTAAGACGCTCGCGCTCGAGATCCTCTTCCCTGGTGGCTCGTTCGATATGGCGGAGCGAATCTATCGAGATTCGCCCATCGCCCGTTACTCGAACGGCATCGTGCGCGGTGTCGTCGAGTCGGCGGCGCGGGTGGTAGCACCGTCGGGAATGTTCAGCATCTTGGAGATCGGAGCAGGGACGGGCGCGACCACCGCCGCCGTCCTCCCGGTGTTGCTGCCTGACCGGACGGAGTACCATTTCACCGATGTTTCTCCGCTCTTCCTTGCTCGCGCGGAGCAAAGATTTCGAGATTATCCATTCCTGAAGTATGGCATTCTGGATGTCGACCAGGAGCCAGCTGGCCAGGGATACGCACATCAGAGGTTTGACGTCATCGTCGCGGCCAATGTCATCCATGCGACCCGCGATATAAGAGCCACGGCGAAGCGTCTCCTGTCGTTGCTCGCGCCCGGAGGCCTTCTGGTGCTGGTCGAGGGCACAGGGCATCCGATCTGGTTCGATATCACCACGGGATTGATTGAGGGGTGGCAGAAGTACGAAGATGATCTTCGTATCGACCATCCGCTCCTGCCTGCTCGGACCTGGTGTGACGTCCTGCGCCGGGTAGGCTTTGCGGACGCCGTGAGTCTGCCAGGCGACGGATCTCCGGCGGGGATCCTCGGACAGCACGTGATCCTCTCGCGCGCGCCGGGCATAGCAGGAGCCGCT(SEQ ID NO.14)
【0048】
データベースにおいてBG03-09Kにおけるエポチロン生合成遺伝子epoD遺伝子中の特殊な機能を担う遺伝子であるメチルトランスフェラーゼ(MT構造ドメイン)遺伝子の部分配列と野生型ソランギウム・セルロサムso ce90の当該MT構造ドメインDNA配列とを比較した結果、違いがなく、相同性が100%であることが示され、BG03-09Kがソランギウム・セルロサムso ce90と同種であり、且ついずれもエポチロンを産生することができることが証明された。
【0049】
4.2.3グリセリンアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子断片
増幅プライマー配列は、以下の通りである。
GAPDH-F:5′-TCGTGCTCGAGTGCAC-3′(SEQ ID NO.15)
GAPDH-R:5′-AGAAGCCCCACTCGTT-3′(SEQ ID NO.16)。
結果:PCRで得られたDNA産物(0.7kb)に対してシーケンシングを行った結果は、以下の通りである。
【0050】
GAPDH部分遺伝子配列は、以下の通りである。
AGAAGCCCCACTCGTTGTCGTACCACGAGAAGATCTTCGCGAAGCGGTCGCCGAGGACCGACGTCATGGTGGCGTCGAACGTGCTGGAGGCCGGCGAGCCGATGAAGTCGCCCGAGACGAGCTCCCGGTCGGTGTAGTCGAGGATGTCCTTCATCGGACCCTGCTCGGCGGCCTGCTTCATCGCGGCGTTGATGCTGTCCTTCGTGATCGGCTTCTCGGTCTCGAGGGTGAGGTCCACGAGCGAGACGTCGACCGTGGGGACGCGGATCGCGAGCCCGTCGAACTTGCCCTTGAGCGACGGGATGACCTCGGACAGCGCCTTCGCGGCGCCGGTGCTCGAGGGGATCATGTTGACCGCGGCGGCGCGCGCGCGGCGCAGGTCGCCCTTCCGGTGCGGGATGTCGAGCAGGTGCTGGTCGTTCGTGTACGAGTGCACCGTCGTCATCAGGCCGCGGACGATGCCGAAGTTGTCGAGCATCACCTTGGCGATGGGGGCGAGGCAGTTCGTCGTGCAGGAGCCGCACGAGATGATCGTGTGCTTCTGCGCGTCGTAGAGCTCGTCGTTCACGCCCATGACGACCGTGAGGTCGTGGCCCTTGGCGGGCGCGCTGATGATCACGCGCTTGGCGCCGGCGTTCAGGTGGCCGGCGGCCTTCGCCTTGTCCGTGAAGAGGCCCGTGCACTCGAGCACGA(SEQ ID NO.17)
【0051】
グリセリンアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は、微生物解糖において、NAD+及びリン酸が存在する場合にグリセリンアルデヒド3-リン酸がリン酸化及び酸化されて、1,3-ジリン酸グリセリン酸を形成することを触媒する酵素である。BG03-09KのGAPDH遺伝子の部分配列をデータベースで比較したところ(データベースにおいてソランギウム・セルロサムSo ce90に対応するデータがない)、当該DNA配列とソランギウム・セルロサムso 0157-2又はソランギウム・セルロサムso ce56の当該配列の間の進化距離の差がヌクレオチドレベルでそれぞれ1.7%又は3.0であることを見出し、BG03-09Kがソランギウム・セルロサムso ce56と同種であることが証明された。
【0052】
4.3菌株BG03-09Kの理化学的特性及び形態学的同定
ソランギウム・セルロサムBG03-09K菌株は、セルロースを唯一の炭素源とし且つ硝酸カリウム(KNO3)を唯一の窒素源とする培養条件で成長することができる。ST2無機塩寒天培地の濾紙の上で(培地の成分は、0.1%KNO3、0.1%MgSO4・7H2O、0.1%CaCl2・2H2O、0.1%K2HPO4、0.01%MnSO4・7H2O、0.02%FeCl3、0.002%酵母エキス、微量元素溶液(北京北進縁テクノロジー株式会社)、1%寒天)、菌株BG03-09Kは、濃い赤褐色から濃い褐色の子実体を形成した。この菌株は、液体培地での対数増殖期の栄養菌糸体が棒状であり、位相差顕微鏡で平均長さ3~6μm且つ厚さ1μmの、暗くて広い円形末端付きの円柱状桿菌が観察されたが、10分間後に、特に液体培養の後期又は発酵生産の前期に菌体が集合してヒマワリ菌塊を形成しやすい。
【0053】
実施例4、遺伝子組換え菌株であるソランギウム・セルロサムBG03-09Kから脱エポキシ化エポチロンBを生産する
ステップ1、菌種の蘇生及びフラスコ培養
菌種凍結保存用チューブ1~2本を室温で融解させた後、50mLBCF2蘇生培地(グルコース3g/L、フルクトース3g/L、酵母粉末5g/L、ペプトン4g/L、MgSO4・7H2O0.5g/Lを含む)に滅菌接種し、pH7.4で、34℃±1℃のシェーカーで4±1日培養し、目視で検査すると、菌液は、霧状を呈すべきであり、菌体は、大量の球状粒子に集合していない。培養の特徴がこの要件を満足する菌液を採取し、約500mLのBCF種培地を含む三角フラスコに滅菌接種し、34℃±1℃で3日±1日培養し、目視で検査すると、菌液は、霧状を呈すべきであり、菌体は、大量の球状粒子に集合しておらず、雑菌汚染がない。
【0054】
ステップ2、1段種タンク培養
滅菌条件下で、フラスコ培養終了後のフラスコ中の菌種液を10±2%の接種率で5Lの滅菌BCF種培地(0.8~1.0%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05%~0.1%MgSO4・7H2O)を含む1段種タンクに滅菌接種し、下記のプロセス条件で3日±1日培養した。
【0055】
1段種培養プロセスパラメータは、培養温度34±1℃、pH7.1±0.3、酸アルカリで調整し、溶解酸素の設置値を30%に製御し、吸気量及び撹拌回転数により協働的に製御した。消泡剤で泡をフィードバック製御した。
【0056】
ステップ3、発酵培養
1段種タンクの種液を5±1%の接種率で90L滅菌発酵FBCF培地を含む発酵タンクに滅菌接種し、下記のプロセスパラメータに従って14±2日培養した後にタンクに入れた。発酵過程においてバッチ的補給を行い、3±1日目から、1日に2±1回ずつ補給し、毎回に大豆ペプトン溶液及びフルクトース溶液を補給した。発酵6日目から発酵終了日(12~16日)まで、1日毎にサンプリングして脱エポキシ化エポチロンBの含有量及び雑菌汚染の有無を検出し、発酵収率>300mg/Lである。
【0057】
発酵培養プロセスパラメータは、培養温度34±1℃、pH7.1±0.3、酸アルカリで調整し、DO製御値を30%とし、吸気量及び撹拌回転数により協働的に製御し、消泡剤で泡をフィードバック制御した。
【0058】
生産発酵培地の処方FBCFは、0.6~0.7%大豆ペプトン、0.5~0.7%フルクトース、0.05~0.1%MgSO4・7H2O、微量元素溶液(北京北進縁テクノロジー株式会社)5~10mg/Lを含み、且つこれにXAD樹脂2~5%を加えた。
【0059】
発酵の収率は、発酵培養液をサンプリングして、XADメタノール溶出液でHPLC検出を行った。HPLCパターンを
図4Aに示し、以下のような分析方法により測定された。
【0060】
ELSD-LC分析方法:HPLC勾配法、DADとELSDとを併用して検出した。
【0061】
1.1)クロマトグラフィー条件
液体クロマトグラフィー:Agilent 1260型HPLC
流動相A:0.1%氷酢酸
流動相B:アセトニトリル
流速:1.0mL/min
溶出勾配
カラム:Agilent ZORBAX Eclipse Plus C18 4.6
*150mm、5μm
カラム温度:35℃
検出器A:Agilent DAD検出器、190nm~400nmでスキャンした検出器B:Agilent ELSD検出器、蒸発管やドリフトチューブ温度:50℃;キャリアガスの流速が1.8L/minである。
【0062】
ステップ4:発酵樹脂の収穫及び溶出
発酵培養終了後、フィード液を分離篩にかけてXAD樹脂及び菌体/菌液を分離した。発酵液中のXAD樹脂を100メッシュの篩にかけてリンスした後、XAD樹脂カラムに装填してメタノールでXAD樹脂を溶出し、メタノール溶出液をXAD溶出液として収集し、XAD溶出を完了させた後、サンプリングして含有量をHPLCで分析した。
【0063】
ステップ5:PCカラムによる前処理
XAD溶出液を脱脂綿製フィルタに通し、水を加えてメタノール濃度が約45%(v/v)のサンプル溶液を調製してPCカラム(C18フィラー)にロードし、62~80%メタノール溶液でアイソクラティック/勾配溶出し、製品成分を収集し、サンプリングして含有量をHPLCで分析した。
【0064】
ステップ6:Cカラムによる分離精製
上記のPCカラム処理後に基準を満たす収集液に水を加えてメタノール濃度が約50%(v/v)のサンプル溶液を調製し、Cカラム(C18フィラー)にロードし、62~80%メタノール溶液でアイソクラティック/勾配溶出し、製品成分を収集した。Cカラム処理後に基準を満たす収集液中の脱エポキシ化エポチロンBのHPLC純度は、98%に達し、その他の単一の不純物のピーク面積は、1.0%以下であり、以下の
図4Bを参照する。
【0065】
バッチ的流加補給で発酵培養時間を14日±2日まで延長することにより、より高い生産量を得ることができる。この発酵プロセスを使用する場合、発酵タンクにおいて、補給発酵プロセスによって、BG03-09Kによる脱エポキシ化エポチロンの生産量は、500mg/Lに達することができる。PCカラム及びCカラムにより処理した後、収集された製品のHPLC純度は、98%以上に達することができる。
【0066】
以上、いくつかの実施形態を参照して本発明を開示したが、本明細書で開示され、添付の特許請求の範囲で提供される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、修正及び変更を行うことができることは明らかである。なお、本開示におけるすべての実施例は、本発明の実施形態を説明するが、それらは、非限定的な例としてのみ提供されるので、このように説明される本発明の様々な態様を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本発明は、本開示、以下の特許請求の範囲及びその任意の均等の態様により限定される範囲のすべてを含む。したがって、図面及び詳細は、例示的であって限定するものではないと見なされるべきである。
【配列表】