(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リチウム‐硫黄電池用正極及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240729BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240729BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240729BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240729BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/134
(21)【出願番号】P 2022544178
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 KR2021011951
(87)【国際公開番号】W WO2022050769
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113260
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドンウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/166870(WO,A1)
【文献】特開2016-115417(JP,A)
【文献】特表2011-518743(JP,A)
【文献】Yueying Peng et al.,PrussianBlue:A Potential Material to Improve the Electrochemical Performance of Lithium-Sulfur Batteries,Appl. Mater. Interfaces,2017年,vol.9 no.5,PP.4397-4403
【文献】Duo Li et al.,High Sulfur Loading Cathodes Fabricated Using Peapodlike, Large Pore Volume Mesoporous Carbon for Lithium-Sulfur Battery,Appl. Mater. Interfaces,2013年,vol.5 no.6,PP.2208-2213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は正極活物質及び添加剤を含み、
前記添加剤は遷移金属-フェロシアニド化合物
単体を含み、
前記正極活物質は硫黄-炭素複合体を含み、
前記硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材及び前記多孔性炭素材の内部及び外部表面の中で少なくとも一部に硫黄を含むものであり、
前記硫黄は硫黄-炭素複合体全体100重量%を基準にして65重量%ないし80重量%で含まれる、リチウム-硫黄電池用正極。
【請求項2】
前記遷移金属-フェロシアニド化合物は、鉄(III)フェロシアニド、コバルト(II)フェロシアニド、ニッケル(II)フェロシアニド、銅(II)フェロシアニド及び亜鉛(II)フェロシアニドからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項3】
前記遷移金属-フェロシアニド化合物は鉄(III)フェロシアニドを含む、請求項1又は2に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項4】
前記遷移金属-フェロシアニド化合物は水分含量が10重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項5】
前記遷移金属-フェロシアニド化合物は格子構造内の水分を取り除くために真空乾燥処理したものである、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項6】
前記遷移金属-フェロシアニド化合物は正極活物質層全体100重量%を基準にして1ないし20重量%で含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項7】
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、黒鉛及び活性炭素からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項8】
前記硫黄は、無機硫黄、Li
2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C
2Sx)n、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項9】
前記正極は硫黄のローディング量が6mg/cm
2ないし8mg/cm
2である、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極;
負極及び
電解質を含む、リチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年09月04日付け韓国特許出願第10‐2020‐0113260号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明はリチウム‐硫黄電池用正極及びこれを含むリチウム‐硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池の活用範囲が携帯用電子機器及び通信機器だけでなく電気自動車(electric vehicle;EV)、電力貯蔵装置(electric storage system;ESS)にまで拡大されながら、これらの電源として使われるリチウム二次電池の高容量化に対する要求が高まっている。
【0004】
様々なリチウム二次電池の中でリチウム‐硫黄電池は硫黄‐硫黄結合(sulfur‐sulfur bond)を含む硫黄系列物質を正極活物質で使用し、リチウム金属、リチウムイオンの挿入/脱挿入が起きる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコーンやスズなどを負極活物質で使用する電池システムである。
【0005】
リチウム‐硫黄電池において、正極活物質の主材料である硫黄は単位原子あたり低い重さを持ち、資源が豊かで需給が容易であり、安価で毒性がなく、環境にやさしい物質という長所がある。
【0006】
また、リチウム‐硫黄電池は正極でリチウムイオンと硫黄の変換(conversion)反応(S8+16Li++16e‐→8Li2S)から出る理論放電容量が1,675mAh/gに達し、負極でリチウム金属(理論容量:3,860mAh/g)を使用する場合、2,600Wh/kgの理論エネルギー密度を示す。これは現在研究されている他の電池システム(Ni‐MH電池:450Wh/kg、Li‐FeS電池:480Wh/kg、Li‐MnO2電池:1,000Wh/kg、Na‐S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べてとても高い数値を持つため、現在まで開発されている二次電池の中で高容量、環境にやさしい、及び低価のリチウム二次電池として注目されていて、次世代電池システムとして多くの研究が行われている。
【0007】
このような多くの長所にもかかわらず、リチウム‐硫黄電池は充・放電過程で生成されるリチウムポリスルフィドによって電池の性能及び駆動安定性を確保しがたい問題がある。具体的に、リチウム‐硫黄電池は放電過程中に正極ではリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li2Sx、x=2~8)が生成され、この中で一部は電解質に容易に溶解されることによって正極活物質の損失をもたらし、正極の電気化学的反応性減少及び電池の容量及び寿命低下を引き起こす。
【0008】
また、湧出されたリチウムポリスルフィドは電解質の粘度を増加させ、これによってリチウムイオンの伝達能が減少するようになって高率放電時に容量が少ない問題がある。なお、電解質を通じて負極へと拡散されたリチウムポリスルフィドは負極活物質または負極集電体と様々な副反応(side reaction)を起こすようになる。これに加え、リチウムポリスルフィドは充電過程中にシャトル反応(shuttle reaction)を起こして充放電効率を大きく低下させる。
【0009】
ここで、リチウム‐硫黄電池でリチウムポリスルフィドの湧出問題を解決するために多様な技術が提案された。
【0010】
一例として、韓国公開特許第2017‐0139761号は窒素がドーピングされた炭素物質を含む正極活物質層及び保護層を備え、正極活物質層にバインダーでキトサンを含むことでリチウムポリスルフィドの湧出を遅延させ、電池の容量及び寿命を改善することができることを開示している。
【0011】
また、韓国公開特許第2016‐0046775号は硫黄‐炭素複合体を含む正極活性部の一部表面に両新媒性高分子からなる正極コーティング層を備えて、リチウムポリスルフィドの湧出抑制とともにリチウムイオンの移動を容易にして電池のサイクル特性を向上させることができることを開示している。
【0012】
また、韓国公開特許第2016‐0037084号は硫黄を含む炭素ナノチューブ凝集体にグラフェンをコーティングすることでリチウムポリスルフィドが溶けて出ることを遮断し、硫黄‐炭素ナノチューブ複合体の導電性及び硫黄のローディング量を増加させることができることを開示している。
【0013】
これらの特許はリチウムポリスルフィド吸着能力のある物質を正極に添加剤またはコーティング層の形態で導入したり、正極の素材や構造を変更することによってリチウムポリスルフィドの湧出とこれによる硫黄の損失を防いでリチウム‐硫黄電池の性能または寿命低下問題をある程度改善したが、その効果が十分ではない。また、これらの特許で提示する方法は、やや複雑なだけでなく硫黄を入れることができる量(すなわち、ローディング量)が制限されるという問題がある。したがって、リチウムポリスルフィドの湧出を効果的に抑制しながら正極の電気化学的反応性を向上させて優れる性能を持つリチウム‐硫黄電池の開発がもっと必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国公開特許第2017‐0139761号(2017年12月20日)、窒素がドーピングされた炭素を含む正極活物質層及び保護膜を備える金属‐硫黄電池用正極、この製造方法
【文献】韓国公開特許第2016‐0046775号(2016年04月29日)、リチウム‐硫黄電池用正極及びこの製造方法
【文献】韓国公開特許第2016‐0037084号(2016年04月05日)、硫黄‐炭素ナノチューブ複合体、この製造方法、これを含むリチウム‐硫黄電池用カソード活物質及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで本発明者らは前記問題を解決するために多角的に研究した結果、リチウム‐硫黄電池用正極に添加剤として遷移金属‐フェロシアニド化合物を含む場合、リチウムポリスルフィド湧出が抑制されるだけでなく、正極の電気化学的反応性が改善されてリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命を向上させることができることを確認して本発明を完成した。
【0016】
したがって、本発明の目的はリチウムポリスルフィド湧出抑制効果及び正極の電気化学的反応性が向上されたリチウム‐硫黄電池用正極を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は前記正極を含むリチウム‐硫黄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明は集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質及び添加剤を含み、前記添加剤は遷移金属‐フェロシアニド化合物を含むリチウム‐硫黄電池用正極を提供する。
【0019】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、鉄(III)フェロシアニド、コバルト(II)フェロシアニド、ニッケル(II)フェロシアニド、銅(II)フェロシアニド及び亜鉛(II)フェロシアニドからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0020】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は水分含量が10重量%以下のものである。
【0021】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は格子構造内の水分を取り除くために真空乾燥処理したものである。
【0022】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は正極活物質層全体100重量%を基準にして1ないし20重量%で含まれることができる。
【0023】
前記正極活物質は硫黄‐炭素複合体を含むことができる。
【0024】
また、本発明は前記リチウム‐硫黄電池用正極を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるリチウム二次電池用正極は添加剤で遷移金属‐フェロシアニド化合物を含むことで、リチウムポリスルフィド吸着効果が優れるだけでなく、正極活物質の電気化学的反応性が向上されて正極の容量発現を最大化することで高容量及び高エネルギー密度を持つリチウム‐硫黄電池の具現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の製造例1による鉄(III)フェロシアニドの走査電子顕微鏡イメージである。
【
図2】実験例2による電気伝導特性評価結果を示すグラフである。
【
図3】実験例3によるリチウム‐硫黄電池の性能評価結果を示すグラフである。
【
図4】実験例3によるリチウム‐硫黄電池の性能評価結果を示すグラフである。
【
図5】実験例4によるリチウム‐硫黄電池の出力特性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0028】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0029】
本発明で使用した用語は、単に特定実施例を説明するために使われたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに違うことを意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において「含む」または「持つ」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指すためであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0030】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0031】
本明細書で使われている用語「ポリスルフィド」は「ポリスルフィドイオン(Sx
2‐、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(Li2SxまたはLiSx
‐、x=8、6、4、2)」を全て含む概念である。
【0032】
リチウム‐硫黄電池はいくつかの二次電池の中で高い理論放電容量及び理論エネルギー密度を持ち、正極活物質の主材料として使われる硫黄は埋蔵量が豊かで安価であり、環境にやさしいという利点で次世代二次電池として脚光を浴びている。
【0033】
リチウム‐硫黄電池は、放電が進められることによって正極活物質である硫黄はリチウムイオンと連続的に反応して環形のS8から線形構造のリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li2Sx、x=8、6、4、2)に連続的に変換され、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されると最終的にリチウムスルフィド(lithium sulfide、Li2S)が生成される。このような硫黄の還元反応(放電)の中間生成物であるリチウムポリスルフィドの中で、硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li2Sx、普通x>4)は極性が強い物質で、親水性有機溶媒を含む電解質に容易に溶けて正極の反応領域の外に湧出される問題が発生する。
【0034】
このようなリチウムポリスルフィドの湧出によって電気化学反応に参加する硫黄の量が急激に減って、リチウム‐硫黄電池は前述した長所にもかかわらず実際の駆動においては理論容量及びエネルギー密度を全部具現することができない。また、リチウムポリスルフィドの湧出は電解質の粘度を増加させてリチウムイオンの伝導性を低下させ、高率特性が悪くなる。また、湧出されたリチウムポリスルフィドは負極のリチウムと反応して負極表面に固体相のリチウムスルフィドを形成し、これは充電時も分解されないため非可逆容量で作用するだけでなく、負極表面での電気化学反応を邪魔して容量及び寿命特性の低下が加速化される問題がある。これに加え、リチウムポリスルフィドは正極と負極との間を行き来しながら(shuttle)完全に還元されることができず電子を消耗する循環反応をして充電及び放電効率を下げる問題がある。
【0035】
前述したような問題により、リチウム‐硫黄電池は実際に駆動する時、初基容量は高いが、サイクルが進められるにつれ容量及び充・放電効率特性が急激に低下し、これによって寿命も短縮されるので、十分な性能及び駆動安定性を確保しにくくて常用化されていることができなかった実情である。
【0036】
このために従来の技術ではリチウムポリスルフィドの湧出を抑制することができる物質を添加剤または保護層の形態で正極や分離膜に導入、正極活物質の構造や素材変更などの方法が提案されたが、リチウムポリスルフィドの湧出改善効果が微々たるものであり、硫黄のローディング量に制限があって、電池の安定性に深刻な問題を引き起こしたり工程の側面で非効率的だという短所がある。
【0037】
ここで、本発明ではリチウムポリスルフィドの湧出及びこれによる正極の電気化学的反応性低下問題を改善して、これを含むリチウム二次電池の容量及び寿命特性の向上効果を確保するために金属シアン化物を添加剤として含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0038】
具体的に、本発明によるリチウム‐硫黄電池用正極は集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質及び添加剤を含み、前記添加剤は遷移金属‐フェロシアニド化合物(transition metal ferrocyanide)を含むことを特徴とする。
【0039】
前記正極は正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に形成された正極活物質層を含むことができる。
【0040】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使われることができる。
【0041】
前記正極集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができるし、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。
【0042】
前記正極活物質層は正極活物質及び添加剤を含む。
【0043】
本発明において、前記正極活物質は多孔性炭素材及び前記多孔性炭素材の内部及び外部表面の中で少なくとも一部に硫黄を含む硫黄‐炭素複合体を含む。前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため炭素材のような伝導性素材と複合化して使われる。これによって、前記硫黄は硫黄‐炭素複合体の形態で含まれる。
【0044】
前記硫黄は硫黄元素(S8)及び硫黄化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。前記正極活物質は、無機硫黄、Li2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマー((C2Sx)n、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記硫黄は無機硫黄である。
【0045】
前記硫黄‐炭素複合体は前述した硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供するだけでなく、硫黄の低い電気伝導率を補足して電気化学的反応が円滑に進められるように多孔性炭素材を含む。
【0046】
前記多孔性炭素材は一般的に多様な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造されることができる。前記多孔性炭素材は内部に一定しない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nm範囲であり、気孔率または孔隙率は多孔性炭素材全体体積の10ないし90%範囲である。もし、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔の大きさが分子水準に過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に前記範囲を超える場合、多孔性炭素材の機械的強度が弱化されて電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0047】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型でリチウム‐硫黄電池に通常使われるものであれば制限されずに使われることができる。
【0048】
前記多孔性炭素材は多孔性構造であるか比表面積が高いもので当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材では、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であるが、これに制限されない。好ましくは前記多孔性炭素材は炭素ナノチューブである。
【0049】
本発明による硫黄‐炭素複合体において、前記硫黄は前記多孔性炭素材の内部及び外部表面の中で少なくともいずれか1ヶ所に位置し、一例として前記多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%未満、好ましくは1ないし95%、より好ましくは40ないし96%領域に存在することができる。前記硫黄が前記多孔性炭素材の内部及び外部表面に前記範囲内で存在する時、電子伝達面積及び電解質との濡れ性の面で最大効果を示すことができる。具体的に、前記硫黄が前述した範囲領域で前記多孔性炭素材の内部及び外部表面に薄くて均一に含浸されて充・放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が前記多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%領域に位置する場合、前記多孔性炭素材が完全に硫黄で覆われて電解質に対する濡れ性が落ちるし、接触性が低下されて電子伝達を受けることができずに電気化学反応に参加することができなくなる。
【0050】
前記硫黄‐炭素複合体は、硫黄‐炭素複合体100重量%を基準にして前記硫黄を65ないし90重量%、好ましくは70ないし85重量%、より好ましくは72ないし80重量%で含むことができる。前記硫黄の含量が前述した範囲未満の場合、硫黄‐炭素複合体内の多孔性炭素材の含量が相対的に多くなるにつれ比表面積が増加し、正極製造時にバインダーの含量が増加する。このようなバインダーの使容量増加は結局正極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をするようになって電池性能を低下させることができる。これと逆に、前記硫黄の含量が前述した範囲を超える場合、多孔性炭素材と結合することができなかった硫黄どうしが集まったり多孔性炭素材の表面に再湧出されることによって電子を受けにくくなって、電気化学的反応に参加することができなくなって電池容量の損失が発生することがある。
【0051】
本発明の硫黄‐炭素複合体の製造方法は、本発明で特に限定せず、当業界で通常使われる方法が利用されることができる。一例として、前記硫黄と多孔性炭素材を単純混合した後、熱処理して複合化する方法が利用されることができる。
【0052】
前記正極活物質は前述した組成以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄との合金の中で選択される一つ以上をさらに含むことができる。
【0053】
前記遷移金属元素としてはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記IIIA族元素としてはAl、Ga、In、Tlなどが含まれ、前記IVA族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれることができる。
【0054】
本発明のリチウム‐硫黄電池用正極において、前記正極活物質はリチウム‐硫黄電池用正極を構成する正極活物質層全体100重量%を基準にして50ないし95重量%で含まれることができる。前記正極活物質の含量は、前記正極活物質層全体100重量%を基準にして、下限値は70重量%以上または85重量%以上であって、上限値は99重量%以下または90重量%以下である。前記正極活物質の含量は前記下限値と上限値との組み合わせで設定することができる。前記正極活物質の含量が前記範囲未満の場合、導電材、バインダーなどの副資材の相対的含量が増えて正極活物質の含量が減少して、高容量、高エネルギー密度の電池を具現しにくいし、これと逆に前記範囲を超える場合、後述する導電材またはバインダーの含量が相対的に不足して電極の物理的性質が低下される問題がある。
【0055】
本発明のリチウム‐硫黄電池用正極は前記正極活物質層に添加剤として遷移金属‐フェロシアニド化合物(transition metal ferrocyanide)を含む。
【0056】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、遷移金属陽イオンと[Fe(CN)6]4‐で表されるフェロシアニド陰イオンを含み、均一な格子構造を持つ物質である。この時、遷移金属陽イオンとしては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0057】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、遷移金属陽イオンとフェロシアニド陰イオンに含まれた非共有電子対によって極性物質を選択的に強く吸着する性質を持つため、これを通じてリチウムポリスルフィドの湧出を抑制することができる。したがって、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物はリチウムポリスルフィドを吸着することで従来のリチウム‐硫黄電池でリチウムポリスルフィドの湧出によって発生する硫黄の流失及びこれによる容量減少問題を解決してリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命を向上させることができる。
【0058】
また、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物はリチウムポリスルフィドを正極内に拘束することによってリチウムポリスルフィドの拡散によって発生する電解質の粘度増加、負極での副反応、リチウムポリスルフィドのシャトル現象などの様々な問題が解決されることによってリチウム‐硫黄電池の性能をより改善させることができる。
【0059】
これに加え、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は開放型骨格(open framework)構造であって、リチウムイオンの円滑な移動を図ることができる。したがって、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は正極活物質内で硫黄の電気化学的反応を促進させる効果がある。
【0060】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物はリチウムポリスルフィドに対する吸着能を持つ物質であって、プルシアンブルーのような遷移金属フェロシアニド化合物をリチウム‐硫黄電池の正極活物質の担持体で使用することは従来の技術として既に知られている。しかし、従来技術の場合、満足げなリチウムポリスルフィド吸着効果を確保することができないうえ、遷移金属フェロシアニド化合物の低い電気伝導率によって正極活物質の電気化学的反応性が低下されることにつれ、リチウム‐硫黄電池の容量が低下される問題があった。一方、前述したように、本発明では遷移金属フェロシアニド化合物をリチウム‐硫黄電池の正極添加剤で含むことでリチウムポリスルフィドの湧出を防ぐと同時にリチウムイオンの移動通路を提供して正極活物質との電気化学的反応性を改善することによって優れる容量及び寿命特性を持つリチウム‐硫黄電池を具現することができる。
【0061】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、鉄(III)フェロシアニド(Fe4[Fe(CN)6]3、プルシアンブルー)、コバルト(II)フェロシアニド(Co2[Fe(CN)6])、ニッケル(II)フェロシアニド(Ni2[Fe(CN)6])、銅(II)フェロシアニド(Cu2[Fe(CN)6])及び亜鉛(II)フェロシアニド(Zn2[Fe(CN)6])からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は鉄(III)フェロシアニドである。
【0062】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は直接合成したり市販されるものを購入して使用することができる。前記遷移金属‐フェロシアニド化合物を直接合成する場合、この製造方法は本発明で特に限定せず、当業界で通常使われる方法が利用されることができる。
【0063】
一例として、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物はナトリウムフェロシアニド(Na4[Fe(CN)6])またはカリウムフェロシアニド(K4[Fe(CN)6)と塩化鉄(FeCl3)の反応を通じて製造することができる。
【0064】
前記遷移金属‐フェロシアニド化合物の格子構造内に水分が残っている場合、リチウム‐硫黄電池の容量、寿命特性が早期劣化する問題があるため、本発明の場合、購入したり製造した遷移金属‐フェロシアニド化合物をリチウム‐硫黄電池用正極の添加剤として使用する前に格子構造内に残存する水分を取り除くために通常的な乾燥以外にさらなる乾燥処理を遂行することができる。これによって、前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は水分含量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0065】
前記乾燥処理は当業界に知られた通常の方法によって遂行することができる。前記乾燥処理温度は100℃以上で、前記乾燥処理時間は12時間以上であることが好ましい。前記乾燥方法は真空乾燥、加熱乾燥などの方法を通じて遂行されることができるが、真空乾燥方法を利用することが好ましい。
【0066】
本発明のリチウム‐硫黄電池用正極で前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、正極活物質層全体100重量%を基準にして1ないし20重量%で含まれることができる。前記遷移金属‐フェロシアニド化合物は、前記正極活物質層全体100重量%を基準にして、下限値は1重量%以上または5重量%以上であり、上限値は20重量%以下または10重量%以下である。添加剤で含まれる前記遷移金属‐フェロシアニド化合物の含量は前記下限値と上限値との組み合わせで設定することができる。前記含量が前記範囲未満の場合、生成されたリチウムポリスルフィドと充分結合できないため、リチウムポリスルフィドの湧出を抑制する効果が低下し、リチウムイオン伝導度の改善効果を確保することができない。これと逆に、前記含量が前記範囲を超える場合、正極活物質の含量が相対的に低下されてリチウム‐硫黄電池のエネルギー密度が減少することがあるし、正極の導電構造を邪魔して過電圧が発生するため、正常な電池駆動が難しいことがある。
【0067】
前記正極活物質層は前述した組成以外に選択的に導電材及びバインダーをさらに含むことができる。
【0068】
前記導電材は電解質と正極活物質を電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を持つものであれば制限せずに使用することができる。
【0069】
例えば、前記導電材では、スーパーP(Super‐P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独で、または混合して使用することができる。
【0070】
前記導電材の含量は前記正極活物質層全体重量を基準にして0.01ないし30重量%で添加されることができる。前記導電材の含量が前記範囲未満であれば正極活物質と集電体との間の電子伝達が容易でないため電圧及び容量が減少する。これと逆に、前記範囲超であれば相対的に正極活物質の割合が減少して電池の総エネルギー(電荷量)が減少することがあるので、上述した範囲内で適正含量を決めることが好ましい。
【0071】
前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知された全てのバインダーを使用することができる。
【0072】
例えば、前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン‐ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル‐ブチジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を使用することができる。
【0073】
前記バインダーの含量は前記正極活物質層全体重量を基準にして0.5ないし30重量%で添加されることができる。前記バインダーの含量が前記範囲未満であれば正極の物理的性質が低下されて正極内の正極活物質、添加剤及び導電材が脱落することがあるし、前記範囲を超える場合、正極で正極活物質と導電材の割合が相対的に減少されて電池容量が減少することがあるので、上述した範囲内で適正含量を決めることが好ましい。
【0074】
本発明において、前記リチウム‐硫黄電池用正極の製造方法は特に限定されないし、通常の技術者によって公知の方法またはこれを変形する多様な方法が使用可能である。
【0075】
一例として、前記リチウム‐硫黄電池用正極は、上述した組成を含む正極スラリー組成物を製造した後、これを前記正極集電体に少なくとも一面に塗布することで前記正極活物質層を形成して製造されたものである。
【0076】
前記正極スラリー組成物は前述した正極活物質、添加剤、導電材及びバインダーを含み、これら以外に溶媒をさらに含むことができる。
【0077】
前記溶媒としては、正極活物質、添加剤、導電材及びバインダーを均一に分散させることができるものを使用する。このような溶媒では水系溶媒として水が最も好ましく、この時の水は蒸溜水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)である。ただし、必ずこれに限定するものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールが使われることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水と一緒に混合して使われることができる。
【0078】
前記溶媒の含量はコーティングを容易にすることができる程度の濃度を持つ水準で含有されることができるし、具体的な含量は塗布方法及び装置によって変わる。
【0079】
前記正極スラリー組成物は必要に応じて該当技術分野でその機能の向上などを目的として通常使われる物質を必要に応じてさらに含むことができる。例えば、粘度調整剤、流動化剤、充填剤などを挙げることができる。
【0080】
前記正極スラリー組成物の塗布方法は本発明で特に限定せず、例えば、ドクターブレード(doctor blade)、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法を挙げることができる。また、別途基材(substrate)上に成形した後、プレッシング(pressing)またはラミネーション(lamination)方法によって正極スラリーを正極集電体上に塗布することもできる。
【0081】
前記塗布後、溶媒を取り除くための乾燥工程を遂行することができる。前記乾燥工程は溶媒を充分に取り除くことができる水準の温度及び時間で行い、その条件は溶媒の種類によって変わることがあるので本発明で特に制限されない。一例として、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線及び電子線などの照射による乾燥法を挙げることができる。乾燥速度は通常、応力集中によって正極活物質層に亀裂が生じたり正極活物質層が正極集電体から剥離されない程度の速度範囲内で、できるだけ早く溶媒を取り除くように調整する。
【0082】
さらに、前記乾燥後、集電体をプレスすることで正極内で正極活物質層の密度を高めることもできる。プレス方法では金型プレス及びロールプレスなどの方法を挙げることができる。
【0083】
前述した組成及び製造方法で製造された前記正極、具体的に前記正極活物質層の気孔率は50ないし80%、好ましくは60ないし75%である。前記正極の気孔率が50%に及ばない場合は正極活物質、添加剤及びバインダーを含む正極スラリー組成物の充填度が高すぎて正極活物質の間にイオン伝導及び/または電気伝導を示すことができる十分な電解質が維持されることができなくなって電池の出力特性やサイクル特性が低下されることがあるし、電池の過電圧及び放電容量減少がひどくなる問題がある。これと逆に、前記正極の気孔率が80%を超えて高すぎる気孔率を持つ場合、集電体と物理的及び電気的連結が低くなって接着力が低下し、反応が難しくなる問題があり、高くなった気孔率を電解質が充填されて電池のエネルギー密度が低くなる問題があるので前記範囲で適切に調節する。
【0084】
特に、本発明の正極の場合、正極活物質層に導電材を別途添加しないことによって、もっと多量の硫黄をローディングすることができる。したがって、本発明において正極の硫黄ローディング量、すなわち正極内で正極活物質層の単位面積当たり硫黄の質量は6ないし8mg/cm2である。このように高い硫黄ローディング量を持つことによって本発明による正極を含むリチウム‐硫黄電池は優れる放電容量及び寿命特性を示すことができる。
【0085】
また、本発明は前記リチウム‐硫黄電池用正極を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【0086】
前記リチウム‐硫黄電池は、正極;負極及びこれらの間に介在される電解質を含み、前記正極として本発明によるリチウム‐硫黄電池用正極を含む。
【0087】
前記正極は前述した内容にしたがう。
【0088】
前記負極は負極集電体及び前記負極集電体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または前記負極はリチウム板金である。
【0089】
前記負極集電体は負極活物質層を支持するためのもので、正極集電体で説明したとおりである。
【0090】
前記負極活物質層は負極活物質以外に導電材、バインダーなどを含むことができる。この時、前記バインダーは前述した内容にしたがう。
【0091】
前記導電材は負極活物質と電解質を電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が負極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を持つものであれば制限されずに使用することができる。
【0092】
例えば、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super‐P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0093】
前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0094】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコーンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0095】
好ましくは前記負極活物質はリチウム金属であり、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態である。
【0096】
前記負極活物質の形成方法は特に制限されないし、当業界で通常使われる層または膜の形成方法を利用することができる。例えば、圧搾、コーティング、蒸着などの方法を利用することができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初基充電によって板金上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0097】
前記電解質はリチウムイオンを含み、これを媒介にして正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を起こすためのものである。
【0098】
前記電解質はリチウム金属と反応しない非水電解液または固体電解質が可能であるが、好ましくは非水電解質で、電解質塩及び有機溶媒を含む。
【0099】
前記非水電解液に含まれる電解質塩はリチウム塩である。前記リチウム塩はリチウム二次電池用電解液に通常使われるものであれば制限せずに使われることができる。例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミドなどが使われることができる。
【0100】
前記リチウム塩の濃度はイオン伝導率、溶解度などを考慮して適切に決まることができるし、例えば0.1ないし4.0M、好ましくは0.5ないし2.0Mである。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満の場合、電池駆動に適したイオン伝導率の確保が難しく、これと逆に前記範囲を超える場合、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性を低下し、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池性能が低下することがあるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0101】
前記非水電解液に含まれる有機溶媒としてはリチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどを制限せずに使用することができるし、例えば、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環形カーボネートなどをそれぞれ単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0102】
本発明において、前記非水系有機溶媒はエーテル系化合物及び一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含む。
【0103】
前記エーテル系化合物は硫黄または硫黄系列化合物に対する溶解度を維持しながら電気化学的安定性が電池の駆動電圧範囲内で確保され、相対的に電池の駆動による中間生成物との副反応の発生が少ない。
【0104】
前記エーテル系化合物は線形エーテル化合物及び環形エーテル化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができるし、好ましくは線形エーテル化合物である。
【0105】
例えば、前記線形エーテル化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、ジメトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができるし、より好ましくはジメトキシエタンである。
【0106】
一例として、前記環形エーテル化合物は、1,3‐ジオキソラン、4,5‐ジメチル‐ジオキソラン、4,5‐ジエチル‐ジオキソラン、4‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、4‐エチル‐1,3‐ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、2,5‐ジメチルテトラヒドロフラン、2,5‐ジメトキシテトラヒドロフラン、2‐エトキシテトラヒドロフラン、2‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、2‐ビニル‐1,3‐ジオキソラン、2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン、2‐メトキシ‐1,3‐ジオキソラン、2‐エチル‐2‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4‐ジオキサン、1,2‐ジメトキシベンゼン、1,3‐ジメトキシベンゼン、1,4‐ジメトキシベンゼン及びイソソルビドジメチルエーテル(isosorbide dimethyl ether)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0107】
前記ヘテロ環化合物は一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物で、前記ヘテロ環は酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む。前記ヘテロ環化合物は酸素原子または硫黄原子を含んで極性を示すことによって、電解質内の他の組成と親和度を高めるだけでなく電解質の副反応、分解などを抑制させることができる。
【0108】
前記ヘテロ環化合物は3ないし15員、好ましくは3ないし7員、より好ましくは5ないし6員のヘテロ環化合物である。
【0109】
また、前記ヘテロ環化合物は、炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環型アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基(‐NO2)、アミン基(‐NH2)及びスルホニル基(‐SO2)からなる群から選択される1種以上に置換または非置換されたヘテロ環化合物;または炭素数3ないし8の環型アルキル基及び炭素数6ないし10のアリール基からなる群から選択される1種以上とヘテロ環化合物の多重環化合物;である。
【0110】
例えば、前記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン及び2,5‐ジメチルチオフェンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン及び2,5‐ジメチルフランからなる群から選択される1種以上を含むことができるし、より好ましくは2‐メチルフランである。
【0111】
本発明において、前記非水系有機溶媒は前記エーテル系化合物とヘテロ環化合物を95:5ないし5:95、好ましくは95:5ないし50:50、より好ましくは90:10ないし70:30、最も好ましくは90:10ないし82.5:17.5の体積比で使用されることがリチウム‐硫黄電池の正極活物質の損失及びイオン伝導率の低下防止の側面で有利である。本発明において、前記体積比はエーテル系溶媒の中で「エーテル系化合物の体積%」:「ヘテロ環化合物の体積%」の比に対応する。
【0112】
前記電解質は前述した電解質塩と有機溶媒以外に添加剤として硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。前記硝酸または亜硝酸系化合物は負極であるリチウム金属電極に安定的な被膜を形成して充放電効率を向上させる効果がある。
【0113】
このような硝酸または亜硝酸系化合物としては、本発明で特に限定しないが、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)、亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトラート、プロピルニトラート、ブチルニトラート、ペンチルニトラート、オクチルニトラートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは硝酸リチウムを使用する。
【0114】
前記電解質の注入は最終製品の製造工程及び要求物性によって、電気化学素子の製造工程中適切な段階で行われることができる。すなわち、電気化学素子の組み立て前または電気化学素子の組み立て最終段階などで適用されることができる。
【0115】
前記正極と負極との間にはさらに分離膜が含まれることができる。
【0116】
前記分離膜は前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオン輸送を可能にすることで多孔性非伝導性または絶縁性物質からなることができるし、通常リチウム二次電池で分離膜として使われるものであれば特に制限せずに使用可能である。このような分離膜はフィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0117】
前記分離膜は電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解質に対する含湿能力に優れるものが好ましい。
【0118】
前記分離膜は多孔性基材からなることができて、前記多孔性基材は通常二次電池に使われる多孔性基材であればいずれも使用可能で、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができるし、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0119】
前記多孔性基材の材質では、本発明で特に限定せず、通常電気化学素子に使われる多孔性基材であればいずれも使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾ―ル(poly(p‐phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0120】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmである。前記多孔性基材の厚さの範囲が前述した範囲に限定されることではないが、厚さが前述した下限より薄すぎる場合は機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が容易に損傷されることがある。
【0121】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔率も特に制限されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%である。
【0122】
本発明によるリチウム二次電池は一般的な工程である巻取(winding)以外にもセパレーターと電極の積層(lamination、stack)及びフォールディング(folding)工程が可能である。
【0123】
前記リチウム二次電池の形状は特に制限されないし、円筒状、積層型、コイン型など多様な形状にすることができる。
【0124】
また、本発明は前記リチウム二次電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0125】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源で使われることができる。
【0126】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグ‐インハイブリッド電気自動車(plug‐in hybrid electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0127】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0128】
製造例
[製造例1]
反応器に100mMの塩化鉄水溶液と75mMのナトリウムフェロシアニドを投入して撹拌した後、60℃で30分間反応させた。
【0129】
前記反応を通じて得られた反応生成物を遠心分離し、蒸溜水を利用して洗浄した後、60℃で12時間乾燥して鉄(III)フェロシアニドを製造した。
【0130】
[製造例2]
反応器に100mMの塩化鉄水溶液と75mMのナトリウムフェロシアニドを投入して撹拌した後、60℃で30分間反応させた。
【0131】
前記反応を通じて得られた反応生成物を遠心分離し、蒸溜水を利用して洗浄した後、60℃で12時間乾燥した。
【0132】
次いで、前記乾燥した鉄(III)フェロシアニドを真空オーブンに入れて100℃で12時間さらに乾燥処理して鉄(III)フェロシアニドを製造した。
【0133】
実施例及び比較例
[実施例1]
正極活物質として硫黄‐炭素複合体(S:CNT=70:30(重量比))88重量%、導電材として気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber;VGCF)5重量%及びバインダーとしてポリアクリル酸6.5重量%とポリビニルアルコール0.5重量%を混合した組成物全体に対して添加剤として製造例1で得られた鉄(III)フェロシアニド5重量%を添加して混合し、正極スラリー組成物を製造した。
【0134】
20μm厚さのアルミニウム集電体上に前記製造された正極スラリー組成物を塗布して50℃で12時間乾燥し、ロールプレス(roll press)機器で圧搾してリチウム‐硫黄電池用正極を製造した。この時、前記正極の気孔率は70%であり、硫黄ローディング量は6ないし8mg/cm2で、正極活物質層内で硫黄の含量は61.6重量%であった。
【0135】
[実施例2]
添加剤として製造例2の鉄(III)フェロシアニドを同一含量で使用したことを除いては前記実施例1と同様に行ってリチウム‐硫黄電池用正極を製造した。
【0136】
[実施例3]
実施例1で製造した正極と負極を対面するように位置させ、その間に厚さ16μm、気孔率46%のポリエチレン分離膜を介在した後、電解質70μlを注入してリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0137】
この時、負極で45μm厚さのリチウム金属薄膜を使用し、電解質で1,3‐ジオキソランとジメチルエーテル(DOL:DME=1:1(体積比))からなる有機溶媒に1M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と1重量%の硝酸リチウム(LiNO3)を溶解させた混合液を使用した。
【0138】
[実施例4]
実施例2の正極を使用したことを除いては前記実施例3と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0139】
[比較例1]
正極活物質として硫黄‐炭素複合体(S:CNT=70:30(重量比))88重量%、導電材として気相成長炭素繊維(VGCF)5重量%及びバインダーとしてポリアクリル酸6.5重量%とポリビニルアルコール0.5重量%を含む正極スラリー組成物を使用したことを除いては前記実施例1と同様に行って正極を製造した。
【0140】
[比較例2]
硫黄及び鉄(III)フェロシアニドを70:30の重量比でエタノールとともにボールミルを使って混合した後、60℃の温度で12時間熱処理して硫黄‐鉄(III)フェロシアニド複合体を製造した。
【0141】
正極活物質として前記製造した硫黄‐鉄(III)フェロシアニド複合体88重量%、導電材として気相成長炭素繊維(VGCF)5重量%及びバインダーとしてポリアクリル酸6.5重量%とポリビニルアルコール0.5重量%を含む正極スラリー組成物を使用したことを除いては前記実施例1と同様に行って正極を製造した。
【0142】
[比較例3]
比較例1の正極を使用したことを除いては前記実施例3と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0143】
[比較例4]
比較例2の正極を使用したことを除いては前記実施例3と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0144】
実験例1.走査電子顕微鏡分析
製造例1で製造した鉄(III)フェロシアニドに対して走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)で観察した。この時、走査電子顕微鏡は日立(hitachi)社のS‐4800を利用し、得られた結果は
図1に示す。
【0145】
図1を参照すれば、製造例1による鉄(III)フェロシアニドは球形の形状を持ち、均一に製造されたことを確認することができる。
【0146】
実験例2.電気伝導特性評価
製造例1の鉄(III)フェロシアニド(PB)、実施例1の正極活物質(S70/CNT)、比較例2の正極活物質(S70/PB)及び実施例1で使用した炭素ナノチューブ(CNT)に対して粉体抵抗特性測定機(HPRM‐FA2、(株)ハンテク社製品)を利用して電気伝導率を測定した。この時、得られた結果は
図2に示す。
【0147】
図2に示すように、実施例1の正極活物質以外に使われた炭素ナノチューブの場合、電気伝導率が非常に優れることを確認することができる。これに比べて、製造例1の鉄(III)フェロシアニドも電気伝導率が非常に低いことが分かる。また、比較例2の正極活物質、すなわち硫黄‐鉄(III)フェロシアニド複合体の場合、抵抗がとても大きくて電気伝導率の測定が不可能であった。
【0148】
実験例3.電池性能評価
実施例3、実施例4、比較例3及び比較例4で製造した電池に対して、充・放電測定装置((株)PNEソリューション社製品)を使用して容量及び寿命特性を評価した。
【0149】
具体的に、25℃で0.1Cの電流密度で放電と充電をしながら電池を使用して容量特性を評価した。この時、得られた結果は表1及び
図3に示す。
【0150】
また、25℃で0.1Cの電流密度で放電と充電を3回繰り返した後、0.2Cの電流密度で放電と充電を3回行った後、0.5の電流密度で放電と充電を行いながら放電容量及びクーロン効率を測定して電池の寿命特性を評価した。この時、得られた結果は表1及び
図4に示す。
【0151】
【0152】
図3、
図4及び表1に示すように、実施例による電池の場合、比較例に比べて容量及び寿命特性が優れることを確認することができる。
【0153】
具体的に、実施例3及び4の電池は、いずれも低率(0.1C)及び高率(0.5C)で容量改善効果があるが、実施例3の場合放電容量及びクーロン効率の減少が早期に表れ、これは添加剤に残存する水分のせいだということが分かる。特に、実施例4の場合、さらに乾燥処理した添加剤を含むことによって実施例3に比べて高率放電容量は低いが、性能の早期劣化が発生しないため、基準電極と類似な水準の寿命特性を持つことを確認することができる。
【0154】
一方、比較例3の場合、実施例に比べて容量特性がよくないし、比較例4の場合、容量だけでなく寿命も全て著しく低下されたことが分かる。
【0155】
このような結果から正極に添加剤として遷移金属‐フェロシアニド化合物を含む場合、リチウムポリスルフィドの湧出が抑制されて正極の反応性を高め、リチウム‐硫黄電池の容量及び寿命特性が優れることが分かる。
【0156】
実験例4.電池出力特性評価
実施例4及び比較例3で製造した電池に対し、25℃で1Cの瞬間放電電流を加えて電圧変化を測定し、電池の出力特性を評価した。この時、得られた結果は
図5に示す。
【0157】
図5に示すように、実施例4による電池の場合、比較例3に比べて充電容量(SOC)の全区間で基準電極対比出力特性改善効果があることを確認することができる。