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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20240729BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240729BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20240729BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240729BHJP
【FI】
F24F11/41 112
F24F11/65
F24F11/86
F24F110:12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022550281
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035357
(87)【国際公開番号】W WO2022059155
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智紀
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】濱島 哲磨
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/083867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/41
F24F 11/65
F24F 11/86
F24F 110/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内ユニットと、室外ユニットとが配管により接続され、前記室内ユニットが設置された空間の温度を調和する空気調和機であって、
前記室内ユニット、及び前記室外ユニットを制御する制御部を備え、
前記室外ユニットは、前記配管から流入する媒体の温度の熱を外気と交換する第1室外熱交換器と、前記配管から流入する媒体の温度の熱を外気と交換し、前記第1室外熱交換器の下側に設けられる第2室外熱交換器と、前記第1室外熱交換器から前記配管に流れる媒体の流量を調整する第1膨張弁と、前記第2室外熱交換器から前記配管に流れる媒体の流量を調整する第2膨張弁と、を備え、
前記制御部は、前記第1室外熱交換器と、前記第2室外熱交換器とを同時に除霜する第1除霜手段と、前記第2室外熱交換器を先行して除霜を開始し、前記第2室外熱交換器の除霜開始から遅れて前記第1室外熱交換器を除霜する第2除霜手段と、を備え
前記制御部は、前記第1膨張弁の開度、及び前記第2膨張弁の開度を調整することにより、前記第1室外熱交換器、及び前記第2室外熱交換器の除霜開始のタイミングをずらし、
前記制御部は、前記第2除霜手段により除霜を行う場合、前記第2室外熱交換器を除霜する間、前記第1膨張弁を全開開度よりも小さい所定開度以下となる開度にし、前記第1室外熱交換器を除霜する間、前記第2膨張弁を全開開度よりも小さい所定開度以下となる開度にする、
空気調和機。
【請求項2】
外気の温度を取得する外気温度センサを備え、
前記制御部は、外気温度センサが取得する温度に基づいて、前記第1除霜手段と、前記第2除霜手段とを切り替える、
請求項に記載の空気調和機。
【請求項3】
外気の温度を取得する外気温度センサを備え、
前記制御部は、前記外気温度センサが取得する温度に基づいて、前記第1膨張弁の開度、及び前記第2膨張弁の開度を、前記所定開度以下で可変させる、
請求項に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1室外熱交換器、及び前記第2室外熱交換器が除霜状態にない場合、前記外気温度センサが取得する温度が一定条件を満たすときは、前記第1膨張弁、及び前記第2膨張弁を全開開度以下の開度で可変させる、
請求項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第1室外熱交換器の温度を取得する第1室外熱交換器温度センサと、
前記第1膨張弁から前記配管へ流れる媒体の温度を取得する第1媒体温度センサと、
前記第2室外熱交換器の温度を取得する第2室外熱交換器温度センサと、
前記第2膨張弁から前記配管へ流れる媒体の温度を取得する第2媒体温度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記第1室外熱交換器温度センサが取得する温度、及び前記第1媒体温度センサが取得する温度に基づいて、前記第1室外熱交換器の媒体溜まり量を推定する第1推定手段と、
前記第2室外熱交換器温度センサが取得する温度、及び前記第2媒体温度センサが取得する温度に基づいて、前記第2室外熱交換器の媒体溜まり量を推定する第2推定手段と、
を備え、
前記第1推定手段で推定した前記媒体溜まり量、及び前記第2推定手段で推定した前記媒体溜まり量に基づいて、前記除霜をしていない前記第1室外熱交換器から前記配管へ流れる媒体の流量を調整する前記第1膨張弁の開度、及び記第2室外熱交換器から前記配管へ流れる媒体の流量を調整する前記第2膨張弁の開度を調整する、
請求項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
室外熱交換器を2つ備える空気調和機において、暖房運転時に除霜制御を行う場合、2つの室外熱交換器を同時に除霜する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-35981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術によると、外気温が非常に低く、室外機の比較的低温になりやすい部分、例えば、室外機の下側部分に残留しているドレン水が氷結することがある。このような状態が生じた場合に、暖房運転を長時間継続すると、ドレン水の氷結が進展し、次回の除霜運転を行っても、氷結状態が解消しない事態が生じ得る。さらに、残留した氷によって新しく発生したドレン水の排出が妨げられ、霜受け皿(底板)へのドレン水残留量が増大し、これに伴って、さらにドレン水が氷結しやすくなるという悪循環が生じる。
実施形態は、ドレン水の氷結を抑制することができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によると、室内ユニットと、室外ユニットとが配管により接続され、前記室内ユニットが設置された空間の温度を調和する空気調和機は、前記室内ユニット、及び前記室外ユニットを制御する制御部を備える。前記室外ユニットは、前記配管から流入する媒体の温度の熱を外気と交換する第1室外熱交換器と、前記配管から流入する媒体の温度の熱を外気と交換し、前記第1室外熱交換器の下側に設けられる第2室外熱交換器と、前記第1室外熱交換器から前記配管に流れる媒体の流量を調整する第1膨張弁と、前記第2室外熱交換器から前記配管に流れる媒体の流量を調整する第2膨張弁と、を備える。前記制御部は、前記第1室外熱交換器と、前記第2室外熱交換器とを同時に除霜する第1除霜手段と、前記第2室外熱交換器を先行して除霜を開始し、前記第2室外熱交換器の除霜開始から遅れて前記第1室外熱交換器を除霜する第2除霜手段とを備える。前記制御部は、前記第1膨張弁の開度、及び前記第2膨張弁の開度を調整することにより、前記第1室外熱交換器、及び前記第2室外熱交換器の除霜開始のタイミングをずらす。前記制御部は、前記第2除霜手段により除霜を行う場合、前記第2室外熱交換器を除霜する間、前記第1膨張弁を全開開度よりも小さい所定開度以下となる開度にし、前記第1室外熱交換器を除霜する間、前記第2膨張弁を全開開度よりも小さい所定開度以下となる開度にする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、空気調和機の構成の一例を示す図である。
図2図2は、暖房運転中の除霜運転の制御を示すタイミングチャートを示す図である。
図3図3は、空気調和機の構成の一例を示す図である。
図4図4は、外気温度センサが検出する温度に対する膨張弁の開度との関係の一例を示す図である。
図5図5は、除霜してない室外熱交換器の膨張弁を閉止した場合の一例を示す図である。
図6図6は、除霜していない室外熱交換器の膨張弁を開く場合の一例を示す図である。
図7図7は、空気調和機の構成の一例を示す図である。
図8図8は、外気温度センサが検出する温度に対する膨張弁の開度との関係の一例を示す図である。
図9図9は、室外熱交換器の除霜する間の室外熱交換器への冷媒溜まり量を説明するための図である。
図10図10は、冷媒溜まり量による膨張弁の開度の補正を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、空気調和機1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室外熱交換器(第1室外熱交換器)11、室外熱交換器11の下側に設けられ、かつ、室外熱交換器11より熱交換能力が小さい室外熱交換器(第2室外熱交換器)12、圧縮機13、四方弁14、及びアキュムレータ15を有する室外ユニット10と、複数の室内ユニット21,22,23と、室外ユニット10と、複数の室内ユニット21,22,23との間を接続する配管31,32,33,34と、室外ユニット10、及び複数の室内ユニット21、22、23を制御する制御部100と、を備えている。制御部100は、室外ユニット10に設けられている場合で説明するが、室外ユニット10とは別に設けられていてもよい。
【0009】
室外熱交換器11,12は、例えば、フィンチューブ式の室外熱交換器である。また、室外熱交換器11に対向するように、室外ファン16が配置されている。例えば、室外ファン16は軸流ファンである。圧縮機13は、公知のインバータ制御により運転周波数を変更することができる。圧縮機13の吸込口13aには、比較的小型の気液分離器であるサクションカップ17が設けられている。四方弁14及びアキュムレータ15としては、公知の構成のものが用いられる。
【0010】
室外ユニット10と、複数の室内ユニット21,22,23とは、配管31,32,33,34により接続されている。より詳細には、室外熱交換器11,12の一端は配管31と接続され、複数の室内ユニット21,22,23の各一端は配管32と接続され、配管31と配管32とは、バルブV11を介して接続されている。また、室外熱交換器11,12の他端は配管33と接続され、複数の室内ユニット21,22,23の各他端は配管34と接続され、配管33と配管34とは、バルブV12を介して接続されている。配管31,32,33,34には、媒体として冷媒が流れるようになっている。なお、配管33の流路には、圧縮機13、四方弁14、アキュムレータ15、及びサクションカップ17が設けられている。
【0011】
このように構成された空気調和機1は、暖房、又は、冷房することにより、室内ユニット21,22,23が設置された空間の温度が目標温度となるように調整することが可能になる。
【0012】
また、室外ユニット10において、室外熱交換器11と配管31との間には、膨張弁V1が設けられており、室外熱交換器12と配管31との間には、膨張弁V2が設けられている。膨張弁V1,V2は、それぞれ、室外熱交換器11,12から配管に流れる冷媒(媒体)の流量を調整する。この膨張弁V1,V2の開度は、制御部100の指示に基づいて、決定される。つまり、制御部100は、膨張弁V1,V2を調整することが可能に構成されている。
【0013】
さらに、室外熱交換器11には、室外熱交換器11の温度を検出する温度センサT1が設けられている。また、室外熱交換器12には、室外熱交換器12の温度を検出する温度センサT2が設けられている。これら温度センサT1,T2は、それぞれ、室外熱交換器11,12から配管31に冷媒が流れる配管において、室外熱交換器11,12と、膨張弁V1,V2の間に設けられる。この検出した温度は、制御部100に送信される。
【0014】
制御部100は、図示はしない演算回路、メモリ等を有している。メモリには、制御プログラム、各種データが記憶されている。制御部100は、メモリに記憶された制御プログラムを実現することにより、暖房運転中に室外熱交換器11,12の除霜運転を行うことが可能になっている。本実施形態では、制御部100は、暖房運転中の除霜運転として、四方弁14の切り替えが生じた際に、第1除霜手段、第2除霜手段を実行する。
【0015】
第1除霜手段は、室外熱交換器11と、室外熱交換器12とを同時に除霜する手段である。第2除霜手段は、室外熱交換器12を先行して除霜を開始し、室外熱交換器12の除霜開始から遅れて室外熱交換器11を除霜する手段である。
【0016】
第2除霜手段は、より詳細には、空間調和機1の暖房運転中、除霜制御により、四方弁14の切り替えが生じた際に、室外熱交換器11と、室外熱交換器12とを同時に除霜する第1除霜手段の数回に一回、膨張弁V1の開度を全開制御の0~50%程度に絞り、膨張弁V2の開度を全開制御の50%から100%にすることにより、室外熱交換器12の除霜を終了させ、その後、膨張弁V2の開度を維持した状態で、膨張弁V1の開度を全開制御の50%から100%にし、室外熱交換器11の除霜をする。これにより、室外熱交換器11のドレン水を除霜の終了した室外熱交換器12で室外熱交換器11を温めることができるため、氷柱成長を抑制することが可能になる。
【0017】
図2は、暖房運転中の除霜運転の制御を示すタイミングチャートを示す図である。
図2に示すように、除霜運転D1(第1除霜手段)では、除霜開始時に膨張弁V1、膨張弁V2が共に全開で除霜運転を行うことにより、温度センサT1、温度センサT2の温度が上昇していく。各室外熱交換器11,12で除霜終了閾値を所定時間満たした場合、除霜運転が終了し、各膨張弁V1,V2が所定微小開度まで閉じていく。
【0018】
これに対して、除霜運転D2(第2除霜手段)では、除霜開始時に、膨張弁V2のみ全開にし、(膨張弁V1は、0~20%)、除霜運転を行うことにより、温度センサT2の温度が上昇する。室外熱交換器12が除霜終了閾値を所定時間満たし、室外熱交換器12の除霜が終了した際、膨張弁V1が全開になり、室外熱交換器11の除霜が開始し、除霜運転を行うことにより、温度センサT1の温度が上昇していく。室外熱交換器11が除霜終了閾値を所定時間満たし、室外熱交換器11の除霜運転が終了した際に、全除霜終了し、各膨張弁V1,V12が所定微小開度まで閉じていく。ドレン水の温度は、図2の下側に示すように、除霜運転D1の場合より、除霜運転D2の方が高くなる。
【0019】
以上のように構成された空気調和機1によると、室外熱交換器12を先行して除霜を開始し、室外熱交換器12の除霜開始から遅れて室外熱交換器11を除霜することができる。このため、空気調和機1は、室外熱交換器11のドレン水を除霜の終了した室外熱交換器12で温めることができるため、氷結(氷柱)の成長を抑制することが可能になる。
【0020】
また、空気調和機1は、膨張弁V1の開度、膨張弁V2の開度を調整することにより、室外熱交換器11、及び室外熱交換器12の除霜開始のタイミングをずらすことが可能になっている。このため、空気調和機1は、追加のアクチュエータ、回路を必要とせず、安価に氷柱成長を抑制することが可能になる。
【0021】
さらに、空気調和機1は、外気温を検出する外気温度センサを設け、この外気温度センサが検出した温度に応じて、第1除霜手段と、第2除霜手段とを切り替えるようにしてもよい。例えば、外気温度が氷結(氷柱)の成長しない温度である場合は、制御部100が第1除霜手段のみを用いて室外熱交換器11,12を同時に除霜することにより、空気調和機1は、除霜時間を短くすることが可能になる。
【0022】
(第2実施形態)
上記第2除霜手段では、下段側の室外熱交換器12を先に除霜することで除霜運転時の凝縮温度及び室外熱交換器温度が高い状態で排水可能となり、さらに、上段側の室外熱交換器11の除霜は下段側の室外熱交換器温度12が上昇した状態で除霜を行うため排水温度上昇、すなわち氷柱の抑制を行うことができる。しかし、除霜していない側の室外熱交換器11の膨張弁V1、又は室外熱交換器12の膨張弁V2を閉止すると、室外熱交換器11,12内に冷媒が溜まり、配管33内の密度が低下し、冷媒循環量低下を引き起こす可能性がある。本第2実施形態では、この事態を回避する空気調和機1について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、これらの構成については詳細な説明は省略する。
【0023】
図3は、空気調和機1Aの構成の一例を示す図である。
既述の第1実施形態の空気調和機1と異なるのは、外気の温度を検出する外気温度センサT3が設けられている点である。外気温度センサT3が検出した温度は、制御部100に送信される。したがって、制御部100は、外気温度を検出することができるように構成されている。
【0024】
次に、制御部100が実行する除霜制御について説明する。
制御部100は、室外熱交換器12を除霜する際、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1の開度を、また、室外熱交換器11を除霜する際、除霜していない室外熱交換器12に設置された膨張弁V2の開度を閉止するのではなく、膨張弁V1又は膨張弁V2を所定開度開くことにより、除霜していない室外熱交換器11又は室外熱交換器12にも微量に冷媒を流すように制御する。これにより、空気調和機1は、配管圧力及び圧縮機13の吸込圧力低下による圧縮機13の回転低下を回避することができ、除霜運転時の排水温度低下を抑制することが可能になる。
【0025】
さらに、制御部100は、上記除霜制御の際、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1、又は、室外熱交換器11の膨張弁V2の開度を所定開度開くが、外気温度によって除霜中に室外熱交換器11又は室外熱交換器12内にたまる冷媒量の程度が異なる。このため、除霜運転する際、制御部100は、外気温度センサT3で検出した温度に応じて、膨張弁V1又は膨張弁V2の所定開度を切り替える制御を実行する。
【0026】
図4は、外気温度センサT3が検出する温度(外気温)に対する膨張弁V1,V2の開度との関係の一例を示す図である。図4に示すように、膨張弁V1,V2の開度は、全開開度よりも小さい所定開度、例えば全開開度の70%を上限とし、外気温が大きくなるに従って、膨張弁V1,V2の開度が下がるようになる。このように、制御部100は、外気温度センサT3が検出する温度に応じて、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1、又は、室外熱交換器12の膨張弁V2の開度を所定開度開くように制御する。
【0027】
次に、図5図6を用いて空気調和機1Aの作用について説明する。図5は、除霜してない室外熱交換器の膨張弁を閉止した場合の一例を示す図であり、図6は、除霜していない室外熱交換器の膨張弁を開く場合の一例を示す図である。
【0028】
まず、図5について説明する。図5において、暖房運転、室外熱交換器12の除霜運転、室外熱交換器11の除霜運転、暖房運転という流れで除霜運転(第2除霜手段)を行う一例を示している。この場合、図5(a)に示すように、室外熱交換器12が除霜運転する場合、膨張弁V2の開度は全開となり、膨張弁V1は閉止する。その後、室外熱交換器11が除霜運転する場合、膨張弁V1の開度が全開となり、膨張弁V2は閉止する。これに対応して、図5(b)に示すように、室外熱交換器12の除霜運転時は、室外熱交換器11のSC(過冷却)量は増大し、除霜運転の停止と共に小さくなる。そして、室外熱交換器11の除霜運転時は、室外熱交換器12のSC(過冷却)量は増大し、除霜運転の停止と共に小さくなる。このような除霜運転を行う際には、図5(c)に示すように、圧縮機13の吸入圧力がレリース点より低下すると共に、図5(d)に示すように、圧縮機13の回転数も低下する。さらに、除霜運転時に、図5(e)に示すように、温度センサT1,T2も上昇しない。このように、除霜していない室外熱交換器の過冷却量は増大するのに、当該室外熱交換器の温度が上昇しないため、氷結(氷柱)が生じやすくなることがわかる。
【0029】
次に、図6について説明する。図6において、暖房運転、室外熱交換器12の除霜運転、室外熱交換器11の除霜運転、暖房運転という流れで除霜運転(第2除霜手段)を行う一例を示しているのは、図5の場合と同一である。図6(a)が示すように、室外熱交換器12が除霜運転する場合、膨張弁V2の開度は全開となり、膨張弁V1の開度は開度αである。その後、室外熱交換器11が除霜運転する場合、膨張弁V1の開度が全開となり、膨張弁V2の開度は開度βである。このように、除霜していない室外熱交換器の膨張弁の開度を若干開き、冷媒が流れるようになっている。これに対応して、図6(b)に示すように、除霜していない室外熱交換器のSC量が、図5(b)の場合と比較して小さくなる。さらに、図6(c)、及び図6(d)が示すように、図5(c)、及び図5(d)の場合より、圧縮機13の吸入圧力、及び回転数の低下が抑制されている。さらに、除霜運転時に、図6(e)に示すように、温度センサT1,T2も、図5(e)の場合と比較して上昇する。なお、図6(e)の破線は、図5(e)の温度グラフを示している。
【0030】
以上のように、空気調和機1は、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1、又は、室外熱交換器1の膨張弁V2の開度を外気温度センサT3で検出した温度や運転状態によって適正化することができる。このため、空気調和機1は、除霜能力及び排水温度低下を抑制することが可能になる。
【0031】
また、外気温度センサT3で検出した温度に応じて、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1、又は、室外熱交換器1の膨張弁V2の開度を設定しても、除霜中に室外熱交換器内11,12に冷媒が溜まり圧縮機13の吸い込み圧力が低下し、圧縮機13の回転数が低下する場合がある。制御部100は、このような運転状態を検出した場合、さらに、膨張弁V1,V2の開の開度を当該設定した所定開度から開度をアップさせるようにしてもよい。これにより、空気調和機1Aは、さらに、冷媒循環量の低下による除霜能力ダウン、及び除霜時の排水温度低下を抑制することが可能になる。
【0032】
(第3実施形態)
外気温度センサT3で検出した温度に応じて膨張弁V1,V2の開度を設定しても除霜運転中に室外熱交換器内に液冷媒がたまることを想定される。このため、本実施形態では、除霜中の室外熱交換器11,12内に生じる冷媒溜まりを推定し、推定した冷媒溜まりに応じた処理を追加した点が上記第2実施形態と異なっている。したがって、当該処理に関して詳細に説明する。なお、上記第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、これらの構成について詳細な説明は省略する。
【0033】
図7は、空気調和機1Bの構成の一例を示す図である。
既述の第2実施形態の空気調和機1と異なるのは、膨張弁V1から配管31に流れる冷媒の温度を検出する配管温度センサT5、及び膨張弁V2から配管31に流れる冷媒の温度を検出する配管温度センサT6が設けられている点である。配管温度センサT5,T6が検出した温度は、制御部100に送信される。したがって、制御部100は、膨張弁V1,V2から配管31に流れる冷媒の温度を検出することができるように構成されている。
【0034】
図8は、外気温度センサT3が検出する温度(外気温)に対する膨張弁V1,V2の開度との関係の一例を示す図である。図8に示すように、膨張弁V1,V2の開度は、全開開度よりも小さい所定開度、例えば全開開度の70%を上限とし、外気温が大きくなるに従って、膨張弁V1,V2の開度が段階的に下がるようになる。このように、制御部100は、外気温度センサT3が検出する温度に応じて、除霜していない室外熱交換器11の膨張弁V1、又は、室外熱交換器1の膨張弁V2の開度を所定開度開くように制御する。膨張弁V1,V2の開度を段階的に制御することにより、図4のように線形的に制御する場合と比較して、制御構成を簡易にすることが可能になる。
【0035】
制御部100は、温度センサT1(第1室外熱交換器温度センサ)が取得する温度、及び配管温度センサT5(第1冷媒温度センサ)が取得する温度に基づいて、室外熱交換器11の冷媒溜まり量を推定する第1推定手段と、温度センサT2(第2室外熱交換器温度センサ)が取得する温度、及び配管温度センサT6(第2冷媒温度センサ)が取得する温度に基づいて、室外熱交換器12の冷媒溜まり量を推定する第2推定手段と、を備える。さらに、制御部100は、第1推定手段で推定した冷媒溜まり量、及び第2推定手段で推定した冷媒溜まり量に基づいて、膨張弁V1、又は膨張弁V2の開度を調整する。このように、制御部100は、室外熱交換器内の冷媒溜まり量を推定することで、除霜運転していない側の室外熱交換器に設置された膨張弁V1又は膨張弁V2の開度の補正が可能になる。
【0036】
図9は、室外熱交換器12の除霜する間の室外熱交換器11への冷媒溜まり量を説明するための図である。図9の左側に示すように、室外熱交換器11の冷媒溜まり量が少ない場合は、配管温度-室外熱交換器温度=小となる。一方、室外熱交換器11の冷媒溜まり量が大きい場合は、配管温度-室外熱交換器温度=大となる。このように、温度センサT1と配管温度センサT5の温度差、温度センサT2と配管温度センサT6との温度差に基づいて、制御部100は、既述のように冷媒溜まり量を推定することが可能になる。
【0037】
図10は、冷媒溜まり量による膨張弁の開度の補正を説明するための図である。縦軸は、温度センサT1と配管温度センサT5の温度差、温度センサT2と配管温度センサT6との温度差であり、温度差が5℃、及び2℃の場合を示している。
【0038】
図10に示すように、除霜していない室外熱交換器に冷媒が多量に液溜まりし、圧縮機13の吸込圧力が所定圧力+α、例えば1.5kg/cm(圧縮機回転数の低圧レリース制御点+0.3)以下を検出中、温度センサT1と配管温度センサT5の温度差(又は、温度センサT2と配管温度センサT6との温度差)が5℃以上となった場合は、制御部100は、温度差が5℃未満になるまで膨張弁V1、又は膨張弁V2の開度を開方向に補正する。また、圧縮機13の吸込圧力が所定圧力+β、例えば1.5kg/cmを超えていることを検出中に温度センサT1と配管温度センサT5の温度差(又は、温度センサT2と配管温度センサT6との温度差)が2℃未満となった場合は、制御部100は、温度差が2℃以上となるまで膨張弁V1、又は膨張弁V2の開度を閉方向に補正する。これにより、空気調和機1は、除霜能力ダウンを回避することが可能になる。
【0039】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1,1A,1B…空気調和機、10…室外ユニット、11,12…室外熱交換器、13…圧縮機、14…四方弁、100…制御部、V1,V2…膨張弁、T1,T2…温度センサ、T3…外気温度センサ、T5,T6…配管温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10