(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】COVID-19に対する抗原特異的免疫療法、融合タンパク質、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20240729BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240729BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240729BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240729BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240729BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240729BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240729BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240729BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240729BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240729BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240729BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240729BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240729BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C12P21/02 Z
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
A61K39/215
A61P37/04
A61P31/14
A61K39/39
C07K16/00
C07K14/165
(21)【出願番号】P 2022561619
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 US2021026577
(87)【国際公開番号】W WO2021207599
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519206793
【氏名又は名称】アクストン バイオサイエンシズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AKSTON BIOSCIENCES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100 Cummings Center,Beverly,Massachusetts 01915(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トッド、シー.ザイオン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、エム.ランカスター
(72)【発明者】
【氏名】ティライナヤカム、サティアシーラン
(72)【発明者】
【氏名】カキン、フアン
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522563(JP,A)
【文献】TAI, Wanbo et al.,Cellular & Molecular Immunology,2020年03月19日,Vol. 17,pp. 613-620,DOI: 10.1038/s41423-020-0400-4
【文献】ZHANG, Jinyong et al.,Vaccines,2020年03月29日,Vol. 8, Article No. 153,pp. 1-12,DOI: 10.3390/vaccines8020153
【文献】HE, Yuxian et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications,2004年12月12日,Vol. 324, No. 2,pp. 773-781,DOI: 10.1016/j.bbrc.2004.09.106
【文献】DU, Lanying et al.,Nature Reviews Microbiology,2009年02月09日,Vol. 7,pp. 226-236,DOI: 10.1038/nrmicro2090
【文献】CHAN, Jasper Fuk-Woo et al.,Emerging Microbes & Infections,2020年01月28日,Vol. 9, No. 1,pp. 221-236,DOI: 10.1080/22221751.2020.1719902
【文献】SAIF, Linda J.,Allergy & Immunology,2020年03月24日,pp. 1-7,DOI: 10.33590/emj/200324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
C07K 1/00-19/00
A61K 35/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス受容体結合ドメインおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、前記ウイルス受容体結合ドメインおよび前記Fc断片が、ペプチドリンカーにより連結され、前記融合タンパク質が、以下の配列:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSGGGSGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号19)を含む、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質がホモ二量体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記Fc断片がグリコシル化されたものである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項5】
アジュバントをさらに含む、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが油中水エマルションである、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記融合タンパク質が前記アジュバントで乳化されたものである、請求項5または6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
対象において抗原に対する抗体産生を増加させるための、または、対象においてウイルス感染に対する免疫反応を誘導するための、予防用ワクチンまたは治療用ワクチンであって、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効量含む、予防用ワクチンまたは治療用ワクチン。
【請求項9】
前記ワクチンの投与前に、前記対象が前記抗原に対して測定可能な抗体価を有する、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記融合ワクチンの投与前に、前記対象が抗体未感作である、請求項8に記載のワクチン。
【請求項11】
注射製剤の形態である、請求項8~10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
皮下投与または筋肉内投与に適した製剤である、請求項8~11
のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項13】
アジュバントをさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質の製造方法であって、HEK293細胞またはCHO細胞に前記融合タンパク質をコードする核酸を一過性にトランスフェクトすることを含み、前記トランスフェクトされたHEK293細胞またはCHO細胞が前記融合タンパク質を発現する、またはCHO細胞に前記融合タンパク質をコードする核酸を安定的にトランスフェクトすることを含み、前記組み換えCHO細胞が前記融合タンパク質を発現し、かつ、精製された融合タンパク質または単離された融合タンパク質の収量が、前記トランスフェクトされたHEK293細胞またはCHO細胞において20mg/Lより多い、方法。
【請求項15】
請求項1~3
のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸でトランスフェクト
されている、細胞。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、cDNA。
【請求項17】
SARS-CoV-2ウイルス感染の治療および/または予防における使用のための医薬組成物であって、配列番号19の配列を含む融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項18】
過去にSARS-CoV-2感染に対して免疫化されている患者または過去にSARS-CoV-2に感染した患者の抗SARS-CoV-2ウイルス抗体価を上昇させるためのブースターワクチンであって、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効量含む、ブースターワクチン。
【請求項19】
薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項18に記載のブースターワクチン。
【請求項20】
前記薬学的に許容される担体が、水、生理食塩水、エタノール、塩、ポリオール植物油、オレイン酸エチル、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載のブースターワクチン。
【請求項21】
前記融合タンパク質と前記薬学的に許容可能な担体とから本質的になる、請求項19または20に記載のブースターワクチン。
【請求項22】
前記ブースターワクチンの投与前に、前記患者がSARS-CoV-2の抗体陽性である、請求項18~21のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項23】
前記ブースターワクチンの投与前に、前記患者が最初の測定可能な抗SARS-CoV-2抗体を有し、前記ブースターワクチンの投与後に前記患者において測定可能な抗SARS-CoV-2抗体が増加する、請求項18~22のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項24】
前記患者がSARS-CoV-2感染から回復した患者である、請求項18~23のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項25】
抗体増幅治療(AAT)として使用するためのブースターワクチンであって、回復期血清治療のための血清提供の前に前記患者の抗SARS-CoV-2抗体価を上昇させ、前記患者から抽出される血清の抗SARS-CoV-2抗体価を上昇させる、請求項18~24のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項26】
過去にSARS-CoV-2感染に対して免疫化されている前記患者が、その免疫以降に減衰した測定可能な抗SARS-CoV-2抗体を有する、請求項18~25のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項27】
前記患者の抗SARS-CoV-2抗体価を上昇させた後、前記患者をSARS-CoV-2ウイルスの感染および/または感染に関連した重篤な症状からの保護に使用するための、請求項18~26のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項28】
皮下投与または筋肉内投与に適した注射製剤の形態である、請求項18~27のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項29】
単位剤形である、
請求項18~28のいずれか一項に記載のブースターワクチン。
【請求項30】
過去にSARS-CoV-2感染に対して免疫化されている患者または過去にSARS-CoV-2感染に罹患した患者の抗SARS-CoV-2ウイルス抗体価を増加させるためのブースターワクチンキットであって、前記キットが、請求項18~28のいずれか一項に記載のブースターワクチンの単位剤形、前記ブースターワクチンを患者に投与するための投与用シリンジ、および、前記ブースターワクチンの投与に関する説明書を含む、ブースターワクチンキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,497号明細書、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,503号明細書、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,509号明細書、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,515号明細書、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,574号明細書、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,579号明細書、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,582号明細書、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,584号明細書、2020年7月7日に出願された米国仮特許出願第63/048,939号明細書、2020年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/068,775号明細書、2020年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/068,805号明細書、2020年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/068,843号明細書、2020年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/068,894号明細書、および2020年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/068,911号明細書の優先権の利益を主張するものである。それら出願はすべて「COVID-19に対する抗原特異的免疫療法、融合タンパク質、およびその使用方法(ANTIGEN SPECIFIC IMMUNOTHERAPY FOR COVID-19 FUSION PROTEINS AND METHODS OF USE)」という発明の名称であり、各々がその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、コンピューター読み取り可能なフォーマット(CRF)の配列表を含む。当該配列表は2021年4月9日に作成され、「SequenceListing_044」というタイトルのASCIIフォーマットのテキストファイルであり、サイズは83KBである。CRFの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本技術は、ヒトFc断片に結合された、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(SARS-CoV-2-RBD)を含むSARS-CoV-2表面糖タンパク質の短縮型またはそのアナログを含む融合タンパク質、および2019 Novel Coronavirus(COVID-19)に関連したその使用に関するものである。
【背景技術】
【0004】
以下の背景技術に関する記載は、本発明技術の理解の補助として単に提供されているにすぎず、本発明技術に対する先行技術を記述する、または先行技術を構成すると認識されるものではない。
【0005】
Fc融合タンパク質
Fc融合タンパク質は、種特異的なイムノグロビンFcドメインから構成され、当該Fcドメインは、例えば治療剤としての可能性があるタンパク質またはペプチドなどの別のペプチドに結合される。本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」および「Fc融合タンパク質」という用語は、例えば異なる源(例えば異なるタンパク質、ポリペプチド、細胞など)に由来する複数の部分を含むタンパク質を指し、それら複数の部分はペプチド結合を介して共有結合される。Fc融合タンパク質は、好ましくは、(i)各部分をコードする遺伝子を単一核酸分子へと連結することにより、および(ii)当該核酸分子がコードするタンパク質を宿主細胞(例えば、HEK細胞またはCHO細胞)で発現させることにより、共有結合される。治療用タンパク質とFc断片を別々に合成して、その後、化学的にコンジュゲートする方法よりも、すべて組み換え合成による方法が好ましい。化学的コンジュゲートの工程、そしてそれに続く精製プロセスがあると、製造上の煩雑さが増し生産歩留まりが低下しコストが増大する。
【0006】
「Fc断片」、「Fc領域」、「Fcドメイン」、または「Fcポリペプチド」という用語は、本明細書において、免疫グロブリンの重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc断片、Fc領域、Fcドメイン、またはFcポリペプチドは、天然配列のFc領域であってもよく、またはバリアント/変異型のFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、一般的に、重鎖のヒンジ領域の一部またはすべて、重鎖のCH2領域、および重鎖のCH3領域を含む。Fc断片(例えば、イヌ科のFc断片またはヒトのFc断片)のヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインを重鎖のCH2ドメインに連結するアミノ酸配列を含み、および1つ以上のシステインを含んで、1つ以上の重鎖間ジスルフィド結合を形成する。それによって、同一であるが、別個の2つのFc融合タンパク質単量体からFc融合タンパク質のホモ二量体が形成される。ヒンジ領域は、天然のアミノ酸配列のすべて、または一部を含んでもよく、または非天然のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0007】
Fcドメインが存在することによって、胎児性Fc受容体(FcRn)との相互作用が発生し、それに加えて分子サイズが大きくなることでFc融合タンパク質の腎クリアランスも遅くなり、血漿半減期が増加する。その結果、当該分子のインビボリサイクルが発生して、結合されたペプチドの活性が長期化し、Fc融合タンパク質分子の可溶性と安定性が改善される。また、Fcドメインによって、Fc融合タンパク質と、免疫細胞上のFc受容体が相互作用することが可能になる。例として、治療用タンパク質または治療用ペプチドは、リンカーを介してイムノグロビンFcドメインに結合される。治療用タンパク質または治療用ペプチド、およびリンカーは、抗体の可変領域を効率的に置き換えながら、Fc領域はそのままの状態で維持する。
【0008】
Fc受容体(FcR)とは、抗体のFc断片またはFc領域に結合する受容体を指す。ある例では、FcRは、イヌ科FcRまたはヒトFcRの天然配列であり、そしてFcRは、IgG抗体のFc断片またはFc領域に結合するFcR(ガンマ受容体)であり、限定されないが、Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIa、Fc(ガンマ)受容体IIb、およびFc(ガンマ)受容体IIIサブクラスの受容体が挙げられ、これら受容体のアレルバリアントや、代替的スプライシング型も含まれる。「FcR」には、胎児性受容体のFcRnも含まれる。FcRnによって、母のIgG分子が胎児へと移行する。またFcRnによって、抗体およびFc融合タンパク質のインビボ排泄半減期が延長される。ある例では、インビトロでヒト起源のFcRが使用され(例えば、アッセイで使用され)、任意の哺乳動物起源のFc断片を含むFc融合タンパク質の結合が測定されて、FcRの結合性能が評価される。当業者であれば、1つの種に由来する哺乳動物FcR(例えば、ヒト起源のFcR)が、第二の種に由来するFc断片(例えば、イヌ科起源のFcR)にインビトロで結合する能力を有する場合があることを理解するであろう。
【発明の概要】
【0009】
本明細書において、融合タンパク質が記載され、各融合タンパク質は、それぞれのウイルス受容体結合ドメインとFc断片を含み、この場合において当該ウイルス受容体結合ドメインとFc断片は、例えばペプチドリンカーなどの任意選択的なリンカーによって連結される。1つ以上の実施形態では、ウイルス受容体結合ドメインは、配列番号1を含むSARS-CoV-2表面糖タンパク質のRBD断片、またはその機能的断片、アナログもしくはバリアント/変異型を含む。1つ以上の実施形態では、ウイルス受容体結合ドメインは、配列番号2または配列番号8を含むSP/RBD断片もしくはRBD断片、またはその機能的断片、アナログもしくはバリアント/変異型を含む。1つ以上の実施形態では、ウイルス受容体結合ドメインは、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、または配列番号15の配列またはその機能的断片を含む。1つ以上の実施形態では、Fc断片は、配列番号6、配列番号7もしくは配列番号33の配列または機能的断片を含む。1つ以上の実施形態では、リンカーは、もし存在する場合には、以下の配列を含む:配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号27。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11、配列番号12、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21、またはそれらの機能的断片の配列を含む(それらから本質的になる、またはそれらからなる)。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質は、ホモ二量体である。1つ以上の実施形態では、Fc断片は、グリコシル化される。
【0010】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質と、薬学的に許容可能な担体とを含む、またはそれらからなる免疫原性組成物も記載される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質は、担体中に分散される。1つ以上の実施形態では、組成物は、アジュバントをさらに含む。1つ以上の実施形態では、アジュバントは、Montanide(商標)ISA-720である。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質は、アジュバントと乳化される。1つ以上の実施形態では、乳化物質は、投与前に現地で調製される。1つ以上の実施形態では、調製された乳化物質は、冷蔵(4℃)または室温で少なくとも8時間、好ましくは最大24時間安定である。1つ以上の実施形態では、組成物は、注射製剤である。1つ以上の実施形態では、組成物は、皮下投与用に適合される。1つ以上の実施形態では、組成物は、予防ワクチン用に適合される。1つ以上の実施形態では、組成物は、治療ワクチン用に適合される。
【0011】
本明細書において、対象において、抗原に対する抗体産生を増加させるための様々な方法も提供される。方法は概して、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物の治療有効量を対象に投与することを含む。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前、対象は、抗原に対して、測定可能な抗体価を有する。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前、対象は、抗体未感作である。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、注射を介して投与される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、皮下投与され、または筋肉内投与される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、単位剤形として提供される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、アジュバントと同時投与される。1つ以上の実施形態では、方法は、投与用に前記融合タンパク質または免疫原性組成物を調製することをさらに含み、当該調製は、投与前に、融合タンパク質または免疫原性組成物とアジュバントを予め混合することを含む。1つ以上の実施形態では、予め混合することは、アジュバントと融合タンパク質を乳化して、エマルションを得ること、および当該エマルションを対象に投与することを含む。1つ以上の実施形態では、調製された乳化物質は、調整後、冷蔵(4℃)または室温で少なくとも8時間、好ましくは最大24時間安定である。
【0012】
本明細書において、対象において、ウイルス感染、好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染に対する免疫反応を誘導する方法も提供される。方法は概して、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物の治療有効量を対象に投与することを含む。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前、対象は、ウイルス感染に対して、測定可能な抗体価を有する。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前、対象は、抗体未感作である。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、注射を介して投与される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、皮下投与され、または筋肉内投与される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、単位剤形として提供される。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質または免疫原性組成物は、アジュバントと同時投与される。1つ以上の実施形態では、方法は、投与用に前記融合タンパク質または免疫原性組成物を調製することをさらに含み、当該調製は、投与前に、融合タンパク質または免疫原性組成物とアジュバントを予め混合することを含む。1つ以上の実施形態では、予め混合することは、アジュバントと融合タンパク質を乳化して、エマルションを得ること、および当該エマルションを対象に投与することを含む。1つ以上の実施形態では、調製された乳化物質は、調整後、冷蔵(4℃)または室温で少なくとも8時間、好ましくは最大24時間安定である。
【0013】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質の作製方法も記載される。当該方法は、HEK293細胞またはCHO-SE細胞に、融合タンパク質をコードする核酸を一過性にトランスフェクトすることであって、当該トランスフェクトされたHEK293細胞またはCHO-S細胞は、当該融合タンパク質を発現すること、またはCHO細胞に、当該融合タンパク質をコードする核酸を安定的にトランスフェクトすることであって、当該組み換えCHO細胞は、当該融合タンパク質を発現することを含む。1つ以上の実施形態では、融合タンパク質は細胞によって細胞培養培地内に分泌され、当該培地から融合タンパク質を精製する、または単離することをさらに含む。精製された融合タンパク質または単離された融合タンパク質の収量は、前述の発現系のいずれかにおいて、20mg/Lより多い。
【0014】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質を発現するよう操作された細胞も記載される。1つ以上の実施形態では、細胞は融合タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトされる。1つ以上の実施形態では、細胞は、HEK293細胞またはCHO細胞である。
【0015】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質をコードするcDNA分子も記載される。本開示は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質をコードするcDNAを含む発現ベクターおよび/またはDNA発現構築物にも関する。
【0016】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物は、治療に使用されてもよく、および/または医薬品として使用されてもよい。
【0017】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物は、対象において抗体産生を増加させるために使用されてもよい。
【0018】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物は、ウイルス感染、好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染の治療および/または予防に使用されてもよい。
【0019】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物は、予防用ワクチン、治療用ワクチン、および/またはブースターワクチンとして使用されてもよい。
【0020】
特定の実施形態は、ウイルス感染、好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染の治療および/または予防に使用するための、以下からなる群から選択される融合タンパク質またはそれらの医薬組成物に関する:配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20、および配列番号21。
【0021】
本明細書において、本明細書に記載されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる融合タンパク質または免疫原性組成物は、ウイルス感染の治療/および/または予防のための医薬品の製造に使用されてもよい。
【0022】
例えば、配列番号19は、ISA 720アジュバントと乳化され、免疫原性と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質(SP)に結合し、中和する抗体(Ab)の産生を誘導する能力についてBALB/cマウスで最初に評価された。SPの受容体結合ドメイン(SP/RBD)に結合すると、これらワクチンに誘導されたAbは、宿主標的タンパク質であるACE2にウイルスが結合することを防ぐ。ACE2は、肺の内皮細胞、血管およびニューロンを含む様々なタイプの細胞上に発現される。アジュバントのMontanide(商標)ISA 720中で、1μg~100μgの配列番号19を単回注射した後でさえ、マウス、NHP、およびウサギにおいて相当量の中和Abが誘導された。当該中和Abは、1)組み換えSP/RBDに結合した、2)組み換えACE2が、組み換えSP/RBDに結合することを阻害した、および3)ACE2を自然発現するVERO-E6生細胞にSARS-CoV-2ウイルスが感染することを防いだ。注目すべきは、上記の動物モデルのそれぞれで配列番号19ワクチンが中和Abを誘導するという能力である。この能力は大抵、回復期のCOVID-19対象から得られたヒト血清の中和能力と同等か、または上回っていた。このことから、Montanide(商標)ISA 720アジュバント中での配列番号19は、ヒトにおいても充分な防御を誘導するはずであるという期待が生じる。本明細書に記載されるアッセイおよび動物モデルを使用して、Montanide(商標)ISA 720アジュバント中での配列番号19の最適な用量レベルは30μg~100μgの範囲であったこと、皮下(s.c.)または筋肉内(i.m.)のいずれかでの2回投与で最大の免疫原性反応が誘導されたこと、そしてMontanide(商標)ISA 720中での100μgの配列番号19を14日間隔で3回投与しても、ウサギでのGLP毒性試験で毒性または重篤な有害事象は示されなかったことが実証された。予測されたように、Montanide(商標)ISA 720アジュバントによって、軽度で一過性の注射部位反応が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の概略図を示す。
【
図2】
図2は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ホモ二量体の概略図を示す。
【
図3】
図3は、配列番号29および配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体I結合を示す。
【
図4】
図4は、化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬について、一連の配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の8回投与で、RHIに対する抗インスリン抗体(AIA)の力価は、平均して200倍希釈を超えていたことを示す。
【
図5】
図5は、化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬について、一連の配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の8回の週1回投与でのRHIに対する抗インスリン抗体(AIA)の力価における試験0日目からの変化割合パーセントを示す。
【
図6】
図6は、実施例52のプロトコル1またはプロトコル2に従い、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で糖尿病の治療がされた8匹のクライアント犬の正規化されたAIA力価を示す。
【
図7】
図7は、治療が中断された、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で糖尿病の治療がされた1匹の犬の正規化されたAIA力価を示す。
【
図8】
図8は、HEK一過性細胞プールまたはCHO安定的細胞プールのいずれかで作製された配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で糖尿病の治療がされた後にAIAを示した犬の数に関するグラフを示す。
【
図9】
図9は、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質で糖尿病の治療がされた8匹の犬の正規化されたAIA力価を示す。
【
図10】
図10は、配列番号29または配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質で糖尿病の治療がされた後にAIAを示した犬の数に関するグラフを示す。
【
図11】
図11は、Fc(ガンマ)受容体を介したFc融合タンパク質のAPCプロセスを示す。
【
図12】
図12は、B細胞活性化の促進と、抗SARS-CoV-2 SP/RBD IgG産生を示す。
【
図13】
図13は、配列番号2(SARS-CoV-2の伸長型SP/RBD)および配列番号9(SARS-CoV-2の表面糖タンパク質の新規短縮型)の並列配列比較を示す。
【
図14】
図14は、配列番号2(SARS-CoV-2の伸長型SP/RBD)および配列番号10(SARS-CoV-2の表面糖タンパク質の新規短縮型)の並列配列比較を示す。
【
図15】
図15は、配列番号2(SARS-CoV-2の伸長型SP/RBD)および配列番号14(SARS-CoV-2の表面糖タンパク質の新規短縮型)の並列配列比較を示す。
【
図16】
図16は、配列番号2(SARS-CoV-2の伸長型SP/RBD)および配列番号15(SARS-CoV-2の表面糖タンパク質の新規短縮型)の並列配列比較を示す。
【
図17】
図17は、配列番号2(SARS-CoV-2の伸長型SP/RBD)および配列番号13(SARS-CoV-2の表面糖タンパク質の新規短縮型)の並列配列比較を示す。
【
図18】
図18は、ワクチンアジュバントの一般的な作用機序を示す。
【
図19】
図19は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIの結合に関するEC50を示す。
【
図20】
図20は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIaの結合に関するEC50を示す。
【
図21】
図21は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIbの結合に関するEC50を示す。
【
図22】
図22は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIIの結合に関するEC50を示す。
【
図23】
図23は、配列番号19およびヒトIgGのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトACE2の結合に関するEC50を示す。
【
図24】
図24は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFcRn受容体の結合に関するEC50を示す。
【
図25】
図25は、様々な用量レベルでの配列番号17のSARS-CoV-2 RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の単回投与から21日後の6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図26】
図26は、様々な用量レベルで配列番号17のSARS-CoV-2 RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を0日目および21日目に注射した後、35日目での6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図27】
図27は、配列番号17のSARS-CoV-2 RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を0日目、21日目、および42日目に注射した後、1μg、3μg、10μg、30μg、および100μgの用量レベルに対する動態反応を示す。
【
図28】
図28は、様々な用量レベルで配列番号2のSP/RBDまたは配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントを伴わずに6~8週齢のマウスに投与した後、誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。力価は、0日目で1回投与された後、14日目および21日目に測定された。
【
図29】
図29は、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgの用量レベルで含有する様々なアジュバント化製剤を0日目で1回投与してから21日目での、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図30】
図30は、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgの用量レベルで含有する様々なアジュバント化製剤を0日目および21日目で注射してから35日目での、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図31】
図31は、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgの用量レベルで含有する様々なアジュバント化製剤を0日目、21日目および42日目で注射してから56日目での、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図32】
図32は、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgの用量レベルで含有する様々なアジュバント化製剤を0日目、21日目および42日目で注射してから88日目での、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図33】
図33は、6~8週齢のマウスにおいて、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに、およびアジュバントを含まずに0日目で単回注射してから21日目で算出されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図34】
図34は、6~8週齢のマウスにおいて、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに、およびアジュバントを含まずに0日目および21日目に注射してから35日目で算出されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図35】
図35は、6~8週齢のマウスにおいて、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに、およびアジュバントを含まずに0日目、21日目および42日目に注射してから56日目で算出されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図36】
図36は、6~8週齢のマウスにおいて、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに、およびアジュバントを含まずに0日目、21日目および42日目に注射してから88日目で算出されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図37】
図37は、様々な用量レベルで配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに8~10カ月齢のマウスに投与した後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab反応と、ACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、1回投与された後に21日目で測定された。
【
図38】
図38は、様々な用量レベルで配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに8~10カ月齢のマウスに投与した後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab反応と、ACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、0日目および21日目で注射された後、35日目に測定された。
【
図39】
図39は、様々な用量レベルで配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントとともに8~10カ月齢のマウスに投与した後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab反応と、ACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、0日目、21日目および42日目で注射された後、56日目に測定された。
【
図40】
図40は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、1回投与された後14日目での抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図41】
図41は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目および21日目に注射された後35日目での抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図42】
図42は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後56日目での抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図43】
図43は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、1回注射された後14日目でのACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示す。
【
図44】
図44は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目および21日目に注射された後35日目でのACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図45】
図45は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を様々なアジュバントとともに、および伴わずに1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後56日目でのACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、ヒト回復期血清と比較された。
【
図46】
図46は、1μgまたは10μgの用量レベルのいずれかの配列番号19を0日目および21日目に投与された6~8週齢のメスのBALB/cマウスに由来する血清サンプルにおいて、21日目および35日目に測定された抗SP/RBD PRNT中和効力の誘導を示す。
【
図47】
図47は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバント(Montanide(商標)ISA 720を含む)とともに、および伴わずに10μgの用量レベルで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後、14日目、35日目および56日目で測定された抗SP/RBD IgG1力価反応を示す。
【
図48】
図48は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバント(Montanide(商標)ISA 720を含む)とともに、および伴わずに10μgの用量レベルで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後、14日目、35日目および56日目で測定された抗SP/RBD IgG2a力価反応を示す。
【
図49】
図49は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバント(Montanide(商標)ISA 720を含む)とともに、および伴わずに10μgの用量レベルで投与された6~8週齢のメスBALB/cにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後、14日目、35日目および56日目で測定された抗SP/RBD IgG2b力価反応を示す。
【
図50】
図50は、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバント(Montanide(商標)ISA 720を含む)とともに、および伴わずに10μgの用量レベルで投与された6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目、21日目および42日目に注射された後、14日目、35日目および56日目で測定された抗SP/RBD IgG3力価反応を示す。
【
図51】
図51は、1μgもしくは10μgの用量レベルの配列番号19または配列番号23(マウスIgG2a-Fcを含む)のいずれかを0日目に単回投与された、または0.5μgもしくは5μgの用量レベルの配列番号2のいずれかを0日目に単回投与された、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、14日目に測定された抗SP/RBD IgG力価を示す。
【
図52】
図52は、1μgもしくは10μgの用量レベルの配列番号19または配列番号23(マウスIgG2a-Fcを含む)のいずれかを投与された、または0.5μgもしくは5μgの用量レベルの配列番号2のいずれかを投与された、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおける、0日目および21日目に注射された後35日目に測定された抗SP/RBD IgG力価を示す。
【
図53】
図53は、1μgもしくは10μgの用量レベルの配列番号19または配列番号23(マウスIgG2a-Fcを含む)のいずれかを投与された、または0.5μgもしくは5μgの用量レベルの配列番号2のいずれかを投与された、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおいて誘導されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、14日目に測定され、ヒト回復期血清と比較された。
【
図54】
図54は、1μgもしくは10μgの用量レベルの配列番号19または配列番号23(マウスIgG2a-Fcを含む)のいずれかを投与された、または0.5μgもしくは5μgの用量レベルの配列番号2のいずれかを投与された、6~8週齢のメスBALB/cマウスにおいて誘導されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示し、0日目および21日目に注射された後35日目に測定され、ヒト回復期血清と比較された。
【
図55】
図55は、新たに作成されたエマルションを注射してから14日目に測定されたものと、4℃および25℃で1日間ならびに7日間保管されたエマルションを注射してから14日目に測定されたものとで比較された、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のマウスにおいて誘導されたACE2-SP/RBD結合阻害を示す。
【
図56】
図56は、ヒトFc(ガンマ)RI受容体に対する配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の結合を示し、カニクイザルのFc(ガンマ)RI受容体と比較された。
【
図57】
図57は、ヒトFc(ガンマ)RIIa受容体に対する配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の結合を示し、カニクイザルのFc(ガンマ)RIIa受容体と比較された。
【
図58】
図58は、ヒトFc(ガンマ)RIII受容体に対する配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の結合を示し、カニクイザルのFc(ガンマ)RIII受容体と比較された。
【
図59】
図59は、ヒトFcRn受容体に対する配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の結合を示し、カニクイザルのFcRn受容体と比較された。
【
図60】
図60は、30%/70%(v/v)でMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgまたは30μgの用量レベルのいずれかで投与されたオスおよびメスのカニクイザルにおける、0日目および21日目に注射された後、0日目、14日目、21日目、35日目、および42日目での抗SP/RBD IgG Ab力価反応を示す。
【
図61】
図61は、30%/70%(v/v)でMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を10μgまたは30μgの用量レベルのいずれかで投与されたオスおよびメスのカニクイザルにおける、0日目および21日目に注射された後、21日目および42日目で誘導されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示す。
【
図62】
図62は、0日目および21日目に注射された後のNHP血清サンプルにおける、21日目および42日目に測定された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導されたSARS-CoV-2ウイルス中和効力を示し、配列番号19は30%/70%(v/v)でMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに製剤化され、ヒト回復期血清と比較された。
【
図63】
図63は、ブースター注射を受けた後の接種NHPにおける抗SP/RBD反応を示す。
【
図64】
図64は、配列番号19で処理されたNHPに由来する免疫血清は、野生型SP/RBD分子と同様か、またはそれ以上に組み換えN501YおよびE484K SP/RBD変異体に結合したことを示す。
【
図65】
図65は、配列番号19で処理されたマウスに由来する免疫血清は、野生型RBD分子と同様か、またはそれ以上に組み換えN501YおよびE484K RBD変異体に結合したことを示す。
【
図66】
図66は、配列番号2のSP/RBD、ならびに配列番号24および配列番号25のSP/RBDバリアントの並列配列比較を示す。
【
図67】
図67は、1日目、15日目および29日目にMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともにビヒクル対照を皮下投与されたニュージーランド白ウサギにおける、1回目投与の前、2回目投与の前、および3回目投与の前、および3回目投与の後に測定された抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図68】
図68は、1日目、15日目および29日目にアジュバントを伴わずに30μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与されたニュージーランド白ウサギにおける、1回目投与の前、2回目投与の前、および3回目投与の前、および3回目投与の後に測定された実質的な抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図69】
図69は、1日目、15日目および29日目にアジュバントを伴わずに100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与されたニュージーランド白ウサギにおける、1回目投与の前、2回目投与の前、および3回目投与の前、および3回目投与の後に測定された実質的な抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図70】
図70は、1日目、15日目および29日目にMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに、30μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与されたニュージーランド白ウサギにおける、1回目投与の前、2回目投与の前、および3回目投与の前、および3回目投与の後に測定された実質的な抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図71】
図71は、1日目、15日目および29日目にMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに、100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与されたニュージーランド白ウサギにおける、1回目投与の前、2回目投与の前、および3回目投与の前、および3回目投与の後に測定された実質的な抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図72】
図72は、Montanide(商標)ISAとともに30μgまたは100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与されたニュージーランド白ウサギにおいて誘導された、0日目および21日目に注射された後、15日目および29日目で測定されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示す。
【
図73】
図73は、21日目および35日目に測定された、ニュージーランド白ウサギ血清サンプルにおける、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質によって誘導されたSARS-CoV-2ウイルス中和効力を示し、配列番号19はMontanide(商標)ISA 720アジュバントで乳化され、0日目および21日目に投与されて、ヒト回復期血清と比較された。
【
図74】
図74は、Montanide(商標)ISA 720アジュバントとともに100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を皮下(SC)注射により投与された、または筋肉内注射(IM)により投与されたニュージーランド白ウサギにおける、0日目および21日目の注射後15日目、29日目および36日目に測定された抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図75】
図75は、Montanide(商標)ISA 720アジュバントとともに100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を皮下(SC)注射により投与された、または筋肉内注射(IM)により投与されたニュージーランド白ウサギにおいて誘導された、0日目および21日目の注射後15日目、29日目および36日目に測定されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)を示す。
【
図76】
図76は、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の新たに作製されたエマルション、および2~8℃で24時間保管されたエマルションを皮下(SC)注射により投与されたニュージーランド白ウサギにおける、0日目および21日目の注射後15日目、29日目および36日目に測定された抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図77】
図77は、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む100μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の新たに作製されたエマルション、および2~8℃で24時間保管されたエマルションを筋肉内(IM)注射により投与されたニュージーランド白ウサギにおける、0日目および21日目の注射後15日目、29日目および36日目に測定された抗SP/RBD IgG Ab力価を示す。
【
図78】
図78は、未感作NHPと、実施例36に従い、Montanide(商標)ISA 720とともに配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で免疫化されたNHPから採取された鼻腔ぬぐい液1mL当たりのゲノムまたはサブゲノムのSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー数を示す。
【
図79】
図79は、未感作NHPと、実施例36に従い、Montanide(商標)ISA 720とともに配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で免疫化されたNHPから採取された気管支肺胞洗浄(BAL)液1mL当たりのゲノムまたはサブゲノムのSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー数を示す。
【
図80】
図80は、配列番号8(SARS-CoV-2のRBD)と、配列番号9、配列番号10、配列番号14および配列番号15(すべて新規変異を含むSARS-CoV-2のRBD)との並行配列比較を示す。
【
図81】
図81は、96ウェルのマイクロプレートを示しており、当該プレートは、血清中に既存のSARS-CoV-2抗体価を評価する一般的な血清学的アッセイに使用され得る。
【発明の具体的説明】
【0024】
新型コロナウイルス感染症2019
新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、SARS-CoV-2ウイルスが原因で発生する重度で急性の呼吸器系疾患である。最初のCOVID-19症例は2019年12月に中国の武漢で報告されており、2020年11月18日の時点で世界でおよそ5600万人の症例が報告されている(SARS-CoV-2ウイルスと確定された症例、および非確定だが「推定」とされた症例を数値化)。このうち1850万件が治療中の症例であり、3600万件が回復済みの症例、そして130万件がCOVID-19による死亡症例である(University, J.H., COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering(CSSE)at Johns Hopkins University; www.covidtracker.com/)。2020年末ではPfizer-BioNTechのCOVID-19ワクチンであるBNT162b2のみが、COVID-19に対する緊急使用に関する世界保健機構(WHO)の緊急使用リスト(EUL:Emergency Use Listing)手順の下で承認されている。第二のワクチンはModerna社(mRNA-1273)であり、2021年2月末までには、COVID-19に対するワクチン緊急使用に関するWHO EUL手順の下で承認されると期待されている。専門家の間では、充分なレベルの免疫が集団で得られない限り、および得られるまでは、社会が通常状態に戻ることはできないと意見が一致している。自然発生的な集団免疫を得るためには、集団の少なくとも70%が感染していることが必要と推定されるが、これは世界で数百万人が死亡するということであり、倫理的に受け容れられるものではない。
【0025】
ACE2受容体
アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)は宿主細胞の受容体であり、SARS-CoV-2の感染介在を担っている(すなわち、この受容体にSARS-CoV-2が結合して細胞が感染する)ACE2は1型膜貫通型メタロカルボキシペプチダーゼである。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析により、ACE2は肺上皮細胞、血管内皮細胞および特定の神経細胞に発現していることが示されており、これら細胞がそれぞれ肺、心血管および神経の合併症を含むCOVID-19の主要な臨床症状の主要因と考えられている。SARS-CoV-2とSARS-CoVとの間の受容体結合ドメインの配列類似性に基づき、研究者らは、ヒト細胞の表面上に発現されたACE2をSARS-CoV-2が使用して、ACE2を発現するHeLa細胞に侵入することができたことを実証した。
【0026】
ウイルス患者の治療に対する回復期血清
世界中の臨床医と研究者が、SARS-CoV-2により引き起こされたパンデミックを緩和するための様々な解決法の開発に勤しんでいる。科学者らは、COVID-19を予防することができるワクチン、そしてこの感染症の重症度と症状を低減するための抗ウイルス治療法の開発を行っている。SARS-CoV-2を治療するためのワクチン、モノクローナル抗体(mAb)または薬剤の開発が続けられている。多くの臨床医は、ヒト回復期血清が、COVID-19の予防と治療に使用することができる選択肢であると考えていた。
【0027】
回復期血清とは、あるタイプの受動的抗体療法である。感染し、そして回復した個体の抗ウイルス抗体含有血清がこの治療法によって感受性個体または感染個体に輸液され、疾患を予防する、または疾患の重症度を低減する相当レベルの免疫が当該個体に付与される。この治療法はワクチンとは異なる。ワクチンは個体の中で免疫応答を誘導して、ウイルスに対する自身の抗体を当該個体に産生させるよう作用する。2002年のSARS-CoVのアウトブレイク、そして2009~2010年のH1N1インフルエンザのアウトブレイクから得られた経験から、ウイルスに感染し、そして回復した患者の血清(ヒト回復期血清)は、ウイルスを中和する能力を有する抗体を含むこと、そして重度の疾患症状がある個体に対する介入として有用であり、または予防用ワクチンとして有用であることが実証されている。
【0028】
ヒト回復期血清の使用にはリスクと制限がある。第一に、一人の人間から別の人間への血液物質の移入には、別の感染症の不注意な感染リスク、ならびに他の血清構成要素に対する反応リスクが伴う。回復期血清の使用におけるもう1つの課題は、ウイルス疾患から回復した患者の一部は、高力価の中和血清を有していないということである。別のヒトコロナウイルスである中東呼吸器症候群(MERS-CoV)に関する一例では、韓国の3名の患者が回復期血清で治療されたが、レシピエントうち2名だけが血清中に中和抗体があった。ウイルス感染から回復した後に中和血清を有する患者のうち、一部は有望なドナーとなるのに充分な高力価の中和抗体を有していない場合がある。SARS-CoVに関するさらなる調査によって、SARS患者の99個の回復期血清サンプルのうち、87個が中和抗体を有し、幾何平均力価は1:61であったことが判明した。これらの研究や他の様々な研究から、少数の患者が高力価の反応をし、そして中和抗体価は時とともに減少することが示唆されている。多くの企業が、回復患者の血清に頼るかわりに組み換え抗体を作製することによって、この課題を克服することを検討している。しかし製造スケールが不充分であり、数週から数カ月ごとに患者に有効な用量を投与するのに必要な医学的介入、最も可能性が高いのは静脈内注射や点滴であるが、これを行うのは非常に大変なことである。
【0029】
もっと重大な制限は、COVID-19エピデミックで提唱されている回復期血清の使用は、高力価のSARS-CoV-2中和抗体の作製に依存していることである。高力価のSARS-CoV-2中和抗体の作製には、疾患から回復し、回復期血清を提供することができる多数のドナー集団が必要である。誰がすでに疾患にかかり、何らかの免疫を発現しているのかを決定するという課題に直面する。COVID-19は様々な重症度の症状を呈し、軽症例の多くの個体は、自身が疾患にかかったことすら知らない場合もある。抗SARS-CoV-2抗体を測定するために、簡単に入手可能で低コストの試験キットも必要となる。
【0030】
しかし高力価の中和抗体を有する回復患者を特定することができたとしても、一人の患者の血漿が、数名よりも多くの患者を治療できるという可能性は低い。ゆえに、回復期血清治療の現行のアプローチでは、少数の患者でCOVID-19を予防または治療することができるが、この解決法ではこのパンデミックの最中、そしてその後の人類にとってのさらに大きなニーズに対処できるものではない。
【0031】
現行ワクチンの概略と課題
世界中の臨床医と研究者が、SARS-CoV-2ウイルスにより引き起こされたパンデミックを緩和するための様々な解決法の開発に勤しんでいる。そうした解決法には、COVID-19を予防することができるワクチン、そしてこの感染症の重症度と症状を低減するための抗ウイルス治療法が含まれてる。予測できる未来に対する見込みとしては、自然免疫そしてワクチン誘導性の免疫は長くは続かない可能性が高いこと、したがってコストに優れ、安全なワクチンが、必要に応じて集団内に安定的な免疫を維持するために6カ月ごとの頻度で投与することが必要とされる。ゆえに効果的な予防用COVID-19ワクチンにとって重要な設計特性は、以下である:i)SARS-CoV-2ウイルスを中和するIgG価と、強い1型ヘルパーT(Th1)細胞反応を、好ましくは単回投与後に誘導する強力な性能、ii)特に反応源性(全身的作用)と注射部位(局所作用)により引き起こされる炎症に関する許容可能な安全性と忍容性プロファイル、製造可能性に関する好ましい商品原価(COG)、投与頻度と用量レベルに影響を与えるワクチン効力、ならびに充分な保存可能期間および安定的な試験品の作製および投与手順を含む好適なサプライチェーン経路。
【0032】
弱毒化された生きた全ウイルスまたは不活化された全ウイルスのワクチンは、古典的戦略の代表である。全ウイルスワクチンの主な利点は、その本来の免疫原性と、TLR3、TLR7/8、およびTLR9を含むトール様受容体(TLR)を刺激する能力である。しかし生きたウイルスワクチンはしばしば、その安全性の確認のために詳細な追加試験が必要となる。生きた、または死んだSARSコロナウイルスの全ウイルスワクチンで免疫化された後、感染性が増加したという発見を踏まえると、コロナウイルスワクチンにとってこれは特に問題である。Johnson & Johnson社は、自社のPER.C6(登録商標)細胞株技術で製造されたJanssen’s AdVac(登録商標)アデノウイルスベクターを採用してリードワクチンであるJNJ-78436735を作製しており、最近になり第III相試験を完了して、米国での緊急使用に対して承認を受けている。この技術は、全ウイルスと、意図的に無害化されたアデノウイルスベクターとを置き換えるウイルスベクターを作製する試みであり、当該ベクターは、SARS-CoV-2ウイルスDNAの一部を担持している。しかし、JNJ-78436735を使用したところ、非常に重篤な有害事象(SAE)が発生し、臨床試験が停止した。
【0033】
SARSコロナウイルスワクチンの早期開発における、さらなる2つのハードルは、以下の発見である:1)Th2介在性の好酸球浸潤という形での望ましくない免疫増強があること、そして2)ADEにより誘導されるウイルス感染性の増加があること。ADEは、全ウイルスワクチンと完全SPワクチンを用いた免疫化の後のチャレンジ感染の後に発生したことが注目されている。SARS-CoV-2感染におけるTh2介在性の好酸球浸潤と肺病状のリスクはまだ調査中であるが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)でチャレンジされた、または全RSVワクチンで免疫化された幼児および動物においてリスクが見出されている。
【0034】
ADEは、元々のSARS-CoV、デングウイルス、およびジカウイルス感染に対するワクチンを含む、他のウイルスワクチンの有害特性である。この特性において、ワクチンに誘導されたAbの濃度やアフィニティは、ウイルス感染の中和には低すぎ、むしろウイルスとの免疫複合体を形成する。当該免疫複合体は、AbのFcドメインを介して骨髄細胞表面上のFcγ受容体と相互作用する傾向がある。そのようなAbはウイルス感染を中和せず、Fcγ介在性のウイルス排除(Li)も誘導しないが、Fcγ受容体によるウイルス取り込みを直接増加させることによってウイルス感染を補助するか、または自然免疫とアンタゴナイズする下流経路を活性化することにより細胞内でのウイルス複製をブースターして、ウイルス感染を補助する(Sunに概要が記載)。ADEとTh2免疫増強の両方において、ネコ科のIgG2a mAb(おそらくTh2アイソタイプ)は、両方の有害な状態を介在し得ること、一方でIgG1 mAb(強力なエフェクター機能、すなわちTh1アイソタイプを有することが知られている)は、そのような効果を防ぐことが実証されている。
【0035】
ADEおよび/またはTh2免疫増強のリスクに加えて、ウイルスベクターワクチンには比較的製造可能スループットが低いという別の問題もあり、ゆえに鶏卵製造または細胞発現系製造による商品原価が高くなる(Ewer)。
【0036】
代替法として、COVID-19の核酸発現ベクターワクチンプラットフォームが、主要なコロナウイルス標的抗原(Ag)であるスパイクタンパク質(SP)をコードするものがあり、当該抗原は、宿主受容体のACE2へのその結合を介して、ウイルスの感染メカニズムを介在する。第III相試験にまで進行したワクチンの2例は、BioNTech/PfizerのBNT162b2と、Moderna社のmRNA-1273により開発された全長SPをコードするmRNAワクチンである。両ワクチンとも、非常にポジティブな第III相試験結果が報告されており、症候性SARS-CoV-2ウイルス感染からの保護において、90%を超える有効性を有していたことから、最近、米国FDAにより緊急使用承認(EUA)を得ている。RNAまたはDNAによる免疫化のコンセプトは、1993年のマウスにおける有望な実験結果から始まっており、インフルエンザに対する保護免疫が示されたが、ここ数十年、ヒトでは同様の結果となり得なかった。さらに、これら非複製型のRNA発現ベクターワクチンおよびDNA発現ベクターワクチンの多くが、目的とする免疫反応の誘導後にも標的ウイルスAgを内因的に産生し続け、最終的には当該ウイルスに対する免疫寛容が生じ得るという側面に対する懸念が大きくなり、これが現行のCOVID-19 mRNAワクチンの現実的なリスクとなる可能性がある。これら核酸ワクチンに関する他の問題は反応の持続性の低さであり、頻繁な投与と、化学合成による面倒な製造性を原因とする好ましくないCOGが必要となる場合がある。さらに、RNA固有の不安定さに起因して、製品は凍結状態を維持し、輸送されなければならない。このため世界のほとんどの地域では利用することが非常に困難である。
【0037】
さらなる代替法としての組み換えサブユニットワクチンは、SPに対する免疫応答を惹起させて、宿主標的タンパク質のACE2とのドッキングを阻害することに依存している。そのようなワクチンにはタンパク質をコードするDNAやRNAではなくSPのすべて、または一部が含まれており、その後にアジュバントと混合されて、免疫反応が強化される。RNAやDNAと比べてタンパク質に本来備わる安定性のゆえに、サブユニットワクチンの保管と輸送の要件の厳密性は低い。組み換えサブユニットワクチンを開発している企業としてはNovavax社とClover Biopharmaceuticals社が挙げられる。Novavax社はSPの組み換え発現に基づく免疫原性ウイルス様ナノ粒子であるNVX-Cov2373を開発及び製造しており、サポニン系アジュバントシステムであるMatrix-M(商標)とともに製剤化されている。Clover Biopharmaceuticals社は、自身が特許保有するTrimer-Tag(登録商標)技術を使用した三量体化SARS-CoV-2 SPからなるサブユニットワクチンを開発している。しかしAgを標的とする全長SPは、細胞発現系では発現量が低いことが知られており、SARSワクチンで使用された際には、SPの非中和エピトープに対する抗SP IgG価を誘導することが判明している。そのような抗SP IgGは、ウイルスの感染性増加(すなわち、ADE)、および肺好酸球により生じる炎症(すなわち、Th2介在性免疫増強、以下に検討される)を介在する可能性がある。SARS SPの受容体結合ドメイン(RBD)のみから構成されるサブユニットワクチンが、これら安全性に関する課題を軽減する可能性を秘めている。
【0038】
Texas Children’s Hospital Center for Vaccine Development at Baylor College of Medicineによるコンソーシアムは、SARS SPの受容体結合ドメイン(RBD)のみから構成されるサブユニットワクチンを開発し、試験した。ミョウバンと製剤化された場合、RBDを基にしたワクチンは、同種ウイルスのチャレンジ時に高レベルの防御的免疫を誘導することができ、それに加えて、ADEと免疫増強も回避した。SARSとSARS-CoV-2のRBDは、80%を超えるアミノ酸類似性を呈しており、同じACE2標的に結合するという初期の発見から、サブユニットワクチンとしていずれかタンパク質Agを開発することとなった。実際に、かかるサブユニットワクチンの概念実証には成功しており、MERS感染およびSARS感染のコロナウイルスSP/RBD Agで実証されている。
【0039】
これら特性の全てではないが一部は最終的にはCOVID-19に対する防御的ワクチンとして有望になり得る生ウイルス、核酸および組み換えタンパク質サブユニットを含む現在開発中の170を超えるSARS-CoV-2ワクチン候補において実装されている。しかし各ワクチン戦略は、製造、安全性および効率に関して固有の利点と課題があり、それらは最適な方法で同時に管理されなければならない。
【0040】
本開示は、中程度の温度で輸送及び保管することができるSARS-CoV-2ウイルスの組み換えサブユニットワクチンを費用効率よく大量に製造することを可能にする新規融合タンパク質を作製する方法および使用する方法に関するものである。本開示は、具体的には、患者にSARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルス抗体を産生させるのに有効な予防ワクチン、治療ワクチンまたはブースターワクチンにおいて使用するための融合タンパク質の作製方法および使用方法に関するものである。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を使用して、患者にSARS-CoV-2ウイルスの受容体結合ドメイン(RBD)部分を標的とする内因性抗体を産生させることによって、抗SARS-CoV-2治療抗体を組み換え作製して患者に注射するよりも費用効率が非常に高くなることが予測される。
【0041】
例としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含むブースターワクチンを、抗体増幅治療(AAT:antibody amplification treatment)としてCOVID-19から回復した患者に投与して、患者の抗SARS-CoV-2抗体価を増加させてもよい。それによって、当該患者が提供する血清を回復期血清治療として使用して、より多くの人々を治療することができる。回復患者は、新たに血清提供を行う数週間前に、このAATを数週間受けてもよく、それによって抽出される血清の抗SARS-CoV-2抗体価は大きく上昇し、各提供血清で治療することができるウイルス感染患者の数も大きく増加し得る。
【0042】
例としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、個人から抽出された血清中の抗SARS-CoV-2抗体の検出に使用されてもよい。血清中の抗SARS-CoV-2抗体の存在と濃度を信頼性を持って判定するための重要な試薬としてSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を使用する試験キットを作製することにより、医師は、どの患者がウイルスに罹り、そして回復したかを判定することが可能となる。これは、患者の症状が少ない場合、または症状が無かった場合に特に重要である。例としては、かかる試験キットは、抽出されたワクチン接種後血清中の、宿主によって産生された抗SARS-CoV-2抗体の存在と濃度を迅速に、および費用効率よく決定することができるため、これを使用して、SARS-CoV-2に対する新たなワクチン候補の性能を評価することができるであろう。かかる試験キットを広範に配置することで、潜在的な回復期血清ドナーの数が劇的に増加することが予測される。
【0043】
例としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の医薬組成物は、SARS-CoV-2ウイルスに感染し、そしてCOVID-19を発症した患者に投与され、当該感染の範囲を限定し、当該疾患を改善する。複数例において、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、ACE2受容体に結合し、SARS-CoV-2ウイルスの受容体結合ドメイン(RBD)のさらなる取り込みを妨害しながら、SARS-CoV-2ウイルスを中和する抗体も産生させ、宿主細胞に曝されるRBDを少なくする。
【0044】
例としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の医薬組成物は、SARS-CoV-2ウイルスに感染していない個体に対し、COVID-19予防ワクチンとして投与され、その結果、当該個体は、抗SARS-CoV-2ウイルス抗体の自身のプールを産生し、免疫が生成される。
【0045】
均等および定義
本明細書で使用される場合、冠詞の「a」および「an」は、当該冠詞の文法上の目的語の1つ、または複数、例えば、少なくとも1つを指す。本明細書において、「含む」という用語と併せて使用される場合、「a」または「an」という文言の使用は、「1つ」を意味する場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つ、または複数」という意味とも矛盾しない。本明細書で使用される場合、2つ以上の項目のリストにおいて使用される場合の「および/または」という文言は、当該列記される項目のいずれか1つを単独で採用してもよく、または列記される項目の2つ以上の任意の組み合わせを採用してもよいことを意味する。例えば、構成要素のA、Bおよび/またはCを含む、または除外するとして組成物が記載される場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、AおよびBを組み合わせで、AおよびCを組み合わせで、BおよびCを組み合わせで、またはA、BおよびCを組み合わせで含んでもよく、または除外してもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」とは概して、尺度の性質または精度を考慮して、測定された量に対して許容される程度の誤差を意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、障害(例えば、本明細書に記載される障害)を治療するのに有効な分子、化合物、コンジュゲートまたは物質の量である、「治療有効量」または「有効量」とは、対象に単回用量で投与されたときに、または複数用量で投与されたときに、対象の治療において、または障害(例えば、本明細書に記載される障害)を有する対象の治癒、緩和、軽減または改善において、かかる治療が無い場合に予測されるものを超えて、有効である、分子、化合物、コンジュゲートまたは物質の量を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「アナログ」という用語は、別の化合物またはコンジュゲートと類似した化学構造を有するが、少なくとも1つの特徴において異なっている化合物またはコンジュゲート(例えば、RBDなどの本明細書に記載される化合物またはコンジュゲート)を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、患者の免疫システムに、当該抗原に対する抗体を産生させる任意の物質を指す。抗原は、例えば化学物質、細菌、ウイルスまたは花粉などの環境由来の物質であってもよく、または抗原は、身体内で形成されてもよい。抗原の例は、SARS-CoV-2ウイルスである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子(Ig)または免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫反応するなど、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本明細書で使用される場合、「抗体ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの可変領域または定常領域を指す。当分野において、例えば哺乳動物(例えば、ヒトおよびイヌ)の場合ではIgA、IgMまたはIgGなど、ヒト抗体はいくつかのクラスを含むことが実証されている。哺乳動物のIgG免疫グロブリンのクラスはさらに、例えばイヌについてはIgGA、IgGB、IgGCおよびIgGD、ヒトについてはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4など、異なるアイソタイプへと分類される場合もある。当業者であれば、所与の免疫グロブリンのクラスの免疫グロブリンのアイソタイプは、互いに異なるアミノ酸配列、アミノ酸構造、および構造特性(例えば、Fc(ガンマ)受容体またはACE2受容体に対して異なる結合アフィニティ)を含むと認識している。「特異的に結合する」または「~と免疫反応する」とは、抗体が、所望の抗原の1つ以上の抗原性決定基と反応すること、および抗体が、他のポリペプチドに対しては低いアフィニティを有しており、例えば他のポリペプチドとは反応しないことを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「二量体」という用語は、共有結合的に結合された2つのポリペプチドを含むタンパク質または融合タンパク質を指す。実施形態において、2つの同一のポリペプチドが共有結合的に結合され(例えばジスルフィド結合を介して結合され)、「ホモ二量体」(参考としてのインスリン-Fc融合タンパク質の図が
図1に、およびSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の図が
図2に示されている)を形成する。
図1をより詳細に参照すると、インスリンポリペプチド(インスリンB鎖アナログが、C鎖ペプチドを介してインスリンA鎖アナログに接続されている)は、天然インスリンから1つ以上のアミノ酸変異を含む場合がある。インスリンペプチドは、リンカーを介してFc断片に接続されている。ジスルフィド結合(実際のジスルフィド結合の合計数は、
図1に示される数よりも大きい場合もあり、または小さい場合もある)によって、2つの同一のFc融合タンパク質からホモ二量体が形成される。
図2をより詳細に参照すると、SARS-CoV-2 RBD断片は、全長SARS-CoV-2表面糖タンパク質の一部を含む場合がある。RBD断片は、天然SARS-CoV-2表面糖タンパク質から1つ以上のアミノ酸変異を有する場合がある。RBD断片は、任意選択的なリンカーを使用してFc断片に接続されている(例として、RBD断片は、リンカーを用いずに共有結合的に直接Fc断片に結合されている)。ジスルフィド結合によって、2つの同一のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質からホモ二量体が形成される(実際のジスルフィド結合の合計数は、
図2に示される数よりも大きい場合もあり、または小さい場合もある)。Fc融合タンパク質のホモ二量体は、単一の核酸分子によってコードされてもよく、この場合において、当該ホモ二量体は、Fc融合タンパク質単量体を最初に形成させ、次いで細胞内でさらなる処理が行われる際に2つの同一のFc融合タンパク質単量体をホモ二量体へとアセンブリすることによって、細胞内で組み換え作製される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「多量体」、「多量体の」、または「多量体状態」という用語は、非共有結合的に関連付けられたFc融合タンパク質二量体の形態を指し、当該形態は、Fc融合タンパク質二量体と平衡状態である場合もあり、またはFc融合タンパク質二量体の恒久的凝集型として振舞う場合もある(例えば、Fc融合タンパク質ホモ二量体の二量体、Fc融合タンパク質ホモ二量体の三量体、Fc融合タンパク質ホモ二量体の四量体、または5つ以上のFc融合タンパク質ホモ二量体を含む高次凝集体)。Fc融合タンパク質の多量体形態は、融合タンパク質ホモ二量体とは異なる物理的活性、安定性または薬理活性を有する場合がある。
【0053】
本明細書で使用される場合、RBD-Fc融合タンパク質およびSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(これら用語は、相互交換可能に使用され得る)とは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(SP)受容体結合ドメイン(SP/RBDまたはRBD)に結合したヒト免疫グロブリンFcドメイン、またはそのアナログを指し、これらはSARS-CoV-2抗原に特異的に結合する抗体の作製に有用である。参照し易いように、「RBD」および/または「SP/RBD」という用語は本明細書において相互交換可能に使用される場合があり、文脈において別段の示唆が無い限り、受容体結合ドメインそれ自体、受容体結合ドメインの小さな断片、または受容体結合ドメインとスパイクタンパク質セグメントからの隣接残基を含む大きなバリアントからなるタンパク質残基を包含するが、ただし、当該断片および/または大きなバリアントは、RBDの活性を保持するものとする(例えば、スパイクタンパク質受容体に結合する能力を保持する)。本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」および「Fc融合タンパク質」という一般用語は、例えば異なる源(例えば異なるタンパク質、ポリペプチド、細胞など)に由来する複数の部分を含むタンパク質を指し、それら複数の部分はペプチド結合を介して共有結合される。Fc融合タンパク質は、(i)各部分をコードする遺伝子を、単一核酸分子へと連結することにより、および(ii)当該核酸分子がコードするタンパク質を宿主細胞(例えば、HEK細胞またはCHO細胞)で発現させることにより、共有結合される。治療用タンパク質とFc断片を別々に合成して、その後、化学的にコンジュゲートする方法よりも、すべて組み換え合成による方法が好ましい。化学的コンジュゲートの工程、そしてそれに続く精製プロセスがあると、製造上の煩雑さが増し、生産歩留まりが低下し、コストが増大する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「生物活性」、「活性」、「生物学的活性」、「効力」、「生物活性効力」、または「生物学的効力」という用語は、Fc融合タンパク質が、細胞受容体に結合、もしくは細胞受容体を活性化し、および/または天然物質もしくは外来性物質を産生させる、または減少させる程度を指す。本明細書で使用される場合、「インビトロ活性」または「受容体活性」とは、Fc融合タンパク質が細胞受容体に結合するアフィニティを指し、典型的には、Fc融合タンパク質が、その最大結合の半分に達するFc融合タンパク質濃度によって測定される(すなわち、EC50値)。例えば、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の「生物活性」とは、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が、細胞アッセイにおいて、または標的対象において、抗SARS-CoV-2抗体の産生を誘導する程度を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「生合成」、「組み換え合成」または「組み換え作製された」という用語は、Fc融合タンパク質をコードする核酸分子(例えば、ベクター)(例えば、Fc融合タンパク質全体が、単一核酸分子によってコードされる)で細胞をトランスフェクトすることによって、宿主細胞内で融合タンパク質が発現されるプロセスを指す。宿主細胞の例としては、例えばHEK293細胞またはCHO細胞などの哺乳動物細胞が挙げられる。細胞は、当分野で標準的な方法を使用して培養することができ、発現されたFc融合タンパク質は、当分野で標準的な方法を使用して細胞培養物から回収され、精製されてもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「細胞表面受容体」という用語は、概して細胞膜の外表面上に存在し、例えば血液供給において循環する分子などの可溶性分子と相互作用する、例えばタンパク質などの分子を指す。一部の実施形態では、細胞表面受容体には、宿主細胞受容体(例えば、ACE2受容体)または抗体のFc断片もしくはFc領域に結合するFc受容体(例えば、Fc(ガンマ)受容体、例えばFc(ガンマ)受容体IまたはFc胎児性受容体、例えばFcRn)が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「インビトロ活性」または「Fc(ガンマ)受容体活性」または「Fc(ガンマ)受容体結合」または「FcRn受容体活性」または「FcRn結合」とは、Fc融合タンパク質が、Fc受容体(例えば、Fc(ガンマ)受容体またはFcRn受容体)に結合するアフィニティを指し、典型的には、Fc融合タンパク質が、マイクロプレートリーダー上で測定された際にOD450nmの値を使用してアッセイ(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等のアッセイ)で測定されたとき、その最大結合の半分に達するFc融合タンパク質濃度(すなわち、EC50値)によって測定される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「免疫原性の」または「免疫原性」という用語は、所与の分子(例えば、本発明のFc融合タンパク質)が、標的対象の免疫システムを刺激する能力を指し、当該能力によって、当該分子の投与後、対象は当該分子のすべてまたは特定の部分に結合することができる抗体(すなわち、抗薬剤抗体またはADA)を発現する。本明細書で使用される場合、「中和する」、「中和抗体」または「中和抗薬剤抗体」という用語は、標的対象において、Fc融合タンパク質の生物活性のすべて、または一部に干渉する抗体の能力を指す。例えば、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合分子がヒトに投与される場合、当該分子のhIgG-Fc部分はヒトにとって内因性であり、ゆえに抗hIgG-Fc抗体が惹起される可能性は低いことから、免疫原性とは、当該分子のSARS-CoV-2 RBD部分に結合する抗体を指す。同様に、SARS-CoV-2 RBDとACE2受容体の間の結合を当該抗SARS-CoV-2 RBD抗体が阻害する場合、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合分子の投与によって産生される抗体は中和抗体である。当該結合は、対象におけるSARS-CoV-2 RBDの生物活性と直接関連するものである。
【0058】
本明細書で使用される場合、「単量体」という用語は、単一のポリペプチドを含むタンパク質または融合タンパク質を指す。実施形態で、「単量体」は、RBDポリペプチドとFc断片ポリペプチドを含む、例えば単一ポリペプチドなどのタンパク質または融合タンパク質であり、この場合において当該RBDとFc断片ポリペプチドは、ペプチド結合により結合され、単一ポリペプチドを形成する。実施形態では、単量体は、単一の核酸分子によってコードされる。
【0059】
本明細書で使用される場合、
図1および
図2に示されるように、「N末端」とは、アミノ酸のアルファ-アミノ基である遊離アミン基を含有するアミノ酸によって開始されるタンパク質またはポリペプチドの始まりを指す(例えば、第二の炭素原子に隣接する1つの炭素原子に共有結合された遊離アミノであり、当該第二の炭素原子は、アミノ酸のカルボニル基の一部である)。本明細書で使用される場合、
図1および
図2に示されるように、「C末端」とは、カルボン酸基を含有するアミノ酸によって終結するタンパク質またはポリペプチドの末端を指し、当該カルボン酸基の炭素原子は、アミノ酸のアルファ-アミノ基に隣接する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、希釈剤、賦形剤、ビヒクルなどを指すために本明細書において使用され、担体中でFc融合タンパク質は分散され、乳化され、または封入されて投与されてもよい。好適な担体は、薬学的に許容可能なものである。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能」という用語は、生物学的に、または別段により望ましくないものではなく、過度の毒性、刺激またはアレルギー反応を伴わずに対象に投与することができ、許容できない生物学的効果をもたらさず、またはそれが含まれる組成物の他の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用しない。当業者には公知であるように、薬学的に許容可能な担体は、化合物または他の剤の何らかの分解が最小限になるように、および対象における何らかの有害な副作用が最小限になるように必然的に選択されるものである。薬学的に許容可能な成分としては、獣医学的な用途ならびにヒトの薬学的な用途に対して許容可能なものが挙げられ、投与経路に依存する。賦形剤およびFc融合タンパク質と適合可能な任意の担体を使用することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「薬理学」または「PD」とは概して、対象におけるFc融合タンパク質の生物学的効果を指す。例として、本明細書において、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のPDとは、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の投与後の対象における経時的な抗SARS-CoV-2抗体価の尺度を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「薬物動態」または「PK」とは概して、吸収、分布、代謝および排泄に関する、Fc融合タンパク質と対象身体の特徴的な相互作用を指す。例として、本明細書において、PKとは、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の投与後の所与のときにおける対象の血液中または血清中のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質濃度を指す。本明細書で使用される場合、「半減期」とは、対象の血液中または血清中のFc融合タンパク質の濃度が、元々の値の半分に達するまでかかる時間を指し、薬剤排泄に関する一次指数関数的減衰から計算される。「半減期」の値が大きいFc融合タンパク質は、標的対象中での作用期間が長いことを示す。
【0063】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列において、「配列同一性」、「配列相同性」、「相同性」または「同一の」という用語は、バリアントのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特定の連続的なセグメントが、参照配列のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して並べられ、比較されたときに、様々な配列内および参照配列内で、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基が存在することを記載するものである。配列アライメントの方法、および配列間の同一性を決定する方法は当分野で公知であり、類似性に関して配列を整頓し、並べ、そして比較するClustal Omegaの使用などが挙げられ、当該ソフトウェアは、各配列の位置を強調して、当該位置での全ての配列で比較を行い、以下のスコアのうちの1つを割り当てる:単一の完全に保存された残基である配列位置については、「*」(アスタリスク)。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「.」(ピリオド)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5以下のスコアを有する、類似性が弱い群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に局所的な相同が存在しないことを意味する。「 」(空のスペース)は、比較された配列全体で特定の位置に配列相同性がほとんど無いか、または無いことを示す。
【0064】
2つのヌクレオチド配列の最適アライメントに関して、バリアントヌクレオチド配列の連続的セグメントに、参照ヌクレオチド配列と比較してヌクレオチドを追加またはヌクレオチドを欠失させてもよい。同様に、2つのアミノ酸配列の最適アライメントを目的として、バリアントアミノ酸配列の連続的セグメントに、参照アミノ酸配列と比較してアミノ酸残基を追加またはアミノ酸残基を欠失させてもよい。一部の実施形態では、参照ヌクレオチド配列または参照アミノ酸配列との比較に使用される連続的セグメントは、少なくとも6、10、15または20個の連続的なヌクレオチドまたはアミノ酸残基を含み、30、40、50、100個またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基であってもよい。バリアントヌクレオチド配列またはバリアントアミノ酸配列にギャップを含ませたことに関連して増加した配列同一性に対する補正は、ギャップペナルティを割り当てることによって行うことができる。配列アライメントの方法は、当分野で公知である。
【0065】
実施形態では、2つの配列間の同一性割合または「相同性」割合の決定は、数学アルゴリズムを使用して行われる。例えば、アミノ酸配列の同一性割合は、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して決定され、12のギャップオープンペナルティ、2のギャップ伸長ペナルティ、BLOSUMマトリクス62を用いたアフィン6ギャップ検索が使用される。実施形態では、ヌクレオチド配列の同一性割合は、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して決定され、25のギャップオープンペナルティ、および5のギャップ伸長ペナルティが使用される。そのような配列同一性の決定は、例えば、TimeLogic社のDeCypher Hardware Acceleratorを使用して実施することができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、例えばベータ鎖、ヘリックスおよび畳み込みなどの共通の構造特性や共通の空間分布を位置づけることにより、2つ以上のタンパク質を比較するために使用される。したがって、空間解析によって相同なタンパク質構造が規定される。構造上の相同性の測定には、空間の幾何学的トポロジー特性をコンピューター計算することが含まれる。三次元(3D)タンパク質構造を作成し、解析するために使用される1つの方法は、相同性モデリング(比較モデリングまたは知識ベースのモデリングとも呼ばれる)である。当該方法は、3D相同性は、2Dの相同性を反映しているという事実を基に、類似した配列を発見することによって機能する。相同な構造は、必要条件としての配列類似性を示唆するものではない。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象」や「患者」という用語は、マウス、非ヒト霊長類(NHP)、ウサギ、イヌおよびヒトを含むことが意図される。例示的なイヌ科対象としては、糖尿病、または本明細書に記載される別の疾患もしくは障害などの疾患または障害を有するイヌ、または正常な対象が挙げられる。例えばヒト対象の例としては、例えばCOVID-19またはSARS-CoV-2感染のバリアントを含む、COVID-19等の疾患、または別のウイルスの疾患を有する個人、または本明細書に記載される疾患または障害を過去に有していた個人、または正常な対象が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「力価」または「収量」という用語は、細胞培養物の体積当たりの(例えばHEK293細胞やCHO細胞などの哺乳動物細胞中で)生合成から産生された融合タンパク質産物(例えば、本明細書に記載されるFc融合タンパク質)の量を指す。産生物の量は、産生プロセスの任意の工程で決定してもよい(例えば、精製の前後など)。しかし収量または力価は常に元の細胞培養物の体積当たりで提示される。本明細書で使用される場合、「産生物の収率」または「総タンパク質収量」という用語は、細胞によって発現され、少なくとも1回のアフィニティクロマトグラフィー工程(例えば、プロテインAまたはプロテインG)によって精製されたFc融合タンパク質の合計量を指し、Fc融合タンパク質の単量体、Fc融合タンパク質のホモ二量体、およびFc融合タンパク質のホモ二量体の高次分子凝集物を含む。本明細書で使用される場合、「ホモ二量体のパーセント」または「ホモ二量体%」という用語は、所望のホモ二量体である融合タンパク質産物(例えば、本明細書に記載されるFc融合タンパク質)の割合を指す。本明細書で使用される場合、「ホモ二量体価」という用語は、ホモ二量体%と、細胞培養物の体積当たりで報告されるプロテインA精製工程後の総タンパク質収量の積を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、疾患または障害を有する対象に関して、「治療する」または「治療すること」または「治療」という用語は、感染症の発現の予防または感染症の病状を変化させることを意図して行われる介入を指す。したがって、「治療」とは、治療的処置、ならびに予防的手段または防止的手段の両方を指す。治療剤は、感染症の病状を直接低下させてもよく、または他の治療剤による治療に対する感染症の感受性を高めてもよく、または宿主の免疫系などに対する感染症の感受性を高めてもよい。治療後の改善は、そのような症状の減少または消失として現れ得る。ゆえに組成物は、観察可能な感染症の臨床症状の発現を予防することによって、ならびに/または感染症の臨床症状および/もしくは感染症の作用の発生率または重症度を低下させることによって、ならびに/または感染症/症状/作用の期間を短縮化させることによって、感染症の治療に有用である。疾患または障害を有する対象の治療とは、疾患または障害を有する対象にレジメンを受けさせることによって、疾患または障害の少なくとも1つの症状を治癒すること、治すこと、軽減すること、緩和すること、変化させること、矯正すること、向上させること、または改善することを指す場合があり、例えば当該レジメンは、本明細書に記載されるFc融合タンパク質などの融合タンパク質を投与すること、または本明細書に記載されるFc融合タンパク質などの融合タンパク質の医薬組成物を投与することである。治療には、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を軽減すること、緩和すること、変化させること、矯正すること、向上させること、改善すること、またはそれらに作用するのに有効な量を投与することを含む。治療には、正常な対象において、または過去に疾患または障害を有していた対象において、抗体を産生させるのに有効な量を投与することを含む。治療は、疾患または障害の症状の憎悪または悪化を阻害し得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「予防ワクチン」とは、患者の免疫系に抗原に対する抗体を産生させること、および関連する病気またはウイルスに対する対象の免疫反応を増加または改善させることを目的として、患者に抗原を導入する処置を指す。言い換えると、ワクチン接種された対象は、ワクチン接種されていない対象と比較して、関連するウイルスに由来する病気または疾患に対して高度な抵抗性を有する。この抵抗性は、病気の症状の重症度または期間の低下、ウイルス出芽の減少または消失、および一部の症例ではワクチン接種された対象における観察可能な感染症の症状の予防によって明白となり得る。実施形態では、予防ワクチンで処置された患者は、予防ワクチンを用いた処置の前、当該抗原に対する抗体を有していない(言い換えると、患者は、「抗体未感作」である)。
【0071】
本明細書で使用される場合、「治療ワクチン」とは、患者の免疫系に抗原に対する抗体を産生させて、患者身体が、すでにある病気またはウイルスとより激しく戦うことができるようにすることを目的として、すでに関連する病気またはウイルスを有する患者に抗原を導入する処置を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「ブースターワクチン」とは、すでに患者がワクチンの初回投与を受けた後の、または患者が関連する病気もしくはウイルスにすでに罹り、回復したことによって抗体を獲得した後の、追加的なワクチン投与を指す。例として、患者の抗原抗体価を上昇させることによって、抗原を生じさせる病気またはウイルスに対する患者の免疫を「ブースト」させるために、ワクチンの追加投与が定期的に必要となる。
【0073】
本明細書で使用される場合、SARS-CoV-2表面糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含むSARS-CoV-2表面糖タンパク質の一部分の中のアミノ酸という言及がある場合、引用されるアミノ酸の位置は、配列番号1のSARS-CoV-2表面糖タンパク質中のアミノ酸の位置として言及される。例として、SARS-CoV-2 RBDの331位のアミノ酸の変異という言及は、たとえ当該SARS-CoV-2 RBDが、配列番号1の一部しか含まない場合であっても、配列番号1の331番目の位置のアミノ酸を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「RBD断片」とは、配列番号1のSARS-CoV-2表面糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)のいくつかの部分を含む、SARS-CoV-2-hIgG-Fc融合タンパク質の一部を指し、文脈により異なることが示唆されないかぎり、スパイクタンパク質(SP)の隣接残基を含む場合もある。例として、SARS-CoV-2表面糖タンパク質のRBD断片部分は、
図2に示されるようにFc断片に結合される。
【0075】
Fc融合タンパク質ワクチンの論理的根拠
上記で検討されるように、組み換えタンパク質を基にしたサブユニットワクチン法は、強力な中和抗体Ab価を生じさせるのに最も優勢なエピトープを選択的に使用できることに加えて、不活化ウイルスまたは生きた弱毒化ウイルス、および核酸ベクターを基にしたワクチン形式と比較して、安全性と多重的なブースター投与に関する利点がある。さらに、そのようなタンパク質を基にしたワクチンは、より費用効率良く大量製造され、中程度の温度で安定的であるため、輸送と保管が容易である。しかし組み換えSARS-CoV-2 SPサブユニットワクチンが免疫学的に未感作のヒト集団において強力な防御的免疫反応を誘導させることの困難さを考慮すると、未感作のT細胞およびB細胞の活性化閾値を乗り越えるために追加の免疫強化特性とともに改変および/または製剤化しなければならない。
【0076】
イヌ科においてインスリン-Fc融合タンパク質を用いた実験結果
治療用タンパク質を免疫グロブリンFcドメインに結合させることにより形成された融合タンパク質の1つの例は、インスリン-Fc融合タンパク質である。この構築物は、糖尿病患者に対する超長期作用型の基礎インスリン治療を提供するために使用されている。ペプチドリンカーを介して治療用タンパク質としてインスリンアナログを、Fcドメインと組み合わせることによって、インビボで日レベルで有意に長い活性が実現されることが示されている。ネコおよびイヌの糖尿病治療に使用するための超長期作用型のインスリン-Fc融合タンパク質の例は、WO2020006529A1に記載されている。WO2020006529A1の例において、インスリンアナログの例は、以下である:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYC(配列番号28)
および治療用タンパク質(すなわち、インスリンアナログ)をFcドメインに結合させるために使用されたリンカーの例は以下である:GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号27)。
【0077】
所与の種(例えば、イヌ、ネコまたはヒト)の糖尿病に対する超長期作用型の治療に適したインスリン-Fc融合タンパク質分子は、所望のホモ二量体産物が許容可能な力価で、哺乳動物細胞、例えばヒト胎児腎臓(HEK、例えばHEK293)細胞中で製造可能でなければならない(例えば、一過性トランスフェクトされたHEK細胞から、50mg/Lを超えるホモ二量体価、一過性トランスフェクトされたHEK細胞から75mg/Lを超えるホモ二量体価、一過性トランスフェクトされたHEK細胞から100mg/Lを超えるホモ二量体価、など)。実験結果から、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、50mg/L未満のホモ二量体価では、動物用製品の厳しい低製造コスト要件を満たす商業生産的なホモ二量体価が得られる可能性は低いことが示されている。
【0078】
WO2020006529A1(参照により本明細書に組み込まれる)および本明細書に記載されるイヌ用のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例45でHEK細胞において製造され、実施例46でCHO細胞で製造された。インスリン-Fc融合タンパク質は、実施例47で精製された。従来的な精製方法を使用したところ、イヌ科IgGAとイヌ科IgGBの免疫グロブリンFc断片を含む化合物のみが、相当量のタンパク質収量を示した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造は、実施例48で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、配列は、実施例49でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。純度(融合タンパク質収量のホモ二量体割合パーセントにより評価された)は、実施例50で測定された。インスリン-Fc融合タンパク質のイヌ科IgGA型はかなり凝集し、生物活性は低レベルであった。一方でインスリン-Fc融合タンパク質のイヌ科IgGB型は、低度の凝集(すなわち、ホモ二量体%は高い)、高力価の所望のホモ二量体(すなわち、50mg/Lを超えるホモ二量体価)、およびイヌにおいて相当レベルで長期間のグルコース低減生物活性を示した。したがって、イヌ科IgGB(配列番号26)免疫グロブリンFc断片が、イヌにおいて使用される、インスリン-Fc融合タンパク質の好ましいFc断片である。
DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号26)
【0079】
配列番号27のペプチドリンカーを介して配列番号28のインスリンアナログと配列番号26のイヌ科天然IgGB断片を含む、イヌ科の超長期作用型のインスリン-Fc融合タンパク質の例は、以下である:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号29)
【0080】
Fc(ガンマ)受容体I(RI)への配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の結合は、実施例51で評価された。イヌ科の受容体Iは市販されていなかったため、ヒトFc(ガンマ)受容体I(すなわち、rhFc(ガンマ)受容体I)をサロゲート哺乳動物受容体として使用した。OD値は、配列番号29へのrhFc(ガンマ)受容体Iの結合に比例し、それぞれに添加されたrhFc(ガンマ)受容体Iの対数濃度に対してプロットされ、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線が作成された。結果を
図3に示す。図において、すべてのFc(ガンマ)受容体について、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の用量が増えるにつれて、OD450値も増加したことが示される。
【0081】
実施例45でHEK細胞中で製造された配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質を定期的に投与した後のインビボでの薬理(PD)は、実施例52で評価された。被験集団は、アロキサン-ストレプトゾトシンを使用して化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬からなり、それぞれの体重はおよそ10kgであった。抗インスリン抗体(AIA)力価は、化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬について、8週にわたり毎週測定され、実施例53での配列番号29に関する試験の対象となった。
図4は、化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬について、一連の配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の8回の週1回投与でのAIA力価を示す。
図5は、一連の配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の8回の毎週投与にわたる、化学的に誘導された糖尿病の6匹のビーグル犬に関する、試験0日目からのAIA力価における変化割合パーセントを示す。データから、ビーグル犬のAIA力価は、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の8回投与用量で、実質的に増加しなかったことを示す。
【0082】
化学的に誘導された糖尿病ビーグル犬を用いたこれらのポジティブな試験結果を基に、実際のクライアントが所有する年齢、品種および糖尿病の程度が様々な自然発生の糖尿病犬を用いたフィールド試験を、実施例52で開始した。フィールド試験でのクライアント犬はすべて、公知の獣医学インスリン製品またはヒトインスリン製品を用いたインスリン治療を試験開始時点まで受け、実施例52に記載されるようにプロトコル1またはプロトコル2に従い、配列番号29を与えられた。
【0083】
AIA力価は再度、実施例54で治療経過にわたり毎週測定された。予想外なことに、化学的に誘導された糖尿病ビーグル犬で得られた結果とは対照的に、この「野生の」患者集団中の数匹(8/20)のクライアント犬は、抗インスリン抗体の著しい増加を示した。正規化されたAIA力価の0.15は、クライアント犬が配列番号29に対して免疫原性であるとみなされる最小の測定値とされた。治療開始時にAIA力価がゼロではなかったクライアント犬については、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で治療された後、AIAが2倍よりも高くなった場合に、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質が、特定のクライアント犬において免疫原性であるとみなされた。
図6は、各クライアント犬の正規化AIA力価のプロットであり、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質はその治療期間中、毎週測定されており、免疫原性であるとみなされた(治療に関し、従った実施例52の具体的なプロトコルを、各イヌについて示す)。
図6に示される各イヌにおいて、AIAは配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の治療効果を中和し、もはやクライアント所有の糖尿病犬の血中グルコースレベルを制御することはできなくなった。インスリン-Fc融合タンパク質のインスリンアナログ部分は、ほぼ天然のイヌのペプチドであるため、観察された免疫原性はさらに予想外であった。さらにインスリン-Fc融合タンパク質のIgGB Fc断片部分は、天然のイヌ科Fc断片である。この結果から、イヌのIgGB Fc断片の特異的活性は、融合タンパク質の治療タンパク質の領域(すなわち、インスリン)に特異的な抗体価を、顕著に、そして継続的に増加誘導するものであったことが示される。中和AIA力価の顕著な増加を示したこと以外には、反復投与でもイヌは健康を維持し、治療に関連したアナフィラキシーやサイトカインストームの何らかの兆候はなかった。
【0084】
一部の症例では、クライアント犬は、高レベルのAIAを示し始め、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質の投与が中断された。中断された時点でAIA力価は減少し始めた(
図4のイヌ2の例を参照)。
図7は、週1回投与で12週間にわたる、イヌ2の実施例の正規化AIA力価のプロットである。AIA力価は、4回目の投与(21日目)の後に、測定可能に上昇し始めたこと、そして6回目の投与(35日目)の後に、AIA力価は急こう配で増加し始めたことが分かる。8回目の投与(49日目)の後に投与は中止され、56日目と63日目ではイヌに投与は行われなかった。
図7は、AIA力価の上昇は即座に減速し、その後、56日目の後には下降し始めたことを示す。投与レジメンは、70日目に再開され、70日目に投与され、77日目にも再度投与された。70日目の投与開始後のAIA力価の上昇は、投与中止までの7週間での最大のAIA力価上昇と合致したか、またはそれを超えた。このことから、抗薬剤抗体の力価は、最初の一連の投与により蓄積したものよりもかなり短期間で、予想外に回復したことが示される。この安定的なリコール反応は、反応性メモリー免疫細胞集団を示す可能性がある。
【0085】
クライアント所有の糖尿病犬でのフィールド試験から得られたもう1つの結果は、
図8に示されるように、実施例46によりCHO細胞で作製された配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で治療されたイヌ、および実施例45によりHEK細胞で作製された配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質で治療されたイヌで、明白な差異があったこと、CHOで作製された配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質は、著しく高い抗薬剤抗体の保有率を示すことであった。
【0086】
各IgG断片は、Fc領域の各重鎖のCH2ドメインに、保存されたアスパラギン(N)-グリコシル化部位を含有する。本明細書において、保存されたN-グリコシル化部位を指すために使用される表記は、「cNg」である(
図1および
図2に示される)。治療用モノクローナル抗体において、グリコシル化は、CH2領域の保存されたアミノ酸N297で起こる(
図1および
図2に示される)。インスリン-Fc融合タンパク質については、インスリン-Fc融合タンパク質のB鎖のN末端からのcNg部位の絶対位置は、インスリンポリペプチドの長さ、リンカーの長さ、そしてcNg部位の前のFc断片中で省略された任意のアミノ酸に応じて変化する。本明細書において、所与のインスリン-Fc融合タンパク質配列中のcNg部位の絶対位置(インスリン-Fc融合タンパク質のB鎖のN末端から数を数えることにより測定される)を指すために使用される表記は、「NB(数)」である。例えば、cNg部位が、B鎖のN末端から数えて、151番目のアミノ酸位置にある場合、この部位の絶対位置は、cNg-NB151とされる。さらなる例として、cNg部位が、B鎖のN末端から数えて151番目のアミノ酸位置にあり、この部位のアスパラギンがセリンに変異している場合、この変異は、「cNg-NB151-S」と表される。
【0087】
実施例45のHEK細胞で組み換え作製された融合タンパク質と、実施例46のCHO細胞で組み換え作製された融合タンパク質の間に差異があったことの1つの可能性は、当該cNg部位で付加されるオリゴ糖の組成である。イヌ科のIgGBアイソタイプは、Fc(ガンマ)受容体と相互作用することを考慮すると、反復投入後に望ましくない免疫原性リスクが発生する可能性がある。Fc(ガンマ)相互作用を低下させる1つの方法は、宿主細胞での合成中に、Fc断片を脱グリコシル化すること、またはグリコシル化を阻害することである。抗体は薬剤の治療価値を中和するため、例えば糖尿病などの慢性疾患の治療に関し、抗体が生成されてしまうことは明白に有害である。ゆえに、非グリコシル化イヌ科インスリン-Fc融合タンパク質の生成が試みられた。合成されたインスリン-Fc融合タンパク質から、付加グリカンを取り除くための1つの方法は、宿主細胞で産生中にグリカンの付加を完全に阻害するようcNg部位を変異させることである。本明細書において、cNg変異を記述するために使用される表記は、cNg-(置換アミノ酸)である。例えば、cNg部位のアスパラギンがセリンに変異している場合、この変異は、「cNg-S」と表される。cNg変異を有するイヌ科IgGB Fc断片の全体的な表記を、配列番号30に示す:
DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFX1GTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG
式中、X1=S、D、K、Q、またはA(配列番号30)。
【0088】
イヌ科インスリン-Fc融合タンパク質は、X1=S(以下の太字残基)を有する配列番号30のIgGB Fc断片、配列番号27のリンカー、および以下のインスリンアナログを含むように設計された。
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYC(配列番号31)
得られたインスリン-Fc融合タンパク質を、以下に示す:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号32)
【0089】
配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例45でHEK細胞中で、または実施例46でCHO細胞中で作製された。インスリン-Fc融合タンパク質は、実施例47で精製された。インスリン-Fc融合タンパク質の構造は、実施例48で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、配列は、実施例49でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。純度(融合タンパク質収量のホモ二量体割合パーセントにより評価された)は、実施例50で測定された。
【0090】
この融合タンパク質は、配列番号29と類似した望ましいインビトロ性能およびインビボ性能を示した。
図3に示されるように、唯一の違いは、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)RI結合アフィニティは、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質と比較して非常に低かったことである。年齢、品種および糖尿病の程度が様々な5匹の糖尿病クライアント犬で、フィールド試験が開始された。フィールド試験での5匹のクライアント犬はすべて、公知の獣医学インスリン製品またはヒトインスリン製品を用いたインスリン治療を試験開始時点まで受けており、週に1度をベースに、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質を投与された。
【0091】
AIA力価は再度、実施例54により治療経過にわたって毎週、または出来るだけの頻度で測定された。配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質を投与されたイヌと比較して、この「野生型」患者集団でのクライアント犬は、配列番号32の非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質を投与されたときにインスリン抗薬剤抗体を示さなかった。正規化されたAIA力価の0.15は、クライアント犬が配列番号32に対して免疫原性であるとみなされる最小の測定値とされた。治療開始時にAIA力価がゼロではなかったクライアント犬については、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質で治療された後、AIAが2倍よりも高くなった場合に、当該クライアント犬は免疫原性であるとみなされた。
図9は、治療期間にわたり測定された、各クライアント犬の正規化AIA力価のプロットである。この「野生型」患者集団中の5匹のクライアント犬は、配列番号32の非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質を投与されたときにインスリン抗薬剤抗体を示さなかったことを示している。
図10に示されるように、配列番号29のインスリン-Fc融合タンパク質を投与されたイヌとは対照的であり、それら合計で12匹のイヌはインスリン抗薬剤抗体を示した一方で、配列番号32の非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質を投与されたイヌは抗薬剤抗体を示さなかった。
【0092】
まとめると、結果から、実験動物集団は別として、特定のFc融合タンパク質は予想外なことに、治療用ペプチド成分または治療用タンパク質成分に対する高力価抗体を誘導する可能性があること、そしてこの反応は、当該治療用ペプチド成分または治療用タンパク質成分のその後の投与で、急速にそして安定的に再誘導され得ることが示された。さらに、これら予備的なデータから、抗治療用タンパク質抗体または抗治療用ペプチド抗体の誘導は、すでに当該特定の治療用タンパク質または治療用ペプチドに対する免疫反応を発現していた個体において、より可能性が高くなることが示唆される。数多くの公開論文において、Fc融合タンパク質が、融合された治療用ペプチドまたは融合された治療用タンパク質に対する免疫寛容を誘導する可能性が示されており、そしてDNP、ヌクレオシドまたはペニシロイル基などのハプテンは、IgG担体と化学的に結合されたとき、高度に寛容原性のハプテン-担体コンジュゲートになったという結果であったが、今回の結果は、それとは正反対である。
【0093】
慢性疾患(すなわち、糖尿病)の治療に使用されるインスリンなどの治療用タンパク質にとって、抗インスリン抗体は、当該治療を無効化するものである。それでもなお、前述の結果から、例えばウイルス抗原に対する抗体を誘導し、その活性を中和するFc融合タンパク質を効率的に設計する方法についてのユニークな洞察がもたらされた。フィールド試験に基づくと、望ましいFc融合タンパク質は、最低でも、標的対象に対して本来のものでなければならず(例えば、ヒト対象についてはヒトFcまたはhFc、イヌ対象についてはイヌFcまたはdFc)、Fc-cNg部位で適切にグリコシル化されなければならず、そしてFc(ガンマ)I受容体に結合する能力を有していなければならない。これらの発見によって、例えば新規コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する新規治療用Fc融合タンパク質を開発する機会が与えられた。
【0094】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質
COVID-19のアウトブレイクは、公衆衛生上の重大な脅威である。原因病原体であるSARS-CoV-2ウイルスによる感染を予防するための安全で効果的な解決法に対する差し迫ったニーズが存在する。SARS-CoV-2スパイクタンパク質(SP)の受容体結合ドメイン(RBD)を含む表面糖タンパク質が特定されており、SARS-CoV-2 SP/RBDは、ヒトおよびコウモリのアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に強く結合することが判明している。SARS-CoV-2 SP/RBDは外来性抗原であり、この抗原とグリコシル化ヒト免疫グロブリンFc断片を含む融合タンパク質(本明細書において、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはSP/RBD-Fc融合タンパク質と呼称される)は、患者の既存抗体価を増幅することができる融合タンパク質、またはSARS-CoV-2に対して免疫反応がない、もしくは低い患者に新たな抗体価を誘導することができる融合タンパク質を生成するための有望なアプローチである。具体的には、患者にSARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルス抗体を産生させるのに有効な予防ワクチンまたはブースターワクチンにおいて使用するための融合タンパク質の作製方法および使用方法が、この差し迫ったニーズを満たすものであり、公衆衛生上の重要な価値を有する。
【0095】
ゆえに目的は、SARS-CoV-2表面糖タンパク質(またはそのアナログ)の一部、およびグリコシル化する傾向を有する部位または残基を含有するヒトFc断片(例えば、ヒトIgG1またはhIgG1)とを含むFc融合タンパク質を生成して、新たな様式で、患者に抗SARS-CoV-2抗体を高力価で迅速に産生させる抗原(SARS-CoV-2-SP/RBD)を提示する、製造可能性のあるコンジュゲートを生成することである。
【0096】
図2に示されるように、SP/RBD-Fc融合タンパク質は、ヒトIgG1 Fc部分に組み換え融合されたSP/RBDの二価アナログを含み、(i)
図12に示されるように、局所APCへのSP/RBD Agの集中的な送達を促進し、APCはFc(ガンマ)受容体を介してSP/RBD-Fcを内部移行させ、次いで処理し、SP/RBD断片をCD4+Th細胞に提示する。そして今度は
図12に示されるようにB細胞の活性化と、抗SARS-CoV-2 SP/RBD IgG(すなわち、Ab)の産生を促進(補助)する。さらに、より直接的でユニークな機序によって、SP/RBD-Fc融合タンパク質を、Ag-特異的B細胞受容体(BCR)を介して、既存のSARS-CoV-2特異的メモリーB細胞へと直接結合させる可能性もある。
図12に示されるように、かかる結合は、配列番号19のSP/RBDの二価性を介してBCRをクロスリンクさせて、活性化シグナルを誘発し、その結果、CD4+Th細胞の非存在下でも増殖と抗SARS-CoV-2 IgG産生の強化がもたらされる。さらに、細胞上で発現された胎児性FcR(FcRn)受容体へ結合することによって、多くのモノクローナルAb(mAb)治療剤が、血清半減期を長期化することが可能になるため、SP/RBD-Fc融合タンパク質のFc断片は、半減期を長期化させ、より多くのAPCに対するSP/RBDの生体暴露を強化するはずである。
【0097】
SARS-CoV-2の完全な表面糖タンパク質を、以下に示す(GenBank:QHD43416.1):
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT(配列番号1)
【0098】
GenBank QHD43416.1のSARS-CoV-2の表面糖タンパク質のスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(SP/RBD)は、以下に示されるように、アミノ酸330~アミノ酸583の表面糖タンパク質の一部を含む:
PNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLE(配列番号2)。
【0099】
スパイクタンパク質のRBDは、以下に示されるように、SARS-CoV-2表面糖タンパク質のアミノ酸331~524を含む。
NITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATV(配列番号8)
【0100】
例えばWO2018107117A1およびWO2020006529A1に記載される、過去に行われたインスリン-Fc融合タンパク質の研究によって、タンパク質配列、リンカー配列、およびFcドメイン組成の選択はすべて、潜在的にタンパク質の収量、純度および生体活性に影響を及ぼす可能性があることが実証されている。
【0101】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のウイルスタンパク質の選択において、SP/RBDの一部分を含む表面糖タンパク質のサブセットを選択する可能性が想定される。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2表面糖タンパク質のSP/RBDのすべて、または一部を含んでもよい。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2表面糖タンパク質のSP/RBDではない部分のすべて、または一部を含んでもよい。例として、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2表面糖タンパク質のRBDのすべて、または一部、およびSARS-CoV-2表面糖タンパク質のSP/RBDではない部分のすべて、または一部を含む。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片中のいくつかのアミノ酸は、本来の状態から変異される。
【0102】
インスリン-Fc融合タンパク質の製造経験に基づくと、ウイルスタンパク質設計が異なると、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のタンパク質収量も異なってくるであろう。例えば、配列番号8のSP/RBD配列の大きな部分、または小さな部分を選択し、および任意選択的に特定のアミノ酸を変異させることで、Fc融合タンパク質にとって望ましいウイルス部分が生成される可能性がある。選択されたウイルスタンパク質をFc断片に結合させたときに得られるタンパク質収量は、実験的に決定することができる。さらに、選択されたウイルスタンパク質とFc断片を結合させるリンカーの長さと組成も同様に、タンパク質の収量に影響を及ぼすであろう。Fc断片と、ウイルスタンパク質に結合されるFc断片ヒンジ領域部分の選択も同様である。
【0103】
図2は、本開示による例示的なSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の図を示す。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、例えばペプチドリンカーなどのリンカーを含んでもよい。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片は、Fc断片に直接結合されてもよく、すなわち、この場合、リンカーは存在しない。例として、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片中のいくつかのアミノ酸は、本来の状態から変異される。SARS-CoV-2表面糖タンパク質の一部を含む治療用タンパク質は、Fc断片のN末端側に位置づけられる。融合タンパク質は、以下のN末端からC末端に向かう方向性でドメインを含む:(N末端)-治療用タンパク質-リンカー-Fc断片-(C末端)(例えば、(N末端)-SARS-CoV-2ペプチド-リンカー-Fc断片-(C末端))。リンカーは省略されてもよく、その場合、融合タンパク質は、以下のN末端からC末端に向かう方向性でドメインを含む:(N末端)-治療用タンパク質-Fc断片-(C末端)(例えば、(N末端)-SARS-CoV-2ペプチド-Fc断片-(C末端))。
図2に示される融合タンパク質のSP/RBD断片は、宿主細胞において組み換え産生される融合タンパク質の一部として良好に発現されても、されなくてもよい(すなわち、実施例1でHEK細胞において産生され、実施例2でCHO細胞において一過性に産生され、または実施例3でCHO細胞において安定的に発現される)。
【0104】
以下の全ての記述において、引用されるアミノ酸の位置は、配列番号1のSARS-CoV-2表面糖タンパク質中のアミノ酸の位置を基準とする。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を生成する最初の試みにおいて、配列番号2の主要なウイルスSARS-CoV-2 RBDを短縮化し、最初のアミノ酸(330位)を排除した。得られた配列番号8のSARS-CoV-2 RBDのSP/RBD断片は、アミノ酸331~524を含むものであった。次いで、SP/RBD断片に新たな変異を導入した。最初に、331位と343位のアスパラギンを、グルタミンに変異させた(全体的な変異を、
図2に示す)。グリコシル化部位が多すぎると、Fc融合タンパク質を実施例1(HEK細胞)、実施例2(一過性CHO-SE(商標)細胞)、または実施例3(CHO細胞)により組み換え製造するときに、製造収量の低下につながると考えられたため、これらの変異を導入して、SP/RBD断片中のグリコシル化部位を減少させた。当該分子のSP/RBD断片上のグリカンは、抗体発現に必要とされる可能性がある重要なエピトープを隠蔽する場合がある。実施形態において、SP/RBD断片は、
図2に示されるようにFc断片のN末端側に位置する。
【0105】
さらに新たな変異をSP/RBD断片の391位に導入して、システインからメチオニンに変異させた。この変異は、対形成しないシステインを除去して、望ましくないタンパク質のフォールディングを防ぎ、HEK細胞またはCHO細胞で組み換え産生する間の望ましくないアーティファクトを防ぐために行われた。その結果得られた配列番号1のSARS-CoV-2表面糖タンパク質のSP/RBD断片アナログを以下に示す:
QITNLCPFGEVFQATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLMFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATV(配列番号9)。
【0106】
Clustal Omegaを使用して、配列番号2のSARS-CoV-2の天然型のSP/RBDと、SP/RBD断片アナログ(配列番号9)を並べて比較したものを、
図13に示す。「*」は、所与の配列位置での、全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。
【0107】
SP/RBD断片アナログ(配列番号9)は、リンカーGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号4)を使用して、以下の配列を含む天然型のヒトIgG1 Fc断片に結合された:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号6)
【0108】
ヒトIgG1断片上のN末端リシンは、上述のように、製造収量と純度を改善する試みで、配列番号6では除去されている。さらに、ヒトIgG1断片のcNg部位のアスパラギンは保存されて、宿主細胞中での融合タンパク質産生の間のグリカン付加が維持された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
QITNLCPFGEVFQATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLMFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号11)
【0109】
配列番号11のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1でHEK293細胞中で作製され、実施例4で精製された。予想外なことに、これにより高度に凝集したSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が生じ、ホモ二量体価は極めて低く、5mg/L未満であった。
【0110】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するための2番目の試みで、主要なSARS-CoV-2 RBD(配列番号2)配列を短縮化し、最初の103アミノ酸(配列番号1の330~432位のアミノ酸)を除去した。得られた配列番号1のRBD断片は、433~524位のアミノ酸を含み、3Dモデルにより、構造的に連続しているとみなされた。
【0111】
得られたSP/RBD断片アナログを以下に示す:
VIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATV(配列番号10)
【0112】
Clustal Omegaを使用して、SARS-CoV-2の天然型のSP/RBD(配列番号2)と、SP/RBD断片アナログ(配列番号10)を並べて比較したものを、
図14に示す。「*」は、所与の配列位置での、全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。
【0113】
配列番号10のSP/RBD断片アナログは、配列番号11のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で使用されたものと同じリンカーである、GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号4)を介して、以下の配列を含む天然型のヒトIgG1 Fc断片に結合された:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号6)
【0114】
ヒトIgG1断片上のN末端リシンは、上述のように、製造収量と純度を改善しようと試みて、配列番号6では除去されている。さらに、ヒトIgG1断片のcNg部位のアスパラギンは保存されて、宿主細胞中での融合タンパク質産生の間のグリカン付加が維持された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
VIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号12)
【0115】
配列番号12のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1でHEK293細胞中で作製され、実施例4で精製された。予想外なことに、これにより高度に凝集したSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が生じ、ホモ二量体価は極めて低く、1mg/L未満であった。
【0116】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するさらなる試みにおいて、SARS-CoV-2 RBDをさらに短縮化する代わりに、配列番号1のアミノ酸319~541位を含むようにSP/RBD配列のN末端およびC末端を伸長させることによって、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片を選択し、より良く発現され、フォールディングされ、そしてシステインと対形成することができる配列を生成した。得られた配列番号14のSP/RBD断片アナログを以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNF(配列番号14)
【0117】
Clustal Omegaを使用して、SARS-CoV-2の天然型のSP/RBD(配列番号2)と、SP/RBD断片(配列番号14)を並べて比較したものを、
図15に示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。一方で、「:」、「.」、またはスペースは、配列全体でのそれぞれ所与の配列位置で、保存的アミノ酸変異、中程度のアミノ酸変異、または非常に異なるアミノ酸変異を指す。
【0118】
1つの試みにおいて、リンカーも短縮化され、組成もGGGSGGG(配列番号3)へと変えられた。ヒトIgG1 Fc断片のヒンジ領域およびC末端リシンは元に戻され、配列番号7のFc断片が作製された。
SPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号7)
【0119】
ヒトIgG1断片のcNg部位のアスパラギンは保存されて、宿主細胞中での融合タンパク質産生の間のグリカン付加が維持された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(配列番号17)を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGSGGGSPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号17)
【0120】
実施例1でHEK293細胞中で作製された配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加することが予測される。
【0121】
さらなる試みにおいて、配列番号14のSARS-CoV-2 RBD断片、および配列番号3のリンカーが維持され、ヒトIgG1 Fc断片のC末端リシンが再度除去されて、配列番号33のFc断片が作製された。
SPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号33)
【0122】
ヒトIgG1断片のcNg部位のアスパラギンは保存されて、宿主細胞中での融合タンパク質産生の間のグリカン付加が維持された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGSGGGSPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号16)
【0123】
配列番号16のFc融合タンパク質は、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製された。配列番号16のFc融合タンパク質は、実施例5で精製された。配列番号16の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、ホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。配列番号16のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、139mg/Lであると計算された。
【0124】
実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で作製された、または実施例3でCHO細胞中で作製された配列番号16のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加することが予測される。
【0125】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するためのさらなる試みにおいて、配列番号14のSARS-CoV-2 SP/RBD断片が、配列番号11のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で使用されたものと同じリンカーであるGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号4)を介して、配列番号6を含むヒトIgG1 Fc断片に結合された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号18)
【0126】
配列番号18のFc融合タンパク質は、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製され、実施例5で精製された。実施例において、配列番号18の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製された配列番号18のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、ホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。配列番号18のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、124mg/Lであると計算された。
【0127】
実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で作製された、または実施例3でCHO細胞中で作製された配列番号18のSARS-CoV-2 Fc Hu融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加すること、および所与の濃度でOD450測定値が参照標準よりも高くなることが予測される。
【0128】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するためのさらなる試みにおいて、SARS-CoV-2 SP/RBDをさらに短縮化する代わりに、配列番号15において以下に示されるように、配列番号1のアミノ酸319~541位を含むようにSP/RBD配列のN末端およびC末端を伸長させることによって、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片を選択し、より良く発現され、フォールディングされ、そしてシステインと対形成することができる配列を生成した。
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVK(配列番号15)
【0129】
Clustal Omegaを使用して、SARS-CoV-2の天然型のSP/RBD(配列番号2)と、配列番号15のSP/RBD断片を並べて比較したものを、
図16に示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。一方で、「:」、「.」、またはスペースは、配列全体でのそれぞれ所与の配列位置で、保存的アミノ酸変異、中程度のアミノ酸変異、または非常に異なるアミノ酸変異を指す。
【0130】
リンカーも短縮化され、組成をGGGSGGGS(配列番号5)に変更した。そしてこのリンカーを使用して、SP/RBD断片を、配列番号6を含むヒトIgG1 Fc断片へと結合させた。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKGGGSGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号20)
【0131】
配列番号20のFc融合タンパク質は、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製され、実施例4で精製された。実施例において、配列番号20の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、配列番号20のホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。配列番号20のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、134mg/Lであると計算された。
【0132】
実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で作製された、または実施例3によりCHO細胞中で作製された配列番号20のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加すること、および所与の濃度でOD450測定値が参照標準よりも高くなることが予測される。
【0133】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するためのさらなる試みにおいて、SARS-CoV-2 SP/RBDをさらに短縮化する代わりに、配列番号15のSP/RBD断片が保持された。リンカーは除去され、配列番号15のSP/RBD断片は、配列番号6のヒトIgG1 Fc断片に直接結合された。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)
【0134】
配列番号21のFc融合タンパク質は、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製され、実施例4で精製された。実施例において、配列番号21の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製された配列番号21のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、ホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。タンパク質価は156mg/Lであり、ホモ二量体%は、98.7%であった。これにより、配列番号21のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、154mg/Lとなった。
【0135】
実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で作製された、または実施例3でCHO細胞中で作製された配列番号21のSARS-CoV-2 Fc Hu融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加すること、および所与の濃度でOD450測定値が参照標準よりも高くなることが予測される。
【0136】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を作製するためのさらなる試みにおいて、配列番号13において以下に示されるように、SP/RBDが配列番号1のアミノ酸319~591位を含むように、SP/RBD配列のC末端を伸長させることによって、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSP/RBD断片を選択した。
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCS(配列番号13)
【0137】
Clustal Omegaを使用して、SARS-CoV-2の天然型のSP/RBD(配列番号2)と、SP/RBD断片(配列番号13)を並べて比較したものを、
図17に示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。一方で、「:」、「.」、またはスペースは、配列全体でのそれぞれ所与の配列位置で、保存的アミノ酸変異、中程度のアミノ酸変異、または非常に異なるアミノ酸変異を指す。
【0138】
短縮化リンカーのGGGSGGGS(配列番号5)を使用して、配列番号13のSP/RBD断片を、配列番号6のヒトIgG1 Fc断片に結合させた。得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を以下に示す:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSGGGSGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号19)
【0139】
配列番号19のFc融合タンパク質は、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製され、実施例5で精製された。実施例において、配列番号19の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、ホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、204mg/Lであると計算された。
【0140】
ある実施形態で、配列番号19のFc融合タンパク質は、実施例3で安定的にトランスフェクトされたCHO細胞中で組み換え作製された。配列番号19のFc融合タンパク質は、実施例5で精製された。実施例において、配列番号19の融合タンパク質の構造は、実施例6で確認され、配列特定は、実施例7で実施された。作製されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価を得るために、ホモ二量体%を、実施例8で測定した。ホモ二量体価は、ホモ二量体%と、組み換え作製された融合タンパク質のタンパク質価を掛け合わせることによって計算された。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体価は、750mg/Lよりも高いと計算された。
【0141】
実施例3でCHO細胞中で作製された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体Iの結合は、実施例9で測定される。実施例16に記載され、
図19、
図20、
図21、
図22、および
図23で示されるように、ヒトのFc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIA、Fc(ガンマ)受容体IIB、Fc(ガンマ)受容体III、およびACE2受容体の結合のOD450測定値は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の濃度の関数として増加する。
【0142】
Clustal Omegaを使用して、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号14、および配列番号15のSP/RBDドメインを並べて比較したものを、
図80に示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。一方で、「:」、「.」、またはスペースは、配列全体でのそれぞれ所与の配列位置で、保存的アミノ酸変異、中程度のアミノ酸変異、または非常に異なるアミノ酸変異を指す。
【0143】
一次ワクチンとしての使用のためのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、一次ワクチンとして使用されてもよい。1つ以上の実施形態では、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、医薬組成物中で提供される。任意のタンパク質を注射することによって免疫反応を誘導することができる。反応の大きさとタイプは、各免疫システムの「状況」に高度に依存する。例えば、自己抗原(Ag)と比較して、外来性Agを注射した場合、免疫システムにより大きな免疫反応が誘導され、中枢および末梢の耐性機構が維持される。さらに、各Ag(例えば、ウイルス感染)に過去に暴露されてプライミングがされた免疫系に外来性Agを投与すると、Ag未感作の免疫系と比較して、より急速で高い免疫反応が惹起される。このプライミングの免疫学的な基盤は、以下の2つの要素からなる:1)Ag未感作の免疫系は、未感作のBリンパ球とTリンパ球を有し、それらはAgでプライミングされた免疫系のAgでプライミングされた「メモリー」細胞よりも、活性化の閾値が非常に高い。それゆえ、プライミングされたメモリーT細胞を活性化するためにAgを提示する抗原提示細胞(APC)が必要とするAgはずっと少ない。および2)Agプライミング暴露の間にメモリーT細胞が拡張するため、注入されたAgに再暴露された際、当該細胞の数は本来的により多くなる。主要なAPCは、樹状細胞(DC)およびマクロファージであり、自身の表面上の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子との複合体においてAgをT細胞Ag受容体に提示する事に留意されたい。
【0144】
APCは、Agへの反応の「程度」と「タイプ」の両方に影響を及ぼすことができる。B細胞は、液性免疫(抗体産生)によって直接免疫反応に関与し、さらに選択的捕捉とT細胞への抗原提示を行う特異的APCとして、T細胞の免疫反応にも関与する。これら両方の機能は、細胞表面のB細胞受容体(BCR)の活性化を通じて発揮される。BCRは本質的に膜結合型抗体であり、特定の抗原に特異的に結合する。例えば特異的抗原を含有するFc融合ホモ二量体などの多価可溶性抗原は、BCRによって認識され、BCRを活性化することができる。ゆえに、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fcタンパク質ホモ二量体は、抗原特異的BCRの活性化を通じてB細胞を活性化させることができ、それによって、抗体の産生が増加し、RBDに特異的な指向性を有するT細胞の活性が増大する。したがって、これら融合タンパク質は、投与後、液性免疫と細胞性免疫の両方を活性化する。より具体的には、誘導されたTh1型(細胞性)免疫は、すでにウイルスに感染している細胞を標的とする細胞傷害性T細胞、NK細胞やマクロファージなどの身体の細胞殺傷機構を活性化する。同時に、Th2型免疫では、Tヘルパー細胞がB細胞を刺激して、増殖およびプラズマ細胞へと分化させ、抗原特異的な抗体を分泌させる。これら抗体は、抗体誘導型細胞性障害(ADC)による感染制御を補助する。ADCは、感染細胞の表面上に提示された抗原に抗体が結合したときに発生し、NK細胞を誘導して、感染細胞を破壊させる。さらに抗体は、ウイルスに結合し、そして細胞とウイルスの相互作用を妨害して、最終的にはFc誘導型ファゴサイトーシスを介してウイルスを排除することによって、ウイルスの中和を補助する。
【0145】
アジュバント
例として、大部分のウイルス感染および細菌感染を除去するために、Th1細胞反応が必要される。この場合、ウイルス様物質または細菌様物質(非Ag性物質)が、APCの条件を整え、重要なサイトカインおよび表面共刺激性分子を発現させて、Ag提示中に、T細胞をTh1型になるように誘導する。実際に、このAPC活性化は、アジュバントと呼ばれる多くの免疫強化物質の概念的基礎となっている。
図18において、ワクチンアジュバントの一般的な機序を示す。主要なAPCは、樹状細胞(DC)およびマクロファージであり、自身の表面上の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子との複合体においてAgをT細胞Ag受容体に提示する事に留意されたい(
図1)。これらのAPCは、Agへの反応の「程度」と「タイプ」の両方に影響を及ぼすことができる。いくつかのアジュバントは、免疫系を騙して、注入されたワクチンAgが現在進行中の感染症の一部であるかのように反応させるように設計される(すなわち、感染性実体は、そのような天然ウイルスアジュバント物質または細菌アジュバント物質を提供する)。したがって、アジュバントはAPCを活性化して、未感作T細胞の活性化閾値を超えるのに必要なより高いAg提示能力をAPCに持たせ、それに加えて、各感染体を効率的に除去するためにTh1反応へとその分化を方向付ける。そのようなT細胞が、B細胞にとって重要な補助を提供し、B細胞は、各Agに特異的に結合して、Ag特異的抗体(Ab)力価を生成することに留意されたい(
図12)。
【0146】
一次ワクチンとして使用されるFc融合タンパク質は、アジュバントと同時投与されて、標的対象の免疫反応を強化または別方向に変更させ得る。アジュバントはAPCを活性化して、未感作T細胞の活性化閾値を超えるのに必要なより高いAg提示能力を持たせ、それに加えて、各感染体を効率的に除去するためにTh1反応へとその分化を方向付ける。例として、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の医薬組成物において公知のアジュバントを使用して、抗SARS-CoV-2抗体の誘導を強化してもよい。公知のアジュバントとしては、過去10年間、ヒト臨床試験中である三価または一価のインフルエンザワクチンであるパンデミックH1N1、H5N1、およびSARS-CoVワクチンを含む呼吸器系ウイルス感染症に使用されるアジュバントが挙げられる。
【0147】
本明細書に開示される医薬組成物において採用され得るアジュバントの例としては、限定されないが、水中油、非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩(AAHS)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、カリウムアルミニウム硫酸塩(Alum)、フロイントアジュバント(完全および/または不完全)、スクアレン、AS02、AS03、AS04、MF59、AS01B、QS-21、CpG 1018、ISCOMS、Montanide(商標)ISA-51、Montanide(商標)ISA-720、ポリラクチドコグリコリド(PLG)、モノホスホリルリピドA(MPL)、Detox、AGP [RC-529]、DC_Chol、OM-174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫刺激性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、修飾LTおよびCT、hGM-CSF、hIL-12、Immudaptin、Inert vehicles、例えば金粒子、ならびに例えばAdvax(オーストラリア)などのソースに由来する様々な実験用アジュバント、例えばAddaVax(Invivogen社)または他のAdvax系ワクチンアジュバントが挙げられる。
【0148】
例として、選択されるアジュバントは、MF59(Novartis社)やAS-03(GlaxoSmithKline社)であってもよい。MF59(Novartis社)のカスタム製剤、または例えばAddaVax(Invivogen社)などの同等物、またはVaxine Pvt Ltd.(オーストラリア)の他のAdvax系のワクチンアジュバントを、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の医薬組成物中に使用してもよい。好ましい実施形態では、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、Montanide(商標)ISA-720と同時投与されて、標的対象の免疫反応を強化する、または別方向に変化させる。オーストラリアにおいて、呼吸器系ウイルス感染症に使用される他の様々なアジュバントが、季節性三価インフルエンザワクチンにおいて、そしてパンデミックH1N1およびH5N1ワクチン(Protein Sciences社)とともに広く試験されており、最近では米国においてNIHにサポートされ、Sanofi Pasteur社により実施されるヒトインフルエンザワクチン試験でも検証されている。それらアジュバントをSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の医薬組成物で使用してもよい。
【0149】
1つ以上の実施形態では、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質製剤は、投与の現場で調製される。1つの態様では、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、滅菌混合条件下で、現場でアジュバントと混合される。1つの態様では、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質とアジュバントは、完全に混合され、および/または乳化されて、均質なエマルションが調製され、対象に投与される。皮下空間および筋肉内空間にはより多くの樹状細胞(DC)が存在するため、皮下(s.c.)注射または筋肉内(i.m.)注射の部位は強力な抗体反応を誘導する可能性が高く、そのため、Fc融合タンパク質またはその医薬組成物のアジュバント化製剤は、皮下(s.c.)注射または筋肉内(i.m.)注射によって患者に投与される。
【0150】
本開示の例示的なSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはその医薬組成物の治療を1回、または複数回、抗体未感作患者に投与した後、抗SARS-CoV-2抗体を実施例11で測定し、その中和能力を実施例13で評価した。本開示の例示的なSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはその医薬組成物を用いて、過去に抗体未感作だった患者を1回、または複数回の治療を行うと、治療後の抽出血清において、測定可能な抗SARS-CoV-2抗体力価が誘導されることが予測される。
【0151】
本明細書に記載されるように、例として、実施例11で測定されるように抗SARS-CoV-2抗体の量を増加させるために、および/または実施例13で測定されるように抗SARS-CoV-2抗体力価のウイルス中和能力を増加させるために、医薬組成物中にアジュバントを使用することが有益である場合がある。アジュバントの使用は、ウイルスに対して、またはSP/RBDに対して基盤となる免疫反応を保有していない抗体未感作患者において特に有益となる可能性がある。さらに、アジュバントは、時とともに免疫系の複数レベルで変化した結果である、加齢に伴い免疫能力が変化した、いわゆる免疫老化を経た老齢対象において有益である可能性がある。いったん患者が測定可能な抗体を有すると、SARS-CoV-2ウイルスで再チャレンジされた際、当該患者は非常に迅速な抗SARS-CoV-2抗体の発現を呈し、COVID-19に対する自身の防御を向上させる。
【0152】
マウスにおいて評価された一次SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合ワクチン
本開示の例示的なSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはその医薬組成物の有効性は、実施例12の手順に従い、マウス免疫化試験において様々な投与戦略を使用して、高力価の中和AB反応を誘導するその能力について最初に評価された。BALB/cマウスは、ワクチンの前臨床免疫原性評価に広く使用されている関連動物モデルである。この系統は、アジュバント化ワクチン候補および非アジュバント化ワクチン候補で免疫化された際に、安定的なAb反応を生じさせる。さらに、関連するAbアイソタイプやT細胞反応(例えば、Th1反応とTh2反応の比較など)をはじめとするワクチン接種に対する様々な免疫反応の動態と特性を評価するための、マウス特異的な試薬が幅広く利用可能である。ゆえにBALB/cマウスモデルを選択して、最適なAb反応を得るために必要なAg用量、アジュバントによる強化、投与経路および投与頻度に関して、SP/RBD-Fcワクチンの免疫原性を評価した。
【0153】
簡潔に述べると、標的マウス(BALB/cマウス)に、所定の間隔(例えば、3週ごと)で、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(アジュバントを含む、または含まない)またはその医薬組成物を最大で3回注射し、血清を定期的な間隔で採取した。血清抗SARS-CoV-2抗体の力価は、実施例10の手順または実施例11の手順に従い測定され、ACE2-SP/RBD結合を阻害する効力は、実施例13で評価された。実験的な変数としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の組成および用量レベル、注射回数、ならびにアジュバントのタイプが含まれた。
【0154】
実施例17に詳述されるように、1~100μgの用量レベルの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質によって、単回注射から21日後、および2回目の注射から14日後、有意な抗SP/RBD Ab力価が誘導されたことが示された。それぞれ
図25および
図26に示される。1μg~100μgに変化する用量レベルに対する、1回、2回および3回投与後の動態反応、すなわち反応期間は、
図27に示されるように、ワクチン接種から少なくとも56日まで全ての用量レベルで、抗SP/RBD Ab力価の上昇を示した。この結果によって、各投与から14日後、抗SP/RBD IgG Ab力価反応の測定可能な上昇が認められること、および全ての用量レベルについて、SP/RBD IgG Ab力価反応はそれぞれの追加投与が行われることで上昇し続けたことが強調される。
【0155】
実施例18において、配列番号2のSP/RBD単量体Ag(Fcを欠く)は、21日目で測定される免疫原性反応に関して有効ではなかったという事実から示されるように、有意な抗SP/RBD IgG Ab力価を誘導するためには、配列番号17の非アジュバント化SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc断片が必要であったという重要な結果が示された。
図28に示されるように、誘導されたFc断片を含む配列番号17の抗SP/RBD IgG Ab力価反応は、最初の投与から14日目であってもほぼ最大力価に達していた。一方でFc断片を欠く配列番号2のSP/RBD単量体Agは、21日後であっても事実上、抗SP/RBD IgG Ab力価反応を誘導しなかった。Fc部分の21日目での効果は、いくつかの用量レベルで維持されていたという点で、非常に安定的である。これら2つの非アジュバント化物質の間での免疫原性の差異から、融合タンパク質AgのFc部分の「内蔵式アジュバント」能力の重要性が示される。
【0156】
すでに検討されているように、アジュバントはAPCを活性化して、未感作T細胞の活性化閾値を超えるのに必要なより高いAg提示能力を持たせ、それに加えて、各感染体を効率的に除去するためにTh1反応へとその分化を方向付ける。実施例19において、すべてではないがいくつかの10μgの用量レベルの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含有するアジュバント化製剤が、1回の投与(
図29に示されるように21日目で測定された)、2回の投与(
図30に示されるように35日目に測定された)、および3回の投与(
図31に示されるように56日目に測定された)の後、およそ3~5倍にまで免疫原性を高めたことが示されており、このことから、アジュバント間で幅のある有効性が示唆される。特に3回目の投与から32日後(すなわち
図32に示されるように88日目に測定された)、全ての製剤で誘導された力価が有意に上昇を維持しており、このことから、最初の注射から3カ月の時点であっても、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質に対する免疫原性反応が持続していることが示唆される。
【0157】
ACE2-SP/RBD結合の阻害効力は、ID50値として計算される。この値は、血清サンプルによってACE2結合の50%が達成される希釈の逆数を表す。実施例20に記載されるように、誘導されたACE2-SP/RBD結合の阻害効力は、0日目の単回注射後21日目に、0日目および21日目の注射後42日目に、ならびに0日目、21日目および42日目の注射後、56日目および88日目に計算された。配列番号17の3回投与で免疫化されたマウスの免疫血清に関して計算されたID50値から、阻害効力が、最後の注射から32日後まで維持されていたという事実が示された(
図36)。さらにMontanide(商標)ISA 720アジュバントは一貫して、各時点で上位の効力を誘導した。Montanide(商標)ISA 720の結果は特に興味深く、このアジュバントで得られた総IgG力価は、他のアジュバント化製剤と比較してもそれほど強力ではなかったことを考慮すると予想外であり、Montanide(商標)ISA 720を用いることで、IgG分子当たり高い固有効力が誘導されたことが示唆される。これらのデータは、このワクチン開発プログラムに対し、リードアジュバント候補としてMontanide(商標)ISA 720を選択することを強くサポートするものである。
【0158】
60歳を超える人々は、より重症疾患に罹り易く、COVID-19による死亡率が高いことが判明した。ゆえに、老齢マウスにおいてSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の免疫反応誘導能力を評価することが重要である。老齢マウスの免疫系は、高齢者の老齢化した免疫系に対する信頼性のあるモデルである。
【0159】
実施例21の手順に従い、8~10カ月齢のBALB/cマウスを、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を用いて免疫化した。8カ月齢より高齢のマウスでは自然死亡率が高くなるため、およそ15匹のマウスを各試験群に割り当てた。10、30および100μgの用量レベルの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、アジュバントを伴わずに1回投与後(21日目に測定された)、2回投与後(35日目に測定された)、および3回投与後(56日目に測定された)、有意なIgG力価を誘導した。一方で、
図37、
図38、および
図39に示されるように、アジュバントは、10μgの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含む製剤におけるこの免疫原性を、強力に向上させた。若いマウスにおける免疫原性プロファイルと同様に、アジュバントのMontanide(商標)ISA 720を使用することで、56日目に測定したところ、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の阻害効力(ID50)は劇的に、および予想外に、アジュバントを含まないもので得られたレベルと比較して17倍まで強化された。さらに、Montanide(商標)ISA-720で得られた阻害効力(ID50)は他のアジュバントよりも優れていたことが再度確認された。重要なことは、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質によって誘導されたこの阻害効力は、アジュバントを含んでも含まなくても、ヒト回復期血清を上回ったことである(
図33、
図34、
図35、および
図36を参照のこと)。このことから、当該SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンの有望な有効性が示される。
【0160】
まとめると、上述のBALB/cマウスの結果から、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、SARS-CoV-2ウイルスのSP/RBDがACE2に結合することを阻害するという重要な可能性を有するIgG力価を充分に誘導することが実証された。さらに、Montanide(商標)ISA-720を用いた免疫化が、最も高い阻害効力を示したこと、およびこのアジュバントは、ヒトにおける反応原性の低下に対して策定されたものであることから、これをさらなる評価のリード開発候補アジュバントとして選択した。
【0161】
配列番号19の高収量SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を使用して、同様の試験を行った。実施例22で詳述されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例11の改善されたELISAフォーマットに従い測定されたとき、アジュバントの非存在下でも1μgおよび10μgの用量レベルで、マウスにおいて相当のIgG力価を誘導した。これは上述の配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の免疫原性プロファイルと一致しており、このことから、1回目(14日目)および2回目(35日目)の投与後の2つの用量レベル間での顕著な用量応答性が示される(
図40、
図41および
図42)。予測されたように、異なるアジュバントで製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、アジュバント非存在下のものと比較して、各投与後、実施例22で測定されたときに相当に高い力価を誘導した(1回目および2回目の投与後、約3~10倍)。そしてMontanide(商標)ISA 720は、各投与後、Ad-Vax-2と同様の有効性であり、一方でMontanide(商標)ISA 51の有効性は低かった。さらに、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例23で測定されたとき、強力なACE2-SP/RBD阻害効力(ID50値)を誘導した。この阻害効力は、各投与後で、ヒト回復期血清よりも有意に高かった(
図43、
図44および
図45)。Montanide(商標)ISA 720は、3回目の投与後、最も高い効力を達成したことに留意されたい。
【0162】
実施例24において、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、すべてのアジュバントで、相当なTh1促進性のIgG2a、IgG2bおよびIgG3アイソタイプ力価を誘導したことが立証された。この実施例において、Montanide(商標)ISA 720は一貫して、全ての時点で強力な増強を示した(
図48、
図49および
図50)。それに加えて、Th2促進性のアイソタイプであるIgG1力価は、Th1関連アイソタイプよりもおよそ10倍低い力価であった(
図47)。これらの結果から、Montanide(商標)ISA 720アジュバントは、配列番号19とともに送達された際、特にTh1反応への望ましいシフトを促進することによって、強力な増強効果を維持したことが実証される。このことから、投与回数を控えることができるという特徴が支持され、臨床リードアジュバントとしての選択が推奨される。
【0163】
マウスにおいてヒトIgG Fc構築物を使用することで有効性がどのように影響を受け得るかについて解明を試みることにより、SP/RBD-Fc融合タンパク質ワクチンの免疫原性に対する寄与という点でのFc断片の役割について、さらにマウスで調査した。マウスのIgG2aは、ヒトIgG1の機能性アナログである。実施例25に記載される実験は、i)Fc種のミスマッチが、SP/RBD-Fc融合タンパク質の基盤となる免疫原性の原因となり得るかどうか、およびii)動物モデルにおいてヒトIgG Fc構築物から得られた結果が、ヒトでの性能予測に適切であるかどうか、の決定を目的とした。
【0164】
配列番号19(ヒトFc)、およびマウスIgG2aを備えたマウスFcを含有する配列番号23を、アジュバントを含まずに用いて免疫化したところ、最初の投与または2回目の投与から14日後の抗SP/RBD IgG Ab力価の誘導に有意な差は示されなかった(14日目は
図51に示され、35日目は
図52に示される)。このことから、BALB/cマウス免疫原性モデルにおいて、ヒトFc抗原性配列は、天然型マウスFc配列と何も変わらず機能することが実証された。さらに、配列番号19、および配列番号23を、アジュバントを含まずに用いて免疫化したところ、最初の投与または2回目の投与から14日後のACE2-SP/RBD結合阻害効力に有意な差は示されなかった(14日目は
図53に示され、35日目は
図54に示される)。このことから、BALB/cマウス免疫原性モデルにおいて、ヒトFc抗原性配列は、天然型マウスFc配列と何も変わらず機能することが実証された。配列番号19と配列番号23の両方ともが、たった1回の投与後であっても、ヒト回復期血清(HCS)よりも高いACE2-SP/RBD結合阻害効力を示した。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(配列番号23)のマウス型が、マウスにおいて、そのままのSP/RBDタンパク質(配列番号2)と比較して免疫原性の強化を示したことを考慮すると、ヒト型は、ヒトにおいて、免疫原性の強化を示す可能性が高い。
【0165】
そのようなトランスレーショナルリサーチの促進において、組み換えACE2とSP/RBDの生化学的相互作用を妨害するこの阻害効力は、実施例15の手順に従い、プラーク減少中和試験(PRNT:Plaque Reduction Neutralization Test)において、SARS-CoV-2生ウイルスがVERO-E6生細胞に感染することを中和することで確認された。その結果を
図46に示す。
【0166】
冷蔵温度または室温でワクチンを保管し、および/または輸送する能力は、特に高度なコールドチェーン輸送と保管のインフラが無い国々におけるワクチンの効果的な分配に非常に重要である。実施例26は、新たに作製された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質/ISA 720エマルションのSP/RBD IgG Ab力価反応を生じさせる有効性と、調製後、1日間および7日間、4℃および25℃で保管された同エマルションとを比較したインビボ試験を記載する。
【0167】
実施例13に記載されるACE2結合阻害アッセイの結果から、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、1日間および7日間、4℃および25℃で保管されたエマルションの注射後と、新たに作製されたエマルションの注射後とを比較しても、マウスにおいて同様の阻害効力を誘導した。
図55に示されるように、新たに作製されたエマルションを注射された動物と、古くなったエマルションのいずれかを注射された動物との間で、ID50値に有意差は無かった(p>0.05)。
【0168】
アジュバントのMontanide(商標)ISA 720を含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンが、SARS-CoV-2ウイルスのバリアントに対しても有効であるかどうかを理解する試みにおいて、UK N501YウイルスバリアントのRBDアナログ断片(配列番号24)と、南アフリカE484KウイルスバリアントのRBDアナログ断片(配列番号25)を、実施例22でアジュバントのMontanide(商標)ISA 720を含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンを2回投与されて免疫化されたマウスの56日目の血清サンプルを使用して分析した。
図66は、Clustal Omegaを使用して実施された、配列番号2のSARS-CoV-2の天然型RBDと、UK N501YウイルスバリアントのRBDアナログ断片(配列番号24)と、南アフリカE484KウイルスバリアントのRBDアナログ断片(配列番号25)とを並べて比較したものを示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。
【0169】
血清サンプルを、プラスチックに結合した組み換えRBD野生型(Lake Pharma社、マサチューセッツ州ウースター)または変異体N501Y(UKバリアント、Sino Biological社、ペンシルバニア州ウェーンから提供)またはE484K(南アフリカバリアント、AcroBiosystems社、デラウェア州ニューアークから提供)に添加した。結合したRBD特異的IgGは、標識された抗マウスIgG二次抗体を用いて検出された。IgGのμg/mL力価は、マウスELISA参照血清の標準曲線から決定された。
図65に示される結果から、マウスの免疫血清は、野生型RBD分子と同様に、またはそれ以上に、組み換えRBD変異体のN501YとE484Kに結合したことが示される。このことから、UK(N501Y)および南アフリカ(E484K)のウイルスバリアントが、配列番号19誘導性の免疫を回避する可能性は低いことが示唆される。
【0170】
非ヒト霊長類において評価された一次SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合ワクチン
マウスから得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の免疫原性の結果を、ヒト臨床試験へと転換するために、Montanide(商標)ISA 720中で製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、より遺伝的に関連性のあるNHP種であるカニクイザルにおいて、実施例27および実施例28で試験した。Montanide(商標)ISA 720とともに製剤化された10μgおよび30μgの用量レベルの配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例11で測定されたとき、強力にIgG価を誘導した。当該実施例において、1回目および2回目の投与後、全ての時点で30μgの用量レベルは10μgの用量レベルよりも強い免疫原性を示した(
図60)。さらに、このIgG価の免疫原性プロファイルは、実施例13で測定された10μgおよび30μgの両方の用量レベルについて、ACE2-SP/RBD結合の阻害効力が、ヒト回復期血清の効力を上回ったという結果(
図61)と一致した。そのようなトランスレーショナルリサーチの促進において、組み換えACE2とSP/RBDの生化学的相互作用を妨害するこの阻害効力は、実施例28の手順に従い、プラーク減少中和試験(PRNT:Plaque Reduction Neutralization Test)において、SARS-CoV-2生ウイルスがVERO-E6生細胞に感染することを中和することで確認され、その結果を
図62に示す。これらの結果から、NHPでワクチン接種を試験することの意義が実証され、ヒトへのトランスレーションにとって価値あるガイダンスを提供する。
【0171】
さらに、アジュバントのMontanide(商標)ISA 720を含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンが、SARS-CoV-2ウイルスのバリアントに対しても効果的であったことを確認するために、実施例27で、アジュバントのMontanide(商標)ISAを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンの2回投与で免疫化された5匹のNHPの血清サンプルを、42日目に抽出し、その血清サンプルを、プラスチックに結合した組み換えRBDの野生型、または変異体のN501YもしくはE484Kに添加した。
図64に示される結果から、マウス試験と同様に、NHPおよびマウスの免疫血清は、野生型のRBD分子以上に、組み換えRBDの変異体のN501YおよびE484Kに結合した。
【0172】
配列番号19のワクチンの有効性を、アカゲザルのSARS-CoV-2チャレンジモデルを使用した実施例27の免疫化NHPにおいて評価した。0日目、2群のNHP(1群は実施例27でワクチン接種され、ブースター注射を投与された。もう1つの群は未感作とされた)に、SARS-CoV-2ウイルスをチャレンジさせた。チャレンジ前、および7日目に血液を採取した。鼻腔ぬぐい液、口腔ぬぐい液およびBAL液の収集は、チャレンジ前、ならびに2、4および7日目に行われた。終了後の剖検は、7日目に実施された。
【0173】
Montanide(商標)ISA-720を含む配列番号19で免疫化されたNHPは、ウイルスチャレンジ直前に、未感作対照NHPと比較して、有意な抗SP/RBD IgG価とACE2阻害のID50値を示した。未感作対照は、両アッセイとも僅かな、または検出不可能なレベルであった。鼻ぬぐい液(
図78)およびBALサンプル(
図79)において、チャレンジ後のSARS-CoV-2ウイルスゲノム価(実施例39)およびサブゲノムRNA価(実施例40)はごくわずかなレベルであったことから、COVID-19に対する防御における当該ワクチンの有効性が示される。サブゲノムRNA(sgRNA)は複製中間体であり、その存在数はウイルス複製の活性や宿主感染の重症度と関連していることを踏まえると、その数が少ないことは特に有望性を示す。まとめると、データから、Montanide(商標)ISA-720を含む配列番号19は、COVID-19から防御し、NHPにおいてCOVID-19疾患の悪化リスクはないことが結論付けられる。
【0174】
ウサギにおいて評価された一次SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合ワクチン
ニュージーランド白ウサギを使用した前臨床GLP毒性IND-enabling試験は、Sinclair Research, LLC(ミズーリ州オーバース)により実施された。実施例30、実施例31、実施例32、実施例33および実施例34に詳細が記載される。ウサギは、安定的なAb反応を生じさせ、ワクチン誘導型の免疫原性の前臨床試験に広く使用されている種であり、これを使用した。さらにウサギは、SARS-CoV-2ウイルスの受容体であるACE2を発現しているため、ウイルスはこれに結合し、動物に感染して、ヒトCOVID-19疾患に類似した疾患症状を発生させることができる。
【0175】
実施例31に記載されるように、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を30μgおよび100μgの用量レベルで注射されたウサギにおいて、1回目、2回目および3回目の注射の後に相当の特異的IgG価が誘導された(
図70および
図71)。実施例13に記載されるように、機能的阻害効力についても血清サンプルを評価した。このACE2阻害アッセイにおいて、アジュバント化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の30μgと100μgの用量レベルでの阻害効力に明白な用量応答性が存在した。効力は上昇し、2回目の投与から14日後には同等となった(
図72)。両時点での効力値は、ヒト回復期血清で得られた値を実質的に超えていた。この阻害効力は、実施例15の手順に従い、プラーク減少中和試験(PRNT:Plaque Reduction Neutralization Test)において、VERO-E6生細胞にSARS-CoV-2生ウイルスが感染することを中和することでさらに確認され、その結果を
図73に示す。
【0176】
ウサギで得られた結果から、ISA 720中で乳化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、COVID-19感染から回復したヒトにおいて見出されるレベルの機能的免疫原性を誘導したことが示された。これらの毒性試験結果を、公平な安全性プロファイルの見込みが求められる臨床へとあてはめた。主要試験の終了時に、被験物質に関連した死亡事例または臓器重量の変化は観察されなかった。投与フェーズの間の例えばフィブリノーゲンの増加などの軽度な作用は、Montanide(商標)ISA 720アジュバントによる可能性が最も高く、回復フェーズの間に治まった。予測された肉眼的および顕微鏡的な一過性の注射部位AEも、アジュバントによる可能性が高い。この毒性試験における免疫原性関連の臨床レベルを考慮すると、臨床試験への移行に際して懸念が生じ得る安全性の問題はないと結論付けられた。
【0177】
皮下(S.C.)送達経路と筋肉内(i.m.)送達経路を比較して、実施例33によりブリッジング試験で評価された。実施例13で測定された際、15日目、29日目および36日目の解析から、Montanide(商標)ISA 720での配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(100μgの用量レベル)のs.c.投与とi.m.投与との間に、抗RBD Ab価(
図74)またはACE2-阻害効力(
図75)の統計的有意差は示されなかった。このことから、臨床試験においていずれか投与経路の評価を行うことが支持される。
【0178】
新たに作製されたエマルションと、冷蔵温度で24時間保管された後の同エマルションとの間の差異は、15日目(1回投与後)、29日目(2回投与後)および36日目(3回投与後)に測定されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)の結果(実施例13で測定された)での下位集団試験を使用して分析された。マウス免疫原性試験(実施例26)に関して上述された結果と同じように、新たなエマルションと保管後エマルションとの間に阻害効力において統計的な差異はなかった。このことから、アジュバント化配列番号19製剤の性能は、
図76(皮下投与)および
図77(筋肉内投与)で示されるように、調製後少なくとも24時間は安定であることが示唆される。
【0179】
ブースターワクチンとしての使用のためのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質
例として、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、ブースターワクチンとして使用されてもよい。すでにSARS-CoV-2抗原に対して、低いが測定可能な抗体価を有する対象に融合タンパク質を投与して、その抗体価を増幅させることによって、対象の抗ウイルス防御が増強される。SP/RBD断片バリアントを合成して抗原性を最大化させつつ、配列番号2の天然型SARS-CoV-2 SP/RBDと比較して、Fc領域によって抗原の滞留時間を延長させる。任意の特定の機序仮説に拘束されることは望まないが、インビボでの長時間の滞留の間に、天然型グリコシル化ヒトFc断片が、SARS-CoV-2 RBDアナログ抗原を抗原提示細胞(APC)に提示すると考えられる。その結果、SARS-CoV-2 RBD抗原に対する強力な免疫反応が生じることが予測される。具体的には、APCがFc(ガンマ)受容体を介してSARS-CoV-2 RBD抗原を内部移行させ、次いで処理を行い、RBD断片(
図12)をCD4+T細胞に提示する。そして今度は当該T細胞が、B細胞の活性化と抗SARS-CoV-2 RBD IgG(すなわち、Ab)の産生を促進(補助)する(
図12)。
【0180】
図12に詳細に記載されるように、抗原提示細胞は例えば、樹状細胞(DC)、単球またはマクロファージであってもよく、それら細胞は、Fc受容体介在性のファゴサイトーシスを介して、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質分子を内部移行させることができる(例えば、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc領域の免疫細胞中のFc(ガンマ)受容体への結合を介して)。例えばDCサブセット(例えばcDC
2S)によるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc介在性取り込みによって、IL-10やIL-33の分泌を介した抗SARS-CoV-2 Tヘルパー2(Th2)細胞の発現が促進される。抗SARS-CoV-2 Th2細胞は、例えば抗原受容体をクロスリンクして、B細胞にTh2細胞を誘引させることによって、抗SARS-CoV-2 B細胞を活性化することができる。B細胞抗原受容体(BCR)介在性の取り込みを行うことによって、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のSARS-CoV-2 RBD断片が結合され、次いでSARS-CoV-2抗原が細胞内部位に送達される。細胞内部位で抗原は分解され、MHCクラスII分子に結合したペプチドとしてB細胞表面に戻る。ペプチドMHCクラスII複合体は、SARS-CoV-2特異的ヘルパーT細胞によって認識され、それら細胞を刺激してタンパク質を生成させる。次にB細胞が増殖され、その子孫細胞が、抗SARS-CoV-2抗体を分泌するB細胞へと分化する。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、Fc断片の存在によって長期間、抗原提示細胞にSARS-CoV-2 SP/RBD断片を直接露出させ得る。さらに、および上述のように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質中のグリコシル化Fc断片は、当該融合タンパク質の治療部分または抗原部分に対する非常に強力な免疫反応を誘導すると予測される。これら特性を組み合わることによって、抗ウイルス抗体の量が大幅に増加しながら、一方で求められる免疫反応を生じさせるために必要な抗原量が減少する。
【0181】
例として、配列番号19、配列番号16、配列番号18、配列番号20、または配列番号21のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、またはその医薬組成物を用いた患者の治療を含む治療法は、すでにSARS-CoV-2に対する抗体陽性である、COVID-19の回復患者に、抗体価とアフィニティを増幅させるための手段としてのブースターワクチンとして投与されてもよく、それによって、これら治療が為された患者はその後に当該ウイルスに直面したとき、感染を防ぎ、および/またはSARS-CoV-2ウイルス感染に関連した重篤な症状を防ぐのに充分な免疫を有する。さらに、配列番号19、配列番号16、配列番号18、配列番号20、または配列番号21のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、またはその医薬組成物を用いた患者の治療を含む治療法は、過去にSARS-CoV-2に対するワクチンで免疫化されている対象に、抗体価とSP/RBDに対する特異的アフィニティを増幅させるための手段としてのブースターワクチンとして投与されてもよい。そのような治療法は、ワクチンが100%有効ではない場合に重要であり、および/または誘導された抗体価が時間とともに減衰する場合に重要である。皮下空間や筋肉内空間にはより多くの樹状細胞(DC)が存在するため、s.c.注射部位またはi.m.注射部位には強い抗体反応が誘導される可能性が高いことから、例として、配列番号19、配列番号16、配列番号18、配列番号20、または配列番号21のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、またはその医薬組成物は、皮下注射(s.c.)または筋肉内注射(i.m.)によって患者に投与されてもよい。
【0182】
マウスおよびNHPにおいて評価されたブースターSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合ワクチン
ブースターワクチン使用の有効性を、マウスにおいて評価した。詳細は実施例12に記載される。BALB/cマウスに、所定の間隔(例えば、3週ごと)で、いくつかのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはその医薬組成物を最大で3回注射し、血清を定期的な間隔で採取した。血清SARS-CoV-2 SP/RBD IgG抗体価は、実施例10および実施例11の手順に従い測定された。その中和能力は、実施例13により評価された。実験的な変数としては、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の組成および用量レベル、注射回数、ならびにアジュバントのタイプが含まれた。免疫化されたマウスは、抗体価が基準値/最低値に減衰するまでさらに30~60日間、未処置のまま置かれ、その後、追加の一連のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質またはその医薬組成物の注射を受けて、リコール(メモリー)免疫反応が評価され得ることが予測される。
【0183】
Montanide(商標)ISA 720を含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のブースターとしての使用に関する分析において、最初に10μgまたは30μgの用量の融合タンパク質をNHPに注射し、実施例27に記載される定期的な間隔で血清を採取する。抗体価が減衰した3カ月~4か月半後、NHPに、30μgの用量レベルでブースターワクチン(3回目の注射)を注射した。
図63に示されるように、すべての場合で、ブースターワクチンは強力なメモリー免疫反応を誘発させた。
【0184】
Fc融合タンパク質の作製
実施形態において、実施例の項に詳細に記載されるように、融合タンパク質を細胞に発現させることができる。
【0185】
発現および精製
Fc融合タンパク質は、例えば哺乳動物細胞や非哺乳動物細胞などの真核細胞において組み換え発現することができる。発現に使用される哺乳動物細胞の例としては、HEK細胞(例えば、HEK293細胞)またはCHO細胞が挙げられる。CHO細胞は様々な株やサブクラス(例えばCHO DG44、CHO-M、CHO-SE(商標)およびCHO-K1)に再分類されることができ、これら細胞株の一部は、実施例の項に記載されるように、特定のタイプの核酸分子(例えばDNAを含有するベクター)または特定の細胞増殖培地組成での最適使用のために遺伝子操作されてもよい。細胞は、Fc融合タンパク質をコードする核酸分子(例えば、ベクター)をトランスフェクトされてもよい(例えば、Fc融合タンパク質全体が、1つの核酸分子によってコードされる)。HEK293細胞に、Fc融合タンパク質をコードするベクターをトランスフェクトしてもよいが、このプロセスはFc融合タンパク質の一定期間の一時的な発現(例えば、3日、4日、5日、7日、10日、12日、14日またはそれ以上)のみを発生させるものであり、その後、宿主細胞は適切なレベルのFc融合タンパク質の発現を停止させる(すなわち、一過性トランスフェクション)。HEK293細胞を、Fc融合タンパク質をコードする核酸配列を用いて一過性にトランスフェクトすることによって、より速く組み換えタンパク質を作製できることが多く、このため、複数のFc融合タンパク質候補を作製し、スクリーニングすることが容易になる。例として、CHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞に、Fc融合タンパク質をコードするベクターをトランスフェクトするが、このプロセスはFc融合タンパク質の一定期間の一時的な発現(例えば、3日、4日、5日、7日、10日、12日、14日またはそれ以上)のみを発生させるものであり、その後、宿主細胞は適切なレベルのFc融合タンパク質の発現を停止させる(すなわち、一過性トランスフェクション)。CHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞を、Fc融合タンパク質をコードする核酸配列を用いて一過性にトランスフェクトすることによって、より速く組み換えタンパク質を作製できることが多く、このため、複数のFc融合タンパク質候補を作製し、スクリーニングすることが容易になる。宿主細胞DNA内に永続的に組み込まれるベクターをCHO細胞にトランスフェクトしてもよく、それにより、当該細胞が適切に培養される限り、Fc融合タンパク質の一貫した永続的な発現(すなわち安定的トランスフェクション)がもたらされる。Fc融合タンパク質をコードする核酸を安定的にトランスフェクトされたCHO細胞およびCHO細胞株はしばしば開発まで時間がかかるが、多くの場合、それら細胞は高収量のタンパク質を産生し、低コスト製品の製造により適している(例えば、獣医薬品市場で使用される製品)。細胞および細胞株は、当分野で標準的な方法を使用して培養することができる。
【0186】
例として、Fc融合タンパク質は、(例えば、細胞を溶解させることによって)細胞から精製され、または単離され得る。Fc融合タンパク質は細胞によって分泌され、そして細胞が増殖した細胞培養培地から精製され、または単離され得る。Fc融合タンパク質の精製には、カラムクロマトグラフィー(例えばアフィニティクロマトグラフィー)の使用、またはサイズ、電荷および/もしくは特定の分子に対するアフィニティにおける差異に応じて他の分離方法の使用が含まれ得る。Fc融合タンパク質の精製には、例えば、プロテインAビーズまたはプロテインAカラムを使用することによって、Fc断片を含むタンパク質を選択または濃縮する工程が含まれる。当該プロテインAビーズまたはプロテインAカラムは、中性溶液pHで、Fc断片を含むタンパク質を、プロテインAビーズに共有結合されたプロテインAに高いアフィニティで結合させる。次いで結合したFc融合タンパク質は、溶液変数を変化させる(例えば溶液pHを低下させる)ことによって、プロテインAビーズから溶出され得る。例えばイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはゲルろ過クロマトグラフィーなどの他の分離方法も、代替的に、または追加的に採用され得る。Fc融合タンパク質の精製は、タンパク質調製物のろ過または遠心分離、様々なサイズの多孔質膜を通した透析ろ過、限外ろ過およびろ過、ならびに賦形剤を用いた最終製剤化をさらに含んでもよい。
【0187】
精製されたFc融合タンパク質は、様々な方法を使用して純度、タンパク質収量、構造および/または活性について特徴解析されてもよい。方法としては、例えば280nmでの吸光度(例えばタンパク質収量を決定するため)、サイズ排除電気泳動もしくはキャピラリー電気泳動(例えば、分子量、凝集率および/または純度を決定するため)、質量分析(MS)および/もしくは液体クロマトグラフィー(LC-MS)(例えば、純度および/またはグリコシル化を決定するため)、ならびに/またはELISA(例えば、SARS-CoV-2抗体またはACE2に対するアフィニティなどの結合の程度を決定するため)が挙げられる。特徴解析方法の例も、実施例の項に記載される。
【0188】
一過性トランスフェクトされたHEK細胞での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のタンパク質収量は、5mg/L、10mg/L、または20mg/Lより高くてもよく、より好ましくは50mg/Lより高くてもよい(例えば、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/Lより高い)。一過性トランスフェクトされたHEK細胞での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体%は、70%よりも高い(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高い)。一過性トランスフェクトされたHEK細胞での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体価は、Fc融合タンパク質収量とホモ二量体%の積として計算され、50mg/Lより高くてもよい(例えば、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/Lより高い)。
【0189】
例として、一過性トランスフェクトされたCHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞における産生とプロテインA精製の後のFc融合タンパク質のタンパク質収量は、5mg/Lまたは10mg/Lよりも高い。好ましい実施形態では、一過性トランスフェクトされたCHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞における産生とプロテインA精製の後のFc融合タンパク質のタンパク質収量は、20mg/Lよりも高い(例えば、30mg/L、40mg/L、50mg/L、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/Lよりも高い)。一過性トランスフェクトされたCHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体%は、70%よりも高くてもよい(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高くてもよい)。実施形態において、一過性トランスフェクトされたCHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体価は、Fc融合タンパク質収量とホモ二量体%の積として計算され、20mg/Lより高い(例えば、30mg/L、40mg/L、50mg/L、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/Lより高い)。
【0190】
安定的トランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞株またはCHO細胞クローン)における産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のタンパク質収量は、Fc融合タンパク質100mg/Lよりも高くてもよい(例えば、mg/培養培地L)。実施形態において、安定的トランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞株またはCHO細胞クローン)での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のタンパク質収量は、50mgFc融合タンパク質/培養培地Lよりも高い(例えば、100mg/L、200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600mg/Lまたはそれ以上)。安定的トランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞株またはCHO細胞クローン)での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体%は、70%よりも高くてもよい(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高くてもよい)。実施形態において、安定的トランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞株またはCHO細胞クローン)での産生と、プロテインA精製の後のFc融合タンパク質のホモ二量体価は、Fc融合タンパク質収量とホモ二量体%の積として計算され、150mg/Lよりも高い(例えば、200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600mg/Lまたはそれ以上)。
【0191】
医薬組成物および投与経路
医薬組成物中のFc融合タンパク質の量および濃度、ならびに対象に投与される医薬組成物の量は、例えば対象の医学的に関連性のある特性(例えば年齢、体重、性別、他の医学的状態など)、医薬組成物中の化合物の可溶度、化合物の効力と活性、および医薬組成物の投与様式などの臨床上関連性のある因子に応じて選択することができる。
【0192】
本開示の製剤は、非経口投与に適した製剤を含む。「非経口投与」および「非経口投与される」という文言は、本明細書で使用される場合、腸内投与および局所投与以外の投与様式を意味し、通常は静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射による投与様式を意味する。
【0193】
本開示の医薬組成物において採用され得る適切な水性担体および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、エタノール、塩、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、例えばオリーブ油などの植物油、ならびに例えばオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、例えばリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムなどの緩衝剤、例えば塩酸および/または水酸化ナトリウムなどのpH緩衝剤などが挙げられる。例えばレシチンなどのコーティング物質や乳化物質の使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズを維持することにより、および例えばTweenなどの界面活性剤などの界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。例として、(例えば、本明細書に記載される)医薬組成物は、Tweenなどの界面活性剤、例えばポリソルベート-20、Tween-20またはTween-80を含む。例として、(例えば、本明細書に記載される)医薬組成物は、Tweenなどの界面活性剤、例えばTween-80を、約0.001%~約2%、または約0.005%~約0.1%、または約0.01%~約0.5%の濃度で含む。
【0194】
Fc融合タンパク質は、ボーラスとして、点滴として、または静注として投与されてもよく、またはシリンジ注射、ポンプ、ペン、針、もしくは留置カテーテルを介して投与されてもよい。Fc融合タンパク質は、皮下ボーラス注射によって投与されてもよい。皮下空間および筋肉内空間にはより多くの樹状細胞(DC)が存在するため、皮下(s.c.)注射または筋肉内(i.m.)注射の部位は強力な抗体反応を誘導する可能性が高く、そのため複数の実施例では、Fc融合タンパク質またはその医薬組成物は、皮下(s.c.)注射または筋肉内(i.m.)注射によって患者に投与される。導入方法は、再充填可能なデバイスまたは生分解性デバイスによって提供されてもよい。タンパク質性のバイオ医薬品をはじめとする薬剤の送達制御に関して、近年、様々な徐放性ポリマーデバイスが開発され、インビボで試験されている。生分解性ポリマーや非分解性ポリマーの両方を含む、様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用してインプラントを形成し、特定の標的部位で化合物を持続的に放出させることができる。組成物中で使用される薬学的に許容可能な追加的成分としては、緩衝剤、塩、安定剤、希釈剤、保存剤、抗生物質、等張剤などが挙げられる。
【0195】
用量
使用の際、治療有効量のFc融合タンパク質が、その必要のある対象に投与される。Fc融合タンパク質を投与することによって、対象において免疫反応が惹起され、より具体的にはコロナウイルス感染、より具体的にはSARS-CoV-2またはバリアントに対する免疫反応が惹起される。免疫反応は、観察可能な臨床症状の消失、もしくは通常感染対象によって呈される臨床症状の低下、ウイルス出芽の減少、感染から回復までの時間が速くなること、および/または感染期間が短くなることによって示される。別の実施形態では、感染部位または疾患部位で免疫細胞を活性化させる方法が提供され、当該方法は、治療有効量のFc融合タンパク質を哺乳動物に投与することを含む。別の態様では、対象において抗体産生を増加させる方法が提供され、当該方法は、治療有効量のFc融合タンパク質を哺乳動物に投与することを含む。
【0196】
本明細書に記載される治療法および予防法は、ヒトならびに限定されないが、イヌ、ネコおよび他のコンパニオン動物、ならびにげっ歯類、霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタを含む任意の適切な温血動物に適用可能であることが理解される。当該方法は、臨床試験および/または研究にも適用可能である。
【0197】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という文言は、望ましい治療レジメンに従い投与されたとき、感染症状の一部もしくはすべてを軽減する、または感染傾向を減少させることを含む、望ましい治療的もしくは予防的な効果または作用を惹起させる、本開示に適するであろうFc融合タンパク質の治療量または予防量を指すことを意味する。その状態が完全には消失または防止されなくても、状態もしくは状態による症状、および/または状態による作用が対象において部分的に改善され、または軽減されれば、当業者は、治療的に「有効」とみなされ得る量と認識する。Fc融合タンパク質の治療有効用量は、対象の大きさや種に応じて、および投与様式に従って変化し得る。
【0198】
Fc融合タンパク質の実際の用量レベルは、特定の対象にとって望ましい治療反応を発生させるのに有効な活性成分の量を取得するために変化する可能性がある。選択された用量レベルは、採用された特定の融合タンパク質、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用された特定の化合物の排出速度、治療期間、他の薬剤、採用された特定の融合タンパク質と併用して使用される化合物および/または物質、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、一般健康状態および既往歴、ならびに医学分野に公知の類似因子をはじめとする様々な因子に依存する。一般的に、Fc融合タンパク質の適切な用量は、治療効果を生じさせるのに有効な最低用量である量である。そのような有効量は概して、上述の因子に依存する。
【0199】
様々な態様において、投与を容易にするために、および用量の均一性のために、単位剤形で免疫原性製剤が提供される。本明細書で使用される場合、「単位剤形」とは、治療される対象に対する単位的な用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体に関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含有する。単位剤形の仕様は、賦形剤および治療剤に固有の特徴、ならびに実現される特定の生物学的効果に影響を受け、およびそれらに直接的に依存する。1つ以上の実施形態では、製剤は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を対象に投与するための構成要素のキットとして提供される。1つ以上の実施形態では、適切な担体中に分散されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含む医薬組成物は、単位剤形(例えば、バイアル)で提供される。1つ以上の実施形態では、キットはさらに、投与用のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を現場で混合するためのアジュバントおよび/または他の担体系を含む別個の単位剤形(例えば、バイアル)を含む。1つ以上の実施形態では、キットは、投与用の免疫製剤を現場で混合するための1つ以上の乳化用の針およびシリンジを含む。1つ以上の実施形態では、キットは、対象に調製済みの免疫原性組成物を投与するための1つ以上の投与用シリンジを含む。1つ以上の実施形態では、キットはさらに、免疫原性組成物の調製に関する説明書、および/または免疫原性組成物の投与に関する説明書を含む。
【0200】
上述の手順による例において、および以下の実施例において、1μg~100μgの用量レベルのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が、マウスおよびウサギにおいて単回注射から21日後、顕著な抗SP/RBD Ab価を誘導したことが示された。例として、10μg~30μgの用量レベルが、非ヒト霊長類において有効であった(
図60、
図61および
図62を参照のこと)。ウサギにおける反応動態から、100μgの用量レベルによって、1回目、2回目および3回目の投与後、最も高い免疫原性(IgG Ab価として)が誘導されたことが実証された(アジュバントを含まない場合は
図69を参照、Montanide(商標)ISA-720アジュバントを含む場合は
図71を参照)。
【0201】
配列番号17の免疫原性に関する初回の評価は、6~8週齢のメスのBALB/cマウスにおいて、実施例17で実施された。当該マウスは、表1に示されるように、アジュバントを含まず配列番号17を0.05、0.1、0.3、1、3、10、30または100μg投与され、またはアジュバントを含み、配列番号17を3μgまたは10μg投与された(すべてのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質:アジュバント混合物は、50%:50%であった。ただし、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質:Montanide(商標)ISA 720は、30%/70% v/vで混合された)。それに加えて、Fc融合部分がない配列番号2を、免疫原性へのFc断片の寄与を調べるために評価した。
【0202】
【0203】
本開示は、前述の医薬組成物または医薬調製物のいずれかでのFc融合タンパク質の製剤を予期するものである。さらに本開示は、前述の投与経路のいずれかを介した投与を予期するものである。当業者であれば、適切な製剤、用量レベルおよび投与経路を、治療される状態、ならびに治療される患者の全般的な健康状態、年齢および身長に応じて選択することができる。
本発明は以下の通りである。
[1]ウイルス受容体結合ドメインおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、前記ウイルス受容体結合ドメインおよび前記Fc断片が、ペプチドリンカーなどの任意選択的なリンカーにより連結され、前記ウイルス受容体結合ドメインが、以下の配列:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCS(配列番号13)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNF(配列番号14)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVK(配列番号15)、
またはその機能的断片を含む、融合タンパク質。
[2]前記Fc断片が、以下の配列:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号6)、もしくは
PKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号33)、
またはその機能的断片を含む、上記[1]に記載の融合タンパク質。
[3]前記リンカーが、存在する場合、以下の配列:GGGSGGGS(配列番号5)、またはGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号27)を含む、上記[1]または[2]に記載の融合タンパク質。
[4]前記融合タンパク質が、以下の配列:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGSGGGSPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号16)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号18)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSGGGSGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号19)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKGGGSGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号20)、もしくは
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)、
またはその機能的断片を含む、上記[1]に記載の融合タンパク質。
[5]前記融合タンパク質がホモ二量体である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の融合タンパク質。
[6]前記Fc断片がグリコシル化されたものである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の融合タンパク質。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体を含む、免疫原性組成物。
[8]アジュバントをさらに含む、上記[7]に記載の免疫原性組成物。
[9]前記アジュバントがMontanide(商標)ISA-720である、上記[8]に記載の免疫原性組成物。
[10]前記融合タンパク質が前記アジュバントで乳化されたものである、上記[8]または[9]に記載の免疫原性組成物。
[11]前記組成物が注射製剤である、上記[7]~[10]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[12]前記組成物が皮下投与用に適合される、上記[7]~[11]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[13]前記組成物が予防ワクチン用に適合される、上記[7]~[12]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[14]前記組成物が治療ワクチン用に適合される、上記[7]~[12]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[15]前記融合タンパク質が前記担体中に分散されたものである、上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[16]対象において抗原に対する抗体産生を増加させる方法であって、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[17]前記融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前に、前記対象が前記抗原に対して測定可能な抗体価を有する、上記[16]に記載の方法。
[18]前記融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前に、前記対象が抗体未感作である、上記[16]に記載の方法。
[19]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が注射を介して投与される、上記[16]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が、皮下投与される、または筋肉内投与される、上記[19]に記載の方法。
[21]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が単位剤形として提供される、上記[16]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記融合タンパク質または免疫原性組成物がアジュバントと同時投与される、上記[16]~[20]のいずれかに記載の方法。
[23]投与用に前記融合タンパク質または免疫原性組成物を調製することをさらに含み、前記調製が前記投与前に前記融合タンパク質または免疫原性組成物とアジュバントを予め混合することを含む、上記[16]~[20]のいずれかに記載の方法。
[24]前記予め混合することが、前記アジュバントと前記融合タンパク質を乳化してエマルションを得ること、および前記エマルションを前記対象に投与することを含む、上記[23]に記載の方法。
[25]対象においてウイルス感染(好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染)に対する免疫反応を誘導する方法であって、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[26]前記融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前に、前記対象が前記ウイルス感染に対して測定可能な抗体価を有する、上記[25]に記載の方法。
[27]前記融合タンパク質または免疫原性組成物の投与前に、前記対象が抗体未感作である、上記[25]に記載の方法。
[28]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が注射を介して投与される、上記[25]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が、皮下投与される、または筋肉内投与される、上記[29]に記載の方法。
[30]前記融合タンパク質または免疫原性組成物が単位剤形として提供される、上記[25]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記融合タンパク質または免疫原性組成物がアジュバントと同時投与される、上記[25]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32]投与用に前記融合タンパク質または免疫原性組成物を調製することをさらに含み、前記調製が前記投与前に前記融合タンパク質または免疫原性組成物とアジュバントを予め混合することを含む、上記[25]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33]前記予め混合することが、前記アジュバントと前記融合タンパク質を乳化すること、および前記エマルションを前記対象に投与することを含む、上記[32]に記載の方法。
[34]上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質の製造方法であって、HEK293細胞またはCHO-SE細胞に前記融合タンパク質をコードする核酸を一過性にトランスフェクトすることを含み、前記トランスフェクトされたHEK293細胞またはCHO-S細胞が前記融合タンパク質を発現する、またはCHO細胞に前記融合タンパク質をコードする核酸を安定的にトランスフェクトすることを含み、前記組み換えCHO細胞が前記融合タンパク質を発現する、方法。
[35]前記融合タンパク質が前記細胞によって細胞培養培地内に分泌され、前記培地から前記融合タンパク質を精製または単離することをさらに含み、前記精製された融合タンパク質または単離された融合タンパク質の収量が、前述の発現系のいずれかにおいて20mg/Lより多い、上記[34]に記載の方法。
[36]上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質を発現するように操作された、細胞。
[37]前記細胞が前記融合タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトされたものである、上記[36]に記載の細胞。
[38]前記細胞がHEK293細胞またはCHO細胞である、上記[36]または[37]に記載の細胞。
[39]上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする、cDNA。
[40]上記[39]に記載のcDNAを含む、発現ベクター。
[41]治療に使用するための、および/または医薬品として使用するための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[42]対象の抗体産生の増加に使用するための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[43]ウイルス感染(好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染)の治療および/または予防に使用するための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[44]予防ワクチン、治療ワクチン、および/またはブースターワクチンとしての上記[34]に記載の使用のための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[45]ウイルス感染(好ましくはSARS-CoV-2ウイルス感染、より好ましくはCOVID-19感染)の治療および/または予防における使用のための、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群から選択される、融合タンパク質、またはそれらの医薬組成物。
[46]ウイルス感染の治療および/または予防のための医薬品の製造における、上記[1]~[6]のいずれかに記載の融合タンパク質の使用、または上記[7]~[14]のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
【実施例】
【0204】
本発明技術は、以下の実施例によってさらに解説される。しかしこれら実施例は、例示を目的として提供されるものであり、本発明技術の全体的な範囲に対する限定と解釈されるべきものはないことを理解されたい。
【0205】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の合成、精製およびバリデーションに関する一般的な実施例
実施例1:HEK293細胞におけるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、以下のように合成された。対象の遺伝子配列は、独自のソフトウェア(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)を使用して構築され、高発現哺乳動物ベクターにクローニングされた。HEK293細胞を振とうフラスコに播種し、その24時間後、トランスフェクションを行い、無血清既知組成培地を使用して増殖させた。対象のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をコードするDNA発現構築物を、一過性トランスフェクションに関する(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)標準操作手順を使用してHEK293細胞の懸濁液内に、一過性にトランスフェクションした。20時間後、細胞を数え、生存率および生きている細胞数を決定し、力価をForteBio(登録商標)Octet(登録商標)(Pall ForteBio LLC、カリフォルニア州フレモント)により測定した。一過性トランスフェクション生産が行われている間、追加で読み取りを行った。培養物を、5日目以降に回収した。
【0206】
実施例2:一過性トランスフェクトされたCHO細胞におけるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、以下のように合成された。対象の遺伝子配列は、独自のソフトウェア(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)を使用して構築され、ヒトFc融合タンパク質特異的な高発現ベクターにクローニングされた。CHO-SE(商標)(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)細胞を振とうフラスコに播種し、その24時間後、トランスフェクションを行い、無血清既知組成培地(MEDNA Bio社)を使用して増殖させた。対象のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をコードするDNA発現構築物を、一過性トランスフェクションに関する標準操作手順(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)を使用してCHO-SE細胞の懸濁液内に、一過性にトランスフェクションした。ほぼ24時間後、細胞を数え、生存率および生きている細胞数を決定し、力価をForteBio(登録商標)Octet(登録商標)(Pall ForteBio LLC、カリフォルニア州フレモント)により測定した。一過性トランスフェクション生産が行われている間、追加で読み取りを行った。培養物を、7日目以降に回収した。
【0207】
実施例3:安定的トランスフェクトされたCHO細胞におけるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
CHO細胞株は元々CHO-K1(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)から誘導された株であり、内因性のグルタミン合成酵素(GS)遺伝子が、当分野に公知の方法を使用した組み換え技術によってノックアウトされた。安定的発現DNAベクターはCHO発現とGS選択に対して設計および最適化されており、高発現哺乳動物ベクター(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)に組み込まれた。スケールアップ実験を開始する前に、それぞれ完了構築物の配列が確認された。懸濁液に適合したCHO細胞は、既知組成培地(CD OptiCHO;Invivogen社、カリフォルニア州カールスバッド)中、加湿5%CO2インキュベーターにて37℃で培養された。CHO細胞の培養において、血清や他の動物由来産物は使用されていない。
【0208】
指数関数的増殖相の間にCD OptiCHO培地中で増殖した約8000万個の懸濁液適合CHO細胞を、MaxCyte(登録商標)STX(登録商標)システム(MaxCyte, Inc.、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を使用して、 80μgのDNAをエレクトロポレーション法によりトランスフェクトし、各SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(DNA構築物は、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の全長配列を含む)の安定的CHO細胞株を作製した。24時間後、トランスフェクトされた細胞を計数し、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合遺伝子の安定的統合に関する選択圧下で播種した。トランスフェクトされた細胞を、振とうフラスコ中、0.5×106細胞/mLの細胞密度で、0~100μMのメチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCD OptiCHO選択培地内に播種し、37℃、5% CO2でインキュベートした。CHO安定的プールが増殖速度と生存率を取り戻すまで、選択プロセスの間、2~3日ごとに細胞をスピンダウンし、新鮮な選択培地中に再懸濁させた。細胞培養物は、増殖と力価についてモニタリングされた。
【0209】
細胞は、1mL当たり2.5×106 細胞まで増殖した。細胞貯蔵のために回収した時点で、生存率は95%を超えていた。次いで細胞を遠心分離し、細胞沈殿物を、7.5% ジメチルスルホキシド(DMSO)を含むCD OptiCHO培地中で、1バイアル、1mL当たり15×106細胞の細胞数まで再懸濁した。バイアルは、液体窒素中で貯蔵用に凍結保存された。
【0210】
小規模なスケールアップ生産を、以下のようにCHO細胞を使用して実施した。37℃で100μM MSXを含有するCD OptiCHO増殖培地における生産のために、細胞をスケールアップして、およそ14~21日間、必要に応じて2~4日ごとに、グルコースと必要に応じて追加アミノ酸を補充されたCD OptiCHO増殖培地を供給した。安定的プール生産から回収された馴化培地の上清を、遠心分離により清浄化させた。結合緩衝液で予め平衡化されたプロテインA(MabSelect、GE Healthcare社、英国リトルチャルフォント)カラムにタンパク質を流した。次いで、OD280値(NanoDrop、ThermoScientific社)が、バックグラウンド値かほぼその近傍値に測定されるまで、洗浄緩衝液をカラムに通した。低pH緩衝液を使用してSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を溶出させ、溶出分画を集め、各分画のOD280値を記録した。標的のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含む分画をプールし、任意で0.2μMの膜フィルターを使用してろ過した。
【0211】
任意で細胞株をさらにモノクローナルになるまでサブクローニングしてもよく、および任意でさらに高力価SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc-融合タンパク質を発現するクローンを、当分野に公知の方法である限界希釈法を使用して選択してもよい。高力価のモノクローナル性SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を発現する細胞株を取得した後、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の産生は、上述のようにMSXを含まない増殖培地中で行われ、または任意でMSXを含む増殖培地中で行われ、CHOで産生された組み換えSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含有する細胞培養上清を得た。高い産生量能力を有するクローン株に対してさらに選択を行うために、任意でMSX濃度を経時的に上昇させてもよい。
【0212】
実施例4:HEK293細胞で産生されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の精製
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の精製は、以下のように行われた:分泌されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含有する馴化培地の上清を、一過性トランスフェクトされたHEK293細胞産物から回収し、遠心分離で清浄化させた。所望のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含む上清をプロテインAカラムに流し、洗浄して、低pH勾配を使用して溶出した。その後、所望のタンパク質を含む溶出分画をプールし、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に緩衝液交換した。最終ろ過工程は、0.2μmの膜フィルターを使用して行われた。最終タンパク質濃度は、280nmでの溶液光学密度から計算された。必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換ビーズ樹脂またはカチオン交換ビーズ樹脂を使用)、ゲルろ過クロマトグラフィーまたは他の方法によって追加の任意選択的な精製が行われた。
【0213】
実施例5:CHO細胞で産生されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の精製
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の精製は、以下のように行われた:分泌されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含有する馴化培地の上清を、一過性トランスフェクトされたCHO細胞または安定的トランスフェクトされたCHO細胞の産物から回収し、遠心分離で清浄化させた。所望のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を含む上清をプロテインAカラムに流し、洗浄して、低pH勾配を使用して溶出した。その後、所望のタンパク質を含む溶出分画をプールし、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に緩衝液交換した。最終ろ過工程は、0.2μmの膜フィルターを使用して行われた。最終タンパク質濃度は、280nmでの溶液光学密度から計算された。必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換ビーズ樹脂またはカチオン交換ビーズ樹脂を使用)、ゲルろ過クロマトグラフィーまたは他の方法によって追加の任意選択的な精製が行われた。
【0214】
実施例6:非還元CE-SDSまたは還元CE-SDSによる、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の構造確認
キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)解析を、LabChip(登録商標)GXII(Perkin Elmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)において、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0の緩衝液に溶解されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc精製融合タンパク質に対して行い、電気泳動図がプロットされた。非還元条件下では、サンプルは分子量(MW)が判明しているタンパク質標準に対して流され、溶出ピークは、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ホモ二量体の「見かけ上の」MWを表している。
【0215】
還元条件下(SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ホモ二量体のジスルフィド結合を壊すためにベータ-メルカプトエタノールを使用)で、得られたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質単量体の見かけ上のMWを、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ホモ二量体の分子量の半分と比較して、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の構造純度が正確である可能性が高いことを判定する1つの手段とした。
【0216】
実施例7:グリカン除去を用いたLC-MSによるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の配列特定
質量分析法(MS)を介してSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の質量の正確な推定値を得るために、最初にサンプルを処理して、自然発生的なグリカンを除去する。当該グリカンは、MS分析に干渉する可能性がある。200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に溶解させた2.5mg/mL SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の100μLを最初に、Zeba脱塩カラム(Pierce社、ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して5mM EDTAを含む0.1M Tris、pH8.0緩衝液へと緩衝液交換する。1.67μLのPNGase F酵素(Prozyme N-glycanase)をこの溶液に加えて、融合タンパク質中に存在するN結合型グリカン(例えば、cNg-N部位に位置するアスパラギンの側鎖に結合したグリカン)を除去して、混合物を37℃で一晩、インキュベーター中でインキュベートする。次いでサンプルをLC-MS(NovaBioassays社、マサチューセッツ州ウォバーン)により分析して、当該分子の質量を得る。この質量は、グリカンを含まない所望のホモ二量体に相当する。cNg-アスパラギンからグリカンを除去するために使用された酵素プロセスは、アスパラギン側鎖からアミノ基も除去してアスパラギン酸を形成する。その際、酵素処理されたホモ二量体は全体で2Da増加し、ホモ二量体中に存在する各鎖については1Daの質量に相当するため、次いでこの質量をさらに補正する。したがって、分析サンプル中のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質構造のそれぞれの酵素修飾を補正するため、実際の分子の質量は、測定された質量から2Daを差し引いたものとなる。
【0217】
実施例8:サイズ排除クロマトグラフィーによる、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のホモ二量体%
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)は、280nMの波長で2998光ダイオードに接続されたWaters 2795HT HPLC(Waters Corporation社、マサチューセッツ州ミルフォード)を使用して実施された。100μL以下の対象SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質含有サンプルを、MAbPac SEC-1、5μm、4×300mmカラム(ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)に注入し、当該装置は0.2mL/分の流量で操作され、移動相は、50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、および0.05% w/v アジ化ナトリウム、pH6.2を含有した。MAbPac SEC-1カラムは、分子サイズ分離の原理に基づき動作する。したがって、大きな可溶性のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc凝集体(例えば、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ホモ二量体の多量体)は速い保持時間で溶出され、非凝集体のホモ二量体は遅い保持時間で溶出される。分析的SEC-HPLCを介して凝集した多量体型ホモ二量体からホモ二量体混合物を分離する際、非凝集型ホモ二量体の割合%を単位としてSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質溶液の純度も確認された。
【0218】
実施例9:SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のインビトロでのFc(ガンマ)受容体、FcRn受容体、およびACE2受容体の結合アフィニティ
pH7.4でのFc(ガンマ)受容体に対するSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の結合は、以下のようにELISAアッセイを使用して実施された。哺乳動物受容体として、ヒトFc(ガンマ)受容体のI、IIa、IIb、IIIおよびFcRn受容体を使用した。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を希釈して、pH9.6の重炭酸ナトリウム緩衝液中、10μg/mLとした。これをMaxisorp(Nunc社)マイクロタイタープレートに一晩4℃でコーティングした。その後、マイクロプレートストリップをPBST(PBS/0.05% Tween-20)緩衝液を用いて5回洗浄し、Superblockブロッキング試薬(ThermoFisher社)を用いてブロッキングした。ビオチニル化rhFc(ガンマ)受容体(組み換えヒトFc(ガンマ)RI、Fc(ガンマ)RIIa、Fc(ガンマ)RIIb、Fc(ガンマ)RIII、FcRn、R&D Systems社)の連続希釈を、PBST/10% Superblock緩衝液中で、6000ng/mLから8.2ng/mLに調製し、100μL/ウェルで、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質でコーティングされたマイクロプレートストリップ上へとローディングした。組み換えヒトACE2受容体は、R&D Systemsから購入し、公知のコンジュゲート手段を使用してビオチニル化する。次いでPBST/10% Superblock緩衝液中で6000ng/mLから8.2ng/mLに調製し、100μL/ウェルを、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をコーティングしたマイクロプレートストリップ上にローディングする。マイクロタイタープレートを室温で1時間インキュベートし、その後、マイクロタイタープレートをPBSTで5回洗浄して、次いでPBST/10% Superblock緩衝液中で1:10000希釈されたストレプトアビジン-HRPを100μL/ウェルでローディングする。45分間インキュベートした後、マイクロプレートストリップをPBSTで5回再度洗浄する。TMBを添加して、結合したFc(ガンマ)受容体、FcRn受容体またはACE2受容体タンパク質を明らかにし、ELISA停止試薬(Boston Bioproducts社)で停止させる。450nmでELISAプレートリーダーにおいてプレートを読み取り、OD値(SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのrhFc(ガンマ)受容体、FcRn受容体またはACE2受容体のそれぞれの結合に比例する)を、各ウェルに添加されたrhFc(ガンマ)受容体、FcRn受容体またはACE2受容体のそれぞれの対数濃度に対してプロットして、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線を作成する。
【0219】
血清中のSARS-CoV-2 RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の作用を評価するためのインビボ血清アッセイに関する一般的な実施例
実施例10:ヒト血清またはマウス血清中のSARS-CoV-2 RBD IgG抗体価を評価するためのインビボ定量的ELISA
定量的なSARS-CoV-2 SP/RBD特異的IgG ELISAを使用して、ヒトもしくはマウスの血清または血漿(熱不活化血清または熱不活化血漿を含む)中の抗SP/RBD IgG Ab価を測定する。ELISA法は、96ウェルのマイクロタイターELISAプレートのプラスチックウェルに固定された組み換えSP/RBDを捕捉抗原として使用する(
図81参照)。当該抗原は、マイクロプレートウェル中でインキュベートされた際、血清サンプル中の抗SP/RBD特異的抗体(IgG)に結合する。洗浄工程を行って結合していないタンパク質をすべて除去し、プレートに結合した抗SP/RBD IgGはそのままの状態におく。抗SP/RBD抗体は、血清サンプルの種起源に応じて、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた抗ヒトまたは抗マウス IgG抗体(IgMとの交差反応性はない)の添加によって検出される。結合していないHRP抗体コンジュゲートを取り除くために2回目の洗浄を行った後、3,3’,5,5’-トリメチルベンジジン(TMB)を各ウェルに添加する。TMBはHRP酵素によって触媒されて比色変化を起こす。当該変化は、結合したHRP抗体コンジュゲートの量に比例する。酸を添加して色の発現を停止させ、各ウェルの色密度を分光光度マイクロプレートリーダーを使用して測定する。SoftMax ProソフトウェアまたはGen 5ソフトウェアを、吸光データの獲得と、標準曲線を使用した各サンプル値の分析に使用する。標準曲線は、プラスチックウェルに直接結合され(すなわち、ウェルは結合したSP/RBDを含まず、血清サンプルも含まない)、血清サンプルについて上述されるように発色された、量が判明している(μg/mL)精製ヒトIgGサンプルまたは精製マウスIgGサンプルの連続希釈を使用して作成される。各血清サンプルのSP/RBD特異的抗体の量(すなわち、力価)は、μg/mLの単位で表され、標準曲線から、適切なソフトウェア(例えば、SoftMaxProまたはGen 5)による4パラメーター曲線適合モデルを使用して導かれる。
【0220】
実施例11:マウス血清およびNHP血清中のSARS-CoV-2 RBD IgG抗体価を評価するためのインビボ定量的ELISAの改善
定量的なSARS-CoV-2 SP/RBD特異的IgG ELISAを使用して、マウスもしくはNHPの血清または血漿(熱不活化血清または熱不活化血漿を含む)中の抗SP/RBD IgG Ab価を測定する。ELISA法は、96ウェルのマイクロタイターELISAプレートのプラスチックウェルに固定された組み換えSP/RBD(LakePharma社)を捕捉抗原として使用する(
図81参照)。当該抗原は、マイクロプレートウェル中でインキュベートされた際、血清サンプル中の抗SP/RBD特異的抗体(IgG)に結合する。
【0221】
SPD/RBDタンパク質(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)を、Carb/Bicarbコーティング緩衝液pH9.6中で2.5μg/mLに希釈し、ボルテックスして混合する。100μL/ウェルのコーティング溶液をマイクロチャンネルピペットを使用してMaxisorb ELISAプレートの全ウェルに添加する。プレートをプレートシーラーで覆い、一晩2~8℃でインキュベートした。プレート洗浄機を使用してプレートをPBSTで5回洗浄し(300μL/ウェル/洗浄)、全ての非結合タンパク質を取り除く。300μLのSuperblockブロッキング溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間超インキュベートする。
【0222】
標準的なマウス血清またはNHP血清を希釈して、種特異的なアッセイ様式に応じて標準曲線を作成する。第一標準を作成するために、高力価抗SP/RBDで陽性であることが判明しているマウス血清サンプルまたはNHP血清サンプルを1:10に希釈し(20μLの各サンプルに、180μLのサンプル希釈緩衝液を加える)、ボルテックスにより完全に混合する。残りの標準は、1:10サンプルの2倍連続希釈により作成する。標準マウスサンプルまたは標準NHPサンプルの各希釈を、各プレートにデュプリケイトで100μL/ウェルで入れる。
【0223】
血清サンプルまたは血漿サンプルを1:100に希釈し(4μLの各サンプルに、396μLのサンプル希釈緩衝液を加える)、ボルテックスにより完全に混合する。ブロッキング溶液をプレートのウェルから廃棄して、プレートをプレート洗浄機を使用してPBSTで5回洗浄する(100μL PBST/ウェル/洗浄)。100μLの希釈標準サンプルを、各プレートの列1および列2の各ウェルに入れる。100μLの希釈被験血清サンプルを、残りのウェルに加える。被験プレートをシーリングテープで覆い、室温で1時間インキュベートする。
【0224】
10μLの抗マウスまたは抗NHPのIgG-Fc HRPと、9.99mLの1 X HRPコンジュゲートストック安定液をボルテックスにより良く混合して、1:1000のストック溶液を作製する。さらに、300μLの1:1000希釈と11.7mLのPBST/SBをボルテックスすることによって、ストック溶液をさらに希釈し、1:40,000希釈を作製する。プレート洗浄機を用いて、300μL PBST/ウェル/洗浄で5回プレートを洗浄し、プレートを紙タオルでパッティングして乾かした。
【0225】
1ウェル当たり、100μLの1:40,000希釈の抗マウスまたは抗NHPのIgG-Fc HRPを加え、プレートを室温、暗所で1時間インキュベートする。次いでプレート洗浄機を用いてプレートを300μL PBST/ウェル/洗浄で5回洗浄し、dH2O(300μL dH2O/ウェル/洗浄)で手動で1回洗浄する。次いでプレートを紙タオル上でパッティングして乾かす。TMB溶液を、100μL/ウェルで一度に一列ずつ、列1から始まり列12までの順序で等しい時間間隔で順番に加え、次いで発色をモニタリングしながら暗所で10~20分間インキュベートする。TMB基質溶液で前に行われたのと同じ列1から始まり列12までの順序で、同じ時間間隔で、100μL/ウェルの停止試薬を加えることによって発色を停止させる。各ウェルの色密度を、450nMで分光光度マイクロプレートリーダーを使用して30分以内に測定する。SoftMax ProソフトウェアまたはGen 5ソフトウェアを、吸光データの獲得と、標準曲線を使用した各サンプル値の分析に使用する。
【0226】
OD値と比較した濃度(1/標準マウスサンプルまたはNHPサンプルの希釈の対数)を使用して、標準曲線を作成する。サンプル中の抗体価は、最も高いR2値を生じさせた標準曲線上の10~12点を通る直線回帰によって分析される。値は、RBD-特異的IgG価として報告される(参照(Ref.)力価単位)。
【0227】
実施例12:マウスでの抗SP/RBD IgG Ab力価反応の誘導における、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc製剤の有効性に関するインビボの一般的な前臨床評価
様々なSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質製剤の有効性を評価するためのインビボ試験は、以下のようにマウスにおいて実施される:
【0228】
6~8週齢のメスのBALB/cマウス、または8~10週齢のメスのBALB/cマウス(Jackson Laboratories社、メーン州バーハーバー)を少なくとも7日間馴化させ、その後体重を測定し、投与の試験群に割り当てる。高齢のマウスを使用して、高齢者(例えば、70歳超)におけるSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質製剤の有効性のモデルとする。6~8週齢の群当たり、N=5匹のマウスを使用し、8~10週齢の群当たり、N=15匹のマウスを使用する。マウスは各試験群に無作為に割り当てられる。自動的に換気されるラックにおいて、1ケージ当たり5匹でマウスは維持され、標準的な照射済み食品とろ過水を自由に与えられる。識別用にマウスの耳にタグを付け、試験ケージは動物ID、試験名および試験群識別名でラベルされる。標準操作手順書(SOP)および特定の試験プロトコルに従い、個々の投与シートおよび群の投与シート、血液/血清収集シート、体重測定および健康観察記録を含む試験の記録が行われる。
【0229】
実施例1で一過性トランスフェクトされたHEK293細胞、実施例2で一過性トランスフェクトされたCHO細胞、もしくは実施例3で安定的トランスフェクトされたCHO細胞で合成されたSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、または購入して得たSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDを最大で3つの用量で投与する。皮下(s.c.)注射または筋肉内(i.m.)注射を介して、投与は3週間離して行われる(0日目、21日目および42日目)。何等かの即時型反応について、用量投与から1~3時間マウスを観察し、その後は全般的な健康状態について毎日観察する。全てのマウスに、最初の免疫化の7~14日前、その後は各用量投与から12日~14日後、顎下腺静脈穿刺を介して非末梢採血を行い、SARS-CoV-2 RBD AgG Ab力価評価のための血清サンプルを得る。採取された血液を凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例10または実施例11に記載される方法によるELISAで抗体分析することを目的に凍結する。
【0230】
3回目の免疫から12日後または14日後に最後の血清採取をした後(すなわち、54~56日目)、実質的な抗体反応を示したマウス群、および非免疫化対照群を維持して、さらなる評価を行ってもよい。維持されたマウスについて、3回目の投与から30日後および60日後(それぞれ72日目および102日目)に、顎下腺静脈穿刺法により各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例10、実施例11および実施例13に記載される方法によるELISAで抗体分析することを目的に凍結する。
【0231】
実質的な抗体反応を示したことにより維持されるマウスには、s.c.注射、i.m.注射またはi.d.注射により102日目にSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のブースター投与を行う。何等かの即時型反応について、投与から1~3時間マウスを観察し、その後は全般的な健康状態について毎日観察する。最後のブースター投与から12日~14日後に、顎下腺静脈穿刺法により各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例10、実施例11および実施例13に記載される方法によるELISAで抗体分析を行い、各群におけるリコール(メモリー)免疫反応を評価することを目的に凍結する。
【0232】
様々なアジュバント(例えば、Advax-2、Advax-3、VacAdx、Montanide(商標)ISA-51、Montanide(商標)ISA-720またはその代用品)がSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質と組み合わされて検証されてもよい。適切なv/v比のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質とアジュバントを、マウスに投与する直前に混合/乳化する。
【0233】
実施例13:SARS-CoV-2-スパイクタンパク質-RBDへのACE2の結合の中和における、SARS-CoV-2抗体の有効性を評価するためのインビボの一般的な血清学的アッセイ
組み換えSP/RBDへの組み換えヒトACE2の結合を阻害する、血清中に存在する阻害性抗SP/RBD IgG力価のレベルを測定するようにACE2阻害に関する酵素結合免疫吸着法(ELISA)を設計する。アッセイにおいて血清サンプルを連続希釈することにより、サンプルの効力値である阻害希釈50%(ID50)が得られる。この値は、ACE2結合シグナル全体の50%が発生する希釈を表す。アッセイを使用して、例えばヒト、NHP、マウスおよびウサギなどの複数の種に由来するサンプルを評価することができる。その結果、任意のサンプルのID50値を任意の他のサンプル値と比較して、種間での比較や、個別の実験間での比較が行えるようになる。
【0234】
このアッセイは競合阻害ELISAであり、連続希釈された血清サンプルとビオチニル化ヒトACE2(ビオチン-huACE2、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を、96ウェルプレートのプラスチックウェルに結合した組み換えSP/RBDタンパク質に添加して、SP/RBDに対する競合結合が行われる。血清サンプル中に存在するIgG(すなわち抗体)の阻害(すなわち中和)のレベルは、SP/RBDに対するビオチン-huACE2結合の阻害の程度と相関する。血清とビオチン-huACE2を洗い流した後、SP/RBDに結合したビオチン-huACE2に結合するストレプトアビジン-HRP(Thermo Fisher社、マサチューセッツ州ウォルサム)を添加する。その後洗浄し、TMB基質の添加を行って発色させる。HRP(酵素)/TMB(基質)の反応を、停止試薬(1% H2SO4)の添加により停止させ、色強度(光学密度、OD)を、450nmの波長でマイクロプレートリーダーにより測定する。各サンプルのID50効力値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用し、4パラメーター曲線適合(対数-阻害剤と反応の比較、変動のある傾斜)アルゴリズムを介して、非競合ビオチン-huACE2によって得られる合計シグナル(すなわち最大OD450値、100%)のちょうど50%に相当する希釈の逆数として計算される。
【0235】
実施例14:ウサギにおける、GLP毒性試験に対する抗SP/RBD IgG Ab力価反応の誘導における、SARS-CoV-2 RBD製剤の有効性を評価するためのインビボの一般的な定量ELISA
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質製剤の毒性を評価するためのインビボ試験は、以下のようにウサギにおいて実施される:
【0236】
配列番号19誘導性の免疫原性アッセイはELISAであり、当該ELISAにおいて、ウサギ非臨床試験血清サンプル中に存在する抗SP/RBD抗体は、マイクロタイターウェル上にコーティングされたSARS-CoV-2 SP/RBDを使用して捕捉され、次いでHRP酵素コンジュゲート抗ウサギIgG H+L-HRP二次抗体により検出され、その後TMB基質システムが行われる。標準曲線(1000ng/mL~1.37ng/mL)は、サンプル希釈レベルに合致して正常ウサギ血清を一定割合で含有する緩衝液内に添加されたSARS-CoV-2(2019-nCoV)スパイクRBD抗体ウサギpAbを使用して作成される。(例えば、被験サンプルが1:100に希釈される場合、1%正常血清緩衝液を使用して、標準曲線が作成される)。血清サンプル中の抗SP/RBD抗体濃度は、SoftMaxソフトウェアを使用した4-パラメーター標準曲線適合に内挿することによって、分析される。3つの陽性アッセイ対照(高QC、中QC、低QC)および陰性対照(陰性QC)は、ウサギpAbを緩衝液内に添加することによって調製され、単回融解用途の分注物として-20℃で凍結保存された。(これらQCは、正確さと精度を評価するためのバリデーションアッセイでも使用された。)特定のバリデーション試験(例えば、短期安定性、凍結/融解安定性)のための追加サンプルは、ウサギポリクローナル抗SP/RBD抗体を直接ウサギ血清内に添加することによって調製された。バリデーションを目的として、サンプル希釈緩衝液において、最低必要希釈(MRD)を1:100とし、バリデーションを行う間に使用される血清サンプルにこれを使用して、実際の試験血清サンプルに使用されるMRDと合致させた。血清サンプルを必要とする、または血清含有緩衝液を必要とするほとんどのバリデーション作業は、再構築された正常ウサギ血清を使用して実施されたが、実際の試験血清サンプルをより良く表すために、プールされた正常ウサギ血清(BioIVT)も使用して、直線性や定量限界などの選択パラメーターが試験された。
【0237】
バリデーションの間に判定されるように、当該アッセイのアッセイ内およびアッセイ間の正確性は、ゼロ以外の3つすべてのQC値で88~117%の範囲であり、アッセイ内およびアッセイ間の精度は、すべてのQC値でそれぞれ6~10%および1~11%の範囲である。プールされた血清を使用した場合、LLOQは、2ng/mLであると決定され、それに対して正常血清では1ng/mLと決定された。ULOQは、プールされた血清では500ng/mLであることが判明し、一方で正常血清では1000ng/mLであった。プール血清がより近く被験サンプルを表しているため、LLOQとULOQは、それぞれ2ng/mLと500ng/mLで設定された。当該アッセイは、これら定量限界の間で直線的であることが判明したが、約1000ng/mLを超えると顕著なフック効果が観察された。抗体が非常に高濃度で添加されたときに測定される値は、192ng/mLという低さであることが判明した。(この結果に基づき、試験サンプルの分析中に192ng/mLを超えて測定されたサンプルはすべて希釈レベルを上げて再試験された)添加回収試験は、11個の異なる血清サンプル間で正確であり、回収は高添加レベル(400ng/mL)で74~105%の範囲、中添加レベル(80ng/mL)で91~117%の範囲、低添加レベル(10ng/mL)で86~98%の範囲であった。添加された血清サンプルは、少なくとも3回の凍結融解サイクル(93~118%の回収)、4℃で最大で1週間(90~93%の回収)、および室温で4時間(92~106%の回収)を通じて安定的であることが判明した。これらのバリデーションの結果から、配列番号19の免疫原性ELISAは、正確性が高く、再現性があり、目的に適合していることが示された。
【0238】
実施例15:プラーク減少中和試験(PRNT)
中和Ab(nAb)力価は、プラーク減少中和試験(PRNT)によって判定される。簡潔に述べると、血清は30分間、56℃で熱不活化され、次いでマイクロタイタープレート中で2倍連続希釈される。希釈されたウイルス懸濁液を希釈サンプルに1:1(v/v)の比率で添加し、1時間、37℃でインキュベートして、血清IgGをウイルスに結合させる。次いでこの血清-ウイルス混合物を、組織培養処理プラスチックプレート上の80%コンフルエンシーのVero E6細胞の単層上に1時間添加して、遊離ウイルスを細胞に感染させる(これら細胞は高レベルのSP標的タンパク質であるhuACE2を発現する)。この時点で、完全DMEM培地、2XMEM、および1.5%アガロースのオーバーレイを、1:1:1(v/v/v)の比率で加える。細胞を48時間インキュベートして、その後、10%中性緩衝ホルマリンで少なくとも30分間固定する。アガロースオーバーレイのプラグを取り除き、細胞を0.5% クリスタルバイオレットで染色する。染色液を洗い流した後、細胞を一晩、大気温度で乾燥させ、プラークを数える。陰性対照Abおよび陽性対照Ab(Sino Biological、ペンシルバニア州ウェーン)を使用して、サンプル希釈曲線の吸光度を、中和割合%へと変換し、それからID50中和効力値を各サンプルについて導出する。
【0239】
SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のインビトロおよびインビボでの性能を示す実施例
実施例16:配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のインビトロでの人Fc(ガンマ)受容体およびACE2受容体の結合アフィニティ
pH7.4でのヒトFc(ガンマ)受容体およびACE2受容体への配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のインビトロ結合は、実施例9の手順に従い実施された。pH7.4でのヒトFcRnへのヒトIgGのインビトロ結合は、実施例9の手順に従い実施された。
【0240】
450nmでELISAプレートリーダーにおいてプレートを読み取り、OD値(配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのrhFc(ガンマ)受容体のそれぞれの結合に比例する)を、各ウェルに添加されたrhFc(ガンマ)受容体のそれぞれの対数濃度に対してプロットして、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線を作成する。
【0241】
図19に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIの結合に関するEC50は、33.86ng/mLである。
図20に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIaの結合に関するEC50は、2282ng/mLである。
図21に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIbの結合に関するEC50は、2053ng/mLである。
図22に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIIa F176の結合に関するEC50は、95.54ng/mLであり、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIIa V176の結合に関するEC50は、24.61ng/mLであり、そして配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFc(ガンマ)RIIIbの結合に関するEC50は、11674ng/mLである。
図23に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトACE2の結合に関するEC50は、87.00ng/mLである。
【0242】
図24に示されるように、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質へのヒトFcRnの結合に関するEC50は、39.46ng/mLであり、一方でヒトIgG(対照として使用)へのヒトFcRnの結合に関するEC50は、29.23ng/mLである。このことから、配列番号19を使用したFcRn受容体の結合は、ヒトIgG対照と比較して保存されていることが示唆される。
【0243】
実施例17:マウスにおける、アジュバントを含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1で合成され、実施例4で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0244】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウスでN=5の8群に、皮下注射を介して配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表2に従い、100μLの体積でアジュバントを含まず、0.05μg/用量~100μg/用量の用量レベルで、0日目、21日目および42日目に投与した。各注射から14日後および21日後に顎下腺静脈穿刺によって全てのマウスから非末梢採血を行い、抗SP/RBD Ab力価評価のための血清サンプルを取得した。アジュバントを含まず配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与された後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA標準曲線による平均IgGμg/mL)は、実施例10で測定され、
図25に示されるように21日に2回目の投与が行われる直前、および
図26に示されるように35日目に、投与された用量レベルに対してμg単位でプロットされた。
【0245】
【0246】
データから、1μg~100μgの用量レベルによって、誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応に顕著な増加が生じたこと、1μg、10μg、および100μgの用量レベルに対し、35日目で最も強い反応があったことが示される。1回、2回および3回投与後の1μg、3μg、10μg、30μg、および100μgの配列番号17の用量レベルに対する動態反応を、
図27に示す。この図では、各投与から14日後、抗SP/RBD IgG Ab力価反応の測定可能な上昇が認められること、および全ての用量レベルについて、SP/RBD IgG Ab力価反応はそれぞれの追加投与が行われることで上昇し続けたことが強調される。
【0247】
実施例18:マウスにおける、アジュバントを含まない配列番号2のSP-RBDの有効性に関するインビボスクリーニング
配列番号2のSARS-CoV-2 SP/RBD(Fcを含まない)は、市販されていたものを購入し(商品番号46438、Lake Pharma, Inc.、カリフォルニア州サンマテオ)、これを使用して、配列番号17のFc含有SP/RBD-Fcタンパク質によるAb反応の強化を比較した。当該タンパク質は実施例1で合成され、実施例4で精製され、実施例6で非還元および還元CE-SDSにより構造的に確認され、実施例7でグリカン除去を伴うLC-MSにより構造特定が確認された。SP/RBD Agのモル量が等しいことに基づき、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質と、配列番号2のSP/RBDとの間で相対的な用量レベルを標準化した。
【0248】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウスでN=5匹の群に、100μLの体積で、配列番号2のSP/RBDを5μg/用量、15μg/用量、および40μg/用量の用量レベルで、または100μLの体積で、アジュバントを含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、1μg/用量、3μg/用量、5μg/用量、30μg/用量、および100μg/用量の用量レベルで、表3に従い、アジュバントを用いずに0日目、21日目および42日目に皮下注射を介して投与した。1つの群のマウスには、生理食塩水対照を投与した。各注射から14日後および21日後に顎下腺静脈穿刺によって全てのマウスから非末梢採血を行い、抗SP/RBD Ab力価評価のための血清サンプルを取得した。各用量レベルでの、配列番号2のSP/RBD、または配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質をアジュバントを用いずに投与された後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA標準曲線による平均IgG μg/mL)は、実施例10により14日目および21日目に測定された。結果を
図28に示す。
【0249】
重要なことは、配列番号17の二価性に関する式量およびその対価に基づき、配列番号2のSP/RBD(27kDaの単量体)と、配列番号17のSP/RBD(104kDaの二量体)の間には約0.5の相対的な「エピトープ用量」の差が存在することである。すなわち、配列番号17の二価のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、2部分のSP/RBDエピトープを含んでおり、合計式量は、2つのSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質単量体のおよそ2倍である(すなわち、それぞれ104kDaと54kDa)。例えば、配列番号17の二量体10μgは、配列番号17の単量体約5μgに相当する。
【0250】
【0251】
Fc部分の効果は、14日目および21日目の両方で示された。
図28に示されるように、誘導されたFc断片を含む配列番号17の抗SP/RBD IgG Ab力価反応は、最初の投与から14日目であってもほぼ最大力価に達した。一方でFc断片を欠くSP/RBDは、21日後であっても事実上、抗SP/RBD IgG Ab力価反応を誘導しなかった。これら2つの非アジュバント化物質の間での免疫原性の差異から、融合タンパク質AgのFc部分の「内蔵式アジュバント」能力の重要性が示される。
【0252】
実施例19:マウスにおける、アジュバントを含む配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1で合成され、実施例4で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。配列番号2のSARS-CoV-2 SP/RBD(Fcを含まない)は、市販品から取得した(商品番号46438、Lake Pharma, Inc.、カリフォルニア州サンマテオ)。
【0253】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウスでN=5の群に、表4および表5に示される用量レベルとアジュバントで、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、および5μg/用量の用量レベルで配列番号2のSP/RBDを、0日目、21日目および42日目に投与した。配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質および配列番号2のSP/RBDを投与された後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA標準曲線による平均IgG μg/mL)は、実施例10により21日目(
図29に示される)35日目(
図30に示される)、56日目(
図31に示される)、および88日目(
図32に示される)に測定された。
【0254】
【0255】
【0256】
10μgの用量レベルを含む、すべてではないが一部のアジュバント化製剤は、1回(21日目)、2回(35日目)および3回目(56日目)の投与後に免疫原性を約3~5倍まで強化したことから、アジュバント間での広範な有効性が示唆される。特に3回目の投与から32日後(すなわち88日目)、全ての製剤で誘導された力価が有意に上昇を維持しており、このことから、最初の注射から3カ月の時点であっても、配列番号17に対する反応が持続していることが示唆される(
図32)。また、配列番号2(Fc断片を欠く)が、配列番号17と比較して21日目では有効ではなく、35日目でやや有効であったことから、最初の2回投与後に有意に抗SP/RBD IgG Ab力価を誘導するためには、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質のFc部分が必要である。
【0257】
実施例20:マウスにおける、アジュバントを含む、および含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導されたACE2結合阻害効力の有効性に関するインビボ評価
ACE2結合阻害効力の有効性に関するインビボ評価は、Ag結合ELISAにより測定されたワクチン誘導性のIgG力価が、免疫血清のウイルス中和能力に関連しているかを判定するため、特に内因性ヒト標的タンパク質のACE2に対するSARS-CoV-2ウイルスのSP/RBDの結合の阻害に関して判定するために実施された。組み換えACE2に対する組み換えSP/RBDの結合を阻害する免疫血清の効力を、ELISA形式で実施した。当該ELISAは、プレートに結合したSP/RBDと、免疫血清の連続希釈とともに、または伴わずに添加された標識組み換えヒトACE2を用いた。
【0258】
配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性をさらに評価するためのインビボ試験を、実施例12に記載される一般的な方法に従い6~8週齢のBalb/cマウス(Jackson Laboratories社、メーン州バーハーバー)で実施した。配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1で合成され、実施例4で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。アジュバントを含まない10μg/用量の用量レベルの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、および様々なアジュバントを含む10μg/用量の用量レベルの配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表6に従い、0日目、21日目、および42日目に皮下投与した。
【0259】
【0260】
顎下腺静脈穿刺法により、各投与から21日後(および次の投与の前に)各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例10に記載される方法によるELISAでの抗体分析を目的として凍結した。実施例13に記載される血清学的アッセイの結果によって、結合した組み換えヒトACE2への組み換えSP/RBDの結合を阻害する効力が評価された。プールされた血清サンプルの連続希釈を行い、そこから阻害希釈50%(ID50)値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して導出した(すなわち、特定の群の各マウスからの等量の血清を混合して、このプールサンプルを評価した)。ID50値は、血清サンプルによってACE2結合の50%が達成される希釈の逆数を表す。ACE2 SP/RBD結合の阻害効力は、0日目の単回注射から21日目で計算されるID50として測定された。結果を
図33に示す。0日目および21日目の注射後、42日目に計算されたID50を、
図34に示す。0日目、21日目および42日目の注射後、56日目に計算されたID50を、
図35に示す。88日目に計算された最後のID50を、
図36に示す。
【0261】
配列番号17の3回投与で免疫化されたマウスの免疫血清のID50値から、阻害効力が、最後の注射から32日後まで維持されていたという事実が示された(88日目)(
図36)。さらにMontanide(商標)ISA 720アジュバントは一貫して、各時点で上位の効力を誘導した。Montanide(商標)ISA 720の結果は特に興味深く、このアジュバントで得られた総IgG力価は、他のアジュバント化製剤と比較してもそれほど強力ではなかったことを考慮すると予想外であり、ISA 720を用いることで、IgG分子当たり高い固有効力が誘導されたことが示唆される。これらのデータは、このワクチン開発プログラムに対し、リードアジュバント候補としてMontanide(商標)ISA 720を選択することを強くサポートするものである。
【0262】
実施例21:老齢マウスにおける、アジュバントを含む、または含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導されたACE2結合阻害効力の最適条件下および現実的条件下での有効性(EffectivenessおよびEfficacy)に関するインビボスクリーニング
現在進行中のCOVID-19アウトブレイクの間、60歳を超える人々は、より重症疾患に罹り易く、死亡率が高いことが判明した。ゆえに老齢マウスにおける、ワクチン製剤の免疫反応誘導能力を評価することが重要である。老齢マウスの免疫系は、高齢者の老齢化した免疫系に対する信頼性のあるモデルである。8カ月齢より高齢のマウスでは自然死亡率が高くなるため、およそ15匹のマウスを各試験群に割り当てた。
【0263】
アジュバントを含む、または含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性を評価するためのインビボ試験を、実施例12に記載される一般的な方法に従い8~10カ月齢のBALB/cマウス(Jackson Laboratories社、メーン州バーハーバー)で実施した。配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例1で合成され、実施例4で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0264】
8~10カ月齢のメスのBALB/cマウスでN=15の群に、アジュバントを含む、およびアジュバントを含まない配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表7に従い、100μLの体積で、10μg/用量の用量レベルで、0日目、21日目および42日目に皮下投与した。顎下腺静脈穿刺法により、各投与から21日後(および次の投与の前に)各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例10に記載される方法によるELISAでの抗体分析を目的として凍結した。
【0265】
【0266】
表7に従い、100μLの体積で、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を投与された後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA標準曲線による平均IgG μg/mL)は、実施例10で測定されプロットされた。21日目で測定されたSP/RBD IgG Ab力価反応を
図37に示す。35日目で測定されたSP/RBD IgG Ab力価反応を、
図38に示す。56日目で測定されたSP/RBD IgG Ab力価反応を
図39に示す。
【0267】
10μg/用量の配列番号17を用いた製剤において、アジュバントはこの免疫原性を強力に増強した。若いマウスにおける免疫原性プロファイルと同様に、Montanide(商標)ISA 720は、56日目で、アジュバントを含まず得られたレベルと比較し、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の阻害効力ID50を劇的に17倍まで強化した(実施例13で測定された)。重要なことは、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質によって誘導されたこの阻害効力は、アジュバントを含んでも含まなくても、ヒト回復期血清を上回ったことである。このことから、当該SP/RBD-Fcワクチンの有望な有効性が示される。ゆえに、配列番号17のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、アジュバントが存在してもしなくても、老齢化した免疫系において、充分な効力をもって抗SP/RBD IgG力価の免疫原性を維持しており、これによって、高齢者において当該ワクチンを試験することについての強い論理的根拠が提唱される。
【0268】
実施例22:マウスにおける、アジュバントを含む、および含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
SP/RBD IgG Ab力価反応における、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性を評価するためのインビボ試験を実施した。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0269】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウスでN=5の群に、皮下注射を介して配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表8に従い、100μLの体積でアジュバントを含み、および含まず、1μgおよび10μgの用量レベルで、0日目、21日目および42日目に投与した。
【0270】
【0271】
顎下腺静脈穿刺法により、各投与から14日後(すなわち14日目、35日目および56日目)に各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、ELISAでの分析を目的として凍結した。
【0272】
誘導されたSP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA標準曲線による平均IgG μg/mL)は、14日目(
図40)、35日目(
図41)および56日目(
図42)に実施例11により測定された。
【0273】
アジュバントの非存在下でも、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、1および10μgの用量レベルで充分なIgG力価を誘導した。これは実施例17の配列番号17の免疫原性プロファイルを一致しており、1回目(14日目)および2回目(35日目)の投与後、2つの用量レベル間で顕著な用量応答性が示された。予測されたように、異なるアジュバントで製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、アジュバント非存在下のものと比較して、各投与後、充分に高い力価を誘導した(1回目および2回目の投与後、約3~10倍)。そしてアジュバントのMontanide(商標)ISA 720は、各投与後、Ad-Vax-2と同様の有効性であり、一方でMontanide(商標)ISA 51の有効性は低かった。
【0274】
実施例23:マウスにおける、アジュバントを含む、および含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導されるACE2結合阻害効力およびプラーク減少中和試験(PRNT)の有効性に関するインビボ評価
マウスにおける、アジュバントを含む、および含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導されるACE2結合阻害効力の有効性に関するインビボ評価が実施された。
【0275】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0276】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウスでN=5の群に、皮下注射を介して配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表8に従い、100μLの体積でアジュバントを含み、および含まず、1μgおよび10μgの用量レベルで、0日目、21日目および42日目に投与した。
【0277】
顎下腺静脈穿刺法により、各投与から14日後(すなわち14日目、35日目および56日目)に各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、ELISAでの分析を目的として凍結した。
【0278】
実施例13に記載される血清学的アッセイの結果によって、結合した組み換えヒトACE2への組み換えSP/RBDの結合を阻害する効力が評価された。プールされた血清サンプルの連続希釈を行い、そこから阻害希釈50%(ID50)値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して導出した(すなわち、特定の群の各マウスからの等量の血清を混合して、このプールサンプルを評価した)。ID50値は、血清サンプルによってACE2結合の50%が達成される希釈の逆数を表す。ACE2 SP/RBD結合の阻害効力は、0日目の単回注射から14日目で計算されるID50として測定されこれを
図43に示す。0日目および21日目の注射後、35日目に計算されたID50を、
図44に示す。0日目、21日目および42日目の注射後、56日目に計算されたID50を
図45に示す。
【0279】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、強力なACE2-SP/RBD阻害効力(ID50値)を誘導した。この阻害効力は、各投与後で、ヒト回復期血清よりも有意に高かった(
図43、
図44および
図45)。Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む製剤において、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、3回目の投与後、最も高い効力を達成したことに留意されたい。ほとんどの場合において、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の用量が高くなると、産生される抗体アフィニティも高くなる。抗体のアフィニティが高くなると、SARS-CoV-2ウイルスが患者細胞内に侵入することを阻害する可能性も高くなる。予想に反して、実施例13に記載されるACE2結合阻害アッセイの結果から、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む製剤での配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例11で測定された際には最低レベルの抗RBD IgG抗体価のうちの1つを誘導したにもかかわらず、すべてのアジュバント製剤のうちで最高レベルの阻害性抗体を産生したことが示された。Montanide(商標)ISA 720アジュバントは、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の皮下滞留時間と抗原提示の潜在力を増加させて、最も高いアフィニティのウイルス中和抗体を産生させるのに非常に有益な可能性がある。
【0280】
プラーク減少中和試験(PRNT)は、表8に記載されるようにコホート3およびコホート4を使用して実施例15で実施された(Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、1μgおよび10μgの用量レベルで投与された)。マウス血清サンプル中の誘導されたSARS-CoV-2ウイルス中和効力を、
図46に示す。興味深いことに、実施例12の手順によりMontanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を用いてマウスを免疫化した場合も、予測された1回投与から2回投与への漸進的な上昇に従い、強いPRNT中和効力が示された。最初の投与後の効力は、ヒト回復期血清を下回ったが、2回目の投与後の血清から導かれた効力は、ヒト回復期血清よりもずっと高かった(約10倍)。この結果を
図46に示す。中和効力は、ACE2阻害効力と類似したプロファイルを示した。
【0281】
実施例24:マウスにおいて、抗-SP/RBD IgG2a、IgG2b、およびIgG3アイソタイプ力価を誘導する、アジュバントを含む、および含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
マウスにおいて、アジュバントを含む、および含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が、抗SP/RBD IgG2a、IgG2b、およびIgG3アイソタイプ力価を産生する有効性を比較するインビボ試験を実施した。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0282】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウス(Jackson Laboratories社)でN=5の群に、皮下注射を介して、アジュバントを含む、または含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、表9に従い、0日目、21日目および42日目に投与した。
【0283】
【0284】
各注射から14日後に顎下腺静脈穿刺法により各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例11に記載される方法によるELISAでの抗体分析を目的として凍結した。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、すべてのアジュバントで、顕著なTh1促進性のIgG2a、IgG2bおよびIgG3アイソタイプ力価を誘導した。Montanide(商標)ISA 720は一貫して、全ての時点で強力な増強を示した(
図48、
図49および
図50を参照)。それに加えて、Th2促進性のアイソタイプであるIgG1力価は、Th1関連アイソタイプよりもおよそ10倍低い力価であった(
図47)。これらの結果から、Montanide(商標)ISA 720アジュバントは、配列番号19とともに送達された際、特にTh1反応への望ましいシフトを促進することによって、強力な増強効果を維持したことが実証される。このことから、投与回数を控えることができるという特徴が支持され、臨床リードアジュバントとしての選択が推奨される。
【0285】
実施例25:マウスにおいて、抗SP/RBD IgGアイソタイプ力価を誘導する、アジュバントを含む、および含まない配列番号23のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
マウスにおいてヒトIgG Fc構築物を使用することで有効性がどのように影響を受け得るかについて解明を試みることにより、SP/RBD-Fc融合タンパク質ワクチンの免疫原性に対する寄与という点でのFc断片の役割について、さらにマウスで調査した。マウスのIgG2a(配列番号22)は、ヒトIgG1の機能性アナログである。
EPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK(配列番号22)
【0286】
実験は、i)Fc種のミスマッチが、SP/RBD-Fc融合タンパク質の基盤となる免疫原性の原因となり得るかどうか、およびii)動物モデルにおいてヒトIgG Fc構築物から得られた結果が、ヒトでの性能予測に適切であるかどうか、の決定を目的とした。
【0287】
そこで配列番号5のリンカーを伴う配列番号14のSP/RBDと、配列番号22のマウスIgG2a Fc断片を含む配列番号23のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を構築した。
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFGGGSGGGSEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK(配列番号23)
【0288】
配列番号23のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質がSP/RBD IgGアイソタイプ力価反応を生じさせる有効性と、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質がSP/RBD IgGアイソタイプ力価反応を生じさせる有効性、および配列番号2のSP/RBDがSP/RBD IgGアイソタイプ力価反応を生じさせる有効性とを比較するインビボ試験を実施した。
【0289】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例2で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。配列番号23のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、市販品から取得した(カタログ番号SPD-C5259、ACRO Biosystems社、デラウェア州ニューアーク)。配列番号2のSARS-CoV-2 スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(SP/RBD)(Fcを含まない)は、市販品から取得した(商品番号46438、Lake Pharma, Inc.、カリフォルニア州サンマテオ)。
【0290】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウス(Jackson Laboratories社)でN=5の群に、皮下注射を介して、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、配列番号23のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質、または配列番号2のSP/RBDを、表10に記載される用量レベルに従い、0日目および21日目に投与した。
【0291】
【0292】
各注射から14日後に顎下腺静脈穿刺法により各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例11に記載される方法によるELISAでの抗体分析、および実施例13に記載される方法によるACE2-SP/RBD結合阻害効力による抗体分析を目的として凍結した。
【0293】
配列番号19、およびマウスIgG2aを備えたマウスFcを含有する配列番号23を、アジュバントを含まずに用いて免疫化したところ(表10のコホート1、2、5および6)、最初の投与または2回目の投与から14日後のIgG力価の誘導に有意な差は示されなかった(14日目は
図51に示され、35日目は
図52に示される)。このことから、BALB/cマウス免疫原性モデルにおいて、ヒトFc抗原性配列は、天然型マウスFc配列と何も変わらず機能することが実証された。配列番号17を使用して得られた結果と同様に、Fc断片を含まない配列番号2(表10のコホート9および10)は、アジュバント非存在下で、配列番号23または配列番号19と比較して、1回目の投与および2回目の投与の後に免疫原性を示さなかった。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(配列番号23)のマウス型が、マウスにおいて、そのままのSP/RBDタンパク質(配列番号2)と比較して免疫原性の強化を示したことを考慮すると、ヒト型は、ヒトにおいて、免疫原性の強化を示す可能性が高い。
【0294】
配列番号19、およびマウスIgG2aを備えたマウスFcを含有する配列番号23を、アジュバントとともに用いて免疫化したところ(表10のコホート3、4、7および8)、最初の投与または2回目の投与から14日後のACE2-SP/RBD結合阻害効力において有意な差は示されなかった(14日目は
図53に示され、35日目は
図54に示される)。このことから、BALB/cマウス免疫原性モデルにおいて、ヒトFc抗原性配列は、天然型マウスFc配列と何も変わらず機能することが実証された。配列番号19と配列番号23の両方ともが、たった1回の投与後であっても、ヒト回復期血清(HCS)よりも高いACE2-SP/RBD結合阻害効力を示した。配列番号17を使用して得られた結果と同様に、Fc断片を含まない配列番号2は、アジュバント非存在下であっても、配列番号23または配列番号19と比較して、1回目の投与および2回目の投与の後のACE2-SP/RBD結合阻害に関してそれほど効果が無かった。SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質(配列番号23)のマウス型が、マウスにおいて、そのままのSP/RBDタンパク質(配列番号2)と比較して免疫原性の強化を示したことを考慮すると、ヒト型は、ヒトにおいて、免疫原性の強化を示す可能性が高い。
【0295】
実施例26:マウスにおける、保管後のMontanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の有効性に関するインビボスクリーニング
新たに作製されたMontanide(商標)ISA 720を含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質エマルションのSP/RBD IgG Ab力価反応を生じさせる有効性と、調製後、1日間および7日間、4℃および25℃で保管された同エマルションの有効性とを比較したインビボ試験が実施された。配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0296】
実施例12の手順に従い、6~8週齢のメスのBALB/cマウス(Jackson Laboratories社、メーン州バーハーバー)でN=5の群に、皮下注射を介して、Montanide(商標)ISA 720アジュバント 30%/70% v/vと新たに混合された、または4℃および25℃で1日間もしくは7日間保管された後に混合された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、10μgの用量レベルで投与した。
【0297】
注射から14日後に顎下腺静脈穿刺法により各マウスから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注し、実施例13に記載される方法によるELISAでの抗体分析を目的として凍結した。
【0298】
実施例13に記載されるACE2結合阻害アッセイの結果から、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、1日間および7日間、4℃および25℃で保管されたエマルションの注射後と、新たに作製されたエマルションの注射後とを比較しても、マウスにおいて同様の阻害効力を誘導した。
図55に示されるように、新たに作製されたエマルションを注射された動物と、古くなったエマルションのいずれかを注射された動物との間で、ID50値に有意差は無かった(p>0.05)。
【0299】
実施例27:非ヒト霊長類(NHP、すなわちカニクイザル)における、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19により誘導されたACE2-結合阻害効力に関する、予備的投与の最適条件下および現実的条件下での有効性(EffectivenessおよびEfficacy)
マウスから得られたヒトIgG Fc融合タンパク質の免疫原性に関する知見を、ヒト臨床試験へと転換するために、アジュバント(Montanide(商標)ISA 720)を含み、または含まずに製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、より遺伝的に関連性のあるNHP種であるカニクイザルにおいて試験した。カニクイザルのIgG1-Fc領域配列はヒトIgG1-Fc配列と非常に類似しており、カニクイザルのIgGエフェクター機能とヒトIgG1は実際にカニクイザルにおいて活性があったが、いくらかの効力の低下があった。ゆえに、ヒトIgG1-Fc融合タンパク質を用いてカニクイザルで得られた効力に関する結果は、ヒトにおける当該ヒトIgG1-Fc融合タンパク質の性能を若干下方に予測する可能性がある。最後に、カニクイザルでの結果の転換可能性は、配列番号19のヒトIgG Fc断片が、ヒトFcR受容体およびヒトFcRn受容体で得られる効力と同程度の効力で、カニクイザルのFcRおよびFcRnホモログに結合できることが実証されたことによって確認された。様々な濃度のHisタグ付けヒトFcRおよびカニクイザルFcRホモログ分子を、プラスチックに結合した配列番号19に添加した。非結合分子を洗い流した後、標識抗His二次抗体を用いて結合分子を検出し、発色させ、吸光度(OD450)を分光光度計で決定した。
図56、
図57、
図58および
図59に示されるように、カニクイザルでの結果の転換可能性は、配列番号19のヒトIgG Fc断片が、ヒトFcR受容体およびヒトFcRn受容体で得られる効力と同程度の効力で、カニクイザルのFcRおよびFcRnホモログに結合できることが実証されたことによって確認され、これによりNHPモデルの臨床的関連性が確立された。
【0300】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例2または実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0301】
オスおよびメスのカニクイザルのN=3の群に、単回皮下注射を介して、表11に従い0日目および21日目に、30%/70%(v/v)の配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質とMontanide(商標)ISA 720アジュバントを皮下投与した。6匹のサルのうち5匹が、2回目の注射からおよそ3か月~4か月半の間に、30%/70%(v/v)の配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質とMontanide(商標)ISA 720アジュバントのブースター注射を投与された。
【0302】
【0303】
各NHPから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注して、実施例11に記載される方法によるELISAで抗体分析することを目的に凍結する。
【0304】
10μgおよび30μgの用量レベルのMontanide(商標)ISA 720アジュバントとともに製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応(IgG ELISA参照血清標準曲線からの平均IgG μg/mL)は、実施例11により、1回投与後の0日目、1回投与後の14日目、1回投与後の20日目、2回投与後の35日目、2回投与後の42日目に測定された。これにより、IgG Ab力価が強く誘導されたことが明らかとなり、
図60に示されるように、0日目および21日目の投与後の全ての時点で、30μgの高用量レベルは、10μgの低用量レベルより高い免疫原性を示した。
【0305】
抗SP/RBD IgG Ab力価が低下した後、102日目または154日目のいずれかでブースター(3回目)投与を受けた動物について、単回ブースター投与後に誘導された抗SP/RBD IgG Ab力価反応は、
図61に示されるように顕著であり、強いメモリーリコールが示唆される。
【0306】
さらにこれらIgG Ab力価の免疫原性プロファイルは、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質により誘導され、実施例13で測定されたACE2-結合阻害効力(ID50)と合致し、
図61に示されるようにヒト回復期血清の効力を上回っていた。ID50値は、血清サンプルによってACE2結合の50%が実現される希釈の逆数を表しており、10μgおよび100μgの両方の用量レベルに対し、1回投与後の21日目、2回投与後の42日目に計算された。
【0307】
実施例28:非ヒト霊長類(NHP、すなわちカニクイザル)における、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19の、組み換えACE2とSP/RBDの生化学的相互作用を妨害する阻害効力を確認するためのプラーク減少中和試験
かかるトランスレーショナルリサーチの促進において、組み換えACE2とSP/RBDの生化学的相互作用を妨害する当該阻害効力は、プラーク減少中和試験(PRNT)において、VERO-E6生細胞にSARS-CoV-2生ウイルスが感染することを中和することで確認された。
【0308】
オスおよびメスのカニクイザルのN=3の群に、表11に従い0日目および21日目に、30%/70%(v/v)の配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質とMontanide(商標)ISA 720アジュバントを皮下投与した。各NHPから血液を採取し、凝固させ、マイクロバキュテイナ管を遠心分離することにより血清を分離させ、分注して分析用に凍結した。
【0309】
プラーク減少中和試験は、実施例15で実施された。NHP血清サンプルにおいて配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が誘導したSARS-CoV-2ウイルス中和効力を、
図62に示す。中和効力は、ACE2阻害効力と類似したプロファイルを示したが、PRNT ID50値は、ヒト回復期血清の値と類似していた。
【0310】
これらの結果から、NHPでワクチン接種を試験することの意義が実証され、ヒトで行う初めての臨床試験の設計に価値あるガイダンスを提供し、およびヒトへのトランスレーションに期待が持てる。
【0311】
実施例29:マウスおよび非ヒト霊長類(NHP、すなわちカニクイザル)における、SARS-CoV-2のUKバリアント(N501Y)および南アフリカバリアント(E484K)に対する、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンの有効性
Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質が、SARS-CoV-2ウイルスのバリアント、特にUKウイルスバリアントと南アフリカウイルスバリアントに対しても有効であるかを解明する試みで分析が行われた。
【0312】
図66は、Clustal Omegaを使用して実施された、配列番号2のSARS-CoV-2の天然型SP/RBDと、UK N501YウイルスバリアントのSP/RBDアナログ断片(配列番号24)と、南アフリカE484KウイルスバリアントのSP/RBDアナログ断片(配列番号25)とを並べて比較したものを示す。「*」は、所与の配列位置での全配列にわたる完全な相同を表す。「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリクスで0.5よりも大きいスコアを有する非常に類似した特性を有する群間で保存されていることを示す。「-」(ダッシュ)は、配列のギャップを示しており、これは特定の配列範囲内の比較の特定の組み合わせ内に、局所的な相同が存在しないことを意味する。
PNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLE(配列番号24)
PNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVKGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLE(配列番号25)
【0313】
実施例27で投与されたNHPの血清サンプルは、動物1、2、3、5および6から42日目に抽出された。実施例22で投与されたマウスの血清サンプルは、56日目に抽出された。NHPとマウスの両方とも、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンを2回投与して免疫化された。
【0314】
血清サンプルを、プラスチックに結合した組み換えRBD野生型(Lake Pharma社、カリフォルニア州サンマテオ)または変異体N501Y(UKバリアント、SINO Biological社、ペンシルバニア州ウェーンから提供)または変異体E484K(南アフリカバリアント、AcroBiosystems社、デラウェア州ニューアークから提供)に添加した。結合したRBD特異的IgGは、標識抗NHP二次抗体または抗マウスIgG二次抗体で検出され、発色された(OD450値)。IgG μg/mLの力価は、NHPまたはマウスのELISA参照血清標準曲線より決定され、平均(N=4)が報告された。
【0315】
図64および
図65に示される結果から、NHPおよびマウスの免疫血清は、野生型RBD分子と同様に、またはそれ以上に、組み換えRBD変異体のN501YとE484Kに結合したことが示される。このことから、UK(N501Y)および南アフリカ(E484K)のウイルスバリアントが、配列番号19誘導性の免疫を回避する可能性は低いことが示唆される。
【0316】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の毒性試験の結果を示す実施例
実施例30:ニュージーランド白ウサギにおける、2週間の回復期間を伴う、配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc 融合タンパク質ワクチンの反復投与毒性試験
ニュージーランド白ウサギを使用したIND-enabling毒性試験が実施された。ウサギは、安定的なAb反応を生じさせ、ワクチン誘導型の免疫原性の前臨床試験に広く使用されている種であり、これを選択した。さらにウサギは、SARS-CoV-2ウイルスの受容体であるACE2を発現しているため、ウイルスはこれに結合し、ウサギに感染して、ヒトCOVID-19に類似した疾患症状を発生させることができる。ワクチン抗原性サブユニットは、ヒトIgG1 Fc分子に融合されたSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のACE2受容体結合ドメインであり、ウサギにおいてACE2(肺、上皮、ニューロンに発現)に直接結合し、病態を生じさせ得る。
【0317】
Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む、または含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の安全性、毒性、トキシコキネティクスおよび免疫原性のプロファイルは、14日ごとに皮下注射され、合計で3回注射されたワクチン製剤を使用して評価され、14日間の無処置回復期間中の何らかの毒性兆候に関する可逆性も評価された。積極的な14日間の注射スケジュールは、ヒト臨床試験で行われるやや積極性の劣る28日環の注射スケジュールを動物毒性試験によって確実に充分にサポートするためである。試験のエンドポイントには、臨床観察、体重増加/減少、食物消費、臨床病理および最終的な全身剖検、臓器重量、ならびに組織病理が含まれる。
【0318】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、実施例3で合成され、実施例5で精製された。融合タンパク質の構造は、実施例6で非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにより確認され、融合タンパク質の配列特定は、実施例7でグリカン除去を伴いLC-MSにより確認された。
【0319】
試験対象は、3~4カ月齢で体重2~4kg、未感作で、特定病原体未感染のオスおよびメスのニュージーランド白ウサギである。ウサギはステンレススチールのモバイルケージ中で、単独で、または群で飼育され、投与前に14日間の馴化期間を置いた。
【0320】
主要試験治療群1つ当たり5匹のオスと5匹のメスのウサギとし、回復治療群1つ当たり3匹のオスと3匹のメスのウサギとした。それら群にMontanide(商標)ISA 720アジュバントを含み、またはアジュバントを含まずに製剤化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を30μgまたは100μgのいずれかの用量で、またはビヒクル陰性対照(生理食塩水)を投与した。回復群は、処置期間中に観察された何らかの有害作用の可逆性を調査するため、および何らかの可能性のある遅延型有害作用をスクリーニングするために含められた。ウサギにおける反復投与毒性試験に関する具体的な詳細を表12に示す。
【0321】
【0322】
配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の標的産物プロファイルには、ヒトにおける2回以下の免疫化注射が含まれており、ゆえに「臨床投与+1」戦略が使用された。この場合において3つのワクチン用量が、1日目、15日目および29日目に皮下投与された(15日目および29日目のトキシコキネティクス注射は、それぞれ1日目および15日目の注射から誘導された抗SP/RBD力価の存在下であるように設計されている)。s.c.経路およびi.m.経路の両方の投与経路が評価された。
【0323】
実施例31:ウサギでのGLP毒性試験における、SARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の血清レベル、抗SP/RBD IgGの血清レベル、ならびに観測的および定量的な安全性評価
PK/TKアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)であり、ウサギ血清試験サンプル中に存在する配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質を、マイクロタイターウェル上にコーティングされたヤギ抗ヒトIgG(Fc)によって捕捉して、次いで抗ヒトIgG-Fcビオチンコンジュゲートにより定量化するものである。次いでコンジュゲートは高感度のストレプトアビジン-HRP検出抗体と反応して、続いてTMB基質システムが行われる。アッセイの標準曲線作成、およびアッセイ対照の作製に、精製された配列番号19を使用する。精製された配列番号19のストック溶液を正常なウサギ血清(Jackson Immuno社)に添加することによって、4つのQC(高QC、中QC、低QC、および陰性QC)が10倍で調製され、複数回の実験で試験されて公称値が確立される。少量の分注物として-20℃で凍結保存され、単回の溶解で使用される。これらのQCは、バリデーションアッセイにおいて添加バリデーションサンプルとして使用され、正確性、精度、定量限界、希釈の線形性、添加回収、および短期安定性が評価された。
【0324】
プレバリデーションが行われる間、最低限必要とされる希釈(MRD)である1:10は、このELISAの最適値として決定されたものであり、バリデーション実行にあたりこの希釈が使用された。したがって10%の正常ウサギ血清(Jackson Immuno社、H2Oで再構成される凍結乾燥正常ウサギ血清)が希釈緩衝液に添加され、一次バリデーション実行中に標準曲線が作成された。実際の正常ウサギ血清(BioIVT社)で添加回収が試験された際、正常ウサギ血清では見られないマトリクス効果が原因で、添加値を大幅に下回る回収値が観察された。
【0325】
これらの結果に基づき、非臨床ウサギ血清サンプルにおける配列番号19の回収をより良く表すためには、正常ウサギ血清ではなくプールされたウサギ血清を標準曲線の作成に使用すべきだと決定した。例えば正確性および精度、線形性ならびに添加回収などの選択パラメーターは、標準曲線緩衝液中、10%のプールされた正常ウサギ血清(BioIVT社)を使用して再試験された。
【0326】
プールされた血清の標準曲線を使用した際の、アッセイ内およびアッセイ間の正確性は、ゼロ以外の3つすべてのQCレベルで93~105%の範囲であった。2ng/mL~100ng/mLでアッセイは線形性であることが判明した。これらの値はそれぞれ定量下限(LLOQ)および定量上限(ULOQ)であることが判明した。プールされた血清の標準曲線を使用した際の添加回収は、11個の異なる血清サンプル間で非常に正確であり、回収は高添加レベル(70ng/mL)で100~117%の範囲、中添加レベル(40ng/mL)で107~116%の範囲、低添加レベル(10ng/mL)で108~123%の範囲であった。添加血清サンプルは、少なくとも3回の凍結融解サイクル(95~103%の回収)、4℃で最大で1週間(97~100%の回収)、および室温で4時間(91~98%の回収)を通じて安定的であることが判明した。バリデーションの結果から、配列番号19のPK/TK ELISAは、正確性が高く、再現性があり、目的に適合していることが示された。
【0327】
4時点のTK試験が実施された。この試験において、1回目、2回目および3回目の注射の前、6時間後、24時間後、および48時間後に同じ動物が採血された。適切な量の血液が各採血で取得され、免疫原性分析に加えてTK分析でも各血液が使用された。
【0328】
1回目の投与前、および1回目と最後の投与から約2~3日後、主要試験の取り下げ時、および回復群の取り下げ時にリンパ節をドレーンし、血液検査と血清化学検査を行うことによって、免疫系に対する全身作用が評価された。検査には絶対的および相対的な白血球(WBC)百分率(リンパ球、単球、顆粒球、異常細胞)、アルブミン/グロブリン比、酵素ならびに電解質が含まれた。血清サンプルは、ワクチン特異的なAb力価とTK値に関して評価された。
【0329】
毎日の臨床観察には、注射後最大3日間、およびその後週1回の注射部位の局所的炎症反応の検査が含まれた(かかる観察には、腫脹、触ることに対する疼痛反応、運動障害、および肉芽腫性結節が含まれた)。健康状態に関する毎日の観察(嗜眠状態、動かない、歩行困難、食べないなど)も実施された。毎週の体重、および食物消費(食欲無し、食欲不振)も試験終了時、およそ12時間の絶食期間後に監視され、評価された。
【0330】
試験終了時、血液サンプルが採取され、血清化学検査、血液検査および免疫学的調査が行われ、その際、完全全身剖検が実施されて、肉眼的病変および臓器重量が検査された。組織病理検査が実施され、免疫臓器(局所リンパ節および遠位リンパ節の両方、脾臓、骨髄およびパイエル板)、中枢臓器(肺、肝臓、腎臓、脳、および生殖器)およびワクチン投与部位に特に注意が払われた。局所毒性(ワクチン投与部位)評価には、炎症反応(例えば軟性肉芽腫用結節、硬性線維性結節、潰瘍など)の評価、部位切除と組織病理検査の実施が含まれた。肺組織中の好酸球増多が特に評価された。
【0331】
表12に従い、用量が策定され、調製された。投与部位はローテーションされた。投与前に毛を刈られ、消えないマーカーで印をつけられた。1日目、15日目および29日目にウサギに皮下投与した。ウサギには各投与の前および1時間後、ならびに1日2回を毎日および毎週で、詳細な臨床観察が行われた。注射部位の炎症を評価するためのドレイズ(Draize)スコアリングが、各投与後24時間、48時間および72時間で実施された。投与後72時間でゼロではないスコアがあった場合、当該所見が解消するまで、または動物が安楽死されるまで、7日ごとに当該部位がスコアリングされた。
【0332】
各投与前、および各投与後6時間および24時間で体温が測定された。体温が40℃を超えた場合、値が正常に戻るまで、または動物が安楽死されるまで24時間ごとに追加測定が行われた。最初の投与前、最初の投与後24時間および48時間、毎週、および予定された各剖検の前で体重が記録された。ウサギは馴化期間中に1回、その後は1日2回、死亡率について検査された。食物消費は、毎日定量的に測定された。眼科検査は1回目の投与前に1回、および予定された各剖検前に1回行われた。
【0333】
臨床化学検査および血液検査は、最初の投与前に1回、最初の投与と最後の投与から48時間後、主要試験群の剖検時に全ての動物に対して、および回復期間終了時に残りの動物に対して行われた。凝固検査は、最初の投与前に1回、各投与から3日後、主要試験群の剖検時に全ての動物に対して、および回復期間終了時に残りの動物に対して行われた。
【0334】
C反応性タンパク質検査のために、1回目の投与前に1回、各投与から3日後に全ての動物、主要試験群の剖検時に全ての動物、および回復期間終了時に残りの動物から血液が採取された。ELISAを介したADAのために、最初の投与前、および各投与から14日後(最後の投与時は除く)に全ての動物、主要試験群の剖検時に全ての動物、および回復期間終了時に残りの動物から血液が採取された。試験中の各動物に対し、4点トキシコキネティクス(TK)血液サンプリングが、1回目、2回目および3回目の投与時に行われた。すなわち、1日目の投与前、ならびに各投与から6時間後、24時間後および48時間後に血液採取され、次いで主要試験群については36日目の取り下げ時、および回復動物群については43日目に1回の追加サンプリングが行われた。配列番号19の血清濃度分析は、ELISAで行われた。
【0335】
36日目(主要試験群)および43日目(回復群)に対する完全剖検は、予定された各解剖時に全ての動物に対する全組織採取と標準臓器重量測定をもって行われた。組織病理検査は、スライド加工された組織で行われ、すべての主要試験動物および回復試験動物、ならびに任意の死亡が確認された動物および非常時に安楽死された動物に対して評価された。
【0336】
毒性試験の結果として死亡した個体はなかった。投与フェーズの間、Montanide(商標)ISA 720とともに100μgの配列番号19を与えられたオスにおいて投与フェーズの4日目から、およびMontanide(商標)ISA 720とともに30μgまたは100μgの配列番号19を与えられたオスにおいて投与フェーズの32日目から、およびMontanide(商標)ISA 720とともに100μgの配列番号19を与えられたメスにおいて投与フェーズの18日目から、およびMontanide(商標)ISA 720とともに30μgまたは100μgの配列番号19を与えられたメスにおいて投与フェーズの32日目からフィブリノーゲンの増加が概して統計的に有意であり、これは被験物質に関連している可能性が高く、慢性活性炎症の顕微鏡所見とも関連する可能性が高かった。回復期間中のフィブリノーゲンにおける差異は、回復とみなされた。メスにおいてフィブリノーゲンにおける統計的有意差があったが、馴化値と同等であり、被験物質との関連性は無い可能性が高く、生物学的変動が原因とみなされた。予定された採取時に他の被験物質関連の臨床病理的変化はなかった。
【0337】
オスにおいてのみ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、カルシウム、乳酸デヒドロゲナーゼ、カリウム、塩化物、リンパ球割合、活性化部分トロンボプラスチン時間において統計的有意差があり、およびメスにおいてのみナトリウムに統計的有意差があったが、生物学的変動が原因で、被験物質には関連性が無いとみなされた。オスおよびメスでのグルコース、グロブリン、またはアルブミン/グロブリン比、ヘテロフィルおよびヘテロフィル割合、プロトロンビン時間における統計的有意差は、馴化値と同等であるか、またはセッション間で不一致であった。これらの差異は小さく、オスでは存在していないか、または馴化時の値と同等であり、被験物質とは関連性がなく、生物学的変動が原因とみなされた。主要試験終了時または回復期間終了時に臓器重量の差はなかった。小さな差異は統計的に有意ではなく、投与には無関係であるか、または性別間で不一致であり、被験物質の投与とは関連性が無いとみなされた。
【0338】
トキシコキネティクス(TK)試験において、ウサギにおいて配列番号19によって誘導されたSP/RBD Ag特異的な抗薬剤抗体(ADA)IgG力価が測定された。ウサギをN=10匹の動物/群に分け、PBSビヒクル(群1)、30μgの配列番号19(群2)、100μgの配列番号19(群3)、Montanide(商標)ISA 720を含む30μgの配列番号19(群4)、またはMontanide(商標)ISA 720を含む100μgの配列番号19(群5)を14日間あけて3回投与を受けた。血清サンプルは、指定された時間の後に採取され、実施例14に従い抗SP/RBD IgG Ab力価(ウサギIgG標準曲線を使用したELISAによる平均IgG μg/mL)を評価した。
【0339】
アジュバントを含まない配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc(
図68および
図69に示される群2および3)は、全ての時点で無視できるほどに弱い抗SP/RBD特異的IgG力価を示し、その範囲は、ビヒクル対照群1の力価範囲(
図67に示される)であり、すなわち10μg/mLを下回っていた。しかしMontanide(商標)ISA 720アジュバントの存在下では、30μgおよび100μg(それぞれ群4および群5)の配列番号19の用量で、1回目の注射後(15日目)、2回目の注射後(29日目)および3回目の注射後(43日目)、顕著な特異的IgG力価が誘導された。その力価は、
図70および
図71に示されるように、2回目および3回目の投与後、ヒト回復期血清を上回っていた(約10倍)。Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で処置された群4および群5において、30μgと100μgの用量レベルの間に、若干(統計的に有意ではない)の用量応答性が存在した。
【0340】
実施例32:ウサギにおける、GLP毒性試験から収集されたウサギ血清サンプルの機能的阻害効力の結果
TKおよびADAの主要エンドポイントに使用された血清サンプルは、指定された時点の後に収集され、(実施例13の方法により)ACE2-SP/RBD結合を阻害する効力(ID50値)、および実施例15の方法によりプラーク減少中和試験(PRNT)においてSARS-CoV-2生ウイルスがVERO-E6細胞に感染することを阻害する効力が評価された。実施例31に記載されるように、N=10匹の動物/群に、14日間をあけて、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む30μgの配列番号19(群4)、またはISA 720を含む100μgの配列番号19(群5)を2回投与した。望ましい配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンは、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む製剤を含むため、群4と群5のみを、2つの機能性アッセイで評価した。ID50値は、血清サンプルによって50%のアッセイシグナルが達成される希釈の逆数を表す。
【0341】
実施例13のACE2阻害アッセイにおいて、30μgと100μgの用量レベルの間に阻害効力において明白な用量応答性が存在した。効力は
図72に示されるように上昇し、2回目の投与から14日後には同等であった。両時点でのこれら効力値は、ヒト回復期血清で得られた値を実質的に超えていた。生ウイルスが細胞に感染することを阻害する能力を評価したところ、
図73に示されるように30μgと100μgの両方の用量レベルで強い効力が実証された。2回目の投与後(すなわち35日目)には効力はより高くなる傾向があり、ヒト回復期血清の効力と同等であったことが示された。これらの結果から、Montanide(商標)ISA 720中で乳化された配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質は、このGLP毒性試験において、COVID-19感染から回復したヒトにおいて見出されるレベルの機能的免疫原性を誘導することが示された。このことから、これらの毒性試験結果を、公平な安全性プロファイルの見込みが求められる臨床へとあてはめた。
【0342】
実施例33:皮下経路の毒性試験結果を筋肉内経路にブリッジングするためのニュージーランド白ウサギにおける配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の反復投与毒性試験
認可を受けたワクチンの大部分は、筋肉内(i.m.)注射により投与されているが、一部は皮下(s.c.)または皮内(i.d.)での使用で承認を受けている。その主な理由は、s.c.とi.d.は、より多数のACEを含有する部位であり、i.m.経路よりも効率的にワクチンAgを流入領域リンパ節へと送達するすることができるという論理的根拠である。筋肉内投与は、実施するのが容易であり、概して忍容性良好であり、注射部位の有害反応のリスクが低いという理由で、好まれる場合が多い。しかし筋肉と比較して高い免疫能力を有する部位としての皮膚へのワクチン送達は、ワクチン反応を増幅させるための戦略として長い間検討されてきた。例えば黄熱やインフルエンザウイルスワクチンなどの一部の例では、s.c.注射はi.m.注射よりも優れており、健康な個体、特に非レスポンダーや低レスポンダーにおいて免疫原性の向上をもたらした。例として、s.c.でのワクチン接種は、(i.m.と比較して)注射部位でのAPC活性化がより効率的であり、それに伴い、一過性の高レベルなワクチン特異的T細胞応答やAb力価が発生した。しかし概して、s.c.経路とi.m.経路で免疫原性に差異が生じるリスクはほとんどないようであり、例えばB型肝炎ウイルスやA型肝炎ウイルス、帯状疱疹ウイルス、インフルエンザ、ジフテリア毒素、麻疹、おたふく風邪、風疹よおび水痘、ならびにダニ媒介性脳炎など、いくつかの承認済みワクチンを用いた比較臨床試験において実証されている。それでもなお、i.m.ワクチン接種個体と比較して、s.c.は軽度の注射部位有害事象の発生率が若干上昇するようであり、そのため、望ましい送達経路としてi.m.ワクチン接種が勧められる。
【0343】
実施例32で使用されたものと同じ試験設計および汎用プロトコルの下で、ニュージーランド白ウサギを試験に利用した。試験設計を表13および表14に記載する。オス(N=5)およびメス(N=5)のウサギにおいて、1日目、15日目および29日目にs.c.またはi.m.のいずれかで投与されるISA 720アジュバント中で乳化された100μgの用量の配列番号19(100)を用いて、ACE2結合を阻害する抗SP/RBD IgG力価(実施例14に従い測定)を誘導し、血清を、0日目、15日目(2回目投与の前)、29日目(3回目投与の前)および36日目に採取して、実施例13に従い結合阻害分析を測定した。ID50値は、血清サンプルによってACE2結合の50%が達成される希釈の逆数を表す。
【0344】
分析を行ったところ、測定日のいずれでもMontanide(商標)ISA 720中での100μg用量の配列番号19は、s.c.投与およびi.m.投与の間で、IgG力価もACE2阻害効力も統計的有意差は示されず(
図74および
図75)、このことから、臨床試験においていずれか投与経路の評価を行うことが支持される。
【0345】
【0346】
【0347】
実施例34:アジュバントを用いて新たに作製されたエマルションと古くなったエマルションの効果を分析するためのニュージーランド白ウサギにおける配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質の下位群分析
ウサギでのGLP反復投与毒性試験(実施例30)において、非常に多くの動物に投与しなければならないというロジスティクスに起因して、半数の動物(オスウサギ)には当日にMontanide(商標)ISA 720エマルションを調製して配列番号19を投与した(T=0)。もう半分の動物(メスウサギ)には、2~8℃でエマルションを保管して24時間後に投与した(T=24)。したがって、15日目(1回投与後)、29日目(2回投与後)および36日目(3回投与後)に測定されたACE2-SP/RBD結合阻害効力(ID50)の結果(実施例13により測定)に対して下位群解析を行って、新たに作製されたエマルションと、保管されたエマルションとの間に、何らかの性能の差異があるかどうかを判定することが可能であった。マウス免疫原性試験(実施例26)に関して上述された結果と同じように、新たなエマルションと保管後エマルションとの間に阻害効力において統計的な差異はなかった。このことから、アジュバント化配列番号19製剤の性能は、
図76(皮下投与)および
図77(筋肉内投与)で示されるように、調製後少なくとも24時間は安定であることが示唆される。
【0348】
Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンで免疫化されたNHPに対する、NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける有効性試験の実施例
実施例35:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験に対する群の割り当て
配列番号19のワクチンの有効性を、アカゲザルのSARS-CoV-2チャレンジモデルを使用した実施例27の免疫化NHPにおいて評価する。チャレンジ後、SARS-CoV-2負荷を、気管支肺胞洗浄(BAL)液、鼻洗浄液、ならびに鼻腔ぬぐい液および口腔咽頭ぬぐい液の収集と分析による実験を通じてモニタリングする。ウイルス量は、剖検後の組織において評価される。
【0349】
N=5のカニクイザルの2群に、以下の表15に示されるようにチャレンジを行った。1つの群は、実施例27によるMontanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質で免疫化され、その後、最初の注射から3カ月~4カ月半の間に30μgの用量レベルでMontanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19のSARS-CoV-2-RBD-hIgG-Fc融合タンパク質ワクチンのブースターワクチンを注射された(3回目の注射)6匹のカニクイザルのうち5匹から構成された。2つ目の群は、処置されていない5匹のカニクイザルから構成された。
【0350】
【0351】
0日目、この2つの群に、SARS-CoV-2ウイルスをチャレンジした。チャレンジ前、および7日目に血液を採取した。鼻腔ぬぐい液、口腔ぬぐい液およびBAL液の収集は、チャレンジ前、ならびに2、4および7日目に行われた。終了後の剖検は、7日目に実施された。試験スケジュールを表16に示す。
【0352】
【0353】
実施例36:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験に関するウイルス接種
ウイルス接種物は、目的とする2mL中、1x105 TCID50のの用量レベルに到達するまでPBS中で連続希釈することによって調製した。ウイルス投与は、ケタミン沈静下で行われた。鼻内(IN)経路での投与は、以下のように実施された。較正済みP1000ピペッターを使用して、0.5mLのウイルス接種物をそれぞれの鼻孔内に滴下して投与して、動物1匹当たり1.0mLとした。作業台の上に麻酔をかけたNHPを仰向けで保持した。技師が動物の頭を後ろに傾け、鼻孔を天井に向けた。技師が、最初の鼻孔内にシリンジのチップを置き、ゆっくりとプランジャーを押し下げて、鼻腔内に接種物を注入し、その後シリンジを取り除いた。2番目の鼻孔にもこの手順を繰り返した。動物の頭を約20秒間後ろに傾けた後、収容ユニットに戻し、完全に回復するまでモニタリングした。
【0354】
気管内(IT)経路での投与は、以下のように実施された。フレンチゴム製カテーテル/フィーディングチューブ、サイズ10、滅菌済み(4~6インチ(約10~15センチ)の長さにカット)を使用して、1mLの希釈ウイルスを気管内送達した。規定用量の接種物を、シリンジ内に引き込んだ。カテーテルに接種物を入れたシリンジを挿入する前に、技師はシリンジを引き戻し、シリンジ内に1.5ccの空気を入れた。この空気によって、全ての接種物がカテーテルに押し出される。麻酔された動物を、手順のために配置して、アシスタントに口を開けさせた。接種物が入ったシリンジを、滅菌フレンチカテーテルまたはフィーディングチューブに取り付ける。咽頭蓋が見えたら、声門を開けさせ、フィーディングチューブの小さな末端を声門内に挿入する。配置したら、技師が気管内に接種物を注入し、次いで気管からカテーテルを外す。新たな器具または滅菌された器具を、各動物に使用した。試験動物は、収容ユニットに戻され、完全に回復するまでモニタリングされた。
【0355】
チャレンジ接種物は、適切な用量レベルの確認のために、プラークアッセイまたはTCID50アッセイによって戻し力価測定された。残りの接種物を2mLのクライオバイアルに分注し、-70℃未満の温度で保管して、ウイルス量アッセイの陽性対照として使用した。
【0356】
実施例37:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験のためのサンプル採取
粘膜分泌物の採取は、綿棒(COPAN flocked swab)を使用して、沈静状態のNHPに行った。綿棒を鼻腔内に挿入し、優しく回転させた。採取後、ぬぐい液を、1mL PBSが入ったコレクションバイアル(2/検体)内に入れて、qPCRを行った。全てのバイアルは、ウイルス量試験まで-70℃未満の温度で保管された。
【0357】
気管支肺胞洗浄液(BAL)の手順は、「椅子法」によって麻酔下の動物に行われた。この手順のために、1名の技師が実際のBAL洗浄手順を行い、もう1名の技師が手を動物の胸部に置いた。これは、手順の間に咳をすることにより生じる動物の動きを減少させ、または回避して、検体汚染の可能性を最小限にするためである。NHPは、椅子の溝に背臥位で置かれた。動物が椅子の溝を滑り落ちないように、椅子の基部のハンドルを動物に対して上にスライドさせた。ハンドルが動物の体重を支える位置におさまった時点で、ハンドルを所定位置に締めた。配置前に赤色のゴム製フィーディングチューブを予め計測し、印をつけた。動物の頭を後ろに傾け、椅子の溝の縁よりも下に傾ける。次いで赤色のゴム製フィーディングチューブを、吸気中に喉頭鏡で動物の気管内に挿入する。チューブを正しい位置に置き、BAL洗浄手順を実施した。合計で10mLを、チューブを通じて洗い流した。サンプル採取が完了したら、椅子基部のハンドルを緩めて動物を椅子から外す。
【0358】
注入され、各動物から収集された量、ならびにBALサンプル中の血液の存在を記録した。採取されたBALサンプルを直ちに湿らせた氷上に置き、液体単離の処理を行った(ウイルス量分析のため)。この手順のため、4℃でチューブを遠心分離(8分、300~400xg)して、上清を取り出した。以下のBAL分注物を調製し、ウイルス量(VL)試験または他の試験まで凍結保存した:VL試験用に3x0.2mL、他のアッセイとバンキング用に3x1mL。
【0359】
実施例38:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験のための血液採取
血液は、表16に従い、麻酔下で採取された。バキュテイナ 21g x 1インチ血液採取針、またはバキュテイナ採血管に取り付けられたAbbott Butterfly 23 g x 3/4インチチューブを使用して、大腿静脈穿刺により麻酔下の動物から血液を引き出した。血液は、EDTA抗凝固剤が入ったBDバキュテイナ(登録商標)管に採取され、社内のIDEXX BioResearch分析器を使用して分析された。以下のルーチンパネルが分析された:CBC:WBC、RBC、HGB、HCT、MCV、MCH、MCHC、NRBC、好中球、SEG、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、絶対好中球SEG、絶対リンパ球数、絶対好酸球数、絶対好塩基球数。
【0360】
予定通りに解剖が実施され、肺組織が採取された。動物の体重を計測し、体温を記録して、胸腔から肺を取り出した。動物と肺の肉眼的評価を行い、肺のデジタル画像とともに記録した。2つの小片(それぞれ0.1~0.2グラム)を左および右の尾状葉ならびに前葉から採取し、ウイルス量アッセイ用に組織をサンプリングした(合計で8片)。ウイルス分析用の組織採取後、肺に10%中性緩衝ホルマリンNBFをかけて、これに浸した。採取された肺と他の組織は、NBF中に保存され、組織処理と分析が行われた。
【0361】
ウイルス量アッセイのために、組織の重量を計測し、前もってラベル添付したSarstedtクライオバイアル(2/サンプル)内に入れ、ドライアイス上で瞬間凍結させた(瞬間凍結の時間は、体重hartsに記載した)。ウイルス量アッセイで試験を行う前に、組織は0.5mLの冷培地(DMEM/10% FBS/ゲンタマイシン)またはRNA-Stat(PCR系アッセイ用)中でおよそ20秒間、携帯型組織ホモジナイザー(SOP BV-035; Omni International社、ジョージア州ケネソー)を使用してホモジナイズされた。次いでサンプルをスピンダウンして、残渣を取り除き、上清を単離させてウイルス量決定が行われた。
【0362】
実施例39:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験に対するSARS-CoV-2の定量的RT-PCRアッセイ
体液1mL当たり、または組織1グラム当たりのRNAコピー数を、qRT-PCRアッセイを使用して決定した。qRT-PCRアッセイは、コロナウイルスのヌクレオカプシド遺伝子の保存領域を増幅し、結合するように特異的に設計されたプライマーとプローブを使用する。公知の標準曲線とシグナルを比較し、計算を行って、1mL当たりのコピー数を得る。qRT-PCRアッセイのために、ウイルスRNAは最初にQiagen MinElute virus spin kit(カタログ番号57704)を使用して鼻洗浄液から単離された。組織については、RNA-STAT 60(Tel-Test「B」)/クロロホルムで抽出され、沈殿されて、RNAse非含有水中に再懸濁された。増幅反応の対照を作製するために、同じ手順を使用して適切なウイルスストックからRNAを単離した。RNA量は260nmでのO.D.読み取り値から決定された。A260でのOD値1.0は、40μg/mLのRNAに相当すると推定される。判明している塩基数、および平均RNA塩基の重量が340.5g/モルであることから、コピー数を計算して、それに伴い対照を希釈した。3μL当たり108コピーの最終希釈を、10μLの単回使用分注物に分割した。これら分注物は、必要となるまで-80℃で保管された。いくつかの分注物を無作為に選択し、過去の対照と比較して、一貫性を確認した。マスターミックス調製については、TaqMan RT-PCRキット(Bioline社、カタログ番号 BIO- 78005)から取得したTaqポリメラーゼを含有する2X緩衝液を2.5mL、15mLチューブに入れた。キットから、50μLのRTと、100μLのRNAse阻害剤も加えた。2μMの濃度のプライマー対も、1.5mLの体積で加えた。最後に、0.5mLの水、2μMの濃度のプローブ350μLを加えて、チューブをボルテックスした。反応については、45μLのマスターミックスと、5μLのサンプルRNAを96ウェルプレートのウェルに加えた。全てのサンプルがトリプリケートで検証された。プレートは、プラスチックシートで密封された。
【0363】
対照曲線の調製については、対照RNAのサンプルを、-80℃の冷凍庫から取得した。対照RNAは、3μL当たり、106~107コピーを含有するように調製された。対照RNAの8つの10倍連続希釈は、RNA非含有水を使用し、5μLの対照を45μLの水に加えて、これを7回繰り返すことにより調製された。この工程により、1~107コピー数/反応の範囲の標準曲線が得られた。上述のようにして各希釈のデュプリケイトサンプルも調製された。コピー数が検出上限を超えた場合、必要に応じてサンプルが希釈された。増幅を行うために、Applied Biosystems 7500 Sequence検出器にプレートを置き、以下のプログラムを使用して増幅させた。48℃で30分間、95℃で10分間、次いで95℃で15分間、そして55℃で1分間を40サイクル。1mL当たりのRNAコピー数は、標準曲線から外挿し、0.2mLの抽出量の逆数を掛けることにより計算された。この工程により、鼻腔ぬぐい液については1mL当たり50~5x108RNAコピー数の実用的な範囲が得られ、組織については1グラム当たりのウイルス量が得られた。
【0364】
実施例40:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、配列番号19+ISA 720の有効性試験に対するSARS-CoV-2のサブゲノムmRNAアッセイ
sgRNAのRT-PCRアッセイは、コロナウイルスのE遺伝子メッセンジャーRNAの領域を増幅し、結合するように特異的に設計されたプライマーとプローブを使用する。これはビリオン内にはパッケージングされなかった。ウイルス中にはない部分を含むメッセンジャーRNA部分の配列を含むプラスミドの判明している標準曲線とシグナルを比較し、計算を行って、qRT-PCRアッセイの1mL当たりのコピー数を得た。増幅反応の対照を作製するためのE遺伝子メッセンジャーRNAの一部を含有するプラスミド。3μL当たり106コピーの最終希釈を、10μLの単回使用分注物に分割した。これら分注物は、必要となるまで-80℃で保管された。
【0365】
いくつかの分注物を無作為に選択し、過去の対照と比較して、一貫性を確認した。次いでウイルスRNA用に抽出されたサンプルを増幅して、sgRNAを取り出した。対照DNAは、3μL当たり、107コピーを含有するように調製された。対照RNAの7つの10倍連続希釈は、AVEを使用し、5μLの対照を45μLの水に加えて、これを7回繰り返すことにより調製された。この工程により、1~106コピー数/反応の範囲の標準曲線が得られた。上述のようにして各希釈のデュプリケイトサンプルも調製された。コピー数が検出上限を超えた場合、必要に応じてサンプルが希釈された。増幅を行うために、Applied Biosystems 7500 Sequence検出器にプレートを置き、以下のプログラムを使用して増幅させた。48℃で30分間、95℃で10分間、次いで95℃で15分間、そして55℃で1分間を40サイクル。1mL当たりのRNAコピー数は、標準曲線から外挿し、0.2mLの抽出量の逆数を掛けることにより計算された。この工程により、鼻腔ぬぐい液については1mL当たり50~5x107RNAコピー数の実用的な範囲が得られ、組織については1グラム当たりのウイルス負荷が得られた。
【0366】
実施例41:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19の有効性試験のための、SARS-CoV-2のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の抗体ELISA
動物のプレスクリーニングとして、標準的な間接的ELISAを実施して、SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体の結合について血清サンプルを分析した。このアッセイは、コーティングされた抗原と、IgG二次抗体を使用した。このアッセイについて、Nunc MaxiSorp 96ウェルプレート(Thermo Scientific社、カタログ番号439454)に、1x Carbonate-Bicarbonate Buffer(CBB、Sigma社、カタログ番号 C3041-50CAP)中で2μg/mLに希釈された50μLのSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sino Biological社、カタログ番号40589-V08B1)をコーティングした。静かにプレートを一晩2~8℃でインキュベートした。各ウェル中の非結合コーティング抗原を、200μLのPBS+0.05% Tween-20を用いて5回洗浄することにより取り除いた。100μLのPBS+1% BSAを用いてプレートをブロッキングした。被験サンプルおよび陽性対照サンプルを、アッセイ希釈液(PBS-Tween20-1% BSA)中で、開始希釈の1:20まで希釈して、次いでU底希釈プレートを使用して4倍連続希釈を行った。
【0367】
ブロッキングが完了したら、ひっくり返してブロッキング緩衝液を取り除き、各サンプルを入れた。静かに室温で1時間、プレートをインキュベートし、次いで200μL PBS+0.05% Tween-20を用いて5回洗浄し、非結合血清を取り除いた。50μLの二次検出抗体(ヤギ抗サルIgG(H+L)二次抗体、HRP、Invitrogen社、PA1-84631)を1:10,000希釈で添加し、室温で60分間、プレートをインキュベートした。続いて非結合抗体を、200μLのPBS+0.05% Tween-20で5回洗浄し、200μLのPBSで1回洗浄することによって取り除いた。発色させるために、100μLの1-Step Ultra TMB substrate(SERA CARE、KPL カタログ番号 5120-0075)を各ウェルに添加し、プレートを発色させた。約10分後に、50μLのTMB停止溶液(SERA CARE、カタログ番号 5150-0020)を用いて反応を停止させた。Thermo Labsystems Multiskan分光光度計を用いて30分以内に450nmでプレートを読み取った。
【0368】
実施例42:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19の有効性試験のためのSARS-CoV-2のプラーク減少中和試験
プレスクリーニングのためにPRNTアッセイを血清サンプルに行った。このアッセイのために、Vero E6細胞(ATCC、カタログ番号 CRL-1586)を、DMEM+10% FBS+ゲンタマイシン中、175,000細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。翌日、細胞が80~100%コンフルエンシーに達するまで、37℃、5.0% CO2でプレートをインキュベートした。アッセイの当日、血清サンプルは、56℃で30分間、熱不活化された。アッセイの設定は、以下のように行われた:96深ウェルプレートにおいて、405μLの希釈物(DMEM + 2% FBS + ゲンタマイシン)を、列1に添加し、300μLの希釈物を列3、5、7、9および11に添加した。45μLの熱不活化血清サンプルを、最初の列に添加した(1:10希釈)。全てのサンプルが添加された時点で、ウェルの内容物をP200ピペッターを使用して約5分間、上下に混合し、150μLを列3に移して1:3倍希釈とした。これを次のウェルセットからプレートの下の列11まで繰り返した。ウイルス陽性対照については、300μLの希釈物を列1、3、5、7、9および11に添加し、一方で600μLの希釈物を行1に添加する。これは陰性対照となる。30pfu/ウェルのウイルス濃度を調整し、使用するまで氷上で維持する。
【0369】
上述のように力価測定プレートが準備された後、30pfu/ウェルのウイルス希釈物を300μL、全てのサンプルと陽性対照に添加した。これにより、サンプルの希釈計数が2倍となった(最初のウェルは1:20から始まる)。次いでプレートをプレートシーラーで覆い、1時間、37℃、5.0% CO2でインキュベートした。インキュベーションが完了した後、24ウェルプレートから培地を取り除き、力価測定プレートから250μLの力価測定サンプルをマルチチャンネルピペットを使用してデュプリケイトで加えた。細胞が乾燥することを防ぐため、一度に一枚のプレートのみを準備した。24ウェルプレートを、1時間、37℃、5.0% CO2でインキュベートし、ウイルスを感染させた。この間に0.5%メチルセルロース培地を37℃の水槽中で加熱した。1時間のインキュベーション後、1mLの0.5%メチルセルロース培地を各ウェルに添加し、プレートを3日間、37℃、5% CO2でインキュベートした。メチルセルロース培地を取り除き、1mL PBSを用いてプレートを1回洗浄した。1ウェル当たり400μLの氷冷メタノールを用いてプレートを30分間、-20℃で固定した。固定後、メタノールを廃棄して、1ウェル当たり250μLの0.2% クリスタルバイオレット(20% MeOH、80% dH2O)を用いて室温で30分間、単層を染色した。最後にPBSまたはdH2Oを用いてプレートを1回洗浄し、約15分間乾燥させた。各ウェル中のプラークを記録し、IC50力価およびIC90力価を、ウイルス対照ウェルで検出された平均プラーク数を基に計算した。
【0370】
実施例43:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、Montanide(商標)ISA 720アジュバントを含む配列番号19の有効性試験のためのSARS-CoV-2の感染性ウイルス量アッセイ(TCID50)
Vero E6細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1586)を、25,000細胞/ウェルでDMEM + 10% FBS + ゲンタマイシン中に播種し、培養液を37℃、5.0% CO2でインキュベートした。細胞は翌日に80~100%コンフルエントになるはずである。培地を吸引し、180μLのDMEM+2%FBS+ゲンタマイシンと置き換えた。20μLのサンプルをクアドラプリケートで一番上の行に加えて、P200ピペッターを使用して5回混合した。ピペッターを使用して20μLを新たな行に移し、それをプレートの下(A列~H列)へと繰り返し、10倍希釈とした。各行ごとにチップを廃棄し、最後の行まで繰り返した。各アッセイの設定には、陽性対照(アッセイにおいて感染力価が判明しているウイルスストック)および陰性対照(培地のみ)のウェルが含まれた。プレートを37℃で4日間、5.0% CO2でインキュベートした。細胞単層をCPEについて目視検証した。非感染ウェルには綺麗なコンフルエント細胞層があり、一方で感染細胞は、細胞が丸くなっている。CPEがあれば、実験室フォームに+として印をつけ、CPEが無ければ、-と印をつける。TCID50値は、Read-Muench式を使用して計算された。
【0371】
実施例44:NHP SARS-CoV-2ウイルスチャレンジモデルにおける、Montanide(商標)ISA 720を含む配列番号19の有効性試験の結果
表17に示されるように、ISA-720を含む配列番号19で免疫化された5匹のNHPは、ウイルスチャレンジ直前に、5匹の未感作対照NHPと比較して、有意な抗SP/RBD IgG価とACE2阻害のID50値を示した。未感作対照は、両アッセイとも僅かな、または検出不可能なレベルであった。
図78に示されるチャレンジ後の結果は、COVID-19感染に対する防御におけるISA 720を含む配列番号19のワクチンの有効性を明白に示し、実施例37の手順により得られた鼻腔ぬぐい液において、SARS-CoV-2ウイルスゲノムおよびウイルスサブゲノムRNA力価(実施例39の手順で測定された)のレベルが僅か、または検出不可能であったことで証明される。同様に、
図79は、実施例37の手順により得られたBALサンプルにおいて、SARS-CoV-2ウイルスゲノムおよびウイルスサブゲノムRNA力価(実施例40の手順で測定された)のレベルが僅か、または検出不可能であったことを示す。サブゲノムRNA(sgRNA)は複製中間体であり、その存在数はウイルス複製の活性や宿主感染の重症度と関連していることを踏まえると、その数が少ないことは特に有望性を示す。まとめると、データから、ISA-720を含む配列番号19は、COVID-19から防御し、NHPにおいてCOVID-19疾患の悪化リスクはないことが結論付けられる。
【0372】
【0373】
主要臓器/組織、特に肝臓、肺、気道、脾臓、腎臓、脳およびリンパ節に対し、組織病理学的検査が実施された。SARS-CoV-2は、ヒトにおいて肝臓細胞に感染し、肝炎を生じさせることが示されている。そこで、組織病理学的検査を実施して、肝炎の重症度を評価し、およびワクチン接種対象と非ワクチン化対照におけるチャレンジ関連でのその減少度合を評価した。肺および気道は、重度感染および肺炎に関連する病変について検査された。
【0374】
イヌ科インスリン-Fc融合タンパク質の合成、精製およびバリデーションに関する一般的な実施例
実施例45:HEK293細胞におけるインスリン-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
インスリン-Fc融合タンパク質は、以下のように合成された。対象の遺伝子配列は、独自のソフトウェア(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)を使用して構築され、高発現哺乳動物ベクターにクローニングされた。HEK293細胞を振とうフラスコに播種し、その24時間後、トランスフェクションを行い、無血清既知組成培地を使用して増殖させた。対象のインスリン-Fc融合タンパク質をコードするDNA発現構築物を、一過性トランスフェクションに関する(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)標準操作手順を使用してHEK293細胞の懸濁液内に、一過性にトランスフェクションした。20時間後、細胞を数え、生存率および生きている細胞数を決定し、力価をForteBio(登録商標)Octet(登録商標)(Pall ForteBio LLC、カリフォルニア州フレモント)により測定した。一過性トランスフェクション生産が行われている間、追加で読み取りを行った。培養物を、5日目以降に回収した。
【0375】
実施例46:CHO細胞におけるインスリン-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
CHO細胞株は元々CHO-K1(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)から誘導されたものであり、内因性のグルタミン合成酵素(GS)遺伝子が当分野に公知の方法を使用した組み換え技術によってノックアウトされた。CHO発現とGS選択に対して安定的な発現DNAベクターが設計され、最適化されており、高発現哺乳動物ベクター(LakePharma社、カリフォルニア州ベルモント)に組み込まれた。構築完了物の各々の配列が確認され、その後にスケールアップ実験が開始された。懸濁液に適合されたCHO細胞を、既知組成培地(CD OptiCHO; Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)中、加湿された5% CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。血清が無い、または他の動物由来の物がない製品を、CHO細胞の培養に使用した。
【0376】
指数関数的増殖相の間にCD OptiCHO培地中で増殖した約8000万個の懸濁液適合CHO細胞を、MaxCyte(登録商標)STX(登録商標)システム(MaxCyte, Inc.、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を使用して、80μgのDNAをエレクトロポレーション法によりトランスフェクトし、各インスリン-Fc融合タンパク質(DNA構築物は、インスリン-Fc融合タンパク質の全長配列を含む)の安定的CHO細胞株を作製した。24時間後、トランスフェクトされた細胞を計数し、インスリン-Fc融合遺伝子の安定的統合に関する選択圧下で播種した。トランスフェクトされた細胞を、0~100μM メチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCD OptiCHO選択培地に、0.5x106細胞/mLの細胞密度で、振とうフラスコにおいて播種し、37℃、5% CO2でインキュベートした。CHO安定的プールが増殖速度と生存率を回復させるまで、選択プロセスを行う間、2~3日ごとに細胞をスピンダウンし、新鮮な選択培地中に再懸濁した。細胞培養物は、増殖と力価についてモニタリングされた。
【0377】
細胞を、2.5x106細胞/mLまで増殖させた。細胞バンキング用の採取の時点で、生存率は95%を超えていた。次いで細胞を遠心分離し、細胞沈殿物を、7.5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含むCD OptiCHO培地中に再懸濁して、15x106細胞/mL/バイアルの細胞数とした。保管用にバイアルを液体窒素中で凍結保存した。
【0378】
以下のようにCHO細胞を使用して、小規模なスケールアップ生産を実施した。37℃で100μM MSXを含有するCD OptiCHO増殖培地中での生産のために、細胞をスケールアップして、およそ14~21日間、必要に応じて2~4日ごとに、グルコースと必要に応じて追加アミノ酸を補充されたCD OptiCHO増殖培地を供給した。安定的プール生産から回収した馴化培地上清を、遠心分離により浄化した。結合緩衝液を用いて予め平衡化されたプロテインA(MabSelect、GE Healthcare社、英国リトルチャルフォント)カラムにタンパク質を流した。次いで、OD280値(NanoDrop、ThermoScientific社)が、バックグラウンド値かほぼその近傍値に測定されるまで、洗浄緩衝液をカラムに通した。低pH緩衝液を使用してインスリン-Fc融合タンパク質を溶出させ、溶出分画を集め、各分画のOD280値を記録した。標的のインスリン-Fc融合タンパク質を含む分画をプールし、任意で0.2μMの膜フィルターを使用してろ過した。
【0379】
任意選択で細胞株をさらにモノクローナルになるまでサブクローニングし、および任意でさらに高力価インスリン-Fc-融合タンパク質を発現するクローンを、当分野に公知の方法である限界希釈法を使用して選択した。高力価のモノクローナル性インスリン-Fc融合タンパク質を発現する細胞株を取得した後、インスリン-Fc融合タンパク質の産生は、上述のようにMSXを含まない増殖培地中で行われ、または任意でMSXを含む増殖培地中で行われて、CHOで産生された組み換えインスリン-Fc融合タンパク質を含有する細胞培養上清を得た。高い産生能力を有するクローン株をさらに選択するために、任意でMSX濃度を経時的に上昇させた。
【0380】
実施例47:インスリン-Fc融合タンパク質の精製
インスリン-Fc融合タンパク質の精製は、以下のように行われた:分泌されたインスリン-Fc融合タンパク質を含有する馴化培地の上清を、一過性または安定的にトランスフェクトされたHEK細胞の産物から回収し、遠心分離で清浄化させた。所望のインスリン-Fc融合タンパク質を含む上清をプロテインAカラムに流し、低pH勾配を使用して溶出させた。その後、所望のタンパク質を含む溶出分画をプールし、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に緩衝液交換した。最終ろ過工程は、0.2μmの膜フィルターを使用して行われた。最終タンパク質濃度は、280nmでの溶液光学密度から計算された。必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換ビーズ樹脂またはカチオン交換ビーズ樹脂を使用)、ゲルろ過クロマトグラフィーまたは他の方法によって追加の任意選択的な精製が行われた。
【0381】
実施例48:非還元CE-SDSまたは還元CE-SDSによる、インスリン-Fc融合タンパク質の構造確認
キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)解析を、LabChip(登録商標)GXII(Perkin Elmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)において、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0の緩衝液に溶解されたインスリン-Fc精製融合タンパク質に対して行い、電気泳動図がプロットされた。非還元条件下では、サンプルは分子量(MW)が判明しているタンパク質標準に対して流され、溶出ピークは、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の「見かけ上の」MWを表す。
【0382】
還元条件下(インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体のジスルフィド結合を壊すためにベータ-メルカプトエタノールを使用)で、得られたインスリン-Fc融合タンパク質単量体の見かけ上のMWを、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の分子量の半分と比較して、インスリン-Fc融合タンパク質の構造純度が正確である可能性が高いことを判定する1つの手段とした。
【0383】
実施例49:グリカン除去を用いたLC-MSによるインスリン-Fc融合タンパク質の配列特定
質量分析法(MS)を介してインスリン-Fc融合タンパク質の質量の正確な推定値を得るために、最初にサンプルを処理して、自然発生的なグリカンを除去した。グリカンは、MS分析に干渉する可能性がある。200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に溶解させた2.5mg/mL インスリン-Fc融合タンパク質の100μLを最初に、Zeba脱塩カラム(Pierce社、ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して5mM EDTAを含む0.1M Tris、pH8.0緩衝液へと緩衝液交換した。1.67μLのPNGase F酵素(Prozyme N-glycanase)をこの溶液に加えて、インスリン-Fc融合タンパク質中に存在するN結合型グリカン(例えば、cNg-N部位に位置するアスパラギンの側鎖に結合したグリカン)を除去して、混合物を37℃で一晩、インキュベーター中でインキュベートした。次いでサンプルをLC-MS(NovaBioassays社、マサチューセッツ州ウォバーン)により分析して、当該分子の質量を得た。この質量は、グリカンを含まない所望のホモ二量体に相当する。cNg-アスパラギンからグリカンを除去するために使用された酵素プロセスは、アスパラギン側鎖からアミノ基も除去してアスパラギン酸を形成する。その際、酵素処理されたホモ二量体は全体で2Da増加し、ホモ二量体中に存在する各鎖については1Daの質量に相当するため、次いでこの質量をさらに補正した。したがって、分析サンプル中のインスリン-Fc融合タンパク質構造の酵素修飾を補正するため、実際の分子の質量は、測定された質量から2Daを差し引いたものとした。
【0384】
実施例50:サイズ排除クロマトグラフィーによる、インスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体%
インスリン-Fc融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)は、280nMの波長で2998光ダイオードに接続されたWaters 2795HT HPLC(Waters Corporation社、マサチューセッツ州ミルフォード)を使用して実施された。100μL以下の対象インスリン-Fc融合タンパク質含有サンプルを、MAbPac SEC-1、5μm、4×300mmカラム(ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)に注入し、当該装置は0.2mL/分の流量で操作され、移動相は、50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、および0.05% w/v アジ化ナトリウム、pH6.2を含有した。MAbPac SEC-1カラムは、分子サイズ分離の原理に基づき動作する。したがって、大きな可溶性のインスリン-Fc凝集体(例えば、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の多量体)は速い保持時間で溶出され、非凝集体のホモ二量体は遅い保持時間で溶出される。分析的SEC-HPLCを介して凝集した多量体型ホモ二量体からホモ二量体混合物を分離する際、非凝集型ホモ二量体の割合%を単位としてインスリン-Fc融合タンパク質溶液の純度も確認された。
【0385】
実施例51:インスリン-Fc融合タンパク質のインビトロFc(ガンマ)受容体I結合アフィニティアッセイ
pH7.4でのFc(ガンマ)受容体Iに対するインスリン-Fc融合タンパク質の結合は、以下のようにELISAアッセイを使用して実施された。イヌ科のFc(ガンマ)受容体Iは市販されていなかったため、ヒトFc(ガンマ)受容体I(すなわち、rhFc(ガンマ)受容体I)をサロゲート哺乳動物受容体として使用した。インスリン-Fc化合物を希釈して、pH9.6の重炭酸ナトリウム緩衝液中、10μg/mLとした。これをMaxisorp(Nunc社)マイクロタイタープレート上に一晩4℃でコーティングした。その後、マイクロプレートストリップをPBST(PBS/0.05% Tween-20)緩衝液を用いて5回洗浄し、Superblockブロッキング試薬(ThermoFisher社)を用いてブロッキングした。ビオチニル化rhFc(ガンマ)受容体I(組み換えヒトFc(ガンマ)R-I、R&D Systems社)の連続希釈を、PBST/10% Superblock緩衝液中で、6000ng/mLから8.2ng/mLに調製し、100μL/ウェルで、インスリン-Fc融合タンパク質でコーティングされたマイクロプレートストリップ上へとローディングした。マイクロタイタープレートを室温で1時間インキュベートし、その後、マイクロタイタープレートをPBSTで5回洗浄して、次いでPBST/10% Superblock緩衝液中で1:10000希釈されたストレプトアビジン-HRPを100μL/ウェルでローディングした。45分間インキュベートした後、マイクロプレートストリップをPBSTで5回再度洗浄した。TMBを添加して、結合したFc(ガンマ)受容体Iタンパク質を明らかにし、ELISA停止試薬(Boston Bioproducts社)で停止させる。450nmでELISAプレートリーダーにおいてプレートを読み取り、OD値(インスリン-Fcタンパク質へのrhFc(ガンマ)受容体Iの結合に比例する)を、各ウェルに添加されたrhFc(ガンマ)受容体Iの対数濃度に対してプロットして、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線を作成する。
【0386】
実施例52:クライアント所有犬における、インスリン-Fc融合タンパク質の定期的投与後のインビボ薬理(PD)
生物活性のあるインスリン-Fc融合ホモ二量体構築物を、実施例45または実施例46で合成し、実施例47で精製した。これを、以下のように絶食血中グルコース値に対する作用について評価した。
【0387】
プロトコル1は、糖尿病と診断されたクライアント所有犬をインスリン-Fc融合タンパク質を用いて治療する、顕在化、自制型で単群でのパイロットフィールド有効性試験である。イヌへの効果は、標準的なインスリン治療(1週間)を受けながら血糖コントロールを受けるもの(臨床兆候、フルクトサミン値、および連続的グルコースモニタリングユニット(CGMS)を使用した間質グルコース濃度に基づく)と、8週間にわたりインスリン-Fc融合タンパク質の用量を漸増させて治療されるものとを比較することにより評価される。用量は、0.1mg/kgで開始して皮下投与され、その後、CGMSの結果と臨床兆候に基づいて最大0.5mg/kgまで毎週連続して増加させる。一部のイヌに使用されたプロトコル1試験のタイムラインを表18に示す。
【0388】
【0389】
プロトコル2は、糖尿病と診断されたクライアント所有犬をインスリン-Fc融合タンパク質を用いて治療する、顕在化、自制型で単群でのパイロットフィールド有効性試験である。イヌへの効果は、標準的なインスリン治療(1週間)を受けながら血糖コントロールを受けるもの(臨床兆候、フルクトサミン値、および連続的グルコースモニタリングユニット(CGMS)を使用した間質グルコース濃度に基づく)と、5週間にわたりインスリン-Fc融合タンパク質の用量を漸増させて治療されるものとを比較することにより評価される。用量は、0.1mg/kgで開始して皮下投与され、その後、CGMSの結果と臨床兆候に基づいて最大0.5mg/kgまで毎週連続して増加させる。一部のイヌに使用されたプロトコル2試験のタイムラインを表19に示す。
【0390】
【0391】
上述のプロトコルのいずれかが完了した後、任意選択の最大1年間の「家での使用」の評価がある。このフェーズの間、従来のインスリン治療を受けている他の患者と同様に、獣医師はケースバイケースで各イヌを治療する。臨床兆候、および連続的グルコースモニタリングユニット(CGMS)を使用した間質グルコース濃度が、当該試験のフェーズの間モニタリングされる。それに加えて、可能な限り頻繁に血液サンプルを収集して、フルクトサミン値、血液化学検査、および血球数を評価し、抗薬剤抗体および抗インスリン抗体の存在について試験する。
【0392】
実施例53:イヌ科における、インスリン-Fc融合タンパク質の定期的な投与後のインビボ抗インスリン抗体(AIA)力価測定-プロトコル1
Maxisorp ELISAプレート(Nunc社)を、コーティング緩衝液(pH=9.6 炭酸-重炭酸緩衝液)中で希釈された精製RHIを用いて30μg/mLで一晩、4℃でコーティングした。次いでプレートをPBST(PBS + 0.05% Tween 20)で5回洗浄し、≧1時間(または一晩)、SuperBlockブロッキング溶液(ThermoFisher社)を用いてブロッキングした。イヌIgG単位でのAIAの計算について、300~4.69ng/mLの濃度のイヌIgG(Jackson Immunoresearch社)のpH=9.6 Carb-Biocarbコーティング緩衝液中の1:2連続希釈を用いてストリップを一晩、4℃で直接コーティングし、これを使用して、7点の擬似標準曲線を作成した。標準ストリッププレートも洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液を用いて≧1時間(または一晩)ブロッキングした。
【0393】
被験血清サンプルを、PBST/SB/20%HSのサンプル希釈緩衝液(PBS+0.1% Tween 20+10% SuperBlock+20%ウマ血清)中、≧1:100(典型的には、1:200で試験された)まで希釈し、RHIコーティング済みストリップに100μL/ウェルでデュプリケイトで添加した。イヌIgGコーティング標準ストリップもデュプリケイトで各プレートに添加し、100μL/ウェルでPBST/SB(PBS+0.1% Tween 20+10% SuperBlock)で満たした。プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで5回洗浄した。AIAの検出について、イヌIgGと交差反応性であるHRPコンジュゲートヤギ抗イヌIgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch社)を、PBST/SB中、1:10,000に希釈して、サンプルと標準のウェルの両方に100μL/ウェルで添加し、45分間、室温、暗所でインキュベートした。プレートをPBSTで5回洗浄し、室温、暗所で100μL/ウェルのTMB基質(Invitorogen社)を15~20分間添加することにより発色させた。次いで、100μL/ウェルのELISA停止溶液(Boston Bioproducts社)を添加することにより発色を停止させ、SpectraMaxプレートリーダーを使用して、30分以内に450nmで吸光度を読み取る。抗薬剤抗体の濃度は、SoftMax Proソフトウェアを使用して4-PL擬似標準曲線にOD値を内挿することによって決定した。
【0394】
実施例54:イヌ科における、インスリン-Fc融合タンパク質の定期的な投与後のインビボ抗インスリン抗体(AIA)力価測定-プロトコル2
一般的手順は以下の通りである:標識抗原を含む血清を、冷インスリンとともに、または伴わずに一晩インキュベートする。抗体が結合した標識抗原を、96ウェルプレート様式においてプロテインA/G セファロースを用いて沈殿させ、各血清をデュプリケイトで試験した。96ウェルプレートを洗浄し、非結合の標識抗原を取り除いた。各ウェルを、96ウェルプレートベータカウンターを用いて計数する。結果は、特定のアッセイにおける陽性対照と陰性対照の1分当たりの数(cpm:counts per minute)の差分に対し、被験血清のcpmの差分を調整する指標として表される。
【0395】
具体的な手順は、以下のように2つの緩衝液の調製を含む:緩衝液1(150mM NaCl、20mM Tris-HCl、1%BSA、0.15%Tween-20、0.1%アジ化ナトリウム pH 7.4)および緩衝液2(1%BSAの代わりに0.1%BSAである点を除き、緩衝液1と同じ)。各血清サンプルをスピンダウンして、必要に応じてフィブリン塊を取り除く。次いで、1mLの5%BSAのPBS溶液に、125I-インスリン粉末の10μCiを溶解させることにより、放射性標識インスリンのストック溶液を調製する。「ホット」インスリン抗原溶液は、3040μLの緩衝液1と、160μLの放射性標識インスリンストック溶液を使用して調製される。「コールド阻害」インスリン抗原溶液は、2784μLの緩衝液1と、160μLの放射性標識インスリンストック溶液と、256μLのHumulin(登録商標)溶液(Eli Lilly社、インディアナ州)を使用して調製される。使用するまで全ての溶液を氷上で維持する。PCRチューブにおいて、6μLの各血清サンプルと、30μLの「ホット」インスリン抗原溶液を混合し、そして6μLの各血清サンプルと30μLの「コールド阻害」インスリン抗原溶液を混合する。得られた混合液を一晩、4℃でインキュベートする。次いで、150μLの緩衝液1を各ウェルに添加し、続いて一晩、アルミニウムホイルのカバーの下、室温でインキュベートする。その後洗浄して、洗浄緩衝液を取り除くことにより、プレートをBSAでコーティングする。プロテイン-A/Gセファロース混合物は、2つに分けて調製される。プロテイン-Aセファロース溶液は、62.5%の体積濃度で緩衝液1中で調製される。プロテイン-Gセファロース溶液は、40%の体積濃度で緩衝液1中で調製される。最後に、プロテイン-A/Gセファロース混合物は、4:1の比率でプロテイン-Aセファロース溶液と、プロテイン-Gセファロース溶液とを混合することにより調製される(最終濃度:50% プロテイン-A/8% プロテイン-G セファロース)。アッセイを実施するために、50μLのプロテインA/Gセファロース混合物と、30μLの一晩インキュベートされた血清溶液を、各ウェルにデュプリケイトで添加する。プレート振とう器上で45分間、4℃でプレートを混合し、次いでMilliporeプレート洗浄機を使用して1ウェル当たり200μLの洗浄緩衝液を用いて7回プレートを洗浄し、その後、37℃のインキュベーター中に15分間置いて乾燥させる。50μLのシンチレーションカクテル(Microscint-20)を各ウェルに添加し、96ウェルプレートカウンターを使用してプレートを計数し、各ウェルのcpmを決定する。
【0396】
等価
請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、反対であることが示唆されない限り、または文脈から明白でない限り、1つ、または1つよりも多いことを意味し得る。反対であることが示唆されない限り、または文脈から明白でない限り、群の1つ以上の構成員の間に「または」を含む請求の範囲または明細書は、群の1つ、複数、またはすべての構成員が、所与の産物またはプロセスに存在する、採用される、または別手段により関連する場合を成立させるとみなされる。本開示は、群の正確に1つの構成員が、所与の産物またはプロセスに存在する、採用される、または別手段により関連する実施形態を含む。本開示は、群の複数またはすべての構成員が、所与の産物またはプロセスに存在する、採用される、または別手段により関連する実施形態を含む。
【0397】
さらに本開示は、列記される請求の範囲の1つ以上に由来する1つ以上の限定、要素、節、および記述に関する用語を、別の請求の範囲に導入するバリエーション、組み合わせ、および並び替えをすべて包含する。例えば別の請求の範囲に依存する任意の請求の範囲を、同じ基礎となる請求の範囲に依存する任意の他の請求の範囲にある1つ以上の限定を含むように改変する場合がある。要素が例えばマーカッシュ群形式などのリストとして提示される場合、当該要素の下位群のそれぞれも開示されており、そして任意の要素が当該群から取り除かれ得る。概して、本開示または本開示の態様が、特定の要素および/または特性を含むものとして言及されている場合、本開示の特定の実施形態または本開示の特定の態様は、そのような要素および/または特性からなるか、または本質的にそれらからなることを理解されたい。簡易さを目的として、それら実施形態は、その通りの文言で本明細書に具体的には記述されない。また、「含む」、「含むこと」、「含有する」、および「含有すること」という用語は、オープンであることが意図され、その使用によって、追加の要素または工程の含有が容認されることに留意されたい。範囲が記載される場合、終点が含まれる。さらに、別段の示唆が無い限り、または文脈や当業者の理解から明白でない限り、範囲として表されている値は、別段であることが文脈で明白に指示されない限り、本開示の異なる実施形態において規定される任意の特定の値、または当該範囲内の下位範囲を、当該範囲の下限の10分の1の単位まで想定する場合がある。
【0398】
本発明技術の様々な実施形態の追加的な利点は、本明細書に記載される開示内容および実施例を再検討することで当業者には明白である。本明細書に記載される様々な実施形態は、本明細書に別段の示唆が無い限り、必ずしも相互的に排他的ではないことを認識されたい。例えば1つの実施形態において記載される、または示される特性は、他の実施形態でも含まれる場合があるが、必ず含まれるわけではない。したがって本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態の様々な組み合わせおよび/または統合を包含する。
【0399】
本明細書は、本発明の様々な実施形態に関連する特定のパラメーターを定量化するために、数値的な範囲も使用する。数値的な範囲が提供される場合、当該範囲は、当該範囲の下位値のみを列挙する請求の範囲の限定、ならびに当該範囲の上位値のみを列挙する請求の範囲の限定に対する逐語的なサポートを提供するものとみなされることを理解されたい。例えば、約10~約100という数値範囲が開示される場合、「約10よりも大きい」(上限が無い)を列挙する請求の範囲、および「約100よりも小さい」(下限が無い)を列挙する請求の範囲に対する逐語的なサポートが提供される。
【配列表】