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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240729BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P27/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022575046
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001531
(87)【国際公開番号】W WO2022153544
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 祐介
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301550(JP,A)
【文献】特開2017-169332(JP,A)
【文献】特開2005-039889(JP,A)
【文献】特開2017-099224(JP,A)
【文献】国際公開第2009/095979(WO,A1)
【文献】特開2017-099225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 6/00,27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電動機に接続された電力変換装置であって、
直流電力を所望の交流電力に変換し前記交流電動機に出力して前記交流電動機を駆動する電力変換部と、
前記交流電動機の実回転速度を検出する速度検出器と、
前記速度検出器から前記実回転速度を取得するパルス変換部と、
前記交流電動機を駆動するための回転指令速度を出力する指令部と、
前記速度検出器又は前記パルス変換部が、正常に前記実回転速度を取得可能な限界速度を超えたか否かを判定し、前記回転指令速度と前記実回転速度とを比較して前記回転指令速度の補正動作を行うか否かの補正切替情報を出力する判定切替部と、
前記補正切替情報に基づいて、前記実回転速度と前記回転指令速度との間のずれを補正するずれ補正を行って前記電力変換部の出力指令速度を制御する制御部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記判定切替部は、
前記実回転速度が前記限界速度を超えていない場合、
前記実回転速度の補正演算を行って、前記出力指令速度の前記補正動作を行う前記補正切替情報を出力し、
前記制御部は、
前記補正動作を行う前記補正切替情報に基づいて、前記ずれ補正を行って前記交流電動機を前記回転指令速度で動作させることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記判定切替部は、
前記実回転速度が前記限界速度を超えた場合に、
前記出力指令速度の前記補正動作を行わない前記補正切替情報を出力し、
前記制御部は、
前記補正動作を行わない前記補正切替情報に基づいて、前記ずれ補正を行わないで前記交流電動機を前記実回転速度で動作させることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記判定切替部は、
前記実回転速度が前記限界速度を超えた後に、再度前記限界速度を超えなくなった場合、
前記実回転速度の補正演算を行って、前記出力指令速度の前記補正動作を行う前記補正切替情報を出力し、
前記制御部は、
前記補正動作を行う前記補正切替情報に基づいて、前記ずれ補正を行って前記交流電動機を前記回転指令速度で動作させることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記判定切替部は、
前記限界速度に到達するまでの間に、前記出力指令速度の補正演算分を徐々に縮小して前記実回転速度の前記補正動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記判定切替部は、
前記実回転速度が前記限界速度を超えた場合に、
前記出力指令速度の補正演算を行って、補正演算分を予め取得した情報で予測して補正する予測補正動作を行う前記補正切替情報を出力し、
前記制御部は、
前記予測補正動作を行う前記補正切替情報に基づいて、前記ずれを予測した前記ずれ補正を行って前記交流電動機を前記回転指令速度で動作させることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記補正演算分を予め取得した情報として、周波数と負荷電流に対応した補正量を格納したテーブルを更に有し、
前記判定切替部は、
前記実回転速度が前記限界速度を超えた場合に、
前記テーブルを参照して、前記補正演算分を前記補正量に基づいて補正する前記予測補正動作を行うことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記実回転速度と前記回転指令速度とが前記交流電動機のモータの滑りが原因で前記ずれを生じている場合、前記ずれがなくなるように前記出力指令速度を変化させる前記ずれ補正を行って、前記実回転速度と前記回転指令速度が一致するように制御することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電力変換部は、
前記制御部から指令された前記出力指令速度に基づいて、前記交流電動機を駆動することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記速度検出器は、エンコーダ部により構成され、
前記エンコーダ部は、
前記交流電動機の回転情報又は位置情報を前記パルス変換部に出力することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械分野、家電分野、自動車分野などの技術分野では、電動機の駆動を行う電力変換装置が用いられている。
【0003】
このような電力変換装置として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、「コントローラ1は、モータを始動する際にセンサ駆動により立ち上げ、回転数が上がるとセンサレス駆動へ切り替える駆動選択信号を出力し、駆動切替え手段2はセンサレス駆動が選択された後もセンサ駆動を続行し、センサ信号のエッジとそれに替わって基準となるゼロクロス信号のエッジ間で定義される移行期間を避けて励磁シーケンスをセンサレス駆動に切り替える。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-301550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、コントローラがモータを始動する際にセンサ駆動により立ち上げ、回転数が上がるとセンサレス駆動へ切り替える駆動選択信号を出力し、駆動切替え手段はセンサレス駆動が選択された後もセンサ駆動を続行し、センサ信号のエッジとそれに替わって基準となるゼロクロス信号のエッジ間で定義される移行期間を避けて励磁シーケンスをセンサレス駆動に切り替える切替方法が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1では、安価なエンコーダや回路上の遅れ成分により、モータ速度としてフィードバックしたパルス列の取得に物理的な限界が生じた場合、センサ情報が不安定になる。この結果、センサ駆動を実行できず、モータ駆動が不安定になり運転継続が困難になる。
【0007】
本発明の目的は、電力変換装置において、交流電動機からの回転数フィードバックが不安定になるような場合でも、交流電動機を安定して運転継続することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電力変換装置は、交流電動機に接続された電力変換装置であって、直流電力を所望の交流電力に変換し前記交流電動機に出力して前記交流電動機を駆動する電力変換部と、前記交流電動機の実回転速度を検出する速度検出器と、前記速度検出器から前記実回転速度を取得するパルス変換部と、前記交流電動機を駆動するための回転指令速度を出力する指令部と、前記速度検出器又は前記パルス変換部が、正常に前記実回転速度を取得可能な限界速度を超えたか否かを判定し、前記回転指令速度と前記実回転速度とを比較して前記回転指令速度の補正動作を行うか否かの補正切替情報を出力する判定切替部と、前記補正切替情報に基づいて、前記実回転速度と前記回転指令速度との間のずれを補正するずれ補正を行って前記電力変換部の出力指令速度を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、電力変換装置において、交流電動機からの回転数フィードバックが不安定になるような場合でも、交流電動機を安定して運転継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における電力変換装置の構成図の例である。
図2】実施例1における判定切替部の処理を説明するフローチャートである。
図3】実施例1における補正動作を説明する図である。
図4】実施例1における周波数と補正量の関係を示した図である。
図5】実施例2における周波数と補正量の関係を示した図である。
図6】実施例3における補正動作を説明する図である。
図7】実施例3における参照するテーブルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1を参照して、実施例1の電力変換装置の構成について説明する。
【0013】
実施例1の電力変換装置は、三相交流電源101、直流変換部102、平滑コンデンサ103、電力変換部104、電流検出器110、エンコーダ部111、パルス変換部112、外部インターフェース113及びソフトウェアブロック114を有する。ソフトウェアブロック114は、制御部121、指令部122、判断切替部123、パルス取得部124、電流検出部125及び記憶部126を有する。
【0014】
3相交流電源101は、例えば、電力会社から供給される3相交流電圧や発電機から供給される交流電圧であり、交流電圧を直流変換部102に出力する。直流変換部102は、例えば、ダイオード回路やIGBTとフライホイールダイオードを用いたコンバータ回路で構成され、3相交流電源101から入力された交流電圧を直流電圧に変換し、平滑コンデンサ103に出力する。図1では、ダイオードで構成されたコンバータを示している。
【0015】
平滑コンデンサ103は、直流変換部102から入力された直流電圧を平滑化し、電力変換部104に直流電圧を出力する。例えば、発電機の出力が直流電圧の場合、平滑コンデンサ103は、直流変換部102を介さず、直接発電機から直流電圧を入力されても構わない。
【0016】
電力変換部104は、例えば、IGBTとフライホイールダイオードを用いた回路で構成され、平滑コンデンサ103の直流電圧と、制御部107から指令された電圧指令とを入力とし、直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機105に出力し、交流電動機105を駆動させる。
【0017】
電流検出器110は、例えば、ホールCTやシャント抵抗で構成され、交流電動機105に流れる電流を検出し、電流検出部125に電流検出値として出力する。電流検出器110は、3相の出力電流を推定又は直接検出できる箇所に配置されているならば、どこに配置されていてもよい。図1では、交流電動機105に流れる電流を直接検出する位置の例について記述している。
【0018】
エンコーダ部111は、交流電動機105のシャフトに接続される一体型エンコーダや電動機軸の側面からシャフトの回転を取得するように取り付けられたエンコーダであって、交流電動機105の回転情報や位置情報を、例えばパルス状に波形とし、パルス変換部112に出力する。
【0019】
パルス変換部112は、エンコーダ部111から入力した交流電動機105の回転情報および位置情報を、例えばパルス状の入力をデジタルデータに変換し、データ通信を行うことで、パルス取得部124出力する。パルス変換部112は、エンコーダ部111から入力した電動機の回転情報および位置情報を、例えば、パルス状の入力を電圧レベルをシフトするなどして、波形を変更しパルス出力としてパルス取得部124に出力する。
【0020】
外部インターフェース113は、ユーザが指定した設定や機械的に伝送された指令などを電力変換装置として受け付け、ソフトウェアブロック114に出力する。
【0021】
ソフトウェアブロック114は、CPU、ROM、RAMなどで構成されたMCU内のソフトウェアを示しており、各処理として制御演算を行う。
【0022】
制御部121は、電流検出部125から電流値を取得し、判定切替部123からモータの実回転速度と切替情報を取得し、実回転速度が指令速度に対するずれを補正した出力指令速度を出力する制御を行う。ずれの補正は、実回転速度と指令速度がモータの滑りなどの要因でずれを生じさせている場合、ずれがなくなるように出力指令速度を変化させる補正を行い、実回転速度と指令速度が一致するように制御する補正である。
【0023】
指令部122は、外部インターフェース113から指令された速度指令や運転信号を入力とし、判定切替部123に対して速度指令を出力する。判定切替部123は、指令部123から入力した速度指令及びパルス取得部124から取得した交流電動機105の実速度を比較し、制御部121に対して、速度の補正動作を行うかどうかを指令すると共に、速度の補正演算を行う。
【0024】
パルス取得部124は、パルス変換部112から入力した交流電動機105の回転情報および位置情報から速度を算出し、判定切替部123に出力する。電流検出部125は、電流検出器110から入力された電流検出値を、例えば3相交流電流として取得し、3相2相の座標変換などを行い、制御部121へ出力する。記憶部126は、FlashROM、RAMに対して、データの入出力を行う。外部インターフェース113が設定したデータを記憶し、各ブロックに対して必要な情報を相互に扱う。
【0025】
図2は、実施例1の判定切替部123の動作を示したフローチャートである。以下、速度は機械角速度を示し、周波数は電気角周波数を示している。
【0026】
判定切替部123が速度の補正を行う判断をする具体的な方法について、図2を用いて説明する。
【0027】
判定切替部123は、指令部123から入力した速度指令及びパルス取得部124から取得した交流電動機の実速度を取り込む(S201)。判定切替部123は、実速度を補正している状態かどうかを、記憶された状態変数を読み出して判断する(S202)。
【0028】
判定切替部123は、前記状態変数が補正中状態である場合、実速度から計算した電気角の実周波数Fdtctと切替周波数Fchgを比較する(S203)。切替周波数は、以下の(数1)で計算した限界周波数から、切替にかかる時間や、加減速時間を考慮し、限界周波数よりも低い周波数を切り替え周波数とする。限界周波数は以下の(数1)で計算できる。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、fpulseは、限界周波数であり、単位はHzである。foutputは、電力変換装置の指令周波数であり、単位はHzである。Npoleは、交流電動機の極数である。Nencoderは、電動機1回転あたりのエンコーダが出力するパルス数である。
【0031】
例えば、パルス変換部112のノイズ対応用のフィルタ回路やソフトウェアブロック114に対して入力する際のMCUの仕様上の限界などから、限界周波数が決まる。限界周波数fpulseが32kHzだとした場合、交流電動機の極数Npoleが4極、エンコーダのパルス数Nencoderが1000パルス/回転だとすると、foutputは64Hzとなり、64Hzを超えた指令周波数では、パルスの取得が不安定になる可能性がある。
【0032】
このため、切り替え周波数は、例えば、固定値で60Hzを超えた時点で切り替えを行うことや、例えば、加速レートが急峻になり、限界周波数を超える予測となった場合に、その時点を切り替え周波数とするとしてもよい。
【0033】
判定切替部123は、FdtctよりもFchgが大きい場合、補正指令を演算する(S204)。判定切替部123は、FdtctよりもFchgが小さい場合、補正切替処理を行う(S205)。補正切替処理は、例えば図3に示されるように、エンコーダからの回転情報がソフトウェアブロックで取得可能な場合、内部の出力指令速度を補正することで、実周波数を指令周波数に補正する。
【0034】
例えば、図4では、取得不可能な領域に加速していく場合、例えば交流電動機105の滑りなどのずれ補正をしていた周波数分を切替周波数から限界周波数に到達するまで徐々に下げていき、取得不可な領域は補正なしで動作させる。判定切替部123は、周期的に実行される図2のフローチャートにおいて、徐々に切り替えを行ってもよいし、あるタイミングで即座に切り替えてもよい。
【0035】
判定切替部123は、切替が終了したかを判定し(S206)、終了していなければ再度周期的に処理を実行し、終了していれば状態を補正切替にする(S207)。判定切替部123は、処理の最後に状態を保持し(S208)、周期処理を一旦終了する。
【0036】
判定切替部123は、前記状態変数が補正切替状態である場合、周波数指令Fcmdと切替周波数Fchgを比較する(S213)。切替周波数は、前記計算された限界周波数を用いてもよいし、ヒステリシスを付けて、切替が頻繁に行ら無いよう周波数をずらして設定してもよい。
【0037】
判定切替部123は、FcmdよりもFchgが大きい場合、補正切替処理を継続する(S214)。判定切替部123は、FcmdよりもFchgが小さい場合、検出が可能になったと判断し、補正復帰処理を行う(S215)。補正復帰処理は、補正切替処理とは逆の動作を行い、補正動作を戻してもよいし、切替処理時と異なる方法を用いて復帰処理を行ってもよい。
【0038】
判定切替部123は、復帰が終了したかを判定し(S216)、終了していなければ再度周期的に処理を実行し、終了していれば状態を補正中にする(S217)。判定切替部123は、処理の最後に状態を保持し(S208)、周期処理を一旦終了する。
【0039】
判定切替部123は、図2のフローチャートを、定期的に実行することで、定期的に監視を行う。
【0040】
このように、実施例1では、交流電動機105に接続された電力変換装置であって、直流電力を所望の交流電力に変換し交流電動機105に出力して交流電動機105を駆動する電力変換部104と、交流電動機105の実回転速度を検出する速度検出器(エンコーダ部111)と、速度検出器(エンコーダ部111)から実回転速度を取得するパルス変換部112と、交流電動機105を駆動するための回転指令速度を出力する指令部122と、速度検出器(エンコーダ部111)又はパルス変換部112が、正常に実回転速度を取得可能な限界速度を超えたか否かを判定し、回転指令速度と実回転速度とを比較して回転指令速度の補正動作を行うか否かの補正切替情報を出力する判定切替部123と、補正切替情報に基づいて実回転速度と回転指令速度との間のずれを補正するずれ補正を行って電力変換部104の出力指令速度を制御する制御部121とを有する。
【0041】
また、判定切替部123は、実回転速度が限界速度を超えていない場合、実回転速度の補正演算を行って、出力指令速度の補正動作を行う補正切替情報を出力する。制御部121は、補正動作を行う補正切替情報に基づいて、ずれ補正を行って交流電動機105を指令回転速度で動作させる。
【0042】
また、判定切替部123は、実回転速度が前記限界速度を超えた場合に、出力指令速度の補正動作を行わない補正切替情報を出力する。制御部121は、補正動作を行わない補正切替情報に基づいて、ずれ補正を行わないで交流電動機105を実回転速度で動作させる。
【0043】
尚、制御部121は、実回転速度と回転指令速度とが交流電動機105のモータの滑りが原因で前記ずれを生じている場合、ずれがなくなるように出力指令速度を変化させるずれ補正を行って、実回転速度と回転指令速度が一致するように制御する。
【0044】
電力変換部104は、制御部121から指令された出力指令速度に基づいて、交流電動機105を駆動する。
【0045】
実施例1によれば、交流電動機105の回転数が取り込めなくなった際の不安定動作を回避することで、全出力領域において、安定した交流電動機の動作が可能となる。
【実施例2】
【0046】
実施例2の電力変換装置について説明する。
【0047】
実施例2では実施例1と、共通する部分については同様の符号を用いて説明し、異なる部分について詳細に説明するものとする。
【0048】
ここで、実施例2の電力変換装置の構成は、図1に示した実施例1の電力変換装置の構成と同じであり、判定切替部123の動作も図2に示した実施例1の判定切替部123の動作と同じなのでその説明は省略する。実施例1と異なる動作は、図2の補正切替処理の内部動作である。
【0049】
判定切替部123は、FdtctよりもFchgが小さい場合、補正切替処理を行う(S205)。補正切替処理は、例えば図3に示されるように、エンコーダ部111からの回転情報がソフトウェアブロック114で取得可能な場合、内部の出力指令速度を補正することで、実周波数を指令周波数に補正する。
【0050】
例えば、図5では、取得不可能な領域に加速していく場合、例えば、交流電動機105の滑りなどのずれ補正をしていた周波数分を切替周波数に到達時点から切替時間によって徐々に下げていき、取得不可な領域は補正なしで動作させる。
【0051】
また、補正なしの状態から復帰する際、補正切替処理は、指令周波数が限界周波数を下回った時点から徐々に補正量を戻していく。判定切替部123は、周期的に実行される図2のフローチャートにおいて、徐々に切り替えを行ってもよいし、あるタイミングで即座に切り替えてもよい。
【0052】
このように、実施例2では、判定切替部123は、実回転速度が限界速度を超えた後に、再度限界速度を超えなくなった場合、実回転速度の補正演算を行って、出力指令速度の補正動作を行う補正切替情報を出力する。制御部121は、補正動作を行う補正切替情報に基づいて、ずれ補正を行って交流電動機105を指令回転速度で動作させる。
【0053】
また、判定切替部123は、限界速度に到達するまでの間に、出力指令速度の補正演算分を徐々に縮小して実回転速度の前記補正動作を行う。
【0054】
実施例2によれば、交流電動機105の回転数が取り込めなくなった際の不安定動作を回避することで、全出力領域において、安定した交流電動機105の動作が可能となる。
【実施例3】
【0055】
実施例3の電力変換装置について説明する。
【0056】
実施例3では実施例1と、共通する部分については同様の符号を用いて説明し、異なる部分について詳細に説明するものとする。
【0057】
ここで、実施例3の電力変換装置の構成は、図1に示した実施例1の電力変換装置の構成と同じであり、判定切替部123の動作も図2に示した実施例1の判定切替部123の動作と同じなのでその説明は省略する。実施例1と異なる動作は、図2の補正切替処理の内部動作である。
【0058】
判定切替部123は、FdtctよりもFchgが小さい場合、補正切替処理を行う(S203)。また、補正切替処理は、図6に示されるように、例えば、交流電動機105の滑りなどのずれ補正をしていた周波数分をそのまま保持あるいは指令周波数と負荷電流値などから予測し、取得不可な領域は予測動作で補正する。
【0059】
図7は、予測処理に用いるテーブルを表現した例を示している。
【0060】
判定切替部123は、指令周波数と負荷電流のテーブルから補正量を取得する。このテーブルは予め高価な電力変換装置を使用して取得した情報を使用してもよいし、シミュレーションなどを使ってあらかじめ取得してもよい。
【0061】
このように、実施例3では、判定切替部123は、実回転速度が限界速度を超えた場合に、出力指令速度の補正演算を行って、補正演算分を予め取得した情報で予測して補正する予測補正動作を行う補正切替情報を出力する。制御部121は、予測補正動作を行う補正切替情報に基づいて、ずれを予測したずれ補正を行って交流電動機105を指令回転速度で動作させる。
【0062】
また、補正演算分を予め取得した情報として、周波数と負荷電流に対応した補正量を格納したテーブル(図7参照)を有する。判定切替部123は、実回転速度が限界速度を超えた場合に、図7に示すテーブルを参照して、補正演算分を補正量に基づいて補正する予測補正動作を行う。
【0063】
実施例3によれば、交流電動機105の回転数が取り込めなくなった際の不安定動作を回避することで、全出力領域において、安定した交流電動機の動作が可能となる。
【0064】
上記実施例では、直流電力を所望の交流電力に変換する電力変換部と、接続された交流電動機の回転速度を検出する速度検出器と、速度検出器から速度情報を取得するパルス変換部と、接続された交流電動機の回転速度を指令する指令部と、交流電動機の回転速度と交流電動機の回転指令をから速度検出器で得た情報を用いるかどうかの判断および補正演算を行う切替判断部とを備える。切替判断部は、速度検出器またはパルス変換部が、正常に回転数を取得できる限界速度を超える場合に、補正演算の方法を切り替える。
【0065】
また、切替判断部が、切替判定した結果、補正演算分を徐々に縮小する。また、切替判断部が、切替判定した結果、補正演算分をあらかじめ取得した情報で予想し補正する。
【0066】
上記実施例によれば、交流電動機からの回転数フィードバックが、不安定になる場合に、あらかじめ不安定になる領域を予測し、不安定領域の情報を取得しないように、モータ制御を行う仕組みを提供することができる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0069】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
101 3相交流電圧
102 直流変換部
103 平滑コンデンサ
104 電力変換部
105 交流電動機
111 エンコーダ部
112 パルス変換部
113 外部インターフェース
114 ソフトウェアブロック
121 制御部
122 指令部
123 判断切替部
124 パルス取得部
125 電流検出部
126 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7