IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 台灣中油股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図1
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図2
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図3
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図4
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図5
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図6
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図7
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図8
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図9
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図10
  • 特許-アノード用炭素材料の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】アノード用炭素材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20240729BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M4/587
C01B32/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023004362
(22)【出願日】2023-01-16
(65)【公開番号】P2024068051
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】111142065
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500447978
【氏名又は名称】台灣中油股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】陳▲彦▼旭
(72)【発明者】
【氏名】呂國旭
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-081372(JP,A)
【文献】特開2011-258421(JP,A)
【文献】特開2018-006271(JP,A)
【文献】特開2015-069818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式リチウムイオンバッテリーのアノード用炭素材料の製造方法であって、
重質炭化水素油を加熱することにより、該重質炭化水素油を生コークスにするステップAと、
3℃/分~5℃/分の範囲にある第1の加熱速度で前記生コークスを850℃~900℃の範囲にある第1の温度に加熱してから、該第1の温度に少なくとも4時間維持することにより、前記生コークスを炭素含有材料にするステップBと、
前記炭素含有材料を粉末にすり砕いてから、前記粉末を分粒して、粒度分布においてD50が8μm~12μmの範囲にあり且つD10が1μm~8μmの範囲にある部分粉末を収集するステップCと、
3℃/分~10℃/分の範囲にある第2の加熱速度で前記部分粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第2の温度に加熱してから、該第2の温度に少なくとも4時間維持することにより、前記部分粉末を炭素質粉末にするステップDと、
前記炭素質粉末にピッチを添加してピッチ含有炭素質粉末を得た後、0.9℃/分~1.25℃/分の範囲にある第3の加熱速度で該ピッチ含有炭素質粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第3の温度に加熱してから、該第3の温度に少なくとも5時間維持することにより、前記ピッチ含有炭素質粉末をピッチ改質のソフトカーボンにするステップEと、
を順に含むことを特徴とするアノード用炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記ステップCにおいて、前記D50が10μm~12μmの範囲にあり且つ前記D10が6μm~8μmの範囲にある前記部分粉末を収集し、
前記ステップDにおいて、前記第2の温度を1080℃~1120℃の範囲にし、
前記ステップEにおいて、前記炭素質粉末を100重量部として、少なくとも4重量部のピッチを添加し、前記第3の加熱速度を1.20℃/分~1.25℃/分の範囲にし、前記第3の温度を1080℃~1120℃の範囲にすることにより、前記ピッチ改質のソフトカーボンを第1のソフトカーボンとする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアノード用炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記ステップCにおいて、前記D50が8μm~10μmの範囲にあり且つ前記D10が2μm~6μmの範囲にある前記部分粉末を収集し、
前記ステップDにおいて、前記第2の温度を1080℃~1120℃の範囲にし、
前記ステップEにおいて、前記炭素質粉末を100重量部として、少なくとも4重量部のピッチを添加し、前記第3の加熱速度を1.20℃/分~1.25℃/分の範囲にし、前記第3の温度を1080℃~1120℃の範囲にすることにより、前記ピッチ改質のソフトカーボンを第2のソフトカーボンとする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアノード用炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記ステップCにおいて、前記D50が10μm~12μmの範囲にあり且つ前記D10が6μm~8μmの範囲にある前記部分粉末を収集し、
前記ステップDにおいて、前記第2の温度を1180℃~1220℃の範囲にし、
前記ステップEにおいて、前記炭素質粉末を100重量部として、少なくとも4重量部のピッチを添加し、前記第3の加熱速度を0.92℃/分~0.98℃/分の範囲にし、前記第3の温度を1180℃~1220℃の範囲にすることにより、前記ピッチ改質のソフトカーボンを第3のソフトカーボンとする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアノード用炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記ステップCにおいて、前記D50が10μm~12μmの範囲にあり且つ前記D10が6μm~8μmの範囲にある前記部分粉末を収集し、
前記ステップDにおいて、前記第2の温度を1030℃~1070℃の範囲にし、
前記ステップEにおいて、前記炭素質粉末を100重量部として、少なくとも4重量部のピッチを添加し、前記第3の加熱速度を1.12℃/分~1.18℃/分の範囲にし、前記第3の温度を1030℃~1070℃の範囲にすることにより、前記ピッチ改質のソフトカーボンを第4のソフトカーボンとする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアノード用炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、炭素材料の製造方法に関し、特にアノード用炭素材料の製造方法及び充電式リチウムイオンバッテリー (即ちリチウムイオン二次電池、lithium-ion secondary battery)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されている充電電池において、充電式リチウムイオンバッテリーは広く使用され、且つ選択される充電電池である。
一般の充電式リチウムイオンバッテリーにおいて、カソードは、コバルト酸リチウム(lithium cobalt oxide)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)またはリチウムマンガン酸化物(lithium manganese oxide)を有し、アノード材料は、炭素材料が用いられる。
【0003】
一方、石油精製関連産業の技術者にとって、石油精製の過程において通常大量の重質炭化水素油(heavy hydrocarbon oil)が生じることは一般常識である。石油精製工場にとって、重質炭化水素油は、一般的に燃料として安価で売られ、経済価値が低いものである。
しかし、重質炭化水素油の主要成分は炭化水素(hydrocarbon)であるので、重質炭化水素油から充電式リチウムイオンバッテリーに応用するアノード用炭素材料を作成することができる。
【0004】
本出願人は、たとえば特許文献1で前駆体組成(precursor composition)及びそれにより形成される非晶質炭素材料(amorphous carbon-containing material)を開示し、特許文献2でソフトカーボン(soft carbon)及びその製造方法を開示した。
さらに、特許文献1及び特許文献2に公開した技術において、非晶質炭素材料及びソフトカーボンを充電式リチウムイオンバッテリーに応用した際のサイクル充電容量、サイクル放電容量などの様々な充放電能力を分析した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】台湾特許第I603528号公報
【文献】台湾特許第I720805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この分野の研究者にとって、充電式リチウムイオンバッテリーの急速充電・急速放電時の容量維持率(capacity retention rate)やサイクル寿命の向上は、解決すべき課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示のアノード用炭素材料の製造方法の一側面は、充電式リチウムイオンバッテリーのアノード用炭素材料の製造方法であって、重質炭化水素油を加熱することにより、該重質炭化水素油を生コークスにするステップAと、3℃/分~5℃/分の範囲にある第1の加熱速度で前記生コークスを850℃~900℃の範囲にある第1の温度に加熱してから、該第1の温度に少なくとも4時間維持することにより、前記生コークスを炭素含有材料にするステップBと、前記炭素含有材料を粉末にすり砕いてから、前記粉末を分粒して、粒度分布においてD50が8μm~12μmの範囲にあり且つD10が1μm~8μmの範囲にある部分粉末を収集するステップCと、3℃/分~10℃/分の範囲にある第2の加熱速度で前記部分粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第2の温度に加熱してから、該第2の温度に少なくとも4時間維持することにより、前記部分粉末を炭素質粉末にするステップDと、前記炭素質粉末にピッチを添加してピッチ含有炭素質粉末を得た後、0.9℃/分~1.25℃/分の範囲にある第3の加熱速度で該ピッチ含有炭素質粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第3の温度に加熱してから、該第3の温度に少なくとも5時間維持することにより、前記ピッチ含有炭素質粉末をピッチ改質のソフトカーボンにするステップEと、を順に含むことを特徴とするアノード用炭素材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、次のいずれかのような効果が得られる。
【0010】
ステップCで、D50及びD10の粒度分布を調整し、且つステップEで、0.90℃/分~1.25℃/分の範囲にある第3の加熱速度で該ピッチ含有炭素質粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第3の温度に加熱することにより、得られたピッチ改質のソフトカーボンの特性を変えることができて、ピッチ改質のソフトカーボンを使用したアノードを用いる充電式リチウムイオンバッテリーの急速充電・急速放電時の容量維持率及びサイクル寿命が向上する。
【0011】
本開示の技術について他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の充電式リチウムイオンバッテリーの実施形態を示す断面図である。
図2】本開示の充電式リチウムイオンバッテリーの他の実施形態を示す断面図である。
図3】実施例5及び実施例6のコイン電池のそれぞれの充放電曲線を示すグラフである。
図4】実施例5の18650バッテリーと実施例6の7799130バッテリーのそれぞれの充電Cレート(C-rate)と容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
図5】実施例5の18650バッテリーと実施例6の7799130バッテリーのそれぞれの放電Cレートと容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
図6】実施例5及び実施例7のコイン電池のそれぞれの充放電曲線を示すグラフである。
図7】25℃の試験温度における実施例5と実施例7の18650バッテリーのそれぞれのサイクル数と容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
図8】45℃の試験温度における実施例5と実施例7の18650バッテリーのそれぞれのサイクル数と容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
図9】実施例5及び実施例8のコイン電池のそれぞれの充放電曲線を示すグラフである。
図10】25℃の試験温度における実施例5と実施例8の18650バッテリーのそれぞれのサイクル数と容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
図11】45℃の試験温度における実施例5と実施例8の18650バッテリーのそれぞれのサイクル数と容量維持率との関係を示す曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
本開示の第1の実施形態は、以下のステップA~ステップEを含むアノード用炭素材料の製造方法である。
ステップAは、重質炭化水素油を加熱することにより、該重質炭化水素油を生コークスにする。
【0015】
具体的には、重質炭化水素油を反応タンク(図示せず)に注ぎ、480℃~550℃の範囲にあるコーキング温度(coking temperature)及び0.2MPa~4MPaの範囲にある圧力で該重質炭化水素油を1~16時間加熱することにより、熱分解及び重縮合反応(pyrolysis and polycondensation reactions)が起こって、生コークスが生じる。
この第1の実施形態の実施例1においては、500℃のコーキング温度及び1.0MPaの圧力で該重質炭化水素油を4時間加熱した。
【0016】
ステップBは、予備炭化処理である。
具体的に、ステップBは、3℃/分~5℃/分の範囲にある第1の加熱速度で生コークスを850℃~900℃の範囲にある第1の温度に加熱してから、第1の温度に少なくとも4時間維持することにより、生コークスを炭素含有材料にする。
予備炭化処理においては、生コークスに、重縮合反応(polycondensation reaction)、脱水素反応(dehydrogenation reaction)、熱分解反応(pyrolysis reaction)またはそれらの組み合わせが起こることにより、sp2混成(sp2 hybridization)を有する炭素含有材料が得られる。
【0017】
実施例1として、5℃/分の第1の加熱速度で前記生コークスを900℃の第1の温度に加熱してから、該第1の温度に4時間維持した。
【0018】
ステップCは、粉体化と分粒プロセスである。
具体的に、ステップCは、炭素含有材料を粉末(即ち、炭素含有粉末)にすり砕いてから、粉末を分粒して、粒度分布においてD50が8μm~12μmの範囲にあり且つD10が1μm~8μmの範囲にある部分粉末を収集する。
実施例1として、サイクロン型選別装置で前記粉末を分粒して、粒度分布においてD50が10μm~12μmの範囲にあり且つD10が6μm~8μmの範囲にあり且つD90が18μm~20μmの範囲にある部分粉末を収集した。
【0019】
ステップDは、主要炭化処理である。
具体的に、ステップDは、3℃/分~10℃/分の範囲にある第2の加熱速度で部分粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第2の温度に加熱してから、第2の温度に少なくとも4時間維持することにより、部分粉末を炭素質粉末にする。
この主要炭化処理においては、部分粉末中に残留している生コークスに、重縮合反応、脱水素反応、熱分解反応またはそれらの組み合わせを更に起こさせることにより、残留している生コークスがsp2混成を有するようにする。
【0020】
一部の実施形態のステップDにおいて、第2の温度は、1080℃~1120℃の範囲にある。
実施例1においては、10℃/分の第2の加熱速度で前記部分粉末を1100℃の第2の温度に加熱してから、該第1の温度に4時間維持した。
【0021】
ステップEは、表面改質炭化処理である。
ステップEは、炭素質粉末にピッチを添加してピッチ含有炭素質粉末を得た後、0.90℃/分~1.25℃/分の範囲にある第3の加熱速度でピッチ含有炭素質粉末を1030℃~1220℃の範囲にある第3の温度に加熱してから、第3の温度に少なくとも5時間維持することにより、ピッチ含有炭素質粉末をピッチ改質のソフトカーボンにする。
【0022】
なお、ステップCで得られる部分粉末の表面には微細孔が形成されるので、主要炭化処理で得られた炭素質粉末は比表面積(specific surface area)が増える。比表面積が増えた炭素質粉末を充電式リチウムイオンバッテリーのアノードに応用する際、電解液に浸入されやすいので、バッテリーの性能を損なう可能性がある。
そこで、表面改質炭化処理においては、ピッチ含有炭素質粉末をピッチの軟化点以上の温度で加熱することにより、ピッチの粘度が低下して、炭素質粉末の微細孔を改質する(即ちカバーされ且つコーティングされる)ことができる。そしてこれにより、得られたソフトカーボンの比表面積を効果的に削減することができる。
【0023】
一部の実施形態のステップEにおいて、炭素質粉末を100重量部として、少なくとも4重量部のピッチを添加し、第3の加熱速度を1.20℃/分~1.25℃/分の範囲にし、第3の温度を1080℃~1120℃の範囲にすることにより、ピッチ改質のソフトカーボンを第1のソフトカーボンにする。
実施例1においては、1.22℃/分の第3の加熱速度で該ピッチ含有炭素質粉末を1100℃の第3の温度に加熱且つ第3の温度に5時間維持することにより、第1のソフトカーボンが得られた。
【0024】
〔第2の実施形態〕
本開示の第2の実施形態は、第1の実施形態と類似するので、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0025】
第2の実施形態のステップCにおいては、D50が8μm~10μmの範囲にあり且つD10が2μm~6μmの範囲にある部分粉末を収集する。そして、ステップE完了後、第2のソフトカーボンが生成する。
【0026】
第2のソフトカーボンを製造する第2の実施形態に係る実施例2において、ステップA、ステップB、ステップD、ステップEは、実施例1と同じであり、ステップCは、粒度分布においてD50が8μm~10μmの範囲にあり且つD10が3μm~5μmの範囲にあり且つD90が16μm~18μmの範囲にある前記部分粉末を収集した。
【0027】
〔第3の実施形態〕
本開示の第3の実施形態は、第1の実施形態と類似するので、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0028】
第3の実施形態のステップDにおいて、第2の温度を1180℃~1220℃の範囲にし、ステップEにおいて、第3の加熱速度を0.92℃/分~0.98℃/分の範囲にし、第3の温度を1180℃~1220℃の範囲にすることにより、ピッチ改質のソフトカーボンを第3のソフトカーボンとする。
第3のソフトカーボンが得られる第3の実施形態に係る実施例3において、ステップA~ステップCは、実施例1と同じであり、ステップDは、部分粉末を1200℃の第2の温度に加熱し、ステップEは、0.95℃/分の第3の加熱速度でピッチ含有炭素質粉末を1200℃の第3の温度に加熱する。
【0029】
〔第4の実施形態〕
本開示の第4の実施形態は、第1の実施形態と類似するので、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0030】
第4の実施形態のステップDにおいて、第2の温度を1030℃~1070℃の範囲にし、ステップEにおいて、第3の加熱速度を1.12℃/分~1.18℃/分の範囲にし、第3の温度を1030℃~1070℃の範囲にすることにより、ピッチ改質のソフトカーボンを第4のソフトカーボンとする。
【0031】
第4のソフトカーボンが得られる第4の実施形態に係る実施例4において、ステップA~ステップCは、実施例1と同じであり、ステップDは、部分粉末を1050℃の第2の温度に加熱し、ステップEは、1.16℃/分の第3の加熱速度でピッチ含有炭素質粉末を1050℃の第3の温度に加熱し、その状態を維持する。
【0032】
ここで、第1のソフトカーボン~第4のソフトカーボンの製造パラメーターは、表1にまとめた。
【0033】
【表1】
【0034】
〔第5の実施形態〕
図1に示されるように、本開示の第5の実施形態に係る充電式リチウムイオンバッテリー2は、アウタケーシング20と、アウタケーシング20の内側に設置され、第1の実施形態により製造されたアノード用炭素材料(即ち第1のソフトカーボン)を含むアノード21と、アノード21と間隔を空けるようにアウタケーシング20の内側に設置されているカソード22と、アウタケーシング20の内側に充填されている電解質23と、アウタケーシング20の内側においてアノード21とカソード22との間に設置されているセパレータ24とを備える。
【0035】
具体的に、アウタケーシング20は、充電式リチウムイオンバッテリー2の上側にあるアノードケーシング201と、充電式リチウムイオンバッテリー2の下側にあるカソードケーシング202とにより構成されている。アノードケーシング201とカソードケーシング202との間に、シールリング25が設けられアウタケーシング20の内部空間を密封する。
【0036】
次に、本開示の第5の実施形態について、実施例5により、以下に詳細に説明する。
<実施例5>
<アノードの製造>
先ず、実施例1の第1のソフトカーボンを広口径の造粒機(wide inlet granulator)で造粒してから、スクリーンサイズ38μmの篩で篩い分けを行ってアノード材料を得た。
【0037】
9.1gのアノード材料、0.5gのフッ化ポリビニリデン(polyvinylidene difluoride、クレハ社製、型番:KF9200)、0.4gの導電性カーボンブラック (スイスTimcal社から購入、型番:Super P)及び12g~15gのN-メチル-2-ピロリドン (米Merck Millipore社から購入、以下、「NMP」と略称する)を、混合して混合液を得た。その後、該混合液を、厚さが14μmの銅箔に塗布して、85℃で0.5時間の乾燥を行って水分及びNMPを除去して、銅箔に厚さが20μm~22μmの範囲内の導電層を生成させることにより、実施例5のアノードを得た。
【0038】
導電層は、自身の全重量に基づいて、91wt%の該アノード材料と、5wt%のフッ化ポリビニリデンと、4wt%の導電性カーボンブラックとを含む。
【0039】
<CR2032コイン電池の製造>
実施例5のCR2032コイン電池は、実施例5のアノードと、カソードとするリチウム箔と、電解液、ポリエチレン及びポリプロピレン(polyethylene and polypropylene)により作られたセパレータ膜(Celgard社から購入)とを組み立てることにより製造された。
【0040】
電解液は、自身の総重量に基づいて、99wt%の濃度1Mであるヘキサフルオロリン酸リチウム(lithium hexafluorophosphate、以下「LiPF6」と略称する)溶液と、1wt%のビニレンカーボネート(vinylene carbonate)とを含む。
LiPF6溶液は、LiPF6と、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、以下「EC」と略称する)と、エチレンメチルカーボネート(ethylene methyl carbonate、以下、「EMC」と略称する)と、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、以下、「DMC」と略称する)とを含み、且つ、EC:EMC:DMCの体積比が1:1:1である。
【0041】
<18650バッテリーの製造>
実施例5の18650バッテリーは、巻上機(winding machine)を使用して、実施例5のアノードと、カソードと、CR2032コイン電池の製造に使用した電解液及びセパレータ膜とを組み立てることにより製造された。
【0042】
カソードは、導電性キャリアとするアルミニウム箔と、該アルミニウム箔の表面に形成された導電膜とを含む。
【0043】
導電膜は、91wt%のカソード組成と、5wt%の粘着剤(ポリフッ化ビニリデン)と、4wt%の導電カーボンブラック(スイスTimcal社から購入、型番:Super p)とを含む。
【0044】
カソード組成は、リチウムマンガン酸化物 (lithium manganese oxide、 以下、「LiMn24」と略称する)と、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(lithium nickel manganese cobalt oxide 、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、以下「LNMC」と略称する)とを含み、且つ、LiMn24:LNMCの重量比が30:70である。
【0045】
〔第6の実施形態〕
図2に示されるように、第6の実施形態における充電式リチウムイオンバッテリー3は、アウタケーシング30と、アウタケーシング30の内側に設置され、第2~4の実施形態のいずれかにより製造されたアノード用炭素材料(即ち第2~4のソフトカーボンの一者)を含むアノード31と、アノード31と間隔を空けるようにアウタケーシング30の内側に設置されているカソード32と、アウタケーシング30の内側に充填されている電解質33と、アウタケーシング30の内側においてアノード31とカソード32との間に設置されているセパレータ34とを備える。
【0046】
第6の実施形態におけるアウタケーシング30は、第5の実施形態における充電式リチウムイオンバッテリー2のアウタケーシング20と類似する。
具体的に、アウタケーシング30は、充電式リチウムイオンバッテリー3の上側にあるアノードケーシング301と、充電式リチウムイオンバッテリー3の下側にあるカソードケーシング302とにより構成されている。
アノードケーシング301とカソードケーシング302との間に、シールリング35が設けられアウタケーシング30の内部空間を密封する。
【0047】
本発明の第6の実施形態を以下の実施例により、より詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、単に説明のためのものであり、実際に本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
<実施例6>
<CR2032コイン電池の製造>
実施例6のCR2032コイン電池の組立ては、実施例2の第2のソフトカーボンを、導電層にあるアノード材料として使用すること以外、実施例5のCR2032コイン電池の組立てと類似する。
【0048】
<7799130バッテリーの製造>
実施例6の7799130バッテリーは、実施例5のアノードと、カソードと、電解液と、厚さが20μmのポリプロピレンにより作られたセパレータ膜(Celgard社から購入)とを組み立てることにより製造された。
具体的には、実施例2の第2のソフトカーボンを広口径の造粒機で造粒してから、篩で篩い分けを行ってアノード材料を得た。
そして、467.5gの該アノード材料、45gのフッ化ポリビニリデン(クレハ社製、型番:KF9200)、20gの導電性カーボンブラック (スイスTimcal社から購入、型番:Super P)、467.5gのメソフェーズ黒鉛粉末 (mesophase graphite powder、台湾China Steel Chemical Corporation社から購入、型番:MGP)及び1233g~1438gのNMPを、混合して混合液を得た。その後、該混合液を、厚さが14μmの銅箔に塗布して、85℃で0.5時間の乾燥を行って水分及びNMPを除去して、7799130バッテリーのアノードを得た。
【0049】
7799130バッテリーは、銅箔の上に厚さが100μm~110μmの範囲内の導電層を有する。
【0050】
導電層は、自身の全重量に基づいて、93.5wt%のアノード組成(50wt%の該アノード材料及び50wt%のMGPを含有する)と、4.5wt%のフッ化ポリビニリデンと、2wt%の導電性カーボンブラックとを含む。
カソードは、導電性キャリアとするアルミニウム箔と、該アルミニウム箔の表面に形成された導電膜とを含む。
【0051】
該導電膜は、92.5wt%のLNMCと、2.5wt%の粘着剤(ポリフッ化ビニリデン)と、5wt%の導電カーボンブラック(スイスTimcal社から購入、型番:Super P)とを含む。
該電解液は、自身の総重量に基づいて、99wt%の1MのLiPF6溶液と、1wt%ビニレンカーボネートとを含む。
【0052】
LiPF6溶液は、LiPF6と、ECと、EMCと、炭酸ジエチル(diethyl carbonate、以下、「DEC」と略称する)とを含み、且つ、EC:EMC:DECの体積比が1:1:1である。
【0053】
<実施例7>
<CR2032コイン電池の製造>
実施例7のCR2032コイン電池の組立ては、実施例3の第3のソフトカーボンを、導電層にあるアノード材料として使用すること以外、実施例5のCR2032コイン電池の組立てと類似する。
<18650バッテリーの製造>
実施例7の18650バッテリーの組立ては、実施例3の第3のソフトカーボンを、導電層にあるアノード材料として使用すること以外、実施例5のCR2032コイン電池の組立てと類似する。
【0054】
<実施例8>
<CR2032コイン電池の製造>
実施例8のCR2032コイン電池の組立ては、実施例4の第4のソフトカーボンを、導電層にあるアノード材料として使用すること以外、実施例5のCR2032コイン電池の組立てと類似する。
<18650バッテリーの製造>
実施例8の18650バッテリーの組立ては、実施例4の第4のソフトカーボンを、導電層にあるアノード材料として使用すること以外、実施例5のCR2032コイン電池の組立てと類似する。
【0055】
<コイン電池の試験>
電池試験装置(米Arbin Instruments社製、型番:BT2043)を用いて、温度25℃、0.2CのCレート(即ち電池の充電レートまたは放電レート)、0Vの充電終了電圧及び1.8Vの放電終了電圧の試験条件で、各実施例のCR2032コイン電池の第1サイクル充電容量(first cycle charge capacity)及び第1サイクル放電容量(first cycle discharge capacity)を測定した。
【0056】
CR2032コイン電池の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、以下の数式により計算された。
A=[(B-C)/B]×100
A=第1サイクル不可逆容量損失の百分率(%)
B=第1サイクル充電容量
C=第1サイクル放電容量
(B-C)=第1サイクル不可逆容量損失
<バッテリーの試験>
電池試験装置(米Maccor社製、型番:Series 4000)を用いて、温度25℃で、実施例5の18650バッテリー及び実施例6の7799130バッテリーの充放電能力(charging and discharging abilities)を測定した。充電Cレートが0.2C、0.5C、1C、3C及び5C時の1サイクルの容量維持率(%)及び放電Cレートが0.1C、0.5C、3C、5C、8C及び10C時の1サイクルの容量維持率(%)を充放電能力として測定した。
【0057】
<室温及び高温のサイクル寿命>
電池試験装置(米Maccor社製、型番:Series 4000)を用いて、25℃及び45℃の試験温度で、2CのCレートにおける各18650バッテリーのサイクル寿命を測定した。
容量維持率が82%または90%に低下した時のサイクル数を各18650バッテリーの室温のサイクル寿命または高温のサイクル寿命として測定した。
図3は、0.2CのCレートで充放電された実施例5及び実施例6の各コイン電池の充放電曲線を示す。
【0058】
評価した実施例5及び実施例6の各コイン電池の充放電能力の特性は、以下の表2にまとめた。
【0059】
【表2】
【0060】
表2及び図3に示されるように、0.2CのCレートにおいて、実施例6のコイン電池(実施例2の第2のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、計算により、13.75%(即ち、[(320-276)/320×100%])であり、実施例5のコイン電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、計算により、14.10%(即ち、[(312-268)/312×100%])である。
【0061】
実施例5のコイン電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、実施例6のコイン電池(実施例2の第2のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率に近い。
更に、実施例6のコイン電池(実施例2の第2のソフトカーボンを含む)の放電容量は、計算により、実施例5のコイン電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)の放電容量より約3%(即ち、[(276-268)/268×100%]=2.98%)上がった。
【0062】
図4は、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例6の7799130バッテリー(実施例2の第2のソフトカーボンを含む)のそれぞれの充電Cレートと容量維持率との関係を示す。
【0063】
3Cの充電Cレートにおいて、実施例6の7799130バッテリーの容量維持率は、計算により、実施例5の18650バッテリーの容量維持率より少なくとも5%(即ち、[(88-83.5)/83.5×100%]=5.39%)上がった。
更に、5Cの充電Cレートにおいて、実施例6の7799130バッテリーの容量維持率は、計算により、実施例5の18650バッテリーの容量維持率より少なくとも10%(即ち、[(84-76)/76×100%]=10.53%)上がった。
【0064】
図5は、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例6の7799130バッテリー(実施例2の第2のソフトカーボンを含む)のそれぞれの放電Cレートと容量維持率との関係を示す。
【0065】
3C、5C、8C及び10Cの放電Cレートにおいて、実施例6の7799130バッテリーの容量維持率は、実施例5の18650バッテリーの容量維持率より8.05%、9.35%、9.35%及び8.24%(即ち、[(94-87)/87×100%=8.05%]、[(93.6-85.6)/85.6×100%=9.35%] [(93.6-85.6)/85.6×100%=9.35%] 及び [(92-85)/85×100%=8.24%])上がった。
従って、3C~10Cの放電Cレートにおいて、実施例6の7799130バッテリーの容量維持率は、実施例5の18650バッテリーの容量維持率より少なくとも8%上がった。
【0066】
第1の実施形態の実施例1と比べて、第2の実施形態の実施例2のステップCにおいて、粒度分布においてD50が10μm~12μmの範囲から8μm~10μmの範囲にし且つD10が6μm~8μmの範囲から3μm~5μmの範囲にし且つD90が18μm~20μmの範囲から16μm~18μmの範囲にするので、収集される前記部分粉末の比表面積が増える。
そして、第2の実施形態の実施例2のステップEにおいて、ステップDで得られた炭素質粉末に添加するピッチ(即ち、軟化点に達し粘度が低下したピッチ)の量を増やすことができた。これにより、実施例2で得られた第2のソフトカーボン(即ち第2の実施形態の方法により製造された第2のソフトカーボン)の比表面積を更に減らすことができる。
【0067】
上記の調整(即ち粒度分布の調整)により、充電式リチウムイオンバッテリーの活性化(activation)が完了した後、安定した固体電解質界面(solid electrolyte interface、以下「SEI」と略称する)膜の形成が促進される可能性がある。
【0068】
図4及び図5に示される結果により、SEI膜の形成は、急速充放電した際の第6の実施形態の充電式リチウムイオンバッテリー(即ち実施例6の7799130バッテリー)の容量維持率を増やせ、それにより充電式リチウムイオンバッテリーの急速充放電能力が上がる。
【0069】
図6は、0.2のCレートで充放電する際の実施例5及び実施例7の各コインの電池の充放電曲線を示す図である。
評価した実施例5及び実施例7の各コイン電池の第1サイクルの充放電能力の特性は以下の表3にまとめた。
【0070】
【表3】
【0071】
表3及び図6に示されるように、0.2CのCレートにおいて、実施例7のコイン電池(実施例3の第3のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失は、計算により、実施例5のコイン電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失より、百分率において15.9%(即ち、[(44-37)/44×100%])低い。
【0072】
図7は、25℃の試験温度における実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例7の18650バッテリー(実施例3の第3のソフトカーボンを含む)のそれぞれのサイクル数と容量維持率との関係を示す。
【0073】
実施例5と実施例7との18650バッテリーのそれぞれの25℃の試験温度におけるサイクル寿命は、容量維持率が82%に低下した時のサイクル数で表す。
図7に示されるように、充電Cレートが2Cであり、放電Cレートが2Cであり、試験温度が25℃であり且つ4.2V~2.4Vの範囲内にある電圧である試験条件下で、実施例7の18650バッテリー(実施例3の第3のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命は、約2000サイクルであって、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命(約1700サイクル)より長い。
【0074】
図8は、45℃の試験温度における実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例7の18650バッテリー(実施例3の第3のソフトカーボンを含む)のそれぞれのサイクル数と容量維持率の関係を示す。
【0075】
実施例5と実施例7との18650バッテリーのそれぞれの45℃の試験温度におけるサイクル寿命は、容量維持率が82%に低下した時のサイクル数で表す。
充電Cレートが2Cであり、放電Cレートが2Cであり、試験温度が45℃であり且つ4.2V~2.4Vの範囲内にある電圧である試験条件下で、実施例7の18650バッテリー(実施例3の第3のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命は、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命より少なくとも2.25倍(即ち、(900/400)=2.25)長い。
第1の実施形態の実施例1と比べて、第3の実施形態の実施例3のステップEにおいて、第3の加熱速度を1.22℃/分から0.95℃/分に減らし、且つ第3の温度を1100℃から1200℃に増やした。
【0076】
前記第3の加熱速度及び前記第3の温度の上記の調整により、ピッチが前記炭素質粉末にカバーする更に安定な炭素構造の形成が促進される可能性があり、且つ充電式リチウムイオンバッテリーの活性化が完了した後、第6の実施形態の充電式リチウムイオンバッテリー(即ち、実施例7の18650バッテリー)に更に安定なSEI膜の形成が促進される可能性がある。
【0077】
図7及び図8に示される結果により、実施例7の18650バッテリーのSEI膜は、高温中に、傷の復元のために新しいSEI膜が生成しまたは厚みが増加するように再生することにより内部抵抗が増えて充電式リチウムイオンバッテリーの容量維持率及びサイクル寿命を減少することになりにくい。
従って、上記の調整により、急速充放電においての、第6の実施形態の充電式リチウムイオンバッテリーのサイクル寿命(即ち、実施例7の18650バッテリー)を増やすことができる。
【0078】
図9は、0.2のCレートで充放電する際の実施例5のコインの電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)及び実施例8の各コインの電池(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)の充放電曲線を示す図である。
評価した実施例5及び実施例8の各コイン電池の第1サイクル充放電能力の特性は以下の表4にまとめた。
【0079】
【表4】
【0080】
表4及び図9に示されるように、0.2CのCレートにおいて、実施例8のコイン電池(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、計算により、15.54%(即ち、[(341-288)/341×100%])であり、それに対して、実施例5のコイン電池(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、14.10%である。
従って、実施例5のコイン電池の第1サイクル不可逆容量損失の百分率は、実施例8のコイン電池の第1サイクル不可逆容量損失の百分率と近い。
【0081】
更に、実施例8のコイン電池の放電容量は、計算により、実施例5のコイン電池の放電容量より少なくとも7%(即ち、[(288-268)/268×100%]=7.46%)上がった。
【0082】
第1の実施形態の実施例1と比べて、第4の実施形態の実施例4のステップEにおいて、第3の加熱速度を1.22℃/分から1.16℃/分に少し減らし、且つ第3の温度を1100℃から1050℃に少し減らした。
第3の加熱速度及び第3の温度の上記の調整により、コンパクト性の観点から、実施例4で得られた第4のソフトカーボンの炭素構造を変えることができる。
換言すると、第4のソフトカーボンは、sp2混成と、比較的少ない百分率のsp3混成とを有するので、sp2混成による材料の結晶の態様とsp3混成による材料の結晶の態様とが異なることにより、界面の適合性(compatibility)が異なって、更なる空洞構造が生成し、該空洞構造によってより多くのリチウムイオンが該空洞構造による空間に出入りしやすくなって、デッドLi+(dead Li+)の発生が減り、容量が増えることができる。
【0083】
第6の実施形態の充電式リチウムイオンバッテリー(例えば実施例8のコイン電池)が活性化した後、リチウムイオンは、アノード材料の導電層の上記の空間に可逆的に介在されることにより、充電式リチウムイオンバッテリー内のリチウムイオンの維持能力が増え、従って実施例8のコイン電池の放電能力が増える(図9でも確認できる)。
【0084】
図10は、25℃の試験温度における実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例8の18650バッテリー(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)のそれぞれのサイクル数と容量維持率の関係を示す。
【0085】
実施例5と実施例8との18650バッテリーのそれぞれの25℃の試験温度におけるサイクル寿命は、容量維持率が90%に低下した時のサイクル数で表す。
図10に示されるように、充電Cレートが2Cであり、放電Cレートが2Cであり、試験温度が25℃であり且つ4.2V~2.4Vの範囲内にある電圧である試験条件下で、実施例8の18650バッテリー(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命は、約1250サイクルであって、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命(約700サイクル)より長い。
【0086】
図11は、45℃の試験温度における実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)と実施例8の18650バッテリー(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)のそれぞれのサイクル数と容量維持率の関係を示す。
【0087】
実施例5と実施例8との18650バッテリーのそれぞれの45℃の試験温度におけるサイクル寿命は、容量維持率が82%に低下した時のサイクル数で表す。
図11に示されるように、充電Cレートが2Cであり、放電Cレートが2Cであり、試験温度が45℃であり且つ4.2V~2.4Vの範囲内にある電圧である試験条件下で、実施例8の18650バッテリー(実施例4の第4のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命は、実施例5の18650バッテリー(実施例1の第1のソフトカーボンを含む)のサイクル寿命(約1700サイクル)より少なくとも1.5倍(即ち、900/560=1.60)長い。
【0088】
上記の内容によれば、本発明の充電式リチウムイオンバッテリーのアノード用炭素材料の製造方法は、ステップCで収集された前記部分粉末の粒度分布においてD50及びD10を調整し、ステップEにおいて、前記第3の加熱速度を0.90℃/分~1.25℃/分の範囲にし、前記第3の温度を1030℃~1220℃の範囲にし、それによりステップEで得られたピッチ改質のソフトカーボンの性質が変えられる。従って、充電式リチウムイオンバッテリーの急速充放電能力及びサイクル寿命を増やして、本開示の技術の目的を達成できる。
【0089】
上記実施形態および各実施例に示す構成および温度や時間などの数値は、例示的に本開示の技術の原理及び効果を説明するものであり、本開示の技術内容を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態および実施例に対して若干の変更や修飾が可能で有る。従って、当業者が本開示の技術の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本開示の技術の範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の技術によれば、アノード用炭素材料の製造に適し、特に充電式リチウムイオンバッテリーのアノード用炭素材料の製造に好適する。
【符号の説明】
【0091】
2、3 充電式リチウムイオンバッテリー
20、30 アウタケーシング
201、301 アノードケーシング
202、302 カソードケーシング
21、31 アノード
22、32 カソード
23、33 電解質
24、34 セパレータ
25、35 シールリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11