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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】映像出力システム及び映像出力方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240729BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240729BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240729BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20240729BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240729BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G06T19/00 600
B60N2/22
A47C7/62 Z
A47C1/024
B60N2/90
G06F3/01 510
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023114957
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019076227の分割
【原出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2023153811
(43)【公開日】2023-10-18
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 乘
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】寺口 剛仁
(72)【発明者】
【氏名】志小田 雄宇
(72)【発明者】
【氏名】大久保 翔太
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203792(WO,A1)
【文献】特開2009-140296(JP,A)
【文献】特開2019-028618(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230563(WO,A1)
【文献】特開2009-195707(JP,A)
【文献】特開2020-040425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
B60N 2/22
A47C 7/62
A47C 1/024
B60N 2/90
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間に設けられる所定の第1オブジェクトに取り付けられ、前記第1オブジェクトの位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記室内空間に重畳する仮想の第2オブジェクトの映像が出力される映像出力部と、
前記第1オブジェクトの前記位置情報に基づき、仮想の第2オブジェクトが前記第1オブジェクトに対応する位置に配置されるように、前記第2オブジェクトの映像を前記映像出力部に出力する制御部とを備え
前記制御部は、前記第2オブジェクトの映像が前記室内空間の設備に干渉しないように、前記第2オブジェクトの動きの少なくとも一部を制限する、映像出力システム。
【請求項2】
前記第1オブジェクトは、車両の室内空間に設けられる、請求項1に記載の映像出力システム。
【請求項3】
前記位置情報検出部は、前記車両に設けられた既設の車内センサである、請求項2に記載の映像出力システム。
【請求項4】
前記第2オブジェクトは、人物を模したオブジェクトである、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1オブジェクトの大きさに応じて、前記第2オブジェクトの大きさを調整する、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項6】
前記映像出力部は、ユーザが装着可能なウェアラブル装置である、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項7】
前記映像出力部は、眼鏡型デバイス、ヘッドマウントディスプレイ又はスマートコンタクトレンズである、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項8】
前記映像出力部は、前記室内空間に設けられた3Dプロジェクターである、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項9】
前記第1オブジェクトは、背もたれ部と、前記背もたれ部の角度を調整する角度調整部とを有するシートであり、
前記位置情報検出部は、前記背もたれ部の角度を含む位置情報を検出し、
前記制御部は、前記背もたれ部の角度が所定の閾値角度以上である場合に、前記シートの上に重畳する前記第2オブジェクトの映像を前記映像出力部に出力し、
前記角度調整部は、前記背もたれ部の角度が、前記閾値角度よりも小さい場合、前記背もたれ部を動かし、前記背もたれ部の角度を前記閾値角度以上になるように調整する、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項10】
前記シートについて着座の有無を検出する着座検出部を備え、
前記着座検出部によって前記シートへの着座が検出された場合、前記制御部は、前記シート以外の他のシートを前記第1オブジェクトとして選択する、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項11】
前記第2オブジェクトの視点から見た前記室内空間の映像が出力される第2映像出力部をさらに備え、
前記第2映像出力部は、前記室内空間以外の場所に設けられる、請求項に記載の映像出力システム。
【請求項12】
前記第2オブジェクトは、前記室内空間以外の場所にいる第2ユーザによって操作され、前記第2オブジェクトの映像は、前記第2ユーザの実際の画像を少なくとも一部に含む、請求項1に記載の映像出力システム。
【請求項13】
室内空間に設けられる所定の第1オブジェクトに取り付けられる位置情報検出部前記第1オブジェクトの位置情報を検出するステップと、
制御部が、前記第1オブジェクトの前記位置情報に基づき、前記室内空間に重畳する仮想の第2オブジェクトが前記第1オブジェクトに対応する位置に配置されるように、映像出力部に前記第2オブジェクトの映像を出力するステップとを備え
前記制御部は、前記第2オブジェクトの映像が前記室内空間の設備に干渉しないように、前記第2オブジェクトの動きの少なくとも一部を制限する、映像出力方法。
【請求項14】
映像出力システムを有する車両であって、
前記映像出力システムは、
室内空間に設けられる所定の第1オブジェクトに取り付けられ、前記第1オブジェクトの位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記室内空間に重畳する仮想の第2オブジェクトの映像が出力される映像出力部と、
前記第1オブジェクトの前記位置情報に基づき、仮想の第2オブジェクトが前記第1オブジェクトに対応する位置に配置されるように、前記第2オブジェクトの映像を前記映像出力部に出力する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第2オブジェクトの映像が前記室内空間の設備に干渉しないように、前記第2オブジェクトの動きの少なくとも一部を制限する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間で利用される映像出力システム及び映像出力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される従来の映像出力システムでは、実在のオブジェクトを含む実空間の環境を画像データとして取得する。そして、この映像出力システムは、仮想のオブジェクトを実空間の実在のオブジェクトに対応させて出力した上で、AR(拡張現実)コンテンツとして、車両のディスプレイに投影する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-131222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学センサを用いて実在のオブジェクトを画像認識し、分析した上で、実在のオブジェクトに対応させた位置に仮想のオブジェクトを出力するためには、映像出力システムに過剰な演算負荷が発生する場合がある。そのため、仮想のオブジェクトを出力するための情報処理に時間がかかってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、室内空間のオブジェクトに対して仮想のオブジェクトの位置合わせを行うとともに、仮想のオブジェクトの映像の出力にかかる時間を短縮することができる映像出力システム及び映像出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、位置情報検出部によって検出された第1オブジェクトの位置情報に基づき、制御部が、仮想の第2オブジェクトの映像を第1オブジェクトに対応する位置に出力し、第2オブジェクトの映像が室内空間の設備に干渉しないように、第2オブジェクトの動きの少なくとも一部を制限することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、室内空間の第1オブジェクトに対して仮想の第2オブジェクトの位置合わせを行うとともに、第2オブジェクトの映像の出力にかかる時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る映像出力システムにおいて、車両の室内の第1オブジェクトであるシートに仮想の第2オブジェクトであるアバターを出力する態様を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る映像出力システムの構成を示す模式図である。
図3図2に示す映像出力システムにおける第1オブジェクトとしてのシートの前後方向の位置の変化量を示す側面図である。
図4図2に示す映像出力システムにおける第1オブジェクトとしてのシートの高さ方向の位置の変化量を示す側面図である。
図5図2に示す映像出力システムにおける第1オブジェクトとしてのシートの背もたれ部のリクライニング位置の変化量を示す側面図である。
図6図2に示す映像出力システムの制御部が第1オブジェクトであるシートの三次元形状を出力する手順を示すフローチャートである。
図7図2に示す映像出力システムの制御部が、シートの背もたれ部の位置を前傾位置から基準位置に復元させる様子を示す側面図である。
図8図2に示す映像出力システムの制御部が第2オブジェクトとしてのアバターを出力する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両90の室内空間91には、互いに隣り合う運転席シート50及び助手席のシート10と、運転席シート50及び助手席のシート10の後ろに配置される3つの後部座席シート61,62,63が設けられる。運転席シート50には、ドライバーであるユーザ40が着座している。ユーザ40はARゴーグル30を装着している。ユーザ40には、ARゴーグル30を通して、実際には室内空間91に存在しない仮想のアバター20を視認することができる。アバター20は、人間を模した仮想のオブジェクトである。アバター20の映像は、室内空間91に重畳し、かつ、助手席のシート10に対応する位置に配置され、着座した姿で、ARゴーグル30に出力される。
なお、ARゴーグル30は、眼鏡型デバイスであり、ユーザ40が装着可能なウェアラブル装置である。ARゴーグル30は、映像出力部を構成する。また、シート10及び後部座席シート61,62,63は、各々、第1オブジェクトを構成する。また、アバター20は、第2オブジェクトを構成する。
【0010】
図2を用いて、ARゴーグル30にアバター20の映像を出力する映像出力システム100の全体的な構成について説明する。
映像出力システム100は、映像出力部であるARゴーグル30と、ARゴーグル30に出力するアバター20の映像を生成する制御部1と、データの送受信を行う通信部2と、シート10の基準位置、姿勢情報及び形状情報を格納する記憶部3とを有する。また、シート10は、座部10bと、座部10bに回動可能に連結された背もたれ部10aとを有する。座部10bには、人の着座を検知する着座センサ11が設けられている。また、シート10にはシートベルト9と、シートベルト9の使用を検知するシートベルトセンサ19が設けられている。
なお、着座センサ11及びシートベルトセンサ19は、シート10への乗員の着座の有無を検出する着座検出部を構成する。
【0011】
さらに、シート10には、スライド機構18と、シート10をスライド機構18に沿って前後方向に動かすスライドモータ12と、シート10を上下方向に動かすリフトモータ13と、シート10の背もたれ部10aの角度を調整するリクライニングモータ14とが取り付けられる。さらにまた、スライドモータ12には、シート10の前後方向の位置の変化量を検出する第1ポテンショメータ15が設けられる。リフトモータ13には、シート10の上下方向の位置の変化量を検出する第2ポテンショメータ16が設けられる。リクライニングモータ14には、シート10の背もたれ部10aの角度の変化量を検出する第3ポテンショメータ17が設けられる。着座センサ11、スライドモータ12、リフトモータ13、リクライニングモータ14、第1ポテンショメータ15、第2ポテンショメータ16、第3ポテンショメータ17及びシートベルトセンサ19は、各々、制御部1に電気的に接続される。
なお、第1ポテンショメータ15、第2ポテンショメータ16及び第3ポテンショメータ17は、既設の車内センサであり、シート10の位置情報を検出する位置情報検出部を構成する。また、リクライニングモータ14は、角度調整部を構成する。
【0012】
図2に示すように、制御部1が出力するアバター20は、シート10の座部10bの上に腰かけ、背もたれ部10aに寄り掛かった姿勢で出力される。アバター20は、車両90の室内空間91から離れた遠隔地の空間70にいる第2ユーザ71によって操作される。アバター20の映像は、第2ユーザ71の実際の画像を少なくとも一部に含み、シート10の形状に沿って表示される。制御部1は、アバター20の大きさをシート10の大きさに合わせて、適宜調整する。また、アバター20の映像が室内空間91の設備に干渉しないように、アバター20の動作の一部は制限されている。さらに、制御部1は、アバター22の視点から見た室内空間91の映像を生成している。アバター22の視点から見た室内空間91の映像は、通信部2を介して、第2ユーザ71が装着するヘッドマウントディスプレイ72に出力される。
ここで、ヘッドマウントディスプレイ72は、第2映像出力部を構成する。
【0013】
次に、シート10の現在位置の演算方法について、図3~5を用いて説明する。
図3に示すように、制御部1は、記憶部3から参照したシート10の前後方向の基準位置L0に、第1ポテンショメータ15が検出したシート10の前後方向の位置の変化量dLを加算する。これにより、制御部1は、シート10の前後方向の現在位置L1を演算する。
【0014】
図4に示すように、制御部1は、記憶部3から参照したシート10の上下方向、すなわち鉛直方向の基準位置H0に、第2ポテンショメータ16が検出したシート10の上下方向の位置の変化量dHを加算する。これにより、制御部1は、シート10の上下方向の現在位置H1を演算する。
【0015】
図5に示すように、制御部1は、記憶部3から参照したシート10の背もたれ部10aの基準位置A0に、第3ポテンショメータ17が検出した背もたれ部10aの位置の変化量dAを加算する。これにより、制御部1は、シート10の背もたれ部10aの現在位置A1を演算する。なお、基準位置A0にある背もたれ部10aの角度は、Θ0=90°である。また、現在位置A1にある背もたれ部10aの角度は、Θ1である。すなわち、背もたれ部10aの位置の変化量dAを角度変化量dΘで表すと、dΘ=Θ1-Θ0である。制御部1は、記憶部3から受信したシート10の形状情報と、背もたれ部10aの現在位置A1とに基づいて、シート10の現在の三次元形状を出力する。
なお、背もたれ部10aの角度とは、座部10bと背もたれ部10aとの間の角度をいう。
【0016】
次に、図6を用いて、制御部1によるシート10の三次元形状の出力方法について説明する。
まず、制御部1は、シート10の着座センサ11又はシートベルトセンサ19からの信号を取得する(ステップS1)。そして、着座センサ11又はシートベルトセンサ19からの信号がOFFか否かを判断する(ステップS2)。信号がOFFではなくONの場合は、シート10には乗客が着座している。そこで、制御部1は、シート10への「着座不可」、すなわち、アバター20の映像をシート10に重畳させて表示することが不可能であるという判断を出力する(ステップS3)。この場合、シート10の三次元形状は出力されない。
【0017】
信号がOFFの場合は、制御部1は第3ポテンショメータ17の信号を取得する(ステップS4)。そして、制御部1は、第3ポテンショメータ17の信号と、記憶部3から取得したシート10の形状情報とから、シート10の現在の三次元形状をシュミレーションする(ステップS5)。そして、制御部1は、シート10の現在の三次元形状が、アバター20が着座可能な形状か否かを判断する(ステップS6)。シュミレーションされたシート10の現在の三次元形状が、アバター20が着座可能な形状である場合、制御部1は、シート10の三次元形状を出力する(ステップS9)。具体的には、シート10の背もたれ部10aの角度が90°以上であり、かつ、シート10の座部10bがアバター20の着座を許容可能な形状である場合に、シート10の形状はアバター20が着座可能な形状であると判断される。
【0018】
シュミレーションされたシート10の形状が、アバター20が着座可能な形状でない場合、制御部1は、アバター20が着座可能になるようにシート10を復元可能か否か判断する(ステップS7)。具体的には、図7に示す破線のように、シート10の背もたれ部10aの位置が前傾位置A2となっている場合、シート10の形状は、アバター20が着座可能な形状でないと判断される。そして、背もたれ部10aを基準位置A0まで回動させることによりアバター20がシート10に着座可能になると判断される時は、制御部1は、アバター20が着座可能になるようにシート10を復元可能であると判断する。そこで、制御部1は、リクライニングモータ14を駆動させ、基準位置A0まで背もたれ部10aを回動させて、シート10の形状を復元し(ステップS8)、その後、シート10の三次元形状を出力する(ステップS9)。
なお、基準位置A0に位置する背もたれ部10aの角度は、θ0=90°である。θ0は、閾値角度を構成する。すなわち、背もたれ部10aの角度がθ0=90°よりも小さい時、制御部1は、アバター20はシート10に着座可能ではないと判断する。
【0019】
一方、アバター20が着座可能になるようにシート10を復元することができないと判断される時は、制御部1は、着座不可を出力する(ステップS3)。具体的には、シート10の座部10bが、アバター20の着席を許容することができる形状ではない場合、角度が90°以上になるように背もたれ部10aを回動させても、アバター20はシート10に着座可能ではないと判断される。この場合、シート10の三次元形状は出力されない。
【0020】
次に、図8を用いて、ARゴーグル30へのアバター20の映像の出力方法について説明する。
まず、制御部1は、助手席のシート10の位置情報を取得する(ステップS11)。そして、図6のステップS1~S9の手順によって、シート10の三次元形状が出力されたか否かを判断する(ステップS12)。制御部1によってシート10の三次元形状が出力されている場合は、図2に示すように、シート10の上に重畳して映し出されるアバター20の映像を、ARゴーグル30に出力する(ステップS16)。
【0021】
一方、助手席のシート10の三次元形状が出力されていない場合は、シート10は着座不可の状態となっている。そのため、制御部1は、後部座席シート61,62,63の各々の位置情報を、同様に、取得する(ステップS13)。そして、シート10と同様に、図6のステップS1~S9の手順に従い、各々のシートの三次元形状が出力されたか否かを判断する(ステップS14)。後部座席シート61,62,63のいずれかの三次元形状が出力された場合は、該当するシートが第1オブジェクトとして選択される。従って、制御部1は、選択された後部座席シートに対応する位置に着座するアバター20の映像を、ARゴーグル30に出力する(ステップS16)。
【0022】
一方、後部座席シート61,62,63のうちいずれの三次元形状も出力されていない場合は、車両90の室内空間91のシートは全て着座不可の状態となっている。この場合、制御部1は、記憶部3からダッシュボード(図示せず)の位置情報及び形状情報を取得し(ステップS15)、アバター20のサイズを縮小して、ダッシュボードの上にアバター20が着座している映像をARゴーグル30に出力する(ステップS16)。
【0023】
以上より、この実施の形態に係る映像出力システム100及び映像出力システム100を有する車両90は、シート10の位置情報を検出する第1ポテンショメータ15、第2ポテンショメータ16及び第3ポテンショメータ17を備える。また、映像出力システム100の制御部1は、シート10の位置情報に基づいて、人物を模したアバター20がシート10に対応する位置に着座するように、アバター20の映像をARゴーグル30に出力する。これにより、光学センサを用いずに、シート10に取り付けられた位置情報センサによる検出のみで、アバター20の映像をシート10に対して位置合わせし、ARゴーグル30に出力することができる。従って、光学センサのみを用いて撮像した画像からシート10の位置及び形状を分析するよりも、映像出力システム100にかかる演算負荷は軽くなり、アバター20の出力にかかる時間が短縮される。また、既設の光学センサとシート10に取り付けた位置情報センサとを組み合わせて使用することにより、光学センサのみを用いる場合に比べて、アバター20をシート10に対してより正確に位置合わせすることができる。また、制御部1は、アバター20の映像が室内空間91の設備に干渉しないように、アバター20の動きの少なくとも一部を制限する。これにより、ユーザ40がアバター20に感じる違和感を低減させることができる。
【0024】
また、シート10は、車両90の室内空間91に設けられた既設の設備であるため、記憶部3は予めシート10の基準位置、姿勢情報及び形状情報を、既知の設計情報として格納している。従って、制御部1は、記憶部3から取得したシート10の情報を用いて、アバター20をシート10に対して位置合わせすることができる。そのため、アバター20の出力処理にかかる演算負荷をより軽くすることができる。
【0025】
また、映像出力システム100の位置情報検出部として用いられる第1ポテンショメータ15、第2ポテンショメータ16及び第3ポテンショメータ17は、車両90に設けられた既設の車内センサである。従って、新たなセンサを車両90に取り付ける必要がないため、映像出力システム100の構築にかかるコストが低減される。
【0026】
また、制御部1は、シート10の大きさに応じて、アバター20の大きさを調整する。これにより、制御部1は、より適切にシート10に対応した態様でアバター20を出力することができる。
【0028】
また、図7に示すように、リクライニングモータ14は、背もたれ部10aの角度が、閾値角度θ0よりも小さい場合、背もたれ部10aを動かし、背もたれ部10aの角度を閾値角度θ0以上になるように調整する。これにより、アバター20の映像が、シート10に干渉してしまうことを防止することができる。
【0029】
また、着座センサ11及びシートベルトセンサ19が反応し、シート10への着座が検出された場合、制御部1は、助手席のシート10以外の後部座席シート61,62,63のいずれかを第1オブジェクトとして選択する。これにより、車両90に複数の乗員が乗っている場合でも、制御部1は、室内空間91に重畳するアバター20を違和感なく出力することができる。
【0030】
また、映像出力システム100は、アバター20の視点から見た室内空間91の映像が出力される第2映像出力部としてのヘッドマウントディスプレイ72を備える。これにより、車両90に同乗していない第2ユーザ71も、ヘッドマウントディスプレイ72を装着することによって、アバター20の視点を通して、ドライブを楽しむ、ユーザ40とコミュニケーションを取る、又は、ユーザ40の運転を補助する等の体験をすることができる。
【0031】
また、アバター20の映像は、第2ユーザ71の実際の画像を少なくとも一部に含んでいる。これにより、ユーザ40は、アバター20を介して、第2ユーザ71と実際にコミュニケーションを取っているという感覚が強めることができ、ユーザ40のAR体験の没入感をより高めることができる。
【0032】
なお、この実施の形態において、アバター20は、人物を模したオブジェクトであるが、これに限定されず、動物等のキャラクターであってもよい。また、アバター20の映像は、第2ユーザ71の実際の画像を少なくとも一部に含むものに限定されず、全体がCGにより作成されたキャラクターであってもよい。また、アバター20は、第2ユーザ71によって操作されるものに限定されず、AIによって行動を制御されるものであってもよい。
【0033】
また、映像出力部は、ARゴーグル30のような眼鏡型デバイスに限定されず、ヘッドマウントディスプレイ又はスマートコンタクトレンズ等の他のウェアラブル装置であってもよい。さらに、映像出力部は、ウェアラブル装置に限定されず、室内空間91に設けられた3Dプロジェクターであってもよい。
【0034】
また、この実施の形態において、映像出力システム100は、車両90の室内空間91におけるAR体験に使用されるものだが、これに限定されず、車両以外の室内環境において使用されてもよい。
【0035】
また、この実施の形態において、第1オブジェクトであるシート10は、回動可能な背もたれ部10aを有しているが、これに限定されず、背もたれ部10aが動かないもの、又は、背もたれ部がないものであってもよい。シート10の背もたれ部10aが動かない、又は、シート10が背もたれ部を有していない場合は、第1ポテンショメータ15及び第2ポテンショメータ16を位置情報検出部として利用する。
【0036】
また、この実施の形態において、図2に示すように、アバター20はシート10の背もたれ部10aに背中を付けた状態で出力されるが、これに限定されない。すなわち、アバター20の着座の姿勢及び位置がシート10の位置に自然に対応して見えるものであれば、アバター20の背中がシート10の背もたれ部10aから離れていてもよい。
【0037】
また、この実施の形態において、シート10の背もたれ部10aの閾値角度は、θ0=90°であるが、これに限定されない。すなわち、シート10の背もたれ部10aの角度が閾値角度以上の時に、アバター20がシート10に干渉せずに、自然な姿勢で着座することが可能であればよい。
【0038】
また、図7に示すように、背もたれ部10aが前傾位置A2にある時は、リクライニングモータ14は、背もたれ部10aを回動させて、背もたれ部10aの位置を基準位置A0に復元しているが、これに限定されず、背もたれ部10aを、基準位置A0を超えて回動させてもよい。
【0039】
上記のシート10及び後部座席シート61,62,63は、本発明に係る第1オブジェクトに相当する。上記の着座センサ11及びシートベルトセンサ19は、着座検出部に相当する。上記のリクライニングモータ14は、角度調整部に相当する。上記の第1ポテンショメータ15、第2ポテンショメータ16及び第3ポテンショメータ17は、本発明に係る位置情報検出部に相当する。上記のアバター20は、第2オブジェクトに相当する。上記のARゴーグル30は、映像出力部に相当する。上記のヘッドマウントディスプレイ72は、第2映像出力部に相当する。
【符号の説明】
【0040】
100…映像出力システム
1…制御部
10…シート(第1オブジェクト)
10a…背もたれ部
11…着座センサ(着座検出部)
14…リクライニングモータ(角度調整部)
15…第1ポテンショメータ(位置情報検出部)
16…第2ポテンショメータ(位置情報検出部)
17…第3ポテンショメータ(位置情報検出部)
19…シートベルトセンサ(着座検出部)
20…アバター(第2オブジェクト)
30…ARゴーグル(映像出力部)
40…ユーザ
61,62,63…後部座席シート(第1オブジェクト)
71…第2ユーザ
72…ヘッドマウントディスプレイ(第2映像出力部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8