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特許7528351リチウム二次電池用正極、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240729BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240729BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/1397
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/1395
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023500412
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2021014071
(87)【国際公開番号】W WO2022086026
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136489
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
(72)【発明者】
【氏名】キュンシク・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ドンソク・シン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0109284(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0051610(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体;
前記正極集電体の少なくとも一面上に順次形成されたバインダー層;及び正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は硫黄及び炭素を含むフリースタンディングフィルム型正極材であり、
前記バインダー層の単位面積当たり塗布量は0.1μg/cm ないし5μg/cm である、リチウム二次電池用正極。
【請求項2】
前記バインダー層は、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリル化スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、フルオロゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリエチレンオキサイド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエピクロロハイドリン、ポリホスファゲン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネイト、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、リチウムポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン及びポリ(フッ化ビニリデン)‐ヘキサフルオロプロペンからなる群から選択される1種以上を含むことができる、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項3】
前記バインダー層は厚さが0.1μmないし20μmである、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項4】
前記フリースタンディングフィルム型正極材は、硫黄50重量%ないし80重量%及び多孔性炭素材20重量%ないし50重量%で構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
前記フリースタンディングフィルム型正極材は、内部接着力が10gf/cm以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項6】
前記フリースタンディングフィルム型正極材は気孔率が68%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
(1)正極集電体上にバインダー層を形成する段階;及び
(2)前記バインダー層上にフリースタンディングフィルム型正極材を附着して正極活物質層を形成する段階を含み、
前記フリースタンディングフィルム型正極材は硫黄及び炭素を含み、
前記バインダー層の単位面積当たり塗布量は0.1μg/cm ないし5μg/cm である、リチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項8】
(a)硫黄と多孔性炭素材を混合する段階;
(b)前記(a)段階で製造された混合物を熱処理して硫黄‐炭素複合体を製造する段階;及び
(c)前記(b)段階で製造された硫黄‐炭素複合体を容器に充填させた後加圧する段階を含む製造方法によって前記フリースタンディングフィルム型正極材を製造する段階をさらに含む、請求項に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は130℃ないし170℃の温度条件下で遂行する、請求項に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項10】
前記加圧は0.8MPaないし15MPaの圧力条件下で遂行する、請求項8又は9に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極;
リチウム金属またはリチウム合金を含む負極;
前記正極と負極の間に位する分離膜;及び
前記正極、負極及び分離膜が含侵された電解質を含むリチウム二次電池。
【請求項12】
前記リチウム二次電池はリチウム‐硫黄二次電池である、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記正極は硫黄のローディング量が3.0mAh/cmないし5.0mAh/cmである、請求項11又は12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年10月21日付韓国特許出願第10‐2020‐0136489号に基づく優先権の利益を主張し、該当の韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明はリチウム二次電池用正極、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展につれ、二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化の成り行きによって、それに応えられる高エネルギー密度を持つ二次電池に対する要求が大きくなっている。
【0004】
二次電池の中でリチウム‐硫黄二次電池は硫黄‐硫黄結合を持つ硫黄系化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属またはリチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱挿入が起きる炭素系物質、またはリチウムと合金を形成するシリコーンやスズなどを負極活物質で使用する二次電池である。具体的に、還元反応である放電時の硫黄‐硫黄結合が切れながら硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電時の硫黄の酸化数が増加しながら硫黄‐硫黄結合が再び形成される酸化‐還元反応を利用して電気的エネルギーを貯蔵して生成する。
【0005】
特に、リチウム‐硫黄二次電池に正極活物質で使用される硫黄は、理論エネルギー密度が1,675mAh/gで、既存リチウム二次電池に使用される正極活物質に比べて5倍ぐらい高い理論エネルギー密度を持っているため、高出力、高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これに加え、硫黄は安価で埋蔵量が豊かであり、需給が容易で、環境にやさしいいう利点のため、携帯用電子機器だけでなく電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目されている。
【0006】
硫黄は電気伝導率が5×10‐30S/cmで電気伝導性がない不導体なので、電気化学反応で生成された電子の移動が難しい問題がある。ここで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素のような電気伝導性物質とともに複合化されて硫黄‐炭素複合体で使われている。
【0007】
前記硫黄‐炭素複合体を正極活物質で使用するために導電材及びバインダーとともにスラリーを製造した後、前記スラリーを集電体に塗布するスラリー工程を通じて正極を製造する方式が一般的に利用されている。
【0008】
しかし、このようなスラリー工程によって製造される正極はスラリー製造時に使われる導電材及びバインダーによって正極内で正極活物質のローディング量が低下し、エネルギー密度も減少される問題がある。また、スラリー工程は、混合、コーティング、乾燥及び圧延のような細部工程を含むので、要される時間と費用が増加する問題がある。
【0009】
ここで、簡素な工程で高ローディングのリチウム二次電池用正極を製造することができる技術開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第2019‐0100152号
【文献】中国公開特許第109873120号
【文献】米国公開特許第2018‐0212252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、本発明者らは前記問題を解決するために多角的に研究した結果、加圧条件で硫黄‐炭素複合体の表面に形成された硫黄が溶融され、周辺の硫黄と結集する性質と炭素材の柔軟性を利用する場合、硫黄‐炭素複合体に加圧条件を与える乾式工程によってフリースタンディングフィルム型正極材を製造することができ、前記フリースタンディングフィルム型正極材を少量のバインダーでも集電体と接合させることができることを確認して本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、硫黄のローディング量が高いながらも製作し易いリチウム二次電池用正極を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、正極集電体;前記正極集電体の少なくとも一面上に順次形成されたバインダー層;及び正極活物質層を含み、前記正極活物質層はフリースタンディングフィルム型正極材であるリチウム二次電池用正極を提供する。
【0015】
また、本発明は(1)正極集電体上にバインダー層を形成する段階;及び(2)前記バインダー層上にフリースタンディングフィルム型正極材を附着して正極活物質層を形成する段階を含むリチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0016】
同時に、本発明は前記リチウム二次電池用正極;リチウム金属またはリチウム合金を含む負極;前記正極と負極の間に位置する分離膜;及び前記正極、負極及び分離膜が含侵された電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるリチウム二次電池用正極は硫黄の含量が高く、バインダーなどの比容量物質の含量が少ないため、向上された性能と寿命を示すことができる。また、本発明のリチウム二次電池用正極は、混合、コーティング、乾燥及び圧延を含む一連の細部工程を含むスラリー工程ではなく、硫黄‐炭素複合体を加圧する簡素な乾式工程によって製造されることができて、費用及び時間の側面で工程効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験例2による実施例1及び比較例1のリチウム二次電池の性能評価結果を示すグラフである。
図2】実験例2による実施例1及び実施例2のリチウム二次電池の性能評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0021】
本発明で使用した用語は単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに違う意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「持つ」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0022】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に相互異なる相(phase)を形成しながらより有効な機能を発現する物質を意味する。
【0023】
本明細書で使われている用語「フリースタンディングフィルム(free‐standing film)」とは、常温・常圧で別途支持体がなくても、それ自体でフィルム形態を維持することができるフィルムを意味する。
【0024】
リチウム‐硫黄二次電池は二次電池の中で高い理論放電容量及び理論エネルギー密度を持つだけでなく正極活物質で使われる硫黄は埋蔵量が豊かで低価であり、環境にやさしいという利点のため次世代二次電池として脚光を浴びている。
【0025】
従来リチウム‐硫黄二次電池用正極は、正極集電体に正極活物質、導電材、バインダーなどが含まれたスラリーを塗布する方式を通じて製造した。
【0026】
しかし、正極製造に使われるスラリーは正極活物質だけでなく導電材、バインダーのような他の材料を必須的に含むので、正極活物質のローディング量に制限があり、これによってエネルギー密度が低くなる短所がある。また、スラリーを利用した従来工程の場合、混合、コーティング、乾燥及び圧延のような一連の細部工程を遂行するので、工程が複雑なだけでなく時間及び費用の側面で消耗が多い問題がある。
【0027】
また、リチウム‐硫黄二次電池の駆動のためには、正極及び負極に外部の回路と電気的に接続されるタップが備えられなければならないので、正極と負極はタップを固定することができる集電体を含まなければならない。
【0028】
ここで、本発明ではスラリーを集電体に塗布する方式ではなく、フリースタンディングフィルム型の正極材を正極活物質層に含み、これを少量のバインダーを通じて集電体と接合させることで既存電極対比硫黄のローディング量が高いながらも製作し易いリチウム二次電池用正極を提供する。
【0029】
具体的に、本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極集電体;前記正極集電体の少なくとも一面上に順次形成されたバインダー層;及び正極活物質層を含み、前記正極活物質層はフリースタンディングフィルム型正極材を含む。
【0030】
本発明において、前記正極集電体は後述する正極活物質層を支持し、外部導線と正極活物質層の間で電子を伝達する役目をする。
【0031】
前記正極集電体はリチウム二次電池に化学的変化を引き起こさずに高い電子伝導性を持つものであれば、特に制限されるものではない。例えば、前記正極集電体として、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使われることができる。
【0032】
前記正極集電体は正極活物質層との結合力を強化させるために、正極集電体の表面に微細な凹凸構造を持つか、3次元多孔性構造を採用することができる。これによって、前記正極集電体は、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を含むことができる。
【0033】
本発明において、前記バインダー層は前記正極集電体及び後述する正極活物質層の間に位置して正極活物質層が前記正極集電体に附着されるようにすることできる。
【0034】
本発明によるリチウム二次電池用正極は後述する正極活物質層と前記正極集電体を前記バインダー層を通じて接合させるので、正極活物質層にバインダーなどの比容量物質が添加されないため正極活物質層に硫黄のローディング量を高めることだけでなく電気化学的反応効率に優れるという長所がある。また、前記バインダー層は後述する正極活物質層と前記正極集電体の接合を維持するために必要な量のみを使用するので、既存電極対比バインダーの含量を画期的に下げてリチウム二次電池用正極の電気化学的反応性を高めることができる。これに加え、前記バインダー層を通じて後述する正極活物質層を前記正極集電体上にすぐ付着させることができて別途装備が必要なく、工程に要される時間も縮めることができるという製造工程上の利点を持つことができる。
【0035】
前記バインダー層は、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリル化スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、フルオロゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリエチレンオキサイド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエピクロロハイドリン、ポリホスファゲン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネイト、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、リチウムポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン及びポリ(フッ化ビニリデン)‐ヘキサフルオロプロペンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記バインダー層は、スチレン‐ブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、リチウムポリアクリレート及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0036】
前記バインダー層の単位面積当たり塗布量、すなわち前記バインダー層の単位面積当たりバインダーの含量は0.1ないし20μg/cm、好ましくは0.2ないし15μg/cm、より好ましくは0.5ないし10μg/cm、さらに好ましくは0.5ないし5μg/cmである。前記バインダー層の単位面積当たり塗布量が前記範囲未満の場合、正極活物質層と正極集電体の間の接着力が不足して脱離が発生することがある。これと逆に、前記バインダー層の単位面積当たり塗布量が前記範囲を超える場合、伝導性が低下されて電池の初期放電容量が低くなる問題が発生し、バインダー層が乾燥される過程で大きい収縮が起きることによって接着力が悪くなって、後述する正極活物質層が脱離される現象が発生することがある。
【0037】
前記バインダー層は、正極活物質層100重量%を基準にして0.002ないし0.5重量%、好ましくは0.004 ないし0.3重量%、より好ましくは0.01ないし0.2重量%である。既存リチウム二次電池用正極の場合、正極活物質層内のバインダーを正極活物質層全体重量に対して3ないし10重量%範囲で含むことと比べた時、本発明によるリチウム二次電池用正極は著しく少ない量のみを含み、これによって正極のより優れる電気化学的反応性を示すようになる。
【0038】
前記バインダー層は、厚さが0.1ないし20μm、好ましくは0.5ないし10μmである。前記バインダー層の厚さが前述した範囲に該当する場合、後述する正極活物質層が前記正極集電体上に堅く附着されながら、これらの間の電子伝導性を阻害しない。
【0039】
前記バインダー層は導電材を含むか含まないこともできる。前記バインダー層が導電材を含まない場合、最小量のバインダーだけでも集電体と接合が可能であるため、リチウム二次電池用正極の電気化学的反応性向上を図ることができる。
【0040】
本発明において、前記正極活物質層はフリースタンディングフィルム型正極材を含む。
【0041】
前記フリースタンディングフィルム型正極材は、硫黄50重量%ないし80重量%及び多孔性炭素材20重量%ないし50重量%で構成される硫黄‐炭素複合体を含む。
【0042】
前記硫黄‐炭素複合体は、前記硫黄が前記多孔性炭素材に担持されている形態を意味する。例えば、前記硫黄‐炭素複合体は前記多孔性炭素材の表面に硫黄が付着またはコーティングされている状態である。また、前記硫黄‐炭素複合体は前記硫黄は前記多孔性炭素材の内部気孔に付着、充填またはコーティングされた状態;または前記多孔性炭素材の内部に前記硫黄が浸透されて附着された状態である。
【0043】
前記正極材はフリースタンディングフィルム形態で、集電体に塗布する工程なくても前記フリースタンディングフィルム型正極材自体を正極材で活用することができる。
【0044】
前記フリースタンディングフィルム型正極材は硫黄と多孔性炭素材を原料として乾式工程によって製造されるので、本発明によるリチウム二次電池用正極は正極活物質層内に硫黄と多孔性炭素材のみが含まれ、正極で使用時に正極活物質である硫黄のローディング量が高い長所がある。また、前記乾式工程は従来スラリー工程時に要求される混合、コーティング、乾燥及び圧延のような一連の細部工程を省略することができて、工程費用の節減が可能である。また、前記乾式工程はスラリーを使わないため、前記乾式工程によって製造された本発明のフリースタンディングフィルム型正極材にはバインダーが全然含まれず、バインダー抵抗による電池性能低下を根本的に取り除くことができる。また、前記乾式工程によって製造された本発明のフリースタンディングフィルム型正極材には導電材が全然含まれていないので、凝集力が足りない導電材によって成形性が低下される問題が最小化されることができる。
【0045】
また、前記フリースタンディングフィルム型正極材は、前記多孔性炭素材が正極材の骨格をなした状態で、前記多孔性炭素材の表面に形成された硫黄によって接続され、フリースタンディングフィルム形態を示す。
【0046】
また、前記フリースタンディングフィルム型正極材は、電極加圧成形後前記フリースタンディングフィルム型正極材の内部接着力が10gf/cm以上のものである。前記内部接着力は加圧工程時に硫黄が溶融されて周辺の硫黄と結集される性質に起因したものであり、前記フリースタンディングフィルム型正極材の内部接着力が10gf/cm未満であれば接着力不足によってフィルム形態への成形が難しくなることがある。具体的に前記内部接着力は10gf/cm以上、15gf/cm以上、20gf/cm以上、25gf/cm以上、30gf/cm以上または35gf/cm以上である。また、前記接着力の上限は50gf/cm以下、60gf/cm以下、70gf/cm以下、80gf/cm以下、90gf/cm以下または100gf/cm以下であるが、これに制限されるものではなく、前記フリースタンディングフィルム型正極材の内部接着力は、高いほど成形性、耐久性及び電池性能の側面でよい。
【0047】
また、前記フリースタンディングフィルム型正極材は、気孔率は68%以下、65%以下、60%以下、55%以下であって、45%以上または50%以上である。前記フリースタンディングフィルム型正極材の気孔率が68%超であればフリースタンディングフィルム型正極材の耐久性が低下されることがあって、45%未満であれば気孔内で電気化学反応が起きる空間が細くなるので、正常な電池駆動が難しくなる。
【0048】
本発明において、前記硫黄は、無機硫黄(S)、Li(n≧1、nは整数)、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマー((C、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数)からなる群から選択される1種以上である。
【0049】
また、前記硫黄は前記硫黄‐炭素複合体全体重量を基準にして50重量%以上、55重量%以上または60重量%以上可能で、70重量%以下、75重量%以下、80重量%以下可能である。前記硫黄が50重量%未満であれば電気化学的活物質である硫黄の割合が減って多孔性炭素材の表面に形成される硫黄コーティング層が薄くなって、硫黄‐炭素複合体がまともに成形されないか、または前記多孔性炭素材の内部に含まれる硫黄の量が減少されて電池容量が低下されることができる。また、前記硫黄が80重量%超であれば非伝導性の硫黄が多孔性炭素材の導電構造を遮断して電気化学的活性が遮断されるので電池駆動が制限的である。
【0050】
前記硫黄‐炭素複合体で硫黄が50重量%ないし80重量%含まれる時、多孔性炭素材の表面及び/または気孔に適切に付着、コーティングまたは充填される形態で担持つされてフリースタンディング形態の正極が安定的に形成されることができる。
【0051】
本発明において、前記多孔性炭素材は内部に気孔または中空が形成されている構造であるか、比表面積が高い多孔性炭素材であることができ、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。
【0052】
前記多孔性炭素材は、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックの中で選択されるカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)及び多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)の中で選択される炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)及び活性化炭素ファイバー(ACF)の中で選択される炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択される1種以上であるが、これに制限されない。好ましくは、前記多孔性炭素材は炭素ナノチューブである。
【0053】
前記炭素ナノチューブは構造的な特徴によって連結点がもっと多く、フリースタンディングフィルムの成形時にもっと有利である。具体的に、前記炭素ナノチューブは縦横比が1超の形態を持つので、互いに接続されてフリースタンディングフィルムを形成するに有利である。
【0054】
また、前記グラフェンは炭素原子が2次元相で蜂の巣模様の配列を持つ単一層の形態を意味するものであって、薄くて広い断面積と優れる電動特性を持ちながら撓め特性、光に対する高感度など優れる物性を示す物質である。本発明において、グラフェンは酸化グラフェンを還元して形成した還元されたグラフェン、物理的に剥離されたグラフェンなどを全て含む。前記グラフェン薄膜は炭素ナノチューブの外面を包む形態で含まれることができ、電気伝導経路を補強すると同時に、電池の駆動時に硫黄が電解液に湧出されることを抑制することができる。
【0055】
また、前記多孔性炭素材の含量は、前記硫黄‐炭素複合体全体重量を基準にして20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上または35重量%以上であり、40重量%以下、45重量%以下または50重量%以下である。前記多孔性炭素材が20重量%未満であれば硫黄が充填、付着またはコーティングされることができる表面積と空間の提供が十分ではないため、硫黄の電気化学活用性(反応性)が低下される。前記炭素材が50重量%超であれば、硫黄の含量が相対的に低下してリチウム二次電池に適用するとき、電池のエネルギー密度が非常に低下されることがある。
【0056】
また、本発明は(1)正極集電体上にバインダー層を形成する段階;及び(2)前記バインダー層上にフリースタンディングフィルム型正極材を附着して正極活物質層を形成する段階を含むリチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0057】
先ず、前記(1)段階は正極集電体上にバインダー層を形成する段階で、前記正極集電体上にバインダー層に含まれる物質を塗布する方法によって遂行されることができる。この時、前記正極集電体及びバインダー層は上述したとおりである。
【0058】
前記塗布は本発明で特に限定せず、公知の塗布またはコーティング方式であれば、いずれも可能である。一例として、ドクターブレード(Doctor blade)などを利用して均一に分散させる方法、ダイキャスティング(Die casting)、コンマコーティング(Comma coating)、スクリーンプリンティング(Screen printing)、減圧ろ過コーティング(vacuum filtration coating)などの方法などを挙げることができる。
【0059】
次に、前記(2)段階で前記バインダー層上にフリースタンディングフィルム型正極材を附着することで正極活物質層を形成してリチウム二次電池用正極を製造するようになる。
【0060】
この時、前記フリースタンディングフィルム型正極材は、(a)硫黄と多孔性炭素材を混合する段階;(b)前記(a)段階で製造された混合物を熱処理して硫黄‐炭素複合体を製造する段階;及び(c)前記(b)段階で製造された硫黄‐炭素複合体を容器に充填した後で加圧する段階を含む製造方法によって製造されたことである。
【0061】
一般に、前記硫黄は加圧条件で表面が溶融され、周辺の硫黄と結集する性質を示して成形は可能であるが、柔軟性がないため硫黄単独ではフリースタンディングフィルム形態の正極材を製造することができない。
【0062】
前記炭素は柔軟性はあるが、凝集力が足りないため、加圧時に成形自体にならず、フリースタンディングフィルム形態の正極材を製造することができない。
【0063】
一方、前記硫黄‐炭素複合体は硫黄と多孔性炭素材が複合されたもので、前記多孔性炭素材の外部表面にも硫黄が存在するので、加圧時に多孔性炭素材の外部表面に存在する硫黄が溶融されて周辺の硫黄‐炭素複合体と結集する性質を示して成形が可能であり、前記硫黄‐炭素複合体で骨格を形成する多孔性炭素材が柔軟性があるので、打ち抜きによるフリースタンディングフィルム形態の正極材への成形も可能である。
【0064】
したがって、本発明のリチウム二次電池用正極の製造方法は、前述したような加圧時に硫黄‐炭素複合体の特徴を利用した乾式工程によってフリースタンディングフィルム型正極材を製造する過程をさらに含む。
【0065】
以下、前記フリースタンディングフィルム型正極材の製造方法について各段階別に詳しく説明する。
【0066】
先ず、前記(a)段階では、硫黄‐炭素複合体を製造するための原料物質である硫黄と多孔性炭素材を混合した混合物を形成することができる。この時、前記硫黄と多孔性炭素材の種類及び適正重量範囲は上述したとおりである。
【0067】
次に、前記(b)段階では、前記(a)段階で形成された混合物を熱処理して硫黄‐炭素複合体を製造することができる。
【0068】
前記硫黄と多孔性炭素材の混合物を加熱すれば硫黄は液体状態に変わるようになって、液体状態の硫黄が多孔性炭素材の内部に入るか、表面にコーティングまたは附着されて硫黄が多孔性炭素材に担持または充填されるか、及び/またはコーティングされた硫黄‐炭素複合体が形成されることができる。例えば、前記多孔性炭素材が炭素ナノチューブの場合、液体状態の硫黄が毛細管現象を通じて炭素ナノチューブの内部に吸い込まれて硫黄が炭素ナノチューブに担持されることがある。
【0069】
前記熱処理は硫黄の融点以上で行われることができる。例えば、前記熱処理温度は130℃以上、140℃以上または150℃以上であり、160℃以下、165℃以下または170℃以下である。前記熱処理温度が130℃未満であれば、硫黄が溶けられず、多孔性炭素材に担持されるか、コーティングされた形態の複合体を形成しにくいことがあり、170℃超であれば硫黄‐炭素複合体が製造されることはできるが、硫黄の揮発が発生して硫黄の損失と製造装備の劣化を誘発することができる。
【0070】
また、前記熱処理時間は硫黄が熱処理によって溶けて多孔性炭素材に担持される程度の適正時間であれば可能であり、25分以上または30分以上可能で、40分以下、45分以下または50分以下可能である。
【0071】
次に、前記(c)段階では前記(b)段階で形成された硫黄‐炭素複合体を容器に充填した後、加圧してフリースタンディングフィルム形態の正極材を製造することができる。
【0072】
上述したように、硫黄‐炭素複合体は加圧状態で強い自体凝集力を示す特性がある。具体的に、加圧状態で前記硫黄‐炭素複合体の表面の硫黄が部分的に溶融されて複合体間の連結性を与え、強い自体凝集力を示すことができる。よって、粒子状態の硫黄‐炭素複合体に対して圧力をかけると、粒子の間に凝集力が発生し、また、炭素材は骨格の機能をして、それ自体で柔軟性を持つのでフリースタンディングフィルムが形成されるようになる。
【0073】
前記加圧時の圧力は、硫黄‐炭素複合体の間に凝集力が充分発生してフリースタンディングフィルムを形成するほどの圧力である。例えば、前記加圧時の圧力は0.8Mpa以上、0.9Mpa以上または1Mpa以上であって、5Mpa以下、8Mpa以下、10Mpa以下、13Mpa以下または15Mpa以下可能である。 前記加圧時の圧力が0.8Mpa未満であれば硫黄‐炭素複合体の間に凝集力が弱くてフリースタンディングフィルムが形成されないこともあり、15Mpa超であれば正極材の気孔率が低すぎて、これを含む正極の構造が崩れることがある。
【0074】
また、本発明は前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0075】
本発明によるリチウム二次電池は、正極;負極;これらの間に介在される電解質を含み、前記正極として本発明によるリチウム二次電池用正極を含む。
【0076】
前記正極は前述した内容にしたがい、前記フリースタンディングフィルム型正極材を正極活物質層に含んで、バインダー層を通じて前記正極活物質層と正極集電体を接合することを特徴とする。
【0077】
特に、本発明の正極は正極活物質層にバインダーや導電材が必要ない乾式工程によって製造されたフリースタンディングフィルム型正極材を含むことで既存電極対比もっと多量の硫黄をローディングすることができる。これによって、本発明で前記正極は硫黄のローディング量、すなわち正極内で正極活物質層の単位面積当たり硫黄の質量は3.0ないし5.0mAh/cmである。このように高い硫黄ローディング量を持つことによって本発明による正極を含むリチウム二次電池は優れる放電容量及び寿命特性を示すことができる。
【0078】
前記負極は負極集電体の少なくとも一面上に負極活物質を含む負極活物質層を形成するか、負極活物質層(例えば、リチウム板金、リチウム金属薄膜、リチウムホイル)を単独で使用することができる。
【0079】
前記負極集電体は負極活物質層の支持のためのもので、正極集電体で説明したとおりである。
【0080】
前記負極活物質層は負極活物質を含み、導電材、バインダーなどをさらに含むことができる。
【0081】
前記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0082】
前記リチウムイオン(Li)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコーンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0083】
好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0084】
前記負極活物質の形成方法は特に制限されず、当業界で通常使われる層または膜の形成方法を利用することができる。例えば、圧搾、コーティング、蒸着などの方法を利用することができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電によって板金上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0085】
前記導電材は負極活物質と電解質を電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が負極活物質まで移動する経路の役目をする物質として、導電性を持つものであれば制限されずに使用することができる。
【0086】
例えば、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super‐P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0087】
前記バインダーはバインダー層で説明したとおりである。
【0088】
前記電解質はリチウムイオンを含み、これを媒介にして正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を起こすためのものである。
【0089】
前記電解質はリチウム二次電池に通常使われたものなどが全て利用されることができる。
【0090】
例えば、前記電解質において、電解質として含まれることができるリチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常的に使われるものなどが制限さに使われることができ、例えば、前記リチウム円の陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN 及び(CFCFSOからなる群から選択されたいずれか一つである。具体的に、前記リチウム塩としては、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO(Lithium bis(perfluoroethylsulfonyl)imide、BETI), LiN(CFSO(Lithium bis(Trifluoromethanesulfonyl)imide、LiTFSI)、LiN(C2a+1SO)(C2b+1SO)(ただし、a及びbは自然数、好ましくは1≦a≦20で、1≦b≦20である)、リチウムポリ[4,4’‐(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノキシ]スルホニルイミド(lithium poly[4,4’‐(hexafluoroisopropylidene)diphenoxy]sulfonylimide、LiPHFIPSI)、LiCl、LiI、LiB(C、LiNOなどが使われることができるし、この中でもLiTFSI、BETIまたはLiPHFIPSIなどのようなスルホニル基‐含有イミドリチウム化合物がより好ましい。
【0091】
本発明で使われる電解質において、電解質に含まれる有機溶媒では、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどが制限されずに使われることができ、代表的に、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジオキソラン(DOL)、ジメチルスルファオキサイド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ‐ブチロラクトン、プロピレンスルファイト及びテトラハイドロフランからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらの中で2種以上の混合物などが代表的に使われることができる。特に、前記カーボネート系有機溶媒の中で環型カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度の有機溶媒として誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく使われることができ、このような環型カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線形カーボネートを適当な割合で混合して使用すれば、高い電気伝導率を持つ電解液を作ることができてもっと好ましく使われることができる。
【0092】
前記電解質は前述したリチウム塩と有機溶媒以外に添加剤として硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。
【0093】
このような硝酸または亜硝酸系化合物では本発明で特に限定しないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトラート、プロピルニトラート、ブチルニトラート、ペンチルニトラート、オクチルニトラートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは硝酸リチウムを使用する。
【0094】
前記正極と負極の間にはさらに分離膜が含まれることができる。
【0095】
前記分離膜は前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオン輸送ができるようにすることで多孔性非伝導性または絶縁性物質からなることができ、通常リチウム二次電池で分離膜に使われるものであれば、特に制限されずに使用可能である。このような分離膜はフィルムのような独立的な部材であって、正極及び/または負極に付加されたコーティング層である。
【0096】
前記分離膜では電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解質に対する含湿能力に優れるものが好ましい。
【0097】
前記分離膜は多孔性基材からなることができ、前記多孔性基材は通常二次電池に使われる多孔性基材であれば全て使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0098】
前記多孔性基材の材質では、本発明で特に限定せず、通常電気化学素子に使われる多孔性基材であれば、いずれも使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(Polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p‐phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0099】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmである。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述した範囲に限定されるものではないが、厚さが前述した下限より薄過ぎる場合は機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が損傷されやすい。
【0100】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔率も特に制限されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%である。
【0101】
前述したリチウム二次電池の形態は特に制限されず、例えば、ゼリー‐ロール型、スタック型、スタック‐フォールディング型(スタック‐Z‐フォールディング型を含む)、またはラミネーション‐スタック型であり、好ましくはスタック‐フォールディング型である。
【0102】
このような前記負極、分離膜及び正極が順次積層させて電解質を注入した電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後、キャッププレート及びがガスケットで密封して組立ててリチウム二次電池を製造することができる。
【0103】
この時、リチウム二次電池は使用する正極/負極の材質によってリチウム‐硫黄二次電池、リチウム‐空気電池、リチウム‐酸化物電池、リチウム全固体電池など多様な電池に分類可能であり、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているので詳細な説明は省略する。
【0104】
本発明において、リチウム二次電池は正極として硫黄‐炭素複合体を含むフリースタンディングフィルム形態の正極材を使用するので、リチウム‐硫黄二次電池である。前記リチウム‐硫黄二次電池は負極活物質でリチウム金属を使用することができる。リチウム‐硫黄二次電池の放電時に負極ではリチウムの酸化反応が起きて、正極では硫黄の還元反応が発生する。この時、還元された硫黄は負極から移動されたリチウムイオンと結合してリチウムポリスルフィドに変換され、最終的にリチウムスルフィドを形成する反応を伴う。
【0105】
また、本発明は前記リチウム二次電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0106】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源で使われることができる。
【0107】
前記中大型デバイスの例では、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグ‐インハイブリッド電気自動車(plug‐in hybrid electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0108】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0109】
製造例1:硫黄‐炭素複合体製造
硫黄(S)と炭素ナノチューブ(CNT)を固体状態で65:35の重量比で均一に混合した後、100rpmの条件で1時間ボールミーリングして混合物を製造した。
【0110】
前記混合物を155℃で35分間熱処理して硫黄をCNTの気孔内で担持及び表面にコーティングされるようにして硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)を製造した。この時、前記CNTは比表面積350m/gのものを使った。
【0111】
実施例及び比較例
[実施例1]
(1)リチウム二次電池用正極製造
前記製造例1の硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)をモールドに充填させた後、油圧プレスを利用して1MPaの圧力で加圧してフリースタンディングフィルム型正極材を製造した。
【0112】
20μm厚さのアルミニウム集電体上にリチウムポリアクリレートを単位面積当たり塗布量が0.5μg/cmになるように塗布してバインダー層を形成した。
【0113】
前記バインダー層が形成されたアルミニウム集電体上に前記フリースタンディングフィルム型正極材を接着させてリチウム二次電池用正極を製造した。
【0114】
(2)リチウム二次電池製造
前記(1)で製造したリチウム二次電池用正極と負極を対面するように位置させ、その間に厚さ20μm及び気孔率45%の多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解質70μlを注入してリチウム二次電池を製造した。
【0115】
この時、負極では厚さ150μmのリチウム金属薄膜を使用し、電解質ではテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)/ジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME)を1:1:1の体積比で混合した有機溶媒に1M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と0.1M濃度の硝酸リチウム(LiNO)を溶解させた混合駅を使用した。
【0116】
[実施例2]
リチウム二次電池用正極製造時、リチウムポリアクリレートの単位面積当たり塗布量を5μg/cmにしたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0117】
[実施例3]
リチウム二次電池用正極製造時、リチウムポリアクリレートの単位面積当たり塗布量を10μg/cmにしたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0118】
[実施例4]
リチウム二次電池用正極製造時、リチウムポリアクリレートの単位面積当たり塗布量を0.05μg/cmにしたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0119】
[実施例5]
リチウム二次電池用正極製造時、リチウムポリアクリレートの単位面積当たり塗布量を30μg/cmにしたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0120】
[比較例1]
前記製造例1の硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)、導電材及びバインダーを90:5:5の重量比で混合してスラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウム集電体上にコーティング後、乾燥及び圧延して正極を製造したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施した。
【0121】
この時、前記導電材は気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber;VGCF)を利用し、前記バインダーはスチレン‐ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber;SBR)を使った。
【0122】
[比較例2]
実施例1で製造されたフリースタンディングフィルム型正極材を正極で使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0123】
実験例1.正極物性評価
実施例で製造された正極に対し、バインダー層の接着力を測定した。
【0124】
具体的に、前記接着力は接着力測定機器(AMETEK社、LS1)を利用して測定し、この時得られた結果は表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
前記表1に示すように、実施例1ないし3の場合、バインダー層の単位面積当たり塗布量が増加するほどバインダー層の接着力は増加することを確認した。
【0127】
また、実施例4及び5を通じてバインダー層の単位面積当たり塗布量が一定範囲を脱する場合、正極活物質層であるフリースタンディングフィルム型正極材と正極集電体の間の接着力が低下されることが分かる。
【0128】
実験例2:電池性能評価
実施例1ないし3、比較例1及び比較例2で製作された電池に対して25℃で0.1C放電、0.1C充電して容量(Capacity、mAh)を測定し、充放電を繰り返して測定することで容量及び充電効率を測定し、その結果を表2、図1及びず2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
前記表2及び図1を参照すれば、乾式工程によって製造されたフリースタンディングフィルム型正極材を含み、少量のバインダー層を備える実施例1及び2の場合、湿式工程のスラリーを利用して製造された比較例1に比べて、より高い初期放電容量を示し、寿命特性も優れることを確認することができる。
【0131】
また、前記表2及び図2を通じてバインダー層の単位面積当たり塗布量が増加するほど高率退化が加速化されることが分かる。
図1
図2