(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】中空粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
B01J 13/14 20060101AFI20240729BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240729BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B01J13/14
C09D7/65
C09D133/14
(21)【出願番号】P 2023509183
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013070
(87)【国際公開番号】W WO2022202784
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021048074
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠吾
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-089648(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177006(WO,A1)
【文献】特開2009-035672(JP,A)
【文献】特開2017-226786(JP,A)
【文献】特開2007-216676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B01J 13/00-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、前記シェルで囲まれた中空部とを有する中空粒子であって、
前記シェルが、(メタ)アクリル系樹脂を含有し、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体及び/又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体を含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、複素環式アミン化合物に由来する重合体を含み、
前記中空粒子の平均粒子径が、10nm~150nmであり、
前記中空粒子の真球度が、0.90~1.0であり、
前記中空粒子の中空率が、35%~70%である、中空粒子。
【請求項2】
前記中空粒子の3%熱分解温度が、245℃以上である、請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
前記複素環式アミン化合物が、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン及びイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項
1又は2に記載の中空粒子。
【請求項4】
前記シェルが、無機成分を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の中空粒子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、分散液。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、コーティング剤。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、断熱フィルム。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、反射防止膜及び反射防止膜付基材。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、光取り出し膜及び光取り出し膜付基材。
【請求項10】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、低誘電率膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に空隙を有する粒子は、その空隙に各種の物質を内蔵させることによりマイクロカプセル粒子として使用されている。また、これらの内部に空隙を有する粒子は、中空粒子とも称され、光散乱材料、低反射材料、断熱材料、低誘電率材料等として使用されている。
【0003】
中空粒子としては、例えば、日本国特開2002-80503号公報(特許文献1)及び日本国特開2005-215315号公報(特許文献2)に、水系溶媒中でラジカル反応性単量体と、この単量体の重合体に対して相溶性の低い疎水性の有機溶媒とを含む油滴を調製した後、重合させることで得られた中空粒子が記載されている。
【0004】
また、日本国特開2010-84018号公報(特許文献3)には、エポキシ樹脂と反応性シランカップリング剤からなる有機-無機ハイブリッド中空粒子が記載されている。
【0005】
更に、日本国特開2017-61664号公報(特許文献4)には、エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる有機-無機ハイブリッド中空粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2002-80503号公報
【文献】日本国特開2005-215315号公報
【文献】日本国特開2010-84018号公報
【文献】日本国特開2017-61664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の中空粒子は、シェル表面から中空内部に貫通している細孔(ピンホール)が発生しやすいため、光学散乱材料、低反射材料等に使用した際に、所望の特性(光散乱性、低屈折率性等)が得られないという問題がある。
【0008】
更に、特許文献3及び4に記載の有機-無機ハイブリッド中空粒子においても、中空部を大きくすると潰れた形状の粒子が発生することがあり、光散乱材料、低反射材料等に使用した場合に十分な特性(光散乱性、低屈折率性等)が得られないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、シェルでのピンホールの発生を抑制でき、変形による中空部のつぶれを防止し得る中空粒子及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径及び真球度を特定の範囲に調整した中空粒子を開発するに成功し、当該中空粒子を用いることにより、上記課題を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0011】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
シェルと、前記シェルで囲まれた中空部とを有する中空粒子であって、
前記シェルが、(メタ)アクリル系樹脂を含有し、
前記中空粒子の平均粒子径が、10nm~150nmであり、
前記中空粒子の真球度が、0.90~1.0であり、
前記中空粒子の中空率が、35%~70%である、中空粒子。
項2.
前記中空粒子の3%熱分解温度が、245℃以上である、項1に記載の中空粒子。
項3.
前記(メタ)アクリル系樹脂が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体及び/又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体を含む、項1又は2に記載の中空粒子。
項4.
前記(メタ)アクリル系樹脂が、複素環式アミン化合物に由来する重合体を含む、項1~3のいずれか一項に記載の中空粒子。
項5.
前記複素環式アミン化合物が、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン及びイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である、項1~4のいずれか一項に記載の中空粒子。
項6.
前記シェルが、無機成分を含む、項1~5のいずれか一項に記載の中空粒子。
項7.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、分散液。
項8.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、コーティング剤。
項9.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、断熱フィルム。
項10.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、反射防止膜及び反射防止膜付基材。
項11.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、光取り出し膜及び光取り出し膜付基材。
項12.
項1~6のいずれか一項に記載の中空粒子を含む、低誘電率膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空粒子は、シェルでのピンホールの発生を抑制でき、変形による中空部のつぶれを防止することができる。本発明の中空粒子は、このような優れた特性を有することから、分散液、コーティング剤、断熱フィルム、反射防止膜、反射防止膜付基材、光取り出し膜、光取り出し膜付基材、低誘電率膜等の多方面の用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0015】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0017】
本明細書において、「A及び/又はB」とは、「A及びBの一方」又は「A及びBの両方」を意味し、具体的には、「A」、「B」、又は「A及びB」を意味する。
【0018】
本明細書において、室温とは、20℃~25℃の範囲内の温度を意味する。
【0019】
<中空粒子>
本発明の中空粒子は、以下の構成(i)~(v)を備えている:
(i)シェルと、該シェルで囲まれた中空部とを有する;
(ii)該シェルが、(メタ)アクリル系樹脂を含有する;
(iii)中空粒子の平均粒子径が、10nm~150nmである;
(iv)中空粒子の真球度が、0.90~1.0;及び
(v)中空粒子の中空率が、35%~70%である。
【0020】
本発明の中空粒子は、上記構成(i)~(v)を備えていることにより、シェルでのピンホールの発生を抑制でき、変形による中空部のつぶれを防止することができる。「変形による中空部のつぶれを防止」とは、中空粒子が真球を維持していることを意味する。
【0021】
<シェル及び中空部>
本発明の中空粒子は、(メタ)アクリル系樹脂を含有するシェルと、該シェルで囲まれた中空部とを有している。本発明は、(メタ)アクリル系樹脂を含有するシェルで中空部が包囲された構造を有する中空粒子である。本発明の中空粒子は、粒子内部が空洞構造を有している点に特徴がある。
【0022】
本発明において、シェルは(メタ)アクリル系樹脂を含有する。本発明の中空粒子は、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有し、該少なくとも一つ以上の層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。本発明の中空粒子は、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有し、該少なくとも一つ以上の層は、(メタ)アクリル系樹脂から構成されることがより好ましい。シェルを構成する層は、一つからなっていてもよく、二つ以上の複数層(例えば、二つの層、三つの層、四つの層等)からなっていてもよい。本発明において、シェル全体が(メタ)アクリル系樹脂から構成されていることが最も好ましい。
【0023】
<平均粒子径>
本発明の中空粒子は、10nm~150nmの平均粒子径を有している。本発明の中空粒子は、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nmの平均粒子径をとり得る。本発明において、中空粒子の平均粒子径は30nm~120nmであることがより好ましい。平均粒子径が10nm未満である場合、中空粒子同士の凝集が発生して、取扱い性に劣ることがある。平均粒子径が150nmを超える場合、中空粒子をコーティング剤、樹脂等と混練した際に、表面の凹凸や粒子界面での散乱が大きくなり、白化することがある。
【0024】
<真球度>
本発明の中空粒子は、0.90以上1.0以下の真球度を有している。本明細書において、真球度とは、中空粒子の最長径と最短径との比(最短径/最長径)を意味する。真球度が0.90未満である場合、中空粒子をコーティング剤、樹脂等と混練した際に、中空粒子が潰れやすくなるため、所望の特性(光散乱性、低屈折率性等)が得られないことがある。真球度が1.0を超える場合、中空粒子をコーティング剤、樹脂等と混練した際に、中空粒子が潰れやすくなるため、所望の特性(光散乱性、低屈折率性等)が得られないことがある。本発明において、中空粒子の真球度は、0.915、0.92、0.925、0.93、0.935、0.94、0.945、0.95、0.955、0.96、0.965、0.97、0.975、0.98、0.985、0.99及び0.995の値をとり得る。本発明において、中空粒子の真球度の下限は、好ましくは0.91より大きく(0.91超)、より好ましくは0.92以上、より一層好ましくは0.93以上である。中空粒子の真球度の上限は、特に限定されないが、工業的には0.999以下でもよい。
【0025】
<中空率>
本発明の中空粒子は、35%~70%の中空率を有する。本発明の中空粒子は、37%~65%の中空率を有することが好ましく、39%~63%の中空率を有することがより好ましく、41%~60%の中空率を有することが更に好ましい。本明細書において、中空率とは、中空粒子の体積に対する中空部の体積の割合を示したものを意味し、後述する実施例の項で説明する測定方法により得ることができる。中空率が35%~70%の範囲内であれば、シェルの強度が高い中空粒子を得ることができるため、光学散乱材料、低反射材料等に使用した際に、所望の特性(光散乱性、低屈折率性等)を得ることができる。
【0026】
<3%熱分解温度>
本明細書において、3%熱分解温度は、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で中空粒子を昇温した際に、中空粒子の質量減少率が3質量%となる時の温度(℃)を意味する。3%熱分解温度は、具体的には、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用いて、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で中空粒子を40℃から800℃まで昇温した際に、中空粒子の質量減少率が3質量%となる時の温度(℃)を意味する。3%熱分解温度の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0027】
本発明において、中空粒子の3%熱分解温度は、耐熱性向上の点から、好ましくは245℃以上、より好ましくは248℃以上、より一層好ましくは250℃以上、更に好ましくは252℃以上、特に好ましくは255℃以上である。本発明において、中空粒子の3%熱分解温度の上限は、通常600℃以下、好ましくは550℃以下、より好ましくは500℃以下、より一層好ましくは450℃以下である。
【0028】
<変動係数>
本発明の中空粒子は、単分散性の評価の指標である変動係数(CV値)が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがより一層好ましい。CV値が30%以下である場合、粗大な中空粒子が少なくなるため、バインダー中での分散性が向上する。CV値は、30%、25%、20%、15%、10%、5%、3%及び1%をとり得る。CV値の下限は、好ましくは0%である。
【0029】
<屈折率>
また、本発明の中空粒子のシェルの屈折率は1.57以下であることが好ましく、1.56以下であることがより好ましく、1.55以下であることがより一層好ましい。シェルの屈折率が1,57以下である場合、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に、優れた低屈折率化を達成することができる。中空粒子を低屈折率材料に使用する場合は、シェルの屈折率は低いほど好ましいため、下限は存在しない。
【0030】
<(メタ)アクリル系樹脂>
本発明の中空粒子のシェルは、(メタ)アクリル系樹脂を含有する。シェルは、本発明の効果を損なわない範囲において、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。
【0031】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系反応性単量体を反応させることにより得られる重合体である。上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系反応性単量体を反応させることにより得られる重合体に対して、更に架橋性単量体を添加して反応させることにより得られる架橋構造を有する重合体(「架橋重合体」とも称する)であることが好ましい。
【0032】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体及び/又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体を含むことが好ましい。言い換えれば、(メタ)アクリル系樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体及び/又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体を含むことがより好ましい。言い換えれば、(メタ)アクリル系樹脂は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体を含むことがより好ましい。エポキシ基又はオキセタン基は、アミノ基、カルボキシ基、クロロスルホン基、メルカプト基、水酸基、イソシアナート基等を有する化合物と反応して重合体を生成する官能基である。(メタ)アクリル系反応性単量体がエポキシ基又はオキセタン基を有することにより、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体をラジカル重合した後に、更にエポキシ基又はオキセタン基を架橋性単量体と反応させることにより、架橋構造を有する重合体(架橋重合体)を製造することができる。
【0033】
本発明の中空粒子を構成しているシェルは、無機成分を含むことが好ましい。上記(メタ)アクリル系樹脂は、更に、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体を含むことが好ましい。言い換えれば、(メタ)アクリル系樹脂は、更に、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系反応性単量体がシリル基を有することにより、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体をラジカル重合した後に、更にシリル基を架橋性単量体と反応させることにより、架橋構造を有する重合体(架橋重合体)を製造することができる。
【0034】
本発明において、(メタ)アクリル系樹脂は、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体と、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とからなる共重合体を構成成分とする重合体を含むことが好ましい。当該共重合体において、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体単位と、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体単位との割合(質量比)は、前者:後者=1:100~1:0.001までの範囲であることが好ましい。このような割合の範囲内であれば、シェルの強度が高い中空粒子を得ることができるため、光学散乱材料、低反射材料等に使用した際に、所望の特性(光散乱性、低屈折率性等)を得ることができる。当該共重合体において、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体単位と、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体単位とのより好ましい割合(質量比)は、前者:後者=1:10から1:0.001までの範囲であり、より一層好ましい割合(質量比)は、前者:後者=1:1から1:0.01までの範囲である。
【0035】
上記(メタ)アクリル系樹脂において、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体と、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との含有割合の合計は、(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する成分全体の10質量%以上であることが好ましい。当該含有量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%をとり得る。上記(メタ)アクリル系樹脂において、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体と、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との含有割合の合計は、(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する成分全体の30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましい。
【0036】
エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体の含有量は、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とシリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との合計100質量部に対して、50質量部~90質量部であることが好ましく、55~88質量部であることがより好ましく、60~85質量部であることがより好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体の含有量は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とシリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との合計100質量部に対して、50質量部~90質量部であることが好ましく、55~88質量部であることがより好ましく、60~85質量部であることがより好ましい。
【0037】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、窒素原子を含有する架橋性単量体に由来する重合体(窒素原子を含有する架橋性単量体に由来する構成単位を含有する重合体)を含むことが好ましく、アミン化合物に由来する重合体(アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体)を含むことがより好ましく、複素環式アミン化合物に由来する重合体(複素環式アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体)を含むことがより一層好ましい。上記(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系反応性単量体を重合して得た重合体を、更に、窒素原子を含有する架橋性単量体によって架橋することで、窒素原子を有する架橋重合体となる。
上記(メタ)アクリル系樹脂がアミン化合物に由来する重合体を含む場合、該アミン化合物の配合量は、中空粒子の耐熱性及び機械的強度を向上させる点から、(メタ)アクリル系反応性単量体の合計100質量部に対して、通常1質量部~45質量部、好ましくは5~42質量部、より好ましくは10~38質量部、より一層好ましくは15~35質量部、更に好ましくは20~32質量部、特に好ましくは22~30質量部である。
上記(メタ)アクリル系樹脂がアミン化合物に由来する重合体を含む場合、該アミン化合物の配合量は、中空粒子の耐熱性及び機械的強度を向上させる点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とシリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との合計100質量部に対して、通常1質量部~45質量部、好ましくは5~42質量部、より好ましくは10~38質量部、より一層好ましくは15~35質量部、更に好ましくは20~32質量部、特に好ましくは22~30質量部である。
上記(メタ)アクリル系樹脂が複素環式アミン化合物に由来する重合体を含む場合、該複素環式アミン化合物の配合量は、中空粒子の耐熱性及び機械的強度を向上させる点から、(メタ)アクリル系反応性単量体の合計100質量部に対して、通常1質量部~45質量部、好ましくは5~42質量部、より好ましくは10~38質量部、より一層好ましくは15~35質量部、更に好ましくは20~32質量部、特に好ましくは22~30質量部である。
上記(メタ)アクリル系樹脂が複素環式アミン化合物に由来する重合体を含む場合、該複素環式アミン化合物の配合量は、中空粒子の耐熱性及び機械的強度を向上させる点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とシリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との合計100質量部に対して、通常1質量部~45質量部、好ましくは5~42質量部、より好ましくは10~38質量部、より一層好ましくは15~35質量部、更に好ましくは20~32質量部、特に好ましくは22~30質量部である。
なお、本段落に記載の「複素環式アミン化合物」の具体例としては、後述する<複素環式アミン化合物>の項で説明する複素環式アミン化合物が挙げられる。
【0038】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、ケイ素成分を含有する有機-無機ハイブリッド樹脂(Si含有樹脂)であることが好ましい。本明細書において、本明細書において、「有機-無機」とは、ケイ素が無機成分とし、ケイ素以外の成分が有機成分であることを意味する。
【0039】
中空粒子のシェルにおける(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、中空粒子のシェル100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましく、50~100質量部であることがより一層好ましく、75~100質量部であることが更に好ましく、90~100質量部であることが特に好ましく、99~100質量部であることが最も好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、中空粒子のシェル100質量部に対して、5質量部以上であることにより、断熱塗料作製のために用いられる有機系のバインダーへの分散性が向上し、塗膜の白化を防ぐことが可能になる。
【0040】
<(メタ)アクリル系反応性単量体>
(メタ)アクリル系反応性単量体は、(メタ)アクリル系反応性官能基を有する。上記(メタ)アクリル系反応性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのエステルは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記(メタ)アクリル系反応性単量体は、(メタ)アクリル系反応性官能基と非(メタ)アクリル系反応性官能基とを有する反応性単量体であることが好ましい。(メタ)アクリル系反応性官能基と非(メタ)アクリル系反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製することができる。この重合体粒子に残存する他方の官能基と架橋性単量体とを反応させることにより、この重合体粒子は架橋構造を有する重合体(架橋重合体)となる。
【0043】
上記のように架橋させる前に、非反応性溶媒を、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより重合体粒子中に含有させ、その後に架上記架橋反応を行うことにより、この重合体と非反応性溶媒とが相分離し、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子が得られる。
【0044】
上記(メタ)アクリル系反応性単量体は、エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体であることが好ましい。エポキシ基又はオキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、グリシジル(メタ)アクリレートは、グリシジルメタクリレート(メタクリル酸グリシジル)及びグリシジルアクリレート(アクリル酸グリシジル)を意味する。
【0045】
上記(メタ)アクリル系反応性単量体は、シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体であることが好ましい。シリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
<架橋性単量体>
上記架橋性単量体は、窒素原子を含有する架橋性単量体が好ましい。窒素原子を含有する架橋性単量体としては、アミン化合物が好ましい。
【0047】
上記アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物が挙げられる。本発明において、アミン化合物として、脂肪族アミン化合物を単独で使用しないこと及び該脂肪族アミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物を併用すること、又は、複素環式アミン化合物のみを使用することが好ましい。本発明において、アミン化合物として、複素環式アミン化合物のみを使用することがより好ましい。本発明において、アミン化合物として、シクロ環含有アミン化合物を単独で使用しないこと及び該シクロ環含有アミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、シクロ環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物を併用することが可能である。本発明において、アミン化合物として、分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物を単独で使用しないこと及び該ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、アミン化合物として、芳香環含有アミン化合物を単独で使用しないこと及び該芳香環含有アミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、芳香環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物を併用することが可能である。
【0048】
<脂肪族アミン化合物>
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト等が挙げられる。これらの脂肪族アミン化合物は、単独で使用しないこと及び2種以上を組み合わせて使用しないことが好ましい。
本発明において、脂肪族アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びテトラエチレンペンタミンを使用しないことがより好ましい。本発明において、脂肪族アミン化合物は、単独で使用しないこと及び2種以上を組み合わせて使用しないことが好ましいが、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物を併用して使用することは好ましい。本発明において、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物を併用する場合、脂肪族アミン化合物として、プロピレンジアミンを使用することが好ましい。この場合、複素環式アミン化合物としては、後述する<複素環式アミン化合物>の項で説明する複素環式アミン化合物を使用することが好ましい。
【0049】
<シクロ環含有アミン化合物>
上記シクロ環含有アミン化合物としては、例えば、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、p-メンタン-1,8-ジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等が挙げられる。これらのシクロ環含有アミン化合物は、単独で使用しないこと及び2種以上を組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、シクロ環含有アミン化合物としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを使用しないことがより好ましい。
【0050】
<複素環式アミン化合物>
上記複素環式アミン化合物としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、キヌクリジン(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピロール、ピラゾール、ピリジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-1,3,5-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる。これらの複素環式アミン化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの複素環式アミン化合物の中でも、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン及びイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ピペラジン、N-メチルピペラジン及びN-アミノエチルピペラジンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0051】
<分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物>
上記分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられる。これらの分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物は、単独で使用しないこと及び該分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。
【0052】
<芳香環含有アミン化合物>
芳香環含有アミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジエチルトルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、α-メチルベンジルメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。これらの芳香環含有アミン化合物は、単独で使用しないこと及び該芳香環含有アミン化合物同士を2種以上組み合わせて使用しないことが好ましい。本発明において、芳香環含有アミン化合物としては、m-キシリレンジアミンを使用しないことがより好ましい。
【0053】
本発明において、アミン化合物としては、中空粒子の耐熱性及び機械的強度をより向上させる観点から、上記脂肪族アミン化合物及び上記複素環式アミン化合物を併用することが好ましい。アミン化合物としては、中空粒子の耐熱性及び機械的強度をより一層向上させる観点から、上記複素環式アミン化合物のみを使用することがより好ましい。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル系樹脂が、
(i)脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する重合体;
(ii)シクロ環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する重合体;
(iii)芳香環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する重合体;並びに
(iv)複素環式アミン化合物のみに由来する重合体;
からなる群より選択される少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。
言い換えれば、本発明の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル系樹脂が、
(i)脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体;
(ii)シクロ環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体;
(iii)芳香環含有アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体;並びに
(iv)複素環式アミン化合物のみに由来する構成単位を含有する重合体;
からなる群より選択される少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。
上記本発明の好ましい実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂は、更に、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体[エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体]、及び/又は、オキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体[オキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体]を含むことがより好ましい。
上記本発明の好ましい実施形態において、脂肪族アミン化合物として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びテトラエチレンペンタミンを除くことがより好ましい。
上記本発明の好ましい実施形態において、シクロ環含有アミン化合物として、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを除くことがより好ましい。
上記本発明の好ましい実施形態において、芳香環含有アミン化合物として、m-キシリレンジアミンを除くことがより好ましい。
上記本発明の好ましい実施形態において、複素環式アミン化合物は、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン及びイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、ピペラジン、N-メチルピペラジン及びN-アミノエチルピペラジンからなる群より選択される少なくとも一種がより一層好ましい。
【0055】
本発明のより好ましい実施形態では、(メタ)アクリル系樹脂が、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する重合体、及び/又は、複素環式アミン化合物のみに由来する重合体を含むことがより好ましい。言い換えれば、本発明のより好ましい実施形態では、(メタ)アクリル系樹脂が、脂肪族アミン化合物及び複素環式アミン化合物に由来する構成単位を含有する重合体、及び/又は、複素環式アミン化合物のみに由来する構成単位を含有する重合体を含むことがより好ましい。
上記本発明のより好ましい実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂は、更に、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体[エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体]、及び/又は、オキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する重合体[オキセタン基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体に由来する構成単位を含有する重合体]を含むことがより一層好ましい。
上記本発明のより好ましい実施形態において、脂肪族アミン化合物として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びテトラエチレンペンタミンを除くことがより一層好ましい。
上記本発明のより好ましい実施形態において、シクロ環含有アミン化合物として、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを除くことがより一層好ましい。
上記本発明のより好ましい実施形態において、芳香環含有アミン化合物として、m-キシリレンジアミンを除くことがより一層好ましい。
上記本発明のより好ましい実施形態において、複素環式アミン化合物は、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン及びイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種がより一層好ましく、ピペラジン、N-メチルピペラジン及びN-アミノエチルピペラジンからなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましい。
【0056】
<表面処理剤>
本発明の中空粒子は、少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有していてもよい。この化合物で表面処理された表面は、耐熱性、有機溶媒中での分散性、低分子のバインダー成分が中空内部に侵入しにくくなるという性質を中空粒子に付与する。
【0057】
アニオン性基を有する化合物としては、塩酸、有機二酸無水物、オキソ酸(例えば、硝酸、燐酸、硫酸、炭酸のような無機酸;カルボン酸化合物、硫酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等の有機酸;が挙げられる)から選択される。アニオン性基を有する化合物としては、リン原子及び/又は硫黄原子を構成成分として含む化合物が好ましい。
【0058】
カルボン酸化合物としては、カルボキシ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸等を挙げることができる。これらの中で有機溶媒中での分散性を効果的に高めるためには、炭素数4~20の直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸等が好ましい。
【0059】
また、カルボン酸化合物としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有するカルボン酸も使用できる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0060】
硫酸のアルキルエステル化合物としては、例えば、ドデシル硫酸等が挙げられる。
【0061】
スルホン酸化合物としては、スルホ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0062】
リン酸エステル化合物は、リン酸のエステル化合物で有れば特に限定されない。例えば、ドデシルリン酸、下記一般式(a)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸がある。
【0063】
【0064】
上記式(a)中、R1は、炭素数4~19のアルキル基、アリル基(CH2=CHCH2-)、(メタ)アクリル基、又はスチリル基である。炭素数4~19のアルキル基としてはブチル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状でも、分岐状であってもよい。
R2は、H又はCH3である。
nは、アルキレンオキサイドの付加モル数であり、全体を1モルとした場合、0~30の付加モル数を与えるのに必要な範囲の数値である。
aとbとの組み合わせは、1と2又は2と1の組み合わせである。
【0065】
リン酸エステル化合物としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、日本化薬社の「KAYAMER PM-21」等も使用することができる。
【0066】
また、オキソ酸としては、酸基を有する重合体も使用することができる。例えば、ディスパービック103、ディスパービック110、ディスパービック118、ディスパービック111、ディスパービック190、ディスパービック194N、ディスパービック2015(以上ビックケミー社製)、ソルスパース3000、ソルスパース21000、ソルスパース26000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース43000、ソルスパース44000、ソルスパース46000、ソルスパース47000、ソルスパース53095、ソルスパース55000(以上ルーブリゾール社製)、EFKA4401、EFKA4550(エフカアディティブズ社製)、フローレンG-600、フローレンG-700、フローレンG-900、フローレンGW-1500、フローレンGW-1640(以上共栄社化学社製)、ディスパロン1210、ディスパロン1220、ディスパロン2100、ディスパロン2150、ディスパロン2200、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375(楠本化成製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881、アジスパーPN411、アジスパーPN411(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、本発明の中空粒子は、必要に応じて、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等で表面処理を行ってもよい。
【0068】
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;
クロロトリメチルシラン等のクロロシラン;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
上記シラン系カップリング剤以外に、下記一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤も挙げられる。
【0070】
【0071】
上記式(I)中、R1は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R3は、炭素数1~30の2価の有機基を表す。
R4は、水素原子又はメチル基を表す。
mは0~2の整数を表す。
R1及びR2中、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。これらアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。
R1及びR2中、炭素数2~4のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、メトキシブチル、エトキシエチル、ブトキシメチルが挙げられる。これらアルコキシアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。 R1及びR2の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニル基等が挙げられる。
R3中、炭素数1~30の2価の有機基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン等のアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基は、アルキル基で置換された分岐構造を有していてもよい。
【0072】
上記一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤の具体例を以下に示す。
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、
4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、
4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、
4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、
5-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、
5-(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、
5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、
5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、
6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、
6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、
6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、
6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、
7-(メタ)アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、
7-(メタ)アクリロキシヘプチルトリエトキシシラン、
7-(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジメトキシシラン、
7-(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジエトキシシラン、
8-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、
8-(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシラン、
8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジメトキシシラン、
8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジエトキシシラン、
9-(メタ)アクリロキシノニルトリメトキシシラン、
9-(メタ)アクリロキシノニルトリエトキシシラン、
9-(メタ)アクリロキシノニルメチルジメトキシシラン、
9-(メタ)アクリロキシノニルメチルジエトキシシラン、
10-(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、
10-(メタ)アクリロキシデシルトリエトキシシラン、
10-(メタ)アクリロキシデシルメチルジメトキシシラン、
10-(メタ)アクリロキシデシルメチルジエトキシシラン、
11-(メタ)アクリロキシウンデシルトリメトキシシラン、
11-(メタ)アクリロキシウンデシルトリエトキシシラン、
11-(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジメトキシシラン、
11-(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジエトキシシラン、
12-(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、
12-(メタ)アクリロキシドデシルトリエトキシシラン、
12-(メタ)アクリロキシドデシルメチルジメトキシシラン、
12-(メタ)アクリロキシドデシルメチルジエトキシシラン、
13-(メタ)アクリロキシトリデシルトリメトキシシラン、
13-(メタ)アクリロキシトリデシルトリエトキシシラン、
13-(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジメトキシシラン、
13-(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジエトキシシラン、
14-(メタ)アクリロキシテトラデシルトリメトキシシラン、
14-(メタ)アクリロキシテトラデシルトリエトキシシラン、
14-(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジメトキシシラン、
14-(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジエトキシシラン。
【0073】
シラン系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。なお、シラン系カップリング剤は、例えば、信越シリコーン社のようなシリコーン製造メーカーから入手し得る。 上記シラン系カップリング剤の中でも、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0074】
上記チタネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA、プレンアクトETが挙げられるが、チタネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
【0075】
上記アルミネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトAL-Mが挙げられるが、アルミネート系カップリング剤はこれに限定されるものではない。
【0076】
上記ジルコネート系カップリング剤としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスZA-45、オルガチックスZA-65、オルガチックスZC-150、オルガチックスZC-540、オルガチックスZC-700、オルガチックスZC-580、オルガチックスZC-200、オルガチックスZC-320、オルガチックスZC-126、オルガチックスZC-300が挙げられるが、ジルコネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
【0077】
上記イソシアネート系化合物としては、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert―ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられるが、イソシアネート系化合物はこれらに限定されるものではない。
【0078】
また、本発明の中空粒子は、必要に応じてα,β-不飽和カルボニル化合物で表面処理を行ってもよい。上記α,β-不飽和カルボニル化合物としては、反応性が制御しやすいため、(メタ)アクリル酸エステル系化合物が好ましい。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステル系化合物としては、モノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、ジ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、トリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0080】
本発明の中空粒子の表面処理剤として、ジ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、トリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物、又はポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物を用いることで、上記架橋重合体にアクリロイル基を導入することができ、必要に応じてこの(メタ)アクリロイル基に更に化合物を反応させることで、本発明の中空粒子に更なる特性を付与することが可能となる。
【0081】
モノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物としては、特に限定されないが、グリコール(メタ)アクリレート系化合物が好適である。グリコール(メタ)アクリレート系化合物を中空粒子の表面処理に用いることで、中空粒子のバインダー中での分散性を更に向上させることができる。
【0082】
グリコール(メタ)アクリレート系化合物としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
ジ(メタ)アクリル酸エステル系化合物及びトリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
上記表面処理剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
<他の添加物>
本発明の効果を損なわない範囲において、本発明の中空粒子は、顔料粒子(顔料)、染料、安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等の添加物を含有していてもよい。
【0086】
顔料粒子としては、当該技術分野で用いられる顔料粒子であれば特に限定されない。例えば、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料;鉛丹、黄鉛等の酸化鉛系顔料;チタンホワイト(ルチル型酸化チタン)、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料;酸化コバルト;亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料;モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等の粒子が挙げられる。顔料粒子は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
<中空粒子の用途>
本発明の中空粒子は、pH変動耐性や分散性の向上が望まれている用途である塗料、紙、情報記録紙、光拡散フィルム(光学シート)、断熱フィルム、熱電変換材料、導光板インク、反射防止膜、光取出し膜等に用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤;光拡散板、導光板等の成形体形成用のマスターペレットの添加剤;化粧料の添加剤として有用である。
【0088】
<コーティング剤>
本発明のコーティング剤は、少なくとも上記中空粒子を含有する。コーティング剤は任意のバインダーを含んでいてもよい。
【0089】
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられ、より具体的には、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、バインダー樹脂は、1つの反応性単量体単独重合体であってもよいし、複数のモノマーの共重合体であってもよい。
【0090】
上記バインダーに用いる反応性単量体としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステル等の単官能性反応性単量体;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性反応性単量体;
が挙げられる。
【0091】
また、これらの反応性単量体を使用する際は電離放射線により硬化反応を開始させる重合開始剤を用いてもよい。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0092】
また、バインダーとしては、例えばケイ素アルコキシドの加水分解物等の無機系バインダーを使用することもできる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランが挙げられる。
【0093】
公知のバインダー製品として、例えば、三菱レイヨン社製のダイヤナールLR-102やダイヤナールBR-106等が挙げられる。
【0094】
コーティング剤中の中空粒子の含有量は、使用する用途によって適宜調整されるが、バインダー100質量部に対して、0.1~1000質量部の範囲で使用できる。
【0095】
コーティング剤には、通常分散媒体が含まれる。分散媒体としては水性及び油性の媒体のいずれもが使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール系溶剤が挙げられる。
【0096】
更に、コーティング剤には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0097】
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。例えば、光学用途では、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材が使用される。
【0098】
<マスターペレット>
マスターペレットは、上記中空粒子と基材樹脂とを含む。
基材樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。透明性が求められる場合には(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基材樹脂は、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量含んでいてもよい。
【0099】
マスターペレットは、上記中空粒子と基材樹脂とを溶融混練して、押出成形、射出成形等の成形方法により製造できる。マスターペレットにおける上記中空粒子の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは0.1~60重量%程度、より好ましくは0.3~30重量%程度、より一層好ましくは0.4~10重量%程度である。
【0100】
マスターペレットは、例えば押出成形、射出成形又はプレス成形することにより成形体となる。また、成形の際に基材樹脂を新たに添加してもよい。基材樹脂の添加量は最終的に得られる成形体に含まれる中空粒子の配合割合が0.1~60重量%程度となるように添加するのがよい。なお、成形時には、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量添加してもよい。
【0101】
<化粧料>
本発明の中空粒子を配合しうる具体的な化粧料としては、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料、化粧水、乳液、クリーム、ボディーローション等の液状化粧料等が挙げられる。
【0102】
これらの化粧料へ中空粒子の配合割合は、化粧料の種類によっても異なる。例えば、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料の場合は、1~20重量%が好ましく、3~15重量%がより好ましい。また、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料の場合は、1~20重量%が好ましく、3~15重量%がより好ましい。更に、化粧水、乳液、クリームやリキッドファンデーション、ボディーローション、プレシェーブローション等の液状化粧料の場合は、1~15重量%が好ましく、3~10重量%がより好ましい。
【0103】
また、これらの化粧料には、光学的な機能の向上や触感の向上のため、マイカ、タルク等の無機化合物、酸化鉄、酸化チタン、群青、紺青、カーボンブラック等の着色用顔料、又はアゾ系等の合成染料等を添加できる。液状化粧料の場合、液状の媒体として、特には限定されないが、水、アルコール、炭化水素、シリコーンオイル、植物性又は動物性油脂等を用いることもできる。これらの化粧料には、上記他の成分以外に、化粧品に一般的に用いられる保湿剤、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、香料等を添加することにより、各種機能を追加することもできる。
【0104】
<反射防止膜>
本発明の反射防止膜は、少なくとも上記中空粒子を含有する。上記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子の中空部にある空気層により屈折率が低下するため、反射防止膜として使用できる。また、上記中空粒子は高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する反射防止膜が得られる。上記反射防止膜は上記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0105】
<反射防止膜付き基材>
本発明の反射防止膜付き基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に上記の反射防止膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、反射防止膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0106】
<光取り出し膜>
本発明の光取出し膜は、少なくとも上記中空粒子を含有する。LEDや有機EL照明は、空気層と発光層の屈折率差が大きいため、発光した光が素子内部に閉じ込められやすい。そのため、発光効率を向上させる目的に光取出し膜が使用されている。上記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子の中空部にある空気層により屈折率が低下するため、光取出し膜として使用することが可能である。また、上記中空粒子が高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する光取出し膜が得られる。上記光取出し膜は上記コーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0107】
<光取り出し膜付き基材>
本発明の光取出し膜付き基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前述の光取出し膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、光取出し膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0108】
<断熱フィルム>
本発明の断熱フィルムは、少なくとも上記中空粒子を含有する。上記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子の中空部に空気層を有するため、断熱フィルムとして使用できる。また、上記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い断熱フィルムが得られ、バインダーが中空部に侵入しにくいため高い断熱性を有する断熱フィルムが得られやすい。上記断熱フィルムは上記コーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0109】
<低誘電率膜>
本発明の低誘電率膜は、少なくとも上記中空粒子を含有する。上記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子の中空部に空気層を有するため、低誘電率膜として使用できる。また、上記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い低誘電率膜が得られやすい。上記低誘電率膜は上記コーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0110】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも上記中空粒子を含有する。上記中空粒子を含有する感光性樹脂組成物は、中空粒子の中空部に空気層を有するため、低屈折率の感光性樹脂組成物が得られる。また、上記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い感光性樹脂組成物が得られやすい。上記感光性樹脂組成物は上記コーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0111】
<中空粒子の製造方法>
本発明の中空粒子は、例えば、非反応性溶媒を含有する重合体粒子を作製する工程(重合工程)と、重合体粒子から非反応性溶媒を相分離させる工程(相分離工程)と、非反応性溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)を経ることにより製造できる。
【0112】
中空粒子の製造方法としては、反応性単量体を反応させることで重合工程と相分離工程とを同時に行う方法でも、非反応性溶媒の相分離前に、一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせる方法でもよい。一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせる方法を用いることが、ピンホールの発生を抑制でき、かつ単分散性を向上できるため好ましい。
【0113】
非反応性溶媒の相分離前に、一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせる方法においては、具体的には、(メタ)アクリル系反応性官能基と非(メタ)アクリル系反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。次いで、上記両官能基のうち残存する他方の官能基による重合により、重合体と非反応性溶媒とが相分離することで、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子が得られる。
【0114】
上記のように、重合工程と相分離工程とを分けることで、
・従来の製造方法で存在していたシェルの重合体間の隙間が存在しなくなり、得られる中空粒子のシェルにおけるピンホールの発生を抑制できる
・マイクロカプセル粒子や中空粒子の形状が油滴に依存せず、相分離前の重合体粒子の形状や粒度分布に依存するため、単分散性の高いマイクロカプセル粒子や中空粒子が得られやすい
という利点を有する。以下、この製造方法について説明する。
【0115】
(A)重合工程
重合工程では、(メタ)アクリル系反応性官能基と非(メタ)アクリル系反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。
【0116】
(a)重合体粒子の作製方法
重合体粒子の作製方法としては、塊状重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法の中から、任意の方法を採用できる。その中でも、重合体粒子を比較的簡便に作製できる懸濁重合法、乳化重合法が好ましい。更に、単分散性の高い重合体粒子が得られやすい乳化重合法がより好ましい。
【0117】
<重合開始剤>
重合させるにあたっては、重合反応の対象とする官能基を反応させるための化合物を添加することが好ましい。(メタ)アクリル系反応性官能基を重合させる場合、この化合物には重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert-ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸tert-ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(2,2-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルカプロニトリル)、2,2-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチル-4-エトキシバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチル-4-n-ブトキシバレロニトリル)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピネート)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピネート)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4-アゾビス(4-シアノバレリン酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
また、上記の過硫酸塩類及び有機過酸化物類の重合開始剤と、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸及びその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を重合開始剤として使用してもよい。
【0119】
乳化重合である場合、重合開始剤は、水溶媒下で乳化重合が可能な水溶性の重合開始剤であることが好ましい。水溶性の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス{2-メチル-N-[1、1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化化合物;等が挙げられる。
【0120】
上記重合体粒子は、先に(メタ)アクリル系反応性官能基に基づいて重合させることで、重合体粒子中に未反応の非(メタ)アクリル系反応性官能基を有することが好ましい。先に非(メタ)アクリル系反応性官能基に基づいて重合させると、非反応性溶媒が吸収しにくくなる場合がある。
【0121】
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤を、反応性単量体の重合時に使用してもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、tert-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;α-メチルスチレンダイマー、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量の上限は、反応性単量体100質量部に対して、10質量部である。
【0122】
<界面活性剤>
界面活性剤を、反応性単量体の重合時に使用してもよい。界面活性剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の界面活性剤を広く採用することができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの界面活性剤の中でも、アニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤の使用量の上限は、反応性単量体100質量部に対して、5質量部である。
【0123】
アニオン性界面活性剤としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」を使用することができる。
【0124】
<分散助剤>
重合体粒子の作製する際に、(メタ)アクリル系反応性単量体以外のその他の反応性単量体として、親水性モノマーを使用してもよい。親水性モノマーは、分散助剤としての役割を果たすため、親水性モノマーを使用することにより、重合時の分散安定性を高めることができる。親水性モノマーの種類は特に限定されず、例えば、公知の親水性モノマーを広く採用することができる。親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩;スルホン基含有ビニル系モノマー及びビニル系硫酸モノエステル化物、並びにこれらの塩;リン酸基含有ビニル系モノマー及びその塩;ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー;含窒素ビニル系モノマー等が挙げられる。これらの親水性モノマーは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
カルボキシル基含有ビニル系モノマーとしては、例えば、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸及びこれらの塩等が挙げられる。これらの塩としては、例えば、上記カルボキシル基含有ビニル系モノマーのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。上記カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
スルホン基含有ビニル系モノマー及びビニル系硫酸モノエステル化物としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2-ジメチルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-(メタ)アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキル(炭素数3~18)アリルスルホコハク酸、ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン及びブチレン等:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5~15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等]並びにこれらの塩等が挙げられる。これらの塩としては、例えば、上記スルホン基含有ビニル系モノマー及びビニル系硫酸モノエステル化物のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。上記スルホン基含有ビニル系モノマー及びビニル系硫酸モノエステル化物、並びにこれらの塩は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記スルホン基含有ビニル系モノマー及びビニル系硫酸モノエステル化物、並びにこれらの塩の中でも、重合時の分散安定性をより一層高めることができる観点から、p-スチレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0127】
リン酸基含有ビニル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート等及びこれらの塩等が挙げられる。これらの塩としては、例えば、上記リン酸基含有ビニル系モノマーのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。上記リン酸基含有ビニル系モノマー及びその塩は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び(メタ)アリルアルコール等が挙げられる。上記ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
含窒素ビニル系モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミン基含有ビニル系モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド及びジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等が挙げられる。
【0130】
(b)非反応性溶媒の吸収
上記重合体粒子への非反応性溶媒の吸収は、上記重合体粒子の製造時又は製造後に行うことができる。また、非反応性溶媒の吸収は、非反応性溶媒と相溶しない分散媒の存在下又は非存在下で行うことができる。分散媒の存在下で行う方が、非反応性溶媒の吸収を効率よく行うことができるので好ましい。重合体粒子の製造方法が媒体を使用する場合、その媒体を分散媒としてそのまま使用してもよく、一旦、重合体粒子をその媒体から単離した後、別の分散媒に分散してもよい。
【0131】
上記重合体粒子を含む分散媒には、分散媒に相溶しない非反応性溶媒が添加され、一定時間撹拌等を行うことで重合体粒子に非反応性溶媒を吸収させることができる。
【0132】
上記重合体粒子の製造時での非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の作製に適切な分散媒と非反応性溶媒を選定することで実現できる。例えば、水溶媒下で重合体粒子を乳化重合で作製する場合、水に相溶しない非反応性溶媒を事前に水溶媒に添加しておき、反応性単量体を重合させることで、重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うことができる。重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うと、非反応性溶媒の吸収にかかる時間を削減できる。
【0133】
<分散媒>
分散媒としては、上記重合体粒子を完全に溶解させない液状物であれば特に限定されない。例えば、イオン交換水;エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらの分散媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
<非反応性溶媒>
非反応性溶媒としては、分散媒に相溶しない液状物であれば特に限定されない。ここで分散媒に相溶しないとは、非反応性溶媒の分散媒への溶解度(25℃時)が10重量%以下のことである。例えば分散媒としてイオン交換水を使用した場合、使用できる非反応性溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4-ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの非反応性溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0135】
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、重合体粒子100質量部に対して、20~5000質量部である。20質量部未満であると、得られるマクロカプセル粒子や中空粒子の中空部が小さくなり、所望の特性が得られない場合がある。5000質量部を超えると、中空部が大きくなりすぎて得られるマイクロカプセル粒子や中空粒子の強度が低下する場合がある。
【0136】
(B)相分離工程
重合工程の次に、残存する反応性官能基を重合させて、重合体と非反応性溶媒とを相分離させる。相分離により、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。なお、本明細書において、中空粒子における中空とは、中空部に空気が存在する場合に限定されるものではなく、中空部に空気以外の気体が存在する場合も包含する。また、本明細書において、中空粒子とは、中空部に気体が存在する中空粒子に限定されるものではなく、非反応性溶媒や他の分散媒体が中空部に存在しているマイクロカプセル粒子も含む。
【0137】
残存する反応性官能基を重合させるために添加する化合物は、上記重合工程に記載した、(メタ)アクリル系反応性官能基を重合させるための重合開始剤、非(メタ)アクリル系反応性官能基を重合させるための架橋剤(架橋性単量体)と同じものを使用できる。
【0138】
(C)溶媒除去(置換)工程
本発明の中空粒子は、必要に応じてマイクロカプセル粒子に内包された非反応性溶媒を除去又は置換することで、中空部に空気等の気体や他の溶媒が存在する中空粒子とすることができる。非反応性溶媒の除去方法としては特に限定されないが、減圧乾燥法等が挙げられる。減圧乾燥法の条件は、例えば、500Pa以下の圧力、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。また、非反応性溶媒を溶媒置換操作によって置換することもできる。この操作としては、例えば、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子又は、それらの分散液に、適当な分散媒体に加え、撹拌等を行うことで粒子内部の非反応性溶媒を分散媒体に置換させ、その後余分な非反応性溶媒と分散媒体を減圧乾燥法や遠心分離法、限外ろ過法等により除去する操作が挙げられる。溶媒置換操作は一回のみ実施しても複数回実施してもよい。
【0139】
(D)表面処理工程
上記相分離工程後の中空粒子分散液、上記溶媒置換工程後の中空粒子分散液、又は上記溶媒除去工程後の中空粒子を溶媒に分散させた中空粒子分散液に対し、上記表面処理剤を添加し撹拌することで表面処理を行ってもよい。
【0140】
本発明の中空粒子は、必要に応じて中空粒子の分散液から溶媒を除去し乾燥させ、乾燥粉体として使用してもよい。中空粒子の乾燥方法としては特に限定されないが、減圧乾燥法等が挙げられる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。まず、実施例で行った各種測定の方法を説明する。
【0142】
<平均粒子径、真球度>
中空粒子分散液を90℃の真空乾燥機で4時間乾燥した後にスパチュラで押し潰して乾燥粉体を得た。中空粒子をコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製)に振り掛けた後に、オスミウム染色を行い、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製の「H-7600」)を用いて、加速電圧80kVの条件下、倍率約3万倍でTEM写真を撮影した。この写真に撮影された任意の30個の粒子の最長径と最短径とをそれぞれ観察した。この時、任意の30個の粒子それぞれの最長径と最短径とを測定し、その平均値[(最長径+最短径)/2]を各粒子の粒子径とした。そして、これら30個の粒子の粒子径の平均値を、中空粒子の平均粒子径とした。
真球度は、中空粒子の最長径と最短径との比(最短径/最長径)として定義した。具体的には、任意の30個の粒子それぞれの最長径と最短径とを測定し、任意の30個の粒子それぞれについて最長径と最短径との比(最短径/最長径)を求め、当該比率の平均値を真球度とした。
【0143】
<中空率>
ガラス瓶に10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液0.2g、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(東亞合成社製、ARUFON UC-3510 分子量2000程度)0.98g、メタノール0.5gを正確に計量し、超音波洗浄器を用いて均一に混合した。次に、中空粒子分散液を90℃の真空乾燥機で16時間乾燥し、系内に含まれるイソプロピルアルコール及びメタノールを揮発させ完全に除去した。得られた中空粒子を含有するアクリル系ポリマーの屈折率を、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて測定した。
中空粒子の屈折率Npは、Maxwell-Garnettの式を用いて算出した。中空ナノ粒子のシェル屈折率を1.537、シェル密度を1.27、空気の屈折率1.00、空気密度0として、再度Maxwell-Garnettの式を解くことで、中空ナノ粒子中の空気の体積分率(体積%)q(=中空率)を算出した。
[Maxwell-Garnettの式]
(Na2-Nm2)/(Na2+Nm2)=q(Np2-Nm2)/(Np2+Nm2)
【0144】
<3%熱分解温度>
3%熱分解温度の測定方法は以下のとおりである。
まず、中空粒子分散液を90℃の真空乾燥機で4時間乾燥した後にスパチュラで押し潰して乾燥粉体を得た。次いで、得られた乾燥粉体について示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;株式会社日立ハイテクサイエンス製の「STA7200」)を用いて、熱重量測定を行った。本測定では、アルミナを基準物質として、アルミナ製測定容器の底にすきまのないように、得られた乾燥粉体を約15mg充てんして、空気流量200mL/minの下、昇温速度10℃/minで、40℃から800℃まで昇温した時の質量減少曲線(TG/DTA曲線)を得た。得られた曲線から上記装置に付属している解析ソフトを用いて、この測定により得られた質量減少曲線に基づいて、3%質量が減少した時の温度を読み取り、3%熱分解温度とした。なお、本測定では、乾燥粉体が含有する水分による測定結果への影響を充分に抑制するために、空気流量200mL/minの下、速度10℃/minで、40℃から125℃まで昇温した時の乾燥粉体の質量を基準質量とし、上記質量減少曲線に基づいて、当該基準質量から3%質量が減少した時の温度を読み取り、3%熱分解温度(℃)とした。
【0145】
(実施例1)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム4.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン220質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、ピペラジン50.9質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は105nmで、真球度は0.96、中空率は48.4%と中空率の高い粒子であった。また、得られた中空粒子の3%熱分解温度は264℃と3%熱分解温度の高い中空粒子であった。
【0146】
(実施例2)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、プロピレンジアミン6.6質量部、N-メチルピペラジン41.4質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は109nmで、真球度は0.97、中空率は45.4%と中空率の高い粒子であった。また、得られた中空粒子の3%熱分解温度は262℃と3%熱分解温度の高い中空粒子あった。
【0147】
(実施例3)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、N-アミノエチルピペラジン50.9質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は83.7nmで、真球度は0.93、中空率は45.7%と中空率の高い粒子であった。また、得られた中空粒子の3%熱分解温度は269℃と3%熱分解温度の高い中空粒子あった。
【0148】
(比較例1)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、エチレンジアミン35.5質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は80.7nm、真球度は0.93、3%熱分解温度は264℃であった。一方、中空率は12.5%と中空率の低い粒子であった。
【0149】
(比較例2)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、テトラエチレンペンタミン31.9質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は73.5nm、3%熱分解温度は268℃であった。一方、真球度は0.86及び中空率は7.0%であったことから、真球度及び中空率がそれぞれ低い中空粒子であった。
【0150】
(比較例3)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン42.0質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は72.6nmであった。一方、真球度は0.85、中空率は11.5%及び3%熱分解温度は245℃であったことから、真球度、中空率及び3%熱分解温度がいずれも低い中空粒子であった。
【0151】
(比較例4)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部とアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製の製品名「アクアロンAR-1025」)1.6質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.0質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて室温で10分間撹拌することでエマルジョンを調製した。攪拌機と温度計を備えた5Lの反応器に調整したエマルジョンを入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、攪拌しながら70℃で2時間重合反応させた。次に、m-キシリレンジアミン40.2質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、攪拌しながら80℃で16時間反応させて中空粒子分散液を得た。
得られた中空粒子分散液4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散液を得た。7LのステンレスビーカーにフォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)120質量部を計量し、イソプロピルアルコール2000質量部で溶解させた。次に、10質量%の中空粒子水分散液2000質量部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて室温で30分間撹拌した。50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮及びイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は73.6nm、3%熱分解温度は255℃であった。一方、真球度は0.84及び中空率は16.4%であったことから、真球度及び中空率がそれぞれ低い中空粒子であった。
【0152】
以下の表1に、中空粒子の製造に使用した配合組成及び物性をまとめて示す。表1中、「(メタ)アクリル系反応性単量体の合計100質量部に対するアミン化合物の使用量」とは、具体的は、「エポキシ基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体とシリル基を有する(メタ)アクリル系反応性単量体との合計100質量部に対するアミン化合物の使用量」を意味する。
【0153】
表1中、「(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれるグリシジル基に対するアミン化合物に含まれる活性水素の割合」における「アミン化合物に含まれる活性水素」とは、(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれるグリシジル基と反応するアミン化合物中の水素原子を意味する。
また、「(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれるグリシジル基に対するアミン化合物に含まれる活性水素の割合」とは、具体的には、「配合したアミン化合物に含まれる全ての活性水素のモル数」を「配合した(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれる全てのグリシジル基のモル数」で除した数値に100を掛けた値を意味し、その単位は「%」である。
参考として、実施例1における「(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれるグリシジル基に対するアミン化合物に含まれる活性水素の割合」の算出方法を以下に示す。
【0154】
まず、実施例1における「配合したアミン化合物に含まれる全ての活性水素のモル数」を下記式により算出した。
「ピペラジンに含まれる全ての活性水素のモル数」
=[(ピペラジンの質量部)×(ピペラジン1分子当たりの活性水素の数)]/(ピペラジンの分子量)
=[(50.9)×(2)]/(86.1)=1.18(mol)
【0155】
次いで、実施例1における「配合した(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれる全てのグリシジル基のモル数」を下記式により算出した。なお、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランにはグリシジル基が含まれないため、計算式において考慮しなかった。
「グリシジルメタクリレートに含まれる全てのグリシジル基のモル数」
=[(グリシジルメタクリレートの質量部)×(グリシジルメタクリレート1分子当たりのグリシジル基の数)]/(グリシジルメタクリレートの分子量)
=[(168)×(1)]/(142.2)=1.18(mol)
【0156】
よって、実施例1における「(メタ)アクリル系反応性単量体に含まれるグリシジル基に対するアミン化合物に含まれる活性水素の割合」は、100%と算出した。
【0157】