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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】空調システムおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/06 20060101AFI20240729BHJP
   F24F 11/36 20180101ALI20240729BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20240729BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240729BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F24F3/06
F24F11/36
F24F11/77
F24F11/89
F25B49/02 520M
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023515222
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2021034003
(87)【国際公開番号】W WO2022059722
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】20196177.8
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21196536.3
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】スターン,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】デグランデ,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】スコット ディ ルツィオ,ジェンナーロ
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/073293(WO,A1)
【文献】特開2018-96593(JP,A)
【文献】特開2020-51736(JP,A)
【文献】特開2016-223749(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/06
F24F 11/36
F24F 11/77
F24F 11/89
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒を圧縮するよう構成された圧縮機を有する圧縮機ユニットと、
空気と前記第1冷媒または空気と前記第1冷媒と熱交換させる熱媒体との間で熱交換を行うよう構成された室外熱交換器を有する熱交換器ユニットと、
前記第1冷媒と空調対象の対象空間内の空気との間、または前記第1冷媒と熱交換させる第2冷媒と前記対象空間の空気との間で熱交換を行うよう構成された室内熱交換器を有する少なくとも1つの室内ユニットと、
前記圧縮機ユニットと前記室内ユニットとの間で前記第1冷媒または前記第2冷媒が内部を流れるよう構成された少なくとも1つの液冷媒管部および少なくとも1つのガス冷媒管部を有し、前記液冷媒管部には少なくとも1つの液制御弁が配置され、前記ガス冷媒管部には少なくとも1つのガス制御弁が配置された、少なくとも一つの弁ユニットと、を備える空調システムであって
前記熱交換器ユニットは、第1空間に設置され、
前記圧縮機ユニットおよび前記弁ユニットは、前記対象空間および前記第1空間のいずれとも異なる第2空間に設置され、
前記空調システムはさらに、
前記第2空間に配置され、少なくとも空気中の前記第1冷媒の濃度を検出するように構成された第1漏れ検知器と、
前記第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、前記第2空間の状態を第1状態から第2状態に切り替えて、前記第2状態では前記第1状態よりも前記第2空間の換気を促進するよう構成された換気制御構造と、を備える、空調システム。
【請求項2】
前記換気制御構造が、
前記第1冷媒の検出濃度が前記第1検出値閾値以上である場合に、前記第2空間と前記第2空間の外側の外部空間との間の少なくとも1つの気流通路の状態を第1通過状態から、前記第1通過状態よりも前記気流通路を空気が通過しやすい第2通過状態に切り替えるよう構成された通路制御構造を含む、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記換気制御構造が、
前記第1冷媒の検出濃度が前記第1検出値閾値以上である場合に、前記第2空間から空気を排出するよう動作するよう構成された排出構造を含む、請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記排出構造が、
前記第2空間から、前記対象空間および前記第2空間の何れとも異なる外部空間に向けて空気を吸引するよう構成された換気装置と、
前記第1冷媒の検出濃度が前記第1検出値閾値以上である場合に、前記換気装置を動作させるように制御するよう構成されたコントローラと、
前記第2空間と前記第2空間の外側の外部空間との間の気流通路を閉じた状態に保ち、前記換気装置の運転時に前記気流通路を開くよう構成された逆流防止型ダンパと、を含む、請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記第2空間は、建物構造によって画定され、
前記換気装置と前記逆流防止型ダンパとが前記建物構造に配置される、請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
第1筐体と第2筐体であって、一方が前記圧縮機ユニットを、他方が前記弁ユニットを前記第2空間の一部として収容する各筐体と、
前記第1筐体および第2筐体の内部空間を連結する連結構造と、
前記第2空間の外部空間と前記第1筐体の内部空間とを連結する吸気ダクトと、
前記第2筐体の内部空間と前記外部空間とを連結する排出ダクトと、をさらに備え、
前記第1漏れ検知器は、前記圧縮機を収容する前記第1筐体または第2筐体内に配置され、
前記逆流防止型ダンパは、前記吸気ダクトに配置され、
前記換気装置は、前記排出ダクトに配置される、請求項4または5に記載の空調システム。
【請求項7】
第1筐体と第2筐体であって、一方が前記圧縮機ユニットを、他方が前記弁ユニットを前記第2空間の一部として収容する各筐体と、
前記第2空間の外部空間と前記第1筐体の内部空間とを連結する第1吸気ダクトと、
前記第2空間の外部空間と前記第2筐体の内部空間とを連結する第2吸気ダクトと、
前記第1筐体および第2筐体の内部空間を連結する連結構造と、
前記連結構造と前記外部空間とを連結する排出ダクトと、をさらに備え、
前記第1漏れ検知器は、前記圧縮機を収容する前記第1筐体または第2筐体内に配置され、
前記逆流防止型ダンパは、前記第1吸気ダクトおよび第2吸気ダクトそれぞれに配置され、
前記換気装置は、前記排出ダクトに配置される、請求項4または5に記載の空調システム。
【請求項8】
前記圧縮機ユニットおよび前記弁ユニットを第2空間の一部として収容する筐体と、
前記第2空間の外部空間と前記筐体の内部空間とを連結する吸気ダクトと、
前記筐体の内部空間と前記外部空間とを連結する排出ダクトと、をさらに備え、
前記第1漏れ検知器は、前記筐体内に配置され、
前記逆流防止型ダンパは、前記吸気ダクトに配置され、
前記換気装置は、前記排出ダクトに配置される、請求項4または5に記載の空調システム。
【請求項9】
前記室内熱交換器は、前記第2冷媒と前記対象空間の空気との間で熱交換するよう構成され、
前記弁ユニットの前記液冷媒管部および前記ガス冷媒管部は、前記第2冷媒が流入するよう構成され、
前記空調システムはさらに、
前記第2空間に配置され、少なくとも空気中の前記第2冷媒の濃度を検出するように構成された第2漏れ検知器を備え、
前記コントローラはさらに、前記第2冷媒の検出濃度が第2検出値閾値以上である場合に、前記換気装置を動作させるように制御するよう構成される、請求項6または7に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第1筐体および第2筐体を備え、
前記圧縮機ユニットはさらに、前記第1冷媒と前記第2冷媒との間で熱交換を行うように構成された冷媒熱交換器を有し、
前記第1漏れ検知器は、前記第1筐体内に配置され、
前記第2漏れ検知器は、前記第2筐体内、または前記第2空間の一部であって前記第1および第2筐体の内部空間の一部ではない空間に配置される、請求項9に記載の空調システム。
【請求項11】
前記室内熱交換器は、前記第2冷媒と前記対象空間の空気との間で熱交換するよう構成され、
前記弁ユニットの前記液冷媒管部および前記ガス冷媒管部は、前記第2冷媒が流入するよう構成され、
前記空調システムはさらに、
前記第2空間に配置され、少なくとも空気中の前記第2冷媒の濃度を検出するように構成された第2漏れ検知器を備え、
前記コントローラはさらに、前記第2冷媒の検出濃度が第2検出値閾値以上である場合に、前記換気装置を動作させるように制御するよう構成される、請求項4、5、及び8のいずれかに記載の空調システム。
【請求項12】
記熱交換器ユニットと前記圧縮機ユニットとを、前記第1冷媒または前記熱媒体がその間を循環するように連結する第1連結配管と、
前記圧縮機ユニットと、前記弁ユニットと、前記室内ユニットとを、前記第1冷媒または前記第2冷媒が前記弁ユニットを介して前記圧縮機ユニットと前記室内ユニットとの間を循環するように連結する第2連結配管と、をさらに備える、請求項1から1のいずれかに記載の空調システム。
【請求項13】
複数の前記室内ユニットを備え、
前記弁ユニットがさらに、前記液冷媒管部を前記各室内ユニットへと分岐する少なくとも一つの液冷媒分岐配管と、前記ガス冷媒管部を前記各室内ユニットへと分岐する少なくとも一つのガス冷媒分岐配管とを有する、請求項1から1のいずれかに記載の空調システム。
【請求項14】
前記第2空間は、建物内の機械室、計算機室、倉庫のいずれかの空間である、請求項1から1のいずれかに記載の空調システム。
【請求項15】
請求項1から1のいずれかに記載の空調システムを構築する方法であって、
前記圧縮機ユニットと前記弁ユニットとを、建物の建物構造によって画定される前記第2空間に設置する工程と、
前記第1漏れ検知器を前記第2空間に配置する工程と、
前記熱交換器ユニットを、前記第1空間に設置する工程と、
前記建物内であって前記第1空間および前記第2空間とは異なる空間に前記室内ユニットを設置する工程と、
記熱交換器ユニットと前記圧縮機ユニットとを、前記第1冷媒または前記熱媒体がその間を循環するように連結する工程と、
前記圧縮機ユニットと、前記弁ユニットと、前記室内ユニットとを、前記第2冷媒が前記弁ユニットを介して前記圧縮機ユニットと前記室内ユニットとの間を循環するように連結する工程と、
前記換気制御構造を前記建物に設置する工程と、を備える空調システムの構築方法。
【請求項16】
前記建物構造が、床と、前記床に面する天井と、前記床と前記天井とを連結し、前記床と天井との間の空間を囲む少なくとも1つの壁と、前記床と前記天井と前記壁に配置したドアとを備える、請求項1に記載の空調システムの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムおよび空調システムの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の対象空間用の空調システムにおいて、ヒートポンプ回路の液冷媒配管とガス冷媒配管との各々が複数の副配管系に分岐する。副配管系の分岐した副配管には、副配管系をゾーニング(zone)するための弁が設けられていることが多い。
【0003】
一方、ヒートポンプシステムに使用される各弁は、冷媒の漏れ口になりやすいため、定期的な点検と必要に応じた修理が必要となる。このため、監視や保守の便宜上、ヒートポンプシステムの配管は、複数の弁を一箇所に配置するよう設計するのが一般的である。例えば、EP3091314A1では、冷媒副配管の複数の弁を1つの筐体内に統合して弁ユニットを形成することが提案されている。これにより、監視・保守の負担を軽減するだけでなく、いずれかの弁で漏れた冷媒が周囲に拡散するのを防ぐことができる。
【0004】
しかしながら、圧縮機や室外熱交換器を含む空調システムの熱源側ユニットにも冷媒の漏れる可能性のある箇所が存在する。したがって、EP3091314A1が提案する構成は、冷媒漏れに関する空調システムの安全性を改善するには不十分である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、冷媒漏れに対する安全性をより向上させることができる空調システムおよび空調システムの構築方法を提供することである。
【0006】
本発明の第1態様によれば、空調システムであって、第1冷媒を圧縮するよう構成された圧縮機を有する圧縮機ユニットと、空気と第1冷媒または空気と第1冷媒と熱交換させる熱媒体との間で熱交換を行うよう構成された室外熱交換器を有する熱交換器ユニットと、第1冷媒と空調対象の対象空間内の空気との間、または第1冷媒と熱交換させる第2冷媒と対象空間の空気との間で熱交換を行うよう構成された室内熱交換器を有する少なくとも1つの室内ユニットと、圧縮機ユニットと室内ユニットとの間で第1冷媒または第2冷媒が内部を流れるよう構成された少なくとも1つの液冷媒管部および少なくとも1つのガス冷媒管部を有し、液冷媒管部には少なくとも1つの液制御弁が配置され、ガス冷媒管部には少なくとも1つのガス制御弁が配置された、少なくとも一つの弁ユニットと、を備え、熱交換器ユニットは、第1空間に設置され、圧縮機ユニットおよび弁ユニットは、対象空間および第1空間のいずれとも異なる第2空間に設置され、空調システムはさらに、第2空間に配置され、少なくとも空気中の第1冷媒の濃度を検出するように構成された第1漏れ検知器と、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、第2空間の状態を第1状態から第2状態に切り替えて、第2状態では第1状態よりも第2空間の換気を促進するよう構成された換気制御構造と、を備える、空調システムを提供する。
【0007】
熱交換器ユニットと圧縮機ユニットとが別の空間に分かれているため、それぞれの換気環境を異なるものにすることができる。第2空間が対象空間および第1空間のいずれとも異なるとは、第2空間の空気の状態が、対象空間および第1空間のいずれの空気の状態とも直接関係がないことを意味する。第1空間は、室外空間であってもよいし、外気が通過可能な空間であってもよい。これにより、第1空間の室外熱交換器には外気流を自由に取り入れることができる一方、圧縮機ユニットや弁ユニットが配置される第2空間の換気状態を制限することができる。例えば、平常時は第2空間を実質的に閉鎖しておくことも可能である。これにより、圧縮機ユニットおよび弁ユニットのいずれかに冷媒漏れが生じた場合に、第2空間により、漏れた冷媒が周囲に広がることを防止または抑制することができる。さらに、第2空間から第2空間の外部空間へ空気を排出することで、第2空間における漏れ冷媒の濃度を低下させることができる。さらに、ヒートポンプシステムの通常運転時には、第2空間を実質的に閉鎖し、この実質的に閉鎖された空間内の冷媒の濃度に基づいて冷媒漏れの検出を行うことも可能である。
【0008】
このため、圧縮機ユニットおよび弁ユニットのいずれかにおける冷媒漏れの発生を速やかに検知し、換気制御構造による第2空間の換気を早期に促進することができる。これにより、第2空間と第2空間の周囲との双方において漏れ冷媒の濃度が高くなるのをより確実に防止することができる。これにより、監視・保守担当者は、圧縮機ユニットおよび/または弁ユニットの監視、保守、修理を安全に行うことができる。したがって、冷媒漏れに対する空調システムの安全性を向上させることができる。さらに、室外熱交換器の換気環境に影響を与えることなく、圧縮機ユニットまたは弁ユニットにおける冷媒漏れに関する上記の効果を得ることができる。
【0009】
また、圧縮機ユニットと弁ユニットの換気制御構造を共通化している。これにより、システムの設置コストの増加を防止しながら、空調システムの安全性を向上させることができる。したがって、第1態様に係る空調システムによれば、圧縮機を建物内に配置する場合であっても、低コストで冷媒漏れに対する安全性を向上させることができる。
【0010】
ここで、換気制御構造によって空気が排出される外部空間は、第2空間を直接囲む外部空間や、人間や動物が来たり居住したりする可能性のある屋内空間でないことが好ましい。外部空間は、好ましくは屋外空間である。
【0011】
上記空調システムの好ましい実施形態によれば、換気制御構造は、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、第2空間と第2空間の外側の外部空間との間の少なくとも1つの気流通路の状態を第1通過状態から、第1通過状態よりも気流通路を空気が通過しやすい第2通過状態に切り替えるよう構成された通路制御構造を含む。
【0012】
気流通路は、その内部に第2空間を規定する建物構造に形成された開口部、建物構造を貫通するダクト、建物構造に埋め込まれた窓枠やドア枠などであってもよい。通路制御構造としては、逆流防止型ダンパ、シャッター、窓板、ドア板などを挙げることができる。通路制御構造は、通常時には気流通路を閉じて第1通路状態を実現し、気流通路を開いて第2状態を実現するように構成されてもよい。このように、通路制御構造は、必ずしも第2空間の強制換気を引き起こす必要はなく、単に第2空間の自然換気を誘導するだけでもよい。換気装置等の強制換気を行うための装置を必ずしも必要としないので、空調システムの設置コストの上昇を回避することができる。自然換気を効果的に誘導するためには、建物構造に2つ以上の気流通路が形成されることが好ましい。
【0013】
上記空調システムの別の好ましい実施形態によれば、換気制御構造は、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、第2空間から空気を排出するよう動作するよう構成された排出構造を含む。
【0014】
この構成によれば、強制換気が行われるので、第2空間から冷媒を含む空気をより確実に排出することができる。
【0015】
排出構造を有する、上記空調システムの別の好ましい実施形態によれば、排出構造は、第2空間から、対象空間および第2空間の何れとも異なる外部空間に向けて空気を吸引するよう構成された換気装置と、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、換気装置を動作させるように制御するよう構成されたコントローラと、第2空間と第2空間の外側の外部空間との間の気流通路を閉じた状態に保ち、換気装置の運転時に気流通路を開くよう構成された逆流防止型ダンパと、を含む。
【0016】
上記構成によれば、第2空間で冷媒漏れが発生した場合に、第2空間の空気を効果的に排出することができる。ここで、換気装置は、空気を吹き付けて第2空間内の空気を押し出すように構成されてもよいし、空気を吸引して第2空間内の空気を引き出すように構成されてもよい。
【0017】
換気装置、コントローラ、および逆流防止型ダンパを有する上記のいずれかの空調システムのさらに別の好ましい実施形態によれば、第2空間は、建物構造によって画定され、換気装置および逆流防止型ダンパは、建物構造に配置される。
【0018】
この構成によれば、空調システムが設置される建物の建物構造を利用して第2空間を確保し、建物構造に形成された開口部を利用して換気装置および逆流防止型ダンパを配置することができる。第2空間は、建物の部屋の一つであってもよいし、建物の二つの部屋をつなげて一つの連続した空間を形成してもよい。したがって、換気制御構造を容易に実現することができる。換気装置が作動しておらず、逆流防止型ダンパが閉じているときに、第2空間がその外部空間から実質的に隔離されるように建物構造が構成されていることが好ましい。
【0019】
換気装置、コントローラ、および逆流防止型ダンパを有する、上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、空調システムはさらに、第1筐体および第2筐体であって、一方が圧縮機ユニットを、他方が弁ユニットを第2空間の一部として収容する各筐体と、第1筐体および第2筐体の内部空間を連結する連結構造と、第2空間の外部空間と第1筐体の内部空間とを連結する吸気ダクトと、第2筐体の内部空間と外部空間とを連結する排出ダクトと、を備え、第1漏れ検知器は、圧縮機を収容する第1筐体または第2筐体内に配置され、逆流防止型ダンパは、吸気ダクトに配置され換気装置は、排出ダクトに配置される。
【0020】
上記構成により、圧縮機ユニットと弁ユニットとが離れている場合でも、冷媒の漏れを検知して空気を排出する空間を小さくすることができる。これにより、圧縮機ユニットおよび弁ユニットのいずれかに発生した冷媒漏れを速やかに検知して、漏れた冷媒を含む空気を速やかに排出することが可能となる。また、第2空間の実質的な隔離が困難な場合でも、建物構造を大きく変更することなく、冷媒漏れの迅速な検知と迅速な空気の排出とを行うことが可能である。また、換気する空間が小さいほど、換気装置の能力もより小さくすることができる。したがって、空調システムの設置費用を抑えることも可能である。
【0021】
吸気ダクトおよび/または排出ダクト、共用ダクトは、屋外空間まで延長してもよい。換気装置は、第1および第2筐体を囲む空気をさらに排出するよう構成されてもよい。換気装置は、第2空間の外に配置してもよい。
【0022】
ここで、圧縮機ユニットと弁ユニットのそれぞれについて、ユニットの筐体と他の要素とをまとめて製造してもよい。これにより、筐体の気密性などの性能を高めるためのユニットの設計がしやすくなる。また、ユニットの寸法や筐体の保守扉の位置の最適化も容易になる。したがって、安全性だけでなく、空調システムの保守性や機能性を向上させることが可能である。あるいは、筐体は、既存の圧縮機ユニットや弁ユニットの要素の周囲に組み付ける後付けの筐体でもよい。
【0023】
換気装置、コントローラ、および逆流防止型ダンパを有する、上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、空調システムはさらに、第1筐体および第2筐体であって、一方が圧縮機ユニットを、他方が弁ユニットを第2空間の一部として収容する各筐体と、第2空間の外部空間と第1筐体の内部空間とを連結する第1吸気ダクトと、第2空間の外部空間と第2筐体の内部空間とを連結する第2吸気ダクトと、第1筐体および第2筐体の内部空間を連結する連結構造と、連結構造と外部空間とを連結する排出ダクトと、を備え、第1漏れ検知器は、圧縮機を収容する第1筐体または第2筐体内に配置され、逆流防止型ダンパは、第1吸気ダクトおよび第2吸気ダクトそれぞれに配置され、換気装置は、排出ダクトに配置される。
【0024】
上記構成により、各筐体の内部空間が並列に連結される。すなわち、各内部空間は、他の筐体を介することなく、排出構造と連通する。そのため、換気装置に必要な静圧容量を減らすことが可能である。
【0025】
換気装置、コントローラ、および逆流防止型ダンパを有する、上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、空調システムはさらに、圧縮機ユニットおよび弁ユニットを第2空間の一部として収容する筐体と、第2空間の外部空間と筐体の内部空間とを連結する吸気ダクトと、筐体の内部空間と外部空間とを連結する排出ダクトと、を備え、第1漏れ検知器は、筐体内に配置され、逆流防止型ダンパは、吸気ダクトに配置され換気装置は、排出ダクトに配置される。
【0026】
この構成により、冷媒漏れを検知して空気を排出する空間を小さくすることができる。これにより、圧縮機ユニットおよび弁ユニットのいずれかに発生した冷媒漏れを速やかに検知し、漏れた冷媒を含む空気を速やかに排出することが可能となる。また、第2空間の実質的な隔離が困難な場合でも、建物構造を大きく変更することなく、冷媒漏れの迅速な検知と迅速な空気の排出を行うことが可能である。さらに、2つの筐体を配置する構成と比較して、換気する空間を形成するためのコストを削減することができる。また、換気する空間が小さいほど、換気装置の能力もより小さくすることができる。したがって、空調システムの設置費用を抑えることも可能である。
【0027】
換気装置、コントローラ、および逆流防止型ダンパを有する、上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、室内熱交換器は、第2冷媒と対象空間の空気との間で熱交換するよう構成され、弁ユニットの液冷媒管部およびガス冷媒管部は、第2冷媒が流入するよう構成され、空調システムはさらに、第2空間に配置され、少なくとも空気中の第2冷媒の濃度を検出するように構成された第2漏れ検知器を備え、コントローラはさらに、第2冷媒の検出濃度が第2検出値閾値以上である場合に、換気装置を動作させるように制御するよう構成される。
【0028】
上記構成により、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合、および第2冷媒の検出濃度が第2検出値閾値以上である場合のいずれの場合にも、コントローラは、換気装置の運転を開始するように制御するよう構成される。このため、圧縮機ユニットと弁ユニットに異なる種類の冷媒を使用するカスケード型の空調システムであっても、いずれの冷媒の漏れに対する安全性も向上させることができる。
【0029】
第1および第2筐体、ならびに第2漏れ検知器を有する、上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、圧縮機ユニットはさらに、第1冷媒と第2冷媒との間で熱交換を行うように構成された冷媒熱交換器を有し、第1漏れ検知器は、第1筐体内に配置され、第2漏れ検知器は、第2筐体内、または第2空間の一部であって第1および第2筐体の内部空間の一部ではない空間に配置される。
【0030】
上記構成によれば、筐体外の配管からの第2冷媒の漏れを検知することができる。したがって、空調システムの安全性をさらに向上させることができる。
【0031】
上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、空調システムはさらに、熱交換器ユニットと圧縮機ユニットとを、第1冷媒または熱媒体がその間を循環するように連結する第1連結配管と、圧縮機ユニットと、弁ユニットと、室内ユニットとを、第1冷媒または第2冷媒が弁ユニットを介して圧縮機ユニットと室内ユニットとの間を循環するように連結する第2連結配管と、を備える。
【0032】
上記構成により、室外熱交換器と室内熱交換器との間にヒートポンプ回路が形成される。
【0033】
上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、空調システムは、複数の室内ユニットを備え、弁ユニットがさらに、液冷媒管部を各室内ユニットへと分岐する少なくとも一つの液冷媒分岐配管と、ガス冷媒管部を各室内ユニットへと分岐する少なくとも一つのガス冷媒分岐配管とを有する。
【0034】
冷媒配管の分岐点も冷媒漏れの箇所となる可能性がある。したがって、このような漏れの可能性のある箇所も第2空間に収容されるので、冷媒漏れに関する空調システムの安全性をさらに向上させることができる。
【0035】
上述した空調システムのいずれかのさらに別の好ましい実施形態によれば、第2空間は、建物内の機械室、計算機室、倉庫のいずれかの空間である。
【0036】
上記構成によれば、第2空間は、通常時において人が居住する可能性が低い空間である。したがって、冷媒漏れに対する空調システムの安全性をさらに向上させることができる。
【0037】
本発明の第2態様は、上記のいずれかの空調システムを構築する方法を提供する。この方法は、圧縮機ユニットと弁ユニットとを、建物の建物構造によって画定される第2空間に設置する工程と、第1漏れ検知器を第2空間に配置する工程と、熱交換器ユニットを、第1空間に設置する工程と、建物内であって第1空間および第2空間とは異なる空間に室内ユニットを設置する工程と、熱交換器ユニットと圧縮機ユニットとを、第1冷媒または熱媒体がその間を循環するように連結する工程と、圧縮機ユニットと、弁ユニットと、室内ユニットとを、第2冷媒が弁ユニットを介して圧縮機ユニットと室内ユニットとの間を循環するように連結する工程と、換気制御構造を建物に設置する工程と、を備える。
【0038】
以上の方法により、上記いずれかの空調システム、およびその空調システムが設置された建物を得ることができる。
【0039】
上記空調システムの構築方法の好ましい実施形態によれば、建物構造が、床と、床に面する天井と、床と天井とを連結し、床と天井との間の空間を囲む少なくとも1つの壁と、床と天井と壁に配置したドアとを備える。
【0040】
上記構成により、建物の一室を第2空間として利用することができる。これにより、低コストで空調システムの冷媒漏れに対する安全性を向上させることが可能である。
【0041】
安全システムの参考例は、ヒートポンプシステムに用いられる複数の弁ユニットであって、各弁ユニットが、少なくとも1つの液冷媒管部と、少なくとも1つのガス冷媒管部と、液冷媒管部に配置された少なくとも1つの液制御弁と、ガス冷媒管部に配置された少なくとも1つのガス制御弁と、少なくとも液制御弁およびガス制御弁を収容し、少なくとも2つの開口部が形成された筐体と、筐体の内部空間の冷媒漏れの発生を検出するよう構成された冷媒漏れ検知器とを備える、弁ユニットと、開口部を介して筐体の内部空間を連結する連結構造と、連結構造または筐体のうちの一つに連結され、冷媒漏れが発生した筐体の内部空間から空気を排出するよう構成された排出構造体と、を備える。
【0042】
複数の弁ユニットに対して別々の筐体を配置した場合、いずれかの筐体で冷媒漏れが発生しているかどうかを確認するために、それぞれの筐体を開けるのは負担が大きく、時間もかかる。さらに、いずれかの筐体で冷媒漏れが発生した場合、監視・保守員がその筐体を開けるために到着した際には、筐体の内部空間には既に相当量の漏れ冷媒が浸透している。たとえば、使用されている冷媒の中には、可燃性またはわずかに可燃性のものがある。したがって、そのような筐体を開くことは、安全性の観点から望ましくない。この点、上記構成によれば、いずれかの弁ユニットの弁に冷媒漏れが生じたとしても、この弁を収容する筐体により、漏れた冷媒が周囲に広がるのを防止または抑制することができる。さらに、筐体の内部空間から外部空間へ空気を排出することで、筐体の内部空間における漏れ冷媒の濃度を低下させることができる。さらに、ヒートポンプシステムの通常運転時には、各筐体を実質的に閉鎖し、この実質的に閉鎖された空間内の冷媒の濃度に基づいて冷媒漏れの検出を行うことが可能である。
【0043】
このため、弁ユニットにおける冷媒漏れの発生を速やかに検知し、排出構造の運転を早期に開始させることができる。これにより、冷媒の漏れが発生した筐体とその筐体の周辺の双方において、漏れた冷媒の濃度が高くなることをより確実に防止することができる。これにより、監視・保守担当者は、各弁の監視、保守、修理を安全に行うことができる。したがって、冷媒漏れに対するヒートポンプシステムの安全性を向上させることができる。
【0044】
また、排出構造は、複数の弁ユニットが共通して使用する。したがって、各弁を別々の場所に配置する場合でも、システムの設置コストの増加を防止しながら、ヒートポンプシステムの安全性を向上させることができる。
【0045】
ここで、排出構造によって空気が排出される外部空間は、筐体を直接囲む外部空間や、人間や動物が来たり居住したりする可能性のある屋内空間でないことが好ましい。外部空間は、好ましくは屋外空間である。複数の弁ユニットが属するヒートポンプシステムは、複数の別々のヒートポンプ回路を備えてもよい。つまり、各弁ユニットの配管同士が必ずしも互いに連結されていなくてもよい。各弁ユニットにおいて、配管部、弁、筐体をまとめて製造してもよい。これにより、筐体の気密性などの性能を高めるための弁ユニットの設計がしやすくなる。また、弁ユニットの寸法や筐体の保守扉の位置の最適化も容易になる。したがって、安全性だけでなく、弁ユニットの保守性や機能性を向上させることが可能である。あるいは、筐体は、既存の弁の周囲に組み付ける後付けの筐体でもよい。
【0046】
上記安全システムの好ましい変更例によれば、排出構造は、連結構造または筐体の一つに連結された共用ダクトと、共用ダクトに配置された換気装置と、を備える。
【0047】
上記構成によれば、筐体内で冷媒漏れが発生した場合に、筐体の内部空間から空気を効果的に排出することができる。ここで、換気装置は、空気を吹き付けて筐体内の空気を押し出すように構成されてもよいし、空気を吸引して筐体内の空気を引き出すように構成されてもよい。共用ダクトを屋外空間まで延長してもよく、換気装置は、共用ダクト内に配置または共用ダクトに取り付けてもよい。換気装置は、筐体のうちの少なくとも一つを囲む空気、例えば、天井や配管シャフト内の空気をさらに排出するよう構成されてもよい。
【0048】
共用ダクトと換気装置とを備えた上記の安全システムの別の好ましい変形例によれば、共用ダクトは、第1端部と第2端部とを有し、換気装置は、第2端部でまたはその近くで共用ダクトに配置され、共用ダクト内の空気を第2端部に向かって吸い込むように構成され、共用ダクトは、換気装置に対して第1端部の側で連結構造または筐体の1つに連結される。
【0049】
上記構成により、筐体の内部空間、連結構造、共用ダクトの大部分は、空気を排出する際に加圧状態に保たれる。これにより、冷媒を含んだ空気が周囲に漏れるのを防止することができる。
【0050】
共用ダクトの第2端部を有する上記安全システムのさらに別の好ましい変形例によれば、共用ダクトの第2端部は、屋外空間に開放される。
【0051】
上記構成により、冷媒を含んだ空気を屋外空間に排出することができる。したがって、ヒートポンプシステムの安全性をさらに向上させることができる。
【0052】
共用ダクトと換気装置とを備えた上記のいずれかの安全システムのさらに別の好ましい変形例によれば、安全システムはさらに、弁ユニットのいずれかにおける冷媒漏れが発生したときに換気装置が動作を開始するように制御するよう構成されたコントローラを備える。
【0053】
上記構成によれば、冷媒漏れが発生した場合に、冷媒を含んだ空気をより確実に排出することができる。
【0054】
コントローラを備えた上記いずれかの安全システムのさらに別の好ましい変形例によれば、各冷媒漏れ検知器は、検出結果情報を出力するよう構成され、コントローラは、冷媒漏れ検知器のいずれかから出力された検知結果情報を受け取り、受け取った検出結果情報に基づいて、弁ユニットのいずれにおいて冷媒漏れが発生したかを特定するよう構成される。
【0055】
上記構成により、冷媒漏れが発生した弁ユニットを特定し、その判定結果に基づいて換気装置の制御を行うことができる。ここで、検出結果情報は、対応する弁ユニットに冷媒漏れが発生したか否かを示し、冷媒漏れが発生した弁ユニット(以下、「冷媒漏れの弁ユニット」という)の識別子を示してもよい。
【0056】
共用ダクトと換気装置とを備えた上記のいずれかの安全システムのさらに別の好ましい変形例によれば、各筐体の少なくとも2つの開口部は、第1開口部と第2開口部とを備え、連結構造は、各筐体の第2開口部にそれぞれ連結し、さらに共用ダクトに共通して連結する複数の個別ダクトを備える。
【0057】
上記構成により、各筐体の内部空間が並列に連結される。すなわち、各内部空間は、他の筐体を介することなく、排出構造と連通する。そのため、換気装置に必要な静圧容量を減らすことが可能である。
【0058】
個別ダクトを有する上記のいずれかの安全システムのさらに別の好ましい変形例によれば、各弁ユニットは、ダンパが閉じているときに空気が第1開口部を通過するのを阻止し、ダンパが開いているときに第1開口部を空気が通過できるように構成されたダンパをさらに備え、コントローラは、冷媒漏れの発生により換気装置が動作する場合、冷媒が漏れた弁ユニットのダンパが開いて、冷媒が漏れていないダンパは閉じるよう、各ダンパを制御するよう構成される。
【0059】
ヒートポンプシステムの通常運転時には、冷媒漏れを速やかに検知し、漏れた冷媒が周囲に広がるのを防ぐために、全てのダンパを閉じておくことが好ましい。一方、ダンパが閉じていると、第1開口部が外気の吸気口または内気の排気口として機能できず、換気装置が作動しても筐体の内部空間の空気を入れ替えることが困難になる。この点、上記構成によれば、冷媒漏れの弁ユニットのダンパを開いて効果的に空気を排出するとともに、冷媒漏れを迅速に検知することができる。また、他のダンパまたは複数のダンパを閉じたままにすることで、空気排出の対象となる弁ユニットを冷媒漏れの弁ユニットに限定することができる。一般に、複数の弁ユニットで同時に冷媒漏れが発生することはまれである。そのため、換気装置に必要な風量を減らすことができる。各ダンパは、第1開口部に直接取り付けてもよいし、第1開口部から離れた位置に配置され、ダクトを介して第1開口部に連結されてもよい。
【0060】
個別ダクトとダンパとを備える上述した安全システムのいずれかのさらに別の好ましい変形例によれば、コントローラは、弁ユニットにそれぞれ配置した複数のユニットコントローラと、各ユニットコントローラと通信するよう構成された中央コントローラと、を備え、各冷媒漏れ検知器は、対応するユニットコントローラを介して中央コントローラに検出結果情報を送信するよう構成され、中央コントローラは、弁ユニットから受信した検出結果情報に基づいて、弁ユニットのいずれかで冷媒漏れが発生したかどうかを判断し、弁ユニットのいずれかで冷媒漏れが発生した場合、対応するユニットコントローラを介して冷媒漏れが発生した弁ユニットのダンパにダンパ開放コマンドを送信し、換気装置を運転開始するよう制御するよう構成される。
【0061】
上記構成により、冷媒漏れが発生した弁ユニットを特定し、その判定結果に基づいて換気装置および各ダンパの集中制御をより確実に行うことができる。ここで、検出結果情報は、弁ユニットに冷媒漏れが発生したか否かを示し、冷媒漏れの弁ユニットの識別子を示してもよい。ダンパ開放コマンドは、ダンパに開放を指示し、ダンパを開放すべき弁ユニットの識別子を指定してもよい。
【0062】
共用ダクトと換気装置とを備える安全システムのいずれかのさらに別の好ましい変形例によれば、各筐体の少なくとも2つの開口部は、第1開口部と第2開口部とを備え、連結構造は、一方が筐体の一つの第2開口部に連結され、他方が筐体の別の一つの第1開口部に連結された少なくとも一つの連結ダクトを備え、排出構造の共用ダクトは、連結ダクトが連結されていない筐体の一つの第2開口部に連結される。
【0063】
上記構成によれば、各筐体の内部空間が排出構造に直列に接続される。すなわち、内部空間の少なくとも1つは、一以上の他の筐体を介して排出構造と連通する。これにより、筐体と排出構造を連結するダクトの全長を短くすることができ、システムの設置コストを削減することができる。共用ダクトと換気装置とを単一の要素として一体化してもよい。筐体の1つが屋外空間に露出する部分を有する場合、その部分にこのような単一の要素を配置してもよい。
【0064】
連結ダクトを備える上述した安全システムのいずれかのさらに別の好ましい変形例によれば、各弁ユニットはさらに、ダンパが閉じているときに空気が第1開口部を通過するのを阻止し、ダンパが開いているときに第1開口部を空気が通過できるように構成されたダンパを備え、コントローラは、冷媒漏れの発生によって換気装置が動作した場合に、すべての弁ユニットのダンパを開くよう制御するように構成される。
【0065】
ヒートポンプシステムの通常運転時には、冷媒漏れを速やかに検知し、漏れた冷媒が周囲に広がるのを防ぐために、全てのダンパを閉じておくことが好ましい。一方、筐体のいずれかのダンパが閉じていると、直列に連続する各筐体の第1開口部が外気の吸気口または内気の排気口として機能できず、換気装置が作動しても内部空間の空気を入れ替えることが困難になる。この点、上記構成によれば、直列に連続する全ての弁ユニットのダンパを開いて空気を効果的に排出しつつ、冷媒漏れを迅速に検知することができる。各ダンパは、第1開口部に直接取り付けてもよいし、第1開口部から離れた位置に配置され、ダクトを介して第1開口部に連結されてもよい。
【0066】
連結ダクトとダンパとを備える上述した安全システムのいずれかのさらに別の好ましい変形例によれば、コントローラは、弁ユニットにそれぞれ配置された複数のユニットコントローラと、各ユニットコントローラと通信するよう構成された中央コントローラと、を備え、各冷媒漏れ検知器は、対応するユニットコントローラを介して中央コントローラに検出結果情報を送信するよう構成され、中央コントローラは、弁ユニットから受信した検出結果情報に基づいて、弁ユニットのいずれかで冷媒漏れが発生したかどうかを判断し、冷媒漏れが発生した場合、ユニットコントローラを介してすべての弁ユニットのダンパにダンパ開放コマンドを送信し、換気装置を運転開始するよう制御するよう構成される。
【0067】
上記構成によれば、いずれかの弁ユニットにおける冷媒漏れの発生を検知して、換気装置とダンパとをより確実に集中制御することができる。ここで、検出結果情報は、弁ユニットに冷媒漏れが発生したか否かを示し、冷媒漏れの弁ユニットの識別子を示してもよい。ダンパ開放コマンドは、ダンパに開放を指示し、ダンパを開放すべき弁ユニットの識別子を指定してもよい。
【0068】
上記いずれかの安全システムの組立方法の参考例において、筐体が複数の筐体部品から形成され、各弁ユニットについて、対応する筐体部品を、弁ユニットの少なくとも液体制御弁およびガス制御弁の周囲に配置する工程と各弁ユニットについて、対応する筐体部品を互いに固定する工程と、各弁ユニットについて、冷媒漏れ検知器を配置し、各筐体の内部空間を連結するように連結構造を配置する工程と、排出構造を連結構造または筐体の1つに連結する工程と、を備える。
【0069】
以上の方法により、既存のヒートポンプシステムでも上記安全システムを得ることができる。
【0070】
空調システムの参考例は、上記安全システムのいずれかと、圧縮機と熱源側熱交換器とを備える熱源側ユニットと、それぞれが利用側熱交換器を備える複数の利用側ユニットと、熱源側ユニットと利用側ユニットとの間に延在し、液冷媒管部を備える液冷媒配管と、熱源側ユニットと利用側ユニットとの間に延在し、ガス冷媒管部を備えるガス冷媒配管と、液冷媒配管に配置した膨張機構と、を備える。
【0071】
上記構成により、各弁での冷媒漏れに関する高い安全性を有する空調システムを得ることができる。
【0072】
コントローラを備える上述の空調システムの好ましい変形例によれば、空調システムはさらに、空調システムの空調動作を制御するよう構成されたシステムコントローラを備え、安全システムのコントローラの少なくとも一部がシステムコントローラの一部である。
【0073】
上記構成によれば、空調用のコントローラの少なくとも一部と、安全システムの動作用のシステムコントローラの少なくとも一部とを統合することができる。これにより、総設置コストを削減することができる。システムコントローラの統合部分は、システムコントローラの他の部分から分離されていてもよい。
【0074】
換気装置を含む上記のいずれかの空調システムの別の好ましい変形例によれば、空調システムはさらに、複数の弁ユニット、連結構造、および排出構造をそれぞれ含む複数のセクションを備え、コントローラは、冷媒漏れが発生したセクションのみの換気装置を動作開始するように制御するよう構成される。
【0075】
上記構成によれば、連結構造と排出構造とをそれぞれが有する複数の安全システムのコントローラを統合することができる。これにより、総設置コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の第1実施形態に係る、弁ユニットを備える空調システムの概略構成図
図2図1に示す弁ユニットの概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る安全システムの概略構成図
図4図3に示すユニットコントローラの動作を示すフローチャートである。
図5図3に示す中央コントローラの動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
図7図6に示す中央コントローラの動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
図9図9に示す中央コントローラが使用するグループ化テーブルを示す図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る中央コントローラが使用するグループ化テーブルを示す図である。
図12】本発明の変形例に係る弁ユニットの概略構成図である。
図13】本発明の第5実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
図14図13に示す空調システムの安全システムの概略構成図である。
図15図14に示す中央コントローラの動作を示すフローチャートである。
図16】第5実施形態の第1変形例に係る安全システムの概略構成図である。
図17】第5実施形態の第2変形例に係る安全システムの概略構成図である。
図18】第5実施形態の第3変形例に係る安全システムの概略構成図である。
図19】本発明の第6実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
図20図19に示す空調システムの安全システムの一例の概略構成図である。
図21図20に示す中央コントローラの動作を示すフローチャートである。
図22】本発明の第7実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
図23】第5~第7実施形態のいずれかに係る安全システムの変形例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明に係る空調システムおよび安全システムの好適な実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0078】
(第1実施形態)
(空調システムの構成)
本実施形態の第1実施形態に係る空調システムは、熱源側ユニットと複数の利用側ユニットとを備える、いわゆる3管構成のマルチ空調システムである。
【0079】
図1は、第1実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【0080】
図1に示すように、空調システム100は、熱源側ユニット110と、冷媒配管を介して熱源側ユニット110に連結された複数の利用側ユニット120とを備える。利用側ユニット120は、複数のユニットファミリ121、例えば第1~第3ユニットファミリ121_1、121_2、121_3に分割される。ただし、ユニットファミリ121の数は3つに限定されず、2つ、4つ、またはそれ以上であってもよい。各ユニットファミリ121に属する利用側ユニット120の数も限定されない。
【0081】
熱源側ユニット110は、(図示しない)圧縮機、凝縮器および蒸発器(熱源側熱交換器)を備える。さらに、熱源側ユニット110からは、液冷媒配管131、低圧ガス冷媒配管132、および高圧ガス冷媒配管133が延出する。液冷媒配管131は、凝縮器と蒸発器のそれぞれに連通する。低圧ガス冷媒配管132は、圧縮機の吸入口に連通する。高圧ガス冷媒配管133は、圧縮機の吐出口に連通する。
【0082】
液冷媒配管131は、第1~第3ユニットファミリ121_1、121_2、121_3に向けて複数の熱源側液配管141に分岐する。低圧ガス冷媒配管132は、第1~第3ユニットファミリ121_1、121_2、121_3に向けて複数の熱源側低圧ガス配管142に分岐する。高圧ガス冷媒配管133は、第1~第3ユニットファミリ121_1、121_2、121_3に向けて複数の熱源側高圧ガス配管143に分岐する。
【0083】
ユニットファミリ121のそれぞれについて、熱源側液配管141は、各ユニットファミリ121に属する利用側ユニット120に向けて複数の利用側液冷媒配管151に分岐する。ユニットファミリ121のそれぞれについて、熱源側低圧ガス配管142は、ユニットファミリ121に属する利用側ユニット120に向けて複数の利用側ガス冷媒配管152に分岐する。ユニットファミリ121のそれぞれについて、熱源側高圧ガス配管143は、ユニットファミリ121に属する利用側ユニット120に向けて分岐し、分岐したそれぞれの配管は、対応する利用側ガス冷媒配管152と合流する。
【0084】
各利用側ユニット120は、利用側熱交換器(図示せず)を備える。利用側ユニット120のそれぞれについて、利用側熱交換器は、対応する利用側液冷媒配管151および利用側ガス冷媒配管152と連通する。
【0085】
すなわち、空調システム100では、熱源側ユニット110と利用側ユニット120との間で、液冷媒配管とガス冷媒配管とが、ユニットファミリ121へと分岐し、各ユニットファミリ121内で各利用側ユニット120へと分岐しながら延び、ヒートポンプ回路を形成する。これにより、冷媒を循環させることで、熱源側ユニット110から利用側ユニット120の各々に温熱/冷熱を供給することが可能となる。
【0086】
空調システム100はさらに、第1から第3ユニットファミリ121_1、121_2、120_3それぞれの第1から第3弁ユニット200_1、200_2、200_3を備える。各ユニットファミリ121について、対応する利用側ユニット120への分岐点は、対応する弁ユニット200に配置される。第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3は、略同一の構成を有する。したがって、以下の説明において、「弁ユニット200」という用語は、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3のいずれかを意味する。弁ユニット200の詳細については後述する。
【0087】
空調システム100は、冷媒漏れに関する空調システム100(ヒートポンプシステム)の安全性を向上させるための安全システムを備える。第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3は、安全システムの一部を構成する。安全システムの詳細については後述する。
【0088】
(弁ユニットの構成)
図2は、弁ユニット200の概略構成図である。
【0089】
図2に示すように、弁ユニット200は、多分岐セレクタ300、筐体400、ダンパ440、冷媒漏れ検知器500、およびユニットコントローラ600を備える。筐体400は、多分岐セレクタ300を収容する。筐体400の内部空間401には、冷媒漏れ検知器500およびユニットコントローラ600が配置される。ただし、ユニットコントローラ600は、筐体400上または外に配置されてもよい。
【0090】
多分岐セレクタ300は、熱源側液管部310と、複数の利用側液管部311と、低圧ガス管部320と、複数の低圧ガス副管321と、複数の利用側ガス管部330と、高圧ガス管部340と、複数の高圧ガス副管341と、複数のバイパス管351と、複数の冷媒熱交換器352とを備える。多分岐セレクタ300はさらに、複数の低圧ガス制御弁361と、複数の高圧ガス制御弁362と、複数の膨張機構363と、複数の液遮断弁364と、複数のガス遮断弁365とを備える。
【0091】
利用側液管部311、低圧ガス副管321、利用側ガス管部330、高圧ガス副管341、バイパス管351、冷媒熱交換器352、低圧ガス制御弁361、高圧ガス制御弁362、膨張機構363、液遮断弁364およびガス遮断弁365の数は、対応するユニットファミリ121(図1参照)に属する利用側ユニット120の数と同じ数であってよい。
【0092】
熱源側液管部310、低圧ガス管部320、高圧ガス管部340は、対応する熱源側液配管141、熱源側低圧ガス配管142、熱源側高圧ガス配管143(図1参照)の一部を構成する。利用側液管部311は、対応する利用側液冷媒配管151(図1参照)の一部を構成する。低圧ガス副管321、高圧ガス副管341、および利用側ガス管部330は、対応する利用側ガス冷媒配管152(図1参照)の一部を構成する。利用側液管部311の一つと利用側ガス管部330の一つが、利用側ユニット120の一つの同じ利用側熱交換器と連通する。
【0093】
多分岐セレクタ300において、熱源側液管部310は利用側液管部311に分岐し、低圧ガス管部320が低圧ガス副管321に分岐し、高圧ガス管部340が高圧ガス副管341に分岐する。低圧ガス副管321の一つと高圧ガス副管341の一つが、利用側ガス管部330の一つに連結する。低圧ガス管部320がそれぞれ、低圧ガス副管321を介して利用側ガス管部330に分岐し、高圧ガス管部340が高圧ガス副管341を介して利用側ガス管部330に分岐するとも言える。また、利用側ガス管部330がそれぞれ、低圧ガス副管321の一つと高圧ガス副管341の一つを介して、低圧ガス管部320と高圧ガス管部340に分岐しているとも言える。
【0094】
各バイパス管351は、利用側液管部311にそれぞれ連結し、低圧ガス管部320にそれぞれ連結する。すなわち、バイパス管351の1つは、利用側液管部311の1つから分岐して、低圧ガス管部320に合流する。
【0095】
各膨張機構363は、バイパス管351にそれぞれ配置される。各膨張機構363は、対応する利用側液管部311からバイパス管351を流れる冷媒を減圧および膨張させるよう構成される。各膨張機構363は、電動膨張弁であってもよい。
【0096】
各冷媒熱交換器352は、バイパス管351にそれぞれ設けられる。各冷媒熱交換器352は、利用側液管部311の一つを流れる冷媒と、対応する膨張機構363により減圧膨張された対応するバイパス管351を流れる冷媒との間で熱交換を起こすよう構成される。すなわち、各冷媒熱交換器352は、対応する利用側液管部311、バイパス管351、膨張機構363と組み合わせて過冷却系(subcooling system)を形成する。各冷媒熱交換器352は、利用側液管部311の一部とバイパス管351の一部とをそれぞれ形成する2つの流路を有し、これらの間に熱伝導性を有してもよい。
【0097】
各低圧ガス制御弁361は、低圧ガス副管321にそれぞれ配置される。各低圧ガス制御弁361は、開状態と閉状態とを切り替える、すなわち、低圧ガス管部320と対応する利用側ガス管部330との間で冷媒を流通させるか否かを切り替えるよう構成される。各低圧ガス制御弁361の状態は、対応する利用側ユニット120が望む動作モードに応じて、ユニットコントローラ600によって制御される。各低圧ガス制御弁361は、電動弁であってもよい。
【0098】
各高圧ガス制御弁362は、高圧ガス副管341にそれぞれ配置される。各高圧ガス制御弁362は、開状態と閉状態とを切り替える、すなわち、高圧ガス管部340と対応する利用側ガス管部330との間で冷媒を流通させるか否かを切り替えるよう構成される。各高圧ガス制御弁362の状態は、対応する利用側ユニット120が望む動作モードに応じて、ユニットコントローラ600によって制御される。各高圧ガス制御弁362は、電動弁であってもよく、好ましくは、微小流路が形成される。
【0099】
各液遮断弁364は、利用側液管部311にそれぞれ配置される。各ガス遮断弁365は、利用側ガス管部330にそれぞれ配置される。同一の利用側熱交換器と連通する利用側液管部311および利用側ガス管部330に配置された液遮断弁364およびガス遮断弁365は、その間に延びて少なくとも利用側熱交換器を備える利用側配管部を形成する。液遮断弁364およびガス遮断弁365は各々、電動弁であってもよい。
【0100】
筐体400は、略箱形であってよく、少なくとも多分岐セレクタ300と冷媒漏れ検知器500とを収容するのに十分な大きさを有する。筐体400は、金属板、炭素繊維板、難燃性樹脂板等で形成してもよい。筐体400には、複数の配管開口部410が形成される。
【0101】
複数の配管開口部410は、多分岐セレクタ300から延びる管(以下、「延出管」という)をそれぞれ通過させることができるよう構成される。すなわち、複数の配管開口部410は、延出管の位置に対応する位置に形成されており、それぞれ対応する延出管の直径よりも大きな直径を有する。このような延出管としては、熱源側液管部310、低圧ガス管部320、高圧ガス管部340、利用側液管部311、および利用側ガス管部330が挙げられる。
【0102】
また、各延出管は、対応する外側配管、すなわち、対応する熱源側液配管141、熱源側低圧ガス配管142、熱源側高圧ガス配管143、利用側液冷媒配管151、または利用側ガス冷媒配管152(図1参照)の他の部分に連結するための配管接続部370を備えてもよい。配管接続部370が、筐体400の外側に配置されることが好ましい。
【0103】
筐体400にはさらに、第1開口部420および第2開口部430が形成される。第1開口部420と第2開口部430とは、内部空間401の中央部を基準にして筐体400の反対側に配置されることが好ましい。
【0104】
特に、R32冷媒のように大気より重い冷媒を用いる場合には、第1開口部420および第2開口部430の両方が筐体400の上部に近い位置に配置されることが好ましい。これにより、漏れた冷媒が筐体400の周囲に拡散することをより確実に防止することができ、筐体400内での冷媒漏れの発生を迅速に検出することができる。ただし、第1開口部420を筐体400の底部に近づけて配置するが、第2開口部430を筐体400の上部に近づけて配置し、底部に溜まった冷媒を効果的に排出できるようにしてもよい。いずれの場合も、第1開口部420と第2開口部430の配置は、上記に限定されない。
【0105】
ダンパ440は、第1開口部420に直接取り付ける。あるいは、ダンパ440は、筐体400の内部または外部に第1開口部420から離れて配置され、ダクトを介して第1開口部420に連結されてもよい。ダンパ440は、ダンパ440が閉じていると、空気が第1開口部420を通過するのを遮断し、ダンパ440が開いていると、空気が第1開口部420を通過するよう構成される。具体的には、ダンパ440は、フラップ441と、フラップを移動させて、フラップが第1開口部420を閉塞する閉位置と、フラップが第1開口部420を閉塞しない開位置とを切り替えるための電気モータ(図示せず)とを備える。モータは、後述するようにユニットコントローラ600によって制御される。図2に示すように、ダンパ440は、空調システム100の通常動作中すなわち冷媒漏れが生じていないときには閉鎖された、常閉ダンパであってもよい。
【0106】
第2開口部430は、内部空間401と筐体400の外側の外部空間との間で空気が通過できるよう構成される。後述するように、第2開口部430には筐体400の外側でダクトが連結する。第1開口部420のダンパ440と同期して動くよう制御されるダンパを第2開口部430に設けてもよい。
【0107】
また、筐体400には、監視・保守員が多分岐セレクタ300、冷媒漏れ検知器500、およびユニットコントローラ600の状態を確認したり、および/または必要に応じて保守扉を介して修理したりすることができるよう構成された保守扉が設けられていることが好ましい。
【0108】
筐体400の内部空間401が、第1開口部420および第2開口部430以外の部分で筐体400外側の外部空間から実質的に隔離されるように、筐体400に断熱材(insulators)450を設ける。各断熱材450は、多分岐セレクタ300の延出管の外面と配管開口部410の内縁部との間の隙間に嵌め込まれる筒状の断熱材を備えてもよい。各断熱材450は、発泡チューブ、発泡ラップ、発泡フィラー、カシメ、テープ等であってもよい。軸方向に延びる切れ目(cut line)が入った発泡チューブであれば容易に隙間に嵌めることができる。好ましくは、発泡チューブの厚さは、対応する延出管の外面と対応する配管開口部410の内面との間の隙間と等しいかまたはわずかに大きい。断熱材450は、筐体400を組み立てる前に、延出管に取り付けてもよい。
【0109】
筐体400の他の隙間(例えば、閉位置にあるフラップ441とダンパ440のハウジングとの隙間、ダンパ440のハウジングと第1開口部420の縁部との隙間、保守扉と筐体400の扉フレームとの隙間)に断熱材450を施してもよい。
【0110】
冷媒漏れ検知器500は、対応する筐体400の内部空間401における冷媒漏れの発生を検出するよう構成される。冷媒漏れ検知器500は、冷媒漏れ検知器500周囲の空気中の冷媒の濃度を検知し、検知した濃度に対応する検出値Vsを示す検知信号を継続的または定期的にユニットコントローラ600に出力するよう構成される。冷媒漏れ検知器500は、空調システム100で使用する冷媒に反応する半導体ガスセンサであってもよい。R32冷媒のように大気よりも重い冷媒を使用する場合、筐体400の内底面またはその近傍の内部空間401に冷媒漏れ検知器500を配置することが好ましい。
【0111】
後述するように、ユニットコントローラ600は、冷媒漏れ検知器500の検出値Vsに基づいて、対応する筐体400内の冷媒漏れ(以下、「冷媒漏れ」という)が発生したか否かを判断する。したがって、検出値Vsは、対応する弁ユニット200に冷媒漏れが発生したか否かを示す検出結果情報である。
【0112】
ユニットコントローラ600は、ユニットコントローラ600と弁ユニット200内の各機械との間の有線通信経路および/または無線通信経路(部分的に図示せず)を介して弁ユニット200の動作を制御するよう構成される。特に、ユニットコントローラ600は、冷媒漏れ検知器500から検出器信号を受信し、検出器信号に基づいて冷媒漏れが発生したかどうかを判断するよう構成される。冷媒漏れが発生したと判断した場合、ユニットコントローラ600は、後述する中央コントローラに漏れ信号を出力するよう構成される。漏れ信号は、漏れ検知器500が配置された弁ユニット200のユニットID(識別子)を示し、漏れ信号が示すユニットIDの弁ユニット200内で冷媒漏れが発生したことを示す。すなわち、漏れ信号は、対応する弁ユニット200に冷媒漏れが発生したか否かを示す検出結果情報である。
【0113】
ユニットコントローラ600はさらに、中央コントローラから後述するダンパ開放コマンドを受信するよう構成される。ユニットコントローラ600が属する弁ユニット200のユニットIDを指定したダンパ開放コマンドをユニットコントローラ600が受信すると、ダンパ440を開放するよう制御する。
【0114】
ユニットコントローラ600はさらに、各低圧ガス制御弁361および高圧ガス制御弁362の開閉状態を切り替え、および/または各膨張機構363(図2参照)の開度を制御して、各利用側ユニット120(図1参照)で所望の冷暖房運転を行えるよう構成されてもよい。
【0115】
例えば、冷房運転を行うべき利用側ユニット120については、対応する低圧ガス制御弁361を開き、対応する高圧ガス制御弁362および膨張機構363を閉じる。暖房運転を行うべき利用側ユニット120については、対応する高圧ガス制御弁362および膨張機構363を開き、対応する低圧ガス制御弁361を閉じる。ユニットコントローラ600は、対応する利用側ユニット120の所望の動作モードを示す信号に基づいて、このような動作を実行してもよい。このような信号は、熱源側ユニット110、対応する利用側ユニット120、および/または監視員・保守員が使用する情報出力装置(図示せず)から送信されてもよい。
【0116】
ユニットコントローラ600は、多分岐セレクタ300を制御する機能を有する第1コントローラと、冷媒漏れを判断してダンパ440を制御する機能を有する第2コントローラとに分離されてもよい。この場合、第1コントローラと第2コントローラとが異なる電源を有することも好ましい。
【0117】
ユニットコントローラ600は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路と、RAM(Random Access Memory)等のCPUが使用するワークメモリと、CPUが使用する制御プログラムや情報を記憶するROM(Read Only Memory)等の記録媒体とを備えるが、これらは図示されていない。ユニットコントローラ600は、CPUが制御プログラムを実行することにより情報処理および信号処理を行い、弁ユニット200の動作を制御するよう構成される。
【0118】
筐体400、第1開口部420、第2開口部430、ダンパ440、断熱材450、冷媒漏れ検知器500、およびユニットコントローラ600は、空調システム100の安全システムの一部を構成する。
【0119】
(安全システムの構成)
図3は、第1実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
【0120】
図3に示すように、第1実施形態に係る空調システム100の安全システム700は、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3、第1~第3個別ダクト710_1~710_3、共用ダクト720、換気装置730、および中央コントローラ800を備える。第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3はそれぞれ、第1~第3筐体400_1、400_2、400_ 3の第1~第3内部空間401_1、401_2、401_3を有する。ここでは、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3(図2参照)の多分岐セレクタ300は省略する。
【0121】
第1~第3個別ダクト710_1~710_3はそれぞれ、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3に対応する。第1~第3個別ダクト710_1~710_3は、対応する個別ダクト710に関して略同一の構成を有する。したがって、以下の説明において、「個別ダクト710」という用語は、第1~第3個別ダクト710_1~710_3のいずれかを意味する。個別ダクト710は、個別ダクト710の一端で、対応する弁ユニット200の筐体400の第2開口部430に連結する。個別ダクト710はさらに、個別ダクト710の別の端で、共用ダクト720に連結する。つまり、第1~第3個別ダクト710_1~710_3は、共用ダクト720に共通に連結される。
【0122】
換気装置730は、共用ダクト720に対して共用ダクト720の一端(以下、「第2端部」という)でまたはその近傍に配置され、共用ダクト720内の空気を第2端部に向かって吸引するよう構成される。共用ダクト720の第2端部は、屋外空間へと開放されていることが好ましい。さらに、図3に示すように、換気装置730が第2端部に配置されることも好ましい。換気装置730の動作は、中央コントローラ800によって制御される。例えば、換気装置730が中央コントローラ800から換気装置起動コマンドを受信すると、換気装置730が動作を開始する。換気装置730はファンであってもよい。換気装置730には、換気装置730の非運転時に換気装置730を空気が通過しないよう構成された逆流防止型ダンパを設けてもよい。
【0123】
共用ダクト720は、換気装置730に対して共用ダクト720の他端(以下、「第1端部」という)の側で第1~第3個別ダクト710_1~710_3に連結する。このように、第1~第3個別ダクト710_1~710_3と共用ダクト720の全体構成は、分岐ダクトを形成する。この構造の分岐部分のいずれか1つを、共用ダクト720の第1端部と見なしてもよい。例えば、第1弁ユニット200_1に向かう分岐点と第2弁ユニット200_2に向かう分岐点との間の部分を、共用ダクト720の一部、第2個別ダクト710_2の一部、および第3個別ダクト710_3の一部のいずれかと見なしてもよい。
【0124】
それゆえ、第1~第3個別ダクト710_1~710_3は、それぞれ第1~第3第2開口部430_1、430_2、430_3を介して第1~第3内部空間401_1、401_2、401_3を連結する連結構造を形成する。第1開口部420に関しては、対応する筐体400の外側の第1開口部420の全部または一部のそれぞれに延長ダクトが連結されてもよい。
【0125】
第1~第3ダンパ440_1、440_2、440_3のいずれかが開いているとき、対応する筐体400の外部の空間から換気装置730まで延びる空気経路APが形成される。この空気経路APは、ダンパ440が開いた状態の第1開口部420と、対応する内部空間401と、第2開口部430と個別ダクト710と、共用ダクト720とを通過する。この状態で換気装置730が作動すると、ダンパ440が開いた状態の筐体400の内部空間401の空気は、換気装置730の吸引力によって排出される。一方、ダンパ440が閉じた状態の筐体400については、上記空気経路APが形成されない。このため、換気装置730が作動しても、ダンパ440を閉じた状態の筐体400の内部空間401の空気は、換気装置730の吸引力によって排出されない。図3は、第1ダンパ440_1のみが開いている状況を示す図である。
【0126】
したがって、共用ダクト720と換気装置730とは、上述の連結構造に連結され、ダンパ440が開いた状態で筐体400の内部空間401から空気を排出する排出構造を形成する。
【0127】
中央コントローラ800は、例えば、熱源側ユニット110(図1参照)に配置される。中央コントローラ800は、空調システム100の空調動作を制御するためのシステムコントローラ(図示せず)の一部であってもよい。
【0128】
中央コントローラ800は、通信経路801を介して、第1~第3ユニットコントローラ600_1、600_2、600_3および換気装置730に連結される。図3に示すように、通信経路801は、第1~第3ユニットコントローラ600_1、600_2、600_3および換気装置730と中央コントローラ800とを有線および/または無線通信により直列接続してもよい。
【0129】
中央コントローラ800は、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3のいずれかで冷媒漏れが発生した場合、換気装置730を運転開始する(オンにする)よう制御するよう構成される。さらに、中央コントローラ800は、第1~第3ユニットコントローラ600_1、600_2、600_3と協働して、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3のいずれで冷媒漏れが発生したかを特定し、第1~第3ダンパ440_1、440_2、440_3を制御するよう構成される。具体的には、中央コントローラ800は、冷媒漏れの発生により換気装置730が動作する場合、冷媒が漏れた弁ユニット200のダンパ440を開いて他のダンパ440は閉じるよう、第1~第3ダンパ440_1、440_2、440_3を制御するよう構成される。これにより、上述した排出構造は、冷媒漏れのある筐体400の内部空間401から空気を排出することができる。
【0130】
中央コントローラ800は、CPU等の演算回路と、RAM等のCPUが使用するワークメモリと、CPUが使用する制御プログラムや情報を記憶するROM等の記録媒体とを備えるが、これらは図示されていない。中央コントローラ800は、CPUが制御プログラムを実行することにより情報処理および信号処理を行い、少なくとも空調システム100の安全システムの動作を制御するよう構成される。
【0131】
(ユニットコントローラの動作)
ユニットコントローラ600は、対応する筐体400における冷媒漏れの発生を検出するよう構成される。ユニットコントローラ600はさらに、冷媒漏れが発生した場合、中央コントローラ800に検出結果を通知し、中央コントローラ800の制御下で通常閉じている対応するダンパ440を開くよう制御するよう構成される。具体的には、ユニットコントローラ600は、以下の動作を行うよう構成される。
【0132】
図4は、ユニットコントローラ600の動作を示すフローチャートである。
【0133】
ステップS1010において、ユニットコントローラ600は、冷媒漏れ検知器500から出力される検出信号から検出値Vsを取得する。ユニットコントローラ600は、冷媒漏れ検知器500から連続的または定期的に出力される検知信号を受動的に受信してもよいし、冷媒漏れ検知器500に対して検出信号を定期的に出力するよう能動的に要求してもよい。得られた検出値Vsは、基本的に筐体400内の冷媒濃度の変化を反映している。
【0134】
ステップS1020において、ユニットコントローラ600は、取得した検出値Vsと検出値閾値Vthとを比較し、検出値Vsが検出値閾値Vth未満であるか否かを判定する。ユニットコントローラ600は、一定時間内の検出値Vsの移動平均値を求め、この移動平均値を検出値Vsとし、検出値閾値Vthと比較してもよい。
【0135】
検出値閾値Vthは、ユニットコントローラ600に予め記憶されている。検出値閾値Vthは、冷媒漏れの誤検出や検出漏れを極力回避するように実験等により決定された値であってもよい。検出値閾値Vthは、使用する冷媒の燃焼下限(LFL)の25%に相当する値未満に設定することが好ましい。
【0136】
検出値Vsが検出値閾値Vth以上である場合(S1020:No)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1030に進む。検出値Vsが検出値閾値Vth未満である場合(S1020:Yes)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1040に進む。S1010からS1030までのステップにより、冷媒漏れ検知器500は、対応するユニットコントローラ600を介して中央コントローラ800に検出結果情報を送信すると言える。
【0137】
ステップS1030において、ユニットコントローラ600は、ユニットコントローラ600が属する弁ユニット200のユニットID(以下、「自ユニットID」という)を示す漏れ信号を中央コントローラ800に送信する。ユニットコントローラ600は、漏れ信号を中央コントローラ800に直接送信するか、または一以上の他のユニットコントローラ600を介して中央コントローラ800に間接的に送信してもよい。後者の場合、ユニットコントローラ600は、漏れ信号を他のユニットコントローラ600に送信し、漏れ信号は各ユニットコントローラ600によって順次中継して伝達されていく。例えば、通信経路801が図3に示すように配置される場合、第3弁ユニット200_3のユニットコントローラ600_3は、漏れ信号を中央コントローラ800に直接送信し、第2弁ユニット200_2のユニットコントローラ600_2は、第3弁ユニット200_3のユニットコントローラ600_3を介して中央コントローラ800へと漏れ信号を送信する。
【0138】
ユニットコントローラ600は、ユニットコントローラ600と中央コントローラ800との間の通信経路に関するネットワーク情報に基づいて、漏れ信号を送信すべきコントローラを決定してもよい。ネットワーク情報は、ユニットコントローラ600に予め記憶されていてもよいし、他のユニットコントローラ600または複数の他のユニットコントローラ600および/または中央コントローラ800に問い合わせることによって取得してもよい。
【0139】
ステップS1040において、ユニットコントローラ600は、他のユニットコントローラ600から送信された漏れ信号をユニットコントローラ600で受信したかどうかを判断する。漏れ信号を受信した場合(S1040:Yes)、ユニットコントローラ600は、ステップS1050へ移行する。漏れ信号を受信していない場合(S1040:No)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1060へ移行する。
【0140】
ステップS1050において、ユニットコントローラ600は、受信した漏れ信号を中央コントローラ800に向けて転送する。ユニットコントローラ600は、受信した漏れ信号を中央コントローラ800に直接送信するか、または一以上の他のユニットコントローラ600を介して中央コントローラ800に間接的に送信してもよい。ユニットコントローラ600は、上述のネットワーク情報に基づいて、漏れ信号を送信すべきコントローラを決定してもよい。
【0141】
ステップS1060において、ユニットコントローラ600は、換気装置起動コマンドをユニットコントローラ600で受信したかどうかを判断する。後述するように、換気装置起動コマンドは、中央コントローラ800から送信されるコマンドである。換気装置起動コマンドを受信した場合(S1060:Yes)、ユニットコントローラ600は、ステップS1070へ移行する。換気装置起動コマンドを受信していない場合(S1060:No)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1080へ移行する。
【0142】
ステップS1070において、ユニットコントローラ600は、受信した換気装置起動コマンドを換気装置730へと転送する。ユニットコントローラ600は、受信した換気装置起動コマンドを換気装置730に直接送信するか、または一以上の他のユニットコントローラ600を介して換気装置730に間接的に送信してもよい。ユニットコントローラ600は、上述のネットワーク情報に基づいて、換気装置起動コマンドを送信すべきユニットコントローラ600を決定してもよい。
【0143】
ステップS1080において、ユニットコントローラ600は、中央コントローラ800から送信されたダンパ開放コマンドをユニットコントローラ600で受信したかどうかを判断する。ダンパ開放コマンドを受信した場合(S1080:Yes)、ユニットコントローラ600は、ステップS1090へ移行する。ダンパ開放コマンドを受信していない場合(S1080:No)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1110へ移行する。
【0144】
ステップS1090では、ユニットコントローラ600はさらに、受信したダンパ開放コマンドが、ダンパ440を開放すべき弁ユニット200として、ユニットコントローラ600が属する弁ユニット200(以下、「自弁ユニット」という)を指定しているか否かを判断する。ユニットコントローラ600は、受信したダンパ開放コマンドが自ユニットIDを指定しているか否かに基づいて、この判断を行ってもよい。ダンパ開放コマンドが自弁ユニットを指定していない場合(S1090:No)、ユニットコントローラ600は、ステップS1100に進む。ダンパ開放コマンドが自弁ユニットを指定している場合(S1090:Yes)、ユニットコントローラ600は、後述のステップS1120に進む。
【0145】
ステップS1100において、ユニットコントローラ600は、ダンパ開放コマンドを受信していない他のユニットコントローラ600へと受信したダンパ開放コマンドを転送する。ユニットコントローラ600は、上述のネットワーク情報に基づいて、受信したダンパ開放コマンドを送信すべきユニットコントローラ600を決定してもよい。
【0146】
ステップS1110において、ユニットコントローラ600は、動作の終了が指定されたかどうかを判断する。この指定は、ユーザ操作によるものであってもよいし、他の装置によるものであってもよいし、ユニットコントローラ600自身によるものであってもよい。動作の終了が指定されていない場合(S1110:No)、ユニットコントローラ600は、ステップS1010に戻って、上記の取得ステップと判定ステップとを繰り返す。動作の終了が指定されている場合(S1110:Yes)、ユニットコントローラ600は動作を終了させる。
【0147】
ステップS1120では、ユニットコントローラ600は、自弁ユニット200のダンパ440を開くよう制御し、その動作を終了させる。例えば、ユニットコントローラ600は、ダンパ440への電力供給を制御することにより、ダンパ440の状態を制御する。ユニットコントローラ600は、ユニットコントローラ600に設けたスピーカ、電灯、表示装置、および/または通信インターフェースからの音、光、視覚画像、および/または通信信号によって警報情報を出力してもよい。
【0148】
ステップS1040およびS1050は、ステップS1010~S1030の前に実行してもよい。ステップS1080~S1100も、ステップS1040およびS1050の前に実行してもよい。
【0149】
以上の動作により、自弁ユニット200に冷媒漏れが発生した場合、各ユニットコントローラ600は、中央コントローラ800に冷媒漏れの発生を報告し、中央コントローラ800から指示された場合に自弁ユニット200のダンパ440を開くように制御することが可能である。
【0150】
(中央コントローラの動作)
中央コントローラ800は、弁ユニット200のいずれかにおける冷媒漏れの発生が報告された場合に、換気装置730の動作を開始するよう制御するように構成される。中央コントローラ800はさらに、対応するユニットコントローラ600に指示することにより、冷媒漏れの弁ユニット200内のダンパ440を開くよう制御するように構成される。具体的には、中央コントローラ800は、以下の動作を行うよう構成される。
【0151】
図5は、中央コントローラ800の動作を示すフローチャートである。
【0152】
ステップS2010において、中央コントローラ800は、ユニットコントローラ600のうちの1つから送信された漏れ信号が中央コントローラ800で受信されたかどうかを判断する。この漏れ信号は、図4のステップS1030においてユニットコントローラ600が発する信号である。漏れ信号を受信した場合(S2010:Yes)、中央コントローラ800は、後述のステップS2030へ移行する。漏れ信号を受信していない場合(S2010:No)、中央コントローラ800は、後述のステップS2020へ移行する。
【0153】
ステップS2020において、中央コントローラ800は、動作の終了が指定されたかどうかを判断する。この指定は、ユーザ操作によるものであってもよいし、他の装置によるものであってもよいし、中央コントローラ800自身によるものであってもよい。動作の終了が指定されていない場合(S2020:No)、中央コントローラ800は、ステップS2010に戻って、上記の判定ステップを繰り返す。動作の終了が指定されている場合(S2020:Yes)、中央コントローラ800は動作を終了させる。
【0154】
ステップS2030において、中央コントローラ800は、受信した漏れ信号から、漏れ信号が示すユニットIDを取得する。このユニットIDは、漏れ信号の発信元、すなわち冷媒漏れの弁ユニット200を示す。これにより、中央コントローラ800は、冷媒漏れの弁ユニット200を特定することができる。
【0155】
ステップS2040において、中央コントローラ800は、換気装置730に換気装置起動コマンドを送信し、換気装置730が動作を開始するよう制御する。換気装置起動コマンドは、換気装置730に直接送信してもよいし、ユニットコントローラまたは複数のユニットコントローラ600によって中継して伝達されてもよい。例えば、中央コントローラ800は、電力供給を制御することにより、換気装置730の動作を制御する。
【0156】
ステップS2050において、中央コントローラ800は、少なくとも受信した漏れ信号の発信元に対して、ダンパ440を開くべき弁ユニット200として発信元を指定するダンパ開放コマンドを送信する。中央コントローラ800は、発信元のユニットIDを使用してこの指定を行ってもよい。ダンパ開放コマンドは、冷媒漏れのある弁ユニット200のユニットコントローラ600に直接送信してもよいし、ユニットコントローラまたは複数のユニットコントローラ600によって順次中継して伝達されてもよい。その後、中央コントローラ800は、その動作を終了する。中央コントローラ800は、図4のステップS2050およびステップS1120により、対応するユニットコントローラ600を介して、冷媒漏れの弁ユニット200のダンパ440にダンパ開放コマンドを送信していると言える。
【0157】
中央コントローラ800は、中央コントローラ800に設けたスピーカ、電灯、表示装置、および/または通信インターフェースからの音、光、視覚画像、および/または通信信号によって警報情報を出力してもよい。この場合、アラーム情報は、冷媒漏れの弁ユニット200のユニットIDや、弁ユニット200の場所を示す情報等、冷媒漏れの弁ユニット200を特定できる情報を出力することにより、冷媒漏れの弁ユニット200を示すことが好ましい。
【0158】
ステップS2040は、ステップS2030の前に実行してもよく、ステップS2050は、ステップS2040の前に実行してもよい。ただし、対応するダンパ440を開く前に、換気装置730の動作を開始することが好ましい。中央コントローラ800は、換気装置730の性能が、ダンパ440が開いても対応する筐体400内の内気が第1開口部420から流出しない程度に高くなった場合にのみ対応するダンパ440が開くように、ダンパ開放コマンドの送信タイミングを制御してもよい。
【0159】
以上の動作により、いずれかの弁ユニット200で冷媒漏れが発生した場合、中央コントローラ800は、各ユニットコントローラ600と協働して、換気装置730を作動開始させ、冷媒漏れの弁ユニット200のダンパ440を開放するよう制御することが可能である。
【0160】
(第1実施形態の効果)
以上のように、第1実施形態に係る空調システム100は、複数の多分岐セレクタ300を備え、安全システム700を有する。安全システム700は、多分岐セレクタ300をそれぞれ収容し冷媒漏れ検知器500をそれぞれ備える複数の筐体400を備える。安全システム700はさらに、筐体400の内部空間401をその第2開口部430を介して連結する連結構造として機能する複数の個別ダクト710を備える。安全システム700はさらに、連結構造に連結された排出構造として、共用ダクト720および換気装置730を備える。排出構造は、冷媒漏れの発生が検出された場合、冷媒漏れが発生した筐体400の内部空間401から空気を排出するよう構成される。
【0161】
これにより、多分岐セレクタ300のいずれかに冷媒漏れが発生した場合、安全システム700は、この冷媒漏れを適切かつ迅速に検知し、この多分岐セレクタを覆っている筐体400内の空気を外部空間に排出して筐体400の内部空間401における漏れ冷媒の濃度を減少させることができる。これにより、離れた場所に配置された多分岐セレクタ300における冷媒漏れに対する空調システム100の安全性を向上させることができる。また、他の筐体または複数の他の筐体400内の空気は排出されない。したがって、換気装置730に要求される風量容量を減少させることができるので、換気装置730の寸法および/または換気装置730の数を減らすことができる。
【0162】
(第1実施形態の変形例)
上述した第1実施形態において、各ユニットコントローラ600は、中央コントローラ800に直列に連結されている。ただし、ユニットコントローラ600の全部または一部は、個々の通信経路を介して中央コントローラ800に個別に連結されてもよい。個別連結されたユニットコントローラ600については、中央コントローラ800は、個別通信路により他のユニットコントローラ600または他の複数のユニットコントローラ600と区別し、漏れ信号の送信元に応答するだけで適切にダンパ開放コマンドを送信することができる。
【0163】
第1実施形態では、漏れ信号は、冷媒の漏れが発生した弁ユニット200のユニットIDを示す。ただし、ユニットコントローラ600が、漏れ信号の送信を記録して、送信から所定時間以内にダンパ開放コマンドを受信した場合にのみ送信された漏れ信号に対する応答としてダンパ開放コマンドを識別するよう構成されていれば、漏れ信号は必ずしも任意のユニットIDを示す必要はない。中央コントローラ800とユニットコントローラ600とが、ユニットコントローラ600に割り当てられた異なるタイムスロットを用いて通信する場合にも、漏れ信号が必ずしも任意のユニットIDを示す必要はない。
【0164】
あるいは、ユニットコントローラ600は、自弁ユニット200の冷媒漏れが発生したことを示す検出結果情報を受信した場合に、自弁ユニット200のダンパ440を開放するよう制御してもよい。この場合、中央コントローラ800は、ダンパ開放コマンドをユニットコントローラ600に送信する必要はない。ユニットコントローラ600は、換気装置730が動作を開始してからダンパ440が開くように、漏れ信号を送信してから所定時間が経過したときにダンパ440を開くよう制御してもよい。
【0165】
通信経路801の接続経路は、図3に示す経路に限定されない。例えば、ユニットコントローラ600および換気装置730の全てまたは一部は、個々の有線/無線通信路を介して中央コントローラ800に直接接続されてもよい。
【0166】
(第2実施形態)
(安全システムの構成)
上述した本発明の第1実施形態では、各筐体400の内部空間401が互いに並列に連結されている。一方、以下に説明する本発明の第2実施形態では、各筐体400の内部空間401が互いに直列に連結されている。
【0167】
第2実施形態に係る安全システムは、第1実施形態の空調システムと同様の構成を有する空調システムに適用してもよい。第2実施形態に係る安全システムの各弁ユニットの構成は、第1実施形態と同様であってよい。第1実施形態と実質的に同一の要素およびステップには、第1実施形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0168】
図6は、第2実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
【0169】
図6に示すように、第2実施形態に係る空調システム100(図1参照)の安全システム700aは、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3、第1および第2連結ダクト740a_1、740a_2、共用ダクト720a、換気装置730、および中央コントローラ800aを備える。安全システム700aは、第1実施形態の個別ダクト710を有していない。
【0170】
第1連結ダクト740a_1は、一方が第2弁ユニット200_2の筐体400_2の第2開口部430_2に連結され、他方が第1弁ユニット200_1の筐体400_1の第1開口部420_1に連結される。第2連結ダクト740a_2は、一方が第3弁ユニット200_3の筐体400_3の第2開口部430_3に連結され、他方が第2弁ユニット200_2の筐体400_2の第1開口部420_2に連結される。
【0171】
それゆえ、第1および第2連結ダクト740a_1~740a_2は、第1開口部420_1、420_2および第2開口部430_2、430_3を介して第1~第3内部空間401_1、401_2、401_3を連結する連結構造を形成する。
【0172】
第1弁ユニット200_1の筐体400_1の第2開口部430_1には、共用ダクト720aが連結される。換気装置730は、共用ダクト720aに対して共用ダクト720の一端(以下、「第2端部」という)でまたはその近傍に配置され、共用ダクト720a内の空気を第2端部に向かって吸引するよう構成される。共用ダクト720aの第2端部は、屋外空間へと開放されていることが好ましい。さらに、図6に示すように、換気装置730が第2端部に配置されることも好ましい。第2実施形態の換気装置730の静圧容量は、第1実施形態の換気装置730と異なっていてもよい。筐体400上を延びて換気装置730に至る空気経路APに沿って換気装置730から最も遠い第1開口部420である、第3弁ユニット200_3の第1開口部420_3には、対応する筐体400_3の外面側に延長ダクトが接続されてもよい。
【0173】
したがって、共用ダクト720aと換気装置730とは、上述の連結構造に連結され、全てのダンパ440が開いた状態で各筐体400の内部空間401から空気を排出するよう構成された排出構造を形成する。
【0174】
中央コントローラ800aの位置、他の要素との接続、および物理的な構成は、第1実施形態による中央コントローラ800のものと同じであってよい。ただし、中央コントローラ800aの動作は、第1実施形態の中央コントローラ800の動作とはわずかに異なる。中央コントローラ800aは、冷媒漏れの発生によって換気装置730が動作した場合に、すべての弁ユニット200のダンパ440を開くよう制御するように構成される。
【0175】
(中央コントローラの動作)
弁ユニット200のいずれかにおける冷媒漏れの発生が報告された場合、中央コントローラ800aは、第1実施形態と同様に、換気装置730の運転を開始するよう制御するように構成される。一方、中央コントローラ800aは、全ての弁ユニット200のダンパ440を開くよう制御するように構成される。
【0176】
図7は、中央コントローラ800aの動作を示すフローチャートである。
【0177】
図7に示すように、中央コントローラ800aは、図5のステップS2010からS2040と同じステップを実行する。ただし、中央コントローラ800aは、図5のステップS2050に代えて、ステップS2050aを実行する。
【0178】
ステップS2050aにおいて、中央コントローラ800aは、全ての弁ユニット200にダンパ開放コマンドを送信する。具体的には、中央コントローラ800aは、漏れ信号の発信元とこの発信元に直列接続された全ての弁ユニット200を指定するダンパ開放コマンドを送信する。中央コントローラ800aは、各弁ユニット200のユニットIDを使用してこの指定を行ってもよい。その後、中央コントローラ800は、その動作を終了する。第1実施形態で述べたように、中央コントローラ800aは、アラーム情報を出力してもよく、および/またはダンパ開放コマンドの送信タイミングを制御してもよい。
【0179】
第1~第3ダンパ440_1、440_2、440_3(図6参照)すべてが開いているとき、第3弁ユニット200_3の筐体400_3の外部空間から換気装置730まで延びる空気経路APが形成される。この空気経路APは、第3弁ユニット200_3の第1開口部420_3、内部空間401_3、および第2開口部430_3、第2連結ダクト740a_2、第2弁ユニット200_2の第1開口部420_2、内部空間401_2、および第2開口部430_2、第1連結ダクト740a_1、第1弁ユニット200_1の第1開口部420_1、内部空間401_1、および第2開口部430_1と共用ダクト720aとを通過する。この状態で換気装置730が作動すると、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3の各筐体400の内部空間401の空気は、換気装置730の吸引力によって排出される。
【0180】
(第2実施形態の効果)
このように、第2実施形態に係る空調システム100は、複数の多分岐セレクタ300を備え、安全システム700aを有する。安全システム700aは、多分岐セレクタ300をそれぞれ収容し冷媒漏れ検知器500をそれぞれ備える複数の筐体400を備える。安全システム700aはさらに、各筐体400の内部空間401をその第1開口部420と第2開口部430とを介して連結する連結構造として機能する複数の連結ダクト740aを備える。安全システム700aはさらに、連結構造に連結された排出構造として、共用ダクト720aおよび換気装置730を備える。排出構造は、冷媒漏れの発生が検出された場合、冷媒漏れが発生した筐体400を含む全ての筐体400の各内部空間401から空気を排出するよう構成される。
【0181】
これにより、多分岐セレクタ300のいずれかに冷媒漏れが発生した場合、安全システム700aは、この冷媒漏れを適切かつ迅速に検知し、この多分岐セレクタ300を覆っている筐体400内の空気を外部空間に排出して筐体400の内部空間401における漏れ冷媒の濃度を減少させることができる。これにより、離れた場所に配置された各多分岐セレクタ300内の弁からの冷媒漏れに対する空調システムの安全性を向上させることができる。さらに、第1実施形態の構成と比較して、筐体400と換気装置730とを接続するためのダクトの全長を短くすることができるので、システムの設置コストを低減することができる。
【0182】
(第2実施形態の変形例)
以上説明した第2実施形態において、換気装置730は、共用ダクト720aを介して筐体400の1つに連結される。なお、短い長さの共用ダクト720aと換気装置730とを単一の要素として一体化してもよい。筐体の1つが屋外空間に露出する部分を有する場合、その部分にこのような単一の要素を配置してもよい。
【0183】
第2実施形態では、漏れ信号は、冷媒漏れが発生した弁ユニット200のユニットIDにより漏れ信号の発信元を示し、中央コントローラ800aが冷媒漏れの弁ユニット200を特定する。ただし、漏れ信号は、必ずしも漏れ信号の発信元を示す必要はなく、ましてやユニットIDを示す必要はなく、中央コントローラ800aは、必ずしも冷媒漏れのある弁ユニット200を特定する必要はない。
【0184】
通信経路801の接続経路は、図6に示す経路に限定されない。例えば、ユニットコントローラ600の全てまたは一部および換気装置730は、個々の有線/無線通信路を介して中央コントローラ800aに直接接続されてもよい。
【0185】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態として、第1および第2実施形態の構成を組み合わせた構成について説明する。第3実施形態に係る安全システムは、第1および第2実施形態の空調システムと同様の構成を有する空調システムに適用してもよい。第3実施形態に係る安全システムの各弁ユニットの構成は、第1および第2実施形態と同様であってよい。第1および第2実施形態と実質的に同一の要素およびステップには、第1および第2実施形態と同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0186】
図8は、第3実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
【0187】
図8に示すように、第3実施形態に係る空調システム100(図1参照)の安全システム700bは、第1~第3弁ユニット200_1、200_2、200_3、第1および第2個別ダクト710_1、710_2、第2連結ダクト740a_2、共用ダクト720b、換気装置730、および中央コントローラ800bを備える。安全システム700bは、第1実施形態の第3個別ダクト710_3および第2実施形態の第1連結ダクト740a_1を有していない。
【0188】
第1個別ダクト710_1は、第1弁ユニット200_1の筐体400_1の第2開口部430_1を共用ダクト720bに連結する。第2個別ダクト710_2は、第2弁ユニット200_2の筐体400_2の第2開口部430_2を共用ダクト720bに連結する。第2連結ダクト740a_2は、第3弁ユニット200_3の筐体400_3の第2開口部430_3を、第2弁ユニット200_2の筐体400_2の第1開口部420_2に連結する。
【0189】
したがって、第1および第2個別ダクト710_1、710_2と第2連結ダクト740a_2とは、第1開口部420_2および第2開口部430_1、430_2、430_3を介して第1~第3内部空間401_1、401_2、401_3を連結する連結構造を形成する。
【0190】
換気装置730は、共用ダクト720bに対して共用ダクト720bの一端(以下、「第2端部」という)でまたはその近傍に配置され、共用ダクト720b内の空気を第2端部に向かって吸引するよう構成される。図8に示すように、換気装置730が第2端部に配置されることも好ましい。換気装置730の静圧容量は、第1および第2実施形態に係る換気装置730とは異なっていてもよい。
【0191】
したがって、共用ダクト720bと換気装置730とは、上述の連結構造に連結された排出構造であって、第1弁ユニット200_1のダンパ440_1が開いているとき、第1弁ユニット200_1の筐体400_1の内部空間401_1から空気を排出し、第2および第3弁ユニット200_2、200_3のダンパ440_2、440_3が共に開いているとき、第2および第3弁ユニット200_2、200_3の筐体400_2、400_3の内部空間401_2、401_3から空気を排出するよう構成された排出構造を形成する。
【0192】
中央コントローラ800bの位置、他の要素との接続、および物理的な構成は、第1実施形態による中央コントローラ800のものと同じであってよい。中央コントローラ800bは、第1実施形態に係る中央コントローラ800と基本的に同様の動作を行うよう構成される。中央コントローラ800bは、冷媒漏れの発生によって換気装置730が動作した場合に、すべてまたは一部の弁ユニット200のダンパまたは複数のダンパ440を開くよう制御する。
【0193】
ただし、中央コントローラ800bの動作は、第1および第2実施形態の中央コントローラ800、800aの動作とはわずかに異なる。中央コントローラ800bは、弁ユニット200に冷媒漏れが発生した場合に、各弁ユニット200と開くべきダンパ440との関係を定義するグループ化テーブルを有する。中央コントローラ800bは、グループ化テーブルに基づいて、ダンパ440を開くべき弁ユニット200を決定するよう構成される。
【0194】
図9は、中央コントローラ800bが使用するグループ化テーブルを示す。
【0195】
図9に示すように、グループ化テーブル910bは、ダンパ開放コマンドの送信先912bと、漏れ信号の発信元911bとして各弁ユニット200または複数のユニット200とを関連付ける。送信先912bは、発信元911bとしての弁ユニット200で冷媒漏れが発生した場合に、ダンパまたは複数のダンパ440を開放すべき弁ユニットまたは複数の弁ユニット200である。
【0196】
すなわち、グループ化テーブル910bは、弁ユニット200のグループを示す。複数の弁ユニット200を含むグループにおいて、各筐体400の内部空間401は、換気装置730に直列に連結されている。異なるグループ間では、各筐体400の内部空間401が換気装置730に並列に連結されている。各弁ユニット200は、それらのユニットIDによってグループ化テーブル910bにおいて定義されてもよい。
【0197】
例えば、発信元911bとしての第1弁ユニット200_1のユニットID「U1」は、送信先912bとしての第1弁ユニット200_1のユニットID「U1」のみと関連づけられる。発信元911bとしての第2および第3弁ユニット200_2、200_3のユニットID「U2」、「U3」はそれぞれ、送信先912bとしての第2および第3弁ユニット200_2、200_3のユニットID「U2」、「U3」と関連づけられる。グループ化テーブル910bは、中央コントローラ800bに予め記憶されている。中央コントローラ800bは、グループ化テーブル910bの手動設定を受け付けてもよい。
【0198】
なお、グループ化テーブル910bの構造は、図9に示すものに限定されない。例えば、グループ化テーブル910bは、連結構造によって換気装置730に直列に連結された弁ユニット200がグループを形成するように、弁ユニット200のグループを単純に定義してもよい。連結構造により、換気装置730に対して他の弁ユニット200が直列に連結されていない単一の弁ユニット200も、グループを形成してもよい。各グループは、ユニットコントローラ600の識別子を使用することによって定義してもよい。
【0199】
中央コントローラ800bは、図5のステップS2010からS2050と略同じステップを実行する。ただし、ステップS2030またはS2050において、中央コントローラ800bは、受信した漏れ信号の発信元911bおよびグループ化テーブル910bに基づいて、ダンパ440を開くべき弁ユニット200を決定する。したがって、例えば第1弁ユニット200_1に冷媒漏れが発生している場合、中央コントローラ800bは、第1弁ユニット200_1を指定するダンパ開放コマンドを送信する。
【0200】
これにより、図8に示すように、第1弁ユニット200_1のダンパ440_1のみが開き、第1弁ユニット200_1の第1開口部420_1、内部空間401_1、第2開口部430_1、第1個別ダクト710_1、共用ダクト720bを通過する空気経路APが生成される。第2および第3弁ユニット200_2、200_3のダンパ440_2、440_3は閉じたままである。このように、換気装置730は、第1弁ユニット200_1の内部空間401_1から空気を吸引するが、第2および第3弁ユニット200_2、200_3の内部空間401_2、401_3からは空気を吸引しない。
【0201】
したがって、第3実施形態に係る空調システム100は、互いに直列接続された筐体400がさらに他の筐体400と並列接続された安全システム700bを備える。このような複雑な構成の連結構造であっても、換気装置730に要求される静圧容量を低減しつつ、冷媒漏れが発生した筐体400の内部空間401から空気を排出することが可能である。
【0202】
第1および第2実施形態で述べた変形例は、第3実施形態に係る安全システム700bに適用してもよい。ただし、上述したグループ化テーブル910bと、このグループ化テーブル910bに基づく弁ユニット200のダンパ440の開放判定は、第1および第2実施形態にも適用できる。
【0203】
通信経路801の接続経路は、図8に示す経路に限定されない。例えば、ユニットコントローラ600の全てまたは一部および換気装置730は、個々の有線/無線通信路を介して中央コントローラ800bに直接接続されてもよい。
【0204】
第1および第2実施形態に係る構成の組み合わせの他のパターンも考えられる。例えば、第1弁ユニット200の第1開口部420には、第2および第3弁ユニット200_2、200_3の第2開口部430_2、430_3を分岐ダクトによって並列に連結してもよい。このような構成において、分岐ダクトは、第1実施形態の個別ダクト710_2、710_3と、第2実施形態の連結ダクト740a_1、740a_2の両方として機能する。
【0205】
いずれにしても、中央コントローラ800bは、換気装置730から延び、冷媒が漏れた筐体400の内部空間401を通過し、筐体400の外部空間に達するライン上に存在する全てのダンパまたは複数のダンパ440を開くよう構成される。中央コントローラ800bは、他のダンパまたは他の複数のダンパを閉じたままにしておくことが好ましい。
【0206】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態として、連結構造と排出構造が複数組ある構成について説明する。第4実施形態に係る安全システムは、第1~第3実施形態の空調システムと同様の構成を有する空調システムに適用してもよい。第4実施形態に係る安全システムの各弁ユニットの構成は、第1~第3実施形態と同様であってよい。第1~第3実施形態と実質的に同一の要素およびステップには、第1~第3実施形態と同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0207】
図10は、第4実施形態に係る安全システムの概略構成図である。
【0208】
図10に示すように、第4実施形態に係る空調システム100(図1参照)の安全システム700cは、第1セクション701c_1、第2セクション701c_2、および中央コントローラ800cを備える。
【0209】
第1セクション701c_1は、第1および第2弁ユニット200_1、200_2、第1および第2個別ダクト710_1、710_2、第1共用ダクト720_1、および第1換気装置730_1を備える。ただし、各セクション701c内の弁ユニット200の数は2つに限定されず、1つ、3つ、またはそれ以上であってもよい。第1実施形態と同様に、第1および第2弁ユニット200_1、200_2は、互いに並列に接続され、第1および第2個別ダクト710_1、710_2を介して第1共用ダクト720_1に共通に連結される。第1および第2弁ユニット200_1、200_2のユニットコントローラ(図10には示さず、図3参照)および第1換気装置730_1は、通信経路801によって中央コントローラ800cに接続される。
【0210】
第2セクション701c_2は、第3および第4弁ユニット200_3、200_4、連結ダクト740a、第2共用ダクト720_2、および第2換気装置730_2を備える。第2実施形態と同様に、第3および第4弁ユニット200_3、200_4は、連結ダクト740aを介して互いに接続され、第2共用ダクト720_2に直列に連結する。第3および第4弁ユニット200_3、200_4のユニットコントローラ(図10には示さず、図6参照)および第2換気装置730_2は、通信経路801によって中央コントローラ800cに接続される。
【0211】
中央コントローラ800cの位置、他の要素との接続、および物理的な構成は、第3実施形態による中央コントローラ800bのものと同じであってよい。中央コントローラ800cは、第3実施形態に係る中央コントローラ800bと基本的に同様の動作を行うよう構成される。中央コントローラ800cは、冷媒漏れの発生によって換気装置730が動作した場合に、すべてまたは一部の弁ユニット200のダンパまたは複数のダンパ440(図10には示さず、図3および図6参照)を開くよう制御する。中央コントローラ800cは、第3実施形態の中央コントローラ800bと同様に、グループ化テーブルに基づいて、ダンパ440を開くべき弁ユニット200を決定する。
【0212】
ただし、中央コントローラ800cは、異なる種類のグループ化テーブルを使用して、動作を開始すべき換気装置をさらに決定する。具体的には、中央コントローラ800cは、冷媒漏れが発生したセクションのみの換気装置を運転開始するよう制御するように構成される。
【0213】
図11は、中央コントローラ800cが使用するグループ化テーブルを示す。
【0214】
図11に示すように、グループ化テーブル910cは、ダンパ開放コマンドの送信先または複数の送信先912bに加えて、作動すべき換気装置913cを、漏れ信号の発信元911bとしての各弁ユニット200と関連付ける。つまり、グループ化テーブル910cは、各セクション701cを示す。各セクションにおいて、各弁ユニット200の内部空間401(図10では不図示、図2参照)は、同じ換気装置に連結されているが、他のセクションの換気装置には連結されていない。各換気装置は、それらの換気装置IDによってグループ化テーブル910cにおいて定義されてもよい。
【0215】
例えば、発信元911bとしての第1弁ユニット200_1のユニットID「U1」は、送信先912bとしての第1弁ユニット200_1のユニットID「U1」と作動すべき換気装置913cとしての第1換気装置730_1の換気装置ID「F1」とに関連づけられる。発信元911bとしての第2弁ユニット200_2のユニットID「U2」は、送信先912bとしての第2弁ユニット200_2のユニットID「U2」と作動すべき換気装置913cとしての第1換気装置730_1の換気装置ID「F1」とに関連づけられる。発信元911bとしての第3弁ユニット200_3のユニットID「U3」と第4弁ユニット200_4のユニットID「U4」は、送信先912bとしての第3および第4弁ユニット200_3、200_4のユニットID「U3」および「U4」と作動すべき換気装置913cとしての第2換気装置730_2の換気装置ID「F2」とに関連づけられる。グループ化テーブル910cは、中央コントローラ800cに予め記憶されている。中央コントローラ800cは、グループ化テーブル910cの手動設定を受け付けてもよい。
【0216】
なお、グループ化テーブル910cの構造は、図11に示すものに限定されない。例えば、グループ化テーブル910cは、連結構造によって同一の換気装置730に直列に連結された各弁ユニット200がグループを形成し、そのグループを対応する換気装置730と関連付けるように、弁ユニット200の各グループを単純に定義してもよい。連結構造により、換気装置730に対して他の弁ユニット200が直列に接続されていない単一の弁ユニット200も、グループを形成してもよい。各グループは、ユニットコントローラ600の識別子を使用することによって定義してもよい。
【0217】
中央コントローラ800cは、図5のステップS2010からS2050と略同じステップを実行する。ただし、中央コントローラ800cは、ステップS2030またはS2040において、受信した漏れ信号の発信元とグループ化テーブル910cとに基づいて動作を開始すべき換気装置を決定し、ステップS2030またはS2050において、受信した漏れ信号の発信元とグループ化テーブル910cに基づいてそれぞれのダンパ440を開放すべき弁ユニットまたは複数の弁ユニット200を決定する。
【0218】
このように、例えば第1弁ユニット200_1に冷媒漏れが発生している場合、中央コントローラ800cは、第1換気装置730_1にその運転を開始するための換気装置起動コマンドを送信し、第1弁ユニット200_1を指定するダンパ開放コマンドを送信する。この結果、換気装置のうち第1換気装置730_1のみが動作し、弁ユニット200のうち第1弁ユニット200_1のみのダンパが開く。換気装置起動コマンドは、動作を開始すべき換気装置の換気装置IDを指定してもよい。
【0219】
したがって、第4実施形態に係る空調システム100は、共通の中央コントローラ800cが制御する複数のセクション701cに区分された安全システム700cを備える。中央コントローラ800cは、いずれかの弁ユニット200に冷媒漏れが発生した場合、冷媒漏れが発生したセクション701cのみの換気装置を運転開始するよう制御し、冷媒漏れの弁ユニット200から空気を排出するために開くべきダンパまたは複数のダンパ440のみを制御するよう構成される。これにより、消費電力を抑えつつ、適切に空気の排出を行うことができる。
【0220】
空調システム100の各弁が大きく離れた場所に配置されている場合、すべての弁ユニット200から同じ共通の換気装置までダクトを延長すると、ダクトの全長および換気装置に必要な静圧容量が増加する。さらに、設置場所の制約により、全ての弁ユニット200をカバーする連続したダクトを引くことが困難な場合もある。このような場合には、複数の安全システムを配置することが可能である。ただし、各安全システムに中央コントローラを設けるのは経済的ではない。そこで、第4実施形態に係る安全システム700cによって、各弁が広く離れた位置に配置されている場合でも、弁からの冷媒漏れに関する空調システム100の安全性を低コストで向上させることが可能となる。
【0221】
通信経路801の接続経路は、図10に示す経路に限定されない。例えば、第2セクション701c_2の第3および第4弁ユニット200_3、200_4および第2換気装置730_2は、第1セクション701c_1から独立して別の通信経路801によって中央コントローラ800cに接続されてもよく、第1セクション701c_1のユニットコントローラまたは複数のユニットコントローラ600を介して中央コントローラ800cに間接的に接続されてもよい。各ユニットコントローラ600の全てまたは一部および各換気装置730は、個々の有線/無線通信路を介して中央コントローラ800cに直接接続されてもよい。各弁ユニット200の筐体400のダクトによる接続経路も、図10に示す経路に限定されない。
【0222】
(第1~第4実施形態の変形例)
安全システム700、700a、700b、700cの上述の構成および動作は、状況に応じて修正してもよい。
【0223】
例えば、弁ユニット200は、熱源側液管部310、利用側液管部311、低圧ガス管部320、低圧ガス副管321、高圧ガス管部340、高圧ガス副管341、利用側ガス管部330、低圧ガス制御弁361、および高圧ガス制御弁362を備えるが、バイパス管351、冷媒熱交換器352、および膨張機構363のセットの全てまたは一部を備えない構成を有してもよい。ガス遮断弁365の全部または一部をさらに省略してもよい。
【0224】
さらに、空調システム100は、いわゆる2管式のヒートポンプシステムを有してもよい。このような場合には、筐体400に収容される配管は、多分岐セレクタ300ではない。ただし、弁ユニット200は、液冷媒管部と、ガス冷媒管部と、液冷媒管部に配置された液制御弁と、ガス冷媒管部に配置されたガス制御弁とを少なくとも有する。液制御弁およびガス制御弁はそれぞれ、対応する管部分における冷媒の流れを制御するための弁であれば、どのようなものでもよい。
【0225】
例えば、安全システム700、700a、700b、700cのいずれかが、図2の弁ユニット200の代わりに、図12に示すような弁ユニット200dを備えてもよい。図2の構成と比較すると、本実施形態の変更例としての弁ユニット200dは、高圧ガス管部340、低圧ガス副管321、高圧ガス副管341、バイパス管351、冷媒熱交換器352、低圧ガス制御弁361、高圧ガス制御弁362および膨張機構363を必ずしも有していない。
【0226】
さらに、上記弁ユニットのいずれかは、熱源側液管部310およびガス管部または複数のガス管部320、340が、空調システム100の2以上の利用側ユニット120に向けて分岐せず、利用側ユニット120のうちの1つのみに向けられる構成を有してもよい。このような構成であっても、筐体400内の冷媒管部に配置された各弁が冷媒の漏れ箇所となるため、冷媒漏れに関する安全性を向上させる必要がある。
【0227】
上記実施形態および変形例のいずれかの筐体400は、互いに着脱可能な複数の筐体部品を備えてもよい。この場合、筐体部品は、各配管開口部410が隣接する筐体部品の2つ以上の間に形成されるよう構成されてもよい。これにより、筐体部品を組み立てるときに、各延出管を対応する配管開口部410に容易に嵌め込むことができる。
【0228】
安全システム700/700a/700b/700cを組み立てるための方法は、弁ユニット200/200dのそれぞれについて、弁ユニット200/200dの少なくとも液体制御弁およびガス制御弁の周りに対応する筐体部品を配置する工程と、弁ユニット200/200dのそれぞれについて、対応する筐体部品を互いに固定する工程と、弁ユニット200/200dのそれぞれについて、冷媒漏れ検知器500を配置する工程と、各筐体400の内部空間401を連結するよう連結構造を配置する工程と、排出構造を連結構造またはいずれかの筐体400に連結する工程と、を備えてもよい。これにより、筐体400は、ヒートポンプシステムの既存の弁に後付けすることができる。隣接する筐体部品の間の隙間に断熱材450をさらに設けてもよい。
【0229】
各弁ユニット200のユニットコントローラ600は、さらなる機能を有してもよい。例えば、ユニットコントローラ600は、利用側配管部のいずれかにおいて冷媒漏れが発生した場合、利用側配管部を規定する液遮断弁364およびガス遮断弁365(図2参照)を閉じるよう制御するようにさらに構成されてもよい。これにより、利用側配管部をヒートポンプ回路の他の部分から区分することができる。あるいはまたはこれに加えて、弁ユニット200のいずれかにおいて冷媒漏れが検出された場合、ユニットコントローラ600は、例えば、熱源側ユニットにおける圧縮機の運転および利用側ユニット120の運転を停止することによって、空調システム100を停止させてもよい。これにより、冷媒のさらなる漏出を極力防止することができる。
【0230】
換気装置730の位置、向き、および数は、第1から第4の実施形態に限定されない。例えば、換気装置730は、冷媒漏れが発生した筐体400の内部空間401に向けて送風するよう配置してもよい。これにより、ダンパ440を開いた状態で、対応する第1開口部420から冷媒を含む空気を排出することができる。また、個別ダクト710、連結ダクト740a、および/または共用ダクト720、720aには、換気装置730と内部空間401のいずれかとの間に追加の換気装置を設けてもよく、吸引力を高めることができる。
【0231】
使用する冷媒が空気より重く、筐体400の上部に第1開口部420を形成してもよい場合、第1開口部420用のダンパ440は必ずしも必要ではない。筐体400の内部空間401の隔離が特定の断熱材450を用いなくても十分である場合、そのような断熱材450を省略してもよい。
【0232】
ユニットコントローラ600の全部または一部は、対応する弁ユニット200から分離されてもよい。この場合、弁ユニット200は、ユニットコントローラ600が冷媒漏れ検知器500の検出値Vsを取得し、ダンパ440を含む弁ユニット200の各機械の動作を制御できるように、通信インターフェースを有する必要がある。
【0233】
ユニットコントローラ600の全部または一部を、中央コントローラ800/800a/800b/800cに統合してもよい。例えば、中央コントローラ800/800a/800b/800cが、検出値Vsを検出値閾値Vthと比較してもよい。逆に、中央コントローラ800/800a/800b/800cの全部または一部をユニットコントローラ600に統合してもよい。例えば、ユニットコントローラ600の各々が、自弁ユニット200のダンパ440を開くか否かを判断してもよい。
【0234】
内気排出が、例えばユニットコントローラ600の制御により、連続的または定期的に行われる場合には、冷媒漏れの検出を必ずしも行う必要はなく、したがって冷媒漏れ検知器500は不要である。この場合、図4図5図7に示した動作は必ずしも必要ではない。さらに、連結構造を介した内気の換気が、自然対流や外部機構による気流によって引き起こされる場合は、換気装置730は必ずしも必要ではない。
【0235】
(その他の筐体内配管のバリエーション)
上述のように、筐体400に収容される配管は、多分岐セレクタ300に限定されない。例えば、熱源側ユニット110の圧縮機など、冷媒漏れの可能性がある他の要素が筐体400内に収容されてもよい。圧縮機の筐体400も、上述した複数の多分岐セレクタ300の筐体400と同様に、連結構造により他の筐体または複数の筐体400と連結し、排出構造を備えてもよい。
【0236】
(第5実施形態)
(空調システムの構成)
本発明の第5実施の形態として、空調システムについて説明するが、圧縮機およびその周辺からの冷媒漏れに対する安全性をより向上させることができる。第5実施形態では、圧縮機ユニット周囲の空間をさらに冷媒漏れの検出および空気排出の対象とする。
【0237】
第5実施形態に係る空調システムは、第1実施形態に係る空調システム100と同様である。ただし、安全システムの構成が第1実施形態のものとは異なる。また、配管の構成も第1実施形態のものと異なっていてもよい。以下、これらの相違点について説明し、言及しないその他の構成は、特に断らない限り、第1実施形態と同じである。第1実施形態と実質的に同一の要素には、第1実施形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0238】
図13は、第5実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【0239】
図13に示すように、第5実施形態に係る空調システム100hは、第1実施形態と同様に、熱源側ユニット110h、弁ユニット200h、および利用側ユニット120を冷媒配管で接続したものである。空調システム100hのヒートポンプシステムは、図12に示す構成のように2管構成であるが、図1に示す構成のように3管構成であってもよい。また、空調システム100hは、単一の弁ユニット200hを有するが、図1に示す構成のように、2つ以上の弁ユニット200hを有してもよい。一方、図13に示すように、本実施形態の熱源側ユニット110hは、HEXユニット(熱交換器ユニット)101hと圧縮機ユニット111hの2つのユニットに分かれている。
【0240】
圧縮機ユニット111hは、第1冷媒を圧縮する圧縮機112hを有する。圧縮機ユニット111hはさらに、ヒートポンプシステムの状態を冷房運転モードと暖房運転モードとの間で切り替える切替機構113hを有してもよい。冷房運転モードでは、圧縮機112hの吐出口が後述する室外熱交換器に至る配管に連結され、圧縮機112hの吸入口が後述する室内熱交換器に至る配管に連結される。暖房運転モードでは、圧縮機112hの吐出口が後述する室内熱交換器に至る配管に連結され、圧縮機112hの吸入口が後述する室外熱交換器に至る配管に連結される。切替機構113hは、例えば四方弁である。なお、冷房運転モードと暖房運転モードのいずれか一方のみを行えばよい場合には、切替機構113hを省略してもよい。
【0241】
HEXユニット101hは、空気を通過させるとともに第1冷媒を流入させて空気と第1冷媒とを熱交換させる室外熱交換器102hを有する。室外熱交換器102hは、ガス冷媒配管132の一部を介して、圧縮機112hの吐出口および吸入口の一方に連結する。また、室外熱交換器102hは、液冷媒配管131、弁ユニット200hの熱源側液管部310および利用側液管部311、および利用側液冷媒配管151を介して後述の室内熱交換器に連結する。室外熱交換器102hには、空気の流れを促進するためのファンを設けてもよい。
【0242】
各利用側ユニット120は、第1実施形態で述べた利用側熱交換器に相当する室内熱交換器122hを有する。各室内熱交換器122hは、上記配管を介して室外熱交換器102hと連結しており、その中を空気が通過するとともに、第1冷媒を流入させて空気と第1冷媒との間で熱交換を行うよう構成される。各室内熱交換器122hはさらに、利用側ガス冷媒配管152、弁ユニット200hの利用側ガス管部330および低圧ガス管部320、さらにガス冷媒配管132の別の部分を介して圧縮機112hの吐出口および吸入口の他方に連結する。各室内熱交換器122hには、空気の流れを促進するためのファンを設けてもよい。
【0243】
空調システム100hはさらに、室外熱交換器102hと室内熱交換器122hとの間を流れる第1冷媒を減圧および膨張させるための電動膨張弁などの膨張機構(図示せず)を有する。空調システム100hはさらに、圧縮機112hの吸入口に近い位置のガス冷媒配管132に配置され、余剰冷媒を蓄積してガス冷媒を第1冷媒から分離するアキュムレータ(図示せず)を有してもよい。空調システム100hはさらに、空調システム100hの動作を制御するために必要な、冷媒の温度および/または圧力を検出するためのセンサ(図示せず)を有してもよい。
【0244】
このように、空調システム100hは、HEXユニット101hと圧縮機ユニット111hとを第1冷媒がその間で循環するように連結する第1連結配管と、弁ユニット200hを介して圧縮機ユニット111hと各利用側ユニット120との間で第1冷媒が循環するように圧縮機ユニット111h、弁ユニット200h、および各利用側ユニット120を連結する第2連結配管とを有する。すなわち、HEXユニット101h、圧縮機ユニット111h、弁ユニット200h、および各利用側ユニット120が冷媒配管を介して連結され、第1冷媒を用いたヒートポンプ回路が形成される。
【0245】
ここで、「第1冷媒」は、CO2冷媒(二酸化炭素冷媒)、R290冷媒(プロパン)、R32やR410AなどのHFC冷媒、R-1234zeやR-1234yfなどのHFO冷媒であってもよいが、これらの冷媒に限定されない。
【0246】
本実施形態では、HEXユニット101hは、室外空間または外気が通過する空間である第1空間931hに設置される。これにより、室外熱交換器102hに室外空気の気流を継続的に供給して、第1冷媒を効果的に放熱または吸熱させることができる。各利用側ユニット120は、空調対象空間933hに設置される。これにより、室内熱交換器122hは、対象空間933h内の空気と第1冷媒とを熱交換させて冷房または暖房を行うことができる。ただし、各利用側ユニット120は、必ずしも対象空間933hに設置される必要はない。空調空気を供給するための各利用側ユニット120の出口ポートがダクト等を介して対象空間933hに通じている場合には、利用側ユニット120を対象空間933hの外部に配置してもよい。
【0247】
一方、圧縮機ユニット111hおよび弁ユニット200hは、第1空間931hおよび対象空間933のいずれとも異なる第2空間932hに設置される。後述するように、第2空間932hは、少なくとも第1空間931hおよび対象空間933hから平常時は実質的に隔離されており、第2空間932hの換気は、第1空間931hおよび対象空間933hの換気とは独立して制御されることが好ましい。
【0248】
例えば、対象空間933は、事務室等の空調システム100hが設置される建物の一室である。このように、利用側ユニット120は、いわゆる室内ユニットである。第1空間931hは、屋外空間に自由につながる空気の気流通路または複数の気流通路を有する同じ建物の部屋、または建物の屋上の空間などの建物外の屋外空間である。第2空間932hは、機械室、計算機室、倉庫などの同じ建物の別の部屋である。
【0249】
(安全システムの構成)
本実施形態の安全システムは、第2空間932hの換気環境を制御するための換気制御構造を備える。本実施形態では、第2空間932hに冷媒漏れが生じた場合に、換気制御構造が第2空間932hを強制換気する構成について説明する。具体的には、換気制御構造は、第2空間932hにおける第1冷媒の濃度が上昇した場合に、第2空間932hから空気を排出するように動作する排出構造を備える。
【0250】
図14は、空調システム100hの安全システムの概略構成図である。
【0251】
図14に示すように、第2空間932hは建物構造934hによって部屋として画定される。つまり、建物構造934hの内部空間が第2空間932hである。この建物構造934hも換気制御構造の一部とみなしてもよい。
【0252】
例えば、建物構造934hは、床と、床に面する天井と、床と天井とを連結し、床と天井との間の空間を囲む少なくとも1つの壁と、を含む。建物構造934hは、その床、天井、または壁に配置されたドアをさらに含んでもよい。建物構造934hには、第2空間932hと第2空間932hの外側の外部空間との間に、第1気流通路935hと第2気流通路936hが形成されている。この外部空間は、好ましくは屋外空間である。
【0253】
安全システム700hは、第2空間932hに配置した冷媒漏れ検知器(第1漏れ検知器)500と、排出構造とを備える。排出構造は、第1気流通路935hに配置したダンパ440と、第2気流通路936hに配置した換気装置730と、中央コントローラ800hとを備える。ここで、冷媒漏れ検知器500および中央コントローラ800hのいずれかは、圧縮機ユニット111hまたは弁ユニット200hの一部であってもよい。換気装置730、ダンパ440、冷媒漏れ検知器500の構成は、第1~第4の実施形態のものと同様でよい。これらの実施形態と同様に、換気装置730、ダンパ440、および冷媒漏れ検知器500は、有線および/または無線による通信経路801を介して中央コントローラ800hに接続される。
【0254】
冷媒漏れ検知器500は、少なくとも空気中の第1冷媒の濃度を検知するよう構成される。換気装置730は、第2空間932hから第2気流通路936hを介して、対象空間933hおよび第2空間932hの何れとも異なる外部空間に向けて空気を吸引するよう構成される。ダンパ440は、逆流防止型ダンパであって、通常時に第1気流通路935hを閉じた状態に保つよう構成されてもよい。ただし、ダンパ440は、後述するように中央コントローラ800hの制御下で、換気装置730の作動時に第1気流通路935hを開くよう構成される。したがって、第1気流通路935hは、第2空間932hの換気を促進する外気の吸気口として機能する。
【0255】
なお、第1気流通路935hおよび第2気流通路936hのいずれも、建物構造934hに形成された開口であってもよいし、当該開口に連結するダクトや配管等であってもよい。このように、換気装置730および/またはダンパ440は、建物構造934hに対して、第2空間932hの内部に配置されてもよいし、第2空間932hの外部に配置されてもよい。このような開口部は、壁、天井、床、ドア、窓など、建物構造934hの任意の部分に形成することができる。例えば、第1気流通路935hおよび第2気流通路936hのそれぞれは、第2空間932hを画定する建物の外壁に形成される。いずれにせよ、建物構造934hは、その内部空間(すなわち第2空間932h)が通常時に実質的に閉鎖されるよう構成されることが好ましい。
【0256】
中央コントローラ800hは、検出された第1冷媒の濃度が第1検出値閾値以上である場合(例えば、検出された濃度が第1検出値閾値に達した場合)、換気装置730を作動するよう制御し、さらにダンパ440が開くよう制御するよう構成される。
【0257】
(中央コントローラの動作)
中央コントローラ800hは、第1実施形態の中央コントローラ800に対応し、中央コントローラ800と同じハードウェア構成を有してもよい。中央コントローラ800hは、第1実施形態のユニットコントローラ600および中央コントローラ800による動作と同様の動作を行う。ただし、本実施形態では、その動作がより簡単になる。
【0258】
図15は、中央コントローラ800hの動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、ステップS3010h、S3020h、S3030h、S3040h、S3050hは、第1実施形態で説明したステップS1010、S1020、S2040、S1120、S1110にそれぞれ対応する。
【0259】
ステップS3010hにおいて、中央コントローラ800hは、冷媒漏れ検知器500から出力される検出信号から検出値を第1検出値Vs1として取得する。中央コントローラ800hは、冷媒漏れ検知器500から連続的または定期的に出力される検知信号を受動的に受信してもよいし、冷媒漏れ検知器500に対して検出信号を定期的に出力するよう能動的に要求してもよい。
【0260】
ステップS3020hにおいて、中央コントローラ800hは、取得した第1検出値Vs1と第1検出値閾値Vth1とを比較し、第1検出値Vs1が第1検出値閾値Vth1未満であるか否かを判定する。中央コントローラ800hは、一定時間内の検出値Vs1の移動平均値を求め、この移動平均値を第1検出値Vs1とし、第1検出値閾値Vth1と比較してもよい。
【0261】
第1検出値閾値Vth1は、中央コントローラ800hに予め記憶されている。第1検出値閾値Vth1は、冷媒漏れの誤検出や検出漏れを極力回避するように実験等により決定された値であってもよい。第1検出値閾値Vth1は、使用する冷媒の燃焼下限(LFL)の25%に相当する値未満に設定することが好ましい。
【0262】
第1検出値Vs1が第1検出値閾値Vth1以上である場合(S3020h:No)、中央コントローラ800hは、後述のステップS3030hに進む。第1検出値Vs1が第1検出値閾値Vth1未満である場合(S3020h:Yes)、中央コントローラ800hは、後述のステップS3050hに進む。
【0263】
ステップS3030hにおいて、中央コントローラ800hは、換気装置730に換気装置起動コマンドを送信し、換気装置730が動作を開始するよう制御する。中央コントローラ800hは、電力供給を制御することにより、換気装置730の動作を制御してもよい。
【0264】
ステップS3040hにおいて、中央コントローラ800hは、ダンパ440を開くよう制御する。例えば、中央コントローラ800hは、ダンパ440への電力供給を制御することにより、ダンパ440の状態を制御する。中央コントローラ800hは、中央コントローラ800hに設けたスピーカ、電灯、表示装置、および/または通信インターフェースからの音、光、視覚画像、および/または通信信号によって警報情報を出力してもよい。
【0265】
ステップS3030hとステップS3040hの実行順序は逆であってもよい。さらに、ダンパ440および換気装置730は、必ずしも中央コントローラ800hによって直接制御される必要はない。ダンパ440は換気装置730を介して制御されてもよいし、換気装置730はダンパ440を介して制御されてもよい。
【0266】
ステップS3050hにおいて、中央コントローラ800hは、動作の終了が指定されたかどうかを判断する。この指定は、ユーザ操作によるものであってもよいし、他の装置によるものであってもよいし、中央コントローラ800h自身によるものであってもよい。動作の終了が指定されていない場合(S3050h:No)、中央コントローラ800hは、ステップS3010hに戻って、上記の取得ステップと判定ステップとを繰り返す。動作の終了が指定されている場合(S3050h:Yes)、中央コントローラ800hは安全システムに関する動作を終了させる。
【0267】
この動作により、圧縮機ユニット111hおよび弁ユニット200hのいずれかに冷媒漏れが生じた場合に、第2空間932hの状態を通常状態(第1状態)から、第2空間932hの換気が通常状態よりも促進される緊急状態(第2状態)に切り替えることができる。
【0268】
(第5実施形態の効果)
上述した第5実施形態によれば、外気の常時供給を必要とする第1空間931hとは異なり、第2空間932hの換気を平常時に制限することができる。これにより、圧縮機ユニット111hおよび弁ユニット200hのいずれかに冷媒漏れが発生した場合に、冷媒漏れ検知器500により迅速に漏れを検知することができる。そして、冷媒漏れの発生が検知されると、第2空間932hの換気が開始される。したがって、漏れた冷媒を含む空気を早期に第2空間932hから排出することができる。したがって、圧縮機112hを建物内に配置しなければならない場合でも、低コストで冷媒漏れに対する安全性を向上させることができる。
【0269】
圧縮機ユニット111hおよび弁ユニット200hのいずれも、第1~第4の実施形態に係る筐体400のような筐体を必ずしも有していなくてもよい。ただし、本実施形態の圧縮機ユニット111hおよび弁ユニット200hに、第1~第4のいずれかの実施形態の筐体400を含む安全システムを適用することも可能である。以下、第1実施形態の変形例として、圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hとが一以上の筐体で覆われている場合について説明する。
【0270】
(第5実施形態の第1変形例)
弁ユニット200が2つの場合の第2実施形態(図16参照)と同様に、圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hとを、連結構造により直列に連結され排出構造を備えた2つの筐体で覆ってもよい。
【0271】
図16は、第5実施形態の第1変形例に係る安全システムの概略構成図である。
【0272】
図16に示すように、第1変形例に係る安全システム700iは、圧縮機ユニット筐体400_c(第1筐体)と弁ユニット筐体400_v(第2筐体)とを備え、これらの筐体は、第2空間932hの一部として第2空間932h内部に配置される。圧縮機ユニット筐体400_cは、圧縮機ユニット111hの少なくとも一部を収容する。この収容部には、少なくとも圧縮機112hが含まれる。弁ユニット筐体400_vは、弁ユニット200hの少なくとも一部を収容する。この収容部には、少なくとも液遮断弁364とガス遮断弁365とが含まれる。圧縮機ユニット筐体400_cを圧縮機ユニット111hの一部とみなし、弁ユニット筐体400_vを弁ユニット200hの一部とみなしてもよい。
【0273】
圧縮機ユニット筐体400_cおよび弁ユニット筐体400_vは、第2実施形態に係る各筐体400に対応し、それらの構成は同じであってよい。圧縮機ユニット筐体400_cには、第1開口部420_cおよび第2開口部430_cが形成され、弁ユニット筐体400_vには、第1開口部420_vおよび第2開口部430_vが形成される。
【0274】
安全システム700iは、第2実施形態と同様の直列構造を有する。安全システム700iは、一方が圧縮機ユニット筐体400_cの第2開口部430_cに連結され、もう一方が弁ユニット筐体400_vの第1開口部420_vに連結される連結ダクト740を有する。このように、連結ダクト740は、圧縮機ユニット筐体400_cの内部空間401_cと弁ユニット筐体400_vの内部空間401_vとを連結する連結構造である。
【0275】
安全システム700iはさらに、一方が第1気流通路935hに連結され、もう一方が圧縮機ユニット筐体400_cの第1開口部420_cに連結される吸気ダクト750iを有する。このように、吸気ダクト750iは、第2空間932hの外部空間と、圧縮機ユニット筐体400_cの内部空間401_cとを連結する。ここで、第1気流通路935hを吸気ダクト750iの一部とみなしてもよいし、吸気ダクト750iを第1気流通路935hの一部とみなしてもよい。
【0276】
安全システム700iはさらに、一方が弁ユニット筐体400_vの第2開口部430_vに連結し、もう一方が第2気流通路936hに連結する共用ダクト720aを有する。このように、共用ダクト720aは、第2空間932hの外部空間と弁ユニット筐体400_vの内部空間401_vとを連結する排出ダクトである。ここで、第2気流通路936hを共用ダクト720aの一部とみなしてもよいし、共用ダクト720aを第2気流通路936hの一部とみなしてもよい。
【0277】
安全システム700iはさらに、共用ダクト720aに配置された換気装置730を有する。これらの構成は、第2実施形態に係る共用ダクト720aおよび換気装置730と同様であってよい。既に述べたように、第1気流通路935hおよび第2気流通路936hのいずれかは、建物構造934hに形成された開口であってもよいし、当該開口に連結するダクトであってもよい。このように、換気装置730および/またはダンパ440は、建物構造934hに取り付けられても、第2空間932hの内部に配置されても、第2空間932hの外部に配置されてもよい。
【0278】
したがって、第2実施形態と同様に、圧縮機ユニット筐体400_cと弁ユニット筐体400_vとは、共用ダクト720に対して直列に連結ダクト740によって連結される。ただし、第2実施形態とは異なり、圧縮機ユニット筐体400_cと弁ユニット筐体400_vとの間に配置されるダンパ440は省略される。なお、吸気ダクト750iおよび共用ダクト720aに対する筐体400_c、400_vの位置が逆であってもよい。
【0279】
安全システム700iはさらに、第2実施形態に係る冷媒漏れ検知器500に対応する圧縮機ユニット漏れ検知器500_cを有する。圧縮機ユニット漏れ検知器500_cは、圧縮機ユニット筐体400_cの内部空間401_cに配置され、圧縮機ユニット111hの一部であってもよい。圧縮機ユニット漏れ検知器500_cは、少なくとも空気中の第1冷媒の濃度を検知するよう構成される。
【0280】
安全システム700iはさらに、第2実施形態に係るユニットコントローラ600と中央コントローラ800aとに対応する中央コントローラ800iを有し、ユニットコントローラ600および/または中央コントローラ800aと同じハードウェア構成を有してもよい。中央コントローラ800iは、圧縮機ユニット111hの一部であってもよい。中央コントローラ800iは、圧縮機ユニット漏れ検知器500_cから出力された検出器信号に基づいて、図15に示すような動作を行ってもよい。
【0281】
さらに、図16に示すように、安全システム700iは、弁ユニット筐体400_vの内部空間401_cに配置された弁ユニット漏れ検知器500_vを有してもよく、弁ユニット漏れ検知器500_vは、圧縮機ユニット漏れ検知器500_cと同じ構成を有してもよい。この場合、弁ユニット漏れ検知器500_vから出力される検出器信号に基づいて、中央コントローラ800iがステップS3020hの判断をさらに行うことが好ましい。すなわち、中央コントローラ800iは、圧縮機ユニット筐体400_cおよび弁ユニット筐体400_vのいずれかに冷媒漏れが発生した場合、換気装置730を起動し、ダンパ440を開放する。弁ユニット漏れ検知器500_vの検出信号は、通信経路801を介して弁ユニット200hのユニットコントローラ600によって中央コントローラ800iに中継して伝達されてもよいし、通信経路801を介して中央コントローラ800iに直接送信されてもよい。
【0282】
筐体400_c、400_vの内部空間401_c、401_vと、ダンパ440と換気装置730との間のダクト750i、740a、720aの内部空間との合計容積は、第2空間932h全体の容積よりもはるかに小さくすることができる。したがって、図14に示す構成と比較して、冷媒漏れの検出と、漏れた冷媒を含む空気の排出の両方をより迅速に行うことができる。さらに、筐体400_c、400_vおよびダクト750i、740a、720aは、圧縮機ユニット111hまたは弁ユニット200hから漏れた冷媒が第2空間932hに広がることを防止または抑制することが可能である。したがって、冷媒漏れに対する安全性をさらに向上させることができる。
【0283】
なお、圧縮機ユニット筐体400_cの内部空間401_cおよび弁ユニット筐体400_vの内部空間401_vは、第2空間932hの一部であるが、圧縮機ユニット111h、弁ユニット200hおよび圧縮機ユニット漏れ検知器500_cが設置される第2空間とみなすこともでき、対象空間933hおよび第1空間931hのいずれとも異なる空間である。この場合、内部空間401_c、401_vは平時には実質的に閉鎖されているので、建物構造934hは必ずしもその内部空間(即ち第2空間932h)を閉鎖するよう構成される必要はない。
【0284】
(第5実施形態の第2変形例)
筐体400_c、400_vを直列に連結するのではなく、共用ダクトに対して並列に連結してもよい。
【0285】
図17は、第5実施形態の第2変形例に係る空調システムの安全システムの概略構成図である。
【0286】
第2変形例に係る安全システム700jは、筐体400_c、400_vの内部空間401_c、401_vと第2空間932hの外部空間または複数の外部空間とを連結する構造を除いて、第1変形例の安全システム700iと同様の構成を有する。すなわち、圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hの筐体400_c、400_vは、図3に示すような第1実施形態に係る弁ユニット200の各筐体400と同様に連結される。
【0287】
図17に示すように、安全システム700jは、第1変形例に係る吸気ダクト750iに対応する第1吸気ダクト750i_cを有する。なお、安全システム700jは、第1変形例の連結ダクト740aおよび共用ダクト720aの代わりに、第2吸気ダクト750i_v、第1個別ダクト710_1、第2個別ダクト710_2および共用ダクト720bを有する。
【0288】
建物構造934hにはさらに、第2空間932hと第2空間932hの外側の外部空間との間に、第3気流通路937jが形成される。第2吸気ダクト750i_vは、一方がこの第3気流通路937jに連結され、もう一方が弁ユニット筐体400_vの第1開口部420_vに連結される。つまり、第2吸気ダクト750i_vは、第2空間932hの外部空間と、弁ユニット筐体400_vの内部空間401_vとを連結する。ここで、第3気流通路937jを第2吸気ダクト750i_vの一部とみなしてもよいし、第2吸気ダクト750i_vを第3気流通路937jの一部とみなしてもよい。
【0289】
第3気流通路937jおよび第2吸気ダクト750i_vの構成および/または配置は、第1気流通路935hおよび第1吸気ダクト750i_cの構成および/または配置と同じまたは同様であってもよい。第3気流通路937jにも、第1気流通路935hと同様にダンパ440が配置される。第1気流通路935hおよび第2気流通路936hと同様に、第3気流通路937jは、建物構造934hに形成された開口部であってもよいし、当該開口部に連結するダクトであってもよい。このように、第3気流通路937jに配置するダンパ440も、建物構造934hに取り付けられても、第2空間932hの内部に配置されても、第2空間932hの外部に配置されてもよい。
【0290】
第1個別ダクト710_1は、弁ユニット筐体400_vの第2開口部430_vを共用ダクト720bに連結する。第2個別ダクト710_2は、圧縮機ユニット筐体400_cの第2開口部430_cを共用ダクト720bに連結する。このように、第1および第2個別ダクト710_1、710_2は、筐体400_c、400_vの内部空間401_c、401_vを連結する連結構造を形成し、共用ダクト720bは、この連結構造と第2空間932hの外部空間とを連結する。換気装置730は、共用ダクト720bに対して共用ダクト720bの一端でまたはその近傍に配置され、共用ダクト720b内の空気を第2端部に向かって吸引するよう構成される。これら要素の構成は、第1実施形態に係る個別ダクト710、共用ダクト720bおよび換気装置730と同様であってよい。
【0291】
中央コントローラ800iは、換気装置730を制御して動作を開始させると、ステップS3040hで両方のダンパ440を開くように制御しながら、図15に示すような動作を実行してもよい。
【0292】
以上説明した第2変形例によれば、内部空間401_c、401_vのそれぞれは、他の筐体を介することなく排出構造に連通する。したがって、換気装置730に要求される静圧容量を低減することが可能である。これにより、空調システムの設置コストをさらに削減できる。なお、第1気流通路935hと第3気流通路937jとを、単一の気流通路に統合してもよい。この場合、これらのダンパ440も単一のダンパに統合してもよい。
【0293】
(第5実施形態の第3変形例)
圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hがそれぞれ筐体で覆われるのではなく、単一の筐体で覆われてもよい。
【0294】
図18は、第5実施形態の第3変形例に係る空調システムの安全システムの概略構成図である。
【0295】
第3変形例に係る安全システム700kは、圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hを覆う構造を除いて、第1変形例の安全システム700iと同様の構成を有する。図18に示すように、安全システム700kは、第1変形例の筐体400_c、400_vおよび連結ダクト740aに代えて、第2空間932h内に筐体400を配置し、第2空間932hの一部としたものである。筐体400は、圧縮機ユニット111hの少なくとも一部と、弁ユニット200hの少なくとも一部とを収容する。これらの収容部品には、少なくとも、圧縮機112h、液遮断弁364、およびガス遮断弁365が含まれる。筐体400は、第2実施形態に係る各筐体400に対応し、それらの構成は同じであってよい。
【0296】
安全システム700kはさらに、第1変形例に係る圧縮機ユニット漏れ検知器500_cおよび中央コントローラ800iにそれぞれ対応する冷媒漏れ検知器500および中央コントローラ800iを備える。この冷媒漏れ検知器500は、筐体400の内部空間401に配置される。中央コントローラ800iは、冷媒漏れ検知器500から出力された検出器信号に基づいて、図15に示すような動作を行ってもよい。
【0297】
なお、筐体400の内部空間401は、第2空間932hの一部であるが、圧縮機ユニット111h、弁ユニット200h、および冷媒漏れ検知器500が設置される第2空間であって、対象空間933hおよび第1空間931hのいずれとも異なる空間とみなすことも可能である。この場合、内部空間401は平時には実質的に閉鎖されているので、建物構造934hは必ずしもその内部空間(即ち第2空間932h)を閉鎖するよう構成される必要はない。
【0298】
この第3変形例は、圧縮機ユニット111hと弁ユニット200hとが近接して配置される場合に好適である。この変形例によれば、筐体400の数が減り、連結ダクト740aが不要となるため、空調システムの設置コストをさらに削減することができる。
【0299】
(第6実施形態)
(空調システムの構成)
上記第5実施形態では、HEXユニット、圧縮機ユニット、弁ユニット、利用ユニットに同一の冷媒が流れるように空調システムを構成される。ただし、第5実施形態およびその変形例に係る安全システム(換気制御構造)の構成は、他の種類の配管にも適用することができる。例えば、同一または異なる熱媒体の回路を2つ以上形成し、それらの間で熱交換を行うカスケード型の空調システムにこの安全システムを適用することができる。本発明の第6実施形態として、カスケード型の空調システムについて説明する。
【0300】
第6実施形態に係る空調システムは、第5実施形態に係る空調システム100hと同様である。ただし、第5実施形態とは配管の構成が異なる。以下、この相違点について説明するが、言及しないその他の構成は、特に断らない限り、第5実施形態と同じである。第5実施形態と実質的に同一の要素には、第5の実施形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0301】
図19は、第6実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【0302】
図19に示すように、第6実施形態に係る空調システム100mの配管は、第1冷媒用の第1回路105mと第2冷媒用の第2回路106mとに分かれている。空調システム100mは、第5の実施形態に係るHEXユニット101h、圧縮機ユニット111h、弁ユニット200hおよび利用側ユニット120にそれぞれ対応するHEXユニット101m、圧縮機ユニット111m、弁ユニット200m、および利用側ユニット120mを有する。
【0303】
HEXユニット101mは、第5実施形態の室外熱交換器102hに対応する室外熱交換器102mを備え、圧縮機ユニット111mは、第5実施形態の圧縮機112hおよび切替機構113hに対応する圧縮機112mおよび切替機構113mを備える。ただし、本実施形態に係る圧縮機ユニット111mは、冷媒熱交換器114mをさらに有する。HEXユニット101mと圧縮機ユニット111mとは、ユニット液冷媒配管103mとユニットガス冷媒配管104m(第1連結配管)によって第1冷媒が循環するように連結される。
【0304】
冷媒熱交換器114mは、第1冷媒と第2冷媒との間で熱交換を行うように、第1冷媒および第2冷媒それぞれがその中を流れるように構成される。
【0305】
したがって、圧縮機112m、切替機構113、室外熱交換器102h、冷媒熱交換器114mおよびそれらを接続する配管により、第1冷媒を循環させる第1回路105mが形成される。
【0306】
弁ユニット200mは、第5実施形態に係る熱源側液管部310、低圧ガス管部320、利用側液管部311、利用側ガス管部330、液遮断弁364、およびガス遮断弁365にそれぞれ対応する、熱源側液管部310m、低圧ガス管部320m、利用側液管部311m、利用側ガス管部330m、液遮断弁364m、およびガス遮断弁365mを備える。各利用側ユニット120mは、第5実施形態に係る室内熱交換器122に対応する室内熱交換器122mを備える。圧縮機ユニット111m、弁ユニット200m、および利用側ユニット120mは、第5実施形態による液冷媒配管131、ガス冷媒配管132m、利用側液冷媒配管151、および利用側ガス冷媒配管152に対応する液冷媒配管131m、ガス冷媒配管132、利用側液冷媒配管151m、および利用側ガス冷媒配管152mを介して互いに連結される。
【0307】
ただし、第5実施形態とは異なり、弁ユニット200mおよび利用側ユニット120mのこれらの要素および冷媒配管131m、132mは、第1冷媒ではなく第2冷媒が流れるよう構成される。
【0308】
液冷媒配管131mおよびガス冷媒配管132m(第2連結配管)は、第2冷媒が弁ユニット200mを介して圧縮機ユニット111mと利用側ユニット120mとの間で循環するように、圧縮機ユニット111mの冷媒熱交換器114mに連結する。空調システム100mはさらに、好ましくは圧縮機ユニット111mの一部として、液冷媒配管131mまたはガス冷媒配管132mに配置されたポンプ116mを有する。ポンプ116mは、第2冷媒の流れを誘導するよう構成される。したがって、ポンプ116m、室内熱交換器122m、冷媒熱交換器114mおよびこれらを接続する配管により、第2冷媒を循環させる第2回路106mが形成される。ポンプ116mは、第2冷媒を圧縮する圧縮機であってもよい。この場合、膨張機構やアキュムレータなど、ヒートポンプ回路を形成するために必要な要素を第2回路106mに設けてもよい。
【0309】
ここで、第2冷媒の冷媒種は、第1冷媒の冷媒種と同じであっても異なっていてもよい。「第2冷媒」は、CO2冷媒(二酸化炭素冷媒)、R290冷媒(プロパン)、R32やR410AなどのHFC冷媒、R-1234zeやR-1234yfなどのHFO冷媒であってもよいが、これらの冷媒に限定されない。例えば、第1冷媒としてHFCまたはHFC冷媒を使用し、第2冷媒としてCO2冷媒を使用する。
【0310】
HEXユニット101mは第1空間931hに設置され、圧縮機ユニット111mと弁ユニット200mは第2空間932hに設置され、利用側ユニット120は対象空間933hに設置される。第1実施形態およびその変形例による安全システム700h、700i、700j、700kのいずれかを空調システム100mに適用してもよい。ただし、第2冷媒の冷媒種が第1冷媒の冷媒種と異なる場合には、第1冷媒用冷媒漏れ検知器500に加えて、第2冷媒用冷媒漏れ検知器を用いることが好ましい。
【0311】
図20は、空調システム100mの安全システムの概略構成図である。
【0312】
図20に示すように、空調システム100mの安全システム700mは、第5実施形態の安全システム700hと実質的に同じ構成を有してもよい。ただし、安全システム700mは、第5実施形態の冷媒漏れ検知器500および中央コントローラ800hの代わりに、第1冷媒漏れ検知器501m、第2冷媒漏れ検知器502mおよび中央コントローラ800mを有する。第1冷媒漏れ検知器501mは、第5実施形態の第1変形例に係る冷媒漏れ検知器500_cと同様であってもよい。圧縮機ユニット111mと弁ユニット200mは、それぞれの筐体で覆われていてもよいし、単一の筐体で覆われていてもよい。圧縮機ユニット111mが少なくとも圧縮機112mを収容する筐体を有する場合、第5実施形態の第1変形例のように、第1漏れ検知器501mをその筐体内に配置してもよい。
【0313】
一方、第2漏れ検知器502mは、第2空間932h内に配置されるが、例えば、圧縮機ユニット111mおよび弁ユニット200mの筐体の外側に配置される。第2冷媒漏れ検知器502mは、第2冷媒漏れ検知器502mの周囲の空気中の第2冷媒の濃度を少なくとも検知し、検出値Vs2を示す検知信号を継続的または定期的に通信経路801を介して中央コントローラ800mに出力するよう構成される。第2漏れ検知器502mは、第2冷媒に反応する半導体ガスセンサであってもよい。CO2冷媒のように第2冷媒が大気よりも重い場合、第2漏れ検知器502mは、第2空間932h内で第2空間932hの内底面またはその近傍に配置することが好ましい。
【0314】
中央コントローラ800mは、第5実施形態の第1変形例の中央コントローラ800iに対応し、中央コントローラ800iと同じハードウェア構成を有してもよい。ただし、本実施形態に係る中央コントローラ800mは、検出された第2冷媒の濃度が上昇した場合に、換気装置730を運転開始するようにさらに制御する。
【0315】
図21は、中央コントローラ800mの動作を示すフローチャートである。
【0316】
図21に示すように、中央コントローラ800mは、図15に示す第5実施形態のステップS3010h、S3020h、S3030h、S3040h、S3050hの全てを、第5実施形態の第1変形例の中央コントローラ800iと同様に実行する。中央コントローラ800mはさらに、ステップS3010hの前、またはステップS3020hとステップS3050hとの間で、ステップS3021m、S3022mの動作を実行する。
【0317】
ステップS3021mにおいて、中央コントローラ800mは、第2漏れ検知器502mから出力される検出信号から検出値を第2検出値Vs2として取得する。中央コントローラ800mは、第2漏れ検知器502mから連続的または定期的に出力される検知信号を受動的に受信してもよいし、第2漏れ検知器502mに対して検出信号を定期的に出力するよう能動的に要求してもよい。得られた第1検出値Vs2は、基本的に第2空間932h内の第2冷媒の濃度の変化を反映している。
【0318】
ステップS3022mにおいて、中央コントローラ800mは、取得した第2検出値Vs2と第2検出値閾値Vth2とを比較し、第2検出値Vs2が第2検出値閾値Vth2未満であるか否かを判定する。中央コントローラ800mは、一定時間内の検出値Vs2の移動平均値を求め、この移動平均値を第2検出値Vs2とし、第2検出値閾値Vth2と比較してもよい。
【0319】
第2検出値閾値Vth2は、中央コントローラ800mに予め記憶されている。第2検出値閾値Vth2は、冷媒漏れの誤検出や検出漏れを極力回避するように実験等により決定された値であってもよい。第2検出値閾値Vth2は、第2冷媒の燃焼下限(LFL)の25%に相当する値未満に設定することが好ましい。また、第2冷媒としてCO2冷媒等の毒性のある冷媒を用いる場合、第2検出値閾値Vth2は、毒性限界値に相当する値未満の値に設定することが好ましい。CO2冷媒の場合、毒性限界値は0.1kg/m3である。第2検出値閾値Vth2は、第1検出値閾値Vth1と同じであっても異なっていてもよい。
【0320】
第2検出値Vs2が第2検出値閾値Vth2以上である場合(S3022m:No)、中央コントローラ800mは、ステップS3030hに進む。第2検出値Vs2が第2検出値閾値Vth2未満である場合(3022m:Yes)、中央コントローラ800mは、ステップS3050hに進む。
【0321】
以上の構成により、圧縮機ユニット111mおよび弁ユニット200mの何れかで冷媒漏れが発生した場合、第2空間932hの換気を速やかに行うことができる。さらに、第2漏れ検知器502mは、圧縮機ユニット111mおよび弁ユニット200mの筐体の外側に配置される。したがって、圧縮機ユニット111mおよび/または弁ユニット200mを覆う筐体または複数の筐体の外側の配管部分、例えば利用側液冷媒配管151m又は利用側ガス冷媒配管152m(特に配管の連結部分)からの冷媒漏れも検出することが可能である。したがって、カスケードタイプの空調システムにおいて、冷媒の漏れに関する安全性を効果的に向上させることが可能である。
【0322】
ただし、第1および第2漏れ検知器501m、502mの位置は、上記で説明した位置に限定されない。例えば、第2漏れ検知器502mは、弁ユニット200mの筐体内に配置してもよい。
【0323】
以上説明した安全システム700mは、例えば、第1冷媒としてR32、R410AなどのHFC冷媒や、R-1234ze、R-1234yfなどのHFO冷媒を用い、第2冷媒としてCO2冷媒(酸化炭素冷媒)を用いるカスケード型システムの場合に好ましく用いられる。
【0324】
(第7実施形態)
(空調システムの構成)
上記第5および第6実施形態では、空調システムは、第1冷媒を外気と熱交換させる空冷式である。ただし、第5および第6実施形態で説明した安全システムを、第1冷媒が冷却水や海水(brine)と熱交換する水冷式を含む他の任意のタイプにも適用することが可能である。本発明の第7実施形態として、水冷式の空調システムについて説明する。
【0325】
第7実施形態に係る空調システムは、第5実施形態に係る空調システム100と同様である。ただし、第5実施形態とは配管の構成が異なる。以下、この相違点について説明するが、言及しないその他の構成は、特に断らない限り、第5実施形態と同じである。第5実施形態と実質的に同一の要素には、第5の実施形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0326】
図22は、第7実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【0327】
図22に示すように、第7実施形態に係る空調システム100nの配管は、熱媒体用の第1回路105nと第1冷媒用の第2回路106nとに分かれている。熱媒体は、冷却水または海水であってもよい。空調システム100nは、第5の実施形態に係るHEXユニット101h、圧縮機ユニット111h、弁ユニット200hおよび利用側ユニット120にそれぞれ対応するHEXユニット101n、圧縮機ユニット111n、弁ユニット200h、および利用側ユニット120を有する。
【0328】
HEXユニット101nは、第5実施形態の室外熱交換器102hに対応する室外熱交換器102nを備え、圧縮機ユニット111nは、第5実施形態の圧縮機112hに対応する圧縮機112nを備える。なお、圧縮機ユニット111nは、切替機構113hを備えておらず、熱媒体冷媒熱交換器117nを備える。HEXユニット101nと圧縮機ユニット111nとは、供給配管107nと戻り配管108n(第1連結配管)とによって熱媒体がその間で循環するように連結される。HEXユニット101nは、散水しながら空気を供給して室外熱交換器102nを流れる熱媒体を冷却する閉鎖型冷却塔であってもよいが、これに限定されない。
【0329】
熱媒体-冷媒熱交換器117nは、熱媒体と第1冷媒との間で熱交換を行うように、熱媒体と第1冷媒の各々がその中を流れるように構成される。熱媒体-冷媒熱交換器117nは、供給配管107nおよび戻り配管108nを介して室外熱交換器102nに連結する。空調システム100nはさらに、好ましくは圧縮機ユニット111nの一部として、供給配管107nまたは戻り配管108nに配置されたポンプ118nを有する。ポンプ118nは、熱媒体の流れを誘導するよう構成される。
【0330】
したがって、室外熱交換器102n、ポンプ118n、熱媒体-冷媒熱交換器117n、およびこれらをつなぐ配管は、熱媒体を循環させる第1回路105nを形成する。
【0331】
熱媒体-冷媒熱交換器117nはさらに、圧縮機112mの吐出口と、弁ユニット200hの熱源側液管部310に延びる液冷媒配管131とに連結される。圧縮機112mの吸入口は、低圧ガス管部320に延びるガス冷媒配管132に連結される。
【0332】
したがって、圧縮機112m、熱媒体-冷媒熱交換器117n、室内熱交換器122m、およびこれらを接続する配管は、第1冷媒を循環させる第2回路106nを形成する。
【0333】
HEXユニット101nは第1空間931hに設置され、圧縮機ユニット111nと弁ユニット200hは第2空間932hに設置され、利用側ユニット120は対象空間933hに設置される。第1実施形態およびその変形例による安全システム700h、700i、700j、700kのいずれかを空調システム100nに適用してもよい。
【0334】
上記構成により、水冷式の空調システムにおいて、冷媒漏れに関する安全性を向上させることができる。第6実施形態の構成は、第5実施形態の構成と組み合わせてもよい。この場合、圧縮機ユニット111nはさらに、冷媒熱交換器114mと冷媒配管131m、132mの一部(好ましくはポンプ116m)を有し、圧縮機112hと冷媒熱交換器114mとの間で第1冷媒を循環させる冷媒回路を備える。
【0335】
(第5~第7実施形態のその他の変形例)
上述した第5~第7実施形態では、冷媒漏れが検出された場合に、第2空間932hの強制換気を行う構成について説明した。ただし、強制換気ではなく、自然換気を利用してもよい。
【0336】
図23は、第5~第7実施形態のいずれかに係る安全システムの別の変形例の概略構成図である。
【0337】
図23に示すように、変形例としての安全システム700pは、換気装置730がダンパ440に置き換えられることを除いて、第1実施形態と同じ構成を有してもよい。第1および第2気流通路935h、936hに配置された各ダンパ440は、通常時は閉じている。第5実施形態の中央コントローラ800hに対応する中央コントローラ800pは、中央コントローラ800hと同じハードウェア構成を有してもよい。中央コントローラ800pは、中央コントローラ800hと基本的に同様の動作を行うよう構成される。ただし、中央コントローラ800pは、ステップS3030hの動作を実行せず、代わりに、ステップ3040hで両方のダンパ440が開くよう制御する。
【0338】
すなわち、安全システム700pは、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、第1および第2気流通路935h、936hの状態を通常状態(第1通過状態)から、通常状態よりも第1および第2気流通路935h、936hを空気が通過しやすい非常状態(第2通過状態)に切り替えるよう構成された通路制御構造を有する。
【0339】
したがって、既に説明した安全システムと同様に、安全システム700pも、第1冷媒の検出濃度が第1検出値閾値以上である場合に、第2空間の状態を第1状態から、第2空間932hの換気を第1状態よりも促進する第2状態に切り替えることが可能である。強制換気を行う場合よりも換気は弱くなるが、換気装置を省略できるため、安全システムのコストを下げることができる。
【0340】
ダンパまたは複数のダンパ440の代わりに、第1および/または第2気流通路935h、936hの状態を上記第2状態に切り換えることができる他の任意の機構を用いてもよい。例えば、シャッター、窓板、ドア板などを使用してもよい。いずれの場合も、第1状態から第2状態への切り替えは、中央コントローラ800mから電気モータ等により制御可能でなければならない。
【0341】
その他、上記で説明した空調システムの様々な変更も考えられる。例えば、圧縮機ユニットと弁ユニットが単一のユニットに統合されてもよい。この場合、図14図18図20図23に示すような安全システムが好適であると考えられる。
【0342】
既に述べたように、第5~第7実施形態の空調システムは、3管構成であってもよい。空調システムは、第1~第4実施形態と同様に複数の弁ユニットを備えてもよく、弁ユニットと利用側ユニット120との間に一以上の他の弁ユニットを配置してもよい。特に、2つ以上の弁ユニットが圧縮機ユニットとともに第2空間に設置される場合、それらすべての筐体が連結構造によって連結されてもよい。
【0343】
熱源側液管部310およびガス管部または複数のガス管部320、340は、必ずしも2以上の利用側ユニット120に向けて分岐している必要はなく、利用側ユニット120のうち1つだけに向かうものであってもよい。ただし、弁ユニットが、筐体内に、少なくとも液冷媒管部と、ガス冷媒管部と、液冷媒管部に配置された液制御弁と、ガス冷媒管部に配置されたガス制御弁とを有する場合、このような安全システムは、空調システムの冷媒漏れに関する安全性を向上させることができる。
【0344】
第1空間、第2空間、および対象空間は、必ずしも同じ建物に属していなくてもよい。したがって、例えば、HEXユニットは、建物外の地面に設置されてもよく、および/または、第1空間および第2空間が異なる建物に形成されてもよい。建物には、家屋、小屋、船等が含まれる。
【0345】
ダンパ440は、図6に示すような第2実施形態と同様に、連結ダクト740aが連結される第1開口部420に配置されてもよい。
【0346】
気流通路の数、各圧縮機ユニットに連結されるHEXユニットの数、各HEXユニットに連結される圧縮機ユニットの数、各圧縮機ユニットに連結される利用側ユニットの数、各ユニットファミリに属する利用側ユニットの数、第1空間、第2空間および対象空間の各々の数は、上記説明したものに限定されない。同一の弁ユニットに属する利用側ユニットは、異なる対象空間に設置されてもよい。
【0347】
本発明を例示するために選択された実施形態および変形例のみを選んだが、添付の請求項で規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは、この開示から当業者には明らかであろう。例えば、特に断りのない限り、意図した機能に実質的な影響を与えない限り、様々な構成要素の大きさ、形状、位置、または向きを必要に応じて、および/または所望に応じて変更することができる。特に明記しない限り、相互に直接接続または接触しているように示した構成要素は、変更がそれらの意図した機能に実質的に影響を与えない限り、それらの間に配置された中間構造を有することができる。特に明記しない限り、1つの要素の機能は2つの要素で行うことができ、その逆も可能である。ある実施形態の構造および機能を別の実施形態に採用することができる。特定の実施形態において、すべての利点が同時に存在する必要はない。したがって、本発明による実施形態の前述の説明は、例示のみを目的として提供されている。
【符号の説明】
【0348】
100、100h、100m、100n 空調システム
101h、101m、101n HEXユニット(熱交換器ユニット)
102h、 102m、 102n: 室外熱交換器
103m:ユニット液冷媒配管(第1連結配管)
104m ユニットガス冷媒配管(第1連結配管)
105m、105n 第1回路
106m、106m 第2回路
107n 供給配管(第1連結配管)
108n 戻り配管(第1連結配管)
110、110h、110m 熱源側ユニット
111h、111m、111n 圧縮機ユニット
112h、112m 圧縮機
113h、113m 切り替え機構
114m 冷媒熱交換器
116m、118n ポンプ
117n 熱媒体-冷媒熱交換器
120、120m 利用側ユニット(室内ユニット)
121、121m ユニットファミリ
122h、122m 室内熱交換器
131、131m 液冷媒配管(第2連結配管)
132、132m 低圧ガス冷媒配管(第2連結配管)
133 高圧ガス冷媒配管
141 熱源側液配管
142 熱源側低圧ガス配管
143 熱源側高圧ガス配管
151、151m 利用側液冷媒配管(第2連結配管)
152、152m 利用側ガス冷媒配管(第2連結配管)
200、200d、200h、200m 弁ユニット
300 多分岐セレクタ
310、310m 熱源側液管部
311、 311m 利用側液管部(液冷媒管部)
320、320m 低圧ガス管部(ガス冷媒管部)
321 低圧ガス副管(ガス冷媒管部)
330、330m 利用側ガス管部(ガス冷媒管部)
340 高圧ガス管部(ガス冷媒管部)
341 高圧ガス副管(ガス冷媒管部)
351 バイパス管
352 冷媒熱交換器
361 低圧ガス制御弁(ガス制御弁)
362 高圧ガス制御弁(ガス制御弁)
363 膨張機構
364、364m 液遮断弁(液制御弁)
365、365m ガス遮断弁(ガス制御弁)
370 配管接続部
400 筐体
401 内部空間
410 配管開口部
420 第1開口部
430 第2開口部
440 ダンパ(逆流防止型ダンパ、換気制御構造、通路制御構造、排出構造)
450 断熱材
500 冷媒漏れ検知器(第1漏れ検知器)
501m 第1漏れ検知器
502m 第2漏れ検知器
600、600m ユニットコントローラ(コントローラ、換気制御構造、排出構造)
700、700a、700b、700c、700h、700i、700j、700k、700m、700p 安全システム
701c セクション
710 個別ダクト(連結構造)
720、720a、720b 共用ダクト(排出構造、換気制御構造)
730 換気装置(排出構造、換気制御構造)
740a 連結ダクト(連結構造)
750i 吸気ダクト(換気制御構造)
800、800a、800b、800c、800h、800i、800m 中央コントローラ(コントローラ、換気制御構造、排出構造)
801 通信経路
910b、910c グループ化テーブル
931h 第1空間
932h 第2空間
933h 対象空間
934h 建物構造
935h 第1気流通路
936h 第2気流通路
937j 第3気流通路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0349】
【文献】EP3091314A
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23