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特許7528379リレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法
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  • 特許-リレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/00 20060101AFI20240729BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H02H3/00 D
H04Q9/00 311K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023544803
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2021031705
(87)【国際公開番号】W WO2023031995
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山守 渉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和也
(72)【発明者】
【氏名】福島 将太
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
(72)【発明者】
【氏名】浜松 浩一
(72)【発明者】
【氏名】白川 紘之
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-99251(JP,A)
【文献】特開2004-15971(JP,A)
【文献】特開2018-23274(JP,A)
【文献】特開2014-166091(JP,A)
【文献】特開2005-218300(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、電力設備に対する保護制御処理を行う演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための入出力部とが内部で分割可能に構成されるリレーユニットであって、
少なくとも前記演算処理部と、前記AD変換部または前記入出力部の一方または双方とは、前記リレーユニットの外部である電気所構内に適用されている第1ネットワークと第2ネットワークとの双方を用いて通信する、
リレーユニット。
【請求項2】
前記第1ネットワークの第1通信プロトコルと、前記第2ネットワークの第2通信プロトコルとは異なる通信プロトコルである、
請求項1に記載のリレーユニット。
【請求項3】
前記第1ネットワークは、前記リレーユニットの上位装置であるステーションレベルに設けられた装置または機器に接続されるネットワークであり、
前記第2ネットワークは、前記リレーユニットの下位装置であるプロセスレベルに設けられた装置または機器に接続されるネットワークである、
請求項1または2に記載のリレーユニット。
【請求項4】
前記ステーションレベルに設けられた装置または機器は、前記電気所構外の装置との通信を中継する中継装置を含み、
前記プロセスレベルに設けられた装置または機器は、計器用変成器、変圧器、開閉器等の電力設備と通信するインターフェース装置を含む、
請求項3に記載のリレーユニット。
【請求項5】
前記第1ネットワークの第1通信プロトコルは、通信規格で採用されているステーションバスの通信プロトコルであり、
前記第1ネットワークの第2通信プロトコルは、通信規格で採用されているプロセスバスの通信プロトコルである、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のリレーユニット。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のリレーユニットと、
前記第1ネットワークを介して前記リレーユニットと通信可能に接続された中継装置と、
前記第2ネットワークを介して前記リレーユニットと通信可能に接続され、計器用変成器、変圧器、開閉器等の電力設備と通信するインターフェース装置と、
を備える電気所システム。
【請求項7】
前記インターフェース装置に代えて、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、電力設備に対する保護制御処理を行う演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための入出力部とが内部で分割可能に構成され、少なくとも前記入出力部を備えるプロセスレベルのリレーユニットを備え、
前記プロセスレベルのリレーユニットは、前記第2ネットワークを介して前記リレーユニットと通信可能に接続される、
請求項6に記載の電気所システム。
【請求項8】
入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する第1AD変換部と、電力設備に対する保護制御処理を行う第1演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための第1入出力部とが内部で分割可能に構成される第1リレーユニットと、
入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する第2AD変換部と、前記第1演算処理部とは異なる演算処理であって第2リレーユニットとしての演算処理を行う第2演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための第2入出力部とが内部で分割可能に構成される第2リレーユニットと、を備え、
前記第1リレーユニットは、少なくとも前記第1演算処理部を備え、
前記第1演算処理部は、電気所構内に適用される第1ネットワークを用いることで前記第1ネットワークに接続された装置と通信可能であり、
前記第1演算処理部は、電気所構内に適用される第2ネットワークを用いることで前記第2ネットワークに接続された前記第2リレーユニットと通信可能であり、
前記第2リレーユニットの前記第2入出力部は、通信線を介して前記第1リレーユニットとは異なる電力設備に接続可能である、
電気所システム。
【請求項9】
入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、電力設備に対する保護制御処理を行う演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための入出力部とが内部で分割可能に構成されるリレーユニットにおいて、
少なくとも前記演算処理部と、前記AD変換部または前記入出力部の一方または双方とは、前記リレーユニットの外部である電気所構内に適用されている第1ネットワークと第2ネットワークとの双方を用いて通信し、
前記リレーユニットを前記第1ネットワークに接続する第1接続ステップと、
前記電力設備に接続するインターフェース装置を設ける設置ステップと、
前記インターフェース装置と前記リレーユニットとを前記第2ネットワークを介して接続するする第2接続ステップと、
を備える電気所システムの更新方法。
【請求項10】
ケーブルを介して電力設備に接続され、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する現行のAD変換部と、電力設備に対する保護処理を行う現行の演算処理部と、電力設備との信号の入出力を行うための現行の入出力部とを備え、上記の各要素が所定の通信線で接続された現行のリレーユニットを、前記リレーユニットに置き換え、前記リレーユニットにおいて、前記第1接続ステップ、前記設置ステップ、および前記第2接続ステップとを実行する、
請求項9に記載の電気所システムの更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気所において円滑に情報処理を行うシステムが開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、上記の特許文献1の発明では、種々の設備の状況において、適切な通信環境を実現することについては考慮されていない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-300942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より適切な通信環境を実現することを支援するリレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法を提供することを目的の一つとする。より具体的には、既存の設備から所望の設備へ変遷する際の負荷を低減することを目的とする。所望の設備とは、例えば、所望の通信環境を有する設備である。負荷とは、例えば、ハードの改造やソフトウエアの更新などである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のリレーユニットは、AD変換部と、演算処理部と、入出力部とが内部で分割可能に構成される。AD変換部は入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。演算処理部は電力設備に対する保護制御処理を行う。入出力部は電力設備との信号の入出力を行う。少なくとも前記演算処理部と、前記AD変換部または前記入出力部の一方または双方とは、前記リレーユニットの外部である電気所構内に適用されている第1ネットワークと第2ネットワークとの双方を用いて通信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】電気所システム1の構成の一例を示す図。
図2】保護ユニット(現行)42Xを含む構成の一例を示す図。
図3】保護ユニット(現行)42Xと制御盤30とを第1通信線CL2で接続する処理について説明するための図。
図4】保護ユニット(現行)42Xとプロセスレベルの機器や装置等とを第2通信線CL3で接続する処理について説明するための図。
図5】保護ユニット(新)42が設置された構成の一例を示す図。
図6】保護ユニット(新)42と制御盤30とを第1通信線CL2で接続する処理について説明するための図。
図7】保護ユニット(新)42とプロセスレベルの機器や装置等とを第2通信線CL3で接続する処理について説明するための図。
図8】電気所システム1の変形例の構成の一例を示す図。
図9】電気所システム1に更新される際の設備の更新に関するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のリレーユニット、電気所システム、および電気所システムの更新方法を、図面を参照して説明する。ここで、電気所とは、発電所、変電所、開閉所、工場、一般産業の受変電システムを扱う電気所を含む。以下、電気所システムの代表として変電所システムを例に説明する。
【0008】
図1は、電気所システム1の構成の一例を示す図である。電気所システム1、ステーションレベルの階層と、ベイレベルの階層と、プロセスレベルの階層とに分けられ、ステーションレベルに設けられた機器や装置と、ベイレベルに設けられた機器や装置と、プロセスレベルに設けられた機器や装置とを有する。ベイレベルは、ステーションレベルとプロセスレベルとの間の階層である。
【0009】
[ステーションレベル]
ステーションレベルには、例えば、ITC(Intelligent Tele-communicate System )12(12-1、12-2)と、HMI(Human Machine Interface)14と、第1通信線CL1、CL2とが設けられている。第1通信線CL1、CL2(第1ネットワーク)とは、例えば、ステーションバスと称される場合がある。第1通信線CL1、CL2は、電気所などの所定のエリアにおいてLAN(Local Area Network)を構成する通信線である。なお、通信線CL1、CL2とのうち一方は省略されてもよい(例えば通信線は1組であってもよい)。ITC12は、「中継装置」の一例である。
【0010】
ITC12は、第1通信線CL1、CL2に接続されている。ITCは、GW(Gate Way)と称される場合もある。ITC12は、取得した情報の送受信を中継する装置である。取得した情報とは、第1通信線CL1、CL2に接続された機器や装置から取得した情報である。ITC12は、電気所構内に設けられた装置(例えばHMI14)や電気所外(たとえは電気所外の設備で系統制御や給電等の計算機システム)との通信を中継する装置である。
【0011】
HMI14は、ITC12に接続されている。HMI14とITC12とは、例えば、専用線を介して接続されている。HMI14は、例えば、表示部を備え、ITC12により送信された情報を表示部に表示させる。表示部には、例えば、電気所システム1が備える装置、機器(遮断器や変圧器)の運用状態、送電線の電気量(電流・電圧・有効/無効電力)が表示される。オペレータは、表示部に表示された情報を参照して、電気所システム1の装置や機器の状態や、電気所システム1の稼働状態を確認することができると共に、当該装置や機器に対して制御指令を与えることができる。そのことで装置の使用/ロックや遮断器の開閉制御ができる。
【0012】
[ベイレベル]
ベイレベルには、例えば、送電線用の制御盤30-1や母線用の制御盤30-2と、送電線用の保護盤40-1から40-2と母線用の保護盤40-3から40-4が設けられている。送電線用の制御盤30-1は送電線の機器の監視制御や計測を目的に配置され、ITC12やHMI14からの送電線の遮断器等(遮断器の他に断路器や設置装置)の機器制御指令を受けて、当該機器に対してPIU50に対して制御指令を中継してPIU50に送信し、PIU50は送電線の遮断器等に機器の開閉制御を行う。また、PIU50は計器や変圧器から交流電気量を取込み、デジタル変換した上で送電線用の制御盤30-1に送信、送電線用の制御盤30-1を経由してITC12まで送出する。ITC12は更に電気所外へ情報を送信すると共にHMI14に送信する。HMI14では受信した前記デジタル変換した情報を使って送電線の電気量を表示部に表示させる。機器の開発状態もPIU50から同様に取込み、送電線用の制御盤30-1を経由でITC12とHMI14での処理は前記の電気量計測と同様ある。母線用の制御盤30-2も、母線に対して、前記説明の送電線用の制御盤30-1と同等機能を有する。送電線用の保護盤40-1と40-2は2系列の保護盤であり、送電線の系統事故の検出と除去を目的に配置され、PIU50からのデジタル変換された交流電気量を取込み、系統事故演算(電流差動リレー演算等)を行い、演算結果が系統事故と判定されれば、送電線用の保護盤40-1、40-2からPIU50に遮断器の遮断指令を送信し、PIU50は送電線の遮断器に対して遮断器を開放する指令を出力する。母線用の保護盤40-3、40-4も母線に対して、前記説明の送電線用の保護盤40-1、40-2と同等機能を有する。図1の例では、電気所システム1は、2つの制御盤30と、4つの保護盤40とを備えるものとして説明したが、制御盤30の数と保護盤40の数とについては限定されない。以下、制御盤30-1と、制御盤30-2とを区別しない場合は、制御盤30と称し、保護盤40-1から40-4を区別しない場合は、保護盤40と称する場合がある。また、制御盤30に実装のBCU32や保護盤に実装の保護ユニットはIED(Intelligent Electrical Device)と称されることがある。
【0013】
制御盤30は、第1通信線CL1、CL2と、第2通信線CL4に接続されている。制御盤30は、BCU(Bay Control Unit)32(32-1、32-2)を備える。BCU32は、電気所において負荷に電力を供給する回線ごと設けられ、回線における電力設備の監視、および制御を行う。BCU32は、監視対象の回線に設けられたPIU50から遮断器や、断路器、接地装置等、機器の機器状態(開閉情報)や、電気量情報と各種機器故障の情報を取得し、取得した情報に基づいて、送電線の運用状態を監視制御する情報を取り扱う。電気量情報は、送電線の区間に供給される電力に関する情報であって、例えば、その区間に供給される電力の電圧値や電流値を示す情報である。機器状態の情報は、制御盤30あるいは保護盤40により制御される遮断器や、断路器、接地開閉器付き断路器等の動作に関する情報であって、例えば、遮断器等が接続状態にあるか遮断状態にあるかを示す情報である。故障情報は、回線に配置される各種機器の故障情報である。BCU32は、生成した各種情報を、ITC12などに送信する。
【0014】
BCU32は、例えば、回線における系統の状態や、各種の設備の状態に関する情報を第1通信線CL1、CL2、第2通信線CL3、CL4に接続された装置や機器等から取得する。また、BCU32は、自身の演算結果またはオペレータの指示に基づいて、回線における系統の構成を変更するための遮断器や断路器などの開閉器の開閉制御を行える。
【0015】
保護盤40は、保護ユニット42を備える(保護盤40-1から40-4は、それぞれ保護ユニット42-1から42-4を備える)。保護盤40-1は、第2通信線CL3に接続され、保護盤40-2は、第2通信線CL4に接続されている。保護盤40-3は、第2通信線CL3に接続され、保護盤40-4は、第2通信線CL4に接続されている。保護ユニット42の内部の詳細については後述する。保護ユニット42を、保護ユニット(新)42と称する場合がある。
【0016】
第2通信線CL3、CL4(第2ネットワーク)とは、例えば、プロセスバスと称される場合がある。第2通信線CL3、CL4は、電気所などの所定のエリアにおいてLAN(Local Area Network)を構成する通信線である。
【0017】
ここで、例えば、第1通信線CL1、CL2の第1通信プロトコルと、第2通信線CL3、CL4の第2通信プロトコルとは異なる。例えば、第1通信線CL1、CL2の通信プロトコルは、IEC 61850規格に適用されているステーションバスの通信プロトコルであり、第2通信線CL3、CL4の通信プロトコルは、IEC 61850規格に適用されているプロセスバスの通信プロトコルである。第1通信線CL1、CL2の通信プロトコルと、第2通信線CL3、CL4の通信プロトコルとは、上記の通信プロトコルに限らず他の通信プロトコルであってもよいし、第1通信線CL1、CL2の通信プロトコルと、第2通信線CL3、CL4の通信プロトコルは同じであってもよい。
【0018】
保護盤40は、電力系統に設けられた送電線において複数の箇所の各々に設けられた遮断器を制御する保護リレー装置である。保護盤40は、電力系統に短絡や地絡などの事故が発生した場合に、遮断器を遮断して事故が発生した電力設備や系統を切り離すことにより、事故を除去すると共に、事故の拡大を抑制して電力系統の健全な運用を確保する。
【0019】
保護盤40は、保護対象とする送電線の区間に供給される電力に関する電力情報を取得する。保護盤40は、遮断器の動作に関する動作情報を生成し、生成した動作情報に基づいて遮断器を制御する。保護盤40は、電力情報および動作情報を、BCU32やITC12などに送信する。
【0020】
[プロセスレベル]
プロセスレベルには、PIU50(50-1から50-4)と、PIU50-1およびPIU50-3は、例えば、第2通信線CL3に接続され、PIU50-2およびPIU50-4は、例えば、第2通信線CL4に接続されている。以下、PIU50-1から50-4を区別しない場合は、PIU50と称する場合がある。PIU50は、「(例えば計器用変成器、変圧器、開閉器等の電力設備と通信する)インターフェース装置」の一例である。
【0021】
PIU50は、機器の状態を示す情報や機器の故障に関する情報を取得する。PIU50は、例えば、送電線に接続された変圧器や、計器、遮断器にメタルケーブルを介して接続されている。PIU50は、変圧器の状態や計器が取得した情報、遮断器の状態などを取得し、取得した情報を保護盤40または制御盤30に送信する。PIU50は、メタルケーブルを介して送信された計器等のアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を保護ユニット42に送信する。
【0022】
なお、自端である電気所システム1は、相手端の電気所に設けられた相手端電気所システムと通信する。例えば、相手端電気所システムの保護盤は、電気所IFU(Inter Face unit)や保護ユニット、PIUなどを備え、これらの相手端電気所システムの機器や、自端の電気所システム1に配置の保護ユニット42とは専用の通信線で接続されている。
【0023】
[現行からの更新する処理について]
ここで、デジタル電気所の電気所システムとして、IEC 61850適用の通信環境(ステーションバス、プロセスバス)に適したシステムが製品化されている。上記の通信環境を用いた構成では、ベイレベルに配置された装置または機器と、ステーションレベルおよびプロセスレベルに配置された装置または機器とは、電気所構内にてIEC 61850適用の通信環境で接続される。
【0024】
既設(現行)の電気所は、上記の各レベル間の通信(例えば保護盤との通信)は、メタルケーブルで接続されている場合がある。また、既設の電気所のシステムの保護盤や制御盤の運用開始時期(期間)が異なることがあり、これらは一括して更新することはないので、運用開始時期(期間)に応じて各盤の更新が計画され、順次、更新される状況である。このような状況であるため、既設の電気所のシステムを、IEC 61850適用の通信環境を用いたシステムに更新する場合、以下のようなことが生じる(図2から図4参照)。
【0025】
現行の設備から図1に示す第1通信線CL1、CL2、第2通信線CL3、CL4を利用した設備に更新する場合について、図2から図4を参照して説明する。まず、保護ユニット(現行)を用いた更新について説明する。
【0026】
図2は、保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xを含む構成の一例を示す図である。保護盤40と、制御盤30とは、メタルケーブルを介して接続されている。また、保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xは保護盤40に配置のメタルケーブルとの接続用架下端子台と盤内配線で接続されている。プロセスレベルに設けられた機器(例えば計器や変圧器、ガス絶縁開閉装置54)とは、メタルケーブルと盤内配線で接続されている。ガス絶縁開閉装置54とは、遮断器や断路器、接地開閉器などの電気所に付随する開閉機器を、絶縁性の高い六フッ化硫黄(SF6)ガスを充填した密閉金属製容器に収納する設備である。制御盤30に実装されているBCU32とITC12は、通信線Aを介して接続されている。通信線Aは、既存の設備で利用されている所定の通信プロトコルに基づく通信を行うための通信線である。
【0027】
保護ユニット(現行)42Xは、例えば、CPU(Central Processing Unit)43、AIC(Analog Input Converter)44、およびDIO(Digital Input Output)45の各種モジュールあるいは基板で構成される。CPU43、AIC44、およびDIO45は、通信線Bを介して接続されている。通信線Bは、保護ユニット(現行)42Xで利用されている所定の通信プロトコルに基づく通信を行うための通信線である。
【0028】
CPU43は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行して各種処理を行う。各種処理は、例えば、上述したような保護ユニット42が実行する処理であって、遮断器を遮断して事故が発生した電力設備や系統を切り離すことにより、事故を除去する処理等である。AIC44は、メタルケーブルを介してプロセスレベルの機器や装置等から送信されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。DIO45は、周辺の機器や周辺の装置と通信するための通信インターフェースである。DIO45は、例えば、メタルケーブルを介して制御盤30またはプロセスレベルに設けられた機器や装置等と通信するための通信インターフェースである。
【0029】
図3は、図2の現行システムに対して、先行してITC12と制御盤30と実装されるBCU32が第1通信線(ステーションバス)に更新された後の構成で、制御盤30には将来の第2通信線(プロセスバス)に対応に備え、制御盤30内にAIC33とDIO34が実装される。これに対し、保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xと制御盤30に実装のBCU32とを第1通信線CL2で接続する。保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xと制御盤30とを接続していたメタルケーブルを撤去して、CPU43を、第1通信線CL2に接続させる。これにより、保護ユニット(現行)42Xに実装のCPU43とITC12とは第1通信線CL2を介して接続される。上記のようにCPU43を第1通信線CL2に接続する際に、更新後のシステムに対応した保護盤40や保護ユニット(現行)42Xのハードの改造とソフトウエアのアップデートを行う必要がある。
【0030】
上記の更新の際、保護ユニット(現行)42Xにおいて、制御盤30とメタルケーブルで接続されために実装されていたDIO45は撤去されてもよいし、制御盤30において、BCU32と通信するAIC33とDIO34とが追加されてもよい。AIC33の機能と、AIC44の機能とは同様であり、DIO45の機能と、DIO34の機能とは同様である。
【0031】
図4は、前記の更新後に引き続き、保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xとプロセスレベルの機器や装置等とを第2通信線CL3で接続する処理について説明するための図である。保護ユニット(現行)42Xとプロセスレベルの機器や装置等とを接続していたメタルケーブルを撤去して、CPU43を、第2通信線CL3に接続させる。更に、プロセスレベルにPIU50を設け(例えばGIS54が更新されるタイミングでPIU50が設けられると)、第2通信線CL3を介してCPU43および制御盤30に実装のAIC33とDIO34の接続を撤去してCPU内蔵のBCU32とPIU50とを接続させる。これにより、CPU43とPIU50とは第2通信線CL3を介して接続される。上記のようにCPU43を第2通信線CL3に接続する際に、更新後のシステムに対応した保護盤40や保護ユニット(現行)42Xのハードの改造とソフトウエアのアップデートを行う必要がある。
【0032】
上記のように、保護ユニット(現行)42Xを利用して設備の更新を行うと、現行の保護盤40や保護ユニット(現行)42Xのハード改造やソフトウエアの更新等が必要となり、更新後のシステムに移行するために負荷が掛かることがある。例えば、現地における各種改造や試験の長期化によってコストが増加する場合がある。そこで、本実施形態では、図5から図7で説明するように、保護ユニット(現行)から保護ユニット(新)を実装した保護盤40をあらかじめ配置しておくか、保護ユニット(新)に更新しておくことが望ましい。
【0033】
[本実施形態の設備の更新方法]
図5は、保護ユニット(新)42が設置された構成の一例を示す図である。保護ユニット(新)42と、制御盤30とは、メタルケーブルを介して接続されている。保護ユニット(新)42と、プロセスレベルに設けられた機器(例えば計器や変圧器、ガス絶縁開閉装置54等)とは、メタルケーブルを介して接続されている。
【0034】
保護盤40に実装の保護ユニット(新)42は、例えば、CPU(演算処理部)43、AIC(AD変換部)44、およびDIO(入出力部)45を備える。CPU43、AIC44、およびDIO45は、第2通信線を介して接続されている。CPU43とDIO45とは、第1通信線を介して接続されている。保護ユニット(新)42において、CPUと、AIC44と、DIO45とは、内部で分割可能な構成である(物理的に分割可能な構成である)。CPU43は、「電力設備(送電線等の電力設備)に対する保護制御処理を行う演算処理部」の一例であり、DIO45は、「電力設備(他の装置や開閉器等」との信号の入出力を行うための入出力部)の一例である。
【0035】
図6は、図5の現行システムに対して、先行してITC12と制御盤30と実装されるBCU32が第1通信線(ステーションバス)に更新された後の構成で、制御盤30には将来の第2通信線(プロセスバス)に対応に備え、制御盤30内にAIC33とDIO34が実装される。保護盤40に実装の保護ユニット(新)42と制御盤30とを第1通信線CL2で接続する。保護ユニット(新)42と制御盤30とを接続していたメタルケーブルを撤去して、ITC12、BCU32、および保護ユニット(新)42を、第1通信線CL2に接続させる。これにより、ITC12とBCU32とCPU43とは第1通信線CL2を介して接続される。この場合、あらかじ第1通信線と接続できる機能を備えているため、例えば、保護ユニット(新)42のハードの改造やソフトウエアのアップデートなどは行わなくてもよい。
【0036】
上記の更新の際、保護ユニット(新)42において、DIO45は撤去されてもよいし、実装の予備として保護ユニット(新)42に置かれてもよい。例えば、DIO45は、メタルケーブルを介してプロセスレベルの機器や装置等と通信する場合、撤去されずに残されてもよい。
【0037】
図7は、前記の更新後に引き続き、保護盤40に実装の保護ユニット(新)42とプロセスレベルの機器や装置等とを第2通信線CL3で接続する処理について説明するための図である。保護ユニット(新)42とプロセスレベルの機器や装置等とを接続していたメタルケーブルを撤去して、保護ユニット(新)42を、第2通信線CL3に接続させる。更に、プロセスレベルにPIU50を設け、第2通信線CL3を介してCPU43および制御盤30に実装のAIC33とDIO34の接続を撤去してCPU内蔵のBCU32と接続させる。これにより、CPU43とPIU50とは第2通信線CL3を介して接続される。この場合、例えば、保護盤40や保護ユニット(新)42のハードの改造とソフトウエアのアップデートを行う必要がない。また、PIU50が、プロセスレベルの機器や装置等から取得したアナログ信号をデジタル信号に変換して、第2通信線CL3を介して保護ユニット(新)42に出力することで、保護ユニット(新)42は、デジタル信号を取得する。
【0038】
上記の更新の際、保護ユニット(新)42において、AIU44は撤去されてもよいし、実装の予備として保護ユニット(新)42に置かれてもよい。
【0039】
上記のように、保護ユニット(現行)42Xの現行ユニットではなく、あらかじめ保護ユニット(新)42にて保護盤40を配置しておけば、保護ユニット(新)42を第1通信線CL1、第2通信線CL3に接続させることで、負担となるハードの改造やソフトウエアのアップデートを抑制しつつ、システムを容易に更新することができる。
【0040】
[変形例]
図8は、電気所システム1の変形例の構成の一例を示す図である。電気所システム1の変形例は、PIU50としても保護ユニット(新)42Aを使って構築できる。保護ユニット(新)42Aは、アナログ信号をデジタル信号の変換や通信線への演算処理(例えば上記のデジタル信号を通信線に送信するための演算処理)を行うCPU43AとAIC44AおよびDIO45Aを備える。CPU43AはPIU50としての演算処理が必要であり、CPUハードは同じでもソフトウエアは保護ユニット(新)42Aに使われるソフトウエアではなく、PIU50のソフトウエアとなる。AIC44Aは、AIC44と同様の機能構成(または類似する機能構成)であり、DIO45Aは、DIO45と同様の機能構成(または類似する機能構成)である。
【0041】
上記のように、電気所システム1の変形例は、PIU50に代えて、保護ユニット(新)42Aを配置することにより、電気所システム1と同等の機能構成を有する。また、相手端電気所の保護ユニット(現行)42Xを保護ユニット(新)42の構成で配置することで、保護ユニット(新)42が各機能を有するので、将来の電気所構内のネットワーク化(第1通信線(ステーションバス)や第2通信線(プロセスバス)に備えるので、相手端電気所の保護盤40に、これらネットワーク化に対応するIFUまたはPIUを無用にすることができる。このように、必要とされる構成要素を自由に選んでユニットに組み込むことで、ユニットは共通でありながら、構成要素に無駄のない適切なシステムを構築することができる。
【0042】
[フローチャート]
図9は、電気所システム1に更新される際の設備の更新に関するフローチャートである。以下の処理は、例えば管理者またはロボットなどにより行われる。まず、例えば管理者が、保護ユニット(現行)42Xに代えて保護ユニット(新)42の保護盤40を設置する(ステップS100)。次に、管理者が、保護ユニット(新)42を第1通信線CL2に接続する(ステップS102)。これにより、保護ユニット(新)42と、あらかじめ第1通信線と第2通信線に対応した制御盤30とが、第1通信線CL2を介して接続される。
【0043】
次に、管理者が、PIU50を設置して、PIUを第2通信線CL3に接続する(ステップS104)。次に、管理者が、保護ユニット(新)42を第2通信線CL3に接続する(ステップS102)。保護ユニット(新)42と、PIU50とが、第2通信線CL3を介して接続される。これにより、本フローチャートの処理が終了する。本処理により、例えば、保護ユニット(新)42Aに設備を更新する過渡期においても柔軟に設備を更新することができる。
【0044】
以上説明した実施形態によれば、既設保護盤40に実装の保護ユニット(現行)42Xを、保護ユニット(新)42にあらかじめ実装するか、事前に置き換えることにより、より適切な通信環境を実現することを支援することができる。更に、保護ユニット(新)42と第1通信線および第2通信線とを接続させて保護ユニット(新)42とPIU50とを接続させることにより、容易に所望の通信環境に適した設備に更新することができ、より適切な通信環境を実現することができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9