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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240729BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20240729BHJP
   A61M 5/155 20060101ALI20240729BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M5/145 502
A61M5/155
A61M5/20 550
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023556812
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022055835
(87)【国際公開番号】W WO2022194611
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】21162675.9
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバー・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ビューリ・ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ・アレクサンダー
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532555(JP,A)
【文献】特表2009-521969(JP,A)
【文献】特開2015-080473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/155
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイス(1)であって、
薬剤容器(6)と、液体フローシステム(7)と、ポンプシステム(8)と、前記薬剤容器、前記ポンプシステム、および前記液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシング(9)と、を含む、送達ユニット(3)を含み、
前記薬剤容器は、バレル部分(6a)と、前記バレル部分内部にスライド可能に装着され、前記バレル部分の一端部で前記薬剤容器内部に薬剤(78)を密封するプランジャ(12)と、を含み、
前記液体フローシステム(7)は、前記液体薬剤の送達中に前記薬剤容器に流体的に接続され、
前記薬剤容器は、前記ケーシング(9)の容器ケーシング部分(38)の容器受容キャビティ(75)内部に密閉式に収容され、前記容器受容キャビティは、ガス密式に前記ポンプシステム(8)の流体出口(31)に流体的に相互接続され、前記ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口(30)を含み、前記ポンプシステムは、前記流体入口(30)を通して取り込まれた環境空気を前記容器受容キャビティ(75)内に送り込み、前記容器ケーシング部分内にガス圧を発生させ、よって、前記液体薬剤の送達のために前記プランジャの後端部(73)に圧力を加えるように構成されており、
前記薬剤容器は、薬剤カートリッジであり、一端部に隔壁(6c)を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項2】
前記ポンプシステムは、ポンプエンジン(28)を含み、前記ポンプエンジンは、
ステータ(29)と、
少なくとも部分的に前記ステータ内に回転可能にかつ軸方向にスライド可能に装着されたロータ(32)であって、第1の直径を有する第1の軸方向延在部と、前記第1の直径よりも大きな第2の直径を有する第2の軸方向延在部と、を含む、ロータと、
前記第1の軸方向延在部の周りで前記ステータ上に装着された第1のバルブシールによって形成された第1のバルブであって、前記第1のバルブが開位置にあるときに前記第1のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第1のチャネルと協力する、第1のバルブと、
前記第2の軸方向延在部の周りで前記ステータ上に装着された第2のバルブシールによって形成された第2のバルブであって、前記第2のバルブが開位置にあるときに前記第2のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成されたロータ内の第2のチャネルと協力する、第2のバルブと、
を含む、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
可動隔壁針支持体(19)上に装着された隔壁針(18)と、前記薬剤容器の前記隔壁に向かって前記隔壁針支持体を押すばね(23)と、前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)と接触していない後退位置に前記隔壁針支持体(19)が保持されるブロック位置から、前記ばね(23)の力を受けて前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)を貫通するように、前記隔壁針支持体が解放され、前記薬剤容器の隔壁に向かって移動することが許容される作動位置まで移動可能なブロック具(24)と、を含む、容器流体接続システム(17)を含む、請求項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記ブロック具(24)は、回転可能な支持リング(25)と、前記支持リングから延びるブロックフィンガ(26)と、を含み、前記ブロックフィンガは、前記ブロックフィンガが前記隔壁針支持体(19)に係合してこれを前記後退位置に維持する位置から、前記ブロックフィンガ(26)が前記隔壁針支持体(19)を係合解除して、前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)を貫通するアクチュエータ位置に前記隔壁針支持体を移動させる、作動位置まで、前記支持リングと共に、回転可能に移動可能である、請求項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記ブロック具は、回転作動ホイール(34)および作動レバー(64)を含む作動機構によって、ブロック位置から作動位置まで移動され、
前記作動ホイール(34)は、前記ポンプシステム(8)のポンプエンジン(28)のロータ(32)と直接連結されているか、またはこれと一体的に形成されている、請求項またはに記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
薬剤送達デバイス(1)であって、
薬剤容器(6)と、液体フローシステム(7)と、ポンプシステム(8)と、前記薬剤容器、前記ポンプシステム、および前記液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシング(9)と、を含む、送達ユニット(3)を含み、
前記薬剤容器は、バレル部分(6a)と、前記バレル部分内部にスライド可能に装着され、前記バレル部分の一端部で前記薬剤容器の内部に薬剤(78)を密封するプランジャ(12)と、を含み、
前記液体フローシステム(7)は、前記液体薬剤の送達中に前記薬剤容器に流体的に接続され、
前記薬剤容器は、前記ケーシング(9)の容器ケーシング部分(38)の容器受容キャビティ(75)内部に密閉式に収容され、前記容器受容キャビティは、ガス密式に前記ポンプシステム(8)の流体出口(31)に流体的に相互接続され、前記ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口(30)を含み、前記ポンプシステムは、前記流体入口(30)を通して取り込まれた環境空気を前記容器受容キャビティ(75)内に送り込み、前記容器ケーシング部分内にガス圧を発生させ、よって、前記液体薬剤の送達のために前記プランジャの後端部(73)に圧力を加えるように構成されており、
前記薬剤送達デバイスは、注射針と、前記薬剤送達デバイスのハウジング(2)内部の後退位置から、前記注射針が前記ハウジングの基部壁を通って突出する伸長送達位置まで、前記注射針を移動させるように構成された注射針作動機構と、を含む、注射送達システムを更に含む、薬剤送達デバイス。
【請求項7】
前記注射針作動機構は、請求項6に記載の隔壁針作動機構の前記回転作動ホイール(34)および前記作動レバー(64)を含み、前記作動レバーは、前記注射針(15)が装着されたスライド可能な注射針支持体(16)に連結されている、請求項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記作動レバー(64)は、回転可能な支持リング(66)と、前記薬剤送達デバイスの初期作動時に前記作動ディスク(34)のくぼみ(35)に係合するように構成された、前記回転可能な支持リングから延びるレバーアーム(65)と、を含む、請求項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
前記支持リング(66)は、前記薬剤容器の隔壁端部を中に受容するキャビティを囲む前記ケーシングのシュラウド部分の周りに装着されている、請求項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
電子制御システム(47)と、電源(50)と、ポンプ駆動部(52)と、を含む、駆動ユニットをさらに含み、
前記ポンプ駆動部(52)は、回転電気モータ(53)と、前記回転電気モータの出力シャフトに連結された連結インターフェース(54)と、を含み、前記連結インターフェース(54)は、前記送達ユニットの前記ポンプシステムの駆動部連結インターフェース(33)に連結し、前記ポンプ駆動部(52)は、前記ポンプシステムのロータ(32)にトルクを提供する、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
電子制御システム(47)と、送信機(71a)および受信機(71b)を含む光学センサ(71)を含むプランジャ感知システム(70)と、を含み、前記送信機は、前記プランジャ(12)の後端部(73)に光学信号を送信するように構成され、前記受信機は、前記プランジャ後端部(73)から反射された前記光学信号を受信するように構成され、前記電子制御システム(47)に接続された前記プランジャ感知システムは、前記送信機から前記受信機への前記光学信号の飛行時間を測定し、そこから前記薬剤容器の前記シリンダー部分内の前記プランジャの位置を決定するように構成されている、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
薬剤送達デバイス(1)であって、
薬剤容器(6)と、液体フローシステム(7)と、ポンプシステム(8)と、前記薬剤容器、前記ポンプシステム、および前記液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシング(9)と、を含む、送達ユニット(3)を含み、
前記薬剤容器は、バレル部分(6a)と、前記バレル部分内部にスライド可能に装着され、前記バレル部分の一端部で前記薬剤容器の内部に薬剤(78)を密封するプランジャ(12)と、を含み、
前記液体フローシステム(7)は、前記液体薬剤の送達中に前記薬剤容器に流体的に接続され、
前記薬剤容器は、前記ケーシング(9)の容器ケーシング部分(38)の容器受容キャビティ(75)内部に密閉式に収容され、前記容器受容キャビティは、ガス密式に前記ポンプシステム(8)の流体出口(31)に流体的に相互接続され、前記ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口(30)を含み、前記ポンプシステムは、前記流体入口(30)を通して取り込まれた環境空気を前記容器受容キャビティ(75)内に送り込み、前記容器ケーシング部分内にガス圧を発生させ、よって、前記液体薬剤の送達のために前記プランジャの後端部(73)に圧力を加えるように構成されており、
前記薬剤送達デバイスは、ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内部に装着された制御ユニット(4)と、を更に含み、前記制御ユニットは、前記薬剤送達デバイスが患者の皮膚に接して位置付けられているかどうかを検出するように構成された、静電容量値を測定するための、前記制御ユニットの電子制御システム(47)に接続された電極(56)を含む、身体上感知システム(5)を含み、前記ハウジング(2)の皮膚接触壁(81)は、前記送達ユニットおよび前記制御ユニットが装着された前記ハウジングの内側に面する内側側面と、前記ハウジングの外側に面し、患者の前記皮膚に当てられることが意図された外側装着側面と、を有し、
前記電極(56)は、前記皮膚接触壁の前記内側側面に接して直接装着された金属の層を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項13】
薬剤送達デバイス(1)であって、
薬剤容器(6)と、液体フローシステム(7)と、ポンプシステム(8)と、前記薬剤容器、前記ポンプシステム、および前記液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシング(9)と、を含む、送達ユニット(3)を含み、
前記薬剤容器は、バレル部分(6a)と、前記バレル部分内部にスライド可能に装着され、前記バレル部分の一端部で前記薬剤容器の内部に薬剤(78)を密封するプランジャ(12)と、を含み、
前記液体フローシステム(7)は、前記液体薬剤の送達中に前記薬剤容器に流体的に接続され、
前記薬剤容器は、前記ケーシング(9)の容器ケーシング部分(38)の容器受容キャビティ(75)内部に密閉式に収容され、前記容器受容キャビティは、ガス密式に前記ポンプシステム(8)の流体出口(31)に流体的に相互接続され、前記ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口(30)を含み、前記ポンプシステムは、前記流体入口(30)を通して取り込まれた環境空気を前記容器受容キャビティ(75)内に送り込み、前記容器ケーシング部分内にガス圧を発生させ、よって、前記液体薬剤の送達のために前記プランジャの後端部(73)に圧力を加えるように構成されており、
前記薬剤送達デバイスは、前記送達ユニット(3)が内部で組み立てられるハウジング(2)を更に含み、前記ハウジングは、患者の皮膚に接して装着される皮膚接触壁(81)を含み、前記皮膚接触壁は、保護フィルム(11)を備えた粘着層を含む、薬剤送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬剤を皮下投与するための薬剤送達デバイスに関する。本発明は、特に、パッチデバイスの形態の薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤を皮下送達するために患者の皮膚に装着されるパッチデバイスの形態の薬剤送達デバイスが知られている。いくつかのデバイスは、典型的には、カートリッジを受容するか、または患者/医療専門家によって充填される内部リザーバを有する。この場合、薬剤は、バイアルから取り出され、シリンジを使って内部リザーバの中へと移される。カートリッジは広く普及しており、その取り扱いは非常に簡単であるため、標準的なカートリッジと共に使用され得るデバイスを提供することは有利である。液体薬剤は、例えば、生物学的医薬製品、または、使用目的に応じてやや短い時間内に、ワンショット投与のために単に投与される他の薬剤とすることができる。駆動および制御電子機器を収容する再利用可能な構成要素に対して組み立てられた単回使用の使い捨て構成要素を有するパッチデバイスの形態の薬剤送達デバイス、または単一の使い捨て構成要素としての薬剤送達デバイスを提供することが知られている。
【0003】
患者が装着する薬剤送達デバイスの信頼性、安全性、コンパクトさ、使いやすさは重要である。使い捨て構成要素については、部品の量、および、その結果として使い捨てデバイスのコストも、重要な考慮事項である。
【0004】
安全性と信頼性の要件を満たすため、多くの従来のパッチポンプ型薬剤送達デバイスは、複雑なポンプ機構を有しており、かなりかさばる。また、長い貯蔵寿命および適切な滅菌は、実現するのがしばしば困難であり、製造コストを上昇させるものである。
【0005】
薬剤送達デバイスの使用の安全性のために、患者の皮膚に取り付けられているときのみデバイスが作動され得ること、および、薬剤の投与までデバイスが無菌状態を保つことを確実にすることも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したことを鑑み、本発明の目的は、安全で、信頼性が高く、コンパクトである、液体薬剤の投与のための、使い捨てユニットを備えた、または完全に使い捨てのデバイスとしての、特にパッチデバイスの形態の、薬剤送達デバイスを提供することである。
【0007】
プランジャを備えた薬剤容器に入れて提供される液体薬剤の投与に使用され得る薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【0008】
使いやすい薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【0009】
製造するのに経済的である薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【0010】
長い貯蔵寿命を有する薬剤送達デバイスを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、請求項1に記載の薬剤送達デバイスを提供することによって達成された。従属請求項には、本発明のさまざまな有利な実施形態が記載されている。
【0012】
本明細書で開示されるのは、本発明の第1の態様によれば、薬剤容器と、液体フローシステムと、ポンプシステムと、薬剤容器、ポンプシステム、および液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシングと、を含む送達ユニットを含む、薬剤送達デバイスである。薬剤容器は、バレル部分と、バレル部分内部にスライド可能に装着され、バレル部分の一端部において容器内部に薬剤を密封するプランジャと、を含み、液体フローシステムは、液体薬剤の送達中に薬剤容器に流体的に接続される。薬剤容器は、ケーシングの容器ケーシング部分の容器受容キャビティ内部に密閉式に収容され、容器受容キャビティは、ガス密式にポンプシステムの流体出口に流体的に相互接続されている。ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口を含み、ポンプシステムは、流体入口を通して取り込まれた環境空気を容器受容キャビティに送り込み、容器ケーシング内部にガス圧を発生させ、よって、液体薬剤の送達のためにプランジャの後端部に圧力を加えるように構成されている。
【0013】
有利な実施形態では、ポンプシステムは、ポンプエンジンを含み、ポンプエンジンは、
-ステータと、
-少なくとも部分的にステータ内に回転可能にかつ軸方向にスライド可能に装着されたロータであって、第1の直径を有する第1の軸方向延在部と、第1の直径よりも大きな第2の直径を有する第2の軸方向延在部と、を含む、ロータと、
-第1の軸方向延在部の周りでステータ上に装着された第1のバルブシールによって形成された第1のバルブであって、第1のバルブが開位置にあるときに第1のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成されたロータ内の第1のチャネルと協力する、第1のバルブと、
-第2の軸方向延在部の周りでステータ上に装着された第2のバルブシールによって形成された第2のバルブであって、第2のバルブが開位置にあるときに第2のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成されたロータ内の第2のチャネルと協力する、第2のバルブと、
を含む。
【0014】
有利な実施形態では、薬剤容器は、一端部に隔壁を含む薬剤カートリッジである。
【0015】
本明細書で開示されるのは、第2の態様によれば:
-薬剤容器を含む送達ユニットであって、薬剤容器は、バレル部分と、バレル部分内部にスライド可能に装着され、薬剤容器内部に液体薬剤を収容するためにバレル部分の内面に接して密閉式に密封するプランジャと、を含む、送達ユニットと、
-電子制御システム、ならびに、送信機および受信機を含む光学センサを含むプランジャ感知システムであって、送信機は、プランジャの後端部に光学信号を送信するように構成され、受信機は、プランジャの後端部から反射された光学信号を受信するように構成され、電子制御システムに接続されたプランジャ感知システムは、送信機から受信機への光学信号の飛行時間を測定し、そこから薬剤容器のシリンダー部分内のプランジャの位置を決定するように構成されている、電子制御システムならびにプランジャ感知システムと、
を含む、薬剤送達デバイスである。
【0016】
一実施形態では、送達ユニットは、プランジャに面する薬剤容器の端部を覆うプランジャ端部分を含む容器ケーシング部分を含むケーシングを含み、プランジャ端部分は、容器ケーシングのプランジャ端部分を光学信号が通過することを可能にする透明なセンサ窓を含み、光学センサは、センサ窓上に、またはそれに近接して位置付けられ、送信機は、センサ窓を通してプランジャの後端部に光学信号を送信するように構成され、受信機は、プランジャ後端部から反射されセンサ窓を通って戻ってくる光学信号を受信するように構成される。
【0017】
一実施形態では、容器ケーシング部分のプランジャ端部分は、センサ窓をプランジャ端部後端部から離してある距離のところに位置付けて初期位置にあるプランジャの光学的飛行時間測定を可能にする、隆起部分を含む。
【0018】
一実施形態では、プランジャ端部後端部から離れた前記ある距離は、5mm~20mmの範囲内である。
【0019】
一実施形態では、送達ユニットは、プランジャに面する薬剤容器の端部を覆うプランジャ端部分を含む容器ケーシング部分を含むケーシングを含み、プランジャ端部分は、容器ケーシングのプランジャ端部分を光学信号が通過することを可能にする透明なセンサプリズムを含み、光学センサは、センサプリズムの面上に、またはそれに近接して位置付けられ、送信機は、センサプリズムを通してプランジャの後端部に光学信号を送信するように構成され、受信機は、プランジャ後端部から反射してセンサプリズムを通って戻ってくる光学信号を受信するように構成される。
【0020】
一実施形態では、光学センサが装着されたセンサプリズムの前記面は、プランジャの移動方向に対して実質的に直交する。
【0021】
本明細書で開示されるのは、第3の態様によれば、薬剤容器と、液体フローシステムと、加圧ガス源と、薬剤容器、加圧ガス源、および液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシングと、を含む、送達ユニットを含む、薬剤送達デバイスである。薬剤容器は、バレル部分と、バレル部分内部にスライド可能に装着され、バレル部分の一端部において容器内部に薬剤を密封するプランジャと、を含む。薬剤容器は、ケーシングの容器ケーシング部分の容器受容キャビティ内部に収容され、容器受容キャビティは、ガス密式に加圧ガス源の流体出口に流体的に相互接続されている。加圧ガス源は、容器受容キャビティ内に加圧ガスを供給するように構成され、これにより、液体薬剤の送達のためにプランジャの後端部に圧力を加える。薬剤送達デバイスは、容器ケーシング内部の圧力を測定するために容器ケーシングに流体的に連結された圧力センサをさらに含み、圧力センサは、経時的に圧力センサによって検出された圧力を測定し、かつ、薬剤送達フローシステム内の閉塞または容器の空の位置に対応する容器内のプランジャの移動の終了のいずれかによるプランジャの移動の停止を含む、プランジャの経時的な位置を、経時的な圧力測定値から決定するように構成された、電子制御システムに接続されている。
【0022】
有利な実施形態では、加圧ガス源は、容器受容キャビティ内にガスを送り込み、よって、プランジャの後端部に圧力を加えるように構成されたポンプシステムを含む。
【0023】
有利な実施形態では、ポンプシステムは、環境空気を容器受容キャビティ内に送り込み、よって、プランジャの後端部に圧力を加えるように構成されている。
【0024】
本明細書で開示されるのは、第4の態様によれば、液体薬剤を中に収容する薬剤カートリッジの形態の薬剤容器と、液体フローシステムと、ポンプシステムと、薬剤容器、ポンプシステム、および液体フローシステムの少なくとも一部が内部に装着されるケーシングと、を含む、送達ユニットを含む、薬剤送達デバイスである。薬剤容器は、薬剤容器の端部を密封する隔壁を含む。液体フローシステムは、薬剤送達デバイスの作動状態において薬剤を注射するように構成された注射針を含む注射送達システムを含み、液体フローシステムは、可動隔壁針支持体上に装着された隔壁針と、薬剤容器の隔壁に向かって隔壁針支持体を押すばねと、隔壁針が隔壁と接触していない後退位置に隔壁針支持体が保持されるブロック位置から、ばねの力を受けて隔壁針が隔壁を貫通するように、隔壁針支持体が解放され、薬剤容器の隔壁に向かって移動することが許容される作動位置まで移動可能なブロック具(blocking organ)と、を含む、容器流体接続システムをさらに含む。
【0025】
有利な実施形態では、ブロック具は、回転可能な支持リングと、支持リングから延びるブロックフィンガと、を含み、ブロックフィンガは、ブロックフィンガが隔壁針支持体に係合してこれを後退位置に維持する位置から、ブロックフィンガが隔壁針支持体を係合解除して、隔壁針が隔壁を貫通するアクチュエータ位置に隔壁針支持体を移動させる、作動位置まで、支持リングと共に、回転可能に移動可能である。
【0026】
有利な実施形態では、隔壁針支持体は、フランジセクションと、フランジセクション間の隙間と、を含み、ブロックフィンガは、隔壁針支持体が後退されるブロック位置の間、フランジセクションに係合する。
【0027】
有利な実施形態では、隔壁針支持体は、隔壁針支持体を後退位置から隔壁貫通位置までスライド可能に案内するために、ケーシング内の相補的なガイド部分に係合する対向部位上のガイドを含む。
【0028】
有利な実施形態では、注射送達システムは、薬剤送達デバイスのハウジング内部の後退位置から、注射針がハウジングの基部壁を通って突出する伸長送達位置まで、注射針を移動させるように構成された針作動機構を含み、針作動機構は、後退位置と伸長送達位置との間での移動のために、スライド可能な隔壁針支持体に連結された作動レバーに係合するように構成された回転作動ディスクを含む。
【0029】
有利な実施形態では、作動ディスクは、ポンプシステムのポンプエンジンのロータに直接連結されているか、またはこれと一体的に形成されている。
【0030】
有利な実施形態では、作動レバーは、ブロック具をロック位置からロック解除位置に移動させるために、ブロック具に連結されている。
【0031】
有利な実施形態では、作動レバーは、薬剤容器の隔壁端部を中に受容するキャビティを囲むケーシングのシュラウド部分の周りに装着された支持リングを含む。
【0032】
有利な実施形態では、作動レバーは、薬剤送達デバイスの初期作動時に作動ディスクのくぼみに係合するように構成された、回転可能な支持リングから延びるレバーアームを含む。
【0033】
本明細書で開示されるのは、第5の態様によれば、ハウジングと、薬剤容器を含む送達ユニットと、ハウジング内部に装着された制御ユニットと、を含む、薬剤送達デバイスであり、制御ユニットは、薬剤送達デバイスが患者の皮膚に接して位置付けられているかどうかを検出するように構成された、静電容量値を測定するための、制御ユニットの電子制御システムに接続された電極を含む、身体上感知システム(on-body sensing system)を含む。ハウジングの皮膚接触壁は、送達ユニットおよび制御ユニットが装着されたハウジングの内側に面する内側側面と、ハウジングの外側に面し、患者の皮膚に当てられることが意図された外側装着側面と、を有する。電極は、皮膚接触壁の内側側面に接して直接装着された金属の層を含む。
【0034】
有利な実施形態では、電極の金属層は、皮膚接触壁の前記内面上に直接蒸着された金属層からなる。
【0035】
有利な実施形態では、直接蒸着金属層はガルバニックめっき層である。
【0036】
有利な実施形態では、身体上感知システムは、電極を取り囲む導体の形態のシールドをさらに含む。
【0037】
有利な実施形態では、身体上感知システムは、前記電極と接地値(ground value)との間の静電容量値を測定するように構成されている。
【0038】
有利な実施形態では、身体上感知システムは、第1の電極を構成する前記電極から絶縁的に分離された第2の電極を含み、第1の電極と第2の電極との間の電位は、静電容量値を決定するために測定される。
【0039】
有利な実施形態では、第2の電極は、装着壁の内側側面上に直接金属層として形成される。
【0040】
有利な実施形態では、第2の電極は、第1の電極と同様に金属層として形成される。
【0041】
有利な実施形態では、第2の電極および第1の電極は、インターリーブ部分を有する。
【0042】
本明細書で開示されるのは、第6の態様によれば、薬剤送達デバイスを製造する方法であり、薬剤送達デバイスは、
-プレフィルド薬剤容器であって、薬剤容器は、バレル部分と、バレル部分内部にスライド可能に装着され、容器内部に薬剤を密封するプランジャと、を含む、プレフィルド薬剤容器と、
-薬剤送達デバイスの薬剤送達アクション中に、薬剤容器から患者への流体接続を提供する液体フローシステムを含む流体パックと、
-電子部品を含む制御ユニットと、
-ハウジングと、を含み、
方法は、以下の、
a)流体パックの構成要素を組み立てて、前記流体パックを形成するステップと、
b)流体パックを滅菌するステップと、
c)前記プレフィルド薬剤容器を提供するステップと、
e)流体パックをプレフィルド薬剤容器に対して組み立てて、容器パックシステムを形成するステップと、
f)容器パックシステムを制御ユニットおよびハウジング(2)に対して組み立てて、薬剤送達デバイスを形成するステップと、を含み、
ステップc)およびe)は、無菌条件下で実施されることを特徴とする。
【0043】
有利な実施形態では、ステップf)は無菌条件下で実施されない。
【0044】
有利な実施形態では、カートリッジパックシステムは、プレフィルド薬剤容器を包囲する容器ケーシングを含む。
【0045】
有利な実施形態では、容器パックシステムはポンプシステムを含む。
【0046】
有利な実施形態では、ポンプシステムは、送達ユニットのポンプシステムの連結インターフェースを含み、ポンプ駆動部は、ポンプシステムのロータにトルクを提供し、連結インターフェースは、ステップb)の後に無菌性を維持するために密封膜によって密封される。
【0047】
有利な実施形態では、ハウジングはユーザーインターフェースを含む。
【0048】
有利な実施形態では、b)の滅菌方法は、ガンマ線照射、ETO滅菌、NO2滅菌、蒸気滅菌、VHP滅菌、X線滅菌または電子ビーム滅菌のいずれかである。
【0049】
有利な実施形態では、ステップe)の組み立てステップは、フォームフィット接続(form-fit connection)を含む。
【0050】
有利な実施形態では、フォームフィット接続は、容器パックシステム内におけるプレフィルド薬剤容器の密閉式密封を提供する。
【0051】
この方法の実施形態では、内部で組み立てられた薬剤容器がない、本明細書に記載の送達ユニットが、前記流体パックを形成し、薬剤容器が内部で組み立てられている送達ユニットが、前記容器パックを形成し、本明細書に記載の駆動ユニットが、電子部品を含む前記制御ユニットを形成する。
【0052】
この方法の実施形態では、薬剤送達デバイスは、本明細書に記載されるデバイスの実施形態のうちのいずれかの任意の1つ以上の追加的特徴を有することができる。
【0053】
さまざまな実施形態では、薬剤容器は、薬剤容器の一端部に隔壁を含むことができ、隔壁は、薬剤送達デバイスの作動中に注射針に流体的に接続された隔壁針によって穿孔される。
【0054】
さまざまな実施形態では、薬剤送達デバイスは、注射針を含み得、注射針は、針が完全にハウジング内部にある後退位置から、針先端部が液体薬剤の注射送達のためにハウジングの皮膚接触壁から突出する作動位置まで、針を移動させるように構成された可動針支持体上に装着されている。
【0055】
さまざまな実施形態では、液体フローシステムは、隔壁針を含む容器流体接続システムに導管を介して接続された、可動針支持体上に装着された注射針を含む注射送達システムを含み得る。
【0056】
さまざまな実施形態では、薬剤送達デバイスは、送達ユニットのポンプシステムの駆動部連結インターフェースに連結する連結インターフェースを有するポンプ駆動部を含む駆動ユニットをさらに含み得、ポンプ駆動部は、ポンプシステムのロータにトルクを提供する。
【0057】
さまざまな実施形態では、薬剤送達デバイスは、ハウジングを含み得、その中で、送達ユニットおよび駆動ユニットが組み立てられ、ハウジングは、患者の皮膚に接して装着される皮膚接触壁を含み、皮膚接触壁は、保護フィルムを有する粘着パッチを含む。
【0058】
さまざまな実施形態では、特定の医療用途のために、薬剤送達デバイスは、単回使用の使い捨てデバイスとして構成され得、特に、容器内に収容される液体薬剤の単回投与のために構成され得る。
【0059】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
図1b図1aのデバイスの斜視図であり、カバーと保護フィルムを備えた粘着物とが分解されている。
図2図1bの実施形態の分解組立図であり、カバーと保護フィルムを備えた粘着物とが取り除かれており、ハウジング基部、送達ユニット、および駆動ユニットを示している。
図3a】駆動送達ユニット内部の薬剤容器を示す、本発明の実施形態による図2の駆動ユニットの分解組立図である。
図3b】本発明の実施形態による送達ユニットの斜視断面図である。
図3c】本発明の実施形態による送達ユニットの斜視断面図である。
図4a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの送達ユニットのポンプおよび液体フローシステムの斜視図である。
図4b図4aの液体流動ポンプシステムの斜視分解組立図である。
図4c図4aの液体流動ポンプシステムの斜視分解組立図である。
図5a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、薬剤送達デバイスが作動した際の経皮送達システムの針および容器流体接続システムの針の作動におけるステップを示す。
図5b】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、薬剤送達デバイスが作動した際の経皮送達システムの針および容器流体接続システムの針の作動における異なるステップを示す。
図5c】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、薬剤送達デバイスが作動した際の経皮送達システムの針および容器流体接続システムの針の作動における異なるステップを示す。
図5d】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、薬剤送達デバイスが作動した際の経皮送達システムの針および容器流体接続システムの針の作動における異なるステップを示す。
図5e】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、薬剤送達デバイスが作動した際の経皮送達システムの針および容器流体接続システムの針の作動における異なるステップを示す。
図6a図5aに対応する初期位置にある図5aのデバイス(内部を見やすくするために外側ハウジング部品が取り外されている)の斜視図である。
図6b図5cに対応する中間作動位置を示す、図6aと同様の図である。
図6c】ハウジングの一部を断面で加えた、図6bと同様の図であり、両方の針が完全に挿入された終了位置である図5eに対応する位置を示している。
図6d図6aのデバイスを反対側から見た斜視図である。
図6e図6dと同様の図であり、ちょうど隔壁針が解放されようとするときの中間作動位置を示している。
図6f図6dおよび図6eと同様の図であり、図6fは、両方の針が完全に挿入された終了位置を示す。
図7a図5aの線7a-7aを通る斜視断面図である。
図7b図5eの線7b-7bを通る断面図である。
図8a図7aの線8a-8aを通る断面図である。
図8b図7aの線8b-8bを通る断面図である。
図9a図5aの線9a-9aを通る断面図である。
図9b図5eの線9b-9bを通る断面図である。
図10a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの駆動ユニットの斜視分解組立図である。
図10b】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの一部の断面図であり、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの送達ユニットと非連結状態にある駆動ユニットを示す。
図10c】連結状態を示す図10bと同様の図である。
図11a】ハウジングが取り外された、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図であり、送達ユニットおよび駆動ユニットが組み立てられた状態を示し、併せて、第1の変形例によるプランジャ感知システムを概略的に示している。
図11b図11aの線11b-11bを通る断面図である。
図12a図11aのデバイスの変形例の斜視図である。
図12b図12aの線12b-12bを通る断面図である。
図13】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローおよびポンプシステムの断面図であり、空気圧駆動部の空気フローシステムを示す。
図14a図13のデバイスのポンプエンジン連結インターフェースを覆う密封膜を示す部分断面図である。
図14b】密封インターフェースの第1の実施形態の斜視図である。
図14c】密封インターフェースの第2の実施形態の斜視図である。
図15a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの液体フローポンプシステムにおける薬剤容器の概略図であり、空気圧駆動部および空気圧プランジャ感知システムを示す。
図15b】本発明の実施形態による空気圧プランジャシステムの時間の関数としての圧力のプロットの概略図である。
図15c】本発明の実施形態による空気圧プランジャ感知システムによって測定された経時的な薬剤の流量のプロットの概略図である。
図15d】薬剤送達デバイスの容器ホルダー内の経時的な空気圧の対応プロットである。
図15e】薬剤送達デバイスの容器ホルダー内の経時的な空気圧のプロットの詳細部分である。
図16a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
図16b】薬剤容器が取り外されているか、または薬剤送達デバイス内に挿入される前の、図16aの薬剤送達デバイスの斜視図である。
図16c図16bの薬剤送達デバイスに挿入される、薬剤容器、および薬剤容器のプランジャ上に装着された閉鎖キャップの斜視図である。
図16d図16cの薬剤容器キャップの断面図である。
図16e図16aの実施形態の断面図である。
図17a】本発明のさらに別の実施形態による薬剤送達デバイスの、特定の構成要素が取り外された、斜視部分断面図である。
図17b】断面平面図で構成要素を示す、図17aと同様の図である。
図18a】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの身体上感知システムの概略図である。
図18b】本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの駆動ユニットに連結された送達ユニットの斜視図であり、身体上感知システムの構成要素を示す。
図18c】本発明の実施形態による身体上感知システムの構成要素を示す、薬剤送達デバイスのハウジングカバーの斜視図である。
図18d】2つの電極を備えた、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの身体上感知システムの概略図である。
図19a】本発明のある実施形態による薬剤送達デバイスの組立および滅菌ステップのある実施形態の概略図である。
図19b】本発明の別の実施形態による薬剤送達デバイスの組立および滅菌ステップの別の実施形態の概略図である。
図19c】本発明の別の実施形態による薬剤送達デバイスの組立および滅菌ステップの別の実施形態の概略図である。
図19d】本発明の別の実施形態による薬剤送達デバイスの組立および滅菌ステップの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図を参照すると、本発明の実施形態による薬剤送達デバイス1は、ハウジング2と、送達ユニット3と、制御または駆動ユニット4と、を含み、送達ユニット3および制御または駆動ユニット4は、ハウジング2内部で組み立てられている。ハウジング2は、2つ以上の部品で作られ得、送達ユニット、駆動ユニット、および任意の他の構成要素をハウジング内部で組み立てることができる。
【0062】
図示の実施形態では、薬剤送達デバイス1は、液体薬剤(薬物)を皮下投与するための単回使用の使い捨てユニットである。投与は、短時間、典型的には1時間未満、例えば約30分またはそれ未満にわたる単回投与で行われ得る。単回使用の使い捨て薬剤送達デバイスは、数時間から数日間、または1~3週間までの長期間にわたる液体薬剤の皮下注射にも使用され得る。注射する薬剤の量によっては、薬剤送達デバイスは、数分以内に液体薬剤を注射するように構成することもできる。
【0063】
薬剤を必要とする患者に対して、病院または医療機関の外、例えば自宅で薬剤を注射するために、患者が患者の身体上に着用することができるか、または、使用前に患者が直接皮膚に付けることができる、薬剤送達デバイスを提供することが有利となる、さまざまな用途がある。ある種の医療用途では、外科的介入、または病院もしくは診療所での他の形態の治療などの出来事の後で、例えばいったん患者が自宅に戻ったら、ある範囲の時間内に液体薬剤を送達する必要性も存在し得る。また、患者が臨床環境で医療専門家によって薬剤を投与してもらうことを必要とせず、例えば患者が家で治療を行えるようにするために、特定の時間に、例えば1週間に1回もしくは1カ月に1回、または、薬剤および治療に応じたさまざまな他の間隔で、薬物を注射するための薬剤送達デバイスを患者に供給することが有利となる用途もある。
【0064】
図に示された実施形態は、単回使用の使い捨て薬剤送達デバイスに関するが、本明細書に記載されたさまざまな態様に関する本発明の範囲内で、駆動ユニット、電子機器および電源を含む再利用可能な部分に対して組み立てられ得る使い捨て部分を有する薬剤送達デバイスを使用することもできる。送達ユニット3は、薬剤送達デバイスのハウジング内に装着され得、駆動ユニット4は、分離可能なハウジング部分内に装着され得、駆動ユニット4は、後続の送達ユニットで再利用され得る。単回使用の使い捨て部品と再利用可能部品とを備えた薬剤送達デバイスの例は、例えばWO2020109409に記載されている。
【0065】
薬剤送達デバイスは、薬剤送達デバイスを作動させるための1つ以上のボタン、光および/または音のステータスインジケータ、ならびにオプションとして、デバイスの操作者に情報を提示するためのスクリーンまたは他のディスプレイを含むことができるユーザーインターフェース55を含む。
【0066】
本発明の実施形態による薬剤送達デバイスは、有利には、患者の皮膚に装着するためのパッチデバイスとして構成され得る。粘着層(図示せず)が、保護フィルムによって覆われて、ハウジング2の皮膚接触壁81の外面上、例えばカバー2bの表面上に、設けられ得、保護フィルムは、粘着層を注射部位において患者の皮膚上に貼付する前に粘着層から剥がされ得る。皮膚接触壁81を通る針オリフィス10は、使用前には保護フィルム11で覆われており、薬剤送達デバイス1の起動時に経皮注射針15が針オリフィスを通って延びて、患者の皮膚を刺すことを可能にする。
【0067】
送達ユニット3は、液体薬剤78を収容した薬剤容器6、例えば薬剤カートリッジと、液体薬剤を患者の皮下に運ぶための液体フローシステム7と、ポンプシステム8と、薬剤容器、液体フローシステム7およびポンプシステム8を収容するためのケーシング9と、を含む。
【0068】
実施形態では、ケーシング9は、薬剤容器を密閉式に囲むように構成され得、本明細書中でさらに詳細に説明されるように、薬剤容器の周りのケーシング部分内部のガス圧が、薬剤のポンプ作用をもたらすために生成され得る。
【0069】
薬剤容器6は、バレル部分6a、隔壁6cによって閉鎖される開放端部を有するネック部分6b、およびバレル部分6aの開放端部を閉鎖するプランジャ12を有する容器を含む従来のタイプの薬剤カートリッジであってよく、患者に投与される液体薬剤78は、プランジャと隔壁との間のバレル部分6a内に密閉式に収容される。このような薬剤容器6は、製薬産業では周知であり、多くの異なるタイプの液体薬剤を無菌で収容するために使用され得る。このような薬剤はまた、異なるサイズ(体積)で提供されてもよく、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスは、医療用途に応じて異なるタイプの薬剤容器を考慮に入れるように、寸法が調整され得ることが理解される。本発明の実施形態はまた、非標準的な薬剤容器と共に使用され得る。
【0070】
本明細書に開示される本発明の特定の態様は、スライドプランジャを含む薬剤容器を必要とするが、本明細書に開示される本発明の特定の他の態様は、プランジャを有する薬剤容器への使用に限定されず、プランジャがない他の形態の薬剤容器と共に使用され得ることに留意されたい。例えば、身体上感知システムは、後述するように、薬剤送達デバイスにおいて使用される薬剤容器のタイプに依存しない。また、例えば、容器流体接続システム17は、後述するように、貫通可能な無菌バリアを有する薬剤容器を必要とするが、必ずしもプランジャを有する薬剤容器を必要としない。さらに、薬剤送達デバイスを製造する方法は、後述するように、薬剤送達デバイスに使用される薬剤容器のタイプとは無関係である。
【0071】
送達ユニット3は、薬剤送達デバイスが起動されたら容器からの液体を注射針15へと送り込ませるポンプシステム8を組み込んでいる。ポンプシステムは、駆動ユニット4のポンプ駆動部52の連結インターフェース54に連結する駆動部連結インターフェース33を含む。したがって、駆動ユニットは、連結器54、33を介して機械的動力を供給し、ポンプシステム8を駆動する。
【0072】
ポンプエンジン28は、有利には、WO2007074363またはWO2015015379に記載されたポンプエンジンと同様の設計および構成を含み得、このポンプエンジンでは、ロータ32が、ステータ29内部に装着され、流体を流体入口30から流体出口31まで送るためにステータ内で回転可能にかつ軸方向に移動できる(removable)。上記刊行物から既知であるように、ロータ32は、ステータとロータとの間のカム機構によりロータが回転し軸方向に変位するにつれて入口と出口との間の流体チャネルを開閉するシールで囲まれた第1および第2の直径を有するポンプシャフト36を有し、これにより、流体入口とポンプチャンバとの間、またはポンプチャンバと出口との間のバルブの開閉中に、ポンプ作用が行われる。
【0073】
要するに、好ましい実施形態によるポンプエンジン28は:
-ステータ29と、
-少なくとも部分的にステータ内にスライド可能にかつ回転可能に装着されたロータ32であって、第1の直径を有する第1の軸方向延在部と、第1の直径よりも大きな第2の直径を有する第2の軸方向延在部と、を含む、ロータ32と、
-第1の軸方向延在部の周りでステータ上に装着された第1のバルブシールによって形成された第1のバルブであって、第1のバルブが開位置にあるときに第1のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成されたロータ内の第1のチャネルと協力する、第1のバルブと、
-第2の軸方向延在部の周りでステータ上に装着された第2のバルブシールによって形成された第2のバルブであって、第2のバルブが開位置にあるときに第2のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成されたロータ内の第2のチャネルと協力する、第2のバルブと、
を含む。
【0074】
ポンプエンジンの一般的な設計、およびポンプ作用原理は、上述の刊行物を参照することにより理解することができるが、本発明の実施形態では、ポンプシステムは、投与される液体と流体的に接続されない。むしろ、本発明の実施形態では、ポンプエンジンは、有利には、空気を送り込むために使用され得、この空気は、容器プランジャに対する圧力を生成してプランジャを変位させ、隔壁が貫通されると容器から液体を押し出す。
【0075】
本発明の有利な実施形態では、特に、例えば数分から60分に及ぶ時間にわたる、薬剤容器の内容物の単回使用および単回注射のために、ポンプエンジンは、空気を送り込むのに使用され得、この空気は、プランジャを隔壁に向かって前進させ、容器内部の液体78を、液体フローシステム7を介して皮下送達システム13の注射針15を通して押し出すために、プランジャ12に対する圧力を生成する。したがって、これらの実施形態では、ポンプシステム8は、図13に最もよく示されているように、プランジャ12の後方のケーシング9の少なくとも一部の中に空気圧を発生させる空気圧駆動部として作用する。
【0076】
本発明の薬剤送達デバイスの実施形態においてこのようなポンプエンジンを使用する重要な利点は、ロータのどの位置においても入口と出口との間に流体の直接接続がなく、いかなるバルブの作動も必要とされないことであり、そのため、漏れなしで、ガスの特に信頼性の高い送り込みが、操作の容易な配置において保証される。ポンプエンジン28は、非常にコンパクトであり、駆動ユニット4のポンプ駆動部52の回転電気モータ53によって、歯車装置なしで、直接駆動され得る。実際、ロータの軸方向変位と、ポンプシャフトの第1の直径と第2の直径との差と、によって規定される差動ポンプ容積変位(differential pumping volume displacement)により、ポンプ容積変位回転(pumping volume displacement rotation)は、一定のスピードで回転する所与のタイプの電気モータで最適に動作するように容易に構成され得る。さらに、ポンプエンジンの部品は、全体的にポリマー材料で作ることができ、ロータは、ポンプ駆動部に容易に連結され、ポンプエンジンの流体部分と連結インターフェースとの間の無菌バリアを確保することができる。
【0077】
本明細書で説明する本発明の実施形態の特定の態様は、それらが機能するために必ずしも空気圧駆動部に依存しないことに留意されたい。例えば、身体上感知システム5、および光学センサ71を使用するプランジャ感知システム70は、必ずしも空気圧駆動部を必要とせず、例えばWO2015015379に記載されているようにポンプエンジンが従来の方法で液体薬剤に直接作用する薬剤送達デバイスにおいて、または容器から液体を引き出すために直接作用する当技術分野でそれ自体既知の他のポンプシステムを使用して、実装することもできる。また、以下でさらに詳細に説明される容器流体接続システム17は、異なるポンプシステム、例えば空気圧駆動部、もしくはそれ自体既知のように機械的にプランジャを押圧する駆動部と共に、またはWO2015015379に記載されたエンジンを使用して液体を吸引することによって、実装することもできる。
【0078】
駆動ユニット4は、主に送達ユニット3のポンプシステム8を駆動するように構成されているが、感知信号の処理、および、無線通信リンクを介した、例えばブルートゥースを使用した、外部デバイスとのデータの送受信などの追加機能も有することができる。
【0079】
駆動ユニット4は、電子制御システム47を含み、これは、回路ボード48を含み得、回路ボードの上に、少なくとも1つのマイクロプロセッサ49と、オプションとして無線接続モジュールと、を含む、電子構成要素が装着される。電子制御システムは、例えばバッテリの形態の、電源50と、電気モータ53を含むポンプ駆動部52と、をさらに含む。
【0080】
モータ53の軸は、送達ユニット3上のポンプエンジンロータ32の相補的な連結インターフェース33に係合するように構成された連結インターフェース54に連結され得る。上述したようにポンプエンジン28が回転可能にかつ軸方向に移動可能なロータを備えて構成されている場合、好ましい実施形態では、駆動部連結インターフェース54は、モータ出力シャフトに対して軸方向にスライド可能であり、ばね69によって付勢され得、ばね69は、図10a~図10cに最も良く示されているように、モータ駆動部連結インターフェース54をポンプエンジンロータ32の連結インターフェース33に対して押す。
【0081】
駆動ユニットは、容器プランジャの位置を感知するためのプランジャ感知システム70をさらに含み得る。プランジャ感知システムは、薬剤送達デバイスの正しい動作を決定し、例えば液体フローシステムにおける閉塞、または薬剤投与プロセスの終了時に薬剤容器が空になったときのプランジャの移動の終了を識別するためのものである。プランジャ感知システム70の実施形態については、以下でさらに詳細に説明する。
【0082】
本発明の実施形態によるプランジャの位置を感知するためのプランジャ感知システム70は、プランジャを含む薬剤容器を有するさまざまな薬剤送達システム、例えば、シリンジデバイス、自己注射器、(インスリンペンのような)ペン注射システム、または流体薬物の一次包装の任意の他のプランジャ機械装置(plunger movement)に実装され得ることに留意されたい。
【0083】
駆動ユニットは、薬剤送達デバイスが患者の皮膚に接して位置付けられているか否かを検出するための身体上感知システム5をさらに含み得る。身体上感知システムは、薬剤送達デバイスが患者の皮膚に接して位置付けられていない場合、薬剤送達デバイスの動作を防止し、また、薬剤の完全な送達より前に薬剤送達デバイスが取り外された場合も検出することができる。身体上感知システム5の実施形態については、以下でさらに詳細に説明する。
【0084】
液体フローシステム7は、患者の皮膚を貫通するための注射針15を含む皮下送達システム13と、薬剤送達デバイスの作動時に容器6の隔壁6cを貫通するための隔壁針18を含む容器流体接続システム17と、を含む。皮下送達システムは、ハウジングスライド67に沿ってハウジング2内部にスライド可能に装着された針支持体16を含み、針は、針支持体上に装着され、図6a、図6dおよび図9aに示されるような送達ユニット3のケーシング9内部の完全後退位置から、図6c、図6fおよび図9bに示されるような薬剤投与中の完全伸長位置まで、針支持体16と共に移動可能である。
【0085】
針および針支持体内部の流体チャネルは導管14に接続され、導管14は、有利には、針支持体の後退位置から伸長位置へのスライド移動を可能にするしなやかなチューブの形態であってもよく、このチューブは、その他端部が容器流体接続システム17に接続されている。
【0086】
容器流体接続システム17は、隔壁針18が装着される隔壁針支持体19を含み、隔壁針支持体19は、ハウジング内部にスライド可能に装着され、図6a、図6d、図7a、および図8aに示されるような後退位置から、図6c、図6f、図7b、および図8bに示されるような伸長位置まで移動するように構成されている。後退位置では、隔壁針18は、薬剤容器内の薬剤78と接触しておらず、伸長位置では、隔壁針は、密封部材27(無菌バリア)および薬剤容器の隔壁6cを貫通し、容器内の液体78と接触している。
【0087】
有利な実施形態では、容器流体接続システム17は、皮下送達システム13と同時に作動され得る。しかしながら、本発明の範囲内において、容器流体接続システム17を、皮下送達システム13の作動に先立って、例えば順番に、作動させることが可能であることに留意されたい。注射針15で患者の皮膚を貫通する前に、最初に隔壁針18を薬剤の液体と接続するステップは、注射前に流体チャネルから空気を除去するために、導管14を含む流体接続部を注射前に薬剤で満たすことを可能にし得る。
【0088】
有利な実施形態における容器流体システム17は、ケーシング9のハウジング部分内の相補的なガイドにスライド可能に係合するガイド22を外側末端に有するフランジセクション20を有するスライド可能な針支持体19を含む。容器流体接続システム17は、ブロックフィンガ26を有するブロック具24をさらに含む。隔壁針支持体19が図6a、図6d、図7a、および図8aに示されるような後退位置にあるロック位置では、ブロックフィンガ26は、フランジセクション20の少なくとも1つを圧迫することによって、後退位置に隔壁針支持体をブロックする。例えば円錐形コイルばねの形態であってもよい、ばね23は、隔壁針支持体を薬剤容器に向かって、密封部材27(無菌バリア)および隔壁6cを通して移動させるように構成されたばね力で、隔壁針支持体の後側を圧迫する。他の形態のばねも本発明の範囲内で提供され得る。ブロックフィンガ26は、例えばフランジセクション20間の隙間内に移動されることによって、隔壁針支持体との係合から外れることができ、これにより、ばね23は、隔壁針支持体を密封部材27および隔壁6cに向かって押し、隔壁針18は、密封部材および隔壁を貫通する。
【0089】
ブロック具24は、有利な実施形態では、回転可能な支持リング25を含み得、ここからブロックフィンガ26が突出する。回転可能な支持リング25は、例えば、隔壁6cを備えた容器キャップが挿入されるキャビティを形成するシュラウドの周りに装着される。
【0090】
ブロック具は、ブロック具24の回転によって、隔壁針支持体を解放し、隔壁針支持体が後退位置から伸長位置まで移動することを可能にするように作動され得る。
【0091】
有利な実施形態では、ブロックフィンガ26の移動および隔壁針支持体19からのその解放は、ポンプシステム8のポンプエンジン28の作動によって行うことができる。皮下送達システム13は、ポンプエンジン28のロータ32の初期回転によって同時に作動されることもできる。
【0092】
本発明では、皮下送達システムは、参照により本明細書に組み込まれるWO2015015379に記載された送達システムと同様の構成を含み得る。このような構成では、ポンプエンジン28のロータ32は、ポンプシャフト36に連結された作動ディスク34を含み、作動ディスクは、作動レバー64の支持リング66に接続されたレバーアーム65の先端部に係合するくぼみ35を含む。図5a~図6c、図4bおよび図4cを参照すると最も良く分かるように、作動レバー64の支持リング66は、容器キャップを受容するキャビティを形成するシュラウドの周りに回転可能に装着されており、一方、レバーアーム65は、駆動ユニット4のポンプ駆動部52によってロータ32が回転させられると作動ディスク34のくぼみ35に引っ掛かるように構成された、先端部まで延びている。
【0093】
図5aおよび図6aで分かるように、薬剤送達デバイスの最初の使用前の初期位置が示されており、この位置では、レバーアーム65の先端部が作動ディスク34の外周面に寄りかかっている。薬剤送達デバイスの作動時にポンプ動作が開始されると、作動ディスク34は、図5bで最も良く分かるようにレバーアーム65の先端部がくぼみ35内に係合するように(図では反時計回り方向に)回る。その後、ロータが回転し続けることにより、作動レバー64は、注射針15が完全に伸長した図5eに示す完全作動位置まで、(図では、図5c、図5dおよび図6bに示すように時計回りの様式で)旋回する。作動レバー64はまた、ピン、突出部または他の器具(図では見えない)で、ブロック具24の支持リング25に連結され、これを(図5b~図5dに図示された時計回りの様式で)回転させ、そのブロックフィンガ26は、隔壁針支持体19を係合解除する。
【0094】
したがって、上述した有利な実施形態では、ポンプ駆動部の作動により、薬剤の投与のために、皮下送達システム13および容器完全接続システム17の両方が自動的に同時に作動する。ポンプシステムの始動時におけるこの同時作動は、患者への薬剤の投与まで容器内での薬剤の密閉封じ込めが保証され、その結果、無菌性および貯蔵寿命期間が改善されるという利点を有する。
【0095】
図7aおよび図3cで最も良く分かるように、隔壁針18が容器の隔壁を貫通する前に、後退した隔壁針の前の中央オリフィスを覆うように密封部材27を設けてもよい。
【0096】
注射針15が延びるケーシング9内のオリフィス68(図9a、図9b参照)も、注射針の作動中に貫通される密封部材を含み得る。
【0097】
注射サイクルの終わりには、ポンプエンジン28のロータ32は、逆転されて、作動レバー64とレバーアーム65を反対方向に旋回させ、針支持体16を上方に戻し、よって、注射針15をケーシング9内部に後退させることができる。患者は、次に、注射針15で誰かが刺される危険なしに、薬剤送達デバイスを安全に取り外すことができる。
【0098】
変形例(図示せず)では、容器流体接続システムの作動は、ブロックフィンガ26を押して隔壁針支持体19との係合から外す、異なる機構、例えばハウジング上の手動で作動するボタンによって、実行され得る。このような構成では、センサが設けられて、容器流体接続システム17が作動されるまで皮下送達システム13およびポンプシステム8の作動を防止することができる。
【0099】
空気圧駆動部を含む実施形態では、ケーシング9は、容器受容キャビティ75を中に有する容器ケーシング38を含み、容器受容キャビティ75は、薬剤容器6を取り囲んでいて、隔壁針出口オリフィスを取り囲むポンプおよび針システムケーシング37の一部に密閉式に接続される。容器ケーシング38の内部は、図13に最も良く示されているように、流体チャネル74を介してポンプエンジン28の出口31に流体的に接続されている。空気圧フローシステム74は、ポンプエンジン8の周囲に位置するポンプおよび針システムケーシング37内部の容積から遮断されており、その内部には、ポンプエンジン28のステータ29上の入口30が、ポンプエンジン内に空気を吸い込むように位置付けられている。したがって、ケーシング9は、ポンプエンジンを取り囲む容積内に空気を吸い込むためのバルブ入口またはフィルタ入口(図示せず)を備えることができる。
【0100】
有利には、本発明の実施形態の空気圧駆動部構成では、ポンプシステム8は、容器ケーシング38内部にガス圧を発生させるように作動され、その結果、これは、プランジャ12の後端部73に圧力を加える。この構成は、プランジャを直接押す機械的駆動部がないため、プランジャの後方にほとんど空間が必要とされないので、非常にコンパクトな送達ユニット、したがって薬剤送達デバイス1を可能にする。また、上記のようなポンプエンジン28の使用は、それ自体、液体を送り込むことで知られているが、非常にコンパクトなサイズと、追加のバルブを必要とせずにガスを送り込む能力の観点から、空気圧駆動部の適用において特に有利である。さらに、ポンプは、歯車装置を必要とせずに電気モータにより駆動され得る。送達ユニット3の滅菌も、薬剤容器6と組み立てる前に、ガンマ線照射により実質的に閉鎖されたユニットとして実行するのが容易である。
【0101】
図15a~図15dを参照すると、空気圧フローシステムおよび空気圧駆動部を備えた薬剤送達デバイスは、空気圧フローシステム71内の圧力を測定するために圧力センサ80を含み得る。図15bに示されるように、経時的に測定される空気圧フローシステム内の圧力は、プランジャ12の変位を示す。液体フローシステム内の閉塞によるプランジャの妨害は、経時的な圧力の増加率の増大によって検出され得る。また、プランジャの移動の終了、言い換えれば、薬剤容器が空になったことも、例えば図15bのセクションEで特定される圧力の増加率の上昇によって、容易に検出され得る。
【0102】
図15bに示されるように、上述のような空気圧ポンプシステムが使用される場合、空気ポンプ作用は、好ましくはパルス方式で伝達され、それにより、図15bおよび図15dに示されるような鋸歯状の特性を与える空気圧の変動があるように、ポンプフェーズの後に、ポンプが停止される不活性フェーズが続く。各活性ポンプフェーズは、ポンプエンジンロータ32の単一の回転サイクル(360°回転)によって、または予め定義された複数の回転サイクルによって、得ることができる。ポンプが停止している不活性フェーズは、所望の薬剤送達速度に応じて、予め定義された持続時間とすることができる。
【0103】
制御ユニット4内で圧力信号を評価することにより、以下を含む、薬剤送達デバイスのステータスに関するさまざまな情報を得ることができる:
・プランジャ12の現在位置、したがって、現在の送達量→アルゴリズム1
・プランジャ12の現在のスピード、それによって現在の送達速度→アルゴリズム2
・送達遅延または送達停止の検出→アルゴリズム3
・空気チャンバ内の漏れの検出→アルゴリズム4
【0104】
アルゴリズム1~4の変形例を以下に説明する。これによって得られたシステム情報は、ポンプシステム8の制御ユニット4単独で、または他の内蔵センサからのフィードバックと相関させることによって、処理され得る。
【0105】
プランジャ12の現在位置を決定し、それによって現在の分配量を決定する測定方法の例(制御ユニット内でアルゴリズム1によって実行される)
図15b、図15d、図15eを参照すると、圧力変動の振幅p、pは、送達の終了に向かって減少する。プランジャ12が進むにつれて、空気セクション内のプランジャの後方の容積が増加し、それによって、同じ体積の空気が、活性ポンプフェーズごとに追加される。空気セクション容積に対する、追加されるポンプ体積の比率が減少し続けることにより、特に、活性ポンプフェーズp中の圧力の増加が減少する。プランジャ12の位置Xstopfen、ひいては既に分配された薬物の量VMedikamentは、ボイル-マリオットの法則に従って、この圧力の増加と相互に相関する:
【数1】
【0106】
定数Cは、活性ポンプフェーズごとに供給される空気体積に依存し、空気セクションの初期容積(デッドボリューム)Cは、実験的に容易に求めることができる。
【0107】
プランジャ12の現在のスピード、したがって現在の流量を決定するための測定方法の例(制御ユニット内でアルゴリズム2によって実行される)
ポンプの脈動動作により、活性ポンプpフェーズ中の圧力上昇が、不活性ポンプフェーズp(すなわち、活性ポンプサイクルp間の絶え間)中の圧力低下と比較され得る。これにより、プラグのスピードと送達速度について説明することができる。
【数2】
【0108】
/pがポンプ動作の1サイクル内にあり、p=1である場合、圧力が上昇するときに送達される空気の体積は、圧力が低下するときに送達される薬物の体積に対応する。この平衡状態では、薬剤の送達速度は、ポンプからの圧縮空気の送達速度に対応する。平衡状態からの偏差は、比率p/pの1からの偏差で表される。
【0109】
定数Cは、定常状態のプランジャ速度を表し、環境に対する、摩擦、背圧、および圧力の影響を組み合わせたものである。これは実験的に容易に求めることができる。定数Cは、定数Cとプランジャの表面積から計算される:
=C*(Dstopfen*π/4
【0110】
プランジャの変位遅延または停止の検出を決定するための測定方法の例(制御ユニット内でアルゴリズム3によって実行される)
プランジャ12が動かないか、またはさらにゆっくりと動く場合、プランジャの後方の空気セクション内の圧力が上昇する。この挙動は、比率p/pの有意な変化、または上限圧力閾値OThresholdを超える、より長い期間にわたって平均化された圧力レベルの上昇によって検出され得る。
【0111】
プランジャの停止/減速は、さまざまな原因を有し得る:
・送達プロセスが終了に近づいており、それにより、プランジャ12がカートリッジの前端部に到達し、注射が終了する;
・送達プロセスが完了しておらず、この場合、輸液針が塞がれるか(閉塞)、または、プランジャ12が、例えば不十分な潤滑により、動かなくなる。その場合、アラームを発することが適切であろう;
【0112】
送達ユニットの空気セクション内の漏れの検出を決定するための測定方法の例(制御ユニット内でアルゴリズム4により実行される)
ポンプが空気で満たされたセクション内で全く圧力を高めることができないか、または低い圧力しか高めることができない場合、これは漏れが原因である可能性が高い。これは、ある期間、例えば10~60秒にわたって平均化した圧力レベルを、下限圧力閾値LThresholdと比較することによって、検出され得る。
【0113】
単一のセンサを使用することにより大量の情報を得ることができ、これにより、システムをより良く監視し、より安全にすることができる。カートリッジの破裂または破損を引き起こし得る過剰な圧力は、早い段階で検出され得る。
【0114】
圧力センサは非常に経済的で、統合が容易である。よって、この空気圧プランジャ位置感知システムの利点は、非常に低コストであり、容易に統合できることであり、例えば図15cに示されるような、平均流量の制御が必要であり、容器内のプランジャの終了位置を決定する必要がある単回注射サイクルに特によく適している。このような状況では、プランジャの位置を正確に確認する必要はない。そのような状況では、プランジャの位置の非常に正確な確認は必要とされず、例えば、プラスまたはマイナス10%~20%の位置測定精度が、送達の終了、閉塞、詰まり、漏れ、および治療に必要な平均送達速度を検出するのに十分である。空気圧プランジャ位置感知システムの精度は、光学システムのような他の感知システムよりも低いが、特定の治療用途は、有利には、本発明の実施形態による空気圧プランジャ位置感知システムの実施から利益を得ることができる。
【0115】
プランジャ位置は、他の感知手段によって決定することもでき、別の実施形態では、プランジャ感知システム70は、プランジャ12の端部73に面する容器の後端上に装着された光学センサ71を含む。ケーシング9の容器ケーシング部分38は、プランジャ12に面する容器ケーシング38の端部分42に装着されたセンサ窓43またはセンサプリズム43’を含む。
【0116】
光学センサ71は、光学センサ71の光学信号のために透明材料で作られたセンサ窓43またはセンサプリズム43’の外表面上に位置付けられ得る。光学センサシステムは、有利には、飛行時間(TOF)測定を介してプランジャの後端部73までのセンサ窓の距離を測定する送信機71aおよび受信機71bを含み得る。有利なことに、このような飛行時間型光学センサは特に経済的であり、実装が容易である。実用的な測定値を得るために、窓43は、容器が満たされているときのプランジャ12の初期位置では、3mm~30mm、例えば5mm~20mmの、ある最小距離を有するように、隆起したプランジャ端部分42上に位置付けられ得、プランジャ初期位置は、光学的な飛行時間測定によって、より容易に検出され得る。
【0117】
光学センサ71は、図11a、図11bおよび図12a、図12bに概略的に示されるように、駆動ユニット4から横方向に突出する回路基板72上に装着されてもよい。図12a、図12bに示される変形例では、光学センサは、光がプランジャの移動方向に対して直交して向けられるように位置付けられ得、光は、光学分野でそれ自体知られているように、全内部反射のための内部反射面を有するプリズム43’を介して反射される。プリズムは、容器が満たされているときのプランジャの初期位置の意味のある測定を行うことができるように、透過および反射光の初期移動を増加させる効果も有する。
【0118】
プランジャが容器の空の位置に向かって移動するにつれて、飛行時間測定の精度が高まり、その結果、容器が空の位置に達するにつれて、より高い精度を得ることができる。
【0119】
光学センサは、先に説明したように空気圧駆動部と共に使用され得るが、例えば、薬剤容器から流体を直接吸引し、容器内部の吸引(減圧)によってプランジャ12の変位を引き起こすポンプエンジンを使用する、他のポンプ技術を用いた薬剤送達システムにも使用することができる。
【0120】
したがって、容器ケーシング38の後端部における透明な窓に基づく光学センサ71を備えたプランジャ感知システム70は、特にコスト効率が高く、非常にコンパクトな配置で展開するのが容易である。
【0121】
図16a~図16eを参照すると、ハウジング2の配置が異なる薬剤送達デバイス1の別の実施形態が示されている。この実施形態では、容器6の全長にわたって延びる容器ケーシング38を設ける代わりに、容器ケーシングのプランジャ端部分42を形成するキャップ44が設けられており、このキャップ44は、ハウジング2内部の容器受容キャビティ75を閉鎖するように構成されている。密封リング41をキャップ端部キャビティ壁の間に設けて、ハウジング2内部で容器6を密閉式に閉鎖することができる。プランジャ感知システム70の光学センサ71は、キャップ44内部に組み込まれてもよく、また透明なセンサ窓43上に位置付けられてもよい。光学センサ71は、ハウジング2上の相補的な接点45と電気的に接続するためにキャップの外面に突出している接点45と電気的に相互接続されている回路基板72上に装着され得る。よって、この実施形態では、容器6は、駆動ユニット4および送達ユニット3の組み立て後にハウジング内部に装着され得、例えば、工場での取り付けとは対照的に、患者または医療従事者による容器6の挿入を可能にする。
【0122】
図17aおよび図17bを参照すると、薬剤送達デバイスのさらに別の実施形態が開示されており、これも、図16a~図16dの実施形態と同様に、ハウジング、駆動ユニットおよび送達ユニットを工場で組み立てた後に、医療従事者または使用者が薬剤容器6を挿入することを可能にする。この実施形態では、容器ケーシング38の後部開放端部は、蓋2cによって閉鎖され、蓋2cは、ハウジング2の基部2aにヒンジ連結器46を介してヒンジ結合可能に連結されており、容器密封リング77を含み、これは、容器が容器ケーシング部分に挿入されると、容器ケーシング部分38の後部開放端部に挿入されてこれを密閉式に密封する。17aおよび17bの図では、駆動ユニットの一部を図示せず、その他の部分の図示の明瞭さを高めていることに留意されたい。
【0123】
次に図18a~図18dを参照すると、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスは、有利には、駆動ユニット4の電子制御システム47に電気的に接続された身体上感知システム5を含む。身体上感知システム5は、容量センサに近接する身体組織の存在を検出する容量測定に基づいている。センサの皮膚上の医療デバイスの近接性を測定するための容量センサはそれ自体知られているが、従来のセンサは、特に信頼性がないか、薬剤送達デバイスに組み込むにはコストがかかる。本発明では、身体上感知システム5は、ハウジングの接触壁81の内表面上に直接形成される金属層を含む電極56と、患者の皮膚に当てられるように構成されたハウジングの皮膚接触壁81の外面と、を含む。
【0124】
電極56は、有利には、ハウジングカバー56の内表面上への金属層の蒸着、例えばめっきプロセスによって形成することができる。めっきプロセスは、ガルバニックめっき処理であってもよいが、皮膚接触壁81の内表面に金属化層を直接形成するための他の金属蒸着技術を、本発明の範囲内で利用してもよい。ハウジングは、熱可塑性または熱硬化性ポリマーで作られてもよく、したがって絶縁材料である。電極56は、相互接続端子61を介して駆動ユニット4の電子制御システム47に接続され得る。
【0125】
相互接続端子61は、例えば回路ボード上の回路トレースにはんだ付けすることによって、回路ボード接続端部62において電子制御システム47の回路ボード48に接続され、金属電極層56に接触する電極接続端部63まで延びることができる。電極接続端部63は、例えば、駆動ユニット4がハウジング2内部で組み立てられたときに電極56の金属層を圧迫するように構成されたばね梁(spring beam)の端部に設けられることによって、弾性的に支持され得る。
【0126】
電子制御システム47のマイクロプロセッサ49のような電子構成要素は、薬剤送達デバイスがいつ患者の皮膚に接して配置されたかを検出するために、静電容量値、および静電容量値の変動を測定するために電極に接続され得る。
【0127】
薬剤送達デバイスの起動は、身体上感知システムが患者の皮膚上の薬剤送達デバイスの正しい位置を検出した場合にのみ可能となるように、電子制御システム47において構成され得る。
【0128】
第1の実施形態では、身体上感知システムは、単一電極として実装されたセンサ電極を含み、電極と基準電位との間の静電容量が測定される。
【0129】
第2の実施形態では、センサ電極は、一対の電極56a、56bとして実装することもでき、それらの間の静電容量が測定される。これは、測定システムによって拒否され得る、接触界面における水分(汗)のような静電容量測定に影響を与える外部要因による誤検出を低減する利点を有する。
【0130】
ハウジング2の内面上における金属層の利点はまた、患者の皮膚との大きな容量結合を考慮して、変化する静電容量値を確実に読み取るために、電極がカバーできる表面積が大きいことである。
【0131】
変形例では、身体上感知システムは、電極を取り囲む導電性シールドフレーム57をさらに含み、外部場からの妨害に対してある程度の遮蔽を提供することができる。このシールドは、電極層に接続するための上述したものと同様の接点を用いて、電子制御システムの回路ボード48に接続することもできる。患者の皮膚に接して装着されるハウジング壁の内面上に直接蒸着された金属層の代わりに、電極は、蒸着された金属層の代わりにハウジングの内面に対して直接接着または固定された導電性材料の打ち抜かれたシートメタルまたは薄い箔を含むこともできる。導電性の箔は、安定した電極を形成するために、ハウジング壁81の内面に対して、例えば接着剤または溶接によって、接着され得る。
【0132】
図19a~図19dを参照して、本発明の実施形態による薬剤送達デバイスの有利な組み立て方法を説明する。まず図19aを参照すると、信頼性の高い方法で滅菌されなければならない薬剤送達デバイスの構成要素の製造が開示されている。図示のように、流体パックのための単一部品が製造され、組み立てられ、流体パックは、上述の実施形態のケーシング9内の液体フローシステム7およびポンプシステム8に対応する。図19aに示される容器キャップは、容器ケーシング38に対応し、薬剤容器6がそこに挿入されると、その他のケーシング部品に対して組み立てられる。薬剤容器の構成要素は、別々に製造され、薬剤容器は、(本実施例ではISO規格5に従って)無菌条件下で容器キャップ内において流体パックに対して組み立てられる。容器キャップと流体パックの両方、言い換えれば、液体フローシステム7、ポンプシステム8およびケーシング9は、すべての病原体を死滅させるのに非常に信頼性の高いガンマ線滅菌で滅菌され得る。NO2(二酸化窒素)、VHP(気化過酸化水素)、ETO(エチレンオキシド)および蒸気滅菌法を含む化学および熱滅菌法を含む、他の滅菌法を本発明の範囲内で採用することもできる。したがって、これらの構成要素の組み立てから形成される容器パックは、非常に高度な滅菌を必要とするすべての構成要素を収容する送達ユニット3に対応する。
【0133】
先に説明した実施形態に関連して述べたように、送達ユニット3のすべての出口は、シール、特に容器流体接続システム17を覆う密封膜27、容器ケーシング38とポンプおよび針ケーシング37との間の密封リング41、ならびにポンプシステムロータと駆動部連結インターフェース33との間の界面を覆うシール79を備える。密封膜79は、図14cに示されるように、駆動部連結インターフェース33を完全に覆うことができ、または、ロータとステータとの間の隙間のみを覆ってもよい。密封膜79は、インターフェースを横切って接着または溶接されて密閉シールを形成することができ、また、例えば、駆動ユニットが送達ユニットに対して組み立てられ、デバイスの使用時に作動されたときにシールが破裂または破損するように、脆くなっていてもよい。このようにして、送達ユニットは、薬剤送達デバイスの使用まで、無菌状態に維持され、長い貯蔵寿命を有する。
【0134】
流体パック、容器キャップおよび薬剤容器の製造は、図19aに示されるように、単一の製造施設で行われ、同じ製造施設で組み立てられ得る。
【0135】
変形例では、図19bに描かれているように、流体キャップおよび容器キャップは、第1の製造施設で製造され、好ましくは図19aによる方法と同様にガンマ線滅菌を用いて、滅菌され、その後、例えば医薬品製造会社内の、薬剤容器が製造および充填される第2の施設に供給され得る。上述のように、化学および熱滅菌法(例えば、NO2、VHP、ETOおよび蒸気滅菌法)を含む他の滅菌法を本発明の範囲内で採用することができる。よって、送達ユニット3を形成するための薬剤容器と流体パックと容器キャップとの組立体は、容器パックを製造する第2の製造現場内で形成することができる。
【0136】
図19cおよび図19dに示されるように、本明細書の実施形態における送達ユニット3を表す無菌容器パックは、ISO9規格のような管理された条件下での薬剤送達デバイスの最終組み立てのため、その後、本明細書の実施形態における駆動ユニット4を表す電子機器、およびオプションとして他の非無菌部品に対して組み立てられ得る。
【0137】
図19dに示されるように、異なる場所での製造および組み立てのさまざまな構成が実施され得る。例えば、薬剤容器構成要素は、充填プロセスを実施する薬剤製造業者に供給され得、流体パックおよび容器キャップは、容器を流体パックおよび容器キャップに対して組み立ててカートリッジパック(すなわち、本明細書に記載の実施形態の送達ユニット3に対応する)を形成するために、第2の場所にある製薬会社に供給され得る。カートリッジパックは、その後、やはり製薬会社の敷地内で、電子部品(すなわち、本明細書に記載の実施形態の駆動ユニット4に対応する)に対して組み立てられ、また他の部品がカートリッジパックに対して組み立てられて、薬剤送達デバイスを形成することができる。
【0138】
有利には、液体フローシステム7およびポンプシステム8を収容するケーシング9を有する送達ユニットの構成は、ガンマ線滅菌で滅菌され、次に、薬剤容器6に対して組み立てられて、密封された無菌送達ユニットを形成することができ、これは、次に、駆動ユニット4の電子機器およびハウジング部品2のような非無菌部品に対して組み立てられ得る。この組み立てプロセスにより、効率的な製造プロセスが提供され、必要とされる場所での薬剤送達デバイスの無菌性および安全性も保証される。
【0139】
〔特徴部のリスト〕
薬剤78
薬剤送達デバイス1
ハウジング2
基部2a
カバー2b
皮膚接触壁81
針オリフィス10
粘着層
保護フィルム11
蓋2c
容器密封リング77
ヒンジ連結器46
送達ユニット3
薬剤容器6
バレル部分6a
ネック部分6b
隔壁6c
プランジャ12
プランジャ後端部73
液体フローシステム7
皮下送達システム13
導管14
注射針15
針支持体(スライド可能)16
ハウジングスライド67
容器流体接続システム17
隔壁針18
隔壁針支持体19
フランジセクション20
隙間/キャビティ(ブロックフィンガ解放のため)21
ガイド22
ばね23
円錐形ばね
ブロック具24
支持リング(回転可能)25
ブロックフィンガ26
密封膜27
作動レバー64
支持リング66
レバーアーム65
ポンプシステム8
ポンプエンジン28
ステータ29
流体入口30
流体出口31
ロータ32
駆動部連結インターフェース33
作動ディスク34
くぼみ35
ポンプシャフト36
シール
空気圧フローシステム74
ケーシング9
ポンプおよび針システムケーシング37
針出口オリフィス68
容器ケーシング38
容器受容キャビティ75
管状部分39
隔壁端部40
密封リング41
プランジャ端部分42
センサ窓43
センサプリズム43’
キャップ44
電気接点インターフェース45

制御ユニットまたは駆動ユニット4
電子制御システム47
回路ボード48
マイクロプロセッサ49
無線接続モジュール
電源(バッテリ)50
ポンプ駆動部52
モータ53
連結インターフェース54
ばね69
ユーザーインターフェース55
プランジャ感知システム70
回路基板72
光学センサ71
送信機71
受信機71b
プリズム43’、窓43
電気接点インターフェース45
身体上感知システム5
電極56
金属化層
シールド57
処理回路58
回路ボード59
マイクロプロセッサ60
相互接続端子61
回路ボード接続端部62
電極接続端部63
ばね梁
【0140】
〔実施の態様〕
(1) 薬剤送達デバイス(1)であって、
薬剤容器(6)と、液体フローシステム(7)と、ポンプシステム(8)と、前記薬剤容器、前記ポンプシステム、および前記液体フローシステムの少なくとも一部を中に封入するケーシング(9)と、を含む、送達ユニット(3)を含み、
前記薬剤容器は、バレル部分(6a)と、前記バレル部分内部にスライド可能に装着され、前記バレル部分の一端部で前記容器内部に前記薬剤(78)を密封するプランジャ(12)と、を含み、
前記液体フローシステム(7)は、前記液体薬剤の送達中に前記薬剤容器に流体的に接続され、
前記薬剤容器は、前記ケーシング(9)の容器ケーシング部分(38)の容器受容キャビティ(75)内部に密閉式に収容され、前記容器受容キャビティは、ガス密式に前記ポンプシステム(8)の流体出口(31)に流体的に相互接続され、前記ポンプシステムは、環境空気に接続された流体入口(30)を含み、前記ポンプシステムは、前記流体入口(30)を通して取り込まれた環境空気を前記容器受容キャビティ(75)内に送り込み、前記容器ケーシング部分内にガス圧を発生させ、よって、前記液体薬剤の送達のために前記プランジャの後端部(73)に圧力を加えるように構成されていることを特徴とする、薬剤送達デバイス。
(2) 前記ポンプシステムは、ポンプエンジン(28)を含み、前記ポンプエンジンは、
ステータ(29)と、
少なくとも部分的に前記ステータ内に回転可能にかつ軸方向にスライド可能に装着されたロータ(32)であって、第1の直径を有する第1の軸方向延在部と、前記第1の直径よりも大きな第2の直径を有する前記第2の軸方向延在部と、を含む、ロータと、
前記第1の軸方向延在部の周りで前記ステータ上に装着された第1のバルブシールによって形成された第1のバルブであって、前記第1のバルブが開位置にあるときに前記第1のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第1のチャネルと協力する、第1のバルブと、
前記第2の軸方向延在部の周りで前記ステータ上に装着された第2のバルブシールによって形成された第2のバルブであって、前記第2のバルブが開位置にあるときに前記第2のバルブシールを横切る流体連通を可能にするように構成されたロータ内の第2のチャネルと協力する、第2のバルブと、
を含む、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(3) 前記薬剤容器は、薬剤カートリッジであり、一端部に隔壁(6c)を含む、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(4) 可動隔壁針支持体(19)上に装着された隔壁針(18)と、前記薬剤容器の前記隔壁に向かって前記隔壁針支持体を押すばね(23)と、前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)と接触していない後退位置に前記隔壁針支持体(19)が保持されるブロック位置から、前記ばね(23)の力を受けて前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)を貫通するように、前記隔壁針支持体が解放され、前記薬剤容器の隔壁に向かって移動することが許容される作動位置まで移動可能なブロック具(24)と、を含む、容器流体接続システム(17)を含む、実施態様3に記載の薬剤送達デバイス。
(5) 前記ブロック具(24)は、回転可能な支持リング(25)と、前記支持リングから延びるブロックフィンガ(26)と、を含み、前記ブロックフィンガは、前記ブロックフィンガが前記隔壁針支持体(19)に係合してこれを前記後退位置に維持する位置から、前記ブロックフィンガ(26)が前記隔壁針支持体(19)を係合解除して、前記隔壁針(18)が前記隔壁(6c)を貫通するアクチュエータ位置に前記隔壁針支持体を移動させる、作動位置まで、前記支持リングと共に、回転可能に移動可能である、実施態様4に記載の薬剤送達デバイス。
【0141】
(6) 前記ブロック具は、回転作動ホイール(34)および作動レバー(64)を含む作動機構によって、ブロック位置から作動位置まで移動され、
前記作動ホイール(34)は、前記ポンプシステム(8)のポンプエンジン(28)のロータ(32)と直接連結されているか、またはこれと一体的に形成されている、実施態様4または5に記載の薬剤送達デバイス。
(7) 注射針と、前記薬剤送達デバイスのハウジング(2)内部の後退位置から、前記注射針が前記ハウジングの基部壁を通って突出する伸長送達位置まで、前記注射針を移動させるように構成された注射針作動機構と、を含む、注射送達システムを含む、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(8) 前記注射針作動機構は、実施態様6に記載の隔壁針作動機構の前記回転作動ホイール(34)および前記作動レバー(64)を含み、前記作動レバーは、前記注射針(15)が装着されたスライド可能な注射針支持体(16)に連結されている、実施態様7に記載の薬剤送達デバイス。
(9) 前記作動レバー(64)は、回転可能な支持リング(66)と、前記薬剤送達デバイスの初期作動時に前記作動ディスク(34)のくぼみ(35)に係合するように構成された、前記回転可能な支持リングから延びるレバーアーム(65)と、を含む、実施態様8に記載の薬剤送達デバイス。
(10) 前記支持リング(66)は、前記薬剤容器の前記隔壁端部を中に受容するキャビティを囲む前記ケーシングのシュラウド部分の周りに装着されている、実施態様9に記載の薬剤送達デバイス。
【0142】
(11) 電子制御システム(47)と、電源(50)と、ポンプ駆動部(52)と、を含む、駆動ユニットをさらに含み、
前記ポンプ駆動部(52)は、回転電気モータ(53)と、前記回転電気モータの出力シャフトに連結された連結インターフェース(54)と、を含み、前記連結インターフェース(54)は、前記送達ユニットの前記ポンプシステムの駆動部連結インターフェース(33)に連結し、前記ポンプ駆動部(52)は、前記ポンプシステムのロータ(32)にトルクを提供する、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(12) 電子制御システム(47)と、送信機(71a)および受信機(71b)を含む光学センサ(71)を含むプランジャ感知システム(70)と、を含み、前記送信機は、前記プランジャ(12)の後端部(73)に光学信号を送信するように構成され、前記受信機は、前記プランジャ後端部(73)から反射された前記光学信号を受信するように構成され、前記電子制御システム(47)に接続された前記プランジャ感知システムは、前記送信機から前記受信機への前記光学信号の飛行時間を測定し、そこから前記薬剤容器の前記シリンダー部分内の前記プランジャの位置を決定するように構成されている、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(13) ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内部に装着された制御ユニット(4)と、を含み、前記制御ユニットは、前記薬剤送達デバイスが患者の皮膚に接して位置付けられているかどうかを検出するように構成された、静電容量値を測定するための、前記制御ユニットの電子制御システム(47)に接続された電極(56)を含む、身体上感知システム(5)を含み、前記ハウジング(2)の皮膚接触壁(81)は、前記送達ユニットおよび前記制御ユニットが装着された前記ハウジングの内側に面する内側側面と、前記ハウジングの外側に面し、患者の前記皮膚に当てられることが意図された外側装着側面と、を有し、
前記電極(56)は、前記皮膚接触壁の前記内側側面に接して直接装着された金属の層を含む、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(14) 前記薬剤送達デバイスは、前記容器ケーシング部分(38)内部の圧力を測定するために前記容器ケーシング(38)に流体的に連結された圧力センサ(80)をさらに含み、
前記圧力センサは、経時的に前記圧力センサによって検出された圧力を測定し、かつ、前記薬剤送達フローシステム内の閉塞または容器の空の位置に対応する前記容器内の前記プランジャの移動の終了のいずれかによる前記プランジャの移動の停止を含む、前記プランジャの経時的な位置を、経時的な圧力測定値から決定するように構成された、電子制御システム(47)に接続されている、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
(15) 前記送達ユニット(3)が内部で組み立てられるハウジング(2)を含み、前記ハウジングは、患者の皮膚に接して装着される皮膚接触壁(81)を含み、前記皮膚接触壁は、保護フィルム(11)を備えた粘着層を含む、実施態様1に記載の薬剤送達デバイス。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図17a
図17b
図18a
図18b
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図18d
図19a
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図19d