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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コンクリート表面含浸材
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/64 20060101AFI20240730BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240730BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C04B41/64
C08L27/12
C09K3/10 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021061547
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157369
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】張 文博
(72)【発明者】
【氏名】新藤 竹文
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 道昭
(72)【発明者】
【氏名】池山 正一
(72)【発明者】
【氏名】大山 潤哉
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056074(JP,A)
【文献】特開2007-191578(JP,A)
【文献】特開2017-144621(JP,A)
【文献】特開平09-118574(JP,A)
【文献】特開平10-152675(JP,A)
【文献】特表2003-525977(JP,A)
【文献】特開2000-185959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 40/00 - 41/91
C08L 27/12
C09K 3/10
B28B 11/00 - 19/00
B05D 1/00 - 7/26
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。)
(b) フィブリル化フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を含有する、コンクリート表面含浸材。
【請求項2】
式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物が、アルキルトリアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物である、請求項1に記載のコンクリート表面含浸材。
【請求項3】
請求項1又は2のコンクリート表面含浸材を含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品。
【請求項4】
請求項1又は2のコンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させる、コンクリート表面の保護方法。
【請求項5】
(a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。)
(b) フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を混合し、せん断力を作用させて撹拌してフッ素樹脂をフィブリル化する、コンクリート表面含浸材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面含浸材に関する。さらに、コンクリート表面含浸材を含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品、コンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させる、コンクリート表面の保護方法、及びコンクリート表面含浸材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、耐久性が高いことから、各種構造物に使用されている。しかしながら、一般的なコンクリートは時間経過とともに劣化し、クラックや欠損等が生じてしまう。
コンクリートの劣化防止や、劣化したコンクリートの補修を行うために、コンクリート表面含浸材を塗布・含浸させることで、コンクリート外部から内部への水や劣化因子(ハロゲンイオン、ハロゲン化物イオン、硫化物イオン、硫酸イオン等)の侵入防止を行うことが効果的である。
【0003】
コンクリートに含浸・塗布させるコンクリート表面含浸材としては、例えば以下のものが知られている。
特許文献1には、コンクリート、発泡コンクリート、プレキャストコンクリート(PC)板等の多孔性の無機材料の表面に、水性アンダーコート剤組成物を塗布し、次いで、デシルトリメトキシシラン、イソパラフィン及びシリカ粒子を含有する撥水剤組成物をその上に塗布することが記載されている。
特許文献2には、アルキルアルコキシシラン及び/又はその縮合物、揺変剤、極性溶媒、並びに疎水性シリカ粉末を含む土木建築材料用吸水防止材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5701441号公報
【文献】特開2012-241100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている撥水剤組成物、特許文献2に記載されている土木建築材料用吸水防止材は、いずれも、塗布作業性(コンクリート垂直面での実用的なタレ止め性)を得るために、多量のシリカ粉末を増粘剤として添加する必要があった。しかし、シリカ粒子を添加することにより、塗布・含浸後のコンクリート表面の外観を損なうことがあった。さらに、撥水性についても、満足のいくものではなかった。
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、タレ止め性に優れることから垂直面や上面に容易に塗布することができ、含浸深さが大きくコンクリートへの含浸性に優れ、塗布・含浸後のコンクリート表面の外観に問題がなく、高い撥水性を示し、耐久性を向上できる、コンクリート表面含浸材を提供することである。
このようなコンクリート表面含浸材を含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品を提供することである。
このようなコンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させる、コンクリート表面の保護方法を提供することである。
このようなコンクリート表面含浸材の製造方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。この結果、特定の組成のコンクリート表面含浸材により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の組成のコンクリート表面含浸材によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のコンクリート表面含浸材、コンクリート製品、コンクリート表面の保護方法及びコンクリート表面含浸材の製造方法を提供するものである。
項1: (a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。)
(b) フィブリル化フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を含有する、コンクリート表面含浸材。
項2: 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物が、アルキルトリアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物である、項1に記載のコンクリート表面含浸材。
項3: 項1又は2のコンクリート表面含浸材を含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品。
項4: 項1又は2のコンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させる、コンクリート表面の保護方法。
項5: (a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。)
(b) フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を混合し、せん断力を作用させて撹拌してフッ素樹脂をフィブリル化する、コンクリート表面含浸材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、タレ止め性に優れることから垂直面や上面に容易に塗布することができ、含浸深さが大きくコンクリートへの含浸性に優れ、塗布・含浸後のコンクリート表面の外観に問題がなく、塗膜の水接触角が120°以上と高い撥水性を示し,劣化因子が入りにくいため,耐久性を向上できる、コンクリート表面含浸材が提供される。
このようなコンクリート表面含浸材を含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品が提供される。
このようなコンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させる、コンクリート表面の保護方法が提供される。
このようなコンクリート表面含浸材の製造方法が、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のコンクリート表面含浸材、コンクリート製品、コンクリート表面の保護方法及びコンクリート表面含浸材の製造方法について説明する。
【0010】
[コンクリート表面含浸材]
本発明のコンクリート表面含浸材は、
(a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。)
(b) フィブリル化フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を含有するコンクリート表面含浸材である。以下詳細に説明する。
【0011】
<(a)アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物>
(a)アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物(以下、「(a)成分」という場合がある。)としては、式(I)で表わされるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の1種以上である。
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。Rは、置換基を有していてもよい。)
本発明において、部分加水分解縮合物は、式(I)で表されるアルキルアルコキシシランが2~10分子程度加水分解したものである。
【0012】
式(I)中のRは、炭素数1~20のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基(例えば、n-ヘキシル基等)、ヘプチル基(例えば、n-ヘプチル基等)、オクチル基(例えば、n-オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基等)、ノニル基(例えば、n-ノニル基等)、デシル基(例えば、nーデシル基等)及びドデシル基(例えば、n-ドデシル基等)等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基及びメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。Rが分子中に複数ある場合、分子中のRは互いに独立して同一又は異なっていてもよい。本発明において、好ましいRは炭素数4~12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4~10のアルキル基である。
【0013】
式(I)中のR’は、炭素数1~6のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基(例えば、n-ヘキシル基等)等が挙げられる。R’が分子中に複数ある場合、分子中のR’は互いに独立して同一又は異なっていてもよい。本発明において、好ましいR’は炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0014】
式(I)中のaは、1又は2である。式(I)において、aが1の場合にはアルキルトリアルコキシシランとなり、aが2の場合にはジアルキルジアルコキシシランとなる。
R及びR’が有していてもよい置換基は、例えば、ハロゲン基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、アミノアルキルアミノ基、イソシアネート基等からなる群より選ばれる種以上があげられる。
【0015】
このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
本発明においては、コンクリート表面含浸材の硬化性等の観点から、式(I)においてaが1であるアルキルトリアルコキシシランが好ましい。好ましいアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシル取りエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン当からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0016】
コンクリート表面含浸材における(a)成分の含有量は、特に限定されない。コンクリート表面含浸材全量を100質量%として、例えば20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
(a)成分の含有量が20質量%未満であると、コンクリート表面含浸材の粘度が低くなりすぎてタレ止め性が悪くなるおそれがあり、撥水性が悪くなるおそれがある。
(a)成分の含有量が80質量%を超えると、コンクリート表面含浸材の粘度が高くなりすぎ、塗布作業性、外観評価、含浸性が悪くなるおそれがある。
【0017】
<(b)フィブリル化フッ素樹脂>
(b)フィブリル化フッ素樹脂(以下、「(b)成分」という場合がある。)は、フッ素樹脂粒子に適度な大きさのせん断力を印加することで、フッ素樹脂粒子の少なくとも一部の形状を繊維状にしたものである。本発明における(b)フィブリル化フッ素樹脂は、フッ素樹脂繊維を切断することで得られるものとは異なる。本発明のコンクリート表面含浸材において、(b)フィブリル化フッ素樹脂は、増粘剤としての機能を発揮する。
【0018】
本発明におけるフッ素樹脂は、含フッ素単量体からの繰返し単位を含む重合体である。
フッ素樹脂としては、フィブリル化できるものであれば特に限定されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロピルビレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びポリビニルフルオライド(PVF)等の結晶性フッ素樹脂の1種以上があげられる。好ましくは、PTFE又はPFAであり、特に、フィブリル化しやすいPTFEが好ましい。好ましいフッ素樹脂の市販品としては、例えば、喜多村社製「KTL-8F」、「KTL8FH」、「KTL-500F」等、ダイキン工業社製の「ポリフロン T-104」、「ポリフロン F-201」等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
フィブリル化フッ素樹脂は、コンクリート表面含浸材中での再凝集性が抑制されており、分散性に優れており、また、塗布したコンクリート表面に撥水性を付与できる。
【0019】
フッ素樹脂粒子の体積平均粒子径(50%粒子径)は、特に限定されない。例えば1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上であり、例えば20.0μm以下、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下である。
フッ素樹脂粒子の体積平均粒子径が1.0μm以上10.0μm以下であれば、フッ素樹脂粒子及びフィブリル化フッ素樹脂を溶媒中に良好に分散させることができ、フッ素樹脂粒子を効率的にフィブリル化することができる。
フッ素樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径)は、特に限定されない。例えば1以上3未満である。
【0020】
フッ素樹脂粒子の結晶化度は、例えば、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。フッ素樹脂粒子の結晶化度は、例えば、X線回折法により測定することができる。フッ素樹脂粒子の結晶化度がかかる範囲内であれば、せん断力の印加によりフッ素樹脂粒子をフィブリル化させ易い。
【0021】
フィブリル化フッ素樹脂は、フッ素樹脂粒子にフィブリル化を起こすせん断力を印加することで作製できる。
例えば、コンクリート表面含浸材を構成する材料を混合した後に、一般的な分散手法により、フッ素樹脂粒子にフィブリル化を起こすせん断力を印加する方法が挙げられる。また、例えば、フッ素樹脂粒子と溶媒とを混合した後に、一般的な分散手法により、フッ素樹脂粒子にフィブリル化を起こすせん断力を印加する方法が挙げられる。
フッ素樹脂粒子にフィブリル化を起こすせん断力を印加する分散手法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル、アトライター、3本ロール、ミキサー、ホモミキサ―、超音波、ウルトラディゾルバー、高圧ホモジナイザー等からなる群より選ばれる1種以上を用いた分散手法が挙げられる。なお、これらの手段を用いても、十分なせん断力を印加できなければ、フッ素樹脂粒子をフィブリル化することはできない。本発明においては、ビーズやボール等のメディア(媒体)を用い、溶媒中で撹拌してせん断力を印加する湿式媒体撹拌粉砕機を用いた分散手法が好ましい。湿式媒体撹拌粉砕機を用いると、装置内壁とメディアの間、メディア同士の間にあるフッ素樹脂粒子に対して衝突およびせん断の力が作用し、フッ素樹脂粒子がフィブリル化される。
フッ素樹脂粒子に加えるフィブリル化を起こすせん断力としては、フッ素樹脂粒子の量、形状、フッ素樹脂の種類等に応じて、適宜調整することができる。メディア式ミルを用いる場合には、例えば500rpm以上、好ましくは700rpm以上、より好ましくは800rpm以上、例えば1500rpm以下、好ましくは1300rpm以下、より好ましくは1200rpm以下で、10分~120分の撹拌によるせん断力の付与が挙げられる。
本発明において、フィブリル化フッ素樹脂の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)観察(加速電圧100kV、1000倍)により行うことができる。
【0022】
コンクリート表面含浸材における(b)成分の含有量は、特に限定されない。コンクリート表面含浸材全量を100質量%として、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、例えば5.00質量%以下、好ましくは3.50質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下である。
(b)成分の含有量が0.01質量%未満であると、コンクリート表面含浸材の粘度が低くなりすぎてタレ止め性が悪くなるおそれがあり、コンクリート表面含浸材塗布面の撥水性が悪くなるおそれがあり、塗布作業性、外観評価が悪くなるおそれがある。
(b)成分の含有量が5.00質量%を超えると、コンクリート表面含浸材の粘度が高くなりすぎて塗布作業性が悪くなるおそれがあり、外観、含浸深さが悪くなるおそれがある。
【0023】
<(c)有機溶媒>
(c)有機溶媒(以下、「(c)成分」という場合がある。)としては、(a)成分を溶解し、(b)成分を分散し得るものであれば、特に限定されない。
例えば、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0024】
コンクリート表面含浸材における(c)成分の含有量は、特に限定されない。コンクリート表面含浸材全量を100質量%として、例えば20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、例えば75質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
(c)成分の含有量が20質量%未満であると、コンクリート表面含浸材の各成分の分散性が悪くなるおそれがあり、粘度が高くなりすぎ、塗布作業性、外観評価、含浸性が悪くなるおそれがある。
(c)成分の含有量が75質量%を超えると、コンクリート表面含浸材の粘度が低くなりすぎてタレ止め性が悪くなるおそれがあり、撥水性が悪くなるおそれがある。
【0025】
<揺変剤>
本発明のコンクリート表面含浸材は、(a)~(c)成分に加え、揺変剤を含有していてもよい。揺変剤としては、例えば、アマイド系、ポリオレフィン系、酸化ポリエチレン系、水添ひまし油系、硫酸エステル系、ダイマー酸エステル系、ポリカルボン酸系、植物油重合油系等からなる群より選ばれる1種以上の有機系揺変剤が挙げられる。特に、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物との相溶性がよく、膨潤しやすく、剥がれや白化の改善等の観点から、アマイド系の揺変剤が好ましい。
【0026】
このような揺変剤としては、例えば、共栄社化学社製「ターレン」シリーズ(アマイド系:7200ー20、5400-25、5500-25等);共栄社化学社製「フローノン」シリーズ(酸化ポリエチレン系:SPー1000、SA-300等);楠本化成社製「ディスパロン」シリーズ(6900ー20X、FSー6010、4300、6820-20M、4200-20等)製;伊藤製油社製「A-S-A」シリーズ(T-20、T-1700、D-10A等)からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0027】
コンクリート表面含浸材において、揺変剤を用いる場合、その含有量は、特に限定されない。コンクリート表面含浸材全量を100質量%として、例えば0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上であり、例えば15.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以下である。揺変剤の含有量が0.5質量%未満であると、揺変剤を添加した効果を得ることができず、10.0質量%を超えると、コンクリート表面含浸材の各成分の分散性が悪くなるおそれがあり、粘度が高くなりすぎ、塗布作業性、外観評価、含浸性が悪くなるおそれがある。
有機系揺変剤は、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と比較して、分子量が大きく、コンクリート表面含浸材を塗布した際には、塗膜表面に偏在することとなる。このため、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の揮発が抑制され、塗布面に含浸する量が増えることとなり、含浸深さを向上させることが可能となる。さらに、含浸したアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の揮発が起きにくく、撥水性等を長時間維持することができる。
【0028】
<その他の成分>
本発明のコンクリート表面含浸材は、(a)~(c)成分、揺変剤に加えて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、硬化触媒、硬化促進剤、消泡剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、成膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、脱水剤、レベリング剤、表面調整剤、分散剤、付着付与剤、アルコキシシリケート等の耐汚染性付与剤、シリカ粉末等の無機系やアクリルビーズ等の有機系の艶消し剤、増粘剤、着色剤、防かび剤、防藻剤、防蟻剤、充填剤(フィラー)等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0029】
<コンクリート表面含浸材の物性等>
(含浸深さ)
本発明のコンクリート表面含浸材の含浸深さは、コンクリート内部への劣化因子(例えば、塩化物イオン等)の侵入を防ぐのに十分な深さであれば特に限定されない。例えば、4.0mm以上であれば、劣化因子がコンクリート内部の鉄筋に達する時間が長くなり、コンクリートの劣化抑制効果が高くなる。
含浸深さについては、例えば、実施例における[評価]で記載した方法により測定することができる。
【0030】
(粘度)
本発明のコンクリート表面含浸材の粘度は、タレ止め性に優れ垂直面や上面にも容易に塗布することができる粘度であれば特に限定されない。例えば500mPa・s以上、好ましくは550mPa・s以上、より好ましくは600mPa・s以上であり、例えば1200mPa・s以下、好ましくは1100mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下である。本発明においては、例えば、湿式媒体撹拌粉砕機等の手段による分散でフッ素樹脂をフィブリル化することで、このような粘度とすることができる。粘度範囲をこのような範囲とすることで、タレ止め性や塗布性等に優れたコンクリート表面含浸材を形成することができ、さらに、塗布・含浸後のコンクリート表面の外観に問題がなく、十分な含浸深さ(含浸性能)を有し、水接触角が大きく撥水性に優れ、塗布・含浸後のコンクリートの耐久性が優れる、コンクリート表面含浸材とすることができる。
粘度については、例えば、実施例における[評価]で記載した方法により測定することができる。
【0031】
(水接触角)
本発明のコンクリート表面含浸材は、塗布・含浸した後のコンクリート面の水接触角は、十分な撥水性を示すものであれば特に限定されない。例えば、135°超であり、好ましく137°以上であり、例えば160°以下、好ましくは150°以下である。
水接触角については、例えば、実施例における[評価]で記載した方法により測定することができる。
【0032】
<コンクリート表面含浸材の用途等>
本発明のコンクリート表面含浸材は、コンクリート表面に塗布・含浸させて、コンクリート表面の保護と美観性の維持、劣化因子(ハロゲンイオン、ハロゲン化物イオン、硫化物イオン、硫酸イオン等)の侵入防止のために用いられる。
コンクリート表面含浸材は、たれ防止性能に優れるとともに含浸深さが良好であり、塗布・含浸する方法は特に限定されない。例えば、ローラー、刷毛、噴霧、浸漬等の方法を用いることができる。塗布・含浸時の温度は特に限定されず、0℃~50℃の範囲とすることができる。塗布・含浸後、室温化での放置、天日乾燥、加熱乾燥等の方法により乾燥養生させることができる。
本発明のコンクリート表面含浸材の塗布・含浸量は特に限定されない。コンクリートの状態に合わせて適宜調整することができ、例えば50g/m以上、好ましくは100g/m以上とすることができ、例えば500g/m以下、好ましくは300g/m以下とすることができる。
本発明のコンクリート表面含浸材は、1回の塗布・含浸で十分な効果を得ることができるが、必要に応じて2回以上塗布・含浸してもよい。また、新設のコンクリート表面に塗布・含浸するだけでなく、数年後に塗布面に再度塗布・含浸することも可能である。
【0033】
本発明のコンクリート表面含浸材を塗布・含浸するコンクリートとしては、既設のコンクリート、新設のコンクリートのいずれでもよい。また、現場打設のものだけでなく、工場やヤードで製作したプレキャストコンクリートの製品・部材なども含まれる。
コンクリートの種類も特に制限されず、普通コンクリート、高強度コンクリート、マスコンクリート、膨張コンクリート、低発熱コンクリート、水中不分離コンクリート、水中コンクリート、工場製品コンクリート、海洋コンクリート、吹付けコンクリート、プレパックドコンクリート、高流動コンクリート、ポリマーコンクリート、軽量(骨材)コンクリート、寒中コンクリート、暑中コンクリート、鋼コンクリート合成構造、プレストレストコンクリート、再生骨材コンクリート、打放しコンクリート、プレキャストコンクリート、軽量発泡コンクリート(ALC)、パルプセメント板、木毛セメント板、セメント系押出成形板、繊維補強コンクリート(鋼繊維補強コンクリート、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)、ガラス繊維入りセメント板(GRC)、カーボン繊維入りセメント板等)、コンクリートブロック、3Dプリンティングコンクリート等が挙げられる。また、コンクリートにフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等の混和材が混合されていてもよい。
【0034】
本発明のコンクリート表面含浸材をコンクリート表面に塗布・含浸すると、表面を緻密化することができ、良好な撥水性と含浸深さにより、激しい風雨による雨水の漏水、酸性雨による材料の劣化、汚れのしみ込み、海水及び凍結防止剤による塩害、寒冷地における凍害、材料中の塩の溶出による白華等の水に起因する種々の問題を長期にわたって解決することができる。
さらに、本発明のコンクリート表面含浸材は、コンクリート表面の塗布・含浸面に防汚性も付与することができる。これにより、コンクリート表面に付着した汚れを容易に落とすことができる。例えば、駐車場、物流施設、各種工場、荷捌き場等、交通量が激しいコンクリート構造物等に用いることも可能である。さらに、撥水性が高いことから、橋脚、ダム、各種水路等にも用いることも可能である。
【0035】
[コンクリート製品]
本発明のコンクリート製品は、前記[コンクリート表面含浸材]に記載したコンクリート表面含浸材を塗布・含浸し乾燥して形成されたコンクリート製品である。
コンクリート表面含浸材の塗布・含浸方法、乾燥方法及びコンクリートは、前記[コンクリート表面含浸材]の<コンクリート表面含浸材の用途等>に記載したものと同様である。
【0036】
[コンクリート表面の保護方法]
本発明のコンクリート表面の保護方法は、前記[コンクリート表面含浸材]に記載したコンクリート表面含浸材を、コンクリート表面に塗布し含浸させるものである。
コンクリート表面含浸材を塗布し含浸させる方法、乾燥方法及びコンクリートは、前記[コンクリート表面含浸材]の<コンクリート表面含浸材の用途等>に記載したものと同様である。
【0037】
[コンクリート表面含浸材の製造方法] 本発明のコンクリート表面含浸材の製造方法は、
(a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR’)4-a ・・・(I)
(式(I)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、R’は水素又は炭素数1~6のアルキル基、aは1又は2である。Rは、置換基を有していてもよい。)
(b) フッ素樹脂、及び
(c) 有機溶媒、
を混合し、せん断力を作用させて撹拌してフッ素樹脂をフィブリル化する製造方法である。
【0038】
(a) 式(I)で表されるアルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、(b) フィブリル化フッ素樹脂、及び(c) 有機溶媒は、それぞれ、前記[コンクリート表面含浸材]の<(a)アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物>、<(b)フィブリル化フッ素樹脂>、及び<(c)有機溶媒>に記載したものと同様である。
せん断力を作用させて撹拌する方法は、フッ素樹脂をフィブリル化し得る方法であれば特に限定されず、例えば、前記[コンクリート表面含浸材]の<(b)フィブリル化フッ素樹脂>に記載した方法と同様の方法が挙げられる。
【実施例
【0039】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。特段の規定がない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0040】
[コンクリート表面含浸材の調製]
<実施例1>
デシルトリメトキシシラン40.0部、未焼成ポリテトラフルオロエチレン(未焼成PTFE)0.5部、ミネラルスピリット54.5部及びアマイド系増粘剤を混合し、直径2.0mmガラスビーズを充填したビーズミルを用い、回転数1000rmpで60分撹拌して分散してコンクリート表面含浸材を得た。得られたコンクリート表面含浸材について、外観、浸透深さ、粘度及び接触角について評価した。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例2、3、比較例1>
実施例1で用いた成分を、表1に記載したものに替えたほかは、実施例1と同様にしてコンクリート表面含浸材を得た。得られたコンクリート表面含浸材の評価を、実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0042】
<比較例2>
実施例1において、ビーズミルによる撹拌に代えて、ミキサーを用い回転数300rpmで60分撹拌してコンクリート表面含浸材を得た。得られたコンクリート表面含浸材の評価を実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0043】
<比較例3>
実施例1で用いた成分を、表1に記載したものに替え、ビーズミルによる撹拌に代えて、ミキサーを用い回転数1000rpmで60分撹拌してコンクリート表面含浸材を得た。得られたコンクリート表面含浸材の評価を実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
[評価]
得られたコンクリート表面含浸材の評価を以下のとおり行った。
<モルタル基板の作製>
JSCE- F 505に準拠し、JIS R 5201の10.2(標準砂)に規定する標準砂を用いて、水セメント比50%、砂セメント比3のモルタルを練り混ぜ、金属製型枠を用いて、寸法100×100×400mmに成形した。温度20±2℃、相対湿度80%以上の状態に24時間静置した後、脱型し、その後6日間、20±2℃の水中で養生した。成形したモルタルを、評価試験に応じた寸法に切断して、温度23±2℃、相対湿度(50±5)%で28日間養生し、試験用基板とした。
なお、試験用基板の寸法は、外観観察試験が100×100×50mmであり、含浸深さ試験が100×100×100mmである。
試験用基板の養生終了3日前に、JIS R 6252に規定する150番研磨紙を用いて、切断面と直交する4面のシール面を十分に研磨して、コンクリート塗装用エポキシ樹脂塗料中塗材を塗布し、シールすることで、試験用基板を作製した。
【0046】
<外観観察試験>
土木学会基準「表面含浸材の試験方法」(JSCE-K 571-2013)に基づいて行った。
実施例及び比較例で得られた各コンクリート表面含浸材を、温度23±2℃、相対湿度(50±5)%に24時間静置した。温度23±2℃、相対湿度(50±5)%の条件下で、試験用基板における切断面に各コンクリート表面含浸材を200g/mとなるように塗布して含浸し、温度23±2℃、相対湿度(50±5)%で14日間養生して、試験体とした。なお、試験用基板における切断面は、圧縮空気で清浄にし、含浸工程は14日間の養生期間に含まれる。
各コンクリート表面含浸材を含浸しないで、試験体の作成が終了するまで、温度23±2℃、相対湿度(50±5)%の条件下に14日間静置した試験用基板を原状試験体とし、試験体の含浸面と同様の切断面を原状試験体の試験面とした。原状試験体の切断面は、圧縮空気で清浄にした。
拡散昼光のもとで、試験体の含浸面と原状試験体の試験面を比較しながら、各コンクリート表面含浸材の含浸による色などの外観変化の有無を目視観察した。外観観察試験は、3つの試験体について行い、以下の基準で評価した。
A:3つの試験体全てで、含浸面に外観変化がない(合格)。
C:1つ以上の試験体で、含浸面に外観変化がある(不合格)。
【0047】
<含浸深さ試験>
土木学会基準「表面含浸材の試験方法」(JSCE-K 571-2013)に基づいて行った。
試験体の切断面に、実施例及び比較例で得られた各コンクリート表面含浸材を200g/mとなるように塗布して含浸させて含浸面を作製した。含浸面を2分割するように試験体を割裂し、2分割した試験体を、1分間、上水道水に浸漬して取り出し、割裂面の撥水している部分の含浸面からの深さを各コンクリート表面含浸材の含浸深さとして測定した。
含浸深さの測定位置は、試験体の割裂面の中心、及びその中心から25mmの位置の片面3か所とし、対面する割裂面で合計6箇所の含浸深さを、JIS B 7507に規定するノギスを用いて0.1mmの単位で測定した。その平均値を算出し、四捨五入によって小数点1桁の値に丸め、1試験体の含浸深さとした。含浸深さは、3個の試験体の平均値で示した。
なお、含浸深さを測定する位置に粗骨材、粗骨材の抜けた空隙または大きな空隙が存在する場合には、JIS A 1152の5.2(中性化深さの測定)の測定位置に粗骨材の粒子がある場合、またはあった場合の測定方法に準じて、含浸深さを測定した。
【0048】
<粘度>
B型粘度計を用い、25℃で、ローターNo.2を用い30rpmで測定した。
【0049】
<水接触角>
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」を参考にして測定を行った。
水接触角の測定は、接触角計(SimageEntry;エキシマ社製)を用い、静的接触角を測定することで行った。
計測用ソフトに試験体表面に滴下する水滴の体積を入力し,10回連続測定を指定し、水滴の作成から接触角の計測まで全て自動で行った。
試験体の切断面に、実施例及び比較例で得られた各コンクリート表面含浸材を含浸させて含浸面を作製した。接触角の測定は,試験体の含浸面に水滴を落下し1秒経過後に行った。計測位置は,一方向に6mmピンチで10回自動計測を行うことができる位置とし、10回計測した接触角の平均値を1試験体の接触角とした。接触角は、3個の試験体の平均値で示した。
【0050】
表1より、以下の点が看取できる。
本発明に係る実施例1~3のコンクリート表面含浸材は、ビーズミルによる分散によりフッ素樹脂(未焼成PTFE)がフィブリル化されている。このため、粘度が500~1200mPa・sであり、塗布作業性とタレ止め防止効果に優れたコンクリート表面含浸材であった。さらに、外観に問題がなく、十分な含浸深さ(含浸性能)を有し、水接触角が大きく撥水性に優れたコンクリート表面含浸材であった。
比較例1に係るコンクリート表面含浸材は、フッ素樹脂が含有されておらず、外観の点で問題があった。さらに、実施例1~3のコンクリート表面含浸材よりも水接触角が小さく、撥水性の点でも劣っていた。
比較例2、3に係るコンクリート表面含浸材は、各成分の分散時に加えたせん断力が低く、フッ素樹脂がフィブリル化されていなかった。このため、粘度が500mPa・s未満と低く、タレ止め防止効果の点で問題があった。さらに、実施例1~3のコンクリート表面含浸材よりも水接触角が小さく、撥水性の点でも劣っていた。