(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】大気圧低温プラズマバブル液
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20230101AFI20240730BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240730BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C02F1/50 531J
C02F1/50 510Z
C02F1/50 520B
C02F1/50 540B
C02F1/50 550D
H05H1/24
B01J19/08 E
(21)【出願番号】P 2020161940
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】石塚 崇
(72)【発明者】
【氏名】塩島 瑞生
(72)【発明者】
【氏名】望月 保嗣
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-088115(JP,A)
【文献】特開2008-178870(JP,A)
【文献】特開2012-228644(JP,A)
【文献】特開2016-203082(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072461(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1830187(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-78
B01J19/00-32
H05H1/00-54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気、酸素、二酸化炭素
及び窒
素からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力
0.7~1.5気圧、
原料ガス供給量
0.1~1000L/min、及び
電界強度
2~300kV/cm、
の条件でプラズマ化して得られた温度
-25~40℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを、液中に
直径500μm以下の微細な泡として添加して得られる、大気圧低温プラズマバブル液。
【請求項2】
空気、酸素、二酸化炭素
及び窒
素からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力
0.7~1.5気圧、
原料ガス供給量
0.1~1000L/min、及び
電界強度
2~300kV/cm、
の条件でプラズマ化して得られた温度
-25~40℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを、バブル発生機を用いて液中に
直径500μm以下の微細な泡として添加する、大気圧低温プラズマバブル液の製造方法。
【請求項3】
空気、酸素、二酸化炭素
及び窒
素からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力
0.7~1.5気圧、
原料ガス供給量
0.1~1000L/min、及び
電界強度
2~300kV/cm、
の条件でプラズマ化して温度
-25~40℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造機、及び
直径500μm以下の微細な泡を発生させるバブル発生機を少なくとも備える、大気圧低温プラズマバブル液製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の原料ガスを、特定の条件でプラズマ化して得られた大気圧低温プラズマ含有ガスを微細な泡として液中に含む、大気圧低温プラズマバブル液に関する。
また、本発明は、特定の原料ガスを、特定の条件でプラズマ化して得られた大気圧低温プラズマ含有ガスを、バブル発生機を用いて液中に微細な泡として添加する、大気圧低温プラズマバブル液の製造方法に関する。
さらに、本発明は、特定の原料ガスを、特定の条件でプラズマ化して大気圧低温プラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造機、プラズマ含有ガスの温度を-25~100℃に保持するプラズマ含有ガス輸送路、及びバブル発生機を少なくとも備える、大気圧低温プラズマバブル液製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直径が1mm未満の微細な気泡を含む液体は、微細な泡に起因する各種機能を発揮することから、多種多様な分野で注目され、多種多様な用途とすることが知られている。
また、プラズマ含有ガスを、多種多様な用途に使用することも知られている。
特許文献1~5には、プラズマ含有ガスを微細な泡として液中に含む、除菌機能や洗浄機能を有するプラズマバブル液が記載されている。
【0003】
しかし、これらの特許文献には、「空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、圧力0.1~10気圧、原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び電界強度1~1000kV/cm、の条件でプラズマ化して得られた温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガス」を用いた微細な泡を用いてプラズマバブル液を形成することについて記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-88115号公報
【文献】特開2008-178870号公報
【文献】特開2012-228644号公報
【文献】国際公開第2015/072461号
【文献】特開2016-203082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液を提供することである。
また、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液の製造方法を提供することである。
さらに、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の発明を完成した。
[1] 空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力0.1~10気圧、
原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び
電界強度1~1000kV/cm、
の条件でプラズマ化して得られた温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを、液中に微細な泡として添加して得られる、大気圧低温プラズマバブル液。
[2] 前記温度が、-25~40℃である、[1]に記載の大気圧低温プラズマバブル液。
[3] 空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力0.1~10気圧、
原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び
電界強度1~1000kV/cm、
の条件でプラズマ化して得られた温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを、バブル発生機を用いて液中に微細な泡として添加する、大気圧低温プラズマバブル液の製造方法。
[4] 空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、
圧力0.1~10気圧、
原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び
電界強度1~1000kV/cm、
の条件でプラズマ化して温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造機、及びバブル発生機を少なくとも備える、大気圧低温プラズマバブル液製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液が提供される。
また、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液の製造方法が提供される。
さらに、汚染物質の分解機能(洗浄機能)、除菌機能等に優れた大気圧低温プラズマバブル液の製造装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[大気圧低温プラズマバブル液]
本発明の大気圧低温プラズマバブル液は、特定の原料ガスを特定の条件でプラズマ化して得られた大気圧低温プラズマ含有ガスを、液中にナノバブル、ファインバブル及びマイクロバブルのいずれか1つ以上の微細な泡として含んでいる。
【0009】
<大気圧低温プラズマ含有ガス>
本発明における大気圧低温プラズマ含有ガスは、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、圧力0.1~10気圧、原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び電界強度1~1000kV/cm、の条件でプラズマ化して得られた温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスである。
【0010】
大気圧低温プラズマ含有ガスの温度は、-25~100℃であり、好ましくは-25~40℃である。ガスの温度が100℃を超えると、大気圧低温プラズマバブル液の効果が消失・失活するおそれがあり、プラズマ含有ガス中のプラズマ濃度を高くすることが難しくなるおそれがある。また、プラズマ含有ガスが高温であることから、安全性や取扱性等の点で問題が生じるおそれがある。さらに、液を構成する液状媒体が沸点100℃以下の水等の場合、液が沸騰するおそれがあり、液中に微細な泡として含ませることが難しくなるおそれがある。
【0011】
本発明において、原料ガスは、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である。これらの中でも、酸素及び二酸化炭素は、洗浄機能に優れたプラズマ含有ガスを形成することができる。
原料ガスは、大気圧低温プラズマ含有ガスを得るためにプラズマ処理空間に導入される。プラズマ処理空間に導入された原料ガスは、プラズマの原料ガスになるとともにキャリヤーガスにもなる。
原料ガス源としては、原料ガスの収容容器(ガスボンベ)であってもよく、また、ガスとして空気を用いる場合には、外気取入れブロアであってもよい。
【0012】
プラズマを生成する際の圧力は、0.1~10気圧であり、好ましくは0.7~1.5気圧である。温和な圧力条件とすることで、装置が大掛かりになるおそれがなく、コスト面で有利である。
原料ガスをプラズマ処理空間へ導入する際の原料ガス供給量は、0.001~100000L/minであり、好ましくは0.01~10000L/min、より好ましくは0.1~1000L/min、さらに好ましくは1~1000L/minである。
原料ガス供給量が0.001L/min未満であると、プラズマ含有ガスの生成量が少なくなるため、大気圧低温プラズマバブル液の汚染物質の分解機能(洗浄機能)及び除菌機能が低下するおそれがある。また、100000L/minを超えると、装置が大掛かりになるおそれがあり、また、プラズマ含有ガス中のプラズマ濃度が低下して、大気圧低温プラズマバブル液の汚染物質の分解機能(洗浄機能)及び除菌機能が低下するおそれがある。
【0013】
プラズマ原料ガスが導入されるプラズマ処理空間は、電源に連接する一対の電極の間に設けられる。電源から高周波、パルス波、マイクロ波等が一対の電極に印加され、放電開始電圧を超えると、プラズマ処理空間内に電界が形成される。導入された原料ガスは、その少なくとも一部がプラズマ処理空間でプラズマ化された後に、プラズマ含有ガスとして放出される。したがって、プラズマ含有ガスは、原料ガスの少なくとも一部をプラズマ化処理して得られるすべてのガスを含む。
【0014】
プラズマ処理空間において発生させる電界強度は1~1000kV/cm、好ましくは2~300kV/cmである。電界強度が1000kV/cmを超えると、装置が大掛かりとなりコスト面で不利であり、電界強度が1kV/cm未満であると、十分な量のプラズマを得ることができないおそれがある。
【0015】
電界の立ち上がり所要時間(及び立ち下がり所要時間)は、プラズマ処理空間において、電圧が連続して増加(又は減少)するのに要する時間である。電界の立ち上がり所要時間は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば10μs以下であり、好ましくは50ns~5μsである。電界の立ち上がりに要する時間を10μs以下とするためには、電極にはパルス波を印加することが好ましい。
【0016】
プラズマ処理空間における電力は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば100kW/h以下、好ましくは10kW/h以下とすることができる。電力が100kW/hを超えると、装置が大掛かりとなりコスト面で不利となることがある。
プラズマ処理空間における処理電圧は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば10~1000V、好ましくは20~600V、より好ましくは40~500Vとすることができる。
プラズマ処理空間における処理電流は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧等に基づき任意に設定される。例えば0.001~1000A、好ましくは0.01~500A、より好ましくは0.1~100Aとすることができる。
プラズマ処理空間においてパルス波により電界をかける際の周波数は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば0.001kHz以上、好ましくは0.01kHz~300MHz、より好ましくは、0.1kHz~150MHzとすることができる。
【0017】
本発明におけるプラズマとしては、科学的に定義されたプラズマであれば特に制限なく用いられる。プラズマは、電離によって生じた荷電粒子を含むエネルギーの高い気体の状態のもので、イオンと電子の数が同数又はほぼ同数で、電気的に中性又はほぼ中性の状態であればよい。プラズマは、互いに離間した電極間での放電等の種々の方法で生成することができる。
【0018】
プラズマ含有ガス中のプラズマは、生成直後は発光を伴う高エネルギー状態となっている。このため、プラズマ原料ガスの種類に応じた色に発光し、様々な化学反応を誘起させることができる。プラズマ含有ガス中のプラズマは、エネルギーの一部を失うことで不可視状態となる。例えば、プラズマ含有ガス中のプラズマは、気流に乗り長距離移送される際に、徐々にエネルギーを失って消光し、最終的に不可視状態となる。また、例えば、プラズマ含有ガス中の発光しているプラズマから、エネルギーを奪う操作等により、消光させて不可視状態とすることができる。なお、プラズマ含有ガス中のプラズマが消光した場合であっても、汚染物質の分解機能(洗浄機能)及び除菌機能を十分に発揮し得るプラズマが含まれていることを、本発明者は確認している。
【0019】
<液>
本発明の大気圧低温プラズマバブル液を構成する液は、液状の媒体であれば特に限定されない。例えば、水道水、工業用水、超純水、イオン交換水、蒸留水、有機溶剤からなる群より選ばれる1種以上があげられる。本発明においては、水道水、工業用水、超純水、イオン交換水、蒸留水等の水を用いることが好ましい。
また、必要に応じて、液状媒体に各種成分を添加した混合液を用いてもよい。液状媒体に含まれる各種成分としては、特に限定されないが、例えば、溶質又は分散質としての酸、液基、塩、低分子有機化合物、高分子化合物等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。これらの液状媒体に含まれる各種成分を用いることで、大気圧低温プラズマが有する機能に加えて、所望の機能を付与した液とすることができる。各種成分の配合量は、特に限定されず、所望の機能を付与するのに必要な量とすればよい。
【0020】
<バブル(泡)>
本発明の大気圧低温プラズマバブル液は、特定の原料ガスを特定の条件でプラズマ化して得られた大気圧低温プラズマ含有ガスを、微細な泡として含んでいる。泡の直径は、例えば、500μm以下程度であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。また、このような微細な泡とともに、直径500μm以上の泡が含まれていてもよい。このような微細な泡は、互いに合泡して大きな泡となることがほとんどなく、表面張力の影響で効率よく液中に分散・拡散・溶解し、液中で長時間存在し得るものである。微細な泡は、いわゆるナノバブル、ファインバブル又はマイクロバブルのいずれか1つ以上として知られている。
本発明の大気圧低温プラズマバブル液は、大気圧低温プラズマを含む微細な泡が、液中に分散・拡散・溶解したものである。液中の微細な大気圧低温プラズマにより、汚染物質の分解機能(洗浄機能)及び除菌機能が高い大気圧低温プラズマバブル液を得ることができる。
【0021】
[大気圧低温プラズマバブル液の製造方法]
本発明の大気圧低温プラズマバブル液の製造方法は、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、圧力0.1~10気圧、原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び電界強度1~1000kV/cm、の条件でプラズマ化して得られた温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを、バブル発生機を用いて液中に微細な泡として添加するものである。
大気圧低温プラズマ含有ガス及び微細な泡については、前記[大気圧低温プラズマ含有ガス]に記載したものと同様である。
また、大気圧低温プラズマ含有ガスを製造するためのプラズマ含有ガス製造機及びバブル発生機については、後述する大気圧低温プラズマバブル液製造装置を構成するプラズマ含有ガス製造機及びバブル発生機を用いることができる。
【0022】
[大気圧低温プラズマバブル液製造装置]
本発明の大気圧低温プラズマバブル液製造装置は、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスを、少なくとも、圧力0.1~10気圧、原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び電界強度1~1000kV/cm、の条件でプラズマ化して温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造機、及びバブル発生機を少なくとも備えている。
【0023】
<プラズマ含有ガス製造機>
プラズマ含有ガス製造機は、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種以上である原料ガスの少なくとも一部を、少なくとも、圧力0.1~10気圧、原料ガス供給量0.001~100000L/min、及び電界強度1~1000kV/cm、の条件でプラズマ化し、温度-25~100℃の大気圧低温プラズマ含有ガスを製造できるものであれば特に限定されない。
【0024】
プラズマ含有ガス製造機は、原料ガスを導入する原料ガス導入部と、原料ガスをプラズマ化するプラズマ処理空間と、電界を形成することでプラズマ処理空間を形成する一対の電極と、電極に接続する電源と、プラズマ含有ガスを放出するプラズマ含有ガス放出部とを少なくとも有する。
プラズマ含有ガス製造装置は、圧力等の制御を容易にするために、プラズマ処理空間を覆う筐体を有することが好ましい。
【0025】
プラズマ原料ガス導入部は、プラズマ原料ガスのガス源とプラズマ処理空間とを接続する。なお、プラズマ原料ガスが空気の場合、ブロア等の給気機を用いることができる。
【0026】
プラズマ処理空間を覆う筐体は、例えば、ガラス、セラミックのような誘電性を備えた材料で構成できる。また、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の誘電率が2000以下の誘電体を用いることもできる。また、筺体の少なくとも一部を導電性の材料で構成することで、筺体自体を電極として用いることもできる。
筺体の形状は、特に限定されず、筒状、球状、箱状等の任意の形状とすることができる。プラズマ処理空間を覆う筺体は、プラズマ含有ガス放出部に近づくほど細くなるように加工されたノズル形状となっていてもよい。
【0027】
プラズマ処理空間内に電界を形成して放電させる手段は、特に限定されず、任意の手段を用いることができる。
例えば、筺体の外面又は内面に、互いに極性の異なる一対の電極を互いに離間して対向して形成し、それぞれの電極を、電源に接続して、電界を形成して放電させるための手段があげられる。一対の電極は、プラズマ処理空間を覆う筺体の内部に対向して設けることができる。また、表面に絶縁体等による層が形成された一対の電極の少なくとも一方を設置することもできる。放電用電極の間隔は、特に限定されず、電圧等を考慮して適宜好適化すればよく、例えば0.5~5.0mm程度とすることができる。電極を用いて放電した場合、プラズマ濃度を高くすることができる。
【0028】
また、例えば、プラズマ処理空間を覆う筺体の外周又は内周に、コイルを設けるとともにプラズマ処理空間内に電極芯を設け、コイルと電極芯とを電源に接続して、電界を形成して放電させる手段があげられる。コイルの間隔、巻長、巻径、線径、電極芯とコイルの間隔、電極芯形状等は、特に限定されず、電圧等を考慮して適宜好適化される。原料ガス導入部からプラズマ含有ガス放出部が細長い筒状形状の筺体とした場合、筺体の外周又は内周に設けたコイル及び対応する電極芯を用いて放電すると、放電密度が比較的低いものの、プラズマ原料ガスが通過する放電体積を大きくすることができるため、多量のプラズマを生成することができる。
一対の電極又はコイルは、安定したプラズマ放電を得るために、プラズマ原料ガスと直接接触しない構成とするのが好ましい。そのため、一対の電極又はコイルの表面に、コーティング等の公知の手段により、石英、アルミナ等のガラス質材料やセラミック材料等の絶縁性被膜を設けてもよい。
【0029】
<バブル発生機>
大気圧低温プラズマバブル液製造装置が備えているバブル発生機は、少なくともガス導入部とガス吐出部とを有し、微細な泡であるバブルを発生させることができれば特に限定されず、種々の形式のものを用いることができる。例えば、流動している液の液路にインライン接続し、旋回流方式によりガスを液中に吐出して混合し微細な泡であるバブルを発生させるもの、水中にガスを吐出する際に、撹拌部材等を用いることでガスと液とを混合して微細な泡であるバブルを発生させるもの等があげられる。
また、バブル発生機のガス導入部、内部、及びガス吐出部のうちの少なくとも1つに、プラズマ処理空間を設けた、プラズマ含有ガス製造機とバブル発生機との複合機を用いてもよい。
微細な泡であるバブルの直径は、例えば、500μm以下程度であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。また、このような微細な泡とともに、直径500μm以上の泡が含まれていてもよく、用途等に応じて設定することができる。
ガスの吐出量は、特に限定されないが、例えば、0L/minを超える量、好ましくは0.1L/min以上、より好ましくは0.5L/min以上である。ガス吐出量の上限は特に限定されず、製造量等に応じて設定することができる。例えば1000L/min以下、また、例えば100L/min以下とすることができる。
【0030】
<その他の機器等>
本発明の大気圧低温プラズマバブル液製造装置は、プラズマ含有ガス製造機とバブル発生機との間に、プラズマ含有ガスの温度を-25~100℃、好ましくは-20~80℃、より好ましくは-10~40℃に保持するプラズマ含有ガス輸送路を設けることができる。これにより、プラズマ含有ガス製造機とバブル発生機との間が離れている場合に、プラズマ含有ガスの移送中のプラズマの失活を抑えることができる。
また、本発明の大気圧低温プラズマバブル液製造装置は、必要に応じて、液状媒体を流動させるためのポンプ、製品として容器等に分注するためのノズル等、流量や液圧等の調節弁、流量、圧力、温度等の各種センサ、撹拌装置、プラズマ含有ガスの処理装置、原料ガスの輸送路等からなる群より選ばれる1種以上の機器を設けることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
[汚染物質の分解機能(洗浄機能)]
<実施例1>
大気圧低温プラズマ含有ガス製造機に、原料ガスとして空気を10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/h条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを得た。
温度を40℃に保持したプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造機のプラズマ含有ガス出口とバブル発生機(FB-S 15A:坂本技研社製)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)としてバブル発生機に導入し、20Lの水道水中に微細な泡として添加し、大気圧低温プラズマバブル液を得た。
得られた大気圧低温プラズマバブル液を、液流20L/minで循環させ、メチレンブルーを1質量ppmとなる量添加した。
表1に示すように、メチレンブルー投入直後(0分)、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後、60分後、70分後及び90分後にそれぞれ循環している液を抜き出し、664nmの吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
<実施例2~5>
プラズマ含有ガス輸送路長を表1に示す距離としたほかは、実施例1と同様にして大気圧低温プラズマバブル液を製造し、実施例1と同様にして664nmの吸光度を測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0034】
<比較例1>
プラズマ含有ガスに代えて空気をバブル発生機(FB-S 15A:坂本技研社製)に導入し、20Lの水道水中に微細な泡として添加してバブル液を製造し、実施例1と同様にして664nmの吸光度を測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0035】
<実施例6~8、比較例2>
大気圧低温プラズマ含有ガス製造機に導入する原料ガスの種類を、空気に代えて表1の気体としたほかは、実施例1と同様にして大気圧低温プラズマバブル液を製造し、実施例1と同様にして664nmの吸光度を測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0036】
<実施例9、10>
大気圧低温プラズマ含有ガス製造機に導入する原料ガス供給量を、表1の供給量としたほかは、実施例1と同様にして大気圧低温プラズマバブル液を製造し、実施例1と同様にして664nmの吸光度を測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0037】
【0038】
なお、664nmの吸光度と、メチレンブルー濃度(質量ppm)との関係は、概略以下の表2のとおりである。
【0039】
【0040】
表1に示すとおり、大気圧低温プラズマを含むプラズマ含有ガスを、微細な泡として液中に含む、実施例1の大気圧低温プラズマバブル液は、およそ60分でメチレンブルーが分解されて664nmの吸光度が低下し、無色透明となった。一方、空気を微細な泡として液中に含むバブル液(比較例1)は、メチレンブルーが分解されなかった。
プラズマ含有ガス製造機のプラズマ含有ガス出口とバブル発生機のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)は、10mまで延長してもメチレンブルーの分解機能が保持されることがわかった。
【0041】
大気圧低温プラズマの原料ガスとして、空気、窒素、酸素、又は二酸化炭素を用いた大気圧低温プラズマバブル液(実施例1~8)は、メチレンブルーの分解機能に優れているが、アルゴンを用いた場合(比較例2)は、メチレンブルーの分解機能が劣ることがわかる。
これより、本発明に係る大気圧低温プラズマ含有ガスを微細な泡として液中に含む大気圧低温プラズマバブル液は、汚染物質の分解機能に優れたものであり、優れた洗浄機能及び除菌機能を有する機能液であることがわかる。
【0042】
[除菌機能]
<実施例11>
大気圧低温プラズマ含有ガス製造機に、原料ガスとして空気を10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/hの条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを得た。温度を40℃に保持したプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造機のプラズマ含有ガス出口とバブル発生機(FB-S 15A:坂本技研社製)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)としてバブル発生機に導入し、20Lの4倍希釈川水(千葉県野田市:江戸川)中に微細な泡として添加することにより大気圧低温プラズマバブル液を得た。
得られた大気圧低温プラズマバブル液を、液流20L/minで循環させ、1パス(循環時間1分)の処理を行った。各処理から3時間後の液1mLを日水製薬社製「コンパクトドライ EC」へ添加し、培養温度35±1℃、培養時間24時間の条件で培養し、大腸菌群の菌数を評価した。なお、大腸菌群の菌数評価は、赤紫色に染色されたコロニー数を目視によりカウントすることで行った。結果を表3に示す。
【0043】
<実施例12、13>
実施例11において、大気圧低温プラズマバブル液の処理を1パスに代えて、10パス(循環時間10分)又は30パス(循環時間30分)の処理としたほかは、実施例11と同様にして大腸菌群の菌数を評価した。結果を表3に示す。
【0044】
<比較例3>
処理を行わなかった4倍希釈川水を用い、循環等の処理を行わないほかは、実施例11と同様にして大腸菌群の菌数を評価した。結果を表3に示す。
【0045】
<比較例4~6>
プラズマ含有ガスに代えて空気をファインバブル発生機に導入してバブル液を得た。得られたバブル液を実施例11~13と同様の処理(1パス、10パス及び30パス)を行い、実施例11と同様にして大腸菌群の菌数を評価した。結果を表3に示す。
【0046】
<比較例7>
プラズマ含有ガスをバブル発生機に導入せず、30分バブリングして大気圧低温プラズマ吹込液を得た。得られた大気圧低温プラズマ吹込液について、実施例11と同様にして大腸菌群の菌数を評価した。結果を表3に示す。
【0047】
【0048】
表3に示すとおり、実施例11~13の大気圧低温プラズマバブル液は、比較例4~6の空気のバブル液及び比較例7の大気圧低温プラズマ吹込液と比較して、除菌機能が優れていることがわかる。