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特許7528406基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法
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  • 特許-基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法 図1
  • 特許-基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法 図2
  • 特許-基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法 図3
  • 特許-基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 3/00 20060101AFI20240730BHJP
   A01G 24/10 20180101ALI20240730BHJP
   A01G 24/12 20180101ALI20240730BHJP
   A01G 24/20 20180101ALI20240730BHJP
   A01G 24/35 20180101ALI20240730BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
E01C3/00
A01G24/10
A01G24/12
A01G24/20
A01G24/35
A01G24/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024066141
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221775
【氏名又は名称】東邦レオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(73)【特許権者】
【識別番号】524243022
【氏名又は名称】一般社団法人グリーンインフラ総研
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】木田 幸男
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5898115(JP,B2)
【文献】特公平7-83831(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
A01G 24/00-24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中に埋設して目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として使用する基盤材であって、
硬質の骨材本体と、
前記骨材本体の表面を被覆し、SS物質の捕捉機能と、pH緩衝作用を少なくとも有する酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質と、湿潤すると粘性を発揮し、骨材本体の表面に前記湿潤物質を付着させる付着助材とにより構成する湿潤コーティング層と、
骨材本体または湿潤コーティング層の表面に付着させた二酸化炭素の担体であるコンクリート製の再生微粉とを具備することを特徴とする、
基盤材。
【請求項2】
前記再生微粉が廃コンクリート製で未処理の微粉であることを特徴とする、請求項1に記載の基盤材。
【請求項3】
前記付着助材の湿潤性を利用して骨材本体または湿潤コーティング層の表面に前記再生微粉を付着させたことを特徴とする、請求項1または2に記載の基盤材。
【請求項4】
前記湿潤物質がアロフェンまたは腐植であることを特徴とする、請求項1に記載の基盤材。
【請求項5】
前記付着助材が水、高吸水性樹脂、高分子吸収体、酢酸ビニル樹脂、またはポリビニルアルコールの少なくとも一種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の基盤材。
【請求項6】
前記骨材本体が廃コンクリート材より製造した単粒度の再生骨材であることを特徴とする、請求項1に記載の基盤材。
【請求項7】
透水性路盤構造体の透水基盤層として使用することを特徴とする、請求項1に記載の基盤材。
【請求項8】
基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法であって、
前記請求項1に記載の基盤材を土中に目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として埋設し、
雨水が土中に浸透するときに前記基盤材のコンクリート成分と雨水に炭酸として含まれた二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成し、
前記基盤材の表面に二酸化炭素を炭酸カルシウムの形態で吸着して固定化することを特徴とする、
基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道、公園・広場、車道等に適用可能な基盤材を用いた二酸化炭素(CO)の吸着技術に関し、特に良好な植生環境を維持しつつ、長期間に亘って二酸化炭素を吸着して固定化できる、基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の地球温暖化対策のひとつとして、二酸化炭素排出量の削減を目的として、空気中の二酸化炭素を以降の各種の担体に吸着させることが知られている。
【0003】
(1)バイオ炭製の担体
非特許文献1には、樹木を低温で炭化処理して製作したバイオ炭を土壌改良材として土中に埋めることで二酸化炭素を半永久的に固定することが提案されている。
【0004】
(2)石灰石製の担体
非特許文献2では、窯の中で石灰石を加熱して、酸化カルシウムと二酸化炭素に分解し、できた酸化カルシウムをトレイに広げて大気中の二酸化炭素を吸着するシステムが提案されている。
【0005】
一方、廃コンクリート材を破砕して取り出した骨材を再生骨材として再利用することが知られている。
再生骨材の表面に大量のコンクリート成分が付着した状態でコンクリート構造物の骨材として使用すると、強度低下等の要因となるため、できるだけコンクリート付着物を取り除く必要がある。
特許文献1には、100℃以上に加熱した再生骨材の原料を乾式混練装置で撹拌して研磨することで、コンクリート付着物を取り除くことが開示されている。
【0006】
また砕石等の良質の天然骨材は、歩道や道路に隣接して植樹帯を構築する際に、歩道直下基盤や植生基盤の基盤材として用いられている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】https://jp-gx.com/credits/nT1pyXum
【文献】https://www.orix.co.jp/grp/move_on/entry/2022/07/13/100000
【文献】特開2023-182463号公報
【文献】登録実用新案第3065278号公報
【文献】特開2005-133458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の二酸化炭素を各種担体に吸着させて固定化する技術は、つぎのような課題を有している。
<1>非特許文献1に記載の二酸化炭素固定化技術は、担体である樹木を炭化処理する際に大量の二酸化炭素を排出しているために、マッチポンプ的である。
<2>非特許文献2に記載の二酸化炭素固定化技術も、セメント製造過程と同様に加熱の段階ですでに多くの二酸化炭素を排出していてマッチポンプ的である。
<3>従来は各種の担体を製造する際に、多量の熱エネルギーを消費するため、担体の製造コストが嵩む。
<4>担体に二酸化炭素を吸着させるためには、担体に対して二酸化炭素を強制的に供給し続けなければならず、二酸化炭素の吸収にコストがかかる。
【0009】
従来の再生骨材または天然骨材の利用技術はつぎのような課題を有している。
<1>再生骨材は、その表面に付着したコンクリート成分を綺麗に取り除くことが技術的に困難であり、再生骨材の表面に微量のコンクリート付着物が残留する。
コンクリート付着物が強アルカリ性であるため、再生骨材の使途はコンクリート用骨材に限定され、再生骨材の新たな使途の提案が望まれている。
<2>廃コンクリート材を破砕して再生骨材を回収する技術は確立しているものの、再生骨材の製造時に発生するコンクリート微粉(コンクリートフィラー)のリサイクルがまったく進んでおらず、コンクリート微粉の新たな使途の提案が望まれている。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱エネルギーをまったく用いることなく、自然の力だけで以て、半永久に二酸化炭素を土中の基盤材に吸着させて固定化できる、基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、土中に埋設して目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として使用する基盤材であって、硬質の骨材本体と、前記骨材本体の表面を被覆し、SS物質の捕捉機能と、pH緩衝作用を少なくとも有する酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質と、湿潤すると粘性を発揮し、骨材本体の表面に前記湿潤物質を付着させる付着助材とにより構成する湿潤コーティング層と、骨材本体または湿潤コーティング層の表面に付着させた二酸化炭素の担体であるコンクリート製の再生微粉とを具備する。
本発明の他の形態において、前記再生微粉が廃コンクリート製で未処理の微粉である。
本発明の他の形態において、前記付着助材の湿潤性を利用して骨材本体または湿潤コーティング層の表面に前記再生微粉を付着させた。
本発明の他の形態において、前記湿潤物質がアロフェンまたは腐植である。
本発明の他の形態において、前記付着助材が水、高吸水性樹脂、高分子吸収体、酢酸ビニル樹脂、またはポリビニルアルコールの少なくとも一種以上である。
本発明の他の形態において、前記骨材本体が廃コンクリート材より製造した単粒度の再生骨材である。
本発明の他の形態において、透水性路盤構造体の透水基盤層として使用する。
さらに本発明は、基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法であって、前記請求項1に記載の基盤材を土中に目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として埋設し、雨水が土中に浸透するときに前記基盤材のコンクリート成分と雨水に炭酸として含まれた二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成し、前記基盤材の表面に二酸化炭素を炭酸カルシウムの形態で吸着して固定化する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>本発明では、基盤材に再生微粉を付着させたことで、土中に埋設して目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として使用する基盤材を二酸化炭素の担体として兼用することができる。
特に、熱エネルギーをまったく用いることなく、二酸化炭素を土中に埋設した基盤材に効率よく吸着させるだけでなく、吸着した二酸化炭素を効果的に固定(保持)することができる。
<2>本発明は、大気中の二酸化炭素が雨水に自然に取り込まれる自然現象と、土中に雨水が自重で浸透する自然現象を利用することで、土中で二酸化炭素とコンクリート成分との反応に起因した炭酸化現象を生じさせて基盤材に二酸化炭素を吸着させて固定化するものである。
したがって、土中における二酸化炭素の吸着固定機能を半永久的に持続することができる。
<3>本発明では、基盤材の構成材である骨材本体に廃コンクリート材製の再生骨材を用いると共に、再生微粉に産廃として処理していた廃コンクリート製の微粉を用いれば、産業廃棄物のさらなる有効活用を図ることができる。
<4>本発明では、加熱処理をせずに骨材本体や再生微粉をそのまま活用するので、二酸化炭素の担体を兼ねた基盤材を製造するために、化石燃料の大量消費や加熱による二酸化炭素の発生の問題が生じない。
<5>基盤材にコンクリート成分を含んでいても、湿潤コーティング層に含まれる自然由来の湿潤物質がpHの緩衝作用を発揮するので、基盤材のpHを低い値に抑制することができる。
したがって、基盤材を適用した透水性路盤構造体に植生または植栽しても、コンクリート成分に起因したアルカリ性を緩和できて植生環境の悪化を改善することができる。
<6>目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として基盤材を使用することで、二酸化炭素吸着量の増大という単一効果だけでなく、景観形成、微気象改善等のグリーンインフラの整備に対しても大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基盤材を適用した透水性路盤構造体のモデル図
図2】基盤材の製造方法の説明図で、(a)は骨材本体の表面を湿潤コーティング層で覆う工程の説明図、(b)は骨材本体と湿潤コーティング層の表面に再生微粉を付着させる工程の説明図
図3】表面を湿潤コーティング層で覆った骨材本体のモデル図
図4】表面に再生微粉を付着させて製造した基盤材のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0015】
1.透水性路盤構造体
<1>透水性路盤構造体の概要
図1に例示した基盤材10を適用した透水性路盤構造体について説明する。
本例の透水性路盤構造体は、路床40上に敷設した基盤材10を主体とした透水基盤層41と、透水基盤層41上に敷設した透水路盤層42と、透水路盤層42上に敷設された透水舗装層43とを積層した構造体である。
透水基盤層41を構成する基盤材10の詳細については後述する。
【0016】
<2>透水基盤層、透水路盤層
透水基盤層41および透水路盤層42は、全体として毛管上昇作用による水の移動が行える連続間隙を有する。
透水基盤層41は雨水の貯留浸透施設としても機能する。
透水基盤層41および透水路盤層42の層厚は現場の状況等に応じて適宜選択する。
【0017】
透水性路盤構造体の粒径は、下位の透水基盤層41が上位の透水路盤層42より大きく、透水性も下位の透水基盤層41が上位の透水路盤層42より大きい関係にある。
【0018】
<3>透水路盤層の素材例
透水路盤層42は、降雨等により劣化せず長期間に亘って一定の間隙を維持できる鉱物粒または人工粒であり、例えば真砂土または赤土等を使用できる。
より好ましくは透水路盤層42には真砂土を使用することが望ましい。
【0019】
一般的に舗装路は、踏圧等を繰り返し受けることから、透水路盤層42として一般土砂や黒土等を用いると、施工当初はある程度の透水性と毛管上昇作用を期待できるものの、経時的に繰り返しの載荷重により土粒子間の隙間が減少するためその性能が低下していく。
これに対し、真砂土または赤土は、一般土砂や黒土等と比べて粘土粒子が少ないので、載荷重を繰り返し受けても土粒子間の隙間が減少し難く、長期間に亘って透水性と毛管上昇機能の維持が可能である。
【0020】
本例では、理解をし易くするため、透水路盤層42上に透水舗装層43を形成した形態を示しているが、透水路盤層42と透水舗装層43との間には公知の透水性の下地層を設けてもよい。
【0021】
<4>透水舗装層
透水舗装層43は、透水性を有する最上層であり、例えば透水・保水性を有す硬質ブロックや透水アスファルト(開粒アスファルト)等を適用できる。
【0022】
2.基盤材
<1>基盤材の構成
基盤材10は、土中に埋設して、二酸化炭素の吸着用担体、目詰まり抑制用の充填材または埋戻材等として使用する。
【0023】
図4を参照して基盤材10の構成について説明する。
基盤材10は、廃コンクリート材製の骨材本体20と、骨材本体20の表面に付着させ、自然由来の湿潤物質を含む湿潤コーティング層30と、骨材本体20または湿潤コーティング層30の表面に付着させた二酸化炭素の担体であるコンクリート製の再生微粉33とを具備する。
【0024】
本発明では、骨材本体20と再生微粉33に100%コンクリートリサイクル資材を用いることを前提としているため、基盤材10を製造するにあたり、化石燃料の大量消費や加熱による二酸化炭素の発生の問題は生じない。
【0025】
<2>骨材本体
骨材本体20は、例えば硬質の再生骨材または天然骨材を含む。
骨材本体20の粒径サイズとしては、10mm~20mm、20mm~30mm、30mm~40mm、または40mm~60mmを使用できる。
【0026】
本例では骨材本体20として廃コンクリート材から取り出した再生骨材(再生砕石)を使用する形態について説明する。
骨材本体20に再生骨材を使用する場合、例えば、廃コンクリート材の塊体をジョークラッシャー等の破砕装置で一次破砕し、一次破砕したコンクリート破砕片を遠心破砕機等の破砕装置でさらに二次破砕した後に、所定の粒径範囲に分級して製造する。
骨材本体20は単粒度でもよいし、所定の粒度分布を有する形態でもよい。
【0027】
<3>湿潤コーティング層
湿潤コーティング層30は、酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質31と、湿潤性を有する付着助材32とを具備する。
【0028】
<3.1>自然由来の湿潤物質
自然由来の湿潤物質31とは、酸性官能基を有する自然由来の物質であり、例えばアロフェン、腐植物質等を使用することができる。
自然由来の湿潤物質31は、SS物質の捕捉に機能するだけでなく、毛管現象による水の吸上げ高さを高めることに大きく貢献する。
【0029】
<3.1.1>アロフェン
アロフェンは、粘土鉱物の一種であり、火山灰由来土壌が長期間、風化することによって生成した多孔質・非結晶性のシリカ・アルミナ系鉱物であり、成分の組成はAl・SiO・nHOである。
非常に微細な気孔を多く含むため、大きな比表面積を持ち、物理的に吸着、吸湿し易い性質を有する。
【0030】
<3.1.2>腐植
腐植は、土壌中の動植物の遺体が微生物のはたらきによって分解される分解過程でできた酸性官能基を有する自然由来の腐植物質であり、コロイド状有機高分子化合物となり、物理的に吸着し易い効果をもつうえに、再生骨材の「アルカリ性」に対して中和作用を発揮する。
【0031】
<3.2>付着助材(湿潤物質と再生微粉の付着手段)
骨材本体20に対して湿潤物質31や再生微粉33を分離不能に付着させることは困難である。
そこで湿潤性を有する付着助材32を用いることで、骨材本体20の表面に湿潤物質31や再生微粉33を付着させる。
【0032】
付着助材32は、湿潤すると粘性を発揮する湿潤性の助材であり、例えば水、高吸水性樹脂や高分子吸収体(ポリアクリル酸(塩)系(ポリアクリル酸ナトリウム(Sodium polyacrylate))、デンプングラフト重合系、ポリビニルアルコール系、カルボキシメチルセルロース系(carboxymethyl cellulose, CMC)のもの)や、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等を適用できる。
【0033】
<4>再生微粉
本発明では、骨材本体20の表面を湿潤コーティング層30で覆った後に、さらにその表面にコンクリート製の再生微粉33をまぶして薄膜状に付着させる。
再生微粉33の粒径は適宜選択する。
再生微粉33とは、コンクリートガラ等を破砕して得られる未処理のコンクリート製微粉を指す。未処理とは、加熱処理を施していないことを意味する。
【0034】
<4.1>再生微粉の使用目的
再生微粉33を使用するのは、コンクリートの炭酸化現象を活用して二酸化炭素を持続的に吸着させるためと、骨材本体20の表面積を増大させてSS物質の捕捉機能を向上させるため等の理由からである。
「持続的」とは、熱エネルギー等を消費せずに、二酸化炭素を半永久的に吸着し続けることを意味する。
【0035】
骨材本体20として再生骨材を使用する場合、再生骨材の表面に付着したコンクリート成分を二酸化炭素の担体として活用可能であるが、コンクリート成分の付着量に大きなバラツキがあるため、大量の二酸化炭素を安定して吸着させることに限界がある。
【0036】
本発明では、基盤材10に対するコンクリート成分の付着量とコンクリート成分の露出面積(表面積)を大幅に増やして大量の二酸化炭素を安定して吸着させるために、骨材本体20または湿潤コーティング層30の表面にコンクリート製の再生微粉33を付着させた。
【0037】
<4.2>再生微粉の付着手段
既述した湿潤性を有する付着助材32を利用して骨材本体20または湿潤コーティング層30の表面に再生微粉33をまぶすようにして付着する。
【0038】
<4.3>自然由来の湿潤物質の被覆量と再生微粉の付着量について
基盤材10に対する再生微粉33の付着量(付着面積)は、基盤材10のpHと二酸化炭素の吸着量に影響を及ぼし、例えば再生微粉33の被覆量が増すと、二酸化炭素の吸着量が増す一方で基盤材10のpHが上昇して植栽環境が悪化する。
基盤材10に対する自然由来の湿潤物質31の被覆量(被覆面積)は、基盤材10のpHに影響を及ぼし、例えば自然由来の湿潤物質31の被覆量が増すと、基盤材10のpHが下がって植栽環境を改善できる。
自然由来の湿潤物質31がpHの緩衝作用を発揮するからである。
したがって、基盤材10に対する自然由来の湿潤物質31の被覆量と再生微粉33の被覆量は、基盤材10のpHと二酸化炭素の吸着量等を考慮して適宜選択するものとする。
【0039】
<5>基盤材の混練手段
本例では貯槽内に撹拌羽根を配備した混練装置50を用いて混錬する形態について説明する。
基盤材10の混練手段については特に制約がなく、混練装置50を使用することの他に、バックホー等の建設機械を用いて混練してもよい。
【0040】
3.基盤材の製造方法
図2を参照しながら基盤材10の製造方法について説明する。
【0041】
<1>骨材本体のから練工程
図2(a)に示すように、最初に混練装置50内に骨材本体20を投入してから練りする。から練りとは、骨材本体20のみを混錬することである。
この際、混練装置50内に散水して骨材本体20の表面を濡らしておく。
なお、骨材本体20のから練り工程は必須ではなく、省略する場合もある。
【0042】
<2>骨材本体への湿潤コーティング層の被覆工程
つぎに混練装置50内に規定量の湿潤物質31と付着助材32とを投入して混練する。
骨材本体20、湿潤物質31および付着助材32を混練することで、混練装置50内において、湿潤コーティング層30を生成しつつ、骨材本体20の表面を湿潤コーティング層30が被覆する(図3)。
湿潤コーティング層30は付着助材32により付着性(接着性)を有することで骨材本体20の表面に付着する。
湿潤コーティング層30による骨材本体20の被覆形態は、骨材本体20の表面全面の被覆形態、または骨材本体20の表面の部分的(斑状)な被覆形態の何れでもよい。
【0043】
<3>再生微粉の付着工程
骨材本体20を覆ったコーティング層30は僅かな水分を含んでいることで適度の粘性(付着性)を有している。
この状態で混練装置50内に計量済みの再生微粉33を追加投入して混練する。
再生微粉33を追加投入して混練することで、湿潤性を有する湿潤コーティング層30の表面だけでなく、付着助材32を介して骨材本体20の露出面にも再生微粉33が付着する。
【0044】
湿潤コーティング層30の形成後に再生微粉33を投入して被覆するのは、湿潤コーティング層30の深部に再生微粉33が埋没することを避けながら、湿潤コーティング層30の表面に再生微粉33を露出させた状態で付着させるためである。
【0045】
このように、骨材本体20の表面を湿潤コーティング層30と再生微粉33とを被覆するだけの簡単な工程で以て基盤材10を製造できる。
【0046】
なお、骨材本体20、湿潤物質31、付着助材32および再生微粉33を同時に投入して基盤材10を製造することも可能である。
【0047】
<4>基盤材の製造に要する熱エネルギーについて
既述したように、本発明に係る基盤材10は、骨材本体20として100%コンクリートリサイクルの再生骨材を用い、さらに産廃として処分していたコンクリートフィラーを再生微粉33として含んでいる。
したがって、基盤材10を製造するにあたり、コンクリートフィラーを加熱処理せずに再生微粉33として活用できるので、担体を兼ねた基盤材10を製造するために、化石燃料の大量消費や加熱による二酸化炭素の発生の問題が生じない。
【0048】
[透水性路盤構造体の機能]
以降に透水性路盤構造体による複数の機能について説明する。
【0049】
1.透水性路盤構造体による雨水の貯留浸透機能と大気の冷却機能
【0050】
<1>雨水の貯留浸透機能
図1に示すように、透水性路盤構造体を構成する各層41~43は連続した通水性を有しているため、雨水等は下方へ浸透して、最終的に透水基盤層41に貯留される。
雨水が浸透する際のSS物質の捕捉機能は後述する。
【0051】
<2>大気の冷却機能
夏場の気温上昇に伴い透水舗装層43の表面温度が高まると、透水基盤層41中に貯留された水が毛管現象により透水舗装層43へ向けて上昇して大気中へ蒸発する。
水が大気中へ蒸発する際に気化熱を奪うので、透水舗装層43の周囲の温度を下げて効果的に冷却することができる。
そのため、透水舗装層43の周囲の冷却効果を長時間に亘って持続できて、都市部のヒートアイランド対策としてきわめて有効である。
【0052】
2.基盤材による二酸化炭素の固定および蓄積機能
【0053】
<1>雨水への二酸化炭素の溶け込み
大気中に存在する二酸化炭素は、降雨時に炭酸(HCO)として雨水の中に溶け込む。炭酸が溶け込んだ雨水は弱酸性を示す。
O+CO→HCO
【0054】
<2>コンクリート成分と炭酸による炭酸化現象
基盤材10は廃コンクリート材製の骨材本体20と、廃コンクリート材製の再生微粉33を含んだ状態で土中の透水基盤層41として埋設してある。
そのため、炭酸を含む雨水が透水舗装層43を浸透する際、基盤材10のコンクリート成分(骨材本体20と再生微粉33)と雨水に含まれた炭酸とが反応して炭酸化現象が生じる。
【0055】
炭酸化とは、セメント水和物中のカルシウム化合物で、水酸化カルシウム(Ca(OH))が二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムに変化する現象である。
【0056】
すなわち、雨水に含まれた炭酸(HCO)が基盤材10のコンクリート成分と反応することで炭酸カルシウム(CaCO)が析出される。
Ca(OH)+2HCO→CaCO↓+2H
【0057】
<2.1>二酸化炭素(炭酸カルシウム)の固定化と蓄積
このように大気中の二酸化炭素は、雨水を介して土中に浸透した後に、土中の浸透基盤層41内で炭酸化して最終的に炭酸カルシウム(CaCO)の形態で固定化されて基盤材10の表面に蓄積される。
【0058】
コンクリートの炭酸化による二酸化炭素の吸着現象は公知であるが、本発明は単に二酸化炭素を吸着するだけではない。
本発明に係る基盤材10は、土中の基盤材10に対する二酸化炭素の吸着機能と、二酸化炭素の固定化機能(保持機能)を持続的に発揮し得るようにしたものである。
【0059】
<2.2>二酸化炭素の蓄積期間
土中の基盤材10の表面が常に湿潤状態にあることと、基盤材10がアルカリ性を持続することにより、基盤材10に対して二酸化炭素を吸着し続けることが可能である。
生成された炭酸カルシウム(CaCO)が土中の浸透基盤層41内で蓄積される年月は、概ねpHが12.6前後から8.6前後になるまでの期間であり、数百年の間は少量ずつとはいえ二酸化炭素の吸着化と固定化を継続的に行うことが可能となる。
すなわち、浸透基盤層41を構成する基盤材10による炭酸化現象は、数百年単位で以て継続し続けることが可能である。
【0060】
<2.3>二酸化炭素の定量化
既述したように基盤材10で形成した透水基盤層41は、二酸化炭素の吸着固定層として機能するので、透水基盤層41の層厚や体積等を選択することで、二酸化炭素の固定の定量化が可能となる。
【0061】
<2.4>二酸化炭素の自然取り込み
既述したように、基盤材10による二酸化炭素の吸着機能は、炭酸を含む雨水の浸透現象と、炭酸化反応によって自然に行われる。
したがって、本発明では、二酸化炭素を吸着するために熱エネルギー等の外部エネルギーをまったく用いることなく、自然の力だけで以て、二酸化炭素の吸着化と固定化を半永久的に継続することができる。
【0062】
3.基盤材によるその他の機能
基盤材10は既述した機能の他に以下の機能も併せて発揮する。
【0063】
<1>SS物質の捕捉機能と目詰まり抑制機能
例えば、透水基盤層41を通常の骨材本体20のみで構築した場合は、雨水とともに浸透したSS物質が骨材本体20の間に残留して目詰まりを引き起こす。
そのため、歩道や道路に隣接して植樹帯を設ける場合、基盤材である骨材本体20の間に植物や樹木の根系が伸長し難くなって、生育環境としては改善の余地がある。
【0064】
これに対して、基盤材10は骨材本体20の表面全域が自然由来の湿潤物質31を含む湿潤コーティング層30で覆われた被覆構造を呈していて、コーティング層30は僅かな水分を含むことで適度の粘性を有している。
したがって、SS物質を含む雨水が基盤材10の表面の湿潤コーティング層30を伝わって流下する際に、自然由来の湿潤物質31と触れただけで浮遊するSS物質が容易に付着して捕捉される。
捕捉されたSS物質は自然由来の湿潤物質31とほぼ同質で湿潤しているから、捕捉されたSS物質に新たなSS物質が捕捉される。
雨水の浸透速度が極めて低いため、捕捉したSS物質が基盤材10から分離して流出することはなく、長期間に亘って捕捉状態を維持する。
【0065】
自然由来の湿潤物質31を構成するアロフェン、腐植等が、SS物質を構成する木節粘土や赤土等と物性や組成が非常に近い性状にあることに着目し、骨材本体20の表面をSS物質とほぼ同質の自然由来の湿潤物質31を含む湿潤コーティング層30で被覆して基盤材10を形成した。
【0066】
このように、基盤材10の表面でSS物質を捕捉することで、基盤材10の集合体である透水基盤層41の最底部における不透水層の形成要因となるSS物質の沈降と堆積を効果的に抑制することができる。
したがって、基盤材10による良好な目詰まり抑制効果を長期間に亘って持続することができる。
【0067】
<2>自然由来の湿潤物質による緩衝作用
基盤材10の表面を覆う湿潤コーティング層30は、自然由来の湿潤物質31を含んでいて、自然由来の湿潤物質31がpHの緩衝作用を発揮する。
【0068】
例えば、自然由来の湿潤物質31が腐植である場合、腐植を構成するとフミン酸(腐植酸)及びフルボ酸に含まれる酸性官能基であるカルボキシル基、フェノール性水酸基の脱プロトン反応として述べることができる(Hのことをプロトンという)。
>COOH⇔>COO+H
>OH⇔>O+H
フミン酸、フルボ酸に含まれる酸性官能基から解離したHは、アルカリ成分(OH)と反応してHOとなることで、pHを降下させる。
【0069】
基盤材10を構成する骨材本体20がコンクリート製の再生骨材であることと、その表面にコーティングした再生微粉33がコンクリート製であることは、基盤材10のpHを高める要因であるが、湿潤コーティング層30に含まれる自然由来の湿潤物質31の緩衝作用を活用することで、基盤材10のpHを低い値に抑制することが可能である。
したがって、基盤材10を適用した透水性路盤構造体に植生または植栽しても、コンクリート成分に起因したアルカリ性を緩和できて植生環境を改善することができる。
【符号の説明】
【0070】
10・・・・基盤材
20・・・・骨材本体(再生骨材)
30・・・・湿潤コーティング層
31・・・・湿潤物質
32・・・・付着助材
35・・・・再生微粉
40・・・・路床
41・・・・透水基盤層
42・・・・透水路盤層
43・・・・透水舗装路
50・・・・混練装置
【要約】
【課題】熱エネルギーをまったく用いることなく、自然の力だけで以て、半永久に二酸化炭素を土中の基盤材に吸着させて固定化できる、基盤材および基盤材を用いた二酸化炭素の吸着固定方法を提供すること。
【解決手段】土中に埋設して目詰まり抑制用の充填材または埋戻材として使用する基盤材10であって、硬質の骨材本体20と、骨材本体20の表面を被覆し、二酸化炭素の吸着固定機能と、SS物質の捕捉機能と、pH緩衝作用を少なくとも有する酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質31と、湿潤すると粘性を発揮し、骨材本体20の表面に湿潤物質31を付着させる付着助材32とにより構成する湿潤コーティング層30と、骨材本体20または湿潤コーティング層30の表面に付着させた二酸化炭素の担体であるコンクリート製の再生微粉33とを具備する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4