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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20240730BHJP
【FI】
B60R21/2338
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019071157
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020168928
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】晝田 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 美枝
(72)【発明者】
【氏名】柴原 多衛
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-143551(JP,A)
【文献】特表2012-505107(JP,A)
【文献】特開2001-301556(JP,A)
【文献】特開2013-203167(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01481854(EP,A1)
【文献】特開2013-147060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの供給により膨張展開する袋体と、前記袋体の形状および機能を制御するテザー用基布を備えた車両用エアバッグであって、
前記袋体は、車両前後方向における前方側に配される前方側エアバッグパネルと、車両前後方向における後方側に配される後方側エアバッグパネルとを有し、
前記テザー用基布は、前記袋体の膨張展開時に前記袋体の内部で前記後方側エアバッグパネルに接続される複数の基部と、前記基部に挟み込まれて前記前方側エアバッグパネルに接続されるとともに、前記基部よりも構成数が少ない切剥がし部と、を有し、
前記基部と前記切剥がし部との間には、前記袋体の膨張展開時に前記基部から前記切剥がし部を破断させるための破断線が形成されており、
前記複数の基部は、互いの先端部同士が離間した状態で前記後方側エアバッグパネルに接続されており、
前記切剥がし部は、平面視で短冊状の形状を有し、
前記袋体の膨張展開時において、前記破断に沿って前記切剥がし部が破断することで前記テザー用基布のテザー長が車両前後方向に伸長される、
車両用エアバッグ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用エアバッグであって、
前記破断線は、
前記テザー用基布の厚み方向に穿孔または薄肉化されてなる切り欠き部と、
前記袋体の膨張展開時に前記基部における前記後方側エアバッグパネルとの接続部分と前記切剥がし部における前記前方側エアバッグパネルとの接続部分との間に引張力が加わった際に、前記切り欠き部よりも高強度の接続部と、
が交互に形成されてなるステッチである、
車両用エアバッグ。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用エアバッグであって
前記破断線は、前記切り欠き部と前記接続部とが同じピッチで設けられている、
車両用エアバッグ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用エアバッグであって
前記テザー用基布は、複数枚が重ねられて構成されている、
車両用エアバッグ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両用エアバッグであって
前記テザー用基布を第1テザー用基布とし、前記破断線を第1破断線とするとき、
前記袋体には、前記第1テザー用基布に対して離間した状態で第2テザー用基布が付加されており、
前記第2テザー用基布は、前記袋体の膨張展開時に前記袋体の内部で相対移動可能な一端に接続される複数の第2基部と、前記基部に挟み込まれて他端側に接続される第2切剥がし部と、を有し、
前記第2基部と前記第2切剥がし部との間には、前記袋体の膨張展開時に前記第2基部から前記第2切剥がし部を破断させるための第2破断線が形成されており、
前記袋体の膨張展開時において、前記第2破断に沿って前記第2切剥がし部が破断することで前記第2テザー用基布のテザー長が伸長される、
車両用エアバッグ。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用エアバッグであって
前記第1テザー用基布と前記第2テザー用基布とを、車両上下方向および前記車両前後方向および車両左右方向の何れかから見るとき、前記第1テザー用基布の伸長方向と前記第2テザー用基布の伸長方向とは、互いに交差する向きに設定されている、
車両用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグに関し、特にテザーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には車両用エアバッグが備えられている。車両用エアバッグは、例えば、運転席前方や助手席前方、さらには後席用として前席シートのシートバックなどに設けられている。
【0003】
ここで、車両用エアバッグの中には、車両衝突などの緊急時における膨張展開の際に、領域ごとの展開速度のコントロールをすべくテザー用基布が設けられたものがある。例えば、特許文献1には、ステアリング側エアバッグパネルと乗員側エアバッグパネルとで構成される袋体の内方に3つのテザー用基布が配された車両用エアバッグが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の車両用エアバッグにおいて、各テザー用基布は、乗員側エアバッグパネルに接合された第1端部と、ステアリング側エアバッグパネルに接合された第2端部と、第1端部と第2端部とを結ぶ方向に対して直交する方向の左右に延伸形成された拡幅部と、が一体に形成されている。
【0005】
特許文献1の車両用エアバッグにおけるテザー用基布では、拡幅部に当該拡幅部の延伸方向に沿って延びるステッチが設けられている。車両衝突などの緊急時に車両用エアバッグの袋体が膨張展開してゆく際には、テザー用基布の拡幅部に対して、第1端部と第2端部とを結ぶ方向に引張力が作用し、当該引張力の大きさに応じてステッチが破断してゆくことになる。特許文献1に開示の車両用エアバッグでは、各テザー用基布におけるステッチの破断速度により、領域ごとの展開速度のコントロールを行おうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-43468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両用エアバッグにおいて展開速度のより安定したコントロールを行おうとした場合には、上記特許文献1に開示の技術には改良の余地があると考えられる。具体的に、上記特許文献1に開示のテザー用基布には、拡幅部に当該拡幅部の延伸方向に沿って1本のステッチが設けられている。このため、端部が引っ張られてテザー用基布に引張力が加わると、基布表面が波打った状態となる。そして、特許文献1に開示の技術では、引張力により基布表面が波打った状態でステッチが破断されてゆくことになるので、展開速度が不安定になると考えられる。よって、特許文献1に開示の技術では、展開速度のコントロールの更なる安定化という観点で問題があると考えられる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、袋体の膨張展開時において展開速度の安定したコントロールが可能な車両用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車両用エアバッグは、ガスの供給により膨張展開する袋体と、前記袋体の形状および機能を制御するテザー用基布を備えた車両用エアバッグであって、前記袋体は、車両前後方向における前方側に配される前方側エアバッグパネルと、車両前後方向における後方側に配される後方側エアバッグパネルとを有し、前記テザー用基布は、前記袋体の膨張展開時に前記袋体の内部で前記後方側エアバッグパネルに接続される複数の基部と、前記基部に挟み込まれて前記前方側エアバッグパネルに接続されるとともに、前記基部よりも構成数が少ない切剥がし部と、を有し、前記基部と前記切剥がし部との間には、前記袋体の膨張展開時に前記基部から前記切剥がし部を破断させるための破断線が形成されており、前記複数の基部は、互いの先端部同士が離間した状態で前記後方側エアバッグパネルに接続されており、前記切剥がし部は、平面視で短冊状の形状を有し、前記袋体の膨張展開時において、前記破断に沿って前記切剥がし部が破断することで前記テザー用基布のテザー長が車両前後方向に伸長される。
【0010】
上記態様に係る車両用エアバッグでは、テザー用基布において、基部に挟まれた領域を切剥がし部としているので、袋体の膨張展開時に基部における袋体との接続部分と切剥がし部における袋体との接続部分との間に加わる引張力の作用方向とが破断線の延伸方向に合致している。このため、袋体の膨張展開時に基部における袋体との接続部分と切剥がし部における袋体との接続部分との間に引張力が加わった場合に、テザー用基布に対して破断線の延伸方向に向けて荷重が加わり、安定して基部から切剥がし部を破断させてテザー用基布のテザー長を伸長させることができる。
【0011】
従って、上記態様に係る車両用エアバッグでは、膨張展開時において展開速度の安定したコントロールが可能である。
【0012】
上記態様に係る車両用エアバッグにおいて、前記破断線は、前記テザー用基布の厚み方向に穿孔または薄肉化されてなる切り欠き部と、前記袋体の膨張展開時に前記基部における前記後方側エアバッグパネルとの接続部分と前記切剥がし部における前記前方側エアバッグパネルとの接続部分との間に引張力が加わった際に、前記切り欠き部よりも高強度の接続部と、が交互に形成されてなるステッチである、こととしてもよい。
【0013】
上記のように、破断線をステッチ(ミシン目、切り目)で構成することにより、簡易な構成により袋体の膨張展開時における展開速度の安定したコントロールが可能となる。
【0014】
上記態様に係る車両用エアバッグにおいて、前記破断線は、前記切り欠き部と前記接続部とが同じピッチで設けられている、こととしてもよい。
【0015】
上記のように、破断線(ステッチ)における切り欠き部と接続部とを同ピッチで設けることにより、袋体の膨張展開時において、基部から切剥がし部を破断させてゆく際の荷重変化を一定にすることができる。よって、上記のようにすることにより、袋体の膨張展開時における展開速度のより安定したコントロールが可能となる。
【0016】
上記態様に係る車両用エアバッグにおいて、前記テザー用基布は、複数枚が重ねられて構成されている、こととしてもよい。
【0017】
上記のように、テザー用基布が複数枚を重ねられてなる構成とすることにより、基部から切剥がし部を破断させてゆく際の荷重を高くすることができ、袋体の膨張展開時における展開速度のコントロール性をより高めることが可能となる。
【0018】
上記態様に係る車両用エアバッグにおいて、前記テザー用基布を第1テザー用基布とし、前記破断線を第1破断線とするとき、前記袋体には、前記第1テザー用基布に対して離間した状態で第2テザー用基布が付加されており、前記第2テザー用基布は、前記袋体の膨張展開時に前記袋体の内部で相対移動可能な一端に接続される複数の第2基部と、前記基部に挟み込まれて他端側に接続される第2切剥がし部と、を有し、前記第2基部と前記第2切剥がし部との間には、前記袋体の膨張展開時に前記第2基部から前記第2切剥がし部を破断させるための第2破断線が形成されており、前記袋体の膨張展開時において、前記第2破断に沿って前記第2切剥がし部が破断することで前記第2テザー用基布のテザー長が伸長される、こととしてもよい。
【0019】
上記のように、第1テザー用基布に加えて第2テザー用基布も袋体に接続し、第2テザー用基布についても第1テザー用基布と同様に、展開速度の安定したコントロールが可能である構成としているので、車両用エアバッグにおける2つの領域での展開速度のより安定したコントロールが可能となる。
【0020】
上記態様に係る車両用エアバッグにおいて、前記第1テザー用基布と前記第2テザー用基布とを、車両上下方向および前記車両前後方向および車両左右方向の何れかから見るとき、前記第1テザー用基布の伸長方向と前記第2テザー用基布の伸長方向とは、互いに交差する向きに設定されている、こととしてもよい。
【0021】
上記のように、第1テザー用基布のテザー長の伸長方向と第2テザー用基布の伸長方向とが、互いに交差する(異なる)ように設定されているので、車両用エアバッグの領域毎での展開速度のコントロールが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る車両用エアバッグによれば、袋体の膨張展開時において展開速度の安定したコントロールが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用エアバッグとその周辺構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る車両用エアバッグの構成を示す模式展開図である。
図3】第1実施形態に係る車両用エアバッグにおけるテザー用基布の配置を示す模式正面図である。
図4】第1実施形態に係るテザー用基布の構成を示す模式斜視図である。
図5】第1実施形態に係るテザー用基布の構成を示す模式平面図である。
図6図5のA部を拡大して示す部分平面図である。
図7】(a)は、第1実施形態に係るテザー用基布での基部からの切剥がし部の破断メカニズムを説明するための模式図であり、(b)は、従来技術に係るテザー用基布での破断メカニズムを説明するための模式図である。
図8図5のVIII-VIII線断面を示す模式図であって、(a)は横糸が切れる前の状態を示し、(b)は横糸が切れた状態を示す。
図9】第1実施形態に係るテザー用基布の基部の先端部と切剥がし部の先端部とが引っ張られ、基部から切剥がし部が破断してゆく場合の、テザー用基布の伸長ストロークと荷重との関係を示す特性図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る車両用エアバッグのテザー用基布の構成を示す模式平面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る車両用エアバッグのテザー用基布の構成を示す模式斜視図である。
図12】(a)は、本発明の第4実施形態に係る車両用エアバッグとその周辺構成を示す模式図であり、(b)は、第4実施形態に係る車両用エアバッグにおけるテザー用基布の配置を示す模式正面図である。
図13】(a)は、本発明の第5実施形態に係る車両用エアバッグとその周辺構成を示す模式図であり、(b)は、第5実施形態に係る車両用エアバッグにおけるテザー用基布の配置を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の各形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0025】
なお、以下の説明で用いる各図では、「FR」が車両前方、「RE」が車両後方、「LE」が車両左方(前進方向に対する左方)、「RI」が車両右方(進行方向に対する右方)、をそれぞれ示している。
【0026】
[第1実施形態]
1.車両1における車両用エアバッグ12とその周辺構成
車両1における車両用エアバッグ12とその周辺構成について、図1を用いて説明する。なお、本実施形態では、車両用エアバッグ12が運転席エアバッグである場合を一例として採用している。
【0027】
図1に示すように、車両1においては、運転者用のシート10と、当該シート10の前方に設けられたステアリングホイール11と、を備えている。運転者である乗員500は、シート10に着座し、ステアリングホイール11を把持して運転を行う。
【0028】
本実施形態に係る車両用エアバッグ12は、ステアリングホイール11に取り付けられており、車両衝突時に乗員500を保護するための安全装置である。
【0029】
2.車両用エアバッグ12の構成
車両用エアバッグ12の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る車両用エアバッグの構成を示す模式展開図である。
【0030】
図2に示すように、車両用エアバッグ12は、ステアリングホイール11側(前方側)に配されるステアリング側エアバッグパネル13と、乗員側(後方側)に配される乗員側エアバッグパネル14と、それぞれがステアリング側エアバッグパネル13および乗員側エアバッグパネル14に接合されたテザー用基布15,16と、を備える。また、図示を省略しているが、車両用エアバッグ12は、ステアリング側エアバッグパネル13と乗員側エアバッグパネル14とで構成される袋体に対して、車両衝突時などにガス(エアー)を供給するインフレータも備えている。
【0031】
なお、ステアリング側エアバッグパネル13および乗員側エアバッグパネル14に対するテザー用基布15,16の接合形態については、後述する。
【0032】
3.車両用エアバッグ12におけるテザー用基布15,16の配置
車両用エアバッグ12におけるテザー用基布15,16の配置形態について、図3を用いて説明する。図3は、車両用エアバッグ12におけるテザー用基布15,16の配置を説明するための、車両用エアバッグ12およびシート10を車両前方側より見た模式正面図である。
【0033】
図3に示すように、テザー用基布15,16は、シート10におけるシートバック10aにおける上部(ヘッドレスト10bに近い部分)において、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。なお、図3に示すテザー用基布15,16の配置は、車両用エアバッグ12の袋体(ステアリング側エアバッグパネル13、乗員側エアバッグパネル14)が膨張展開した状態で示したものである。
【0034】
4.テザー用基布15,16の構成
テザー用基布15,16の構成について、図4および図5を用いて説明する。図4は、テザー用基布15の構成を示す模式斜視図であり、図5は、模式平面図である。なお、図4および図5では、第1テザー用基布としてのテザー用基布15を一例として図示しているが、本実施形態では第2テザー用基布としてのテザー用基布16についても同じ構成を有する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態に係るテザー用基布15は、略矩形の布地をベースとして形成されている。テザー用基布15では、X方向右側の辺を起点とし、互いにX方向に離間するとともに、互いに沿って形成された2本のステッチ(破断線)155,156が設けられている。
【0036】
ステッチ155,156は、X方向左側の辺154にまでは到達しておらず、テザー用基布15では、辺154との間に端接続部159,160が設けられている。なお、ステッチ155,156の詳細構成については、後述する。
【0037】
テザー用基布15では、Y方向における基部150と基部151とで挟まれた部分に短冊状の領域である切剥がし部153が設けられている。Y方向において、基部150の先端部150aと基部151の先端部151aとの間には、X方向左側に凹入された凹入部152が設けられている。
【0038】
テザー用基布15では、切剥がし部153の側辺157とステッチ155とが連続しており、側辺158とステッチ156とが連続している。
【0039】
車両用エアバッグ12では、切剥がし部153の先端部153aがステアリング側エアバッグパネル13に接合され、基部150,151の各先端部150a,151aが乗員側エアバッグパネル14に接合されている(図2を参照)。
【0040】
テザー用基布15では、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時において、基部150,151の先端部150a,151aと伸長部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わると、当該力F,F’の大きさに応じて基部150,151から切剥がし部153が破断してゆき、テザー用基布15が順に伸長してゆく。
【0041】
図5に示すように、テザー用基布15の基布は、縦糸(経糸)1500と横糸(緯糸)1501とが織り込まれた織物である。なお、本実施形態では、縦糸1500および横糸1501としてナイロン66からなる糸が用いられている。
【0042】
テザー用基布15では、縦糸1500がX方向に合致する方向に延伸し、横糸1501がY方向に合致する方向に延伸する状態で形成されている。そして、図5に示すように、テザー用基布15において、ステッチ155,156のそれぞれは、縦糸1500の延伸方向(X方向)に向けて形成され、横糸1501に直交する方向(Y方向)に向けて形成されている。
【0043】
基部150,151の先端部150a,151aの幅は、それぞれW,Wに設定されている。また、切剥がし部153の先端部153aの幅は、Wに設定されている。本実施形態に係るテザー用基布15では、幅W,Wは、それぞれが20mm以上に設定されている。これは、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時において、基部150,151の先端部150a,151aと伸長部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わった場合に、基部150,151で糸抜け(横糸1501の糸抜け)を生じ難くするためである。
【0044】
5.ステッチ155,156の構成
テザー用基布15におけるステッチ155,156の構成について、図6を用いて説明する。図6は、図5のA部を拡大して示す部分平面図である。
【0045】
図6に示すように、ステッチ155は、切り欠き部155aと接続部155bとが交互に連続して形成されている。同様に、ステッチ156は、切り欠き部156aと接続部156bとが交互に連続して形成されている。切り欠き部155aのX方向長さはL2であり、接続部155bのX方向長さはL1である。切り欠き部156aのX方向長さはL4であり、接続部156bのX方向長さはL3である。本実施形態では、長さL2と長さL4とは同一長さであり、長さL1と長さL3とが同一長さである。
【0046】
ここで、本実施形態では、接続部155b,156bの長さL1,L3を調整することによって破断荷重を調整し、切り欠き部155a,156aの長さL2,L4を調整することによって破断荷重の振幅を調整している。一例として、長さL1~L4をそれぞれ10mm以下としている。このように長さL1~L4をそれぞれ10mm以下とすることにより、破断荷重および破断荷重の振幅を安定させることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るテザー用基布15では、図5で示した切剥がし部153における先端部153aの幅Wは、ステッチ155,156における接続部155b,156bの長さL1,L3の2倍よりも大きい幅に設定されている。幅Wを上記のように設定することにより、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時において、基部150,151の先端部150a,151aと切剥がし部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わった場合に、安定して基部150,151から切剥がし部153を破断させることができる。
【0048】
さらに、図6に示すように、ステッチ155とステッチ156とは、同じピッチを以って形成されているとともに、Y方向に間隔をおいて切り欠き部155aと切り欠き部156aとが並設され、接続部155bと接続部156aとが並設されている。即ち、切り欠き部155aと接続部155bとの各境界からY方向に仮想線LN1~LN3を引くとき、該仮想線LN1~LN3は、切り欠き部156aと接続部156bとの各境界を通過する。
【0049】
上記のように、ステッチ155とステッチ156とを同じピッチを以って形成することにより、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時において、基部150,151の先端部150a,151aと切剥がし部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わった場合に、安定して基部150,151から切剥がし部153を破断させることができる。
【0050】
なお、本実施形態に係るテザー用基布15では、ステッチ155とステッチ156とを互いに平行な状態で形成することとしたが、必ずしも互いに平行である必要はない。例えば、ステッチ155とステッチ156とが±10°以内の角度となるように形成することもできる。
【0051】
6.基部150,151からの切剥がし部153の破断
車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時において、基部150,151の先端部150a,151aと切剥がし部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わった場合において、基部150,151からの切剥がし部153の破断について、図7図9を用いて説明する。図7(a)は、本実施形態に係るテザー用基布15,16での切剥がし部破断(糸の切断)のメカニズムを説明するための模式図であり、図7(b)は、従来技術(上記特許文献1に開示の技術)に係るテザー用基布での破断(糸の切断)のメカニズムを説明するための模式図である。図8は、図5のVIII-VIII線断面を示す模式図であって、(a)は横糸が切れる前の状態を示し、(b)は横糸が切れたときの状態を示す。図9は、本実施形態に係るテザー用基布15,16の基部150,151の先端部150a,151aと切剥がし部153の先端部153aとの間が引っ張られ、基部150,151から切剥がし部153が順に破断してゆく場合の、テザー用基布15,16の伸長ストロークと荷重との関係を示す特性図である。
【0052】
先ず、図7(a)、(b)に示すように、縦糸と横糸とが編まれた基布は、複数のバネが接続されたモデルとして表わすことができる。そして、バネが伸びきることで糸の切断が発生する。
【0053】
図7(b)に示すように、従来技術(上記特許文献1に開示の技術)では、糸の2点間に引張力が加わり、引張力が所定の大きさになった時点で糸が切断するメカニズムが採用されている。
【0054】
これに対して、図7(a)に示すように、引張力が加わる方向と平行な方向に延びる2本のステッチ155,156を設けることにより、2か所の糸が切断するメカニズムを採用している。この点で、本実施形態と上記特許文献1に開示の技術では、糸の切断に関するメカニズムが全く異なっている。
【0055】
図8(a)に示すように、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時には、基部150,151の先端部150a,151aと切剥がし部153の先端部153aとの間に力(引張力)F,F’が加わる。そして、図8(b)に示すように、切剥がし部153が基部150,151からZ方向に離間してゆき、横糸1501に張力が加わって当該張力が所定以上となるとステッチ155,156の部分で横糸1501が切断されてゆく。
【0056】
なお、図8(a)の状態から図8(b)の状態へと遷移してゆく過程では、ステッチ155,156の両側の縦糸1500が各ステッチ155,156から離れるように相互の間隔が縮まってゆく。
【0057】
なお、図8(a)、(b)では、テザー用基布15を一例としているが、テザー用基布16についても同様のメカニズムで基部から切剥がし部が破断してゆく。
【0058】
図9に示すように、車両用エアバッグ12における袋体の膨張展開時のテザー用基布15,16において、ステッチ155,156が順次切断してゆく場合には、ストロークに応じて荷重が高くなる部分と荷重が低くなる部分とが繰り返される。即ち、引張力が加わることで接続部155b,156bの横糸1501が破断するに至るまでの間は荷重が上昇し、破断した後は荷重が低下してゆく。
【0059】
ここで、図9のグラフにおける荷重のピーク値は、ステッチ155,156の接続部155b,156bの長さL1,L3(図6を参照。)、基布の強度、用いる基布の枚数などにより調整することが可能である。
【0060】
また、荷重の振幅については、ステッチ155,156の切り欠き部155a,156aの長さL2,L4(図6を参照。)により調整することが可能である。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両用エアバッグの構成について、図10を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る車両用エアバッグが備えるテザー用基布25の構成を示す模式平面図である。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグと上記第1実施形態に係る車両用エアバッグ12との差異はテザー用基布25の構成にあり、他の構成については上記第1実施形態と同じであるので、図示及び説明を省略する。
【0062】
図10に示すように、本実施形態に係るテザー用基布25は、それぞれがX方向に延伸し、互いにY方向に離間した4つのステッチ257~260が設けられている。各ステッチ257~260は、基布のX方向右側の辺を起点に形成され、互いに平行に形成されている。
【0063】
テザー用基布25のX方向右側の辺には、それぞれX方向左側に向けて凹入した凹入部253,254が設けられている。凹入部253は、Y方向において、ステッチ257とステッチ258との間の領域に設けられた切剥がし部255に対応して形成されており、凹入部254は、Y方向において、ステッチ259とステッチ260との間の領域に設けられた切剥がし部256に対応して形成されている。
【0064】
本実施形態に係るテザー用基布25においても、ステッチ257を挟んで切剥がし部255のY方向上側に基部250が設けられ、ステッチ258とステッチ259との間の領域に基部251が設けられ、ステッチ260を挟んで切剥がし部256のY方向下側に基部252が設けられている。基部250,251,252の各先端部250a,251a,252aは、袋体を構成するステアリング側エアバッグパネル13と乗員側エアバッグパネル14との一方側に接合され、切剥がし部255,256の各先端部255a,256aが他方側に接合される。
【0065】
なお、テザー用基布25におけるステッチ257~260の各構成については、上記第1実施形態に係るステッチ155,156と同じである。
【0066】
本実施形態に係るテザー用基布25は、図10に示す平面図で三股構造を有するが、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、本実施形態に係るテザー用基布25では、ステアリング側エアバッグパネル13および乗員側エアバッグパネル14に対する接合箇所数をそれぞれ複数にすることができ、互いの接合をより確実にすることができる。
【0068】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両用エアバッグの構成について、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態に係る車両用エアバッグが備えるテザー用基布35の構成を示す模式斜視図である。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグと上記第1実施形態に係る車両用エアバッグ12との差異はテザー用基布35の構成にあり、他の構成については上記第1実施形態と同じであるので、図示及び説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、本実施形態に係るテザー用基布35は、第1構成部材36と第2構成部材37とが互いに重ねられて構成されている。言い換えると、テザー用基布35は、布地が複数枚(2枚)重ねられて構成されている。
【0070】
第1構成部材36は、上記第1実施形態に係るテザー用基布15,16と同じ構成を有しており、基部360,361、凹入部362、伸長部363、ステッチ365,366を有する。第2構成部材37についても、上記第1実施形態に係るテザー用基布15,16と同じ構成を有しており、基部370,371、凹入部372、切剥がし部373、ステッチ375,376を有する。なお、第1構成部材36と第2構成部材37とにおいては、それぞれのステッチ365,366,375,376が同じピッチを以って形成されている。また、各ステッチ365,366,375,376が基布のX方向左側の辺364,374にまでは到達していない点に関しても上記第1実施形態と同じである。
【0071】
本実施形態では、第1構成部材36における基部360,361の各先端部360a,361aおよび第2構成部材37における基部370,371の各先端部370a,371aが、袋体を構成するステアリング側エアバッグパネル13と乗員側エアバッグパネル14との一方に接合され、第1構成部材36における切剥がし部363の先端部363aおよび第2構成部材37における切剥がし部373の先端部373qaが他方に接合される。
【0072】
ここで、テザー用基布35をZ方向の一方から平面視する場合に、ステッチ365,366の各切り欠き部と、ステッチ375,376の各切り欠き部とが重なり合い、ステッチ365,366の各接続部と、ステッチ375,376の各接続部とが重なり合うように構成されている。ただし、切り欠き部同士および接続部同士が構成部材同士の間で重なり合わないこととすることもできる。
【0073】
本実施形態に係る車両用エアバッグでは、図11に示すテザー用基布35を備えることにより、ステッチ365,366,375,376の破断に係る荷重を高くすることができ、袋体の膨張展開時における展開速度のコントロール性をより高めることが可能となる。
【0074】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る車両用エアバッグ42の構成について、図12を用いて説明する。図12(a)は、本実施形態に係る車両用エアバッグ42とその周辺構成を示す模式図であり、図12(b)は、本実施形態に係る車両用エアバッグ42におけるテザー用基布45~48の配置を示す模式正面図である。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグ42は、助手席エアバッグである。
【0075】
図12(a)に示すように、本実施形態に係る車両では、助手席用のシート40と、当該シート40の前方に設けられたダッシュボード41と、を備えている。助手席の乗員501は、シート40に着座している。
【0076】
本実施形態に係る車両用エアバッグ42は、ダッシュボード41内に収納されており、車両衝突時に膨張展開して乗員501を保護するための安全装置である。
【0077】
本実施形態に係る車両用エアバッグ42においても、車両前方側に配されるエアバッグパネルと、乗員側(後方側)に配される乗員側エアバッグパネルと、で袋体が形成されている。そして、当該袋体の内包に収容され、前方側のエアバッグパネルおよび乗員側エアバッグパネルに接合された4つのテザー用基布45~48を備える。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグ42においても、車両衝突時などにガス(エアー)を供給するインフレータの図示を省略している。
【0078】
ここで、本実施形態に係る車両用エアバッグ42が備えるテザー用基布45~48のうち、テザー用基布47,48が第1テザー用基布に該当し、テザー用基布45,46が第2テザー用基布に該当する。
【0079】
図12(b)に示すように、4つのテザー用基布45~48のうち、第1テザー用基布に該当するテザー用基布47、48は、シート40におけるシートバック40aにおける上部(ヘッドレスト40bに近い部分)において、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。なお、図12(b)に示すテザー用基布47,48の配置も、図3と同様に、車両用エアバッグ42が膨張展開した状態でのものである。
【0080】
4つのテザー用基布45~48のうち、第2テザー用基布に該当するテザー用基布45、46は、シート40におけるヘッドレスト40bの部分に設けられ、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。図12(b)において、テザー用基布45,46の配置についても、車両用エアバッグ42が膨張展開した状態でのものである。
【0081】
なお、テザー用基布45~48の各構成については、上記第1実施形態に係るテザー用基布15,16と同じである。
【0082】
図12(a)に示すように、車両側方からの側面視において、テザー用基布45のステッチが延伸する方向(テザー用基布45の伸長方向)と、テザー用基布46のステッチが延伸する方向(テザー用基布46が伸長する方向)と、は合致している。同様に、車両側方からの側面視において、テザー用基布47のステッチが延伸する方向(テザー用基布47の伸長方向)と、テザー用基布48のステッチが延伸する方向(テザー用基布48の伸長方向)と、は合致している。
【0083】
また、図12(a)に示すように、テザー用基布45,46のステッチ(第2破断線)が延伸する方向(テザー用基布45,46の伸長方向)に仮想線LN5を引き、テザー用基布47,48のステッチ(第1破断線)が延伸する方向(テザー用基布47,48の伸長方向)に仮想線LN6を引くとき、仮想線LN5と仮想線LN6とは、互いに鋭角で交差するようになっている。
【0084】
本実施形態に係る車両用エアバッグ42では、上記第1実施形態に係る車両用エアバッグ12と同様の効果を得ることができるとともに、テザー用基布47,48に加えてテザー用基布45,46を備える構成とすることにより乗員501の各部位に対するエアバッグの展開速度をより細かくコントロールすることが可能となる。
【0085】
なお、テザー用基布45,46とテザー用基布47,48とを、互いに同じ構成とすることも可能であるし、相互に異なる構成とすることも可能である。例えば、テザー用基布45,46とテザー用基布47,48との一方に、上記第2実施形態に係るテザー用基布25や上記第3実施形態に係るテザー用基布35を採用することも可能である。また、テザー用基布45,46とテザー用基布47,48とで、伸長方向における寸法を変えることも可能である。
【0086】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る車両用エアバッグ52の構成について、図13を用いて説明する。図13(a)は、本実施形態に係る車両用エアバッグ52とその周辺構成を示す模式図であり、図13(b)は、本実施形態に係る車両用エアバッグ52におけるテザー用基布55~58の配置を示す模式正面図である。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグ52は、後席エアバッグである。
【0087】
図13(a)に示すように、本実施形態に係る車両では、後席用のシート60(図13(a)では、シートバックおよびヘッドレストの図示を省略。)と、当該シート60の前方に配置された前席用のシート50と、を備えている。後席の乗員502は、シート60に着座している。
【0088】
本実施形態に係る車両用エアバッグ52は、前席50のシートバック50a内に収納されており、車両衝突時に膨張展開して後席の乗員502を保護するための安全装置である。
【0089】
本実施形態に係る車両用エアバッグ52においても、車両前方側に配されるエアバッグパネルと、乗員側(後方側)に配される乗員側エアバッグパネルと、で袋体が形成されている。そして、当該袋体の内方に収容され、前方側のエアッグパネルおよび乗員側エアバッグパネルに接合された4つのテザー用基布55~58を備える。なお、本実施形態に係る車両用エアバッグ52においても、車両衝突時などにガス(エアー)を供給するインフレータの図示を省略している。
【0090】
ここで、本実施形態に係る車両用エアバッグ52が備えるテザー用基布55~58のうち、テザー用基布57,58が第1テザー用基布に該当し、テザー用基布55,56が第2テザー用基布に該当する。
【0091】
図13(b)に示すように、4つのテザー用基布55~58のうち、第1テザー用基布に該当するテザー用基布57、58は、シート60におけるシートバック60aにおける上部(ヘッドレスト60bに近い部分)において、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。なお、図13(b)に示すテザー用基布57,58の配置も、図3および図12(b)と同様に、車両用エアバッグ52における袋体が膨張展開した状態でのものである。
【0092】
4つのテザー用基布55~58のうち、第2テザー用基布に該当するテザー用基布55、56は、シート60におけるヘッドレスト60bの部分に設けられ、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。図13(b)において、テザー用基布55,56の配置についても、車両用エアバッグ52における袋体が膨張展開した状態でのものである。
【0093】
なお、テザー用基布55~58の各構成については、上記第1実施形態に係るテザー用基布15,16と同じである。
【0094】
図13(a)に示すように、本実施形態においても、車両側方からの側面視において、テザー用基布55のステッチが延伸する方向と、テザー用基布56のステッチが延伸する方向と、は合致している。同様に、車両側方からの側面視において、テザー用基布57のステッチが延伸する方向(テザー用基布57の伸長方向)と、テザー用基布58のステッチが延伸する方向(テザー用基布58の伸長方向)と、は合致している。
【0095】
また、図13(a)に示すように、テザー用基布55,56のステッチ(第2破断線)が延伸する方向(テザー用基布55,56の伸長方向)に仮想線LN7を引き、テザー用基布57,58のステッチ(第1破断線)が延伸する方向(テザー用基布57,58の伸長方向)に仮想線LN8を引くとき、仮想線LN7と仮想線LN8とは、互いに鋭角で交差するようになっている。
【0096】
本実施形態に係る車両用エアバッグ52では、上記第4実施形態に係る車両用エアバッグ42と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、本実施形態においても、テザー用基布55,56とテザー用基布57,58とを、互いに同じ構成とすることも可能であるし、相互に異なる構成とすることも可能である。例えば、テザー用基布55,56とテザー用基布57,58との一方に、上記第2実施形態に係るテザー用基布25や上記第3実施形態に係るテザー用基布35を採用することも可能である。また、テザー用基布55,56とテザー用基布57,58とで、伸長方向における基布の寸法を変えることも可能である。
【0098】
[変形例]
上記第1実施形態では、運転席用のエアバッグを一例とし、上記第4実施形態では、助手席用のエアバッグを一例とし、上記第5実施形態では、後席用のエアバッグを一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、カーテンエアバッグに上記のようなテザー用基布を備える構成を適用することでも上記同様の効果を得ることができる。
【0099】
上記第1実施形態に係る車両用エアバッグ12では、2つのテザー用基布15,16を備え、上記第4実施形態および上記第5実施形態に係る車両用エアバッグ42,52では4つのテザー用基布45~48,55~58を備える構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、袋体に対して1つのテザー用基布だけが接続された構成や、3つあるいは5つ以上のテザー用基布が接続された構成を採用することも可能である。
【0100】
上記第1実施形態、上記第4実施形態、および上記第5実施形態では、2つのエアバッグパネルにより袋体を構成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。1つのエアバッグパネルにより袋体を構成することや、3つ以上のエアバッグパネルにより袋体を構成することも可能である。
【0101】
上記第1実施形態から上記第5実施形態では、テザー用基布15,16,45~48,55~58および構成部材36,37の各ステッチ155,156,257~260,365,366において、切り欠き部155a、156aと接続部155b,156bとがステッチの延伸方向に同一ピッチで形成されていることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ステッチの延伸方向の一部でピッチを可変することや、一端から他端に向けてピッチが漸次可変してゆくという形態などを採用することもできる。
【0102】
上記第1実施形態から上記第5実施形態に係る各車両用エアバッグ12,42.52では、テザー用基布15,16,45~48,55~58および構成部材36,37の各切剥がし部153,255,256,363,373の各先端部153a,255a,256a,363a,373aが車両前方側のエアバッグパネルに接合され、各基部150,151,250,251,252,360,361,370,371の各先端部150a,151a,250a,251a,252a,360a,361a,370a,371aが乗員側のエアバッグパネルに接合される構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。逆の接合形態を採用することも可能である。
【0103】
また、上記第1実施形態、上記第3実施形態~上記第5実施形態では、二股のテザー用基布15,16,45~48,55~58を採用し、上記第2実施形態では、三股のテザー用基布25を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、四股以上のテザー用基布を採用することも可能である。
【0104】
また、上記第1実施形態~上記第5実施形態では、テザー用基布15,16,25,45~48,55~58および構成部材36,37が凹入部152,253,254,362,372を有する構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、本発明では、テザー用基布に凹入部を設けることは必須の要件ではなく、テザー用基布における基部の端部が袋体の一部に接合され、伸長部の端部が袋体の別の部分に接合できればよいのであって、必ずしも凹入部を設ける必要はない。
【0105】
また、上記第1実施形態~上記第5実施形態では、テザー用基布15,16,25,45~48,55~58および構成部材36,37において、破断線の一例として、切り欠き部155a,156aと接続部155b,156bとが交互に連続するステッチ155,156,257~260,365,366,375,376を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。基布において、他の部分よりも破断しやすければ破断線とすることができる。例えば、線状に厚みが薄い部分を形成しておくことでもよいし、該当部分だけ横糸の糸径を補足しておくことなども可能である。
【0106】
また、上記第1実施形態~上記第5実施形態では、テザー用基布15,16,25,45~48,55~58および構成部材36,37を構成する基布の繊維素材としてナイロン66を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維など、種々の素材を採用することができる。
【0107】
上記第3実施形態では、2枚の布地(構成部材36,37)を重ねることによりテザー用基布35を構成することとし、第1構成部材36と第2構成部材37とが同じ構造であることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、重ねる構成部材同士の間において、互いに異なる素材からなる布地を用いることもできるし、互いに異なる厚みの布地とすることもできる。また、重ねる構成部材同士において、ステッチの長さを相互に変更することなども可能である。
【符号の説明】
【0108】
12,42,52 車両用エアバッグ
15,47,48,57,58 テザー用基布(第1テザー用基布)
16,45,46,55,56 テザー用基布(第2テザー用基布)
150,151,250-252,360,361,370,371 基部
150a,151a,250a,251a,252a,360a,361a,370a,371a, 先端部
153,255,256,363,373 切剥がし部
153a,255a,256a,363a,373a 先端部
155,156,257-260,365,366,375,376 ステッチ(破断線)
155a,156a 切り欠き部
155b,156b 接続部
1500 縦糸(経糸)
1501 横糸(緯糸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13