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特許7528421バリア性易引裂共押出多層フィルム及び包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】バリア性易引裂共押出多層フィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240730BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B65D65/40 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019160304
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2020037266
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2018164863
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】井藤 航太
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069734(JP,A)
【文献】特開2018-104583(JP,A)
【文献】特開2017-197625(JP,A)
【文献】特開2018-115320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層(I)に隣接する両側に直接、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の混合樹脂を主成分とする、接着層(II)と接着層(III)を各々積層させた積層体を有し、前記環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度(Tg)が100℃~180℃であり、前記非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.5g/10minであり、前記接着層(II)及び前記接着層(III)の合計厚みtとフィルム全体厚みTの厚み比R=(t/T)が0.10以上であることを特徴とする、バリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項2】
前記接着層(II)及び前記接着層(III)の、各層における環状オレフィン系樹脂(c)の含有量が10重量%~80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηにおいて、測定温度230℃、せん断速度122/sにおける粘度比Rη=η/ηが0.2以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項4】
非変性ポリオレフィン系樹脂(d)が直鎖状ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂(e)を主成分とする樹脂層(IV)及び樹脂層(V)を、(IV)/(II)/(I)/(III)/(V)の順に積層させた5層構成からなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項6】
少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層(I)に隣接して、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の混合樹脂を主成分とする接着層(II)を少なくとも積層させた積層体であって、前記環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度(Tg)が100℃~180℃であり、前記非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.5g/10minであることを特徴とする、バリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項7】
該多層フィルムのJIS K7128-2に準拠して測定されるエルメンドルフ引裂強度が、フィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)において、30N/mm以下であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項8】
極性を有する樹脂(a)が極性基を有するオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項9】
前記バリア層(I)が、2種類以上の前記極性を有する樹脂(a)から構成され、2層以上の積層体からなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルム。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のバリア性易引裂共押出多層フィルムを用いた包装材。
【請求項11】
不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)とガラス転移温度(Tg)が100~180℃である環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)を少なくとも含有する易引裂接着性樹脂組成物であって、前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと前記環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηにおいて、測定温度230℃、せん断速度122/sにおける粘度比Rη=η/ηが0.2以上であり、該非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.5g/10minであることを特徴とする易引裂接着性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性易引裂共押出多層フィルムに関し、さらに詳しくは、ガスバリア性に優れ、特にフィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)への易引裂性に優れ、好ましくはTDへの直線易引裂性も卓越し、低カール性にも優れたバリア性易引裂共押出多層フィルム及び包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食の安全が注目される中、飲食物、調味料などの食品に用いる包装袋には、ガスバリア性や水蒸気バリア性などの機能性の付与が求められている。さらに、優れた意匠性やパッケージデザインだけでなく、少子高齢化に対応するため易開封性等のバリアフリー化への要求も強くなってきている。
食品包装袋に用いられる包装用積層体は、バリア性やヒートシール性、耐ピンホール性などの包装袋として必要な特性付与の観点から、包装袋外面に位置するポリアミド、ポリエステル等の基材層に対し、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂層を積層したものが用いられてきた。
【0003】
上記のような積層体からなる包装袋に易開封性を付与する方法として、基材層に易引裂性を付与する方法と基材層に積層させるポリオレフィン系樹脂層に易引裂性を付与する方法に大別できる。
前者としては、例えば、基材層に延伸加工を施した易カットポリアミドフィルムや易カットポリエステルフィルムを用いる方法が挙げられる(特許文献1、2、3)。しかし、このような易カット基材は高価であるだけでなく、フィルムの幅方向において延伸の不均一性が生じ易い。基材として使用する箇所によって、引裂き時の直線性が変化したり、袋状にして引裂いた際に、袋の表側のフィルムと裏側のフィルムのずれ(泣き別れ)が発生し易く、品質が安定しないことが問題となる。
また、後者としては、例えば、ポリエチレン系樹脂と環状ポリオレフィン系樹脂からなる易カットシーラントフィルムを基材の片側に積層させることにより、包装袋の開封方向に対する直線易引裂性を付与する試みがされている(特許文献4)。しかし、該発明では、汎用ポリエステルフィルムと該易カットシーラントフィルムを積層させた場合においては、十分な直線易引裂性が得られていない。
また、両者いずれの方法においても、基材とポリオレフィン系樹脂層を積層させるためには、接着剤やアンカーコート剤を用いたラミネート加工が必須となる。ラミネート加工時に用いる接着剤やアンカーコート剤は、酢酸エチル等の有機溶剤で希釈した状態で使用されることがほとんどであるが、酢酸エチル等の有機溶剤は引火性が高く危険であるだけでなく、人体への有害性もあり、環境への負荷も大きい。
【0004】
上述の問題に対し、脂肪族ポリアミド樹脂にアイオノマー樹脂と高密度ポリエチレンをブレンドしたポリアミド系樹脂組成物を基材層に用い、共押出法により製膜加工することによりポリアミド系多層フィルムに易引裂性を付与する試みがなされている(特許文献5)。また、特許文献6においては、変性ポリオレフィン系樹脂と環状ポリオレフィン系樹脂とを少なくとも含有する接着性樹脂組成物を用いて、バリア性樹脂層に易引裂性を付与する試みがなされている。さらに、特許文献7、8、9では、ポリアミド等の基材層の上に、変性ポリオレフィン系樹脂からなる接着層を設け、その上に環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂からなる混合樹脂層を設けた積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-48424
【文献】特開平11-309825
【文献】特許第3642616
【文献】特開2014-159302
【文献】特開2005-41093
【文献】特開2018-104583
【文献】特開2017-52250
【文献】特開2018-69734
【文献】特開2018-69735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5記載の技術では、引裂き時の直線性は良好であるが、引裂荷重が大きいために易開封性の包装材には好適ではない。また、脂肪族ポリアミド樹脂からなる基材層にアイオノマー樹脂と高密度ポリエチレンをブレンドするため、脂肪族ポリアミド樹脂からなる基材層のガスバリア性を低下させる恐れがある。特許文献6に具体的に開示のある構成(ガラス転移温度が低い環状ポリオレフィン系樹脂を使用して片側のみに接着性樹脂組成物を積層した構成)では、実際にポリアミド系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂との積層体としての易引裂性は不十分であり、加えて実使用上重要となる引裂き時の直線性についても不十分であった。また、特許文献7、8、9においても、やはり実用上、特にTD方向の易引裂性、直線易引裂性について十分といえる状況ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を鑑み、特定方向への易引裂性に優れるだけでなく、ガスバリア性、溶剤フリーにも優れ、さらに好ましくは直線引裂性や低カール性にも優れるバリア性易引裂共押出フィルム及び包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、意外にも特定の構成条件下における共押出多層フィルムを作製すると、上記課題を解決できる多層フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層(I)に隣接する両側に、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する、接着層(II)と接着層(III)を各々積層させた積層体を有することを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第2の発明によれば、第1の発明において、前記接着層(II)及び前記接着層(III)の、各層における環状オレフィン系樹脂(c)の含有量が10重量%~80重量%であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度(Tg)が100℃~180℃であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第4の発明によれば、第1~3のいずれかに記載の発明において、前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηにおいて、測定温度230℃、せん断速度122/sにおける粘度比Rη=η/ηが0.2以上であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第5の発明によれば、第1~4のいずれかに記載の発明において、前記接着層(II)及び前記接着層(III)が、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の混合樹脂を主成分とし、当該非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(以下、MFRとも記載する)が0.1~3.5g/10minであることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第6の発明によれば、第5の発明において、非変性ポリオレフィン系樹脂(d)が直鎖状ポリエチレン系樹脂であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第7の発明によれば、第1~6のいずれかに記載の発明において、前記接着層(II)及び前記接着層(III)の合計厚みtとフィルム全体厚みTの厚み比R=(t/T)が0.10以上であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第8の発明によれば、第1~7のいずれかに記載の発明において、ポリオレフィン系樹脂(e)を主成分とする樹脂層(IV)及び樹脂層(V)を、(IV)/(II)/(I)/(III)/(V)の順に積層させた5層構成からなることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
【0010】
また、第9の発明によれば、少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層(I)に隣接して、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する接着層(II)を少なくとも積層させた積層体であって、前記環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度(Tg)が100℃~180℃であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
【0011】
また、第10の発明によれば、第1~9のいずれかに記載の発明において、該多層フィルムのJIS K7128-2に準拠して測定されるエルメンドルフ引裂強度が、フィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)において、30N/mm 以下であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第11の発明によれば、第1~10いずれかに記載の発明において、極性を有する樹脂(a)が極性基を有するオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第12の発明によれば、第1~11のいずれかに記載の発明において、前記バリア層(I)が、2種類以上の前記極性を有する樹脂(a)から構成され、2層以上の積層体からなることを特徴とするバリア性易引裂共押出多層フィルムが提供される。
また、第13の発明によれば、第1~12のいずれかに記載の発明におけるバリア性易引裂共押出多層フィルムを用いた包装材が提供される。
【0012】
また、第14の発明によれば、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)とガラス転移温度(Tg)が100~180℃である環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する易引裂接着性樹脂組成物であって、前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと前記環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηにおいて、測定温度230℃、せん断速度122/sにおける粘度比Rη=η/ηが0.2以上であることを特徴とする易引裂接着性樹脂組成物が提供される。
また、第15の発明によれば、前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)と前記環状オレフィン系樹脂(c)の他に、更に非変性ポリオレフィン系樹脂(d)を少なくとも有する混合樹脂を主成分とし、該非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.5g/10minであることを特徴とする第14の発明における易引裂接着性樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムによれば、第1の発明においては、少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層に隣接する両側に、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する、接着層(II)及び接着層(III)を各々積層させた積層体を有することにより、水蒸気バリア性等のガスバリア性に優れるだけでなく、易引裂性、低カール性に優れる。また、引張弾性率も高く、剛性に優れる。
【0014】
また、第2の発明においては、前記接着層(II)及び前記接着層(III)の各層全体に対する環状オレフィン系樹脂(c)の含有量が10重量%~80重量%であることにより、易引裂性、低カール性に優れる。
【0015】
また、第3の発明においては、前記環状オレフィン系樹脂(c)のISO 11357-3に準拠し測定されたガラス転移温度が100℃~180℃であることにより、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0016】
また、第4の発明においては、前記変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηにおいて、測定温度230℃、せん断速度122/sにおける粘度比Rη=η/ηが0.2以上であることにより、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0017】
また、第5の発明においては、前記接着層(II)及び前記接着層(III)が、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の混合樹脂を主成分とし、当該非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のJIS K7210に準拠し測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~3.5g/10minであることにより、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0018】
また、第6の発明においては、非変性ポリオレフィン系樹脂(d)が直鎖状ポリエチレン系樹脂であることにより層間強度に優れるだけでなく、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0019】
また、第7の発明においては、前記接着層(II)及び前記接着層(III)の合計厚みtとフィルム全体厚みTの厚み比R(t/T)が0.10以上であることにより、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0020】
また、第8の発明においては、ポリオレフィン系樹脂(e)を主成分とする樹脂層(IV)及び樹脂層(V)を、(IV)/(II)/(I)/(III)/(V)の順に積層させた5層構成からなることにより、ガスバリア性、易引裂性、直線引裂性、低カール性に優れる。
【0021】
また、第9の発明においては、少なくとも3層以上の層からなる多層フィルムであって、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層(I)に隣接して、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する接着層(II)を少なくとも積層させた積層体であって、前記環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度(Tg)が100℃~180℃であることにより、易引裂性、直線引裂性に優れる。
【0022】
また、第10の発明においては、該多層フィルムのJIS K7128-2に準拠して測定されるエルメンドルフ引裂強度が、フィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)において、30N/mm 以下であることにより、易引裂性に優れる。
【0023】
また、第11の発明においては、極性を有する樹脂(a)が極性基を有するオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂の群から選択される少なくとも一種であることによりガスバリア性に優れる。
【0024】
また、第12の発明においては、バリア層(I)が、2種類以上の極性を有する樹脂(a)から構成され、2層以上の積層体からなることにより、ガスバリア性に優れる。
【0025】
また、第13の発明においては、該バリア性易引裂共押出フィルムを用いた包装材は易引裂性に優れるだけでなく、ガスバリア性に優れる。
【0026】
また、第14の発明においては、特定の環状オレフィン系樹脂(c)を含有する樹脂組成物により、接着層に用いることで、ガスバリア性、易引裂性、低カール性、引張弾性率、剛性など各種物性に優れるフィルムが得られる。
【0027】
また、第15の発明においては、更に特定のMFRを有する非変性ポリオレフィン樹脂(d)を含有する樹脂組成物により、直線引裂性に優れたフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムについて、各項目ごとに詳細に説明する。なお、本発明において、「主成分とする」とは層を構成する樹脂成分中の主要成分であることを意味し、具体的には層を構成する樹脂成分中70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%含有することを意味する。
【0029】
<バリア性易引裂共押出多層フィルムを構成する層>
(1)バリア層(I)
本発明のバリア層(I)は、極性を有する樹脂(a)を主成分とする層である。ここで、極性を有する樹脂とは、樹脂の分子構造中に極性基や高極性の結合を有する樹脂を意味する。より具体的には、極性基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、イソシアネート基、グリシジル基等の官能基を持つ樹脂、高極性の結合としてエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合等の結合を持つ樹脂を意味する。
バリア層(I)は以下に記載する少なくとも一種以上の極性を有する樹脂(a)から構成されていればよく、例えば、ポリアミド系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂を主成分とする単層構成であってもよく、また、ポリアミド系樹脂/エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂/ポリアミド系樹脂のような多層構成であってもよい。
なお、バリア層(I)には、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、滑材、熱劣化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、離型剤などの添加剤を添加することが出来る。
【0030】
(1-1)極性を有する樹脂(a)
極性を有する樹脂(a)としては、極性基を有するオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0031】
(1-1-1)極性基を有するオレフィン系樹脂
極性基を有するオレフィン系樹脂としては、後述する変性ポリオレフィン系樹脂(b)に相当する樹脂のほか、シラン変性ポリオレフィン等が挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂としては、メタロセン触媒等の金属触媒により重合されたエチレンと極性基含有モノマーとの共重合体や有機過酸化物を反応開始剤として重合されるエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸3成分系共重合体等が挙げられる。該オレフィン系樹脂の、JIS K7210に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときのメルトフローレート(以下、MFRとも記載する)は、高温成形下での製膜安定性の観点から20g/10min以下が好ましい。MFRが20g/10min以下であると溶融張力の上昇により製膜安定性が向上する。市販されている極性基を有するオレフィン系樹脂としては、日本ポリエチレン株式会社製「レクスパール」等が挙げられる。
【0032】
(1-1-2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、3員環以上のラクタム、重合可能なω-アミノ酸、または、二塩基酸とジアミン等の縮重合によって得られるポリアミドを使用できる。具体的には、ε―カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、9-アミノノナン酸、α―ピロリドン、α―ピペリドン等の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸等のジカルボン酸と重縮合して得られる重合体またはこれらの共重合体であり、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/6T、ポリアミド6I/6T、MXD6等が挙げられ、2種以上のポリアミドを用いることもできる。ポリアミドの末端は、モノカルボン酸またはモノアミンで封止されていてもよい。例えば、炭素数2~22のモノカルボン酸またはモノアミンで末端が封止されたポリアミドが挙げられる。加工時の成形安定性と耐熱性とのバランスの観点から、ポリアミド6/66(以下、PA6/66とも記載する)又はポリアミド6(以下、PA6とも記載する)が好適である。市販されているポリアミド系樹脂としては、例えばDSMジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバミッド(Novamid)」「アクロン(Akulon)」、BASF社製「ウルトラミッド(Ultramid)」、宇部興産株式会社製「宇部ナイロン(UBE NYLON)」等が挙げられる。
【0033】
上記、ポリアミドの粘度数はISO307、ISO1157、ISO1628に従って測定された値で、好ましくは150~300cm/gであり、より好ましくは170~260cm/gである。粘度数が150cm/gより高いと十分な機械強度が得られ易く、粘度数が300cm/gより低いと十分な成形性が得られ易い。
【0034】
(1-1-3)エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂
エチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂(以下、EVOHとも記載する)はエチレン含有率20~50mol%のものであることが好ましく、エチレン含有率30~40mol%のものであることがより好ましい。エチレン含有率が20mol%以上であると成形加工性が向上し易く、エチレン含有率が50mol%以下であると充分なガスバリア性を確保し易くなる。さらに、210℃、21.168Nで測定されるメルトフローレート(MFR)が1~30g/10minであることが好ましく、2~10g/10minであることがより好ましい。MFRが1g/10min以上であると押出特性が良好であり好ましい。一方、MFRが30g/10min以下であると十分な成形加工性が得られ易い。
【0035】
該EVOHは、エチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化することによって得られる。該エチレン-酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。酢酸ビニル成分のケン化度は、通常、50mol%以上であることが好ましく、より好ましくは90mol%以上である。ケン化度がこの範囲であると、高いガスバリア性等が得られ易い傾向がある。
【0036】
該EVOHは、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体が共重合されたものであってもよい。かかる単量体としては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。上記記載の範囲内であればエチレン含有率や共重合モノマー組成の異なる2種以上のEVOHを混合して用いてもよい。市販されているEVOHとしては、例えば、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール(Soarnol)」や株式会社クラレ製「エバール(EVAL)」等が挙げられる。
【0037】
(1-1-4)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分を共重合して得られる樹脂である。共重合できるジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。また、共重合できるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製「ベルペット」やポリプラスチックス株式会社製「ジュラネックス」等が挙げられる。
【0038】
(2)接着層(II)及び接着層(III)
本発明の接着層(II)及び(III)は極性を有する樹脂との接着性とフィルムの引裂性を付与するための層であり、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する層である。また、非変性ポリオレフィン系樹脂(d)を含有してもよい。さらに、接着層(II)及び接着層(III)を構成する変性ポリオレフィン系樹脂(b)及び環状オレフィン系樹脂(c)、非変性ポリオレフィン系樹脂(d)については、以下に記載する範囲を満足していれば、それぞれの接着層を構成する樹脂が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
接着層(II)及び接着層(III)には、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、滑材、熱劣化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、離型剤などの添加剤を添加することが出来る。
【0039】
(2-1)変性ポリオレフィン系樹脂(b)
変性ポリオレフィン系樹脂(b)は、例えばポリアミド系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体と他の層、例えばポリエチレン系樹脂からなる樹脂層、又はポリエチレン系樹脂と環状オレフィンからなる樹脂層、又はポリプロピレン系樹脂からなる樹脂層とを接着するために用いられるものである。本発明では、エチレン又はプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂である場合は、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたホモポリエチレンもしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、もしくは有機過酸化物を反応開始剤として重合される高圧法低密度ポリエチレン等が挙げられるが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から直鎖状の分子構造を有するエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。該ポリエチレン系樹脂の密度は、一般的なポリエチレンの密度範囲である0.860g/cm~0.970g/cmであればいずれであってもよい。エチレンと共重合するα-オレフィンの種類としては、通常炭素数3~8のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1などが挙げられる。なお、本発明において樹脂の密度は、JIS K6922-2に基づいて測定する値である。
【0041】
また、該ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から20g/10min以下が好ましい。MFRが20g/10min以下であると溶融張力の上昇により製膜安定性が向上しやすい。ここで、本発明におけるMFRの値は、特に断りがない場合、JIS K7210に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値である。
【0042】
また、ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂の場合は、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等の他のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等のいずれでも用いることができる。上記重合体の1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよいが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、メタロセン触媒から得られた直鎖状のエチレン・プロピレン・ランダムブロック共重合体が50重量%以上含まれることが好ましい。市販されているこのような樹脂としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0043】
また、該ポリプロピレン系樹脂の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から15g/10min以下が好ましい。MFRが15g/10min以下であると溶融張力の上昇により製膜安定性が向上しやすい。
【0044】
上記、ポリオレフィン系樹脂にグラフト重合させる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物等が挙げられる。これらグラフト変性させる官能基含有モノマーの中では、カルボン酸基または酸無水基含有モノマーであるマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物が好ましく、特に無水マレイン酸(MAH)が基材との接着強度、樹脂との相溶性、経済性等の観点から好ましく使用される。グラフト重合する該α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体の量は、変性ポリオレフィン樹脂全量に対して、0.02~5.0重量%に相当するのが好ましい。
【0045】
グラフト変性の方法には、重合された樹脂成分をラジカル発生剤の存在下に、グラフト変性させる官能基含有モノマーを押出機内で反応させる溶融法、あるいは溶液中で反応させる溶液法等がある。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、ジクミル化合物等が挙げられる。該有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。ジヒドロ芳香族化合物としては、ジヒドロキノリンまたはその誘導体、ジヒドロフラン、1,2-ジヒドロベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、9,10-10ジヒドロフェナントレン等が挙げられる。ジクミル化合物としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-メチルフェニル)ブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジ(p-ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
【0046】
なお、該変性ポリオレフィン系樹脂には、改質材としてエチレンプロピレン系ゴム等のエチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴムなどのエラストマーを添加してもよい。
市販されている変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「モディック」や三井化学株式会社製「アドマー」などが挙げられる。
【0047】
(2-2)環状オレフィン系樹脂(c)
環状オレフィン系樹脂(c)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
【0048】
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3~20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]-3-ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン等およびこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(c)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
【0049】
ポリエチレンに対する分散性の観点から、環状オレフィン系樹脂(c)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
【0050】
さらに、環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度は70℃~180℃であることが好ましく、特に100℃から180℃、より好ましくは115℃以上であり、さらに好ましくは150℃以下、特に140℃以下である。ガラス転移温度は、ISO 11357-3に準拠し測定される。好ましくはバリア層(I)に直接隣接した層に、ガラス転移温度が100℃以上、好ましくは115℃以上のエチレン・環状オレフィン共重合体を用いると、フィルムの流れ方向(MD)だけでなく、垂直方向(TD)においても卓越した直線易引裂性を発現することができるため、より好ましい。ガラス転移温度の異なる環状オレフィン系樹脂(c)を2種類以上用いてもよい。
【0051】
直線易引裂性に有効な分散状態としては、変性ポリオレフィン系樹脂(b)及び/又は非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の海に、MDに引き伸ばされた環状オレフィン系樹脂(c)が島として存在しているサブミクロンオーダーの海‐島構造である。
本発明のように、バリア層(I)に直接隣接した層に、環状オレフィン系樹脂(c)が含有されている場合、環状オレフィン樹脂のガラス転移温度が低すぎると冷却過程での環状オレフィン系樹脂の粘度が上がりにくくなり、MD配向が緩和することで上述の直線易引裂性に有効な分散状態が形成できないため、直線易引裂性を低下させる恐れがある。また、環状オレフィン系樹脂(c)のガラス転移温度が180℃を上回ると、剛性が高くなりすぎて押出特性や製膜安定性が悪化する懸念がある。
【0052】
また、JIS K7199を参考にし、オリフィス長さ10mm、オリフィス径1mm、バレル径9.55mm、オリフィス流入角フラットの条件で測定される、せん断速度122/sにおける変性ポリオレフィン系樹脂(b)の粘度ηと環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηの粘度比Rη=η/ηが230℃において0.2以上であることが好ましい。粘度比Rηが0.2以上であると、成形温度下での変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)との粘度バランスがとれ、易引裂性に有効な分散状態が形成され、易引裂性を向上させ易くなる。
【0053】
エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60のものであることが好ましい。より好ましくは15~35/85~65のものである。さらに好ましくは、20~30/80~70のものである。エチレンの含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、易引裂性、加工安定性、成形性、製袋適性が向上するため好ましい。
また、環状オレフィン系樹脂(c)の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、7,000~300,000であるものがより好ましい。
【0054】
環状オレフィン系樹脂(c)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス株式会社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。ノルボルネン系単量体の含有比率が前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007F、7010F、5013F、6013Fなどが好ましい。
【0055】
(2-3)非変性ポリオレフィン系樹脂(d)
非変性ポリオレフィン系樹脂(d)は、接着層(II)及び接着層(III)を構成する変性ポリオレフィン系樹脂(b)及び環状オレフィン系樹脂(c)以外の構成要素であり、一種又は二種以上の樹脂から構成されてもよい。非変性ポリオレフィン系樹脂(d)としては、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂が挙げられるが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0056】
ポリエチレン系樹脂としては、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたホモポリエチレンもしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、もしくは有機過酸化物を反応開始剤として重合される高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸3成分系共重合体等の中から選択される1種類もしくは2種類以上の混合物であってもよいが、環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から直鎖状ポリエチレン系樹脂が好ましい。また、該ポリエチレン系樹脂の密度も、一般的なポリエチレンの密度範囲である0.860g/cm~0.970g/cmであればいずれであってもよい。密度範囲は好ましくは0.860g/cm~0.935g/cmである。
エチレンと共重合するα-オレフィンの種類としては、通常炭素数3~8のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1などが挙げられる。
【0057】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等の他のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられ、いずれでも用いることができる。上記重合体の1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよいが、直鎖状ポリエチレン系樹脂と環状オレフィン系樹脂との界面強度の観点から、メタロセン触媒から得られた直鎖状のエチレン・プロピレン・ランダムブロック共重合体が50重量%以上含まれることが好ましい。市販されている樹脂としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
非変性ポリオレフィン系樹脂(d)のメルトフローレートについては、ポリエチレン系樹脂の場合は190℃において、またポリプロピレン系樹脂において230℃において、0.05~20g/10minが好ましく、より好ましくは0.1~10g/minであり、さらに好ましくは、0.1~3.5/minである。メルトフローレートが0.1~3.5/10minの場合、環状オレフィン系樹脂との粘度バランスが良好となるため、接着層(II)及び接着層(III)中における環状オレフィン系樹脂がMDに引き伸ばされた分散構造を形成し、直線引裂性に優れるため、より好ましい。
また、せん断速度122/sにおける環状オレフィン系樹脂(c)の粘度ηと非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の粘度ηの粘度比η/ηが190℃~250℃において0.2以上であることにより、直線引裂性により優れる多層フィルムが提供される。
【0058】
(3)樹脂層(IV)及び樹脂層(V)
本発明では、極性を有する樹脂(a)を主成分とするバリア層(I)と、該バリア層に隣接する両側に、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン系樹脂(b)と環状オレフィン系樹脂(c)を少なくとも含有する接着層(II)と接着層(III)を各々積層させた積層体有する少なくとも3層以上の多層フィルムにおいて、更に好ましくは、他の樹脂層として、樹脂層(IV)、樹脂層(V)を含むことができる。樹脂層(IV)及び樹脂層(V)は、ポリオレフィン系樹脂(e)を主成分とする層であり、各々の樹脂層におけるポリオレフィン系樹脂(e)は下記に記述する範囲内であれば同じであっても異なってもよい。
なお、樹脂層(IV)及び樹脂層(V)には、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、滑材、熱劣化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、離型剤などの添加剤を添加することが出来る。また、上記環状オレフィン系樹脂を改質材として添加することもできる。
【0059】
(3-1)ポリオレフィン系樹脂(e)
ポリオレフィン系樹脂(e)としては、ポリオレフィン系樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂、上記変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0060】
ポリエチレン系樹脂としては、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたホモポリエチレンもしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、もしくは有機過酸化物を反応開始剤として重合される高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸3成分系共重合体等の中から選択される1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよい。また、該ポリエチレン系樹脂の密度も、一般的なポリエチレンの密度範囲である0.860g/cm~0.970g/cmであればいずれであってもよい。エチレンと共重合するα-オレフィンの種類としては、前記、非変性ポリオレフィン系樹脂(d)で記載したものと同様である。
また、該ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から20g/10min以下が好ましい。MFRが20g/10min以下であれば、溶融張力の上昇により製膜安定性が向上し易い。
【0061】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等の他のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられ、いずれでも用いることができる。上記重合体の1種類もしくは2種類以上のブレンド物であってもよいが、接着層(II)及び接着層(III)との層間強度の観点から、メタロセン触媒から得られた直鎖状のエチレン・プロピレン・ランダムブロック共重合体が50重量%以上含まれることが好ましい。市販されている樹脂としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
また、該ポリプロピレン系樹脂の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、高温成形下での製膜安定性の観点から15g/10min以下が好ましい。MFRが15g/10min以下であると、溶融張力の上昇により製膜安定性が向上し易い。
【0062】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、上述(2-1)に記載した範囲内のものであればいずれであってもよい。
【0063】
<バリア性易引裂共押出多層フィルム>
本発明の一態様におけるバリア性易引裂共押出多層フィルムは、前述したように、少なくとも3層以上の層からなり、各々、特定のバリア層(I)と該バリア層に隣接する両側に、接着層(II)及び接着層(III)を積層させた積層体、すなわち、(II)/(I)/(III)という積層構造を有する。さらに、接着層(II)及び接着層(III)の合計厚みtとフィルム全体厚みTの厚み比R(t/T)が0.10以上となるように積層させたものは、易引裂性及び直線引裂性に優れるためより好ましい。このように、該バリア性易引裂共押出多層フィルムは、特定のバリア層(I)と該バリア層に隣接する両側に接着層(II)及び接着層(III)を積層させた積層体を有し、特定の厚み比Rを満足していればよいため、例えば、樹脂層(IV)及び樹脂層(V)を、(IV)/(II)/(I)/(III)/(V)の順に積層させた5層構成フィルムなど、層の積層数に特段制限はない。例えば、樹脂層(IV)と樹脂層(V)で融点差を設ければ、フィルム内外層での融点差を大きくとることが出来るため、各種充填機械への適応範囲が広がり、低温度でのヒートシールや高速充填等が可能となる。
【0064】
バリア性易引裂共押出多層フィルムの厚みとしては、20~200μmのものが好ましい。多層フィルムの厚さが20μm以上であれば、優れた二次成形性が得られる。また、多層フィルムの厚さが30~200μmの範囲であれば、最表面に露出する層同士をヒートシールすることにより、包装材として使用できる。
本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムは、共押出法により、バリア層(I)、接着層(II)、接着層(III)を直接積層することにより製造される。
【0065】
例えば、バリア層(I)に用いるポリアミド系樹脂と、接着層(II)及び接着層(III)に用いる変性ポリオレフィン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂と、樹脂層(IV)及び樹脂層(V)に用いるポリオレフィン系樹脂とを、それぞれ別の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(IV)/(II)/(I)/(III)/(V)の順の位置関係になるよう積層した後、空冷インフレーションや水冷インフレーション、Tダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形にする共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
【0066】
上記製造方法で製造されたバリア性易引裂共押出多層フィルムは、易引裂性を付与するための一般的な延伸工程などの2次加工を必要とせず、共押出法により製膜加工のみで易引裂性を発現することが特徴である。これは、例えば、上記特定の層構成にて共押出しインフレーション成形により製膜をすると、接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂がフィルムの流れ方向(MD)に引き伸ばされた状態で冷却固化された分散構造を形成することに起因する。したがって、共押出し時の加工温度下におけるポリエチレン系樹脂と環状オレフィンとの粘度バランスが分散構造に大きく影響するため、特に加工温度に合わせた最適な環状オレフィン系樹脂を選択する必要がある。例えば、ポリアミド6/66共重合樹脂をバリア層(I)に用いる場合、共押出法での加工温度は210~250℃程度に達するため、接着層(II)及び接着層(III)に用いる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は比較的高い100℃~140℃がより好ましい。
【0067】
また、本発明の別の一態様におけるバリア性易引裂共押出多層フィルムは、特定のバリア層(I)と、該バリア層に隣接して、接着層(II)を少なくとも積層させた積層体、すなわち(II)/(I)という積層構造を有する。当該フィルムにおいて、層構成、層の積層数などは、バリア層(I)に隣接する接着層のうち一方を含有する必要がないこと以外は、バリア層(I)の両側に接着層を有するフィルムと同様である。
【0068】
3. 包装材
本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、医療器具、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
【0069】
前記包装袋は、本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムの内層同士を重ねてヒートシールすることにより形成した包装袋が挙げられる。2枚の該バリア性易引裂共押出多層フィルムを所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填した後、ヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。また、同様に2枚の該バリア性易引裂共押出多層フィルムを所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねてパウチ状に製袋した後、開口部より内容物を充填した後、ヒートシールして密封することでスタンディングパウチ包装袋として用いることもできる。さらに、1枚のバリア性易引裂共押出多層フィルムを用いて、横ピロー包装、縦ピロー包装の形態でも用いることができる。さらに、該バリア性易引裂共押出多層フィルムの内層とヒートシール可能な別のフィルムを重ねてヒートシールすることにより包装袋を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA等のフィルムを用いることができる。
【0070】
本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムを用いた包装材には、初期の引裂強度を弱め、開封性を向上するためにVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成すると好ましい。ノッチ等の形成部としては、シール部や包装材の上下端部、左右折り目部、ピロー包装の背張り部等が挙げられる。包装材の形態とノッチ形成部に応じて、ノッチ周囲にノッチを囲むようにして三日月状等の形状のシール部を設けることで、内部の密閉性を確保できる。
【0071】
また、前記包装容器としては、本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムを二次成形することにより得られる深絞り成形品(上部に開口部がある底材)が挙げられ、代表的なものとして食品用途の真空包装袋のボトム材やブリスターパックの底材などが挙げられる。このボトム材や底材を密封する蓋材は、ボトム材や底材とヒートシールできるものであれば特に材質は問わないが、双方を同時に引き裂いて開封できることから、本発明のバリア性易引裂共押出多層フィルムを蓋材として用いることが好ましい。
上記の二次成形方法としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等が挙げられる。これらの中でも、フィルムあるいはシートを包装機上にてインラインで成形し、内容物を充填できるため真空成形が好ましい。
【0072】
なお、一般的に包装材の流れ方向(MD)は、充填時や製袋時のライン方向に平行な軸であり、且つ原反フィルムの流れ方向(MD)に対応する。例えば、横ピロー包装材であれば、背張りの長尺方向が包装材の流れ方向(MD)に対応し、且つフィルムの流れ方向(MD)に対応する。
【実施例
【0073】
以下に、本発明の実施例と比較例を示す。なお、以下の実施例において、「実施例10」「実施例11」「実施例12」「実施例13」「実施例14」は各々、「参考例1」「参考例2」「参考例3」「参考例4」「参考例5」と読み替えるものとする。
<使用原料>
(1-1)極性を有する樹脂(a)
・PA6/66共重合体、密度1130kg/m、粘度数246cm/g(DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス社製「ノバミッド 2030CA」)
・エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレンコンテント38mol%、MFR(210℃、2160g)4.0g/10min、密度1.17g/cm(日本合成化学工業株式会社製「ソアノール ET3803RB」)
(1-2)変性ポリオレフィン系樹脂(b)
・変性PE1:マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル株式会社製)密度0.920g/cm、MFR3g/10min、粘度526Pa・s(測定温度230℃、せん断速度122/s)
・変性PE2:マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル株式会社製「モディックM522」)密度0.920g/cm、MFR1.2g/10min、粘度1260Pa・s(測定温度230℃、せん断速度122/s)
(1-3)環状オレフィン系樹脂(c)
・COC1:8007F:ガラス転移温度78℃(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS 8007F-600」)
・COC2:7010F:ガラス転移温度110℃(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS7010F-600」)
・COC3:6013F:ガラス転移温度138℃(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS6013F-04」)
・COC4:5013F:ガラス転移温度134℃(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS5013F-04」)
(1-4)非変性ポリオレフィン系樹脂(d)
・LLDPE1:UF320:密度0.922g/cm、MFR0.9g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UF320」)
・LLDPE2:NC566A:密度0.918g/cm、MFR3.8g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックス NC566A」)
(1-5)ポリオレフィン系樹脂(e)
・LLDPE3:NF444A:密度0.912g/cm、MFR2.0g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックス NF444A」)
・LLDPE1:UF320:密度0.922g/cm、MFR0.9g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UF320」)
・LDPE1:LE306:密度0.919g/cm、MFR1.0g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLD LE306」)
・LLDPE4:UF425:密度0.926g/cm、MFR0.8g/10min(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UF425」)
【0074】
<フィルム成形>
(2-1)共押出5層空冷インフレーションフィルム成形
成形機:5種5層空冷インフレーション成形機(株式会社プラコー製)
押出機:φ40mm×5機
ダイス:φ150mm(スタックダイ)
【0075】
<物性評価方法>
(3-1)粘度比Rη
JIS K7199を参考にし、以下の装置を用いて溶融粘度を測定した。得られた溶融粘度のうち、せん断速度122/sの値を用いて粘度比Rηを算出した。
装置:キャピログラフ1B(株式会社東洋精機製作所製)
オリフィス長さ:10mm
オリフィス径:1mm
バレル径:9.55mm
オリフィス流入角:フラット
測定温度:230℃
【0076】
(3-2)ずれ量L
直線引裂性の指標として、ずれ量Lを以下に記載の方法で測定した。
(3-2-1)試験片
フィルムの流れ方向(MD)に沿って50mm、その垂直方向(TD)に沿って250mmの短冊状試験片を切り出し、50mmの短辺を25mmずつ等分するように、TDに沿った標線を試験片上に書き込む。加えて、一方の短辺から標線に沿って50mmの切れ込みを入れる。
(3-2-2)測定用治具
長さ250mm、幅30mm、厚み4mm程度の板紙を使用する。なお、本試験では、厚み1mm程度の厚紙を4枚積層させた。
(3-2-3)試験機
装置:株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機
チャック間距離:65mm
引張速度:500mm/min
測定環境:温度23℃、湿度50%
(3-2-4)ずれ量Lの測定
短冊状試験片をその標線が、測定用治具の長辺の際に沿うように治具上にテープ等で固定する。切れ込みの入った二股の試験片端部において、治具に固定された側を試験機上部のチャックへ、他方を試験機下部のチャックへ、試験機の引張方向に対して45°傾けた状態で固定する。既定の引張速度で試験片を引き裂き、引き裂き末端部の標線からのずれ量Lをスケールにて計測する。ずれ量Lが小さいほど、標線に沿って直線的に引裂がされていることを示す。
【0077】
(3-3)エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128-2を参考にし、以下の装置を用いてエルメンドルフ引裂強度を評価した。なお、測定方向はフィルムの流れ方向に対するその垂直方向(TD)の値である。
装置:デジタルエルメンドルフ引裂試験機 型式SA(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
【0078】
(4)直線易引裂性
前記(3-2)のずれ量L及び、(3-3)のエルメンドルフ引裂強度の結果から、下記の通り、直線易引裂性を評価した。
直線易引裂性◎:ずれ量25mm未満及び引裂強度30N/mm以下
直線易引裂性○:ずれ量25mm以上及び引裂強度30N/mm以下
直線易引裂性×:ずれ量25mm以上及び引裂強度30N/mm超え
【0079】
(5)低カール性
フィルム全体のカール性を目視で確認し、カールが小さいものは「○」、カールが大きいものは「×」とした。
【0080】
(実施例1)
上記、使用原料を用いて、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みは樹脂層(IV)側から30/10/20/10/30μmに設定し、ブロー比は1.4とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.20とし、接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は110℃とした。バリア層(I)にはPA6/66共重合体である2030CAを用いた。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例2)
上記、実施例1の接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を138℃とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0082】
(実施例3)
上記、実施例1の各層厚みを接着層(IV)側から30/30/30/30/30μmに設定し、厚み比Rは0.40とした5層インフレーションフィルムを得た。ブロー比は1.2とした。環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の190℃~250℃における粘度比η/ηは0.26~2.4とした。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
上記、実施例1の各層厚みを接着層(IV)側から40/10/30/10/40μmに設定し、厚み比Rは0.15とした5層インフレーションフィルムを得た。環状オレフィン系樹脂(c)と非変性ポリオレフィン系樹脂(d)の190℃~250℃における粘度比η/ηは0.26~2.4とした。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0084】
(実施例5)
上記、実施例2の各層厚みを接着層(IV)側から30/10/10/10/30μmに設定し、厚み比Rは0.22とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0085】
(実施例6)
上記、実施例2の各層厚みを接着層(IV)側から20/20/10/20/20μmに設定し、厚み比Rは0.44とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例7)
上記、実施例2の各層厚みを接着層(IV)側から20/10/10/10/20μmに設定し、厚み比Rは0.29とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0087】
(実施例8)
上記、実施例2の各層厚みを接着層(IV)側から20/20/20/20/20μmに設定し、厚み比Rは0.40とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
【0088】
(実施例9)
上記、使用原料を用いて、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みは樹脂層(IV)側から36/15/8/15/36μmに設定し、ブロー比は1.8とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.27とし、接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は138℃とした。バリア層(I)にはエチレン・ビニルアルコール共重合体であるET3803RBを用いた。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
(実施例10)
上記、実施例1の接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を78℃とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
(実施例11)
上記、実施例7の非変性ポリオレフィン系樹脂(d)をLLDPE2(NC566A)に変更した5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
(実施例12)
上記、実施例11の接着層(II)及び接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を134℃とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
(実施例13)
上記、実施例9の各層厚みを接着層(IV)側から47/4/8/4/47μmに設定し、厚み比Rは0.07とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
(実施例14)
上記、使用原料を用いて、バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた3層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みはバリア層(I)側から20/20/20μmに設定し、ブロー比は1.4とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.29とし、接着層(III)中の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は138℃とした。バリア層(I)にはPA6/66共重合体である2030CAを用いた。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表2に示す。
【0089】
(比較例1)
上記、使用原料を用いて、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みは樹脂層(IV)側から30/10/20/10/30μmに設定し、ブロー比は1.4とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.2とし、接着層(II)及び接着層(III)には環状オレフィン系樹脂(c)を用いていない。バリア層(I)にはPA6/66共重合体である2030CAを用いた。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0090】
(比較例2)
上記、比較例1の各層厚みを接着層(IV)側から30/30/30/30/30μmに設定し、厚み比Rは0.4とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0091】
(比較例3)
上記、使用原料を用いて、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みは樹脂層(IV)側から47/4/8/4/47μmに設定し、ブロー比は1.8とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.07とし、接着層(II)及び接着層(III)には環状オレフィン系樹脂(c)を用いていない。バリア層(I)にはエチレン・ビニルアルコール共重合体であるET3803RBを用いた。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0092】
(比較例4)
上記、使用原料を用いて、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。各層の厚みは樹脂層(IV)側から20/20/20/20/20μmに設定し、ブロー比は1.4とした。フィルム全体に対する接着層の厚み比Rは0.4とし、環状オレフィン系樹脂(c)をバリア層(I)に隣接しない樹脂層(IV)及び樹脂層(V)に用いた。樹脂層(IV)及び樹脂層(V)中の環状オレフィン系樹脂(c)の濃度は29.4重量%とした。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0093】
(比較例5)
上記、比較例4の各層厚みを接着層(IV)側から30/30/30/30/30μmに設定し、厚み比Rは0.4とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0094】
(比較例6)
上記、比較例4の各層厚みを接着層(IV)側から30/5/30/5/30μmに設定し、厚み比Rは0.1とした5層インフレーションフィルムを得た。樹脂種や層構成の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
(実施例15、比較例7)
バリア層(I)にPA6/66共重合体を用いて、本願発明による実施例15(前記実施例5と同一)と、接着層(II)及び(III)に、環状オレフィン系樹脂が含まれていない通常の接着性樹脂のみによる比較例7を対比して示す。
各々、上記、使用原料を用いて、表3に示す樹脂種や層構成により、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2-1)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。評価結果を表4に示す。
【0099】
(実施例16、比較例8)
バリア層(I)にエチレン・ビニルアルコール樹脂を用いて、本願発明による実施例16と、接着層(II)及び(III)に、環状オレフィン系樹脂が含まれていない通常の接着性樹脂のみによる比較例8(前記比較例3と同一)を対比して示す。
各々、上記、使用原料を用いて、表3に示す樹脂種や層構成により、樹脂層(IV)/接着層(II)/バリア層(I)/接着層(III)/樹脂層(V)の順序で前記(2-1)記載の共押出空冷インフレーション法により積層させた5層インフレーションフィルムを得た。評価結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
(評価)
表1~3から明らかなように比較例1~3の5層フィルムは、環状オレフィン系樹脂を用いていないためTD引裂き時のずれ量が大きいだけでなく、引裂強度が高い。また、比較例4~6の5層フィルムは、環状オレフィン系樹脂を用いているが、バリア層に隣接しない層に含有しているため、TD引裂き時のずれ量が大きいだけでなく、引裂強度が高い。これは、環状オレフィン系樹脂含有層とバリア層との間に一定の距離が存在するため、直線易引裂性を発現する環状オレフィン系樹脂含有層の破壊が、十分にバリア層まで伝播しないためと考えられる。
一方、本発明に基づく実施例1~13においては、バリア層に隣接する層の両側に本願発明の特徴である環状オレフィン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着層を用いているため、引裂強度が低く、易引裂性に優れる。前述の比較例4~6と比較すると、易引裂性の観点からは、バリア層に隣接する層に環状オレフィン系樹脂を含有することが重要であると考えられる。さらに、実施例1及び実施例10から明らかなように、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を100℃以上、好ましくは115℃以上とすると、易引裂性に優れるだけでなく、直線引裂性にも優れる。また、実施例7及び実施例11、実施例12から明らかなように、特定のMFR領域の非変性ポリオレフィン系樹脂(d)を選択することにより、易引裂性に優れるだけでなく、直線引裂性にも優れる。これら、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度及び非変性ポリオレフィン系樹脂のMFRについては、特定の領域の樹脂成分を用いることにより、直線易引裂性に有利なモルフォロジーを形成することが可能となる。加えて、実施例9及び実施例13から明らかなように、接着層のフィルム全体に対する厚み比を特定の比率以上とすることで、易引裂性に優れるだけでなく、直線引裂性にも優れる。これは、直線易引裂性を発現する環状オレフィン系樹脂含有層の破壊挙動が、フィルム全体としての引裂挙動を律速する臨界点を意味している。
実施例14は、バリア層に隣接する層に、ガラス転移温度が115℃以上の環状オレフィン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂を少なくとも含有する接着層(III)を用いている。バリア層(I)が表面層であるため低カール性は十分ではないが、易引裂性と直線引裂き性に優れた積層体が得られている。
【0102】
実施例15と比較例7、実施例16と比較例8の対比によれば、本願発明における積層体と、接着層に環状オレフィン系樹脂を含有しない積層体を対比すると、本願実施例の積層体の方が、MD方向及びTD方向における引張弾性率が高く、剛性に優れていること、エレメンドルフ引裂強度(TD)においては、本願実施例の方が低いため、易引裂性を示すこと、また、水蒸気透過率については、本願実施例の方が低いため、水蒸気バリア性に優れていることが確認される。
【0103】
以上より、本発明に基づく実施例1~16においては、バリア層を有するためにバリア性に優れるだけでなく、易引裂性に優れ、さらに実施例1~9においては、直線引裂性にも優れるため、直線易引裂性や易開封性が要求されるバリア性易引裂フィルム及び易引裂包装材には好適である。