(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240730BHJP
B41J 2/15 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/15
B41J2/01 213
(21)【出願番号】P 2019180569
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】前平 洋利
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012374(JP,A)
【文献】特開2002-307671(JP,A)
【文献】特開2010-162804(JP,A)
【文献】特開2006-168370(JP,A)
【文献】特開平08-244253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015733(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1495570(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出装置であって、
副走査方向の位置が互いに異なるとともに第1液の液滴である第1種液滴を吐出するように構成されたV個(Vは2以上の整数)の第1種ノズルと、前記副走査方向の位置が互いに異なるとともに第2液の液滴である第2種液滴を吐出するように構成されたW個(Wは1以上V未満の整数)の第2種ノズルと、を有するヘッドユニットと、
記録媒体に対して前記副走査方向に垂直な主走査方向に前記ヘッドユニットを相対的に移動させる主走査を実行する移動装置と、
前記ヘッドユニットに対して前記副走査方向に前記記録媒体を搬送する副走査を実行する搬送装置と、
前記ヘッドユニットと前記移動装置と前記搬送装置とを制御することによって、前記ヘッドユニットを前記記録媒体に対して相対的に前記主走査方向に移動させつつ前記記録媒体に液滴を吐出してドットを形成する形成処理と、前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送処理とを、それぞれ複数回実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
複数回の前記形成処理にて第1の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である先行第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である先行第2種ドット領域と、を示す第1データを生成する第1データ生成処理と、
前記第1の画像の形成の後に複数回の前記形成処理にて第2の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である後続第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である後続第2種ドット領域と、を示す第2データを生成する第2データ生成処理と、
を実行し、
前記第1データ生成処理は、
前記先行第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第1種重複範囲を特定する第1重複範囲特定処理と、
前記第1種重複範囲内にて前記先行第1種ドット領域に含まれない第1種除外領域を特定する第1種除外領域特定処理と、
前記先行第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第2種重複範囲を決定する第2重複範囲決定処理と、
前記第2種重複範囲内にて前記先行第2種ドット領域に含まれない第2種除外領域を決定する第2種除外領域決定処理と、
を含み、
前記第2データ生成処理は、
前記第1種重複範囲内にて、前記第1種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第1種ドット領域と決定する第1後続決定処理と、
前記第2種重複範囲内にて、前記第2種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第2種ドット領域と決定する第2後続決定処理と、
を含み、
前記制御部は、前記第1データによる前記形成処理と前記第2データによる前記形成処理との間で、前記第1データによる前記複数回の前記形成処理の間の前記搬送処理による搬送量と前記第2データによる前記複数回の前記形成処理の間の前記搬送処理による搬送量とは異なる搬送量で、前記搬送処理を実行する、
液滴吐出装置。
【請求項2】
液滴吐出装置であって、
副走査方向の位置が互いに異なるとともに第1液の液滴である第1種液滴を吐出するように構成されたV個(Vは2以上の整数)の第1種ノズルと、前記副走査方向の位置が互いに異なるとともに第2液の液滴である第2種液滴を吐出するように構成されたW個(Wは1以上V未満の整数)の第2種ノズルと、を有するヘッドユニットと、
記録媒体に対して前記副走査方向に垂直な主走査方向に前記ヘッドユニットを相対的に移動させる主走査を実行する移動装置と、
前記ヘッドユニットに対して前記副走査方向に前記記録媒体を搬送する副走査を実行する搬送装置と、
前記ヘッドユニットと前記移動装置と前記搬送装置とを制御することによって、前記ヘッドユニットを前記記録媒体に対して相対的に前記主走査方向に移動させつつ前記記録媒体に液滴を吐出してドットを形成する形成処理と、前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送処理とを、それぞれ複数回実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
1回または複数回の前記形成処理にて第1の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である先行第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である先行第2種ドット領域と、を示す第1データを生成する第1データ生成処理と、
前記第1の画像の形成の後に1回または複数回の前記形成処理にて第2の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である後続第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である後続第2種ドット領域と、を示す第2データを生成する第2データ生成処理と、
を実行し、
前記第1データ生成処理は、
前記先行第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第1種重複範囲を特定する第1重複範囲特定処理と、
前記第1種重複範囲内にて前記先行第1種ドット領域に含まれない第1種除外領域を特定する第1種除外領域特定処理と、
前記先行第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第2種重複範囲を決定する第2重複範囲決定処理と、
前記第2種重複範囲内にて前記先行第2種ドット領域に含まれない第2種除外領域を決定する第2種除外領域決定処理と、
を含み、
前記第2データ生成処理は、
前記第1種重複範囲内にて、前記第1種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第1種ドット領域と決定する第1後続決定処理と、
前記第2種重複範囲内にて、前記第2種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第2種ドット領域と決定する第2後続決定処理と、
を含み、
前記第1種重複範囲内に前記第1種液滴のドットを形成する複数回の前記形成処理は、前記V個の第1種ノズルのうち前記副走査方向に平行な方向の端に位置する第1種ノズルを使用せずに前記第1種重複範囲内に前記第1種液滴の前記ドットを形成する形成処理を含む、
液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出装置であって、
前記V個の第1種ノズルの前記副走査方向のV個の位置は、等間隔に第1ピッチで配置され、
前記W個の第2種ノズルの前記副走査方向のW個の位置は、等間隔に第2ピッチで配置され、
前記第1種ノズルの数Vは、前記第2種ノズルの数WのF倍(Fは2以上の整数)であり、
前記第2ピッチは、前記第1ピッチのF倍である、
液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、
前記制御部は、
前記第1データ生成処理において、前記先行第2種ドット領域における前記副走査方向の解像度が、前記先行第1種ドット領域における前記副走査方向の解像度と同じとなるように、前記第1データを生成し、
前記第2データ生成処理において、前記後続第2種ドット領域における前記副走査方向の解像度が、前記後続第1種ドット領域における前記副走査方向の解像度と同じとなるように、前記第2データを生成する、
液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、
前記制御部は、
前記第1データ生成処理において、前記先行第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と前記先行第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲とが一致するように、前記第1データを生成し、
前記第2データ生成処理において、前記後続第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と前記後続第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲とが一致するように、前記第2データを生成する、
液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、
前記制御部は、前記第2重複範囲決定処理において、前記第2種重複範囲が、前記第1種重複範囲と同じとなるように、前記第2種重複範囲を決定する、
液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、
前記制御部は、
前記第1種除外領域特定処理において、前記第1種除外領域を、予め決められた第1パターンを用いて特定し、
前記第2種除外領域決定処理において、前記第2種除外領域を、予め決められた第2パターンを用いて特定する、
液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置であって、
前記第2パターンは、前記第1パターンとは異なっている、
液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数のノズルを有するヘッドユニットを主走査方向に移動させつつ記録媒体に液滴を吐出してドットを形成する形成処理と、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送処理とを、それぞれ複数回実行することでドットパターンを形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルを有するヘッドユニットのノズルからインクを吐出して画像を印刷するプリンタが知られている。プリンタは、例えば、画像の一部分であるバンドの印刷を繰り返すことによって画像の全体を印刷する。特許文献1では、バンドとバンドとの境目の白スジや濃度ムラが生ずるのを防ぐとともに、画像形成速度が遅くならないようにするための技術が提案されている。具体的には、各バンドは、副走査方向に沿って隣接する他のバンドの端部の画素パターンと相補的な画素パターンが形成された少なくとも一つの端部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-244253号公報
【文献】特開2013-208731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数種類のインクが、印刷に利用され得る。ここで、ノズルの総数が、インクの種類に応じて異なる場合がある。この場合、特定のインクに適切な画素パターンを他のインクに適用することが難しい場合があった。このような課題は、インクを用いて画像を印刷する技術に限らず、液滴を吐出してドットを形成する技術に共通する課題であった。
【0005】
本明細書は、第1液と第2液との間でノズルの数が異なる場合に、第1液の複数のドットと第2液の複数のドットとを適切に形成する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液滴吐出装置であって、副走査方向の位置が互いに異なるとともに第1液の液滴である第1種液滴を吐出するように構成されたV個(Vは2以上の整数)の第1種ノズルと、前記副走査方向の位置が互いに異なるとともに第2液の液滴である第2種液滴を吐出するように構成されたW個(Wは1以上V未満の整数)の第2種ノズルと、を有するヘッドユニットと、記録媒体に対して前記副走査方向に垂直な主走査方向に前記ヘッドユニットを相対的に移動させる主走査を実行する移動装置と、前記ヘッドユニットに対して前記副走査方向に前記記録媒体を搬送する副走査を実行する搬送装置と、前記ヘッドユニットと前記移動装置と前記搬送装置とを制御することによって、前記ヘッドユニットを前記記録媒体に対して相対的に前記主走査方向に移動させつつ前記記録媒体に液滴を吐出してドットを形成する形成処理と、前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送処理とを、それぞれ複数回実行する制御部と、を備え、前記制御部は、1回または複数回の前記形成処理にて第1の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である先行第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である先行第2種ドット領域と、を示す第1データを生成する第1データ生成処理と、前記第1の画像の形成の後に1回または複数回の前記形成処理にて第2の画像を形成するためのデータであって、前記第1種液滴が吐出される領域である後続第1種ドット領域と、前記第2種液滴が吐出される領域である後続第2種ドット領域と、を示す第2データを生成する第2データ生成処理と、を実行し、前記第1データ生成処理は、前記先行第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第1種重複範囲を特定する第1重複範囲特定処理と、前記第1種重複範囲内にて前記先行第1種ドット領域に含まれない第1種除外領域を特定する第1種除外領域特定処理と、前記先行第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲のうち、前記後続第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲と重複する範囲である第2種重複範囲を決定する第2重複範囲決定処理と、前記第2種重複範囲内にて前記先行第2種ドット領域に含まれない第2種除外領域を決定する第2種除外領域決定処理と、を含み、前記第2データ生成処理は、前記第1種重複範囲内にて、前記第1種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第1種ドット領域と決定する第1後続決定処理と、前記第2種重複範囲内にて、前記第2種除外領域ではないドット領域を除く領域を前記後続第2種ドット領域と決定する第2後続決定処理と、を含む、液滴吐出装置。
【0008】
この構成によれば、第1重複範囲には、先行第1種ドット領域に含まれるドットと後続第1種ドット領域に含まれるドットとが配置がされ、第2重複範囲には、先行第2種ドット領域に含まれるドットと後続第2種ドット領域に含まれるドットとが配置がされるので、V個の第1種ノズルとW個の第2種ノズルとを有するヘッドユニットを利用して、第1種液滴と第2種液滴にて適切な画像の形成が可能である。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の液滴吐出装置であって、前記V個の第1種ノズルの前記副走査方向のV個の位置は、等間隔に第1ピッチで配置され、前記W個の第2種ノズルの前記副走査方向のW個の位置は、等間隔に第2ピッチで配置され、前記第1種ノズルの数Vは、前記第2種ノズルの数WのF倍(Fは2以上の整数)であり、前記第2ピッチは、前記第1ピッチのF倍である、液滴吐出装置。
【0010】
この構成によれば、第1種ノズルの数Vが第2種ノズルの数WのF倍であり、第2種ノズルの第2ピッチが第1種ノズルの第1ピッチのF倍である場合に、第1液の複数のドットと第2液の複数のドットとの適切な形成が可能である。
【0011】
[適用例3]適用例1または2に記載の液滴吐出装置であって、前記制御部は、前記第1データ生成処理において、前記先行第2種ドット領域における前記副走査方向の解像度が、前記先行第1種ドット領域における前記副走査方向の解像度と同じとなるように、前記第1データを生成し、前記第2データ生成処理において、前記後続第2種ドット領域における前記副走査方向の解像度が、前記後続第1種ドット領域における前記副走査方向の解像度と同じとなるように、前記第2データを生成する、液滴吐出装置。
【0012】
この構成によれば、先行第1種ドット領域と先行第2種ドット領域の副走査方向の解像度が同じであり、後続第1種ドット領域と後続第2種ドット領域の副走査方向の解像度が同じとなるので、第1種液滴と第2種液滴にて同じ解像度の画像の形成が可能である。
【0013】
[適用例4]適用例1から3のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、前記制御部は、前記第1データ生成処理において、前記先行第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と前記先行第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲とが一致するように、前記第1データを生成し、前記第2データ生成処理において、前記後続第1種ドット領域の前記副走査方向の範囲と前記後続第2種ドット領域の前記副走査方向の範囲とが一致するように、前記第2データを生成する、液滴吐出装置。
【0014】
この構成によれば、先行第1種ドット領域と先行第2種ドット領域との間で副走査方向の範囲が同じであり、後続第1種ドット領域と後続第2種ドット領域との間で副走査方向の範囲が同じとなるよう、第1種液滴と第2種液滴にて画像を形成できる。
【0015】
[適用例5]適用例1から4のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、前記制御部は、前記第2重複範囲決定処理において、前記第2種重複範囲が、前記第1種重複範囲と同じとなるように、前記第2種重複範囲を決定する、液滴吐出装置。
【0016】
この構成によれば、第2種重複範囲の副走査方向の範囲が、第1種重複範囲の副走査方向の範囲と同じであるように、第1種液滴と第2種液滴にて画像の形成が可能である。
【0017】
[適用例6]適用例1から5のいずれかに記載の液滴吐出装置であって、前記制御部は、前記第1種除外領域決定処理において、前記第1種除外領域を、予め決められた第1パターンを用いて特定し、前記第2種除外領域決定処理において、前記第2種除外領域を、予め決められた第2パターンを用いて特定する、液滴吐出装置。
【0018】
この構成によれば、先行第1種ドット領域に含まれない領域と、先行第2種ドット領域に含まれない領域とを、予め決められたパターンによって決定できる。
【0019】
[適用例7]適用例6に記載の液滴吐出装置であって、前記第2パターンは、前記第1パターンとは異なっている、液滴吐出装置。
【0020】
この構成によれば、第1種液滴と第2種液滴とのそれぞれに応じたパターンを用いることができる。
【0021】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷実行部の制御方法および制御装置、印刷データの生成方法および生成装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】液滴吐出装置の実施例である複合機200の説明図である。
【
図4】印刷実行部400による印刷の概要の説明図である。
【
図6】印刷データ生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】重複範囲の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】重複範囲の印刷に利用されるパスとノズルの位置との説明図である。
【
図9】(A)は、第1マスクデータ234の説明図である。(B)は、第2マスクデータ236の説明図である。
【
図12】パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。
【
図13】パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。
【
図14】(A)-(C)は、パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。
【
図15】マスクデータの別の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、液滴吐出装置の実施例である複合機200の説明図である。複合機200は、制御部299と、スキャナ部280と、印刷実行部400と、を有している。制御部299は、プロセッサ210と、記憶装置215と、画像を表示する表示部240と、ユーザによる操作を受け入れる操作部250と、通信インタフェース270と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。記憶装置215は、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、を含んでいる。
【0024】
プロセッサ210は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。
【0025】
不揮発性記憶装置230は、プログラム232と、第1マスクデータ234と、第2マスクデータ236と、を格納している。プロセッサ210は、プログラム232を実行することによって、種々の機能を実現する(詳細は、後述)。プロセッサ210は、プログラム232の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220、不揮発性記憶装置230のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、プログラム232とマスクデータ234、236とは、複合機200の製造者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置230に予め格納されている。マスクデータ234、236の詳細については、後述する。
【0026】
表示部240は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示する装置である。操作部250は、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネル、ボタン、レバーなどの、ユーザによる操作を受け取る装置である。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。通信インタフェース270は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、USBインタフェース、有線LANインタフェース、IEEE802.11の無線インタフェース)。
【0027】
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に原稿等の対象物を読み取る読取装置である。スキャナ部280は、読み取った画像(「読取画像」と呼ぶ)を表す読取データを生成する(例えば、RGBのビットマップデータ)。
【0028】
印刷実行部400は、用紙(印刷媒体の一例)上に画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷実行部400は、ヘッドユニット410(単にヘッド410とも呼ぶ)と、ヘッド駆動部420と、移動装置430と、搬送装置440と、インク供給部450と、これらの要素410、420、430、440、450を制御する制御回路490と、を有している。印刷実行部400は、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックKとのそれぞれのインクを用いるインクジェット式の印刷装置である。制御回路490は、例えば、モータなどを駆動する専用の電気回路で構成されている。制御回路490は、コンピュータを含んでもよい。
【0029】
制御部299は、ユーザによって選択された画像データを用いて印刷データを生成し、生成した印刷データを用いて印刷実行部400に画像を印刷させることができる。ユーザは、読取データや、外部記憶装置(例えば、通信インタフェース270に接続されたメモリーカード)に格納された画像データを、選択できる。また、制御部299は、複合機200に接続された他の外部装置によって供給された印刷データを用いて、印刷実行部400に画像を印刷させることができる。
【0030】
図2は、印刷実行部400の概略図である。移動装置430は、キャリッジ433と、摺動軸434と、ベルト435と、複数個のプーリ436、437と、を備えている。キャリッジ433は、ヘッド410を搭載する。摺動軸434は、キャリッジ433を主走査方向(Dx方向に平行な方向)に沿って往復動可能に保持する。ベルト435は、プーリ436、437に巻き掛けられ、一部がキャリッジ433に固定されている。プーリ436は、図示しない主走査モータの動力によって回転する。主走査モータがプーリ436を回転させると、キャリッジ433が摺動軸434に沿って移動する。これによって、用紙PMに対して主走査方向に沿ってヘッド410を往復動させる主走査が実現される。
【0031】
搬送装置440は、用紙PMを保持しつつ、ヘッド410に対して主走査方向に垂直なDy方向に用紙PMを搬送する。以下、Dy方向を、搬送方向Dyとも呼ぶ。また、Dy方向を、+Dy方向とも呼び、+Dy方向の反対方向を、-Dy方向とも呼ぶ。+Dx方向と-Dx方向とについても、同様である。用紙PM上の画像の印刷は、用紙PM上の+Dy方向側から-Dy方向側に向かって進行する。以下、+Dy方向側を、上流側とも呼び、-Dy方向側を、下流側とも呼ぶ。
【0032】
搬送装置440は、ヘッド410のインクを吐出する面に対向する位置に配置されるとともに、用紙PMを支持するように構成されたプラテンPTと、それぞれがプラテンPT上に配置された用紙PMを保持するように構成された第1ローラ441と第2ローラ442と、ローラ441、442を駆動する図示しないモータと、を備えている。第1ローラ441は、ヘッド410よりも-Dy方向側に配置され、第2ローラ442は、ヘッド410よりも+Dy方向側に配置されている。用紙PMは、図示しない用紙トレイから、図示しない給紙ローラによって、搬送装置440に供給される。搬送装置440に供給された用紙PMは、第1ローラ441と、第1ローラ441に対となる図示しない従動ローラの間に挟まれ、これらローラによって副走査方向Dy側に搬送される。搬送された用紙PMは、第2ローラ442と、第2ローラ442に対となる図示しない従動ローラの間に挟まれ、これらローラによって副走査方向Dy側に搬送される。搬送装置440は、モータの動力でこれらのローラ441、442を駆動することによって、用紙PMを搬送方向Dyに搬送する。以下、用紙PMを搬送方向Dyに移動させる処理を、副走査、または、搬送処理とも呼ぶ。搬送方向Dyを、副走査方向Dyとも呼ぶ。図中のDz方向は、2つの方向Dx、Dyに垂直に、プラテンPTからヘッド410へ向かう方向である。
【0033】
インク供給部450は、ヘッド410にインクを供給する。インク供給部450は、カートリッジ装着部451と、チューブ452と、バッファタンク453と、を備えている。カートリッジ装着部451には、内部にインクが収容された容器である複数個のインクカートリッジKC、YC、CC、MCが着脱可能に装着され、これらのインクカートリッジからインクが供給される。バッファタンク453は、キャリッジ433において、ヘッド410の上方に配置され、ヘッド410に供給すべきインクをCMYKのインクごとに一時的に収容する。チューブ452は、カートリッジ装着部451とバッファタンク453との間を接続するインクの流路となる可撓性の管である。各インクカートリッジ内のインクは、カートリッジ装着部451、チューブ452、バッファタンク453を介して、ヘッド410に供給される。
【0034】
図3は、-Dz方向を向いて見たヘッド410の構成を示す透視図である。図中では、
図2とは異なり、副走査方向Dyは、上を向いている。ヘッド410の-Dz方向側の面であるノズル形成面411には、上述したK、Y、C、Mの各インクを吐出するノズル群NK、NY、NC、NMが形成されている。各ノズル群は、複数個のノズルNZを含んでいる。1つのノズル群の複数個のノズルNZの間では、副走査方向Dyの位置が互いに異なっている。ノズル群NK、NY、NC、NMの主走査方向の位置は、互いに異なっている。
図3の例では、ノズル群NK、NY、NC、NMは、+Dx方向に向かって、この順番に並んでいる。
【0035】
本実施例では、ブラックKのノズル群NKでは、複数のノズルNZの副走査方向Dyの位置は、等間隔に第1ノズルピッチNPaで配置されている。YCMのノズル群NY、NC、NMでは、複数のノズルNZの副走査方向Dyの位置は、等間隔に第2ノズルピッチNPbで配置されている。ピッチNPa、NPbは、副走査方向Dyに隣り合う2個のノズルNZの間の副走査方向Dyの位置の差である。本実施例では、第2ノズルピッチNPbは、第1ノズルピッチNPaのF倍(Fは2以上の整数)である。
図3の例では、F=3である。
【0036】
図中には、各ノズル群NK、NY、NC、NMにおける最も上流側(+Dy方向側)に位置する最上流ノズルNZKu、NKYu、NZCu、NZMuが示されている。本実施例では、最上流ノズルNZKu、NKYu、NZCu、NZMuの間で、副走査方向Dyの位置は同じである。図中には、複数個のノズルセットNZaが示されている。ノズルセットNZaは、4個のノズル群NK、NY、NC、NMから1個ずつ選択された4個のノズルNZで構成されており、副走査方向Dyの同じ位置に配置された4個のノズルNZのセットである(以下、ノズルセットNZaを、同位置セットNZaとも呼ぶ)。上述したように、第2ノズルピッチNPbは、第1ノズルピッチNPaのF倍である。従って、ブラックKのノズル群NKの複数のノズルNZを-Dy方向に向かって辿る場合に、F個のノズルNZ毎に1組の同位置セットNZaが形成される。
【0037】
また、本実施例では、YCMのノズル群NY、NC、NMのそれぞれのノズルNZの総数は同じWである。また、ブラックKのノズル群NKのノズルNZの総数は、Vである。そして、本実施例では、Vは、WのF倍である。従って、ノズル群NK、NY、NC、NMは、副走査方向Dyに並ぶW個のノズルセットNZbを形成する。各ノズルセットNZbは、1個の同位置セットNZaと、その同位置セットNZaの-Dy方向側に続く「F-1」個のブラックKのノズルNZと、で構成される(以下、ノズルセットNZbを、基準セットNZbとも呼ぶ)。
図3の例では、1組のノズルセットNZbは、1組の同位置セットNZaとブラックKの追加の2個のノズルNZとで構成される。なお、Vは2以上の整数である。Wは、1以上V未満の整数である。
【0038】
各ノズルNZは、ヘッド410の内部に形成されたインク流路(図示省略)を介してバッファタンク453(
図2)に接続されている。各インク流路には、インクを吐出させるためのアクチュエータ(図示省略。例えば、ピエゾ素子、ヒータなど)が設けられている。
【0039】
ヘッド駆動部420(
図1)は、移動装置430による主走査中にヘッド410内の各アクチュエータを駆動する電気回路を含んでいる。これによって、用紙PM上にヘッド410のノズルNZからインクが吐出されて、ドットが形成される。以下、ヘッドユニット410を主走査方向に移動させつつ用紙PMにインク滴を吐出してドットを形成する処理を、形成処理とも呼ぶ。ヘッド410とヘッド駆動部420と移動装置430とは、形成処理を行うことによって、用紙PM上に画像を形成する。
【0040】
A2.印刷の概要:
図4は、印刷実行部400による印刷の概要の説明図である。図中には、用紙PMに印刷される対象画像OIが示されている。対象画像OIは、対象画像OIの+Dy方向側の端から-Dy方向(より一般的には、副走査方向Dy)に並ぶ複数個のバンド画像BI1~BI3を含んでいる。各バンド画像BI1~BI3の形状は、主走査方向(ここでは、方向Dxに平行な方向)に延びる矩形状である。本実施例では、各バンド画像の副走査方向Dyの幅は、予め決められた固定値である。各バンド画像BI1~BI3は、1回または複数回の形成処理で印刷される。以下、1回の形成処理を、「パス処理」または、単に「パス」とも呼ぶ。各形成処理において、ヘッド410は、双方向の主走査方向(+Dx方向と、-Dx方向)のいずれかの方向に移動する。ここで、+Dx方向の形成処理と-Dx方向の形成処理とが、交互に行われてよい(双方向印刷とも呼ばれる)。これに代えて、形成処理でのヘッド410の移動方向は、予め決められた1つの方向であってもよい。
【0041】
複数のバンド画像は、対象画像OIの+Dy方向側の端のバンド画像から、-Dy方向に向かって1つずつ順番に、印刷される。隣り合う2個のバンド画像のそれぞれの副走査方向Dyの範囲は、互いに一部分が重なっている。図中の重複範囲Roは、互いに隣接する2個のバンド画像のそれぞれの副走査方向Dyの範囲が重なる範囲を示している。例えば、最も+Dy方向側の重複範囲Roは、第1バンド画像BI1の副走査方向Dyの範囲と第2バンド画像BI2の副走査方向Dyの範囲とが重なる範囲である。このような重複範囲Roに含まれる画像の形状は、主走査方向に延びる矩形状である。本実施例では、各重複範囲Roの副走査方向Dyの幅は、予め決められた固定値である。なお、重複範囲Roに含まれる複数のドットは、2個のバンド画像に分配されて印刷される。すなわち、上流側(+Dy方向側)のバンド画像の印刷時に、重複範囲Ro内の複数のドットのうちの一部の複数のドットが印刷される。そして、下流側(-Dy方向側)のバンド画像の印刷時に、重複範囲Ro内の複数のドットのうちの残りの複数のドットが印刷される。これにより、上流側(+Dy方向側)のバンド画像と下流側(-Dy方向側)のバンド画像との境界(すなわち、重複範囲Ro)において、印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。
【0042】
図5は、印刷処理の例を示すフローチャートである。以下、複合機200の制御部299が、ユーザからの印刷指示に応じて、
図5の処理を開始することとする。プロセッサ210は、プログラム232に従って、
図5の処理を実行する。印刷指示の入力方法は、任意の方法であってよい。本実施例では、ユーザは、操作部250(
図1)を操作することによって、印刷指示を入力する。印刷指示は、印刷用の対象画像を表す対象画像データを指定する情報を含んでいる。対象画像データは、種々のデータであってよく、例えば、記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)に格納済みの画像データであってよい。
【0043】
S110では、プロセッサ210は、印刷指示で指定された対象画像データを取得する。本実施例では、対象画像データとして、ビットマップデータが用いられる。また、対象画像データの各画素の画素値は、0から255までの256階調のR(赤)G(緑)B(青)の階調値で表されていることとする。印刷指示によって指定された画像データがJPEGデータである場合、プロセッサ210は、JPEGデータを展開することによって、対象画像データを取得する。印刷指示によって指定された画像データの形式がビットマップ形式とは異なる形式である場合(例えば、EMF(Enhanced Meta File)形式)、プロセッサ210は、データ形式を変換(例えば、ラスタライズ)することによって生成されるビットマップデータを、対象画像データとして用いる。
【0044】
S150では、プロセッサ210は、対象画像データの解像度(すなわち、画素密度)を変換する処理を実行して、印刷用の予め決められた解像度の対象画像データを生成する。以下、印刷用の解像度の画素を、印刷画素とも呼ぶ。対象画像データの解像度が印刷解像度と同じである場合、S150は、省略される。
【0045】
S160では、プロセッサ210は、対象画像データの色変換処理を実行する。色変換処理は、対象画像データの色値(本実施例では、RGB値)を、インク色空間の色値に変換する処理である。インク色空間は、印刷に利用可能な複数種類のインクの色に対応する色空間である(本実施例では、CMYK色空間)。プロセッサ210は、対象画像データの色空間の色値とインク色空間の色値との対応関係を示す色変換プロファイル(図示せず)を参照して、色変換処理を実行する。本実施例では、色変換プロファイルは、ルックアップテーブルである。
【0046】
S170では、プロセッサ210は、色変換済の対象画像データのハーフトーン処理を実行する。ハーフトーン処理は、例えば、誤差拡散法や、ディザマトリクスを用いる方法など、種々の方法の処理であってよい。ハーフトーン処理によって、色成分ごと、かつ、印刷画素ごとに、ドットの形成状態を示すドットデータが生成される。ドットの形成状態は、印刷によって形成すべきドットの状態であり、本実施例では、「ドット有り」と「ドット無し」とのうちのいずれかである。これに代えて、ドットの形成状態は、互いにドットサイズが異なる2以上のドット有りの状態を含む3以上の状態(例えば、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「ドット無し」)から選択されてもよい。いずれの場合も、ドットデータは、ドット形成状態に対応する値を示している。
【0047】
S180では、プロセッサ210は、ドットデータを用いて、印刷データを生成する。印刷データは、印刷実行部400(
図1)の制御回路490によって解釈可能なデータ形式のデータである。S180の処理の詳細については、後述する。S190では、プロセッサ210は、印刷データを印刷実行部400に出力する。S195では、印刷実行部400の制御回路490は、印刷データに従って印刷実行部400を制御することによって、画像を印刷する。そして、
図5の処理が終了する。
【0048】
図6は、印刷データ生成処理の例を示すフローチャートである。
図4で説明したように、隣り合う2個のバンド画像の副走査方向Dyの範囲は、互いに一部分が重なっている。従って、プロセッサ210は、隣り合う2個のバンド画像を、処理対象のバンド画像である対象バンドペアとして選択する。以下、処理対象の2個のバンド画像のうち、上流側(+Dy方向側)のバンド画像を「先行バンド画像」、または、単に「先行バンド」とも呼び、下流側(-Dy方向側)のバンド画像を「後続バンド画像」、または、単に「後続バンド」とも呼ぶ。また、
図4で説明したように、複数のバンド画像は、上流側(+Dy方向側)から下流側(-Dy方向側)に向かって順番に印刷される。従って、プロセッサ210は、対象バンドペアを上流側(+Dy方向側)から下流側(-Dy方向側)に向かって1バンドずつ移動させながら、対象バンドペアに対するS210-S270の処理を繰り返す。
【0049】
S210では、プロセッサ210は、ブラックKの先行バンド画像である第1種先行バンド画像の副走査方向Dyの範囲である第1種先行バンド範囲を決定する。
図4の例において、1回目のS210では、第1種先行バンド範囲は、第1バンド画像BI1の第1範囲R1に決定される。2回目のS210では、第1種先行バンド範囲は、下流側の隣の第2バンド画像BI2の第2範囲R2に決定される。なお、ドットデータ(すなわち、対象画像OI)は、空白領域を含み得る。先行バンド範囲のうち先行バンド範囲の上流側(+Dy)の端を含む連続な範囲が空白領域のみで構成されている場合、プロセッサ210は、その空白領域をスキップするように、先行バンド範囲を下流側(-Dy方向側)へ移動させる。例えば、先行バンド範囲が第2範囲R2であり、第2範囲R2のうち第2範囲R2の上流側(+Dy)の端を含む連続な範囲BRが空白領域のみで構成されている場合、プロセッサ210は、先行バンド範囲を、第2範囲R2から、空白の範囲BRの下流側(-Dy方向側)に隣接する修正第2範囲R2xに、移動させる。
【0050】
S215では、プロセッサ210は、第1種先行バンド範囲のうち、下流側(-Dy)の重複範囲である第1種重複範囲を決定する。
図7は、重複範囲の決定処理の例を示すフローチャートである。後述するように、
図7の処理は、第1種先行バンド範囲に限らず、種々のバンド範囲に共通な処理である。以下、
図7の処理対象のバンド範囲を、注目バンド範囲と呼ぶ。また、注目バンド範囲に対応するバンド画像を、注目バンド画像とも呼ぶ。
【0051】
図7の処理は、注目バンド範囲の上流側(+Dy)の重複範囲である上流重複範囲を設けるか否かと、注目バンド範囲の下流側(-Dy)の重複範囲である下流重複範囲を設けるか否かと、を決定する処理である。印刷すべき画像の一部分が注目バンド範囲の上流側(+Dy)に隣接する場合、注目バンド画像と上流側の画像(先行画像とも呼ぶ)との境界における印刷される色の不具合を抑制するために、上流重複範囲が設けられることが好ましい。先行画像が存在しない場合、上流重複範囲が省略されることが好ましい。この場合、上流重複範囲に対応する範囲の全てのドットが、注目バンド画像の印刷時に印刷されるので、印刷速度を向上できる。注目バンド範囲の下流側(-Dy)についても、同様に判断される。
【0052】
具体的には、S310では、プロセッサ210は、ドットデータを参照し、注目バンド範囲の上流側(+Dy)に連続する先行画像が対象画像OIに含まれるか否かを判断する。先行画像が対象画像OIに含まれる場合(S310:Yes)、S320で、プロセッサ210は、ドットデータを参照し、注目バンド範囲の下流側(-Dy)に連続する画像である後続画像が対象画像OIに含まれるか否かを判断する。後続画像が対象画像OIに含まれる場合(S320:Yes)、S330で、プロセッサ210は、上流重複範囲と下流重複範囲とを設けると決定する。S330のボックスの内には、注目バンド画像BIxと、上流重複範囲RoUと、下流重複範囲RoDとが、示されている。本実施例では、重複範囲RoU、RoDの大きさは、同じであり、予め決められている。プロセッサ210は、注目バンド範囲BIxに対応する重複範囲RoU、RoDを決定し、
図7の処理を終了する。
【0053】
S320で後続画像が対象画像OIに含まれないと判断される場合(S320:No)、S340で、プロセッサ210は、上流重複範囲RoUを設けて下流重複範囲RoDを設けないと決定する。プロセッサ210は、注目バンド範囲BIxに対応する上流重複範囲RoUを決定し、
図7の処理を終了する。
【0054】
S310で先行画像が対象画像OIに含まれないと判断される場合(S310:No)、S350で、後続画像が対象画像OIに含まれるか否かを判断する。S350の処理は、S320の処理と同じである。
【0055】
S350で後続画像が対象画像OIに含まれると判断される場合(S350:Yes)、S360で、プロセッサ210は、上流重複範囲RoUを設けずに下流重複範囲RoDを設けると決定する。プロセッサ210は、注目バンド範囲BIxに対応する下流重複範囲RoDを決定し、
図7の処理を終了する。
【0056】
S350で後続画像が対象画像OIに含まれないと判断される場合(S350:No)、S370で、プロセッサ210は、上流重複範囲RoUと下流重複範囲RoDとを設けないと決定する。プロセッサ210は、注目バンド範囲BIxに対応する重複範囲を決定せずに、
図7の処理を終了する。
【0057】
図7の処理、すなわち、
図6のS215の処理の後、S220で、プロセッサ210は、S215で決定された第1種重複範囲、すなわち、第1種先行バンド範囲の下流側(-Dy)の重複範囲において、第1種先行バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンである第1種先行許容パターンを特定する。
【0058】
図8は、重複範囲の印刷に利用されるパスとノズルの副走査方向Dyの位置との説明図である。図中では、横方向が主走査方向(Dx方向に平行な方向)であり、上方向が副走査方向Dyである。図中には、v番(vは整数)のバンド画像BI(v)と、v+1番のバンド画像BI(v+1)と、のそれぞれの副走査方向Dyの範囲が示されている。重複範囲Roは、これらのバンド画像BI(v)、BI(v+1)の重なる範囲である。図中には、k番(kは整数)からk+5番までの6回のパスP(k)-P(k+5)のそれぞれのノズル群NK、NCの副走査方向Dyの位置が示されている。左側にブラックKのノズル群NKが示され、右側にシアンCのノズル群NCが示されている。丸マーク、具体的には、黒丸と白丸とハッチングが付された丸は、それぞれ、ノズルNZを示している。
【0059】
図示を省略するが、複数の印刷画素は、主走査方向(Dx方向に平行な方向)と副走査方向Dyとに沿って格子状に配置されいる。図中のt-6番(tは整数)からt+8番は、ライン番号NLを示している。ライン番号NLは、主走査方向に延びる印刷画素ラインの識別番号であり、-Dy方向に向かって昇順に割り当てられている。
図8の例では、t番からt+5番までの6本の画素ラインが、重複範囲Roを構成している。
【0060】
本実施例では、副走査方向Dyの印刷画素の解像度は、ブラックKの複数のノズルNZの副走査方向Dyの解像度(すなわち、ピッチNPa)と同じである。従って、カラーインク(例えば、シアンC)の複数のノズルNZの第2ノズルピッチNPbを印刷画素の数で表現する場合、第2ノズルピッチNPbは、Fと同じである(本実施例では、F=3)。シアンCのノズルNZは、副走査方向Dyに並ぶF個の画素毎に1個の割合で、配置されている。
【0061】
1個のノズルNZは、1回のパスで、主走査方向に延びる1本の印刷画素ラインの印刷が可能である。黒丸のノズルNZは、1本の印刷画素ラインの全てのドットを印刷するノズルNZである。白丸のノズルNZは、インクドットを形成しないノズルNZである。ハッチングが付されたノズルNZは、対応する印刷画素ラインの複数の印刷画素のうちの一部の1以上の印刷画素に、ドットを形成するノズルNZである。。以下に説明するように、v番のバンド画像BI(v)は、3回のパスP(k)-P(k+2)で印刷される。v+1番のバンド画像BI(v+1)は、続く3回のパスP(k+3)-P(k+5)で印刷される。重複範囲Roは、これら6回のパスP(k)-P(k+5)で印刷される。
【0062】
まず、シアンCについて説明する。図中の第1搬送量F1は、1個のバンド画像を印刷する3回のパスの間の2回の搬送のそれぞれの搬送量である。この第1搬送量F1は、画素数で表されたシアンCのノズルピッチNPbとは互いに素である(
図8の例では、NPb=F=3、F1=4)。従って、シアンCのノズル群NCは、3回のパスで、互いに異なる画素ラインにドットを形成可能である。また、パスの回数(3回)は、画素数で表されたノズルピッチNPbと同じである。従って、ノズル群NCは、3回のパスで、副走査方向Dyに連続する複数の画素ラインに、隙間を空けずにドットを形成可能である。本実施例では、ノズル群NCは、重複範囲に含まれない複数の画素ラインを、3回のパスに分けて印刷する(1本の画素ラインは、1回のパスで印刷される)。
【0063】
重複範囲Roについては、全ての画素ラインが2回のパスに分けて印刷される。例えば、t+1番の画素ラインのシアンCのドットは、k+1番のパスP(k+1)とk+4番のパスP(k+4)とに分けて印刷される。図中の第2搬送量F2は、v番のバンド画像BI(v)のための最後のパスP(k+2)と、v+1番のバンド画像BI(v+1)のための1回目のパスP(k+3)と、の間の搬送量である。第2搬送量F2と重複範囲Roとは、重複範囲Roの全ての画素ラインが2回のパスに分けて印刷できるように、決定されている。
【0064】
上述したように、ノズル群NCは、画素数で表されるノズルピッチNPbと同じ回数のパスで、副走査方向Dyに連続する複数の画素ラインを印刷できる。しかし、ノズル群NCの端部と重なる領域は、印刷できない画素ラインを含んでいる。例えば、
図8の例では、k+2番のパスP(k+2)のノズルNZpの-Dy側のt+6番の画素ラインは、3回のパスP(k)-P(k+2)では印刷できない。パスP(k+2)のノズルNZpの第1位置P1から+Dy方向側では、3回のパスP(k)-P(k+2)により、連続する複数の画素ラインの印刷が可能である。同様に、k+3番のパスP(k+3)のノズルNZqの+Dy側のt-1番の画素ラインは、3回のパスP(k+3)-P(k+5)では印刷できない。パスP(k+3)のノズルNZqの第2位置P2から-Dy方向側では、3回のパスP(k+3)-P(k+5)により、連続する複数の画素ラインの印刷が可能である。
【0065】
図8の例では、第2搬送量F2は、以下の第1条件を満たすように、決定されている。
(第1条件)k+2番のパスP(k+2)のノズルNZpの副走査方向Dyの第1位置P1が、k+3番のパスP(k+3)のノズルNZqの副走査方向Dyの第2位置P2よりも-Dy側である。
第1条件が満たされる場合、第1位置P1から第2位置P2までの範囲の少なくとも一部を重複範囲Roとして採用することにより、重複範囲Roの全ての画素ラインは2回のパスに分けて印刷できる。なお、本実施例では、第2搬送量F2は、さらに第2と第3の条件を満たすように、決定されている。
(第2条件)第1位置P1から第2位置P2までの範囲に含まれる画素ラインの総数(
図8では、6)が、画素数で表されるノズルピッチNPb(
図8では、3)の整数倍である。
(第3条件)第1位置P1から第2位置P2までの範囲の全体が、重複範囲Roとして採用される。
以上により、先行する3回のパスP(k)-P(k+2)における重複範囲Roの上流側(+Dy方向側)での複数のノズルNZの配置が、続く3回のパスP(k+3)-P(k+5)における重複範囲Roの下流側(-Dy方向側)での複数のノズルNZの配置と対称である。従って、先行する3回のパスP(k)-P(k+2)と、続く3回のパスP(k+3)-P(k+5)と、のそれぞれにおいて、画素ラインとその画素ラインを印刷するパスとの対応関係を、同様のルールに従って、決定できる。例えば、重複範囲Roの上流側に隣接するt-1番の画素ラインは、k番-k+2番の3回のパスのうちの最後のパスP(k+2)で印刷され、重複範囲Roの下流側に隣接するt+6番の画素ラインは、k+3番-k+5番の3回のパスのうちの最初のパスP(k+3)で印刷される。
【0066】
以上のシアンCに関する説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。
【0067】
次に、ブラックKについて説明する。本実施例では、各バンド画像のブラックKのドットは、3回のパスのうちの1回目のパスで印刷される。例えば、v番のバンド画像BI(v)のブラックKのドットは、k番のパスP(k)で印刷される。続く2回のパスP(k+1)、P(k+2)では、ブラックKのドットは形成されない。v+1番の画像BI(v+1)のブラックKのドットは、k+3番のパスP(k+3)で印刷される。続く2回のパスP(k+4)、P(k+5)では、ブラックKのドットは形成されない。重複範囲に含まれない画素ラインのブラックKの複数のドットは、1回のパスで印刷される。重複範囲Roに含まれる画素ラインのブラックKの複数のドットは、k番のパスP(k)とk+3番のパスP(k+3)に分けて印刷される。
【0068】
以上のように、
図8の例では、重複範囲Roにおいては、CMYKの全てのインクに関して、全ての画素ラインが2回のパスに分けて印刷される。従って、重複範囲Roにおいて、印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。また、ノズル群NK、NCの複数のノズルNZのうち、重複範囲Roを超えて外側に位置するノズルNZは、印刷には使用されない。例えば、k+1番のパスP(k+1)では、t+6番からt+8番に対応するブラックKのノズルNZは、印刷に使用されない。一般的に、ノズル群の端に位置するノズルNZは、ノズル群の中央に位置するノズルNZと比べて、ヘッドユニット410の振動などの位置ずれの影響を大きく受ける。本実施例では、ノズル群の端に位置するノズルNZによるドットの形成が抑制される。従って、ヘッドユニット410の位置ずれに起因する印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。
【0069】
なお、重複範囲内の画素ラインの複数のドットと、パスとの対応関係は、マスクデータ234、236によって定められている。
図9(A)は、第1マスクデータ234の説明図である。図中には、バンド範囲の下流側(-Dy)の下流重複範囲RoDの複数の画素PXが示されている。ハッチングが付された画素PX1は、ドットの形成が許容された画素を示している(許容画素PX1と呼ぶ)。空白の画素PX2は、ドット形成の候補から除外された画素を示している(除外画素PX2と呼ぶ)。第1マスクデータ234は、このような画素PX1、PX2の配置パターンを示している。下流重複範囲RoD内の複数の画素は、許容画素PX1と除外画素PX2とのいずれかに分類される。画素PX1、PX2の配置パターンは、予め決められている。図中の右部には、主走査方向(Dx方向に平行な方向)に延びる画素ライン毎の記録率Rrが示されている。記録率Rrは、1本の画素ラインの複数の画素PXの総数に対する許容画素PX1の総数の割合である。図示するように、重複範囲Raにおいて、記録率Rrは、下流側(-Dy)に向かって徐々に小さくなる。すなわち、バンド領域の端に近いほど、記録率Rrは低い。
【0070】
図9(A)の下部には、バンド範囲の上流側(+Dy)の上流重複範囲RoUの画素PX1、PX2の配置パターン234rが示されている。この配置パターン234rは、第1マスクデータ234による配置パターンの許容画素PX1と除外画素PX2とを入れ替えたパターンと同じである(以下、第1反転パターン234rとも呼ぶ)。
【0071】
本実施例では、第1マスクデータ234は、ブラックKのドットを形成可能な許容画素PX1の配置パターンである第1種先行許容パターンを示している。S220(
図6)では、プロセッサ210は、第1マスクデータ234を参照することによって、第1種先行バンド範囲の下流側(-Dy)の重複範囲における第1種先行許容パターンを特定する。なお、第1マスクデータ234は、複数の画素を許容画素PX1と除外画素PX2との2種類の画素に区分する。従って、許容画素PX1の配置パターンを特定することは、除外画素PX2の配置パターンを特定することと、同じである。すなわち、S220では、プロセッサ210は、除外画素PX2の配置パターンを特定している、とも言える。
【0072】
S215で、下流側(-Dy)の重複範囲を設けないと決定された場合には、プロセッサ210は、重複範囲に対応する領域の全ての画素が許容画素PX1である配置パターンを採用する。
【0073】
図10は、下流側(-Dy)の重複範囲が設けられない場合のパスとノズルの位置との説明図である。図中には、
図8と同じv番のバンド画像BI(v)の範囲と3回のパスP(k)-P(k+2)のそれぞれのノズル群NK、NCの配置とが示されている。
図10は、v番のバンド画像BI(v)の下流側(-Dy)の重複範囲Ro(
図8)が設けられない場合を示している。重複範囲Roに対応するt番からt+5番の画素ラインでは、ブラックKのドットは、3回のパスのうちの1回目のパスP(k)で印刷され、シアンCのドットは、3回のパスP(k)-P(k+2)で印刷される(1本の画素ラインは、1回のパスで印刷される)。
【0074】
図11は、上流側(+Dy)の重複範囲が設けられない場合のパスとノズルの位置との説明図である。図中には、
図8と同じv+1番のバンド画像BI(v+1)の範囲と3回のパスP(k+3)-P(k+5)のそれぞれのノズル群NK、NCの配置とが示されている。
図11は、v+1番のバンド画像BI(v+1)の上流側(+Dy)の重複範囲Ro(
図8)が設けられない場合を示している。重複範囲Roに対応するt番からt+5番の画素ラインでは、ブラックKのドットは、3回のパスのうちの1回目のパスP(k+3)で印刷され、シアンCのドットは、3回のパスP(k+3)-P(k+5)で印刷される(1本の画素ラインは、1回のパスで印刷される)。
【0075】
図10、
図11の説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。このように、本実施例では、ブラックKとカラーインク(CMY)との間で、バンド範囲と重複範囲とは、同じである。
【0076】
S225(
図6)では、プロセッサ210は、カラーインク(CMY)の先行バンド画像である第2種先行バンド画像の副走査方向Dyの範囲である第2種先行バンド範囲を決定する。上述したように、本実施例では、第2種先行バンド範囲は、S210で決定された第1種先行バンド範囲と同じ範囲に、決定される。
【0077】
S230では、プロセッサ210は、第2種先行バンド範囲のうち、下流側(-Dy)の重複範囲である第2種重複範囲を決定する。S230では、S215と同様に、
図7の手順に従って、第2種重複範囲が決定される。本実施例では、第2種重複範囲は、S215の第1種重複範囲と同じである。S235では、プロセッサ210は、S230で決定された第2種重複範囲、すなわち、第2種先行バンド範囲の下流側(-Dy)の重複範囲において、第2種先行バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンである第2種先行許容パターンを特定する。
【0078】
図9(B)は、第2マスクデータ236の説明図である。
図9(A)の第1マスクデータ234との差異は、許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンが異なる点だけである。図中の右部には、主走査方向(Dx方向に平行な方向)に延びる画素ライン毎の記録率Rrが示されている。図示するように、下流重複範囲RoDにおいて、記録率Rrは、下流側(-Dy)に向かって徐々に小さくなる。
【0079】
図9(B)の下部には、バンド領域の上流側(+Dy)の上流重複範囲RoUの画素PX1、PX2の配置パターン236rが示されている。この配置パターン236rは、第2マスクデータ236による配置パターンの許容画素PX1と除外画素PX2とを入れ替えたパターンと同じである(以下、第2反転パターン236rとも呼ぶ)。
【0080】
本実施例では、第2マスクデータ236は、カラーインク(CMY)のドットを形成可能な許容画素PX1の配置パターンである第2種先行許容パターンを示している。S235(
図6)では、プロセッサ210は、第2マスクデータ236を参照することによって、第2種先行バンド範囲の下流側(-Dy)の重複範囲における第2種先行許容パターンを特定する。S220と同様に、許容画素PX1の配置パターンを特定することは、除外画素PX2の配置パターンを特定することと、同じである。すなわち、S235では、プロセッサ210は、除外画素PX2の配置パターンを特定している、とも言える。なお、S230で、下流側(-Dy)の重複範囲を設けないと決定された場合には、プロセッサ210は、重複範囲に対応する領域の全ての画素が許容画素PX1である配置パターンを採用する。
【0081】
S240では、プロセッサ210は、先行バンド範囲の印刷データを生成する。印刷データは、CMYKのそれぞれに関して、ドットを形成すべき画素(ドット画素とも呼ぶ)の分布領域、すなわち、インクの液滴が吐出される領域であるドット領域を示している。また、印刷データは、ドットとパスとの対応関係を定めている。
【0082】
ブラックKの印刷データに関しては、以下の通りである。第1種先行バンド画像のうち重複範囲に含まれない部分に関しては、プロセッサ210は、ドットデータ(
図5:S170)によって示されるブラックKのドットの配置を、そのまま、ブラックKのドットを形成すべき画素の分布領域として採用する。S215で、上流側(+Dy)、または、下流側(-Dy)の重複範囲を設けないと決定された場合には、プロセッサ210は、省略される重複範囲に対応する範囲において、ドットデータによって示されるブラックKのドットの配置を、そのまま、ブラックKのドットを形成すべき画素の分布領域として採用する。
【0083】
S215で、下流側(-Dy)の下流重複範囲を設けると決定された場合、下流重複範囲に含まれる部分に関しては、プロセッサ210は、S220で特定された第1種先行許容パターンを、ドットデータによって示されるブラックKのドットの配置に適用する。これにより、プロセッサ210は、第1種先行バンド画像の印刷時にブラックKのドットを形成すべき画素の分布領域である先行第1種ドット領域を決定する。
【0084】
上流側(+Dy)の上流重複範囲については、後述するように、繰り返されるS210-S270の処理の前回の処理のS255において、許容パターンが特定される(第1種後続許容パターンとも呼ぶ)。プロセッサ210は、この第1種後続許容パターンをドットデータに適用することによって、第1種先行バンド画像の印刷時にブラックKのドットを形成すべき画素の分布領域である後続第1種ドット領域を決定する。
【0085】
以上のように、プロセッサ210は、第1種先行バンド画像の全体に亘って、ブラックKのドットを形成すべき画素の分布領域を決定する。また、プロセッサ210は、画素とパスとの対応関係を、
図8、
図10、
図11で説明したように、決定する。プロセッサ210は、カラーインク(CMY)のドットを形成すべき画素の分布領域についても、同様に、決定する。第2種先行バンド画像のうち重複範囲に含まれない部分に関しては、プロセッサ210は、ドットデータ(
図5:S170)によって示されるドットの配置を、そのまま、ドットを形成すべき画素の分布領域として採用する。S230で、下流側(-Dy)の下流重複範囲を設けると決定された場合、下流重複範囲に含まれる部分に関しては、プロセッサ210は、S235で特定された第2種先行許容パターンを、ドットデータによって示されるドットの配置に適用する。これにより、プロセッサ210は、第2種先行バンド画像の印刷時にドットを形成すべき画素の分布領域である先行第2種ドット領域を決定する。上流側(+Dy)の上流重複範囲については、後述するように、繰り返されるS210-S270の処理の前回の処理のS270において、許容パターンが特定される(第2種後続許容パターンとも呼ぶ)。プロセッサ210は、この第2種後続許容パターンをドットデータに適用することによって、第2種先行バンド画像の印刷時にドットを形成すべき画素の分布領域である後続第2種ドット領域を決定する。また、プロセッサ210は、画素とパスとの対応関係を、
図8、
図10、
図11で説明したように、決定する。そして、プロセッサ210は、CMYKの各インクのドットを形成すべき画素の分布領域と、画素とパスとの対応関係と、に従って、印刷実行部400を制御するための印刷データを生成する。
【0086】
S245では、プロセッサ210は、ブラックKの後続バンド画像である第1種後続バンド画像の副走査方向Dyの範囲である第1種後続バンド範囲を決定する。第1種後続バンド範囲は、第1種先行バンド範囲の下流側(-Dy方向側)に隣接するバンド範囲である。なお、S210でも説明したように、ドットデータ(すなわち、対象画像OI)は、空白領域を含み得る。プロセッサ210は、S210での先行バンド範囲の位置の調整方法と同じ方法で、空白領域をスキップするように、後続バンド範囲を調整する。
【0087】
S250では、プロセッサ210は、第1種後続バンド範囲のうち、上流側(+Dy)の重複範囲である第1種重複範囲を決定する。プロセッサ210は、
図7の手順に従って、上流側(+Dy)の第1種重複範囲を決定する。
【0088】
S255では、プロセッサ210は、S250で決定された第1種重複範囲、すなわち、第1種後続バンド範囲の上流側(+Dy)の重複範囲において、第1種後続バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンである第1種後続許容パターンを特定する。プロセッサ210は、第1マスクデータ234(
図9(A))を参照して第1反転パターン234rを特定し、第1反転パターン234rを第1種後続許容パターンとして採用する。S255で決定された第1種後続許容パターンは、繰り返されるS210-S270の処理の次回の処理のS240で利用される。
【0089】
なお、S250で、上流側(+Dy)の重複範囲を設けないと決定された場合には、プロセッサ210は、重複範囲に対応する領域の全ての画素が許容画素PX1である配置パターンを採用する。
【0090】
S260では、プロセッサ210は、カラーインク(CMY)の後続バンド画像である第2種後続バンド画像の副走査方向Dyの範囲である第2種後続バンド範囲を決定する。上述したように、本実施例では、第2種後続バンド範囲は、S245で決定された第1種後続バンド範囲と同じ範囲に、決定される。
【0091】
S265では、プロセッサ210は、第2種後続バンド範囲のうち、上流側(+Dy)の重複範囲である第2種重複範囲を決定する。S265では、S250と同様に、
図7の手順に従って、第2種重複範囲が決定される。本実施例では、第2種重複範囲は、S250の第1種重複範囲と同じである。S270では、プロセッサ210は、S265で決定された第2種重複範囲、すなわち、第2種後続バンド範囲の上流側(+Dy)の重複範囲において、第2種後続バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンである第2種後続許容パターンを特定する。プロセッサ210は、第2マスクデータ236(
図9(B))を参照して第2反転パターン236rを特定し、第2反転パターン236rを第2種後続許容パターンとして採用する。S270で決定された第2種後続許容パターンは、繰り返されるS210-S270の処理の次回の処理のS240で利用される。なお、S265で、上流側(+Dy)の重複範囲を設けないと決定された場合には、プロセッサ210は、重複範囲に対応する領域の全ての画素が許容画素PX1である配置パターンを採用する。
【0092】
S275では、プロセッサ210は、対象画像OIの全体の処理が完了したか否かを判断する。未処理の部分が残っている場合(S275:No)、プロセッサ210は、S210へ移行する。ここで、現行の後続バンド画像は、新たな先行バンド画像として用いられる。
【0093】
対象画像OIの全体の処理が完了した場合(S275:Yes)。プロセッサ210は、
図6の処理、ひいては、
図5のS180の処理を終了する。
【0094】
以上のように、複合機200(
図1、
図2)は、ヘッドユニット410と、移動装置430と、搬送装置440と、制御部299と、を備えている。ヘッドユニット410は、V個(Vは2以上の整数)のブラックKのノズルNZと、W個(Wは1以上V未満の整数)のシアンCのノズルNZと、を有している。V個のブラックKのノズルNZは、副走査方向Dyの位置が互いに異なるとともにブラックKのインクの液滴であるブラック液滴を吐出するように構成されている。W個のシアンCのノズルNZは、副走査方向Dyの位置が互いに異なるとともにシアンCの液滴であるシアン液滴を吐出するように構成されている。移動装置430は、記録媒体の例である用紙PMに対して副走査方向Dyに垂直な主走査方向(Dx方向に平行な方向)にヘッドユニット410を移動させる主走査を実行する。搬送装置440は、ヘッドユニット410に対して副走査方向Dyに用紙PMを搬送する副走査を実行する。制御部299は、ヘッドユニット410と移動装置430と搬送装置440とを制御する。具体的には、制御部299は、ヘッドユニット410を主走査方向に移動させつつ用紙PMに液滴を吐出してドットを形成する形成処理と、用紙PMを副走査方向Dyに搬送する搬送処理とを、それぞれ複数回実行する。
【0095】
図6のS240では、制御部299のプロセッサ210は、3回の形成処理にて先行バンド画像を形成するための第1印刷データを生成する。この第1印刷データは、ブラックKの液滴が吐出されるドット画素の領域(先行第1種ドット領域とも呼ぶ)と、シアンCの液滴が吐出されるドット画素の領域(先行第2種ドット領域とも呼ぶ)と、を示すデータを含んでいる。また、プロセッサ210は、対象バンドペアに対するS210-S270(
図6)の処理を、対象バンドペアを下流側(-Dy方向側)に向かって1バンドずつ移動させながら、繰り返す。従って、S240で先行バンド画像の第1印刷データが生成された場合、次回のS240では、後続バンド画像(すなわち、新たな先行バンド画像)の第2印刷データが生成される。この後続バンド画像の第2印刷データは、ブラックKの液滴が吐出されるドット画素の領域(後続第1種ドット領域とも呼ぶ)と、シアンCの液滴が吐出されるドット画素の領域(後続第2種ドット領域とも呼ぶ)と、を示すデータを含んでいる。いずれの場合も、本実施例では、S240では、現行の先行バンド画像の先行第1種ドット領域と先行第2種ドット領域と後続第1種ドット領域と後続第2種ドット領域とを示すデータを含んでいる。
【0096】
S215(
図6)では、プロセッサ210は、ブラックKの先行バンド範囲のうち、下流側(-Dy)の重複範囲である第1種重複範囲を決定する。第1種重複範囲は、ブラックKの先行バンド範囲とブラックKの後続バンド範囲とが重複する範囲である。S220では、プロセッサ210は、第1マスクデータ234を参照して、第1種重複範囲内における許容画素PX1の配置パターン、換言すれば、除外画素PX2の配置パターンを、特定する。除外画素PX2は、第1種重複範囲内において、先行バンド画像の印刷ではブラックKのドットが形成されない画素であり、先行第1種ドット領域には含まれない。
【0097】
S230では、プロセッサ210は、シアンCの先行バンド範囲のうち、下流側(-Dy)の重複範囲である第2種重複範囲を決定する。第2種重複範囲は、シアンCの先行バンド範囲とのシアンCの後続バンド範囲とが重複する範囲である。S235では、プロセッサ210は、第2マスクデータ236を参照して、第2種重複範囲内における許容画素PX1の配置パターン、換言すれば、除外画素PX2の配置パターンを、特定する。除外画素PX2は、第12重複範囲内において、先行バンド画像の印刷ではシアンCのドットが形成されない画素であり、先行第2種ドット領域には含まれない。
【0098】
また、S255では、プロセッサ210は、第1マスクデータ234を参照して、ブラックKの後続バンド範囲の上流側(+Dy)の重複範囲である第1種重複範囲において、ドットを形成可能な画素の配置パターンである第1反転パターン234rを特定する。第1反転パターン234rは、ブラックKの後続バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンであり、先行バンド画像の印刷時にはドットを形成できない画素の配置パターンである。また、第1反転パターン234rの許容画素PX1は、先行バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素を含まない。そして、次回のS240では、この第1反転パターン234rから、ドットデータ従って、ブラックKのドットが形成される後続第1種ドット領域が決定される。
【0099】
また、S270では、プロセッサ210は、第2マスクデータ236を参照して、シアンCの後続バンド範囲の上流側(-Dy)の重複範囲である第2種重複範囲において、ドットを形成可能な画素の配置パターンである第2反転パターン236rを特定する。第2反転パターン236rは、シアンCの後続バンド画像の印刷時にドットを形成可能な画素の配置パターンであり、先行バンド画像の印刷時にはドットを形成できない画素の配置パターンである。そして、次回のS240では、この第2反転パターン236rから、ドットデータ従って、シアンCのドットが形成される後続第2種ドット領域が決定される。
【0100】
以上により、
図8、
図9(A)に示すように、ブラックKの重複範囲には、先行バンド画像の印刷時にドットが形成される画素と、後続バンド画像の印刷時にドットが形成される画素とが配置される。そして、
図8、
図9(B)に示すように、シアンCの重複範囲には、先行バンド画像の印刷時にドットが形成される画素と、後続バンド画像の印刷時にドットが形成される画素とが配置される。従って、ブラックKのノズルNZの数VがシアンCのノズルNZの数Wと異なる場合であっても、重複範囲において、印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。
【0101】
また、V個のブラックKのノズルNZの副走査方向Dyの位置は、等間隔に第1ノズルピッチNPaで配置され、W個のシアンCのノズルNZの副走査方向のW個の位置は、等間隔に第2ノズルピッチNPbで配置され、数Vは数WのF倍(Fは2以上の整数)であり、第2ノズルピッチNPbは、第1ノズルピッチNPaのF倍である。従って、
図8で説明したように、シアンCの副走査方向Dyの印刷解像度を、容易に、ブラックKの副走査方向Dyの印刷解像度と同じにできる。例えば、第1搬送量F1、F2と重複範囲Roの大きさと1個のバンド画像の印刷のためのパスの回数とを、容易に決定できる。この結果、重複範囲Roにおける複数種類のインクのそれぞれのドットの適切な形成が可能である。
【0102】
また、
図8で説明したように、バンド画像に拘わらず、シアンCのドットの副走査方向Dyの解像度は、ブラックKのドットの副走査方向Dyの解像度と同じである。すなわち、
図6のS240では、プロセッサ210は、シアンCの副走査方向Dyの印刷解像度がブラックKの副走査方向Dyの印刷解像度と同じとなるように、各バンド画像の印刷データを生成する。従って、シアンCのノズルの数Wが少ない場合であっても、印刷されるシアンCの色が粗く見えることを抑制できる。なお、本実施例では、主走査方向の印刷解像度は、副走査方向Dyの印刷解像度と同じである。ただし、主走査方向の印刷解像度は、副走査方向Dyの印刷解像度と異なっていてよい。また、主走査方向の印刷解像度は、インク毎に決定されてよい。
【0103】
また、
図8、
図10、
図11に示すように、1個のバンド画像が印刷される場合に、ブラックKのドット画素の分布領域の副走査方向Dyの範囲は、シアンCのドット画素の分布領域の副走査方向Dyの範囲と、一致する。プロセッサ210は、このような関係が実現されるように、各バンド画像のための印刷データを生成する。従って、ノズルNZの数の違いに起因する複雑な処理をせずに、複数のバンド画像の印刷を行うことができる。
【0104】
また、
図8に示すように、プロセッサ210は、S215、S230(
図6)において、ブラックKの重複範囲がシアンCの重複範囲と同じとなるように、これらの範囲を決定する。従って、ブラックKの重複範囲とシアンCの重複範囲との間の相違が目立つことを抑制できる。
【0105】
また、
図6のS220では、プロセッサ210は、予め決められた第1マスクデータ234を用いて、許容画素PX1の配置パターン(すなわち、除外画素PX2の配置パターン)を特定する。S235では、プロセッサ210は、予め決められた第2マスクデータ236を用いて、許容画素PX1の配置パターン(すなわち、除外画素PX2の配置パターン)を特定する。従って、プロセッサ210は、ドットが形成されるべき画素を、容易に決定できる。
【0106】
また、
図9(A)、
図9(B)で説明したように、第2マスクデータ236のパターンは、第1マスクデータ234のパターンと異なっている。従って、ブラックKに適したパターンとシアンCに適したパターンとを利用可能である。例えば、ブラックKのパターンとシアンCパターンとの干渉を抑制できる。
【0107】
また、一般的に、ノズル群の端に位置するノズルNZは、ノズル群の中央に位置するノズルNZと比べて、ヘッドユニット410の振動などの位置ずれの影響を大きく受ける。本実施例では、
図9(A)、
図9(B)に示すように、バンド領域の端に近いほど、すなわち、ノズル群の端に近いほど、記録率Rrは低い。従って、ヘッドユニット410の振動などの意図しない動きに対する頑健性を向上できる。
【0108】
以上のシアンCに関する説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。
【0109】
B.第2実施例:
図12は、パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。図中には、
図8の実施例と同じ6回のパスP(k)-P(k+5)が示されている。
図8との差異は、t-6番からt-1番の6本の画素ラインのブラックKのドットが、k番のパスP(k)とk+3番のパスP(k+3)とに分けて印刷される点だけである。これにより、t-6番からt+5番までの12本の画素ラインが、ブラックKの重複範囲Ro1を形成している。シアンCの重複範囲Ro2は、
図8の重複範囲Roと同じである。ブラックKのドットによる画像を示すv+1番のバンド画像BIk(v+1)の副走査方向Dyの範囲は、ブラックKの重複範囲Ro1を含むように、拡張される。シアンCのドットによる画像を示すv+1番のバンド画像BIc(v+1)の副走査方向Dyの範囲は、
図8のバンド画像BI(v+1)の範囲と同じである。なお、バンド画像の下流側(-Dy)の端の位置は、ブラックKとシアンCとの間で同じである。
図12の例では、ブラックKのv番のバンド画像BIk(v)と、シアンCのv番のバンド画像BIc(v)と、のそれぞれの下流側(-Dy)の端の画素ラインは、t+5番の画素ラインである。
【0110】
ブラックKの重複範囲Ro1は、シアンCの重複範囲Ro2よりも広い。この結果、バンド画像BIk(v)、BIk(v+1)の境界でブラックKの印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。なお、シアンCのドットによる画像を示すv+1番のバンド画像BIc(v+1)の上流側(+Dy)の端は、t番の画素ラインである。このように、ブラックKとシアンCとの間で、バンド画像の副走査方向Dyの範囲(すなわち、ドットが形成され得る領域の副走査方向Dyの範囲)が異なってよい。また、本実施例では、ブラックKの重複範囲Ro1のための第1マスクデータ234は、12本の画素ラインの複数の画素を、許容画素PX1と除外画素PX2とに分類するように、構成される。シアンCの説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。
【0111】
C.第3実施例:
図13は、パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。図中には、
図12の実施例と同じ6回のパスP(k)-P(k+5)が示されている。
図12との差異は、
図12のシアンCの重複範囲Ro2の外側のt-6、t-3、t-2、t+7、t+8、t+11番の6本の画素ラインにおいて、シアンCのドットが、2回のパスに分けて印刷される点である。本実施例では、重複範囲は、
図8の重複範囲Ro2のような連続な1個の範囲でなくてよく、互いに離れた複数の範囲が重複範囲を形成することが、許容されている。具体的には、シアンCの重複範囲Ro4は、
図8の重複範囲Ro2と同じ第1部分重複範囲Ro41と、第2部分重複範囲Ro42(t-6)と、第3部分重複範囲Ro43(t-3、t-2)と、第3部分重複範囲Ro44(t+7、t+8)と、第4部分重複範囲Ro45(t+11)と、で構成されている。このように、重複範囲は、複数の部分重複範囲に分かれていてもよい。この場合も、印刷される色の不具合(例えば、白筋や濃度のむら)を抑制できる。なお、シアンCのドットによる画像を示すv番のバンド画像BIc(v)の副走査方向Dyの範囲は、t+5番から上流側(+Dy)の複数の画素ラインに加えて、部分重複範囲Ro44、Ro45を含んでいる。また、シアンCのドットによる画像を示すv+1番のバンド画像BIc(v+1)の副走査方向Dyの範囲は、t番から下流側(-Dy)の複数の画素ラインに加えて、部分重複範囲Ro42、Ro43を含んでいる。ブラックKの重複範囲Ro3は、
図8のブラックKの重複範囲Ro1と同じである。また、ブラックKのバンド画像BIk(v)、BIk(v+1)の副走査方向Dyの範囲は、
図8のブラックKのバンド画像BIk(v)、BIk(v+1)の副走査方向Dyの範囲と、それぞれ同じである。シアンCの説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。なお、複数のインクの間で、重複範囲が異なってよい。
【0112】
D.第4実施例:
図14(A)-
図14(C)は、パスとノズルとの関係の別の実施例の説明図である。本実施例では、ブラックKの印刷解像度が、シアンCの印刷解像度と異なっている。具体的には、ブラックKの副走査方向Dyの印刷解像度は、ブラックKのノズルNZの副走査方向Dyの解像度(第1ノズルピッチNPa)と同じである。シアンCの搬送方向Dyの印刷解像度は、シアンCのノズルNZの副走査方向Dyの解像度(第2ノズルピッチNPb)と同じである。
【0113】
図14(A)は、上流側(+Dy)の重複範囲が設けられない場合のパスとノズルの位置との説明図である。図中には、k番のパスP(k)と、ブラックKとシアンCのバンド画像BIk(v)、BIc(v)の副走査方向Dyの範囲とが、示されている。図示するように、重複範囲には含まれない画素ラインは、1回のパスP(k)で印刷される。ブラックKとシアンCのバンド画像BIk(v)、BIc(v)の上流側(+Dy)の端の位置は、同じである。
図14(B)は、重複範囲の印刷に利用されるパスとノズルの位置との説明図である。図中には、k番とk+1番のパスP(k)、P(k+1)と、ブラックKとシアンCのバンド画像BIk(v)、BIk(v+1)、BIc(v)、BIc(v+1)の副走査方向Dyの範囲とが、示されている。ブラックKの重複範囲Ro5は、t番からt+2番の3本の画素ラインで構成されている。k番のパスP(k)のブラックKの下流側(-Dy)の端の3個のノズルNZと、k+1番のパスP(k+1)のブラックKの上流側(+Dy)の端の3個のノズルNZとが、重複範囲Ro5の3本の画素ラインを印刷する。シアンCについては、ブラックKのt番の画素ラインと同じ位置の1本の画素ラインが、重複範囲Ro6を形成する。この1本の画素ラインが、k番のパスP(k)のシアンCの下流側(-Dy)の端の1個のノズルNZと、k+1番のパスP(k+1)のシアンCの上流側(+Dy)の端の1個のノズルNZと、に分けて印刷される。v番のバンド画像に関しては、ブラックKのバンド画像BIk(v)の下流側(-Dy)の端の画素ラインは、t+2番の画素ラインであり、シアンCのバンド画像BIc(v)の下流側(-Dy)の端の画素ラインは、ブラックKのt番の画素ラインと同じ位置の画素ラインである。v+1番のバンド画像BIk(v+1)、BIc(v+1)に関しては、上流側(+Dy)の端の画素ラインは、ブラックKとシアンCとに共通であり、t番に対応する画素ラインである。
図14(C)は、下流側(-Dy)の重複範囲が設けられない場合のパスとノズルの位置との説明図である。図中には、k番のパスP(k)と、ブラックKとシアンCのバンド画像BIk(v)、BIc(v)の副走査方向Dyの範囲とが、示されている。図示するように、重複範囲には含まれない画素ラインは、1回のパスP(k)で印刷される。ブラックKのバンド画像BIk(v)の下流側(-Dy)の端の画素ラインがt+2番の画素ラインである場合、シアンCのバンド画像BIc(v)の下流側(-Dy)の端の画素ラインは、ブラックKのt番の画素ラインと同じ位置の画素ラインである。以上のように、本実施例では、重複範囲Ro5、Ro6以外の領域は、1回のパスで印刷される。従って、高速な印刷が可能である。なお、重複範囲Ro5、Ro6の大きさは、基準セットNZbの大きさの整数倍であってよい。また、シアンCの説明は、マゼンタMとイエロYについても、同じである。
【0114】
E.第5実施例:
図15は、マスクデータの別の実施例の説明図である。本実施例のマスクデータ234xでは、
図9(A)の第1マスクデータ234とは異なり、2つの方向Dx、Dyに沿って、許容画素PX1と除外画素PX2とが交互に並んでいる。
図9(A)の第1マスクデータ234と反転パターン234rとに代えて、このようなマスクデータ234xと反転パターン234xrとが用いられてよい。第2マスクデータ236としては、同じマスクデータ234xが用いられてよい。これに代えて、他の配置パターンを有するマスクデータ(例えば、マスクデータ234xの許容画素PX1と除外画素PX2とを入れ替えて得られるマスクデータ)が、第2マスクデータ236の代わりに用いられてよい。許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンは、他の種々のパターンであってよい。例えば、許容画素PX1と除外画素PX2とがストライプ状に配置されてよい。また、
図13(B)の重複範囲Ro4のように、重複範囲が互いに離れた複数の部分重複範囲で構成されている場合、マスクデータは、複数の部分重複範囲のそれぞれにおける許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンを決定してよい。一般的には、マスクデータは、重複範囲に含まれる複数の画素における許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンを決定してよい。また、予め決められた配置パターンに代えて、プロセッサ210は、乱数など演算を用いて、許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンを決定してもよい。また、複数種類のインクの間で(例えば、シアンCとマゼンタMとイエロYとの間で)、許容画素PX1と除外画素PX2との配置パターンが異なってもよい。
【0115】
E.変形例:
(1)印刷処理は、上記の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、1個のバンド画像を印刷するための3回のパスのうち、2回目のパス、または、3回目のパスが、ブラックKのドットを形成してよい。また、1個のバンド画像は、+Dy方向の端部とーDy方向の端部とに重複範囲が形成され得るような種々の画像であってよい。そして、1個のバンド画像の印刷に用いられるパスの回数は、1回以上の種々の回数であってよい。また、カラーのノズル群(例えば、シアンCのノズル群NC)のノズルNZの数Wに対するブラックKのノズルNZの数Vの比率は、ブラックKの第1ノズルピッチNPaに対するカラー(例えば、シアンC)の第2ノズルピッチNPbの比率と異なっていてよい。
【0116】
(2)搬送量と画素ラインと画素ラインにドットを形成するノズルとの対応関係は、上記の各実施例の対応関係に代えて、他の種々の対応関係であってよい。例えば、副走査方向Dyの印刷解像度は、複数個のノズル群のそれぞれの副走査方向Dyのノズルの解像度(ノズルピッチ)よりも高くてもよい。この場合も、
図8の実施例のシアンCと同様に、複数回のパスは、ノズルの解像度よりも高い印刷解像度での印刷が可能である。
【0117】
(3)印刷処理は、
図5の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、S150-S190の処理は、バンド画像毎に繰り返されてもよい。
【0118】
(4)液滴吐出装置の構成は、
図1-
図3の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、インク供給部450は、キャリッジ433に固定されてよい。
図3のCMYの最上流ノズルNZYu、NZCu、NZMuの副走査方向Dyの位置は、ブラックKの最上流ノズルNZKuの副走査方向Dyの位置と異なっていてよい。また、移動装置430は、ヘッドユニット410を移動させる代わりに、用紙PM等の記録媒体を移動させることによって、記録媒体に対して主走査方向にヘッドユニット410を相対的に移動させてよい。記録媒体としては、紙に限らず、布、フィルムなどの種々の媒体であってよい。インクは顔料インクでも染料インクでもよく、UVインクなどの紫外線硬化性インク、ソルベントインクなどの有機溶剤を含有したインク、又は金属を含有したインクなどでもよい。インクでなく種々の液体(例えば、溶融した樹脂など)が、ノズルから吐出されてよい。利用可能な複数種類のインクの色の組み合わせとしては、CMYKに限らず、ホワイトインクや透明なインク、金属光沢を有するインクを用いてもよい。
【0119】
(5)印刷処理のうちのデータの処理(例えば、
図5のS110-S180の少なくとも一部の処理)は、複合機200などの液滴吐出装置の制御部に代えて、液滴吐出装置に接続された外部のデータ処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、スキャナ、スマートフォン)によって実行されてよい。ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、データ処理装置によるデータ処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、データ処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムがデータ処理装置に対応する)。
【0120】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図5のS150、S160、S170の処理は、専用のハードウェア回路によって実現されてよい。
【0121】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD-RONのような携帯型の記録媒体に限らず、各種RON等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0122】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0123】
200…複合機、210…プロセッサ、215…記憶装置、220…揮発性記憶装置、230…不揮発性記憶装置、232…プログラム、234…第1マスクデータ、236…第2マスクデータ、240…表示部、250…操作部、270…通信インタフェース、280…スキャナ部、299…制御部、400…印刷実行部、410…ヘッドユニット、411…ノズル形成面、420…ヘッド駆動部、430…移動装置、433…キャリッジ、434…摺動軸、435…ベルト、436…プーリ、440…搬送装置、441…ローラ、441…第1ローラ、442…第2ローラ、450…インク供給部、451…カートリッジ装着部、452…チューブ、453…バッファタンク、490…制御回路