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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/37 20200101AFI20240730BHJP
   H05B 45/50 20220101ALI20240730BHJP
【FI】
H05B45/37
H05B45/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019193153
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021068599
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101742758(CN,A)
【文献】特開平10-248161(JP,A)
【文献】特開2004-253364(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流変換された電圧を、並列につながれた複数の出力コネクタから出力するAC-DC変換回路と、
前記複数の出力コネクタに1対1で接続された複数のDC-DCコンバータと、前記複数のDC-DCコンバータの出力に1対1で接続された複数の光源と、を有する複数の照明器具と、を備え、
前記AC-DC変換回路は、
前記複数の出力コネクタの出力電流を個別に検出する複数の出力電流検出部と、
前記複数の出力コネクタに1対1で直列接続された複数のスイッチと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の出力電流検出部で検出される電流値のうち予め定めた基準値に達するものがある場合、前記複数のスイッチのうち、前記基準値に達する電流値を与えるものをオフする照明システム。
【請求項2】
前記AC-DC変換回路は、前記複数のスイッチに1対1で並列接続された複数の負荷検出用抵抗を備え、
前記複数のDC-DCコンバータは、前記複数のDC-DCコンバータ毎に入力端子間を接続する複数の負荷識別用抵抗を備え、
前記制御部は、前記複数のスイッチをオフした状態で前記複数の負荷検出用抵抗と前記複数の出力コネクタを介して前記複数の負荷識別用抵抗に電圧印加し、前記複数の負荷識別用抵抗に生じた電圧を検知し、検知した電圧が予め定められた範囲内である場合に前記複数のスイッチをオンして前記複数のスイッチと前記複数の出力コネクタを介して前記複数の照明器具に電圧供給する請求項に記載の照明システム。
【請求項3】
前記複数のDC-DCコンバータは、前記AC-DC変換回路への通信のための通信部を有し、
前記複数のDC-DCコンバータのうち異常を検知した回路である異常検知回路は、前記通信部を用いて前記AC-DC変換回路へ異常を通知し、
前記異常の通知を受けた前記AC-DC変換回路は、前記複数のスイッチのうち前記異常検知回路へ電圧供給するものをオフする請求項に記載の照明システム。
【請求項4】
前記複数のDC-DCコンバータは、前記複数の光源の電流をそれぞれ検知する光源電流検出抵抗を有する降圧チョッパ回路で構成され、
前記異常検知回路は、調光信号により消灯を指示する信号を受けて動作停止中であるにもかかわらず、前記光源電流検出抵抗によって電流が検出された回路である請求項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記複数のDC-DCコンバータは、前記複数の光源の電流をそれぞれ検知する光源電流検出抵抗を有する降圧チョッパ回路で構成され、
前記異常検知回路は、調光信号により点灯を指示する信号を受けて動作中であるにもかかわらず、スイッチング動作が停止した回路である請求項に記載の照明システム。
【請求項6】
前記AC-DC変換回路は、インダクタとスイッチング素子によってコンデンサにエネルギを充放電する昇圧チョッパ回路であり、
前記スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項7】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドである請求項に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子を点灯させるための各種の光源点灯装置が知られている。この種の光源点灯装置は、商用交流電源を整流、平滑して直流電圧を生成するAC-DC変換回路と、得られた直流電圧から定電流制御によりLEDに適した電流を供給するDC-DCコンバータを備える。多くの照明器具においては高力率を要求される。そのため、昇圧チョッパ形の力率改善回路がAC-DC変換回路として用いられている。
【0003】
ところで、このような光源点灯装置を照明器具に組み込む場合、個々の照明器具毎にAC-DC変換回路とDC-DCコンバータの2回路を搭載することになるため、照明器具の大型化と高コスト化が課題となる。そこで、特許文献1に示すようにAC/DC変換部を複数の照明器具で共有化し、個々の照明器具には定電流回路としてDC-DCコンバータのみを搭載することで器具の小型化と低コスト化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-18763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら1つのAC-DC変換回路を複数の照明器具で共有化する場合、AC-DC変換回路に設けられた1つの出力端子に、渡り配線により複数の器具を接続するので、AC-DC変換回路の出力電流は照明器具の接続台数に比例して増加する。また、出力端子と照明器具を繋ぐケーブルとの間で接続不良が発生した場合、出力電流が大きいとアーク放電が発生しやすくなり、直流電流のためアーク放電が消弧しにくいという課題が発生する。したがって、直流アーク放電を消弧するための専用の遮断器等を用いなければならず、システムの大型化につながってしまう課題があった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、アーク放電の発生を抑制しつつAC-DC変換回路を複数の照明器具で共有化することで、遮断器等を必要としないシンプルな照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る照明システムは、直流変換された電圧を、並列につながれた複数の出力コネクタから出力するAC-DC変換回路と、前記複数の出力コネクタに1対1で接続された複数のDC-DCコンバータと、前記複数のDC-DCコンバータの出力に1対1で接続された複数の光源と、を有する複数の照明器具と、を備え、前記AC-DC変換回路は、前記複数の出力コネクタの出力電流を個別に検出する複数の出力電流検出部と、前記複数の出力コネクタに1対1で直列接続された複数のスイッチと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の出力電流検出部で検出される電流値のうち予め定めた基準値に達するものがある場合、前記複数のスイッチのうち、前記基準値に達する電流値を与えるものをオフする。

【0008】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
AC-DC変換回路を構成するプリント基板上で出力を複数回路に分岐し、分岐先にコネクタを介してDC-DCコンバータに接続するので、個々のコネクタから出力される電流が小さくなり、アーク放電が継続することを抑制できる。これにより、アーク放電がコネクタと配線間で継続することによる危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る照明システムの回路構成図である。
図2】比較例に係る照明システムの回路ブロック構成図である。
図3】実施の形態2に係る照明システムの回路構成図である。
図4】実施の形態3に係る照明システムの回路構成図である。
図5】実施の形態4に係る照明システムの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る照明システムについて図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明システム100の回路構成図である。照明システム100は、交流電源1から電力の供給を受けて複数の照明器具4a、4b、4cに搭載された光源9a、9b、9cを点灯させるものである。光源9a、9b、9cとして例えばLED(Light Emitting Diode)を用いることができるがこれに限定されない。照明システム100は、AC-DC変換回路2を備えている。AC-DC変換回路2を囲む破線は、プリント基板2aの外縁の例を示す。プリント基板2aの回路パターンに各種回路素子が搭載される。AC-DC変換回路2は、AC-DC変換回路2の動作を制御する制御部3を備えている。照明器具4a、4b、4cには、それぞれDC-DCコンバータ5a、5b、5cが搭載されている。DC-DCコンバータ5a、5b、5cはDC-DCコンバータ5a、5b、5cをそれぞれ制御する制御部7a、7b、7cを含む。
【0013】
AC-DC変換回路2は、交流電源を全波整流する整流回路DBを含む。AC-DC変換回路2は力率改善回路を構成し、入力電流波形を正弦波状になるように制御しつつ、直流電圧を出力する。AC-DC変換回路2の出力は、出力コネクタ6a、6b、6cを介してそれぞれDC-DCコンバータ5a、5b、5cに入力される。
【0014】
AC-DC変換回路2は、例えば昇圧チョッパ型であり、フィルタコンデンサC1、インダクタL1、例えばGaNなどのワイドバンドギャップ半導体で構成されるスイッチング素子SW1、ダイオードD1、平滑コンデンサC2を備えている。すなわち、AC-DC変換回路2は、照明器具4a、4b、4cの光源9a、9b、9cに直流電流を供給するために、スイッチング素子SW1とインダクタL1で平滑コンデンサC2にエネルギを充放電し、交流電圧を所望の直流電圧に変換する。そのため、AC-DC変換回路2は出力電圧を検出する出力電圧検出抵抗R1を備えている。
【0015】
AC-DC変換回路2は制御部3の制御を受けて動作する。制御部3は、予め定められたスイッチング周波数でスイッチング素子SW1をスイッチングし、スイッチング素子SW1がオンすると、インダクタL1にエネルギを蓄え、スイッチング素子SW1がオフすると、インダクタL1に蓄えたエネルギを放出する。このとき、制御部3は、出力電圧検出抵抗R1により出力電圧を監視し、予め定められた直流電圧が得られるようにスイッチング素子SW1のオン時間を調整する。交流電源1の位相角にかかわらず、どの位相角でもスイッチング素子SW1をオンすると、インダクタL1に交流電源1から電流を流し込めるので、力率を改善することができる。制御部3の少なくとも一部をマイクロコンピュータで構成するようにしてもよい。
【0016】
AC-DC変換回路2によって生成された直流出力電圧がDC-DCコンバータ5a、5b、5cに入力されると、DC-DCコンバータ5a、5b、5cはそれぞれ制御部7a、7b、7cにより駆動及び制御される。DC-DCコンバータ5a、5b、5cは、光源9a、9b、9cに流れる電流が目標電流値となるように定電流フィードバック制御される。これにより光源9a、9b、9cは予め定められた目標値の明るさで点灯する。DC-DCコンバータ5a、5b、5cの詳細な構成はここでは図示しない。DC-DCコンバータ5a、5b、5cは、例えば降圧チョッパ回路又はフライバックコンバータなどの既知の回路で構成される。
【0017】
ここで、AC-DC変換回路2とDC-DCコンバータ5a、5b、5cの具体的な接続方法について説明する。AC-DC変換回路2により生成した直流電圧を複数の照明器具4a、4b、4cに供給するには、平滑コンデンサC2から並列接続で各照明器具4a、4b、4cに電圧を供給する。本実施の形態においては、平滑コンデンサC2から出力への分岐を、プリント基板2aの内部で実施し、接続する照明器具の数に応じて出力コネクタが複数設けられる。言いかえると、プリント基板2aの回路パターンは、直流変換された電圧を複数の出力コネクタへ分岐させる形状となっている。図1の例では、回路パターンが直流電圧を出力コネクタ6a、6b、6cへ分岐させる。
【0018】
このように、AC-DC変換回路2は、直流変換された電圧を、並列につながれた複数の出力コネクタ6a、6b、6cから出力する。1つの出力コネクタに対して1つの照明器具が1対1の関係で接続される。出力コネクタの数は、接続する照明器具の数と一致させるために増減させ得る。そして、出力コネクタ6a、6b、6cとDC-DCコンバータ5a、5b、5cが例えば接続ケーブル又は接続プラグなどによって1対1で接続される。さらに、DC-DCコンバータ5a、5b、5cの出力に光源9a、9b、9cが1対1で接続されている。
【0019】
次に本実施の形態の意義を説明するため比較例について説明する。図2は、比較例に係る照明システムの回路ブロック構成図である。図2の照明システムは、1つの出力コネクタ6を備え、複数の照明器具4d、4e、4fが渡り配線方式で接続されるものである。渡り配線方式では、平滑コンデンサC2の両端に並列に設けられた1対の出力コネクタ6から照明器具4dのDC-DCコンバータ5aの入力に対して配線が設けられ、照明器具4dのDC-DCコンバータ5の入力側から並列に照明器具4eのDC-DCコンバータ5の入力に対して配線が設けられ、照明器具4eのDC-DCコンバータ5の入力側から並列に照明器具4fのDC-DCコンバータ5の入力に対して配線が設けられる。このようにある照明器具から別の照明器具へと橋渡し的にAC-DC変換回路2の出力電圧が印加される。この場合、接続される照明器具の数にかかわらず共通利用するAC-DC変換回路2に設けられる出力コネクタの数は1つでよい。
【0020】
このような配線方法においては、AC-DC変換回路2の出力コネクタ6と、1つ目の照明器具4dとを接続する接続配線には、AC-DC変換回路2に接続されるすべての照明器具の合計入力電流が流れるので、電流値が最大になる。仮に、出力コネクタ6に何らかの異常が生じ、接続配線が接続不良になるとすべての照明器具が消灯してしまう。また、接続配線に流れる電流値が大きいため、点灯中に出力コネクタ6と接続配線の接触が外れた場合、電流が遮断せず、アーク放電が生じて電流が継続して流れ続ける可能性がある。直流電流の場合、アーク放電が消弧しにくい特性があるため放電が継続し、発熱により発煙等の恐れがある。
【0021】
本実施の形態においては、予めAC-DC変換回路2のプリント基板内において回路パターンを接続に必要な数だけ分岐し、1つの出力コネクタに対して1つの照明器具が1対1の関係で接続される。すなわち、プリント基板2aには接続する照明器具の台数分の出力コネクタが設けられている。したがって、1つの出力コネクタから1つの照明器具に接続される配線を流れる電流は、照明器具1台分の電流値となるため、渡り配線方式と比較して出力コネクタ1個当たりの出力電流値が小さくなる。したがって、万が一出力コネクタ6a、6b、6cとDC-DCコンバータ5a、5b、5cとの接続部において、接続不良が発生しても、消灯する照明器具は1台のみとなり、接続が正常な照明器具は点灯を継続することができる。また、点灯中に出力コネクタ6a、6b、6cとDC-DCコンバータ5a、5b、5cとの接続が外れた場合でも、これらの接続部の電流値が小さいため、アーク放電が発生しにくくなり、コネクタ部の発煙等の可能性を抑制することができる。例えば、1つの出力コネクタの出力電流を0.4A以下に抑えることがアーク放電の抑制に貢献する。
【0022】
なお、本実施の形態においては、AC-DC変換回路2には3つの照明器具4a、4b、4cを接続したが、照明器具の数は複数であればよい。AC-DC変換回路2に複数の照明器具を接続する場合、消費電量が大きくなる。そこで、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によってスイッチング素子SW1を形成してもよい。スイッチング素子SW1をワイドバンドギャップ半導体で形成することで、高速スイッチングが可能となり、スイッチング損失を低減することができる。これによりスイッチング素子を冷却するヒートシンク又はファンなどを小型化できAC-DC変換回路2を小型化することができる。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドがある。
【0023】
実施の形態1に記載した変形例、修正例又は代案については、以下の実施の形態に係る照明システムに応用し得る。以下の実施の形態に係る照明システムについては、主として実施の形態1との相違点を説明する。
【0024】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る照明システム110の回路構成図である。実施の形態1と同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略することもある。
【0025】
AC-DC変換回路2は、接続される照明器具の台数に応じて平滑コンデンサC2と並列に接続された複数の出力コネクタ6a、6b、6cを有している。さらに、出力コネクタ6a、6b、6cと直列に、出力電流を電圧信号に変換する出力電流検出部Ra、Rb、Rcを有する。出力電流検出部Ra、Rb、Rcは、出力コネクタ6a、6b、6cの出力電流を個別に検出するために設けられる。出力電流検出部Ra、Rb、Rcは例えば抵抗である。出力電流検出部Ra、Rb、Rcで検出された出力電流検出信号は、選択回路8を介して制御部3に入力される。選択回路8は、例えばダイオードOR回路である。選択回路8に入力された3つの出力電流検出信号のうち最も高い電圧の出力電流検出信号が制御部3に入力される。選択回路8は、ダイオードOR回路ではなく、コンパレータで構成してもよい。選択回路8として、複数の出力電流検出信号のうち最も高い電圧の出力電流検出信号だけを出力する任意の回路を採用し得る。なお、選択回路8を介さず、すべての出力電流検出信号を制御部3に入力し、制御部3にて最大電圧を検知してもよい。
【0026】
次に、照明システム110の動作について説明する。交流電源1を入力するとAC-DC変換回路2は動作を開始し直流電圧を生成する。生成された直流電圧は出力コネクタ6a、6b、6cを介してそれぞれDC-DCコンバータ5a、5b、5cに入力される。DC-DCコンバータ5a、5b、5cに直流電圧が入力されるとDC-DCコンバータ5a、5b、5cは動作を開始して、光源9a、9b、9cに直流電流を供給して光源9a、9b、9cを点灯させる。
【0027】
光源9a、9b、9cの点灯中、制御部3は、出力電流検出部Ra、Rb、Rcに発生する電圧を通してDC-DCコンバータ5a、5b、5cに流入する電流を監視する。ただし、制御部3は出力電流検出部Ra、Rb、Rcで発生する電圧信号のうち、選択回路8により選択された最も電圧の高い信号を監視することになる。出力電流検出信号は、DC-DCコンバータ5a、5b、5cへの入力電流の大きさを示すものであり、電圧値が高いほど入力電流が大きいことを示す。
【0028】
ここで何らかの異常が発生し、AC-DC変換回路2に接続された照明器具の内1つの照明器具への流入電流が増加、すなわち1つのDC-DCコンバータの入力電流が増加したと仮定する。すると、対応する出力電流検出信号の電圧値が増加し、その電圧値が選択回路8の出力として制御部3に提供される。そして制御部3は、選択回路8から得られた電圧値が、予め定めた基準レベルである基準電圧値に達すると、AC-DC変換回路2の動作を停止する。すると、AC-DC変換回路2の昇圧動作が停止するため、AC-DC変換回路2の出力電圧が低下する。これにより、DC-DCコンバータに異常が生じた場合、又は、適合しない負荷がAC-DC変換回路2に接続された場合に、過大な電流が出力コネクタを介して接続ケーブルに流出することを防止できる。よって、出力コネクタと配線ケーブルの接触不良により配線ケーブルが外れた場合でも、電流値をアーク放電が発生する電流値以下に抑制できるので、出力コネクタとその近傍の発煙等の可能性を抑制することができる。
【0029】
なお、本実施の形態ではAC-DC変換回路2に昇圧チョッパ型の力率改善回路を適用した場合について説明したため、スイッチング素子SW1がスイッチングを停止しても、出力コネクタ6a、6b、6cには、交流電源1の全波整流電圧が発生する。しかし、AC-DC変換回路2の回路構成はこれに限定するものではなく、例えば公知の回路構成であるフライバックコンバータ、フォワードコンバータ、又は昇圧チョッパ型力率改善回路の後段にこれらの一方を組み合わせた2コンバータ方式であれば、フライバックコンバータ又はフォワードコンバータのスイッチングを停止させることにより、出力コネクタ6a、6b、6cの出力電圧をゼロまで低下させることができる。
【0030】
実施の形態3
図4は、実施の形態3に係る照明システム120の回路構成図である。実施の形態2と同様の構成部分は同一の符号を付して、説明を省略することがある。
【0031】
AC-DC変換回路2は、接続される照明器具の台数に応じて平滑コンデンサC2と並列に接続された複数の出力コネクタ6a、6b、6cを有している。複数の出力コネクタ6a、6b、6cの出力電流を電圧変換して個別に検出するために、出力コネクタ6a、6b、6cと直列に出力電流検出部Ra、Rb、Rcがある。さらに、出力コネクタ6a、6b、6cから外部に電流が流出することを許容したり阻止したりするスイッチ10a、10b、10cをそれぞれ有する。複数のスイッチ10a、10b、10cは、複数の出力コネクタ6a、6b、6cに1対1で直列接続されている。出力電流検出部Ra、Rb、Rcで検出した出力電流検出信号は、それぞれ制御部3に入力される。スイッチ10a、10b、10cは制御部3の信号によりオンオフ制御される。
【0032】
AC-DC変換回路2は、複数のスイッチ10a、10b、10cに1対1で並列接続された複数の負荷検出用抵抗Ra´、Rb´、Rc´を備えている。複数のDC-DCコンバータ5a、5b、5cは、DC-DCコンバータ毎に入力端子間を接続する複数の負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcを備えている。負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcを設けることで、出力コネクタ6a、6b、6cの電圧を制御部3で読み取るようにした。
【0033】
次に、照明システム120の動作について説明する。交流電源1を入力するとAC-DC変換回路2は動作を開始し、直流電圧を生成する。このとき、スイッチ10a、10b、10cはオフ状態とする。直流電圧が生成されると、平滑コンデンサC2から負荷検出用抵抗Ra´、Rb´、Rc´と出力コネクタ6a、6b、6cを介してDC-DCコンバータ5a、5b、5cの負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcに電圧が印加される。すると、DC-DCコンバータ5a、5b、5cの入力部には負荷検出用抵抗Ra´、Rb´、Rc´と負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcの抵抗分圧比によって決まる電圧が発生し、これを制御部3で検知する。つまり、制御部3は負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcに生じた電圧を検知する。
【0034】
制御部3は、検知された電圧が予め定められた電圧範囲内であると判定すると、正常にDC-DCコンバータ5a、5b、5cが接続されたと判断し、スイッチ10a、10b、10cをオン状態に制御する。スイッチ10a、10b、10cがオン状態になると、平滑コンデンサC2の電圧がスイッチ10a、10b、10cと出力コネクタ6a、6b、6cを介してDC-DCコンバータ5a、5b、5cに印加され、DC-DCコンバータ5a、5b、5cは動作を開始し、光源9a、9b、9cを点灯させる。
【0035】
他方、負荷識別用抵抗Rda、Rdb、Rdcに生じて制御部3で検知された電圧が予め定められた電圧範囲外である場合、制御部3はDC-DCコンバータが接続されていないか、適合しない機器が接続されたと判断し、スイッチをオフ状態に維持する。スイッチをオンにするかオフ状態を維持するかの判定は、スイッチ毎に行われる。したがって、あるスイッチはオンされ、別のスイッチはオフ状態を維持することがある。
【0036】
スイッチ10a、10b、10cのうち少なくとも1つがオンになり、DC-DCコンバータが動作を開始すると、制御部3は出力電流検出部Ra、Rb、RcによりDC-DCコンバータ5a、5b、5cに流入する電流を監視する。ここで何らかの異常が発生し、1つの照明器具のDC-DCコンバータの入力電流が増加したとする。すると、対応する出力電流検出部から得られる電圧信号である出力電流検出信号が増加する。制御部3では、増加した出力電流検出信号が、予め設定された電圧値である基準値に達したことを検出し、対応するスイッチをオフする。制御部3は、すべての出力電流検出信号と、基準値との電圧レベルを常時比較し、基準値に達する出力電流検出信号が検出された場合は、対応するスイッチをオフする。スイッチオフすることで、そのスイッチを経由したDC-DCコンバータへの電力供給が停止する。このように、制御部3は、複数の出力電流検出部Ra、Rb、Rcで検出される電流値のうち予め定めた基準値に達するものがある場合、スイッチ10a、10b、10cのうち、基準値に達する電流値を与えるものをオフする。
【0037】
このような処理により、DC-DCコンバータの異常、又は適合しない負荷の接続があった場合に、過大な電流が出力コネクタを介して接続ケーブルに流出することを防止することができる。これにより、例えば出力コネクタと配線ケーブルの接触が外れた場合でも、アーク放電が発生する電流値以下に抑制できるので、発煙等の可能性を抑制することができる。また、異常が発生したDC-DCコンバータのみ電力供給を停止するので、異常のないDC-DCコンバータはそのまま動作を継続でき、光源を点灯することができる。さらに、DC-DCコンバータへの電力供給前に、適合する照明器具が接続されたか否かを確認し、適合する照明器具が接続された場合に限り、規定の電圧をDC-DCコンバータに印加するので、適合しない誤った負荷が接続された場合に規定の電圧を負荷に印加してしまうことを防止できる。
【0038】
実施の形態4
図5は、実施の形態4に係る照明システム130の回路構成図である。実施の形態1と同様の構成部分は同一の符号を付して、説明を省略することもある。
【0039】
AC-DC変換回路2は、接続される照明器具の台数に応じて平滑コンデンサC2と並列に接続された複数の出力コネクタ6a、6b、6cを有している。さらに、出力コネクタ6a、6b、6cから電流が流出することを許容又は阻止するスイッチ10a、10b、10cが設けられている。制御部7a、7b、7cは調光器から出力される調光信号を受信するための受信部を有する。制御部7a、7b、7cは、外部に設けられた調光器(図示せず)からの調光信号を受信部で受けて、光源9a、9b、9cの明るさ調整及び消灯制御を行う。調光器は例えばリモコン又は壁等に設置されたボリューム調節器などで構成される。さらに、制御部7a、7b、7cと制御部3の間で、例えば有線による通信手段を備えている。図5には、有線による通信手段の例として、制御部7a、7b、7cと制御部3がコネクタ等により接続されたことが示されている。この通信手段は、複数のDC-DCコンバータ5a、5b、5cからAC-DC変換回路2への通信のための通信部を構成している。
【0040】
DC-DCコンバータ5a、5b、5cは例えば降圧チョッパ回路で構成される。降圧チョッパ回路は、フィルタコンデンサC3、例えばMOSFETで構成されるスイッチング素子SW2、インダクタL2、ダイオードD2及び平滑コンデンサC4を備えている。すなわち、照明器具4aの光源9aに直流電流を供給するために、スイッチング素子SW2とインダクタL2でエネルギの充放電を行い、所望の直流電流に変換する。そのため、DC-DCコンバータ5aは光源9aに流れる電流を検出する光源電流検出抵抗R5を備えている。図5において、DC-DCコンバータ5b、5cは、DC-DCコンバータ5aと同じ構成であるので、回路構成は省略した。
【0041】
DC-DCコンバータ5a、5b、5cはそれぞれ制御部7a、7b、7cの制御を受けて動作する。制御部7a、7b、7cは、予め定められたスイッチング周波数でスイッチング素子SW2をスイッチングし、スイッチング素子SW2がオンすると、インダクタL2にエネルギを蓄え、スイッチング素子SW2がオフすると、インダクタL2に蓄えたエネルギを放出する。このとき、制御部7a、7b、7cは光源電流検出抵抗R5により光源電流を監視し、所望の直流電流となるように、スイッチング素子SW2のオン時間を調整する。制御部7a、7b、7cのすべてについて、少なくとも一部をマイクロコンピュータで構成するようにしてもよい。
【0042】
次に、照明システム130の動作について説明する。ここでは、交流電源1が入力され、光源9a、9b、9cが点灯している状態から説明する。光源点灯中、制御部7a、7b、7cは調光信号を受信可能な状態であり、調光信号に応じた明るさとなるようにDC-DCコンバータ5a、5b、5cを制御して光源9a、9b、9cに流れる電流を調節する。また、制御部7a、7b、7cのうち、調光器から消灯する旨の信号を受けた制御部は、DC-DCコンバータの動作を停止し、光源を消灯する。
【0043】
例えば何らかの原因によりスイッチング素子SW2がオフ状態でも一定の抵抗値を持った状態で通電状態となる半ショート状態で故障したとする。この場合、調光器より消灯信号を入力してDC-DCコンバータの動作を停止させても、AC-DC変換回路2の出力電圧がDC-DCコンバータ5のスイッチング素子SW2に印加される。そのため、スイッチング素子SW2を介して光源に電流が流れ続け、光源が消灯しないという問題が発生する。
【0044】
そこで、制御部7a、7b、7cのいずれかで、調光器より消灯信号が入力されたことを検知し、かつ、光源電流検出抵抗R5により光源に電流が流れ続けていることを検知すると、該当する制御部は、AC-DC変換回路2への通信のための通信部を介してAC-DC変換回路2に異常状態を通知する。DC-DCコンバータ5aに異常が生じた場合を例に具体的に説明する。調光器より消灯信号が出力されると、制御部7aはこれを受けてDC-DCコンバータ5aの動作、すなわちスイッチング素子SW2の動作を停止する。しかしながらスイッチング素子SW2の半ショート故障によりスイッチング素子SW2に一定の電流が流れ続け、これに伴い光源9aにも電流が流れるため、光源9aは消灯しない。そこで、光源電流検出抵抗R5にて光源電流を検出することで制御部7aはスイッチング素子SW2の半ショート状態を検知することができる。
【0045】
また、調光信号により点灯を指示する信号を受けて光源9aが点灯中の場合において、スイッチング素子SW2が半ショート状態では、調光器により指定した電流よりも多くの電流が光源9aに流れるため、制御部7aはスイッチング素子SW2のオン時間を減少させ、最終的にオン時間がゼロとなる。点灯中にスイッチング素子SW2のオン時間がゼロ、すなわちスイッチング動作が停止することは、正常動作ではあり得ず、半ショート状態による光源電流が過剰になったことを意味するので、制御部7aはこれを異常状態と判断する。つまり、該当する制御部は、AC-DC変換回路2への通信のための通信部を介してAC-DC変換回路2に異常状態を通知する。
【0046】
このように、制御部7aは半ショート状態を検知すると、通信部を介して異常状態を制御部3に通知する。制御部3はこれを受けて、異常を通知した制御部7aに対応するスイッチ10aをオフし、DC-DCコンバータ5aへの電力供給を遮断する。以後、該当するDC-DCコンバータ5aへの電力の遮断が継続するので、制御部7aも動作停止状態となり、調光器から点灯を指示する信号を出力してもDC-DCコンバータ5aは動作することなく、安全状態を確保することができる。正常動作している照明器具については点灯を継続することができる。
【0047】
ここでは、スイッチング素子SW2が半ショート状態となった異常検知回路としてDC-DCコンバータ5aを例示したが、別のDC-DCコンバータが異常検知回路に該当した場合も、同様に処理される。
【0048】
本実施の形態においてはスイッチング素子SW2の半ショート状態について説明したが、DC-DCコンバータに他の故障状態が生じても上述した処理と同様に処理できる。例えばDC-DCコンバータの負荷短絡状態、負荷開放状態等があった場合、制御部7a等でこれを検出し、通信部を介して制御部3に通知することで対応するスイッチをオフし、安全に装置を停止させることができる。この場合も、正常動作している照明器具については点灯を継続することができる。このように、半ショート状態に限らず、様々な故障状態が生じたDC-DCコンバータを異常検知回路と定義できる。
【0049】
なお、複数のDC-DCコンバータ5a、5b、5cからAC-DC変換回路2への通信のための通信部として、これらをつなぐ配線を例示したが、これに限定するものではなく、無線部を用いて制御部3に異常状態を通知してもよい。なお、ここまでに説明した各実施の形態に係る照明システムの特徴は組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 交流電源、 2 AC-DC変換回路、 2a プリント基板、 3,7a,7b,7c 制御部、 4a,4b,4c 照明器具、 5a,5b,5c DC-DCコンバータ、 6a,6b,6c 出力コネクタ、 8 選択回路、 9a,9b,9c 光源、Ra,Rb,Rc 出力電流検出部、 Ra´、Rb´、Rc´ 負荷検出用抵抗、 Rda、Rdb、Rdc 負荷識別用抵抗、 R5 光源電流検出抵抗
図1
図2
図3
図4
図5