(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ボトル缶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240730BHJP
B65D 1/46 20060101ALI20240730BHJP
B65D 1/16 20060101ALI20240730BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20240730BHJP
B21D 41/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D1/02 220
B65D1/46
B65D1/16 111
B21D51/26 Q
B21D41/04 C
(21)【出願番号】P 2019212812
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】南馬 孝之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴志
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104094(JP,A)
【文献】特開2018-140826(JP,A)
【文献】特開2018-140832(JP,A)
【文献】特開2019-058915(JP,A)
【文献】特開2018-177250(JP,A)
【文献】特開2018-193101(JP,A)
【文献】特表2017-523920(JP,A)
【文献】特開平01-210136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
B65D 1/16
B21D 51/26
B21D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が64.25mm以上68.24mm以下の円筒状胴部と、該円筒状胴部の上端から縮径する縮径部と、該縮径部の上端に接続され、缶軸方向上方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ筒部と、該テーパ筒部の上端でさらに縮径されたネック部と、該ネック部の上端に形成され、キャップ材が巻き込まれる膨出部の外径が36.0mm以上40.0mm以下の口部とを備え、前記縮径部が、前記円筒状胴部の上端に接続された凸状湾曲部と、前記テーパ筒部の下端の間に形成された凹状湾曲部と、を有するボトル缶であって、
前記テーパ筒部は缶軸に対する外面の傾斜角度が5°以上10°以下であり、
缶軸を通る縦断面において、前記凸状湾曲部の外面の曲率半径が20mm以上30mm以下、前記凹状湾曲部の外面の曲率半径は6.0mm以上17.0mm以下であり、前記凸状湾曲部と前記凹状湾曲部との間に凸状外面を有する第2凸状湾曲部を有するとともに、該第2凸状湾曲部と前記凸状湾曲部との間に缶軸に対して傾斜するテーパ部が形成されており、
前記第2凸状湾曲部の外面の曲率半径は20mm以上40mm以下であり、
前記テーパ筒部の上端に半径方向外方に突出する屈曲凸部が形成され、その上端に屈曲凹部を介して前記ネック部の下端が接続されており、
全体高さが180mm以上230mm以下、前記円筒状胴部と前記凸状湾曲部との接続位置から前記テーパ筒部の屈曲凸部上端までの缶軸方向の長さが42mm以上62mm以下であることを特徴とするボトル缶。
【請求項2】
請求項1に記載のボトル缶であって、前記ボトル
缶の開口部に平板を当接させ、5mm/minの速度で軸方向に圧縮して、座屈が開始された時の荷重であるコラム強度が1500N以上であることを特徴とするボトル缶。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボトル缶の製造方法であって、
前記円筒状胴部と同じ外径の筒体を形成する筒体形成工程と、
前記筒体の上端から缶軸方向にネッキングダイを押し込みながら前記筒体の上部を縮径して、前記円筒状胴部の上端に連続する前記凸状湾曲部と、該凸状湾曲部より上方で凹状外面を有する湾曲凹部と、該湾曲凹部の上端に連続する前記テーパ筒部とを形成する縮径工程と、
前記縮径工程後に、前記湾曲凹部を再成形することにより、前記湾曲凹部より曲率半径が小さい前記凹状湾曲部を形成するとともに、該凹状湾曲部と前記凸状湾曲部との間に第2凸状湾曲部を形成するリフォーム工程とを有するボトル缶の製造方法。
【請求項4】
前記屈曲凸部及び前記屈曲凹部は、前記テーパ筒部の上端に、半径方向外方に突出する屈曲した凸部を形成するとともに、前記ネック部の下端に、前記屈曲した凸部の上端から連続する屈曲した凹部を形成しておき、前記リフォーム工程後に、前記屈曲した凸部及び前記屈曲した凹部を変形させて、これらの曲率半径を小さくするネック下部形成工程によって形成されることを特徴とする請求項3に記載のボトル缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に金属製キャップが装着され、飲料等の内容物が充填されるボトル缶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填される容器として、ボトル形状の缶(ボトル缶)の開口部に、金属製キャップを装着して密封する容器が知られている。このボトル缶は、一般に、底部を有する円筒状胴部の開口部側に、上方へ向かうに従い漸次縮径する縮径部が設けられ、縮径部の上に首部を介して口部が設けられた構成とされている。このようなボトル缶は、金属板材(アルミニウム合金材料の板材)に絞り加工を施してカップを形成するカッピング工程、及びそのカップを再絞りしつつしごき加工を施すDI(Drawing & Ironing)工程を経て、有底円筒状の筒体に形成され、その有底円筒状の筒体の胴部の開口部側に縮径加工を施すことにより縮径部が形成され、その後、膨出部、ねじ部、カール部等を有する口部が形成される。
【0003】
このボトル缶の口部には金属製キャップが装着される。このキャップは、ボトル缶に装着される前は、円盤状の天板部とその外周縁から垂直に延びる周壁部とを有しており、ボトル缶の口部に被せられた後、ボトル缶のねじ部に沿って周壁部が加工され、周壁部の下端部が膨出部に係止される。開封する際は、キャップを回転すると、周壁部に形成されているブリッジ部が切断されることにより、周壁部が上下に分離され、口部から取り外すことができる。
このようなキャッピング時において、ボトル缶の缶軸方向に大きな荷重が作用するため、ボトル缶にはその荷重に耐え得る強度が必要である。
【0004】
特許文献1では、口部下端から縮径部の上端周囲に、半径方向内側に湾曲する凹部又は半径方向外側に湾曲する凸部を形成することにより、キャッピング時の荷重による変形が生じないようにしている。
特許文献2では、膨出部と縮径部との間に、膨出部側から順にS字ビード部と外径が一定のストレート部とが形成されていることにより、変形強度が高められている。
特許文献3では、ボトル缶に縮径部及び口部を形成するネッキング工程時に、縮径部と口部との繋ぎのR部の曲率半径を小さくするリフォーム加工を施すことにより、変形強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-213416号公報
【文献】特開2018-140827号公報
【文献】特開2018-177250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、大容量とするためにボトル缶を大型化する要望がある。ボトル缶の容量を大きくするには、胴部を長くすることにより対応しているが、口部との間の縮径部を伸ばして縮径部付近の容量を増大することも考えられる。
しかしながら、縮径部を伸ばすとキャッピング時の荷重によって座屈するおそれが生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、キャッピング時等における座屈等の変形を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボトル缶は、外径が64.25mm以上68.24mm以下の円筒状胴部と、該円筒状胴部の上端から縮径する縮径部と、該縮径部の上端に接続され、缶軸方向上方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ筒部と、該テーパ筒部の上端でさらに縮径されたネック部と、該ネック部の上端に形成され、キャップ材が巻き込まれる膨出部の外径が36.0mm以上40.0mm以下の口部とを備え、前記縮径部が、前記円筒状胴部の上端に接続された凸状湾曲部と、前記テーパ筒部の下端の間に形成された凹状湾曲部と、を有するボトル缶であって、
前記テーパ筒部は缶軸に対する外面の傾斜角度が5°以上10°以下であり、
缶軸を通る縦断面において、前記凹状湾曲部の外面の曲率半径は6.0mm以上17.0mm以下である。
【0009】
このボトル缶は、円筒状胴部とネック部との間が凸状湾曲部、凹状湾曲部、テーパ筒部を連続的に形成した形状であるので、テーパ筒部によって円筒状胴部から口部までの長さを大きくできる。また、ネック部の下方が補強されるとともに、凸状湾曲部とテーパ筒部との間の凹状湾曲部の曲率半径が小さく、これにより、缶軸方向におけるコラム強度を大きくして、キャッピング時等の際の変形を防止することができる。
この場合、凹状湾曲部の外面の曲率半径が6.0mm未満では曲率半径が小さくなり過ぎるため座屈するおそれがあり、また、滑らかな曲面にならずに意匠性を損ねるおそれがある。一方、17.0mmを超えるとコラム強度が低下する。
なお、テーパ筒部における缶軸に対する外面の傾斜角度が5°未満では成形が難しく、10°を超えると所望の缶高さを確保し難くなる。また、傾斜角度が小さいテーパ筒部とそれに比べて傾斜角度が大きい縮径部とを滑らかに接続して意匠性を良くするには、この角度範囲が好ましい。
【0010】
本発明のボトル缶において、前記凸状湾曲部と前記凹状湾曲部との間に凸状外面を有する第2凸状湾曲部を有し、前記第2凸状湾曲部の外面の曲率半径は20mm以上40mm以下であるとよい。
【0011】
第2凸状湾曲部の曲率半径が20未満では凹状湾曲部との接続部分で段状に見えるため、ボトル缶の外観を損ねるおそれがあり、40mmを超えると直線状に見えて、所望の意匠形状となりにくい。
なお、凸状湾曲部と第2凸状湾曲部とは直接接続状態とされていてもよいし、縦断面で直線状又は直線に近い曲線状のテーパ部によって接続されていてもよい。
【0012】
本発明のボトル缶の製造方法は、外径が64.25mm以上68.24mm以下の円筒状胴部と、該円筒状胴部の上端から縮径する縮径部と、該縮径部の上端に接続され、缶軸方向上方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ筒部と、該テーパ筒部の上端でさらに縮径されたネック部と、該ネック部の上端に形成され、キャップ材が巻き込まれる膨出部の外径が36.0mm以上40.0mm以下の口部とを備え、前記縮径部が、前記円筒状胴部の上端に連続する凸状湾曲部と、前記テーパ筒部の下端の間に形成された凹状湾曲部と、を有するボトル缶の製造方法であって、
前記円筒状胴部と同じ外径の筒体を形成する筒体形成工程と、
前記筒体の上端から缶軸方向にネッキングダイを押し込みながら前記筒体の上部を縮径して、前記円筒状胴部の上端に連続する前記凸状湾曲部と、該凸状湾曲部より上方で凹状外面を有する湾曲凹部と、該湾曲凹部の上端に連続する前記テーパ筒部とを形成する縮径工程と、
前記縮径工程後に、前記湾曲凹部を再成形することにより、前記湾曲凹部より曲率半径が小さい前記凹状湾曲部を形成するリフォーム工程とを有する。
【0013】
本発明の製造方法では、円筒状胴部の上に、まず凸状湾曲部湾曲凹部、テーパ筒部を形成する。次いで、リフォーム工程により、湾曲凹部の外面の曲率半径を小さくした凹状湾曲部を形成して、凹状湾曲部付近の剛性を高めている。
【0014】
ボトル缶の製造方法において、前記リフォーム工程では、前記凹状湾曲部を形成する際に、前記凹状湾曲部と前記凸状湾曲部との間に第2凸状湾曲部を形成するとよい。
【0015】
凸状湾曲部と凹状湾曲部の間にさらに第2凸状湾曲部が形成されるので、凹状湾曲部付近がさらに補強されて、コラム強度が高められる。
【0016】
ボトル缶の製造方法において、前記テーパ筒部の上端に、半径方向外方に突出する屈曲凸部を形成するとともに、前記ネック部の下端に、前記屈曲凸部の上端から連続する屈曲凹部を形成しておき、前記リフォーム工程後に、前記屈曲凸部及び前記屈曲凹部を変形させて、これらの曲率半径を小さくするネック下部形成工程を有するとよい。
【0017】
テーパ筒部は缶軸に対する傾斜角度が小さいため、加工代が少なく、ひずみを周方向に均等に付与することが著しく難しくなる。
そこで、縮径工程後に、リフォーム工程によりテーパ筒部を整形しているが、そのテーパ筒部からネック部にかけた部分においては、ネック下部形成工程において、屈曲凸部及び屈曲凹部の曲率半径を小さくする加工を施しているので、スプリングバック等を抑制して、これらを確実に形成でき、変形強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャッピング時等における座屈等の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボトル缶の半分を断面にした正面図である。
【
図3】ボトル缶の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【
図4】ボトル缶の製造工程の一部を(a)~(c)の順に示す工程図である。
【
図5】第1縮径工程において、筒体に1番目のネッキングダイを配置した状態を示す断面図である。
【
図6】第1縮径工程において用いられる各ネッキングダイの成形部を重ねて示した断面図である。
【
図7】第1縮径工程により形成される第1中間成形体の要部を示す正面図である。
【
図8】リフォーム工程後の第2中間成形体の要部を示す正面図である。
【
図9】ネック下部形成工程において成形ダイにより成形している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るボトル缶の正面図である。このボトル缶1は、開口端部1aにキャップ(図示省略)が装着されることにより、飲料等を収容する容器として用いられる。
【0022】
ボトル缶1は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属からなり、
図1に示すように、底部11を有する円筒状胴部12に、円筒状胴部12の上端から縮径する縮径部13と、縮径部13の上端に接続され、缶軸方向上側に向かうに従って漸次縮径されたテーパ筒部14と、テーパ筒部14の上端でさらに縮径された小径のネック部15と、ネック部15の上端に形成された口径38mmの口部16とを備えている。縮径部13は、円筒状胴部12の上端から凸状外面となる第1凸状湾曲部(本発明では単に凸状湾曲部と称している)131と、第1凸状湾曲部131の上方に形成される第2凸状湾曲部133と、第2凸状湾曲部133の上端から口部16の下端にかけて凹状外面となる凹状湾曲部132とを有している。
図1に示すように、円筒状胴部12及び縮径部13、テーパ筒部14、ネック部15、口部16は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Sと称して説明を行う。
【0023】
円筒状胴部12は、外径が公称211径であり、64.25mm以上68.24mm以下の外径D1に形成される。円筒状胴部12の下端部には、ドーム状をなす底部11が形成されており、底部11は、缶軸S上に位置するとともに、上方(円筒状胴部11の内部)に向けて膨出するように形成されたドーム部111と、ドーム部111の外周縁部と円筒状胴部12の下端部とを接続するヒール部112とを備えている。また、ドーム部111とヒール部112との接続部分は、缶軸S方向の下方に向けて凸となるように屈曲形成されており、ボトル缶1が正立姿勢(
図1に示される、口部16が上方を向く姿勢)となるように載置面上に載置されたときに、載置面に接する接地部113となっている。接地部113は、底部11において最も下方に向けて突出しているとともに、周方向に沿って延びる環状をなしている。この接地部113の直径D2は例えば56mmに形成される。
【0024】
縮径部13は、缶軸S方向の下側に第1凸状湾曲部131、上側に凹状湾曲部132が形成され、これらの間に第2凸状湾曲部133が接続されることにより、缶軸方向上側に向かうに従って縮径する形状である。この場合、第1凸状湾曲部131と第2凸状湾曲部133との間がテーパ部134によって接続されており、第1凸状湾曲部131から第2凸状湾曲部133までの間が全体として凸状に形成されている。第1凸状湾曲部131の外面の曲率半径R1は20mm以上30mm以下、第2凸状湾曲部133の外面の曲率半径R2は20mm以上40mm以下に形成される。また、缶軸を通る縦断面においてテーパ部134の缶軸に対する外面の傾斜角度θ1は30°以上45°以下とされる。なお、第1凸状湾曲部131と第2凸状湾曲部133とは直接接続されていてもよい。また、テーパ部134も、缶軸Sを通る縦断面において直線状であってもよいし、曲率半径が大きくほぼ直線に近い曲線状であってもよい。
【0025】
一方、凹状湾曲部132の外面の曲率半径R3は6.0mm以上17.0mm以下であり、テーパ筒部14は、缶軸Sを通る縦断面において缶軸Sに対する外面の傾斜角度が5°以上10°以下である。この場合、凹状湾曲部132の外面の曲率半径R3が6.0mm未満では曲率半径が小さくなり過ぎるため座屈するおそれがあり、また、滑らかな曲面にならずに意匠性を損ねるおそれがある。一方、17.0mmを超えるとコラム強度が低下する。また、テーパ筒部14における缶軸Sに対する外面の傾斜角度θ2が5°未満では成形が難しく、10°を超えると所望の缶高さを確保し難くなる。また、傾斜角度が小さいテーパ筒部14とそれに比べて傾斜角度が大きい縮径部13とを滑らかに接続して意匠性を良くするには、この角度範囲が好ましい。このテーパ筒部14は、缶軸Sを通る縦断面において直線状に形成されるが、曲率半径が大きくほぼ直線に近い曲線状であってもよい。
【0026】
テーパ筒部14の上端には、半径方向外方に突出する屈曲凸部141が形成され、ネック部15の下端には、その屈曲凸部141の上端に接続された屈曲凹部151を有している。この屈曲凸部141と屈曲凹部151とによりテーパ筒部14からネック部15にかけて段状に形成される。
ネック部15が最も縮径されており、その上端部では拡径されて口部16が接続される。このため、ネック部15は、テーパ筒部14と口部16との間でくびれた形状に形成される。
【0027】
口部16は、前述したネック部15の上に周方向に膨出部161が形成され、膨出部161の上に雄ねじ部162が形成され、雄ねじ部162の上方の開口端部1aにカール部163が形成されている。そして、天板部と周壁部とを有するキャップ材が口部16に被せられ、雄ねじ部162に沿って成形され、キャップ材の裾部が膨出部161に巻き込まれた状態で、キャップ材の内面のライナがカール部163に圧接することにより、キャップにより内部が密封されたボトル缶1となる。
【0028】
本実施形態において、ボトル缶1の全体高さ(ボトル缶1の接地部113の底面からカール部143の上面までの高さ)H0は180mm以上230mm以下、円筒状胴部12と縮径部13の下側の凸状湾曲部131との接続位置から口部16の上端までの缶軸S方向の長さH1は、60mm以上80mm以下、円筒状胴部12と縮径部13の下側の凸状湾曲部131との接続位置からテーパ筒部14の屈曲凸部141上端までの缶軸S方向の長さH2は42mm以上62mm以下に形成される。内容量としては、400ml以上600ml以下の飲料缶として利用することができる。
【0029】
図3はこのように形成されたボトル缶1の製造方法を示すフローチャートである。
このボトル缶1を製造するには、まず、アルミニウム合金等の薄板金属の板材を打ち抜いて絞り加工することにより、
図4(a)に示す比較的大径で浅いカップ21を成形(カッピング工程)した後、このカップ21に再度の絞り加工及びしごき加工(DI(Drawing & Ironing)加工)を加えて、
図4(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体22を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える(筒体形成工程)。この筒体形成工程により、筒体22の底部は最終のボトル缶1としての底部11の形状に成形され、筒体22の胴部は最終のボトル缶1の円筒状胴部12と同じ外径に形成される。
【0030】
この筒体22を形成した後、
図4(c)に示すように、この筒体22の上部を縮径して円筒状胴部12の上端に、下から順に第1凸状湾曲部131、湾曲凹部42、テーパ筒部14、屈曲凸部141、屈曲凹部151を形成する縮径工程と、縮径工程後に湾曲凹部42を変形させて凹状湾曲部132を形成するとともに、この凹状湾曲部132と第1凸状湾曲部131との間に第2凸状湾曲部133、テーパ部134を形成することにより、これらが連続してなる縮径部13を形成するリフォーム工程と、テーパ筒部14の上端に形成されている屈曲凸部141及び屈曲凹部151を変形させるネック下部形成工程、ネック下部形成工程後に口部16を形成する口部形成工程の順で加工される。以下、これら工程順に詳細を説明する。
【0031】
[縮径工程]
筒体22の開口端部側を縮径加工(ネッキング加工)することにより、
図3(c)に示すように、円筒状胴部12に連続する凸状外面を有する湾曲凸部41と、湾曲凸部41の上方で凹状外面を有する湾曲凹部42と、湾曲凹部42の上端に連続するテーパ筒部14と、テーパ筒部14の上方で缶軸方向に延びる小径筒部46を有する中間成形体(後述の第2中間成形体)24を形成する。
【0032】
この実施形態において、縮径工程は、円筒状胴部12の上端から第1凸状湾曲部131及び湾曲凹部42を形成する第1縮径工程と、湾曲凹部42の上端に連続するテーパ筒部14を形成する第2縮径工程とからなる。
第1縮径工程は、
図5に示すように、ネッキングダイ51Aを筒体22の開口端側から缶軸S方向に移動して、筒体22の外周面をネッキングダイ51Aの成形部52Aによって押圧しながら縮径する加工であり、その成形部52A,52B…の径が異なる複数のネッキングダイ51A,51B…を径の大きい順に用いて、筒体22の上端部を徐々に縮径する。
【0033】
図5は、成形部52Aの径が最も大きいネッキングダイ51Aを示しており、このネッキングダイ51Aにより各ネッキングダイを代表して説明すると、ネッキングダイ51Aは、全体として円筒形状に形成され、その内周部の先端側に成形部52Aが形成されている。この成形部52Aは、内周円筒面53Aの先端部に連続する凸曲面によって形成されており、先端に向かうにしたがって内径が漸次大きくなるように形成されている。最先端には筒体22の外周面に嵌合する筒状のガイド部54が形成される。
【0034】
図6は、第1縮径工程における最終のネッキングダイ51D(十数回に分けて成形される)を実線で示し、これに対して、その前に用いられるネッキングダイのうちのいくつかの成形部52A,52B,52Cを二点鎖線で重ねて示した図である。
このように、成形部52A,52B,52Cの内周円筒面の内径が順次小さくなるように複数のネッキングダイを用いながら、縮径加工を施す。
【0035】
この第1縮径工程により、筒体22の上部が縮径され、
図7に示す第1中間成形体23が形成される。
この第1中間成形体23は、各ネッキングダイ51A,51B…の成形部52A,52B…のほぼ包絡面の形状に形成され、
図7に示すように、円筒状胴部12の上に凸状外面を有する第1凸状湾曲部131と、第1凸状湾曲部131の上端に連続する凹状外面を有する湾曲凹部42と、湾曲凹部42の上端に連続する筒状部45とを有している。
この第1中間成形体23において、第1凸状湾曲部131の外面の曲率半径R1が20mm以上30mm以下、湾曲凹部42の外面の曲率半径R4が6mm以上20mm以下に形成される。
【0036】
次いで、第2縮径工程では、第1中間体23の筒状部45に、湾曲凹部42の上端に連続するテーパ筒部14を形成する。この第2縮径工程も、第1縮径工程の場合と同様に、複数のネッキングダイを用いて、その成形部の径の小さい順に加工しながら、テーパ筒部14を形成する。
【0037】
これにより形成される第2中間成形体24は、
図4(c)に示すように、円筒状胴部12の上端に接続する第1凸状湾曲部131と、この第1凸状湾曲部131の上端に接続する湾曲凹部42と、湾曲凹部42の上端に連続するテーパ筒部14と、テーパ筒部14の上端に屈曲凸部141及び屈曲凹部151を介して連続する小径筒部46とを有している。
【0038】
[リフォーム工程]
このリフォーム工程では、縮径工程におけるネッキングダイと同様のネッキングダイを用いて、湾曲凹部42を押圧しながら再成形する。
これにより、
図8に示すように、テーパ筒部14の下端に凹状湾曲部132が形成され、この凹状湾曲部132の下端に第2凸状湾曲部133が形成される。また、第1凸状湾曲部131と第2凸状湾曲部133との間はテーパ部34により接続される。
【0039】
この中間成形体25において、缶軸Sを通る縦断面において、第1凸状湾曲部131の外面の曲率半径R1は20mm以上30mm以下、第2凸状湾曲部133の外面の曲率半径R2は20mm以上40mm以下、テーパ部134の缶軸Sに対する外面の傾斜角度θ1は30°以上45°以下である。なお、第1凸状湾曲部131と第2凸状湾曲部133とは直接接続状態とされていてもよい。また、テーパ部134は、缶軸に沿う縦断面で直線状とされるものだけでなく、直線に近い曲線状のテーパ部であってもよい。
また、凹状湾曲部132の外面の曲率半径R3は6.0mm以上17.0mm以下であり、テーパ筒部14の缶軸Sに対する外面の傾斜角度θ2が5°以上10°以下である。
さらに、小径筒部46とテーパ筒部14との間が、テーパ筒部14の上端の屈曲凸部141と、小径筒部46の下端の屈曲凹部151とにより、段状に接続される。
【0040】
[ネック下部形成工程]
図9に示すように成形ダイ51Mを缶軸S方向に押圧して、第3中間成形体25のテーパ筒部14の上端と、その上の小径筒部46の下端との接続部分に形成される屈曲凸部141と屈曲凹部151とを再成形する。例えば、屈曲凹部151の内面をこれより曲率半径の小さい成形部52Mにより押圧して、屈曲凹部151の曲率半径を小さくする、あるいは、屈曲凸部141と屈曲凹部151との接続部付近を押圧して、屈曲凸部141をさらに屈曲させるようにしてその曲率半径を小さくする。
これにより、これら屈曲凸部141及び屈曲凹部151の両方又はいずれかの曲率半径がわずかに小さくなるが、その変化はわずかであるので、このネック下部形成工程後の中間成形体も第3中間成形体25として説明する。
【0041】
[口部形成工程]
次いで、この第3中間成形体25の小径筒部46を成形して、ネック部15とする部分を残して、小径筒部46を拡径するとともに、その拡径した部分の上部を再度縮径し、その後ねじ加工、カーリング加工を施すことにより、ネック部15の上に膨出部161、雄ねじ部162、カール部163が順次連続した口部16を形成する。
これにより、ボトル缶1が形成される。
【0042】
なお、このボトル缶1を形成するためのアルミニウム合金の板厚は、プレス成形前の元板厚が0.370mm以上0.550mm以下であり、
図4(b)に示すDI加工後の筒体22において、底部11側に位置する底部側部分221の板厚(ウォール厚)t1が0.110mm以上0.150mm以下に形成され、開口端部側部分222の板厚(フランジ厚)t2が0.200mm以上0.240mm以下に形成される。この場合、ウォール厚t1の底部側部分221は、円筒状胴部12の底部11よりも若干缶軸S方向上方位置から、後の工程で縮径部13の凸状湾曲部131となる部分よりも若干缶軸S方向下方位置までであり、フランジ厚t2の開口端部側部分222は、後の工程で縮径部13の凸状湾曲部131となる部分よりも缶軸S方向上方部分である。なお、底部11のドーム部111の板厚がほぼ元板厚、あるいは元板厚より若干薄くなる。
【0043】
このように製造されたボトル缶1は、その口部16にキャップ(図示略)が装着されて密封される。
このキャップは、アルミニウム又はアルミニウム合金の薄板金属からなる天板部と周壁部とを有し、その周壁部に周方向にスリットが断続的に形成された、いわゆるピルファープルーフキャップであり、ボトル缶1の口部16に被せられた後に、ボトル缶1の雄ねじ部162に沿って周壁部がねじ加工され、膨出部161の下面に周壁部の下端部が係止される。
【0044】
このボトル缶1は、円筒状胴部12とネック部15との間が第1凸状湾曲部131、テーパ部134、第2凸状湾曲部133、凹状湾曲部132からなる縮径部13と、テーパ筒部14とを連続的に形成した形状であるので、テーパ筒部14によって円筒状胴部12から口部16までの長さH2を大きくでき、容量を多くすることが可能である。
また、円筒状胴部12とネック部15との間が第1凸状湾曲部131から凹状湾曲部132、テーパ筒部14を連続的に形成した形状であるので、テーパ筒部14によってネック部15の下方が補強されるとともに、テーパ筒部14下端の凹状湾曲部132の曲率半径R3が小さく、これにより、缶軸S方向におけるコラム強度を大きくして、キャッピング時等の際の変形を防止することができる。
さらに、膨出部161の下方でネック部15からテーパ筒部14にかけて屈曲凹部151及び屈曲凸部141により段状に外径が変化していることにより、膨出部161の下方位置が強化されており、その変形抵抗を大きくすることができる。
【0045】
なお、本発明は上記各実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ボトル缶として、予め有底円筒状の筒体を形成して、その開口端部を成形したが、筒体は底部を有していないものも含むものとし、縮径部を成形した後に、筒体の胴部に、別に形成した底部を巻き締めるようにしてもよい。
【実施例】
【0046】
プレス成形前の板厚が0.505mmのJIS3004のアルミニウム材を用い、ウォール厚が0.135mm、フランジ厚が0.225mmのDI缶を成形した後、円筒状胴部の外径D1が66.24mm、口部の膨出部外径が38.0mm、全体高さH0が203mmのボトル缶を成形した。
縮径部における第2凸状湾曲部の外面の曲率半径R2、凹状湾曲部の外面の曲率半径R3を測定した。これらのボトル缶においてテーパ筒部の外面の缶軸に対する傾斜角度θ2は5°~10°であった。
また、比較例として、リフォーム工程を経ないで形成したものも作製した。
これらのボトル缶について、コラム強度を測定した。
コラム強度は、ボトルの口金部上端(開口部)に平板を当接させ、島津製作所製の試験機(型番AG-50kNG)を用いて、5mm/minの速度で軸方向に圧縮して、座屈が開始された時の荷重を測定した。
その結果を表1に示す。いずれも10缶ずつ測定し、その平均値を示している。
【0047】
【0048】
表1により明らかなように、実施例のボトル缶はコラム強度が例えば1500N以上と高い。これにより、凹状湾曲部の外面の曲率半径R3が6.0mm以上17.0mm以下であれば、キャッピング時等における変形を抑制できることがわかる。また、プリーツ(縦じわ)や成形痕の発生も特に認められなかった。
これに対して比較例1は、リフォーム工程を経ないで形成したために、凹状湾曲部(湾曲凹部)の曲率半径が大きく、コラム強度が低かった。
【符号の説明】
【0049】
1 ボトル缶
12 円筒状胴部
13 縮径部
14 テーパ筒部
15 ネック部
16 口部
42 湾曲凹部
131 第1凸状湾曲部(凸状湾曲部)
132 凹状湾曲部
133 第2凸状湾曲部
134 テーパ部
141 屈曲凸部
151 屈曲凹部
161 膨出部
162 ねじ部
163 カール部